JP2023135353A - 洗浄剤 - Google Patents

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Iwao Tsutsumi
龍志 河北
Tatsushi Kawakita
文人 伊藤
Fumito Ito
宏晶 佐藤
Hiroaki Sato
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Abstract

【課題】洗浄作用と整肌作用とが共に高い水準で機能する洗浄剤を提供せんとするものである。また、長い保存期間を経ても洗浄作用と整肌作用とが十分に発揮される洗浄剤を提供せんとするものでもある。【解決手段】洗浄剤は、タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とを配合してなることとした。【選択図】なし

Description

この発明は、洗浄剤に関する。
従来、被洗浄物に付着した汚れを効率良く除去することを目的として洗浄剤が利用されている。具体的には、衣服に付着した泥汚れは衣類用洗剤、食器に付着した脂汚れやタンパク汚れには食器用洗剤、顔の皮脂や角質汚れには洗顔石鹸のように被洗浄物に合わせて洗浄剤が提案され、それぞれが用途に応じて利用されている。
洗浄剤には、界面活性剤が配合されており、水だけでは落ちにくい脂やタンパク汚れに対して洗浄作用を発揮する。
ところが、タンパク汚れに対しては界面活性剤のみでは十分な洗浄力を発揮できない場合があり、より確実にタンパク汚れを除去するためにタンパク質分解酵素を配合させた洗浄剤が提案されている(例えば、特許文献1。)。
特開2013-103951号公報
たしかに上述する洗浄剤は、タンパク質分解酵素が寄与する洗浄作用を十分に発揮させることにより、より確実なタンパク汚れの除去効果が期待できる。しかしながら、このような洗浄剤には次のような課題があった。
例えば、地肌に対して直接に洗浄剤を使用すると、汚れと共に地肌の角質や皮脂をも過剰に除去してしまうため肌荒れの原因となり得る。洗浄剤には、このような肌荒れを防ぐために整肌作用を発揮する皮脂成分や多価アルコール、糖質類等を配合したものが存在する。しかしながら、整肌成分の配合により洗浄作用が十分に機能しなくなり、結果として洗浄作用と整肌作用とが共に高い水準で機能する洗浄剤にはなり得なかった。
また、酵素はタンパク汚れを除去するに際して有用であるが、外部環境(例えば、高い気温や光の照射の有無等)によって失活する虞があり、より長い保存期間を経ても洗浄作用と整肌作用を維持できる洗浄剤が求められていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、洗浄作用と整肌作用とが共に高い水準で機能する洗浄剤を提供せんとするものである。また、長い保存期間を経ても洗浄作用と整肌作用とが十分に発揮される洗浄剤を提供せんとするものでもある。
上記従来の課題を解決するために、本発明に係る洗浄剤では、(1)タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とを配合してなることとした。
また、本発明に係る洗浄剤は、以下の点にも特徴を有する。
(2)前記タンパク質分解酵素剤は、ペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解成分を含有すること。
(3)前記タンパク質分解酵素剤は、タンパク質分解成分として菌類抽出物、パパイン、パンクレアチンのいずれか1種以上を含有すること。
(4)前記植物の炭化物粉末は、竹、木、木の実の種子から選ばれる少なくともいずれか1つの炭化物の粉末であること。
(5)前記植物の炭化物粉末は、50~180メッシュの篩を通過すること。
(6)前記植物の炭化物粉末を0.01~20重量%含有すること。
(7)前記コラーゲン粉末剤は、魚類、鳥類、ブタ、ウシ、ウマに由来するコラーゲンを含有すること。
(8)前記コラーゲン粉末剤は、20~200メッシュの篩を通過すること。
(9)前記コラーゲン粉末剤を0.01~20.5重量%含有の割合で含むこと。
(10)前記コラーゲン粉末剤におけるプロリンとヒドロキシプロリンの合計の含有量は、15~25重量%であること。
また、上記の特徴を備えた洗浄剤は、(11)20~1000メッシュの篩を通過することにも特徴を有する。
