JP2023129368A - 二次電池用合剤、二次電池用合剤シート、二次電池用合剤シートの製造方法及び二次電池 - Google Patents

二次電池用合剤、二次電池用合剤シート、二次電池用合剤シートの製造方法及び二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】強度や電池的性質において良好な性質を有する二次電池用合剤、また、その合剤を含有する二次電池用合剤シート及び、また、その二次電池用合剤シートを使用した二次電池を提供する。【解決手段】フィブリル性樹脂と、粒径が20μm以上の粒子Aを含む二次電池用合剤であって、上記粒子Aは、合剤1mm3あたり平均80個以上含まれる二次電池用合剤。【選択図】 なし

Description

本開示は、二次電池用合剤、二次電池用合剤シート、二次電池用合剤シートの製造方法及び二次電池に関する。
リチウムイオン二次電池において、電極活物質及び導電助剤に対して、結着剤及び溶媒を混合して得られたスラリーを塗工、乾燥することによって、二次電池用シートを作製することが一般的に行われている。
他方、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等のように、フィブリル化しやすいフィブリル性の樹脂が知られている。これをフィブリル化することで結着剤として使用することも行われている。
特許文献1~2には、活性材料とポリテトラフルオロエチレン混合バインダ材とを含む混合物を、高せん断処理することにより、ポリテトラフルオロエチレンをフィブリル化する電極の作製方法が開示されている。
特表2020-501338号公報 特表2021-519495号公報
本開示は、強度や電池的性質において良好な性質を有する二次電池用合剤、また、その合剤を含有する二次電池用合剤シート及び、また、その二次電池用合剤シートを使用した二次電池を提供することを目的とする。
また、本開示は、微細な繊維構造を有するポリテトラフルオロエチレン樹脂を含有する二次電池用シートを製造する方法を提供することを目的とする。
本開示は、
フィブリル性樹脂と、
粒径が20μm以上の粒子Aを含む二次電池用合剤であって、
上記粒子Aは、合剤1mmあたり平均80個以上含まれることを特徴とする二次電池用合剤である。
上記粒子Aは、電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記粒子Aは、フィブリル性樹脂に対して1~4800体積%であることが好ましい。
上記二次電池用合剤は、さらに、粒径が0.5μm以上20μm未満の粒子Bを含み、
上記粒子Bは、合剤1mmあたり80000個以上含まれることが好ましい。
上記粒子Bは、電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記粒子Bは、フィブリル性樹脂に対して400~50000体積%であることが好ましい。
粒子Aは、体積比で粒子Bより少ないことが好ましい。
フィブリル性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂であることが好ましい。
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有することが好ましい。
上記二次電池用合剤は、実質的に液体媒体を含有しないことが好ましい。
本開示は、上記二次電池用合剤を含む二次電池用合剤シートでもある。
本開示は、フィブリル性樹脂及びd50が20μm以上の電池材料粒子を含む原料組成物を混合しながら、剪断力を付与する工程(1)、
上記工程(1)によって得られた二次電池用合剤をバルク状に成形する工程(2)及び
上記工程(2)によって得られたバルク状の二次電池用合剤をシート状に圧延する工程(3)
を有する二次電池用合剤シートの製造方法であって、上記電池材料粒子は、上記フィブリル性樹脂に対して3質量%以上使用することを特徴とする二次電池用合剤シートの製造方法でもある。
上記二次電池用合剤シートの製造方法は、上記工程(1)に先立って、原料を19℃以下の温度で混合する工程(0)を有することが好ましい。
本開示は、上記二次電池用合剤シートを有する二次電池でもある。
本開示においては、フィブリル性樹脂を結着剤として用いることで、微細な繊維構造を有するポリテトラフルオロエチレン樹脂を含有する二次電池用合剤シートを簡便に製造することができ、支持体を用いなくても扱えるような物理的性能に優れたシートを高い生産性で製造することができる。
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示は、二次電池において好適に使用することができる二次電池用合剤及びこれを含有する合剤シートを提供する。
本開示の二次電池用合剤及びこれを含有する合剤シートにおいては、フィブリル性樹脂を結着剤として使用するものである。従来の二次電池用合剤においては、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等の、溶媒に溶解する樹脂を結着剤として使用し、これを含有するスラリーの塗布・乾燥によって、二次電池用合剤を作成する方法が一般的であった。
一方、例えば、粒子状態のPTFEにせん断応力を与えると、容易にフィブリル化することが知られている。このようなフィブリル性樹脂を結着剤として使用することで、フィブリル化した樹脂がその他の粉体成分等に絡みつくことで、粉体成分を結着させ、これによって粉体成分を成形する際のバインダーとして作用することができる。
本開示においては、フィブリル性樹脂は、せん断応力を与えると、容易にフィブリル化するような樹脂のことを示す。例えば、フィブリル性樹脂として、LCP、セルロース、アクリル樹脂、超高分子量ポリエチレン、PTFEなどが挙げられ、中でも、PTFEが、化学的安定性、熱的安定性、加工性の点で好適である。
しかし、フィブリル性樹脂を結着剤として使用する場合、フィブリル化が充分でなければ、二次電池用合剤として使用した際に良好な性能を発揮することはできない。特に物理的強度を得るためには、効率よくフィブリル化を図る必要がある。
ポリテトラフルオロエチレンをバインダ樹脂として使用して、二次電池用合剤を作成することについては、上述したように特許文献1,2等に開示がなされている。
特許文献1では、ポリテトラフルオロエチレンをバインダ樹脂として用いて、他成分の5倍の溶媒を添加することでペーストを調整し電極合剤を製造している。このため、溶媒乾燥の工程が必要になる。また、溶媒残渣による電池性能の劣化、溶媒との化学反応による電池材料の劣化の問題を生じさせる。
特許文献2では、ポリテトラフルオロエチレンと非フィブリル化樹脂をバインダ材として組み合わせて、電極合剤を作製している。フィルム強度を維持するためバインダ材を重量の4%含ませることで電極の強度を担保している。これらの技術は、いずれも、上述した課題を解決する上では充分なものではない。
本開示は、電極合剤中に粒子径20μm以上の粒子Aを使用することで、上述した問題を解決するものである。すなわち、剪断力を受けた際にフィブリル性樹脂が粒径の大きい粒子Aと接触することで、フィブリル化が効率よく生じる。これによって、フィブリル化の効果を充分に得ることができ、優れた性質を有する二次電池用合剤、二次電池用合剤シートを得ることができる。
本開示において、上記PTFE樹脂としては特に限定されず、ホモポリマーであってもよいし、フィブリル化させることのできる共重合体であってもよい。
共重合体の場合、コモノマーであるフッ素原子含有モノマーとしては、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルエチレン、パーフルオロアルキルエチレン、フルオロアルキル・フルオロビニルエーテル等を挙げることができる。
本開示の二次電池用合剤を調製する際の原料となるフィブリル性樹脂は粉末形状であることが好ましく、また粉末形状のフィブリル性樹脂は、水分含有量が500ppm以下であることが好ましい。
水分含有量が500ppm以下であることによって、電池材料の劣化を低減させるという点で好ましい。
上記水分含有量は、300ppm以下であることが更に好ましい。
なお、上記「粉末形状のフィブリル性樹脂」とは、液体媒体と混在した分散状態ではなく、粉体としての固体状態を意味するものである。このような状態のものを利用し、液体媒体が存在しない状態のフィブリル性樹脂を使用して二次電池用合剤を製造することで、本開示の目的が好適に達成できる。
本開示の二次電池用合剤を調製する際の原料となる粉末形状のPTFEは、標準比重が2.12~2.20であることが好ましい。標準比重が当該範囲内のものであることによって、強度の高い合剤シートを作製できるという点で利点を有する。上記標準比重の下限は、2.13以上であることがより好ましい。上記標準比重の上限は、2.19以下であることがより好ましく、2.18以下であることが更に好ましい。
標準比重〔SSG〕はASTM D-4895-89に準拠して試料を作製し、得られた試料の比重を水置換法によって測定する。
上記粉末状のPTFEは、二次粒子径が450μm以上のポリテトラフルオロエチレン樹脂を50質量%以上含むことが好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。二次粒子径が450μm以上のPTFEが当該範囲内のものであることによって、強度の高い合剤シートを作製できるという利点を有する。
二次粒子径が450μm以上のPTFEを用いることで、より抵抗が低く、靭性に富んだ合剤シートを得ることができる。
上記粉末状のPTFEの平均二次粒子径の下限は、450μmであることがより好ましく、500μmであることが更に好ましい。上記二次粒子径の上限は、700μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが更に好ましい。二次粒子径は例えばふるい分け法などで求めることができる。
上記粉末状のPTFEは、より高強度でかつ均質性に優れる合剤シートが得られることから、平均一次粒子径が150nm以上であることが好ましい。より好ましくは、180nm以上であり、更に好ましくは210nm以上であり、特に好ましくは220nm以上である。
上記平均一次粒子径は、重合により得られたPTFEの水性分散液を用い、ポリマー濃度を0.22質量%に調整した水性分散液の単位長さに対する550nmの投射光の透過率と、透過型電子顕微鏡写真における定方向径を測定して決定された平均一次粒子径との検量線を作成し、測定対象である水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線をもとに決定できる。
