JP2023135514A - 架橋体の製造方法 - Google Patents

架橋体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023135514A
JP2023135514A JP2022040770A JP2022040770A JP2023135514A JP 2023135514 A JP2023135514 A JP 2023135514A JP 2022040770 A JP2022040770 A JP 2022040770A JP 2022040770 A JP2022040770 A JP 2022040770A JP 2023135514 A JP2023135514 A JP 2023135514A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
cyclic olefin
olefin copolymer
mass
crosslinked product
parts
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022040770A
Other languages
English (en)
Inventor
真菜美 上野
Manami Ueno
文人 竹内
Fumito Takeuchi
浩太郎 朝比奈
Kotaro Asahina
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsui Chemicals Inc
Original Assignee
Mitsui Chemicals Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsui Chemicals Inc filed Critical Mitsui Chemicals Inc
Priority to JP2022040770A priority Critical patent/JP2023135514A/ja
Publication of JP2023135514A publication Critical patent/JP2023135514A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Macromonomer-Based Addition Polymer (AREA)

Abstract

【課題】誘電特性及び耐熱性の性能バランスが向上した架橋体を得ることが可能な製造方法を提供する。【解決手段】架橋体を製造するための製造方法であって、前記架橋体が、熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)と、重合開始剤と、を含む環状オレフィン共重合体組成物の架橋体であり、前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.05質量部未満であり、前記製造方法が、前記環状オレフィン共重合体組成物を、100kPa以下の真空下で、250℃以上で架橋する架橋工程を含む、架橋体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、架橋体の製造方法に関する。
環状オレフィン共重合体の架橋体は、例えば、耐熱性、機械的特性、透明性、誘電特性、耐溶剤性、成形性、寸法安定性等に優れているため、高周波回路基板を含む電子部品の分野で利用されている。
昨今、高周波帯域を使用する無線通信機器等の増加に加え、通信速度の高速化によって、必然的に高い帯域の周波数帯が用いられることが多くなってきた。これに伴い、高周波における伝送ロスを極限まで軽減するために誘電正接が小さい回路基板が求められている。
このような回路基板に用いる樹脂材料としては、例えば、特許文献1や特許文献2に記載された、特定のジエン化合物を共重合した環状オレフィン共重合体を有機過酸化物等で架橋することにより得られるシートが挙げられる。
特許文献1には、(A)1種以上の特定のオレフィン由来の繰り返し単位と、(B)1種以上の特定の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、から構成され、架橋性基を有し、特定のオレフィン由来の繰り返し単位(A)と特定の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)とのモル比((A)/(B))が40/60~80/20である環状オレフィン共重合体(P)が、優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性及び加工性を有する架橋体を得ることができることが記載されている。
特許文献2には、(A)1種以上のオレフィン由来の特定の繰り返し単位と、(B)特定の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、(C)1種以上の特定の環状オレフィン由来の繰り返し単位と、を含み、繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)が19モル%~36モル%含まれる、架橋性基を有する環状オレフィン共重合体が、誘電特性の経時的安定性及び耐熱性に優れ、さらに透明性、機械的特性、誘電特性及びガスバリア性にも優れる架橋体を提供することができることが記載されている。
特開2010-100843号公報 国際公開第2012/046443号
近年、誘電特性に対する要求はますます高まっている。
本発明者らが検討した結果、重合開始剤を用いて環状オレフィン共重合体組成物を架橋させると、環状オレフィン共重合体の酸化劣化等の理由により誘電特性が低下する、すなわち誘電正接が高くなってしまう場合があることが明らかになった。一方で、重合開始剤の量を減らすと、得られる架橋体の耐熱性が低下してしまう場合があることが明らかになった。
すなわち、本発明者らの検討によると、特許文献1及び2に記載の発明には、誘電特性及び耐熱性の性能バランスについて改善の余地があることが明らかになった。
本発明は上記事情を鑑みなされたものであり、誘電特性及び耐熱性の性能バランスが向上した架橋体を得ることが可能な製造方法を提供するものである。
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、熱硬化型の環状オレフィン共重合体を架橋する工程において、重合開始剤の使用量を少なくしつつ、架橋時の加熱温度を高め、さらに真空下で架橋をおこなうことで、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスを向上できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明によれば、以下に示す架橋体の製造方法が提供される。
[1]
架橋体を製造するための製造方法であって、
前記架橋体が、熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)と、重合開始剤と、を含む環状オレフィン共重合体組成物の架橋体であり、
前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.05質量部未満であり、
前記製造方法が、前記環状オレフィン共重合体組成物を、100kPa以下の真空下で、250℃以上で架橋する架橋工程を含む、架橋体の製造方法。
[2]
前記架橋工程が280℃以上320℃以下でおこなう、前記[1]に記載の架橋体の製造方法。
[3]
前記架橋工程が290℃以上310℃以下でおこなう、前記[1]又は[2]に記載の架橋体の製造方法。
[4]
前記架橋工程は、前記環状オレフィン共重合体組成物を加熱加圧する工程を含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[5]
前記架橋工程における加熱加圧時の圧力が0.1MPa以上100MPa以下である、前記[4]に記載の架橋体の製造方法。
[6]
前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.02質量部未満である、前記[1]~[5]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[7]
前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.01質量部以下である、前記[1]~[6]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[8]
前記環状オレフィン共重合体組成物が重合開始剤を含まない、前記[1]~[7]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[9]
前記環状オレフィン共重合体組成物中の酸化防止剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.05質量部以下である、前記[1]~[8]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[10]
