JP2012059611A - 燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

【課題】燃料電池の性能低下を引き起こすことなく燃料電池の発電を停止する。
【解決手段】燃料電池システムは、システム停止の指示を取得した後に酸素抑制発電制御を実行する酸素抑制発電制御部と、電圧検出部と、電解質膜における電気的な短絡をもたらし得る損傷の有無を判定する膜損傷判定部と、停止制御部を備える。停止制御部は、酸素抑制発電制御を行なう際に、電解質膜が損傷を有しないと判定された場合には、電圧が第1の基準電圧値まで低下したときに、燃料電池の発電を停止させ、電解質膜が損傷を有すると判定された場合には、予め定めたピンホール形成条件に該当する時点と、電圧が第1基準電圧値まで低下する時点の、いずれか早いときに、燃料電池の発電を停止させる。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池システムに関するものである。
燃料電池の発電を停止する際には、一般に、水素を含有する燃料ガスと酸素を含有する酸化ガスの燃料電池に対する供給を停止すると共に、燃料電池と負荷との接続を切断する
処理が行なわれる。このような燃料電池の発電停止の方法としては、発電停止に伴う燃料電池の性能低下を抑制するために、種々の方法が提案されている。例えば、燃料電池の発電停止の際に、燃料電池のカソードへの酸化ガスの供給を停止した状態でアノードへの燃料ガスの供給を継続して、発電を行なわせることによりカソードの酸素を消費させる構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2002−093448号公報 特開2007−115533号公報 特開2006−086034号公報
燃料電池の発電停止の際に生じ得る不都合の一つとして、例えば、燃料電池と負荷との接続の切断時における、燃料電池の電圧上昇が挙げられる。燃料電池と負荷との接続が切断されて、燃料電池の電圧が、開回路電圧(OCV)あるいはOCVに近い値にまで上昇すると、電極が酸化されて、燃料電池の性能が低下する可能性がある。このような燃料電池と負荷との接続の切断時における望ましくない程度の電圧上昇は、燃料電池の発電停止時において、燃料電池へのガス供給を抑制しつつ発電を行なわせて、燃料電池の電極電位を充分に低下させることにより抑制可能となる。しかしながら、このように燃料電池の性能低下を抑制しようとして発電停止のための運転制御を行なう場合であっても、例えば燃料電池内におけるガス供給のばらつき等に起因して、燃料電池を構成するいずれかの単セルにおいて転極が生じて負電圧になる場合が考えられる。このようにいずれかの単セルが負電圧になると、燃料電池において、上記した燃料電池の電圧上昇に起因する性能低下とは異なる性能低下が引き起こされる可能性がある。このように、燃料電池の発電停止時には、燃料電池の性能低下の原因となり得る複数の状態が引き起こされる可能性があり、燃料電池の性能低下を引き起こすことなく燃料電池の発電を停止できるように、燃料電池の発電停止方法のさらなる適正化が望まれていた。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池の性能低下を引き起こすことなく燃料電池の発電を停止することを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実施することが可能である。
[適用例1]
燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムの停止の指示を取得すると、前記燃料電池に対する酸素の供給量を抑制した状態で前記燃料電池を発電させる酸素抑制発電制御を実行する酸素抑制発電制御部と、
前記燃料電池の電圧を検出する電圧検出部と、
前記燃料電池が有する電解質膜における、電気的な短絡をもたらし得る損傷の有無を判定する膜損傷判定部と、
前記酸素抑制発電制御部が前記酸素抑制発電制御を行なう際に、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有しないと判定された場合には、前記電圧検出部が検出した前記電圧が、前記燃料電池の発電停止時の電圧の上限値として予め定めた第1の基準電圧値まで低下したときに、前記燃料電池の発電を停止させ、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有すると判定された場合には、電解質膜の前記損傷からピンホールが生じ得る条件として予め定めたピンホール形成条件に該当する時点と、前記電圧が前記第1基準電圧値まで低下する時点の、いずれか早いときに、前記燃料電池の発電を停止させる停止制御部と、
を備える燃料電池システム。
適用例1に記載の燃料電池システムによれば、システム停止時には酸素抑制発電制御を行ない、燃料電池の電圧が第1の基準値まで低下したときに発電を停止させるため、燃料電池の発電停止時において、燃料電池が望ましくない高電圧となることによる電極触媒の劣化を抑制できる。また、このとき、電解質膜が損傷を有する時には、燃料電池の電圧が第1の基準値まで低下していなくても、ピンホール形成条件に該当するときには発電を停止させるため、酸素抑制発電制御を行なうことに起因するピンホールの形成を抑制し、燃料電池の性能を維持することができる。
[適用例2]
適用例1記載の燃料電池システムであって、前記燃料電池は、前記電解質膜および電極を備える単セルを複数積層して成り、前記電圧検出部は、各々の前記単セルの電圧を検出し、前記停止制御部は、前記酸素抑制発電制御部が前記酸素抑制発電制御を行なう際に、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有しないと判定された場合には、前記電圧検出部が検出した各々の単セルの電圧の内の最も高い最高セル電圧が、前記燃料電池の発電停止時における前記単セルの電圧の上限値として予め定めた前記第1の基準電圧値まで低下したときに、前記燃料電池の発電を停止させ、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有すると判定された場合には、前記電解質膜の前記損傷からピンホールが生じ得る条件として予め定めたピンホール形成条件に該当する時点と、前記最高セル電圧が前記第1基準電圧値まで低下する時点の、いずれか早いときに、前記燃料電池の発電を停止させる燃料電池システム。適用例2に記載の燃料電池システムによれば、最高セル電圧が第1の基準電圧値まで低下したときに燃料電池の発電を停止させるため、全ての単セルにおいて望ましくない程度の電圧上昇を抑えることができ、電極触媒劣化を抑制する動作の信頼性を高めることができる。
[適用例3]
適用例2記載の燃料電池システムであって、前記ピンホール形成条件は、前記電圧検出部が検出した各々の前記単セルの電圧の内の最も低い最低セル電圧が、前記第1の基準電圧値よりも低い第2の基準電圧値であって、前記電解質膜の前記損傷からピンホールが形成され得る基準電圧として定めた第2の基準電圧まで低下する条件である燃料電池システム。適用例3に記載の燃料電池システムによれば、最低セル電圧を求めることにより、ピンホール形成条件に該当するか否かを簡便に判定することができる。
[適用例4]
適用例2記載の燃料電池システムであって、前記膜損傷判定部は、各々の前記単セル毎に、該単セルが備える前記電解質膜における前記損傷の有無を判定し、前記ピンホール形成条件は、前記膜損傷判定部が前記損傷を有していると判定した電解質膜を有する単セルの電圧が、前記第1の基準電圧値よりも低い第2の基準電圧値であって、前記電解質膜の前記損傷からピンホールが形成され得る基準電圧として定めた第2の基準電圧まで低下する条件である燃料電池システム。適用例4に記載の燃料電池システムによれば、ピンホールが形成されうる損傷を有する電解質膜を備えた単セルの電圧に基づいて、ピンホール形成条件に該当するか否かを判定するため、ピンホール形成条件に該当するか否かの判定を、適切に行なうことができる。
[適用例5]
適用例3または4記載の燃料電池システムであって、前記第2の基準電圧値は、0Vである燃料電池システム。適用例5に記載の燃料電池システムによれば、負電圧となることを避けることにより、ピンホールの形成を抑制する信頼性を高めることができる。
