JP2023138039A - 加飾積層体、加飾部材、加飾システム及び加飾部材の製造方法 - Google Patents

加飾積層体、加飾部材、加飾システム及び加飾部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

Figure 2023138039000001
【課題】成形加工時における加飾層の変形を抑制する、加飾積層体、加飾部材、加飾システム及び加飾部材の製造方法を提供する。
【解決手段】加飾積層体35は、キャビティ内に配置されてインサート成形に用いられる。加飾積層体35は、加飾シート40と、加飾シート40に積層された樹脂層60と、を有する。加飾シート40は、意匠を表示する加飾層50と、加飾層50と積層された基材45と、を有する。加飾層50は、加飾シート40及び樹脂層60が積層された積層方向D3において基材45と樹脂層60との間に位置する。加飾層50に開口部53が設けられている。開口部53に樹脂層60が充填されている。樹脂層60は、透明な熱可塑性樹脂材料によって構成されている。
【選択図】図7

Description

本開示は、加飾積層体、加飾部材、加飾システム及び加飾部材の製造方法に関する。
従来、装飾を施されて意匠を表示する加飾シートが公知である。特許文献1に開示されているように、加飾シートは、インサート成形等の射出成形に用いられ得る。すなわち、加飾シートが型のキャビティ内に配置された状態で、溶融した樹脂がキャビティ内に供給される。これにより、加飾シートに成形物が接合したインサート成形品が得られる。加飾シートは、インサート成形に限られることなく、真空成形、TOM成形、曲げ成形、熱ラミネート等の加飾シートに所望の形状を付与する種々の成形加工を施される。
昨今では、表示装置に重ねて配置される加飾シートが知られている。特許文献2の加飾シートは装飾を施された加飾層を有する。装飾を施された層には、表示装置からの画像光が通過可能な開口部が設けられている。この加飾シートは、非表示状態にある表示装置を隠蔽する。表示装置が非表示状態の場合、加飾層の意匠が観察される。表示装置からの画像光は加飾シートを透過する。表示装置が表示状態の場合、表示装置の表示画像が加飾シート越しに透過観察される。
特開平10-329169号公報 特開2001-331132号公報
しかしながら、加飾シートが微細な開口部を有する加飾層を含む場合、例えばインサート成形等の成形加工時の熱や圧力によって加飾層が容易に変形し得る。加飾層が変形すると、加飾層に設けられた絵柄が変形する。結果として、加飾シートは、期待された意匠を表現できない。本開示は、成形加工時における加飾層の変形抑制を目的とする。
本開示の一実施の形態による加飾積層体は、
成形加工を施される加飾積層体であって、
意匠を表示する加飾層と、前記加飾層と積層された基材と、を有する加飾シートと、
前記加飾シートに積層された樹脂層と、を備え、
前記加飾層は、前記加飾シート及び前記樹脂層が積層された積層方向において前記基材と前記樹脂層との間に位置し、
前記加飾層に開口部が設けられ、前記開口部に前記樹脂層が充填され、
前記樹脂層は、透明な熱可塑性樹脂材料によって構成されている。
本開示の一実施の形態による他の加飾積層体は、
成形加工を施される加飾積層体であって、
意匠を表示する加飾層と、前記加飾層と積層された基材と、前記加飾層と積層された樹脂層と、を備え、
前記加飾層は、前記基材と前記樹脂層との間に位置し、
前記加飾層に開口部が設けられ、前記開口部に前記樹脂層が充填され、
前記樹脂層は、透明な熱可塑性樹脂材料によって構成されている。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、前記樹脂層を構成する前記熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度は165℃以下でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、前記樹脂層を構成する前記熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度は60℃以上でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、前記樹脂層の厚みは50μm以上250μm以下でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度は、前記基材を構成する樹脂材料のガラス転移温度以下でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、前記基材は透明な材料によって構成されてもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、可視光透過率は5%以上50%以下でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、100℃雰囲気での引張試験において幅25mmの前記樹脂層に100%の伸びが生じた際の引っ張り力は、当該樹脂層の厚み100μmあたり2N以上150N以下でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体において、
前記加飾層は、前記意匠を表示する意匠層と、前記意匠層と積層されて前記意匠層と前記基材との間に位置する遮光層と、を含んでもよく、
前記基材の波長1060nm以上1090nm以下の光線透過率は70%以上でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾積層体は、過領域及び遮光領域を含み前記加飾層と積層された遮光パターン層を備えてもよい。
本開示の一実施の形態による加飾部材は、
本開示の一実施の形態によるいずれかの加飾積層体と、
熱可塑性樹脂によって構成され前記加飾積層体に接合した成形部と、を備える。
本開示の一実施の形態による加飾システムは、
本開示の一実施の形態によるいずれかの加飾部材と、
前記加飾部材に対面する光源又は表示装置と、を備える。
本開示の一実施の形態による加飾システムにおいて、
前記樹脂層は前記加飾シートおよび前記成形部の間に位置してもよく、
前記積層方向において前記基材が、前記光源又は前記表示装置と、前記加飾層と、の間に位置してもよく、
前記基材の厚みは75μm以上500μm以下でもよい。
本開示の一実施の形態による加飾システムにおいて、
前記樹脂層は前記加飾シートおよび前記成形部の間に位置してもよく
前記積層方向において前記基材が前記光源又は前記表示装置と前記加飾層との間に位置してもよく、
前記基材の厚みは前記樹脂層の厚みよりも厚くてもよい。
本開示の一実施の形態による加飾部材の製造方法は、
本開示の一実施の形態によるいずれかの加飾積層体を型のキャビティ内に配置する工程と、
前記加飾積層体を収容したキャビティ内に加熱した熱可塑性樹脂を供給して、前記加飾積層体と前記加飾積層体に接合した成形部とを有する加飾部材を作製する工程と、を備える。
本開示の一実施の形態による加飾部材の製造方法は、
前記加飾積層体を予備成形して変形させる工程を更に備えてもよく、
予備成形された前記加飾積層体が前記キャビティ内に収容されてもよい。
本開示の一実施の形態による加飾部材の製造方法は、前記加飾シートと、前記加飾シートに重ねられた熱可塑性樹脂フィルムとを、加熱し及び互いに向けて加圧することにより、前記加飾積層体を作製する工程を更に備えてもよい。
本開示の一実施の形態による加飾部材の製造方法は、
前記加飾シートを作製する工程を更に備えてもよく、
前記加飾シートを作製する工程は、意匠を付与されたベース加飾層を前記基材上に形成する工程と、レーザー光を前記ベース加飾層に照射することによって、前記ベース加飾層を部分的に除去して前記開口部を形成する工程と、を有してもよい。
本開示の一実施の形態による加飾部材の製造方法において、
前記ベース加飾層を形成する工程は、前記基材上に可視光遮光性を有したベース遮光層を形成する工程と、前記ベース遮光層上に前記意匠を付与されたベース意匠層を形成する工程と、を含んでもよく、
前記開口部を形成する工程では、前記基材を透過したレーザー光が前記ベース遮光層に入射してもよい。
本開示の一実施の形態による加飾部材の製造方法において、前記基材のレーザー光の光線透過率は70%以上でもよい。
本発明によれば、成形加工時における加飾層の変形を抑制できる。
図1は、一実施の形態を説明する図であって、加飾システムの一例を概略的に示す斜視図である。 図2は、図1の加飾システムを正面から示す平面図であり、表示装置は非表示状態にある。 図3は、図1の加飾システムを正面から示す平面図であり、表示装置は表示状態にある。 図4は、図1の加飾システムを示す部分断面図であり、加飾システムに含まれる加飾部材及び表示装置の一例を示す図である。 図5は、図4に対応する断面図であって、表示装置の一変形例を示す図である。 図6は、図4及び図5の加飾部材に含まれる加飾シートの一例を正面から示す部分平面図である。 図7は、図4及び図5の加飾部材の製造に用いられる加飾積層体の一例を示す部分断面図である。 図8は、図7に示された加飾積層体の製造方法の一例を示す図である。 図9は、図7に示された加飾積層体の製造方法の一例を示す図である。 図10は、図7に示された加飾積層体の製造方法の一例を示す図である。 図11は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図12は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図13は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図14は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図15は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図16は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図17は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図18は、図4に示された加飾部材の製造方法の一例を示す図である。 図19は、図4に対応する断面図であって、加飾システム及び加飾部材の変形例を示す図である。 図20は、図4に対応する断面図であって、加飾システム、加飾部材および加飾シートの変形例を示す図である。 図21は、図4に対応する断面図であって、加飾システム、加飾部材および加飾シートの変形例を示す図である。 図22は、図4に対応する断面図であって、加飾システム、加飾部材および加飾シートの変形例を示す図である。 図23は、図4に対応する断面図であって、加飾システム、加飾部材および加飾シートの変形例を示す図である。 図24は、図4に対応する断面図であって、加飾システム、加飾部材および加飾シートの変形例を示す図である。 図25は、図4に対応する断面図であって、加飾システム、加飾部材および加飾シートの変形例を示す図である。 図26は、図4に対応する断面図であって、加飾システム、加飾部材および加飾シートの変形例を示す図である。 図27は、加飾システムの変形例を示す図である。 図28は、応力と当該応力を加えた場合の伸びとの関係を示すグラフである。
