JP2023128798A - シラン変性ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン組成物、シラン架橋ポリオレフィン、並びにこれらを用いた成形体、架橋成形体、及び三次元網状繊維集合体 - Google Patents

シラン変性ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン組成物、シラン架橋ポリオレフィン、並びにこれらを用いた成形体、架橋成形体、及び三次元網状繊維集合体 Download PDF

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Abstract

【課題】耐熱変形性、及び形状復元性に優れる架橋成形体や三次元網状繊維集合体を実現可能なシラン変性ポリオレフィン、該シラン変性ポリオレフィンを架橋したシラン架橋ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン組成物、並びに、これらを用いた成形体、架橋成形体及び三次元網状繊維集合体を提供することを目的とする。【解決手段】プロピレン単位が95質量%超、α-オレフィン単位が5質量%未満のプロピレン系重合体、プロピレン単位が50質量%以上95質量%以下、α-オレフィン単位が5質量%以上50質量%以下のプロピレン系重合体、及びエチレン系重合体を含むポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィンを用いる。【選択図】なし

Description

本発明は、シラン変性ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン組成物、シラン架橋ポリオレフィン、並びにこれらを用いた成形体、架橋成形体、及び三次元網状繊維集合体等に関する。
近年、熱可塑性樹脂をループ状に押出成形して得られた三次元網状繊維集合体を、クッション材等の緩衝材として使用した家具や、枕、ベッド用マット等の寝具が普及しつつある。
熱可塑性樹脂よりなる三次元網状繊維集合体を用いた寝具等の緩衝材においては、荷重により繊維の圧縮及び引張方向に歪みが生じ、この歪みが長時間、或いは繰り返し起こることにより、該緩衝材は元の厚みに形状回復せず徐々に圧縮方向に潰れクッション性が損なわれる所謂「ヘタリ」が発生することが問題となっている。ヘタリは、高温下で顕著となり、電気毛布等暖房寝具を使用した場合、寝具の一部が変形する等の不具合が生じることが知られている。これらは、三次元網状繊維集合体を構成する熱可塑性樹脂が、高温での荷重下において、流動又は塑性変形することに起因するものである。
これに対し、三次元網状繊維集合体を構成する熱可塑性樹脂の耐熱性を向上させるものとして、特定のプロピレン系重合体を用いることが知られている(特許文献1、2)。また、シラン変性ポリプロピレンを含有する技術も知られている(特許文献3)。
特許第5873225号公報 特許第5894716号公報 特開2018-83867号公報
ところで、医療・介護分野の寝具用途では、高温での滅菌に対する耐熱性や、消毒処理に対する形状保持性が求められるところ、特許文献1及び2並びに3の技術は、耐熱性及び形状保持性の観点で改良の余地があった。
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、耐熱変形性、及び形状復元性に優れる架橋成形体や三次元網状繊維集合体を実現可能なシラン変性ポリオレフィン、該シラン変性ポリオレフィンを架橋したシラン架橋ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン組成物、並びに、これらを用いた成形体、架橋成形体及び三次元網状繊維集合体を提供することを目的とする。
なお、ここでいう目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも、本発明の他の目的として位置づけることができる。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、プロピレン単位含有率が比較的多いプロピレン系重合体と、当該プロピレン系重合体よりプロピレン単位含有率が少ない、すなわち、特定の含有率でα-オレフィン単位を含有するプロピレン系重合体と、エチレン系重合体とを含有するポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィンが前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
[1]下記(a)~(c)を含むポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィン。
(a)プロピレン単位が95質量%より多く100質量%以下、α-オレフィン単位が0質量%以上5質量%未満であるプロピレン系重合体。
(b)プロピレン単位が50質量%以上95質量%以下、α-オレフィン単位が5質量%以上50質量%以下であるプロピレン系重合体。
(c)エチレン系重合体。
[2]前記シラン変性ポリオレフィンにおけるエチレン系重合体(c)の含有率が1~40質量%である、[1]に記載のシラン変性ポリオレフィン。
[3]前記シラン変性ポリオレフィンにおける(a)/(b)の質量比率が、0.05~5である、[1]又は[2]に記載のシラン変性ポリオレフィン。
[4]密度が0.850~0.930g/cmである、[1]~[3]のいずれか一項に記載のシラン変性ポリオレフィン。
[5]JIS K7210(1999)に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が5~80g/10分である、[1]~[4]のいずれか一項に記載のシラン変性ポリオレフィン。
[6][1]~[5]のいずれか一項に記載のシラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒とを含むシラン変性ポリオレフィン組成物。
[7][6]に記載のシラン変性ポリオレフィン組成物を成形してなる成形体。
[8][7]に記載の成形体を架橋させてなる架橋成形体。
[9]JIS K7171(2008)に準拠して測定した曲げ弾性率が300MPa以下である、[8]に記載の架橋成形体。
[10][6]に記載のシラン変性ポリオレフィン組成物を成形してなる三次元網状繊維集合体。
[11][10]に記載の三次元網状繊維集合体を架橋させてなる三次元網状繊維集合体の架橋成形体。
[12]下記(a)~(c)を含むポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィンを得る第1工程、
(a):プロピレン単位が95質量%より多く100質量%以下、α-オレフィン単位が0質量%以上5質量%未満であるプロピレン系重合体。
(b):プロピレン単位が50質量%以上95質量%以下、α-オレフィン単位が5質量%以上50質量%以下であるプロピレン系重合体。
(c):エチレン系重合体。
該シラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒とを含むシラン変性ポリオレフィン組成物を得る第2工程、
該シラン変性ポリオレフィン組成物を成形して成形体を得る第3工程、
該成形体を架橋させて架橋成形体を得る第4工程、
を有する、架橋成形体の製造方法。
この発明にかかるシラン変性ポリオレフィン、該シラン変性ポリオレフィンを架橋したシラン架橋ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン組成物は、耐熱変形性、及び形状復元性に優れるので、耐熱変形性、及び形状復元性に優れた成形体及びその架橋成形体、三次元網状繊維集合体及びその架橋成形体を得ることができる。そのため、例えば消毒のための高温蒸気と接触した場合でも、形状保持することができ、熱変形・ヘタリの問題を改善できる。よって、医療や介護用マットレスなど、消毒・滅菌などの工程を経て、繰り返し使用することを想定した製品においても、好適に使用することができる。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。また、本明細書において“質量%”と“重量%”、及び“質量部”と“重量部”とは、それぞれ同義である。
[シラン変性ポリオレフィン]
