JP2023137643A - 電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法 - Google Patents

電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法 Download PDF

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秀亮 岡
Hideaki Oka
伸典 松原
Shinsuke Matsubara
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Abstract

【課題】高充放電効率と高入出力とを両立することができる電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法を提供する。【解決手段】本開示の電極は、蓄電デバイスに用いられる電極であって、黒鉛を含む炭素材料を電極活物質として含有し、未充電の電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が50mF/g以上であり、60℃、0.01Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が150mF/g以下を示す。【選択図】図1

Description

本明細書では、電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法を開示する。
従来、例えば、蓄電デバイスとしてのリチウムイオン二次電池を車載利用する際には、燃費向上のための高入出力特性、短時間で充電するための急速充電特性、および走行距離と車載性に影響するエネルギー密度の高いものが求められる。リチウムイオン二次電池の負極活物質としては、黒鉛粒子が用いられることが多い。黒鉛は、リチウム基準電位において0.1Vと低い電位でリチウムイオンを挿入、脱離することから、高い電池電圧を得ることが可能である。負極として用いられる黒鉛は、鉱山から産出、精製された天然黒鉛とコークスを黒鉛化した人造黒鉛に大別される。一般的に、例えば非特許文献1などに示されるように、人造黒鉛の方が耐久性がよいが、黒鉛化を伴うため製造工程の煩雑化が課題であった。一方、天然黒鉛は、黒鉛化工程などは不要であるが、エッジ面の活性が高すぎることに起因した充放電効率低下の課題があった。つまり、高性能な電池を実現するためには、黒鉛を活物質として含む電極の入出力とエネルギー密度とを両立する課題があった。天然黒鉛負極の充放電効率を向上させるために、様々な技術が提案されている。黒鉛粒子表面を非晶質炭素コートで被覆するものや(例えば特許文献1、2など参照)、球形化度を制御するもの(特許文献3)、ヘテロ元素をドープしたもの(特許文献4)、Si-O-C結合を粒子表面に有するもの(特許文献5)などの技術が報告されている。また、キャパシタンスを制御した黒鉛負極を用いることでハイレート充放電特性が向上することが報告されている(例えば特許文献6など参照)。
特開2019-19048号公報 特開2017-10651号公報 特開2019-175852号公報 特開2016-213204号公報 特開2020-64876号公報 特開2015-53116号公報
J. Electrochem. Soc., 164, A3545-3555 (2017)
しかしながら、特許文献1~5に代表される改良を施された天然黒鉛を用いて充放電効率を向上させることは可能であるが、一方で背反として入出力特性が低下することが多かった。特に、非晶質炭素を表面にコートすることにより、黒鉛粒子の比表面積を低下させることで黒鉛表面での被膜生成量を低減させた場合、リチウム挿入、脱離反応に寄与する表面も減少する課題があった。このように、充放電効率と入出力特性を両立させた、蓄電デバイス用の電極が必要とされていた。なお、特許文献6では、キャパシタンス値を負極における塗工ムラなどの形態的な不良に影響されるとしているが、黒鉛粒子の表面構造に関しては検討していなかった。
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、高充放電効率と高入出力を両立することができる電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法を提供することを主目的とする。
上述した目的を達成するために鋭意研究したところ、本発明者らは、より適切な処理によって黒鉛表面に非晶質炭素を被覆すると、高充放電効率と高入出力を両立する電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法を提供することができることを見いだし、本明細書で開示する発明を完成するに至った。
即ち、本開示の電極は、
蓄電デバイスに用いられる電極であって、
黒鉛を含む炭素材料を電極活物質として含有し、未充電の前記電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が50mF/g以上であり、60℃、0.01Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が150mF/g以下を示すものである。
あるいは、本開示の電極は、
蓄電デバイスに用いられる電極であって、
黒鉛を含む炭素材料を電極活物質として含有し、前記炭素材料は、熱重量測定において、空気中、2℃/分で昇温した際の600℃における質量減少率が10質量%以上であり、かつ700℃における質量減少率が70質量%以下を示すものである。
本開示の蓄電デバイスは、上述したいずれかの電極を備えたものである。
本開示の電極の製造方法は、
上述したいずれかの電極の製造方法であって、
マルチパーパスミキサによって黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆し所定の熱処理を行うことによって前記炭素材料を得る被覆工程と、
前記炭素材料を用いて電極を作製する電極化工程と、
を含むものである。
