JP2023124571A - Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心 - Google Patents

Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心 Download PDF

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Abstract

【課題】Al含有率が低く、高周波領域において高い透磁率を示すFe基軟磁性合金磁心を提供する。【解決手段】Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心は、アモルファス相と結晶粒とを含むFe基ナノ結晶軟磁性合金からなるリボンが巻回されてなる磁心であって、20℃における磁歪が0ppm未満であり、前記Fe基ナノ結晶軟磁性合金が下記組成式(I)で表される組成を有する。(Fe1-x-ySixAly)100-a-b-cMaM’bCuc(I)組成式中、Mは、Nb、W、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、M’は、B、C及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、a、b及びcは、それぞれ原子%で、2.0≦a≦5.0、3.0<b<10.0及び0<c<3.0であり、x及びyは、0.170≦x≦0.320及び0.010≦y≦0.045であり、15.5<x×(100-a-b-c)である。【選択図】なし

Description

本開示は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心に関する。
電気・電子装置及び情報通信機器の高性能化、小型化及び軽量化の積極的な推進に伴い、これら各種機器に用いる電源装置の小型化及び高効率化が望まれている。電力変換装置に用いられる磁性部品は、一般的に変換周波数を増加させることにより小型化が可能であるが、ノイズフィルタ用の磁性部品、例えばコモンモードチョークコイルは、材料の透磁率を高くする以外に小型化することができない。
近年、各種電子機器の軽薄短小化に伴い、ノイズフィルタのような電力変換部の小型化が要求されている。そのため、特にコモンモードチョークコイル等に使用する磁性材料の高周波領域における透磁率の向上が強く望まれている。
これまでに、優れた高周波特性を示す磁性材料の開発が進められており、例えばFeを主成分とするFe-Si-B-Cu-Nb系軟磁性合金(特許文献1)、Fe-Si-Al系軟磁性合金等が広く知られている。
特開昭64-79342号公報
磁性材料は、一般に、磁歪λと結晶磁気異方性Kとを共に零付近とすることで、高透磁率となる。特許文献1では、Fe-Si-B-Cu-Nb系軟磁性合金をナノ結晶構造としたことで、結晶磁気異方性を平均化して低減し、従来材料よりも透磁率が向上している。しかしながら、結晶内組成はFe-Siであり、個々の結晶内の結晶磁気異方性は零ではなく、平均化しても必ずしも零にはならない。
また、従来、Fe基合金の加工性を担保するためには、Alの含有率は低い方が望ましく、Alの含有率が高すぎると、Fe基合金の強度が低下したり、加工中に破損が生じたりすることが知られている。しかしながら、Fe-Si-Al系軟磁性合金中のAl含有率を低下させると、結晶磁気異方性を零付近とすることが難しいため、透磁率が低下する。そのため、Fe-Si-Al系軟磁性材料では、Alを一定量以上(例えば4~6原子%以上)含有せざるを得ず、強度、加工性、及び透磁率の両立が困難であるという問題が残されている。
本発明は、上記問題を鑑みたものであり、Al含有率が低く、高周波領域において高い透磁率を示すFe基軟磁性合金磁心を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、磁心を構成する材料としてAl含有率の低い特定の組成のFe基軟磁性合金を用い、かつ、磁心の磁歪を負の値とすることにより、高周波領域において高い透磁率を示すFe基軟磁性合金磁心が得られることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は以下を要旨とする。
〔1〕
アモルファス相と結晶粒とを含むFe基ナノ結晶軟磁性合金からなるリボンが巻回されてなる磁心であって、
20℃における磁歪が、0ppm未満であり、
前記Fe基ナノ結晶軟磁性合金が、下記組成式(I)で表される組成を有する、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心。
(Fe1-x-ySiAl100-a-b-cM’Cu (I)
(組成式(I)中、Mは、Nb、W、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群より選ばれる1種以上の元素であり;M’は、B、C及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり;a、b及びcは、それぞれ原子%で、2.0≦a≦5.0、3.0<b<10.0及び0<c<3.0であり;x及びyは、0.170≦x≦0.320及び0.010≦y≦0.045であり;15.5<x×(100-a-b-c)である。)
〔2〕
前記組成式(I)中、0.250<x≦0.320である、〔1〕に記載のFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心。
