JP2023127065A - ポリエステル樹脂、並びに不織布及びその製造方法 - Google Patents

ポリエステル樹脂、並びに不織布及びその製造方法 Download PDF

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秀夫 上田
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Abstract

【課題】高温環境下での収縮率が抑制された低コストのポリエステル不織布及びその不織布に適したポリエステル樹脂を提供すること。【解決手段】ポリエステル樹脂組成物の繊維からなる不織布が提供される。ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物の質量に対して90質量%以上の第1の樹脂を含む。第1の樹脂は酸成分とアルコール成分との重合体である。酸成分は酸成分の総量に対して90mol%以上のテレフタル酸成分を含む。アルコール成分はアルコール成分の総量に対して90mol%以上のエチレングリコール成分を含む。不織布を構成するポリエステル樹脂組成物が下記1)~3)を満たす。1)0.25~0.45の極限粘度を有する。2)250℃~260℃の融点を有する。3)185℃~235℃で降温結晶化温度を有する。【選択図】なし

Description

本開示は、ポリエステル樹脂に関する。また、本開示は不織布及びその製造方法に関する。
熱可塑性樹脂から作製された不織布として、例えば、メルトブローン法から作製されたメルトブローン不織布がある。メルトブローン不織布は、フィルタ、吸音材、断熱材等の種々の用途で使用されている。
メルトブローン法は直接熱可塑性ポリマーから極細繊維のウェブを製造するプロセスである。メルトブローン法の製造プロセスの典型的な例においては、溶融させた熱可塑性ポリマーを密に配置させた小径オリフィスを含むダイに通し、高温高速の熱風によって極細繊維へと細化したものを集積して、メルトブローン不織布繊維ウェブを得ることができる。
メルトブローン不織布に使用される熱可塑性樹脂としてポリプロピレンがある。しかしながら、ポリプロピレンの融点は約160℃である。このため、ポリプロピレンメルトブローン不織布は耐熱が必要とされる用途には向いていない。耐熱性が必要とされる用途にはポリブチレンテレフタレート(PBT;Polyebutylene Terephthalate)が使用されているが、ポリプロピレンより高価であり、より安価な材料が市場から望まれている。PBT以上の融点を有する熱可塑性樹脂としては、融点が約260℃であるポリエチレンテレフタレート(PET;Polyethylene Terephthalate)が挙げられる。しかしながら、PETの結晶化速度は遅く、メルトブローン法によって作製されたPET繊維の結晶性は低くなっている。このため、PETメルトブローン不織布は、高温環境において結晶化の進行とともに収縮する為、耐熱性としては不十分である。そこで、収縮率を抑制したメルトブローン不織布が知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特許文献1には、熱安定性不織布ウェブであって、メルトブローン繊維であって、少なくとも選択されたメルトブローン繊維が、各々ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とポリ(エチレンテレフタレート)(PET)とのブレンドを含むブレンドポリマー繊維であり、約35:65~約65:35のPBT対PETの平均重量比を呈する、メルトブローン繊維と、短繊維であって、ウェブの前記繊維材料の総重量の約10重量%~約60重量%を構成する、短繊維と、を含み、熱安定性不織布ウェブが、約10%未満の熱収縮を呈する、熱安定性不織布ウェブが記載されている。
特許文献2には、ポリエチレンテレフタレートメルトブロー繊維からなるメルトブロー不織布を180℃以下の乾熱処理に供して、熱水面収縮率が20%以下のメルトブロー不織布とするメルトブロー不織布の製造方法が記載されている。
特表2017-519127号公報 特開平3-45768号公報
以下の分析は、本開示の観点から与えられる。
特許文献1に記載の熱安定性不織布ウェブにおいては、PETにPBTを35質量%以上混合し、PBTと同等レベルの熱収縮性を得ている。しかしながら、一部でも高価なPBTを使用することから、コストメリットとしては大きくない。また、PETと他の樹脂とを混合すると、一般的に、混合樹脂の融点はPETよりも低下する。このため、特許文献1に記載の熱安定性不織布ウェブでは、PETのメルトブローン不織布よりも融点が低下してしまう。
特許文献2に記載のメルトブロー不織布に製造方法においては、不織布を作製後にアニール処理を施すことによってPETの結晶化度を高めている。しかしながら、このような方法では、アニール処理のための工程及び設備が必要となり、製造コストの観点において好ましくない。
そこで、高い融点を有し、メルトブローン法に適した結晶化速度を有する安価な材料及び高温環境下で低い熱収縮率を有する不織布が望まれている。
本発明の第1視点によれば、ポリエステル樹脂組成物の繊維からなる不織布が提供される。ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂組成物の質量に対して90質量%以上の第1の樹脂を含む。第1の樹脂は酸成分とアルコール成分との重合体である。酸成分は酸成分の総量に対して90mol%以上のテレフタル酸成分を含む。アルコール成分はアルコール成分の総量に対して90mol%以上のエチレングリコール成分を含む。不織布を構成するポリエステル樹脂組成物が下記1)~3)を満たす。
1)0.25~0.45の極限粘度を有する;
2)250℃~260℃の融点を有する;
3)185℃~235℃で降温結晶化温度を有する。
本発明の第2視点によれば、不織布を製造するためのポリエステル樹脂が提供される。ポリエステル樹脂は、下記a)~c)を満たす:
a)0.30dl/g~0.50dl/gの極限粘度を有する;
b)250℃~260℃の融点を有する;
c)185℃~235℃の降温結晶化温度を有する。
本発明の第3視点によれば、下記a)~c)を満たすポリエステル樹脂を準備する準備工程と、ポリエステル樹脂からポリエステル不織布を作製する不織布作製工程と、を含む、ポリエステル不織布の製造方法が提供される。ポリエステル不織布の製造方法は、不織布を150℃以上の温度で加熱する加熱工程を含まない:
