JP2023122733A - 炭素繊維シートの熱処理炉およびそれを用いた炭素繊維シートの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】炭素繊維シートの変形を抑制しつつ、貫通孔やシミ等の外観不良が少ない、高品位な炭素繊維シートを安定的に連続生産できる炭素繊維シートの熱処理炉および製造方法を提供する。【解決手段】炭素繊維シート前駆体を連続的に搬送しながら加熱して炭素繊維シートを製造するための熱処理炉であって、前記炭素繊維シート前駆体の加熱中に発生する排ガスを炉内から炉外へ排出するための少なくとも1つのガス排出経路を有するとともに、該ガス排出経路の炉内開口部の近傍の、前記炭素繊維シート前駆体の搬送面の上部を遮蔽し、かつ前記炭素繊維シート前駆体と接触しない位置に遮蔽板を設けた熱処理炉。【選択図】図1
Description
本発明は、炭素繊維シートの熱処理炉およびそれを用いた炭素繊維シートの製造方法に関する。
炭素繊維シートは、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)の成形や燃料電池の電極等、様々な用途に用いられている。炭素繊維シートを連続生産する製造方法の一つとして、炭素短繊維を抄紙したマットに樹脂を含浸して硬化させた炭素繊維シート前駆体を熱処理炉で連続的に熱処理することにより樹脂を黒鉛化する方法がある。
この方法においては、炭素繊維シート前駆体の樹脂を黒鉛化する工程において、樹脂が熱分解する際に発生する分解ガスが熱処理炉内に堆積して固化したガス凝集物が炭素繊維シート前駆体の端部に接触することで、炭素繊維シート端部に割れや欠けが発生し、それに起因して炭素繊維シートが破断するという課題があった。また、熱処理炉の天井内壁面に氷柱状に堆積した樹脂の分解ガス凝集物は、熱処理炉内を搬送中の炭素繊維シート前駆体の上に落下しやすく、炭素繊維シートのシミや貫通孔等の外観不良の原因となる場合があった。
このようなガス凝集物による炭素繊維シート前駆体の破断や外観不良を防止するため、熱処理炉内を連続的に搬送される炭素繊維シート前駆体の上に、炭素繊維シート前駆体より広幅の耐熱シートを、炭素繊維シート前駆体を覆うように配設する熱処理方法が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、特許文献1の熱処理方法のうち、耐熱シートが炭素繊維シート前駆体と接触するように配設されている場合、炭素繊維シート前駆体の蛇行や変形が顕著となり、これらに起因する割れや折れによって炭素繊維シート前駆体が破断するなど、炭素繊維シート前駆体の連続搬送に悪影響が出る場合がある。また、耐熱シートを、炭素繊維シート前駆体と接触しない態様で配設したとしても、特許文献1の耐熱シートは微細孔を有するため、耐熱シート上に落下したガス凝集物が、微細孔を透過して、炭素繊維シート前駆体に付着することで、微小なシミや貫通孔が生じる場合がある。
本発明の課題は、炭素繊維シートの変形を抑制しつつ、貫通孔やシミ等の外観不良が少ない、高品位な炭素繊維シートを安定的に連続生産できる炭素繊維シートの熱処理炉および製造方法を提供することである。
上述の課題を解決するために、本発明は、以下の手順によって、ガス凝集物が炭素繊維シート前駆体に付着することを防ぎつつ、炭素繊維シート前駆体を安定的に搬送し続けられる、炭素繊維シートの熱処理炉および製造方法を提供する。
(1)炭素繊維シート前駆体を連続的に搬送しながら加熱して炭素繊維シートを製造するための熱処理炉であって、前記炭素繊維シート前駆体の加熱中に発生する排ガスを炉内から炉外へ排出するための少なくとも1つのガス排出経路を有するとともに、該ガス排出経路の炉内開口部の近傍の、前記炭素繊維シート前駆体の搬送面の上部を遮蔽し、かつ前記炭素繊維シート前駆体と接触しない位置に遮蔽板を設けた熱処理炉。
