JP2023132145A - 電界効果型トランジスタのゲート駆動装置 - Google Patents

電界効果型トランジスタのゲート駆動装置 Download PDF

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Junya Muramatsu
涼輔 岡地
Ryosuke Okaji
克博 朽木
Katsuhiro Kuchiki
昌孝 出口
Masataka Deguchi
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Abstract

【課題】電界効果型トランジスタの特性変動の少なくとも1つを容易に検出するゲート駆動装置を提供する。【解決手段】電界効果型トランジスタTr1のゲート駆動装置1は、ゲート駆動電圧Vgを出力する電源V1と、電源と電界効果型トランジスタのゲートGの間に接続される入力抵抗を、動作モードよりも検査モードにおいてより高い抵抗値となるように構成しているゲート抵抗部10と、を備える。第2入力抵抗Rg2の抵抗値は、第1入力抵抗Rg1の抵抗値よりも十分に大きく、電界効果型トランジスタのゲート・エミッタ間の抵抗Rgeと同一又はそれに近い値である。スイッチSW1は、動作モードにおいて、電源のゲート駆動電圧が第2入力抵抗を介さずに第1入力抵抗を介して電界効果型トランジスタのゲートに入力し、検査モードにおいて、電源のゲート駆動電圧が第1入力抵抗を介さずに第2入力抵抗を介して電界効果型トランジスタのゲートに入力する。【選択図】図1

Description

本明細書が開示する技術は、電界効果型トランジスタのゲート駆動装置に関する。
電界効果型トランジスタは、例えばパワーデバイスとして用いられ、負荷に供給する電力を制御するインバータ装置等に搭載される。このような電界効果型トランジスタでは、長期間の使用によって電気的な特性が変動することが知られている。例えば、電界効果型トランジスタのゲート絶縁膜の破壊等によってゲートリークが増加することが知られている。又は、電界効果型トランジスタのゲート絶縁膜に電荷がトラップされてゲート閾値電圧が増加することが知られている。このような特性変動を検出する技術が必要とされている。
特許文献1及び特許文献2は、電界効果型トランジスタのゲートリークを検出することができるゲート駆動装置を開示する。特許文献1及び特許文献2に開示されるゲート駆動装置はいずれも、電界効果型トランジスタのゲートの入力抵抗に加わる電圧を参照してゲートリークを検出するように構成されている。
特開2011-71174号公報 特開2003-143833号公報
一般的に、電界効果型トランジスタのゲート絶縁膜のゲート・エミッタ間(又は、ゲート・ソース間)の抵抗値は数MΩであるのに対し、ゲートの入力抵抗は数Ωである。ゲート絶縁膜の破損等に起因して流れるゲートリーク電流は、ゲート絶縁膜のゲート・エミッタ間抵抗とゲートの入力抵抗の直列回路を介して流れるが、破損の程度によっては1μA以下と小さいことがある。このため、ゲートリーク電流に起因してゲートの入力抵抗に加わる電圧は数μV以下である。特許文献1及び特許文献2の技術では、このような小さい電圧を計測しなければならず、ゲートリークを検出できない虞がある。
本明細書は、電界効果型トランジスタの特性変動の少なくとも1つを容易に検出することができるゲート駆動装置を提供する。
本明細書が開示する電界効果型トランジスタのゲート駆動装置は、ゲート駆動電圧を出力する電源と、前記電源と前記電界効果型トランジスタのゲートの間に接続される入力抵抗を動作モードよりも検査モードにおいてより高い抵抗値となるように構成されているゲート抵抗部と、を備えることができる。
前記ゲート駆動装置は、前記電界効果型トランジスタのゲート電圧を計測するように構成されている電圧計測装置と、前記検査モードにおける前記ゲート電圧に基づいて異常信号を生成するように構成されている検出部と、をさらに備えていてもよい。ここで、前記ゲート電圧とは、前記電界効果型トランジスタのゲート・エミッタ間(又は、ゲート・ソース間)の電圧又はそれに相関する指標のことである。このゲート駆動装置では、前記ゲートの前記入力抵抗とゲート絶縁膜のゲート・エミッタ間(又は、ゲート・ソース間)の抵抗の直列回路を考えたときに、前記動作モードよりも前記検査モードにおいて前記ゲートの前記入力抵抗がより高い抵抗値となる。このため、前記ゲート絶縁膜の破損等に起因して前記ゲート絶縁膜のゲート・エミッタ間(又は、ゲート・ソース間)の抵抗値が変動したときに、前記直列回路によって分圧される前記ゲート電圧は、前記検査モードにおいて大きく変動することができる。本明細書が開示する前記ゲート駆動装置は、前記電界効果型トランジスタのゲートリークを容易に検出することができる。