前記環状オレフィン共重合体組成物が酸化防止剤を含まない、前記[1]~[9]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[11]
前記架橋体の10GHzにおける誘電正接が0.0010以下である、前記[1]~[10]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[12]
前記架橋体のガラス転移温度が140℃以上である、前記[1]~[11]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
[13]
前記架橋体は回路基板に用いられる、前記[1]~[12]のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
本発明によれば、誘電特性及び耐熱性の性能バランスが向上した架橋体を得ることが可能な製造方法を提供することができる。
以下、本発明を実施形態に基づいて説明する。なお、本実施形態では、数値範囲を示す「A~B」は特に断りがなければ、A以上B以下を表す。また、数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限及び下限は任意に組み合わせることができる。さらに、「A及び/又はB」の記載は、Aの場合、Bの場合、及び、AとBの両方の場合のいずれをも含む概念である。
[架橋体の製造方法]
本発明の架橋体の製造方法は、架橋体を製造するための製造方法であって、前記架橋体が、熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)(以下、単に「環状オレフィン共重合体(m)」ともいう)と、重合開始剤と、を含む環状オレフィン共重合体組成物の架橋体であり、前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.05質量部未満であり、前記製造方法が、前記環状オレフィン共重合体組成物を、100kPa以下の真空下で、250℃以上で架橋する架橋工程を含む。
本発明に係る架橋体の製造方法によれば、誘電特性及び耐熱性の性能バランスが向上した架橋体を得ることができる。
このような効果が得られる理由は、以下の通りであると推察される。
まず、環状オレフィン共重合体組成物中の重合開始剤の含有量を上記上限値未満にすることにより、架橋工程おける環状オレフィン共重合体の酸化劣化等を抑制できるため、誘電特性を向上できると考えられる。さらに、100kPa以下の真空下で架橋工程をおこなうとともに、架橋工程における加熱温度を上記下限値以上とすることにより、得られる架橋体のガラス転移温度を向上でき、重合開始剤の量を減らしたことによる耐熱性の低下を抑制できると考えられる。
以上の理由から、本発明に係る架橋体の製造方法によれば、誘電特性及び耐熱性の性能バランスが向上した架橋体を得ることができると考えられる。
以下、本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物を構成する各成分について説明する。
<環状オレフィン共重合体(m)>
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)を含む。
環状オレフィン共重合体(m)は、熱硬化性を有し、かつ環状オレフィン由来の繰り返し単位を含む共重合体であれば特に制限なく使用することができる。
以下、環状オレフィン共重合体(m)について詳細に説明するが、本発明で用いられる環状オレフィン共重合体(m)は以下の態様に限定されない。
環状オレフィン共重合体(m)は、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、(A)下記式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、(B)下記式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、(C)下記式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位と、を含むことが好ましい。
Figure 2023135514000001
前記式(I)において、R300は水素原子又は炭素原子数1~29の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を示す。
Figure 2023135514000002
前記式(III)中、uは0又は1であり、vは0又は正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0又は1であり、wは0又は1であり、R61~R76並びにRa1及びRb1は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、tは0~10の正の整数であり、R75及びR76は、互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。
Figure 2023135514000003
前記式(V)中、uは0又は1であり、vは0又は正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0又は1であり、wは0又は1であり、R61~R78並びにRa1及びRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R75~R78は互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。
環状オレフィン共重合体(m)において、環状オレフィン共重合体(m)中の繰り返し単位の合計モル数を100モル%とした場合に、オレフィン由来の繰り返し単位(A)の含有量が好ましくは10モル%以上90モル%以下、より好ましくは15モル%以上85モル%以下、更に好ましくは20モル%以上80モル%以下、更に好ましくは30モル%以上80モル%以下、更に好ましくは35モル%以上80モル%以下、更に好ましくは40モル%以上80モル%以下であり、環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)の含有量が好ましくは1モル%以上40モル%以下、より好ましくは2モル%以上35モル%以下、更に好ましくは3モル%以上30モル%以下であり、環状オレフィン由来の繰り返し単位(C)の含有量が好ましくは1モル%以上60モル%以下、より好ましくは3モル%以上55モル%以下、更に好ましくは5モル%以上50モル%以下である。
環状オレフィン共重合体(m)中の繰り返し単位の各含有量が上記範囲内であると、本発明に係る架橋体は、誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させることができる。さらに、本発明に係る架橋体は、機械特性、透明性及びガスバリア性の性能バランスをより向上させることができる。言い換えればこれらの物性のバランスに優れた架橋体を得ることができる。
環状オレフィン共重合体(m)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは、付加共重合して前記式(I)で表される骨格を与えるモノマーであり、下記式(Ia)で表されるオレフィンである。
Figure 2023135514000004
前記式(Ia)中、R300は水素原子又は炭素原子数1~29の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を示す。式(Ia)で表されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。より優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性及びガスバリア性を有する架橋体を得る観点から、これらの中でも、エチレン及びプロピレンからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、エチレンがより好ましい。前記式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは二種類以上を用いてもよい。
環状オレフィン共重合体(m)の共重合原料の一つである環状非共役ジエン単量体は付加共重合して前記式(III)で表される構成単位を形成するものである。例えば、前記式(III)に対応する下記式(IIIa)で表される環状非共役ジエンが用いられる。
Figure 2023135514000005
前記式(IIIa)中、uは0又は1であり、vは0又は正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0又は1であり、wは0又は1であり、R61~R76並びにRa1及びRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、tは0~10の正の整数であり、R75及びR76は、互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。
