JP2023127704A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 セパレータの変形状態を判定してその変形を修正し、長期にわたって安定して使用することができる燃料電池システムを提供すること。【解決手段】 複数の電池セルが積層されたセルスタック2を備え、セルスタック2のアノードに面するアノード室とカソードに面するカソード室とがセパレータにより区画され、燃料ポンプ3はアノード室にアノードガスを供給し、空気ブロア7は、カソード室にカソードガスを供給し、燃料ポンプ3及び空気ブロア7がコントローラ70により制御される燃料電池システム。コントローラ70は、セルスタック2のアノード室(及び/又はカソード室)を流れるアノードガス(及び/又はカソードガス)の流れの状態に基づいてセパレータの変形状態を判定し、この変形判定の結果に基づいて、セルスタック2(複数の電池セル)におけるアノード室のアノードガスの圧力を制御してセパレータの変形状態を修正する。【選択図】 図1
Description
本発明は、複数の電池セルのアノード室とカソード室とがセパレータにより区画された燃料電池システムに関する。
燃料電池システムとして、複数の電池セルを有するセルスタックを備え、このセルスタックの各電池セルが電解質層、この電解質層の片側に配設されたアノード(燃料極)及びその他側に配設されたカソード(酸素極)を有するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この燃料電池システムにおいては、セルスタックのスタック本体にアノードガス用の第1流入側マニホールド及び第1流出側マニホールドが設けられ、アノードガスは、第1流入側マニホールドを通して複数の電池セルのアノード室に供給され、これらアノード室を流れたアノードオフガスは、第1流出側マニホールドを通して外出される。また、このスタック本体にカソードガス用の第2流入側マニホールド及び第2流出側マニホールドが設けられ、カソードガスは、第2流入側マニホールドを通して複数の電池セルのカソード室に供給され、これらカソード室を流れたカソードオフガスは、第2流出側マニホールドを通して外出される。
この燃料電池システムでは、各電池セルのアノード室とカソード室とを区画するためのセパレータが設けられ、第1流入側マニホールドからのアノードガスは、このセパレータの片側を通って電池セルのアノード室に流れた後に第1流出側マニホールドに排出される。また、第2流入側マニホールドからのカソードガスは、このセパレータの他側を通って電池セルのカソード室に流れた後に第2流出側マニホールドに排出される。
しかしながら、このような燃料電池システムでは、電池セルに供給されるアノードガス及びカソードガスのガス圧の相違に起因して次のような問題がある。即ち、電池セルのアノード側(アノード室)に供給されるアノードガスの圧力は、そのカソード側(カソード室)に供給されるカソードガスの圧力よりも低く、これらガス圧の圧力差に起因して、アノード室とカソード室とを区画するセパレータ及びこれに支持された電池セルにアノード側への応力が生じ、このような応力が長期間にわたって作用すると、セパレータやこれに支持された電池セルに変形が生じるおそれがある。
例えば、このセパレータにアノード側への変形が生じると、アノード室(アノード流路)が狭くなってその流路抵抗が増し、電池セルのアノード室に供給されるアノードガスの供給流量が減少し、アノードガスがこのアノード室に充分に供給されなくなる。かくすると、このアノードガスの減少に起因して、電池セルにおいて電気化学反応が進み難くなり、場合によっては、アノードガス不足により燃料枯れが生じて電池セルが破損するおそれがあり、このようなことは、セルスタックの耐久性、信頼性に悪影響を及ぼすことになる。
このようなことから、特許文献1では、セパレータのアノードガスの流入側部位及び流出側部位にガス流通部材を配設し、このガス流通部材によりセパレータのアノード室側への変形を防止して流路抵抗の増大を抑えている。しかし、このような従来の構成では、各セパレータに対応してガス流通部材を配設する必要があり、このガス流通部材によって流路抵抗が増大するとともに、セルスタック自体の構成が複雑になる。
本発明は、セパレータの変形状態を判定してその変形状態を修正し、長期にわたって安定して使用することができる燃料電池システムを提供することである。
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムは、イオンを伝導する電解質層、前記電解質層の片面側に配設されたアノード及び前記電解質層の他面側に配設されたカソードを有する複数の電池セルを備えたセルスタックと、前記セルスタックのスタック本体の流入側に設けられた第1及び第2流入側マニホールドと、前記スタック本体の流出側に設けられた第1及び第2流出側マニホールドと、前記アノードに面するアノード室と前記カソードに面するカソード室とを区画するためのセパレータと、前記第1流入側マニホールドを通して前記複数の電池セルの前記アノード室にアノードガスを供給するためのアノードガス供給手段と、前記第2流入側マニホールドを通して前記複数の電池セルの前記カソード室にカソードガスを供給するためのカソードガス供給手段と、前記アノードガス供給手段及び前記カソードガス供給手段を制御するためのコントローラとを具備し、
前記コントローラは、前記複数の電池セルの前記アノード室及び/又は前記カソード室を流れるアノードガス及び/又はカソードガスの流れの状態に基づいて前記セパレータの変形状態を判定する変形判定手段を含み、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、前記複数の電池セルの前記アノード室のアノードガスの圧力を制御して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする。
前記コントローラは、前記複数の電池セルの前記アノード室及び/又は前記カソード室を流れるアノードガス及び/又はカソードガスの流れの状態に基づいて前記セパレータの変形状態を判定する変形判定手段を含み、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、前記複数の電池セルの前記アノード室のアノードガスの圧力を制御して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする。
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムでは、前記セルスタックの前記複数の電池セルにアノードガスを供給するアノードガス供給流路に、アノードガスの圧力を計測する第1流入側圧力計測手段が設けられ、前記セルスタックの前記複数の電池セルからのアノードオフガスを排出するアノードオフガス排出流路に、アノードオフガスの圧力を計測する第1流出側圧力計測手段が設けられており、前記変形判定手段は、前記第1流入側圧力計測手段の計測圧力と前記第1流出側圧力計測手段の計測圧力との圧力差に基づいて前記セパレータの変形状態を判定することを特徴とする。