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
本明細書において、「シート」、「フィルム」及び「板」等の用語は、呼称の違いのみに基づいて互いから区別されない。例えば「加飾シート」は、加飾フィルム又は加飾板と呼ばれる部材等と呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により共通する方向を示している。矢印の先端側が、各方向の一側となる。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば図2に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印を、例えば図4に示すように、円の中に×を設けた記号により示した。
図1~図28は一実施の形態を説明する図である。図1は、加飾システムの一具体例を概略的に示す斜視図である。図1に示すように、加飾システム10は、表示装置20と、表示装置20に重ねられた加飾部材30と、を有している。
表示装置20は、表示状態において画像光を射出する。表示装置20は、表示状態において、観察者が観察可能な画像を表示面21に表示する。表示装置20は、非表示状態において画像を形成する画像光の射出を停止する。
加飾部材30は加飾シート40を含んでいる。加飾シート40は意匠を表示する。加飾部材30は、表示面21を覆うようにして配置されている。表示装置20が非表示状態にある場合、加飾部材30は、表示装置20の少なくとも表示面21を隠蔽する。この非表示状態において、加飾部材30は、図2に示すように、加飾シート40に設けられた意匠を表示する。表示装置20が表示状態にある場合、加飾部材30は、図3に示すように、表示装置20によって表示される画像の透過観察を可能にする。図3では、傘を表現したマークが表示されている。図2及び図3は、表示装置20及び加飾部材30が積層された積層方向から加飾システム10を示す平面図である。
本実施の形態には、加飾シート40が予定された意匠を表示可能にするための工夫がなされている。より具体的には、加飾シート40は、成形加工を施されることがある。加飾シート40は、樹脂層60と積層されて加飾積層体35を形成する。この加飾積層体35が成形加工を施された場合、樹脂層60によって加飾シート40の加飾層50を保護できる。これにより、加飾シート40の加飾層50が期待された意匠表現を行うことができる。
成形加工とは、所望の形状を実現する加工を意味する。例えば、成形加工は、加飾シート40や加飾積層体35に所望の形状を付与する。成形加工として、インサート成形が例示される。インサート成形では、加飾シート40や加飾積層体35を収容したキャビティ内に溶融した樹脂を供給し、加飾シート40や加飾積層体35に樹脂を接合して固めることによって、加飾シート40や加飾積層体35に所望の形状を付与する。成形加工は、インサート成形に限られることなく、真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ成形等でもよい。真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ成形等の成形加工では、加飾シート40や加飾積層体35を所望の形状に変形させる。また、成形加工には、熱ラミネートも含まれる。熱ラミネートは、加飾シート40や加飾積層体35を熱可塑性樹脂のシートに向けて加熱および加圧することによって、加飾シート40や加飾積層体35を含み且つ所望の厚みを有した積層物を作製する。
以下、図示された具体例を参照して一実施の形態を説明する。まず、加飾システム10を説明し、次に、加飾部材30の製造方法について説明する。
図1及び図4に示すように、加飾システム10は、表示装置20及び加飾部材30を有している。表示装置20は、表示面21を有している。加飾部材30は、表示面21を覆っている。加飾システム10は、加飾部材30によって意匠を表現することができる。この加飾部材30によれば、周囲環境と調和させながら表示装置20を設置できる。
図示された例において、表示面21は、平面視において、矩形形状を有している。矩形形状の表示面21は、第1方向D1及び第2方向D2に延びている。また、表示装置20及び加飾シート40は、表示面21への法線方向であって、第1方向D1及び第2方向D2の両方に垂直な第3方向D3に積層されている。すなわち、第3方向D3は積層方向となっている。
加飾システム10は、種々の用途に適用可能である。加飾システム10を、移動可能な装置としての移動体の内装や外装に適用してもよい。移動体として、自動車、船、飛行機等が例示される。一具体例として、加飾システム10は、自動車の内装や外装に適用されてもよい。加飾システム10は、建物の内装として、壁、扉、天井等に適用されてもよい。加飾システム10は、家具、家電製品等の各種装置に適用されてもよい。より具体的な例として、加飾システム10は机に適用されてもよい。加飾システム10は、冷蔵庫等の設備のケーシングに適用されてもよい。
加飾システム10に含まれる表示装置20は、図3に示された表示状態において、画像光を射出して表示面21に画像を表示する。表示装置20は、図2に示された非表示状態において、画像光の射出を停止する。表示装置20として、種々の装置を用いてもよい。
表示装置20は、ドットマトリックス方式の表示装置でもよい。ドットマトリックス方式の表示装置は、各ドットを形成する複数の画素を有している。この表示装置では、画素毎に発光状態を制御することによって、表示面21に所望の画像を表示できる。表示装置20は、静止画および動画を表示できる。このような表示装置20として、液晶表示装置や、EL表示装置とも呼ばれるエレクトロルミネッセンス表示装置等が例示される。図4に示された例において、表示装置20は、透過型の表示パネル22と、表示パネル22を背面から面状に照明する面光源装置23と、を含んでいる。透過型の表示パネル22として、液晶表示パネルが例示される。面光源装置23として、エッジライト型や直下型等の種々の装置を用いてもよい。
図5は、表示装置20の他の例を示している。図5に示された例において、表示装置20は、遮光パターン層(遮光パネル)24及び面光源装置23を有している。遮光パターン層24は、透過領域24a及び遮光領域24bを有している。遮光領域24bは、可視光遮光性を有している。遮光領域24bは、黒色顔料を含有した樹脂によって形成されてもよい。透過領域24aは、可視光遮光性のパネルに形成された開口部でもよい。透過領域24aは、透明な部分でもよい。平面視における透過領域24aのパターンは、表示装置20によって表示したい画像のパターンと同一となっている。遮光パターン層24は、表示面21を形成する。遮光パターン層24は、面光源装置23によって背面から面状に照明される。遮光パターン層24が面光源装置23によって照明されると、透過領域24aに対面する領域のみから画像光が射出する。これにより、透過領域24aに対応したパターンの画像を表示できる。
なお、本明細書で用いる「透明」とは、可視光透過率が、50%以上であることを意味し、好ましくは80%以上である。「可視光遮光性」とは、可視光透過率が、5%以下であることを意味し、好ましくは1%以下である。「透明な材料」とは、厚み50μmの層を形成した場合の当該層の可視光透過率が50%以上となる材料を意味し、好ましくは当該層の可視光透過率が80%以上なる材料のことである。例えば、「透明な熱可塑性樹脂材料」とは、厚み50μmの層を形成した場合の当該層の可視光透過率が50%以上となる熱可塑性樹脂材料を意味する。可視光透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定波長380nm以上780nm以下の範囲内で1nm毎に測定したときの、各波長における全光線透過率の平均値として特定される。
加飾部材30は、加飾積層体35と、加飾積層体35に接合した成形部70と、を有している。加飾積層体35は、加飾シートとして機能する加飾シート40と、加飾シート40に積層された樹脂層60と、を有する。上述したように、表示装置20が非表示状態にある場合、図3に示すように加飾部材30は意匠を表示する。表示装置20が表示状態にある場合、加飾部材30は、表示装置20からの画像光を透過する。観察者は、加飾部材30を介して、表示面21に形成される画像を観察できる。
表示画像の視認性の観点から、加飾部材30の第3方向D3への可視光透過率は、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。また、表示面21を隠蔽する観点から、加飾部材30の第3方向D3への可視光透過率は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。加飾部材30の第3方向D3への厚みは、加飾部材30の用途等に応じて適宜選択される。加飾部材30の第3方向D3への厚みは、1mm以上でもよく、2mm以上でもよい。加飾部材30の第3方向D3への厚みは、8mm以下でもよく、5mm以下でもよい。
加飾シート40は意匠を有し、加飾システム10に意匠性を付与する。また、加飾シート40は、表示装置20からの画像光が透過できるように構成されている。加飾シート40は、加飾部材30によって表現される意匠を表示する加飾層50と、加飾層50と積層された基材45と、を有している。第3方向D3からの観察において加飾層50が表示面21を覆うように、加飾シート40は表示装置20に重ねられる。この配置により、加飾層50は、表示面21を隠蔽し得る。画像光が透過できるように、加飾層50には開口部53が設けられている。
加飾シート40の第3方向D3への厚みは、加飾部材30の用途等に応じて適宜選択される。加飾シート40の第3方向D3への厚みは、75μm以上でもよく、100μm以上でもよい。加飾シート40の第3方向D3への厚みは、300μm以下でもよく、250μm以下でもよい。表示画像の視認性の観点から、加飾シート40の第3方向D3への可視光透過率は、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましく、10%以上であることが更に好ましい。また、表示面21を隠蔽する観点から、加飾シート40の第3方向D3への可視光透過率は、50%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましく、30%以下であることが更に好ましい。
基材45は加飾層50を支持する。基材45はシート状である。基材45は、加飾層50と第3方向D3に積層されている。図4に示された例において、基材45は、第3方向D3において加飾層50と表示装置20との間に位置している。基材45は透明であり、画像光は基材45を透過する。基材45として、樹脂製のフィルムを用いることができる。基材45の材料として、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状ポリオレフィン等が例示される。