本発明のシラン変性ポリオレフィンは、下記(a)成分(以下、「プロピレン系重合体(a)」と記載することがある。)、下記(b)成分(以下、「プロピレン系重合体(b)」と記載することがある。)、下記(c)成分(以下、「エチレン系重合体(c)」と記載することがある。)を含むポリオレフィンをシラン変性したものである。
(a)成分:プロピレン単位が95質量%より多く100質量%以下、α-オレフィン単位が0質量%以上5質量%未満であるプロピレン系重合体。
(b)成分:プロピレン単位が50質量%以上95質量%以下、α-オレフィン単位が5質量%以上50質量%以下であるプロピレン系重合体。
(c)成分:エチレン系重合体。
[ポリオレフィン]
ポリオレフィンは、シラン変性ポリオレフィンの原料となるポリオレフィンの総称で、前記の(a)~(c)の各成分を含む。
[(a)成分]
(a)成分(プロピレン系重合体(a))は、(a)成分全体を100質量%とした場合に、プロピレン単位を95質量%より多く100質量%以下、α-オレフィン単位を0質量%以上5質量%未満含むプロピレン系重合体である。
このプロピレン系重合体(a)におけるα-オレフィン単位の含有率を5質量%未満とすることで、高い耐熱性を達成することができる。α-オレフィン単位の含有率が少ないほうがより好ましく、プロピレン単独重合体が特に好ましい。
前記プロピレン系重合体(a)は、プロピレン単独重合体、プロピレン単位とプロピレン以外のα-オレフィン単位及び/又はα-オレフィン以外の単量体単位とのプロピレン共重合体であってもよい。ここで、プロピレン共重合体とは、プロピレン単位を主成分とする共重合体を意味する(重合体を構成する単量体のうちで、質量基準で、プロピレン単位を最も多く含有することを意味する)。プロピレン共重合体は、プロピレンランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよい。
前記α-オレフィン単位を構成するα-オレフィンとしては、プロピレン以外のα-オレフィンがよく、エチレンを含んでもよい。このようなα-オレフィンの例としては、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、プロピレンを除く炭素数2~10のα-オレフィン、即ち、炭素数2、4~10のα-オレフィンが好ましく、より好ましくはエチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。プロピレン系重合体(a)には、プロピレン以外のα-オレフィン単位の1種のみが含まれていてもよく、任意の2種以上が含まれていてもよい。
前記α-オレフィン以外の単量体単位を構成する単量体としては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、スチレン誘導体等のビニル結合含有単量体の1種又は2種以上が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル」及び「メタクリル」の一方又は双方を示す。
プロピレン系重合体(a)の具体例としては、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・炭素数4~20のα-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・炭素数4~20のα-オレフィン共重合体等が挙げられる。
<物性及び測定条件>
プロピレン系重合体(a)の融点は、耐熱性の観点から70℃を超えることが好ましく、80℃以上であることがより好ましい。一方、成形時のブツ低減には、より低い温度の成形が有効であることから、プロピレン系重合体(a)の融点は通常170℃以下であり、165℃以下であることが好ましい。
本発明においてプロピレン系重合体(a)、後述のプロピレン系重合体(b)及びエチレン系重合体(c)の融点は、下記測定条件で測定される。
示差走査熱量計を用いて、JIS K7121(2010)に準じて、試料約5mgを加熱速度100℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で3分間保持した後、冷却速度10℃/分で-10℃まで降温し、その後、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温したときの融解ピークの頂点の温度を融点とする。
プロピレン系重合体(a)のJIS K7210(1999)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)は、成形性、特に三次元網状繊維集合体成形時のループコイルの形成しやすさの観点から、通常、0.4g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましく、80g/10分以下が好ましく、70g/10分以下がより好ましい。
プロピレン単独重合体であって、融点が60~90℃と比較的低いようなものの場合には、前記条件で測定されたMFRは30g/10分以上3000g/10分以下であることが好ましい。
プロピレン系重合体(a)のJIS K7112(1999)にて測定した密度は、成形体、特に三次元網状繊維集合体の柔軟性の観点から、0.840g/cm以上であることが好ましく、0.850g/cm以上であることがより好ましく、0.940g/cm以下であることが好ましく、0.930g/cm以下であることがより好ましい。
本発明に好適なプロピレン系重合体(a)としては市販品を用いることもでき、日本ポリプロ(株)製「ノバテック(登録商標)」シリーズ、「ウィンテック(登録商標)」シリーズ、(株)プライムポリマー製「プライムポリプロ(登録商標)」シリーズ、出光興産(株)製「エルモーデュ(登録商標)」シリーズ等の中から前記の特性に該当するものを適宜選択して用いることができる。
プロピレン系重合体(a)は、1種のみで構成されていてもよく、単量体単位組成や物性等の異なるものの2種以上で構成されていてもよい。
[(b)成分]
(b)成分(プロピレン系重合体(b))は、(b)成分全体を100質量%とした場合に、プロピレン単位を50質量%以上95質量%以下、α-オレフィン単位を5質量%以上50質量%以下含むプロピレン系重合体である。
プロピレン系重合体(b)として、α-オレフィン単位の含有率が5質量%以上の重合体を用いることで、プロピレン系重合体(a)とエチレン系重合体(c)との相溶性を向上させることができ、架橋成形体とした場合に、高温の圧縮永久歪みが良好となる。プロピレン系重合体(b)のα-オレフィン単位の含有率の下限は、前記観点から5.5質量%以上が好ましく、6質量%以上がより好ましい。プロピレン系重合体(b)のα-オレフィン単位の含有率の上限は、耐熱性の観点から40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましい。
プロピレン系重合体(b)は、プロピレン単位と、プロピレン以外のα-オレフィン単位とのプロピレン共重合体、プロピレン単位と、プロピレン以外のα-オレフィン単位とα-オレフィン以外の単量体単位とのプロピレン共重合体であってもよい。プロピレン共重合体は、プロピレンランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよい。
このα-オレフィン単位を構成するα-オレフィンとしては、前記プロピレン系重合体(a)で用いられるα-オレフィンを使用することができる。
前記α-オレフィン以外の単量体単位を構成する単量体としては、酢酸ビニル、ビニルアルコール、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、スチレン、スチレン誘導体等のビニル結合含有単量体の1種又は2種以上が挙げられる。
ただし、耐熱性の観点から、プロピレン系重合体(b)中のこれらのα-オレフィン以外の単量体単位の含有率は40質量%以下、特に35質量%以下であることが好ましい。
α-オレフィン以外の単量体単位を含有する場合も含めて、プロピレン系重合体(b)のプロピレン単位の含有率の下限は、耐熱性の観点から、51質量%以上であり、61質量%以上が好ましい。一方、プロピレン系重合体(a)とエチレン系重合体(c)との相溶性向上の観点から、プロピレン系重合体(b)のプロピレン単位の含有率の上限は、95質量%以下であり、94質量%以下であることが好ましい。