また、本発明の請求項3に記載の燃料電池システムでは、前記セルスタックの前記複数の電池セルにカソードガスを供給するカソードガス供給流路に、カソードガスの圧力を計測する第2流入側圧力計測手段が設けられ、前記セルスタックの前記複数の電池セルからのカソードオフガスを排出するカソードオフガス排出流路に、カソードオフガスの圧力を計測する第2流出側圧力計測手段が設けられており、前記変形判定手段は、前記第2流入側圧力計測手段の計測圧力と前記第2流出側圧力計測手段の計測圧力との圧力差に基づいて前記セパレータの変形状態を判定することを特徴とする。
また、本発明の請求項4に記載の燃料電池システムでは、前記セルスタックに関連して、前記スタック本体の発電電圧を計測する発電電圧計測手段が設けられ、前記変形判定手段は、前記発電電圧計測手段の計測電圧に基づいて前記セパレータの変形状態を判定することを特徴とする。
また、本発明の請求項5に記載の燃料電池システムでは、前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、前記複数の電池セルにおける前記アノード室のアノードガスの圧力を上昇させ、上昇したアノードガスのガス圧を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする。
また、本発明の請求項6に記載の燃料電池システムでは、前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、アノードガスの供給流量が増大するように前記アノードガス供給手段を制御し、供給流量の増大に伴うアノードガスのガス圧の上昇を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする。
また、本発明の請求項7に記載の燃料電池システムでは、前記第1流出側マニホールドの下流側のアノードオフガス排出流路には、その一部をバイパスして絞り部材を有するバイパス流路が配設されているとともに、前記アノードオフガス排出流路と前記バイパス流路の上流側との接続部に流路切換弁が配設され、前記流路切換弁は、第1切換状態のときには前記アノードオフガス排出流路を開状態に且つ前記バイパス流路を閉状態に保持し、第2切換状態のときには前記アノードオフガス排出流路を閉状態に且つ前記バイパス流路を開状態保持し、前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、前記流路切換弁を前記第2切換状態に切り換えて前記セルスタックからのアノードオフガスが前記バイパス流路及び前記絞り部材を通して流れるようにし、前記絞り部材の流量制限によるアノードガスの圧力の上昇を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする。
更に、本発明の請求項8に記載の燃料電池システムでは、前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、カソードガスの供給流量が減少するように前記カソードガス供給手段を制御し、供給流量の減少に伴うカソードガスのガス圧の低下を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする。
本発明の請求項1に記載の燃料電池システムによれば、複数の電池セルのアノードに面するアノード室とカソードに面するカソード室とがセパレータにより区画され、第1流入側マニホールドを流れるアノードガスが、複数の電池セルのアノード室を流れた後に第1流出側マニホールドに排出され、第2流入側マニホールドを流れるカソードガスが、複数の電池セルのカソード室を流れた後に第2流出側マニホールドに排出される。また、コントローラは、セパレータの変形状態を判定する変形判定手段を含み、この変形判定手段は、複数の電池セルのアノード室及び/又はカソード室を流れるアノードガス及び/又はカソードガスの流れの状態に基づいて判定するので、このセパレータの変形状態を判定することができる。
例えば、アノード室を流れるアノードガスの圧力がカソード室を流れるカソードガスの圧力よりも小さいと、この圧力差に起因する応力がセパレータ及び電池セルに作用し、セパレータ及び電池セルにアノード側に変形する傾向が生じる。そして、この応力により、例えばセパレータがアノード側に変形すると、電池セルのアノード室が狭くなり(カソード室が広くなり)、アノード室(カソード室)の流路抵抗が大きく(小さく)なってアノードガス(カソードガス)の流量が少なくなり(多くなり)、このセパレータの変形が大きくなるほどアノード室(カソード室)の流路抵抗が大きく(小さく)なってアノードガス(カソードガス)の流量が減少(増大)する。
このようなことから、アノード室(カソード室)を流れるアノードガス(カソードガス)の流れ状態からセパレータの変形度合いを知ることができ、変形判定手段は、このアノードガス(カソードガス)の流れ状態からセパレータの変形状態を判定する。そして,コントローラは、この判定結果に基づいて、複数の電池セルのアノード室におけるアノードガスの圧力を制御するので、このアノードガスのガス圧を利用してセパレータの変形状態を修正することができ、このセパレータを元の状態の近くまで戻すことができる。
また、本発明の請求項2に記載の燃料電池システムによれば、アノードガス供給流路に第1流入側圧力計測手段が設けられ、アノードオフガス排出流路に第1流出側圧力計測手段が設けられているので、第1流入側圧力計測手段及び第1流出側圧力計測手段により複数の電池セルのアノード室の上流側と下流側のガス圧力を検出し、これら計測圧力の圧力差に基づいてセパレータの変形状態を判定することができる。
例えば、第1流入側圧力計測手段の計測圧力と第1流出側圧力計測手段の計測圧力の圧力差が大きいということは、複数の電池セルのアノード室の流路抵抗が大きくなっている、換言するとセパレータがアノード側に大きく変形しているということであり、このような場合、変形判定手段は、かかる計測圧力の圧力差に基づいてセパレータの変形判定を行う。
また、本発明の請求項3に記載の燃料電池システムによれば、カソードガス供給流路に第2流入側圧力計測手段が設けられ、カソードオフガス排出流路に第2流出側圧力計測手段が設けられているので、第2流入側圧力計測手段及び第2流出側圧力計測手段により複数の電池セルのカソード室の上流側と下流側のガス圧力を検出し、これら計測圧力の圧力差に基づいてセパレータの変形状態を判定することができる。
例えば、第2流入側圧力計測手段の計測圧力と第2流出側圧力計測手段の計測圧力の圧力差が小さいということは、複数の電池セルのカソード室の流路抵抗が小さくなっている、換言するとセパレータがアノード側に大きく変形してカソード室の流路抵抗が小さくなっているということであり、このような場合、変形判定手段は、かかる計測圧力の圧力差に基づいてセパレータの変形判定を行う。