前記式(IIIa)で表される環状非共役ジエンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式で表される環状非共役ジエンを挙げることができる。これらの中でも、前記式(IIIa)で表される環状非共役ジエンとしては、5-ビニル-2-ノルボルネン及び8-ビニル-9-メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンからなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、5-ビニル-2-ノルボルネンがより好ましい。
Figure 2023135514000006
Figure 2023135514000007
前記式(IIIa)で表される環状非共役ジエンは、例えば、以下の式(IIIb)で表すこともできる。
Figure 2023135514000008
前記式(IIIb)中のnは0~10の整数であり、Rは水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であり、Rは水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基である。
環状オレフィン共重合体(m)は、式(III)で表される環状非共役ジエン由来の構成単位を含むことにより、側鎖部分、すなわち共重合の主鎖以外の部分に二重結合を有することが特徴である。
環状オレフィン共重合体(m)の共重合原料の一つである環状オレフィンモノマーは付加共重合して前記式(V)で表される構成単位を形成するものである。例えば、前記式(V)に対応する下記式(Va)で表される環状オレフィンモノマーが用いられる。
Figure 2023135514000009
前記式(Va)中、uは0又は1であり、vは0又は正の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0又は1であり、wは0又は1であり、R61~R78並びにRa1及びRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3~15のシクロアルキル基、又は炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基であり、R75~R78は、互いに結合して単環又は多環を形成していてもよい。
前記式(Va)で表される環状オレフィンの具体例については国際公開第2006/118261号に記載の化合物を用いることができる。
前記式(Va)で表される環状オレフィンとしては、ビシクロ[2.2.1]-2-ヘプテン(「ノルボルネン」ともいう)及びテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(「テトラシクロドデセン」ともいう)からなる群から選択される少なくとも一種が好ましく、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンがより好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体及び架橋体の弾性率が保持され易く、また異種二重結合構造を含まないため架橋の制御をし易くなる利点がある。
共重合成分として、前記式(Ia)で表されるオレフィンモノマー及び前記式(Va)で表される環状オレフィンを用いることにより、環状オレフィン共重合体(m)の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。
環状オレフィン共重合体(m)は、(A)前記式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位、(B)前記式(III)で表される環状非共役ジエン由来の繰り返し単位及び(C)前記式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位に加えて、前記式(III)で表される環状非共役ジエン及び前記式(V)で表される環状オレフィン以外の環状オレフィン由来の繰り返し単位、及び鎖状ポリエン由来の繰り返し単位からなる群から選択される少なくとも一種の繰り返し単位をさらに含んでもよい。
この場合、環状オレフィン共重合体(m)の共重合原料として、式(Ia)で表されるオレフィンモノマー、式(IIIa)で表される環状非共役ジエンモノマー、式(Va)で表される環状オレフィンモノマーに加えて、式(IIIa)で表される環状非共役ジエンモノマー及び式(Va)で表される環状オレフィンモノマー以外の環状オレフィンモノマー、及び/又は鎖状ポリエンモノマーを用いることができる。
このような環状オレフィンモノマー及び鎖状ポリエンモノマーとしては、例えば、下記式(VIa)で表される環状オレフィン、下記式(VIIa)で表される環状オレフィン、下記式(VIIIa)で表される鎖状ポリエン等が挙げられる。これらの環状オレフィンや鎖状ポリエンは異なる二種以上を用いてもよい。
Figure 2023135514000010
式(VIa)中、x及びdは0又は1以上の整数、好ましくは0以上2以下の整数、より好ましくは0又は1であり、y及びzは0、1又は2であり、R81~R99は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基もしくは炭素原子数3~15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素基又はアルコキシ基であり、R89及びR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子又はR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1~3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R95とR92又はR95とR99とは互いに結合して単環又は多環の芳香族環を形成していてもよい。
Figure 2023135514000011
前記式(VIIa)中、R100及びR101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数1~5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。
Figure 2023135514000012
前記式(VIIIa)中、R201からR206は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、又は炭素原子数1~20の炭化水素基であり、Pは炭素原子数1~20の直鎖又は分岐状の炭化水素基で、二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。
前記式(VIa)及び式(VIIa)で表される環状オレフィンの具体例については国際公開第2006/118261号の段落0037~0063に記載の化合物を用いることができる。
式(VIIIa)で表される鎖状ポリエンとしては、例えば、1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、DMDT、1,3-ブタジエン,1,5-ヘキサジエン等が挙げられる。また1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン等のポリエンから環化した環化性のポリエンを用いてもよい。
環状オレフィン共重合体(m)が、前記式(VIIIa)で表される鎖状ポリエン由来の構成単位、あるいは式(III)で表される環状非共役ジエン及び式(V)で表される環状オレフィン以外の環状オレフィン〔例えば、式(VIa)、式(VIIa)〕に由来する構成単位を含む場合は、該構成単位の含有量は、前記式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位、前記式(III)で表される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位、前記式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位の合計モル数に対して、例えば0.1モル%以上100モル%以下、好ましくは0.1モル%以上50モル%以下である。
共重合成分として、前述した式(I)で表されるオレフィンモノマー、式(VIa)又は(VIIa)で表される環状オレフィン及び式(VIIIa)で表される鎖状ポリエンを用いることにより、本発明に係る効果が得られるとともに、環状オレフィン共重合体の溶媒への溶解性がより向上するため成形性が良好となり、製品の歩留まりが向上する。これらのうちでも式(VIa)又は(VIIa)で表される環状オレフィンが好ましい。これらの環状オレフィンは剛直な環構造を有するため共重合体及び架橋体の弾性率が保持され易く、また異種二重結合構造を含まないため架橋の制御をし易くなる利点がある。
