以下に、本願の開示する3相モータの製造方法及び3相モータの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する3相モータの製造方法及び3相モータが限定されるものではない。
まず、冷凍サイクル装置が備えるロータリ圧縮機と、このロータリ圧縮機に用いられる3相モータについて説明する。図1は、実施例1の3相モータを備えるロータリ圧縮機を示す縦断面図である。
図1に示すように、圧縮機1は、いわゆるロータリ圧縮機であり、容器2と、回転軸3と、圧縮部5と、3相モータ6と、を備えている。容器2は、金属材料によって形成されており、密閉された内部空間7を形成している。内部空間7は、概ね円柱状に形成されている。容器2は、水平面上に縦置きされたときに、内部空間7の中心軸が鉛直方向と平行になるように形成されている。容器2には、内部空間7の下部に油溜め8が形成されている。油溜め8には、圧縮部5を潤滑させる潤滑油である冷凍機油が貯留される。容器2には、冷媒を吸入するための吸入管11と、圧縮された冷媒を吐出する吐出管12と、が接続されている。回転軸3は、鉛直方向に沿って設けられており、一端が油溜め8に浸されるように、容器2の内部空間7に配置されている。回転軸3は、内部空間7の中心軸回りに回転可能に容器2に支持されている。回転軸3は、回転することにより、油溜め8に貯留された冷凍機油を圧縮部5に供給する。
圧縮部5は、内部空間7における下部に配置され、油溜め8の上方に配置されている。圧縮機1は、さらに、上マフラーカバー14と、下マフラーカバー15と、を備えている。上マフラーカバー14は、内部空間7における圧縮部5の上部に配置されている。上マフラーカバー14は、その内部に上マフラー室16を形成している。下マフラーカバー15は、内部空間7における圧縮部5の下部に設けられており、油溜め8の上部に配置されている。下マフラーカバー15は、内部に下マフラー室17を形成している。下マフラー室17は、圧縮部5に形成されている連通路(図示せず)を介して上マフラー室16に連通している。上マフラーカバー14と回転軸3との間には、圧縮冷媒吐出孔18が形成され、上マフラー室16は、圧縮冷媒吐出孔18を介して内部空間7に連通している。
圧縮部5は、回転軸3が回転することにより、吸入管11から供給される冷媒を圧縮し、その圧縮された冷媒を上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。その冷媒は、冷凍機油と相溶性を有する。3相モータ6は、内部空間7における圧縮部5の上部に配置されている。
図2は、実施例1の3相モータを示す平面図であり、上インシュレータ側から示している。図1及び図2に示すように、3相モータ6は、ロータ21と、ステータ22と、を備えている。ロータ21は、珪素鋼の薄板(磁性体)を複数積層して円柱状に形成されており、複数のリベット9により一体化されている。ロータ21の中心には回転軸3が挿通され、ロータ21が回転軸3に対して固定されている。ロータ21には、8個のスリット状の磁石埋め込み孔10aが、回転軸3を中心として8角形の各辺をなすように形成されている。各磁石埋め込み孔10aは、ロータ21の周方向に所定間隔をあけて形成されている。磁石埋め込み孔10aには、板状の永久磁石10bが埋め込まれている。
ステータ22は、概ね円筒形に形成されており、ロータ21を囲むように配置されて、容器2に固定されている。ステータ22は、ステータコア23と、上インシュレータ24及び下インシュレータ25と、導線である複数の巻き線46と、を備えている。上インシュレータ24は、ステータコア23の軸方向(回転軸3の軸方向)の上端部に固定されている。下インシュレータ25は、ステータコア23の軸方向の下端部に固定されている。上インシュレータ24及び下インシュレータ25は、ステータコア23と巻き線(導線)46とを絶縁する絶縁部の一例である。
図3は、実施例1の3相モータ6が備えるステータコア23を示す下面図である。ステータコア23は、例えば、ケイ素鋼板に例示される軟磁性体で形成された複数の板が積層されて形成され、図3に示すように、ヨーク部31と、複数のステータコアティース部32-1~32-12と、を備えている。ヨーク部31は、概ね円筒形に形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-12のうちの第1ステータコアティース部32-1は、概ね柱体状に形成されている。第1ステータコアティース部32-1は、一端がヨーク部31の内周面に連続して形成され、すなわち、ヨーク部31の内周面から突出するように形成されている。複数のステータコアティース部32-1~32-12のうちの第1ステータコアティース部32-1と異なるステータコアティース部も、第1ステータコアティース部32-1と同様に、概ね柱体状に形成されており、ヨーク部31の内周面から突出している。複数のステータコアティース部32-1~32-12は、さらに、12スロットのステータ22の場合、ヨーク部31の内周面に30°ごとの等間隔に配置されて形成されている。
上インシュレータ24は、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)に例示される絶縁体によって円筒状に形成されている。上インシュレータ24は、図2に示すように、外周壁部41と、巻き線(導線)46が巻回される複数のインシュレータティース部42-1~42-12と、複数の鍔部43-1~43-12と、を有している。外周壁部41は、概ね円筒形に形成されている。外周壁部41には、外周壁部41の中心軸の方向(回転軸3の軸方向)における一端から中心軸に沿って延びる複数のスリット44が、外周壁部41の周方向に間隔をあけて形成されている。また、外周壁部41は、外周壁部41の中心軸の方向における他端が、ステータコア23に当接する。言い換えると、複数のスリット44は、外周壁部41におけるステータコア23とは反対側(反リード側)の一端から、ステータコア23側(リード側)に向かって延びて形成されている。後述する巻回部45から引き出された巻き線46が各スリット44を通されることで、外周壁部41の内周側から外周側へ引き出された巻き線46は外周壁部41の外周面に沿って掛け渡される。
複数のインシュレータティース部42-1~42-12のうちの第1インシュレータティース部42-1は、断面が概ね半円である直柱体状に形成されている。第1インシュレータティース部42-1は、一端が外周壁部41の内周面に連続して形成され、すなわち、外周壁部41の内周面から突出するように形成されている。複数のインシュレータティース部42-1~42-12のうちの第1インシュレータティース部42-1と異なるインシュレータティース部も、直柱体状に形成され、第1インシュレータティース部42-1と同様に、外周壁部41の内周面から突出するように形成されている。複数のインシュレータティース部42-1~42-12は、外周壁部41の内周面に30度ごとの等間隔に配置されて形成されている。
複数の鍔部43-1~43-12は、複数のインシュレータティース部42-1~42-12に対応し、それぞれ、概ね半円形の板状に形成されている。複数の鍔部43-1~43-12のうちの第1インシュレータティース部42-1に対応する第1鍔部43-1は、第1インシュレータティース部42-1の他端に連続して第1インシュレータティース部42-1と一体に形成されている。複数の鍔部43-1~43-12のうちの第1鍔部43-1と異なる鍔部も、第1鍔部43-1と同様に、複数のインシュレータティース部42-1~42-12の他端に連続してインシュレータティース部42-1~42-12のそれぞれと一体に形成されている。
ここでは、上インシュレータ24について説明したが、下インシュレータ25も、上インシュレータ24と同様に形成されている。すなわち、下インシュレータ25は、絶縁体によって円筒状に形成されており、外周壁部41と、複数のインシュレータティース部42-1~42-12と、複数の鍔部43-1~43-12と、を有している。
図4は、実施例1におけるステータ22を示す下面図である。ステータコア23の複数のステータコアティース部32-1~32-9は、図4に示すように、複数の巻き線46がそれぞれ巻回されている。各ステータコアティース部32-1~32-12には、後述する図5に示すように、各相の巻き線(導線)46によって巻回部45がそれぞれ形成されている。図4において、12個のスロットをなす各巻回部45には、図中の時計回りの順番に1~12の符号を付けて示す。12個の巻回部45は、ステータコア23の周方向に沿って、3相が同じ順序を繰り返すように、すなわち、図4の時計回りにU相、V相、W相の順序を繰り返すように配列されている。
実施例1における3相モータ6は、8極12スロットの集中巻型のモータである(図2参照)。複数の巻き線(導線)46には、U相の巻回部45を形成する複数のU相巻き線46-U1~46-U4と、V相の巻回部45を形成する複数のV相巻き線46-V1~46-V4と、W相の巻回部45を形成する複数のW相巻き線46-W1~46-W4と、が含まれている。
なお、本発明の3相モータは、12スロットに限定されるものではなく、スロットの個数、すなわち巻回部45の個数が、12以上、かつ、3の倍数個であればよい。言い換えると、上インシュレータ24(下インシュレータ25)のインシュレータティース部42の個数は、12以上、かつ、3の倍数個であればよい。
(3相の巻回部の結線構造)
図5は、実施例1における各相の巻回部45の結線状態を示す結線図である。図5において、12個のスロットをなす各巻回部45には、図5、及び後述する図6、図7と対応する[1]~[12]の符号を付けて示す。
図5に示すように、実施例1の3相モータ6におけるU相、V相、W相の各相の巻回部45は、2つ以上の巻回部45が直列接続された第1直列接続部52Aと、2つ以上の巻回部45が直列接続された第2直列接続部52Bと、を有しており、第1直列接続部52Aと第2直列接続部52Bが並列接続されている。
本実施例では、第1直列接続部52Aと第2直列接続部52Bにおける一方の直列接続部を形成するための各巻回部45が、ヨーク部31の内周側から各巻回部45をヨーク部31の径方向に沿って見たときに、巻き線(導線)46を一方向回りに巻回することで形成されている。例えば、第1直列接続部52Aの各巻回部45は、巻き線(導線)46が反時計回り(CCW:Counter Clock Wise)にそれぞれ巻回されて形成されている。一方、第1直列接続部52Aと第2直列接続部52Bにおける他方の直列接続部を形成するための各巻回部45は、ヨーク部31の内周側から各巻回部45をヨーク部31の径方向に沿って見たときに、巻き線(導線)46を他方向回りに巻回することで形成されている。例えば、第2直列接続部52Bの各巻回部45は、巻き線(導線)46が時計回り(CW:Clock Wise)にそれぞれ巻回されて形成されている。
実施例1の3相モータ6は、2以上の整数をMとしたときに3M個の巻回部45を有する第1スター結線体53A及び第2スター結線体53Bを有する。実施例1における第1スター結線体53Aは、図5中に第1巻回部[1]及び第4巻回部[4]、第5巻回部[5]及び第8巻回部[8]、第3巻回部[3]及び第6巻回部[6]で示す6つの巻回部45を有しており、第1中性点51Aを介して後述する第1U相中性線47-U1、第1V相中性線47-V1、第1W相中性線47-W1がそれぞれ電気的に接続されている。第2スター結線体53Bは、図5中に第10巻回部[10]及び第7巻回部[7]、第2巻回部[2]及び第11巻回部[11]、第12巻回部[12]及び第9巻回部[9]で示す6つの巻回部45を有しており、第2中性点51Bを介して後述する第2U相中性線47-U2、第2V相中性線47-V2、第2W相中性線47-W2がそれぞれ電気的に接続されている。