請求項1の発明によれば、タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とを配合したため、洗浄作用と整肌作用とを共に高い水準で発揮し、長い保存期間を経ても洗浄作用と整肌作用とが十分に発揮される洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項2の発明によれば、前記タンパク質分解酵素剤は、ペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解成分を含有するため、タンパク汚れをより確実に除去できる洗浄剤を提供することができる。また、タンパク質分解成分がコラーゲン粉末剤に作用してアミノ酸を生成し、アミノ酸が気泡に作用することで起泡性と泡持続性とを高めることができる。これにより、微細な気泡からなる弾力性に富んだ泡を長時間に亘って残留させることができる。その結果、洗浄作用と整肌作用とをより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項3の発明によれば、前記タンパク質分解酵素剤は、タンパク質分解成分として菌類抽出物、パパイン、パンクレアチンのいずれか1種以上を含有するため、タンパク汚れをより確実に除去できる洗浄剤を提供することができる。また、これらのタンパク質分解成分がコラーゲン粉末剤に作用してアミノ酸を生成し、アミノ酸が気泡に作用することで起泡性と泡持続性とを高めることができる。これにより、微細な気泡からなる弾力性に富んだ泡を長時間に亘って残留させることができる。その結果、洗浄作用と整肌作用とをより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項4の発明によれば、前記植物の炭化物粉末は、竹、木、木の実の種子から選ばれる少なくともいずれか1つの炭化物の粉末であるため、表面に形成される多数の細孔で多くの汚れを吸着することができる。その結果、洗浄作用をより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項5の発明によれば、前記植物の炭化物粉末は、50~180メッシュの篩を通過するため、気泡に触れた時の異物感を可及的に抑えながら洗浄作用をより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項6の発明によれば、前記植物の炭化物粉末を0.01~20重量%含有するため、気泡中に十分量の植物の炭化物粉末が満遍なく存在することとなり、植物の炭化物粉末が汚れを十分に吸着させることができる。この結果、洗浄作用をより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。また、炭化物粉末が起泡体のバインダーとなり、きめ細かな泡を持続することが可能となる。
請求項7の発明によれば、前記コラーゲン粉末は、魚類、鳥類、ブタ、ウシ、ウマ由来であるため、比較的容易に原料を調達することができる。その結果、製造コスト的に有利な洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項8の発明によれば、前記コラーゲン粉末は、20~200メッシュの篩の隙間を通過するため、素早くタンパク質分解酵素と反応してアミノ酸を生成し、起泡性と泡持続性とを高めることができる。また、気泡に触れた時の異物感を可及的に抑えることもできる。その結果、洗浄作用と整肌作用とをより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項9の発明によれば、前記コラーゲン粉末は、100重量部あたりの洗浄剤に0.01~20.5重量部の割合で含まれるため、起泡性と泡持続性とを高めることができる。特に、微細な気泡からなる弾力性に富んだ泡を長時間に亘って残留させることができる。また、タンパク質分解酵素と反応しなかったコラーゲン粉末や、一部の反応物が肌を被覆して保護する役目を果たす。その結果、洗浄作用と整肌作用とをより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項10の発明によれば、前記コラーゲン粉末剤におけるプロリンとヒドロキシプロリンの合計の含有量は、15~25重量%であることとしたため、起泡性と泡持続性とを高めることができる。その結果、洗浄作用と整肌作用とをより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