a)0.30dl/g~0.50dl/gの極限粘度を有する;
b)250℃~260℃の融点を有する;
c)185℃~235℃の降温結晶化温度を有する。
本開示のポリエステル不織布は、高い耐熱性を有する。
本開示のポリエステル樹脂は、耐熱性の高いポリエステル不織布の製造に適している。
本開示のポリエステル不織布の製造方法によれば、不織布作製後に加熱工程を要することなく、耐熱性の高いポリエステル不織布を製造することができる。
本開示の不織布は、高い耐熱性を有する。
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
上記第1視点の好ましい形態によれば、ポリエステル樹脂組成物がポリエステル樹脂組成物の質量に対して0.3質量%~7質量%のタルク粉末を含む。
上記第1視点の好ましい形態によれば、ポリエステル樹脂組成物がポリエステル樹脂組成物の質量に対して0.05質量%~0.5質量%の酢酸塩粉末を含む。
上記第1視点の好ましい形態によれば、不織布作製後150℃以上に未加熱の不織布を180℃で15分間加熱した時の一方向の長さの収縮率が加熱前の長さを基準として10%以下である。
上記第1視点の好ましい形態によれば、不織布作製後150℃以上に未加熱の不織布を構成する前記ポリエステル樹脂組成物について測定した結晶化度が50%以上である。
上記第1視点の好ましい形態によれば、第1の樹脂が下記a)~c)を満たす:
a)0.30dl/g~0.50dl/gの極限粘度を有する;
b)250℃~260℃の融点を有する;
c)185℃~235℃で降温結晶化温度する。
上記第3視点の好ましい形態によれば、ポリエステル不織布の製造方法は、準備工程及び不織布作製工程のうちの少なくとも1つにおいて、不織布を作製する前に、ポリエステル樹脂にタルク粉末及び/又は酢酸塩粉末を添加する添加工程をさらに含む。タルク粉末は、ポリエステル樹脂とタルク粉末の合計質量に対して、0.3質量%~7質量%である。酢酸塩粉末は、ポリエステル樹脂と酢酸塩粉末の合計質量に対して、0.05質量%~0.5質量%である。
上記第3視点の好ましい形態によれば、不織布を構成するポリエステル樹脂組成物が下記1)~3)を満たす:
1)0.25dl/g~0.45dl/gの極限粘度を有する;
2)250℃~260℃の融点を有する;
3)185℃~235℃の降温結晶化温度を有する。
本開示の第1実施形態に係る不織布について説明する。本開示の不織布はポリエステル樹脂組成物の繊維から構成される不織布である。本開示の不織布は、例えば、メルトブローン(メルトブロー)不織布、ケミカルボンド不織布、スパンボンド不織布等とすることができる。このうち、汎用性及び製造容易性の観点からメルトブローン不織布が好ましい。
ポリエステル樹脂組成物は、第1の樹脂を含む。第1の樹脂は、酸成分(ポリカルボン酸)とアルコール成分(ポリオール、ポリヒドロキシ化合物)との共重合体であるポリエステル樹脂である。本開示において、ポリカルボン酸とは、カルボキシ基を複数有する化合物のことをいう。また、ポリオール又はポリヒドロキシ化合物とは、ヒドロキシ基を複数有する化合物のことをいう。本開示において、特に明記が無い限り、ポリエステル樹脂には成形体も含まれ得る。
酸成分は、主として、テレフタル酸成分を含む。テレフタル酸成分の含有率は、酸成分の総量に対して、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。テレフタル酸成分が90mol%未満であるとポリエステル樹脂の融点が低下する。
酸成分は、本開示のポリエステル樹脂の本質的な性質を変えない範囲において、他の酸成分を含有してもよい。他の酸成分としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサジカルボン酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、トリメリット酸及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの他の酸成分は、いずれかが単独で含まれてもよいし、2種以上が任意の割合で含まれてもよい。
アルコール成分は、主として、エチレングリコール成分を含む。エチレングリコール成分の含有率は、アルコール成分の総量に対して、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。エチレングリコール成分が90mol%未満であるとポリエステル樹脂の融点が低下する。
アルコール成分は、本開示のポリエステル樹脂の本質的な性質を変えない範囲において、他のアルコール成分を含有してもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの他のアルコール成分は、いずれかが単独で含まれてもよいし、2種以上が任意の割合で含まれてもよい。
第1の樹脂は重合触媒を含むことができる。
第1の樹脂は、後述する第2実施形態に係るポリエステル樹脂とすることができる。
第1の樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)であると好ましい。
第1の樹脂は、ポリエステル樹脂組成物の質量に対して90質量%以上であると好ましく、95質量%以上であると好ましく、100質量%であるとさらに好ましい。第1の樹脂が90質量%未満であると耐熱性が低下してしまう。
ポリエステル樹脂組成物は、第1の樹脂に加えて、第2の樹脂をさらに含むことができる。第2の樹脂は、例えばポリエステル樹脂とすることができる。第2の樹脂としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート等を挙げることができる。
ポリエステル樹脂組成物は、さらに粉末を含むと好ましい。粉末は後述する結晶核剤に相当する。粉末はタルク及び酢酸塩からなる群から選択される少なくとも1つとすることができる。酢酸塩としては、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等を挙げることができる。