本開示は、高充放電効率と高入出力とを両立した電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。非晶質炭素を適切に表面に被覆させると、黒鉛の比表面積を低下させることで黒鉛表面での被膜生成量を低減させる一方、リチウム挿入、脱離反応に寄与する表面の減少を抑制し、充放電効率と入出力特性とを両立させることができる。充電の電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’は、その温度や周波数に応じて電極の特性を表す指標の一つとして利用可能である。このキャパシタンスが所定範囲内にあると、充放電効率と入出力特性とが両立した電極とすることができる。また、電極活物質としての炭素材料の熱重量分析の質量減少率は、酸素との反応性の関係に関連し、電極活物質の表面特性を表す指標の一つとして利用可能である。この熱重量分析の質量減少率が所定範囲内にあると、充放電効率と入出力特性とが両立した電極とすることができる。
蓄電デバイス20の一例を示す模式図。 実験例1~11の熱処理の一例を示す温度プロファイル。 実験例1、3、5、7、11の炭素材料の熱重量測定結果。 実験例1、3、5、7の-30℃でのキャパシタンス評価結果。 実験例1、3、5、7の60℃でのキャパシタンス評価結果。 実験例1~11の抵抗相対値Rctに対する初回充放電効率との関係図。 -30℃、60℃でのキャパシタンス実数値C’の関係図。 熱重量分析の600℃、700℃での質量減少率の関係図。
[蓄電デバイス用電極]
本開示の蓄電デバイス用の電極は、黒鉛を含む炭素材料を電極活物質として含有している。この蓄電デバイスは、この電極がキャリアイオンを挿入脱離する電極活物質を含有していることから、例えば、アルカリ金属イオン二次電池、ハイブリッドキャパシタ、空気電池などの蓄電デバイスに利用することができる。また、この蓄電デバイス用電極は、キャリアイオンをアルカリ金属イオン、第2族イオンなどとする蓄電デバイスに用いることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオンや、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどが挙げられ、このうちリチウムイオンがより好ましい。第2族イオンとしては、例えば、マグネシウムイオンや、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどが挙げられる。この蓄電デバイス用電極は、電極活物質の電位に対して対極の電位に基づいて正極又は負極のいずれかとなるが、リチウムをキャリアとする場合、負極とすることが好ましい。ここでは、リチウムイオン二次電池を主として説明する。
この電極において、炭素材料は、黒鉛の表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆されているものとしてもよい。また、黒鉛を被覆している非晶質炭素は、加熱処理によりその一部又は全部が結晶化しているものとしてもよい。即ち、黒鉛は、非晶質炭素に起因する炭素質でその表面の少なくとも一部が被覆されているものとしてもよい。この電極では、非晶質炭素の被覆によって、被膜の生成や反応性の好適化を図ることができる。
黒鉛としては、例えば、鱗状黒鉛や鱗片状黒鉛などの天然黒鉛、人造黒鉛などが挙げられる。また、黒鉛は、機械的な形状制御を施されたものとしてもよく、例えば、黒鉛粒子の角をとったり、球形となるように丸めたり、粉砕されたものであってもよい。このような形状制御により、選択的配向を抑制し、キャリアイオンの挿入、脱離の阻害を抑制することができると考えられる。黒鉛は、形状制御を施していても施していなくてもよい天然黒鉛であることが好ましい。天然黒鉛は、一般的に、黒鉛化の処理が必要な人造黒鉛よりも処理工程を簡略化でき安価だからである。また、天然黒鉛は、エッジ面の活性が高いことがあるため、非晶質炭素などで被覆しエッジ面の活性を調整することが好ましい。黒鉛粒子は、鱗片状天然黒鉛及び球形化天然黒鉛のうちの1以上としてもよい。
非晶質炭素は、黒鉛粒子の表面全体を均一に覆っているものであることが好ましい。この炭素材料では、よりばらつきの少ない材料とすることができ、電極容量をより適切に制御できると考えられる。この非晶質炭素被覆の厚さは特に限定されないが、例えば、10nm以上200nm以下の範囲であることが好ましく、20nm以上150nm以下の範囲であることがより好ましい。この範囲では、キャリアイオンの挿入、脱離が行いやすく、また比表面積を適切な値に制御することができる。非晶質炭素は、その原料や製法が特に限定されるものではないが、例えば、石炭系又は石油系のピッチ・タール類(ピッチ、タール、タールピッチ、重質油(例えばアスファルト)など)を炭化したものとしてもよい。また、熱硬化性樹脂(レゾール型フェノール樹脂やフラン樹脂など)、熱可塑性樹脂(ノボラック型フェノール樹脂やポリアクリロニトリル(PAN)樹脂など)、などの樹脂類を炭化したものとしてもよい。この非晶質炭素被覆は、非晶質炭素のほかに非晶質炭素の原料の残留物を含んでいてもよい。また、この非晶質炭素被覆は、結晶性の部分を含んでいてもよい。
この炭素材料は、黒鉛と非晶質炭素との全体に対して5質量%未満、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3.5質量%以下の非晶質炭素を含むことが好ましい。また、炭素材料は、黒鉛と非晶質炭素との全体に対して1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、更に好ましくは3質量%以上の非晶質炭素を含むことが好ましい。なお、この炭素材料は、電極活物質として機能するものをいい、例えば、黒鉛を含まない、導電材や結着材としての炭素質を含まないものである。
この電極は、未充電の当該電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が50mF/g以上であり、60℃、0.01Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が150mF/g以下を示すものとしてもよい。このキャパシタンスの実測値C’は、炭素材料を含む電極と蓄電デバイスのイオン伝導媒体との界面に形成される電気二重層容量を反映するものと推察される。この実測値C’が高いほど界面の電気二重層容量が大きくなり、反応活性点となる黒鉛のエッジ割合が高いことを示唆するものと推察される。このキャパシタンスの実測値C’は、1Hzを超えると電気二重層が形成されず、1Hzを下回るとファラデー電流が重畳する影響により、キャパシタンスの評価精度が低下する。-30℃、1Hzにおける実数値C’が50mF/g以上の電極とすることによって、反応抵抗を低減し、蓄電デバイスの入出力特性をより向上することができる。また、60℃、0.01Hzにおける実数値C’が150mF/g以下では、このキャパシタンスの実測値C’は、電極と蓄電デバイスのイオン伝導媒体との界面での副反応の起点となるファラデー反応量を反映するものと推察される。この実数値C’が低いほど界面での副反応を抑制することができることを示唆するものと推察される。この実数値C’が150mF/g以下の電極とすることで、初回充放電効率を低減する副反応を抑制し、蓄電デバイスのエネルギー密度をより高めることが可能となるものと推察される。