請求項11の発明によれば、上記の洗浄剤は、20~1000メッシュの篩を通過するため、タンパク質分解酵素とコラーゲン粉末との素早い反応を実現すると共に、起泡性と泡持続性とを高めることができる。その結果、洗浄作用と整肌作用とをより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
試験1の結果を示す折線グラフである。 試験2の結果を示す棒グラフである。 試験3の結果を示す棒グラフと表である。 試験4の結果を示す棒グラフと表である。
本発明の要旨は、タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とを配合してなることにより、洗浄作用と整肌作用とを共に高い水準で発揮し、更に長い保存期間を経ても洗浄作用と整肌作用とが十分に発揮される洗浄剤を提供することにある。
ここで、本発明に係る洗浄剤とは、界面活性剤を含有し家庭用や業務用を問わず汚れの除去を目的として利用されるものである。具体的には、衣料用洗濯洗剤、食器用洗剤、掃除用洗剤、洗顔剤や洗髪剤(シャンプー)等である。本実施形態では一例として、洗顔剤を例に挙げて説明する。
本実施形態に係る洗顔剤は、全体としては乾燥状態(水分含量略14%)で粒状又は粉状の形状としている。具体的には、形状は、20メッシュ(目開き864μm)~1000メッシュ(目開き13μm)の篩を通過する範囲であれば自由に選択することができる。
本実施形態に係る洗顔剤は、例えば手のひらに洗浄剤を所定の量取出し、これに水やお湯を加えて泡立てて洗浄に使用するものである。特に洗浄剤の形状を上記の範囲とすることにより、水との接触面積を拡大することができ、界面活性剤の素早い泡立ちを可能とすると共に後述するタンパク質分解酵素剤とコラーゲン粉末剤とを速やかに反応させることができる。なお、以下の説明において、洗顔剤を溶解させて泡立てに使用する水やお湯を「溶解水」と称し、溶解水に洗浄剤が溶けた状態を「洗顔液」とする。
なお、洗顔剤の形状は、20メッシュの篩を通過しないものが多く含まれる場合、溶解水への溶解が遅くなり使用感を低下させる。ただし、仮に上記メッシュの篩を通過しない形状であったとしても、指で摘まんだり擦ったりすることで砕けるものであれば問題はない。また一方で、1000メッシュよりも狭い目開きを有する篩を通過するものが多く含まれる場合であれば、使用感の低下はないものの、製造工程で時間がかかり過ぎたり規格外の形状が多くなる虞があるため好適ではない。
洗顔剤は、界面活性剤と、賦形剤と、タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とをそれぞれ乾燥状態にして配合している。特に、これらを乾燥状態で配合することにより、タンパク質分解酵素剤のコラーゲン粉末剤に対する加水分解反応を抑制することができる。すなわち、洗顔剤は、溶解水と接触するまではコラーゲン粉末剤をそのままの状態で保持しているが、洗顔液にした際にはタンパク質分解酵素剤と反応を開始する構成としている。次に、洗顔剤の各構成要素について詳説する。
界面活性剤は、洗浄成分として機能を発揮するものであれば自由に選択することができる。具体的には、陰イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、脂肪酸石鹸などから採用することができる。
賦形剤は、洗浄剤の成形や使用感を向上させるために用いられ、既存の洗浄剤に配合される一般的なものを採用することができる。具体的には、コーンスターチや乳糖、結晶セルロース、デンプン等を採用することができる。
タンパク質分解酵素剤は、皮膚表面に存在する老化した不要な角質や汚れ等のタンパク質を分解できるものであればよく、例えばペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解成分を含有している。さらに好ましくは、菌類抽出物、パパイン、パンクレアチンのいずれか1種以上を採用することができる。
菌類抽出物は、菌類が有するタンパク質の消化酵素を含有するものであればよい。具体的には、菌類の細胞を集めて破砕し、乾燥させたものを使用する。また、菌類抽出物にはタンパク質分解成分の他に自己消化によって生じるアミノ酸類や糖類など菌類の培養によって得られる成分をも含有することとなる。このように、タンパク質分解酵素剤にはタンパク質分解成分以外のアミノ酸類や糖類等が含まれていてもよい。なお、菌類とは、真正細菌や酵母などである。
パパインは、未成熟のパパイヤ属植物の果実や果汁に多く含まれることが知られている。したがって、パパインは、パパイヤ属植物の果実や果汁の乾燥物、または抽出物の乾燥物を使用する。