タルク粉末はポリエステル樹脂組成物の質量に対して、0.3質量%以上であると好ましい。タルク粉末は、例えば、ポリエステル樹脂組成物の質量に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上とすることができる。タルク粉末はポリエステル樹脂組成物の質量に対して、7質量%以下であると好ましい。タルク粉末は、例えば、ポリエステル樹脂組成物の質量に対して、5質量%以下、又は2質量%以下とすることができる。
酢酸塩粉末はポリエステル樹脂組成物の質量に対して、0.05質量%以上であると好ましい。酢酸塩粉末は、例えば、ポリエステル樹脂組成物の質量に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上とすることができる。酢酸塩粉末はポリエステル樹脂組成物の質量に対して、0.5質量%以下であると好ましい。酢酸塩粉末は、例えば、ポリエステル樹脂組成物の質量に対して、0.4質量%以下、0.3質量%以下、又は0.2質量%以下とすることができる。
粉末の平均粒径は5μm以下であると好ましい。5μmを超えると、不織布作製する際にノズル汚れや、ノズル詰まりの原因となる可能性がある。粉末の平均粒径は、例えば、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
ポリエステル樹脂組成物の極限粘度(IV値)は0.25dl/g(10cm/g)以上であることが好ましい。極限粘度が0.25dl/g未満であると、不織布の強度が低下し、使用する際に問題となる可能性がある。ポリエステル樹脂組成物の極限粘度(IV値)は0.45dl/g以下であると好ましい。極限粘度が0.45dl/gを超えると、熱収縮率が高くなること等、不織布としての性能が低下する。
ポリエステル樹脂組成物の極限粘度は、フェノール:テトラクロロエタン=60:40(質量比)の混合溶媒に不織布0.5000±0.0005gを溶解させ、ウベローデ粘度管を装着した自動粘度測定装置を用いて測定した、20℃における極限粘度である。
ポリエステル樹脂組成物の融点は250℃以上であると好ましい。250℃未満であると耐熱性が低下する。ポリエステル樹脂組成物の融点は260℃以下であると好ましい。260℃を超えると熱収縮率が高くなる可能性がある。ポリエステル樹脂組成物の融点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置を使用して不織布から直接測定することができる。
ポリエステル樹脂組成物の降温結晶化温度は、185℃以上であることが好ましい。185℃未満であると、収縮率が高くなる。ポリエステル樹脂組成物の降温結晶化温度は235℃以下であると好ましい。235℃を超えると不織布を製造する際に、ノズルへの樹脂の固着がしやすくなり、糸切れ等が発生し、結果として不織布の外観が悪くなる可能性がある。ポリエステル樹脂組成物の降温結晶化温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置を使用して不織布から直接測定することができる。
前記の降温結晶化温度は、DSC装置を使用して融点以上の温度に一旦保持した後、10℃/分で降温した際に出てくる結晶化に伴う発熱ピークである。
粉末は、ポリエステル樹脂にあらかじめ混練機などで高濃度に添加したマスターバッチと第1の樹脂をブレンドし、不織布を作製する方法、第1の樹脂と粉末をブレンドし、不織布を作製する方法、第1の樹脂を作製する際に、重合触媒等と同様に添加し、得られた第1の樹脂で不織布を作製する方法等何れの方法でも添加出来る。タルクの添加方法はマスターバッチを使用する方法が好ましい。酢酸塩の添加方法は第1の樹脂を作製する際に添加する方法が好ましい。
本開示の不織布は、製造後、150℃以上の加熱処理をしていない段階において、180℃で15分間加熱した時の収縮率が10%以下である不織布であると好ましい。不織布の収縮率は8%以下であると好ましく、6%以下であるとより好ましい。収縮率が10%を超えると、使用時に不具合が生じやすくなってしまう。収縮率は、縦方向及び横方向それぞれにおいて10%以下であると好ましい。
不織布の熱収縮率は、不織布作製後、150℃以上の加熱処理を施していない不織布に標線をマークし、180℃で15分間加熱処理を施し、次式より算出する。
熱収縮率(%)=[(L―L)/L]×100
:加熱前の標線の長さ
L:加熱後の標線の長さ
不織布製造後、150℃以上の加熱処理を施していない不織布を構成するポリエステル樹脂組成物について測定した結晶化度が50%以上であると好ましい。本開示の不織布におけるポリエステル樹脂組成物は、製造後、150℃以上の加熱処理を施していない段階において、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、又は80%以上の結晶化度を有することができる。ポリエステル樹脂組成物の結晶化度が50%未満であると、高温環境下での収縮が生じやすくなってしまう。
結晶化度は、DSC装置を使用して、不織布を窒素中、昇温速度10℃/分で30℃から300℃まで昇温し、結晶化温度(Tc)、結晶化エンタルピー(ΔHc)、融点(Tm)、融解熱量(ΔHm)を測定し、以下の式より算出することができる。
結晶化度(%)=((ΔHm―ΔHc)/ΔHm)×100
本開示の不織布における繊維の平均繊維径は、0.1μm以上であると好ましく、0.3μm以上であるとより好ましい。本開示の不織布における繊維の平均繊維径は、例えば、1μm以上、2μm以上、又は3μm以上とすることができる。平均繊維径が0.1μm未満であると、糸切れしやすくなると共に、不織布の強度も低下してしまう。本開示の不織布における繊維の平均繊維径は、20μm以下であると好ましく、15μm以下であるとより好ましい。本開示の不織布における繊維の平均繊維径は、例えば、10μm以下、6μm以下、又は5μm以下とすることができる。平均繊維径が20μmを超えると、不織布のポアサイズが大きくなりやすく、不織布としての性能(フィルター性能等)が低下してしまう。繊維の繊維径は走査型電子顕微鏡で測定することができる。平均繊維径は、例えば、100本の繊維の繊維径の平均値とすることができる。
本開示の不織布の製造方法は、後述する第2実施形態のポリエステル樹脂を準備する工程を含む。また、本開示の不織布の製造方法は、第2実施形態のポリエステル樹脂からポリエステル不織布を作製する工程を含む。
