JP2023137008A - 血液浄化器、血液浄化装置、および血液浄化装置の作動方法 - Google Patents

血液浄化器、血液浄化装置、および血液浄化装置の作動方法 Download PDF

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Abstract

【課題】置換液量20L以上の大量濾過post-HDFを、アルブミン漏出量を小さくして、および/または膜間圧力差の変動を小さくして実施することを可能にする血液浄化器を提供する。【解決手段】内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜の束が容器内に55%以上70%以下の充填率で充填された血液浄化器であって、所定の牛血を用いて、所定の循環試験に付されたときに、1)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1m2あたり1.0g以下であり、かつB)循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.77以上であるか、あるいは2)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1m2あたり1.0gを超え2.5g以下であり、かつB)TMP10/TMP240が0.80以上である、血液浄化器。【選択図】なし

Description

本開示は、置換液量ないしは総濾過量を大きくして後希釈型の血液透析濾過を実施するのに適した、血液浄化器、血液浄化装置、および血液浄化装置の作動方法に関する。
血液透析濾過(hemodiafiltration:HDF)と呼ばれる血液浄化方法は、平成24年度の診療報酬規程改定において、オンラインHDFの技術料が新設されたこともあり、多くの医療機関で採用されつつある。また、HDFまたはオンラインHDFの臨床効果を調査するための研究が世界各地で実施され、その成果も発表されている。
例えば、非特許文献1においては、血液透析(Hemodialysis:HD)を基準として、オンラインHDFにおける総濾過量(convection volume)を変化させたときの、死亡率を調査・解析したデータが示されている。非特許文献1は、後希釈型のオンラインHDF(以下、「post-オンラインHDF」)を実施するにあたり、血液浄化処置一回あたりの総濾過量を23L/1.73mよりも大きくすることで、全死亡率および心血管疾患に起因する死亡率が減少することを報告している。
Peter J. Blankestijnら、Clinical evidence on haemodiafiltration、Nephrol Dial Transplant (2018) 33: iii53-iii58
血液浄化処置一回あたりの総濾過量(convection volume)は、処置1回の置換液量と除水量の和であり、置換液量は血液浄化器の中空糸膜を血液側から透析液側に通過する物質(溶質+溶媒)の血液浄化処置一回中の総量に相当する。総濾過量ないしは置換液量が増えるほど、血液中のアルブミンが透析液側により多く移動する(漏出する)こととなる。アルブミンは、患者にとって有用な蛋白質であり、アルブミン漏出量が増加すると、患者の栄養状態が低下して生命予後に影響を与えるとされている。
本開示は、死亡リスクがより低いとされている大量濾過post-HDFを、アルブミン漏出量を小さくして、および/または膜間圧力差(TMP)の変動を小さくして、実施することを可能にする血液浄化器および血液浄化装置を提供することを課題とする。また、そのようなオンラインHDFを実施することを可能にする、血液浄化装置の作動方法を提供することを課題とする。
本開示は、その一実施形態として、中空糸膜が束状に円筒状容器に充填されている血液浄化器であって、
前記中空糸膜の内径は200μmよりも大きく、250μm以下であり、
前記中空糸膜の束は、前記容器内に55%以上70%以下の充填率で充填されており、
前記血液浄化器は、総蛋白濃度(TP)が6.0g/dL以上6.5g/dL以下、ヘマトクリット(Ht)が32±2%である牛血を用いて、血液流量Qを300mL/min、透析液量Qを0mL/min、血液濾過量Qを100mL/minとして240分、循環試験に付したときに、
1)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0g以下であり、かつ
B)循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.77以上であるか、あるいは
2)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0gを超え2.5g以下であり、かつ
B)循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.80以上である、
血液浄化器を提供する。
本開示はまた、別の実施形態として、血液浄化器に接続される動脈側血液ラインおよび静脈側血液ラインを含む血液流路、前記血液浄化器に接続される透析液供給ラインおよび透析液排出ラインを含む透析液流路、前記血液流路上に設けられた血液ポンプ、前記透析液流路上に設けられた透析液の供給ポンプ、前記静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および前記置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを含む、血液浄化装置であって、
前記血液浄化器として、内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜が束状に、55%以上70%以下の充填率で容器に充填されている大径中空糸膜血液浄化器を取り付けることができ、
前記大径中空糸膜血液浄化器を取り付けたときに、濾過流量Qが80mL/min以上130mL/min以下、血液流量がQの三倍以上、透析液流量Qが300mL/min以上700mL/min以下である流量条件で、血液透析濾過が実施されるように、前記血液ポンプおよび前記透析液供給ポンプを制御する手段、および1回の血液浄化処置における置換液量が20L以上となるように処置時間を制御する制御手段を備える、血液浄化装置を提供する。
本開示は、さらに別の実施形態として、血液浄化器に接続された動脈側血液ラインおよび静脈側血液ラインを含む血液流路、前記血液浄化器に接続された透析液供給ラインおよび透析液排出ラインを含む透析液流路、前記血液流路上に設けられた血液ポンプ、前記透析液流路上に設けられた透析液供給ポンプ、前記静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および前記置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを含む、血液浄化装置の作動方法であって、
前記血液浄化器として、内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜が束状に、55%以上70%以下の充填率で容器に充填されている血液浄化器を用いること、および
前記血液ポンプの吐出量と、前記透析液供給ポンプの吐出量とから、濾過流量を算出し、算出した濾過流量と血液浄化装置の作動時間とから置換液量を求めること
を含む、血液浄化装置の作動方法を提供する。
本開示の血液浄化器は、内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜を備えることで、血液濾過量を100mL/分程度として置換液量が20L以上の血液透析濾過を実施しても、アルブミン漏出量を抑制することを可能にする。したがって、本開示の血液浄化器によれば、死亡リスクが低いとされている大量濾過を、患者の栄養状態に与える影響を少なくして実施することが可能となる。
(本開示の実施形態に至った経緯)
上記のとおり、大量濾過post-HDFが全死亡率を減少させ得ることについて既に発表がなされているものの、医療現場において、大量濾過post-HDFは広く採用されるに至っていない。その理由の一つが、血液が大量に濾過されることに起因するアルブミンの漏出である。