本開示に使用するPTFEは、コアシェル構造を有していてもよい。コアシェル構造を有するPTFEとしては、例えば、粒子中に高分子量のポリテトラフルオロエチレンのコアと、より低分子量のポリテトラフルオロエチレンまたは変性ポリテトラフルオロエチレンのシェルとを含むポリテトラフルオロエチレンが挙げられる。このような変性ポリテトラフルオロエチレンとしては、例えば、特表2005-527652号公報に記載されるポリテトラフルオロエチレン等が挙げられる。
上述したような各パラメータを満たす粉末形状のPTFEは、従来の製造方法により得ることができる。例えば、国際公開第2015-080291号や国際公開第2012-086710号等に記載された製造方法に倣って製造すればよい。
本開示の二次電池用合剤は、上記フィブリル性樹脂がフィブリル化した状態のものであることが好ましい。すなわち、フィブリル性樹脂がフィブリル化することで、電極を構成する各粉体成分間の結着を図ることができる。さらに、このような結着剤としての作用を得る上で、粉体を液体成分と接触させることが必須とはならない。このため、液体成分と接触することによって生じる問題を生じることなく、二次電池用合剤シートを得ることができる、という点でも好ましいものである。
本開示の二次電池用合剤は、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有するPTFEを構成要素として有することが好ましい。このようにフィブリル径が細いPTFEが二次電池用合剤中に存在し、これが二次電池用合剤を構成する成分の粉体同士を結着させる作用を奏することによって、本開示の効果をより良好に発揮することができる。
上記フィブリル径(中央値)は、以下の方法によって測定した値である。
(1)走査型電子顕微鏡(S-4800型 日立製作所製)を用いて、二次電池用合剤シートの拡大写真(7000倍)を撮影し画像を得る。
(2)この画像に水平方向に等間隔で2本の線を引き、画像を三等分する。
(3)上方の直線上にある全てのPTFE繊維について、PTFE繊維1本あたり3箇所の直径を測定し、平均した値を当該PTFE繊維の直径とする。測定する3箇所は、PTFE繊維と直線との交点、交点からそれぞれ上下に0.5μmずつずらした場所を選択する。(未繊維化のPTFE一次粒子は除く)。
(4)上記(3)の作業を、下方の直線上にある全てのPTFE繊維に対して行う。
(5)1枚目の画像を起点に画面右方向に1mm移動し、再度撮影を行い、上記(3)及び(4)によりPTFE繊維の直径を測定する。これを繰り返し、測定した繊維数が80本を超えた時点で終了とする。
(6)上記測定した全てのPTFE繊維の直径の中央値をフィブリル径の大きさとした。
上記フィブリル径(中央値)は、100nm以下であることが好ましく、85nm以下であることがより好ましく、70nm以下であることが更に好ましい。なお、フィブリル化を進めすぎると、柔軟性が失われる傾向にある。下限は特に限定されるものではないが、強度の観点から、例えば、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、31nm以上であることが特に好ましい。
上記フィブリル径(中央値)を有するPTFEを得る方法としては特に限定されるものではないが、例えば、
粒子A及び結着剤を含む原料組成物を混合し剪断力を付与する工程(1)、
前記工程(1)によって得られた二次電池用合剤をバルク状に成形する工程(2)及び
前記工程(2)によって得られたバルク状の二次電池用合剤をシート状に圧延する工程(3)によって行う方法を挙げることができる。
上記工程において、材料分散性をより改善するために混合する工程として工程(0)を行ってもよい。例えば、工程(0)は原料組成物の混合条件を500rpm以下が好ましく、400rpm以下がより好ましい。また、19℃以下の温度で混練することでフィブリル化を抑制しながら原料組成物を分散することができる。
このような方法において、例えば、工程(1)においては原料組成物の混合条件を15000rpm以下とすることにより、柔軟性を維持しながらもPTFEのフィブリル化を進行させることができ、与えるせん断応力をコントロールすることで、PTFEのフィブリル径(中央値)を100nm以下とすることができる。
本開示においては、一定割合で粒径が20μm以上の粒子が含まれていることから、特に、効率よくフィブリル化を図ることができるものである。よって、上述したような混合条件についても、粒径が20μm以上の粒子が存在しない場合に比べて、より穏やかな条件での混合条件であっても、良好なフィブリル化を図ることができる。
また、工程(3)のあとに、得られた圧延シートに、より大きい荷重を加えて、さらに薄いシート状に圧延する工程(4)を有することも好ましい。また、工程(4)を繰り返すことも好ましい。
また、工程(3)又は工程(4)のあとに、得られた圧延シートを粗砕したのち再度バルク状に成形し、シート状に圧延する工程(5)を有することによってもフィブリル径を調整することができる。工程(5)は、例えば1回以上12回以下繰り返すことが好ましい。
なお、上記工程(0)~(5)の温度条件は、上記工程(0)において、加工温度を19℃以下で行うのが好ましく、上記工程(1)~(5)において、加工温度を30℃以上で行うのが好ましく、60℃以上がより好ましい。このような温度範囲を取ることで、より短い時間で所望のシート状へと加工を行うことができるものである。
すなわち、せん断力をかけることによって、PTFE粉体をフィブリル化し、これが活物質や固体電解質等の粉体成分と絡み合うことによって、二次電池用合剤を製造することができる。なお、当該製造方法については後述する。
本開示の二次電池用合剤において、フィブリル性樹脂の含有量は、二次電池用合剤全量に対する割合として、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上である。0.5質量%を超えることが更に好ましい。二次電池用合剤中、結着剤の含有量の上限は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは6.0質量%以下であり、更に好ましくは4質量%以下であり、より更に好ましくは1.7質量%以下であり、最も好ましくは1.0質量%以下である。フィブリル性樹脂の割合が低すぎると、二次電池用合剤シート内で活物質を十分保持できずに二次電池用合剤シートの機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。一方で、高すぎると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
本開示の二次電池用合剤は、粒子径20μm以上の粒子Aを合剤1mmあたり平均80個以上含有するものである。粒子径20μm以上の粒子Aは、イオン及び電子伝導に寄与する電池材料として作用する成分の粒子として、粒子径20μm以上のものを一部又は全部として使用してもよいし、電池材料として作用しない成分であって粒子径20μm以上のものを使用してもよい。具体的には、電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。粒子Aの粒子径として上限は特に定められるものではないが、250μm以下であってよい。
これらのうち、粒子Aがイオン及び電子伝導に寄与する電池材料として作用する成分の粒子である場合には、粒子Aが電池材料として作用しない成分である場合よりも電池性能を向上させる点で好ましい。このような成分としては、炭素材料、電極活物質、固体電解質を挙げることができる。また、粒子Aとして、2種以上の異なる成分を使用するものであってもよい。
合剤1mmあたりに含まれる粒子Aの数は、平均400個以上であることがより好ましく、800個以上であることが更に好ましい。さらに、その上限を特に限定されるものではないが、16万個以下であることがより好ましい。
本開示の二次電池用合剤は、更に、粒子Bとして、0.5μm以上20μm未満の粒子を含有することが好ましい。粒子径が大きい粒子Aに加えて粒子Bを使用することで、合剤シート作製時に、プレスによる電極密度の向上が行いやすく、電池抵抗が低減することから好ましいものである。
粒子Bは、合剤1mmあたり平均80000個以上含まれることが好ましい。平均50万個以上であることがより好ましく、100万個以上であることが更に好ましい。さらに、その上限を特に限定されるものではないが、40億個以下であることがより好ましい。
合剤1mmあたりに含まれる粒子A及び粒子Bの数は、X線CTスキャンによる合剤の3D画像中から数えることができ、以下の方法で測定したものである。
[X線CTスキャン]
粒子Aおよび粒子Bの個数を確認するためのX線CTスキャンは合剤の3D画像を取得し、これを解析ソフトによって画像解析することによって行ったものである。
より具体的な方法は以下である。
まず、成形前の合剤ではΦ10mmの金型にサンプルを秤量し、12KNの加圧を行い、厚み1mm以下のペレットを成形した。これを測定サンプルとした。成形後の合剤シートでは5mm×5mm以上の大きさで切り出して、5mm×5mm×1mm以上の測定サンプルを作製した。測定サンプルの厚みが1mm以下である場合は重ね合わせることで1mm以上の測定サンプルとした。
次に、X線CTスキャン(株式会社リガク社製 高分解能3DX線顕微鏡 nano3DX)のサンプル固定装置に測定サンプルを設置し、サンプルの中心位置と測定用X線の焦点距離を20mmに設定した。最後にX線CTスキャンで1mm×1mm×1mmの範囲をスキャンし、解析ソフトによる解析を行った。
[粒子A平均個数確認]
得られた画像をTIFF形式でコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込み、3次元再構成した。これについて同程度のコントラストを持つ部分二値化した後に、analyze particle機能を利用して500μm×500μm×500μmの領域中に存在する20μm以上の粒径をもつ粒子の個数をカウントした。これを任意の被らない領域5点でカウントすることで125×10μmあたりの平均粒子個数を算出した。ここで得られた平均粒子個数を8倍することで1mmあたりの平均粒子個数とした。カウントは長径が20μm以上の粒子を検出し、測定領域の境界面において粒子が欠けており、粒子径が20μm未満となる粒子はカウントの対象とはしなかった。また、平均粒子個数の小数点以下は四捨五入した。
