JP2023135573A - 木造建物の外張り断熱通気耐震構造 - Google Patents

木造建物の外張り断熱通気耐震構造 Download PDF

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Abstract

【課題】外張り断熱通気耐震構造において、さらに優れた断熱性、気密性、防湿性を備える構造を提供する。【解決手段】本発明に係る構造は、内装材、内側断熱層、構造用面材、透湿防水シート、外側断熱層、外壁通気層及び外装下地材、外装材または外装材が、この順で積層された外壁構造体と、屋根用合板、屋根断熱層、垂木、野地板、下葺材及び屋根材の順で積層された屋根構造体とを備え、外側断熱層と屋根断熱層とは片流れ棟部及び軒先部の垂木受をはさんで連続し、外壁通気層と屋根通気層とが直に連続されるように配置されている。【選択図】図1

Description

本発明は、木造建物を断熱材で外張りした外張り断熱通気耐震構造に関するものであり、より詳しくは、外壁構造体の外側に外側断熱層を配置し、外側断熱層と屋根断熱層とが片流れ棟部及び軒先部の垂木受を挟んで連続するように配置し、室内及び外壁構造体、屋根構造体の水蒸気を外側断熱層及び屋根断熱層の外側におのおの配置する外壁通気層から屋根通気層を経由して屋外に排出することにより、木材の腐朽菌やシロアリの蟻害から住宅を守り、高耐久で、シックハウス症や化学物質過敏症の発症を防止する外張り断熱通気耐震構造に関するものである。
木造建物の断熱手法には、軸組内に断熱層を嵌入する充填工法と、軸組の外側に断熱層を張着する外張り工法と、外張り断熱の厚さで断熱抵抗が不足している場合、断熱性能を向上せるために外張り工法と充填工法とを組み合わせた付加断熱工法とがあり、各種提案されている。
特許文献1に記載の技術は、木造建物の外張り断熱通気耐震構造に関するものである。この外壁構造は、内側断熱層と構造用面材との間に空気層を有するとともに、構造用面材と外側断熱層との間に透湿防水シートを有する特許文献1に記載の技術は、軽量で断熱性能及び結露防止機能に優れ、防火性、耐震性の付与が容易であり従来の木造外張り断熱工法よりはるかに構造が容易で高性能な外張り断熱通気構造を提供するものである。
また、従来例1(図6)の外壁外張り断熱は、非特許文献1に記載の外張り断熱木造建物であって、(A)は縦断側面図、(B)は軒天井の拡大図である。
従来例1(図6)は、柱、間柱などの木造躯体に板状断熱材を張着し、さらに、板状断熱材の外側に上下方向に通気胴縁を配置し、通気胴縁外面に外装材を配置して、木造建物を外張り断熱被覆するとともに、断熱材と外装材との間隔を通気層とするものであり、通気層への空気流入は土台水切の斜辺上側から実施する。
従来例1(図6)の屋根外張り断熱は、下垂木上面に合板下地材を張設し合板下地材上に断熱材を配置するものであり、次いで、断熱材上面に上側垂木面を当接配置し、さらに、上垂木の上面に野地板を張設し、野地板上に下葺材を敷設して屋根材を配置し、屋根外張り断熱被覆するとともに、断熱材と野地板との間隔を通気層とするものであり、外壁及び屋根の外張り断熱通気構造を提供するものである。
新実用新案登録 第3166115号 公報
「ネオマフォーム外張り工法施工基準 軸組立法III~V地域仕様別」 図番―02 旭化成建材株式会社
特許文献1に記載の技術は、従来の木造外張り断熱工法より優れた外張り断熱透湿外壁構造を提供するものであるが、以下のような課題もある。
透湿型外断熱は、室内から屋外に向かって透湿性の小さな部材を並列配置するものであり、外装材に透湿抵抗の小さな部材を採用しなければ外装材と内側の部材との間に結露が発生するため、外装材の種類が限定される課題がある。
特許文献1の木造建物は、床下空間は床断熱、小屋裏空間は桁上断熱であり、床下空間は低温の高湿度となり、小屋裏空間は屋根面からの輻射熱によって高温高湿となる。床下空間及び小屋裏空間を活用する場合、断熱、気密、防湿改修等が煩雑となる課題がある。
非特許文献1(図6)は外張り断熱通気外壁構造であり、断熱層と外装材との間隔を通気層として、通気層内に間隔配置する複数の通気胴縁に外装材を張設している。室内からの湿気は通気層から屋外に排出されるため、外装や外装下地材に透湿抵抗の大きな磁器タイル等も採用できるが、以下のような課題がある。
非特許文献1(図6)の通気層型外張り断熱の屋根構造は、断熱層上面に垂木下面が当接設置しているため屋根断熱層の押し込み過ぎが生じると、断熱層の一部が浮揚、変形して断熱欠損が起き、通気層を閉塞する恐れがある。
また、外壁通気層を上昇する空気流は、水平軒天井に配置する天井有孔ボード等の換気部材から流出入する空気によって合流が不安定となり、屋根通気層への空気流入が妨げられる恐れがある。したがって、空気の分岐や合流を行うチャンバーボックス機構を要するが、軒天井の形状が大きくなるため美観上やコスト面の課題がある。また、屋根通気層は複数の垂木間おのおのが独立した通気層となり、一部の垂木間の通気層で温度や湿度のむらによる結露が発生する恐れがあり、また、棟部からの空気流の放出は手法及び屋根材専有の排気口の設置等、煩雑となる課題がある。
従来例1(図6)においては、外壁通気層への空気流入は土台水切の上面と通気層との間隔から空気流を流入させるため、外壁を伝って降下する雨水を通気層内に巻き込み、木材を腐朽させる課題がある。
近時の木造住宅は、断熱気密性の確保や技術やコストの問題から開放型から密閉型に移行し、壁体内の通気ができない構造になっている。それに伴ない外部からの雨水の侵入や室内からの水蒸気の移動に対して湿気が滞留しやすい構造体となり、構造体となる木材の腐朽の課題や高湿度環境によって、微生物や雑菌の活動が活発になりカビやダニが繁殖されアレルギー発症の問題がある。
本発明は、軸組と小屋組とを有する木造建物に用いられる外張り断熱通気耐震構造を提供する。
外壁構造体は内装材、内装下地材、構造用面材、外側断熱層、外側通気層、並びに外装下地材及び外装材または外装材がこの順で積層された外壁構造と、屋根用合板、屋根断熱層、屋根通気層及び屋根材の順で積層された屋根構造体とは、片流れ棟部及び軒先部の垂木受を挟んでおのおの連続し、前記外壁構造体の外壁通気層と前記屋根構造体の屋根構造とが、直に連続するように配置する。