基材45のガラス転移温度は、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましい。基材45のガラス転移温度は、200℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましく、120℃以下が更に好ましい。基材45の第3方向D3への厚みは、75μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、125μm以上が更に好ましい。基材45の第3方向D3への厚みは、500μm以下が好ましく、400μm以下がより好ましく、300μm以下が更に好ましい。
ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置(例えば、RSA3(TAインスツルメンツ社製)を用いて測定された値とする。測定条件として、サンプル幅5mm、チャック間距離20mm、周波数1Hz、昇温速度5℃/分とする。この条件で、貯蔵弾性率(E‘)及び損失弾性率(E’’)を測定する。温度を横軸とし、貯蔵弾性率(E‘)及び損失弾性率(E’’)から算出される損失正接(tanδ=E’’/E’)を縦軸としたグラフにて、損失正接(tanδ)のピークが生じる温度が、ガラス転移温度として特定される。ガラス転移温度は、複数の樹脂を混合して、その混合比を変えたり、樹脂の分子量を変えたりすることで調整され得る。
加飾層50には、意匠が形成されている。加飾層50は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として設けられてもよい。加飾層50は、背景を表示する意匠表現を行うこともできる。例えば、加飾システム10が設けられる周辺環境と加飾シート40を調和させることができる意匠として、木目調や大理石調の絵柄、金属調の質感、幾何学模様を、加飾層50が表示してもよい。加飾層50は、印刷によって形成されてもよい。加飾層50は、転写によっても形成されてもよい。加飾層50の厚みは、例えば、1μm以上50μm以下でもよい。
図4~図6に示すように、画像光の透過を可能とする開口部53が加飾層50に設けられている。加飾層50は、意匠を形成する加飾部51Aと、加飾部51Aの非形成部としての透過部51Bと、を含んでいる。加飾部51Aは、加飾層50のうちの開口部53が設けられていない領域によって形成されている。透過部51Bは、加飾層50のうちの開口部53が設けられている領域によって形成されている。加飾部51Aは、加飾層50が形成されている部分である。透過部51Bは、加飾シート40のうちの表示装置20からの画像光が透過する部分となる。透過部51Bは、高い可視光透過性を有している。
図6は、加飾シート40を示す部分平面図である。図6に示すように、平面視における加飾シート40は、加飾部51A及び透過部51Bに区分けされ得る。図示された例において、開口部53の位置、形状及び面積が、それぞれ、透過部51Bの位置、形状および面積を決めている。開口部53の平面視の形状は特に限定されない。例えば、開口部53の平面視形状として、円形状、楕円形状等の曲線輪郭を含んだ形状、三角形形状、四角形形状、五角形形状、六角形形状、八角形形状等の多角形形状、多角形形状の角を面取りした形状等が、例示される。ただし、光学特性の等方性を確保する上で、孔の平面視形状は円形状であることが好ましい。図6に示された例において、開口部53の平面視形状は円である。
平面視における加飾層50の面積に対する開口部53が占める面積の割合を、加飾層50の開口率と定義する。各開口部53の面積は、第3方向D3への投影において加飾層50を貫通している部分の面積とする。すなわち、第3方向D3の全厚みに亘って加飾層50を貫通している領域であって、第3方向D3に進む光が加飾部51Aに入射することなく加飾層50を通過し得る領域の面積を、各開口部53の面積とする。開口率の特定は、30個以上の開口部53を含む面積を有した領域を対象として実施する。加飾層50の開口率の下限値は、好ましくは、表示装置20が画像を表示している状態で十分明瞭に画像を観察し得るよう決定される。加飾層50の開口率は、好ましくは5%以上であり、より好ましくは10%以上であり、更に好ましくは15%以上である。加飾層50の開口率の上限値は、好ましくは、表示装置20が画像を表示していない状態で十分明瞭に加飾層50の意匠を観察し得るよう決定される。加飾層50の開口率は、好ましくは50%以下であり、より好ましくは45%以下であり、更に好ましくは40%以下である。
図4に示された加飾層50は、意匠を表示する意匠層55と、意匠層55と積層された遮光層58と、を含んでいる。意匠層55及び遮光層58は、第3方向D3に積層されている。遮光層58が、意匠層55よりも、第3方向D3における基材45側に位置している。つまり、遮光層58は、第3方向D3において意匠層55と基材45との間に位置する。
図4に示された例において、加飾部材30によって表現される意匠は意匠層55に形成されている。すなわち、意匠層55は上述したように絵柄を意匠として設けられてもよい。意匠層55は背景を表示する意匠表現を行ってもよい。例えば、意匠層55は、遮光層58上に印刷によって形成された印刷層でもよい。意匠層55は、遮光層58上に転写された転写層でもよい。
意匠層55は、バインダー樹脂部と、バインダー樹脂部に保持された色材と、を有してもよい。色材として、染料や顔料を用いてもよい。意匠層55のバインダー樹脂部の材料として、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。意匠層55の厚さは、例えば、0.5μm以上、50μm以下である。
遮光層58は、意匠層55の背面側に配置されている。遮光層58は、表示装置20から意匠層55を覆っている。遮光層58は、表示装置20からの画像光が意匠層55に入射しないよう、光を吸収する機能を有してもよい。すなわち、遮光層58は、可視光遮光性を有してもよい。遮光層58は、バインダー樹脂部と、バインダー樹脂部に保持された光吸収粒子と、を有してもよい。光吸収粒子としては、カーボンブラックやチタンブラック等の黒色顔料を例示することができる。
この例において、画像光は、開口部53を通過することで加飾シート40を透過する。すなわち、画像光は、加飾層50の透過部51Bを透過し、加飾層50の加飾部51Aで遮光される。これにより、表示装置20によって表示される画像の色変化を抑制できる。また、意匠層55によって形成される意匠を濃く明瞭に表示できる。
遮光層58のバインダー樹脂部の材料として、例えば、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-アクリル共重合体、塩素化ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂等が挙げられる。これらの材料は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。遮光層58の厚さは、例えば、1μm以上、20μm以下である。
樹脂層60は、第3方向D3に加飾シート40と積層されている。図4及び図5に示すように、樹脂層60は、加飾層50側から加飾シート40に積層されている。すなわち、加飾層50は、加飾シート40及び樹脂層60が積層された第3方向D3において、基材45と樹脂層60との間に位置する。樹脂層60は開口部53内にも設けられている。開口部53内に充填された樹脂層60は基材45に接触している。樹脂層60は基材45に接合していてもよい。
樹脂層60は、透明な熱可塑性樹脂材料によって構成されていてもよい。フィルム状の樹脂層60を加飾シート40に向けて加熱および加圧することによって、加飾積層体35を作製することができる。図7に点線で示すように、樹脂層60は、本体部61及び粘着層62を有してもよい。この例では、粘着層62によって、樹脂層60が加飾シート40に接合する。ただし、自己粘着性を有する材料、例えばポリプロピレンやポリエチレン等を用いて樹脂層60を作製する場合、粘着層62を省略できる。自己粘着性を有した樹脂層60は、単一のフィルム材として、加圧および加熱によって、加飾シート40に接合できる。
なお、本件明細書において「粘着」と「接着」は区別されない。また、「接合」は、「粘着」、「接着」、「溶着」等を含む。
樹脂層60及び本体部61を構成する材料として、例えば、塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等が例示される。粘着層62を構成する材料として、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等が例示される。
成形部70は、加飾積層体35に接合している。成形部70は、射出成形によって、加飾積層体35に接合した状態で作製される。図示された例において、樹脂層60は、第3方向D3において、加飾シート40及び成形部70の間に位置している。成形部70は透明な熱可塑性樹脂材料によって構成されている。図4に示された例において、成形部70は樹脂層60に接合している。成形部70を構成する材料は、射出成形に適した材料から選択されてもよい。成形部70の材料として、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)等が例示される。
図1に示された例において、加飾部材30は三次元形状を有している。より具体的には、加飾部材30は第1方向D1における両側において屈曲している。図示された例に限られず、加飾部材30は種々の形状を有することができる。図1に示された例において、成形部70は加飾部材30に沿って広がるシート状である。成形部70は、図示された例に限られず、加飾部材30とは無関係に延び出す部分、例えば加飾部材30を取り付けるための固定用爪等を有してもよい。
図示された加飾システム10の作用について説明する。
表示装置20が非表示状態にある状態では、図2に示すように、表示面21を覆う加飾シート40が観察される。図4に示された加飾システム10において、第3方向D3おいて、表示装置20と成形部70及び樹脂層60との間に加飾シート40が配置されている。観察者側からの順番で、成形部70、樹脂層60、加飾シート40及び表示装置20が配置されている。成形部70が、第3方向D3において、最も観察者側に位置している。観察者は、透明な成形部70及び透明な樹脂層60を介して加飾シート40の加飾層50を観察する。図示された例では、観察者は、加飾層50の意匠層55によって表示される意匠を観察する。加飾層50は、印刷等の豊かな表現力により、優れた意匠を形成している。加飾層50を用いた加飾シート40の意匠表現により、周囲環境との調和や統一性を確保しながら、表示装置20を設置することができる。昨今では表示装置20の適用範囲が急速に広がっており、加飾シート40を用いることによって、意匠性が重視される自動車の内装や外装、建物の内装、家具、家電製品等に表示装置20を適用できる。
表示装置20が表示状態にある状態では、表示面21から画像光が射出する。表示面21から射出した画像光は、加飾部材30を透過する。図3に示すように、加飾部材30を透過した画像光によって、観察者は、表示面21上に形成された画像を観察できる。図3に示された例において、傘を表現したマークが表示されている。