前記検出部は、前記検査モードにおける前記ゲート電圧が所定の閾値を下回ったときに、前記異常信号を生成するように構成されていてもよい。このゲート駆動装置は、少ない演算処理量で前記電界効果型トランジスタのゲートリークを検出することができる。
前記検出部は、過去の複数の前記検査モードごとに計測された前記ゲート電圧の平均値を算出し、前記平均値と現在の前記検査モードにおける前記ゲート電圧との差分を算出し、前記差分に基づいて異常信号を生成するように構成されていてもよい。例えば、前記検出部は、前記差分が所定の閾値を上回ったときに、前記異常信号を生成するように構成されていてもよい。又は、前記検出部は、過去の複数の前記検査モードごとに算出された前記差分の積算値の推移に基づいて前記異常信号を生成するように構成されていてもよい。この場合、前記検出部は、前記積算値の原点からの傾きに基づいて前記異常信号を生成するように構成されていてもよい。これらのゲート駆動装置によると、ロバスト性の高い方法で前記電界効果型トランジスタのゲートリークを検出することができる。
前記検査モードにおける前記入力抵抗の抵抗値は、前記電界効果型トランジスタが初期状態のときに、前記ゲート電圧が前記電界効果型トランジスタのゲート閾値電圧よりも高くなるように設定されていてもよい。このゲート駆動装置によると、前記検査モードにおいて前記電界効果型トランジスタがオフしたときに、前記ゲート閾値電圧が変動したことを検出することができる。
前記ゲート抵抗部は、前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに接続される第1入力抵抗と、前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに接続されており、前記第1入力抵抗よりも抵抗値が高い第2入力抵抗と、を有していてもよい。前記ゲート抵抗部は、前記動作モードにおいて、前記電源の前記ゲート駆動電圧が前記第2入力抵抗を介さずに前記第1入力抵抗を介して前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに入力し、前記検査モードにおいて、前記電源の前記ゲート駆動電圧が前記第2入力抵抗を介して前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに入力する、ように構成されていてもよい。
ゲート駆動装置の構成の概略を示す図である。 第1入力抵抗と第2入力抵抗と電界効果型トランジスタのゲート・エミッタ間の抵抗の等価回路を示す図である。 検査モードにおける電界効果型トランジスタのゲート電圧の波形を示す図である。 現在の検査モードにおけるゲート電圧と過去のゲート電圧の平均値の差分を積算した積算値の推移グラフを示す図である。 差分の積算値の推移グラフを示す図であり、積算値の原点からの傾きを算出する方法を説明するための図である。 サイクル数と積算値の原点からの傾きの関係を表す図である。 検査モードにおける電界効果型トランジスタのゲート電圧の波形を示す図であり、ゲート閾値電圧の変動を検出する方法を説明する図である。 ゲート駆動装置の処理フローを示す図である。 ゲート抵抗部の変形例の構成を示す図である。 ゲート抵抗部の他の変形例の構成を示す図である。 図9に示すゲート抵抗部の具体的な回路構成を示す図である。
図1に、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークとゲート閾値電圧の変動を検出することができるゲート駆動装置1の構成を示す。なお、ゲート駆動装置1は、ゲートリークとゲート閾値電圧の変動のいずれか一方の特性変動のみを検出できるように構成されていてもよい。この例では、電界効果型トランジスタTr1は、コレクタCとエミッタEを有するIGBTである。この例に代えて、電界効果型トランジスタTr1は、ドレインとソースを有するMISFET又はMOSFETであってもよい。電界効果型トランジスタTr1のコレクタCは直流電圧Vccを出力する電源V2の正極に接続されており、電界効果型トランジスタTr1のエミッタEは接地されている。電界効果型トランジスタTr1に対して直列に負荷(図示省略)が接続されている。電界効果型トランジスタTr1は、例えばパワーデバイスとして用いられ、負荷(図示省略)に供給する電力を制御するインバータ装置等に搭載される。
ゲート駆動装置1は、通常の動作モードとは別のタイミングにおいて、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークとゲート閾値変動を検出するための検査モードを実行できるように構成されている。ゲート駆動装置1は、ゲート駆動電圧Vを出力する電源V1と、ゲート抵抗部10と、電圧計測装置20と、検出部30と、を備えている。