また、本発明の請求項4に記載の燃料電池システムによれば、セルスタックには、スタック本体の発電電圧を計測する発電電圧計測手段が設けられ、この発電電圧計測手段の計測電圧によってもセパレータの変形状態を判定することができる。
例えば、セルスタックの発電電圧が低下するということは、複数の電池セルのアノード室の流路抵抗が大きくなってこのアノード室に供給されるアノードガスの供給流量が低下している、換言するとセパレータがアノード側に大きく変形しているということであり、このような場合、変形判定手段は、かかる計測電圧に基づいてセパレータの変形判定を行う。
また、本発明の請求項5に記載の燃料電池システムによれば、コントローラは、変形判定手段の判定結果に基づいて、複数の電池セルにおけるアノード室のアノードガスの圧力を上昇させるので、この上昇したアノードガスのガス圧を利用してセパレータの変形状態を元の状態の近くまで修正することができる。
また、本発明の請求項6に記載の燃料電池システムによれば、コントローラは、変形判定手段の判定結果に基づいて、アノードガス供給手段を制御してアノードガスの供給流量を増大させるので、この供給流量の増大に伴うアノードガスのガス圧の上昇を利用してセパレータの変形状態を修正することができる。
また、本発明の請求項7に記載の燃料電池システムによれば、アノードオフガス排出流路の一部をバイパスして絞り部材を有するバイパス流路が配設されているとともに、このアノードオフガス排出流路とバイパス流路の上流側との接続部に流路切換弁が配設され、コントローラは、変形判定手段の判定結果に基づいて、この流路切換弁を第1切換状態から第2切換状態に切り換えるので、セルスタックからのアノードオフガスは、バイパス流路及び絞り部材を通して流れ、この絞り部材の流量制限によるアノードオフガスのガス圧の上昇を利用してセパレータの変形状態を修正することができる。
更に、本発明の請求項8に記載の燃料電池システムによれば、コントローラは、変形判定手段の判定結果に基づいて、カソードガス供給手段を制御してカソードガスの供給流量を減少させるので、供給流量の減少に伴うカソードガスの圧力低下を付加的に利用してセパレータの変形状態を修正することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明に従う燃料電池システムの実施形態について説明する。まず、図1~図5を参照して、本発明に従う燃料電池システムの第1の実施形態について説明する。
図1において、第1の実施形態の燃料電池システムは、アノードガス(水素などの燃料ガス)及びカソードガス(空気などの酸化剤ガス)による電気化学反応により発電するセルスタック2を備え、このセルスタック2の流入側に、アノードガス(燃料ガス)を供給するアノードガス供給流路4及びカソードガス(酸化剤ガス)を供給するカソードガス供給流路6が接続されている。また、このセルスタック2の排出側にアノードオフガスを排出するアノードオフガス排出流路8及びカソードオフガスを排出するカソードオフガス排出流路10が接続されている。
アノードガス供給流路4には、アノードガス供給手段を構成する例えば燃料ポンプ3が配設され、この燃料ポンプ3の作用によって、アノードガス供給源5からのアノードガスがアノードガス供給流路4を通してセルスタック2に供給される。また、カソードガス供給流路6には、カソードガス供給手段を構成する例えば空気ブロア7が配設され、この空気ブロア7の作用によって、カソードガスがカソードガス供給流路6を通してセルスタック2に供給される。
主として図2及び図3を参照してセルスタック2について説明すると、セルスタック2は、図2及び図3において上下方向に積層された複数の電池セル12から構成され、各電池セル12は、実質上同じ形状の平板状セルから構成されている。各電池セル12は、イオンを伝導する電解質層14と、この電解質層14の片側(図2及び図3において下側)に配設されたアノード16(燃料極)と、この電解質層14の他側(図2及び図3において上側)に配設されたカソード18(酸素極)とを備え、各電池セル12間にインターコネクタ20が配設され、具体的に図示していないが、かかるインターコネクタ20を介して電池セル12が電気的に接続される。この電池セル12としては、例えば電解質層14として固体酸化物を用いた固体酸化物形のもの(所謂、「SOFC」と略称されるもの)を用いることができる。
セルスタック2は、矩形状のスタック本体22を備え、このスタック本体22は複数のプレート状部材(図示せず)から構成される。このスタック本体22の中央部には矩形状開口24が設けられ、かかる開口24内に積層状態の複数の電池セル12が配設されている。各電池セル12の外周部は、第1セパレータ26に固定され、この第1セパレータ26の外周部がスタック本体22、例えば上下方向に隣接するプレート状部材(図示せず)の内周部間に取り付けられる。また、インターコネクタ20の外周部は第2セパレータ28に固定され、この第2セパレータ28の外周部がスタック本体22、例えば上下方向に隣接するプレート状部材(図示せず)間に取り付けられる。尚、第1及び第2セパレータ26,28は、例えば薄い金属プレートから構成される。
この実施形態では、図2及び図3に示すように、各電池セル12のアノード16の表面側に電解質層14が設けられ、この電解質層14の表面側にカソード18が設けられている。アノード16の外周部は、電解質層14及びカソード18の外周部から外側に突出しており、この突出部に第1セパレータ26の内周部が固定されている。
このように構成されているので、電解質層14のアノード16側にアノード室30が規定され、この電解質層14のカソード18側にカソード室32が規定され、電池セル12のアノード室30及びカソード室32は、第1セパレータ26により区画され、アノード室30とカソード室32との間においてガス漏れがないように第1セパレータ26がスタック本体22に取り付けられる。また、隣接する電池セル12は、インターコネクタ20及び第2セパレータ28により仕切られ、隣接する電池セル12間においてガス漏れがないように第2セパレータ28がスタック本体22に取り付けられる。
この実施形態では、図2に示すように、スタック本体22の片側(図2において左側)に第1流入側マニホールド34が設けられ、その他側(図2において右側)に第1流出側マニホールド36が設けられ、第1流入側マニホールド34及び第1流出側マニホールド36は、電池セル12の積層方向(図2及び図3において上下方向)に延びている。また、第1流入側マニホールド34には、各電池セル12のアノード室30に連通するアノードガス連通流路38が設けられ、第1流出側マニホールド36には、各電池セル12のアノード室30に連通するアノードオフガス連通流路40が設けられている。
アノードガス供給流路4(図1参照)からのアノードガスは、図2に矢印で示すように、スタック本体22の第1流入側マニホールド34に供給され、この第1流入側マニホールド34により分配された後に、アノードガス連通流路38を通して対応する電池セル12のアノード室30に送給される。また、各電池セル12のアノード室30から排出されるアノードオフガスは、アノードオフガス連通流路40を通して第1流出側マニホールド36に流れ、更にアノードオフガス排出流路8(図1参照)を通して排出される。