本開示の不織布の製造方法は、ポリエステル樹脂を準備する工程及び不織布を作製する工程のうちの少なくとも1つの工程において、不織布作製前に、第2実施形態のポリエステル樹脂にタルク粉末及び/又は酢酸塩粉末を添加する工程をさらに含むことができる。タルク粉末及び/又は酢酸塩粉末の添加のタイミング及び添加量については、上述の記載を援用する。
不織布の作製方法は、不織布の用途等に応じて適宜選択することができる。例えば、不織布の作製方法としては、メルトブローン法が挙げられる。メルトブローン法を採用する場合、押出温度は、ポリエステル樹脂をメルトブローできると共に、ポリエステル樹脂が熱分解しないような温度範囲にすると好ましい。メルトブローン法の条件は、例えば、押出温度260~280℃、熱風温度230~300℃、熱風風量1,600L/分以上、捕集距離12cm以下に設定することができる。熱風温度は、例えば、280℃以下にすることができる。熱風風量は、例えば、1,800L/分以上にすることができる。熱風風量は、例えば、2,200L/分以下とすることができる。捕集距離は、例えば、10cm以下にすることができる。捕集距離は、例えば、5cm以上とすることができる。押出温度が260℃未満であると、不織布作製中に樹脂が固化してしまう。押出温度が280℃を超えると、不織布作製時に樹脂の分解が進み、不織布の強度や手触りが悪くなってしまう。熱風温度が230℃未満であるとノズルが冷えて不織布作製中に樹脂が固化しやすくなってしまう。熱風温度が300℃を超えると繊維が切れやすくなってしまう。捕集距離が12cmを超えると、押し出された繊維が空気に触れて急冷されるため結晶化しにくくなってしまう。熱風風量が1,600L/分未満であると繊維が延伸されずに、結晶化しにくくなってしまう。
本開示の不織布の製造方法は、作製した不織布を150℃以上で加熱する加熱処理(アニール処理)を含まないと好ましい。加熱処理のための工程及び設備が不要となり、製造コストを低減することができる。
本開示の不織布におけるポリエステル樹脂組成物はPETを主たる構造としている。このため、本開示の不織布は高い耐熱性を有している。
本開示の不織布におけるポリエステル樹脂組成物は、高い結晶化度を有している。このため、高温環境下で不織布が使用されても不織布の収縮が抑制されている。
本開示の不織布は、PETを基本構造としているため、低コストで製造することができる。
本開示の不織布は、例えば、フィルタ、吸音材、断熱材等に適用することができる。
本開示の第2実施形態に係るポリエステル樹脂について説明する。本開示のポリエステル樹脂は、第1実施形態に係る不織布を製造するための樹脂である。例えば、本開示のポリエステル樹脂は、不織布を製造するために溶融する前の樹脂、及び溶融状態の樹脂とすることができる。第1実施形態に係る粉末は、ポリエステル樹脂が溶融した後にポリエステル樹脂の結晶化を促進する結晶核剤として作用することができる。
第2実施形態に係るポリエステル樹脂は、酸成分(ポリカルボン酸)とアルコール成分(ポリオール、ポリヒドロキシ化合物)との共重合体である。
酸成分は、主として、テレフタル酸成分を含む。テレフタル酸成分の含有率は、酸成分の総量に対して、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。テレフタル酸成分が90mol%未満であるとポリエステル樹脂の融点が低下する。
酸成分は、本開示のポリエステル樹脂の本質的な性質を変えない範囲において、他の酸成分を含有してもよい。他の酸成分としては、例えば、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、ダイマー酸、1,4-シクロヘキサジカルボン酸、ジメチルテレフタレート、ジメチルイソフタレート、トリメリット酸及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの他の酸成分は、いずれかが単独で含まれてもよいし、2種以上が任意の割合で含まれてもよい。
アルコール成分は、主として、エチレングリコール成分を含む。エチレングリコール成分の含有率は、アルコール成分の総量に対して、90mol%以上であると好ましく、95mol%以上であるとより好ましく、100mol%であるとさらに好ましい。エチレングリコール成分が90mol%未満であるとポリエステル樹脂の融点が低下する。
アルコール成分は、本開示のポリエステル樹脂の本質的な性質を変えない範囲において、他のアルコール成分を含有してもよい。他のアルコール成分としては、例えば、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,2-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらの誘導体が挙げられる。これらの他のアルコール成分は、いずれかが単独で含まれてもよいし、2種以上が任意の割合で含まれてもよい。
第2実施形態に係るポリエステル樹脂はポリエチレンテレフタレート(PET)であると好ましい。
第2実施形態に係るポリエステル樹脂の極限粘度(IV値)は0.3dl/g以上であることが好ましい。極限粘度が0.3dl/g未満であると、高強度の不織布を作製することが困難となる可能性がある。第2実施形態に係るポリエステル樹脂の極限粘度(IV値)は0.5dl/g以下であると好ましい。極限粘度が0.5dl/gを超えると、熱収縮率が低い不織布の作製が困難となる。
上記の極限粘度は、フェノール:テトラクロロエタン=60:40(質量比)の混合溶媒にポリエステル樹脂0.5000±0.0005gを溶解させ、ウベローデ粘度管を装着した自動粘度測定装置を用いて測定した、20℃における極限粘度である。
第2実施形態に係るポリエステル樹脂の融点は250℃以上であると好ましい。250℃未満であると耐熱性が低下する。第2実施形態に係るポリエステル樹脂組成物の融点は260℃以下であると好ましい。260℃を超えると熱収縮率が高くなる可能性がある。第2実施形態に係るポリエステル樹脂組成物の融点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置を使用して測定することができる。