ゲート抵抗部10は、電源V1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間に設けられており、第1入力抵抗Rg1と、第2入力抵抗Rg2と、スイッチSW1と、を有してる。
第1入力抵抗Rg1と第2入力抵抗Rg2は、スイッチSW1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間において並列に接続されている。第2入力抵抗Rg2の抵抗値は、第1入力抵抗Rg1の抵抗値よりも十分に大きく、電界効果型トランジスタTr1のゲート・エミッタ間の抵抗Rgeと同一又はそれに近い値である。
スイッチSW1は、電源V1の接続先を第1入力抵抗Rg1と第2入力抵抗Rg2の間で切り替えるように構成されている。スイッチSW1は、動作モードにおいて、電源V1の接続先を第1入力抵抗Rg1に接続することにより、電源V1のゲート駆動電圧Vgが第2入力抵抗Rg2を介さずに第1入力抵抗Rg1を介して電界効果型トランジスタTr1のゲートGに入力するように構成されている。スイッチSW1はさらに、検査モードにおいて、電源V1の接続先を第2入力抵抗Rg2に接続することにより、電源V1のゲート駆動電圧Vgが第1入力抵抗Rg1を介さずに第2入力抵抗Rg2を介して電界効果型トランジスタTr1のゲートGに入力するように構成されている。
電圧計測装置20は、電界効果型トランジスタTr1のゲート・エミッタ間の電圧であるゲート電圧Vgeを計測するように構成されている。電圧計測装置20は、少なくとも検査モードにおいて、電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeを計測するように構成されている。この例では、電圧計測装置20は、電界効果型トランジスタTr1のゲート・エミッタ間の電圧を直接計測するように構成されている。この例に代えて、電圧計測装置20は、検査モードにおいて、第2入力抵抗Rg2の両端の電圧を計測し、電源V1のゲート駆動電圧Vから計測した第2入力抵抗Rg2の両端電圧を差し引くことで、電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeを計測してもよい。
検出部30は、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークを検出するためのものであり、演算装置32と、メモリ34と、コンパレータ36と、報知装置38と、を有している。
演算装置32は、電圧計測装置20から電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeを受信し、以下で説明する演算方法を実行し、現在の検査モードにおける演算結果(即ち、特徴量)を算出する。演算装置32は、必要に応じて、算出された演算結果をメモリ34に記憶する。コンパレータ36は、算出された演算結果を設定された閾値と比較し、その比較結果に基づいて報知装置38に異常信号を出力する。報知装置38は、コンパレータ36から異常信号を受信すると、ユーザ及び/又は上位システムに対して電界効果型トランジスタTr1のゲートリークが増加したことを報知する。
(ゲートリークの検出方法)
図2に、第1入力抵抗Rg1と第2入力抵抗Rg2と電界効果型トランジスタTr1のゲート・エミッタ間の抵抗Rgeの等価回路を示す。第1入力抵抗Rg1の抵抗値は1Ωである。第2入力抵抗Rg2の抵抗値は10MΩである。電界効果型トランジスタTr1のゲート・エミッタ間抵抗Rgeの初期の抵抗値は50MΩである。ゲート・エミッタ間抵抗Rgeの初期の抵抗値とは、電界効果型トランジスタTr1のゲート絶縁膜に破壊等が実質的に生じていない状態であり、例えば電界効果型トランジスタTr1が出荷された直後のゲート・エミッタ間の抵抗値である。
ここで、電界効果型トランジスタTr1のゲート絶縁膜に破壊等が生じ、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeの抵抗値が初期値から10%低下し、45MΩに劣化したと仮定する。スイッチSW1が電源V1の接続先を第1入力抵抗Rg1にしていた場合、電源V1とグランドの間に第1入力抵抗Rg1とゲート・エミッタ間抵抗Rgeの直列回路が存在する。ゲート・エミッタ間抵抗Rgeの抵抗値に対して第1入力抵抗Rg1の抵抗値は十分に小さいので、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeが劣化したとしても、第1入力抵抗Rg1とゲート・エミッタ間抵抗Rgeの直列回路による分圧比はほとんど変わらない。このため、第1入力抵抗Rg1の両端に加わる電圧VRg1については、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeの劣化前が0.20μVであり、劣化後が0.22μVであり、その差が0.02μVである。背景技術で説明した従来技術は、第1入力抵抗Rg1の両端に加わる電圧VRg1を計測し、劣化前後の計測電圧の差からゲートリークを検出しようとするものである。従来技術では、劣化前後の計測電圧の差が小さく、ゲートリークを検出することが困難である。