この場合、外装材は、通気胴縁に外装用成形板の外装用下地材を張設し、該外装用下地材に塗り壁や磁器タイル、塗装等の外装材を配置するものと、通気胴縁に金属サイディングや金属パネル等を直接張設する外装材とがある
一実施形態においては、外壁通気層及び屋根通気層は、雨水や構造体の水分や室内からの湿気(水蒸気)を屋外に放出し、外壁構造体及び屋根構造体に屋根構造体に湿気を滞留させずに木材の乾燥を維持するとともに、通気層内の空気流の移動によって外装材、屋根材の日射熱の温度上昇を抑制し、ヒートストレスによる劣化を防ぎ長寿命化を図るものである。
通気層内の自然換気には風力換気と温度差換気があり、風力換気は風の圧力差による空気の流れを利用した換気手法で、強風の日には通気層内の風速も早くなり通気層内の湿気も屋外に排出されるが、風が対象となるため取り扱いは難解である。以下に風力換気量の計算式を、風力換気量Qwと、流量係数αと、通気層の開口面積Aと、風速Vと、風上側の風圧係数C1と風下側の風圧係数C2によって表示する。
Figure 2023135573000002
一方の温度差換気は、空気は高温になると容積が増加して浮力が生じ、この浮力によって換気が発生するものである。温度差換気量Qwと、流量係数αと、通気層の開口面積Aと、重力gと、通気層の空気流出口の高さの差hと、外気温t0と通気層内の空気温度tiと、室内の絶対温度Tiによって以下に表示する。
Figure 2023135573000003
この数式2からわかるように▲1▼開口面積が大きくなると換気量は増大する。▲2▼通気層の出口と入口の高さの差が大きくなると換気量は増大する。▲3▼外気温が低く、通気層内の空気温度が高くなると換気量は増大することがわかる。
一実施形態においては、通気層厚を厚くして開口面積を大とすることで、換気量を増やし構造体に含む湿気を放出して、木材の乾燥を促し建物の耐久性を向上する。
本発明の木造建物は、外壁通気層の厚さを30mm(標準厚さ)とし業界規格・基準の15~21mmより厚くし、屋根通気層の厚さは野地垂木の高さと同一の60mmとし、業界規格・基準の30mmより厚くしている。屋根通気層は緩傾斜で空気流出入口の高低差が小さいため、通気層の厚さを大として開口面積を広げて換気量を増やすのが好ましい。
一実施形態においては、外張り断熱通気工法は、外装下地材や外装材の壁下地となる通気胴縁の軸組から断熱層及び通気層の厚さの分だけ持ち出す工法となるため、自重による長期荷重に対して外装下地材、外装材の垂れ下がりの発生、風力や地震などの短期荷重に対しては留め付け耐力の低下や脱落の可能性が懸念される。
本発明においては、一定間隔に配置する複数の通気胴縁を基礎梁や基礎梁に塗布するモルタル上面に載置し、通気胴縁に付設する外装下地材や外装材の軸力を基礎及び地盤に伝達して、外壁構造の外皮の耐久性を維持する。
そして、通気胴縁を外壁躯体に止着するねじは、複数の通気胴縁を基礎梁上に載置することで負荷が小さくなって切断や変形を防止する。また、室内からの水蒸気は通気層によって屋外に排出されるため、通気層の外側に位置する外装下地材、外装材には透湿抵抗の大きな部材の選択が可能となる。また。外装下地材、外装材の自重や衝撃による応力は、ねじを介して通気胴縁群から基礎、地盤に負担させることができ、磁器タイルや石等の重い外装材の採用が可能となる。
一実施形態においては、外張り断熱の屋根構造体は、小屋組の上弦材上に肉厚(標準厚さ:24mm)で透湿抵抗が大の構造用合板(透湿抵抗:45mhmmHg/g)の屋根用合板を相互当接面に気密テープと張着し気密性を確保して配置している。さらに、屋根用合板上には適宜間隔(標準間隔:1000mm)で上弦材に直交して複数段の垂木受を左右方向に配置しているものであり、垂木受には屋根材の支持方法によって異なるが、例えば910mm間隔に垂木受の高さ(標準寸法:105mm)より背の低い暑さの屋根断熱層(標準厚さ:80mm)との差異寸法と同様の高さ25mm、長さ100mm、幅105mmの溝形状の欠込みを複数備えている。また、上下端に配置する垂木受の外面には外側断熱層が密着する、屋根勾配に整合した切削面を備え、垂木受群上には複数の垂木が垂木受群と直行配置され、垂木受群の間隔に屋根断熱層を敷設する際に、断熱層と垂木の間隔によって断熱層の押し込みで断熱層に変形が生じても屋根通気層を閉塞することなく空気流はスムーズに傾斜上昇する。
また、外壁通気層の空気流に含まれる水蒸気や構造用の木材から発生する水分は、垂木間の制約を受けることなく屋根断熱層と垂木の間隔から欠込みを介して澱みなく屋根全体に一様に拡散され空気より軽量な水蒸気は間隔から屋根通気層に移動し、水上側の片流れ棟の長さ方向全長に亘って配置する積層通気材(例えば、宇部気密ハウジング社、商品名:イーヴスベンツ)から屋外に排出され屋根構造体は結露を阻止する。そして片流れ棟部は、空気流の上昇で高温となり、高温空気は大量の水蒸気を含むことができ、水蒸気は屋根通気層の軒先部から押し込まれるように傾斜上昇してスムーズに屋外に排気される。
一実施形態においては、軸組の外側に構造用面材を配置し、さらにその外側に透湿防水シートを配置している。採用する構造用面材は、風圧や地震による水平力に抵抗できる壁倍率に優れた板状材であって、内側断熱層からの湿気を透過するものであればよく、ケイ酸カルシウム板、構造用パネル、構造用合板などを使用できるが、例えば、透湿性を有したMDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)木造耐力面材であり、室内からの水蒸気を透過させるものであり、透過した水蒸気は透湿防水シート及び断熱層を透過して外壁通気層から屋外に排出する。また、夏期は外気の水蒸気圧が高く、水蒸気は室内に移動しようとするが透湿防水シートに堰止められて室内に侵入することなく外壁通気層から放湿される。
一実施形態においては、外壁構造体の内側断熱材は外側断熱層が熱抵抗不足の場合や所望する断熱性を確保するために配置するものであり、内装下地材から侵入する水蒸気を構造面材へ透過する断熱材であって、内装下地材の内側に当接配置できる。内側断熱材はJISA9521の発泡プラスチック系の成型断熱材や外壁構造体の軸組内に自立する保形性を備えた板状材のロックウール、グラスウール等のJISA9521及びJISA9522の無機質繊維系断熱材をプラスチックフィルムの被覆で、透湿抵抗が内装材、内装下地より小、且つ構造用面材より大に、透湿係数を調整して採用すればよく、例えば、厚さ100mm、熱伝導率0.03kcal/mh℃以下の、JISA9521のマット状ロックウールをポリスチレンフィルムで透湿係数を調整した、慣用の、ニチアス社製のホームマット(商品名)である。