(2)前記遮蔽板が、前記ガス排出経路の炉内開口部の中心と前記搬送面とを最短距離で結ぶ直線を遮蔽する位置に設けられている、(1)に記載の熱処理炉。
(3)前記熱処理炉は素繊維シート前駆体1を2000℃以上に加熱可能であり、前記遮蔽板が、前記熱処理炉内の500~1500℃の領域に設置されている、(1)または(2)に記載の熱処理炉。
(4)前記遮蔽板が、炉入口から出口までの距離の50%以下の範囲に設置されている、(1)~(3)のいずれかに記載の熱処理炉。
(5)前記遮蔽板が、炭素繊維シート前駆体よりも広幅である、(1)~(4)のいずれかに記載の熱処理炉。
(6)前記遮蔽板が、炭素材料または炭素繊維強化複合材料からなる、(1)~(5)のいずれかに記載の熱処理炉。
(7)前記遮蔽板が、着脱可能に設けられている、(1)~(6)のいずれかに記載の熱処理炉。
(8)前記遮蔽板が、前記搬送面の両側に立設されたスペーサーに載置されている、(7)に記載の熱処理炉。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の熱処理炉を用いて炭素繊維シート前駆体を加熱する加熱工程を有する炭素繊維シートの製造方法。
(10)炭素繊維シート前駆体を1000℃未満に加熱する低温加熱工程と、炭素繊維シート前駆体を2000℃以上に加熱する高温加熱工程とをこの順に有し、該高温加熱工程において(1)~(8)のいずれかに記載の熱処理炉による熱処理を行う、(9)に記載の炭素繊維シートの製造方法。
(1)炭素繊維シート前駆体を連続的に搬送しながら加熱して炭素繊維シートを製造するための熱処理炉であって、前記炭素繊維シート前駆体の加熱中に発生する排ガスを炉内から炉外へ排出するための少なくとも1つのガス排出経路を有するとともに、該ガス排出経路の炉内開口部の近傍の、前記炭素繊維シート前駆体の搬送面の上部を遮蔽し、かつ前記炭素繊維シート前駆体と接触しない位置に遮蔽板を設けた熱処理炉。
(2)前記遮蔽板が、前記ガス排出経路の炉内開口部の中心と前記搬送面とを最短距離で結ぶ直線を遮蔽する位置に設けられている、(1)に記載の熱処理炉。
(3)前記熱処理炉は素繊維シート前駆体1を2000℃以上に加熱可能であり、前記遮蔽板が、前記熱処理炉内の500~1500℃の領域に設置されている、(1)または(2)に記載の熱処理炉。
(4)前記遮蔽板が、炉入口から出口までの距離の50%以下の範囲に設置されている、(1)~(3)のいずれかに記載の熱処理炉。
(5)前記遮蔽板が、炭素繊維シート前駆体よりも広幅である、(1)~(4)のいずれかに記載の熱処理炉。
(6)前記遮蔽板が、炭素材料または炭素繊維強化複合材料からなる、(1)~(5)のいずれかに記載の熱処理炉。
(7)前記遮蔽板が、着脱可能に設けられている、(1)~(6)のいずれかに記載の熱処理炉。
(8)前記遮蔽板が、前記搬送面の両側に立設されたスペーサーに載置されている、(7)に記載の熱処理炉。
(9)(1)~(8)のいずれかに記載の熱処理炉を用いて炭素繊維シート前駆体を加熱する加熱工程を有する炭素繊維シートの製造方法。
(10)炭素繊維シート前駆体を1000℃未満に加熱する低温加熱工程と、炭素繊維シート前駆体を2000℃以上に加熱する高温加熱工程とをこの順に有し、該高温加熱工程において(1)~(8)のいずれかに記載の熱処理炉による熱処理を行う、(9)に記載の炭素繊維シートの製造方法。
本発明によれば、炭素繊維シートの変形を抑制しつつ、シミや貫通孔等の外観不良が抑制された、高品位かつ変形が少ない炭素繊維シートを安定的に連続生産できる。
以下に、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