本発明者らは、大量濾過post-HDFをより安全に実施するための血液浄化器(「ダイアライザー」、「血液濾過器」または「血液透析器」と称されて流通するものを含む)の構成を検討した。本発明者らは、アルブミン漏出量に影響を与える要素の一つが中空糸膜の内径であることを見出し、これをある一定値よりも大きくすることで、アルブミン漏出量の上昇が抑制されることを見出した。
さらにまた、本発明者らは、中空糸膜の内径を大きくしても、TMPが大きく変動しないことを確認した。アルブミン漏出に影響を与える要素として、膜間圧力差(TMP)の上昇がある。血液浄化装置一回当たりの置換液量を大きくした後希釈ないしは後置換型のオンラインHDF(以下、「大量濾過post-HDF」)を実施する場合には、中空糸膜を通過する血液成分の量が大きいため、ファウリング等によるTMP上昇が生じやすい。TMPが上昇するとアルブミンふるい係数が増大し、より多くのアルブミンが漏出することとなる。本発明者らは中空糸膜の内径を大きくして大量濾過を実施した場合でも、TMPが顕著に上昇しないことを確認し、中空糸膜の内径を大きくした血液浄化器が大量濾過post-HDFに実用化能であることを見出した。
以下、本開示の実施形態の一つである血液浄化器をまず説明する。
(血液浄化器)
本開示の一実施形態である血液浄化器は、多孔性の膜を中空糸状に成形した中空糸膜を束状として、容器内に充填した構成を有する。そのような構成の血液浄化器の一態様は、血液透析器、血液濾過器またはダイアライザーと称されて流通している。以下、中空糸膜の構成を説明する。
<中空糸膜>
本実施形態において、中空糸膜は、200μmを超え250μm以下の内径を有し、特に210μを超え250μm以下の内径を有し、より特には215μm以上250μm以下の内径を有する。中空糸膜の内径は、アルブミン漏出量および血液透析濾過中のTMPの経時変化に影響を与え、内径を上記範囲内とすることで、アルブミン漏出量およびTMPの経時変化が抑制される。中空糸膜の内径が小さすぎると、アルブミン漏出量およびTMPの経時変化が大きくなる傾向にある。中空糸膜の内径が大きすぎると、膜厚が同じで内径がより小さいものと比較して、中空糸膜の強度が下がる傾向にある。
中空糸膜の内径は、中空糸膜の横断面(中空糸膜の長さに垂直な方向)のSEM画像等から求めることができる。中空糸膜は、その製造条件によって、内径にばらつきが生じることがある。本実施形態においては、一つの血液浄化器内に含まれる中空糸膜を20本任意に選択し、その断面を観察して測定される内径の平均値を、血液浄化器内の中空糸膜の内径とする。
中空糸膜は、疎水性高分子に親水性高分子を混合して製膜したものであってよい。親水性高分子は例えば、ポリスルフォン系樹脂、ポリエーテルスルフォン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニルエーテル系樹脂、およびポリフェニレンスルフィド系樹脂である。
親水性高分子は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、およびポリビニルピロリドン等である。ポリビニルピロリドンは、親水化能、安全性および工業的な入手容易性の点で好ましく用いられる。
本実施形態において、中空糸膜は、例えば10μm以上100μm以下、特に10μm以上50μm以下、より特には30μm以上45μm以下の膜厚を有してよい。膜厚が小さすぎる、または大きすぎると、中空糸膜の紡糸が困難となることがある。また、膜厚が小さすぎると、中空糸膜の強度が低下するおそれがある。膜厚が大きすぎると、血液中の尿素やβ2-MG等が中空糸膜を通じて拡散又は濾過されることが妨げられる結果、これらのクリアランス性能が低下するおそれがある。また、膜厚が大きすぎると、中空糸膜の太さが大きくなり、所定寸法の容器に所定の膜面積となるように中空糸膜を充填するときに、中空糸膜をハウジングに挿入し難くなり、歩留まりが低下する可能性がある。。
中空糸膜に形成される微細な開孔の寸法、すなわちポアサイズは、例えば40Å以上80Å以下、特に42Å以上78Å以下、より特には48Å以上73Å以下であってよい。ポアサイズは、血液浄化器によって除去すべき物質の分子量等に応じて選択される。血液透析濾過において、例えば、分子量の大きいα1-MG等の除去を重視する場合、ポアサイズを55Å以上75Å以下としてよく、β2-MGの除去を重視する場合、45Å以上75Å以下としてよい。ポアサイズは、後述するようにデキストラン溶液を用いた方法により測定される値である
中空糸膜には、クリンプが付与されていてよい。クリンプは、例えば、噛み合い歯を有する二つのギヤを回転させ、回転しているギヤの間に通過させ、必要に応じて通過中または通過後の中空糸膜を熱処理してクリンプを固定させる方法で付与してよい。クリンプを付与する別の方法は、中空糸膜をボビンないしはコーンに巻き付け、加熱処理した後、ボビンないしはコーンから繰り出す方法である。クリンプはこれらの方法以外の方法で付与してよい。クリンプの形状は、正弦波形状、屈曲部が鋭角である、もしくは丸みを帯びているジグザグ形状、またはそれらの組み合わせであってよい。クリンプのピッチや振幅は特に限定されず、ピッチは例えば1mm以上20mm以下、特に4mm以上8mm以下であってよく、振幅は2mm以上8mm以下、特に4mm以上6mm以下であってよい。一本の中空糸膜において、クリンプのピッチや振幅が変化していてもよい。また、一つの血液浄化器において、異なる態様のクリンプを有する二種以上の中空糸膜が含まれてよく、あるいはクリンプを有する中空糸膜とクリンプを有しない中空糸膜が含まれていてよい。
<血液浄化器>
次に、上記にて説明した中空糸膜を用いて構成した血液浄化器を説明する。血液浄化器は、円筒状容器に中空糸膜の束を充填した構成を有する。円筒状容器は、血液透析ないしは血液透析濾過において通常用いられている血液浄化器のそれと同様、透析液の供給および排出のためのポートが設けられた端部、中空糸膜の長さの大部分が存在する胴部を有するハウジングと、ハウジングの両端に取り付けられるヘッダーとを有する。ハウジングの端部は通常、胴部よりもその内径および外径が大きい。端部は胴部に向かって内径が小さくなるテーパー形状を有してよい。ヘッダーは、血液の入口および出口となるポートを備え、ハウジングに中空糸膜を充填し、その両端部をポッティング加工した後で取り付けられる。
中空糸膜の束のポッティング加工は、中空糸膜をハウジングに充填した状態で実施される。ポッティング加工に用いられるポッティング剤は、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、またはシリコーン樹脂を含む樹脂組成物であってよい。ポッティング加工は、中空糸膜の両端から約0mm超8.0mm以下の領域にわたって、中空糸膜が固定されるように実施される。
本実施形態の血液浄化器において、中空糸膜は膜面積が0.9m以上約3.0m以下、特に約1.4m以上約2.8m以下、約1.9m以上約2.5m以下となるように、円筒状容器に充填してよい。膜面積は、中空糸膜の有効長L(mm)および内径D(μm)、円周率π、ならびに円筒状容器内の中空糸膜の本数nから、下記の式に従って算出される。
膜面積(mm)=n×L×π×B×10-9
ここで、中空糸膜の有効長は、中空糸膜におけるポッティング内端間の距離として測定される。ここで、ポッティングの内端とは、中空糸膜の束を固定するポッティング剤(例えば樹脂)の、血液浄化器の胴部中央部に近い側の端をいう。
膜面積が大きいほど、透析および濾過効率(例えば、尿素、クレアチニン等のクリアランス)が増加し、より安定して大量濾過を実施することが可能となる。一方、血液浄化器の容器はその寸法が大凡決まっているため、膜面積を大きくしようとすると、充填率が増加し、透析液の流路が狭くなり、透析液側の圧力損失が大きくなることがある。また、膜面積が大きいほど、アルブミン漏出量がより大きくなる傾向にある。