環状オレフィン共重合体(m)は目的とする用途に応じて、モノマーの仕込み比により、そのコモノマー含有量、及びガラス転移温度(Tg)をコントロールできる。環状オレフィン共重合体(m)のTgは、例えば300℃以下、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは170℃以下、更に好ましくは150℃以下である。Tgが上記上限値以下であると、環状オレフィン共重合体(m)の溶融成形性及びワニス化するときの溶媒への溶解性が向上する。
環状オレフィン共重合体(m)の、135℃中デカリン中で測定した極限粘度[η]は、例えば0.10dl/g以上15dl/g以下、好ましくは0.10dl/g以上5dl/g以下、より好ましくは0.15dl/g以上3dl/g以下の範囲である。極限粘度[η]が上記上限値以下であると、成形性をより向上させることができる。また、極限粘度[η]が上記下限値以上であると、本発明に係る架橋体の耐熱性や機械的特性をより向上させることができる。
なお、環状オレフィン共重合体(m)の極限粘度[η]は、重合触媒、助触媒、H添加量、重合温度等の重合条件により制御することが可能である。
<環状オレフィン共重合体(m)の製造方法>
本発明に係る環状オレフィン共重合体(m)は、例えば、国際公開第2012/046443号の段落0075~0219に記載の環状オレフィン共重合体の製造方法にしたがって製造することができる。ここでは詳細は省略する。
<重合開始剤>
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、重合開始剤を含むことができる。当該重合開始剤としては特に制限されず公知の重合開始剤を用いることができ、例えば、ラジカル重合開始剤、硫黄、ヒドロシリル基含有化合物等を用いることができる。
ラジカル重合開始剤による架橋は、ポリオレフィンで適用されている通常のラジカル重合開始剤による架橋方法をそのまま適用できる。すなわち環状オレフィン共重合体組成物にジクミルパーオキシドのようなラジカル重合開始剤を配合し、加熱、架橋する。
ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤及びこれらを併用することができる。これらのラジカル重合開始剤のうち、熱ラジカル重合開始剤を使用する場合は、保存安定性の観点から10時間半減期温度が例えば80℃以上、好ましくは120℃以上のものである。このような開始剤として、例えば、ジクミルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)2,5-ジメチルヘキシン-3、ジ-t-ブチルパーオキシド、イソプロピルクミル-t-ブチルパーオキシド、ビス(α-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキシド類;1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、エチル-3,3-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトラオキシシクロノナン等のパーオキシケタール類;ビス(t-ブチルパーオキシ)イソフタレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート等のパーオキシエステル類;t-ブチルハイドロパーオキシド、t-ヘキシルハイドロパーオキシド、クミンハイドロパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、p-メンタンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド類;2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン等のビベンジル化合物類;3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン等が挙げられる。
ラジカル重合開始剤のうち、光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントン及びこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。また、これらの光ラジカル重合開始剤とともに増感剤を使用することもできる。増感剤としては、例えば、アントラキノン、1,2-ナフトキノン、1,4-ナフトキノン、ベンズアントロン、p,p'-テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物;ニトロベンゼン、p-ジニトロベンゼン、2-ニトロフルオレン等のニトロ化合物;アントラセン、クリセン等の芳香族炭化水素;ジフェニルジスルフィド等の硫黄化合物;ニトロアニリン、2-クロロ-4-ニトロアニリン、5-ニトロ-2-アミノトルエン、テトラシアノエチレン等の窒素化合物等を挙げることができる。
硫黄等により架橋する場合には、環状オレフィン共重合体組成物に硫黄系化合物、必要に応じて加硫促進剤、加硫促進助剤を配合して加熱し、架橋反応を行う。
架橋反応を起こすため使用される硫黄系化合物は公知の種々のものが使用でき、一例を挙げると硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等がある。また加硫促進剤も種々のものを使用でき、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾール-スルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ベンゾチアジル-ジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジ-オルソ-トリルグアニジン、オルソートリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレート等のグアニジン系;アセトアルデヒド-アニリン反応物;ブチルアルデヒド-アニリン縮合物;ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニア等のアルデヒドアミン、又はアルデヒド-アンモニア系;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;チオカルバニリド、ジエチルチオユリアジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソートリルチオユリア等のチオユリア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;ジブチルキサントゲン酸亜鉛等のザンテート系;等を挙げることができる。加硫促進助剤としては、酸化亜鉛、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、酸化マグネシウム、リサージ、鉛丹、塩基性炭酸鉛等の金属酸化物系、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸鉛等の脂肪酸系、トリエタノールアミン、ジエチレングリコール等の有機アミン・グリコール系等を挙げることができる。
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、ヒドロシリル基を1分子中に少なくとも2つ有するヒドロシリル基含有化合物を用いて架橋することもできる。ヒドロシリル基含有化合物を用いた架橋については、例えば、特開2015-193680号公報に記載の方法にしたがって行うことができる。ここでは詳細は省略する。
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物中の重合開始剤の含有量は、環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、0.05質量部未満、より好ましくは0.02質量部未満、更に好ましくは0.01質量部以下であり、そして、好ましくは0質量部以上である。
ここで、重合開始剤の含有量が0質量部以上0.05質量部未満であるとは、重合開始剤を含有してもよく含有しなくてもよいが、含有するとしても0.05質量部未満であることを意味する。
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、重合開始剤を含まないことが更に好ましい。すなわち本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物中の重合開始剤の含有量は、環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部であることが更に好ましい。