したがって、第1スター結線体53Aと第2スター結線体53Bを有するステータ22は、図5に示すように、第1中性点51Aと第2中性点51Bである2つの中性点51を備えている。実施例1では、3相における各々の第1直列接続部52Aが2つの中性点51のうちの一方の第1中性点51Aに接続されており、3相における各々の第2直列接続部52Bが他方の第2中性点51Bに接続されている。
実施例1における3相モータ6の製造工程では、ノズルから巻き線46を供給し、ステータコア23のステータコアティース部32-1~32-12と、下インシュレータ25のインシュレータティース部42-1~42-12とに跨って巻き線46を巻回し、下インシュレータ25の外周壁部41に沿って巻き線46を巻き付ける巻線機(図示せず)が用いられる。実施例1では、巻線機を用いて3相の各巻回部45を形成する際、互いに動作を同期させた3つのノズルを用いて3相の巻き線46を同時に巻き付けて3相の巻回部45を形成する方式(以下、3ノズル巻きと称する。)が適用されている。
図6は、実施例1においてU相の各巻回部45を形成する巻き線46の掛け渡し経路を説明するための展開図である。図7は、実施例1において3相の各巻回部45を形成する巻き線46の掛け渡し経路を説明するための展開図である。図7は、隣り合うノズル同士の間隔(以下、ノズルピッチと称する。)が60°の角度で配置された3つのノズルを用いて3ノズル巻きで、下インシュレータ25及びステータコア23に巻き付けられた各相の巻き線46を示す展開図である。図6及び図7は、ステータコア23のヨーク部31の内周側から各ステータコアティース部32(または各インシュレータティース部42)をヨーク部31の径方向(下インシュレータ25の外周壁部41の径方向)に沿って見た展開図である。
図6及び図7における下方が、巻き線46とつながる電源線(リード線)が配置されるリード側であって、ステータ22側である。図6及び図7における上方が、リード側とは反対側である反リード側であって、ステータ22側とは反対側である。また、図6及び図7において、12個のスロットをなす各巻回部45には、ステータコア23のヨーク部31の周方向における一方側に向かう順番、すなわち図中の左端から右端に向かう順番に、第1巻回部~第12巻回部として[1]~[12]の符号を付けて示す。圧縮機1の外部に配置される電源(図示せず)とつながる巻き線46の始端Sを丸印で示し、巻き線46の終端Eを三角印で示す。ここで、始端S及び終端Eは電流が流れる向きを指しており、電流が始端Sから終端Eへ向かって流れる。
実施例1の巻回部45の結線構造は、ステータコア23の周方向にU相、V相、W相の順番で繰り返すように各相の巻回部45が並んだ配列において、各相の配列方向において隣り合う同じ相の巻回部45同士が結線、すなわち、配列方向(周方向)において隣り合う極同士が接続されている(以下、隣極接続と称する。)。例えば、U相巻き線46は、第1ステータコアティース部32-1に巻かれた第1巻回部[1]と、第4ステータコアティース部32-4に巻かれた第4巻回部[4]とが結線されており、第7ステータコアティース部32-7に巻かれた第7巻回部[7]と、第10ステータコアティース部32-10に巻かれた第10巻回部[10]とが結線されている。
図6に示すように、第2中性点51Bに接続される終端Eから延ばされた第1U相巻き線46-U1は、第7ステータコアティース部32-7に時計回り(CW)に巻回されている。第7ステータコアティース部32-7の第7巻回部[7]から引き延ばされた第1U相巻き線46-U1は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第1U相渡り線部分49-U1を形成している。ここで、渡り線部分49(渡り線)とは、スリット44を通って下インシュレータ25の外周側に引き出された部分を指すものとする。第1U相渡り線部分49-U1から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第2U相巻き線46-U2は、第10ステータコアティース部32-10に時計回り(CW)に巻回されている。
第10ステータコアティース部32-10の第10巻回部[10]から引き延ばされた第2U相巻き線46-U2は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第2U相渡り線部分49-U2を形成している。第2U相渡り線部分49-U2から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第3U相巻き線46-U3は、U相電源と接続される始端Sとして延ばされると共に、始端Sで切断されることなく連続して延ばされて第1ステータコアティース部32-1に反時計回り(CCW)に巻回されている。
第1ステータコアティース部32-1の第1巻回部[1]から引き延ばされた第3U相巻き線46-U3は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第3U相渡り線部分49-U3を形成している。第3U相渡り線部分49-U3から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第4U相巻き線46-U4は、第4ステータコアティース部32-4に反時計回り(CCW)に巻回されている。第4ステータコアティース部32-4の第4巻回部[4]から引き延ばされた第4U相巻き線46-U4は、第1中性点51Aに接続される終端Eまで延ばされている。
このようにU相巻き線46は、第7ステータコアティース部32-7部から、第10ステータコアティース部32-10、第1ステータコアティース部32-1、第4ステータコアティース部32-4の順番に、途中で切断されることなく連続して各巻回部45を形成している。また、第3U相巻き線46-U3において、U相電源と接続される始端Sとして延ばされた部分は、上述のようにU相の各巻回部45を形成する工程の後工程にて2つの始端Sに切断された後、各始端Sが後述の第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2として用いられてU相電源にそれぞれ接続される。
なお、本実施例1では、U相巻き線46が、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]の順番にU相の各巻回部45を形成するよう巻回されたが、このように第7巻回部[7]から巻き始める代わりに、第1巻回部[1]から巻き始めるように第1巻回部[1]~第12巻回部[12]と呼ぶ位置をずらした場合(実施例1における第7巻回部[7]を第1巻回部[1]と呼ぶ場合)には、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]の順番に巻回された構造と言い換えられえる。この巻回の順番は、V相、W相にも当てはまる。
ここで、U相巻き線46が巻回される順番について、下インシュレータ25の外周壁部41のスリット44を通過する順番で言い換える。図6に示すように、第7巻回部[7]から引き延ばされた第1U相巻き線46-U1が、第1U相渡り線部分49-U1として通過するスリット44を第1スリット44-1とする。U相巻き線46が通過する各スリット44を、第1スリット44-1から下インシュレータ25の外周壁部41の周方向の一方側、すなわち、図6の右側に向かって並ぶ順番に、第1スリット44-1、第2スリット44-2、第3スリット44-3、第4スリット44-4、第5スリット44-5、第6スリット44-6としたとき、U相巻き線46は、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]の順番に巻回されることで、第1スリット44-1、第3スリット44-3、第2スリット44-2、第4スリット44-4、第5スリット44-5、第6スリット44-6、の順番で通過している。この順番で第1スリット44-1から第6スリット44-6を通過することは、V相、W相にも当てはまる。
また、U相巻き線46は、U相電源に接続される始端Sから、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]の順番に終端Eまで流れる電流の向きと、第10巻回部[10]、第7巻回部[7]の順番に終端Eまで流れる電流の向きが、ステータ22の周方向において逆向きとなる。このため、U相巻き線46は、4つの各巻回部45の磁束が発生する向きを揃えるため、第7ステータコアティース部32-7及び第10ステータコアティース部32-10に時計回り(CW)に巻かれると共に、第1ステータコアティース部32-1及び第4ステータコアティース部32-4に反時計回り(CCW)に巻かれている。言い換えれば、U相の各巻回部45について、2つの直列接続部52のうちの一方である第2直列接続部52Bが有する巻回部45(第7巻回部[7]、第10巻回部[10])は、時計回り(CW)に巻き線46が巻回されて形成され、2つの直列接続部52のうちの他方である第1直列接続部52Aが有する巻回部45(第1巻回部[1]、第4巻回部[4])は、反時計回り(CCW)に巻き線46が巻回されて形成されている。
ここで、U相巻き線46が通過するスリット44の順番に関し、第1巻回部[1]を形成する前後に通過する2つのスリット(第4スリット44-4、第5スリット44-5)を、便宜的に第1の組スリットと呼び、第10巻回部[10]を形成する前後に通過する2つのスリット(第3スリット44-3、第2スリット44-2)を、第2の組スリットと呼ぶこととする。このとき、第1の組スリットを構成する2つのスリット(第4スリット44-4、第5スリット44-5)は、外周壁部41の周方向の一方側に向かって並ぶ順番と、巻き線46の巻回時に各スリットを通過する順番とが一致する。これに対し、第2の組スリットを構成する2つのスリット(第3スリット44-3、第2スリット44-2)は、外周壁部41の周方向の一方側に向かって並ぶ順番と、巻き線46の巻回時に各スリットを通過する順番とが逆転している。これにより、巻き線46を巻回する向きを時計回り(CW)と反時計回り(CCW)とに途中で反転させても、巻き線46において各スリット44から巻回部45まで延びる部分を回転軸3の軸方向と平行に延ばすことができ、巻き線46の各スリット44に引っ掛けられた部分に加わる負荷を軽減できる。これはV相、W相についても同様である。
図7に示すように、第2中性点51Bに接続される終端Eから延ばされた第1V相巻き線46-V1は、第11ステータコアティース部32-11に時計回り(CW)に巻回されている。第11ステータコアティース部32-11の第11巻回部[11]から引き延ばされた第1V相巻き線46-V1は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第1V相渡り線部分49-V1を形成している。第1V相渡り線部分49-V1から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第2V相巻き線46-V2は、第2ステータコアティース部32-2に時計回り(CW)に巻回されている。
第2ステータコアティース部32-2の第2巻回部[2]から引き延ばされた第2V相巻き線46-V2は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第2V相渡り線部分49-V2を形成している。第2V相渡り線部分49-V2から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第3V相巻き線46-V3は、V相電源と接続される始端Sとして延ばされると共に、始端Sで切断されることなく連続して延ばされて第5ステータコアティース部32-5に反時計回り(CCW)に巻回されている。