[適用例6]
適用例3または4記載の燃料電池システムであって、前記第2の基準電圧値は、前記損傷からピンホールを生じるために要する熱量を生じる時の電圧値に基づいて設定される値である燃料電池システム。適用例6に記載の燃料電池システムによれば、損傷からピンホールを生じるために要する熱量を生じる時の電圧値に基づいて第2の基準電圧値を設定するため、より長く酸素抑制発電制御を行なうことが可能になり、ピンホールの形成を抑制する信頼性の確保と、触媒劣化の抑制とを両立させる効果を高めることができる。
[適用例7]
適用例2ないし6いずれか記載の燃料電池システムであって、前記第1の基準電圧値は、前記酸素抑制発電制御による発電を行なっている前記燃料電池における前記最高セル電圧が前記第1の基準電圧に低下したものとして前記燃料電池の両端子を開回路状態にしたときの、前記最高セル電圧における開回路電圧が、0.6〜0.9Vとなる値として設定されている燃料電池システム。適用例7に記載の燃料電池システムによれば、最高セル電圧が第1の基準電圧値にまで低下したときに燃料電池の発電を停止することにより、いずれの単セルにおいても、0.6〜0.9Vを超える電圧になるのを抑制し、触媒劣化を抑制できる。
[適用例8]
適用例1ないし7いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、各々の前記単セルが備える前記電解質膜について、該電解質膜において損傷が形成される膜損傷部位の抵抗値である短絡抵抗値を取得する短絡抵抗値取得部を備え、前記膜損傷判定部は、いずれかの前記単セルが備える前記電解質膜における前記短絡抵抗値が、予め定めた基準抵抗値以下であるときに、前記電解質膜が電気的な短絡をもたらし得る損傷を有すると判定する燃料電池システム。適用例8に記載の燃料電池システムによれば、短絡抵抗値と抵抗基準値との比較により、短絡をもたらし得る損傷の有無を的確に判定することができる。
[適用例9]
適用例8記載の燃料電池システムであって、前記基準抵抗値は、前記単セルが転極して負電位となってもピンホールが発生しない値として定められている燃料電池システム。適用例9に記載の燃料電池システムによれば、このような基準抵抗値に基づいて膜損傷の有無の判定を行なうため、電解質膜の損傷が無いと判定した場合には、酸素抑制発電制御時に単セルが負電位になっても、ピンホールの形成を抑制することができる。
[適用例10]
適用例8または9記載の燃料電池システムであって、前記短絡抵抗値取得部は、前記燃料電池システムの停止の指示を取得する度に、前記短絡抵抗値を取得し、前記膜損傷判定部は、前記短絡抵抗取得部が前記短絡抵抗値を取得する度に、前記停止制御部による前記燃料電池停止の制御に先だって、前記電解質膜における前記損傷の有無を判定する燃料電池システム。適用例10に記載の燃料電池システムによれば、システム停止の度に短絡抵抗値を取得して膜損傷の有無を判定するため、膜損傷の有無に応じた制御を適切に選択することができる。
[適用例11]
適用例1ないし10いずれか記載の燃料電池システムであって、前記停止制御部は、前記燃料電池に対するガス供給を停止すると共に、前記燃料電池を開回路状態にすることにより、前記燃料電池の発電を停止させる燃料電池システム。適用例11に記載の燃料電池システムによれば、燃料電池の停止時に燃料電池を開回路処理しても、燃料電池が望ましくない程度に高電圧になることを抑制することができる。
[適用例12]
適用例1ないし11いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、前記燃料電池システムに対して設けられた負荷に対して、前記燃料電池と共に、あるいは、前記燃料電池に代えて電力供給可能な2次電池を備え、前記停止制御部は、前記酸素抑制発電制御として、前記燃料電池に対する電圧指令値を、予め定めた許容電圧値に維持して、前記燃料電池によって前記2次電池を充電させる制御を行なう燃料電池システム。適用例12に記載の燃料電池システムによれば、負荷要求が無くなった後のシステム停止時において、酸素抑制発電制御により発電された電力を2次電池に蓄えつつ、燃料電池が望ましくない程度に高電圧になることを抑制することができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池システムの停止方法や、燃料電池における高電位抑制方法などの形態で実現することが可能である。
燃料電池システム20の概略構成を表わすブロック図である。 単セル35の構成を表わす断面図模式図である。 システム停止時処理ルーチンを表わすフローチャートである。 燃料電池30の定常状態I−V特性を表わす説明図である。 短絡抵抗値取得処理ルーチンを表わすフローチャートである。 単セル35のIV特性測定結果の一例を示す説明図である。 セルAのVR特性の一例を示す説明図である。 セルBの膜損傷部位の抵抗値の推定方法の理論を示す説明図である。 システム停止時処理ルーチンを表わすフローチャートである。 燃料電池システム120の概略構成を表わすブロック図である。 第2の基準電圧値VX2の設定方法を表わすフローチャートである。
A.燃料電池システムの構成:
図1は、本発明の第1実施例としての燃料電池システム20の概略構成を表わすブロック図である。燃料電池システム20は、電気自動車10に搭載されて、駆動用電源として用いられている。燃料電池システム20は、燃料電池30と、水素タンク40と、水素遮断弁41と、可変調圧弁42と、水素循環ポンプ43と、パージ弁44と、エアコンプレッサ51と、エアフロメータ50と、第1空気遮断弁52と、第2空気遮断弁53と、電圧センサ62と、制御部60と、を備えている。また、燃料電池システム20を搭載する電気自動車10は、燃料電池システム20の他に、インバータ75と、駆動モータ76と、DC/DCコンバータ73と、2次電池74と、を備える。
燃料電池30は、固体高分子型燃料電池であり、単セルが複数積層されたスタック構成を有している。図2は、燃料電池30が備える単セル35の構成を表わす断面図模式図である。単セル35は、MEA(膜−電極接合体、Membrane Electrode Assembly)89と、ガス拡散層83,84と、ガスセパレータ85,86と、を備えている。ここで、MEA89は、電解質膜80と、電解質膜の各々の面に形成された電極であるアノード81およびカソード82と、によって構成される。このMEA89は、ガス拡散層83,84によって挟持されており、MEA89およびガス拡散層83,84から成るサンドイッチ構造は、さらに両側からガスセパレータ85,86によって挟持されている。
MEA89を構成する電解質膜80は、固体高分子材料、例えばフッ素系樹脂により形成されたプロトン伝導性のイオン交換膜であり、湿潤状態で良好な電気伝導性を示す。カソード82およびアノード81は、電解質膜上に形成された層であり、電気化学反応を進行する触媒金属(例えば白金)を担持するカーボン粒子と、プロトン伝導性を有する高分子電解質と、を備えている。ガス拡散層83,84は、ガス透過性および電子伝導性を有する部材によって構成されており、例えば、発泡金属や金属メッシュなどの金属製部材や、カーボンクロスやカーボンペーパなどのカーボン製部材により形成することができる。
ガスセパレータ85,86は、ガス不透過な導電性部材、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン等のカーボン製部材や、プレス成形したステンレス鋼などの金属製部材により形成されている。ガスセパレータ85,86は、MEA89のアノード81との間に、水素を含有する燃料ガスの流路(セル内燃料ガス流路87)を形成し、MEA89のカソード82との間に、酸素を含有する酸化ガスの流路(セル内酸化ガス流路88)を形成する。図2では、ガスセパレータ85,86の表面に、上記したセル内ガス流路を形成するための凹凸が形成されているが、ガスセパレータ85,86とガス拡散層83,84との間に、セル内ガス流路を形成するための多孔質体を配置しても良い。