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、架橋助剤を含むことができる。架橋助剤としては特に制限はないが、例えば、p-キノンジオキシム、p,p'-ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸/酸化亜鉛混合物、アリルメタクリレート等のアクリレートもしくはメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物類;N,N'-m-フェニレンビスマレイミド、N,N'-(4,4'-メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類;ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン類等が挙げられる。これらの架橋助剤は単独で用いてもよいし、組み合わせて使用することもできる。
<酸化防止剤>
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、酸化防止剤を含むことができる。当該重合開始剤としては特に制限されず公知の酸化防止剤を用いることができ、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤等を用いることができる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等の特開昭63-179953号公報や特開平1-168643号公報に記載されるアクリレート系フェノール化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4'-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4'-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオナート、トリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート)、トコフェノール等のアルキル置換フェノール系化合物;6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビスオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアニリノ)-2,4-ビスオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビスオクチルチオ-1,3,5-トリアジン、2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。これらの中でも、アクリレート系フェノール化合物やアルキル置換フェノール系化合物が好ましく、アルキル置換フェノール系化合物がより好ましい。
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン等のモノホスファイト系化合物;4,4'-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4'-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)、4,4'-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12~C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4'-ビフェニレンジホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(イソデシルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジメチルフェニルホスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチルフェニルホスファイト)等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等がより好ましい。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3'-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオ-プロピオネート)、3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等が挙げられる。
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、テトラキス{メチレン-3-(ラウリルチオ)プロピオネート}メタン、ビス〔メチル-4-{3-n-アルキル(C12又はC14)チオプロピオニオジル}-5-t-ブチルフェニル〕スルフィド、ジトリデシル-3,3'-チオジプロピオネート等が挙げられる。
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物中の酸化防止剤の含有量は、環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.05質量部以下、より好ましくは0.03質量部以下、更に好ましくは0.01質量部以下であり、そして、好ましくは0質量部以上である。
ここで、酸化防止剤の含有量が0質量部以上0.05質量部以下であるとは、酸化防止剤を含有してもよく含有しなくてもよいが、含有するとしても0.05質量部以下であることを意味する。
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、酸化防止剤を含まないことが更に好ましい。すなわち本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物中の酸化防止剤の含有量は、環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部であることが更に好ましい。
<その他の成分>
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、本発明に係る効果を妨げない範囲で、その他の成分を含有してもよい。
当該その他の成分としては、例えば、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐放射線剤、可塑剤、滑剤、離型剤、核剤、摩擦磨耗性向上剤、難燃剤、発泡剤、帯電防止剤、着色剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、耐衝撃剤、表面ぬれ改善剤、充填材、塩酸吸収剤及び金属不活性化剤からなる群から選択される少なくとも一種の添加剤や、ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂等の環状オレフィン共重合体(m)以外の樹脂が挙げられる。
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物中の、熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)、重合開始剤及び酸化防止剤の合計含有量は、環状オレフィン共重合体組成物の固形分の総量(架橋体としたときに固形物として残存する成分の総量)を100質量%としたとき、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは70~100質量%以上、より好ましくは80~100質量%以上、更に好ましくは90~100質量%以上、更に好ましくは95~100質量%以上、更に好ましくは97~100質量%以上である。
<環状オレフィン共重合体組成物の調製方法>
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)と、必要に応じて重合開始剤、酸化防止剤及びその他の成分を混合することにより調製できる。混合方法としては、押出機等で溶融ブレンドする方法、又は適当な溶媒、例えばヘプタン、ヘキサン、デカン、シクロヘキサンのような飽和炭化水素;トルエン、ベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素等に溶解、分散させて行う溶液ブレンド法等を採用することができる。
<ワニス>
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物は、溶媒と混合することによりワニスとすることができる。
ワニスを調製するための溶媒としては、環状オレフィン共重合体(m)に対して溶解性又は親和性を損なわないものであれば特に限定されない。溶媒として好ましく用いられるものは、例えば、ヘプタン、ヘキサン、オクタン、デカン等の飽和炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環状炭化水素;トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類;トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が用いられる。好ましくはヘプタン、デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、トルエン、ベンゼン、キシレン、メシチレン、プソイドクメンが用いられる。これらの溶媒は単独で、又は2種以上を任意の割合で混合して用いることができる。