第5ステータコアティース部32-5の第5巻回部[5]から引き延ばされた第3V相巻き線46-V3は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第3V相渡り線部分49-V3を形成している。第3V相渡り線部分49-V3から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第4V相巻き線46-V4は、第8ステータコアティース部32-8に反時計回り(CCW)に巻回されている。第8ステータコアティース部32-8の第8巻回部[8]から引き延ばされた第4V相巻き線46-V4は、第1中性点51Aに接続される終端Eまで延ばされている。
このようにV相巻き線46は、第11ステータコアティース部32-11から、第2ステータコアティース部32-2、第5ステータコアティース部32-5、第8ステータコアティース部32-8の順番に、途中で切断されることなく連続して各巻回部45を形成している。また、第3V相巻き線46-V3において、V相電源と接続される始端Sとして延ばされた部分は、上述のようにV相の各巻回部45を形成する工程の後工程にて2つの始端Sに切断された後、各始端Sが後述の第1V相電源線48-V1及び第2V相電源線48-V2として用いられてV相電源にそれぞれ接続される。
また、V相巻き線46は、V相電源に接続される始端Sから、第5巻回部[5]-第8巻回部[8]の順番に終端Eまで流れる電流の向きと、第2巻回部[2]-第11巻回部[11]の順番に終端Eまで流れる電流の向きが、ステータ22の周方向において逆向きとなる。このため、V相巻き線46は、4つの各巻回部45の磁束が発生する向きを揃えるため、第11ステータコアティース部32-11及び第2ステータコアティース部32-2に時計回り(CW)に巻かれると共に、第5ステータコアティース部32-5及び第8ステータコアティース部32-8に反時計回り(CCW)に巻かれている。言い換えれば、V相の各巻回部45について、2つの直列接続部52のうちの一方である第2直列接続部52Bが有する巻回部45(第11巻回部[11]、第2巻回部[2])は、時計回り(CW)に巻き線46が巻回されて形成され、2つの直列接続部52のうちの他方である第1直列接続部52Aが有する巻回部45(第5巻回部[5]、第8巻回部[8])は、反時計回り(CCW)に巻き線46が巻回されて形成されている。
図7に示すように、第2中性点51Bに接続される終端Eから延ばされた第1W相巻き線46-W1は、第9ステータコアティース部32-9に時計回り(CW)に巻回されている。第9ステータコアティース部32-9の第9巻回部[9]から引き延ばされた第1W相巻き線46-W1は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第1W相渡り線部分49-W1を形成している。第1W相渡り線部分49-W1から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第2W相巻き線46-W2は、第12ステータコアティース部32-12に時計回り(CW)に巻回されている。
第12ステータコアティース部32-12の第12巻回部[12]から引き延ばされた第2W相巻き線46-W2は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第2W相渡り線部分49-W2を形成している。第2W相渡り線部分49-W2から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第3W相巻き線46-W3は、W相電源と接続される始端Sとして延ばされると共に、始端Sで切断されることなく連続して延ばされて第3ステータコアティース部32-3に反時計回り(CCW)に巻回されている。
第3ステータコアティース部32-3の第3巻回部[3]から引き延ばされた第3W相巻き線46-W3は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第3W相渡り線部分49-W3を形成している。第3W相渡り線部分49-W3から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第4W相巻き線46-W4は、第6ステータコアティース部32-6に反時計回り(CCW)に巻回されている。第6ステータコアティース部32-6の第6巻回部[6]から引き延ばされた第4W相巻き線46-W4は、第1中性点51Aに接続される終端Eまで延ばされている。
このようにW相巻き線46は、第9ステータコアティース部32-9から、第12ステータコアティース部32-12、第3ステータコアティース部32-3、第6ステータコアティース部32-6の順番に、途中で切断されることなく連続して各巻回部45を形成している。また、第3W相巻き線46-W3において、W相電源と接続される始端Sとして延ばされた部分は、上述のようにW相の各巻回部45を形成する工程の後工程にて2つの始端Sに切断された後、各始端Sが後述の第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2として用いられてW相電源にそれぞれ接続される。
また、W相巻き線46は、W相電源に接続される始端Sから、第3巻回部[3]-第6巻回部[6]の順番に終端Eまで流れる電流の向きと、第12巻回部[12]-第9巻回部[9]の順番に終端Eまで流れる電流の向きが、ステータ22の周方向において逆向きとなる。このため、W相巻き線46は、4つの各巻回部45の磁束が発生する向きを揃えるため、第9ステータコアティース部32-9及び第12ステータコアティース部32-12に時計回り(CW)に巻かれると共に、第3ステータコアティース部32-3及び第6ステータコアティース部32-6に反時計回り(CCW)に巻かれている。言い換えれば、W相の各巻回部45について、2つの直列接続部52のうちの一方である第2直列接続部52Bが有する巻回部45(第9巻回部[9]、第12巻回部[12])は、時計回り(CW)に巻き線46が巻回されて形成され、2つの直列接続部52のうちの他方である第1直列接続部52Aが有する巻回部45(第3巻回部[3]、第6巻回部[6])は、反時計回り(CCW)に巻き線46が巻回されて形成されている。
図5及び図7に示すように、ステータ22は、第1U相中性線47-U1及び第2U相中性線47-U2と、第1V相中性線47-V1及び第2V相中性線47-V2と、第1W相中性線47-W1及び第2W相中性線47-W2と、をさらに備えている。第1U相中性線47-U1及び第2U相中性線47-U2、第1V相中性線47-V1及び第2V相中性線47-V2、第1W相中性線47-W1及び第2W相中性線47-W2は、各電源線の終端E側の部分である。
第1U相中性線47-U1は、一端が第4U相巻き線46-U4に電気的に接続されており、他端が第1中性点51Aに電気的に接続されている。第2U相中性線47-U2は、一端が第1U相巻き線46-U1に電気的に接続されており、他端が第2中性点51Bに電気的に接続されている。第1V相中性線47-V1は、一端が第4V相巻き線46-V4に電気的に接続されており、他端が第1中性点51Aに電気的に接続されている。第2V相中性線47-V2は、一端が第1V相巻き線46-V1に電気的に接続されており、他端が第2中性点51Bに電気的に接続されている。第1W相中性線47-W1は、一端が第4V相巻き線46-V4に電気的に接続されており、他端が第1中性点51Aに電気的に接続されている。第2W相中性線47-W2は、一端が第1V相巻き線46-V1に電気的に接続されており、他端が第2中性点51Bに電気的に接続されている。
ステータ22は、第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2と、第1V相電源線48-V1及び第2V相電源線48-V2と、第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2(以下、電源線48とも称する。)と、をさらに備えている。第1U相電源線48-U1は、始端Sから延ばされて第1ステータコアティース部32-1の第1巻回部[1]に接続されている。第2U相電源線48-U2は、始端Sから延ばされて第10ステータコアティース部32-10の第10巻回部[10]に接続されている。第1V相電源線48-V1は、始端Sから延ばされて第5ステータコアティース部32-5の第5巻回部[5]に接続されている。第2V相電源線48-V2は、始端Sから延ばされて第2ステータコアティース部32-2の第2巻回部[2]に接続されている。第1W相電源線48-W1は、始端Sから延ばされて第3ステータコアティース部32-3の第3巻回部[3]に接続されている。第2W相電源線48-W2は、始端Sから延ばされて第12ステータコアティース部32-12の第1巻回部[1]に接続されている。
(3相モータの製造方法)
本実施例1では、一例として、互いに動作を同期させた3つのノズルを有する巻線機を用いて、3ノズル巻きで巻き線46(導線)をステータコア23に巻き付けることで各巻回部45を形成する巻回工程について説明する。3つのノズルの動作を同期させた巻線機を用いることにより、上インシュレータ24及び下インシュレータ25が取り付けられたステータコア23に対して、U相、V相、W相の各巻き線46を所定の巻き方でそれぞれ同時に巻き付けて、各相の巻回部45が1つずつ、合計3つの巻回部45が同時に形成される。このように各相で巻回部45を4個ずつ形成し、合計12個の巻回部45を形成することにより、ステータ22が製造される。巻き線46である導線は、例えば、エナメル線(銅線をエナメルの被膜で被覆した電線)が用いられる。
3ノズル巻き用の巻線機は、U相導線用ノズルと、V相導線用ノズルと、W相導線用ノズルと、を備えている。3ノズル巻き用の巻線機は、ステータコア23の中心軸回りに60°毎に1つずつノズルが配置されている。3ノズル巻き用の巻線機は、これら3つのノズル(V相導線用ノズル、W相導線用ノズル、U相導線用ノズル)をそれぞれ同期してステータコア23の中心軸回りに移動させる。そして、U相導線用ノズルが所定の動作を行うようにU相導線用ノズルを移動させることで、U相導線をステータコア23に対して所定の位置に巻き付ける。同時に、V相導線用ノズルが所定の動作を行うようにV相導線用ノズルを移動させることで、V相導線をステータコア23に対して所定の位置に巻き付ける。また同時に、W相導線用ノズルが所定の動作を行うようにW相導線用ノズルを移動させることで、W相導線をステータコア23に対して所定の位置に巻き付ける。
巻線機には、まず、上インシュレータ24及び下インシュレータ25と、図示しない絶縁フィルムが取り付けられたステータコア23がセットされる。巻線機は、U相導線用ノズルを移動させることで、U相巻き線46の一端を第7ステータコアティース部32-7に配置して第2U相中性線47-U2として延ばした終端E側から巻き始める。同時に、巻線機は、V相導線用ノズルを移動させることで、V相巻き線46の一端を第11ステータコアティース部32-11に配置して第2V相中性線47-V2として延ばした終端E側から巻き始める。また同時に、巻線機は、W相導線用ノズルを移動させることで、W相巻き線46の一端を第9ステータコアティース部32-9に配置して第2W相中性線47-W2として延ばした終端E側から巻き始める。
巻線機は、終端Eから延ばしたU相巻き線46を第7ステータコアティース部32-7に時計回り(CW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第1U相巻き線46-U1を形成する。このとき、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、終端Eから延ばしたV相巻き線46を第11ステータコアティース部32-11に時計回り(CW)に巻回し、V相巻き線46によって第1V相巻き線46-V1を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、終端Eから延ばしたW相巻き線46を第9ステータコアティース部32-9に時計回り(CW)に巻回し、W相巻き線46によって第1W相巻き線46-W1を形成する。