図1は、本発明の一実施形態である熱処理炉100を、炭素繊維シート前駆体1の搬送方向(以下、単に「搬送方向」という)と直交する方向に横から見た断面模式図であり、図2は熱処理炉100を搬送方向から見た断面模式図である。図3は別の実施形態の熱処理炉100を搬送方向から見た断面模式図である。図1において、炭素繊維シート前駆体1は図の左側から右側に向かって搬送される。
炭素繊維シート前駆体1は、アクリル耐炎繊維等を用いた耐炎繊維不織布、耐炎糸織物、炭素短繊維を有機物で結着したシート等であり得る。
耐炎繊維不織布は、アクリル耐炎繊維等の短繊維をカーディングする乾式法、あるいは耐炎繊維の短繊維を水中に分散させて抄紙する湿式法のいずれによって製造されたものであってもよい。不織布の強度を高くするために、不織布を水流交絡処理、あるいはニードルパンチ処理して、繊維の絡合を形成することがある。同様の目的で、繊維間を接着するバインダーの添加処理を不織布に対して行ってもよい。乾式法の場合も同様に、水流交絡やニードルパンチによる繊維の交絡処理、あるいは繊維間を接着するバインダーの添加を行ってもよい。また、耐炎繊維不織布を得る別の方法として、不織布を耐炎化処理してもよい。
耐炎糸織物としては、炭素繊維の長繊維を織物状にしたものまたはアクリル耐炎糸等を紡績して紡績糸とした後に織物としたもの等がある。
炭素短繊維を有機物で結着したシートの場合、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維、フェノール系炭素繊維のいずれでも用いることができるが、得られた炭素繊維シートの曲げ強度や引張強度を高くできるPAN系炭素繊維またはピッチ系炭素繊維を用いることが好ましく、PAN系炭素繊維を用いることがより好ましい。炭素短繊維の長さは3~12mmの範囲内にあることが好ましい。炭素短繊維の長さが6~9mmの範囲内にあると、炭素短繊維の抄紙の際に良好な分散性を得られるとともに、引張強度が高く、破れにくい炭素繊維シートを得ることができて好ましい。有機物は、炭素繊維シート前駆体1に含まれる炭素繊維間を結着する目的でポリビニルアルコール(PVA)等の熱可塑性樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂等を用いたり、有機物の熱処理によってできた炭化物によって炭素繊維シート2中の炭素繊維間を結着する目的でフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂やピッチ等を用いたり、炭素繊維シート前駆体1を得る工程通過性を高める目的で澱粉やPVA等を用いたりすることができる。
炭素繊維シート前駆体1には、炭素繊維シートに求められる性能に応じて、炭素粉末や金属粉末、無機粉末、金属繊維、無機繊維等を含ませることができる。燃料電池電極基材として用いる場合には、導電性向上や不純物低減のため炭素粉末を含ませることが好ましい。炭素粉末を用いる場合の比率は、炭素繊維シートの10~50質量%であることが、導電性向上のために好ましい。
図1に示す熱処理炉100は、炭素繊維シート前駆体1を連続的に走行させながら熱処理して、炭素繊維シート前駆体1中の耐炎糸、あるいは炭素短繊維を結着する有機物を炭化することによって、炭素繊維シート前駆体1を炭素繊維シート2とするものである。熱処理炉100には、炭素繊維シート前駆体1を通過可能とする炉内空間101が貫通して設けられている。炭素繊維シート前駆体1は熱処理炉の入口(以下、炉入口)より挿入され、熱処理炉の出口(以下、炉出口)に向かって、高温に保たれた炉内空間101内を炉床102に触れずに浮いた状態で連続的に移動、または、炉床102上を滑るようにして連続的に移動する。