燃料電池30の内部には、さらに、セル間冷媒流路が形成されている(図示せず)。このような冷媒流路は、例えば、積層されたすべての単セル間、具体的には、異なる単セルを構成する隣接し合うガスセパレータ85,86間に形成することができる。あるいは、単セルを所定数積層する毎に、ガスセパレータ85,86間にセル間冷媒流路を形成しても良い。
さらに、燃料電池30には、燃料電池30を、その積層方向に貫通する複数の流路が形成されている。具体的には、各セル内燃料ガス流路87へと燃料ガスを分配するための燃料ガス供給マニホールドと、各セル内燃料ガス流路87から排出された排出燃料ガスが集合する燃料ガス排出マニホールドが形成されている。また、各セル内酸化ガス流路88へと酸化ガスを分配するための酸化ガス供給マニホールドと、各セル内酸化ガス流路88から排出された排出酸化ガスが集合する酸化ガス排出マニホールドが形成されている。さらに、各セル間冷媒流路へと冷媒を分配するための冷媒供給マニホールドと、各セル間冷媒流路から排出された冷媒が集合する冷媒排出マニホールドが形成されている。
単セル35を組み立てる際には、ガスセパレータ85,86間の所定の位置にシール部材(図示せず)を配置して、単セル35内のガス流路やセル間冷媒流路、あるいは各マニホールドにおけるシール性を確保しつつ、ガスセパレータ85,86間を接合する。また、燃料電池30は、単セル35を複数積層して成る積層体の両端に、出力端子を備える集電板(ターミナル)、絶縁板(インシュレータ)、エンドプレートを順次配置することによって形成される。なお、燃料電池30は、図示しない保持部材(例えば、双方のエンドプレートにボルトで結合されたテンションプレート)によって、単セル35の積層方向に締結圧がかかった状態で保持される。なお、燃料電池30には、燃料電池30を構成する各単セル35の電圧を検出するための電圧センサ62が設けられている。
図1に戻り、水素タンク40は、燃料ガスとしての水素ガスが貯蔵される貯蔵装置であり、水素供給流路45を介して燃料電池30の水素供給マニホールドに接続されている。水素供給流路45上において、水素タンク40から近い順に、水素遮断弁41と、可変調圧弁42とが設けられている。可変調圧弁42は、水素タンク40から燃料電池30へ供給される水素圧(水素量)を調整可能な調圧弁である。なお、水素タンク40は、高圧の水素ガスを貯蔵する水素ボンベとする他、水素吸蔵合金を備えて水素吸蔵合金に水素を吸蔵させることによって水素を蓄えるタンクとすることもできる。
燃料電池30の水素排出マニホールドには、水素排出流路46が接続されている。この水素排出流路46には、パージ弁44が設けられている。また、水素供給流路45と水素排出流路46とを接続して、接続流路47が設けられている。接続流路47は、可変調圧弁42よりも下流側で水素供給流路45に接続し、パージ弁44よりも上流側で水素排出流路46に接続している。接続流路47には、流路内を水素が循環する際の駆動力を発生する水素循環ポンプ43が設けられている。
水素タンク40から水素供給流路45を介して供給される水素は、燃料電池30で電気化学反応に供され、水素排出流路46に排出される。水素排出流路46に排出された水素は、接続流路47を経由して、再び水素供給流路45に導かれる。このように、燃料電池システム20において水素は、水素排出流路46の一部、接続流路47、水素供給流路45の一部、および、燃料電池30内に形成される燃料ガスの流路(これらの流路を併せて、水素循環流路と呼ぶ)を循環する。なお、燃料電池30の発電時には、通常はパージ弁44は閉弁されているが、循環する水素中の不純物(窒素や水蒸気等)が増加したときにはパージ弁44は適宜開弁され、これによって、不純物濃度が増加した水素ガスの一部がシステムの外部に排出される。また、電気化学反応の進行による水素の消費や、パージ弁44の開弁によって、水素循環流路内の水素量が不足するときには、可変調圧弁42を介して水素タンク40から水素循環流路へと水素が補われる。
エアコンプレッサ51は、フィルタを備えたエアフロメータ50を介して外部から取り込んだ空気を圧縮し、酸化ガスとして燃料電池30に供給するための装置であり、空気供給流路54を介して、燃料電池30の酸化ガス供給マニホールドに接続されている。また、燃料電池30の酸化ガス排出マニホールドには、空気排出流路55が接続されている。エアコンプレッサ51から空気供給流路54を介して供給される空気は、燃料電池30で電気化学反応に供され、空気排出流路55を介して燃料電池30の外部に排出される。ここで、空気供給流路54には、第1空気遮断弁52が設けられており、空気排出流路55には、第2空気遮断弁53が設けられている。これらの空気遮断弁は、燃料電池30の発電時には開弁されており、燃料電池30の発電停止時には、後述するように閉弁される。
燃料電池30が発電する際には、上記のように、燃料ガスとしての水素がアノードに供給され、酸化ガスとしての空気がカソードに供給されて、各単セル35において電気化学反応が進行する。燃料電池30により発電された電力は、配線70を介してインバータ75に供給され、交流電力に変換されて、車両駆動用の駆動モータ76に供給される。また、燃料電池30とインバータ75とを接続する配線70には、さらに、DC/DCコンバータ73を介して2次電池74が接続されている。2次電池74は、燃料電池30の発電電力に余剰がある場合は、燃料電池30によって充電され、発電電力に不足がある場合は、インバータ75へ放電を行う。また、2次電池74は、電気自動車の制動時には、駆動モータ76が発電機として働くことにより生じた電力を蓄電することもできる。また、2次電池74は、燃料電池30が発電を停止しているときには、制御部60や、制御部60に駆動されるアクチュエータに対して、動作に要する電力を供給する。燃料電池30の発電量(発電状態)は、DC/DCコンバータ73の電圧指令値によって制御される。
燃料電池30と、インバータ75およびDC/DCコンバータ73とを接続する配線70には、スイッチ71および72が設けられている。燃料電池システム20の起動時および停止時には、このスイッチ71,72のオン−オフが制御されることによって、燃料電池30とインバータ75および2次電池74との間の接続が入り切りされる。なお、図1では、燃料電池30に接続される主たる負荷としてインバータ75を介して駆動モータ76が記載されているが、燃料電池30には、さら他の負荷として、電気自動車の空気調整設備や、照明設備が接続されている。
制御部60は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPUと、CPUで各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROMと、同じくCPUで各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAMと、各種信号を入出力する入出力ポート等を備える。制御部60は、エアコンプレッサ51、水素遮断弁41、可変調圧弁42、第1空気遮断弁52、第2空気遮断弁53、水素循環ポンプ43、パージ弁44等に対して駆動信号を出力する。また、電圧センサ62等のセンサ類から、検出信号を取得する。ここで、図1では、制御部60を、燃料電池システム20の一部として記載しているが、制御部60は、電気自動車10全体の制御も行なっており、スイッチ71、DC/DCコンバータ73、インバータ75に対しても、駆動信号を出力する。なお、電気自動車10の各部を制御する制御部は、燃料電池システム20が備える制御部60とは別体で設けて、制御部60との間で必要な情報のやり取りを行なうこととしても良い。
B.システム停止時の処理:
本実施例の燃料電池システム20は、システム停止時に、高い電圧に曝されることによる電極触媒の劣化を抑制すると共に、電解質膜80が有する損傷におけるピンホールの形成を抑制する制御を行なうことにより、システム停止動作に起因する電池性能の低下を抑制している。図3は、燃料電池システム20の停止時に、制御部60のCPUにおいて実行されるシステム停止時処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池システム20に対して停止の指示が入力され、制御部60が停止の指示を取得することにより起動される。システム停止の指示は、例えば、電気自動車10に設けられたイグニションスイッチのオフ操作とすることができる。