このプロピレン系重合体(b)の具体例としては、プロピレン・炭素数2、4~20のα-オレフィン共重合体、プロピレン・エチレン・炭素数4~20のα-オレフィン共重合体といったプロピレン共重合体が挙げられ、具体的には、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体が使用できる。
<物性>
プロピレン系重合体(b)の融点は耐熱性の観点から60℃を超えることが好ましく、70℃以上であることがより好ましい。一方、成形時のブツ低減には、より低い温度の成形が有効であることから、プロピレン系重合体(b)の融点は通常165℃以下であり、160℃以下であることが好ましい。
プロピレン系重合体(b)のJIS K7210(1999)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定したメルトフローレート(MFR)は、成形性、特に、三次元網状繊維集合体成形時のループコイルの形成しやすさの観点から、0.4g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましく、80g/10分以下が好ましく、70g/10分以下がより好ましい。
プロピレン系重合体(b)のJIS K7112(1999)にて測定した密度は、成形体、特に三次元網状繊維集合体の柔軟性の観点から、0.840g/cm以上であることが好ましく、0.850g/cm以上であることがより好ましく、0.940g/cm以下であることが好ましく、0.930g/cm以下であることがより好ましい。
本発明に好適なプロピレン系重合体(b)としては市販品を用いることもでき、三菱ケミカル(株)製「ゼラス(登録商標)」シリーズ、日本ポリプロ(株)製「ウェルネクス(登録商標)」シリーズ、「ニューコン(登録商標)」シリーズ、エクソンモービル社製「ビスタマックス(登録商標)」シリーズ、ダウケミカル社製「バーシファイ(登録商標)」シリーズ、三井化学(株)製「タフマー(登録商標)」シリーズ、LyondellBasell社製「アドフレックス(登録商標)」シリーズ等の中から前記の特性に該当するものを適宜選択して用いることができる。
プロピレン系重合体(b)は1種のみで構成されていてもよく、単量体単位組成や物性等の異なるものの2種以上で構成されていてもよい。
[(c)成分]
(a)、(b)の両成分に加えて、(c)成分(エチレン系重合体(c))を含むポリオレフィンを用いると、架橋性を高めることにより、耐久性や復元特性が向上し、特に高温での圧縮永久歪みに優れる。
エチレン系重合体(c)とは、エチレン単位を主成分とする重合体を意味する(重合体を構成する単量体のうちで、質量基準で、エチレン単位を最も多く含有する重合体を意味する)。
エチレン系重合体(c)としては、エチレン単独重合体、エチレン単位とエチレン以外のα-オレフィン単位及び/又はα-オレフィン以外の単量体単位とのエチレン共重合体であってもよい。エチレン共重合体において、α-オレフィン単位は、任意の2種以上が含まれていてもよい。
前記α-オレフィン単位を構成するα-オレフィンとしては、前記したα-オレフィン(但し、エチレンを外し、プロピレンを加える。)を例としてあげることができる。また、前記α-オレフィン以外の単量体単位を構成する単量体としては、前記のα-オレフィン以外の単量体をあげることができる。
エチレン系重合体(c)のエチレン単位の含有率は、エチレン系重合体全体に対して、51質量%以上100質量%以下であることが好ましい。エチレン単位以外のα-オレフィン単位及びα-オレフィン以外の単量体単位の含有割合は、同様の理由から、エチレン系重合体全体に対して、合計で0質量%以上49質量%以下であることが好ましい。
エチレン系重合体(c)としては、耐熱性と強度のバランスに優れる等の観点から、高圧法低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・炭素数3~20のα-オレフィン共重合体等が好ましく、エチレン・炭素数4~20のα-オレフィン共重合体がより好ましい。ここで、エチレン系重合体は、少なくとも1種以上のエチレン単位を含んでいればよいが、2種以上のエチレン単位を含んでいてもよい。なお、エチレン系重合体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
なお、エチレン系重合体の製造方法は、各種公知の方法で製造することができ、特に限定されない。例えば、使用する触媒の種類としては、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等が挙げられる。これらの中でも、融点、耐衝撃性、分子量分布等の観点から、メタロセン触媒により製造されたエチレン系重合体が好ましい。
<物性>
エチレン系重合体(c)の密度(JIS K6922-1,2:1997にて測定)は、特に限定されないが、耐熱性や柔軟性等の観点から、0.850~0.940g/cmが好ましく、より好ましくは0.860~0.935g/cm、さらに好ましくは0.870~0.930g/cmである。
エチレン系重合体(c)のメルトフローレート(MFR、JIS K7210(1999)に準拠して温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定)は、特に限定されないが、0.4~80g/10分が好ましく、より好ましくは0.5~70g/10分である。エチレン系重合体(c)のMFRが大きいと、成形性、特に三次元網状繊維集合体とするとき、複数のストランドの押出成形時のストランドのループが安定せず、ストランド径もストランド毎に異なるものとなり易く、得られる三次元網状繊維集合体の均一性が低下する傾向にある。また、エチレン系重合体(c)のMFRが小さいと、成形性、特に三次元網状繊維集合体とするとき、押出成形時のモーター負荷が大きく、樹脂圧力が上昇し、ストランド径が増加して、得られる三次元網状繊維集合体の柔軟性が低下する傾向にある。
本発明に好適なエチレン系重合体(c)としては市販品を用いることもでき、日本ポリエチレン(株)製「ノバテック(登録商標)」シリーズ、「カーネル(登録商標)」シリーズ、東ソー(株)製「ニポロン(登録商標)」シリーズ、ダウケミカル社製「エンゲージ(商標登録)」シリーズ、三井化学(株)製「タフマー(登録商標)」シリーズ、三井化学(株)製「エボリュー(商標登録)」シリーズ等から該当品を選択して用いることができる。
<ポリオレフィンの配合割合>
本発明に係るポリオレフィンは、プロピレン系重合体(a)、プロピレン系重合体(b)、エチレン系重合体(c)の合計100質量%に対し、エチレン系重合体(c)を1~40質量%含有することが好ましい。エチレン系重合体(c)を1質量%以上とすることにより、架橋成形体とした際の耐久性や復元特性を向上することができ、前記の観点より、5質量%以上がより好ましく、10質量%以上が更に好ましい。一方で、架橋成形体とした際の耐熱性の観点より、エチレン系重合体(c)の含有率は、40質量%以下であることが好ましく、同様の観点で、35質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下が更に好ましい。
また、プロピレン系重合体(a)、プロピレン系重合体(b)、エチレン系重合体(c)の合計100質量%に対し、エチレン系重合体(c)を5~40質量%含有すると同時に、プロピレン系重合体(a)/(b)の質量比率が、0.01~5を充足することがより好ましい。
プロピレン系重合体(a)/プロピレン系重合体(b)の割合について、エチレン系重合体(c)との相溶性等の観点から、0.05以上が好ましく、同様の観点より、0.1以上がより好ましく、0.15以上が特に好ましい。
一方、架橋成形体の耐熱性の観点から、5以下が好ましい。同様の観点より、4.9以下が好ましく、4.8以下が特に好ましい。
<ポリオレフィンの特性>
ポリオレフィンの密度(JIS K7112(1999)にて測定)は、特に限定されないが、クッション性や耐熱性及び耐熱変形性等の観点から、0.850~0.930g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.860~0.925g/cm、更に好ましくは0.870~0.920g/cmである。