熱処理炉100の天井部には、炭素繊維シート前駆体1を加熱中に発生する排ガスを炉内から炉外へ排出するためのガス排出経路103が設けられている。このようなガス排出経路は、炭素繊維シート前駆体1の搬送面の片側または両側の壁面に設けられても構わない。
熱処理炉100は、炉出入口が開放された開放型の熱処理炉であるため、炉出入口近傍は室温程度であり、炉内には温度分布が生じる。発明者らが炉床上の炭化物の堆積について鋭意検討した結果、炭素繊維シート2の外観不良を誘発するガス凝集物の主な発生箇所は、熱処理炉100の構造や温度分布により異なるが、500~1500℃の温度領域であること、また、この温度域は、炭素繊維シート前駆体1を搬送中に熱処理炉100内で発生する排ガスを炉内から炉外へ排出するガス排出経路103の炉内開口部付近の、炉内で排ガスの濃度が最も大きい領域であることを突き止めた。
そのため、熱処理炉100においては、ガス排出経路103の炉内開口部の近傍に、遮蔽板50が設けられている。このような遮蔽板50は、ガス排出経路103が熱処理炉100の上壁面に設けられている場合は、ガス排出経路103の炉内開口部の中心と炭素繊維シート前駆体1の搬送面とを最短距離で結ぶ直線を遮蔽する位置に設けられていることが好ましい。前述の通り、ガス排出経路103は炭素繊維シート前駆体1の搬送面の片側または両側の壁面に設けられても構わないが、これらの場合でも、ガス排出経路103近傍の熱処理炉100の天井内面には、前記ガス凝集物が少なからず堆積するため、遮蔽板50を設ける必要がある。ガス排出経路103が熱処理炉100の下壁面に設けられている場合は、ガス排出経路103の炉内開口部の中心と炭素繊維シート前駆体1の搬送面とを最短距離で結ぶ直線を延長した、炭素繊維シート前駆体1の上面を覆うように設けられていることが好ましい。また、ガス排出経路103が熱処理炉100の横壁面に設けられている場合は、遮蔽板50はガス排出経路103の炉内開口部の中心と、炭素繊維シート前駆体1の端部とを最短距離で結ぶ直線の位置における炭素繊維シート前駆体1の上面を覆うように設けられていることが好ましい。
また、遮蔽板50は、炉内空間101中の、搬送中の炭素繊維シート前駆体1と接触しない位置に設けられている。炭素繊維前駆体シート1と接触しない位置に遮蔽板を設けることで、炭素繊維シート前駆体1に摩擦等の抵抗が加わることを防止でき、炭素繊維シート前駆体1の蛇行や変形を抑制でき、またそれらに起因する割れや折れによる炭素繊維シート前駆体1および炭素繊維シート2の破断を防止することができる。
また、炭素繊維シート前駆体1を2000℃以上に加熱可能な熱処理炉の場合、図1に示したように、熱処理炉100の温度が500~1500℃に達するまでの領域に遮蔽板50を配置しておけば、シミや貫通孔などの外観不良を誘発するガス凝集物が炭素繊維シート前駆体1に付着することを防ぐことができる。
遮蔽板50は、不織布や織物のような中実の(微細孔を含め、孔を有しない)板状物やシート状物であればよいが、熱処理炉100内の不活性ガス雰囲気下500~1500℃の範囲で熱分解や炉内雰囲気ガスとの反応を起こさない材料であることが好ましく、耐熱性に優れた炭素材料または炭素繊維強化複合材料からなることが好ましい。特に、耐久性の観点から、遮蔽板50は炭素繊維強化炭素複合材料からなることがより好ましい。炭素繊維強化炭素複合材料であると、微細孔を確実に持たないようにできるだけでなく、遮蔽板50に充分な剛性をも付与することができ、本発明の課題が確実に解決できる。
遮蔽板50は、熱処理炉100内全長に亘って設置しても良いが、その場合、熱処理炉100内の高温領域において発生した排ガスが、遮蔽板50の炭素繊維シート前駆体搬送面側で滞留し、遮蔽板50の炭素繊維シート前駆体搬送面側面に前述のガス凝集物が付着し、炭素繊維シート2の外観欠点の発生リスクが増加する可能性がある。従って、遮蔽板50は、ガス排出経路103の炉内開口部の中心と前記搬送面とを最短距離で結ぶ直線を含む、炉入口から炉出口までの距離の50%以下の範囲に設置することが好ましい。