〔3〕
MがNbであり、M’がBである、〔1〕又は〔2〕に記載のFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心。
本発明によれば、Al含有率が低く、高周波領域において高い透磁率を示すFe基軟磁性合金磁心を提供することができる。
実験例1~3で得たFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心のインダクタンス変化率と周囲環境温度との関係を示すグラフである。 実験例4~6で得たFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心のインダクタンス変化率と周囲環境温度との関係を示すグラフである。 実験例7~9で得たFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心のインダクタンス変化率と周囲環境温度との関係を示すグラフである。 実験例10~12で得たFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心のインダクタンス変化率と周囲環境温度との関係を示すグラフである。 実験例1~12で得たFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の比透磁率と結晶化度との関係を示すグラフである。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に特定はされない。
また、本明細書において、数値範囲の下限値及び上限値を分けて記載する場合、当該数値範囲は、それらのうち任意の下限値と任意の上限値とを組み合わせたものとすることができる。
1.Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心
本発明の一実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心(以下、単に「磁心」と称することがある。)は、アモルファス相と結晶粒とを含むFe基ナノ結晶軟磁性合金からなるリボンが巻回されてなる磁心である。本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心は、従来汎用されているFe-Si-Al系磁性合金と比べてSi含有率が高く、Al含有率が低い材料で形成されており、かつ、20℃における磁歪が負の値であることにより、高周波領域における透磁率が高く、加工中の破損等の不都合を抑制することもできる。
なお、本明細書において、高周波領域における透磁率が高いとは、磁心の実用温度である常温条件下で高周波領域における透磁率が高いこと、及び周囲環境温度を変化させた際に、常温条件下で高周波領域における透磁率が最大化することの少なくとも一方を意味する。前者に関しては、例えば、常温条件下での高周波領域における比透磁率が、23,000以上、好ましくは24,000以上、より好ましくは25,000以上、さらに好ましくは26,000以上、特に好ましくは27,000以上である場合に、高周波領域における透磁率が高いと定義する。
また、本明細書中、常温は、20℃とする。
本明細書では、「透磁率」の評価の指標として「比透磁率」を用いることがある。
また、本明細書では、高周波領域の透磁率は、周波数100kHzにおける透磁率に基づいて評価し、低周波領域の透磁率は、周波数1kHzにおける透磁率に基づいて評価する。
Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の比透磁率は、例えば、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心に巻線を施したコイルのインダクタンスを測定し、下記式(1)に基づいて算出される。
μr=μ/μ0 (1)
μr:比透磁率
μ0:真空の透磁率=4π×10-7[H/m]
μ:透磁率[H/m]=Ll/A/N
L:インダクタンス[H]
l:磁路長[m]
A:コア有効断面積[m
N:巻き数
1-1.Fe基ナノ結晶軟磁性合金リボン
磁心を形成するFe基ナノ結晶軟磁性合金リボンは、Fe基ナノ結晶軟磁性合金からなる。Fe基ナノ結晶軟磁性合金は、アモルファス相と結晶相からなる結晶粒を含む。アモルファス相中には、クラスターが分散されていてもよい。
1-1-1.Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成
Fe基ナノ結晶軟磁性合金は、下記組成式(I)で表される組成(以下、「組成(I)」と称することがある。)を有する。ただし、この組成は、Si、Al、M、M’、及びCuを除く残部にCr、Mn等の不可避的不純物を含んでいてもよい。
(Fe1-x-ySiAl100-a-b-cM’Cu (I)
(M)
組成式(I)中、Mは、Nb、W、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、好ましくはNbである。Nbは、ナノ結晶化の際にBと共にアモルファス相の粒界層を形成したり、クラスターを形成してCu等の元素との相互作用により結晶粒の成長を抑えたりすることで、析出する結晶粒を微細化する効果を有すると考えられる。
(M’)
組成式(I)中、M’は、B、C及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり、好ましくはBである。B、C及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素は、Siとともに一定量存在することで、構成元素が均一に分散したアモルファス構造を形成しやすくするためにSiと共に一定量が必要である。