図4に示された例において、基材45が、第3方向D3において表示面21と加飾層50との間に位置している。この図示された具体例において、基材45の厚みは、500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、300μm以下であることが更に好ましい。観察者は、表示面21上に表示画像を観察し、加飾層50上に意匠を観察する。基材45の厚みの上限を設定することにより、基材45に対面して配置された表示装置20によって表示される画像を、第3方向D3において加飾層50の意匠と概ね同じ位置に表示できる。この場合、表示装置20の表示状態と非表示状態を切り替えた際に、表示装置20による表示画像と加飾層50による意匠とが違和感なく観察され得る。
加飾部材30は、加飾積層体35を収容したキャビティ内で射出成形することによって、製造され得る。言い換えると、加飾部材30は、加飾積層体35を用いたインサート成形によって、製造され得る。
図7は、加飾積層体35の具体例を示す縦断面図である。図7に示すように、加飾積層体35は、加飾シート40と、加飾シート40と積層された樹脂層60と、を有する。加飾積層体35の加飾シート40は、加飾部材30に含まれる加飾シート40である。加飾積層体35の樹脂層60は、加飾部材30に含まれる樹脂層60である。したがって、加飾積層体35の加飾シート40及び樹脂層60は、既に説明したとおりである。樹脂層60は、加飾シート40の加飾層50に設けられた開口部53に充填されている。
樹脂層60は、加飾シート40の加飾層50を保護する。射出成形時、加飾シート40は、溶融樹脂が射出されるキャビティ92内に配置される。また、加飾シート40は、後述するように、射出成形前に予備成形されることもある。予備成形では、射出成形のキャビティ形状に対応するよう、加飾シート40を塑性変形させる。予備成形として、真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ成形等が例示される。さらに、加飾シート40を機械加工した後に、射出成形が行われることも想定され得る。すなわち、加飾シート40は過酷な加工条件下に置かれ得る。一方、加飾シート40に含まれる加飾層50には開口部53が形成されている。加飾層50の厚みは、1μm以上50μm以下と薄くなっている。すなわち、加飾層50は意図しない局所的な変形を起こし易くなっている。そこで、樹脂層60が、加飾シート40に施積層され、加飾層50の開口部53内にまで充填されている。この樹脂層60によれば、射出成形等の加工中に、加飾層50は意図しない局所的な変形を抑制できる。
加飾シート40及び樹脂層60を含む加飾積層体35は、次のようにして製造され得る。
図7に示された加飾積層体35の加飾シート40は、一例として、図8及び図9に示されたレーザー技術を用いる方法にて製造され得る。この製造方法では、まず、基材45を形成するようになるフィルム材45Aを用意する。フィルム材45Aを構成する材料は、基材45に用いられ得る透明な上述の樹脂材料とすることができる。
フィルム材45A上に、遮光層58をなすようになる樹脂組成物を塗布する。遮光層58用の樹脂組成物は、遮光層58に用いられ得る上述の材料とすることができる。次に、フィルム材45A上の樹脂組成物を乾燥することによって、樹脂組成物を固化してなるベース遮光層58Aがフィルム材45Aに形成される。ベース遮光層58Aは、遮光層58と異なり、開口部53が形成されていない層である。その後、ベース遮光層58A上に印刷や転写等によってベース意匠層55Aを形成する。ベース意匠層55Aを構成する材料は、意匠層55に用いられ得る上述の樹脂材料とすることができる。ベース意匠層55Aは、意匠層55と異なり、開口部53が形成されていない層である。
以上の手順により、図8に示すように、フィルム材45A上にベース加飾層50Aを積層してなる中間積層体38が得られる。ベース加飾層50Aは、ベース遮光層58A及びベース意匠層55Aを含んでいる。
次に、ベース加飾層50Aに開口部53を形成する。一例として、図9に示すように、中間積層体38の開口部53を形成すべき位置に、レーザー照射装置80から射出したレーザー光を照射してもよい。レーザー光の照射領域におけるベース加飾層50Aが除去されることにより、ベース加飾層50Aに開口部53が形成される。開口部53を形成されたベース意匠層55Aから意匠層55が得られる。開口部53を形成されたベース遮光層58Aから遮光層58が得られる。このようにして、フィルム材45Aからなる基材45上に加飾層50を有した加飾シート40が得られる。
図9に示すように、中間積層体38にフィルム材45Aの側からレーザー光を照射してもよい。レーザー光は、フィルム材45Aを透過して、ベース遮光層58Aに吸収される。これにより、ベース遮光層58Aが溶融し、隣接するベース意匠層55Aとともに、蒸発する。ここで、ベース遮光層58Aのレーザー光の吸収率を、フィルム材45Aのレーザー光の吸収率より高く、ベース意匠層55Aのレーザー光の吸収率よりも高くしてもよい。これにより、所望の大きさの開口部53を高精度に作製できる。開口部53の形成に用いられるレーザー光の波長は、赤外域の1060nm以上1090nm以下としてもよい。1060nm以上1090nm以下の波長のレーザー光を射出する光源は、高出力化しやすい点において好ましい。そして、基材45の波長1060nm以上1090nm以下の光線透過率は、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。基材の光線透過率をこのように設定することにより、開口部53を基材へ熱ダメージを与えることなく、高効率かつ高精度にベース加飾層50Aに形成して、加飾層50を作製できる。
波長1060nm以上1090nm以下の光線透過率が70%以上とは、波長1060nm以上1090nm以下の1nmごとの波長にて測定したと各波長の光線透過率の平均が、70%以上となることを意味している。特定波長の光線についての光線透過率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて測定した値とする。
開口部53の形成は、レーザー技術の使用に代えて、フォトリソグラフィー技術を用いてもよい。
次に、加飾シート40上に樹脂層60を設ける。一例として、フィルム状の樹脂層60を、加飾シート40に向けて加熱加圧し、加飾シート40に接合してもよい。図10に示された例において、第1ロール81及び第2ロール82の間に、加飾シート40及び樹脂層60が搬送される。第1ロール81及び第2ロール82は、例えば内蔵された図示しない加熱装置によって、加熱されている。第1ロール81及び第2ロール82は、加飾シート40及び樹脂層60を互いに向けて押す。第1ロール81及び第2ロール82の間を通過する際、樹脂層60は、加熱されながら加飾シート40に向けて押され、加飾シート40に溶着する。
図示された例において、樹脂層60は、加飾層50側から加飾シート40に接合する。そして、加熱された樹脂層60は、加飾層50の開口部53内に流動する。結果として、樹脂層60は開口部53内に充填され、加飾シート40及び樹脂層60の密着性が向上する。
上述したように、画像の観察および意匠の観察を切り替えた際の違和感を抑制するため、基材45の厚みに上限を設定することが好ましい。加飾シート40を作製する際の取り扱い性を考慮した場合にも、基材45の厚みに上述の上限を設定することが好ましい。一方、加飾シート40の破断等の損傷を抑制する観点から、上述したように、基材45の厚みを75μm以上とすることが好ましく、100μm以上とすることがより好ましく、125μm以上とすることが更に好ましい。加飾積層体35を作製する際に、基材45上に部分的に形成された加飾層50の空隙を埋める形で、樹脂層60との貼り合わせを実施する。そのプロセスにおいて、基材45よりも樹脂層60の方が軟化することが好ましい。基材45と樹脂層60が同じ素材の場合は、基材45の厚みを樹脂層60の厚みよりも厚くすることが好ましい。
加飾シート40及び樹脂層60を互いに向けて加熱加圧する際、樹脂層60が加飾層50の開口部53内に安定して充填されるよう、樹脂層60の厚みは、基材45の厚みよりも薄いことが好ましい。樹脂層60の厚みを基材45の厚みよりも薄くすることによって、樹脂層60が基材45よりも変形し易くなり、樹脂層60が加飾層50の開口部53内に流入しやすくなる。基材45の厚みを樹脂層60の厚みをよりも厚くすることによって、基材45上に加飾層50が安定して支持され、加飾層50の変形を抑制できる。これにより、樹脂層60の開口部53内への流入が安定して促進される。
加飾積層体35は、インサート成形に先立ち又はインサート成形に代えて、真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ加工等の成形加工によって変形させられ得る。これらの成形加工は、加飾積層体35を加熱加圧した状態にて、実施され得る。成形加工時に、加飾積層体35の破断を回避するため、加飾積層体35がある程度の厚みを持つことが好ましい。具体的には、加飾積層体35の厚みを200μm以上とすることが好ましく、250μm以上とすることがより好ましく、300μm以上とすることが更に好ましい。加飾積層体35を巻き取りが困難になる点から、加飾積層体35の厚みを500μm以下とすることが好ましく、450μm以下とすることがより好ましく、400μm以下とすることが更に好ましい。
以上に説明した加飾積層体35を用いて、加飾部材30を次のように製造できる。なお、以上の説明において、加飾積層体35の作製まではロール・トゥ・ロールにより、複数の加飾積層体35が分離されていない長尺のシート状物として製造されている。以下の説明では、加飾積層体35を用いて枚葉の加飾部材30が製造される。これらの例と異なり、加飾積層体35が枚葉で作製されてもよい。複数の加飾部材30を分離することなく同時または連続して作製してもよい。
以下に説明する例では、図11~図14に示すように加飾積層体35をインサート成形前に予備成形している。予備成形によって加飾積層体35は塑性変形する。予備成形後の加飾積層体35は、目的とする加飾部材30の形状に近い形状を有する。図11~図14に示された例において、予備成形として真空成形が実施されている。ただし、この例に限られず、予備成形として、圧空成形やTOM成形等の種々の成形加工を採用してもよい。また、切削等の機械加工を加飾積層体35に対して行ってもよい。さらには、予備成形を行うことなく、インサート成形を行ってもよい。またインサート成形において、成形部70を成形するとともに、加飾積層体35を変形させてもよい。
なお、本件明細書で用いるインサート成形とは、加飾積層体等の被接合物をキャビティ内に収容して行う射出成形を意味する。インサート成形によれば、射出樹脂と被接合物が一体化した製品を作製できる。このインサート成形において、被接合物を変形させてもよい。インモールド成形は、インサート成形から区別されず、本明細書のインサート成形に含まれる。
図示された加飾積層体35の真空成形では、図11に示すように、加飾積層体35を真空成形装置85のヒーター86により加熱して軟化させる。加飾積層体35は真空成形装置85の金型87の近傍に配置されている。次に、図12に示すように、その加飾積層体35を金型87に設けられた多数の微小の孔(図示省略)から真空吸引することにより、加飾積層体35を金型87の形状に合わせた形状に成形する。すなわち、加飾積層体35の形状は金型87に沿った形状となる。その後、加飾積層体35の温度を低下させ、加飾積層体35を成形後の形状で固化させる。次に、図13に示すように、加飾積層体35を金型87から取り出す。その後、図14に示すように、金型87から取り出された加飾積層体35から不要な部分を除去する。
