JP4209963B2 - 炭素繊維焼成用炭素化炉 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱安定化されたポリアクリロニトリル系繊維やセルロース系繊維等の多数本の前駆体繊維を、不活性ガス雰囲気中で炭素化する炭素繊維焼成用炭素化炉に関する。更に詳しくは、前炭素化領域での熱分解で発生する分解ガス及びタールの炉内壁面への付着を抑制して工程通過性を向上させると共に、不活性ガスの効率的な使用が実現される炭素繊維焼成用炭素化炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、炭素繊維は、ポリアクリロニトリル(PAN)、レーヨン、ピッチ類などの有機繊維に耐炎化処理を施した前駆体繊維を、不活性ガス雰囲気中で高温加熱して炭素化させることにより得られる。炭素繊維は他の繊維と比較して優れた比強度及び比弾性率を有し、また、金属と比較して優れた比抵抗を有すると共に、耐薬品性が高いなどの多くの優れた特性を有していることから、樹脂との複合材料において補強材料として用いられるほか、多様な工業用途に利用され、更にはスポーツ、航空宇宙分野へと幅広く利用されている。
【0003】
かかる炭素繊維複合材料は、近年、その特性の優位性がますます高まりつつあるなかで、特にスポーツ、航空宇宙分野において、高性能化の要求が強く、また、工業用分野においては高強度化、高弾性化の要求が強くなっている。
【0004】
特公昭63−28132号公報には、高強度、高弾性のPAN系炭素繊維を短時間で高収率に製造する方法が開示されている。同方法では、耐炎化処理が施されたPAN系の前駆体繊維を不活性ガス雰囲気中で300〜800℃の温度域で25%までの範囲で伸長しながら前炭素化した後、続いて800℃以上の温度で炭素化している。このように、高温での炭素化に先立って低温で前炭素化を施すと共に,上記範囲で伸長させることにより、繊維の結晶配向度が高まり、その結果、高強度の炭素繊維が得られる。
【0005】
低温域での前炭素化と高温域での炭素化とは、前駆体繊維を、連続的に温度勾配を有する単一の連続炭素化炉を走行させて行うことができ、或いは、温度勾配をつけて配された少なくとも2以上の炭素化炉を連続的に走行させて行ってもよい。更には、低温の炭素化炉により前炭素化を施した後、一旦巻き取って、その後、高温の炭素化炉により炭素化を施してもよい。なお、この炭素化の工程において、前炭素化炉と炭素化炉とからなる2つの炭素化炉を通過させる場合には、温度範囲を前炭素化炉で300℃〜900℃に、炭素化炉を最高温度2500℃程度に設定する。
【0006】
炭素化炉は一般に、断熱材からなる断面矩形状をなす長尺な炉本体を備え、同炉本体の上下の内壁面に複数のヒータが設置されている。かかる炉本体の中央を多数の前駆体繊維が並走し、熱処理がなされるが、前記炉本体への繊維の出入口には、毒性や可燃性をもつ排ガスが外気へと漏出するのを防止するためにシール部が設けられている。
【0007】
更に、前駆体繊維を炭素化する際には、特に前炭素化において前駆体繊維の熱分解が激しく進行し、タール等の分解生成物が多量に発生する。かかる分解生成物は生成した処理繊維へ再付着して繊維を汚染し、それにより得られた炭素繊維の強度が低下する。更には、分解生成物が炉本体又は処理室の内壁面に付着し、不活性ガスの流れに乱れを招き、また、炉本体又は処理室の内壁面に付着し堆積した分解生成物が塊となって走行する繊維へ接触し、炭素繊維に物理的な強度低下を来たし、更には処理繊維を切断するといったおそれもある。
【0008】
そのため、このような炭素化炉の炉本体内部の分解生成物を含む排ガスの排出や、タール分の除去を効率的に行うための提案が多数なされている。