そして、外壁構造体の内表面に張設する内装下地材は、慣用の12.5mm厚さの石膏ボードを採用すればよく、内装材は壁紙を貼設しても塗り壁や塗装仕上げとしてもよく、例えば、調湿性に優れる塗り壁が好ましい。
一実施形態においては、内側断熱層は、マット状に成形加工した無機質繊維系断熱材を透湿抵抗が大で四周に取付用突出部を備えた後面フィルムと、透湿抵抗が小の前面フィルム及び側面フィルムとで被覆し、上下左右を軸組の軒桁、胴差し、上台、柱、間柱等の構造材で閉止し、後面は内側断熱層の前面フィルムで、前面は構造用面材の後面で密閉しているのが好ましい。同様に小屋組においては、屋根用合板、軒桁、垂直材等の構造用材で閉止する。
また、内側断熱層と密閉空気層とで形成する構造用面材と内装下地材との間隔においては、外張り断熱の場合、室温と温度差が小さいため湿気は籠ることなく、構造用面材を透過し、構造用木材は湿潤することなく乾燥を維持する。
一実施形態においては、外側断熱層の種類は限定されるものではなく、マット状のロックウール補強版やビーズ法ポリエチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等といったJISA9511の発泡プラスチック系断熱板を採用することができる。また、断熱層の厚さも限定されるものではなく、建設地域や所望する断熱性能に応じて性能や厚さを選択するものであり、例えば、熱伝導率が0.172kcal/mh℃の厚さが35mmのフェノールフォーム保温板(JISA9511)を用いる。
一実施形態においては、剛性の大きな構造用合板(標準厚:24mm)の床用合板または屋根用合板として、土台、大引き、胴差し、上弦材上に載置して釘での固定になるため、釘のサイズ、配置間隔を標準長さ75mmの釘を、胴縁100mm、中央を200mm間隔のように適正に選択すれば、床、屋根の剛性が高まって強度が3倍(標準)となり、構造体は水平(床)、垂直(壁)のダイヤフラム構造となり、水平力は床、壁に分散されて、基礎や下階の耐久壁に伝達して耐震構造となる。
その上、内側断熱層の下側突出部が床用合板と床材とで挟着され、内側断熱層の非通気性の後面フィルムが全周での周辺支持体との密接止着となって、外壁構造体及び床構造体、小屋裏構造体、屋根構造体の気密性が確保でき、耐震性、断熱性に優れた構造とできる。
また、床用合板、屋根用合板(標準厚さ:24mm)は透湿抵抗(45mhmmHg/g)が大であって、上下への水蒸気の移動を抑制して他階や床下空間、小屋裏空間、屋根への影響を低減している。
一実施形態においては、外壁構造体の通気層から屋根構造体の通気層への連通部である水下側(軒先)は、強風時の雨水による漏水防止及び日射防止のため、屋根の垂木群を外方に大きく跳ね出し(標準寸法:750mm)て勾配軒天井を形成している。
垂木群の先端に木製鼻隠しを配置して屋根断面を閉止し、垂木群上面には建物より延設して野地板、下葺材及びスレート系、瓦系、金属系等の屋根材を配置し、垂木群下面には、例えば、スレート系成形板の軒天井材を張設して垂木群を包み込む簡易な手法で、直線的な美観に優れた軒天井を形成する。
外壁通気層及び屋根通気層の連通部の軒天井には、外装下地材の上端上面に垂木と同質同形状の気流止めを垂木群に直行し軒先全長に亘って配置して、外壁通気層の空気流を直に屋根通気層に送流している。受け渡しする屋根通気層の開口面積を大として換気量を増大しているため、水平軒天井のように、空気流の集合分散を行うチャンバーボックス機構を設けずに連通しているので、機能上、コスト上、美観上の効果とともに、気流止めの配置によって、軒天井内での空気の澱みをなくして屋根通気層にスムーズに送流し、軒天換気口は不要となり雨水や湿気の侵入を阻止して、通気層内の空気温度を高く保つことで換気量は増大し、また、軒天井の隙間からの空気の漏出入を低減する。
一実施形態においては、屋根断熱は屋根からの雨水浸水処理、室内からの湿気の処理、建設時の木材が含んでいる水分の処理を行うため屋根通気層が必須となる。
片流れ棟部は、強風時、暴風時に雨水が特に侵入しやすい部分であり、中でも空気流の流出口及び軒天井と外装材の取り合い部が顕著である。
屋根構造体においては、片流れ棟部に軒天井を設けず必要寸法のみ外装材より突出し、外装材の上方には間隔を設けて外装下地材と外装材の厚さの木製シーリング受を配置し、間隔にはシーリングを充填して防水対策を施し、また、空気流の流出口は強風の影響を受けにくい下向きとし、鼻隠しとシーリング受間に、慣用のポリプロピレン製の積層通気材を配置し、内側の空気は屋外に排出し、屋外の雨水浸入を阻止するのが好ましい。
自然換気量の算定対象となる通気層の開口面積は空気流入口及び外壁通気層、空気流出口のうち小面積の部分が採用される。本発明での木造住宅においては、土台水切と基礎梁に塗布するモルタルとの間隔が対象となるが、施工例や業界規格・基準の外壁通気層厚(15~21mm)及び空気流入口厚(10~15mm)より大きな間隔(標準寸法:25mm)として、十分な換気量を維持している。また、外壁通気層厚は30mm(標準寸法)とする。
屋根通気層の換気開口面積は、財団法人住宅金融普及協会発行の「木造住宅工事仕様書」の片流れ屋根においては、水下側(吸気側)は屋根の天井面積の1/900以上の開口面積を求められ、水上側(排気側)は1/1600以上の開口面積を求められている。
例えば、一辺が700cmの正方形状の木造住宅では吸気側545cm(1m当たり78cm)、排気側は307cm(1m当たり44cm)の開口面積を必要とする。本発明の木造住宅では、土台水切部の空気流入口(63)は1540cm(1m当たり220cm)、片流れ棟部の空気流出口(64)は積層通気材の開口面積994cm(1m当たり142cm)と基準より大で、両妻壁外壁面に換気口を設けることなく、夏期においては屋根内側に熱気や湿気を滞留させることなく屋外に排出する。冬期においては、湿気を滞留させることなく屋外に排出して結露を防止する。
一実施形態においては、外壁構造体の外装下地材下側に設置する土台水切は通気胴縁の外側に立上り片を取り付け外装下地材で挟み込むものであり、外壁通気層への空気流入は、土台水切の斜辺下側と基礎梁の仕上げ面との間隔の空気流入口から実施する。間隔の寸法は、業界規格・基準の10~15mmより大きな寸法(標準寸法:25mm)として通気層の空気流入口とし、水膜の張設を防止するとともに、広幅の立下り片を配置して外装材を伝って降下する雨水の引き込みを阻み、風切り音を抑制し空気流の上昇をスムーズに実施して木材の乾燥を促進する。