本実施形態の血液浄化器において、円筒状容器の内径D(mm)に対する有効長L(mm)の比(L/D)は、例えば6.9以上7.6以下、特に7.1以上7.5以下であってよい。L/Dが大きくなるほど、アルブミン漏出量は大きくなる傾向にあるが、本実施形態の血液浄化器は、L/Dがこの範囲内にある場合でも、大量濾過に伴うアルブミン漏出量を比較的小さくすることが可能である。
本実施形態の血液浄化器は、電子線または放射線(例えば、γ線)等の照射により、滅菌された状態で提供されてよい。電子線または放射線等の照射による滅菌は、血液浄化器を気密性の包装袋に入れて密閉した状態で、または包装袋に密閉封入された血液浄化器を段ボール箱のようなケースに収納した状態で実施してよい。なお、滅菌方法はこれらに限定されるものではない。
本実施形態の血液浄化器は、中空糸膜の束を円筒状容器にその充填率が55%以上70%以下となるように充填した構成にして、総蛋白濃度(TP)が6.0g/dL以上6.5g/dL以下、ヘマトクリット(Ht)が32±2%である牛血を用いて、血液流量Qを300mL/min、透析液量Qを0mL/min、血液濾過量Qを100mL/minとして240分、循環試験に付したときに、
1)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0g以下であり、かつ
B)循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.77以上であるか、あるいは
2)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0gを超え2.5g以下であり、かつ
B)血液透析濾過開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.80以上である、
ものとして提供される。
充填率は円筒状容器の胴部の中央におけるものを指し、胴部中央の断面を観察したときに、容器の空洞部の面積に占める中空糸膜の面積の割合に相当する。充填率は、一つの血液浄化器にて必要とされる膜面積に応じて変化し、膜面積が小さい場合には、充填率が55%未満となるように製品が設計されることもある。その場合でも、充填率が55%以上70%以下となるように中空糸膜を充填して上記循環試験に付したときにアルブミン漏出に関して上記の特性を示す限りにおいて、当該血液浄化器は本実施形態に含まれ得る。
本実施形態において、所定の条件にて血液濾過を実施したときのアルブミン漏出量を評価する指標として、所定の循環試験中の総蛋白漏出量およびTPを用いる。アルブミンが血液中の総蛋白(特に血清総蛋白)占める割合は、他の蛋白質のそれよりも大きいから、総蛋白漏出量が大きければ、アルブミン漏出量もそれだけ大きい(およびその逆)ということになる。
循環試験、総蛋白漏出量および総蛋白濃度(TP)の測定については、実施例にて詳細に説明する。ここで用いる循環試験の条件、すなわち血液濾過量Qを100mL/minとすることは、4時間循環試験を実施したときに、血液透析濾過器内の中空糸膜を通過する血液成分の総量が24Lとなる条件である。この条件は大量濾過post-オンラインHDFに似た条件であり、大量の血液が希釈されることなく濾過されるときの血液浄化器の性能を評価するものであり、前希釈で行うオンラインHDFと比較して、厳しい条件である。
上記条件では、透析液量Qが0mL/minに設定され、濾過されずに中空糸膜を通過した血液成分と、中空糸膜を通過した血液成分(濾液)とがともに血液側供給液に戻されて循環させられる。そのため、循環試験中、試験液の濃度変化を生じさせることなく又は比較的小さくして試験が実施される。試験中の試験液の濃度変化を抑制することで、血液成分中から濾過される成分の濃度がほぼ一定の状態で試験可能となるため、正確な評価が可能となる。
なお、血液透析濾過器のクリアランス等を評価する場合、血液浄化器で浄化された後の血液を血液回路に循環させず、廃棄することで評価を行うシングルパスを採用することがある。この評価方法は、長時間の循環試験を行うことで血液中の溶質が破壊され得ることを考慮して、これを防ぐために存在する。裏を返せば、シングルパスによる評価は、長時間の血液透析濾過を行う臨床においては耐えられない可能性がある血液透析濾過器を評価する方法とも言える。後述する本実施形態の実施例においては、循環試験を採用して評価を実施したが、何れの実施例においても血液中の溶質の破壊は起きなかった。この結果は、本実施形態の血液浄化器が、臨床における長時間の使用に耐え得る、安全性の高いものであることの証左である。
本実施形態の血液浄化器は、上記のとおり、総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0g以下であるときには、循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.77以上であるものとして提供される。このような血液浄化器は、ポアサイズが比較的小さい中空糸膜、例えばポアサイズが65Å以下である中空糸膜を用いるときに得られる傾向にある。
膜間圧力差(TMP)は、血液濾過量と相関し、ある一定値以上を超えると血液濾過量が増えない。TMPの上昇はまた、膜の汚れないしは目詰まりにより生じ、その結果、小さな孔が閉じられて、分子量が中程度の除去されるべき物質が取り除かれず、分子量の大きな分子(特にアルブミン)がむしろ中空糸膜を通過して除去されるという不都合をもたし得る。中空糸膜のポアサイズが小さいほど、TMPの上昇が顕著になり、TMP10/TMP240が小さくなる傾向にある。本実施形態の血液浄化器によれば、中空糸膜が、総蛋白漏出量の合計が小さくなるような(例えば、膜面積1mあたり1.0g以下である)小さなポアサイズを有する場合でも、処置中のTMPの上昇度合いを抑えることができる。したがって、本実施形態によれば、血液濾過量を大きくして血液浄化処置をした場合でも、血液透析濾過を安定して実施することができ、また、分子量の大きな分子(特にアルブミン)が優先的に中空糸膜を通過して漏出することを抑制できる。
この場合、総蛋白漏出量の合計は、膜面積1mあたり0.5g以下であってよく、特に0.3g以下、より特には0.2g以下であってよい。また、TMP10/TMP240は、0.80以上、特に0.83以上であってよい。
あるいは、本実施形態の血液浄化器は、総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0gを超え2.5g以下であるときには、TMP10/TMP240が0.80以上であるものとして提供される。総蛋白漏出量の合計がこの範囲内にあるときには、中空糸膜は比較的大きいポアサイズを有する。この場合、TMP10/TMP240がより大きいことから、より安定した血液透析濾過を、アルブミンの漏出を抑制して実施することが可能となる。
この場合、総蛋白漏出量の合計は、膜面積1mあたり1.0gを超え2.0g以下であってよく、特に1.0gを超え1.5g以下であってよい。また、TMP10/TMP240は、0.83以上、特に0.85以上であってよい。
総蛋白漏出量とTMP10/TMP240が上述の範囲に保たれることで、適切な治療を行うことが可能な信頼性の高い血液浄化器を提供することができる。
ここでは、血液浄化器の膜面積が製品によって異なり得ることを考慮して、膜面積1mあたりの総蛋白漏出量を示している。医療現場では1回の処置中に漏出する総蛋白量をアルブミン漏出量の指標として用いる傾向にある。そのため、上記循環試験中に漏出する総蛋白が血液浄化器一つあたり5.3g以下、特に3.5g以下、より特には2.0g以下、さらにより特には1.0g以下となるように、中空糸膜のポアサイズおよび膜面積等を考慮して血液浄化器を設計することが好ましい。