未充電の当該電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける上記実数値C’は、より高いことが好ましく、53.0mF/g以上がより好ましく、56.3mF/g以上が更に好ましい。この実数値C’は、100mF/g以下としてもよい。また、キャパシタンスの実数値C’において、60℃、0.01Hzにおける上記実数値C’は、より低いことが好ましく、121.4mF/g以下がより好ましく、118.6mF/g以下が更に好ましい。この実数値C’は、10mF/g以上としてもよい。このような範囲では、充放電効率と入出力特性とを更に両立した良好な電極とすることができる。
電極の物性値を示すキャパシタンスを求めるインピーダンス測定は以下のように行うものとする。上述した炭素材料を含有した電極を、セパレータを介して対向させ、対称セルを作製する。また、各電極間に、例えば、蓄電デバイスに用いられるイオン伝導媒体を介在させる。イオン伝導媒体は、カーボネート系溶媒にLiを含む支持塩を溶解させた非水系電解液とする。60℃および-30℃にてインピーダンス測定器を用い、インピーダンス測定を実施したあと、得られたインピーダンススペクトルより以下の数式(1)を用いてキャパシタンスの実数値C’を算出する。電極合材の目付量を用い、-30℃、1Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’、および60℃、0.01Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’を算出した。
Figure 2023137643000002
本開示の電極において、炭素材料は、熱重量測定において、空気中、2℃/分で昇温した際の600℃における質量減少率が10質量%以上であり、かつ700℃における質量減少率が70質量%以下を示すものとしてもよい。また、炭素材料は、この熱重量測定で得られる600℃における質量減少率が11.8質量%以上を示すことが好ましく、かつ700℃における質量減少率が762.1質量%以下を示すことが好ましい。熱重量分析による質量減少率は、炭素材料の表面で反応起点となるエッジ面の量及び質の情報を反映するものと推測される。この熱重量分析において、500~600℃の低温領域では、結晶性が低いほどキャリアイオンの挿入、脱離活性点が多いと考えられる。一方、700℃における質量減少率が高い場合、燃焼反応起点となるエッジ面が過度に多いことから、初回充放電効率が低下するものと推察される。なお、初回充放電効率が低下する要因としては、過度な被膜の生成などが挙げられる。
この炭素材料は、レーザー回折法で測定したメディアン径D50が1μm以上100μm以下であるものとしてもよく、3μm以上30μm以下であるものとしてもよく、5μm以上25μm以下であるものとしてもよい。また、この炭素材料は、真比重が1.5~2.3であるものとしてもよく、2.0~2.3であるものとしてもよい。
本開示の電極は、上述の炭素材料を電極活物質とし、電極活物質と集電体とを密着させて形成したものとしてもよい。あるいは、この電極は、炭素材料の電極活物質と結着材と必要に応じて導電材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の電極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。結着材は、活物質粒子及び導電材粒子を繋ぎ止める役割を果たすものであり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、或いはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、スルホン化EPDMゴム、天然ブチルゴム(NBR)等を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。また、水系バインダーであるセルロース系やスチレンブタジエンゴム(SBR)の水分散体等を用いることもできる。電極活物質、導電材、結着材を分散させる溶剤としては、例えばN-メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いることができる。また、水に分散剤、増粘剤等を加え、SBRなどのラテックスで活物質をスラリー化してもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロースなどの多糖類を単独で、あるいは2種以上の混合物として用いることができる。塗布方法としては、例えば、アプリケータロールなどのローラコーティング、スクリーンコーティング、ドクターブレイド方式、スピンコーティング、バーコータなどが挙げられ、これらのいずれかを用いて任意の厚さ・形状とすることができる。導電材は、電極の電池性能に悪影響を及ぼさない電子伝導性材料であれば特に限定されず、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンウィスカ、ニードルコークス、炭素繊維、金属(銅、ニッケル、アルミニウム、銀、金など)などの1種又は2種以上を混合したものを用いることができる。これらの中で、導電材としては、電子伝導性及び塗工性の観点より、カーボンブラック及びアセチレンブラックが好ましい。集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金などのほか、接着性、導電性及び耐還元性向上の目的で、例えば銅などの表面をカーボン、ニッケル、チタンや銀などで処理したものも用いることができる。これらについては、表面を酸化処理することも可能である。集電体の形状については、箔状、フィルム状、シート状、ネット状、パンチ又はエキスパンドされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の形成体などが挙げられる。集電体の厚さは、例えば1~500μmのものが用いられる。この電極は、例えば蓄電デバイスの正極や負極に用いることができ、リチウムイオン二次電池の負極に用いることが好ましい。