また、図3に示すように、スタック本体22の片側(図3において左側であって、第1流入側マニホールド34とは異なる部位)に第2流入側マニホールド42が設けられ、その他側(図3において右側であって、第1流出側マニホールド36とは異なる部位)に第2流出側マニホールド44が設けられ、第2流入側マニホールド42及び第2流出側マニホールド44は、第1流入側マニホールド34及び第1流出側マニホールド36と同様に、電池セル12の積層方向(図2及び図3において上下方向)に延びている。また、第2流入側マニホールド42には、各電池セル12のカソード室32に連通するカソードガス連通流路46が設けられ、第2流出側マニホールド44には、各電池セル12のカソード室32に連通するカソードオフガス連通流路48が設けられている。
カソードガス供給流路6(図1参照)からのカソードガスは、図3に矢印で示すように、スタック本体22の第2流入側マニホールド42に供給され、この第2流入側マニホールド42により分配された後に、カソードガス連通流路46を通して対応する電池セル12のカソード室32に送給される。また、各電池セル12のカソード室32から排出されるカソードオフガスは、カソードオフガス連通流路48を通して第2流出側マニホールド44に流れ、更にカソードオフガス排出流路10(図1参照)を通して排出される。
図1に戻って、この燃料電池システムでは、セルスタック2は、ホットモジュール50内の高温空間52に収容されて高温状態に保たれる。アノードガス供給流路4からのアノードガスは、上述したように、スタック本体22の第1流入側マニホールド34を通して各電池セル12のアノード室30に供給され(図2参照)、またカソード供給流路6からのカソードガスは、上述したように、スタック本体22の第2流入側マニホールド42を通して各電池セル12のカソード室32に供給され(図3参照)、アノード室30のアノードガスとカソード室32のカソードガスとの電気化学反応により発電が行われ、各電池セル12での発電電力はインターコネクタ20を介して集電される。セルスタック2からの発電電力は、発電出力ライン54を通してインバータ56に送給され、このインバータ56にて直流電流から交流電流に変換された後に、例えば照明装置、家電機器などの電力負荷(図示せず)に送給される。
このような燃料電池システムでは、アノードガス供給流路4を通して供給されるアノードガスの圧力は、カソードガス供給流路6を通して供給されるカソードガスの圧力よりも小さく設定されており、このようなことから、各電池セル12において、アノード室30内の圧力(アノードガス圧力)はカソード室32の圧力(カソードガス圧力)よりも小さく、この圧力さに起因して、電池セル12にはアノード16側への応力が作用し、電池セル12を支持する第1セパレータ26は、アノード16側に変形する傾向にある。
また、図示のセルスタック2の構造においては、隣接する一方(例えば、図2及び図3において上側)の電池セル12のアノード室30と他方(例えば、図2及び図3において下側)の電池セル12のカソード室32とがインターコネクタ20を介して接していることから、アノードガスとカソードガスの圧力差に起因して、このインターコネクタ20には一方の電池セル12側への応力が作用し、インターコネクタ20を支持する第2セパレータ28には、一方の電池セル12側に変形する傾向にある。
アノードガスとカソードガスとの圧力差に起因して、電池セル12を支持する第1セパレータ26及び/又はインターコネクタ20を支持する第2セパレータ28に変形が生じると、図2及び図3から理解される如く、電池セル12のアノード室30(アノード16とインターコネクタ20との間隔)が狭くなり、これにより、アノード質30の流路抵抗大きくなってアノードガスの流れが少なくなる。このことは、電池セル12のカソード室32(カソード18とインターコネクタ20との間の間隔)が広くなり、これにより、カソード室32の流路抵抗が下がる。
この燃料電池システムでは、上述したようにして生じる第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形が修正されるように、次のように構成されている。更に説明すると、アノードガス供給流路4には第1流入側圧力センサ62(第1流入側圧力計測手段を構成する)が設けられ、アノードオフガス排出流路8には第1流出側圧力センサ64(第1流出側圧力計測手段を構成する)が設けられている。第1流入側圧力センサ62は、セルスタック2(複数の電池セル12)の上流側のアノードガスの圧力を計測し、第1流出側圧力センサ64は、セルスタック2の下流側のアノードガス(アノードオフガス)の圧力を計測する。第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形が大きくなるほど、電池セル12のアノード室30の流路が狭くなって流路抵抗が増大するので、第1流入側圧力センサ62の計測圧力と第1流出側圧力センサ64の計測圧力との圧力差が大きくなる。
また、カソードガス供給流路6には第2流入側圧力センサ66(第2流入側圧力計測手段を構成する)が設けられ、カソードオフガス排出流路10には第2流出側圧力センサ68(第2流出側圧力計測手段を構成する)が設けられている。第2流入側圧力センサ66は、セルスタック2(複数の電池セル12)の上流側のカソードガスの圧力を計測し、第2流出側圧力センサ68は、セルスタック2の下流側のカソードガス(カソードオフガス)の圧力を計測する。第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形が大きくなるほど電池セル12のカソード室32が広くなって流路抵抗が小さくなるので、第2流入側圧力センサ66の計測圧力と第2流出側圧力センサ68の計測圧力との圧力差が小さくなる。
第1及び第2流入側圧力センサ62,66並びに第1及び第2流出側圧力センサ64,68の計測信号は、燃料電池システムを制御するコントローラ70に送給され、このコントローラ70は、燃料ポンプ3などを次のように制御する。図4を参照して、コントローラ70は、例えばマクロプロセッサなどから構成され、圧力差演算手段72、演算圧力差比較手段74、変形判定手段76、流量増量信号生成手段78、修正判定手段80、流量戻し信号生成手段82及び制御手段84を備え、これの各種手段72~84は、コントローラ70に組み込まれた制御ソフトによって機能する。また、このコントローラ70はメモリ手段86を含み、このメモリ手段86には、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態を判定する際の基準となる変形基準圧力差値と、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の修正状態を判定する際の基準となる修正基準圧力差値などが登録される。