原料ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR、JIS K7210(1999)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定)は、特に限定されないが、1~60g/10分が好ましく、より好ましくは2~59g/10分、更に好ましくは3~58g/10分である。原料ポリオレフィンのMFRが前記上限以下であれば、三次元網状繊維集合体成形時の溶融張力が低すぎず、ストランドが延伸されにくく、安定した成形体を得やすい傾向がある。原料ポリオレフィンのMFRが前記下限以上であれば、三次元網状繊維集合体とするとき、溶融張力が高すぎるためにストランド径が増加しすぎて、溶融状態のストランドが変形しにくくループ形成が困難となることがなく、安定した成形体を得やすい傾向がある。
<シラン変性>
本発明のシラン変性ポリオレフィンは、上述したポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィンである。
シラン変性は、シラン化合物によるグラフト変性が好適である。グラフト導入されるシラン化合物は、アルコキシ基を有するシラン化合物である限り、特に限定されない。シラン変性ポリオレフィンのシラン変性部位は、下記式(1)で表される不飽和シラン化合物の重合残基であることが好ましい。すなわち、シラン変性に用いられるシラン化合物としては、下記式(1)で表される不飽和シラン化合物が好ましい。
R-Si(R’) ・・・(1)
前記式(1)中、Rはエチレン性不飽和炭化水素基であり、R’は互いに独立して炭素数1~10の炭化水素基又は炭素数1~10のアルコキシ基であり、R’のうちの少なくとも1つは炭素数1~10のアルコキシ基である。なお、Rは、ポリオレフィンへのグラフト導入時に、結合部位となる。
前記式(1)において、Rは、好ましくは炭素数2~10のエチレン性不飽和炭化水素基であり、より好ましくは炭素数2~6のエチレン性不飽和炭化水素基である。具体的には、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基が挙げられる。
前記式(1)において、R’は好ましくは炭素数1~6の炭化水素基又は炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4の炭化水素基又は炭素数1~4のアルコキシ基である。また、R’のうちの少なくとも1つは、好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基であり、より好ましくは炭素数1~4のアルコキシ基である。
前記式(1)において、R’の炭素数1~10の炭化水素基は、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、芳香族炭化水素基のいずれであってもよいが、脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、R’の炭素数1~10のアルコキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよいが、直鎖状又は分岐状であることが好ましい。R’の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t-ブチル基、n-ブチル基、i-ブチル基、シクロヘキシル基等に代表されるアルキル基、又はフェニル基等に代表されるアリール基が挙げられるが、これらに特に限定されない。R’のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、β-メトキシエトキシ基が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記式(1)において、3つのR’のうち少なくとも1つはアルコキシ基であるが、2つ以上のR’がアルコキシ基であることが好ましく、3つ全てのR’がアルコキシ基であることがより好ましい。
前記不飽和シラン化合物の具体例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロペニルトリメトキシシラン等に代表されるビニルトリアルコキシシランが特に好ましい。これはエチレン性不飽和炭化水素基によって原料プロピレン系重合体のシラン変性が容易であることに加えて、3つのアルコキシ基によって後述の架橋反応を生じさせることができるからである。すなわち、原料プロピレン系重合体にグラフト導入されたアルコキシシランのアルコキシ基が、シラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解してシラノール基を生成させ、かかるシラノール基同士が脱水縮合することにより、シラン変性ポリオレフィン同士が結合する架橋反応が起こる。なお、不飽和シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
シラン変性ポリオレフィン中のシラン化合物由来の構成要素の含有率は、特に限定されないが、成形時の粘度や取扱性、耐熱性、耐熱変形性、及び形状保持性等の観点から、シラン変性ポリオレフィンの総量に対して、0.1~5.0質量%であることが好ましい。シラン変性ポリオレフィン中のシラン化合物由来の構成要素の含有率は、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは0.3質量%以上であり、一方、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下である。
シラン変性ポリオレフィン中のシラン化合物由来の構成要素の含有率を上記の範囲とすることにより、シラン変性ポリオレフィン組成物の成形時のブツ発生を抑制しつつ、シラン架橋ポリオレフィンの耐熱変形性、形状復元性等の物性を向上することができる。
なお、シラン変性ポリオレフィン中のシラン化合物の含有率は、変性前のポリオレフィンの総量に対する、シラン化合物(導入される不飽和シラン化合物)の質量割合である。
本発明のシラン変性ポリオレフィンは、本発明の効果を損なわない範囲で、シラン化合物(不飽和シラン化合物)以外の化合物(以下、「他のグラフト化合物」ともいう。)がグラフトされていてもよい。他のグラフト化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等の不飽和カルボン酸、及び、これらの酸無水物が挙げられるが、これらに特に限定されない。
本発明のシラン変性ポリオレフィンは、上述したとおり、ポリオレフィンにシラン化合物をグラフト導入してシラン変性することにより製造することができる。シラン変性の方法は、公知の手法に従って行うことができ、特に限定されない。例えば、溶液変性、溶融変性、電子線や電離放射線の照射による固相変性、超臨界流体中での変性が好適に用いられる。これらの中でも、設備やコスト競争力に優れた溶融変性がより好ましく、連続生産性に優れた押出機を用いた溶融混練変性が更に好ましい。溶融混練変性に用いられる装置としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサーが挙げられる。これらの中でも連続生産性に優れた単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機が好ましい。
一般に、ポリオレフィンへのシラン化合物のグラフト導入は、ポリオレフィンの炭素-水素結合を開裂させて炭素ラジカルを発生させ、これに不飽和官能基が付加する、といったグラフト重合反応によって行うことができる。炭素ラジカルの発生源としては、上述した電子線や電離放射線の他、高温とする方法や、有機、無機過酸化物等のラジカル発生剤を用いることで行うこともできる。コストや操作性の観点からは、有機過酸化物を用いることが好ましい。
本発明のシラン変性ポリオレフィンを製造する際に用いるラジカル発生剤としては、特に限定されないが、例えば、ハイドロパーオキサイド群、ジアルキルパーオキサイド群、ジアシルパーオキサイド群、パーオキシエステル群及びケトンパーオキサイド群に含まれる有機過酸化物、及びアゾ化合物が挙げられる。