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第1U相巻き線46-U1から延ばしたU相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相巻き線46によって第1U相渡り線部分49-U1を形成する。続いて巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第1U相渡り線部分49-U1から延ばしたU相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相巻き線46を第10ステータコアティース部32-10に時計回り(CW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第2U相巻き線46-U2を形成する。
このとき、第1V相巻き線46-V1から延ばしたV相巻き線46によって第1V相渡り線部分49-V1を形成すると同時に、第1W相巻き線46-W1から延びるW相巻き線46によって第1W相渡り線部分49-W1を形成する。同様に、3ノズル巻きの巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第1V相渡り線部分49-V1から延ばしたV相巻き線をスリット44に通して第2ステータコアティース部32-2に時計回り(CW)に巻回し、V相巻き線46によって第2V相巻き線46-V2を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第1W相渡り線部分49-W1から延ばしたW相導線をスリット44に通し、第12ステータコアティース部32-12に時計回り(CW)に巻回し、W相巻き線46によって第2W相巻き線46-W2を形成する。
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第2U相巻き線46-U2から延びるU相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相巻き線46によって第2U相渡り線部分49-U2を形成する。続いて巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第2U相渡り線部分49-U2から延ばしたU相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相巻き線46を、第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2として延ばすと共に、始端Sで切断することなく連続して延ばして第1ステータコアティース部32-1に反時計回り(CCW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第3U相巻き線46-U3を形成する。
このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2V相巻き線46-V2から延びるV相巻き線46によって第2V相渡り線部分49-V2を形成すると同時に、第2W相巻き線46-W2から延びるW相巻き線46によって第2W相渡り線部分49-W2を形成する。同様に、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2V相渡り線部分49-V2から延ばしたV相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたV相巻き線46を、第1V相電源線48-V1及び第2V相電源線48-V2として延ばすと共に、始端Sで切断することなく連続して延ばして第5ステータコアティース部32-5に反時計回り(CCW)に巻回することにより、V相巻き線46によって第3V相巻き線46-V3を形成する。また同様に、巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2W相渡り線部分49-W2から延ばしたW相導線をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたW相巻き線46を、第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2として延ばすと共に、始端Sで切断することなく連続して延ばして第3ステータコアティース部32-3に反時計回り(CCW)に巻回することにより、W相巻き線46によって第3W相巻き線46-W3を形成する。
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第3U相巻き線46-U3から延びるU相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相巻き線46によって第3U相渡り線部分49-U3を形成する。続いて巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第3U相渡り線部分49-U3から延ばしたU相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相巻き線46を第4ステータコアティース部32-4に反時計回り(CCW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第4U相巻き線46-U4を形成する。
このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第3V相巻き線46-V3から延びるV相導線によって第3V相渡り線部分49-V3を形成すると同時に、第3W相巻き線46-W3から延びるW相巻き線46によって第3W相渡り線部分49-W3を形成する。同様に、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第3V相渡り線部分49-V3から延ばしたV相巻き線46をスリット44に通して第8ステータコアティース部32-8に反時計回り(CCW)に巻回し、V相巻き線46によって第4V相巻き線46-V4を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第3W相渡り線部分49-W3から延ばしたW相巻き線46をスリット44に通し、第6ステータコアティース部32-6に反時計回り(CCW)に巻回し、W相巻き線46によって第4W相巻き線46-W4を形成する。
このようにステータ22が製造されることにより、外周壁部41の外周面にそれぞれ掛け渡された第1U相渡り線部分49-U1、第2U相渡り線部分49-U2、第3U相渡り線部分49-U3、第1V相渡り線部分49-V1、第2V相渡り線部分49-V2、第3V相渡り線部分49-V3、第1W相渡り線部分49-W1、第2W相渡り線部分49-W2、第3W相渡り線部分49-W3は、外周壁部41の周方向に対して図7中で右上がりに傾斜し、かつ、互いに間隔をあけて外周面に掛け渡される。
最後に、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させることで、U相巻き線46の他端を第4ステータコアティース部32-4から終端Eまで延ばすことで第1U相中性線47-U1を形成する。このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、V相巻き線46の他端を第8ステータコアティース部32-8から終端Eまで延ばすことで第1V相中性線47-V1を形成すると共に、W相巻き線46の他端を第6ステータコアティース部32-6から終端Eまで延ばすことで第1W相中性線47-W1を形成する。
実施例1では、ノズルピッチが60°で配置された3つのノズルを用いて巻き線46を引き回し、1つの相における4つの巻回部45が90°おきに形成されることで、下インシュレータ25の外周壁部41の外周に沿ってそれぞれ掛け渡される各渡り線部分の角度が90°となる。
上述のように実施例1では、巻回工程の途中で巻き線46を切断せずに1つの相が備える全ての巻回部45を形成することで、巻き線46を供給するノズルの巻回動作が簡素化されるので、3相モータ6の生産性が高められる。
図8は、実施例1の3相モータ6において第1中性点51A及び第2中性点51Bを形成するスプライス端子を示す斜視図である。図8に示すように、第1U相中性線47-U1の端と第1V相中性線47-V1の端と第1W相中性線47-W1の端は、接続具として、例えば、スプライス端子60によって挟み込まれて電気的に接続されることで、第1中性点51Aが形成される。同様に、第2U相中性線47-U2の端と第2V相中性線47-V2の端と第2W相中性線47-W2の端は、スプライス端子60によって挟み込まれて電気的に接続されることで、第2中性点51Bが形成される。スプライス端子60を用いることにより、3本の中性線を容易に接続できる。
上述した巻回工程の後、第1U相電源線48-U1と第2U相電源線48-U2との間の始端Sで切断し、分離された第1U相電源線48-U1と第2U相電源線48-U2をU相電源に接続する。同様に、第1V相電源線48-V1と第2V相電源線48-V2との間の始端Sで切断し、分離された第1V相電源線48-V1と第2V相電源線48-V2をV相電源に接続すると共に、第1W相電源線48-W1と第2W相電源線48-W2との間の始端Sで切断し、分離された第1W相電源線48-W1と第2W相電源線48-W2をW相電源に接続する。
以上、3つのノズルを備える巻線機を用いた3ノズル巻きで巻き線46を巻き付ける場合を説明したが、1つのノズルのみを備える巻線機を用いた1ノズル巻きで巻き線46を巻き付けることもできる。この場合には、U相巻き線46、V相巻き線46及びW相巻き線46を1相ずつ所定の順番で各々巻き付けて、3相の巻回部45が1相ずつ形成される。このように3相の巻回部45を形成することにより、ステータ22が製造される。
(圧縮機の動作)
圧縮機1は、図示しない冷凍サイクル装置の構成要素として設けられており、冷媒を圧縮して、冷凍サイクル装置の冷媒回路に冷媒を循環させるために使用される。3相モータ6は、第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2、第1V相電源線48-V1及び第2V相電源線48-V2、第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2に三相電圧がそれぞれ印加されることにより、回転磁界を発生させる。ロータ21は、ステータ22により生成された回転磁界によって回転する。3相モータ6は、ロータ21が回転することにより、回転軸3を回転させる。
圧縮部5は、回転軸3が回転することで、吸入管11を介して低圧冷媒ガスを吸入し、その吸入された低圧冷媒ガスを圧縮することにより高圧冷媒ガスを生成し、高圧冷媒ガスを上マフラー室16と下マフラー室17とに供給する。下マフラーカバー15は、下マフラー室17に供給された高圧冷媒ガスの圧力の脈動を低減し、圧力脈動が低減された高圧冷媒ガスを上マフラー室16に供給する。上マフラーカバー14は、上マフラー室16に供給された高圧冷媒ガスの圧力の脈動を低減し、圧力脈動が低減された高圧冷媒ガスを内部空間7のうちの圧縮部5と3相モータ6との間の空間に圧縮冷媒吐出孔18を介して供給する。
内部空間7のうちの圧縮部5と3相モータ6との間の空間に供給された高圧冷媒ガスは、3相モータ6に形成されている隙間を通過することにより、内部空間7のうちの3相モータ6よりも上の空間に供給される。内部空間7における3相モータ6よりも上の空間に供給された冷媒は、吐出管12を介して、冷凍サイクル装置のうちの圧縮機1の下流側に配置された装置に吐出される。