次に、予備成形された加飾積層体35を用いて加飾部材30を製造する。まず、図15に示すように、射出成形装置90を準備する。射出成形装置90は、成形型91を有している。成形型91は、第1型91A及び第2型91Bを含んでいる。第1型91A及び第2型91Bは、図15に示すように互いから離れることができ、図16に示すように互いに接近できる。図16に示すように、第1型91A及び第2型91Bが互いに接触した閉型状態において、第1型91A及び第2型91Bの間にキャビティ92が形成される。成形型91は、キャビティ92に通じるゲート93を有している。ゲート93は、図示しない射出樹脂71の供給装置に接続している。ゲート93を通じてキャビティ92内に、射出樹脂71が供給される。第1型91A及び第2型91Bは、図示しないヒーターによって加熱され、高温に維持されている。
図16に示すように、成形型91内のキャビティ92に加飾積層体35を収容する。図示された例において、加飾シート40が第2型91Bに接触し、樹脂層60がキャビティ92内に露出するようにして、加飾積層体35はキャビティ92内に配置される。次に図15に示すように、溶融した射出樹脂71が、ゲート93を介して、キャビティ92内に射出される。射出樹脂71は、キャビティ92内で冷却され、加飾積層体35に溶着して固化する。固化した射出樹脂71から、加飾積層体35の樹脂層60に接合した成形部70が得られる。
成形部70を構成する射出樹脂71として、好ましくは、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)又はこれらの共重合体が用いられる。さらに好ましくは、ポリカーボネート樹脂又はポリメタクリル酸メチルが射出樹脂71として用いられる。ポリカーボネート樹脂又はポリメタクリル酸メチルは、開口部53を適切に埋める流動性を有している。一例として、温度300℃、荷重1.2kgfの条件で測定したメルトボリュームフローレイト(MVR:Melt Volume-Flow Rate)が6cm/10min以上、好ましくは10cm/10min以上、より好ましくは14cm/10min以上であり、40cm/10min以下、好ましくは30cm/min以下のポリカーボネート樹脂を、射出樹脂71として用いてもよい。温度230℃、荷重3.8kgfの条件で測定したメルトマスフローレート(MFR:Melt Mass-Flow Rate)が0.5g/10min以上、好ましくは1.0g/10min以上、より好ましくは1.5g/10min以上であり、25g/10min以下のポリメタクリル酸メチルを、射出樹脂71として用いてもよい。
その後、図18に示すように、第1型91A及び第2型91Bが互いから離間し、加飾積層体35及び成形部70を含む加飾部材30が、キャビティ92から取り出される。以上のようにして、加飾シート40、樹脂層60及び成形部70を有する加飾部材30が得られる。
上述のように、射出成形時、加飾積層体35を収容した成形型91のキャビティ92内に、溶融した射出樹脂71が射出される。したがって、加飾積層体35は、密閉されたキャビティ92内において、射出樹脂71の熱および圧力を受ける。その一方で、加飾シート40の加飾層50は、意匠を付与された加飾部51Aと、加飾部51Aに隣接する開口部53としての透過部51Bと、を含んでいる。透過部51Bに隣接する加飾部51Aは、透過部51Bに倒れ込むように変形し易くなっている。この現象を、本明細書では柄流れと呼ぶ。柄流れが生じて、透過部51Bに隣接する領域において加飾部51Aが局所的に変形すると、加飾層50は期待された意匠表現を実施できない。したがって、柄流れは、加飾部材30において致命的な欠陥となり得る。
これに対して本実施の形態によれば、加飾積層体35は、加飾シート40に積層された樹脂層60を有している。加飾層50は、加飾シート40及び樹脂層60が積層された第3方向D3において基材45と樹脂層60との間に位置している。したがって、インサート成形時、キャビティ92に射出される溶融した射出樹脂71が直接加飾層50への接触することを抑制して、加飾層50の変形を抑制できる。とりわけ、樹脂層60は加飾層50に形成された開口部53内に充填されているので、加飾層50の変形を効果的に抑制できる。これにより、射出樹脂71の熱及び圧力によって、加飾層50が開口部53に移動する柄流れを抑制できる。結果として、インサート成形によって得られた加飾部材30が期待された意匠を表現できる。
なお、柄流れは、インサート成形に限られず、種々の成形加工、とりわけ加熱された加飾シート40に外力が負荷される成形加工において、生じ得る。具体的には、100℃以上の温度で加熱された状態で、圧力等の外力が付加される、インサート成形、真空成形、TOM成形、圧空成形、曲げ成形等の変形をともなう成形加工、熱ラミネートなどがあげられる。加飾層50の開口部53に充填された樹脂層60を設けることによれば、インサート成形以外の成形加工時に生じ得る柄流れを抑制し得る。
柄流れを抑制する観点から、樹脂層60には、インサート成形等の柄流れが生じ得る成形加工時の状況を考慮した耐熱性が求められる。この点について、本件発明者等の検討結果によれば、樹脂層60を構成する樹脂材料のガラス転移温度および粘着層62を構成する樹脂材料のガラス転移温度は、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。さらに、本体部61を構成する樹脂材料のガラス転移温度および粘着層62を構成する樹脂材料のガラス転移温度の両方が、60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。樹脂層60のガラス転移温度に下限を設けることによって、インサート成形時に樹脂層60が軟化し過ぎることを抑制できる。これにより、インサート成形時における樹脂層60の流動にともなった柄流れを抑制できる。
融点の高いポリカーボネートを射出樹脂71に用いた場合、射出成形時のキャビティ92内の温度が高温となる。したがって、ポリカーボネートによって構成された成形部70との組合せにおいて、樹脂層60を構成する樹脂材料のガラス転移温度および粘着層62を構成する樹脂材料のガラス転移温度は80℃以上であることが好ましい。さらに、本体部61を構成する樹脂材料のガラス転移温度および粘着層62を構成する樹脂材料のガラス転移温度の両方が、80℃以上であることが好ましい。ポリカーボネートを射出樹脂71によって構成された成形部70と接合する樹脂層60として、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成された樹脂層60が好ましく、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂又はポリカーボネートを用いることが更に好ましい。
インサート成形時、加飾シート40もキャビティ92内に配置される。したがって、加飾層50を支持する基材45も、インサート成形時の状況を考慮した耐熱性を有することが好ましい。柄流れを抑制する観点から、基材45を構成する樹脂材料のガラス転移温度は、80℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましく、100℃以上であることが更に好ましい。基材45のガラス転移温度に下限を設けることによって、インサート成形時に基材45が軟化し過ぎることを抑制できる。これにより、インサート成形時における基材45の流動にともなった柄流れを抑制できる。
柄流れを抑制する観点から、加飾層50の開口部53内に樹脂層60が精度良く埋められていることが好ましい。図10に示すように樹脂層60が加熱加圧された状態で加飾シート40に積層される場合、このような積層工程の状況を考慮した流動性を樹脂層60に付与することが好ましい。具体的には、樹脂層60を構成する樹脂材料のガラス転移温度は、165℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが更に好ましい。さらに、本体部61を構成する樹脂材料のガラス転移温度および粘着層62を構成する樹脂材料のガラス転移温度の両方が、160℃以下であることが好ましく、130℃以下であることがより好ましく、110℃以下であることが更に好ましい。このように樹脂層60のガラス転移温度に上限を設けることによって、樹脂層60を加飾シート40に加熱加圧下で積層する際、樹脂層60の流動性を確保できる。したがって、加飾層50の開口部53に樹脂層60を精度良く充填でき、樹脂層60によってインサート成形時における加飾部51Aの移動に起因した柄流れを抑制できる。また、樹脂層60のガラス転移温度に上限を設けることによって、インサート成形時に樹脂層60と成形部70との密着性を確保できる。
上述したガラス転移温度の好ましい範囲から、基材45の材料として、塩化ビニルを用いることが好ましい。基材45の材料として、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)又はポリカーボネートを用いることがより好ましく、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂を用いることが更に好ましい。
上述したガラス転移温度の好ましい範囲から、樹脂層60の材料として、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、塩化ビニル及びABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)を用いることが特に好ましい。アクリル樹脂、塩化ビニル及びABSは自己粘着性を有していないので、樹脂層60の本体部61として用いることができる。
また、樹脂層60を構成する熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度は、基材45を構成する樹脂材料のガラス転移温度以下であることが好ましく、基材45を構成する樹脂材料のガラス転移温度未満であることがより好ましい。この場合、樹脂層60を加飾層50側から加飾シート40に積層する際、樹脂層60が基材45よりも高い流動性を有する。したがって、加飾層50の加飾部51Aを支持する基材45の変形を抑制しつつ、樹脂層60を開口部53内に流動させることができる。すなわち、積層時に生じ得る柄流れを抑制しながら、加飾層50の開口部53内に樹脂層60を精度良く埋めることができる。
この観点から、樹脂層60がポリカーボネートによって構成されている場合、基材45はポリカーボネートによって構成されていることが好ましい。
樹脂層60がポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂によって構成されている場合、基材45はポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂によって構成されていることが好ましく、基材45はポリカーボネートによって構成されていることがより好ましい。