(a、b、及びc)
a、b及びcは、それぞれ、組成式(I)中のM、M’、及びCuの含有率[原子%]を示す。
aは、通常2.0以上、好ましくは2.0超、より好ましくは2.5以上、さらに好ましくは3.0以上であり、また、通常5.0以下、好ましくは5.0未満、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。aは、3.0程度であることが最も好ましい。
bは、通常3.0超、好ましくは4.0以上、より好ましくは4.5以上、さらに好ましくは5.0以上であり、また、通常10.0未満、好ましくは9.5以下、より好ましくは9.0以下、さらに好ましくは8.0以下である。
cは、通常0超、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上であり、また、通常3.0未満、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下、さらに好ましくは1.8以下である。
a、b、及びcを上記範囲内とすることで、平均結晶粒径の小さい結晶粒が形成されやすくなり、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶磁気異方性が低減するため、磁心の比透磁率を向上することができる。また、このように結晶粒を微細化することができるため、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の保磁力等の軟磁気特性を向上することも可能となる。
M’がBである場合は、bを上記範囲とすることで、アモルファス形成能が確保されるとともに、磁気特性に劣るFe-B二元化合物の析出を抑制し、優れた軟磁気特性を実現することができる。
また、cが上記範囲内であることにより、アモルファス形成能が確保され、後述する超急冷法によるアモルファス合金の作製が容易となる。加えて、cが上記範囲内であることにより、α-Fe(Si,Al)の結晶化に先立ってアモルファス相中でCuを含むクラスターが均一に形成されやすくなり、該クラスターが結晶核となって微細な結晶粒を形成することができる。
(x及びy)
x及びyは、それぞれ、Fe基ナノ結晶軟磁性合金中のFe、Si及びAlのモル量を1としたときの、Si及びAlのモル量を示す。また、Fe基ナノ結晶軟磁性合金中のFe、Si及びAlのモル量を1としたときのFeのモル量は、1-(x+y)で表される。
xは、通常0.170以上、好ましくは0.200以上、より好ましくは0.230以上、さらに好ましくは0.250超であり、また、通常0.320以下、好ましくは0.300以下、より好ましくは0.280以下である。
yは、通常0.010以上、好ましくは0.012以上、より好ましくは0.014以上、さらに好ましくは0.016以上であり、また、通常0.045以下、好ましくは0.040以下、より好ましくは0.035以下、さらに好ましくは0.030以下、特に好ましくは0.025以下である。
xが上記範囲内であることにより、アモルファス形成能が確保され、後述する超急冷法によるアモルファス合金の作製が容易となり、また、結晶粒内の結晶磁気異方性の過剰な増加を抑制し、良好な軟磁気特性を実現することができる。
また、yが上記数値範囲を満たすことで、結晶粒内のFe-Si-Al三元系合金の結晶相の結晶磁気異方性が低減されるため、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶磁気異方性を低減することができるとともに、透磁率、保磁力等の軟磁気特性を向上することもできる。さらに、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の磁歪を低減することもできる。
したがって、x及びyを上記範囲内とすることで、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の比透磁率を向上することが可能となる。
(組成(I)中のSi含有率)
本実施形態におけるFe基ナノ結晶軟磁性合金は、従来汎用されているFe-Si-Al系磁性合金と比べてSi含有率が高い。組成(I)中のSi含有率は、下記式(i)により算出される。
組成(I)中のSi含有率[原子%]=x×(100-a-b-c) (i)
組成(I)中のSi含有率は、上述したx、a、b、及びcの範囲を充足する限り特に限定されないが、通常15.5原子%超、好ましくは16.0原子%以上、さらに好ましくは17.0原子%以上、特に好ましくは18.0原子%以上であり、また、好ましくは28.0原子%以下、より好ましくは27.0原子%以下、さらに好ましくは26.0原子%以下である。
(組成(I)中のAl含有率)
本実施形態におけるFe基ナノ結晶軟磁性合金は、従来汎用されているFe-Si-Al系磁性合金と比べてAl含有率が低い。本実施形態では、Fe基ナノ結晶軟磁性合金中のAl含有率が低いため、加工中の破損が生じくい。さらに、本実施形態では、磁心の磁歪が負の値であることにより高周波領域における透磁率を向上することができるため、強度、加工性、及び透磁率の両立が可能である。
組成(I)中のAl含有率は、下記式(ii)により算出される。
組成(I)中のAl含有率[原子%]=y×(100-a-b-c) (ii)