一方、本明細書が開示するゲート駆動装置1では、検査モードにおいて、スイッチSW1が電源V1の接続先を第2入力抵抗Rg2に切り替える。第2入力抵抗Rg2の抵抗値は、第1入力抵抗Rg1の抵抗値よりも十分に大きく、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeに近い値である。このため、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeが劣化したときに、第2入力抵抗Rg2とゲート・エミッタ間抵抗Rgeの直列回路による分圧比が大きく変動する。したがって、第2入力抵抗Rg2の両端に加わる電圧VRg2については、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeの劣化前が1.67Vであり、劣化後が1.82Vであり、その差が0.15Vである。同様に、電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeも、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeの劣化前後において0.15Vの差を生じる。このような計測電圧の差は、分解能の低い簡易な電圧計測装置20によっても十分に捉えることができる変化である。
図3に、検査モードにおける電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeの波形を示す。検査モードでは、タイミングt1において電源V1からのゲート駆動電圧Vの供給を開始し、タイミングt3で電源V1からのゲート駆動電圧Vの供給を終了する。タイミングt1からt2まではスイッチSW1が第1入力抵抗Rg1に接続しており、タイミングt2からt3まではスイッチSW1が第2入力抵抗Rg2に接続している。このように、検査モードでは、ゲート駆動電圧Vの供給を継続しながらスイッチSW1の接続先を第1入力抵抗Rg1から第2入力抵抗Rg2に切り替えるように実施される。実線がゲート・エミッタ間抵抗Rgeの劣化前の波形であり、破線がゲート・エミッタ間抵抗Rgeの劣化後の波形である。
上記したように、スイッチSW1が第2入力抵抗Rg2に接続している状態(タイミングt2からt3)では、ゲート・エミッタ間抵抗Rgeの劣化前後において、電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeに0.15Vの差が生じる。ゲート駆動装置1は、この差を利用して電界効果型トランジスタTr1のゲートリークを検出するように構成されている。なお、タイミングt1からt2でスイッチSW1が第1入力抵抗Rg1に接続するのは、電界効果型トランジスタTr1が正常に動作するのを確認するためである。このような確認を省略し、検査モードの最初からスイッチSW1が第2入力抵抗Rg2に接続してもよい。
次に、ゲート駆動装置1の検出部30が実行する演算方法1~4について説明する。ゲート駆動装置1は、以下の演算方法1~4を適宜利用して電界効果型トランジスタTr1のゲートリークを検出する。
(1)演算方法1
この演算方法1では、コンパレータ36で比較するための閾値となる所定の電圧値がメモリ34に記録されている。コンパレータ36では、電圧計測装置20で計測された現在の検査モードにおけるゲート電圧Vgeがメモリ34に記録されている閾値と比較される。コンパレータ36は、現在の検査モードにおけるゲート電圧Vgeが閾値を下回ったときに、異常信号を報知装置38に出力する。この演算方法1では、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークが増加したことを少ない演算処理量で検出することができる。
(2)演算方法2
この演算方法2では、過去の複数の検査モードごとに計測されたゲート電圧Vgeの平均値と、過去の検査モードの回数と、コンパレータ36で比較するための閾値となる所定の電圧値がメモリ34に記録されている。演算装置32は、電圧計測装置20で計測された現在の検査モードにおけるゲート電圧Vgeと過去のゲート電圧Vgeの平均値の差分を算出するとともに、現在の検査モードにおけるゲート電圧Vgeを加えた新たな平均値を算出する。算出された差分及び新たに算出された平均値はメモリ34に記録される。コンパレータ36では、算出された差分がメモリ34に記憶されている閾値と比較される。コンパレータ36は、算出された差分が閾値を上回ったときに、異常信号を報知装置38に出力する。この演算方法2では、平均値を用いるので、ある程度のデバイスの特性バラツキ及び計測バラツキを抑えながら、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークが増加したことを検出することができる。この演算方法2は、演算方法1に比してロバスト性が高い検出方法である。