本実施形態の血液浄化器は、循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)が70mmHg以下であるものであってよい。TMP10が大きくなりすぎると、TMP10/TMP240が上記範囲を有していても、血透析濾過終了時付近のTMPの絶対値が高くなって、所定の血液濾過量(すなわち、置換液量)を確保できないことがある。TMP10は、特に68mmHg以下、より特には65mmHgであってよい。あるいは、中空糸膜の内径が大きい(例えば230μm以上250μm以下)場合、および/またはポアサイズが小さい(例えば65Å以下)場合、TMP10は、85mmHg以下、特に75mmHg以下であってよい。TMP10が低すぎると、膜の透水性の高さに起因して逆濾過若しくは過剰な濾過が起きている可能性がある。したがって、TMP10の下限は例えば55mmHg、特に60mmHgであってよい。TMP10が上述の範囲内にあることで、適切な治療をより確実に実施することが可能となり、より信頼性の高い血液浄化器を提供できる。
TMPの測定は、上記所定の循環試験の間、血液側出入口および濾液側の圧力を一定時間ごとに測定し、さらに後述する所定の条件で膠質浸透圧を求め、これらの値から算出して求める。詳細は実施例にて説明する。
あるいは、本実施形態の血液浄化器は、中空糸膜が束状に円筒状容器に充填されている血液浄化器であって、
前記中空糸膜は、内径が200μmよりも大きく、250μm以下であり、
前記中空糸膜の束は、前記容器内に55%以上70%以下の充填率で充填されており、
前記血液浄化器は、総蛋白濃度(TP)が6.0g/dL以上6.5g/dL以下、ヘマトクリット(Ht)が32±2%である牛血を用いて、血液流量Qを300mL/min、透析液量Qを0mL/min、血液濾過量Qを100mL/minとして240分、循環試験に付したときに、
その総蛋白漏出量の合計は、同じ素材からなり、中空糸膜の内径が200μmであること以外は構成を同じくする血液浄化器の総蛋白漏出量の合計に対して、0.30以上0.65以下であり、
その循環試験開始後10分の圧力損失値(ΔPB10)は、中空糸膜の内径が200μmであること以外は構成を同じくする血液浄化器のΔPB10に対して、0.60以上0.85以下である、
ものとして提供されてよい。
上記所定条件の循環試験は、上記のとおり血液透析器にとってはかなりシビアな条件である。この条件で、200μmの内径を有する中空糸膜を充填した血液浄化器を循環試験に付すと、総蛋白質漏出量が大きくなり患者への影響が生じ得る。本実施形態の血液浄化器は中空糸膜を大径化することによって、中空糸膜の内径が200μmであること以外は略同じ構成(中空糸膜の素材、ポアサイズ、充填率、L/D等)を有する血液浄化器と比較して、かかる影響を小さくすることができ、患者の生命予後を向上させ得る大量濾過をより安全に実施することを可能としている
ここで、圧力損失値(ΔP)は、血液側入口圧力と血液側出口圧力の差であり、その測定方法は後述するとおりである。ΔPは、循環試験において血液濾過量が大きくなるほど大きくなる。ΔPが大きくなるほど、中空糸膜の目詰まりが発生していることが示唆される。本実施形態によれば、血液濾過量を大きくしても、ΔPの上昇が抑えられることができ、中空糸膜の目詰まりが発生しにくくなる。
本実施形態の血液浄化器は上記のように構成されることで、濾過流量Qを80mL/min以上130mL/min以下とする、オンライン型の血液透析濾過(post-オンラインHDF)に用いることができる。1回の血液透析濾過の処置時間は通常4時間ないし6時間程度であるから、本実施形態の血液浄化器によれば、1回の処置で、置換液量が約20リットル以上である血液透析濾過を実施できる。また、濾過流量Qは血液流量Qの三分の一程度以下とすることが好ましく、濾過流量Qをこれより高くしても圧力の上昇を招くだけであって、濾過性能は向上しない傾向にある。そのため、医療現場において血液透析濾過の際の血液流量Qの上限を400mL/min程度としていることを考慮すると、濾過流量Qの上限は130mL/min程度となる。
全死亡率および心血管疾患に起因する死亡率の低下という点から、置換液量は特に24リットル以上とすることが好ましい。そのような置換液量は、例えば1回の処置時間が4時間である場合、濾過流量Qを100mL/min程度以上とすることで達成される。post-オンラインHDFにおいては血液が希釈されることなく、中空糸膜で濾過されるため、濾過流量Qを80mL/min以上、特に100mL/min程度以上とすることで、中空糸膜はより厳しい条件で濾過を実施することとなる。本実施形態の血液浄化器は、そのような厳しい条件下においても、TMPの上昇を抑え、1回の処置中に漏出するアルブミンの量が抑えられた血液透析濾過を可能とする。
(血液浄化装置)
本実施形態の血液浄化器は、血液浄化装置に組み込まれて使用される。以下、本実施形態の血液浄化装置を説明する。本実施形態の血液浄化装置は、血液浄化器に接続される動脈側血液ラインおよび静脈側血液ラインを含む血液流路、血液浄化器に接続される透析液供給ラインおよび透析液排出ラインを含む透析液流路、血液流路上に設けられた血液ポンプ、透析液流路上に設けられた透析液の供給ポンプ、前記静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および前記置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを含む、血液浄化装置であって、
血液浄化器として、前記本実施形態の血液浄化器を取り付けることができ、
前記本実施形態の血液浄化器を取り付けたときに、濾過流量Qが80mL/min以上130mL/min以下、血液流量がQの三倍以上、透析液流量Qが300mL/min以上700mL/min以下である流量条件で、血液透析濾過が実施されるように、前記血液ポンプおよび前記透析液供給ポンプを制御する手段、および
1回の血液浄化処置における置換液量が20L以上となるように処置時間を制御する制御手段を備えるものである。
本実施形態の血液浄化装置は、post-オンラインHDFを実施するための血液浄化装置が一般的に備える構成を備えたものであり、本実施形態の血液浄化器を用いたときに、1回の処置時間中に置換液量が20L以上、特に24L以上である大量濾過を実施できるように制御可能なものである。1回の処置時間は、240分以上360分以下としてよい。
上記のとおり、240分~360分の間に大量濾過を実施するためには、濾過流量Qを80mL/min以上、特に100mL/min程度以上とし、130mL/min以下とすることが必要となる。そのような濾過流量を実現するために、血液流量Qは濾過流量Qの3倍程度とすることが好ましく、透析液流量Qは300mL/min以上700mL/min以下とすることが好ましい。
濾過流量Qを制御するために、本実施形態の血液浄化装置は循環回路上にクレンメを備えていてよい。循環回路がクレンメを備えることにより、血液回路側に陽圧を与えてTMPを調節することで、血液流量Qを適宜設定することと合わせて所望の濾過流量を達成することができる。
血液透析濾過装置において、透析液は、血液との間の浸透圧差に応じて透析を実施するとともに、血液濾過により中空糸膜を通過した血液成分を装置外へ排出する媒体となるものである。したがって、本実施形態の血液透析濾過装置においては、透析液がこれらの役割を果たすように、透析液流量Qは上記範囲内から適宜選択される。なお、本実施形態において透析液流量Qは血液浄化器内に供給される透析液の流量である。
本実施形態の血液浄化装置は、post-オンラインHDFを実施できるよう、静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを備える。置換液供給流路は、透析液のタンクから、透析液を供給する流路(透析液供給流路)から分岐したものであってよく、あるいは置換液専用のタンクと接続されたものであってよい。置換液ポンプは、血液濾過により失われた血液成分を補充(置換)するように、濾過流量Qに応じた流量で置換液を補充できるように制御される。したがって、置換液ポンプは、濾過流量Qが血液透析濾過中に変動したときにこれに対応して置換液流量を制御できる手段によって制御されることが好ましい。