樹脂層60がABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されている場合、基材45はABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されていることが好ましい。樹脂層60がABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されている場合、基材45はポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂又はポリカーボネートによって構成されていることがより好ましい。
樹脂層60が塩化ビニルによって構成されている場合、基材45は塩化ビニルによって構成されていることが好ましい。樹脂層60が塩化ビニルによって構成されている場合、基材45はポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、又はABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されていることがより好ましい。
加飾積層体35は、予備成形時やインサート成形等の成形加工時に、高い成形性を要求される。その一方で、加飾シート40及び樹脂層60を積層して加熱加圧することによって、加飾層50の開口部53に樹脂層60を充填する際、加飾シート40の軟化を抑制する必要がある。これらの観点から、基材45は、100℃雰囲気で実施される引張試験において、100%以上伸びることが好ましい。そして、100℃雰囲気での引張試験において幅25mmのサンプルに100%の伸びが生じた際にサンプルに加えられている引っ張り力を、高温100%引っ張り力と定義すると、基材45の厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力は、4N以上であることが好ましく、20N以上であることがより好ましい。基材45の厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力は、150N以下であることが好ましく、120N以下であることがより好ましく、80N以下であることが更に好ましい。
高温100%引っ張り力(N)の好ましい範囲から、基材45の材料として、塩化ビニル、ポリカーボネートを用いることが好ましく、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂を用いることが更に好ましい。
同様に、樹脂層60は、100℃雰囲気で実施される引張試験において、100%以上伸びることが好ましい。樹脂層60の厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力は、2N以上であることが好ましく、4N以上であることがより好ましく、10N以上であることが更に好ましい。樹脂層60の厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力は、100N以下であることが好ましく、50N以下であることが更に好ましい。
高温100%引っ張り力(N)の好ましい範囲から、樹脂層60の材料として、塩化ビニル及びポリカーボネートを用いることが好ましい。樹脂層60の材料として、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)又はポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂を用いることがより好ましい。塩化ビニル、ABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)、アクリル樹脂又はポリカーボネートは自己粘着性を有していないので、樹脂層60の本体部61として用いることができる。
また、樹脂層60の厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力は、基材45の厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力以下であることが好ましく、基材45の厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力未満であることがより好ましい。
この観点から、樹脂層60がポリカーボネートによって構成されている場合、基材45はポリカーボネートによって構成されていることが好ましい。
樹脂層60がポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂によって構成されている場合、基材45はポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂によって構成されていることが好ましく、基材45はポリカーボネートによって構成されていることがより好ましい。
樹脂層60がABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されている場合、基材45はABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されていることが好ましい。樹脂層60がABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されている場合、基材45はポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、又はポリカーボネートによって構成されていることがより好ましい。
樹脂層60が塩化ビニルによって構成されている場合、基材45は塩化ビニルによって構成されていることが好ましい。樹脂層60が塩化ビニルによって構成されている場合、基材45はポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、又はABS(アクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体)によって構成されていることがより好ましい。
伸び(%)は、サンプルの伸びを生じさせる部分の引っ張り力を加える方向に沿った元の長さに対する、引っ張り力を加えられた方向にサンプルが伸びた長さの割合である。したがって、100%の伸びが生じると、サンプルの計測対象となる幅25mmの部分の長さは、引っ張り力を加える前と比較して引っ張り力を加えた後に、2倍となる。厚み100μmあたりの引っ張り力とは、実際にサンプルに加えられた引っ張り力を、サンプルの厚みを100μmにあたりに換算した値のことである。サンプルに加えた引っ張り力がF(N)であり、引っ張り力を加えられたサンプルの厚みがt(μm)である場合、厚み100μmあたりの引っ張り力(N)は、「F/(t/100)」となる。
厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力は、加熱された温度雰囲気での変形のしやすさの指標となる。したがって、厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力によって、射出成形や予備成形等の高温での成形加工時における変形し易さを評価できる。厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力が低いほど、変形し易い。厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力に上限を設定することで、成形性を付与できる。厚み100μmあたりの高温100%引っ張り力に下限を設定することで、高温時における安定性を付与できる。
基材45及び樹脂層60の高温100%引っ張り力を上述のように設定することによって、加飾シート40に樹脂層60を積層する際に、基材45が変形し過ぎることを抑制し、樹脂層60に十分な流動性を付与できる。これにより、加飾シート40に樹脂層60を積層する際に、加飾層50の移動を抑制できる。また、加飾層50の開口部53内に樹脂層60を安定して充填できる。これらにより、加飾シート40に樹脂層60を積層する際、加飾層50の開口部53内に樹脂層60で隙間無く埋めることができ、且つ、積層作業中における柄流れを抑制できる。
基材45及び樹脂層60の高温100%引っ張り力を上述のように設定することによって、インサート成形等の過酷な条件となる成形加工や、大きな変形をともなう成形加工を行う際に、樹脂層60が優れた成形性を有する。また、基材45が、十分な成形性を有しつつ、加飾層50を安定して支持できる。これらにより、成形加工時における柄流れを抑制できる。
高温100%引っ張り力は、移動型の恒温槽付きのテンシロン万能材料試験機(RTF-1350:株式会社エー・アンド・デイ社製)を用いて測定された値とする。幅25mm、長さ約150mmのサンプルを、チャック間距離100mmで保持する。チャックに保持されたサンプルが恒温槽内に位置するよう、恒温槽を配置する。恒温槽の内部温度は100℃に維持する。恒温槽内でサンプルを60秒間加熱した後、一対のチャックの相対移動を開始する。具体的には、第1のチャックを静止させ、第2のチャックを1000mm/minの移動速度で移動させる。一対のチャックを相対移動させている間、チャックに保持されたサンプルは恒温槽で加熱され続ける。サンプルの伸び(%)が100mmになった際の、引っ張り力の値を、高温100%引っ張り力(N)とする。
上述した方法により、高温100%引っ張り力(N)を測定した結果の一例について説明する。図28は、サンプルA~Iについての100℃雰囲気での引張試験の結果を示すグラフである。図28に示されたグラフにおいて、縦軸はサンプルに加えられている引っ張り力(N)を示し、横軸はサンプルの伸び(%)を示している。サンプルA~Iについて、サンプルの厚み(μm)、サンプルの材料名、高温100%引っ張り力(N)の測定結果、上述した方法で測定したガラス転移温度(℃)を、表1に示す。サンプルA及びBの材料はポリカーボネートであった。サンプルC及びDの材料はポリメタクリル酸メチルであった。サンプルEの材料はアクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体であった。サンプルF及びGの材料は塩化ビニルであった。サンプルIの高温100%引っ張り力(N)は、500Nより大きかった。サンプルIのガラス転移温度は、250℃より大きかった。
Figure 2023138039000002
樹脂層60の第3方向D3に沿った厚みは、50μm以上であることが好ましく、75μm以上であることがより好ましい。樹脂層60の第3方向D3に沿った厚みは、250以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましい。樹脂層60の厚みを一定以上に確保することによって、インサート成形時に射出樹脂71の熱や圧力から加飾層50を樹脂層60によって安定して保護できる。また、一定以上の厚みを有する樹脂層60によって、加飾層50を保護し且つ加飾層50の柄流れを十分に抑制できる。樹脂層60の厚みを一定以下に制限することによって、インサート成形時や予備成形時に樹脂層60に十分な成形性を付与できる。例えば、加飾層50の開口部53に樹脂層60を精度良く充填できる。樹脂層60を加飾シート40に加熱加圧下で安定して接合できる。さらに、樹脂層60の厚みに上限を設けることによって、加飾積層体35の製造時等における搬送等の取り扱い性を向上できる。