この実施形態では、電池セル12のアノード室30の流路抵抗の変化により第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態を検知しており、このことに関連して、第1流入側圧力センサ62及び第1流出側圧力センサ64の計測圧力を利用して、次の制御が行われる。尚、電池セル12のカソード室32の流路抵抗の変化により第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態を検知する場合には、第2流入側圧力センサ66及び第2流出側圧力センサ68の計測圧力を用いるようになる。
圧力差演算手段72は、第1流入側圧力センサ62(第1流入側圧力計測手段)の計測圧力と第1流出側圧力センサ64(第1流出側圧力計測手段)の計測圧力との圧力差を演算し、演算圧力差比較手段74は、変形状態を検知するときにはこの演算圧力差とメモリ手段86の変形基準圧力差値とを比較するとともに、修正状態を検知するときにはこの演算圧力差とメモリ手段86の修正基準圧力差値とを比較する。
圧力差演算手段72による演算圧力差がメモリ手段86の変形基準圧力差値より大きくなると、変形判定手段76は、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28に変形が生じているとして変形判定をし、流量増量信号生成手段78は、この変形判定に基づいて流量増量信号を生成する。また、圧力差演算手段72による演算圧力差がメモリ手段86の修正基準圧力差値より小さくなると、修正判定手段80は、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28に生じていた変形が修正されたとして修正判定をし、流量戻し信号生成手段82はこの修正判定に基づいて流量戻し信号を生成する。更に、制御手段84は、これら流量増量信号及び流量戻し信号に基づいて燃料ポンプ3(アノードガス供給手段)を後述する如く制御する。
次に、主として図1、図4及び図5を参照して、上述した燃料電池システムの燃料流量制御について説明する。第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態を検知するには、例えば、変形状態の検知のための燃料電池システムの運転を開始する(ステップS1)。尚、このような検知のための運転を行うのではなく、燃料電池システムの発電運転中に変形形態の検知を行うようにしてもよい。
燃料電池システムの運転が開始すると、アノードガスの流入側及び流出側の圧力検知が行われる(ステップS2)。第1流入側圧力センサ62は、セルスタック2(複数の電池セル12)のアノード16側に流れるアノードガスの圧力(アノードガス供給流路4の圧力)を計測し、第1流出側圧力センサ64は、セルスタック2のアノード側16から排出されるアノードガス(アノードオフガス)の圧力(アノードオフガス排出流路8の圧力)を計測し、第1流入側圧力センサ62及び第1流出側圧力センサ64からの計測信号は、コントローラ70に送給される。
このように計測信号が送給されると、圧力差演算手段72は、第1流入側圧力センサ62の計測圧力と第1流出側圧力センサ64の計測圧力との圧力差を演算し(ステップS3)、この演算圧力差を用いて、変形基準圧力差値との比較が行われ、演算圧力差比較手段74は、圧力差演算手段72による演算圧力差とメモリ手段86の変形基準圧力差値とを比較して第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態を検知する。
そして、この演算圧力差が変形基準圧力差値より大きくなる(演算圧力差>変形基準圧力差値)と、ステップS4からステップS5に進み、変形判定手段76は、上述したように変形判定を行う。この演算圧力差が変形基準圧力差より大きくなるということは、セルスタック2のアノード16側の流路抵抗が増えて(換言すると、複数の電池セル12のアノード室30が狭くなって)アノードガスが流れ難くなっているということであり、その原因は、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28が変形しているということであり、これにより、セパレータの変形判定が行われる。
この変形判定が行われると、流量増量信号生成手段78が流量増量信号を生成し(ステップS6)、制御手段84は、この流量増量信号に基づいて燃料ポンプ3の回転数を上昇制御する。かくすると、アノードガス供給流路4を通してセルスタック2(複数の電池セル12)のアノード室30(図2、図3参照)に供給されるアノードガスの供給流量が増えてそのガス圧力が上昇し、ガス圧が上昇したアノードガスが第1及び第2セパレータ26,28に作用し、上昇したアノードガスのガス圧によって、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形が元の状態の近くまで戻るように修正され、このようにして第1及び第2セパレータ26,28の変形修正が行われる(ステップS7)。
このようにして第1及び第2セパレータ26,28の変形修正が行われると、セルスタック2(複数の電池セル12)のアノード室30が広くなり、これらアノード室30の流路抵抗が低下し、アノードガスの流れが改善される。
そして、アノードガスの流れが改善されてセルスタック2の上流側のアノードガスのガス圧力(第1流入側圧力センサ62の計測圧力)とその下流側のアノードガスのガス圧力(第2流出側圧力センサ64の計測圧力)との圧力差(圧力差演算手段72による演算圧力差)がメモリ手段86に登録された修正基準圧力差値より小さくなる(演算圧力差<修正基準圧力差値)と、ステップS8からステップS9に進み、修正判定手段80は、上述したように修正判定を行う。この演算圧力差が修正基準圧力差より小さくなるということは、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態が元の状態の近くまで修正され、セルスタック2(複数の電池セル12)のアノード室30(図2、図3参照)が広くなってその流路抵抗が低下し、アノードガスの流れがほぼ元の状態に戻ったということであり、その結果、セパレータの修正判定が行われる。尚、ステップS4において、演算圧力差が変形基準圧力差値以下である(演算圧力差≦変形基準圧力差値)場合、ステップS4からステップS8に移る。
このようにして修正判定が行われると、アノードガスの流量増量による第1及び第2セパレータ26,28の変形修正が終了し(ステップS10)、また流量戻し信号生成手段82は、この修正判定の判定結果に基づいて流量戻し信号を生成する(ステップS11)。かくすると、制御手段84は、この流量戻し信号に基づいて燃料ポンプ3の回転数を元の回転数に戻し、このようにしてアノードガスの供給流量が元の状態に戻り(ステップS12)、セパレータの変形状態の検知及びその修正のための燃料電池システムの運転が終了する(ステップS13)。