本実施形態の血液浄化装置は、血液中のヘマトクリット値(血液中の赤血球の割合)をモニタする手段を含み、前記モニタ手段のモニタ結果に応じて、血液ポンプおよび透析液供給ポンプのいずれか一方または両方を制御する手段をさらに含んでよい。血液中のヘマトクリット値は血液透析濾過中の患者の状態を知る指標の一つであり、この値の変動に基づき、血液ポンプおよび透析液供給ポンプのいずれか一方または両方を制御することで、血液流量Qおよび/または透析液流量Qを調節して、患者の状態に応じた血液透析濾過をより安全に実施することができる。血液ポンプを制御することで、濾過流量Qもそれに応じて制御し、濾過流量Qが血液流量Qの三分の一を超えないように制御することも可能となる。
ヘマトクリット値は、成人男性で40%ないし50%程度、成人女性で35%ないし45%程度が正常値とされている。本実施形態では、血液濾過後、置換液で希釈した血液におけるヘマトクリット値をモニタすることで、あるいは脱血した血液のヘマトクリット値をモニタすることで、血液透析濾過の状況を把握できる。post-オンラインHDFにおいては血液浄化器内の血液が濃縮される傾向にあり、特に濾過流量Qが大きくなるとその傾向が顕著になる。その結果、ヘマトクリット値が正常値の範囲外となることがあり、臨床上望ましくない影響を患者に及ぼし得るため、これをモニタすることで処置中の患者の状態をより正確に把握して、適切な条件で大量濾過post-オンラインHDFを実施できる。
(血液透析濾過装置の作動方法)
本開示はまた、その一実施形態として、post-HDFを実施可能な血液透析濾過装置で大量濾過を実施可能にするための血液透析装置の作動方法を開示する。具体的には、
血液浄化器に接続された動脈側血液ラインおよび静脈側血液ラインを含む血液流路、前記血液浄化器に接続された透析液供給ラインおよび透析液排出ラインを含む透析液流路、前記血液流路上に設けられた血液ポンプ、前記透析液流路上に設けられた透析液供給ポンプ、前記静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および前記置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを含む、血液浄化装置の作動方法であって、
前記血液浄化器として、内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜が束状に、55%以上70%以下の充填率で容器に充填されている血液浄化器を用いること、および
前記血液ポンプの吐出量と、前記透析液供給ポンプの吐出量とから、濾過流量を算出し、算出した濾過流量と血液浄化装置の作動時間とから置換液量を求めること
を含む、血液浄化装置の作動方法を提供する。
以下、本実施形態の血液浄化器を実施例により説明する。
(実施例1)
内径が215μm、膜厚が40μm、ポアサイズが62Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜は、ポリエーテルスルフォン樹脂をベースとし、ポリビニルピロリドン樹脂を3.4質量%の割合で含む膜として、これらの樹脂を含む紡糸原液を紡糸口金から中空内液とともに紡糸し、凝固浴にて凝固させることを含む方法で製造した。クリンプは、噛み合う歯を有する二つのギヤの間に中空糸膜の束を通過させた後、加熱することを含む方法で付与した。
この中空糸膜10726本を、胴部の内径が38.9mmであり、胴部の長さが305mmであるハウジングを備えた円筒状容器に、充填率が61.7%、膜面積が2.1mとなるように充填し、中空糸膜の束の両端をそれぞれ約7.5mmにわたってポッティング加工した後、ハウジングの両端にヘッダーを取り付けた。その後、γ線(15kGy)を照射して滅菌を行い、血液浄化器を得た。
(実施例2)
内径が215μm、膜厚が40μm、ポアサイズが69Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜を構成する材料等は実施例1のそれと同じである。この中空糸膜の束を円筒状容器に充填率61.7%となるように充填したこと以外は、実施例1と同様にして血液浄化器を得た。
(実施例3)
内径が215μm、膜厚が40μm、ポアサイズが73Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜を構成する材料等は実施例1のそれと同じである。この中空糸膜の束を円筒状容器に充填率61.7%となるように充填したこと以外は、実施例1と同様にして血液浄化器を得た。
(実施例4)
内径が230μm、膜厚が40μm、ポアサイズが62Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜は、ポリエーテルスルフォン樹脂をベースとし、ポリビニルピロリドン樹脂を3.4質量%の割合で含む膜として、これらの樹脂を含む紡糸原液を紡糸口金から中空内液とともに紡糸し、凝固浴にて凝固させることを含む方法で製造した。クリンプは、噛み合う歯を有する二つのギヤの間に中空糸膜の束を通過させた後、加熱することを含む方法で付与した。
この中空糸膜10026本を、胴部の内径が38.9mmであり、胴部の長さが305mmであるハウジングを備えた円筒状容器に、充填率が63.7%、膜面積が2.1mとなるように充填し、中空糸膜の束の両端をそれぞれ約7.5mmにわたってポッティング加工した後、ハウジングの両端にヘッダーを取り付けた。その後、γ線(15kGy)を照射して滅菌を行い、血液浄化器を得た。
(実施例5)
内径が230μm、膜厚が40μm、ポアサイズが69Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜を構成する材料等は実施例1のそれと同じである。この中空糸膜の束を円筒状容器に充填率63.7%となるように充填したこと以外は、実施例1と同様にして血液浄化器を得た。
(実施例6)
内径が250μm、膜厚が40μm、ポアサイズが62Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜は、ポリエーテルスルフォン樹脂をベースとし、ポリビニルピロリドン樹脂を3.4質量%の割合で含む膜として、これらの樹脂を含む紡糸原液を紡糸口金から中空内液とともに紡糸し、凝固浴にて凝固させることを含む方法で製造した。クリンプは、噛み合う歯を有する二つのギヤの間に中空糸膜の束を通過させた後、加熱することを含む方法で付与した。
この中空糸膜9224本を、胴部の内径が38.9mmであり、胴部の長さが305mmであるハウジングを備えた円筒状容器に、充填率が66.4%、膜面積が2.1mとなるように充填し、中空糸膜の束の両端をそれぞれ約7.5mmにわたってポッティング加工した後、ハウジングの両端にヘッダーを取り付けた。その後、γ線(15kGy)を照射して滅菌を行い、血液浄化器を得た。
(実施例7)
内径が250μm、膜厚が40μm、ポアサイズが69Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜を構成する材料等は実施例1のそれと同じである。この中空糸膜の束を円筒状容器に充填率66.4%となるように充填したこと以外は、実施例1と同様にして血液浄化器を得た。
(比較例1)
内径が200μm、膜厚が40μm、ポアサイズが62Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜を構成する材料等は実施例1のそれと同じである。この中空糸膜の束を円筒状容器に充填率59.6%となるように充填したこと以外は、実施例1と同様にして血液浄化器を得た。
(比較例2)
内径が200μm、膜厚が40μm、ポアサイズが69Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜を構成する材料等は実施例1のそれと同じである。この中空糸膜の束を円筒状容器に充填率59.6%となるように充填したこと以外は、実施例1と同様にして血液浄化器を得た。
(比較例3)
内径が200μm、膜厚が40μm、ポアサイズが73Åであって、ピッチ5.0mmおよび振幅0.15mmのジグザグ状のクリンプが付与された中空糸膜を準備した。中空糸膜を構成する材料等は実施例1のそれと同じである。この中空糸膜の束を円筒状容器に充填率59.6%となるように充填したこと以外は、実施例1と同様にして血液浄化器を得た。
なお、各実施例および各比較例で用いた中空糸膜のポアサイズは、血液浄化器を組み立てた後で以下の手順に従って測定した値である。