例えば、特開昭58−l15119号公報に開示されている横型炭素化炉は、300〜900℃の温度勾配を有する炉本体の上壁面を低温側に次第に高くなるよう傾斜させ、下壁面はタール分が炉内低温側に向けて流れるように傾斜している。更に、炉の上部には低温側に次第に高くなるよう複数の仕切り板を設け、炉の下部に不活性ガスの噴出口を開口させると共に、上壁面の最頂部又は最頂部と他の部位に排ガス口を設けている。そのため、ガス噴出口から噴出された不活性ガスは炉内部を走行する繊維間を通って分解ガスと共に上昇して上壁面に到達し、更に上壁面をはうように上昇して最頂部の排ガス口から炉外へ排出される。
【0009】
また、例えば特開昭59−112029号 公報に開示された竪型炭素化炉は、下方から上方へ向けて高温となるよう竪方向に温度勾配を有し、炉の下部から繊維を導入して上部から取り出すと共に、炉の上下から不活性ガスを導入している。更に、熱分解の進行が著しい400〜600℃の温度領域を炉中央部に設定し、この中央部に排ガス抜き出し口を設けることによって分解生成物の含有量が大きい排ガスを炉から抜き出すものである。
【0010】
更に、特開昭62−85029号公報に開示された炭素化炉は、両端から不活性ガスを供給し、ほぼ中央部から分解ガスを吸引排気するものであるが、その分解ガスの排気孔を耐炎化処理がなされた前駆体繊維の所定の処理温度における減量曲線の主減量の終了する位置乃至はその進行方向に沿った前方近傍に設定している。このように減量のほぼ終了する位置に排気孔を設けることで、分解ガスを効率よく排気することができ、炉内への分解ガスの拡散を効果的に抑制することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に開示された炭素化炉ではいずれも、不活性ガスの供給や排ガスの吸引により生じる内部ガスの流れを利用して、炉本体の内壁面にタール等が付着或いは堆積するのを防止しているため、不活性ガスの供給量が増加し、それに伴って大量の排ガスが発生することとなり、不活性ガスのコスト及び排ガスの処理コストが共に増大することとなる。特に、特開昭58−l15119号公報の横型炭素化炉はその構成上、大型化し専有スペースが大きくなり好ましくないばかりでなく、炉内部の体積も増大して排ガス量が多量となるため、その処理コストも増大するといった不都合が生じる。
【0012】
また、特開昭58−l15119号公報の炭素化炉は、一旦排ガス抜き出し口の形成位置を決定した後は、炉内の温度勾配を常に所定の設定値に維持しなければならないが、炉内温度は例えば繊維に含有されている水分量などの不定要素によっても左右されるため、その制御が煩雑となる。更に、特開昭62−85029号公報の炭素化炉にあっては、一旦、排気孔の形成位置を決定した後は、減量が終了する位置を常にその排気孔の形成位置に維持しなければならず、炉内温度を制御する以上に、その制御が煩雑なものとなる。
【0013】
かかる問題点を解決すべく、本発明は、不活性ガスの使用量を低減すると共に排ガスの処理量を低減し、更には、炭素化工程により生じる分解生成物の炉内壁面への付着、堆積を容易に抑制して、不活性ガス流の乱れや滞留を阻止し、高強度、高性能及び高品質の炭素繊維を効率よく安定して製造することができる炭素繊維焼成用炭素化炉を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、本発明は、耐炎化処理がなされた多数本の前駆体繊維を不活性ガス雰囲気中で連続的に焼成して炭素化する炭素繊維焼成用炭素化炉であって、炉本体の中央に筒状の処理室が炉本体外まで延設され、前記処理室の前後端部にシール部が設けられ、前記処理室及び前記シール部の繊維走行路が同一断面形状を有してなり、前記多数本の前駆体繊維が前記繊維走行路を並走することを特徴とする炭素繊維焼成用炭素化炉を主要な構成としている。
【0015】