第2実施形態に係るポリエステル樹脂の降温結晶化温度は、185℃以上であることが好ましい。185℃未満であると、収縮率が高くなる。第2実施形態に係るポリエステル樹脂組成物の降温結晶化温度は235℃以下であると好ましい。235℃を超えると不織布を製造する際に、ノズルへの樹脂の固着がしやすくなり、糸切れ等が発生し、結果として不織布の外観が悪くなる可能性がある。第2実施形態に係るポリエステル樹脂組成物の降温結晶化温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置を使用して測定することができる。
第2実施形態に係るポリエステル樹脂は、第1実施形態に係る不織布を製造するためのマスターバッチとすることができる。ポリエステル樹脂をマスターバッチとして使用する場合には、結晶核剤となる上記粉末は、マスターバッチであるポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、30質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上とすることができる。結晶核剤となる上記粉末は、マスターバッチであるポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、70質量%以下、60質量%以下、又は55質量%以下とすることができる。
第2実施形態に係るポリエステル樹脂は、第1実施形態に係る不織布を製造するための原料とすることができる。
ポリエステル樹脂は、公知の方法で製造することができる。例えば、未置換のポリカルボン酸を出発原料とする直接エステル化によりエステルプレポリマーを生成してもよいし、ジメチルエステル等のエステル化物を出発原料とするエステル交換反応によりエステルプレポリマーを生成してもよい。生産効率の観点からは直接エステル化反応を選択すると好ましい。
直接エステル化反応は、例えば、加熱装置、攪拌機及び留出管を備えた反応槽に原料を仕込み、大気圧不活性ガス雰囲気下で攪拌しつつ昇温し、反応により生じた水を留去しながら反応を進行させることによって行うことができる。直接エステル化は0~3kg/cm2Gの圧力下で240℃~270℃で行うことができ、245℃~255℃であると好ましい。反応時間は例えば3~7時間とすることができる。
エステル交換反応は、例えば加熱装置、撹拌機及び留出管を備えた反応槽に原料を仕込み、反応触媒を加えて大気圧下不活性ガス雰囲気下で攪拌しつつ昇温し、反応により生じたメタノールを留去しながら反応を進行させることによって行うことができる。反応温度は、例えば、150℃~270℃とすることができ、160℃~260℃であると好ましい。反応時間は、例えば、3~7時間程度である。
エステル交換反応の触媒としては、少なくとも一種類以上の金属化合物を使用することができる。好ましい金属元素としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、チタン、リチウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、スズ、コバルト等が挙げられる。これらのうち、チタン及びマンガン化合物は反応性が高く、得られる樹脂の色調が良好なことから好ましい。エステル交換触媒の添加量は、生成するポリエステル樹脂に対して、通常、5ppm~1000ppmであると好ましく、より好ましくは10ppm~100ppmである。
エステル交換反応が終了した後に、エステル交換触媒と等モル以上のリン化合物を添加して、さらにエステル交換反応を進行させることが望ましい。リン化合物の例としては、リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト等が挙げられる。これらのうち、トリメチルホスフェートが特に好ましい。リン化合物の使用量は、生成するポリエステル樹脂の質量に対して、5ppm~1000ppmであると好ましく、20ppm~100ppmであるとより好ましい。
直接エステル化反応またはエステル交換反応につづいて、エステルプレポリマーに重合触媒を添加して、所望の分子量となるまでさらに重縮合反応を行う。重合反応における触媒としては、例えばテトラ-n-ブチルチタネート用いることができる。触媒の添加率は、例えば、製造される樹脂量に対して1ppm~10ppmとすることができる。重縮合反応は、例えば、重合触媒を添加した後、反応槽内を徐々に昇温且つ減圧しながら行うことができる。槽内の圧力は、例えば、最終的には0.4kPa以下、好ましくは0.2kPa以下まで減圧すると好ましい。槽内の温度は、例えば、最終的には250℃~290℃まで昇温すると好ましい。重合反応は、例えば、最終槽内圧が150Pa以下となる減圧下で所定の溶融粘度となるまで行うことができる。その後、槽内圧を例えば0.5MPaに加圧し、槽下部から反応生成物を押し出して回収することができる。例えば、反応生成物を水中にストランド状に押し出し、冷却した上でカッティングし、ペレット状のポリエステル樹脂を得ることができる。
重合触媒はチタン化合物であると好ましい。チタン化合物を使用すると、製造されるポリエステル樹脂の降温結晶化温度を高めることができる。
重合触媒としては、チタン化合物以外の触媒を使用することもできる。例えば、重合触媒として酸化ゲルマニウムを使用することができる。酸化ゲルマニウムを使用する場合、触媒の添加率は、例えば、製造される樹脂量に対して50ppm~300ppmとすることができる。
本開示のポリエステル樹脂には、本開示の効果を阻害しない範囲において、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料等の各種添加剤を適宜配合することができる。これらの添加剤は、重合反応工程、加工・成形工程のいずれの工程において配合してもよい。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられるが、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。添加量は100ppm~5000ppm程度が望ましい。
ポリエステル樹脂の極限粘度(IV値)は、0.3dl/g(10cm/g)以上であると好ましい。極限粘度が0.3dl/g未満であると、不織布にした際に強度が低下し、不織布製造時や不織布として使用する際に問題となる可能性がある。本開示のポリエステル樹脂の極限粘度(IV値)は、0.5dl/g以下であると好ましい。極限粘度が0.5dl/gを超えると、溶融粘度が高くなる為、不織布を製造する際に高温での成形が必要となり、結果として強度が低下する。または、繊維径が太くなり、不織布のポアサイズが大きくなることや熱収縮率が高くなること等、不織布としての性能が低下する。