具体的には、前記ハイドロパーオキサイド群としては、キュメンハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイドが挙げられる。また、前記ジアルキルパーオキサイド群としては、ジクミルパーオキサイド、ジターシャリーブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジターシャリーブチルパーオキシヘキシン-3が挙げられる。さらに、前記ジアシルパーオキサイド群としては、ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドが挙げられる。さらにまた、前記パーオキシエステル群としては、ターシャリーパーオキシアセテート、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエイト、ターシャリーブチルパーオキシイソプロピルカーボネートが挙げられる。また、前記ケトンパーオキサイド群としては、シクロヘキサノンパーオキサイドが挙げられる。さらに、前記アゾ化合物としては、アゾビスイソブチロニトリル、メチルアゾイソブチレートが挙げられる。これらのラジカル発生剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
一般的に用いられる押出機を用いた溶融混練変性の操作としては、ポリオレフィン、グラフト導入されるシラン化合物(例えば不飽和シラン化合物)、及び必要に応じて有機過酸化物等のラジカル発生剤を配合し、ブレンドして混練機や押出機に投入し、加熱溶融混練しながら押出しを行い、ダイスから出てくる溶融樹脂を水槽等で冷却してシラン変性ポリオレフィンを得る。
ポリオレフィンとグラフト導入されるシラン化合物(例えば不飽和シラン化合物)との配合割合は、所望するシラン化合物の導入割合に応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。所望するシラン変性量を得るとともに未反応物の残留を低減する等の観点から、ポリオレフィン100質量部に対し、シラン化合物の配合割合は0.3~10質量部が好ましく、より好ましくは0.5~5質量部である。
また、必要に応じて配合するラジカル発生剤の使用量は、適宜調整することができ、特に限定されないが、有機過酸化物の場合には、所望するシラン変性量を得るとともに、得られるシラン変性ポリオレフィンの劣化を抑制する等の観点から、シラン化合物(例えば不飽和シラン化合物)100質量部に対し、有機過酸化物の配合割合は0.001~10質量部が好ましく、より好ましくは0.01~5質量部である。
また、溶融押出変性条件としては、例えば単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機を用いる場合には、150~300℃程度の温度で押出すことが好ましい。
<配合剤>
本発明のシラン変性ポリオレフィンには、樹脂組成物に常用されている配合剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合してもよい。このような配合剤としては、例えば熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、防錆剤、粘度調整剤、顔料を挙げることができる。
前記酸化防止剤の具体例としては、フェノール系、硫黄系、又はリン系の酸化防止剤が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記酸化防止剤の配合量は、特に限定されないが、シラン変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.01~2.0質量部が好ましく、より好ましくは0.1~1.0質量部である。
前記紫外線吸収剤の具体例としては、2-ヒドロキシ-4-ノルマル-オクチルオキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-4-カルボキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-N-オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系;2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアリゾール系;フェニルサルチレート、p-オクチルフェニルサルチレート等のサリチル酸エステル系のものが挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記紫外線吸収剤の配合量は、特に限定されないが、シラン変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.01~1.0質量部が好ましく、より好ましくは0.02~0.5質量部である。
前記粘度調整剤としては、ゴム配合油、具体的にはパラフィン系プロセスオイルが好ましい。
前記粘度調整剤の配合量は、シラン変性ポリオレフィン100質量部に対して、0.5~5質量部が好ましく、より好ましくは0.8~3質量部である。
<物性>
本発明のシラン変性ポリオレフィンの融点は、特に限定されないが、120℃以上が好ましく、より好ましくは125℃以上、更に好ましくは130℃以上である。融点が前記下限値以上であると、耐熱性が高く、得られる架橋成形体において、良好な耐熱性を持つ製品を作製しやすくなる。また、融点を前記下限値以上とすることで、高温での使用時にヘタリが生じにくい傾向にある。一方、本発明のシラン変性ポリオレフィンの融点の上限は特に限定されないが、通常165℃以下である。
シラン変性ポリオレフィンの融点は、示差走査熱量計を用いて、JIS K7121(2010)に準じて、試料約5mgを加熱速度100℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で3分間保持した後、冷却速度10℃/分で-10℃まで降温し、その後、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから補外ピーク終了点(℃)を算出し融点としたものを用いる。
本発明のシラン変性ポリオレフィンのメルトフローレート(MFR、JIS K7210(1999)に準拠して温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定)は、特に限定されないが、5g/10分以上が好ましく、より好ましくは6g/10分以上、更に好ましくは7g/10分以上であり、80g/10分以下が好ましく、より好ましくは79g/10分以下、更に好ましくは78g/10分以下である。
MFRが前記下限値以上であると、ダイスウェル及び溶融張力が低いためストランド径が増加しにくく、得られる三次元網状繊維集合体において集合体側面に沿ってループを形成しやすく、良好な反発感を持つ製品を作製しやすい傾向にある。また、MFRが前記上限値以下であると、複数のストランドを押出成形する際、ストランドの吐出が安定しやすく、複数のストランドが丸まって固まった樹脂塊を形成し難い傾向にある。またループ形成及びストランドの融着が安定し、ストランド径も均一となりやすく、得られる三次元網状繊維集合体の均一性が良好となり、製品としての性能、品質が向上されやすい傾向にある。
本発明のシラン変性ポリオレフィンの密度は、プレス成形した厚さ2mmのシート状の試験片を用い、JIS K7112(1999)に準拠して測定される。本発明のシラン変性ポリオレフィンの密度は、特に限定されないが、三次元網状繊維集合体としたときの柔軟性の観点から、0.850g/cm以上が好ましく、より好ましくは0.855g/cm以上、更に好ましくは0.860g/cm以上であり、0.930g/cm以下が好ましく、より好ましくは0.925g/cm以下、更に好ましくは0.920g/cm以下である。
[シラン変性ポリオレフィン組成物]
本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物は、上述した本発明のシラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒とを少なくとも含む組成物である。
<シラノール縮合触媒>
ここで用いるシラノール縮合触媒としては、金属有機酸塩、チタネート、ホウ酸塩、有機アミン、アンモニウム塩、ホスホニウム塩、無機酸及び有機酸、並びに無機酸エステルからなる群から選択される1種以上の化合物が挙げられる。