組成(I)中のAl含有率は、上述したy、a、b、及びcの範囲を充足する限り特に限定されないが、好ましくは0.9原子%以上、より好ましくは1.0原子%以上、さらに好ましくは1.2原子%以上、特に好ましくは1.5原子%以上であり、また、好ましくは4.0原子%未満、より好ましくは3.5原子%以下、さらに好ましくは3.0原子%以下、特に好ましくは2.5原子%以下である。
1-1-2.結晶粒
結晶粒は、体心立方構造(bcc構造)を有するFe-Si-Al三元系合金の結晶相からなるものであって、主体となるFeにSi及びAlが固溶されており、さらにその他の元素が固溶されていてもよい。Fe基ナノ結晶軟磁性合金は、組成中にAlを含むことにより、結晶磁気異方性を低減することができ、さらに、結晶粒が微細であることにより結晶磁気異方性が平均化して低減されるため、比透磁率が向上すると考えられる。
なお、結晶粒を構成する結晶相の結晶構造は、X線回折法(XRD)により同定することができる。
結晶粒の平均結晶粒径は、ナノスケールであれば特に限定されず、通常9.0nm以上であり、また、通常20.0nm以下、好ましくは12.0nm以下、より好ましくは11.3nm以下、さらに好ましくは11.0nm以下、特に好ましくは10.0nm以下である。或いは、通常9nm以上であり、また、通常20nm以下、好ましくは12nm以下、より好ましくは11nm以下である。結晶粒の平均結晶粒径は、組成(I)中のa、b、及びcを調整することで、所望の範囲内とすることができる。
結晶粒の平均結晶粒径を上記範囲内とすることにより、結晶磁気異方性が平均化して低減され、比透磁率の向上効果が大きくなる傾向がある。また、このように結晶粒が微細であることで、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の比透磁率、保磁力等の軟磁気特性を向上させることもできる。
結晶粒の平均結晶粒径は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金をX線回折装置(XRD)により分析し、下記式(2)に従って求めることができる。
D=(K×λ)/(β×cosθ) (2)
D:結晶粒径[nm]
K:シェラー定数
λ:X線の波長[nm]
β:半値幅[rad]
θ:Bragg角[rad]
1-1-3.クラスター
アモルファス中には、クラスターが分散されていてもよい。クラスターとは、3次元アトムプローブ(3DAP)により観察される原子の集合体を意味する。クラスターは、Fe基ナノ結晶軟磁性合金中に均一に分布していてもよく、偏在していてもよいが、均一に分布していることが好ましい。
クラスターを構成する原子の種類は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の主成分であるFe以外の原子であれば特に制限されず、Si、Al、Nb、W、Zr、Hf、Ti、Mo、B、C、P、及びCuからなる群から群より選択される1種以上の原子であればよい。これらのうち、クラスターを構成する原子は、Cu及びAlのいずれか一方又は両方であることが好ましく、Cu及びAlの両方であることがより好ましい。Cuは、Feと固溶しないためクラスターを形成する元素であり、また、Alは、Cuと固溶体又は化合物を形成してクラスターを形成しやすい元素であると推測される。
クラスターを構成する原子が2種類以上である場合、各クラスターは、1種類の原子の集合体であってもよく、2種類以上の原子の集合体であってもよいが、2種類以上の原子の集合体であることが好ましい。
例えば、クラスターを構成する原子がCu及びAlの両方を含む場合、Fe基ナノ結晶軟磁性合金のアモルファス相中に、CuのクラスターとAlのクラスターとが分散されていてもよく、Cu及びAlの両方を含むクラスターが分散されていてもよいが、Cu及びAlの両方を含むクラスターが分散されていることが好ましい。
なお、3次元アトムプローブ(3DAP)を用いた組織観察において、Cuの分布のうちクラスターに相当する部分とAlの分布のうちクラスターに相当する部分とが重複していれば、Fe基ナノ結晶軟磁性合金のアモルファス相中にCu及びAlの両方を含むクラスターが分散されていると考えられる。
後述するように、Fe基ナノ結晶軟磁性合金は、アモルファス合金を熱処理することで、組織中にクラスター及び結晶粒を形成することで製造されるところ、クラスターは、熱処理の初期段階でアモルファス合金中に形成され、結晶核として結晶相を成長させる他、結晶相周辺に分散して過度な結晶成長を抑制し得る。これにより、結晶粒径の小さい結晶粒を含むFe基ナノ結晶軟磁性合金が得られると考えられる。また、微細なクラスターがアモルファス相中に分散していることにより、結晶磁気異方性が低減され、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の比透磁率を向上することができると考えられる。Cu及びAlにいずれか一方又は両方から構成されるクラスターは、かかる作用が高い点で好適である。
Fe基ナノ結晶軟磁性合金におけるクラスターの数密度は、通常1.65×10-4/nm以上、好ましくは1.90×10-4/nm以上、より好ましくは2.15×10-4/nm以上、さらに好ましくは2.50×10-4/nm以上であり、また、通常7.30×10-4/nm以下、好ましくは5.50×10-4/nm以下、より好ましくは3.00×10-4/nm以上である。