本実施形態において、ワニスを作製する方法としては、いかなる方法で実施してもよいが、例えば、環状オレフィン共重合体組成物と溶媒とを混合する工程を含む。各成分の混合については、その順序に制限はなく、一括又は分割等のいかなる方式でも実施することができる。ワニスを調製する装置としても、制限はなく、撹拌、混合が可能な、バッチ式、もしくは連続式の、いかなる装置で実施してもよい。ワニスを調製する際の温度は、室温から溶媒の沸点までの範囲で任意に選択することができる。
なお、環状オレフィン共重合体(m)が得られた際の反応溶液をそのまま溶媒として用いることによりワニスを調製してもよい。
<架橋工程>
本発明に係る架橋体は、本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物の架橋体であり、環状オレフィン共重合体組成物中の熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)を架橋することにより得ることができる。当該架橋は、環状オレフィン共重合体組成物を、100kPa以下の真空下で、250℃以上で架橋する架橋工程により行うことができる。
前記架橋工程における架橋温度は、得られる架橋体の耐熱性をより向上させる観点から、250℃以上、好ましくは265℃以上、より好ましくは280℃以上、更に好ましくは290℃以上、更に好ましくは295℃以上であり、環状オレフィン共重合体(m)及び架橋体の熱分解を抑制する観点から、好ましくは320℃以下、より好ましくは310℃以下、更に好ましくは305℃以下である。
本発明に係る架橋体の製造方法における架橋工程は、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、100kPa以下の真空下、好ましくは50kPa以下の真空下、より好ましくは10kPa以下の真空下、更に好ましくは5kPa以下の真空下でおこなう。
本発明に係る架橋体の製造方法における架橋工程は、環状オレフィン共重合体組成物を溶融状態で行うこともできるし、環状オレフィン共重合体組成物を溶媒に溶解、又は分散させた溶液状態で行うこともできる。また、架橋工程は、環状オレフィン共重合体組成物を溶媒に溶解した溶液状態から溶媒を揮発させフィルム、コーティング等任意の形に成形した後にさらに架橋反応を進行させることによってもできる。
溶融状態で反応を行う場合はミキシングロール、バンバリーミキサー、押出機、ニーダ、連続ミキサー等の混練装置を用いて、原料の混合物を溶融混練して反応させる。また、任意の手法で成形した後に更に架橋反応を進行させることもできる。
溶液状態で反応を行う場合に使用する溶媒としては上記溶液ブレンド法で用いた溶媒と同様の溶媒が使用できる。
本発明に係る架橋体の製造方法における架橋工程は、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、環状オレフィン共重合体組成物を加熱加圧する工程を含むことが好ましく、環状オレフィン共重合体組成物からなるフィルム又はシートを作製し、次いで、得られたフィルム又はシートを加熱加圧することにより架橋する工程を含むことがより好ましい。
前記架橋工程における加熱加圧時の圧力は、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.1MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、更に好ましくは1.0MPa以上、更に好ましくは2.0MPa以上であり、そして、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下、更に好ましくは5MPa以下である。
本発明に係る架橋体の10GHzにおける誘電正接は、得られる架橋体の誘電特性及び耐熱性の性能バランスをより向上させる観点から、好ましくは0.0010以下、より好ましくは0.0009以下、更に好ましくは0.0008以下である。
前記誘電正接は、実施例に記載の方法により測定することができる。
本発明に係る架橋体のガラス転移温度は、耐熱性をより向上させる観点から、好ましくは140℃以上、より好ましくは145℃以上、更に好ましくは148℃以上、更に好ましくは150℃以上であり、誘電特性をより向上させる観点から、好ましくは190℃以下、より好ましくは175℃以下、更に好ましくは165℃以下である。前記ガラス転移温度は、実施例に記載の方法により測定することができる。
[フィルム又はシート]
本発明に係る架橋体はフィルム又はシートに成形して各種用途に用いることができる。本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物を用いて、本発明に係る架橋体をフィルム又はシートに成形する方法としては、各種公知の方法が適用可能である。例えば、熱可塑性樹脂フィルム等の支持基材上に上述したワニスを塗布して乾燥後、加熱処理等して環状オレフィン共重合体組成物を架橋することにより、本発明に係る架橋体からなるフィルム又はシートを形成する方法が挙げられる。ワニスの支持基材への塗布方法は特に限定されないが、例えば、スピンコーターを用いた塗布、スプレーコーターを用いた塗布、バーコーターを用いた塗布等を挙げることができる。
また、本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物を溶融成形してフィルム又はシートを得た後に、加熱処理等して環状オレフィン共重合体組成物を架橋することにより、本発明に係る架橋体からなるフィルム又はシートを形成する方法も挙げることができる。
[積層体]
本発明に係るフィルム又はシートは基材に積層することにより、積層体として各種用途に用いることができる。例えば、低誘電性を必要とする有機絶縁フィルムや、接着剤層を有するデバイス用の硬化性接着シートとして用いることもできる。
本発明に係る積層体を形成する方法は各種公知の方法が適用可能である。例えば、基材に対し、上述の方法により製造したフィルム又はシートを積層し、必要に応じてプレス等により加熱硬化することにより積層体を作製することができる。
また、導体層に対して、前述した架橋体を含む電気絶縁層を積層することにより積層体を作製することもできる。
[多層成形体又は多層積層フィルム]
本発明に係る架橋体は、各種の多層成形体又は多層積層フィルムの表層に形成してもよい。このとき、本発明に係る架橋体により形成された樹脂層は100μm以下であることが好ましい。
各種の多層成形体又は多層積層フィルムとしては、例えば、樹脂光学レンズ表面に本発明に係る架橋体が形成された光学レンズ用多層成形体や、PETフィルムやPEフィルム等の樹脂フィルム表面にガスバリア性付与のために本発明に係る架橋体が形成された多層ガスバリアフィルム等が挙げられる。
[プリプレグ]
また、本発明に係るプリプレグは、本発明に係る架橋体とシート状繊維基材とを複合して形成されたものである。
プリプレグの製造方法としては特に限定されず、各種公知の方法が適用可能である。例えば、上述したワニスをシート状繊維基材に含浸し含浸体を得る工程と、得られた含浸体を加熱しワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程とを含む方法が挙げられる。
ワニスのシート状繊維基材への含浸は、例えば、所定量のワニスを、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法によりシート状繊維基材に塗布し、必要に応じてその上に保護フィルムを重ね、上側からローラー等で押圧することにより行うことができる。
また、上記含浸体を加熱し、ワニスに含まれる溶媒を乾燥する工程はとくに限定されないが、例えば、バッチ式で送風乾燥機により空気中あるいは窒素中で乾燥する、あるいは、連続工程で加熱炉を通すことによって乾燥する、等の方法を挙げることができる。
本実施形態においては、ワニスをシート状繊維基材に含浸させた後、得られた含浸体を所定温度に加熱することにより、ワニスに含まれる溶媒が蒸発し、プリプレグが得られる。
本発明に係るシート状繊維基材を構成する繊維としては無機系及び/又は有機系の繊維が使用でき、特に限定されないが、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)繊維、アラミド繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、液晶ポリエステル繊維等の有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、アルミナ繊維、タングステン繊維、モリブデン繊維、チタン繊維、スチール繊維、ボロン繊維、シリコンカーバイド繊維、シリカ繊維等の無機繊維;等を挙げることができる。これらの中でも、好ましくは有機繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種であり、より好ましくはアラミド繊維、液晶ポリエステル繊維及びガラス繊維からなる群から選択される少なくとも一種である。ガラス繊維としては、例えば、Eガラス、NEガラス、Sガラス、Dガラス、Hガラス、Tガラス等を挙げることができる。