<ポアサイズの測定>
(プライミング、試験液の調製)
・試料(血液浄化器)の血液側にRO水を約150mL/minで約1L流した。
・試料の透析液側にRO水を約500mL/minで約5L流した。
・3LのRO水にデキストラン40,000(平均分子量32000~45000、和光純薬工業(株)製code:049-22331)を7.5gとデキストラン60,000(和光純薬工業(株)製code:047-30522)を7.5g加えて溶解させ、0.5%デキストラン溶液とした。
(サンプリング)
・試験液2.2Lを恒温水槽に入れて加温し、循環時に37±10℃であることを確認してから試料のBin側(血液入口側)に試験液を250mL/minの流量で循環させた。Bout側(血液出口側)から排出された最初の100mLは廃棄した。
・また、試験液を65mL/minでろ過して、試料の透析液出口側から濾液(F)を取り出し、これを試験液槽に戻して循環させた。流量はメスシリンダーとストップウォッチで測定して調整した。
・循環60分後にF、Bout(Bout側の試験液)、Bin(Bin側の試験液)の順にサンプリングした。
・測定後、試験液槽に最初に廃棄した試験液に相当する量の試験液(100mL)を足して、以下の測定で使用する試料を調製した。
(溶質の測定)
下記条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でデキストランのピーク強度を測定した。
・HPLC測定条件
力ラム:Shodex Asahipak GF-510HQ+GF710
カラム温度:350℃
移動相:50mM塩化ナトリウム水溶液
流量:0.8mL/min
注入量:50μL
検出器: RI(示差屈折計)
(ポアサイズの算出)
・BinとBoutは14分、Fは17分のピーク強度を差し引いてベースライン補正を行った。
・HPLCクロマトグラムのデータを用いて、各溶出時間におけるふるい係数を次式を用いて算出した。
ふるい係数=2×CF÷(Cin+Cout)
Cin:入口側のデキストラン強度
Cout:出口側のデキストラン強度
CF:ろ液のデキストラン強度
・分子量既知のプルラン(昭和電工(株)製P-82)を測定し、溶出時間とデキストラン分子量の検量線を作成した。
・溶出時間とデキストラン分子量の検量線を用いて各溶出時間を分子量に換算し、さらに次式で分子量を溶質直径に換算した。
溶質直径(Å)=ストークス半径(cm)×2×10=3.06×10-9×分子量0.456×2×10
*人工臓器13巻6号P.1460-P.1467:1984年「ダイアライザにおける溶質の膜透過機構」
人工臓器39巻1号P.46-P.47:2010年「新規PMMA製人工人臓の開発」(東レ)
・分子量をX軸、各分子量におけるふるい係数をY軸にして、分子量-ふるい係数グラフを作成した。
・循環60分後のF、Bin、Boutのデキストラン強度に基づいて求めた、各溶出時間におけるふるい係数から、ふるい係数が約0.5となる溶質直径をポアサイズとした。
各実施例および各比較例の血液浄化器のアルブミン漏出量、TMP10およびTMP240を含む所定時間経過時のTMP、ΔPBならびに各種物質のクリアランスを評価した。評価方法は以下のとおりである。
<生理食塩液の調製>
塩化ナトリウム(山善製薬(株)製)をRO水で溶解し、生理食塩液(0.9%塩化ナトリウム水溶液)を作製した。
<血液浄化器のプライミング>
(1)血液浄化器の血液側流路に生理食塩液を約150mL/minの流量で450mL以上通液した。
(2)血液側流路の出口から排出される液を透析液側流路に導き、約150mL/minの流量で1L以上通液した。
(3)透析液側流路に栓をして、再度血液側流路にのみ約150mL/minで生理食塩液を通液した。
(4)血液浄化器の血液側流路からエアーが排出されないことを確認して通液を終了した。
<試験用牛血液の調製>
(1)牛血液(東京芝浦臓器(株))をヘパリンナトリウム(富士フィルム和光純薬(株)製)を添加して抗凝固した。ヘパリンナトリウムの添加量は血液1Lあたり約1万単位とした。
(2)牛血液をガーゼ4枚で濾過した後、一部を3500rpm×5分で遠心分離して牛血漿を採取した。
(3)牛血液および牛血漿の総蛋白濃度(TP)を測定した。なお、測定方法の詳細は下記「(溶質濃度測定)」の通りである。牛血漿のTPは、牛血液を3000rpm×10分で遠心分離して採取した血漿を用いて測定した。
(4)牛血液のヘマトクリット値(Ht)を測定した。Htは、i)ガラス製の毛細管に牛血液を入れ、約10000rpm×3分間で遠心分離し、ii)遠心分離後の血球成分と血漿成分の長さを測定し、その比率からHtを算出する方法で測定した。
(5)牛血液に牛血漿と生理食塩液を加え、循環試験用牛血液(Ht=32±2%、TP=6.0±0.5g/dL)を作製した。
(6)牛血液に牛血漿と評価溶質(尿素(富士フィルム和光純薬(株)製)、β2-MG(富士フィルム和光純薬(株)製)、プロラクチン(富士フィルム和光純薬(株)製)を溶解した生理食塩液とを加え、クリアランス測定用牛血液(Ht=32±2%、TP=6.0~6.5g/dL、尿素=125±25mg/dL、β2-MG=300±100μg/L、プロラクチン≧15μg/L)を作製した。
<循環試験>
(1)循環用試験液約2.2Lを恒温水槽で37士1゜Cに加温した。
(2)TP濃度測定用として循環試験用牛血液を約10mL採取した。
(3)プライミング後の血液浄化器に循環試験用牛血液を250mL以上通液して、血液浄化器内のプライミング液を循環試験用牛血液に置換した。
(4)Q=300mL/min、Q=1OOmL/min、Q=OmL/minで濾過循環を開始した。なお、循環流量はストップウォッチで時間を測定しながら、メスシリンダーに血液を溜め、1分間に溜まった血液の量から循環流量を測定し、所定の流量でない場合にはポンプ流量を調整することで、所定の流量となるように調整した。
(5)循環開始から10分毎に血液側入口圧力(PBin)、血液側出口圧力(PBout)、濾液側圧力(PF)(単位はいずれもmmHg)を測定し、濾液を約3mL採取した。本操作を循環1時間まで実施した。
(6)循環回路から血液浄化器を取り外して循環1時間後のクリアランス測定を実施した後、再度回路に血液浄化器を接続して循環を開始した。クリアランス測定の詳細は下記「クリアランス測定」に記載のとおりである。
(7)再循環開始から30分毎に操作(5)と同様にPBin、PBout、PFを測定するとともに、濾液の採取を実施した。本操作を総循環時間が4時間になるまで実施した。
(8)循環回路から血液浄化器を取り外して循環4時間後のクリアランス測定を実施した後、再度回路に接続してQB=300mL/minで循環を開始した。
(9)Q≦30mL/minで異なる4点のQで圧力を測定し、QとTMPO(TMPO=(PBin+PBout)÷2-PF)の関係(縦軸:QF、横軸:TMP)から得られた1次近似直線から膠質浸透圧πpを算出した(QF=OmL/minのTMPOを膠質浸透圧とした)。膠質浸透圧の測定(操作(8)および(9))は同一の牛血液毎に、1回のみの測定とした。試験日を変えて循環試験等を実施する場合には、試験日ごとに任意の血液浄化器を用いて、牛血液ごとに1回のみ膠質浸透圧を測定した。
(クリアランス測定)
循環試験開始1時間後および4時間後の血液浄化器をニプロ(株)製個人用透析装置「NDF-21」にセットし、下記方法でクリアランスを測定した。
(1)クリアランス測定用牛血液を恒温水槽で37±1℃に加温した。また、透析装置にキンダリー透析剤AF2号(扶桑薬品工業(株)製)をセットした。
(2)透析装置の血液流量および透析液流量を各条件の流量に調整した。通液流量はQ=300mL/min、Q=500mL/minであり、メスシリンダーとストップウォッチで測定して調整した。
(3)試料を透析装置にセットし、透析を開始した。透析開始から約30秒後にメスシリンダーとストップウォッチで血液側出口流量を測定して除水流量を確認した。除水流量は100mL/minに設定した。