(実施例1の効果)
実施例1の3相モータ6の製造方法は、巻き線46を連続して引き回すことによって3相のうちの1つの相における複数の巻回部45を全て形成し、1つの相の各巻回部45を形成する工程において、ヨーク部31の内周側からヨーク部31の径方向に沿って各巻回部45を見たときに、巻き線46を一方向回り(例えば、反時計回り)に巻回することで、2つ以上の巻回部45が直列接続された第1直列接続部52Aと第2直列接続部52Bにおける一方の直列接続部が有する各巻回部45を形成し、巻き線46を他方向回り(例えば、時計回り)に巻回することで、第1直列接続部52Aと第2直列接続部52Bにおける他方の直列接続部が有する各巻回部45を形成する。これにより、巻回工程の途中で巻き線46を切断せずに1つの相が備える全ての巻回部45を形成することが可能になり、3相モータ6の生産性を高めることができる。
また、実施例1の3相モータ6の製造方法は、3相における1つの相、例えばU相について、図6に示すように、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]の順番に巻き線46を巻回しており、第10巻回部[10]に巻回された巻き線46に連続する導線を第2U相電源線48-U2に接続すると共に、第1巻回部[1]に巻回された巻き線46に連続する導線を第1U相電源線48-U1に接続する。また、U相において、第7巻回部[7]に巻回された巻き線46に連続する導線を第2中性点51Bに接続すると共に、第4巻回部[4]に巻回された巻き線46に連続する導線を第1中性点51Aに接続する。これにより、1つの第1ステータコアティース部32-1から、第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2である2つの電源線48を引き出すことができる。そのため、例えば、第1巻回部[1]に巻回された巻き線46が連続する導線を切断することで、切断された導線の両側をいずれもU相電源に繋ぐことで2つの電源線48とすることができ、1つの相が備える複数の電源線48の形成に必要な工数を削減することができる。なお、上述のように第7巻回部[7]から巻き始める代わりに、第1巻回部[1]から巻き始めるように第1巻回部[1]~第12巻回部[12]と呼ぶ位置をずらした場合(第7巻回部[7]を第1巻回部[1]と呼ぶ場合)には、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]の順番に巻回された構造と言い換えられる。このように言い換えた場合、第4巻回部[4]に巻回された巻き線46に連続する導線を電源線48に接続すると共に、第7巻回部[7]に巻回された巻き線46に連続する導線とを電源線48に接続することになる。また、この場合、第1巻回部[1]に巻回された巻き線46に連続する導線を中性点51に接続すると共に、第10巻回部[10]に巻回された巻き線46に連続する導線を中性点51に接続することになる。
以下、他の実施例について図面を参照して説明する。他の実施例において、実施例1と同一の構成部材には、実施例1と同一の符号を付して説明を省略する。実施例2、3は、複数の巻回部45を形成する順番、すなわち巻き線46の引き回しが実施例1と異なる。
(3相の巻回部の結線構造)
図9は、実施例2における各相の巻回部45の結線状態を示す結線図である。実施例2の巻回部45の結線構造は、ステータコア23の周方向にU相、V相、W相の順番で巻回部45が繰り返すように並んだ配列において、各相の配列方向において隣り合う同じ相の巻回部45同士が結線された隣極接続である。
図9に示すように、実施例2の3相モータ6におけるU相、V相について、同相の各巻回部45同士が接続される順番は、実施例1と同様であり、W相の各巻回部45同士が接続される順番が実施例1と異なる。言い換えると、実施例2におけるW相の巻回部45は、巻回工程において、第3巻回部[3]、第6巻回部[6]、第9巻回部[9]、第12巻回部[12]を形成する順番が、実施例1と異なる。
実施例2におけるW相の巻回部45は、実施例1と同様に、2つの巻回部45が直列接続された第1直列接続部52Aと、2つの巻回部45が直列接続された第2直列接続部52Bが並列接続されている。実施例2におけるW相の巻回部45は、第1直列接続部52Aの各巻回部45が反時計回り(CCW)に巻回されており、第2直列接続部52Bの各巻回部45が時計回り(CW)に巻回されている。実施例2におけるW相の巻回部45は、第1直列接続部52Aが第9巻回部[9]と第12巻回部[12]によって形成されており、第2直列接続部52Bが第6巻回部[6]と第3巻回部[3]によって形成されている。
実施例2における第1スター結線体53Aは、図9中に第1巻回部[1]-第4巻回部[4]、第5巻回部[5]-第8巻回部[8]、第9巻回部[9]-第12巻回部[12]で示す6つの巻回部45を有しており、第1中性点51Aを介して後述する第1U相中性線47-U1、第1V相中性線47-V1、第1W相中性線47-W1がそれぞれ電気的に接続されている。第2スター結線体53Bは、図9中に第10巻回部[10]-第7巻回部[7]、第2巻回部[2]-第11巻回部[11]、第12巻回部[12]-第9巻回部[9]で示す6つの巻回部45を有しており、第2中性点51Bを介して後述する第2U相中性線47-U2、第2V相中性線47-V2、第2W相中性線47-W2がそれぞれ電気的に接続されている。
図10は、実施例2においてU相の各巻回部45を形成する巻き線46の掛け渡し経路を説明するための展開図である。図11は、実施例2において3相の各巻回部45を形成する巻き線46の掛け渡し経路を説明するための展開図である。図11は、隣り合うノズル同士の間隔であるノズルピッチが120°で配置された3つのノズルを用いて3ノズル巻きで、下インシュレータ25及びステータコア23に巻き付けられた各相の巻き線46を示す展開図である。
実施例2において、図10に示すように、U相の各巻回部45を形成する順番は実施例1と同様であり、図11に示すように、V相の各巻回部45を形成する順番も実施例1と同様である。一方、実施例2は、W相の各巻回部45を形成する順番が実施例1と異なるので、図10に示すように、W相の巻き線46に対応するスリット44の位置、回転軸3の軸方向に対するスリット44の深さが、図6に示した実施例1と異なる。実施例2では、スリット44の深さが、下インシュレータ25の外周壁部41の周方向における一方側に向かって、すなわち、図10及び図11の左側に向かって、徐々に浅くなるように複数のスリット44を並べて形成できる。
U相、V相の各巻回部45の結線構造は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。図11に示すように、W相において、第2中性点51Bに接続される終端Eから延ばされた第1W相巻き線46-W1は、第3ステータコアティース部32-3に時計回り(CW)に巻回されている。第3ステータコアティース部32-3の第3巻回部[3]から引き延ばされた第1W相巻き線46-W1は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第1W相渡り線部分49-W1を形成している。第1W相渡り線部分49-W1から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第2W相巻き線46-W2は、第6ステータコアティース部32-6に時計回り(CW)に巻回されている。
第6ステータコアティース部32-6の第6巻回部[6]から引き延ばされた第2W相巻き線46-W2は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第2W相渡り線部分49-W2を形成している。第2W相渡り線部分49-W2から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第3W相巻き線46-W3は、W相電源と接続される始端Sとして延ばされると共に、始端Sで切断されることなく連続して延ばされて第9ステータコアティース部32-9に反時計回り(CCW)に巻回されている。
第9ステータコアティース部32-9の第9巻回部[9]から引き延ばされた第3W相巻き線46-W3は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第3W相渡り線部分49-W3を形成している。第3W相渡り線部分49-W3から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第4W相巻き線46-W4は、第12ステータコアティース部32-12に反時計回り(CCW)に巻回されている。第12ステータコアティース部32-12の第12巻回部[12]から引き延ばされた第4W相巻き線46-W4は、第1中性点51Aに接続される終端Eまで延ばされている。
このようにW相巻き線46は、第3ステータコアティース部32-3から、第6ステータコアティース部32-6、第9ステータコアティース部32-9、第12ステータコアティース部32-12の順番に、途中で切断されることなく連続して各巻回部45を形成している。言い換えれば、W相の巻回部45は、第3巻回部[3]、第6巻回部[6]、第9巻回部[9]、第12巻回部[12]の順番に巻き線46が巻回されて形成されている。このように実施例2では、巻回工程の途中で巻き線46を切断せずに1つの相が備える全ての巻回部45を形成することで、巻き線46を供給するノズルの巻回動作が簡素化されるので、3相モータ6の生産性が高められる。
また、第3W相巻き線46-W3において、W相電源と接続される始端Sとして延ばされた部分は、上述のようにW相の各巻回部45を形成する工程の後工程にて2つの始端Sに切断された後、各始端Sが後述の第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2として用いられてW相電源にそれぞれ接続される。
なお、本実施例2では、W相巻き線46が、第3巻回部[3]、第6巻回部[6]、第9巻回部[9]、第12巻回部[12]の順番に巻回されたが、このように第3巻回部[3]から巻き始める代わりに、第1巻回部[1]から巻き始めるように第1巻回部[1]~第12巻回部[12]と呼ぶ位置をずらした場合(実施例2における第3巻回部[3]を第1巻回部[1]と呼ぶ場合)には、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]の順番に巻回された構造と言い換えられる。すなわち、W相の巻回部45は、第1巻回部[1]、第4巻回部[4]、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]の順番に巻き線46が巻回されて形成されていると言える。この巻回の順番は、実施例1と同様に、U相、V相にも当てはまる。
ここで、W相巻き線46が巻回される順番について、下インシュレータ25の外周壁部41のスリット44を通過する順番で言い換える。図11に示すように、第3巻回部[3]から引き延ばされた第1W相巻き線46-W1が、第1W相渡り線部分49-W1として通過するスリット44を第1スリット44-1とする。W相巻き線46が通過する各スリット44を、第1スリット44-から下インシュレータ25の外周壁部41の周方向の一方側、すなわち、図11の右側に向かって並ぶ順番に、第1スリット44-1、第2スリット44-2、第3スリット44-3、第4スリット44-4、第5スリット45-5、第6スリット45-6としたとき、U相巻き線46は、第3巻回部[3]、第6巻回部[6]、第9巻回部[9]、第12巻回部[12]の順番に巻回されることで、第1スリット44-1、第3スリット44-3、第2スリット44-2、第4スリット44-4、第5スリット44-5、第6スリット44-6の順番で通過している。この順番で第1スリット44-1から第6スリット44-6を通過することは、U相、V相にも当てはまる。