一実施形態においては、床構造体の床下空間では断熱層を張設した基礎梁と土間コンクリートとで形成する慣用のべた基礎及び基礎断熱を採用し、空気温度を高めて相対湿度の上昇を抑え、床下は隙間風による自然換気で結露の発生を防いでいる。また、1階床及び2階床は肉厚(標準厚:24mm)で透湿抵抗(45mhmmHg/g)の大きい構造用合板の床用合板を配して剛床を形成するとともに、水蒸気の上下階移動を抑えて外壁通気層に湿気を誘導するのが好ましい。
一実施例においては、小屋組の上弦材上に配置する肉厚(標準厚さ:24mm)の構造用合板である屋根用合板は、下方からの水蒸気の上昇を抑え、屋根の水蒸気を小屋裏に透過するのを抑制する。垂木受の欠込みや屋根断熱層との間隔で、木材が生じる水分や通気層の空気流に含まれる水蒸気を滞留することなく均一に分散されて屋外に排出する。
また、内側は断熱層が配置される外壁構造体の内装下地材と構造用面材の間隔は、外張り断熱によって室温と同温度になるため、湿気を滞留させることなく構造用面材側に移動させて外壁通気層から排出する。
したがって、本発明の木造住宅は、室内及び構造体に湿気を滞留させずに排出し、構造体の木材の乾燥を促し高寿命化を成すものである。
また、軸組や小屋組の外側で断熱、気密、防湿を形成し、基礎断熱、屋根断熱の採用で床下空間や小屋裏空間は、居住群や多目的ルームとして幅広い空間利用が可能となる。
そして、断熱、気密、防湿性能を確保しているのは建物外周部であり、内側は性能が確保された開放的な間取りとすることができる。
また、性能に支障を与えないので、予算に合わせて未完成な部屋も作ることが可能で、経年での改修、模様替も自由にでき、所有者自身が工事参加して実施できる。
本発明の外張り断熱通気耐震構造は、外壁構造体の湿気を外壁通気層で排出し、屋根構造体の湿気は屋根通気層から排出するものであり、また、床下空間においては、基礎断熱として空気温度を高めて相対湿度を低下し、隙間風によって微流の自然換気が行われる。小屋裏空間は、屋根からの日射熱による輻射熱を遮って快適温度環境を維持し、湿気を外壁通気層を介して屋外に排出する。室内も同様で外壁通気層を介して排出し内部結露を抑制して、ダニやカビの発生がなく健康的な建物となり、且つ、構造用木材の乾燥を促進して高耐久な建物を構築する。
湿気を排出する通気しやすい構造は断熱性能が劣るものであるが、本発明においては、外側断熱層に発泡プラスチック保温材、例えば、熱伝導が小さいフェノールフォームを採用し、また、ポリエチレンフィルムで被覆したロックウール保温材を内側断熱層として配置、さらに、透湿防水シートの配置で断熱気密性能を維持しながら湿気を排出し、省エネルギー性、遮音性を奏している。
外壁通気層及び屋根通気層は開口面積を大として、通気層内を上昇する空気流によって夏期は熱気を排出して小屋裏や室内の温度をやわらげ冷房効果を高めることができる。冬期は通気層内の温度が外気温より高くなって換気量が増加し、湿気を排出して結露を防ぐことができる。
本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造を用いた木造建物の一部の縦断側面図である。 本発明の一実施形態において外壁構造体を説明する図であり、(A)は外壁構造体の一部の横断面図、(B)は外壁構造体の一部の斜視図、(C)は外壁構造体の一部の縦断面図である。 本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造の外壁通気層への空気流入口の一部拡大縦断側面図である。 本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造の軒先部の説明図であり、(A)は一部拡大縦断側面図、(B)は屋根外装の縦断正面図である。 本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造の屋根通気層からの空気流出口の一部拡大縦断側面図である。 従来の外張り断熱構造を用いた木造建物であって、(A)は一部の縦断側面図、(B)は要部拡大縦断側面図である。
以下において、図1~図5を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造を用いた木造建物1の一部の縦断側面図である。図2は、本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造の外壁構造体2の説明図であって、(A)は外壁構造体2の一部の横断面図、(B)は外壁構造体2の一部の斜視図、(C)は外壁構造体2の一部の縦断側面図である。図3は、本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造の外壁構造体2下部の空気流入口63の一部の縦断側面図である。さらに図4は、本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造の屋根構造体4の水下側軒先54部の説明図であって、(A)は一部の縦断側面図、(B)は屋根外皮縦断正面図である。図5は本発明の一実施形態による外張り断熱通気耐震構造の屋根構造体4の水上側片流れ棟53の空気流出口64の一部の縦断側面図である。
[外壁構造体]
外壁構造体2においては、外壁躯体の外側において、屋外12側に向かって構造用面材26、透湿防水シート30、外側断熱層31、外壁通気層61及び外装下地材34、外装材35または外装材35がこの順に積層され、外壁躯体の内側において、室内側11に向かって、内装下地材81、内装材82が、この順に積層されている。壁躯体は、木造軸組工法やツーバイフォー工法において採用される一般的な構造をもつもので良く、例えば、土台21、一辺が105mmの断面正方形の柱22、幅45mm、厚さ(奥行)105mmの断面矩形状の間柱23、胴差し24及び軒桁25を備えるものとすることができる、外壁躯体の内部において、構造用面材26と内装下地材81との間には、これらと接するように内側断熱層80が配置されている。