パンクレアチンは、哺乳類の膵臓から得られる様々な生理活性成分の混合物であり、トリプシン、キモトリプシン、リパーゼ、アミラーゼ、その他多くの酵素を含み、デンプン、脂肪、タンパク質のすべてに有効な消化酵素の混合物として知られている。このように、タンパク質分解酵素剤にはタンパク質分解成分以外の酵素類が含まれていてもよい。
タンパク質分解酵素剤は、これらのタンパク質分解成分の複数よりなる組み合わせであってもよい。また、タンパク質分解酵素剤の至適pHは酸性、中性、アルカリ性のいずれであっても限定されることはないが、洗顔剤としては例えば弱酸性~アルカリ性や、中性~アルカリ性に至適pHを有するものを採用してもよい。
また、タンパク質分解酵素剤に含まれるタンパク質分解成分の活性総力価は、日本薬局方のパンクレアチンの定量規定に準ずる定量試験法において洗浄剤中に0.1U~300U/g含有することを特徴としている。
タンパク質分解酵素剤をこのような構成とすることにより、洗顔液を泡立てて洗顔した際にタンパク汚れをより確実に除去できる。また、洗顔液において、タンパク質分解酵素剤がコラーゲン粉末剤に作用することにより、コラーゲンを構成するポリペプチド鎖の末端アミノ酸が切断されることになる。このため、コラーゲン由来のペプチド鎖とアミノ酸とが増粘剤として機能し、気泡をメレンゲ状にすることができる。
植物の炭化物粉末は、竹、木、木の実の種子から選ばれる少なくともいずれか1つの炭化物の粉砕物であり、特に50メッシュ(目開き279μm)~180メッシュ(目開き84μm)の篩を通過するものを使用する。このような植物の炭化物粉末は、細かく枝分かれした複数個の微細孔が表面に形成されている(所謂、ポーラス構造)。植物の炭化物粉末は、ポーラス構造によってタンパク汚れや皮脂汚れの吸着効果を発揮する。細孔の大きさにより、ミクロ孔(直径20オングストローム以下)、メソ孔(直径20~500オングストローム)、マクロ孔(直径500オングストローム以上)に分けられるが、実際のタンパク汚れや皮脂汚れの吸着にはミクロ孔が大きな役割を果たしている。なお、この吸着は、ファンデルワールス力、あるいは毛管現象による物理吸着が主である。
一方で、メソ孔とマクロ孔は、タンパク質分解酵素剤とコラーゲン粉末剤によってメレンゲ状になった気泡の吸着効果を発揮する。これにより、洗顔料の使用時(泡立て時)に炭化物粉末同士が吸着した気泡を砕きながら擦れ合うため、気泡をさらに微小化させることができる。また、メソ孔とマクロ孔は、気泡同士を繋げるバインダーとしても機能する。これにより、気泡の空気に触れる面を可及的に小さくすることができるため、泡持続性を高めることができる。
このように、タンパク質分解酵素剤とコラーゲン粉末とを含有する洗顔料に植物の炭化物粉末を加えることによって、タンパク汚れや皮脂汚れの吸着のみならず、起泡性と泡持続性とを更に向上させることができる。
なお、植物の炭化物粉末の形状は、50メッシュの篩を通過しないものが多く含まれる場合、洗顔液を気泡させた際に触感が悪くなり、表面積の低下による吸着効果も満足に発揮することができない。また一方で、180メッシュよりも狭い目開きを有する篩を通過するものが多く含まれる場合であれば、使用感の低下はないものの、製造工程で時間がかかり過ぎたり規格外の形状が多くなる虞があるため好適ではない。
したがって、植物の炭化物粉末は、タンパク質分解酵素で分解された皮脂やタンパク汚れを吸着除去することで、洗顔剤の洗浄効果を高めることが期待できる。特に、植物の炭化物粉末を0.01~20重量%含有することとすれば、皮脂やタンパク汚れを確実に吸着除去することができる洗顔剤を提供することができる。
なお、植物の炭化物粉末を0.01重量%未満含有することとすれば、十分な吸着効果を得ることができない。また一方で、20重量%よりも多く含有することとしても、含有量に比例して吸着効果が増加するものではないためコスト面から考慮しても好適ではない。
コラーゲン粉末剤は、例えば魚類、鳥類、ブタ、ウシ、ウマに由来するコラーゲンを含有することを特徴とする。より具体的には、コラーゲンは、上記の非ヒト動物の生体組織を酵素やアルカリで処理を施して得られるアテロコラーゲン(分子量:約30万)、アテロコラーゲンに加熱処理と加水分解処理とを施して得られるゼラチン(分子量:約10万)、ゼラチンに酸や塩基、酵素処理を施して得られたコラーゲンペプチド(分子量:約1500)などの抽出物を噴霧乾燥や真空凍結乾燥させている。また、必要に応じて賦形剤やビタミンなどの保存剤を添加することもできる。同コラーゲン乾燥物は、20メッシュ(目開き864μm)~200メッシュ(目開き74μm)の篩を通過できる形状に粉砕加工することでコラーゲン粉末剤としている。このような形状にすることにより、タンパク質分解酵素剤との反応を促すことが可能となる。