尚、ステップS8において、圧力差演算手段72による演算圧力差が修正基準圧力差値以上である(演算圧力差≧修正基準圧力差値)である場合、ステップS8からステップS14に移り、燃料電池システムの運転開始から所定時間が経過していないと、ステップS2に戻ってステップS2~ステップS8が繰り返し遂行されるが、所定時間が経過すると、ステップS14からステップS11に移行し、流量戻し信号生成手段82が流量戻し信号を生成し、アノードガスの供給流量が元の状態に戻ってセパレータの変形状態の検知及びその修正のための燃料電池システムの運転が終了する。
上述した実施形態では、電池セル12及びインターコネクタ20が第1及び第2セパレータ26,28を介してスタック本体22に取り付けられた形態のセルスタック2に適用して説明したが、このような構成に限定されず、電池セル12のみが第1セパレータ26を介してスタック本体22に取り付けられた形態にも同様に適用することができ、この場合、電池セル12を支持する第1セパレータ26が変形するようになる。
また、上述した実施形態では、セパレータの変形判定に基づいて、アノードガスの供給流量を増大する流量増量信号を生成しているが、この流量増量信号に加えて、カソードガスの供給流量を減少する流量減少信号を生成するようにしてもよい。この場合、コントローラ70は、更に流量減少信号生成手段(図示せず)を含み、上述の変形判定に基づき、増量信号生成手段78が流量増量信号を生成し、この流量増量信号に基づいて燃料ポンプ3(アノードガス供給手段)の回転数が上昇してアノードガスの供給流量が増大するとともに、流量減少信号生成手段が流量減少信号を生成し、この流量減少信号に基づいて空気ブロア7(カソードガス供給手段)の回転数が低下してカソードガスの供給流量が減少し、このように制御することによって、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態を効果的に変形修正することができる。
更に、上述した実施形態では、セルスタック2のアノード16(複数の電池セル12のアノード室30)の上流側及び下流側のアノードガスの圧力変動に基づいて第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形を検知しているが、このような構成に代えて、セルスタック2のカソード18(複数の電池セル12のカソード室32)の上流側及び下流側のカソードガスの圧力変動に基づいて第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形を検知するようにしてもよい。この場合、カソードガス供給流路6の第2流入側圧力センサ66及びカソードオフガス排出流路10の第2流出側圧力センサ68の計測圧力が用いられる。
カソードガスの圧力変動を用いる場合、上述した説明から容易に理解される如く、圧力差演算手段72は、セルスタック2のカソード18(複数の電池セル12のカソード室32)の上流側のカソードガスの圧力(第2流入側圧力センサ66の計測圧力)とその下流側のカソードガスの圧力(第2流出側圧力センサ68の計測圧力)との圧力差を演算し、変形判定手段76は、この演算圧力差が変形基準圧力差値よりも小さくなる(演算圧力差<変形基準圧力差値)とセパレータの変形判定をし、流量増量信号生成手段78は、この変形判定に基づいて流量増量信号を生成する。
また、セパレータの変形修正中にセルスタック2のカソード18の上流側及び下流側のカソードガスの圧力差(圧力差演算手段72による演算圧力差)が修正基準圧力差値よりも大きくなる(演算圧力差>変形基準圧力差値)なると、修正判定手段80は、第1及び第2セパレータ26,28の変形状態が修正されたとして修正判定をし、この修正判定に基づいて、流量戻し信号生成手段82が流量戻し信号を生成する。
このようにセルスタック2のアノード16(アノード室30)の上流側及び下流側のアノードガスの圧力変動に代えて、セルスタック2のカソード18(カソード室32)の上流側及び下流側の圧力変動を用いても、上述したと同様に、第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形状態を検知することができるとともに、その変形状態の修正を行うことができる。
尚、上述した記載から理解される如く、セルスタック2のアノード16(複数の電池セル12のアノード室30)の上流側及び下流側のアノードガスの圧力変動に加えて、そのカソード18(複数の電池セル12のカソード室32)の上流側及び下流側のカソードガスの圧力変動に基づいて第1セパレータ26及び/又は第2セパレータ28の変形を検知するようにしてもよい。
次に、図6~図8を参照して、燃料電池システムの第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態では、セルスタックの上流側及び下流側のアノードガス(カソードガス)の圧力の変動を用いてセパレータの変形状態を検知することに代えて、この第2セルスタックの発電電圧の変動を用いてセパレータの変形状態を検知している。また、この第2の実施形態では、燃料ポンプ(アノードガス供給手段)からのアノードガスの供給流量を増大させてセパレータの変形状態の修正を行うことに代えて、アノードオフガス排出流路の流路抵抗を大きくしてアノード室におけるアノードガスの圧力を高めてセパレータの変形状態を修正している。尚、この第2の実施形態において、上述した第1の実施形態と実質上同一の構成要素については同一の参照番号を付し、その説明を省略する。
図6及び図7において、この第2の実施形態の燃料電池システムにおいては、発電出力ライン54に発電電圧計測手段としての電圧計測装置92が設けられており、この電圧計測装置92は、セルスタック2から出力される発電出力の電圧を計測し、この電圧計測装置92からの計測信号は、コントローラ70A(図7参照)に送給される。
また、セルスタック2からのアノードオフガスが流れるアノードオフガス排出流路10には、その一部をバイパスしてバイパス流路94が設けられ、このバイパス流路94に、アノードオフガスの流れを制限する絞り部材96が配設されている。また、アノードオフガス排出流路10とバイパス流路94の上流側とを接続する接続部に流路切換弁98が配設され、この流路切換弁98として例えば三方切換弁を用いることができる。
この実施形態では、流路切換弁98は、第1切換状態と第2切換状態とに選択的に切り換えられるように構成され、この流路切換98が第1切換状態にあるときには、アノードオフガス排出流路10が開状態に、バイパス流路94が閉状態に保持され、セルスタック2のアノードからのアノードオフガスは、図6に実線矢印で示すように、アノードオフガス排出流路10を通して下流側に排出される。また、この流路切換弁98が第2切換状態にあるときには、アノードオフガス排出流路10が閉状態に、バイパス流路94が開状態に保持され、セルスタック2のアノードからのアノードオフガスは、図6に破線矢印で示すように、バイパス流路94を通して流れた後にアノードオフガス排出流路10を通して排出される。