(3)演算方法3
この演算方法3では、上記の演算方法2でメモリ34に記録した情報に加えて、過去の複数の検査モードごとに算出された差分の積算値がメモリ34に記録されている。演算装置32は、上記の演算方法2で実施した演算に加えて、新たに算出された差分を加えた差分の積算値を算出する。新たに算出された差分の積算値はメモリ34に記録される。コンパレータ36では、算出された差分の積算値がメモリ34に記憶されている閾値と比較される。コンパレータ36は、算出された差分の積算値が閾値を上回ったときに、異常信号を報知装置38に出力する。上記の演算方法1及び演算方法2では、瞬時変動等のノイズの影響を受け易い。一方、演算方法3では、そのような瞬時変動等によって差分の積算値が大きく変動することが抑えられる。このため、演算方法3は、ノイズの影響を抑えながら、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークを検出することができる。この演算方法3は、演算方法1及び演算方法2に比してロバスト性が高い検出方法である。
図4に、ゲート駆動装置1が算出した差分の積算値の推移グラフを示す。図4には、「A」と「B」の2つの電界効果型トランジスタTr1の各々の差分の積算値の推移グラフが示されている。「A」の電界効果型トランジスタTr1では、検査モードの回数(サイクル数)がN2に達した後に、差分の積算値の増加速度が上昇している。このため、検査モードの回数がN2に達したときに、「A」の電界効果型トランジスタTr1のゲート絶縁膜において破壊等が生じたことが示唆される。「B」の電界効果型トランジスタTr1では、検査モードの回数がN1に達した後に、差分の積算値の増加速度が上昇している。このため、検査モードの回数がN1に達したときに、「B」の電界効果型トランジスタTr1のゲート絶縁膜において破壊等が生じたことが示唆される。演算方法3では、差分の積算値が所定の閾値を上回ったときに、異常信号が報知装置38に出力される。
差分の積算値の推移グラフを対比すると、「B」の電界効果型トランジスタTr1については、「A」の電界効果型トランジスタTr1よりも先に差分の積算値の増加速度の変化点が現れている。しかしながら、「B」の電界効果型トランジスタTr1については、差分の積算値の増加速度が「A」の電界効果型トランジスタTr1よりも小さいので、差分の積算値が所定の閾値に達するまでの時間が「A」の電界効果型トランジスタTr1よりも遅くなる。以下で説明する演算方法4は、差分の積算値の変化点を素早く捉えることができる方法である。
(4)演算方法4
この演算方法4では、上記演算方法3でメモリ34に記録した情報に加えて、差分の積算値の推移グラフにおける差分の積算値の原点からの傾きが記録されている。演算装置32は、上記演算方法3で実施した演算に加えて、現在の検査モードにおける検査モードの回数と差分の積算値に基づいて差分の積算値の原点からの傾きを算出する。算出された差分の積算値の傾きはメモリ34に記録される。コンパレータ36では、算出された差分の積算値の原点からの傾きがメモリ34に記録されている閾値と比較される。コンパレータ36は、算出された差分の積算値の傾きが閾値を上回ったときに、ゲートリークが増加したと判断し、異常信号を報知装置38に出力する。なお、この例では、横軸を検査モードの回数としているが、この例に代えて、電界効果型トランジスタTr1の使用時間等に置き換えてもよい。
図5に、ゲート駆動装置1が算出した差分の積算値の推移グラフを示す。検査モードの回数「N12」が現在の検査モードを示す。現在の検査モードよりも数回前の検査モードの回数「N11」において、差分の積算値の変化点が現れている。
検査モードのサイクル数が「0(即ち、原点)」から「N11」までは、差分の変化が小さく、差分の積算値が概ね一定で増加する。原点から「N11」までのサイクル数と差分の積算値の関係式は、y=axとなり、原点からの傾きはaで一定である。電界効果型トランジスタTr1のゲートリークが増加し、差分が大きく変化すると、「N11」から「N12」までのサイクル数と差分の積算値の関係式は、y=a’x-b’となり、原点からの傾きはa’-b’/xとなる。