上記の極限粘度は、フェノール:テトラクロロエタン=60:40(質量比)の混合溶媒に試料0.5000±0.0005gを溶解させ、ウベローデ粘度管を装着した自動粘度測定装置を用いて測定した、20℃における極限粘度である。
本開示のポリエステル樹脂の融点は、250℃以上であると好ましい。250℃未満であると、融点が低い為、耐熱性が低下する。本開示のポリエステル樹脂の融点は260℃以下であると好ましい。260℃を超えると、成形温度が高くなり、不織布にした際に結晶化度が低くなり、高温環境下での収縮率が高くなる可能性がある。融点は、例えば、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置を使用して測定することができる。
ポリエステル樹脂の降温結晶化温度は、185℃以上であることが好ましい。185℃未満であると、樹脂の結晶化速度が遅い為、不織布にした際に収縮率が高くなる。本開示のポリエステル樹脂の降温結晶化温度は235℃以下であると好ましい。235℃を超えると不織布を製造する際に、ノズルへの樹脂の固着がしやすくなり、糸切れ等が発生し、結果として不織布の外観が悪くなる可能性がある。降温結晶化温度は、例えば、示差走査熱量測定(DSC;Differential Scanning Calorimetry)装置を使用して測定することができる。
本開示のポリエステル樹脂は、タルクを含むことができる。タルクはポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、0.3質量%以上であると好ましい。タルクが0.3質量%未満であると、降温結晶化温度が低くなり、不織布の熱収縮率が高くなってしまう。タルクは、例えば、ポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、0.5質量%以上、1質量%以上、2質量%以上、又は3質量%以上とすることができる。タルクはポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、7質量%以下であると好ましい。タルクは、例えば、ポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、5質量%以下、又は2質量%以下とすることができる。タルクが7質量%を超えると、不織布製造装置のノズルにタルクが堆積するなどして、所望の不織布の作製が困難となる。
本開示のポリエステル樹脂は、酢酸塩を含むことができる。酢酸塩としては、例えば、酢酸ナトリウムを挙げることができる。酢酸塩はポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、0.05質量%以上であると好ましい。酢酸塩は、例えば、ポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、0.1質量%以上、0.2質量%以上、又は0.3質量%以上とすることができる。酢酸塩が0.05質量%未満であると、降温結晶化温度が低くなり、不織布の熱収縮率が高くなってしまう。酢酸塩はポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、0.5質量%以下であると好ましい。酢酸塩は、例えば、ポリエステル樹脂と粉末の合計質量に対して、0.4質量%以下、0.3質量%以下、又は0.2質量%以下とすることができる。酢酸塩が0.5質量%を超えると、重合反応を阻害したり、不織布の耐久性が低下したりしてしまう。
前記記載のタルク及び酢酸塩はポリエステル樹脂の結晶を促進する結晶核剤として作用する。結晶核剤は、予めポリエステル樹脂を作製する際に添加してもよいし、ポリエステル樹脂を溶融し、コンパウンドして添加してもよい。ポリエステル樹脂の量に対する結晶核剤の量は上述の粉末の量と同じに設定することができる。
本開示のポリエステル樹脂は、PETを基本構造としており、PBTよりも高い融点を有し、高い耐熱性を有している。また、本開示のポリエステル樹脂は、上記極限粘度及び降温結晶化温度を有することにより、メルトブローン法に適した溶融粘度と結晶化速度を有している。また、PETを基本構造としているため、本開示のポリエステル樹脂は低コストで製造することができる。
本開示のポリエステル樹脂及び不織布は、組成、構造、特性等によって直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的ではない場合がある。このような場合には、本開示のポリエステル樹脂及び不織布は、それらの製造方法によって特定することが許されるべきものである。
以下に、本開示のポリエステル樹脂及びそれからなる不織布について実施例を用いて説明する。本開示のポリエステル樹脂及び不織布は以下の実施例に限定されるものではない。
[試験例1~3]
攪拌機、温度計、留出管を備えた反応缶内に25.6kgのテレフタル酸と11.0kgのエチレングリコールを仕込み攪拌下、0.2MPa、250℃で3時間エステル化反応を行った。反応系内から留出水が出なくなるのを確認した後、反応系内を常圧に戻し、追加で1時間反応を行った。次いでテトラブチルチタネートとエチレングリコールの混合溶液をTi元素で10ppm、トリエチルリン酸とエチレングリコールの混合溶液をP元素で20ppmになる様に添加した。その後、徐々に昇温しながら減圧し最終的に温度が280℃、圧力が0.2hPaになるようにした。極限粘度に対応する攪拌翼のトルク値が所望の数値となるまで反応させ、重縮合反応を終了した。得られたポリエステル樹脂を反応槽下部の抜出口からストランド状に抜き出し、水槽で冷却した後、チップ状に切断した。
作製したポリエステル樹脂についてIV、融点、降温結晶化温度を測定した。表1に組成及び測定結果を示す。表1及び表2において、PETはポリエチレンテレフタレートを指示する。PBTはポリブチレンテレフタレートを指示する。重合触媒の欄において、Tiはテトラブチルチタネートを指示する。Geは二酸化ゲルマニウムを指示する。
1)極限粘度(IV)
1,1,2,2-テトラクロロエタンとフェノールの混合溶媒(1,1,2,2-テトラクロロエタン:フェノール=40:60(重量比))50mlに各ポリエステル樹脂0.5000±0.0005gと溶解させた溶液を作製し、ウベローデ粘度管を装着した自動粘度測定装置を用いて20℃における、溶媒流下時間に対する試験液の流下時間の比(試験溶液の流下時間/溶媒の流下時間)から求めた。