[粒子B平均個数確認]
得られた画像をTIFF形式でコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込み、3次元再構成した。これについて同程度のコントラストを持つ部分二値化した後に、analyze particle機能を利用して500μm×500μm×500μmの領域中に存在する0.5μm以上20μm未満の粒径をもつ粒子の個数をカウントした。これを任意の被らない領域5点でカウントすることで125×10μmあたりの平均粒子個数を算出した。ここで得られた平均粒子個数を8倍することで1mmあたりの平均粒子個数とした。カウントは長径が0.5μm以上20μm未満の粒子を検出し、測定領域の境界面において粒子が欠けており、粒子径が0.5μm未満となる粒子はカウントの対象とはしなかった。また、平均粒個数の小数点以下は四捨五入した。
なお、ここで粒子径とは、長径を意味するものであり、更に、粒子に凝集がみられる場合、粒子径は、2次粒子径基準で、1つの粒子を判定する。
上記粒子Aは、フィブリル性樹脂に対して1~4800体積%であることが好ましい。このような範囲内とすることで、フィブリル化を効率よく生じさせるという点において好ましい。上記下限は5体積%であることがより好ましく、10体積%であることが更に好ましい。上記上限は2500体積%であることがより好ましく、100体積%であることが更に好ましい。
上記粒子Bは、フィブリル性樹脂に対して400~50000体積%であることが好ましい。このような範囲内とすることで、合剤中の比表面積を高く維持し、電池特性を落とさないという点において好ましい。上記下限は800体積%であることがより好ましく、2000体積%であることが更に好ましい。上記上限は10000体積%であることがより好ましく、5000体積%であることが更に好ましく、3000体積%であることが特に好ましい。
なお、上記粒子A,粒子Bの体積%は、X線CTスキャンによって得られた結果を三次元画像化したものに基づいてフィブリル性樹脂、粒子A、粒子Bそれぞれが空間に占める体積を算出することによって、測定することができる。
上記粒子Aは、体積比で上記粒子Bより少ないことが好ましい。このような配合比とすることで、電池特性を落とさずにフィブリル化を効率よく生じさせるという点において好ましい。具体的には、上記粒子Aは、上記粒子Bに対して10体積%以下であることが好ましく、3体積%以下であることがより好ましい。上記粒子Aは、上記粒子Bに対して0.2体積%以上であることが好ましく、0.5体積%以上であることがより好ましい。
上記粒子A、粒子Bは、電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。以下、本開示において粒子A、粒子Bを構成することができる各成分について、具体的に詳述する。
(電極活物質)
本開示の二次電池用合剤シートを正極用シートとして使用する場合、二次電池用合剤シートには正極活物質を配合する。上記正極活物質は、固体電池の正極活物質として公知の正極活物質を適用可能である。特に、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極活物質を用いることが好ましい。
上記正極活物質としては、電気化学的にアルカリ金属イオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限されないが、例えば、アルカリ金属と少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、アルカリ金属含有遷移金属複合酸化物、アルカリ金属含有遷移金属リン酸化合物、導電性高分子等が挙げられる。
なかでも、正極活物質としては、特に、高電圧を産み出すアルカリ金属含有遷移金属複合酸化物が好ましい。上記アルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。好ましい態様において、アルカリ金属イオンは、リチウムイオンであり得る。即ち、この態様において、アルカリ金属イオン二次電池は、リチウムイオン二次電池である。
上記アルカリ金属含有遷移金属複合酸化物としては、例えば、
式:MMn2-b
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり;0.9≦a;0≦b≦1.5;MはFe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、SiおよびGeよりなる群より選択される少なくとも1種の金属)で表されるアルカリ金属・マンガンスピネル複合酸化物、
式:MNi1-ccO
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり;0≦c≦0.5;MはFe、Co、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、SiおよびGeよりなる群より選択される少なくとも1種の金属)で表されるアルカリ金属・ニッケル複合酸化物、または、
式:MCo1-d
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり;0≦d≦0.5;MはFe、Ni、Mn、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、SiおよびGeよりなる群より選択される少なくとも1種の金属)
で表されるアルカリ金属・コバルト複合酸化物が挙げられる。上記において、Mは、好ましくは、Li、Na及びKからなる群より選択される1種の金属であり、より好ましくはLiまたはNaであり、さらに好ましくはLiである。
なかでも、エネルギー密度が高く、高出力な二次電池を提供できる点から、MCoO、MMnO、MNiO、MMn、MNi0.8Co0.15Al0.05、またはMNi1/3Co1/3Mn1/3等が好ましく、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
MNiCoMn (3)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、MはFe、Cu、Zn、Al、Sn、Cr、V、Ti、Mg、Ca、Sr、B、Ga、In、Si及びGeからなる群より選択される少なくとも1種を示し、(h+i+j+k)=1.0、0≦h≦1.0、0≦i≦1.0、0≦j≦1.5、0≦k≦0.2である。)
上記アルカリ金属含有遷移金属リン酸化合物としては、例えば、下記式(4)
(PO (4)
(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、MはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni及びCuからなる群より選択される少なくとも1種を示し、0.5≦e≦3、1≦f≦2、1≦g≦3)で表される化合物が挙げられる。上記において、Mは、好ましくは、Li、Na及びKからなる群より選択される1種の金属であり、より好ましくはLiまたはNaであり、さらに好ましくはLiである。
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP等のリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の元素で置換したもの等が挙げられる。
上記リチウム含有遷移金属リン酸化合物としては、オリビン型構造を有するものが好ましい。
その他の正極活物質としては、MFePO、MNi0.8Co0.2、M1.2Fe0.4Mn0.4、MNi0.5Mn1.5、MV、MMnO(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属である。)等が挙げられる。特に、MMnO、MNi0.5Mn1.5等の正極活物質は、4.4Vを超える電圧や、4.6V以上の電圧で二次電池を作動させた場合であって、結晶構造が崩壊しない点で好ましい。従って、上記に例示した正極活物質を含む正極材を用いた二次電池等の電気化学デバイスは、高温で保管した場合でも、残存容量が低下しにくく、抵抗増加率も変化しにくい上、高電圧で作動させても電池性能が劣化しないことから、好ましい。
その他の正極活物質として、MMnOとMM(式中、Mは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、Mは、Co、Ni、Mn、Fe等の遷移金属)との固溶体材料等も挙げられる。
上記固溶体材料としては、例えば、一般式Mx[Mn(1-y) ]Oで表わされるアルカリ金属マンガン酸化物である。ここで式中のMは、Li、Na及びKからなる群より選択される少なくとも1種の金属であり、Mは、M及びMn以外の少なくとも一種の金属元素からなり、例えば、Co,Ni,Fe,Ti,Mo,W,Cr,ZrおよびSnからなる群から選択される一種または二種以上の元素を含んでいる。また、式中のx、y、zの値は、1<x<2、0≦y<1、1.5<z<3の範囲である。中でも、Li1.2Mn0.5Co0.14Ni0.14のようなLiMnOをベースにLiNiOやLiCoOを固溶したマンガン含有固溶体材料は、高エネルギー密度を有するアルカリ金属イオン二次電池を提供できる点から好ましい。
また、上記正極活物質の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸させ、又は添加した後、乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて該正極活物質に含浸添加後、加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により正極活物質表面に付着させることができる。なお、炭素を付着させる場合には、炭素質を、例えば、活性炭等の形で後から機械的に付着させる方法も用いることもできる。
表面付着物質の量としては、上記正極活物質に対して質量で、下限として好ましくは0.1ppm以上、より好ましくは1ppm以上、更に好ましくは10ppm以上、上限として、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下で用いられる。表面付着物質により、正極活物質表面での固体電解質の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。その付着量が少なすぎる場合、その効果は十分に発現せず、多すぎる場合には、リチウムイオンの出入りを阻害するため抵抗が増加する場合がある。