前記金属有機酸塩としては、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、酢酸第一錫、オクタン酸第一錫、ナフテン酸コバルト、オクチル酸鉛、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、カプリル酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸鉄、オクチル酸鉄、ステアリン酸鉄等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記チタネートとしては、チタン酸テトラブチルエステル、チタン酸テトラノニルエステル、ビス(アセチルアセトニトリル)ジ-イソプロピルチタネート等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記有機アミンとしては、エチルアミン、ジブチルアミン、ヘキシルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルソーヤアミン、テトラメチルグアニジン、ピリジン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記アンモニウム塩としては、炭酸アンモニウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記ホスホニウム塩としては、テトラメチルホスホニウムハイドロオキサイド等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記無機酸及び有機酸としては、硫酸、塩酸、酢酸、ステアリン酸、マレイン酸、トルエンスルホン酸、アルキルナフチルスルホン酸等のスルホン酸化合物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
前記無機酸エステルとしては、特に限定されるものではないが、リン酸エステル等が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは金属有機酸塩、スルホン酸化合物、リン酸エステルが挙げられ、更に好ましくは錫の金属カルボン酸塩、例えばジオクチル錫ジラウレート、アルキルナフチルスルホン酸、エチルヘキシルリン酸エステルが挙げられる。なお、シラノール縮合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物中のシラノール縮合触媒の含有量は、特に限定されないが、架橋前の成形品の成形時の早期架橋を抑制するとともにシラン架橋ポリオレフィン作製時の架橋反応を促進させ、得られる三次元網状繊維集合体等の耐熱性を向上させる等の観点から、シラン変性ポリオレフィン100質量部に対し、0.01~0.5質量部が好ましく、より好ましくは0.03~0.3質量部である。
なお、シラノール縮合触媒は、樹脂とシラノール縮合触媒とを配合したシラノール縮合触媒含有マスターバッチとして用いることが好ましい。このシラノール縮合触媒含有マスターバッチに用いることのできる樹脂としては、例えば、プロピレンの重合体であるホモポリプロピレン、プロピレンと、エチレン又はブテン、ヘキセン、オクテン等のα-オレフィン(ただし、プロピレンを除く)との共重合体や、エチレン共重合体が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、柔軟性等の観点から、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレン共重合が好ましい。ここで、プロピレン・エチレン共重合体は、プロピレン60~98質量%と、エチレン2~40質量%とを共重合させたものであることが好ましい。なお、シラノール縮合触媒のマスターバッチにおいて、これらのポリプロピレンの1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
シラノール縮合触媒を、樹脂とシラノール縮合触媒とを配合したシラノール縮合触媒含有マスターバッチとして用いる場合、マスターバッチ中のシラノール縮合触媒の含有率には特に制限はないが、通常0.1~5.0質量%程度とすることが好ましい。なお、シラノール縮合触媒含有マスターバッチとしては市販品を用いることができ、例えば、三菱ケミカル(株)製「PZ010」を用いることができる。
<その他の成分>
本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物は、上述したシラン変性ポリオレフィン及びシラノール縮合触媒以外に、その他の成分として、各種の添加剤やシラン変性ポリオレフィン以外の樹脂(シラノール縮合触媒含有マスターバッチ中のポリオレフィンや、シラノール縮合触媒含有マスターバッチ中のポリオレフィン以外の樹脂を含む)、本発明の効果を損なわない範囲で含有していてもよい。例えば、本発明のシラン変性ポリオレフィンに配合し得る、前述の配合剤を含有していてもよい。
本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物が上述したシラン変性ポリオレフィン及びシラノール縮合触媒以外その他の成分を含有する場合、シラン変性ポリオレフィン及びシラノール縮合触媒を含有することによる効果を十分に得る上で、他の成分の含有量は、シラン変性ポリオレフィン100質量部に対して20量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましい。
その他の成分の具体例としては、ポリオレフィン以外の熱可塑性固形樹脂、固形状ゴム、液状樹脂、軟化剤、可塑剤等が挙げられる。これらは、接着性或いは相溶性等を改善するための粘着付与剤として用いることもできる。例えば、ロジンとその誘導体、テルペン樹脂や石油樹脂とその誘導体、アルキッド樹脂、アルキルフェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、クマロンインデン樹脂、合成テルペン樹脂、アルキレン樹脂、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリブテン、イソブチレンとブタジエンの共重合物、鉱油、プロセスオイル、パイン油、アントラセン油、松根油、可塑剤、動植物油、重合油等を含有していてもよい。
[シラン架橋ポリオレフィン]
本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物は、水含有雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させ、シラン架橋ポリオレフィンとすることができる。水含有雰囲気中に曝す方法は、各種の条件を採用することができ、特に限定されない。例えば、水分を含む空気中に放置する方法、水蒸気を含む空気を送風する方法、水浴中に浸漬する方法、温水を霧状に散水させる方法が挙げられる。
詳述すると、本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物においては、シラン変性ポリオレフィンにグラフト導入されたシラン化合物(例えば不飽和シラン化合物)由来の加水分解可能なアルコキシ基が、シラノール縮合触媒の存在下、水と反応して加水分解することによりシラノール基が生成し、更にシラノール基同士が脱水縮合することにより、架橋反応が進行し、シラン変性ポリオレフィン同士が結合して、シラン架橋ポリオレフィンを生成する。
架橋条件は水含有雰囲気中に曝す条件によって決まり、特に限定されないが、通常20~130℃の温度範囲、且つ10分~1週間の範囲が好ましく、より好ましくは20~130℃の温度範囲、且つ1時間~160時間の範囲である。水分を含む空気を使用する場合、相対湿度は1~100%の範囲内で適宜調整すればよい。
[成形体・架橋成形体]
上述した架橋処理前に、本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物を押出成形、射出成形、プレス成形等の各種成形方法により所定形状に成形することで、(未架橋の)成形体とすることができる。そして、得られた(未架橋の)成形体を水含有雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させ、架橋成形体(シラン架橋ポリオレフィン成形体)とすることができる。
[三次元網状繊維集合体及びその架橋成形体]
本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物を押出成形してストランドとし、次いでこのストランド同士を熱融着してから、水冷却することにより、三次元網状繊維集合体とすることができる。例えば国際公開第2012/035736号に記載されているような製造装置及び成形方法により、シラン変性ポリオレフィン組成物を三次元網状繊維集合体に成形することができる。このようにして得られた三次元網状繊維集合体は、前述したように水雰囲気に曝し、シラン架橋三次元網状成形体として用いることが好ましい。