図6に、サイクル数と原点からの傾きの関係を表すグラフを示す。このように、原点からの傾きは、電界効果型トランジスタTr1にゲートリークが発生するまでは一定で推移し、ゲートリークの増加によって大きく変化する。演算方法4では、原点からの傾きが所定の閾値を上回ったときに、異常信号が報知装置38に出力される。演算方法4では、原点からの傾きの変化点を検出することにより、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークが増加したことを素早く検出することができる。
(ゲート閾値電圧の変動の検出方法)
図7に、検査モードにおける電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeの波形を示す。なお、このゲート電圧Vgeの波形は、図3に示すゲート・エミッタ間抵抗Rgeの劣化前のゲート電圧Vgeの波形と同様である。
図7の(A)に示す「Vth1」は、電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧の初期値である。図7の(B)に示す「Vth2」は、電界効果型トランジスタTr1のゲート絶縁膜に電荷がトラップされてゲート閾値電圧がΔVthだけ増加した後の値である。
上記したように、ゲート駆動装置1では、タイミングt2においてスイッチSW1が電源V1の接続先を抵抗値の大きい第2入力抵抗Rg2に切り替えることにより、電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeが低下する。ゲート駆動装置1では、図7の(A)に示すように、この低下した後のゲート電圧Vgeが電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧の初期値である「Vth1」よりも僅かに高くなるように、第2入力抵抗Rg2の抵抗値が設定されている。このため、電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧が大きく変動していなければ、第2入力抵抗Rg2に切り替えた後も、電界効果型トランジスタTr1はオンの状態を継続する。
しかしながら、図7の(B)に示すように、電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧が「Vth2」に増加してゲート電圧Vgeを上回ると、電界効果型トランジスタTr1はオフとなる。ゲート駆動装置1は、検査モードにおいて電界効果型トランジスタTr1がオフしたときに、電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧が増加したと判断し、報知装置38を用いてユーザ及び/又は上位システムに対して電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧が増加したことを報知する。なお、電界効果型トランジスタTr1のオン又はオフの判定は、電界効果型トランジスタTr1のコレクタC又はエミッタEに対して直列に接続される電流計測装置(図示省略)を監視することで可能である。
ゲート駆動装置1では、電源V1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間に1つの第2入力抵抗Rg2が接続されていた。この例に代えて、電源V1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間の入力抵抗を検査モードにおいて連続的に又は多段的に変動できるように構成(例えば、可変抵抗の使用又は複数抵抗の使用)することで、電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧の変動を高分解能で検出することができる。
(ゲート駆動装置の処理フロー)
以下、図8を参照して、ゲート駆動装置1が実行する処理フローを説明する。
ゲート駆動装置1はまず、ステップS1において、検査モードのタイミングか否かを判断する。例えば、電界効果型トランジスタTr1及びゲート駆動装置1が車載用のインバータ装置に用いられている場合、ゲート駆動装置1は、特に限定されるものではないが、車両のイグニッションがオンされた直後のときに検査モードのタイミングであると判断してもよく、車両が交差点等で停車している時間が所定の時間経過したときに検査モードのタイミングであると判断してもよく、車両の移動とは関係のないときに検査モードのタイミングであると判断してもよい。検査モードの場合、ゲート駆動装置1は、ステップS2において、電源V1からゲート駆動電圧Vの供給を開始する。なお、スイッチSW1の接続先は、動作モードの状態が維持されて第1入力抵抗Rg1となっている。
次に、ゲート駆動装置1は、ステップS3において、スイッチSW1の接続先を第2入力抵抗Rg2に切り替える。第2入力抵抗Rg2に切り替えた後に、ゲート駆動装置1は、ステップS4において、電圧計測装置20を用いて電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeを取得する。