正極活物質の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が挙げられる。また、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成していてもよい。
正極活物質のタップ密度は、好ましくは0.5g/cm以上、より好ましくは0.8g/cm以上、更に好ましくは1.0g/cm以上である。該正極活物質のタップ密度が上記下限を下回ると正極活物質層形成時に、必要な分散媒量が増加すると共に、導電材やフィブリル性樹脂の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。タップ密度の高い複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。タップ密度は一般に大きいほど好ましく、特に上限はないが、大きすぎると、正極活物質層内における固体電解質を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合があるため、上限は、好ましくは4.0g/cm以下、より好ましくは3.7g/cm以下、更に好ましくは3.5g/cm以下である。
なお、本開示では、タップ密度は、正極活物質粉体5~10gを10mlのガラス製メスシリンダーに入れ、ストローク約20mmで200回タップした時の粉体充填密度(タップ密度)g/cmとして求める。
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は好ましくは0.3μm以上、より好ましくは0.5μm以上、更に好ましくは0.8μm以上、最も好ましくは1.0μm以上であり、また、好ましくは30μm以下、より好ましくは27μm以下、更に好ましくは25μm以下、最も好ましくは22μm以下である。上記下限を下回ると、高タップ密度品が得られなくなる場合があり、上限を超えると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池性能の低下をきたしたり、電池の正極作成、即ち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引いたり等の問題を生ずる場合がある。ここで、異なるメジアン径d50をもつ上記正極活物質を2種類以上混合することで、正極作成時の充填性を更に向上させることができる。
なお、本開示では、メジアン径d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA-920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には、上記正極活物質の平均一次粒子径としては、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上であり、上限は、好ましくは5μm以下、より好ましくは4μm以下、更に好ましくは3μm以下、最も好ましくは2μm以下である。上記上限を超えると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下したりするために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。逆に、上記下限を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等の問題を生ずる場合がある。
なお、本開示では、上記正極活物質の平均一次粒子径は、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
正極活物質のBET比表面積は、好ましくは0.1m/g以上、より好ましくは0.2m/g以上、更に好ましくは0.3m/g以上であり、上限は好ましくは50m/g以下、より好ましくは40m/g以下、更に好ましくは30m/g以下である。BET比表面積がこの範囲よりも小さいと電池性能が低下しやすく、大きいとタップ密度が上がりにくくなり、正極活物質層形成時の塗布性に問題が発生しやすい場合がある。
なお、本開示では、BET比表面積は、表面積計(例えば、大倉理研社製全自動表面積測定装置)を用い、試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用い、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定した値で定義される。
正極活物質の製造法としては、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。特に球状ないし楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられるが、例えば、遷移金属の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法等が挙げられる。
正極の製造のために、前記の正極活物質を単独で用いてもよく、異なる組成の2種以上を、任意の組み合わせ又は比率で併用してもよい。この場合の好ましい組み合わせとしては、LiCoOとLiNi0.33Co0.33Mn0.33等の三元系との組み合わせ、LiCoOとLiMn若しくはこのMnの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせ、あるいは、LiFePOとLiCoO若しくはこのCoの一部を他の遷移金属等で置換したものとの組み合わせが挙げられる。
上記正極活物質の含有量は、電池容量が高い点で、正極合剤中50~99.5質量%が好ましく、80~99質量%がより好ましい。
また、正極活物質の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは82質量%以上、特に好ましくは84質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。正極合剤中の正極活物質の含有量が低いと電気容量が不十分となる場合がある。逆に含有量が高すぎると正極の強度が不足する場合がある。
本開示の二次電池用合剤シートを負極用シートとして使用する場合、二次電池用合剤シートには負極活物質を配合する。負極活物質としては特に限定されず、例えば、リチウム金属、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛及び、難黒鉛化性炭素等の炭素質材料を含むもの、ケイ素及びケイ素合金等のシリコン含有化合物、LiTi12等から選択されるいずれか、又は2種類以上の混合物等を挙げることができる。なかでも、炭素質材料を少なくとも一部に含むものや、シリコン含有化合物を特に好適に使用することができる。
上記負極活物質の含有量は、得られる二次電池用合剤シートの容量を増やすために、二次電池用合剤シート中40質量%以上が好ましく、より好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上である。また上限は、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
(固体電解質)
上記固体電解質は、硫化物系固体電解質であっても、酸化物系固体電解質であってもよい。特に、硫化物系固体電解質を使用する場合、柔軟性があるという利点がある。
上記硫化物系固体電解質としては、特に限定されず、LiS-P、LiS-P、LiS-P-P、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiI-LiS-SiS-P、LiS-SiS-LiSiO、LiS-SiS-LiPO、LiPS-LiGeS、Li3.40.6Si0.4、Li3.250.25Ge0.76、Li4-xGe1-x(x=0.6~0.8)、Li4+yGe1-yGa(y=0.2~0.3)、LiPSCl、LiCl、Li7-x-2yPS6-x-yCl(0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5)等から選択されるいずれか、又は2種類以上の混合物を使用することができる。
上記硫化物系固体電解質は、リチウムを含有するものであることが好ましい。リチウムを含有する硫化物系固体電解質は、リチウムイオンをキャリアとして使用する固体電池に使用されるものであり、高エネルギー密度を有する電気化学デバイスという点で特に好ましいものである。
上記酸化物系固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
具体的な化合物例としては、例えば、LixaLayaTiO〔xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbbb mbnb(MbbはAl,Mg,Ca,Sr,V,Nb,Ta,Ti,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)、Lixcyccc zcnc(MccはC,S,Al,Si,Ga,Ge,In,Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦2、0≦zd≦2、0≦ad≦2、1≦md≦7、3≦nd≦15)、Li(3-2xe)ee xeeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子または2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4-3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.51Li0.34TiO2.94、La0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2-xhSiyh3-yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。また、LLZに対して元素置換を行ったセラミックス材料も知られている。例えば、LLZに対して、Mg(マグネシウム)とA(Aは、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)から構成される群より選択される少なくとも1つの元素)との少なくとも一方の元素置換を行ったLLZ系セラミックス材料も挙げられる。また、Li、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えば、リン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD(Dは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiAON(Aは、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