エチレン・α-オレフィン共重合体等のエチレン系共重合体を用いた成形体では、耐熱性に課題が残り、特定のプロピレン系重合体やシラン変性ポリプロピレンを使用することにより改善は見られたものの、高温での滅菌等に耐えられる耐熱性は未だ得られていない。本発明のシラン変性ポリオレフィン組成物は、成形時には架橋せずに成形することができるため、成形直後のループ性、熱接着性等特殊な成形性を必要とする三次元網状繊維集合体を効率よく成形することができる。更に、120℃における圧縮永久歪に大きな改善が見られ、本組成物を使用することで、高温での荷重下でもヘタリの問題が大きく改善され、優れたクッション性を示す三次元網状繊維集合体を提供することができる。
また、この三次元網状繊維集合体を、水含有雰囲気中に曝すことにより、シラノール基間の架橋反応を進行させ、三次元網状繊維集合体の架橋成形体、すなわち、架橋された三次元網状繊維集合体とすることができる。
[シラン架橋ポリオレフィンの物性]
以下に挙げる本発明のシラン架橋ポリオレフィンの物性の評価に用いる試験片は、具体的には、後掲の実施例の項に記載の方法で製造される。
本発明のシラン架橋ポリオレフィンの曲げ弾性率は、JIS K7171(2008)に準拠して、射出成形した厚さ4mm、長さ80mm、幅10mmの試験片を用いて測定できる。
本発明のシラン架橋ポリオレフィンの曲げ弾性率の下限は、30MPa以上が好ましく、より好ましくは40MPa以上、更に好ましくは50MPa以上である。一方、本発明のシラン架橋ポリオレフィンの曲げ弾性率の上限は、300MPa以下が好ましく、より好ましくは290MPa以下、更に好ましくは280MPa以下である。曲げ弾性率が前記下限値以上であることで、得られる三次元網状繊維集合体において、荷重に耐え得る十分な強度を獲得しやすく、ヘタリが生じにくい傾向にある。また、曲げ弾性率が前記上限値以下であることで、得られる三次元網状繊維集合体において、使用するのに十分な柔軟性を得やすい傾向にある。
本発明のシラン架橋ポリオレフィンの圧縮永久歪みは、射出成形した厚さ2mmのシート状成形体を直径30mmの円形状に打ち抜き、これを6枚重ね、JIS K6262(2013)に準拠して、スペーサーにより25%圧縮した状態で、試験温度120℃で22時間熱処理を行い、圧縮を解き、23℃、50%RHの恒温室に30分放置した後、厚さを測定し、圧縮永久歪み(CS:単位%)を計算したものである。本発明のシラン架橋ポリオレフィンの圧縮永久歪みは、特に限定されないが、90%以下が好ましく、より好ましくは89%以下、更に好ましくは88%以下である。圧縮永久歪が前記上限値以下であることで、耐熱変形性、及び形状復元性に優れ、得られる三次元網状繊維集合体において、ヘタリが生じにくい傾向にある。圧縮永久歪みの下限には特に制限はない。
[架橋成形体の製造方法]
本発明の架橋成形体は、上述した(a)~(c)を含むポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィンを得る工程、該シラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒とを含むシラン変性ポリオレフィン組成物を得る工程、該シラン変性ポリオレフィン組成物を成形して成形体を得る工程、該成形体を架橋させて架橋成形体を得る工程、を有する架橋成形体の製造方法により得られる。
[三次元網状繊維集合体の架橋成形体の製造方法]
本発明の三次元網状繊維集合体の架橋成形体は、上述した(a)~(c)を含むポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィンを得る工程、該シラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒とを含むシラン変性ポリオレフィン組成物を得る工程、該シラン変性ポリオレフィン組成物を押出成形して得られるストランド同士を熱融着させた状態で固化することにより三次元網状繊維集合体を得る工程、該三次元網状繊維集合体を架橋させて三次元網状繊維集合体の架橋成形体を得る工程、を有する三次元網状繊維集合体の架橋成形体の製造方法により得られる。
[用途]
本発明のシラン変性ポリオレフィン、シラン変性ポリオレフィン組成物及びシラン架橋ポリオレフィンの用途は、特に限定されない。例えば家具、ベッド用マット、枕等の寝具;車両用、船舶等の乗物用座席等のクッション材として好適に用いることができる。
なお、これらの用途に適用される場合、前述の三次元網状繊維集合体として用いることが好ましい。この三次元網状繊維集合体は、必要に応じて、他の材料との積層体として用いることもできる。ただし、上述したとおり、成形体の形状は、三次元網状繊維集合体に限定されるものではなく、用途に応じて所定の形状に成形することができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
[原料]
実施例及び比較例で用いた原料を以下に示す。
なお、シラン変性に使用する原料ポリオレフィンの密度とMFRは、原料プロピレン系重合体及びエチレン系共重合体のそれぞれの密度及びMFRと配合割合とから比例計算により求められる値とほぼ一致する。
<プロピレン系重合体(a)>
・PP-a1:ノバテックPP(登録商標)MA3Q(日本ポリプロ(株)製、プロピレン単独重合体、MFR:11g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度:0.90g、融点:160℃を使用した。
・PP-a2:エルモーデュ(登録商標)S400(出光興産(株)製、プロピレン単独重合体、MFR:2600g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度:0.87g/cm)、融点:80℃を使用した。
・PP-a3:ノバテック(登録商標)EG8B(日本ポリプロ(株)製、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン単位:97質量%、α-オレフィン単位: 3質量%、MFR:0.8g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度:0.90g/cm)、融点:143℃を使用した。
<プロピレン系重合体(b)>
・PP-b1:アドフレックス(登録商標)V109F(LyondellBasell社製、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン単位:93質量%、α-オレフィン単位:7質量%、MFR:12g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度:0.88g/cm)、融点:142℃を使用した。
・PP-b2:タフマー(登録商標)PN-2060(三井化学(株)製、プロピレン・エチレン・ブテン共重合体、プロピレン単位:84質量%、α-オレフィン単位:16質量%、MFR:6g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度:0.87g/cm)、融点:160℃を使用した。
<エチレン系重合体(c)>
・PE-c1:カーネル(登録商標)KS560T(日本ポリエチレン(株)製、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体(エチレン単位を主成分とする)、MFR:16.5g/10分(190℃、2.16kg荷重)、密度:0.90g/cm)、を使用した。
・PE-c2:SABIC LLDPE(登録商標)M200024(サビック社製、エチレン・ブテン共重合体(エチレン単位を主成分とする)、MFR:20g/10分(190℃、2.16kg荷重)、密度:0.92g/cm)を使用した。
・PE-c3:エンゲージ(登録商標)8100(ダウケミカル社製、エチレン・オクテン共重合体(エチレン単位を主成分とする)、MFR:1g/10分(190℃、2.16kg荷重)、密度:0.87g/cm)を使用した。
・PE-c4:エンゲージ(登録商標)XLT8677(ダウケミカル社製、エチレン・オクテン共重合体(エチレン単位を主成分とする)、MFR:0.5g/10分(190℃、2.16kg荷重)、密度:0.87g/cm)を使用した。
<触媒マスターバッチ(MB)>
・触媒MB:PZ010(三菱ケミカル(株)製、錫触媒(ジオクチル錫ジラウレート)を含有するホモポリプロピレン、ホモポリプロピレンのMFR:16g/10分(230℃、2.16kg荷重)、密度:0.90g/cm)を使用した。