なお、コラーゲン粉末剤の形状は、20メッシュの篩を通過しないものが多く含まれる場合、表面積が低下するためタンパク質分解酵素剤との円滑な反応が阻害される。また一方で、200メッシュよりも狭い目開きを有する篩を通過するものが多く含まれる場合であれば、タンパク質分解酵素剤と充分に反応するものの、製造工程で時間がかかり過ぎたり規格外の形状が多くなる虞があるため好適ではない。
コラーゲン粉末剤は、コラーゲンを0.01~20.5重量%含有するように配合すれば、タンパク質分解酵素剤と確実に反応させることができるため、起泡性と泡持続性とを高めることができる。また、コラーゲンのペプチド鎖が整肌成分として機能する。
なお、コラーゲン粉末剤を0.01重量%未満含有することとすれば、起泡性と泡持続性とを十分に高めることができない。また一方で、20.5重量%よりも多く含有することとしても、含有量に比例して起泡性と泡持続性とが増加するものではないためコスト面から考慮しても好適ではない。
また、コラーゲン粉末剤は、プロリンとヒドロキシプロリンの合計の含有量が15~25重量%のもの(プロリン及びヒドロキシプロリンを100重量部あたり15~25重量部の割合で含むもの)を使用する。プロリン及びヒドロキシプロリンは、I型コラーゲンやII型コラーゲンに豊富に含まれるアミノ酸の一種として知られている。また、プロリン及びヒドロキシプロリンは、アミノ酸の中でも特に保水力が高いものとして知られている。
また言い換えれば、プロリン及びヒドロキシプロリンは、洗顔剤中にコラーゲンが0.01重量%未満、又は20.5重量%よりも多く含まれていても、コラーゲンが0.01~20.5重量部含まれている場合のヒドロキシプロリンと同等量、すなわち洗顔剤に0.0015~5.125重量%含有されることとしてもよい。
このような範囲でプロリン及びヒドロキシプロリンを含有すれば、プロリン及びヒドロキシプロリンが増粘剤として機能し、気泡全体をメレンゲ状にすることができる。これにより、起泡性と泡持続性とを高めることができ、洗浄作用と整肌作用とをより確実に享受できる洗浄剤を提供できる効果がある。
以下、本実施形態に係る洗浄剤について、各種試験結果を参照しつつ更に説明する。
〔試験1.タンパク質分解成分安定性試験〕
本試験では、植物性の炭化物粉末とコラーゲン粉末剤の有無が洗顔剤中のタンパク質分解酵素剤の安定性にどう影響するかを検討した。具体的には、界面活性剤と賦形剤に、
サンプルA:タンパク質分解酵素剤を配合したもの、
サンプルB:タンパク質分解酵素剤とコラーゲン粉末剤とを配合したもの、
サンプルC:タンパク質分解酵素剤とコラーゲン粉末剤と植物の炭化物粉末とを配合したもの
の3つのサンプル中のタンパク質分解成分への影響について確認試験を行った。
(試験1-1.サンプル調製)
本実施例では、植物性の炭化物粉末としてヤシ殻活性炭(UES社製)、タンパク質分解酵素剤としてプロテアーゼ(富士フィルム和光純薬社製)、コラーゲン粉末剤として粉末状研究試験約用コラーゲン(株式会社ニッピ社製)を採用した。なお、以降の試験においても同じものを使用した。
なお、ヤシ殻活性炭(以下、単に「活性炭」と称する。)は、50メッシュの篩を通過するものを使用した。また、粉末状研究試験約用コラーゲン(以下、単に「コラーゲン」と称する。)は、20メッシュの篩を通過するものを使用した。なお、以降の試験においても同じものを使用した。
また、界面活性剤として脂肪酸石鹸を採用し、賦形剤としてコーンスターチを採用した。脂肪酸石鹸とコーンスターチは混ぜ合わせて20メッシュの篩を通過する粒状にした。なお、以降の試験においても同じものを使用した。
サンプルA、B、Cのそれぞれに配合する成分の量は表1の通りである。なお、表中の数値の単位は重量%である。
Figure 2023135353000001
まず、各サンプル3gをφ90mm、高さ20mmのシャーレ(ディスポシャーレ、アズワン社製)に採り分けた。次いで、同シャーレを温度40℃、湿度75%に設定した恒温器に入れた。そして、ひと月毎(0か月から6か月まで)に各サンプルへの影響を試験した。
(試験1-2.試験方法)
タンパク質分解成分安定性試験は日本薬局方のパンクレアチンの定量規定に準ずる定量試験法に準じて行った。すなわち、0か月目の酵素活性値を100%であるとし、時間経過に伴って酵素活性値が何%変化するかを試験した。