以上に説明してきた一実施の形態において、加飾積層体35は、意匠を表示する加飾シート40と、加飾シート40に粘着した樹脂層60と、を有している。加飾シート40は、意匠を表示する加飾層50と、加飾層50と積層された基材45と、を有している。加飾層50は、加飾シート40及び樹脂層60が積層された積層方向D3において基材45と樹脂層60との間に位置する。加飾層50に開口部53が設けられ、開口部53に樹脂層60が充填されている。樹脂層60は、透明な熱可塑性樹脂材料によって構成されている。また、上述の一実施の形態において、加飾部材30の製造方法は、この加飾積層体35を成形型91のキャビティ92内に配置する工程と、加飾積層体35を収容したキャビティ92内に加熱した射出樹脂71を供給して、加飾積層体35と加飾積層体35に接合した成形部70とを有する加飾部材30を作製する工程と、を含む。この一実施の形態によれば、インサート成形時、キャビティ92に射出される溶融した射出樹脂71が直接加飾層50へ接触することを抑制できる。また、加飾層50に設けられた開口部53内には、樹脂層60が充填されている。したがって、射出樹脂71の熱及び圧力によって、加飾層50が開口部53内にずれ込むといった柄流れも抑制できる。結果として、インサート成形によって得られた加飾部材30が期待された意匠を表現できる。
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用い、重複する説明を省略する。
上述した具体例において、加飾部材30が加飾積層体35及び成形部70を有している。図19に示すように、加飾部材30が、加飾積層体35及び成形部70に加えて更なる層を有してもよい。図19に示された例によれば、加飾部材30は、加飾積層体35及び成形部70と積層された機能層65を更に有している。機能層65は、種々の機能を期待されて設けられる層である。種々の機能としては、ハードコート機能、反射防止機能、防眩機能、帯電防止機能、防汚機能等が例示される。図示された例において、機能層65は加飾システム10の最表面層として機能する。この機能層65は、対擦傷性等を有したハードコート層としてもよい。ハードコート層としての機能層65は、一例として、転写によって形成され得る。
上述した具体例において、加飾部材30の加飾積層体35が、第3方向D3において、成形部70と表示装置20との間に位置している。すなわち、第3方向D3において、加飾積層体35が表示装置20側を向き、成形部70が観察者側を向いている。図20に示すように、加飾部材30が第3方向D3において逆向きに配置されてもよい。すなわち、加飾部材30の成形部70が、第3方向D3において、加飾積層体35と表示装置20との間に位置してもよい。第3方向D3において、成形部70が表示装置20側を向き、加飾積層体35が観察者側を向いてもよい。図20に示された加飾積層体35では、加飾層50が第3方向D3において基材45及び樹脂層60の間に位置している。加飾シート40は、基材45が観察者側に位置し、加飾層50が表示装置20側に位置するよう、配置されている。図20に示された加飾シート40では、意匠層55及び遮光層58が、この順番で基材45に積層されている。遮光層58は、第3方向D3において意匠層55を表示装置20側から覆っている。観察者は、基材45越しに加飾層50の意匠を観察する。
上述した具体例において、成形部70は、加飾シート40から離間して樹脂層60に接合している。すなわち、樹脂層60が、第3方向D3において加飾シート40及び成形部70の間に位置している。この例に限られず、図21及び図22に示すように、成形部70は、樹脂層60及び加飾層50から離間して、加飾シート40の基材45に接合してもよい。すなわち、加飾層50が第3方向D3において樹脂層60及び基材45の間に位置し、且つ、加飾シート40が第3方向D3において樹脂層60及び成形部70の間に位置してもよい。
上述した例において、加飾シート40は基材45と加飾層50とを有している。図24に示すように、加飾シート40が、基材45と加飾層50との間に配置された透明なヒートシール層48を更に有してもよい。ヒートシール層48は、開口部53に対面する位置にも設けられており、樹脂層60と接合している。ヒートシール層48は、加飾シート40と樹脂層60との密着性を改善する。
上述した具体例において、加飾システム10が表示装置20を有している。表示装置20は、一例として、遮光パターン層(遮光パネル)24及び面光源装置23を有していた。表示装置20は、面光源装置23に代えて、遮光パターン層24の透過領域24a及びその周囲に光を投射する光源25でもよい。この光源は、面光源装置でもよいし、発光ダイオード等の発光体でもよい。
図25及び図26に示すように、加飾部材30が遮光パターン層24を含んでもよい。加飾積層体35が遮光パターン層24を含んでもよい。加飾シート40が遮光パターン層24を含んでもよい。これらの例において、図25及び図26に示すように、加飾システム10は、加飾部材30と、加飾部材30に対面する光源25と、を含んでもよい。図25及び図26に示された例において、遮光パターン層24は、基材45上に設けられている。図25に示された例において、遮光パターン層24は、第3方向D3において、光源25と基材45との間に位置している。図26に示された例において、遮光パターン層24は、第3方向D3において、基材45と成形部70との間に位置している。例えば、顔料等の色素を含んだ樹脂組成物をフィルム材45A又は基材45上に塗布して塗膜を作製し、塗膜を乾燥又は硬化させることによって、遮光パターン24の遮光領域24bを形成できる。図25及び図29に示された加飾システム10によっても、加飾部材30、加飾積層体35及び加飾シート40は、画像を形成する画像光を透過して、画像の透過観察を可能にする。
図25及び図26に示された例において、遮光パターン層24が基材45上に形成され、射出成型により成形部70を設ける際に、射出樹脂71が基材45に直接触れる場合は、基材45のガラス転移温度が高いことが好ましい。基材45のガラス転移温度が低いと、射出樹脂71に触れた際の温度と圧力により、基材45に歪み・変形が発生し、遮光パターン層24の端部に歪み・変形が発生し、表示が不明瞭になるおそれがある。この点から、基材45のガラス転移温度は120℃以上でもよい。基材45の材料は、ポリカーボネートでもよい。これらの例によれば、加飾部材30は、射出成形等の成形加工時における熱や圧力による遮光パターン層24の変形を抑制できる。
上述した具体例において、加飾部材30が表示装置20又は光源25に対面して配置される例を示したが、この例に限られない。図27に示すように、加飾積層体35が表示装置20に対面して配置されてもよい。例えば、加飾積層体35が、真空成形、圧空成形、TOM成形、曲げ加工等の変形をともなう成形加工を施されて、表示装置20に対面して配置されてもよい。上述したように、樹脂層60が加飾シート40積層され、樹脂層60は加飾層50の開口部53内に充填されている。したがって、加飾シート40を成形加工した際に、加飾層50が樹脂層60によって保護され、加飾層50の柄流れを抑制できる。これにより、この加飾システム10においても、加飾積層体35が期待された意匠を表示できる。
なお、以上において上述した具体例に対するいくつかの変形例を説明してきたが、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
以下、実施例を用いて上述した一実施の形態示をより詳細に説明するが、上述した一実施の形態は以下の実施例に限定されない。
サンプル1~16に係る加飾部材を作製した。サンプル1~16に係る加飾部材は、まず加飾積層体を作製し、次に加飾積層体を真空成形により予備成形し、その後予備成形した加飾積層体を用いてインサート成形を行うことにより、製造した。加飾積層体は、まず加飾シートを作製し、次に加飾シートに樹脂層を熱ラミネーションすることによって、作製した。
加飾シートは、図8及び図9を参照して説明した方法によって作製した。サンプル1~16の間で、共通する加飾層を作製した。加飾層の厚みは約5μmとした。
加飾積層体は、図10を参照して説明した方法にしたがって、加飾シート及び樹脂層を加熱加圧よる熱ラミネーションすることにより作製した。樹脂層は、加飾層の開口部内にも充填した。
真空成形による予備成形は、図11~図14を参照して説明した方法により、加飾積層体を変形させた。真空成形では、図1に示すように、加飾積層体の両端部分を折り曲げた形状に真空成形した。サンプル1~16の間で、真空成形後の形状は同様とした。
インサート成形は、図15~図18を参照して説明した方法により、予備成形された加飾積層体を収容したキャビティ内に溶融樹脂を供給することによって、実施した。
サンプル1~16の間で、加飾シートに含まれる基材の材料および基材の厚みを変更した。サンプル1~16の間で、加飾積層体に含まれる樹脂層の材料および樹脂層の厚みを変更した。サンプル1~16に用いた基材の材料、基材の厚み(μm)、樹脂層の材料、及び、樹脂層の厚み(μm)を表2~4に示す。表2~4中における「PC」はポリカーボネートであり、「アクリル」はアクリル樹脂であり、「ABS」はアクリロニトリル ブタジエン スチレン共重合体である。
<評価1-1:加飾シート及び樹脂層の積層時における開口部充填>
加飾シート及び樹脂層の積層時に、加飾層の開口部に樹脂層を充填できたか否かについて評価した。評価結果を表2~4の評価1-1の欄に示す。サンプル1~16のいずれについても、加熱量や加圧量等の加工条件を調整することによって、加飾層の開口部に樹脂層を充填できた。ただし、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さは、サンプル1~16の間で異なった。表2~4の評価1-1の欄に記載された「A」の文字数は、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さの程度を示している。加工がしやすかったサンプル、加工を安定して実施できたサンプル、適用可能な加工条件の選択範囲が広かったサンプルについて、「A」の数がより多くなっている。
サンプル10では、樹脂層のガラス転移温度(℃)が高いことから、他のサンプルと比較して、樹脂層が加飾層の開口部内に流れにくくなった。サンプル16では、樹脂層のガラス転移温度(℃)が基材のガラス転移温度(℃)よりも大幅に低かったことから、熱ラミネーションに用いたロール(図11の第1ロール81)へ樹脂層が局所的に張り付くことがあった。ただし、加熱量および加圧量を調整することによって、樹脂層を加飾層の開口部に充填しながら加飾シート及び樹脂層を積層できた。
サンプル12~14では、樹脂層のガラス転移温度(℃)と基材のガラス転移温度(℃)との差がやや大きかったが、熱ラミネーションに用いたロール(図11の第2ロール82)への樹脂層の付着を回避できた。サンプル12~14では、安定して樹脂層を加飾層の開口部に充填しながら加飾シート及び樹脂層を積層できた。サンプル1~7及び11でも、安定して樹脂層を加飾層の開口部に充填しながら加飾シート及び樹脂層を問題無く積層できた。サンプル1~7及び11~14では、サンプル10や16と比較してより安定して樹脂層を加飾層の開口部に充填しながら加飾シート及び樹脂層を問題無く積層できた。
サンプル8,9及び15では、最も安定して樹脂層を加飾層の開口部に充填しながら加飾シート及び樹脂層を問題無く積層できた。