また、W相巻き線46は、W相電源に接続される始端Sから、第9巻回部[9]-第12巻回部[12]の順番に終端Eまで流れる電流の向きと、第6巻回部[6]-第3巻回部[3]の順番に終端Eまで流れる電流の向きが、ステータ22の周方向において逆向きとなる。このため、W相巻き線46は、4つの各巻回部45の磁束が発生する向きを揃えるため、第9ステータコアティース部32-9及び第12ステータコアティース部32-12に反時計回り(CCW)に巻かれると共に、第6ステータコアティース部32-6及び第12ステータコアティース部32-12に時計回り(CW)に巻かれている。言い換えれば、W相の各巻回部45について、2つの直列接続部52のうちの一方である第2直列接続部52Bが有する巻回部45(第3巻回部[3]、第6巻回部[6])は、時計回り(CW)に巻き線46が巻回されて形成され、2つの直列接続部52のうちの他方である第1直列接続部52Aが有する巻回部45(第9巻回部[9]、第12巻回部[12])は、反時計回り(CCW)に巻き線46が巻回されて形成されている。
ここで、W相巻き線46が通過するスリット44の順番に関し、第9巻回部[9]を形成する前後に通過する2つのスリット(第4スリット44-4、第5スリット44-5)を、便宜的に第1の組スリットと呼び、第6巻回部[6]を形成する前後に通過する2つのスリット(第2スリット44-2、第3スリット44-3)を、第2の組スリットと呼ぶこととする。このとき、第1の組スリットを構成する2つのスリット(第4スリット44-4、第5スリット44-5)は、外周壁部41の周方向の一方側に向かって並ぶ順番と、巻き線46の巻回時に巻き線46が通過する順番とが一致する。これに対し、第2の組スリットを構成する2つのスリット(第2スリット44-2、第3スリット44-3)は、外周壁部41の周方向の一方側に向かって並ぶ順番と、巻き線46の巻回時に巻き線46が通過する順番とが逆転している。これにより、巻き線46を巻回する向きを、時計回り(CW)から反時計回り(CCW)に、または反時計回り(CCW)から時計回り(CW)に、途中で反転させても、巻き線46において1つのスリット44から1つの巻回部45まで延びている部分を、この1つのスリット44から回転軸3の軸方向に平行に引き出すことができ、巻き線46のスリット44に引っ掛けられた部分に加わる負荷を軽減できる。
(3相モータの製造方法)
実施例2では、3ノズル巻き用の巻線機を用いた3ノズル巻きで巻き線46をステータコア23に巻き付ける。3ノズル巻き用の巻線機は、U相導線用ノズルと、V相導線用ノズルと、W相導線用ノズルとが、ステータコア23の中心軸回りに120°毎に1つずつ配置されている。
U相、V相の各巻回部45の巻回工程は、実施例1と同様であるため、説明を省略する。図11に示すように、巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズル及びV相導線用ノズルと同期して移動させることにより、終端Eから延ばしたW相巻き線46を第3ステータコアティース部32-3に時計回り(CW)に巻回し、W相巻き線46によって第1W相巻き線46-W1を形成する。
次いで、巻線機は、W相導線用ノズルを移動させて、第1W相巻き線46-W1から延ばしたW相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたW相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、W相巻き線46によって第1W相渡り線部分49-W1を形成する。続いて巻線機は、W相導線用ノズルを移動させて、第1W相渡り線部分49-W1から延ばしたW相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたW相巻き線46を第6ステータコアティース部32-6に時計回り(CW)に巻回することにより、W相巻き線46によって第2W相巻き線46-W2を形成する。
次いで、巻線機は、W相導線用ノズルを移動させて、第2W相巻き線46-W2から延びるW相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたW相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、W相巻き線46によって第2W相渡り線部分49-W2を形成する。続いて巻線機は、W相導線用ノズルを移動させて、第2W相渡り線部分49-W2から延ばしたW相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたW相巻き線46を、第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2として延ばすと共に、始端Sで切断することなく連続して延ばして第9ステータコアティース部32-9に反時計回り(CCW)に巻回することにより、W相巻き線46によって第3W相巻き線46-W3を形成する。
次いで、巻線機は、W相導線用ノズルを移動させて、第3W相巻き線46-W3から延びるW相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、W相巻き線46によって第3W相渡り線部分49-W3を形成する。続いて巻線機は、W相導線用ノズルを移動させて、第3W相渡り線部分49-W3から延ばしたW相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたW相巻き線46を第12ステータコアティース部32-12に反時計回り(CCW)に巻回することにより、W相巻き線46によって第4W相巻き線46-W4を形成する。
最後に、巻線機は、W相導線用ノズルを移動させることで、W相巻き線46の他端を第12ステータコアティース部32-12から終端Eまで延ばすことで第1W相中性線47-W1を形成する。
実施例2では、ノズルピッチが120°で配置された3つのノズルを用いて巻き線46を引き回し、1つの相における4つの巻回部45が90°おきに形成されることにより、下インシュレータ25の外周壁部41の外周に沿ってそれぞれ掛け渡される各渡り線部分の角度が90°となる。このようにノズルピッチと比べて各渡り線部分の角度が小さいことにより、3つのノズルで巻き線46をそれぞれ引き回す際に、渡り線部分を形成するために各ノズルが90°移動したときに各ノズルが120°ずつ離れているので、各相の巻き線46同士が互いに干渉することが避けられる。このため、実施例2は、下インシュレータ25の外周壁部41の周方向に対する渡り線部分の傾斜角を緩やかにすることが可能になる。
図12は、実施例2における巻き線46の掛け渡し経路の変形例を示す展開図である。下インシュレータ25の外周壁部41の周方向に対する渡り線部分の傾斜角を緩やかにすることが可能であるため、各相の渡り線部分が下インシュレータ25の外周壁部41の周方向と平行になるように、外周壁部41に形成される各スリット44の深さを調節することで、図12に示す変形例のように、回転軸3の軸方向における外周壁部41の高さを実施例1、2よりも低くすることができる。このため、この変形例によれば、回転軸3の軸方向に対して3相モータ6の小型化を図れる。
(実施例2の効果)
実施例2の3相モータ6の製造方法においても、実施例1と同様に、3相のうちの1つの相を形成する巻き線46を連続して引き回すことによって1つの相の複数の巻回部45を形成することで、巻回工程の途中で巻き線46を切断せずに1つの相が備える全ての巻回部45を形成することが可能になり、3相モータ6の生産性を高めることができる。
(3相の巻回部の結線構造)
図13は、実施例3における各相の巻回部45の結線状態を示す結線図である。実施例3の巻回部45の結線構造は、ステータコア23の周方向にU相、V相、W相の順番で繰り返すように並んだ配列において、各相の配列方向において同じ相を1相おきに同じ相同士が結線される部分、すなわち、配列方向において同じ相を1つ隔てた極同士が接続(以下、隔極接続と称する。)される部分を含んでおり、隣極接続である実施例1、2と異なる。したがって、図13に示すように、実施例3の3相モータ6におけるU相、V相、W相の各巻回部45の配置は、実施例1、2と異なる。言い換えると、実施例3におけるU相、V相、W相の各巻回部45は、巻回工程において各巻回部45を形成する順番が、実施例1、2と異なる。
図13に示すように、実施例3の3相モータ6におけるU相、V相、W相の各相の巻回部45は、2つの巻回部45が直列接続された第1直列接続部52Aと、2つの巻回部45が直列接続された第2直列接続部52Bとが、並列接続されている。実施例3におけるU相、V相、W相の各相の巻回部45は、第1直列接続部52Aの各巻回部45が反時計回り(CCW)に巻回されており、第2直列接続部52Bの各巻回部45が時計回り(CW)に巻回されている。
実施例3における第1スター結線体53Aは、図13中に第1巻回部[1]-第7巻回部[7]、第5巻回部[5]-第11巻回部[11]、第9巻回部[9]-第3巻回部[3]で示す6つの巻回部45を有しており、第1中性点51Aを介して第1U相中性線47-U1、第1V相中性線47-V1、第1W相中性線47-W1がそれぞれ電気的に接続されている。第2スター結線体53Bは、図13中に第10巻回部[10]-第4巻回部[4]、第2巻回部[2]-第8巻回部[8]、第6巻回部[6]-第12巻回部[12]で示す6つの巻回部45を有しており、第2中性点51Bを介して第2U相中性線47-U2、第2V相中性線47-V2、第2W相中性線47-W2がそれぞれ電気的に接続されている。
図14は、実施例3においてU相の各巻回部45を形成する巻き線46の掛け渡し経路を説明するための展開図である。図15は、実施例3において3相の各巻回部45を形成する巻き線46の掛け渡し経路を説明するための展開図である。
図14に示すように、第2中性点51Bに接続される終端Eから延ばされた第1U相巻き線46-U1は、第4ステータコアティース部32-4に時計回り(CW)に巻回されている。第4ステータコアティース部32-7の第4巻回部[4]から引き延ばされた第1U相巻き線46-U1は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第1U相渡り線部分49-U1を形成している。第1U相渡り線部分49-U1から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第2U相巻き線46-U2は、第4ステータコアティース部32-4に隣り合う第7ステータコアティース部32-7を飛ばして、第10ステータコアティース部32-10に時計回り(CW)に巻回されている。
第10ステータコアティース部32-10の第10巻回部[10]から引き延ばされた第2U相巻き線46-U2は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第2U相渡り線部分49-U2を形成している。第2U相渡り線部分49-U2から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第3U相巻き線46-U3は、U相電源と接続される始端Sとして延ばされると共に、始端Sで切断されることなく連続して延ばされて第1ステータコアティース部32-1に反時計回り(CCW)に巻回されている。