本ルーチンが起動されると、制御部60のCPUは、燃料電池30を構成する各単セル35が備える電解質膜80において損傷が形成される膜損傷部位の抵抗値である短絡抵抗値を取得する(ステップS100)。そして、取得した短絡抵抗値に基づいて、各単セル35が備える電解質膜80における電気的な短絡をもたらし得る損傷の有無を判定する(ステップS110)。
ここで、電解質膜80における損傷とは、電解質膜80に形成された物理的な損傷であって、ガスを透過させない程度の微細な大きさの損傷のことであり、例えばガス拡散層の構成材料(例えばカーボンファイバー)が電解質膜80を貫通することによって形成される。電解質膜80においてこのような損傷が形成された膜損傷部位は、他の部位に比べて抵抗が小さいため、損傷を有する単セル35が負電圧になった場合には、膜損傷部位にも電流が流れて短絡が生じ得る。単セル35が負電圧になって、膜損傷部位に電流が流れると、流れた電流および電圧に応じた熱が発生する。このような発熱により温度が上昇し、電解質膜80を構成する高分子電解質の溶融温度に達すると、電解質膜80における膜損傷部位において、ガスが透過可能なピンホールが形成されることになる。本実施例のステップS110では、ステップS100で取得した短絡抵抗値を、所定の基準値と比較して、短絡抵抗値が上記所定の基準値よりも大きいときには、電解質膜80において短絡を生じ得る損傷が存在しないと判断している。したがって、ステップS110で用いる上記基準値は、セル電圧が負電圧になっても、電解質膜80においてピンホール形成を引き起こす望ましくない電流が流れないと判断できる程度に、充分に大きな値が設定されている。ステップS100において、制御部60は、膜損傷判定部として機能する。なお、ステップS100における短絡抵抗値取得の工程については、後に詳しく説明する。
ステップS110において、いずれの単セル35が備える電解質膜80も、電気的な短絡をもたらし得る損傷を有しないと判断されると、制御部60のCPUは、燃料電池30の運転状態を、低エアストイキ運転へと変更すると共に、スイッチ72を切断する(ステップS120)。ここで、低エアストイキ運転とは、燃料電池30に供給する酸素量を抑制した状態で、燃料電池30の発電を行なわせる運転状態(酸素抑制発電)をいう。特に、本実施例では、低エアストイキ運転として、燃料電池30への酸化ガスの供給を停止する制御を行なっている。具体的には、ステップS120では、制御部60のCPUは、エアコンプレッサ51を停止させると共に、第1空気遮断弁52と第2空気遮断弁53とを閉弁させる。また、スイッチ72を切断することにより、燃料電池30および2次電池74と、駆動モータ76との接続を切断する。ステップS120以降、燃料電池30に対して低エアストイキ運転を行なわせる制御を行なう間、制御部60は、酸素抑制発電制御部として機能する。
エアコンプレッサ51を停止させると共に、第1空気遮断弁52と第2空気遮断弁53とを閉弁させることにより、燃料電池30は、第1空気遮断弁52および第2空気遮断弁53によって両端部が閉塞された酸化ガスの流路内に残留する酸素のみを用いて、発電を継続することが可能になる。ステップS120の低エアストイキ運転時には、制御部60のCPUは、DC/DCコンバータ73の電圧指令値を、燃料電池30の電圧値として許容できる値として予め定めた停止時電圧Vに設定する。図4は、燃料電池30の定常状態(負荷要求に応じた発電を行なっている状態)における電流−電圧特性(I−V特性)を表わす説明図である。DC/DCコンバータ73の電圧指令値を、燃料電池30の電圧値として許容できる上限値として定めた停止時電圧Vとするならば、燃料電池30の出力電圧が停止時電圧Vを超えない状態に維持できる。DC/DCコンバータ73の電圧指令値を停止時電圧Vにすると、低エアストイキ運転開始時には、燃料電池30内の酸化ガス流路内の酸素量が充分であるため、燃料電池30の出力電流値は、停止時電圧Vに対応する電流Iとなる。停止時電圧Vを低く設定するほど、燃料電池30内の各単セル35が備える電極が曝される電位を低くすることができるが、停止時電圧Vを低く設定するほど、低エアストイキ運転開始時の出力電流値が大きくなってしまう。そのため停止時電圧Vは、例えば、0.8〜0.95Vとすることが望ましい。スイッチ72を切断して低エアストイキ運転を開始してから燃料電池30が発電する電力は、2次電池74に充電される。
なお、低エアストイキ運転時には、燃料電池30に対する酸化ガスの供給は停止されているため、流路内に残留する酸素が消費されるに従い、酸素が不足する状態になる。一般に燃料電池は、供給される酸素量が少なくなるほどI−V特性が低下する。そのため、低エアストイキ運転を開始すると、DC/DCコンバータ73の電圧指令値を停止時電圧Vにしていても、燃料電池30の電圧(および燃料電池30を構成する各単セル35の電圧)は次第に低下する。
ステップS120で低エアストイキ運転を開始すると、制御部60のCPUは、電圧センサ62から各単セル35の電圧を取得し(ステップS130)、各単セル35の電圧の内の最高セル電圧が、予め定めた第1の基準電圧値VX1を下回ったか否かを判断する(ステップS140)。そして、最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回るまで、ステップS130およびS140の動作を繰り返す。
ステップS140で用いる第1の基準電圧値VX1の値は、低エアストイキ運転を停止して燃料電池30を開回路状態にしたときの単セル35の電圧に基づいて定められている。燃料電池30の発電を停止して、燃料電池30と負荷(ここでは2次電池74)との接続を切断する開回路処理を行なうと、燃料電池30の電圧は発電時(開回路処理前)に比べて上昇する。このような開回路処理直後の端子間電圧(および各単セル35の電圧)は、低エアストイキ運転によって酸素が消費されることによって残留する酸素量が減少し、開回路処理直前の電圧値が低くなるほど低下する。すなわち、低エアストイキ運転によって燃料電池30の出力電圧が低下し、燃料電池30のI−V特性が低下するほど、開回路処理時の電圧は低下する。そのため、第1の基準電圧値VX1は、電圧指令値をVとして低エアストイキ運転を行なっている燃料電池30を開回路処理したときに、開回路処理直後の単セルの電圧が、電極劣化の観点から単セルの電圧値として許容できる電圧(例えば0.6〜0.9V)になる値として設定されている。
ステップS140において最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回ったと判断すると、制御部60のCPUは、低エアストイキ運転を停止して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。低エアストイキ運転を停止する際には、水素遮断弁41とパージ弁44を閉弁状態にすると共に、水素循環ポンプ43を停止させる。そして、スイッチ71を切断することによって、燃料電池30は、開回路状態になる。上記のように、最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1に低下してから開回路処理を行なうことにより、燃料電池の開回路処理の直後に、全ての単セルで、電極触媒の劣化を引き起こす望ましくない程度の電圧上昇を抑えることができる。
ステップS110において、いずれかの単セル35が備える電解質膜80が損傷を有すると判断されると、制御部60のCPUは、燃料電池30の運転状態を、低エアストイキ運転へと変更すると共に、スイッチ72を切断する(ステップS160)。このステップS160の処理は、既述したステップS120と同様の処理である。そして、低エアストイキ運転を開始すると、制御部60のCPUは、ステップS130と同様に、電圧センサ62から、各単セル35の電圧を取得する(ステップS170)。