具体例として、例えば、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeO、LiO-Al-SiO-P-TiO等が挙げられる。
上記酸化物系固体電解質は、リチウムを含有するものであることが好ましい。リチウムを含有する酸化物系固体電解質は、リチウムイオンをキャリアとして使用する固体電池に使用されるものであり、高エネルギー密度を有する電気化学デバイスという点で特に好ましいものである。
上記酸化物系固体電解質は、結晶構造を有する酸化物であることが好ましい。結晶構造を有する酸化物は、良好なLiイオン伝導性という点で特に好ましいものである。
結晶構造を有する酸化物としては、ペロブスカイト型(La0.51Li0.34TiO2.94など)、NASICON型(Li1.3Al0.3Ti1.7(POなど)、ガーネット型(LiLaZr12(LLZ)など)等が挙げられる。なかでも、NASICON型が好ましい。
酸化物系固体電解質の体積平均粒子径は特に限定されないが、0.01μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましい。上限としては、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。なお、酸化物系固体電解質粒子の平均粒子径の測定は、以下の手順で行う。酸化物系固体電解質粒子を、水(水に不安定な物質の場合はヘプタン)を用いて20mlサンプル瓶中で1質量%の分散液を希釈調整する。希釈後の分散試料は、1kHzの超音波を10分間照射し、その直後に試験に使用する。この分散液試料を用い、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920(HORIBA社製)を用いて、温度25℃で測定用石英セルを使用してデータ取り込みを50回行い、体積平均粒子径を得る。その他の詳細な条件等は必要によりJISZ8828:2013「粒子径解析-動的光散乱法」の記載を参照する。1水準につき5つの試料を作製しその平均値を採用する。
特に、電極合剤シートとする場合には、必要に応じて、上述した以外の成分を配合する場合もある。このような成分としては、特に導電助剤を挙げることができる。このような導電助剤としては特に限定されず、例えば、炭素材料や、非炭素系導電助剤等を挙げることができる。
これについて、以下詳述する
(炭素材料)
上記炭素材料は、特に、電池材料として使用される炭素系の材料を意味するものであり、その素材は、公知の一般的なものを使用することができる。具体的には、例えば、導電助剤として使用される天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス、カーボンナノチューブ、フラーレン、VGCF等の無定形炭素等の炭素材料等を挙げることができる。
(非炭素系導電助剤)
上記導電助剤としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、上記炭素材料の他に銅、ニッケル等の金属材料、導電性高分子等を挙げることができる。
上記導電性高分子としては、p-ドーピング型の導電性高分子やn-ドーピング型の導電性高分子が挙げられる。導電性高分子としては、ポリアセチレン系、ポリフェニレン系、複素環ポリマー、イオン性ポリマー、ラダー及びネットワーク状ポリマー等が挙げられる。が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
導電助剤は、電極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上であり、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量がこの範囲よりも低いと導電性が不十分となる場合がある。逆に、含有量がこの範囲よりも高いと電池容量が低下する場合がある。
(非フィブリル性樹脂)
当該非フィブリル性樹脂は、上述したフィブリル性樹脂に該当しないものであり、剪断力を付与してもフィブリル化しないものである。
非フィブリル性樹脂としては、ポリフッ化ビニリデンや、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンオキシドなどが挙げられる。1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
(電池用合剤シート)
本開示の電極合剤はこれをシート状に成形して、二次電池用合剤シートとすることができる。
本開示の二次電池用合剤シートは、正極用シートとすることもできるし、負極用シートとすることもできる。更に、固体電解質層用シートとすることもできる。
上述した電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂、並びに、その他の電池材料のなかから適宜選択して組み合わせることによって、上述した各用途に適切な二次電池用合剤シートとすることができる。
(粒子材料について)
本開示の二次電池用合剤は、上述したように、粒径が20μm以上の粒子Aを一定の割合以上に含むものである。この場合の粒径が20μm以上の粒子Aを構成する粒子は、上述したフィブリル性樹脂以外の配合成分のいずれであってもよく、2以上の成分がこのような粒子Aを構成するものであってもよい。
更に、本開示の二次電池用合剤は、粒径が0.5μm以上20μm未満である粒子Bも含有するものであることが好ましい。この場合、粒径が20μm以上の粒子と0.5μm以上20μm未満の粒子とを準備し、これらを混合して使用するものであってもよいし、一定の分布を有することで、粒子Aと粒子Bの両方を含有するようなものを原料として使用するものであってもよい。
一般に、各種の粒子形状の物質は、特定の粒径を有するもののみの形態で販売・使用されることは少ない。すなわち、一般には販売・使用する状態で、一定の粒径分布を有するのが通常である。したがって、本開示の二次電池用合剤は、このような一定の粒径分布を有し、その分布領域が粒径20μm以上の粒子Aの領域と、粒径0.5μm以上20μm未満の粒子Bの領域の両方を含むような原料を使用することが好ましい。さらに、粒子Aの含有量を調整するために、粒径分布が相違する2種以上の粉体を混合して使用するものであってもよい。材料の粒径分布を事前に測定して適宜添加量を調整することで本開示の二次電池用合剤を容易に製造できる。
以下で詳述する本開示の製造方法を適用した場合、原料における粒径分布と電極合剤とでは粒径分布は大きく変化しないものとすることができる。したがって、原料に含まれる粉体成分の分布を目的とする電極合剤の粒子の分布と類似したものとすることが好ましい。
たとえば、粉体成分の一部として、d50が20μm以上の電池材料粒子をフィブリル性樹脂に対して1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは7質量%以上使用すると、粒子Aを特定の割合で含有するような本開示の二次電池用合剤を容易に得ることができる点で好ましい。上記d50は、20μm以上がより好ましく、23μm以上がさらに好ましく、25μm以上が特に好ましく、上限は特に限定されないが、100μmが好ましい。
なお、ここでd50は、以下で詳述する方法によって測定して得られた値であり、体積基準である。。
d50は、公知のレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置によって測定される。粒度分布計としてHORIBA社製LA-920を用いる場合、測定の際に用いる分散媒として、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24を設定して測定される。
上記電極合剤は、実質的に液体媒体を含有しないことが好ましい。従来の二次電池用合剤形成方法は、結着剤が溶解した溶媒を使用して、二次電池用合剤成分である粉体を分散させたスラリーを調製し、当該スラリーの塗布・乾燥によって二次電池用合剤シートを調製することが一般的であった。この場合、バインダーを溶解する溶媒を使用する。しかし、従来一般に使用されてきたバインダー樹脂を溶解することができる溶媒は酪酸ブチル等の特定の溶媒に限定され、また、これらは固体電解質を劣化させ、電池性能の低下原因となる。また、ヘプタンなどの低極性溶媒では溶解するバインダー樹脂が非常に限定されるうえ、引火点が低く、取り扱いが煩雑である。
また、特許文献1等においては、溶媒を添加して、ペースト状にして押出を行う方法も記載されている。しかし、溶媒を使用すると、活物質の劣化、固体電解質の劣化による電池特性の低下という問題を生じる場合がある。また、溶剤を乾燥および回収する工程が必要となるため、コストメリットが低下するという問題が生じる場合がある。本開示においては、無溶媒の状態で剪断力を付与しながら、フィブリル性樹脂をフィブリル化させることによって、成形を行うものであることが特に好ましい。このような方法とすることで、溶媒による劣化を防ぐことで電池特性を維持しながらコストメリットを得ることができるという利点がある。
なお、本明細書において、「実質的に液体媒体を含有しない」とは、二次電池用合剤全量に対して液体媒体の含有量が1質量%以下であることを意味する。上記液体媒体としては、水、などの低極性の炭化水素系溶媒、エーテル化合物、アルコール、イオン液体およびカーボネート、脂肪族炭化水素(ヘプタン、キシレンなどの低極性溶剤)、イソパラフィン系炭化水素化合物および石油留分(ガソリン(C4-C10)、ナフサ(C4-C11)、灯油/パラフィン(C10-C16)、およびそれらの混合物)、好ましくは、ヘプタン、キシレンなどの低極性溶剤、イオン液体、イソパラフィン系炭化水素化合物および石油留分などが挙げられる。
(製造方法)