シート状繊維基材へのワニスの含浸は、例えば、浸漬及び塗布によって実施される。含浸は必要に応じて複数回繰り返してもよい。
これらのシート状繊維基材は、それぞれ単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、所望により適宜選択されるが、プリプレグあるいは積層体中の、例えば10質量%以上90質量%以下、好ましくは20質量%以上80質量%以下、より好ましくは30質量%以上70質量%以下の範囲である。この範囲にあれば、得られる積層体の誘電特性と機械強度が高度にバランスされ、好適である。
本発明に係るプリプレグの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば0.001mm以上10mm以下、好ましくは0.005mm以上1mm以下、より好ましくは0.01mm以上0.5mm以下である。この範囲にあれば、積層時の賦形性や、硬化して得られる積層体の機械強度や靭性等の特性が充分に発揮され好適である。
[金属張積層板]
本発明に係るフィルム、シート、積層体又はプリプレグは、少なくとも一方の面に金属箔を積層して積層プレス等により加熱硬化することにより金属張積層板としてもよい。
金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、金箔、銀箔、ステンレス箔等が挙げられる。
本発明に係る金属張積層板を作製する方法は各種公知の方法が適用可能である。
例えば、本発明に係るフィルム、シート、積層体又はプリプレグに対し、金属箔を積層し、必要に応じてプレス等により加熱硬化することにより金属張積層板を作製することができる。
本発明に係る金属張積層板は、本発明に係る架橋体を用いるものであるため、プリント配線基板に好適な誘電特性を満足しながら、耐熱老化性にも優れている。
そのため、本発明に係る金属張積層板は、プリント配線基板の絶縁層用材料として好適に使用することができる。
[プリント配線基板]
本発明に係る架橋体は、誘電特性、耐熱性、機械的特性等の性能バランスが良好であることから、プリント配線基板に好適に用いることができる。
プリント配線基板の製造方法としては一般的に公知の方法を採用でき特に限定されないが、例えば、前述の方法により製造したフィルム、シート、積層体又はプリプレグを積層プレス等により加熱硬化し、電気絶縁層を形成する。次いで、得られた電気絶縁層に導体層を公知の方法で積層し、積層体を作製する。その後、該積層体中の導体層を回路加工等することにより、プリント配線基板を得ることができる。
導体層となる金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、金、銀、ステンレス等を用いることができる。導体層の形成方法としては、例えば、該金属類を箔等にして電気絶縁層上に熱融着させる方法、該金属類を箔等にして電気絶縁層上に接着剤を用いて張り合わせる方法、あるいはスパッタ、蒸着、めっき等の方法で電気絶縁層上に該金属類からなる導体層を形成する方法等が挙げられる。プリント配線基板の態様としては、片面板、両面板のいずれでもよい。
このようなプリント配線基板は、例えば、半導体素子等の電子部品を搭載することにより、電子機器として使用することができる。電子機器は公知の情報に基づいて作製することができる。
このような電子機器としては、例えば、サーバ、ルータ、スーパーコンピューター、メインフレーム、ワークステーション等のICTインフラ機器;GPSアンテナ、無線基地局用アンテナ、ミリ波アンテナ、RFIDアンテナ等のアンテナ類;携帯電話、スマートフォン、PHS、PDA、タブレット端末等の通信機器;パーソナルコンピューター、テレビ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、POS端末、ウェアラブル端末、デジタルメディアプレーヤー等のデジタル機器;電子制御システム装置、車載通信機器、カーナビゲーション機器、ミリ波レーダー、車載カメラモジュール等の車載電子機器;半導体試験装置、高周波計測装置等;等が挙げられる。
[発泡体]
本発明に係る環状オレフィン共重合体組成物を架橋するとともに発泡せしめることにより、本発明に係る架橋体を発泡体とすることができる。このとき、環状オレフィン共重合体組成物に前述した発泡剤を添加してもよい。
[架橋体の用途]
本発明に係る架橋体は、例えば、誘電特性、耐熱性、耐溶剤性、機械的強度、透明性等の性能バランスが良好であるので、当該架橋体からなる成形体は、例えば光ファイバー、光導波路、光ディスク基盤、光フィルター、レンズ、光学用接着剤、PDP用光学フィルター、有機EL用コーティング材料、航空宇宙分野における太陽電池のベースフィルム基材、太陽電池や熱制御システムのコーティング材、半導体素子、発光ダイオード、各種メモリー類等の電子素子、ハイブリッドIC、MCM、プリント配線基板、プリント配線基板の絶縁層を形成するために用いられるプリプレグや積層体、表示部品等のオーバコート材料あるいは層間絶縁材料、液晶ディスプレイや太陽電池の基板、医療用器具、自動車用部材、離型剤、樹脂改質剤、ディスプレイ用透明基板、リチウムイオン電池用部材、半導体プロセス部材、フィルムコンデンサ、ガスバリアコート材、電線被服材、自動車用部材、航空宇宙用部材、半導体用プロセス材、電線被覆材、リチウムイオン電池用部材、燃料電池用部材、コンデンサーフィルム、フレキシブルディスプレイ部材、アンカーコート材、透明接着剤、改質材、架橋助剤、医療用容器、医療用カテーテル部材、防水シール材、離型材、ハードコート材、発泡改質剤といった用途で使用することができる。
特に、本発明に係る架橋体は、誘電特性及び耐熱性の性能バランスが向上し、耐溶剤性、耐熱性、透明性、機械的特性等の性能バランスも良好であるので、回路基板に好適に用いることができ、高周波回路基板等の高周波用途により好適に用いることができる。さらに、本発明に係る架橋体は、ガスバリア性も良好であるため、液晶ディスプレイや太陽電池の基板やフィルム又はシートとして好適に用いることができる。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本実施形態を、実施例等を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
(原材料)
環状オレフィン共重合体(m):合成方法は後述
ラジカル重合開始剤1:ジクミルパーオキシド(製品名:パークミルD、日本油脂社製)
酸化防止剤1:フェノール系酸化防止剤(ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3',5'-ジ-tert-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオナート)、製品名:Irganox1010、BASF社製)
環状オレフィン共重合体(m)の合成には以下の原材料を用いた。
遷移金属化合物(1):
特開2004-331965号公報に記載の方法により合成した。
Figure 2023135514000013
修飾メチルアルミノキサン(MMAO、東ソー・ファインケム社製)
トルエン(和光純薬工業社製:和光特級)
5-ビニル-2-ノルボルネン(東京化成工業社製)
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(三井化学社製)
アセトン(富士フイルム和光純薬工業社製:和光特級)
メタノール(富士フイルム和光純薬工業社製:和光特級)
熱硬化型環状オレフィン共重合体(m):
〔合成例1(熱硬化型環状オレフィン共重合体(m-1))〕
十分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに、トルエン450ml、5-ビニル-2-ノルボルネン(以下、「VNB」ともいう)30ml、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(以下、「TD」ともいう)16ml、MMAOのヘキサン溶液をAl換算で0.9mmol、水素360mlを投入した後、系中にエチレンを全圧0.6MPaになるまで導入した。遷移金属化合物(1)0.028mmolのトルエン溶液を添加し、35℃で180分間重合を行った。その後、1mlのメタノールを圧入することにより重合を停止した。
得られたポリマー溶液にイオン交換水を添加して1時間攪拌した後に、有機層を濾紙でろ過した。この有機層をアセトンに投入してポリマーを析出させ、攪拌後濾紙でろ過した。得られたポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥し、環状オレフィン共重合体(m)であるエチレン/TD/VNB共重合体を得た。ポリマー中のVNB由来構造の組成比は26モル%、TD由来構造の組成比は12モル%、示差走査熱量計(DSC)で測定したガラス転移温度は96℃であった。得られたエチレン/TD/VNB共重合体を、環状オレフィン共重合体(m-1)とした。
組成;H-NMR測定を行い、二重結合炭素に直接結合している水素由来のピークとそれ以外の水素のピークの強度により環状非共役ジエン含量を算出した。
[実施例1]
(ワニスの調製)