各単セル35の電圧を取得すると、制御部60のCPUは、ステップS140と同様に最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回ったか否かを判断すると共に、最低セル電圧が第2の基準電圧値VX2を下回ったか否かを判断する(ステップS180)。第2の基準電圧値VX2とは、電解質膜80が有する損傷からピンホールが形成される可能性を判断するための値である。本実施例では、第2の基準電圧値VX2を、0Vに設定している。既述したように、電解質膜80の損傷からのピンホールの形成は、セル電圧が負電圧になる場合に起こり得るため、最低セル電圧が0Vを下回るか否かによって、電解質膜80が有する損傷からのピンホール形成の可能性を判断することができる。
高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回るか、最低セル電圧が第2の基準電圧値VX2を下回るかの、いずれかの条件に該当するまで、制御部60のCPUは、ステップS170およびS180の処理を繰り返す。ステップS180において、高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回った時点、あるいは、最低セル電圧が第2の基準電圧値VX2を下回った時点の、いずれか早いときに、制御部60のCPUは、低エアストイキ運転を停止すると共に、スイッチ71を切断して(ステップS150)、本ルーチンを終了する。
なお、低エアストイキ運転時には、酸化ガス流量が不足して、各単セル35における酸化ガスの分配量が不均一になることにより、一部の単セル35において、転極が生じる、すなわち、電圧が負電圧となる場合がある。このように転極して負電圧になると、負電圧になった単セル35の電解質膜80が損傷を有する場合には、既述したように膜損傷部位に電流が流れるようになって、局所的に過剰な発熱が生じ、膜損傷部位にピンホールが生じる場合がある。本実施例では、電解質膜80が損傷を有すると判断されると、最低セル電圧が0Vを下回るときには低エアストイキ運転を停止して発電を停止することにより、転極に起因する膜損傷箇所からのピンホール形成を抑制している。
以上のように構成された本実施例の燃料電池システム20によれば、システム停止時に燃料電池30の発電を停止する際に、一旦低エアストイキ運転を行ない、最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回ったときに燃料電池30の開回路処理を行なうため、燃料電池30の電圧が望ましくない高電圧(例えば、負荷に対する通常の発電を停止した状態における開回路電圧)となることを抑制できる。そのため、望ましくない程度に高電位になることに起因する電極触媒の劣化(特に、カソード触媒の劣化)を抑制することができる。また、このような制御を行なう際に、電解質膜80が損傷を有する場合であって、最低セル電圧が0Vを下回るときには、最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回っていなくても、低エアストイキ運転を停止する。そのため、低エアストイキ運転を行なうことに起因して燃料電池30で転極する単セル35が生じる場合であっても、負電圧になることに起因するピンホール形成を抑え、ピンホール形成に起因する電池性能の低下を抑制することができる。
ここで、高電位に曝されることに起因する電極の劣化は、徐々に進行するものである。そのため、燃料電池30における望ましくない程度の電圧上昇は、燃料電池30の耐久性向上のためには抑制すべきであるが、多少の高電位に曝されたからといって、燃料電池30の発電に直ちに支障が生じるわけではない。これに対して、電解質膜80にピンホールが発生すると、次回以降の燃料電池30の発電時に、ピンホールを介して燃料ガスと酸化ガスのクロスリークが起こり、電池性能の低下が引き起こされる可能性がある。そのため、本実施例では、電解質膜80が損傷を有しない場合には、開回路処理時の電圧を低下させるための制御のみを行なって高電位に曝されることを抑制し、電解質膜80が損傷を有する場合には、開回路処理時の電圧を低下させるための制御に加えて、損傷からのピンホールの発生を抑制するための制御を行なっている。このように、本実施例では、高電位になることを抑制して燃料電池30の耐久性の向上を図りつつ、直ちに燃料電池の性能低下を引き起こすピンホール形成の可能性がある場合には、ピンホール形成の抑制を優先することによって、全体として、燃料電池30の性能確保を図っている。
また、本実施例では、電解質膜80が損傷を有しないと判断される時には、最低セル電圧に基づくピンホール形成に係る判断を行なっていない。このように、たとえ転極が起こってもピンホールが形成されないと考えられる時には、判断に係る処理工程を削減することにより、制御時における処理負担を軽減することができる。また、本実施例では、燃料電池システム20の停止時において、毎回、短絡抵抗値を取得して膜損傷の有無を判定している。そのため、膜損傷の有無の判定精度を確保して、システム停止時に適切な処理を行なうことができる。
C.短絡抵抗値について:
制御部60のCPUがステップS100で実行する短絡抵抗値の取得について、以下に説明する。本実施例では、短絡部位抵抗値を、単セル35の特性に基づいて推定している。図5は、図3のステップS100において実行される短絡抵抗値取得処理ルーチンを表わすフローチャートである。
本ルーチンが起動されると、制御部60のCPUは、スイッチ71を一瞬だけ切断して、電圧センサ62から、各単セル35の開回路電圧(OCV)を取得する(ステップS200)。本実施例では、既述したように、システム停止の指示が入力されたときに、直ちに開回路処理を行なうことにより燃料電池の電極が高い電位に曝されることを抑制するために、図3のシステム停止時処理ルーチンを実行している。ステップS200においては、スイッチ71を切断して燃料電池の電圧を高電圧にしているが、スイッチ71を切断する時間を極めて短く設定することによって、電極電位が上昇することによる影響を、許容範囲に抑えている。
各単セル35のOCVを検出すると、制御部60のCPUは、OCVが初期値から低下した単セル35が存在するか否かを判定する(ステップS210)。制御部60は、各単セル35のOCVの初期値を記憶しており、ステップS210では、記憶した初期値と、ステップS200で検出した値とを比較することにより判定を行なう。
ここで、単セル35の電解質膜80においては、膜損傷が発生する他に、アノード81からカソード82へ水素ガスが漏洩するクロスリークが発生する場合がある。一般に、OCVの低下は、損傷が発生することによる膜損傷部位における抵抗値の低下と、クロスリークとにより引き起こされる。従って、ステップS210においてOCVが初期値から低下した単セル35が存在しないと判定された場合には、制御部60のCPUは本ルーチンを終了し、その後のステップS110においては、いずれの単セル35が備える電解質膜80においても、電気的な短絡をもたらし得る損傷が生じていないと判断される。
ステップS210において、OCVが初期値から低下した単セル35が存在すると判定された場合には、制御部60のCPUは、OCVが低下した単セル35(以下、セルBとも呼ぶ)とOCVが初期値から変化していない単セル35(以下、セルAとも呼ぶ)とのIV特性を比較して、クロスリークによる電圧低下量を推定する(ステップS220)。本実施例では、燃料電池システム20の運転中において、各負荷における電流値と電圧値とを測定することによって、各単セル35におけるIV特性が求められている。
図6は、単セル35のIV特性測定結果の一例を示す説明図である。図6には、OCVが変化していないセルAのIV特性とOCVが低下したセルBのIV特性との測定結果を示している。制御部60のCPUは、両者のIV特性における所定の高負荷時の電圧差をクロスリークによる電圧低下量であると推定する。高負荷時においては、膜損傷部位の抵抗値の低下を原因とする電圧低下量はクロスリークを原因とする電圧低下量と比べて無視できる程度に小さく、また、クロスリークの量は電流と無関係に一定であるため、このような推定が成り立つ。所定の高負荷時は、例えば電流密度が0.5A/cm以上の時であることが好ましい。図6の例では、電流密度が1.0A/cmの時のセルAとセルBとの電圧差を、クロスリークによる電圧低下量と推定している。このようにすれば、セル電圧の低下量を、クロスリークを原因とする電圧低下量と膜損傷部位の抵抗値の低下を原因とする電圧低下量とに分けることができる。