第1ステータコアティース部32-1の第1巻回部[1]から引き延ばされた第3U相巻き線46-U3は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第3U相渡り線部分49-U3を形成している。第3U相渡り線部分49-U3から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第4U相巻き線46-U4は、第1ステータコアティース部32-1に隣り合う第4ステータコアティース部32-4を飛ばして、第7ステータコアティース部32-7に反時計回り(CCW)に巻回されている。第7ステータコアティース部32-4の第7巻回部[7]から引き延ばされた第4U相巻き線46-U4は、第1中性点51Aに接続される終端Eまで延ばされている。
このようにU相巻き線46は、第4ステータコアティース部32-4から、第10ステータコアティース部32-10、第1ステータコアティース部32-1、第7ステータコアティース部32-7の順番に、途中で切断されることなく連続して各巻回部45を形成している。また、第3U相巻き線46-U3において、U相電源と接続される始端Sとして延ばされた部分は、上述のようにU相の各巻回部45を形成する工程の後工程にて2つの始端Sに切断された後、各始端Sが後述の第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2として用いられてU相電源にそれぞれ接続される。
なお、本実施例3では、U相巻き線46が、第4巻回部[4]、第10巻回部[10]、第1巻回部[1]、第7巻回部[7]の順番に巻回されたが、このように第4巻回部[4]から巻き始める代わりに、第1巻回部[1]から巻き始めるように第1巻回部[1]~第12巻回部[12]と呼ぶ位置をずらした場合(実施例3における第4巻回部[4]を第1巻回部[1]と呼ぶ場合)には、第1巻回部[1]、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]、第4巻回部[4]の順場に巻回された構造と言い換えられる。この巻回の順番は、V相、W相にも当てはまる。
ここで、U相巻き線46が巻回される順番について、下インシュレータ25の外周壁部41のスリット44を通過する順番で言い換える。図14に示すように、第4巻回部[4]から引き延ばされた第1U相巻き線46-U1が、第1U相渡り線部分49-U1として通過するスリット44を第1スリット44-1とする。U相巻き線46が通過する各スリット44を、第1スリット44-1から下インシュレータ25の外周壁部41の周方向の一方側、すなわち、図14の右側に向かって並ぶ順番に、第1スリット44-1、第2スリット44-2、第3スリット44-3、第4スリット44-4、第5スリット45-5、第6スリット45-6としたとき、U相巻き線46は、第4巻回部[4]、第10巻回部[10]、第1巻回部[1]、第7巻回部[7]の順番に巻回されることで、第1スリット44-1、第4スリット44-4、第3スリット44-3、第5スリット44-5、第6スリット44-6、第2スリット44-2の順番で通過している。この順番で第1スリット44-1から第6スリット44-6を通過することは、V相、W相にも当てはまる。
また、U相巻き線46は、U相電源に接続される始端Sから、第1巻回部[1]-第7巻回部[7]の順番に終端Eまで流れる電流の向きと、第10巻回部[10]-第4巻回部[4]の順番に終端Eまで流れる電流の向きが、ステータ22の周方向において逆向きとなる。このため、U相巻き線46は、4つの各巻回部45の磁束が発生する向きを揃えるため、第10ステータコアティース部32-10の第10巻回部[10]及び第4ステータコアティース部32-4の第4巻回部[4]に時計回り(CW)に巻かれると共に、第1ステータコアティース32-1の第1巻回部[1]及び第7ステータコアティース部32-7の第7巻回部[7]に反時計回り(CCW)に巻かれている。
図15に示すように、第2中性点51Bに接続される終端Eから延ばされた第1V相巻き線46-V1は、第8ステータコアティース部32-8に時計回り(CW)に巻回されている。第8ステータコアティース部32-8の第8巻回部[8]から引き延ばされた第1V相巻き線46-V1は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第1V相渡り線部分49-V1を形成している。第1V相渡り線部分49-V1から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第2V相巻き線46-V2は、第8ステータコアティース部32-8に隣り合う第11ステータコアティース部32-11を飛ばして、第2ステータコアティース部32-2に時計回り(CW)に巻回されている。
第2ステータコアティース部32-2の第2巻回部[2]から引き延ばされた第2V相巻き線46-V2は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第2V相渡り線部分49-V2を形成している。第2V相渡り線部分49-V2から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第3V相巻き線46-V3は、V相電源と接続される始端Sとして延ばされると共に、始端Sで切断されることなく連続して延ばされて第5ステータコアティース部32-5に反時計回り(CCW)に巻回されている。
第5ステータコアティース部32-5の第5巻回部[5]から引き延ばされた第3V相巻き線46-V3は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第3V相渡り線部分49-V3を形成している。第3V相渡り線部分49-V3から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第4V相巻き線46-V4は、第5ステータコアティース部32-5に隣り合う第8ステータコアティース部32-8を飛ばして、第11ステータコアティース部32-11に反時計回り(CCW)に巻回されている。第11ステータコアティース部32-11の第11巻回部[11]から引き延ばされた第4V相巻き線46-V4は、第1中性点51Aに接続される終端Eまで延ばされている。
このようにV相巻き線46は、第8ステータコアティース部32-8から、第2ステータコアティース部32-2、第5ステータコアティース部32-5、第11ステータコアティース部32-11の順番に、途中で切断されることなく連続して各巻回部45を形成している。また、第3V相巻き線46-V3において、V相電源と接続される始端Sとして延ばされた部分は、上述のようにV相の各巻回部45を形成する工程の後工程にて2つの始端Sに切断された後、各始端Sが後述の第1V相電源線48-V1及び第2V相電源線48-V2として用いられてV相電源にそれぞれ接続される。
また、V相巻き線46は、V相電源に接続される始端Sから、第5巻回部[5]-第11巻回部[11]の順番に終端Eまで流れる電流の向きと、第2巻回部[2]-第8巻回部[8]の順番に終端Eまで流れる電流の向きが、ステータ22の周方向において逆向きとなる。このため、V相巻き線46は、4つの各巻回部45の磁束が発生する向きを揃えるため、第2ステータコアティース部32-2及び第8ステータコアティース部32-8に時計回り(CW)に巻かれると共に、第5ステータコアティース部32-5及び第11ステータコアティース部32-11に反時計回り(CCW)に巻かれている。
図15に示すように、第2中性点51Bに接続される終端Eから延ばされた第1W相巻き線46-W1は、第12ステータコアティース部32-12に時計回り(CW)に巻回されている。第12ステータコアティース部32-12の第12巻回部[12]から引き延ばされた第1W相巻き線46-W1は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第1W相渡り線部分49-W1を形成している。第1W相渡り線部分49-W1から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第2W相巻き線46-W2は、第12ステータコアティース部32-12に隣り合う第3ステータコアティース部32-3を飛ばして、第6ステータコアティース部32-6に時計回り(CW)に巻回されている。
第6ステータコアティース部32-6の第6巻回部[6]から引き延ばされた第2W相巻き線46-W2は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第2W相渡り線部分49-W2を形成している。第2W相渡り線部分49-W2から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第3W相巻き線46-W3は、W相電源と接続される始端Sとして延ばされると共に、始端Sで切断されることなく連続して延ばされて第9ステータコアティース部32-9に反時計回り(CCW)に巻回されている。
第9ステータコアティース部32-9の第9巻回部[9]から引き延ばされた第3W相巻き線46-W3は、下インシュレータ25の外周壁部41の内周側から、スリット44を通って外周壁部41の外周に沿って掛け渡され、第3W相渡り線部分49-W3を形成している。第3W相渡り線部分49-W3から、スリット44を通って外周壁部41の内周側に引き出された第4W相巻き線46-W4は、第9ステータコアティース部32-9に隣り合う第12ステータコアティース部32-12を飛ばして、第3ステータコアティース部32-3に反時計回り(CCW)に巻回されている。第3ステータコアティース部32-3の第3巻回部[3]から引き延ばされた第4W相巻き線46-W4は、第1中性点51Aに接続される終端Eまで延ばされている。
このようにW相巻き線46は、第12ステータコアティース部32-12から、第6ステータコアティース部32-6、第9ステータコアティース部32-9、第3ステータコアティース部32-3の順番に、途中で切断されることなく連続して各巻回部45を形成している。また、第3W相巻き線46-W3において、W相電源と接続される始端Sとして延ばされた部分は、上述のようにW相の各巻回部45を形成する工程の後工程にて2つの始端Sに切断された後、各始端Sが後述の第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2として用いられてW相電源にそれぞれ接続される。
また、W相巻き線46は、W相電源に接続される始端Sから、第6巻回部[6]-第12巻回部[12]の順番に終端Eまで流れる電流の向きと、第9巻回部[9]-第3巻回部[3]の順番に終端Eまで流れる電流の向きが、ステータ22の周方向において逆向きとなる。このため、W相巻き線46は、4つの各巻回部45の磁束が発生する向きを揃えるため、第6ステータコアティース部32-6及び第12ステータコアティース部32-12に時計回り(CW)に巻かれると共に、第9ステータコアティース部32-9及び第3ステータコアティース部32-3に反時計回り(CCW)に巻かれている。
(3相モータの製造方法)
実施例3では、3ノズル巻き用の巻線機を用いた3ノズル巻きで巻き線46をステータコア23に巻き付ける。3ノズル巻き用の巻線機は、U相導線用ノズルと、V相導線用ノズルと、W相導線用ノズルとが、ステータコア23の中心軸回りに120°毎に1つずつ配置されている。
巻線機は、終端Eから延ばしたU相巻き線46を第4ステータコアティース部32-4に時計回り(CW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第1U相巻き線46-U1を形成する。このとき、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、終端Eから延ばしたV相巻き線46を第8ステータコアティース部32-8に時計回り(CW)に巻回し、V相巻き線46によって第1V相巻き線46-V1を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、終端Eから延ばしたW相巻き線46を第12ステータコアティース部32-12に時計回り(CW)に巻回し、W相巻き線46によって第1W相巻き線46-W1を形成する。