(4)クリアランス測定用牛血液を約1L通液した後、透析液側出口、血液側出口、血液側入口の順にクリアランス測定用透析液および牛血液を約10mLずつ採取し、採取した透析液および牛血液中の対象物質(溶質)濃度を測定し、クリアランスを算出した。
(溶質濃度測定)
各溶質濃度の測定方法を以下に記載する。なお、血液検体は3000rpm×10分で遠心分離して採取した血漿の溶質濃度を測定した。
A)調製前の牛血液のTP濃度測定
測定試薬:エスパ・TP(富士フィルム和光純薬(株)製)(ビウレット法)
標準液:アナセラムALB・TP標準液(TP=6.0g/dL)(積水メディカル(株)製)
操作
(1)検体および標準液を33.3μL採取し、測定試薬2mLを加えた。
(2)37℃の恒温水槽で10分間加温した。
(3)日立U-3900H形分光光度計を用いて、波長550nmの吸光度を測定した。
(4)標準液の結果から検量線を作成し、牛血液のTP濃度を算出した。
B)循環試験用およびクリアランス測定用牛血液の総蛋白濃度(TP)測定
測定試薬:エスパ・TP(富士フィルム和光純薬(株)製)(ビウレット法)
標準液:アナセラムALB・TP標準液(TP=6.0g/dL)(積水メディカル(株)製)
装置:TBA-120FR Sora Edition自動分析装置((株)東芝メディカルシステム製)
C)微量総蛋白濃度(TP)測定
測定試薬:マイクロ・TP-AR(富士フィルム和光純薬(株)製)(ピロガロールレッド法)
標準液:アナセラムALB・TP標準液(TP=6.Og/dL)(積水メディカル(株)製)を生理食塩液で希釈して作製(TP=200mg/dL)
装置:TBA-120FR Sora Edition自動分析装置((株)東芝メディカルシステム製)
D)尿素濃度測定(尿素窒素濃度から算出)
測定試薬:エスパ・UNリキッド(ウレアーゼ・ロイシンデヒドロゲナーゼ法)
標準液:ニプロ・マルチキャリブレーター(尿素窒素=46.2mg/dL)(ニプロ(株)製)
装置:TBA-120FR Sora Edition自動分析装置((株)東芝メディカルシステム製)
算出式:尿素濃度(mg/dL)=尿素窒素濃度(mg/dL)÷28.0134×60.055
E)β2-MG濃度測定
測定試薬:LTオートワコーβ2m(富士フィルム和光純薬(株)製)(ラテックス凝集免疫法)
標準液:β2mキャリブレーターセットL尿用(富士フィルム和光純薬(株)製)(β2-MG=3.00、6.00、8.00mg/L)を生理食塩液で希釈して作製(β2-MG=15、40、150、300、400μg/L)
装置:TBA-120FR Sora Edition自動分析装置((株)東芝メディカルシステム製)
F)プロラクチン濃度測定
測定方法:電気化学発光免疫測定法(ECLIA法)
試薬:エクルーシス試薬プロラクチンIII(ロッシュ・ダイアグノスティック(株)製)
装置:モジュラーアナリティクス((株)日立製作所製)
(△PB、TMPの算出)
循環試験の操作(5)および(7)で測定した各圧力を用いて、各循環時間の△PBおよびTMPを算出した。算出式は下記の通りであり、TMP算出時の膠質浸透圧には循環試験の操作(9)の結果を用いた。
・△PB、TMPの算出式
△PB(mmHg)=PBin-PBout
TMP(mmHg)=(PBin+PBout)÷2-PF-π
PBin:血液側入口圧力(mmHg)
PBout:血液側出口圧力(mmHg)
PF:濾液側圧力(mmHg)
π:膠質浸透圧(mmHg)
(クリアランスの算出)
クリアランス測定の操作(4)で採取した試験液の溶質濃度から各溶質(尿素、β2-MG、プロラクチン)のクリアランスおよびマスバランスエラー(MBE)を算出した。各算出式は以下に記載する。
・クリアランス算出式
クリアランス(mL/min)=(QBin×CBin-QBout×CBout)÷CBin
QBin:血液側入口流量(mL/min)
QBout:血液側出口流量(mL/min)
CBin:血液側入口の溶質濃度
CBout:血液側出口の溶質濃度
・MBEの算出式
MBE(%)=(MB-MD)÷MB×100
MB:QBin×CBin-QBout×CBout
MD:QDout×CDout
QDout:透析液側出口流量(mL/min)
CDout:透析液側出口の溶質濃度
MBEの値が50%を超える場合、当該サンプルについて求めたクリアランスは、二以上のサンプルについて測定した値の平均値を求める際に、平均値を求めるものとして用いなかった。
(総蛋白漏出量の算出)
循環試験の操作(5)および(7)で採取した濾液のTP濃度を用いて、濾液のTPと循環時間の自然対数のグラフ(縦軸:TP(mg/dL)、横軸:循環時間(min)の自然対数)を作成し、近似直線から4時間の総蛋白漏出量を算出した。算出式は下記の通りであり、近似直線は直線性を考慮して循環20分および60分を区切りとして3つの時間枠について、それぞれ異なる計算式を用いて、総蛋白漏出量を算出した。
・総蛋白漏出量の算出式
4時間の総蛋白漏出量(g)=循環0~20分の総蛋白漏出量+循環20~60分の総蛋白漏出量+循環60~240分の総蛋白漏出量
循環0~20分の総蛋白漏出量(g)=循環0~20分の平均TP×QF×20÷100÷1000
循環0~20分の平均TP(mg/dL)=-傾きa1+切片b1+傾きa1×ln(20)
循環20~60分の総蛋白漏出量(g)=循環20~60分の平均TP×QF×40÷100÷1000
循環20~60分の平均TP(mg/dL)={(-傾きa2+切片b2+傾きa2×ln(60))×60-(-傾きa2+切片b2+傾きa2×ln(20))×20}÷40
循環60~240分の総蛋白漏出量(g)=循環60~240分の平均TP×QF×180÷100÷1000
循環60~240分の平均TP(mg/dL)={(-傾きa3+切片b3+傾きa3×ln(240))×240-(-傾きa3+切片b3+傾きa3×ln(60))×60}÷180
傾きa1:循環0~20分の近似直線の傾き
切片b1:循環0~20分の近似直線の切片
傾きa2:循環20~60分の近似直線の傾き
切片b2:循環20~60分の近似直線の切片
傾きa3:循環60~240分の近似直線の傾き
切片b3:循環60~240分の近似直線の切片
いずれの測定も、一つの実施例ないしは比較例につき、3つないしは2つのサンプルについて行い、それらの平均値を、当該実施例ないしは比較例の評価結果として用いた。
各実施例および各比較例の評価結果を表1~3に示す。
実施例1、2および3の群、実施例4および5の群、実施例6および7の群はそれぞれ、中空糸膜の内径が同じで、ポアサイズを変化させた群である。これらの群における実施例を比較することにより、ポアサイズが大きくなるほど、総蛋白漏出量がより大きくなることが分かる。
実施例1、4および6、ならびに比較例1の群(群a)、実施例2、5および7、ならびに比較例2の成る群(群b)、実施例3および比較例3の群(群c)はそれぞれ、同じ素材および略同じポアサイズを有する中空糸膜の内径を変化させた群である。中空糸膜のポアサイズは、群aが最も小さく、群cが最も大きい。
群aにおいて、実施例1は、比較例1と比較して、膜面積1mあたりの総蛋白漏出量の合計が低く、TMP10/TMP240が高く、ΔPが低かった。実施例4および6の膜面積1mあたりの総蛋白漏出量の合計は、比較例1のそれよりもやや大きかったものの、実施例4および6のTMP10/TMP240は比較例1のそれよりも大きく、いずれも0.77以上であった。また、実施例4および6のΔPは、比較例1のそれと比較して小さかった。以上のことから、実施例1、4および6はいずれも、比較例1と比較して大量濾過により適するものである。
群bにおいて、実施例2、5および7はいずれも、比較例2と比較して、膜面積1mあたりの総蛋白漏出量の合計が低く、TMP10/TMP240が高く、ΔPが低かった。群cにおいては、実施例3は比較例3と比較して、膜面積1mあたりの総蛋白漏出量の合計が低く、TMP10/TMP240が高く、ΔPが低かった。したがって、群bおよび群cの実施例もまた、各群の比較例と比較して大量濾過により適するものである。
本開示の血液浄化器は後置換の血液透析濾過に用いた場合でも、経時的なTMPの変動が小さく、総蛋白漏出量(ひいてはアルブミン漏出量)を低く抑え得るので、置換液量が20L以上である大量濾過post-HDFに用いるのに適している。