合成例1で得られた環状オレフィン共重合体(m-1)、溶媒としてトルエンを用い、表1の配合組成に従い秤量した。秤量したサンプルを十分に溶解するまで撹拌し、目的とするワニス状の環状オレフィン共重合体組成物を得た。なお、表1中における各原料の配合割合の単位は質量部である。
(架橋体フィルムの製造)
得られたワニス状の環状オレフィン共重合体組成物を、離型処理されたPETフィルム上に10mm/秒の速度で塗工した後、窒素気流下送風乾燥機中で、150℃で4分乾燥した。得られたフィルムを2枚重ね、真空プレス(真空度:1.0kPa)により、3.5MPaに加圧し、室温(25℃)から一定速度で昇温し、180℃で60分保持し、一度室温に戻してフィルムをPETフィルムからはがした。得られたフィルムをポリイミドフィルムに挟み、真空プレス(真空度:1.0kPa)により、3.5MPaに加圧し、室温(25℃)から一定速度で昇温し、300℃で120分保持し、架橋体フィルムを得た。得られた架橋体フィルムについて下記手順に基づいて誘電正接測定及びガラス転移温度(Tg)測定を行った。得られた結果を表1に示す。
[実施例2及び比較例1~5]
表1に示す配合組成及びプレス温度(2回目の真空プレス時の温度)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にワニス及び架橋体フィルムをそれぞれ作製し、それぞれ評価を実施した。得られた結果を表1に示す。
誘電正接評価:実施例及び比較例によって得られた架橋体フィルムについて、円筒空洞共振器法により、10GHzにおける誘電正接を測定し、下記基準により評価した。
〇:0.0010以下
△:0.0010超0.0030以下
×:0.0030超
Tg測定:実施例及び比較例によって得られた架橋体フィルムの固体粘弾性温度分散測定を行い、tanδのピーク温度をTgとした。測定は以下の条件で行い、下記基準により評価した。
装置:RSA-III(ティー・エイ・インスツルメント社製)
変形モード:引張
昇温速度:3℃/分
周波数:1Hz
設定歪:0.1%
環境:窒素下
〇:140℃以上
△:130℃以上140℃未満
×:130℃未満
Figure 2023135514000014

Claims (13)

  1. 架橋体を製造するための製造方法であって、
    前記架橋体が、熱硬化型の環状オレフィン共重合体(m)と、重合開始剤と、を含む環状オレフィン共重合体組成物の架橋体であり、
    前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.05質量部未満であり、
    前記製造方法が、前記環状オレフィン共重合体組成物を、100kPa以下の真空下で、250℃以上で架橋する架橋工程を含む、架橋体の製造方法。
  2. 前記架橋工程が280℃以上320℃以下でおこなう、請求項1に記載の架橋体の製造方法。
  3. 前記架橋工程が290℃以上310℃以下でおこなう、請求項1又は2に記載の架橋体の製造方法。
  4. 前記架橋工程は、前記環状オレフィン共重合体組成物を加熱加圧する工程を含む、請求項1~3のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  5. 前記架橋工程における加熱加圧時の圧力が0.1MPa以上20MPa以下である、請求項4に記載の架橋体の製造方法。
  6. 前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.02質量部未満である、請求項1~5のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  7. 前記環状オレフィン共重合体組成物中の前記重合開始剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.01質量部以下である、請求項1~6のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  8. 前記環状オレフィン共重合体組成物が重合開始剤を含まない、請求項1~7のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  9. 前記環状オレフィン共重合体組成物中の酸化防止剤の含有量が、前記環状オレフィン共重合体(m)100質量部に対して、0質量部以上0.05質量部以下である、請求項1~8のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  10. 前記環状オレフィン共重合体組成物が酸化防止剤を含まない、請求項1~9のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  11. 前記架橋体の10GHzにおける誘電正接が0.0010以下である、請求項1~10のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  12. 前記架橋体のガラス転移温度が140℃以上である、請求項1~11のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
  13. 前記架橋体は回路基板に用いられる、請求項1~12のいずれかに記載の架橋体の製造方法。
JP2022040770A 2022-03-15 2022-03-15 架橋体の製造方法 Pending JP2023135514A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022040770A JP2023135514A (ja) 2022-03-15 2022-03-15 架橋体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2022040770A JP2023135514A (ja) 2022-03-15 2022-03-15 架橋体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023135514A true JP2023135514A (ja) 2023-09-28

Family

ID=88144288

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022040770A Pending JP2023135514A (ja) 2022-03-15 2022-03-15 架橋体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023135514A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102124718B1 (ko) 환상 올레핀 공중합체 조성물 및 그의 가교체
JP7168412B2 (ja) 環状オレフィン系共重合体、環状オレフィン系共重合体組成物および架橋体
JP2018035257A (ja) 樹脂組成物、プリプレグ、金属張積層体、プリント配線基板および電子機器
JP7245261B2 (ja) 環状オレフィン系共重合体組成物、ワニス、及び、架橋体
JP2021188027A (ja) 環状オレフィン系共重合体組成物およびその架橋体
CN114787207B (zh) 环状烯烃共聚物、环状烯烃系树脂组合物、交联体及成型体
JP6857093B2 (ja) 環状オレフィン系共重合体組成物およびその架橋体
JP7210349B2 (ja) 環状オレフィン系共重合体組成物、ワニス、架橋体、及び、プリプレグ
JP7218176B2 (ja) 環状オレフィン系共重合体、環状オレフィン系共重合体組成物および架橋体
JP2023135514A (ja) 架橋体の製造方法
JP7404114B2 (ja) 環状オレフィン系樹脂組成物、架橋体、成形体、プリプレグ、回路基板および電子機器
JP2019147930A (ja) 環状オレフィン系重合体組成物およびその架橋体
JP2022118426A (ja) 環状オレフィン系共重合体樹脂組成物、ワニス、及び、架橋体
TW202344538A (zh) 環狀烯烴系共聚物、環狀烯烴系共聚物組成物、清漆、交聯體、膜或片材、積層體、電路基板、電子機器以及預浸體
JP2024054955A (ja) 接着性樹脂組成物、架橋体、熱硬化性接着フィルムまたはシート、積層体、回路基板および電子機器
JP2024138897A (ja) 樹脂組成物、ワニス、フィルム、積層体および金属張積層体
WO2024004882A1 (ja) 環状オレフィン系共重合体の製造方法、環状オレフィン系共重合体、架橋体、フィルムまたはシート、積層体、回路基板、電子機器およびプリプレグ
WO2024004884A1 (ja) ワニス状の環状オレフィン系共重合体組成物の製造方法、環状オレフィン系共重合体組成物、架橋体、フィルムまたはシート、積層体、回路基板、電子機器およびプリプレグ
WO2023190376A1 (ja) 環状オレフィン系樹脂組成物、ワニス、架橋体、フィルム、シート、回路基板、電子機器及びプリプレグ
JP2019147875A (ja) 環状オレフィン系重合体組成物およびその架橋体