(蓄電デバイス)
本開示の蓄電デバイスは、上述したいずれかの電極を備えたものである。この蓄電デバイスは、上述した炭素材料を活物質として含む電極と、キャリアイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えたものである。この蓄電デバイスは、炭素材料を活物質として含む電極を負極とするリチウムイオン二次電池としてもよい。即ち、この蓄電デバイスは、リチウムイオンを吸蔵、放出する正極活物質を有する正極と、リチウムイオンを吸蔵、放出する上述した炭素材料を負極活物質として有する負極と、正極と負極との間に介在しリチウムイオンを伝導するイオン伝導媒体と、を備えているものとしてもよい。
正極は、例えば正極活物質と導電材と結着材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の正極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成してもよい。正極活物質としては、遷移金属元素を含む硫化物や、リチウムと遷移金属元素とを含む酸化物などを用いることができる。具体的には、TiS2、TiS3、MoS3、FeS2などの遷移金属硫化物、基本組成式をLi(1-x)MnO2(0<x<1など、以下同じ)や、Li(1-x)Mn24などとするリチウムマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)CoO2などとするリチウムコバルト複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiO2などとするリチウムニッケル複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaMnb2(a+b=1)やLi(1-x)NiaMnb4(a+b=2)などとするリチウムニッケルマンガン複合酸化物、基本組成式をLi(1-x)NiaCobMnc2(a+b+c=1)などとするリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、LiV23などのリチウムバナジウム複合酸化物、V25などの遷移金属酸化物などを用いることができる。また、基本組成式をLi(1-x)MnPO4などとするオリビン型リチウムリン酸マンガン系化合物、基本組成式をLi(1-x)CoPO4などとするオリビン型リチウムリン酸コバルト系化合物、基本組成式をLi(1-x)NiPO4などとするオリビン型リチウムリン酸ニッケル系化合物などを用いることができる。また、基本組成式をLi(1-x)MnVO4などとする逆スピネル型リチウムバナジン酸マンガン系化合物、基本組成式をLi(1-x)CoPO4などとする逆スピネル型リチウムバナジン酸コバルト系化合物、基本組成式をLi(1-x)NiPO4などとする逆スピネル型リチウムバナジン酸ニッケル系化合物などを用いることができる。正極活物質は、ニッケル、マンガン、コバルトのうちの1以上を含む酸化物であることが好ましく、例えば、LiCoO2、LiNiO2、LiMnO2、LiNi1/3Co1/3Mn1/32などが好ましい。なお、「基本組成式」とは、他の元素を含んでもよい趣旨である。正極に用いられる結着材、導電材、集電体などは、上記電極で説明したものを適宜用いるものとすればよい。
蓄電デバイスのイオン伝導媒体としては、支持塩を含む非水系電解液や非水系ゲル電解液などを用いることができる。非水電解液の溶媒としては、カーボネート類、エステル類、エーテル類、ニトリル類、フラン類、スルホラン類及びジオキソラン類などが挙げられ、これらを単独又は混合して用いることができる。具体的には、カーボネート類としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネートなどの環状カーボネート類や、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチル-n-ブチルカーボネート、メチル-t-ブチルカーボネート、ジ-i-プロピルカーボネート、t-ブチル-i-プロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート類、γ-ブチルラクトン、γ-バレロラクトンなどの環状エステル類、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酪酸メチルなどの鎖状エステル類、ジメトキシエタン、エトキシメトキシエタン、ジエトキシエタンなどのエーテル類、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル類、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、などのフラン類、スルホラン、テトラメチルスルホランなどのスルホラン類、1,3-ジオキソラン、メチルジオキソランなどのジオキソラン類などが挙げられる。このうち、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との組み合わせが好ましい。この組み合わせによると、充放電の繰り返しでの電池特性を表すサイクル特性が優れているばかりでなく、電解液の粘度、得られる電池の電気容量、電池出力などをバランスの取れたものとすることができる。なお、環状カーボネート類は、比誘電率が比較的高く、電解液の誘電率を高めていると考えられ、鎖状カーボネート類は、電解液の粘度を抑えていると考えられる。
支持塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiSbF6、LiSiF6、LiAlF4、LiSCN、LiClO4、LiCl、LiF、LiBr、LiI、LiAlCl4などが挙げられる。このうち、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4などの無機塩、及びLiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23などの有機塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上の塩を組み合わせて用いることが電気特性の点から見て好ましい。この支持塩は、非水電解液中の濃度が0.1mol/L以上5mol/L以下であることが好ましく、0.5mol/L以上2mol/L以下であることがより好ましい。支持塩を溶解する濃度が0.1mol/L以上では、十分な電流密度を得ることができ、5mol/L以下では、電解液をより安定させることができる。また、この非水電解液には、リン系、ハロゲン系などの難燃剤を添加してもよい。