2)融点及び降温結晶化温度
ポリエステル樹脂10mgを秤量し、示差走査熱量測定装置DSC(TA Instruments社製DSC2500)を用いて窒素雰囲気中、300℃で3分間等温保持し、300℃から30℃まで50℃/分で冷却した後、30℃から300℃まで10℃/分で昇温しながら吸熱挙動を観察し、融点を測定した。また、300℃まで到達後、300℃で3分等温保持した後、300℃から30℃まで10℃/分で冷却し、発熱挙動から降温結晶化温度を測定した。
得られたポリエステル樹脂を使用し、メルトブローン不織布製造装置(新和工業社製MBT-200)を用いて目付50g/mのメルトブローン不織布を作製した。押出温度は280℃、繊維を吹き付ける熱風は300℃、2000L/分で設定し、ノズルは孔数が401個、ノズル内径が0.2Φ、ノズル長さが0.8mmのものを使用した。
作製した不織布について、上記の方法に従って、不織布を構成するポリエステル樹脂組成物のIV、融点、降温結晶化温度を測定した。また、作製した不織布について、平均繊維径、熱収縮率及びポリエステル樹脂組成物の結晶化度を測定した。測定結果を表2に示す。
3)繊維の平均繊維径
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製SU3500)を用いて、不織布のうちの任意の100本の繊維の直径を測定して、100個の直径の平均値を平均繊維径とした。
4)熱収縮率
作製後、150℃以上に加熱していない不織布の表面に、MD方向(不織布の巻き取り方向)及びTD方向(縦方向の垂直方向)それぞれに長さ10cmの標線を記した。不織布に180℃で15分間オーブンで加熱処理を施した。加熱処理後、標線の長さを測定した。以下の式より熱収縮率を算出した。収縮率はMD方向2個とTD方向2個の測定の平均値とした。
熱収縮率(%)=[(L―L)/L]×100
式中、Lは加熱前の標線の長さである。Lは加熱後の標線の長さである。
5)結晶化度
作製後、150℃以上に加熱していない不織布を示差走査熱量測定装置DSC(TA Instruments社製DSC2500)で窒素中、昇温速度10℃/分で30℃から300℃まで昇温し、結晶化温度(Tc)、結晶化エンタルピー(ΔHc)、融点(Tm)、融解熱量(ΔHm)を測定した。
(結晶化度の算出方法)
結晶化度(%)=((ΔHm―ΔHc)/ΔHm)×100
[試験例4]
重合触媒を二酸化ゲルマニウム200ppmに変更し、試験例1~3と同様にポリエステル樹脂を作製した。作製したポリエステル樹脂について、試験例1~3と同様にしてIV、融点、降温結晶化温度を測定した。表1に組成及び測定結果を示す。
得られた樹脂は試験例1と同様にし、不織布を作製した。作製した不織布について、試験例1~3と同様にして、不織布を構成するポリエステル樹脂組成物のIV、融点、及び降温結晶化温度、並びに不織布の平均繊維径、熱収縮率及びポリエステル樹脂組成物の結晶化度を測定した。測定結果を表2に示す。
[試験例5]
攪拌機、温度計、留出管を備えた反応缶内に26.5kgのジメチルテレフタレートと20.1kgの1,4-ブタンジオールとテトラブチルテレフタレートの1,4-ブタンジオール混合溶液をTi元素で50ppmになるように仕込み攪拌下、150℃から徐々に昇温し、メタノールを留去させながらエステル交換反応を行った。最終的に230℃で反応には4時間要した。その後、徐々に昇温しながら減圧し最終的に温度が240℃、圧力が0.2hPaになるようにした。極限粘度に対応する攪拌翼のトルク値が所望の数値となるまで反応させ、重縮合反応を終了した。得られたポリエステル樹脂を反応槽下部の抜出口からストランド状に抜き出し、水槽で冷却した後、チップ状に切断した。
作製したポリエステル樹脂について、試験例1~3と同様にしてIV、融点、降温結晶化温度を測定した。表1に組成及び測定結果を示す。
得られた樹脂は試験例1と同様にし、不織布を作製した。作製した不織布について、試験例1~3と同様にして、不織布を構成するポリエステル樹脂組成物のIV、融点、及び降温結晶化温度、並びに不織布の平均繊維径、熱収縮率及びポリエステル樹脂組成物の結晶化度を測定した。測定結果を表2に示す。
[試験例6~11]
試験例1と同様にポリエステル樹脂を作製した。作製したポリエステル樹脂について、試験例1~3と同様にしてIV、融点、降温結晶化温度を測定した。表1に組成及び測定結果を示す。
得られたポリエステル樹脂を使用してタルク粉末を50重量%含有するマスターバッチを作製した。マスターバッチは表2に示す添加量になる様に、作製したポリエステル樹脂に不織布作製時に添加し、不織布を作製した。作製した不織布について、試験例1~3と同様にして、不織布を構成するポリエステル樹脂組成物のIV、融点、及び降温結晶化温度、並びに不織布の平均繊維径、熱収縮率及びポリエステル樹脂組成物の結晶化度を測定した。測定結果を表2に示す。試験例11については不織布を作製する際に糸切れが多発し、目的とする不織布が採取できなかった。
[試験例12~17]
攪拌機、温度計、留出管を備えた反応缶内に25.6kgのテレフタル酸と11.0kgのエチレングリコールを仕込み、酢酸ナトリウム粉末を表1に示す添加量になる様に添加し、攪拌下、0.2MPa、250℃で3時間エステル化反応を行った。反応系内から留出水が出なくなるのを確認した後、反応系内を常圧に戻し、追加で1時間反応を行った。次いでテトラブチルチタネートとエチレングリコールの混合溶液をTi元素で10ppm、トリエチルリン酸とエチレングリコールの混合溶液をP元素で20ppmになる様に添加した。その後、徐々に昇温しながら減圧し最終的に温度が280℃、圧力が0.2hPaになるようにした。極限粘度に対応する攪拌翼のトルク値が所望の数値となるまで反応させ、重縮合反応を終了した。得られたポリエステル樹脂を反応槽下部の抜出口からストランド状に抜き出し、水槽で冷却した後、チップ状に切断した。試験例17については重合反応性が進まず、カッティング不良が発生した為、ペレットが採取出来なかった。過剰な酢酸ナトリウムにより重合反応性が低下したためと考えられる。
作製したポリエステル樹脂について、試験例1~3と同様にしてIV、融点、降温結晶化温度を測定した。表1に組成及び測定結果を示す。