次に、ゲート駆動装置1は、ステップS5において、演算装置32を用いて特徴量を算出し、必要に応じて、算出した特徴量をメモリ34に記録する。ここで算出される特徴量は、上記の演算方法1から4のうちの採用された演算方法で説明した特徴量である。
次に、ゲート駆動装置1は、ステップS6において、コンパレータ36を用いて特徴量が閾値を超えているか否かを判断する。特徴量が閾値を超えていれば、ゲート駆動装置1は、電界効果型トランジスタTr1のゲートリークが増加したと判断し、報知装置38に異常信号を出力する。ゲート駆動装置1は、ステップS7において、報知装置38を用いてユーザ及び/又は上位システムに対して電界効果型トランジスタTr1のゲートリークが増加したことを報知させ、検査モードを終了させる。
特徴量が閾値を超えていない場合、ゲート駆動装置1は、ステップS8において、ゲート閾値電圧の変動を検出するか否かを判断する。ゲート閾値電圧の変動の検出は、特に限定されるものではないが、例えば全ての検査モードごとに実施してもよく、検査モードの所定回数ごとに実施してもよく、検査モードが所定回数に達した後の全ての検査モードごとに実施してもよい。ゲート閾値電圧の変動を検出しない場合、ゲート駆動装置1は検査モードを終了させる。ゲート閾値電圧の変動を検出する場合、ゲート駆動装置1は、ステップS9に進む。
ゲート駆動装置1は、ステップS9において、第2入力抵抗Rg2に切り替えたときに、電界効果型トランジスタTr1がオンを継続したか否かを判断する。電界効果型トランジスタTr1がオンを継続していた場合、ゲート駆動装置1は、ゲート閾値電圧が大きく変動していないと判断し、検査モードを終了させる。電界効果型トランジスタTr1がオフとなっていた場合、ゲート駆動装置1は、ステップS10において、報知装置38を用いてユーザ及び/又は上位システムに対して電界効果型トランジスタTr1のゲート閾値電圧が増加したことを報知させ、検査モードを終了させる。
(ゲート抵抗部の変形例)
上記で説明したゲート駆動装置1のゲート抵抗部10は、第1入力抵抗Rg1と第2入力抵抗Rg2がスイッチSW1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間において並列に接続されていた。本明細書が開示するゲート抵抗部10は、電源V1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間に接続される入力抵抗が動作モードよりも検査モードにおいてより高い抵抗値となるように構成されていればよい。
例えば、図9に示すように、第1入力抵抗Rg1と第2入力抵抗Rg2が電源V1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間に直列に接続され、スイッチSW1が第2入力抵抗Rg2に対して並列に接続されていてもよい。スイッチSW1は、検査モードにおいて開くように構成されている。
例えば、図10に示すように、第1入力抵抗Rg1と第2入力抵抗Rg2が電源V1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間に並列に接続され、スイッチSW1が第1入力抵抗Rg1に対して直列に、且つ、第2入力抵抗Rg2に対して並列に接続されていてもよい。スイッチSW1は、検査モードにおいて開くように構成されている。
ここで、図11に、図9のゲート抵抗部10の具体的な回路構成の一例を示す。この例では、ゲート駆動装置1が一般的なプッシュプル型の駆動回路で構成されている。NPN型の第1トランジスタQ1とPNP型の第2トランジスタQ2の接続点と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間に第1入力抵抗Rg1が接続されている。第2入力抵抗Rg2は第1トランジスタQ1に対して並列に接続されており、NPN型の第3トランジスタQ3が第2入力抵抗Rg2に対して直列に、且つ、第1トランジスタQ1に対して並列に接続されている。
動作モードでは、第3トランジスタQ3を駆動させずに(常時オフ)、第1トランジスタQ1と第2トランジスタQ2をオン/オフさせることにより、電界効果型トランジスタTr1を駆動させる。検査モードでは、第1トランジスタQ1をオン、第2トランジスタをオフ、第3トランジスタQ3がオフ、とした状態から、第1トランジスタQ1をオフ、第2トランジスタをオフ、第3トランジスタQ3をオンとした状態に切り替える。この切替動作により、電源V1と電界効果型トランジスタTr1のゲートGの間の入力抵抗は、第1入力抵抗Rg1のみの状態から第1入力抵抗Rg1と第2入力抵抗Rg2が直列に接続された状態に切り替わる。図11に示すゲート抵抗部10は、既存のプッシュプル型の駆動回路に容易に組み入れることができる。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