本開示の二次電池用合剤シートの製造方法は、上述した各成分を混合して得られた原料組成物を使用し、これをシート化するものであることが好ましい。シート化においては、乾燥工程が省けるため、液体媒体の使用量を低減させるか全く使用せずに、スラリーを調製せずに粉体である原料組成物に対して剪断応力を与えることによって行う方法が好ましい。また、装置の負荷を軽減するために、潤滑剤として溶剤を少量添加してもよい。溶剤は有機溶剤が望ましく、含有溶剤量としては、原料組成物に対して10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。
本開示の二次電池用合剤シートは、その製造方法を限定されるものではないが、以下に具体的な製造方法の一例を示す。
本開示は、フィブリル性樹脂及びd50が20μm以上の電池材料粒子を含む原料組成物を混合しながら、剪断力を付与する工程(1)、
上記工程(1)によって得られた二次電池用合剤をバルク状に成形する工程(2)及び
上記工程(2)によって得られたバルク状の二次電池用合剤をシート状に圧延する工程(3)を有する二次電池用合剤シートの製造方法であって、
上記電池材料粒子は、上記フィブリル性樹脂に対して3質量%以上使用することを特徴とする二次電池用合剤シートの製造方法でもある。
上記工程において、上記工程(1)に先立って、材料分散性をより改善するために19℃以下の温度で混合する工程として工程(0)を行ってもよい。得られる二次電池用合剤は、電池材料粒子、フィブリル性樹脂等が単に混ざっているだけで定まった形のない状態で存在している。具体的な混合方法としては、W型混合機、V型混合機、ドラム型混合機、リボン混合機、円錐スクリュー型混合機、1軸混練機、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、高速ミキサーなどを用いて混合する方法が挙げられる。
上記工程(0)において、混合条件は、回転数と混合時間を適宜設定すればよい。例えば、回転数は、500rpm以下とすることが好ましい。また、好ましくは400rpm以下、より好ましくは300rpm以下、更に好ましくは200rpm以下の範囲である。下限は好ましくは20rpm以上、より好ましくは30rpm以上、更に好ましくは40rpm以上であり、上記の範囲を下回ると、混合に時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。また、19℃以下の温度で混練することでフィブリル化を抑制しながら原料組成物を分散することができる。
上記工程(1)において原料組成物を混合しながら、剪断力を付与した段階では、得られる二次電池用合剤は、電池材料粒子、フィブリル性樹脂等が単に混ざっているだけで定まった形のない状態で存在している。具体的な混合方法としては、W型混合機、V型混合機、ドラム型混合機、リボン混合機、円錐スクリュー型混合機、1軸混練機、2軸混練機、ミックスマラー、撹拌ミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、高速ミキサーなどを用いて混合する方法が挙げられる。
上記工程(1)において、混合条件は、回転数と混合時間を適宜設定すればよい。例えば、回転数は、15000rpm以下とすることが好適である。好ましくは10rpm以上、より好ましくは1000rpm以上、更に好ましくは3000rpm以上であり、また、好ましくは12000rpm以下、より好ましくは11000rpm以下、更に好ましくは10000rpmの範囲である。上記の範囲を下回ると、混合に時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。
上記工程(2)において、バルク状に成形するとは、二次電池用合剤を1つの塊とするものである。
バルク状に成形する具体的な方法として、押出成形、プレス成形などが挙げられる。
また、「バルク状」とは、特に形状が特定されるものではなく、1つの塊状になっている状態であればよく、ロッド状、シート状、球状、キューブ状等の形態が含まれる。上記塊の大きさは、その断面の直径または最小の一辺が10000μm以上であることが好ましい。より好ましくは20000μm以上である。
上記工程(3)における具体的な圧延方法としては、ロールプレス機、平板プレス機、カレンダーロール機などを用いて圧延する方法が挙げられる。
また、工程(3)のあとに、得られた圧延シートに、より大きい荷重を加えて、さらに薄いシート状に圧延する工程(4)を有することも好ましい。工程(4)を繰り返すことも好ましい。このように、圧延シートを一度に薄くするのではなく、段階に分けて少しずつ圧延することで柔軟性がより良好となる。
工程(4)の回数としては、2回以上10回以下が好ましく、3回以上9回以下がより好ましい。
具体的な圧延方法としては、例えば、2つあるいは複数のロールを回転させ、その間に圧延シートを通すことによって、より薄いシート状に加工する方法等が挙げられる。
また、フィブリル径を調整する観点で、工程(3)または工程(4)のあとに、圧延シートを粗砕したのち再度バルク状に成形し、シート状に圧延する工程(5)を有することも好ましい。工程(5)を繰り返すことも好ましい。工程(5)の回数としては、1回以上12回以下が好ましく、2回以上11回以下がより好ましい。
工程(5)において、圧延シートを粗砕してバルク状に成形する具体的な方法として、圧延シートを折りたたむ方法、あるいはロッドもしくは薄膜シート状に成形する方法、チップ化する方法などが挙げられる。本開示において、「粗砕する」とは、次工程でシート状に圧延するために、工程(3)又は工程(4)で得られた圧延シートの形態を別の形態に変化させることを意味するものであり、単に圧延シートを折りたたむような場合も含まれる。
また、工程(5)の後に、工程(4)を行うようにしてもよく、繰り返し行ってもよい。
また、工程(2)ないし、(3)、(4)、(5)において1軸延伸もしくは2軸延伸を行っても良い。
また、工程(5)での粗砕程度によってもフィブリル径(中央値)を調整することができる。
上記工程(3)、(4)又は(5)において、圧延率は、好ましくは10%以上、更に好ましくは20%以上であり、また、好ましくは80%以下、より好ましくは65%以下、更に好ましくは50%以下の範囲である。上記の範囲を下回ると、圧延回数の増大とともに時間がかかることとなり生産性に影響を与える。また、上回ると、フィブリル化が過度に進行し、強度および柔軟性の劣る電極合剤シートとなるおそれがある。
なお、ここでいう圧延率とは、試料の圧延加工前の厚みに対する加工後の厚みの減少率を指す。圧延前の試料は、バルク状の原料組成物であっても、シート状の原料組成物であってもよい。試料の厚みとは、圧延時に荷重をかける方向の厚みを指す。工程(1)~(5)は30℃以上で行うのが好ましく、60℃以上がより好ましい。
なお、上記工程(0)~(5)の温度条件は、上記工程(0)において、加工温度を19℃以下で行うのが好ましく、上記工程(1)~(5)において、加工温度を30℃以上で行うのが好ましく、60℃以上がより好ましい。このような温度範囲を取ることで、より短い時間で所望のシート状へと加工を行うことができるものである。
上述したように、PTFE粉末は、せん断力をかけることでフィブリル化する。そして、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有するものとするには、過度なせん断応力では、フィブリル化が促進しすぎてしまい、柔軟性が損なわれることがある。また、弱いせん断応力では強度の面で充分ではないことがある。このため、混合時や圧延時に、適度なPTFEにせん断応力を与えてフィブリル化を促進し、樹脂を圧延してシート状に延ばす、という工程を上記範囲でおこなうことによって、フィブリル径(中央値)が100nmの繊維状構造を有するものとすることができる。
本開示の二次電池用合剤シートは、上記の通り、正極用シート、負極用シート、固体電解質層用シートのいずれとすることもできる。正極用合剤シート又は負極用シートとする場合、上記二次電池用合剤シートの製造において、フィブリル性樹脂と共に、正極活物質又は負極活物質を混合するようにすればよい。
以下、正極及び負極について説明する。
(正極)
本開示において、正極は、集電体と、上記正極用シートとから構成されることが好適である。
正極用集電体の材質としては、アルミニウム、チタン、タンタル、ステンレス鋼、ニッケル等の金属、又は、その合金等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。なかでも、金属材料、特にアルミニウム又はその合金が好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属箔が好ましい。なお、金属箔は適宜メッシュ状に形成してもよい。
金属箔の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。金属箔がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、金属箔がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
また、集電体の表面に導電助剤が塗布されていることも、集電体と正極合剤シートの電気接触抵抗を低下させる観点で好ましい。導電助剤としては、炭素や、金、白金、銀等の貴金属類が挙げられる。
正極の製造は、常法によればよい。例えば、上記正極用シートと集電体とを接着剤を介して積層し、乾燥する方法等が挙げられる。
正極用シートの密度は、好ましくは2.0g/cm以上、より好ましくは2.1g/cm以上、更に好ましくは2.3g/cm以上であり、また、好ましくは4.0g/cm以下、より好ましくは3.9g/cm以下、更に好ましくは3.8g/cm以下の範囲である。この範囲を上回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。下回ると硬く割れやすい活物質の含有量が低く、容量の低い電池となってしまう場合がある。
正極の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、集電体の厚さを差し引いた合剤シートの厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