また、液状のイオン伝導媒体の代わりに、固体のイオン伝導性ポリマーをイオン伝導媒体として用いることもできる。イオン伝導性ポリマーとしては、例えば、アクリロニトリル、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、ビニルピロリドン、フッ化ビニリデンなどのポリマーと支持塩とで構成されるポリマーゲルを用いることができる。更に、イオン伝導性ポリマーと非水系電解液とを組み合わせて用いることもできる。また、イオン伝導媒体としては、イオン伝導性ポリマーのほか、無機固体電解質あるいは有機ポリマー電解質と無機固体電解質の混合材料、若しくは有機バインダーによって結着された無機固体粉末などを利用することができる。
この蓄電デバイスは、負極と正極との間にセパレータを備えていてもよい。セパレータとしては、蓄電デバイスの使用範囲に耐えうる組成であれば特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン製不織布やポリフェニレンスルフィド製不織布などの高分子不織布、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の薄い微多孔膜が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数を混合して用いてもよい。
この蓄電デバイスは、初回充放電効率(%)がより高い方が好ましく、82.5%以上が好ましく、85.0%以上がより好ましく、86.0%以上が更に好ましい。この充放電効率が高いほど、高エネルギー密度を有するものとすることができる。この初回充放電効率は、未充電状態の蓄電デバイスに対し、0.1C相当の電流値で4.1V~3.0Vの範囲でのコンディショニング充放電を実施し、その初回の充電容量及び放電容量から算出するものとする。また、この蓄電デバイスは、非晶質炭素による被覆を行っていない黒鉛を負極活物質として用いた場合の電極の反応抵抗Rct(Ω)を100(%)とした場合のRct相対率(%)がより低いことが好ましく、120%以下が好ましく、より好ましくは110%以下であり、更に好ましくは100%以下である。この電極の反応抵抗値は、上記炭素材料を含む1対の電極を対向させた対称セルを作製し、上記コンディショニング充放電を行ったのち、-30℃にて振幅電圧5mV、主波数範囲105~0.002Hzの範囲の測定を行うものとする。そして、得られたインピーダンススペクトルの円弧部分を抵抗RとキャパシタンスCとの並列回路を用いてフィッティングすることで反応抵抗値Rct(Ω)を算出するものとする。
この蓄電デバイスの形状は、特に限定されないが、例えばコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型などが挙げられる。また、電気自動車等に用いる大型のものなどに適用してもよい。図1は、本開示の蓄電デバイス20の一例を示す模式図である。この蓄電デバイス20は、カップ形状の電池ケース21と、正極活物質を有しこの電池ケース21の下部に設けられた正極22と、負極活物質を有し正極22に対してセパレータ24を介して対向する位置に設けられた負極23と、絶縁材により形成されたガスケット25と、電池ケース21の開口部に配設されガスケット25を介して電池ケース21を密封する封口板26と、を備えている。このリチウム二次電池20は、正極22と負極23との間の空間にイオン伝導媒体27が満たされている。この負極23は、上述した炭素材料を負極活物質として含んでいる電極である。
[電極の製造方法]
本開示の電極の製造方法は、上述した電極の製造方法である。この製造方法は、被覆工程と、電極化工程とを含む。被覆工程では、マルチパーパスミキサによって黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆し、所定の熱処理を行うことによって炭素材料を得る。炭素材料が得られる条件は、原料の黒鉛や非晶質炭素の材質や形状、寸法に応じて経験的に定めることができる。この工程では、まず、原料としての黒鉛と非晶質炭素とを含む混合原料を調合し、マルチパーパスミキサによって混合粉体を得る。原料としては、上述の炭素材料で説明した黒鉛や非晶質炭素のいずれかを用いることができる。黒鉛原料は天然黒鉛が好ましく、被覆原料はコールタールピッチが好ましい。また、黒鉛と非晶質炭素との配合比も上述したものを適宜選択すればよい。マルチパーパスミキサは、例えば、天然黒鉛の球状化などを行えるような、対流混合、剪断混合および拡散混合などを実行できるものとする。
また、被覆工程では、混合原料を酸化雰囲気中で第1昇温し第1温度で第1熱処理を行い、不活性雰囲気中、第1温度よりも高い第2温度へ第2昇温し第2熱処理を行うものとしてもよい。なお、第1熱処理を省略し、第2熱処理のみ行うものとしてもよい。第1熱処理は、250℃以上350℃以下、より好ましくは275℃以上325℃以下の温度範囲で、0.5時間以上5時間以下、より好ましくは1時間以上2時間以下の時間範囲で行うものとしてもよい。第2熱処理は、800℃以上1100℃以下、より好ましくは900℃以上1000℃以下の温度範囲で、0.5時間以上5時間以下、より好ましくは1時間以上2時間以下の時間範囲で行うものとしてもよい。また、第1昇温及び第2昇温は、1℃/分以上20℃/分以下の範囲、より好ましくは5℃/分以上15℃/分以下の範囲で行うことができる。この熱処理条件は、上記キャパシタンスの実数値C’が好ましい所定範囲に入るよう、適宜選択すればよい。あるいは、この熱処理条件は、上記熱重量分析での質量減少率が好ましい所定範囲に入るよう、適宜選択すればよい。第1熱処理及び第2熱処理を行う酸化雰囲気は、大気中とすることが好ましい。また、不活性雰囲気としては、例えば、減圧下、希ガス雰囲気、窒素雰囲気などが挙げられ、このうちAr雰囲気が好ましい。なお、第1熱処理や第2熱処理は、上記第1温度範囲内や第2温度範囲内で行えばよく、温度を厳密に一定に保つことまでは要さない。