Claims (13)

  1. 中空糸膜が束状に円筒状容器に充填されている血液浄化器であって、
    前記中空糸膜の内径は200μmよりも大きく、250μm以下であり、
    前記中空糸膜の束は、前記容器内に55%以上70%以下の充填率で充填されており、
    前記血液浄化器は、総蛋白濃度(TP)が6.0g/dL以上6.5g/dL以下、ヘマトクリット(Ht)が32±2%である牛血を用いて、血液流量Qを300mL/min、透析液量Qを0mL/min、血液濾過量Qを100mL/minとして240分、循環試験に付したときに、
    1)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0g以下であり、かつ
    B)循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.77以上であるか、あるいは
    2)A)総蛋白漏出量の合計が、膜面積1mあたり1.0gを超え2.5g以下であり、かつ
    B)循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)に対する、循環試験開始後240分の膜間圧力差(TMP240)の比(TMP10/TMP240)が0.80以上である、
    血液浄化器。
  2. 前記血液浄化器は、TPが6.0g/dL以上6.5g/dL以下、Htが32±2%である牛血を用いて、血液流量Qを300mL/min、透析液量Qを0mL/min、血液濾過量Qを100mL/minとして240分間、循環試験に付したときに、
    循環試験開始後10分の膜間圧力差(TMP10)が70mmHg以下である、
    請求項1に記載の血液浄化器。
  3. 中空糸膜が束状に円筒状容器に充填されている血液浄化器であって、
    前記中空糸膜の内径は200μmよりも大きく、250μm以下であり、
    前記中空糸膜の束は、前記容器内に55%以上70%以下の充填率で充填されており、
    前記血液浄化器は、総蛋白濃度(TP)が6.0g/dL以上6.5g/dL以下、ヘマトクリット(Ht)が32±2%である牛血を用いて、血液流量Qを300mL/min、透析液量Qを0mL/min、血液濾過量Qを100mL/minとして240分、循環試験に付したときに、
    その総蛋白漏出量の合計は、同じ素材からなり、中空糸膜の内径が200μmであること以外は構成を同じくする血液浄化器の総蛋白漏出量の合計に対して、0.30以上0.65以下であり、
    その循環試験開始後10分の圧力損失値(ΔPB10)は、中空糸膜の内径が200μmであること以外は構成を同じくする血液浄化器のΔPB10に対して、0.60以上0.85以下である、血液浄化器。
  4. 前記中空糸膜が、ポリスルフォン系ないしはポリエーテルスルフォン系樹脂および親水性高分子を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の血液浄化器。
  5. 濾過流量Qを80mL/min以上130mL/min以下として実施され、1回の血液浄化処置における置換液量を20L以上とする、オンライン型の後希釈血液透析濾過に用いられる、請求項1~4のいずれか1項に記載の血液浄化器。
  6. 前記円筒状容器の内径D(mm)に対する前記中空糸膜の有効長L(mm)の比(L/D)が6.9以上7.6以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の血液浄化器。
  7. 血液浄化器に接続される動脈側血液ラインおよび静脈側血液ラインを含む血液流路、前記血液浄化器に接続される透析液供給ラインおよび透析液排出ラインを含む透析液流路、前記血液流路上に設けられた血液ポンプ、前記透析液流路上に設けられた透析液の供給ポンプ、前記静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および前記置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを含む、血液浄化装置であって、
    前記血液浄化器として、内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜が束状に、55%以上70%以下の充填率で容器に充填されている大径中空糸膜血液浄化器を取り付けることができ、
    前記大径中空糸膜血液浄化器を取り付けたときに、濾過流量Qが80mL/min以上130mL/min以下、血液流量がQの三倍以上、透析液流量Qが300mL/min以上700mL/min以下である流量条件で、血液透析濾過が実施されるように、前記血液ポンプおよび前記透析液供給ポンプを制御する手段、および1回の血液浄化処置における置換液量が20L以上となるように処置時間を制御する制御手段を備える、血液浄化装置。
  8. 濾過流量Qに応じて置換液流量を変化させ、置換液量が20L以上となるように置換液ポンプを制御する制御手段をさらに備える、請求項7に記載の血液浄化装置。
  9. 血液中のヘマトクリット値をモニタする手段を含み、前記モニタ手段のモニタ結果に応じて、前記血液ポンプ、前記透析液供給ポンプおよび前記処置時間を制御する制御手段の少なくとも一つを制御する手段をさらに含む、請求項7または8に記載の血液浄化装置。
  10. 血液浄化器に接続された動脈側血液ラインおよび静脈側血液ラインを含む血液流路、前記血液浄化器に接続された透析液供給ラインおよび透析液排出ラインを含む透析液流路、前記血液流路上に設けられた血液ポンプ、前記透析液流路上に設けられた透析液供給ポンプ、前記静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および前記置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを含む、血液浄化装置であって、
    前記血液浄化器は、内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜が束状に、55%以上70%以下の充填率で容器に充填されている血液浄化器であり、
    前記血液浄化装置は、前記血液ポンプ、前記透析液供給ポンプ、および前記置換液ポンプを、前記血液浄化装置を240分間以上360分間以下運転させたときに、置換液量が20L以上となるように制御する手段
    を備える、血液浄化装置。
  11. 血液中のヘマトクリット値をモニタする手段を含み、前記モニタ手段のモニタ結果に応じて、前記血液ポンプおよび前記透析液供給ポンプのいずれか一方または両方を制御する手段をさらに含む、請求項10に記載の血液浄化装置。
  12. 血液浄化器に接続された動脈側血液ラインおよび静脈側血液ラインを含む血液流路、前記血液浄化器に接続された透析液供給ラインおよび透析液排出ラインを含む透析液流路、前記血液流路上に設けられた血液ポンプ、前記透析液流路上に設けられた透析液供給ポンプ、前記静脈側血液ラインにて血液流路と接続されている置換液供給流路、および前記置換液流路ライン上に設けられた置換液ポンプを含む、血液浄化装置の作動方法であって、
    前記血液浄化器として、内径が200μmよりも大きく、250μm以下である中空糸膜が束状に、55%以上70%以下の充填率で容器に充填されている血液浄化器を用いること、および
    前記血液ポンプの吐出量と、前記透析液供給ポンプの吐出量とから、濾過流量を算出し、算出した濾過流量と血液浄化装置の作動時間とから置換液量を求めること
    を含む、血液浄化装置の作動方法。
  13. 前記血液浄化装置が、血液中のヘマトクリット値をモニタする手段をさらに含み、
    前記前記血液ポンプ、前記透析液供給ポンプ、および前記置換液ポンプの吐出量を制御する手段を、前記モニタ手段と連動させることをさらに含む、請求項12に記載の血液浄化装置の作動方法。
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