上記で説明した各演算方法では、電界効果型トランジスタTr1のゲート電圧Vgeを直接演算処理してゲートリークを検出する方法であった。この例に代えて、例えばゲート電圧Vgeに相関する第2入力抵抗Rg2の両端電圧を演算処理しても、同様にゲートリークを検出することができる。本願明細書でゲート電圧Vgeを演算処理するとは、ゲート電圧Vgeに相関する値を演算処理する場合も含む広義の意味で用いられている。
上記の演算方法3及び演算方法4では、差分の積算値を用いていた。この例に代えて、差分の平均値、差分の分散、差分の標準偏差等を用いてもよい。
上記の電界効果型トランジスタTr1は、車載用のインバータ装置に用いられてもよい。この場合、ゲート駆動装置1の検出部30は、車載用のECU内に搭載されていてもよく、インバータ装置を構成する半導体モジュールに内蔵されていてもよく、ゲート駆動回路に組み込まれていてもよく、又は、車両外のサーバーに搭載されて通信装置を介してゲート電圧Vgeを受信するように構成されていてもよい。
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
1:ゲート駆動装置、 10:ゲート抵抗部、 20:電圧計測装置、 30:検出部、 32:演算装置、 34:メモリ、 36:コンパレータ、 38:報知装置、 Rg1:第1入力抵抗、 Rg2:第2入力抵抗、 Tr1:電界効果型トランジスタ、 V1:電源

Claims (9)

  1. 電界効果型トランジスタのゲート駆動装置であって、
    ゲート駆動電圧を出力する電源と、
    前記電源と前記電界効果型トランジスタのゲートの間に接続される入力抵抗を動作モードよりも検査モードにおいてより高い抵抗値となるように構成されているゲート抵抗部と、を備えている、ゲート駆動装置。
  2. 前記電界効果型トランジスタのゲート電圧を計測するように構成されている電圧計測装置と、
    前記検査モードにおける前記ゲート電圧に基づいて異常信号を生成するように構成されている検出部と、をさらに備えている、請求項1に記載のゲート駆動装置。
  3. 前記検出部は、前記検査モードにおける前記ゲート電圧が所定の閾値を下回ったときに、前記異常信号を生成するように構成されている、請求項2に記載のゲート駆動装置。
  4. 前記検出部は、過去の複数の前記検査モードごとに計測された前記ゲート電圧の平均値を算出し、前記平均値と現在の前記検査モードにおける前記ゲート電圧との差分を算出し、前記差分に基づいて前記異常信号を生成するように構成されている、請求項2に記載のゲート駆動装置。
  5. 前記検出部は、前記差分が所定の閾値を上回ったときに、前記異常信号を生成するように構成されている、請求項4に記載のゲート駆動装置。
  6. 前記検出部は、過去の複数の前記検査モードごとに算出された前記差分の積算値の推移に基づいて前記異常信号を生成するように構成されている、請求項4に記載のゲート駆動装置。
  7. 前記検出部は、前記積算値の原点からの傾きに基づいて前記異常信号を生成するように構成されている、請求項6に記載のゲート駆動装置。
  8. 前記検査モードにおける前記入力抵抗の抵抗値は、前記電界効果型トランジスタが初期状態のときに、前記ゲート電圧が前記電界効果型トランジスタのゲート閾値電圧よりも高くなるように設定されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のゲート駆動装置。
  9. 前記ゲート抵抗部は、
    前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに接続される第1入力抵抗と、
    前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに接続されており、前記第1入力抵抗よりも抵抗値が高い第2入力抵抗と、を有しており、
    前記ゲート抵抗部は、前記動作モードにおいて、前記電源の前記ゲート駆動電圧が前記第2入力抵抗を介さずに前記第1入力抵抗を介して前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに入力し、前記検査モードにおいて、前記電源の前記ゲート駆動電圧が前記第2入力抵抗を介して前記電界効果型トランジスタの前記ゲートに入力する、ように構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載のゲート駆動装置。
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