クラスターの数密度は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金を3次元アトムプローブ(3DAP)分析により得られる3次元マッピングを用い、単位面積あたりのクラスターの数を確認することにより求めることができる。このとき、クラスター構成する原子のうち20原子
%以上を1種類の原子が占める場合、当該原子のクラスター1個と数えるものとする。また、クラスター構成する原子のうち20原子%以上を2種類の原子が占める場合、当該2種類の原子両方を含むクラスター1個と数えるものとする。
クラスターの数密度を上記範囲内とすること、すなわち、小さいクラスターを多く存在せしめることで、クラスター同士の間隔が狭くなる。そのため、クラスターを結晶核として生じる結晶相の成長が抑制され、平均結晶粒径の小さい結晶粒を含むFe基ナノ結晶軟磁性合金を得ることができる。そして、その結果、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の比透磁率が向上する。
クラスターの数密度は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成を変動させることにより調整することができる。例えば、Cu及びAlの両方を含むクラスターを形成する場合は、組成式(I)中のc、y、及びy×(100-a-b-c)を変更することで調整することができる。
1-1-4.Fe基ナノ結晶軟磁性合金リボンのサイズ
Fe基ナノ結晶軟磁性合金リボンの厚さ及び幅は、巻回して実用的形状の磁心を形成できる限り特に制限されない。例えば、リボンの厚さは、通常8μm以上16μm以下であってよく、リボンの幅は、通常5mm以上25mm以下であってよい。
1-2.磁歪
本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心は、磁歪が0ppm未満であり、すなわち、負磁歪を示す。
上述の通り、これまで、磁性材料の透磁率を向上させるためには、磁歪は零に近づけるのが本技術分野における一般的に認識であった。しかしながら、上記Fe基ナノ結晶軟磁性合金により構成された磁心においては、この認識とは異なり、実用温度条件における磁歪を零に設定した場合に、低周波領域で高い比透磁率を示したとしても、高周波領域では比透磁率が最大にならないことを本発明者らは見出した。そして、本発明者らは、実用温度条件における磁心の磁歪を零ではなく負の値に設定することにより、特定組成のFe基ナノ結晶軟磁性合金の高周波領域における透磁率を最大化できることを突き止めた。なお、上記実用温度条件とは、磁心が使用される常温(20℃)条件を意味する。
Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の磁歪は、負磁歪であり、具体的には、通常0ppm未満、好ましくは-0.25ppm以下、より好ましくは-0.5ppm以下である。また、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の磁歪の下限は、常温条件下での高周波領域における透磁率をより高める観点から、好ましくは-2.0ppm以上、より好ましくは-1.5ppm以上、さらに好ましくは-1.0ppm以上である。
本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の磁歪は、歪ゲージ法により測定することができる。具体的には、まず、測定試料の表面に歪ゲージを取り付け、歪ゲージ軸の長手方向に600Oeの磁界を印加する。次いで、磁界印加前後での測定試料の長さの変化量を計測することで求めた相対磁歪をFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の磁歪とする。
磁歪の測定は、20℃で行われる。また、測定試料は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心から巻き出したリボンを短冊状に切り出した試料であってもよく、ナノ結晶化前のリボンを短冊状に切り出し、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の製造時と同条件でナノ結晶化(熱処理)を行って得た試料であってもよい。
Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の常温における磁歪が上述の範囲であることにより高周波領域での比透磁率が向上する理由について、本発明者らは以下のように推察している。
磁心の比透磁率は周囲環境温度に応じて変化するところ、後述する実施例に示すように、本実施形態においては、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成を一定とした場合、高周波領
域での比透磁率が最大(極大点)となる周囲環境温度は、低周波領域での比透磁率が最大となる周囲環境温度よりも高い。換言すると、本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心は、組成式(I)で表される組成を有するFe基ナノ結晶軟磁性合金で作製されていることにより、高周波領域における比透磁率の極大点が低周波領域における比透磁率の極大点よりも高温側にシフトする。かかる比透磁率の挙動を考慮すると、低周波領域における比透磁率が最大となる周囲環境温度が常温未満であれば、高周波領域における比透磁率が常温で最大となると考えられる。そして、常温における磁心の磁歪が負の値であれば、低周波領域における比透磁率が最大となる周囲環境温度が常温未満となり、高周波領域における比透磁率を最大化することができると推測される。