<評価1-2:加飾シート及び樹脂層の積層時における樹脂層の劣化>
加飾シート及び樹脂層の積層時における樹脂層の劣化について評価した。評価結果を表2~4の評価1-2の欄に示す。サンプル1~16のいずれについても、加熱量や加圧量等の加工条件を調整することによって、樹脂層が破れることを回避しながら樹脂層を加飾層の開口部に充填できた。ただし、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さは、サンプル1~16の間で異なった。表2~4の評価1-2の欄に記載された「A」の文字数は、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さの程度を示している。加工がしやすかったサンプル、加工を安定して実施できたサンプル、適用可能な加工条件の選択範囲が広かったサンプルについて、「A」の数がより多くなっている。
サンプル6では、樹脂層の厚みが厚いことから樹脂層が軟化しにくくなった。ただし、加熱量および加圧量を調整することによって、樹脂層を加飾層の開口部に充填しながら加飾シート及び樹脂層を積層できた。サンプル1及び14では、樹脂層の厚みが薄いことから、加飾シートに積層された樹脂層の表面に凹凸が生じた。ただし、加熱量、加圧量、加工速度を調整することによって、樹脂層が破れることを回避しながら樹脂層を加飾層の開口部に充填して、加飾シート及び樹脂層を積層できた。また、樹脂層表面の凹凸は、インサート成形後に目立たなくなった。
サンプル5では、樹脂層の厚みが厚いことから、いくらか加熱量及び加圧量を高めに設定したが、脂層を加飾層の開口部に充填しながら加飾シート及び樹脂層を積層できた。このとき、樹脂層が破れる等の不具合は生じなかった。サンプル2,13及び16では、樹脂層の厚みが薄いことから、加飾シートに積層された樹脂層の表面にわずかな凹凸が生じた。
サンプル3,4,7~12及び15において、加飾部材に積層された樹脂層の表面に凹凸は全く生じなかった。
<評価2:真空成形>
加飾積層体の真空成形時における加工性について評価した。評価結果を表2~4の評価2の欄に示す。サンプル1~16のいずれについても、加熱量等の加工条件を調整することによって、加飾積層体を真空成形により変形できた。ただし、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さは、サンプル1~16の間で異なった。表2~4の評価2の欄に記載された「A」の文字数は、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さの程度を示している。加工がしやすかったサンプル、加工を安定して実施できたサンプル、適用可能な加工条件の選択範囲が広かったサンプルについて、「A」の数がより多くなっている。
サンプル16では、樹脂層のガラス転移温度が低く、樹脂層の耐熱性が低かった。樹脂層の破れを防止するため、加工温度や加工速度を調整する必要が生じた。
サンプル1及び2では、加飾積層体の全体厚みが薄かった。このため、加飾積層体の破れを防止するため、いくらか加工速度を低下させて真空成形した。
サンプル3~7では、加工温度を高温とすることなく、加飾積層体を問題無く成形できた。サンプル9~11では、基材の耐熱性が高く、加飾積層体を問題無く成形できた。
サンプル8,12~15について、樹脂層が優れた成形性を有しており、加飾積層体を安定して所望の形状に成形できた。
<評価3:インサート成形>
加飾積層体のインサート成形時における加工性について評価した。評価結果を表2~4の評価3の欄に示す。サンプル1~16のいずれについても、加熱量や加圧量等の加工条件を調整することによって、樹脂層が破れることを回避しながらインサート成形により加飾積層体に成形部を接合できた。ただし、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さは、サンプル1~16の間で異なった。表2~4の評価3の欄に記載された「A」の文字数は、加工のしやすさ、加工の安定性、適用可能な加工条件の選択範囲の広さの程度を示している。加工がしやすかったサンプル、加工を安定して実施できたサンプル、適用可能な加工条件の選択範囲が広かったサンプルについて、「A」の数がより多くなっている。
サンプル16では、樹脂層のガラス転移温度が低く、樹脂層の耐熱性が低かった。樹脂層の破れを防止するため、加工温度、溶融樹脂の供給速度、加工圧力を調整する必要が生じた。
サンプル1及び2では、樹脂層の厚みが薄く、加飾積層体の全体厚みが薄かった。このため、加飾積層体の破れを防止するため、いくらか加工圧を低下させる必要があった。サンプル12~15では、樹脂層の耐熱性が低いことから、樹脂層が流動し易くなった。樹脂層の流動性を抑制するため、いくらか加工圧や加工温度を低下させる必要があった。
サンプル3~8では、問題なくインサート成形を行うことができた。
サンプル9~11では、基材の耐熱性が高く、安定してインサート成形できた。
Figure 2023138039000003
Figure 2023138039000004
Figure 2023138039000005
10:加飾システム、20:表示装置、21:表示面、22:表示パネル、23:面光源装置、24:遮光パターン層(遮光パネル)、24a:透過領域、24b:遮光領域、30:加飾部材、35:加飾積層体、38:中間積層体、40:加飾シート、45:基材、45A:フィルム材、48:ヒートシール層、50:加飾層、50A:ベース加飾層、51A:加飾部、51B:透過部、53:開口部、55:意匠層、55A:ベース意匠層、58:遮光層、58A:ベース遮光層、60:樹脂層、61:本体部、62:粘着層、65:機能層、70:成形部、71:射出樹脂、80:レーザー照射装置、81:第1ロール、82:第2ロール、85:真空成形装置、86:ヒーター、87:金型、90:射出成形装置、91:成形型、91A:第1型、91B:第2型、92:キャビティ、93:ゲート、D1:第1方向、D2:第2方向、D3:第3方向

Claims (20)

  1. 成形加工を施される加飾積層体であって、
    意匠を表示する加飾層と、前記加飾層と積層された基材と、前記加飾層と積層された樹脂層と、を備え、
    前記加飾層は、前記基材と前記樹脂層との間に位置し、
    前記加飾層に開口部が設けられ、前記開口部に前記樹脂層が充填され、
    前記樹脂層は、透明な熱可塑性樹脂材料を含む、加飾積層体。
  2. 前記樹脂層を構成する前記熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度は165℃以下である、請求項1に記載の加飾積層体。
  3. 前記樹脂層を構成する前記熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度は60℃以上である、請求項1又は2に記載の加飾積層体。
  4. 前記樹脂層の厚みは50μm以上250μm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の加飾積層体。
  5. 前記樹脂層を構成する熱可塑性樹脂材料のガラス転移温度は、前記基材を構成する樹脂材料のガラス転移温度以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の加飾積層体。
  6. 前記基材は透明な材料によって構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の加飾積層体。
  7. 可視光透過率は5%以上50%以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の加飾積層体。
  8. 100℃雰囲気での引張試験において幅25mmの前記樹脂層に100%の伸びが生じた際の引っ張り力は、当該樹脂層の厚み100μmあたり2N以上150N以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載の加飾積層体。
  9. 前記加飾層は、前記意匠を表示する意匠層と、前記意匠層と積層されて前記意匠層と前記基材との間に位置する遮光層と、を含み、
    前記基材の波長1060nm以上1090nm以下の光線透過率は70%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の加飾積層体。
  10. 透過領域及び遮光領域を含み前記加飾層と積層された遮光パターン層を備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の加飾積層体。
  11. 請求項1~10のいずれか一項に記載された加飾積層体と、
    熱可塑性樹脂によって構成され前記加飾積層体に接合した成形部と、を備える、加飾部材。
  12. 請求項11に記載された前記加飾部材と、
    前記加飾部材に対面する光源又は表示装置と、を備える、加飾システム。
  13. 前記樹脂層は前記基材および前記加飾層と、前記成形部と、の間に位置し、
    前記基材が、前記光源又は前記表示装置と、前記加飾層と、の間に位置し、
    前記基材の厚みは75μm以上500μm以下である、請求項12に記載の加飾システム。
  14. 前記樹脂層は前記基材および前記加飾層と前記成形部との間に位置し、
    前記基材が前記光源又は前記表示装置と前記加飾層との間に位置し、
    前記基材の厚みは前記樹脂層の厚みよりも厚い、請求項12又は13に記載の加飾システム。
  15. 請求項1~9のいずれか一項に記載された加飾積層体を型のキャビティ内に配置する工程と、
    前記加飾積層体を収容したキャビティ内に加熱した熱可塑性樹脂を供給して、前記加飾積層体と前記加飾積層体に接合した成形部とを有する加飾部材を作製する工程と、を備える、加飾部材の製造方法。
  16. 前記加飾積層体を予備成形して変形させる工程を更に備え、
    予備成形された前記加飾積層体が前記キャビティ内に収容される、請求項15に記載の加飾部材の製造方法。
  17. 前記基材および前記加飾層を含む加飾シートと、前記加飾シートに重ねられた熱可塑性樹脂フィルムとを、加熱し及び互いに向けて加圧することにより、前記加飾積層体を作製する工程を更に備える、請求項15又は16に記載の加飾部材の製造方法。
  18. 前記基材および前記加飾層を含む加飾シートを作製する工程を更に備え、
    前記加飾シートを作製する工程は、意匠を付与されたベース加飾層を前記基材上に形成する工程と、レーザー光を前記ベース加飾層に照射することによって、前記ベース加飾層を部分的に除去して前記開口部を形成する工程と、を有する、請求項15~17のいずれか一項に記載の加飾部材の製造方法。
  19. 前記ベース加飾層を形成する工程は、基材上に可視光遮光性を有したベース遮光層を形成する工程と、前記ベース遮光層上に前記意匠を付与されたベース意匠層を形成する工程と、を含み、
    前記開口部を形成する工程では、前記基材を透過したレーザー光が前記ベース遮光層に入射する、請求項18に記載の加飾部材の製造方法。
  20. 前記基材のレーザー光の光線透過率は70%以上である、請求項19に記載の加飾部材の製造方法。
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