遮蔽板50は熱処理炉100内に常設しても構わないが、メンテナンスを容易にするために、熱処理炉100内への着脱が可能な構造であることが望ましい。また、遮蔽板50を熱処理炉100の炉入口または炉出口から容易に取り出せるよう、遮蔽板50は炭素繊維シート前駆体1の搬送面の両側に立設されたスペーサー104に載置される構造である方が好ましい。スペーサー104は、図2(A)のような炉床102上に設置された炭素繊維シート前駆体1搬送方向に伸びた棒状、または図2(B)のような熱処理炉100の炭素繊維シート前駆体1搬送面の両側面に設置された突起物のようなものでも構わない。スペーサー104の幅は、炭素繊維シート前駆体1の搬送領域を確保するために、遮蔽板50の幅に対して5%程度とすることが好ましい。
遮蔽板50は、炭素繊維シート前駆体1の幅方向全域にわたって炭素繊維シート前駆体1へのガス凝集物の付着を防ぐために、炭素繊維シート前駆体1よりも広幅であることが好ましく、より具体的には、炭素繊維シート前駆体1の幅に対して1.01~2.00倍であることが好ましい。遮蔽板50の幅が炭素繊維シート前駆体1の幅の1.01倍より小さいと、例えば炭素繊維シート前駆体の幅が1mとした場合、炭素繊維シート前駆体1が幅方向に片側5mm蛇行するだけで、遮蔽板50に覆われている領域をはみ出してしまい、炭素繊維シート前駆体1の全幅にわたって覆うことが困難となる、または遮蔽板50が載置されているスペーサー104と炭素繊維シート前駆体1とが接触して炭素繊維シート前駆体1および炭素繊維シート2に割れや欠けが生じて破断する、といった問題が発生する。一方、遮蔽板50の幅が炭素繊維シート前駆体1の幅の2.00倍より大きいと、遮蔽板50を設置するために熱処理炉100の幅を大きく設計する必要があり、熱処理炉100の設置費用の増加につながる。
本発明の他の側面は、前述の熱処理炉を用いて炭素繊維シート前駆体を加熱する加熱工程を有する炭素繊維シートの製造方法である。一般的に、炭素繊維シートの製造においては、炭素繊維シート前駆体を、1000℃未満に加熱する低温加熱工程と、炭素繊維シート前駆体を2000℃以上に加熱する高温加熱工程をこの順に有するが、本発明における熱処理炉100は、特に高温加熱工程において用いることが好適である。
[実施例]
最高温度2000℃以上の熱処理炉で炭素繊維シート前駆体1を熱処理する工程において、炭素繊維強化複合材料からなる遮蔽板50を、熱処理炉内に炉入口側から挿入し、熱処理炉の天井部に設けられたガス排出経路103の直下を含む、かつ炉入口から炉出口までの距離の30%に相当する範囲に設置した。遮蔽板50の炉出口側端部における雰囲気温度は1500℃であった。炭素繊維シート前駆体1は、遮蔽板50と炉床102の間を引きずって熱処理させた。炭素繊維シート前駆体1の幅は400mm、長さは500m、遮蔽板50の幅は600mmであった。
最高温度2000℃以上の熱処理炉で炭素繊維シート前駆体1を熱処理する工程において、炭素繊維強化複合材料からなる遮蔽板50を、熱処理炉内に炉入口側から挿入し、熱処理炉の天井部に設けられたガス排出経路103の直下を含む、かつ炉入口から炉出口までの距離の30%に相当する範囲に設置した。遮蔽板50の炉出口側端部における雰囲気温度は1500℃であった。炭素繊維シート前駆体1は、遮蔽板50と炉床102の間を引きずって熱処理させた。炭素繊維シート前駆体1の幅は400mm、長さは500m、遮蔽板50の幅は600mmであった。
上記方法で約3ヶ月間の炭素繊維シート2の製造状況を観察したところ、炭素繊維シート2の直径が0.1mmより大きい貫通孔は平均0.4個/本であった。この間、蛇行や変形に起因する炭素繊維シート前駆体1および炭素繊維シート2の割れおよび破断は発生しなかった。