構造用面材26は、建物の水平力に対抗できる壁倍率に優れた板状材であり、内側断熱層80からの湿気を透湿防水シート30及び外側断熱層31を透過できるものであればよい。構造用面材26として、ケイ酸カルシウム板、シラス板、構造用MDF(ミディアム デンシティ ファイバーボード)板、構造用合板、構造用パネル等の薄剛板を用いることができ、例えば、厚さ9mmの構造用MDF板(例えば、ノダ社、商品名:ハイベストウッド)を用いることができる。
外側断熱層31は、構造用面材26及び透湿防水シート30からの湿気を外壁通気層61に透過できるものであればよく、マット状のロックウール補強板や、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等といったJISA9511の発泡プラスチック系断熱板を採用すればよい。外側断熱層31として、例えば、厚さ35mm、熱伝導率0.172kcal/mh℃以下のフェノールフォームを用いることができる。
また、外側断熱層31の下端には、断熱層31及び構造用面材26の厚さと同厚の、幅41mm、高さ60mmの木製断熱層受32を土台21に付設し、通気層胴縁61を釘打ち固定する際に断熱層31への減り込みによる不陸を防いで直線性を維持する。そして、断熱層受32の上面内側に構造用面材26を挿合する欠込みを備え、断熱層31と断熱層31の外側接合部に気密テープtを張設して気密を保持するのが好ましい。
構造用面材26と外側断熱層31との間には、例えば、室内11からの水蒸気を透過し屋外12からの雨水の侵入を防止する、厚さ0.16mmの透湿防水シート30(例えば、デュポン社、商品名:タイベックス)を張設するものであり、断熱層31に透湿抵抗が大きく、吸水性が少ないプラスチック系断熱材を採用する場合には省略できる。
透湿防水シート30の上下方向接続は、構造用面材26に両面接着のブチルテープを水平方向に張設し、該ブチルテープの上側に下側通気防水シート30上端を張設し、下側透湿防水シートの上端から略150mm下側に両面接着ブチルテープを水平方向に張着し、該ブチルテープに上側透湿防水シート30の下端を下側透湿防水シート30に重ねて張設するものであり、左右方向の接続は略100mmの重ね継手とすればよく、重複形態の接続によって風圧、地震による変位に追随し、気密性及び透湿防水性を保持するものである。
そして、外側断熱層31には、外装下地材34、外装材35を張設する下地組の、幅60mm、厚さ30mmの木製通気胴縁33群を、軸組の柱22及び間柱23の立設位置に整合(標準間隔寸法:500mm)して配置するものであり、通気胴縁33群は、基礎梁712及びモルタル713上に載置し、通気胴縁33群に付設する外装下地材34及び外装材35、もしくは外装材の軸力を基礎及び地盤に伝達して構造体外皮の耐久性を保持する。
また、基礎梁712及びモルタル713上に載置した通気胴縁33群は、外壁躯体に通気胴縁33を持ち出し形態で配置するねじの変形、破断を防止する。そして、通気胴縁33の外側には、例えば、厚さ14mmの窯業系サイディング無塗装板の外装下地材34を配置し、厚さ4mmの撥水性塗り壁の外装材35を塗布するのが美観上、耐久上好ましい。外装材として、仕上材を具備した窯業系サイディング、金属製サイディング、金属パネル等を直張りしてもよく、外装下地材に塗装仕上磁器タイルや等としてもよい。
また、土台水切36は、例えば、厚さ0.35mmのカラー鉄板の折曲材であり、幅40mm、5mm勾配の斜辺361の内端から幅50mmの立上り片362が起立し、斜辺361の外端から幅50mmの立下り片363が垂下しており、基礎梁712の上面より下方30mmを立上り片363下端とするのが雨切り上好ましい。
土台水切36は通気胴縁33の外側に立上り片362を取り付け、外装下地材34で挟着する形態で配置する。
空気流60は、斜辺361と基礎梁712に塗布するモルタル713との間隔a1(標準寸法:25mm)の空気流入口63から吸気する。幅広の空気流入口63によって間隔a1では水膜の張設を防止し、且つ、外装材35を伝って下降する雨水は、外装材35下端と土台水切36の立上り片362との段差で雨切りされ、幅広の立下り片363によって落下するため、外壁通気層61への雨水の引き込みを低減するとともに、空気流入口63の開口面積が大なので空気流入によって木材の乾燥を促進して長寿命を奏功する。
内側断熱層80は、内装下地材81からの湿気を構造用面材26側に透過できるものであればよく、外壁躯体の柱22及び間柱23の間に自立する保形性を備えたロックウール、グラスウール等といった無機質繊維系断熱材を使用すればよく、また、ビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等のJISA9511の発泡プラスチック断熱材を使用してもよい。
内側断熱層80は、例えば、ロックウールを厚さ0.02mmのポリスチレンフィルムで被膜して透湿抵抗が内装下地材81よりも小さく、且つ、構造用面材26よりも大きくなるように透湿抵抗を調整するのが好ましい。内側断熱層として、例えば、厚さ100mm、熱伝導率0.033kcal/mh℃以下の、ポリスチレンフィルムで透湿抵抗を調整したJISA9522のマット状のロックウール(例えば、ニチアス社、商品名:ホームマット)を用いることができる。
内断熱層80の配置は、上下方向にあっては、断熱層80下側のポリスチレンフィルムの突出部を床用合板73上に折曲延展して、床材76で挟着可能とし、断熱層80上側は胴差し24もしくは軒桁25の内表面に釘で止着する。また、左右方向にあっては、両側突出部は柱22、間柱23の内表面に釘で止着する。
次いで、例えば、厚さ15mmの無垢フローリング等の床材76を床合板73上に内側断熱層80の下側突出部を挟着した形態で、柱22、間柱23の内表面に当接して釘で固定し、次に、木製の、慣用の巾木77及び厚さ12.5mmの石膏ボードの内装下地材81を、柱22、間柱23の内表面に釘で張着し、そして、内装下地材81の内表面に、壁紙、塗装、塗り壁等を採用すればよく、例えば、調湿性を有する塗り壁を用いて内装材82とするのが好ましい。
外張り断熱においては、内側断熱層80が配置される構造用面材26と内装下地材81との外壁躯体内の空気温度は、室温と同温度となり外壁躯体内の温度差がなくなるため、水蒸気は外壁躯体に滞留することなく分散して構造用面材26側に移動し、外壁躯体での結露の発生を阻止する。
[屋根構造体]