電極化工程では、炭素材料を用いて電極を作製する。この工程では、上述の炭素材料を電極活物質とし、電極活物質と集電体とを密着させるものとしてもよい。あるいは、この工程では、炭素材料の電極活物質と結着材と必要に応じて導電材とを混合し、適当な溶剤を加えてペースト状の電極合材としたものを、集電体の表面に塗布乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものとしてもよい。この電極に用いられる部材や配合量は、電極で説明した内容を適宜利用することができる。電極活物質の配合量は、より多い方が容量の観点からは好ましく、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上が更に好ましい。結着材の配合量は、より少ない方が容量の観点からは好ましく、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
以上詳述した実施形態では、高充放電効率と高入出力とを両立した電極、蓄電デバイス及び電極の製造方法を提供することができる。このような効果が得られる理由は、例えば、以下のように推察される。非晶質炭素を適切に表面に被覆させると、黒鉛の比表面積を低下させることで黒鉛表面での被膜生成量を低減させる一方、リチウム挿入、脱離反応に寄与する表面の減少を抑制し、充放電効率と入出力特性とを両立させることができる。充電の電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’は、その温度や周波数に応じて電極の特性を表す指標の一つとして利用可能である。このキャパシタンスが所定範囲内にあると、充放電効率と入出力特性とが両立した電極とすることができる。また、電極活物質としての炭素材料の熱重量分析の質量減少率は、酸素との反応性の関係に関連し、電極活物質の表面特性を表す指標の一つとして利用可能である。この熱重量分析の質量減少率が所定範囲内にあると、充放電効率と入出力特性とが両立した電極とすることができる。
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、蓄電デバイスのキャリアをリチウムイオンとしたが、特にこれに限定されず、ナトリウムイオンやカリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、カルシウムイオンやマグネシウムイオンなどの2族元素イオンとしてもよい。また、正極活物質は、キャリアのイオンを含むものとすればよい。また、電解液を非水系電解液としたが、水溶液系電解液としてもよい。
上述した実施形態では、正極活物質を遷移金属複合酸化物としたが、特に限定されず、例えば、キャパシタに用いられる炭素材としてもよい。炭素材としては、特に限定されるものではないが、例えば、活性炭類、コークス類、ガラス状炭素類、黒鉛類、難黒鉛化性炭素類、熱分解炭素類、炭素繊維類、カーボンナノチューブ類、ポリアセン類などが挙げられる。このうち、高比表面積を示す活性炭類が好ましい。炭素材としての活性炭は、比表面積が1000m2/g以上であることが好ましく、1500m2/g以上であることがより好ましい。比表面積が1000m2/g以上では、放電容量をより高めることができる。この活性炭の比表面積は、作製の容易性から3000m2/g以下であることが好ましく、2000m2/g以下であることがより好ましい。なお、正極では、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を吸着、脱離して蓄電するものと考えられるが、さらに、イオン伝導媒体に含まれるアニオン及びカチオンの少なくとも一方を挿入、脱離して蓄電するものとしてもよい。
以下には、上述した蓄電デバイス用電極及び蓄電デバイスを具体的に作製した例を実験例として説明する。なお、実験例5~9が本開示の実施例であり、実験例1~4、10~11が比較例に相当する。
(炭素材料の作製)
球形化天然黒鉛(日本黒鉛工業製、CGB-10)を10gとコールタールピッチ(被覆原料、JFEケミカル製)とを黒鉛に対して3.5~5質量%となるように秤量し、混合機(日本コークス工業製マルチパーパスミキサ(MPM))あるいは簡易ミキサ(ラボミル(LBM))で混合し、混合粉末を得た。球形化天然黒鉛は、レーザー回折法(MSサイエンティフィック社製LUMiSizer610)で測定したメディアン径D50が9.8μmであった。その後、アルミナ坩堝に混合粉末を入れて、10℃/分の昇温速度で室温から300℃(第1温度)まで昇温し(第1昇温)、300℃で1~2時間保持し(第1熱処理)、10℃/分の昇温速度で700~1000℃まで昇温し(第2昇温)、その温度(第2温度)で1~2時間保持し(第2熱処理)、その後、室温まで放冷して、黒鉛表面に非晶質炭素層を被覆した。第1昇温は空気雰囲気(エアフロー)で行い、300℃に到達後エアを停止して熱処理装置内を真空引きしてからAr導入に切り替え、それ以降はAr雰囲気(Arフロー50cm3/分)で熱処理を行った。図2に、炭素材料作製時の熱処理の温度プロファイルを示す。今回作製した黒鉛材料の処理条件を表1にまとめた。混合手法、熱処理手法、熱処理温度、時間、ピッチ混合比率を制御することで、黒鉛表面の非晶質炭素被覆状態を変化させた。
(実験例1)
非晶質炭素としてのコールタールピッチの被覆を行わない黒鉛を実験例1とした。
(実験例2~10)
非晶質炭素としてのコールタールピッチを黒鉛に対して5.0質量%用い、MPMで混合した混合粉体を300℃、1時間の第1熱処理後1000℃、1時間の第2熱処理を行うことで黒鉛表面の被覆を行い、得られた炭素材料を実験例2とした。第2熱処理を1000℃、2時間行った以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例3とした。第1熱処理を省略した以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例4とした。コールタールピッチを3.5質量%用い、第1熱処理を省略した以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例5とした。コールタールピッチを3.5質量%用いた以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例6とした。コールタールピッチを3.5質量%用い、第1熱処理を300℃、2時間とした以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例7とした。コールタールピッチを3.5質量%用い、第2熱処理を900℃、1時間とした以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例8とした。コールタールピッチを3.5質量%用い、第2熱処理を800℃、1時間とした以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例9とした。コールタールピッチを3.5質量%用い、第2熱処理を700℃、1時間とした以外は実験例2と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例10とした。