前記炭素化炉での焼成時には、特に前炭素化領域において前記前駆体繊維は熱分解が激しく進行し、前記処理室内ではタール等の分解生成物が多量に発生する。このとき、本発明の炭素化炉では、前記繊維が前記処理室を走行しており、同処理室の内部にはヒータや仕切板等の内部ガスの流れを遮るような部材が存在しないため、前記不活性ガスの供給により生じる内部ガス流の乱れが少ない。しかも前記処理室は断面積が小さいため、前記不活性ガスの供給圧の低減が少なく、内部ガスの流れを弱めることがない。そのため、内部ガス流による前記処理室の内壁面の洗浄効果が高まり、内壁面への前記分解生成物の付着を効果的に抑制することが可能となる。
【0016】
また、処理室の内壁面への分解生成物の付着が抑制されるため、不活性ガスの流れ及びタール等を含む排ガスの排気が円滑になされ、分解生成物の処理繊維への再付着による繊維の汚染がない。また、排ガスの滞留による分解生成物の堆積も抑制されるため、堆積塊により処理繊維が損傷されるおそれもなく、また、堆積塊の除去作業を頻繁に行う必要がないため、前記炭素化炉を長時間にわたって連続運転することが可能となり、炭素繊維の製造効率が向上する。
【0017】
更に、この処理室内を前駆体繊維が走行する炭素化炉は、実質的に毒性や可燃性をもつ排ガスは前記処理室を通過したガスだけであるため、前記処理室内の排ガスを処理するだけでよく、排ガスの処理量が大幅に削減される。
【0018】
前記処理室は上壁部を円弧状に膨出させて、前記繊維の走行方向に直交する断面形状を略蒲鉾状とすることで、熱歪みによる同処理室の閉口を防止することができる。
しかしながら、本発明者らが更に鋭意検討を行ったところ、内部ガス流の乱れや滞留が前記処理室の断面形状に大きく依存することが判明した。その結果、前記処理室は、前記繊維の走行方向に直交する断面形状を矩形状とすることが好ましい。更に、前記処理室の前記断面形状が、縦横比が1:(100以上)の矩形状であることが好ましい。
【0019】
この矩形状断面の処理室にあっては、上述の蒲鉾状の処理室に比べて、内部ガス流による内壁面の洗浄効果が更に向上し、前記不活性ガスの流量が少なくても、内壁面への前記分解生成物の付着を効果的に抑制することが可能となり、不活性ガスの使用量を更に削減できる。
【0020】
また、前記炭素化炉は前記繊維の出入口にシール部を設けて、内部ガスが外気へと漏出するのを防止しているが、同シール部の繊維走行路はその開口面積をできるだけ小さくするために矩形状断面とすることが好ましいが、前記処理室を矩形状とする場合には同処理室とシール部との接続部位において段差が生じないため、排ガスが滞留せず、分解生成物の堆積塊による処理繊維の損傷や糸切れを完全に阻止できる。なお、前記シール部が不活性ガスの炉外への流出を極力抑えることを目的としたラビリンスシール装置からなることが好ましい。
更に、前記炭素化炉は2以上の前記処理室を並設することも可能である。また、前記前炭素化領域の焼成温度が900℃以下であることが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
図1は本発明の好適な第1実施例である炭素化炉1の側面図であり、図2は図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【0022】
炭素化炉1は温度領域が900℃以下の前炭素化炉であり、断熱材からなる断面矩形状をなす長尺な炉本体2を備えている。この炉本体2に使用される断熱材としては黒鉛系やセラミック系材料が一般的であるが、前炭素化炉1として使用される場合の温度領域や電気的絶縁性を考慮し、セラミックファイバーと耐火煉瓦の組み合わせが好ましく用いられる。
【0023】
前記炉本体2の上下壁部2a,2bの内面には複数のヒータ3が設置されている。前記ヒータ3は一般的に抵抗発熱体が用いられ、発熱温度に耐えうるものであれば材料の選定に特に制限はないが、黒鉛材、カンタル等が好ましく用いられる。また、前記ヒータ3の形状は棒状、板状、面状、コイル状等が挙げられ、形状が特に制限されるものではない。