また、上記正極の表面に、これとは異なる組成の物質が付着したものを用いてもよい。表面付着物質としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩、炭素等が挙げられる。
(負極)
本開示において、負極は、集電体と、上記負極用シートとから構成されることが好適である。
負極用集電体の材質としては、銅、ニッケル、チタン、タンタル、ステンレス鋼等の金属、又は、その合金等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素材料が挙げられる。なかでも、金属材料、特に銅、ニッケル、又はその合金が好ましい。
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属箔が好ましい。なお、金属箔は適宜メッシュ状に形成してもよい。金属箔の厚さは任意であるが、通常1μm以上、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、また、通常1mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。金属箔がこの範囲よりも薄いと集電体として必要な強度が不足する場合がある。逆に、金属箔がこの範囲よりも厚いと取り扱い性が損なわれる場合がある。
負極の製造は、常法によればよい。例えば、上記負極用シートと集電体とを接着剤を介して積層し、乾燥する方法等が挙げられる。
負極用シートの密度は、好ましくは1.3g/cm以上、より好ましくは1.4g/cm以上、更に好ましくは1.5g/cm以上であり、また、好ましくは2.0g/cm以下、より好ましくは1.9g/cm以下、更に好ましくは1.8g/cm以下の範囲である。この範囲を上回ると、集電体と活物質との界面付近への固体電解質の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下し高出力が得られない場合がある。また下回ると活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し高出力が得られない場合がある。
負極の厚さは特に限定されないが、高容量かつ高出力の観点から、集電体の金属箔厚さを差し引いた合剤シートの厚さは、集電体の片面に対して下限として、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上で、また、好ましくは500μm以下、より好ましくは450μm以下である。
(二次電池)
本開示は、上記二次電池用合剤シートを用いた二次電池でもある。
当該二次電池は、リチウムイオン電池であることが好ましい。また、当該二次電池は、固体電池であっても、液体電解質を含有する二次電池であってもよい。
本開示の二次電池は、正極として上述した本開示の二次電池用合剤シートを備える二次電池である。ここで、負極、及び、固体電解質層については、特に限定されるものではなく、公知の任意のものを使用することができる。
以下、本開示に係る二次電池に用いられるセパレータ及び電池ケースについて、詳細に説明する。
本開示の二次電池の製造方法は、例えば、まず、上記正極、固体電解質層シート、負極を順に積層し、プレスすることにより二次電池としてもよい。
本開示の二次電池用合剤シートを使用することにより、系内の水分が少ない状態で二次電池の製造を行うことができ、良好な性能を有する二次電池とすることができ、好適である。
(電解液を使用する二次電池)
本開示の二次電池用合剤シートを使用して製造された電極は、電解液を使用する各種二次電池における正極又は負極として使用することができる。上記二次電池は、非水電解液を使用する電池であり、リチウムイオン電池を挙げることができる。
(電解液)
上記非水電解液としては、公知の電解質塩を公知の電解質塩溶解用有機溶媒に溶解したものが使用できる。
電解質塩溶解用有機溶媒としては、特に限定されるものではないが、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの公知の炭化水素系溶媒;フルオロエチレンカーボネート、フルオロエーテル、フッ素化カーボネートなどのフッ素系溶媒の1種もしくは2種以上が使用できる。
電解質塩としては、たとえばLiClO、LiAsF、LiBF、LiPF、LiN(SOCF、LiN(SOなどがあげられ、サイクル特性が良好な点から特にLiPF、LiBF、LiN(SOCF、LiN(SOまたはこれらの組合せが好ましい。
電解質塩の濃度は、0.8モル/リットル以上、さらには1.0モル/リットル以上が必要である。上限は電解質塩溶解用有機溶媒にもよるが、通常1.5モル/リットル以下である。
(電池設計)
電極合剤群は、上記の正極と負極とをセパレータを介してなる積層構造のもの、及び上記の正極と負極とを上記のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のもののいずれでもよい。
(セパレータ)
上記セパレータの材質や形状は、電解液に安定であり、かつ、保液性に優れていれば特に限定されず、公知のものを使用することができる。例えば、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、芳香族ポリアミド、PTFE、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。ポリプロピレン/ポリエチレン2層フィルム、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層フィルム等、これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
なかでも、上記セパレータは、電解液の浸透性やシャットダウン効果が良好である点で、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを原料とする多孔性シート又は不織布等であることが好ましい。
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01~1μm、厚さが5~50μmのものが好適に用いられる。上記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて上記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。
例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
外装ケースの材質は用いられる電解液に対して安定な物質であれば特に制限されない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して上記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。上記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、上記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
二次電池の形状は任意であり、例えば、円筒型、角型、ラミネート型、コイン型、大型等の形状が挙げられる。なお、正極、負極、セパレータの形状及び構成は、それぞれの電池の形状に応じて変更して使用することができる。
以下、本開示を実施例に基づいて具体的に説明する。
以下の実施例においては特に言及しない場合は、「部」「%」はそれぞれ「質量部」「質量%」を表す。
〔作製例1〕
重合開始からTFEが367g(TFEの全重合量1032gに対して35.6質量%)消費された時点で、ラジカル捕捉剤としてヒドロキノン12.0mgを水20mlに溶解した水溶液をTFEで圧入した(水性媒体に対して濃度4.0ppm)。重合はその後も継続し、TFEの重合量が重合開始から1000gになった時点でTFEの供給を止め、直ちに系内のガスを放出して常圧とし、重合反応を終了してポリテトラフルオロエチレン水性分散体(固形分31.2質量%)を得た。得られたポリテトラフルオロエチレン水性分散体を固形分濃度15%まで希釈し、攪拌機付き容器内で硝酸の存在下において静かに、攪拌しポリテトラフルオロエチレンを凝固させた。凝固したポリテトラフルオロエチレンを分離し、160℃において18時間乾燥し、粉末状のPTFE-1を得た。
水分含有量は以下の方法で測定を行った。
[含有水分量測定]
粉末状のPTFEは真空乾燥機にて50℃、1時間乾燥して用いた。真空乾燥後のPTFEの水分量は、ボートタイプ水分気化装置を有するカールフィッシャー水分計(ADP-511/MKC-510N 京都電子工業(株)製)を使用し、水分気化装置で210℃に加熱して、気化させた水分を測定した。キャリアガスとして、窒素ガスを流量200mL/minで流し、測定時間を30分とした。また、カールフィッシャー試薬としてケムアクアを使用した。サンプル量は1.5gとした。
(実施例1)
<合剤シートの作製>
活物質としてd50=7μmのLi(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O(NMC532)と、導電助剤としてd50=0.04μmのカーボンブラックと、結着剤として粉末状PTFE-1と、d50=23μmの人造黒鉛を秤量し、高速ミキサー(500rpm、1分間)で混合した。撹拌は容器を10℃に冷やして行った。その後、高速ミキサー(10000rpm、3分間)で撹拌し、合剤を得た。撹拌は容器を60℃に加温して行った。合剤は質量比でNMC532:粉末状PTFE-1:カーボンブラック:人造黒鉛=95:2:2.7:0.3となるようにした。
得られた合剤を30g計量し、80℃に加熱した金属ロールに投入し圧延した。出口より得られた合剤もしくはバルク、合剤シートを再度、金属ロールに投入し圧延を繰り返し、圧延回数が1~8回の異なる加工を施したサンプルを作製した。圧延する工程はすべて同一のロール間距離および荷重下にて実施した。
(実施例2)
合剤の質量比をNMC532:粉末状PTFE-1:カーボンブラック:人造黒鉛=95:2:2.4:0.6にしたこと以外は実施例1と同様の工程で合剤シートを得た。
(実施例3)
合剤の質量比をNMC532:粉末状PTFE-1:カーボンブラック:人造黒鉛=95:2:2.1:0.9にしたこと以外は実施例1と同様の工程で合剤シートを得た。
(実施例4)
人造黒鉛にかえて活物質LiCoO(LCO)を分級し、d50=22μmで用いた。合剤は質量比でNMC532:粉末状PTFE-1:カーボンブラック:LCO=94.4:2:3:0.6となるようにした。その他の工程については実施例1と同様の工程で合剤シートを得た。