本発明の屋根構造体4は、下弦材41を両端に配置する軒桁25に架け渡し、軒桁25及び下弦材41上に屋根勾配(標準勾配:3/10)に整合して垂直材42群を立設し、垂直材42群上に上弦材44を配置し、垂直材42間に傾斜上に斜材43を配置して、例えば大空間を構築するトラス梁を形成する。そして、複数列にトラス梁を配置した小屋組の上弦材44に、厚さ24mm(標準厚さ)の構造用合板の屋根用合板45を配置して、強風や地震などの外力に対する抵抗力を保持する。
次いで、屋根用合板45接合部に気密テープtを張設し、一辺が105mmの断面正方形の垂木受46を垂直材42に配置間隔(標準寸法:1000mm)で左右方向に複数配置するものであり、垂木受46間には、例えば、マット状のロックウール補強板やJISA9511のビーズ法ポリスチレンフォーム、押出法ポリスチレンフォーム、硬質ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡プラスチック保温版を、例えば、厚さ80mmのフェノールフォームの屋根断熱層50を配置する。さらに、垂木受46群上に屋根材52の支持間隔(例えば、455mm)に合わせて幅45mm、高さ60mmの複数の垂木47を配置する。また、屋根構造体4の水上側片流れ棟53部及び水下側軒先54部の上端端の垂木受46は、おのおのの外面を屋根勾配に整合して切削加工し、外側断熱層31の密着性及び気密テープtの張着性を堅持するのが好ましい。
本発明において、屋根の形状は、切妻屋根や寄棟屋根、方形屋根、片流れ屋根等でよく、例えば、屋根勾配が3/10(標準勾配)の、水上側の片流れ棟53と水下側の軒先54との高低差が大の片流れ屋根が好ましい。この場合、屋根を南側に向けると太陽光パネルの発電効率が良く、また、水下側軒先54に配置する軒天井57の跳ね出し長さを大(標準寸法:750mm)として、外壁からの雨水侵入及び日射防止としている。
軒天井57は、外壁躯体より延設した形態の垂木47群先端に厚さ25m、高さ80mmの鼻隠し571を配置して屋根断面を閉止し、垂木47群上面には、建物の屋根と同様に、野地板48を載着し、野地板48条にはアスファルトルーフィング等の防水下葺材51を敷設し、スレート系、瓦系、金属系等の屋根材52を配置する。垂木47下面には、例えば、厚さ6mmのフレキシブルボード等の軒天材573を張設し、柱22の中心より外方に750mm(標準寸法)突設して軒天井57を構築する。また、軒天井57元端の垂木47群間に垂木47群に直行して気流止め471を配置し、外壁通気層61の空気流60を屋根通気層62に案内する。
また、水上側片流れ棟53は、柱22中心より外方188mmに厚さ25mm、高さ150mmの鼻隠し572を配置するものであり、外装材35と鼻隠し572との間隔a2の空気流出口64には、例えば、慣用のポリプロピレン製の断面台形形状の厚さ18mm、高さ40mmの積層通気材(宇部気密ハウジング社、商品名:イーヴスベンツ585)55を片流れ棟53の長さに亘って配置して、雨水を侵入させずに屋根通気層62からの空気流60が積層通気材55を貫流して屋外12に排出する。
また、外装下地材34及び外装材35の上方には、外装下地材34、外装材35と同厚(標準厚さ:18mm)で高さが40mmの木製シーリング受562を間隔を設けて配置し、間隔にはポリエチレン発泡体のバッカー561を挿入しシーリング56を充填して、雨水の侵入防止及び外装下地材34、外装材35の熱伸縮に対応する。
本発明において採用されている屋根断熱は、他の断熱方法すなわち梁(桁)上断熱及び天井断熱と比較して利点があることが知られている。
梁上断熱は複数の小屋梁と小屋梁の長さ方向と直行する方向に複数の梁(桁)上断熱層受とによって形成される格子状の構造体の上に断熱材を配置するものである。この方法は日射を受ける屋根下面の熱を輻射伝達で断熱層に降り注ぐため、小屋裏空間は、夏暑く、冬寒い状態となり、時間の経過とともに下階に熱伝達される課題がある。
天井断熱は、天井裏に繊維系断熱材を配置することにより、小屋裏と室内との間の断熱を行う方法である。この方法は、居住部と小屋裏空間とが断熱層を介して接近している(すなわち、居住部と小屋裏空間との間に移動しない空気層がない)ため、熱の移動が生じ、小屋梁のみで作業時の建物を形成したり外力を受けたりすることになるため、作業性、耐震性に課題があるといった問題がある。
一方、屋根に断熱層を設ける断熱方法は、梁(桁)上断熱及び天井断熱における課題を解決する方法と考えられており、例えば、屋根断熱は、外張り断熱とともに建物を被覆するため断熱面積は増えるが、小屋裏空間など建物空間を最大限利用することができる。屋根面は日射の影響が大きいため屋根面の輻射熱が直接断熱層に伝達しないようにするのが好ましく、野地板と断熱層との間に通気層を設けて屋外に排気するのがよい。
本発明においては、屋根断熱層50上面と垂木47下面とに間隔a3(標準間隔:25mm)を設けて屋根通気層62に連続させ通気層62を傾斜上昇させる。空気流60に含まれる水蒸気や木材に含まれる水蒸気等は、間隔a3(標準間隔:25mm)や通気層61内で均一に素早く分散されて通気層62から排出される。この場合、通気層62の水上側の空気温度は高温なので水蒸気を多量に含むことができ、水下側から押し込まれるように屋外12に水蒸気を含んだ空気60を効率よく排出される。
また、外壁構造体2の外側断熱層31と屋根構造体4の屋根断熱層50とは、屋根用合板45上の、軒先54部及び片流れ棟53部の垂木受46を介し連続し、木造建物1を外側断熱層31と屋根断熱層50とで包み込み、熱橋をなくして断熱性能を向上する。そして、軒先54部及び片流れ棟53部の垂木受46と外側断熱層31とは気密テープtを張着して気密性を維持するのが好ましい。
また、外側断熱層31及び外装下地材34間の厚さ30mmの外壁通気層61と、野地板48及び垂木受46間の厚さ60mmの屋根通気層62は外側断熱層31の上端で連通している。この場合、屋根断熱層50に発泡プラスチック板を採用すれば、断熱層の押し込み敷設による変位で屋根通気層62を閉塞することは少なく、断熱層50と垂木受47の間隔a3(標準間隔:25mm)及び垂木受46の溝形状の欠込み461とで、水蒸気の均質な分散ができ速やかに屋外12に排出することができる。また、厚さ24mmの構造用合板の屋根用合板45を小屋組の上弦材44に載着すれば、透湿抵抗(45mmmHg/g)の大きな屋根用合板45は防湿層となって、水蒸気の上下透過を抑制し断熱層50の吸水を防いで結露の発生を防いでいる。