【0024】
更に、前記炉本体2の内部中央を、同本体2の前壁部2c及び後壁部2dを貫通して筒状の処理室4が、横方向に2つ並んで配されており、同処理室4の内部を多数の前駆体繊維Fが巾方向に1段に配されて走行している。なお、前記前駆体繊維Fは前記処理室4の内部を複数段に配して走行させることもできる。前記処理室4は耐熱性金属系材料から形成され、上壁部4aが円弧状に膨出し、前記繊維Fの走行方向に直交する断面形状が略蒲鉾形状をなす。このように上壁部4aを円弧状に膨出させて断面を略蒲鉾形状とすることで、熱歪みにより前記上壁部4aが下方へ垂下して処理室4を閉塞するのを効果的に防止することができる。
【0025】
また、前記処理室4には不活性ガスと同処理室4内で発生する毒性や可燃性をもつガスとが混合した排ガスを排気するための排気口が形成されている。同排気口の形成位置は特に限定されるものではなく、不活性ガスの流れや、前記処理室4の内部で発生した毒性や可燃性をもつガスの濃度分布を勘案して適宜、決定することができる。
【0026】
更に、前記処理室4の前後端部にはそれぞれ、毒性や可燃性をもつ排ガスが外部へと漏出するのを防止するためにシール部5が配されている。同シール部5に関しては、構造や材料の決定因子が少なく、毒性や可燃性をもつ排ガスの漏出を最小限に抑える構造であればよく、ラビリンスシール装置が好ましく用いられる。また、前記シール部5は前記繊維Fの出入口の面積をできるだけ小さくするために、前記繊維Fの走行路5aを矩形状断面に形成している。
【0027】
耐炎化処理が施された多数の前駆体繊維Fは、巾方向に1段又は複数段に並べられて、前記前炭素化炉1の前方側に配された前記シール部5の導入口から前炭素化炉1へと導入される。その後、繊維Fは炉本体2の内部に配された処理室4内を走行し、その際に、不活性ガス雰囲気中で前記ヒータ3により900℃以下の温度に加熱されて連続的に焼成され、前炭素化がなされる。その後、前炭素化された前記繊維Fは後方側に配された前記シール部5を通って前炭素化炉1から導出され、後流側に設置された炭素化炉へと導入される。このように、前記前炭素化炉1では前記炉本体2の中央に配された体積の小さい前記処理室4にのみ、不活性ガスを供給・排出しているため、不活性ガスの供給量が大幅に削減される。
【0028】
この前炭素化炉1での焼成時に、前記前駆体繊維Fは熱分解が激しく進行し、前記処理室4内ではタール等の分解生成物が多量に発生する。このとき、本実施例による前記処理室4の内部にヒータや仕切板等の内部ガスの流れを遮るような部材が存在しないため、前記不活性ガスの供給により生じる内部ガス流の乱れが少なく、しかも前記処理室4は断面積が小さいため、前記不活性ガスの供給圧の低減が少なく、内部ガスの流れを弱めることがない。そのため、内部ガス流による前記処理室4の内壁面の洗浄効果が高まり、内壁面への前記分解生成物の付着を効果的に抑制することが可能となる。
【0029】
また、処理室4の内壁面への分解生成物の付着が抑制されるため、不活性ガスの円滑な流れが維持される。そのため、タール等を含む排ガスが滞留することなく排気口から排出され、分解生成物が処理繊維へ再付着して繊維を汚染することがない。また、排ガスの滞留による分解生成物の堆積も抑制されるため、堆積塊により処理繊維が損傷されるおそれもなく、また、堆積塊の除去作業を頻繁に行う必要がないため、前記炭素化炉1を長時間にわたって連続運転することが可能となり、炭素繊維の製造効率が向上する。
【0030】
更に、この処理室4内を前駆体繊維が走行する前炭素化炉1は、実質的に毒性や可燃性をもつ排ガスは前記処理室4内に存在するだけであるため、前記処理室4内の排ガスを処理するだけでよく、毒性や可燃性をもつ排ガスの処理量が少なくなるといった利点がある。