次に、制御部60のCPUは、クロスリークによる電圧低下量に基づき補正されたセルBのOCVを算出する(ステップS230)。図6には、クロスリークによる電圧低下量に基づき補正されたセルBのIV特性(クロスリークによる電圧低下量が無いと仮定した場合のセルBのIV特性)も示している。補正後のセルBのOCV(以下、「補正後開回路電圧Vc」と呼ぶ)は、補正前のセルBのOCVをクロスリークによる電圧低下量分だけ上昇させた値である。ここで、算出された補正後のセルBのOCVがセルAのOCVと同一である場合には、OCVの低下がクロスリークのみにより引き起こされたと考えられる。そのため、制御部60のCPUは、ステップS230に引き続き、補正後のセルBのOCVがセルAのOCVと同一であるか否かを判断し(ステップS240)、同一である場合には本ルーチンを終了する。この場合には、その後のステップS110においては、いずれの単セル35が備える電解質膜80も損傷を有しないと判断される。
ステップS240において、補正後のセルBのOCVがセルAのOCVと同一ではないと判断すると、制御部60のCPUは、セルAのIV特性からVR特性(セル電圧と抵抗との関係)を導出する(ステップS250)。図7には、算出されたセルAのVR特性の一例を示している。セルAのVR特性を導出すると、制御部60のCPUは、セルBの補正後開回路電圧VcとセルAのVR特性とに基づき、セルBの膜損傷部位の抵抗値を導出して(ステップS260)、本ルーチンを終了する。具体的には、制御部60のCPUは、セルBの膜損傷部位の抵抗値は、セルAのVR特性(図7)におけるセルBの補正後開回路電圧Vcに対応する抵抗値Rsに等しいと推定する。
図8は、セルBの膜損傷部位の抵抗値の推定方法の理論を示す説明図である。セルAのIV特性(図6参照)の測定は、図8(a)に示すように、負荷の抵抗を変化させつつ電圧値と電流値とを測定したものであると捉えることができる。セルAのVR特性は、単にセルAのIV特性をV=I・Rの関係に基づき変形したものであるため、やはり図8(a)に示す測定に基づいたものである。一方、セルBの補正後開回路電圧Vcは、図8(b)に示すように、無負荷時において膜損傷部位にかかる電圧である。ここで、図8(a)に示す回路と図8(b)に示す回路とは同一である。従って、セルBの膜損傷部位の抵抗値は、セルAのVR特性におけるセルBの補正後開回路電圧Vcに対応する抵抗値に等しいと推定することができる。
なお、図5のステップS210において、OCVが低下した単セル35が複数存在すると判定された場合には、単セル35毎にステップS220からS260までの処理が行われ、各単セル35の膜損傷部位の抵抗値が推定される。
上記実施例では、短絡抵抗取得処理ルーチンにおいて、OCVが初期値から変化していないセルAのIV特性やOCVを用いているが、異なる構成としても良い。例えば、燃料電池30の製造時(出荷時)における単セル35のIV特性やVR特性を予め制御部60内に記憶しておき、図5の処理において、記憶しておいた初期特性を、実施例におけるセルAの特性に代えて用いることとしても良い。なお、初期特性は、単セル35毎に記憶しておくこととしてもよいが、燃料電池30における各単セル35の構成や仕様は互いに同一であるため、1つの代表の単セル35の特性のみを記憶しておくこととしてもよい。このような構成とすれば、OCVが初期値から変化していない単セル35が存在しない場合にも、記憶した初期特性を用いてセルBの膜損傷部位の抵抗値を推定することができ、システムの複雑化や制御の煩雑化を抑制しつつ、燃料電池30の電解質膜におけるピンホールの発生を有効に抑制することができる。
あるいは、単セル35の初期特性を予め記憶しておくと共に、ステップS210においてOCVが初期値よりも低下した単セル35が存在すると判断した後には、さらに、ステップS220に先だって、OCVが初期値と変わらない単セル35が存在するか否かを判断しても良い。この場合には、OCVが初期値と変わらないセルAが存在する場合には、セルAについて求めた特性に基づいて、ステップS220以降の処理を行なえばよい。そして、OCVが初期値と変わらないセルAが存在しない場合には、セルAのIV特性およびVR特性に代えて、記憶しておいた初期特性を用いて、ステップS220以降の処理を行なえばよい。
このような構成とすれば、OCVが初期値よりも低下した単セル35が存在しない場合にも対応可能であると共に、短絡抵抗値の取得の精度を高めることができる。ここで、燃料電池システム20において発電を行うと、各単セル35における膜損傷やクロスリークの発生によってIV特性が変化する他に、他の原因(例えば触媒劣化)による性能低下によってもIV特性が変化する場合がある。この性能低下によるIV特性の変化は、燃料電池30の各単セル35においてほぼ共通であると考えられる。そのため、図5に示したようにOCVが初期値から変化していないセルAとOCVが低下したセルBとを比較することにより膜損傷部位の抵抗値を推定する方法を採用する方が、性能低下によるIV特性の変化に伴う誤差が生じにくいという点で、既述した初期特性とOCVが低下したセルBとを比較することにより膜損傷部位の抵抗値を推定するよりも推定の精度が高いと考えられる。
D.第2実施例:
第1実施例では、ステップS180において、最低セル電圧と第2の基準電圧値VX2(0V)とを比較して、ピンホール形成の可能性について判断しているが、異なる構成としても良い。図9は、第2実施例の燃料電池システム20の制御部60のCPUにおいて、図3のシステム停止時処理ルーチンに代えて実行されるシステム停止時処理ルーチンを表わすフローチャートである。第2実施例の燃料電池システム20は、第1実施例の燃料電池システム20と同様の構成であるため、詳しい説明は省略する。図9のシステム停止時処理ルーチンでは、ステップS180に代えてステップS380の工程を行なう以外は図3と同様の処理を行なう。第2実施例では、ステップS110で膜損傷有りと判定されたときには、最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1を下回ったか否かを判断すると共に、膜損傷有りと判定された単セルの電圧が、第2の基準電圧値VX2を下回ったか否かを判断する。負電圧になったときにピンホール形成の可能性があるのは、膜損傷有りと判定された単セルである。したがって、このような構成とすれば、ピンホール形成の可能性が無い膜損傷のないセルの電圧が負電圧となっても、低エアストイキ運転を継続することができる。そのため、開回路処理時の電圧をより低くして、ピンホールを形成することなく、燃料電池30の耐久性を向上させることができる。
E.第3実施例:
図10は、第3実施例の燃料電池システム120を搭載する電気自動車110の概略構成を表わすブロック図である。第3実施例の燃料電池システム120は、第1空気遮断弁52と、第2空気遮断弁53とを有しないこと以外は、第1および第2実施例の燃料電池システム20と同様の構成を有している。第3実施例の燃料電池システム20では、システム停止の指示が入力されると、図3と同様のシステム停止時処理ルーチンが実行される。このとき、第3実施例では、第1空気遮断弁52および第2空気遮断弁53を有しないため、ステップS120あるいはS160で低エアストイキ運転を開始するときに、これらの弁の閉弁は行なわれない。このような構成としても、第1および第2実施例と同様の効果を得ることができる。また、第1空気遮断弁52および第2空気遮断弁53を設けないことにより、部品点数を削減し、システム構成を簡略化することができる。
F.第4実施例:
第1実施例では、ステップS180において最低セル電圧と比較して、ピンホール形成の可能性について判断するための第2の基準電圧値VX2を、0Vに設定しているが、異なる構成としても良い。以下に、第4実施例として、電解質膜にピンホールが形成される発熱量に基づいて第2の基準電圧値VX2を設定する構成を説明する。