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第1U相巻き線46-U1から延ばしたU相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相巻き線46によって第1U相渡り線部分49-U1を形成する。続いて巻線機は、第4ステータコアティース部32-4に隣り合う第7ステータコアティース部32-7を飛ばして第10ステータコアティース部32-10までU相導線用ノズルを移動させて、第1U相渡り線部分49-U1から延ばしたU相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相巻き線46を第10ステータコアティース部32-10に時計回り(CW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第2U相巻き線46-U2を形成する。
このとき、第1V相巻き線46-V1から延ばしたV相巻き線46によって第1V相渡り線部分49-V1を形成すると同時に、第1W相巻き線46-W1から延びるW相巻き線46によって第1W相渡り線部分49-W1を形成する。同様に、3ノズル巻きの巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して、第8ステータコアティース部32-8に隣り合う第11ステータコアティース部32-11を飛ばして第2ステータコアティース部32-2まで移動させることにより、第1V相渡り線部分49-V1から延ばしたV相巻き線をスリット44に通して第2ステータコアティース部32-2に時計回り(CW)に巻回し、V相巻き線46によって第2V相巻き線46-V2を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して、第12ステータコアティース部32-12に隣り合う第3ステータコアティース部32-3を飛ばして第6ステータコアティース部32-6まで移動させることにより、第1W相渡り線部分49-W1から延ばしたW相導線をスリット44に通し、第6ステータコアティース部32-6に時計回り(CW)に巻回し、W相巻き線46によって第2W相巻き線46-W2を形成する。
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第2U相巻き線46-U2から延びるU相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相巻き線46によって第2U相渡り線部分49-U2を形成する。続いて巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第2U相渡り線部分49-U2から延ばしたU相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相巻き線46を、第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2として延ばすと共に、始端Sで切断することなく連続して延ばして第1ステータコアティース部32-1に反時計回り(CCW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第3U相巻き線46-U3を形成する。
このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2V相巻き線46-V2から延びるV相巻き線46によって第2V相渡り線部分49-V2を形成すると同時に、第2W相巻き線46-W2から延びるW相巻き線46によって第2W相渡り線部分49-W2を形成する。同様に、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2V相渡り線部分49-V2から延ばしたV相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたV相巻き線46を、第1V相電源線48-V1及び第2V相電源線48-V2として延ばすと共に、始端Sで切断することなく連続して延ばして第5ステータコアティース部32-5に反時計回り(CCW)に巻回することにより、V相巻き線46によって第3V相巻き線46-V3を形成する。また同様に、巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第2W相渡り線部分49-W2から延ばしたW相導線をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたW相巻き線46を、第1W相電源線48-W1及び第2W相電源線48-W2として延ばすと共に、始端Sで切断することなく連続して延ばして第9ステータコアティース部32-9に反時計回り(CCW)に巻回することにより、W相巻き線46によって第3W相巻き線46-W3を形成する。
次いで、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させて、第3U相巻き線46-U3から延びるU相巻き線46を外周壁部41のスリット44に通し、外周壁部41の内周側から外周側に引き出されたU相巻き線46を外周壁部41の外周面に沿わせることにより、U相巻き線46によって第3U相渡り線部分49-U3を形成する。続いて巻線機は、第1ステータコアティース部32-1に隣り合う第4ステータコアティース部32-4を飛ばして第7ステータコアティース部32-7までU相導線用ノズルを移動させて、第3U相渡り線部分49-U3から延ばしたU相巻き線46をスリット44に通し、外周壁部41の外周側から内周側に引き込まれたU相巻き線46を第7ステータコアティース部32-7に反時計回り(CCW)に巻回することにより、U相巻き線46によって第4U相巻き線46-U4を形成する。
このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、第3V相巻き線46-V3から延びるV相導線によって第3V相渡り線部分49-V3を形成すると同時に、第3W相巻き線46-W3から延びるW相巻き線46によって第3W相渡り線部分49-W3を形成する。同様に、巻線機は、V相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して、第5ステータコアティース部32-5に隣り合う第8ステータコアティース部32-8を飛ばして第11ステータコアティース部32-11まで移動させることにより、第3V相渡り線部分49-V3から延ばしたV相巻き線46をスリット44に通して第11ステータコアティース部32-11に反時計回り(CCW)に巻回し、V相巻き線46によって第4V相巻き線46-V4を形成する。巻線機は、W相導線用ノズルをU相導線用ノズルと同期して、第9ステータコアティース部32-9に隣り合う第12ステータコアティース部32-12を飛ばして第3ステータコアティース部32-3まで移動させることにより、第3W相渡り線部分49-W3から延ばしたW相巻き線46をスリット44に通し、第3ステータコアティース部32-3に反時計回り(CCW)に巻回し、W相巻き線46によって第4W相巻き線46-W4を形成する。
このようにステータ22が製造されることにより、外周壁部41の外周面にそれぞれ掛け渡された第1U相渡り線部分49-U1、第2U相渡り線部分49-U2、第3U相渡り線部分49-U3、第1V相渡り線部分49-V1、第2V相渡り線部分49-V2、第3V相渡り線部分49-V3、第1W相渡り線部分49-W1、第2W相渡り線部分49-W2、第3W相渡り線部分49-W3は、外周壁部41の周方向に対して図15中で右上がりに傾斜し、かつ、互いに間隔をあけて外周面に掛け渡される。
最後に、巻線機は、U相導線用ノズルを移動させることで、U相巻き線46の他端を第4ステータコアティース部32-4から終端Eまで延ばすことで第1U相中性線47-U1を形成する。このとき、巻線機は、V相導線用ノズルとW相導線用ノズルとをU相導線用ノズルと同期して移動させることにより、V相巻き線46の他端を第11ステータコアティース部32-11から終端Eまで延ばすことで第1V相中性線47-V1を形成すると共に、W相巻き線46の他端を第3ステータコアティース部32-3から終端Eまで延ばすことで第1W相中性線47-W1を形成する。
上述のように、巻回工程の途中で巻き線46を切断せずに1つの相が備える全ての巻回部45を形成することで、巻き線46を供給するノズルの巻回動作が簡素化されるので、3相モータ6の生産性が高められる。
(実施例3の効果)
実施例3の3相モータ6の製造方法においても、実施例1と同様に、3相のうちの1つの相を形成する巻き線46を連続して引き回すことによって1つの相の複数の巻回部45を形成することで、巻回工程の途中で巻き線46を切断せずに1つの相が備える全ての巻回部45を形成することが可能になり、3相モータ6の生産性を高めることができる。
実施例3の3相モータ6の製造方法は、3相における1つの相、例えばU相について、図14に示すように、第4巻回部[4]、第10巻回部[10]、第1巻回部[1]、第7巻回部[7]の順番に巻き線を巻回しており、第10巻回部[10]に巻回された巻き線46に連続する導線を第2U相電源線48-U2に接続すると共に、第1巻回部[1]に巻回された巻き線46に連続する導線を第1U相電源線48-U1に接続する。また、U相において、第4巻回部[4]に巻回された巻き線46に連続する導線を第2中性点51Bに接続すると共に、第7巻回部[7]に巻回された巻き線46に連続する導線を第1中性点51Aに接続する。これにより、1つの第1ステータコアティース部31-1から、第1U相電源線48-U1及び第2U相電源線48-U2である2つの電源線48を引き出すことができる。なお、上述のように第4巻回部[4]から巻き始める代わりに、第1巻回部[1]から巻き始めるように第1巻回部[1]~第12巻回部[12]と呼ぶ位置をずらした場合(第4巻回部[4]を第1巻回部[1]と呼ぶ場合)には、第1巻回部[1]、第7巻回部[7]、第10巻回部[10]、第4巻回部[4]の順番に巻回された構造と言い換えられる。このように言い換えた場合、第7巻回部[7]に巻回された巻き線46に連続する導線を電源線48に接続すると共に、第10巻回部[10]に巻回された巻き線46に連続する導線とを電源線48に接続することになる。また、この場合、第1巻回部[1]に巻回された巻き線46に連続する導線を中性点51に接続すると共に、第4巻回部[4]に巻回された巻き線46に連続する導線を中性点51に接続することになる。
(変形例)
図16は、変形例において1つの中性点51のみを有する巻回部45の結線状態を示す結線図である。上述した実施例1~3では、第1スター結線体53Aと第2スター結線体53Bが第1中性点51A及び第2中性点51Bによって結線されたが、この構造に限定されず、図16に示すように、1つの中性点51のみで第1スター結線体53Aと第2スター結線体53Bが結線されてもよい。変形例では、第1U相中性線47-U1及び第2U相中性線47-U2、第1V相中性線47-V1及び第2V相中性線47-V2、第1W相中性線47-W1及び第2W相中性線47-W2が1つの中性点51に接続されることで、3相における3つの第1直列接続部52A及び3つの第2直列接続部52Bの各々が1つの中性点51のみで接続されている。
なお、本実施例の3相モータ6は、U相、V相、W相の各相が、第1直列接続部52A及び第2直列接続部52Bが並列接続されたが、2つ以上の巻回部45が直列接続された直列接続部の個数を2つに限定するものではない。本発明の3相モータは、例えば、18スロットの場合、各相が、3つの直列接続部が並列接続された構造であってもよく、並列接続される直列接続部の個数が3つ以上でもよい。