(試験1-3.結果)
本試験結果を図1に示す。図1によれば、サンプルAは時間の経過に伴って酵素活性が低下したのに対し、サンプルBおよびCは低下しなかった。また特に、サンプルCはサンプルBよりも比して長い期間に亘って酵素活性が低下しなかった。
この結果より、タンパク質分解酵素剤を含有する洗顔剤は、コラーゲンを配合することにより、タンパク質分解成分の安定性を高めることができる。また特に、コラーゲンと活性炭とを配合すれば、更に長い期間に亘ってタンパク質分解成分の安定性を高めることができる。したがって、タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とを配合することにより、洗浄作用と整肌作用とが十分に発揮される洗浄剤を提供できると言える。
〔試験2.起泡性・泡持続性試験〕
本試験では、植物性の炭化物粉末、コラーゲン粉末剤、タンパク質分解剤の有無が洗顔剤の起泡性および泡持続性にどう影響するかを検討した。具体的には、界面活性剤と賦形剤に、
サンプルA:タンパク質分解酵素剤を配合したもの、
サンプルB:タンパク質分解酵素剤とコラーゲン粉末剤とを配合したもの、
サンプルC:タンパク質分解酵素剤とコラーゲン粉末剤と植物の炭化物粉末とを配合したもの、
サンプルD:コラーゲン粉末剤を配合したもの、
サンプルE:植物の炭化物粉末剤を配合したもの、
サンプルF:植物の炭化物粉末剤とコラーゲン粉末剤とを配合したもの、
の6つのサンプルの起泡性および泡持続性について確認試験を行った。
(試験2-1.サンプル調製)
サンプルA、B、C、D、E、Fのそれぞれに配合する成分の量は表2の通りである。なお、表中の数値の単位は重量%である。
Figure 2023135353000002
まず、各サンプル0.1gを40℃の溶解水100mLと共に200mLビーカーに入れた。次いで、スターラーで泡が立たないように完全に溶解させた。
(試験2-2.試験方法)
上記各サンプル50mLを静かに100mLメスシリンダーに入れた後、蓋をして100回上下に振盪した。その後、振盪直後の泡の高さを起泡性とし、10分間静置した後の泡の高さを泡持続性とした。なお、泡の高さは、洗浄溶液と泡の境界線を基準として測定した。
(試験2-3.結果)
本試験結果を図2に示す。図2によれば、サンプルAの起泡性および泡持続性に対し、サンプルB,Cは増加した。また、サンプルBとサンプルDの結果より、サンプルBの方が高い起泡性と泡持続性とを示した。また、サンプルCとサンプルFとの結果より、サンプルCの方が高い起泡性と泡持続性とを示した。また、サンプルEとサンプルFとの結果より、サンプルFの方が高い起泡性と泡持続性とを示した。
この結果より、タンパク質分解酵素剤を含有する洗顔剤は、コラーゲン粉末剤を配合することにより、起泡性と泡持続性とを高めることができる。また特に、植物の炭化物粉末とコラーゲン粉末剤とを配合すれば、泡持続性を更に高めることができる。
また、洗顔剤は、コラーゲン粉末剤や植物の炭化物粉末を配合していても、タンパク質分解酵素剤が配合されていなければ高い起泡性と泡持続性とを得ることができないことが明らかとなった。
したがって、タンパク質分解酵素剤、植物の炭化物粉末、コラーゲン粉末剤からいずれか1つ又は2つを配合した洗浄剤よりも、3つ全てを配合した洗顔剤は、高い起泡性と泡持続性とを有していると言える。
〔試験3.汚れ除去機能試験〕
本試験では、植物性の炭化物粉末、コラーゲン粉末剤、タンパク質分解剤の有無が洗顔剤の疑似汚れの落ち具合(以下、「汚れ除去機能」とも称する。)にどう影響するかを検討した。なお、試験サンプルは試験2と同じものを使用した。
(試験3-1.サンプル調製)
本試験では、試験2と同じ方法で気泡を調製し、振盪直後の気泡を試験に用いた。疑似汚れは、卵白30g、サラダ油15mL、食紅(赤)をよく混ぜ合わせたものを使用した。
(試験3-2.試験方法)
5人の被験者の前腕内側に、2cm四方の試験区を6か所設定した。各試験区に疑似汚れ1gを塗布し、20分間自然乾燥させた。自然乾燥後、疑似汚れを被覆するように各サンプルを塗布し1分間放置した。放置後、40℃の湯を前腕外側から流し、疑似汚れがどの程度落ちたかを5段階で評価した。なお、汚れ除去機能の判定基準は、表3に示す通りである。
Figure 2023135353000003
(試験3-3.結果)
本試験の結果を図3に示す。図3によれば、サンプルAと比較して、サンプルB、サンプルC、サンプルFの汚れ除去機能が優れている。特にサンプルCは、他のサンプルよりも優れている。