図11は、第4実施例における第2の基準電圧値VX2の設定方法を表わすフローチャートである。第2の基準電圧値VX2を設定する際には、まず、電解質膜80の分解温度Tdを導出する(ステップS400)。電解質膜80の分解温度Tdは、例えば、電解質膜を加熱しつつ電解質膜の重量を測定し、高分子電解質の分解により電解質膜重量が減少する温度を求めることにより導出することができる。具体的には、例えば、加熱する電解質膜の温度をサーモグラフィーにより計測すると共に、重量を測定して重量減少量微分値を求め、重量減少量微分値が上昇し始める温度として、分解温度Tdを求めることができる。電解質膜80の分解温度Tdは、例えば300℃に設定される。
次に、分解温度Tdを用いて、電解質膜80が分解温度Tdまで温度上昇して、ピンホールを生じるために要する熱量(必要熱量Q)を求める(ステップS410)。既述したように、単セル35に膜損傷部位が存在している状態で負電圧での発電を継続すると、膜損傷部位の抵抗が比較的小さいことにより、膜損傷部位にも電流が流れて膜損傷部位の温度が上昇する。そして、膜損傷部位の温度が電解質膜80の分解温度Td以上になると、膜損傷部位周辺の電解質膜が分解消失して、電解質膜80にピンホールが発生する。したがって、ステップS410で求める必要熱量Qは、膜損傷部位に電流が流れて生じる熱によって電解質膜80の膜損傷部位が溶融してピンホールを形成するために、膜損傷部位で発生すべき熱量である。電解質膜80の膜損傷部位に電流が流れて生じる熱は、電解質膜80と共に、電極と、ガス拡散層と、電解質膜中に含まれる水を加熱する。そのため、必要熱量Qは、電解質膜80を含むこれらの被加熱部の、比熱と、生じるピンホールの大きさ(例えば1000μm)に応じた重量(各々の被加熱部の全体の重量や体積や厚みに基づいて求められる)と、分解温度Tdまでの上昇温度に基づいて算出することができる。
必要熱量Qが算出されると、転極が生じた単セルの電解質膜における膜損傷部位に電流が流れることによって必要熱量Qが生じるときのセル電圧である原閾値V1oを算出する(ステップS420)。セル電圧V1oを算出する際には、まず、図12(a)に示すように単セル35のMEA89を可変抵抗とみなし、下記の式(1)を用いて原閾値V1oを算出する。式(1)において、Rは測定された膜損傷部位の抵抗(短絡抵抗値)であり、Qは上述した必要熱量Qである。原閾値V1oは、単セル35の膜損傷部位の温度が電解質膜80の分解温度Tdと等しくなる際の単セル35の電圧である。従って、単セル35の電圧が原閾値V1oより大きくなるように燃料電池30の制御を行えば、単セル35の膜損傷部位の温度は電解質膜80の分解温度Tdより小さくなる。
V1o=−(R×Q)0.5 ・・・(1)
原閾値V1oを算出すると、この原閾値V1oに安全係数を加算することで(ステップS430)、第2の基準電圧値VX2を設定することができる。なお、ステップS410で求められる必要熱量Qは、予め算出されて制御部60に記憶されている。また、ステップS420、S430は、図3のシステム停止時処理ルーチンが実行されて、ステップS110で膜損傷が生じた単セルが存在すると判断されたときに、膜損傷が生じた単セルについてステップS100で取得された短絡抵抗値を用いて、実行される。原閾値V1oよりも充分に大きな値として定めた第2の基準電圧値VX2よりも、最低セル電圧が小さくなる時点で、低エアストイキ運転を停止する制御を行なうことにより、電解質膜80におけるピンホールの発生を防止することができる。
本実施例によれば、電解質膜におけるピンホール形成温度に基づいて第2の基準電圧値VX2を設定しているため、ピンホール形成を抑制しつつ、第1実施例に比べてより長く低エアストイキ運転を継続することができる。したがって、ピンホール形成抑制の信頼性を確保しつつ、開回路処理時の電圧をより低くすることができ、電極触媒の劣化抑制の効果をさらに高めることができる。
なお、このように電解質膜におけるピンホール形成温度に基づいて算出した第2の基準電圧値VX2は、図3のステップS180に代えて、図9のステップS380において用いても良い。すなわち、最低セル電圧ではなく、膜損傷を有する単セルのセル電圧と、第2の基準電圧値VX2とを比較して、ピンホール形成の可能性を判定しても良い。システム停止時処理ルーチンにおける処理負担などを考慮して、最低セル電圧を用いるか、膜損傷を有する単セルのセル電圧を用いるかを定めればよい。
G.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
G1.変形例1:
第1ないし第4実施例では、低エアストイキ運転は、酸化ガスの供給を停止して行なったが、異なる構成としても良い。例えば、低エアストイキ運転時において通常の発電時に比べて少ない流量の酸化ガスの供給をしばらく行なっても良く、通常の発電時に比べて酸化ガスの供給量(カソードに供給する酸素量)が抑制されていればよい。酸化ガスの供給を停止する場合に比べて、抑制した量の酸化ガスの供給を継続する場合には、燃料電池の電圧低下の速度を緩やかにすることができる。実施例のような電圧に基づく停止の制御を行なう際に、急激に電圧が低下する場合には、電圧低下の検出や判断の動作のスピードに対して電圧低下のスピードが速くなり、電圧値に基づく制御を精度良く行なうことが困難になる場合がある。そのため、酸素の供給をある程度継続して、電圧低下の速度を緩やかにすることにより、電圧値に基づく制御の動作の精度を向上させることができる。
G2.変形例2:
第1ないし第4実施例では、低エアストイキ運転を停止する際に、最高セル電圧が第1の基準電圧値VX1まで低下したか否かを判断しているが、異なる構成としても良い。例えば、全ての単セルの電圧の平均値と基準値とを比較しても良い。あるいは、セル電圧が基準値にまで低下する単セルの割合が所定値に達したときに、低エアストイキ運転を停止しても良い。実施例のように、最高セル電圧を用いる場合には、全ての単セルの電圧を所望の電圧以下にすることができるため、高電位を抑制する信頼性を高めることができるが、異なる構成としても、開回路処理時の電圧を充分に低くできるように基準値を設定すれば、実施例と同様の効果が得られる。
G3.変形例3:
第1ないし第4実施例では、ステップS100における短絡抵抗値の取得を、スイッチ71を一瞬だけ切断して、各単セル35の開回路電圧(OCV)を取得することにより行なったが、異なる構成としても良い。燃料電池システム20を停止する度に各単セルの短絡抵抗値を取得可能であって、短絡抵抗値の取得の際に、望ましくない程度に各単セルの電圧を上昇させることがなければ、他の方法により短絡抵抗値を求めても良い。また、第1ないし第4実施例では、膜損傷が生じた単セルの有無に係る判定を、各単セルの短絡抵抗値の導出と、導出した短絡抵抗値と基準値との比較により行なったが、異なる構成としても良い。単セルが負電圧となってもピンホールが形成されない程度に膜損傷が存在しない状態であることを判定できれば、異なる方法を用いても良い。
G4.変形例4:
第1ないし第4実施例では、電極を、触媒担持カーボン粒子と高分子電解質によって構成しているため、カソードが高電位になると、カーボン粒子が酸化することによりカソードが形態変化しているが、異なる構成としても良い。カソードは、例えば、触媒を担持する担体として、カーボン製の担体に代えてチタン酸化物製の担体を用いて形成しても良い。あるいは、担体を用いることなく、白金等の触媒金属のみによってカソードを形成しても良い。カソードの構成材料によって、カソードの酸化が起こる電位の大きさが異なるため、用いるカソードの種類に応じて、第1の基準電圧値VX1を適宜設定すればよい。このような場合であっても、酸化に起因するカソードの形態変化を抑制することにより、実施例と同様の効果を得ることができる。
G5.変形例5:
第1ないし第4実施例において、低エアストイキ運転を行なう際には、低エアストイキ運転により燃料電池30が発電した電力は、2次電池74の充電に用いることとしている。しかしながら、2次電池74の残存容量SOCが所定の基準値以上であって、それ以上充電を行なうと過充電となる可能性がある場合には、低エアストイキ運転を行なわないこととしても良い。また、低エアストイキ運転によって発電された電力を、駆動モータ76以外の車両補機などの負荷に対して供給することとしても良い。あるいは、燃料電池システム20に対して、低エアストイキ運転時に発電した電力を消費するための負荷を、別途用意しても良い。