(実施例5)
合剤の質量比をNMC532:粉末状PTFE-1:カーボンブラック:LCO=93.8:2:3:1.2にしたこと以外は実施例4と同様の工程で合剤シートを得た。
(実施例6)
合剤の質量比をNMC532:粉末状PTFE-1:カーボンブラック:LCO=93.2:2:3:1.8にしたこと以外は実施例4と同様の工程で合剤シートを得た。
(比較例1)
合剤の質量比をNMC532:粉末状PTFE-1:カーボンブラック=95:2:3としたこと以外は実施例1と同様の工程で合剤シートを得た。
以下の方法でそれぞれ評価を行った。
[PTFEのフィブリル径(中央値)]
(1)走査型電子顕微鏡(S-4800型 日立製作所製)を用いて、シート状固体電解質層の拡大写真(7000倍)を撮影し画像を得る。
(2)この画像に水平方向に等間隔で2本の線を引き、画像を三等分する。
(3)上方の直線上にある全てのPTFE繊維について、PTFE繊維1本あたり3箇所の直径を測定し、平均した値を当該PTFE繊維の直径とする。測定する3箇所は、PTFE繊維と直線との交点、交点からそれぞれ上下0.5μmずつずらした場所を選択する。(未繊維化のPTFE一次粒子は除く)。
(4)上記(3)の作業を、下方の直線上にある全てのPTFE繊維に対して行う。
(5)1枚目の画像を起点に画面右方向に1mm移動し、再度撮影を行い、上記(3)及び(4)によりPTFE繊維の直径を測定する。これを繰り返し、測定した繊維数が80本を超えた時点で終了とする。
(6)上記測定した全てのPTFE繊維の直径の中央値をフィブリル径の大きさとした。
[シート化可能成形回数]
1~8回の圧延を行い作製したサンプルを目視で確認した。圧延を繰り返すことで、バルクが大きくなりはじめて25cm以上の面積の合剤シートが成形できるようになった圧延回数を評価値とした。
[強度測定]
引張試験機(島津製作所社製 オートグラフAGS-Xシリーズ AGS-100NX)を使用して、100mm/分の条件下、4mm幅の短冊状の合剤試験片にて測定した。チャック間距離は30mmとした。破断するまで変位を与え、測定した結果の最大応力を各サンプルの強度とした。表2では比較例1を100%として規格した。なお、合剤試験片は8回圧延を繰り返した合剤シートより切り出して用いた。試験は5回行い、平均値を強度とした。
[X線CTスキャン]
粒子Aおよび粒子Bの個数を確認するためのX線CTスキャンは合剤の3D画像を取得し、これを解析ソフトによって画像解析することによって行ったものである。なお、上記粒子A,粒子Bの体積%を、X線CTスキャンによって得られた結果を三次元画像化したものに基づいてフィブリル性樹脂、粒子A、粒子Bそれぞれが空間に占める体積を算出することによって測定した。
より具体的な方法は以下である。
まず、成形前の合剤ではΦ10mmの金型にサンプルを秤量し、12KNの加圧を行い、厚み1mm以下のペレットを成形した。これを測定サンプルとした。成形後の合剤シートでは5mm×5mm以上の大きさで切り出して、5mm×5mm×1mm以上の測定サンプルを作製した。測定サンプルの厚みが1mm以下である場合は重ね合わせることで1mm以上の測定サンプルとした。
次に、X線CTスキャン(株式会社リガク社製 高分解能3DX線顕微鏡 nano3DX)のサンプル固定装置に測定サンプルを設置し、サンプルの中心位置と測定用X線の焦点距離を20mmに設定した。最後にX線CTスキャンで1mm×1mm×1mmの範囲をスキャンし、解析ソフトによる解析を行った。
[粒子A平均個数確認]
得られた画像をTIFF形式でコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込み、3次元再構成した。これについて同程度のコントラストを持つ部分二値化した後に、analyze particle機能を利用して500μm×500μm×500μmの領域中に存在する20μm以上の粒径をもつ粒子の個数をカウントした。これを任意の被らない領域5点でカウントすることで125×10μmあたりの平均粒子個数を算出した。ここで得られた平均粒子個数を8倍することで1mmあたりの平均粒子個数とした。カウントは長径が20μm以上の粒子を検出し、測定領域の境界面において粒子が欠けており、粒子径が20μm未満となる粒子はカウントの対象とはしなかった。また、平均粒子個数の小数点以下は四捨五入した。
[粒子B平均個数確認]
得られた画像をTIFF形式でコンピューター上に保存し、画像解析ソフトImageJで読み込み、3次元再構成した。これについて同程度のコントラストを持つ部分二値化した後に、analyze particle機能を利用して500μm×500μm×500μmの領域中に存在する0.5μm以上20μm未満の粒径をもつ粒子の個数をカウントした。これを任意の被らない領域5点でカウントすることで125×10μmあたりの平均粒子個数を算出した。ここで得られた平均粒子個数を8倍することで1mmあたりの平均粒子個数とした。カウントは長径が0.5μm以上20μm未満の粒子を検出し、測定領域の境界面において粒子が欠けており、粒子径が0.5μm未満となる粒子はカウントの対象とはしなかった。また、平均粒個数の小数点以下は四捨五入した。
表2の結果から、実施例のシート成形性は比較例よりも少ない回数で成形が可能であり、粒子Aを混合することでフィブリル化が促進され容易にシート化可能であることが分かった。さらに、得られたシートは引張強度に優れることから、シートとしての強度が充分であることが明らかになった。
本開示の二次電池用合剤及びそれを含有する二次電池用合剤シートは、固体二次電池や液体電解液を含む二次電池の製造に使用することができる。
本開示は、フィブリル性樹脂と、粒径が20μm以上の粒子Aを含む二次電池用合剤であって、
上記粒子Aは、合剤1mmあたり平均80個以上含まれ
上記フィブリル性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂であり、
上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有することを特徴とする二次電池用合剤である。
上記粒子Aは、電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
上記粒子Aは、フィブリル性樹脂に対して1~4800体積%であることが好ましい。
粒子Aは、体積比で粒子Bより少ないことが好ましい。
上記二次電池用合剤は、実質的に液体媒体を含有しないことが好ましい。
本開示は、上記二次電池用合剤を含む二次電池用合剤シートでもある。
本開示は、フィブリル性樹脂及びd50が20μm以上の電池材料粒子を含む原料組成物を混合しながら、剪断力を付与する工程(1)、
前記工程(1)によって得られた二次電池用合剤をバルク状に成形する工程(2)及び
前記工程(2)によって得られたバルク状の二次電池用合剤をシート状に圧延する工程(3)
を有する二次電池用合剤シートの製造方法であって、上記電池材料粒子は、上記フィブリル性樹脂に対して3質量%以上使用し、
上記フィブリル性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂であり、得られた二次電池用合剤シートにおいて、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有することを特徴とする二次電池用合剤シートの製造方法でもある。
上記二次電池用合剤シートの製造方法は、上記工程(1)に先立って、原料を19℃以下の温度で混合する工程(0)を有することが好ましい。
本開示は、上記二次電池用合剤シートを有する二次電池でもある。

Claims (14)

  1. フィブリル性樹脂と、
    粒径が20μm以上の粒子Aを含む二次電池用合剤であって、
    前記粒子Aは、合剤1mmあたり平均80個以上含まれることを特徴とする二次電池用合剤。
  2. 前記粒子Aは、電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである請求項1記載の二次電池用合剤。
  3. 前記粒子Aは、フィブリル性樹脂に対して1~4800体積%である、請求項1又は2に記載の二次電池用合剤。
  4. さらに、粒径が0.5μm以上20μm未満の粒子Bを含む二次電池用合剤であって、
    前記粒子Bは、合剤1mmあたり80000個以上含まれる請求項1又は2に記載の二次電池用合剤。
  5. 前記粒子Bは、電極活物質、固体電解質、炭素材料及び非フィブリル性樹脂からなる群より選択される少なくとも1つである請求項4記載の二次電池用合剤。
  6. 前記粒子Bは、フィブリル性樹脂に対して400~50000体積%である、請求項4記載の二次電池用合剤。
  7. 粒子Aは、体積比で粒子Bより少ない請求項4記載の二次電池用合剤。
  8. フィブリル性樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂である請求項1又は2に記載の二次電池用合剤。
  9. ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル径(中央値)が100nm以下の繊維状構造を有する請求項8に記載の二次電池用合剤。
  10. 実質的に液体媒体を含有しない請求項1又は2に記載の二次電池用合剤。
  11. 請求項1又は2に記載の二次電池用合剤を含む二次電池用合剤シート。
  12. フィブリル性樹脂及びd50が20μm以上の電池材料粒子を含む原料組成物を混合しながら、剪断力を付与する工程(1)、
    前記工程(1)によって得られた二次電池用合剤をバルク状に成形する工程(2)及び
    前記工程(2)によって得られたバルク状の二次電池用合剤をシート状に圧延する工程(3)
    を有する二次電池用合剤シートの製造方法であって、
    前記電池材料粒子は、前記フィブリル性樹脂に対して3質量%以上使用する
    ことを特徴とする二次電池用合剤シートの製造方法。
  13. 前記工程(1)に先立って、原料を19℃以下の温度で混合する工程(0)を有する請求項12記載の二次電池用合剤シートの製造方法。
  14. 請求項11に記載の二次電池用合剤シートを有する二次電池。
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