得られた樹脂は試験例1と同様にし、不織布を作製した。作製した不織布について、試験例1~3と同様にして、不織布を構成するポリエステル樹脂組成物のIV、融点、及び降温結晶化温度、並びに不織布の平均繊維径、熱収縮率及びポリエステル樹脂組成物の結晶化度を測定した。測定結果を表2に示す。
表1及び表2に示す様に、極限粘度が0.3~0.5dl/gを有し、降温結晶化温度が185℃~235℃にある樹脂を使用して作製された不織布は試験例5のPBTと同等の熱収縮性を有することがわかった。降温結晶化温度が185℃~235℃を満たすが、極限粘度が0.65dl/gの樹脂を使用した試験例8、及び試験例14については不織布を作製する際の溶融粘度が高く、糸になる際に過剰に残留歪が残った影響で収縮率が高くなったものと考えられる。降温結晶化温度が185℃未満のポリエステル樹脂を用いて、結晶核剤を添加せずに不織布を作製した試験例1~4においては、不織布の熱収縮率が高くなると共に、不織布を構成するポリエステル樹脂の結晶化度も低くなった。
Figure 2023127065000001
Figure 2023127065000002
本発明の不織布及びその製造方法、並びにポリエステル樹脂は、上記実施形態及び実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
本発明のさらなる課題、目的及び形態(変更形態含む)は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
本書に記載した数値範囲については、別段の記載のない場合であっても、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし範囲が本書に具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。各付記は、特許請求の範囲に記載の各請求項と組み合わせることもできる。
[付記1]
90mol%以上のテレフタル酸成分を含む酸成分と、90mol%以上のエチレングリコール成分を含むアルコール成分との重合体であり、
下記a)~c)を満たすポリエステル樹脂:
a)0.30dl/g~0.50dl/gの極限粘度を有する;
b)250℃~260℃の融点を有する;
c)185℃~235℃で降温結晶化温度する。
本開示のポリエステル樹脂及び不織布は、成形性及び耐熱性に優れている。したがって、本開示のポリエステル樹脂及びその不織布は、例えば、フィルタ、吸音材、断熱材等に広範囲に用いることが可能である。

Claims (10)

  1. ポリエステル樹脂組成物の繊維からなる不織布であり、
    前記ポリエステル樹脂組成物は、前記ポリエステル樹脂組成物の質量に対して90質量%以上の第1の樹脂を含み、
    前記第1の樹脂は、酸成分とアルコール成分との重合体であり、
    前記酸成分は酸成分の総量に対して90mol%以上のテレフタル酸成分を含み、
    前記アルコール成分はアルコール成分の総量に対して90mol%以上のエチレングリコール成分を含み、
    前記不織布を構成する前記ポリエステル樹脂組成物が下記1)~3)を満たすポリエステル不織布。
    1)0.25dl/g~0.45dl/gの極限粘度を有する;
    2)250℃~260℃の融点を有する;
    3)185℃~235℃の降温結晶化温度を有する。
  2. 前記ポリエステル樹脂組成物がポリエステル樹脂組成物の質量に対して0.3質量%~7質量%のタルク粉末を含む、請求項1に記載のポリエステル不織布。
  3. 前記ポリエステル樹脂組成物がポリエステル樹脂組成物の質量に対して0.05質量%~0.5質量%の酢酸塩粉末を含む、請求項1又は2に記載のポリエステル不織布。
  4. 不織布作製後150℃以上に未加熱の不織布を180℃で15分間加熱した時の一方向の長さの収縮率が加熱前の長さを基準として10%以下である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載のポリエステル不織布。
  5. 不織布作製後150℃以上に未加熱の不織布を構成する前記ポリエステル樹脂組成物について測定した結晶化度が50%以上である、請求項4に記載のポリエステル不織布。
  6. 前記第1の樹脂が下記a)~c)を満たす、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリエステル不織布:
    a)0.30dl/g~0.50dl/gの極限粘度を有する;
    b)250℃~260℃の融点を有する;
    c)185℃~235℃で降温結晶化温度する。
  7. 不織布を製造するためのポリエステル樹脂であり、
    下記a)~c)を満たすポリエステル樹脂:
    a)0.30dl/g~0.50dl/gの極限粘度を有する;
    b)250℃~260℃の融点を有する;
    c)185℃~235℃で降温結晶化温度する。
  8. 下記a)~c)を満たすポリエステル樹脂を準備する準備工程と、
    前記ポリエステル樹脂からポリエステル不織布を作製する不織布作製工程と、を含み、
    前記不織布を150℃以上の温度で加熱する加熱工程を含まない、ポリエステル不織布の製造方法:
    a)0.30dl/g~0.50dl/gの極限粘度を有する;
    b)250℃~260℃の融点を有する;
    c)185℃~235℃で降温結晶化温度する。
  9. 前記準備工程及び前記不織布作製工程のうちの少なくとも1つにおいて、前記不織布を作製する前に、前記ポリエステル樹脂にタルク粉末及び/又は酢酸塩粉末を添加する添加工程をさらに含み、
    前記タルク粉末は、前記ポリエステル樹脂と前記タルク粉末の合計質量に対して、0.3質量%~7質量%であり、
    前記酢酸塩粉末は、前記ポリエステル樹脂と前記酢酸塩粉末の合計質量に対して、0.05質量%~0.5質量%である、請求項8に記載のポリエステル不織布の製造方法。
  10. 前記不織布を構成するポリエステル樹脂組成物が下記1)~3)を満たす、請求項8又は9に記載のポリエステル不織布の製造方法:
    1)0.25dl/g~0.45dl/gの極限粘度を有する;
    2)250℃~260℃の融点を有する;
    3)185℃~235℃の降温結晶化温度を有する。
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