G6.変形例6:
第1ないし第4実施例では、燃料電池システム20を電気自動車の駆動用電源としたが、異なる構成としても良い。他種の移動体の駆動用電源としても良く、あるいは、本発明の燃料電池システムを、定置型の電源に適用しても良い。起動と停止を繰り返す燃料電池システムにおいて本発明を適用することにより、停止の動作に起因する燃料電池の性能低下を抑制する同様の効果が得られる。また、燃料電池システムが備える燃料電池は、フッ素系以外の高分子電解質膜を備えることとしても良く、固体高分子形燃料電池であれば、本願を適用することにより転極時のピンホール形成を抑制できるため、同様の効果を得ることができる。
10,110…電気自動車
20,120…燃料電池システム
30…燃料電池
35…単セル
40…水素タンク
41…水素遮断弁
42…可変調圧弁
43…水素循環ポンプ
44…パージ弁
45…水素供給流路
46…水素排出流路
47…接続流路
50…エアフロメータ
51…エアコンプレッサ
52…第1空気遮断弁
53…第2空気遮断弁
54…空気供給流路
55…空気排出流路
60…制御部
62…電圧センサ
70…配線
71,72…スイッチ
73…DC/DCコンバータ
75…インバータ
76…駆動モータ
80…電解質膜
81…アノード
82…カソード
83,84…ガス拡散層
85,86…ガスセパレータ
87…セル内燃料ガス流路
88…セル内酸化ガス流路
89…MEA

Claims (12)

  1. 燃料電池を備える燃料電池システムであって、
    前記燃料電池システムの停止の指示を取得すると、前記燃料電池に対する酸素の供給量を抑制した状態で前記燃料電池を発電させる酸素抑制発電制御を実行する酸素抑制発電制御部と、
    前記燃料電池の電圧を検出する電圧検出部と、
    前記燃料電池が有する電解質膜における、電気的な短絡をもたらし得る損傷の有無を判定する膜損傷判定部と、
    前記酸素抑制発電制御部が前記酸素抑制発電制御を行なう際に、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有しないと判定された場合には、前記電圧検出部が検出した前記電圧が、前記燃料電池の発電停止時の電圧の上限値として予め定めた第1の基準電圧値まで低下したときに、前記燃料電池の発電を停止させ、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有すると判定された場合には、電解質膜の前記損傷からピンホールが生じ得る条件として予め定めたピンホール形成条件に該当する時点と、前記電圧が前記第1基準電圧値まで低下する時点の、いずれか早いときに、前記燃料電池の発電を停止させる停止制御部と、
    を備える燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の燃料電池システムであって、
    前記燃料電池は、前記電解質膜および電極を備える単セルを複数積層して成り、
    前記電圧検出部は、各々の前記単セルの電圧を検出し、
    前記停止制御部は、前記酸素抑制発電制御部が前記酸素抑制発電制御を行なう際に、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有しないと判定された場合には、前記電圧検出部が検出した各々の単セルの電圧の内の最も高い最高セル電圧が、前記燃料電池の発電停止時における前記単セルの電圧の上限値として予め定めた前記第1の基準電圧値まで低下したときに、前記燃料電池の発電を停止させ、前記膜損傷判定部によって前記電解質膜が前記損傷を有すると判定された場合には、前記電解質膜の前記損傷からピンホールが生じ得る条件として予め定めたピンホール形成条件に該当する時点と、前記最高セル電圧が前記第1基準電圧値まで低下する時点の、いずれか早いときに、前記燃料電池の発電を停止させる
    燃料電池システム。
  3. 請求項2記載の燃料電池システムであって、
    前記ピンホール形成条件は、前記電圧検出部が検出した各々の前記単セルの電圧の内の最も低い最低セル電圧が、前記第1の基準電圧値よりも低い第2の基準電圧値であって、前記電解質膜の前記損傷からピンホールが形成され得る基準電圧として定めた第2の基準電圧まで低下する条件である
    燃料電池システム。
  4. 請求項2記載の燃料電池システムであって、
    前記膜損傷判定部は、各々の前記単セル毎に、該単セルが備える前記電解質膜における前記損傷の有無を判定し、
    前記ピンホール形成条件は、前記膜損傷判定部が前記損傷を有していると判定した電解質膜を有する単セルの電圧が、前記第1の基準電圧値よりも低い第2の基準電圧値であって、前記電解質膜の前記損傷からピンホールが形成され得る基準電圧として定めた第2の基準電圧まで低下する条件である
    燃料電池システム。
  5. 請求項3または4記載の燃料電池システムであって、
    前記第2の基準電圧値は、0Vである
    燃料電池システム。
  6. 請求項3または4記載の燃料電池システムであって、
    前記第2の基準電圧値は、前記損傷からピンホールを生じるために要する熱量を生じる時の電圧値に基づいて設定される値である
    燃料電池システム。
  7. 請求項2ないし6いずれか記載の燃料電池システムであって、
    前記第1の基準電圧値は、前記酸素抑制発電制御による発電を行なっている前記燃料電池における前記最高セル電圧が前記第1の基準電圧に低下したものとして前記燃料電池の両端子を開回路状態にしたときの、前記最高セル電圧における開回路電圧が、0.6〜0.9Vとなる値として設定されている
    燃料電池システム。
  8. 請求項1ないし7いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、
    各々の前記単セルが備える前記電解質膜について、該電解質膜において損傷が形成される膜損傷部位の抵抗値である短絡抵抗値を取得する短絡抵抗値取得部を備え、
    前記膜損傷判定部は、いずれかの前記単セルが備える前記電解質膜における前記短絡抵抗値が、予め定めた基準抵抗値以下であるときに、前記電解質膜が電気的な短絡をもたらし得る損傷を有すると判定する
    燃料電池システム。
  9. 請求項8記載の燃料電池システムであって、
    前記基準抵抗値は、前記単セルが転極して負電位となってもピンホールが発生しない値として定められている
    燃料電池システム。
  10. 請求項8または9記載の燃料電池システムであって、
    前記短絡抵抗値取得部は、前記燃料電池システムの停止の指示を取得する度に、前記短絡抵抗値を取得し、
    前記膜損傷判定部は、前記短絡抵抗取得部が前記短絡抵抗値を取得する度に、前記停止制御部による前記燃料電池停止の制御に先だって、前記電解質膜における前記損傷の有無を判定する
    燃料電池システム。
  11. 請求項1ないし10いずれか記載の燃料電池システムであって、
    前記停止制御部は、前記燃料電池に対するガス供給を停止すると共に、前記燃料電池を開回路状態にすることにより、前記燃料電池の発電を停止させる
    燃料電池システム。
  12. 請求項1ないし11いずれか記載の燃料電池システムであって、さらに、
    前記燃料電池システムに対して設けられた負荷に対して、前記燃料電池と共に、あるいは、前記燃料電池に代えて電力供給可能な2次電池を備え、
    前記停止制御部は、前記酸素抑制発電制御として、前記燃料電池に対する電圧指令値を、予め定めた許容電圧値に維持して、前記燃料電池によって前記2次電池を充電させる制御を行なう
    燃料電池システム。
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JP2016062785A (ja) * 2014-09-18 2016-04-25 トヨタ自動車株式会社 燃料電池システム
KR101822275B1 (ko) * 2016-04-27 2018-01-25 현대자동차주식회사 연료전지 핀홀 진단방법 및 시스템

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