[測定・評価方法]
各種物性、特性の測定・評価方法は以下の通りである。
〔シラン変性ポリオレフィンの測定〕
<融点>
(株)日立ハイテクサイエンス製の示差走査熱量計、商品名「DSC6220」を用いて、JIS K7121(2010)に準じて、試料約5mgを加熱速度100℃/分で20℃から200℃まで昇温し、200℃で3分間保持した後、冷却速度10℃/分で-10℃まで降温し、その後、加熱速度10℃/分で200℃まで昇温した時に測定されたサーモグラムから補外ピーク終了点(℃)を算出し融点とした。
<メルトフローレート(MFR)>
JIS K7210(1999)に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定した。
<密度>
シラン変性ポリオレフィンをプレス成形して得られた厚さ2mmのシート状の試験片を用い、JIS K7112(1999)に準拠して測定した。
〔シラン架橋ポリオレフィンの評価〕
<曲げ弾性率>
JIS K7171(2008)に準拠して、射出成形した厚さ4mm、長さ80mm、幅10mmのシラン架橋試験片を用いて測定した。
<圧縮永久歪み>
射出成形した厚さ2mmのシラン架橋シート状成形体を直径30mmの円形状に打ち抜き、これを6枚重ね、JIS K6262(2013)に準拠して、スペーサーにより25%圧縮した状態で、試験温度120℃で22時間熱処理を行い、圧縮を解き、23℃、50%RHの恒温室に30分放置した後、厚さを測定し、圧縮永久歪み(CS:単位%)をそれぞれ計算した。圧縮永久歪みの値は低い方が良好である。
[実施例1]
PP-a1を10質量部、PP-a2を10質量部、PP-b2を70質量部、PE-c1を10質量部、シラン化合物として不飽和シラン化合物であるビニルトリメトキシシラン(VTMOS)を1.0質量部、ラジカル発生剤として有機過酸化物である日油(株)製パーブチルDを0.01量部、ブレンダーにて攪拌した。その後、温度200℃に設定された単軸スクリュー押出機(アイ・ケー・ジー社製、PMS50)に投入し、ノズルより出てきたストランドを水槽にて冷却固化させた後にペレット状にカッティングして、シラン変性ポリオレフィンAを得た。得られたシラン変性ポリオレフィンAについて、前述の測定・評価法に従って融点、MFR、密度を測定した。結果を表1に示す。
前記で得られたシラン変性ポリオレフィンA100質量部に対して、触媒MBとしてPZ010を5質量部加えてシラン変性ポリオレフィン組成物Aを得た。これを射出成形機に投入し、200℃の条件下で厚さ4mm又は2mmのシート状に成形した。このシート状成形体を85℃、85%RHの恒温恒湿機中に16時間放置し、シラン架橋ポリオレフィンAを含むシート状成形体を得た。得られたシート状成形体を用いて、前述の測定・評価法に従って曲げ弾性率、圧縮永久歪みを測定した。結果を表1に示す。
[実施例2~6、比較例1~3]
表1に記載の原料配合組成とした以外は実施例1と同様にして、それぞれシラン変性ポリオレフィンB~I、シラン架橋ポリオレフィンB~Iを含むシート状成形体を製造し、評価測定を実施した。結果を表1に示す。
なお、比較例においては、ラジカル発生剤(有機過酸化物)として、パーブチルO(日油(株))製を用いた。
Figure 2023128798000001
前記の結果より次のことが分かった。
実施例1~6のシラン変性ポリオレフィンA~Fは、MFR及び密度が適切であるため、三次元網状繊維集合体への成形性が良好であり、優れたクッション性が期待できる。また、実施例1~6のシラン架橋ポリオレフィンA~Fは、耐熱変形性及び形状復元性の指標となる120℃における圧縮永久歪みにおいて歪みが小さかった。また、柔軟性の指標となる曲げ弾性率は、三次元網状繊維集合体として使用するのに十分な柔軟性を示す数値であった。
原料にエチレン系重合体(c)を用いていない比較例1のシラン変性ポリオレフィンGはMFRおよび密度が三次元網状繊維集合体への成形には好適であるが、シラン架橋ポリオレフィンGの120℃の圧縮永久歪に劣る結果となった。
原料にプロピレン系重合体(b)を用いていない比較例2および3に記載のシラン変性ポリオレフィンHおよびIでは、密度は三次元網状繊維集合体への成形には好適であるが、MFRが低く、三次元網状繊維集合体を成形する際にストランド径が太くなり、外観の良い成形体を得られないと考えられる。また、比較例2および3に記載のシラン架橋ポリオレフィンHおよびIでは、120℃の圧縮永久歪に劣る結果となった。比較例2及び3では、プロピレン系重合体(b)を用いておらず、プロピレン系重合体(a)とエチレン系重合体(c)との相溶性が悪いためと考えられる。
以上のことから、本発明のシラン変性ポリオレフィンは、三次元網状繊維集合体の成形性に優れ、このシラン変性ポリオレフィンを架橋処理したシラン架橋ポリオレフィンは柔軟性、耐熱変形性、形状復元性にも優れることが示された。
本発明のシラン変性ポリオレフィンは、耐久性及び耐熱性に優れるため、高温条件下でも圧縮永久歪みが小さく、医療や介護用マットレスの消毒・滅菌など、長時間の高温環境下においても使用可能である、耐熱変形性、及び形状復元性に優れるシラン架橋ポリオレフィンを与えることができる。このため、本発明のシラン変性ポリオレフィン、及びシラン変性ポリオレフィン組成物、並びに、これらを用いた成形体、架橋成形体及び三次元網状繊維集合体等は、例えば家具、ベッド用マット、枕等の寝具;車両用、船舶用座席等のクッション材の構成材料等において、広く且つ有効に利用することができる。

Claims (12)

  1. 下記(a)~(c)を含むポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィン。
    (a)プロピレン単位が95質量%より多く100質量%以下、α-オレフィン単位が0質量%以上5質量%未満であるプロピレン系重合体。
    (b)プロピレン単位が50質量%以上95質量%以下、α-オレフィン単位が5質量%以上50質量%以下であるプロピレン系重合体。
    (c)エチレン系重合体。
  2. 前記シラン変性ポリオレフィンにおけるエチレン系重合体(c)の含有率が1~40質量%である、請求項1に記載のシラン変性ポリオレフィン。
  3. 前記シラン変性ポリオレフィンにおける(a)/(b)の質量比率が、0.05~5である、請求項1又は2に記載のシラン変性ポリオレフィン。
  4. 密度が0.850~0.930g/cmである、請求項1~3のいずれか一項に記載のシラン変性ポリオレフィン。
  5. JIS K7210(1999)に準拠して、230℃、2.16kg荷重にて測定したメルトフローレート(MFR)が5~80g/10分である、請求項1~4のいずれか一項に記載のシラン変性ポリオレフィン。
  6. 請求項1~5のいずれか一項に記載のシラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒とを含むシラン変性ポリオレフィン組成物。
  7. 請求項6に記載のシラン変性ポリオレフィン組成物を成形してなる成形体。
  8. 請求項7に記載の成形体を架橋させてなる架橋成形体。
  9. JIS K7171(2008)に準拠して測定した曲げ弾性率が300MPa以下である、請求項8に記載の架橋成形体。
  10. 請求項6に記載のシラン変性ポリオレフィン組成物を成形してなる三次元網状繊維集合体。
  11. 請求項10に記載の三次元網状繊維集合体を架橋させてなる三次元網状繊維集合体の架橋成形体。
  12. 下記(a)~(c)を含むポリオレフィンをシラン変性したシラン変性ポリオレフィンを得る第1工程、
    (a):プロピレン単位が95質量%より多く100質量%以下、α-オレフィン単位が0質量%以上5質量%未満であるプロピレン系重合体。
    (b):プロピレン単位が50質量%以上95質量%以下、α-オレフィン単位が5質量%以上50質量%以下であるプロピレン系重合体。
    (c):エチレン系重合体。
    該シラン変性ポリオレフィンと、シラノール縮合触媒とを含むシラン変性ポリオレフィン組成物を得る第2工程、
    該シラン変性ポリオレフィン組成物を成形して成形体を得る第3工程、
    該成形体を架橋させて架橋成形体を得る第4工程、
    を有する、架橋成形体の製造方法。
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