[床構造体]
本発明の木造建物1は、例えば、耐震性に優れる基礎梁712及び土間コンクリート711からなる、慣用のべた基礎71を採用し、地面からの熱の遮断及び湿気が建物まで上昇しにくくするのがよい。また、基礎梁712の内外面のいずれか一方に基礎断熱層74を配置する基礎断熱とし、木製土台22の内面に断熱補強として発泡プラスチック断熱板を張着して土台断熱751を施し、基礎梁712外周面の土間コンクリート711上に透湿抵抗の大きな発泡プラスチック成型板の土間断熱板752を敷設するのが好ましい。
木造建物1においては、基礎梁712上に、例えば、プラスチック製の基礎パッキン材713を載置して、さらに断面矩形状の木製土台21が配置される。土台21には柱22が立設されており、対面する柱22間に、土間コンクリート上に配置する敷土台722に立設する床束721に支承されて大引き72が配置され、土台21及び大引き72上には透湿抵抗(45mmmHg/g)が大の厚さ24mmの構造用合板73を張設して、強風や地震による水平力に抵抗するとともに、床下空間13からの水蒸気の透過を阻止する。また、床空間13は隙間風によって微流の自然換気が行われ、結露発生の恐れは小さい。そして、床用合板73上には内側断熱層80のポリエチレンフィルムの突出部を挟着して、例えば、無垢フローリング等の床材63を配置して気密性を維持する。
また、2階床組は、下階の柱22上に胴差し24が配置され、対面する柱22上に配置される胴差し24間に梁77を架け戻し、胴差し24及び梁77上には厚さ24mmの構造用合板の床用合板73を張設して剛床を形成し、強風や地震の水平力に対抗している。そして、床用合板73の接合部には気密テープtを張着し気密性を保持して、床用合板73上に、例えば、無垢フローリング等の床材63を張設する。したがって、1階と2階の外壁構造体2及び床構造体7は床用合板73で連続され、屋根構造体4は厚さ24mmの屋根用合板45で連続される。また、外壁構造体2及び屋根構造体4の水上側の垂直面及び三角形状の外壁表面は構造用面材26で連続されて耐震性、耐風性に優れた木造建物1を構築する。
[通気層の構造]
本発明の木造建物1における厚さ30mmの外壁通気層61及び厚さ60mmの屋根通気層62は、屋外12からの侵入する雨水や構造体の木材から発生する水分や、室内11からの水蒸気を屋外に排出し、外壁躯体に湿気を滞留させずに木材の乾燥を促進するとともに、外壁構造体2及び屋根構造体4の内部結露を防止する。
夏期においては、日射によって熱せられた外装下地材34、外装材35及び野地板48、屋根材52を通気層61及び62の外気温より低温の空気流60が冷却し、外装下地材34、野地板48から断熱層31及び50への輻射熱温度を低下して、低温度での均一化を図り、外装下地材34、外装材35及び野地板48、屋根材52を長寿命とする。
また、冬期においては、低温の外気によって冷却された外装下地材34、外装材35及び野地板48、屋根材52を通気層61及び62の外気より高温の空気流60が温め、断熱層31及び50からの輻射熱温度を上昇して温度の均一化を図り、通気層61及び62の温度が外気より高温のため換気量が増大して外装下地材34、外装材35及び野地板48、屋根材52を長寿命とする。
外壁通気層61への外気の流入は、土台水切36と基礎梁712に塗布するモルタル713との間隔a1(間隔寸法:25mm)の空気流入口から外気を吸気し、外装下地材34と外側断熱層31間に間隔455mm(標準寸法)で配置する幅60mm、厚さ30mmの通気胴縁33で形成される外壁通気層61を、上下温度差による浮力によって空気流60が上昇し、屋根5水下側の軒先54部において、外壁通気層61から、一辺が105mmの正方形状の垂木受46上に410mm(標準寸法)間隔で配置する幅45mm、高さ60mmの複数の垂木46間から屋根通気層62に空気流60が流入して通気層62を傾斜上昇する。
また、屋根5水上側の片流れ棟53部において、軒先54の屋根通気層61から傾斜上昇した空気流60は、片流れ棟53側の外壁通気層61を上昇した空気流601と合流して、鼻隠し571と外装材35との間隔a2(標準間隔)に配置する、慣用の、断面台形状の厚さ18mm、幅40mm、のポリプロピレン製積層通気材(例えば、宇部気密ハウジング社、商品名:イーヴスベンツ585)55を採用して、雨水侵入を防ぎ、水蒸気を含んだ空気流60が貫通して屋外12に排気する。
この場合、小屋組の上弦材44上に載着する厚さ24mmの屋根用合板45の上に、水下側の軒先54部から水上側の片流れ棟53部に向かって間隔1000mm(標準寸法)で左右方向に配置する、一辺が105mmの正方形状の垂木受46には、屋根断熱層50の上面と垂木47下面との間隔a3(標準間隔:25mm)の位置に幅100mm、厚さ(高さ)25mmの欠込461を間隔910mm(標準寸法)で設けて、屋根通気層62の空気流60に含まれる水蒸気及び構造体の木材から発生する水分、暴風強風によって侵入する雨水を屋根5全体に澱みなく一様に分散しスムーズに屋外12に排出して構造体の木材の乾燥を促進し腐朽を防止する。
外壁通気層61の各部位の換気開口面積は、外装材35下端に配置される土台水切31の空気流入口63においては220cm/m(間隔a1の厚さ2.5cm×(100cm―通気胴縁33の幅6cm×2ヶ所))、外壁構造体2の通気層61が264cm/m(外壁通気層61の厚さ3cm×(100cm―通気胴縁33の厚さ6cm×2ヶ所))、外壁通気層61が直結する屋根通気層62が519cm/m(通気層62の厚さ6cm×(100cm―垂木47の幅4.5cm×34ヶ所))であり、そのうち小面積の空気流入口63が外壁通気層61の換気用開口面積となる。
例えば、一般的な通気層厚1.8cmの場合は164cm/m(通気層厚1.8cm×(100cm―通気胴縁の幅4.5cm×2ヶ所))であり、本発明の外壁通気層61は十分な開口面積を備えている。