このことに関連して、第2の実施形態の燃料電池システムにおけるコントローラ70Aは、例えば図7に示すように構成される。図7において、このコントローラ70Aには、圧力差演算手段及び演算圧力差比較手段に代えて、セルスタック2からの発電電圧(電圧計測装置92による計測電圧)を比較する発電電圧比較手段100が用いられ、また変形基準圧力差値及び修正基準圧力差値に代えて、変形基準電圧値及び修正基準電圧値が用いられ、これら変形基準電圧値及び修正基準電圧値がメモリ手段86Aに登録される。このコントローラ70Aには、更に、流量増量信号を生成する流量増量信号生成手段に代えて、流路切換弁98(三方切換弁)を第1切換状態から第2切換状態に切り換える切換信号を生成する切換信号生成手段102が用いられ、また流量戻し信号を生成する流量戻し信号生成手段に代えて、流路切換弁98(三方切換弁)を第2切換状態から第1切換状態に切り換える戻し信号を生成する戻し信号生成手段104が用いられる。この第2の実施形態の燃料電池システムのその他の構成は、上述した第1の実施形態と実質上同一である。
次に、図6及び図7とともに図8を参照して、第2の実施形態の燃料電池システムの燃料流量制御について説明する。セルスタック2の第1セパレータ及び/又は第2セパレータ(第1の実施形態の図2及び図3参照)の変形状態を検知するための燃料電池システムの運転が開始する(ステップS21)と、セルスタック2の出力電圧の計測が行われる(ステップS22)。電圧計測装置92は、セルスタック2(複数の電池セル)の発電出力の電圧(発電電圧)を検知し、電圧計測装置92からの計測信号がコントローラ70Aに送給され、コントローラ70Aの発電電力比較手段100は、この計測電圧とメモリ手段86Aに登録された変形基準電圧値とを比較する。
そして、電圧計測装置92の計測電圧が変形基準電圧値よりも低くなる(計測電圧<変形基準電圧値)と、ステップS23からステップS24に進み、変形判定手段76Aは、セパレータに変形が生じているとして変形判定を行う。この計測電圧が変形基準電圧値より低くなるということは、セルスタック2のアノード16(アノード室)の流路抵抗が増え(換言すると、複数の電池セルのアノード室が狭くなり)、アノードガスが流れ難くなって発電電圧が低下しているということであり、その原因は、第1セパレータ及び/又は第2セパレータが変形しているということであり、これにより、セパレータの変形判定が行われる。
この変形判定が行われると、切換信号生成手段102が切換信号を生成し(ステップS25)、制御手段84Aは、この切換信号に基づいて流路切換弁98を第1切換状態から第2切換状態に切り換える(ステップS26)。かくすると、アノードオフガス排出流路10が閉状態に、バイパス流路94が開状態に切り換えられ、セルスタック2(複数の電池セル)のアノード室(図2、図3参照)からのアノードオフガスがバイパス流路94及びアノードオフガス排出流路10を通して排出される。
このとき、絞り部材96によりアノードオフガスの流れが制限され、これによって、セルスタック2(複数の電池セル)のアノード室のガス圧力が上昇するようになり、この上昇したアノードガスの圧力が第1及び第2セパレータ(図2及び図3参照)に作用する。従って、このように構成した場合においても、第1の実施形態と同様に、上昇したアノードガスの圧力によって、第1セパレータ及び/又は第2セパレータの変形が元の状態の近くまで戻るように修正され、このようにして第1及び第2セパレータの変形修正が行われる(ステップS27)。
このようにして第1及び第2セパレータの変形修正が行われると、セルスタック2(複数の電池セル)のアノード室が広くなり、アノードガスの流れが改善されてセルスタック2の発電状態がほぼ元の状態に戻り、セルスタック2の発電電圧が上昇する。
そして、セルスタック2の発電電圧が上昇してその発電電圧(電圧計測装置92の計測電圧)がメモリ手段86Aに登録された修正基準電圧値より大きくなる(計測電圧>修正基準電圧値)と、ステップS28からステップS29に進み、修正判定手段80Aはセパレータの修正判定を行う。この計測電圧が修正基準電圧値より大きくなるということは、第1セパレータ及び/又は第2セパレータ(図2、図3参照)の変形状態がほぼ元の状態の近くまで修正され、セルスタック2(複数の電池セル)のアノード室(図2、図3参照)が広くなってアノードガスの流が元の状態にほぼ戻ったということであり、これにより、セパレータの修正判定が行われる。尚、ステップS23において、計測電圧が変形基準電圧値以上である(計測電圧≧変形基準電圧値)場合、ステップS23からステップS28に移る。
このようにして修正判定が行われると、アノードオフガスの排出制限による第1及び第2セパレータの変形修正が終了し(ステップS30)、戻し信号生成手段104は、この修正判定の判定結果に基づいて戻し信号を生成する(ステップS31)。かくすると、制御手段84Aは、この戻し信号に基づいて流路切換弁98を第2切換状態から第1切換状態に戻し、これにより、セルスタック2からのアノードオフガスはアノードオフガス排出流路10を通して排出され(ステップS33)、このようにしてセパレータの変形状態の検知及びその修正のための燃料電池システムの運転が終了する(ステップS34)。
尚、ステップS28において、電圧計測装置92による計測電圧が修正基準電圧値以下である(計測電圧≦修正基準電圧値)である場合、ステップS28からステップS35に移り、燃料電池システムの運転開始から所定時間が経過していないと、ステップS22に戻ってステップS22~ステップS28が繰り返し遂行されるが、所定時間が経過すると、ステップS35からステップS31に移行し、戻し信号生成手段104が戻し信号を生成し、アノードオフガスの流れが元の状態に戻ってセパレータの変形状態の検知及びその修正のための燃料電池システムの運転が終了する。
第2の実施形態では、流路切換弁98を三方切換弁から構成しているが、二つの流路開閉弁、即ち第1及び第2流路開閉弁(図示せず)から構成するようにしてもよい。この場合、第1流路開閉弁が例えばアノードオフガス排出流路に配設され、第2流路開閉弁が例えばバイパス流路94に配設され、第1切換状態のときには、第1流路開閉弁が開状態に、第2流路開閉弁が閉状態に保持され、また第2切換状態のときには、第1流路開閉弁が閉状態に、第2流路開閉弁が開状態に保持される。
以上、本発明に従う燃料電池システムの実施形態について説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変更乃至修正が可能である。
2 セルスタック
3 燃料ポンプ(アノードガス供給手段)
4 アノードガス供給流路
6 カソードガス供給流路
7 空気ブロア(カソードガス供給手段)
8 アノードオフガス排出流路
10 カソードオフガス排出流路
12 電池セル
14 電解質層
16 アノード
18 カソード
22 スタック本体
26,28 セパレータ
30 アノード室
32 カソード室
62,66 流入側圧力センサ(流入側圧力計測手段)
64,68 流出側圧力センサ(流出側圧力計測手段)
70,70A コントローラ
72 圧力差演算手段
76,76A 変形判定手段
78 流量増量信号生成手段
80,80A 修正判定手段
82 流量戻し信号生成手段
92 電圧計測装置(発電電圧計測手段)
94 バイパス流路
96 絞り部材