[比較例]
遮蔽板50の代わりに、炭素繊維織物を炭素繊維シート前駆体1と接触するようにして設置する以外は実施例と同様にして行った。約3ヶ月間の炭素繊維シート2の製造状況を観察したところ、貫通孔は平均5.1個/本であった。その間に、蛇行または変形に起因する炭素繊維シート前駆体1および炭素繊維シート2の割れおよび破断が発生した。
遮蔽板50の代わりに、炭素繊維織物を炭素繊維シート前駆体1と接触するようにして設置する以外は実施例と同様にして行った。約3ヶ月間の炭素繊維シート2の製造状況を観察したところ、貫通孔は平均5.1個/本であった。その間に、蛇行または変形に起因する炭素繊維シート前駆体1および炭素繊維シート2の割れおよび破断が発生した。
1 : 炭素繊維シート前駆体
2 : 炭素繊維シート
50 : 遮蔽板
100 : 熱処理炉
101 : 炉内空間
102 : 炉床
103 : ガス排出経路
104 : スペーサー
2 : 炭素繊維シート
50 : 遮蔽板
100 : 熱処理炉
101 : 炉内空間
102 : 炉床
103 : ガス排出経路
104 : スペーサー
Claims (10)
- 炭素繊維シート前駆体を連続的に搬送しながら加熱して炭素繊維シートを製造するための熱処理炉であって、前記炭素繊維シート前駆体の加熱中に発生する排ガスを炉内から炉外へ排出するための少なくとも1つのガス排出経路を有するとともに、該ガス排出経路の炉内開口部の近傍の、前記炭素繊維シート前駆体の搬送面の上部を遮蔽し、かつ前記炭素繊維シート前駆体と接触しない位置に遮蔽板を設けた熱処理炉。
- 前記遮蔽板が、前記ガス排出経路の炉内開口部の中心と前記搬送面とを最短距離で結ぶ直線を遮蔽する位置に設けられている、請求項1に記載の熱処理炉。
- 前記熱処理炉は素繊維シート前駆体1を2000℃以上に加熱可能であり、前記遮蔽板が、前記熱処理炉内の500~1500℃の領域に設置されている、請求項1または2に記載の熱処理炉。
- 前記遮蔽板が、炉入口から出口までの距離の50%以下の範囲に設置されている、請求項1~3のいずれかに記載の熱処理炉。
- 前記遮蔽板が、炭素繊維シート前駆体よりも広幅である、請求項1~4のいずれかに記載の熱処理炉。
- 前記遮蔽板が、炭素材料または炭素繊維強化複合材料からなる、請求項1~5のいずれかに記載の熱処理炉。
- 前記遮蔽板が、着脱可能に設けられている、請求項1~6のいずれかに記載の熱処理炉。
- 前記遮蔽板が、前記搬送面の両側に立設されたスペーサーに載置されている、請求項7に記載の熱処理炉。
- 請求項1~8のいずれかに記載の熱処理炉を用いて炭素繊維シート前駆体を加熱する加熱工程を有する炭素繊維シートの製造方法。
- 炭素繊維シート前駆体を1000℃未満に加熱する低温加熱工程と、炭素繊維シート前駆体を2000℃以上に加熱する高温加熱工程とをこの順に有し、該高温加熱工程において請求項1~8のいずれかに記載の熱処理炉による熱処理を行う、請求項9に記載の炭素繊維シートの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2022026409A JP2023122733A (ja) | 2022-02-24 | 2022-02-24 | 炭素繊維シートの熱処理炉およびそれを用いた炭素繊維シートの製造方法 |
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2022
- 2022-02-24 JP JP2022026409A patent/JP2023122733A/ja active Pending
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