片流れ屋根の屋根通気層の各部位の換気開口面積は、財団法人住宅金融普及協会発行の「木造住宅工事仕様書」の基準においては、水下側の軒天54部(吸気側)は屋根天井面積の1/900の開口面積が必要であり、水上側の片流れ棟53部(排気側)は1/1600の開口面積が求められる。例えば、一辺が700cmの正方形状の住宅では、吸気側は545cm(軒先54長さ1m当たり78cm)、排気側は307cm(片流れ棟53長さ1m当たり44cm)を必要とする。本発明の木造住宅1では、吸気側は土台水切36の空気流入口63の開口面積220cm/mが対象となり、排気側は片流れ棟53部の鼻隠し572とシーリング受562とに挟着配置される慣用のポリプロピレン製積層通気材55の換気面積142cm/mが対象となり、吸気側及び排気側は基準を上回り、本建物1は、下記は屋根5内に熱気や湿気を滞留させることなく屋外に排出して冷房効果を高め、冬期は湿気を滞留することなく排出し、結露を防止する。
また、本発明の木造住宅1は開口面積による換気量から外壁両妻面に換気口を設置する必要はなく、片流れ棟43部では、空気流出口64を下向きの隠蔽形態として暴風や強風でも雨水侵入を防止するものであり、そして間隔a2に配置する積層通気材55が室内11から湿気を放湿し、屋外12からの雨水侵入を阻止するものであり、屋根5は雨水侵入を防止し水蒸気を排出して、木材の乾燥を促進し劣化のリスクを低減する。
[外皮]
本発明の木造建物1においては、断熱性能は、木造躯体外側の発泡プラスチック保温材の外側断熱層31及び屋根断熱層50が担い、気密性能は、木造躯体の外側の透湿防水シート30が外壁を、屋根用合板45が屋根5をおのおの担い、防湿性能は木造躯体外側の外壁通気層61、屋根通気層62が担当する。
木造躯体の外皮で断熱、気密、防湿性能を維持することによって、室内11の間取りや床下空間13及び小屋裏空間14の利用は自由に設定することができ、未完成部分を残しても、経年による改修が生じても断熱、気密、防湿性能に支障を与えず、快適性を維持し、所有者自身も工事に参加できる。
[その他]
本発明の木造建物1は剛性に優る床構造体7及び屋根構造体4と壁倍率に優る外壁構造体2との組み合せにより、あたかも鉄筋コンクリート造のダイヤフラム構造のように、耐震性、耐風圧性に優れた木造建物1となり、外壁構造体2及び屋根構造体4、床構造体7の湿気を屋外12に放湿し木材の湿潤を阻止して、耐久性に優れ、且つ、ダニやカビがなく、シックハウス症、化学物質過敏症を抑制し、住む人が健康的で高寿命な木造住宅を提供する。
1 木造住宅
11 室内
12 屋外
13 床下空間
14 小屋裏空間
2 外壁構造体
21 土台
22 柱
23 間柱
24 胴差し
25 軒桁
26 構造用面材
3 外装
30 透湿防水シート
31 外側断熱層
32 断熱層受
33 通気胴縁
34 外装下地材
35 外装材
36 土台水切
361 斜辺
362 立上り片
363 立下り片
4 屋根構造体
41 下弦材
42 垂直材
43 斜材
44 上弦材
45 屋根用合板
46 垂木受
461 欠込み
47 垂木
471 気流止め
48 野地板
5 屋根
50 屋根断熱層
51 下葺材
52 屋根材
53 片流れ棟
54 軒先
55 積層通気材
56 シーリング
561 バッカー
562 シーリング受
57 軒天井
571、572鼻隠し
573 軒天材
6 通気層
60,601 空気流
61 外壁通気層
62 屋根通気層
63 空気流入口
64 空気流出口
7 床構造体
71 べた基礎
711 土間コンクリート
712 基礎梁
713 パッキン材
714 モルタル
72 大引き
721 床束
722 敷土台
73 床用合板
74 基礎梁断熱層
75 断熱板
751 土台断熱
752 土間断熱材
76 床材
77 梁
8 内装
80 内側断熱層
81 内装下地材
82 内装材
a1、a2、a3間隔
t 気密テープ

Claims (9)

  1. 軸組と小屋組とを有する木造建物に用いられる外張り断熱通気耐震構造であって、内装材、内装下地材、構造用面材、外側断熱層、外壁通気層、並びに外装仕上材、及び外装材、または外装材がこの順で積層された外壁構造体と、屋根用合板、屋根断熱層、屋根通気層、及び屋根材の順で積層された屋根構造体とは、片流れ棟部及び軒先部の垂木受を挟んでおのおの連続し、前記外壁構造体の外壁通気層と前記屋根構造体の屋根通気層とが、直に、連続するように配置されていることを特徴とする、外張り断熱通気耐震構造。
  2. 前記外壁構造体の前記外壁通気層と前記屋根構造体の前記屋根通気層とが連続する軒天井に、複数の前記垂木に直行して気流止めを配置することを特徴とする、請求項1に記載の外張り断熱通気耐震構造。
  3. 前記木造建物は、前記外壁通気層及び前記屋根通気層の厚さを厚くして、該外壁通気層及び該屋根通気層の開口面積を広くすることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の外張り断熱通気耐震構造。
  4. 前記屋根構造体の前記片流れ棟部及び前記軒先部の前記垂木受は、おのおのの外面を屋根勾配に合わせて切削加工することを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の外張り断熱通気耐震構造。
  5. 前記垂木受上面と前記屋根断熱材とに間隔(a3)を設けるとともに、前記垂木受の上側に溝形状の欠込み(461)を備えることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の外張り断熱通気耐震構造。
  6. 前記外壁通気層の換気用開口面積は、前記外装材下端に配置する土台水切の空気流入口(63)が対象となり、前記屋通気層の換気開口面積は前記片流れ棟の空気流出口(64)が対象となることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の外張り断熱通気耐震構造。
  7. 前記外壁構造体の前記外壁通気層を形成する複数の前記通気胴縁は、基礎梁上面に載置することを特徴とする、請求項1から請求項6のいずれかに記載の外張り断熱通気耐震構造。
  8. 前記外壁構造体の前記外壁通気層への空気流入は、前記通気胴縁群下側に配置する折曲形状の土台水切下側の前記空気流入口から吸気することを特徴とする、請求項6に記載の外張り断熱通気耐震構造。
  9. 断熱機能、気密機能、防湿機能の付与は、前記外壁構造体においては、前記軸組の構造用面材の外側で実施し、前記屋根構造体においては、前記小屋組の上弦材の外側で実施することを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の外張り断熱通気耐震構造。
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