磁心の磁歪と、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成、20℃における磁歪の比透磁率、及びFe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶化度との間には、相関関係がある。したがって、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成及び結晶化度を調整することにより、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の磁歪を上記範囲に調整し、高周波領域における比透磁率を向上することが可能である。具体的には、後述する実施例における「合金組成、結晶化度、及び比透磁率の関係の検証」に示すような検証に基づき、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成及び結晶化度を適宜選択すればよい。
なお、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶化度は、X線回折(XRD)装置(例えば、株式会社リガク製,Ultima IV)を用いた分析により求めることができる。具体的
には、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心のXRD分析を行い、得られたXRDパターンにおける結晶成分のピーク面積及び非晶質成分のピーク面積から、以下の式(3)に基づいて結晶化度を算出することができる。
Figure 2023124571000001
2.Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の製造方法
本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の製造方法は、特に限定されず、公知の方法を適宜採用し得る。公知の方法としては、例えば、所定の組成を有する溶湯を超急冷法により急冷凝固させることでアモルファス合金のリボンを作製するアモルファス合金リボン作製工程、及び熱処理によりアモルファス合金をナノ結晶化する熱処理工程を含む方法が挙げられる。
2-1.アモルファス合金リボン作製工程
上記方法において、超急冷法に供する合金としては、目的とするFe基ナノ結晶軟磁性合金と同組成を有するもの、すなわち、組成式(I)で表される組成を有する合金が用いられる。
アモルファス合金リボン作製工程において、急冷時の溶湯の温度は、合金の融点よりも50℃~300℃高い程度の温度とすることが望ましい。超急冷法としては、特に限定されず、単ロール法、双ロール法、回転液中防止法、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法等の公知の方法を採用することができる。
超急冷法によるアモルファス合金リボンの作製は、大気等の酸化性雰囲気下で行ってもよく、アルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、真空条件下で行ってもよい。
なお、超急冷法により得られるアモルファス合金リボンは、結晶相を含まないことが好
ましいが、一部に結晶相を含んでもよい。
アモルファス合金リボン作製工程で得られたアモルファス合金リボンは、ナノ結晶化後に巻回して磁心を作成してもよいが、ナノ結晶化前に巻回して磁心材を作製し、この磁心材に熱処理を施してナノ結晶化を行うことが好ましい。合金は、アモルファス合金の段階では良好な加工性を示すものの、熱処理によりナノ結晶化すると、加工性が低下するためである。
2-2.熱処理工程
熱処理工程における熱処理温度は、合金の結晶化開始温度以上の温度であれば、特段限定されず、通常450℃以上であり、500℃以上、510℃以上、520℃以上、530℃以上、又は540℃以上であってもよい。また、熱処理温度の上限は、通常700℃以下であり、650℃以下又は600℃以下であってもよい。なお、熱処理温度とは、熱処理における最高到達温度を意味する。
当該熱処理温度での保持時間は、アモルファス合金リボンのサイズ等にもよるが、合金全体を均一に加熱する観点及び生産性の観点から、通常5分以上であり、8分以上又は10分以上であってよく、また、通常5時間以下であり、3時間以下、2時間以下、又は1時間以下であってもよい。
さらに、熱処理工程は、大気等の酸化性雰囲気下で行ってもよく、アルゴン、ヘリウム、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行ってもよく、真空条件下で行ってもよいが、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
また、磁心の透磁率の向上を図るために、熱処理工程中に、例えば国際公開第2022/019335号に記載の方法に準じてアモルファス合金リボンに磁場を印加してもよい。
上述したように、本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の磁歪は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成及び結晶化度により調整されるものであるため、熱処理温度、保持温度等の各種熱処理条件は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成及び目的とする結晶化度に応じて選択される。