(実験例11)
コールタールピッチと黒鉛とをLBMで混合した混合粉体を用いた以外は実験例6と同様の処理を行い、得られた炭素材料を実験例11とした。
(炭素材料の熱重量TG測定)
上記得られた実験例1~11の炭素材料をアルミナパンに4mg入れ、空気フローをさせながら室温から500℃までを20℃/分の昇温速度、500~800℃を2℃/分の昇温速度で加熱した際の熱重量測定を実施した。TG測定は、リガク製TG8120を用いて行った。得られた熱重量測定結果より、600℃及び700℃での質量減少量(質量%)を読み取った。
(電極(負極)の作製)
上記炭素材料とカルボキシメチルセルロースとスチレンブタジエンゴムとを98:1:1の質量比で水溶媒とともに混合して得られたスラリー上の電極合材を銅箔上に塗布した。電極合材の目付量は、4mg/cm2とした。真空乾燥をしたのち、ロールプレス機で圧延処理を施すことにより電極シートを作製した。
(キャパシタンス評価)
上記電極を未充電状態でセパレータを介して対向させることで、評価セルとしての対称ラミネートセルを作製した。ラミネート内に上記対向電極を入れ、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを体積比で3:4:3で混合した混合溶媒にLiPF6を1Mとなるように加えた電解液を注入し、評価セルとした。60℃および-30℃にてインピーダンス測定器を用い、インピーダンス測定を実施したあと、得られたインピーダンススペクトルより、上述した数式(1)を用いてキャパシタンスの実数値C’を算出した。このインピーダンス測定は、60℃又は-30℃にて振幅電圧5mV、主波数範囲105~0.002Hzの範囲で測定した。電極合材の目付量を用い、-30℃、1Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’、および60℃、0.01Hzにおける炭素材料の単位質量あたりの実数値C’を算出した。
(蓄電デバイス:リチウムイオン二次電池の作製)
正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/32と導電材としてのカーボンブラック(デンカ製、HS-100)と結着材としてのPVdF(クレハ製、#7300)とを90:6:4の質量比で混合してAl箔に塗工することで、上記負極と組み合わせる正極を作製した。セパレータを介して正極と負極を対向させた後、ECとDMCとEMCとの混合溶媒にLiPF6を1Mとなるように加えた電解液を注入することで、ラミネートセルを作製した。
(蓄電デバイスの評価)
0.1C相当の電流値で4.1V~3.0Vの範囲でのコンディショニング充放電を実施し、初回充放電効率(%)を算出した。数サイクルのコンディショニング充放電を行ったのち、-30℃、3.7V(残容量SOC50%)にてインピーダンス測定を行い、反応抵抗Rctを算出した。反応抵抗Rctを算出するインピーダンス測定は、2つの電極を対向させた対称セルを作製し、周波数範囲105~0.002Hzの範囲の測定を行った。そして、得られたインピーダンススペクトルの円弧部分を抵抗RとキャパシタンスCとの並列回路を用いてフィッティングすることで反応抵抗値Rct(Ω)を算出した。なお、反応抵抗Rctは、実験例1の測定値を100として実験例2~11の値を規格化した。
(結果と考察)
図3は、実験例1、3、5、7、11の炭素材料の熱重量測定結果である。図4は、実験例1、3、5、7の-30℃でのキャパシタンス評価結果である。図5は、実験例1、3、5、7の60℃でのキャパシタンス評価結果である。図6は、実験例1~11の抵抗相対値Rctに対する初回充放電効率との関係図である。図7は、実験例1~11の-30℃、60℃でのキャパシタンス実数値C’の関係図である。図8は、実験例1~11の熱重量分析の600℃、700℃での質量減少率の関係図である。また、表1に、実験例1~11のコート処理の概要、熱重量分析結果、-30℃-1Hz、60℃-0.1Hzでのキャパシタンス評価結果、初回充放電効率(%)及び抵抗相対値Rct(%)をまとめた。
図3に示すように、熱重量分析では、炭素材料の表面構造が異なることによって、空気中酸素との燃焼反応に伴う質量減少挙動が大きく変化することが分かった。熱重量分析において、表面状態を考察するにあたり、600℃および700℃における質量低下率を読み取り、表1に示した。また、図4、5に示すように、キャパシタンス評価結果では、コールタールピッチの配合量および熱処理条件を変えた炭素材料を負極として用いた場合、負極のキャパシタンスが大きく影響を受けることが分かった。表面状態を考察するにあたり、-30℃では図4の矢印部分で示した1Hzの実数値C’、60℃では0.01Hzの実数値C’読み取り、表1および図6にまとめた。
黒鉛の表面に非晶質炭素を被覆した炭素材料では、非晶質炭素の被覆により、充放電効率を高めることができる一方、反応抵抗が上昇することがあり、その両立を図ることが求められる。ここで、図6の反応抵抗相対値Rctと初回充放電効率との関係図より、反応抵抗がより低く、充放電効率がより高い、白矢印の方向がより高い機能を有する電極であると評価することができる。図6に示すように、実験例5~9では、反応抵抗値が120%以下に抑えられ、初回充放電効率が82.5%以上を示し、反応抵抗低減および初回充放電効率向上を両立する良好な充放電特性を示すことが明らかとなった。その中でも、実験例6~8は、反応抵抗値が110%以下に抑えられ、初回充放電効率が85%以上を示し、更に高い充放電特性を示すことがわかった。