98 流路切換弁
102 切換信号生成手段
104 戻し信号生成手段
3 燃料ポンプ(アノードガス供給手段)
4 アノードガス供給流路
6 カソードガス供給流路
7 空気ブロア(カソードガス供給手段)
8 アノードオフガス排出流路
10 カソードオフガス排出流路
12 電池セル
14 電解質層
16 アノード
18 カソード
22 スタック本体
26,28 セパレータ
30 アノード室
32 カソード室
62,66 流入側圧力センサ(流入側圧力計測手段)
64,68 流出側圧力センサ(流出側圧力計測手段)
70,70A コントローラ
72 圧力差演算手段
76,76A 変形判定手段
78 流量増量信号生成手段
80,80A 修正判定手段
82 流量戻し信号生成手段
92 電圧計測装置(発電電圧計測手段)
94 バイパス流路
96 絞り部材
98 流路切換弁
102 切換信号生成手段
104 戻し信号生成手段
Claims (8)
- イオンを伝導する電解質層、前記電解質層の片面側に配設されたアノード及び前記電解質層の他面側に配設されたカソードを有する複数の電池セルを備えたセルスタックと、前記セルスタックのスタック本体の流入側に設けられた第1及び第2流入側マニホールドと、前記スタック本体の流出側に設けられた第1及び第2流出側マニホールドと、前記アノードに面するアノード室と前記カソードに面するカソード室とを区画するためのセパレータと、前記第1流入側マニホールドを通して前記複数の電池セルの前記アノード室にアノードガスを供給するためのアノードガス供給手段と、前記第2流入側マニホールドを通して前記複数の電池セルの前記カソード室にカソードガスを供給するためのカソードガス供給手段と、前記アノードガス供給手段及び前記カソードガス供給手段を制御するためのコントローラとを具備し、
前記コントローラは、前記複数の電池セルの前記アノード室及び/又は前記カソード室を流れるアノードガス及び/又はカソードガスの流れの状態に基づいて前記セパレータの変形状態を判定する変形判定手段を含み、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、前記複数の電池セルの前記アノード室を流れるアノードガスのガス圧力を制御して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記セルスタックの前記複数の電池セルにアノードガスを供給するアノードガス供給流路に、アノードガスの圧力を計測する第1流入側圧力計測手段が設けられ、前記セルスタックの前記複数の電池セルからのアノードオフガスを排出するアノードオフガス排出流路に、アノードオフガスの圧力を計測する第1流出側圧力計測手段が設けられており、前記変形判定手段は、前記第1流入側圧力計測手段の計測圧力と前記第1流出側圧力計測手段の計測圧力との圧力差に基づいて前記セパレータの変形状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記セルスタックの前記複数の電池セルにカソードガスを供給するカソードガス供給流路に、カソードガスの圧力を計測する第2流入側圧力計測手段が設けられ、前記セルスタックの前記複数の電池セルからのカソードオフガスを排出するカソードオフガス排出流路に、カソードオフガスの圧力を計測する第2流出側圧力計測手段が設けられており、前記変形判定手段は、前記第2流入側圧力計測手段の計測圧力と前記第2流出側圧力計測手段の計測圧力との圧力差に基づいて前記セパレータの変形状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記セルスタックに関連して、前記スタック本体の発電電圧を計測する発電電圧計測手段が設けられ、前記変形判定手段は、前記発電電圧計測手段の計測電圧に基づいて前記セパレータの変形状態を判定することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
- 前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、前記複数の電池セルにおける前記アノード室のアノードガスの圧力を上昇させ、上昇したアノードガスのガス圧を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の燃料電池システム。
- 前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、アノードガスの供給流量が増大するように前記アノードガス供給手段を制御し、供給流量の増大に伴うアノードガスのガス圧の上昇を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
- 前記第1流出側マニホールドの下流側のアノードオフガス排出流路には、その一部をバイパスして絞り部材を有するバイパス流路が配設されているとともに、前記アノードオフガス排出流路と前記バイパス流路の上流側との接続部に流路切換弁が配設され、前記流路切換弁は、第1切換状態のときには前記アノードオフガス排出流路を開状態に且つ前記バイパス流路を閉状態に保持し、第2切換状態のときには前記アノードオフガス排出流路を閉状態に且つ前記バイパス流路を開状態保持し、前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、前記流路切換弁を前記第2切換状態に切り換えて前記セルスタックからのアノードオフガスが前記バイパス流路及び前記絞り部材を通して流れるようにし、前記絞り部材の流量制限によるアノードガスの圧力の上昇を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。
- 前記コントローラは、前記変形判定手段の判定結果に基づいて、カソードガスの供給流量が減少するように前記カソードガス供給手段を制御し、供給流量の減少に伴うカソードガスのガス圧の低下を利用して前記セパレータの変形状態を修正することを特徴とする請求項6又は7に記載の燃料電池システム。
Priority Applications (1)
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JP2022031556A JP2023127704A (ja) | 2022-03-02 | 2022-03-02 | 燃料電池システム |
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JP2022031556A JP2023127704A (ja) | 2022-03-02 | 2022-03-02 | 燃料電池システム |
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2022
- 2022-03-02 JP JP2022031556A patent/JP2023127704A/ja active Pending
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