この結果より、タンパク質分解酵素剤を含有する洗浄剤は、コラーゲン粉末剤を配合することにより、汚れ除去機能を高めることができる。また特に、植物の炭化物粉末とコラーゲン粉末剤とを配合すれば、汚れ除去機能を更に高めることができる。
また、植物の炭化物粉末やコラーゲン粉末剤を配合していても、タンパク質分解酵素剤が配合されていなければ高い汚れ除去機能を発揮できないことが明らかとなった。
〔試験4.保湿機能試験〕
本試験では、植物性の炭化物粉末、コラーゲン粉末剤、タンパク質分解剤の有無が洗浄後の肌への保湿機能にどう影響するかを検討した。なお、試験サンプルは試験2と同じものを使用した。
(試験4-1.サンプル調製)
本試験では、試験3と同じ方法で気泡と疑似汚れを調製した。
(試験4-2.試験方法)
5人の被験者の前腕内側に、2cm四方の試験区を6か所設定した。各試験区に疑似汚れ1gを載置し、20分間自然乾燥させた。自然乾燥後、疑似汚れを被覆するように各サンプルを載置し1分間放置した。放置後、40℃の湯を前腕外側から流してタオルドライをし、試験区の肌の状態を5段階で評価した。なお、保湿機能の判定基準は、表4に示す通りである。
Figure 2023135353000004
(試験4-3.結果)
本試験の結果を図4に示す。図4によれば、サンプルAと比較して、サンプルB、サンプルCの保湿機能が優れている。特にサンプルCは、他のサンプルよりも優れている。また、サンプルDとサンプルFは、サンプルAとサンプルEよりも保湿機能が高く、サンプルBとサンプルCよりも保湿機能が低かった。
この結果より、タンパク質分解酵素剤を含有する洗浄剤は、コラーゲン粉末剤を配合することにより、保湿機能を高めることができる。
また特に、サンプルDとサンプルFの結果より、コラーゲン粉末剤を配合していてもタンパク質分解酵素剤と共存下でなければ十分な保湿機能を発揮しない点は興味深いことである。この点に関し発明者は、コラーゲン粉末剤のコラーゲンがタンパク質分解成分の加水分解されて生成されたヒドロキシプロリンが寄与していると考えている。
したがって、試験1~4の結果より、本発明に係る洗浄剤は、タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とを配合することにより、洗浄作用と整肌作用とが共に高い水準で機能する洗浄剤を提供することができる。また、長い保存期間を経ても洗浄作用と整肌作用とが十分に発揮される洗浄剤を提供することができる。

Claims (11)

  1. タンパク質分解酵素剤と、植物の炭化物粉末と、コラーゲン粉末剤とを配合した洗浄剤。
  2. 前記タンパク質分解酵素剤は、ペプチダーゼ活性を有するタンパク質分解成分を含有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄剤。
  3. 前記タンパク質分解酵素剤は、タンパク質分解成分として菌類抽出物、パパイン、パンクレアチンのいずれか1つを含有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄剤。
  4. 前記植物の炭化物粉末は、竹、木、木の実の種子から選ばれる少なくともいずれか1つの炭化物の粉末であることを特徴とする請求項1~3いずれか1項に記載の洗浄剤。
  5. 前記植物の炭化物粉末は、50~180メッシュの篩を通過することを特徴とする請求項1~4いずれか1項に記載の洗浄剤。
  6. 前記植物の炭化物粉末を0.01~20重量%含有することを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載の洗浄剤。
  7. 前記コラーゲン粉末剤は、魚類、鳥類、ブタ、ウシ、ウマに由来するコラーゲンを含有することを特徴とする請求項1~6いずれか1項に記載の洗浄剤。
  8. 前記コラーゲン粉末剤は、20~200メッシュの篩を通過することを特徴とする請求項1~7いずれか1項に記載の洗浄剤。
  9. 前記コラーゲン粉末剤を0.01~20.5重量%含有することを特徴とする請求項1~8いずれか1項に記載の洗浄剤。
  10. 前記コラーゲン粉末剤におけるプロリンとヒドロキシプロリンの合計の含有量は、15~25重量%であることを特徴とする請求項1~9いずれか1項に記載の洗浄剤。
  11. 請求項1~10に記載の洗浄剤は、20~1000メッシュの篩を通過することを特徴とする洗浄剤。
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