3.Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の用途
本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心は、リアクトル、コモンモードチョークコイル、トランス、通信用パルストランス、モータ、発電機等に用いることができる。これらのうち、本実施形態に係るFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心は、高周波における高比透磁率が要求されるコモンモードチョークコイル、ゼロ相リアクトル、カレントトランス、地絡センサー等の用途に特に好適に用いられる。
以下に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
<実験例1~12>
表1に示す組成の溶湯から、単ロール法により合金リボンを作製した。具体的には、アーク溶解法により、表1に示す組成になるように秤量した各元素の純金属を溶解混合することで、母合金を得た。得られた母合金を溶解した合金溶湯を、アルゴンガス雰囲気中の減圧下で、周速50m/sで回転するロール上に噴出し、幅5mm及び厚さ10μmのリボンを作製した。
続いて、得られたリボンを巻回し、外径13mm、内径12mm及び高さ5mmの巻磁
心を得た。得られた巻磁心に対し、窒素雰囲気下、表2に示す条件で熱処理を行うことにより、Fe基ナノ結晶軟磁性磁心を作製した。
[比透磁率の評価]
実験例で作製したFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心を、樹脂ケースに装填した後、当該樹脂ケースに線径0.5mmの銅線を3ターン巻くことでコイルを作製した。インピーダンス・アナライザ(キーサイト社製,E4990A)を用い、周波数1kHz又は100kHz、及びHm=0.4A/m以下において、得られたコイルのインダクタンスを測定し、上記式(1)に基づいてFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の比透磁率を求めた。なお、磁路長lは39mm、有効断面積Aは1.8mm、及び巻き数Nは3である。結果を表2に示す。
[結晶化度の測定]
実験例で作製したFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心を、XRD分析装置(株式会社リガク製,Ultima IV)により分析した。得られたXRDパターンにおける結晶成分の
ピーク面積及び非晶質成分のピーク面積から、上記式(3)に基づいて結晶化度を算出した。結果を表2に示す。
[磁歪の測定]
実験例で作製した合金リボンを短冊状に切り出し、実験例における巻磁心の熱処理と同条件で熱処理を行うことで測定試料を得た。この測定試料の表面に歪ゲージを取り付け、歪ゲージ軸の長手方向に600Oeの磁界を印加した。磁界印加前後の測定試料の長さの変化量を計測し、相対歪量を求めた。結果を表2に示す。
Figure 2023124571000002
Figure 2023124571000003
[比透磁率の温度依存性の評価]
実験例で作製したFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心を、樹脂ケースに装填した後、当該樹脂ケースに線径0.5mmの銅線を3ターン巻くことでコイルを作製した。周囲環境温度を異ならせた状態で、インピーダンス・アナライザ(キーサイト社製,E4990A)を用い、周波数1kHz及びHm=0.4A/m以下において、得られたコイルのインダクタンスLsを測定した。続いて、周囲環境温度20℃におけるインダクタンスLs基準とし、各周囲環境温度におけるインダクタンスLsの変化率ΔLsを算出した。インダクタンス変化率ΔLs[%]と周囲環境温度との関係を図1~4に示す。比透磁率は、インダクタンスと比例関係にあるため、ΔLsが大きいほど比透磁率が高く、ΔLsが極大点となる周囲環境温度で磁心の比透磁率も最大(極大点)となる。
なお、図1~4中、ΔLsの極大点を矢印で示した。ただし、ΔLsの極大点が、測定を行った周囲環境温度の下限(-60℃)以下である場合は、ΔLsが極大点となる周囲環境温度は、当該下限であるものとした。
結晶粒内のFe基合金の磁歪には温度依存性があり、周囲環境温度が上昇すると磁歪は正の値から負の値へと低下する。そのため、周囲環境温度が低温側から上昇していくにつれて結晶粒内の磁歪が低下し、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の磁歪が零に近づくと比透磁率は最大となる。
ここで、図3中の実験例7~9の結果を互いに比較すると、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶化度が低いほど、周囲環境温度が磁歪の低下度が大きくなる高い温度であるときに、磁心の比透磁率が最大となることがわかる。これは、低周波(1kHz)及び高周波(100kHz)のいずれにおいても言えることである。
また、図3中、同一実験例の磁心について、1kHzにおける比透磁率と100kHz
における比透磁率とを比較すると、100kHzにおいては、比透磁率が最大となる周囲環境温度が、1kHzにおける比透磁率が最大となる周囲環境温度よりも高温側にあることがわかる。