図4、5のキャパシタンス評価結果について、高周波数側では実数値C’は0であるが、周波数が低下するに従い、100Hz付近から実数値C’が増加する。これは、高周波数側では電解液バルクの自発分極のみが生じていたのに対して、周波数の低下に伴い電極/電解液界面に電気二重層が形成されるためである。1Hz付近では十分に電気二重層が形成されていることが分かるが、その後の周波数を低下させると実数値C’が緩やかな傾きで増加し続ける。この挙動は、電極/電解液界面でファラデー反応によるリーク電流が生じているためと考えられる。ここで、図6に示した結果を踏まえ、より高い充放電特性を有する電極のキャパシタンスとの関係を検討した(図7)。電極のキャパシタンスは、低温、高温などの電極の特性を表す指標の一つとして利用可能である。図6に示した電池性能において、実験例5~9では、低い反応抵抗かつ高い初回充放電効率を両立することが示された。また、図7に示すように、実験例5~9に対応する、未充電の電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける実数値C’が50mF/g以上、より好ましくは53.0mF/g以上、更に好ましくは56.3mF/g以上であることによって、電極/電解液界面における電気二重層容量が増大するために、界面での電荷移動反応が円滑に進行して、反応抵抗がより低減するものと推察された。また、同様に実験例5~9では、上記に加えて60℃、0.01Hzにおける上記実数値C’が150mF/g以下、より好ましくは121.4mF/g以下、更に好ましくは、118.6mF/g以下の範囲では、初回充放電効率がより高い値を示すことが明らかとなった。これは、ファラデー反応の増大に関する指標となる60℃における実数値C’が規定されることで、初回充放電時に黒鉛表面に形成する電解液の還元分解を由来とする被膜の量が低減するためと推察された。
また、図6に示した結果を踏まえ、より高い充放電特性を有する、炭素材料の熱重量分析の質量減少率との関係を検討した(図8)。電極活物質としての炭素材料の空気中酸素との燃焼反応による熱重量分析の質量減少率についても電池性能との関係が確認され、電極活物質の表面特性を表す指標の一つとして利用可能であるものと推察された。図8に示すように、熱重量測定において、空気中、2℃/分で昇温した際の600℃における質量減少率が10質量%以上、より好ましくは11.8質量%以上であり、かつ700℃における質量減少率が70質量%以下、より好ましくは62.1質量%以下の範囲では、実験例5~9を含み、反応抵抗の低減および初回充放電効率の向上が図られることが明らかとなった。その理由は明らかではないが、例えば、炭素材料において、500~600℃の低温領域では結晶性が低いほどリチウムイオンの挿入、脱離の活性点が多いと推察される。一方、700℃における質量減少率が高い場合、燃焼反応起点となるエッジ面が過度に多いために初回充放電効率が低下するものと推察された。
Figure 2023137643000003
なお、本開示は上述した実施例に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
本発明は、二次電池に関する技術分野に利用可能である。
20 蓄電デバイス、21 電池ケース、22 正極、23 負極、24 セパレータ、25 ガスケット、26 封口板、27 イオン伝導媒体。

Claims (9)

  1. 蓄電デバイスに用いられる電極であって、
    黒鉛を含む炭素材料を電極活物質として含有し、未充電の前記電極のインピーダンス測定を実施して得られるキャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が50mF/g以上であり、60℃、0.01Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が150mF/g以下を示す、
    電極。
  2. 前記キャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が53.0mF/g以上であり、60℃、0.01Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が121.4mF/g以下を示す、請求項1に記載の電極。
  3. 前記キャパシタンスの実数値C’において、-30℃、1Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が56.3mF/g以上であり、60℃、0.01Hzにおける前記炭素材料の単位質量あたりの実数値C’が118.6mF/g以下を示す、請求項1又は2に記載の電極。
  4. 前記炭素材料は、熱重量測定において、空気中、2℃/分で昇温した際の600℃における質量減少率が10質量%以上であり、かつ700℃における質量減少率が70質量%以下を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の電極。
  5. 蓄電デバイスに用いられる電極であって、
    黒鉛を含む炭素材料を電極活物質として含有し、前記炭素材料は、熱重量測定において、空気中、2℃/分で昇温した際の600℃における質量減少率が10質量%以上であり、かつ700℃における質量減少率が70質量%以下を示す、
    電極。
  6. 前記炭素材料は、前記熱重量測定において、600℃における質量減少率が11.8質量%以上であり、かつ700℃における質量減少率が62.1質量%以下を示す、請求項4又は5に記載の電極。
  7. 前記炭素材料は、(1)又は(2)のうち1以上の特徴を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極。
    (1)前記炭素材料は、前記黒鉛の表面の少なくとも一部が非晶質炭素により被覆されている。
    (2)前記炭素材料は、含まれる前記黒鉛が球形化された天然黒鉛である。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の電極、
    を備えた蓄電デバイス。
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の電極の製造方法であって、
    マルチパーパスミキサによって黒鉛の表面を非晶質炭素で被覆し所定の熱処理を行うことによって前記炭素材料を得る被覆工程と、
    前記炭素材料を用いて電極を作製する電極化工程と、
    を含む電極の製造方法。
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