図1、2、及び4からわかるように、これらの傾向は、実験例7~9だけでなく、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成が組成式(I)中のxにおいて実験例7~9と異なる実験例1~3、実験例4~6、及び実験例10~12でも見られる。
以上のことから、組成(I)のFe基ナノ結晶軟磁性合金を構成材料として用いた磁心に関しては、実用温度である常温(20℃)で高周波領域における比透磁率が最大となるようにするためには、低周波領域における比透磁率が最大となる周囲環境温度が、常温未満である必要があると考えられる。そして、常温未満の温度で低周波領域における比透磁率が最大となるようにするためには、常温におけるFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心の磁歪は、負の値である必要がある。
磁心の磁歪は、構成材料の組成及び結晶化度に依存するため、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成及び結晶化度を調整することにより、磁心の磁歪を負の値とすることが可能である。そこで、以下、磁心の磁歪を負の値とし得るFe基ナノ結晶軟磁性合金の組成及び結晶化度について検討する。
[合金組成、結晶化度、及び比透磁率の関係の検証]
Fe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶化度を横軸、20℃における磁心の比透磁率を縦軸にとり、表2の結果をプロットし、さらに近似曲線を引いたグラフを図5に示す。
図5からわかるように、実験例で作製した磁心の比透磁率は、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶化度が高くなるにつれて大きくなり、結晶化度が一定以上となると小さくなる。結晶化度の上昇に伴い磁心の比透磁率が大きくなるのは、結晶化が進むと、合金中に占める負磁歪領域(結晶相)の体積比率が増加し、磁心の磁歪が零に近づくためであると考えられる。また、結晶化が一定以上進むと比透磁率が小さくなるのは、正磁歪領域(アモルファス相)が減少して負磁歪領域の体積比率がさらに大きくなり、磁心の磁歪が負の方向に過剰に大きくなるためであると考えられる。
組成式(I)で示される組成は、従来汎用されているFe-Si-Al系磁性合金よりもAl含有率が低く、Si含有率が高いため、結晶磁気異方性が大きくなる傾向がある。上述した比透磁率と結晶化度との関係を踏まえると、このように結晶磁気異方性が零近傍でない材料により構成される磁心の比透磁率が常温で極大点を示すようにするためには、結晶化度を所望の範囲に調整することが特に重要であると考えられる。そこで、図5についてより詳細に検討する。
図5のグラフ中に引いた近似曲線から、各組成において、1kHz及び100kHzのそれぞれで比透磁率が最大となるのは、図5中矢印で示した点であると推測される。したがって、図5下段のグラフ中の矢印が示す結晶化度に調整することで、常温条件下で100kHzにおける比透磁率が最大化し、このときの磁心の磁歪は負の値になると考えられる。
また、上記推測及びグラフ中のプロットから、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成が組成式(I)で表される場合、1kHz及び100kHzのいずれにおいても、Fe基ナノ結晶軟磁性合金中のSi含有率が高いほど、磁心の比透磁率が最大となる結晶化度が低い傾向があると考えられえる。
さらに、磁心を構成するFe基ナノ結晶軟磁性合金の組成毎に、1kHz及び100kHzにおける比透磁率を比較すると、100kHzにおける比透磁率が最大となるFe基
ナノ結晶軟磁性合金の結晶化度は、1kHzにおける比透磁率が最大となるFe基ナノ結晶軟磁性合金の結晶化度よりも1~2%程度高いと予想される。
上記検証により、Fe基ナノ結晶軟磁性合金中のSi含有率、20℃における比透磁率、及び結晶化度との間の関連性が示された。
したがって、このような検証に基づいて、Fe基ナノ結晶軟磁性合金の組成と結晶化度とを適宜調整することにより、常温における磁心の磁歪を所望の範囲に調整することができる。また、これにより、Al含有率の低いFe基ナノ結晶軟磁性合金を用いて、高周波領域における比透磁率の高い磁心を得ることが可能となる。

Claims (3)

  1. アモルファス相と結晶粒とを含むFe基ナノ結晶軟磁性合金からなるリボンが巻回されてなる磁心であって、
    20℃における磁歪が、0ppm未満であり、
    前記Fe基ナノ結晶軟磁性合金が、下記組成式(I)で表される組成を有する、Fe基ナノ結晶軟磁性合金磁心。
    (Fe1-x-ySiAl100-a-b-cM’Cu (I)
    (組成式(I)中、Mは、Nb、W、Zr、Hf、Ti及びMoからなる群より選ばれる1種以上の元素であり;M’は、B、C及びPからなる群より選ばれる1種以上の元素であり;a、b及びcは、それぞれ原子%で、2.0≦a≦5.0、3.0<b<10.0及び0<c<3.0であり;x及びyは、0.170≦x≦0.320及び0.010≦y≦0.045であり;15.5<x×(100-a-b-c)である。)
  2. 前記組成式(I)中、0.250<x≦0.320である、請求項1に記載のFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心。
  3. MがNbであり、M’がBである、請求項1又は2に記載のFe基ナノ結晶軟磁性合金磁心。
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