【0031】
しかしながら、前記処理室4は上述したように断面が蒲鉾形状をなすのに対して、その前後端部に配された前記シール部5の繊維走行路は断面矩形状であるため、かかる異なる断面形状の処理室4とシール部5との接続部位6では、前記シール部5の繊維走行路と処理室4との間で段差ができる。そのため、接続部位6で前記不活性ガスの流れに乱れや滞留が起こりやすくなり、処理室4とシール部5との接続部位6では分解生成物が処理室4の内壁面への付着が若干見られる。
【0032】
かかる処理室4とシール部5との接続部位6における前述の問題を解決する対策として、前記処理室4とシール部5との断面形状の変化をなくすべく、シール部5の断面形状を前記処理室4と同一の蒲鉾状とすることができる。しかしながら、シール部5を蒲鉾状断面とすることにり、同シール部5の開口断面積が大きくなり、それによりユーティリティーガスである不活性ガスの使用量が増加し、生産コストが増大すると共に生産性が低下するため好ましくない。
【0033】
そこで、本発明者らが更なる検討を行ったところ、図3及び図4に示す本発明の第2実施例である前炭素化炉11を得るに至ったものである。
第2実施例である前記前炭素化炉11は処理室以外の構成は全て、上述した第1実施例である前炭素化炉1と同一であるため、その説明は省略する。
【0034】
前記前炭素化炉11は、炉本体2の内部中央を、同本体2の前壁部2c及び後壁部2dを貫通して断面矩形状をなす筒状の処理室14が、横方向に2つ隣接して配されており、同処理室14の内部を多数の糸条が横方向に1列に配されて走行する。更に、同処理室14には上述の第1実施例と同様に、不活性ガスと同処理室14内で発生する毒性や可燃性をもつガスとを排気するための排気口が形成されている。
【0035】
前記処理室14には耐熱性金属系材料が用いられており、断面形状は図2に示すような縦横比が1:100以上の矩形状である。断面形状をこのような矩形状とすることで、第1実施例の処理室4よりも更に、不活性ガスの流れによる処理室14の内壁面の洗浄効果が高まり、前記内壁面へ炭素化工程により生じるタール等の分解生成物が付着し堆積するのが抑制される。そのため、不活性ガスの流れに乱れが生じたり、タール等を含む排ガスが滞留するのが阻止される。それにより、処理室14内のガスの流れが均一且つ円滑となり、更には炉内の温度分布の均一化を図ることができる。
【0036】
なお、本実施例では前記処理室14が2つ、横方向に並設されているが、同処理室の数は2つに限定されるものではなく、1〜複数個を並設することが可能である。或いは、2つの処理室を配するときには、図5に示す前炭素化炉11′のように2つの処理室14′を上下に並設することも可能である。
【0037】
また、処理室14には上述したように耐熱性金属系材料を用いているが、上述のように断面を矩形状とするため、熱歪みにより上壁部が垂下して処理室14が閉塞しやすいが、補強用のリブを設けることにより処理室14の閉塞を完全に防止することができる。なお、補強用のリブを形成することにより、処理室14の材料は溶接性を考慮に入れて選定される。
【0038】
更に、前記処理室14の前後端部にはそれぞれ、毒性や可燃性をもつ排ガスが外部へと漏出するのを防止するためにシール部5が配されている。ここで、前記処理室14の断面形状は上述したように矩形状であり、前記シール部5も繊維の走行路5aを前記処理室14と同一の矩形状断面に形成されており、前記処理室4と前記シール部5との接続部位16に断面形状の変化をなくしている。そのため、前記接続部位16においてガス流に乱れが生じたり滞留することがなく、タール等の付着、堆積が抑制され、堆積塊による繊維への損傷が阻止される。
【0039】
この第2実施例である前炭素化炉11は、上述したように処理室14の断面が矩形状であるため、同ガスの流れによる処理室14の内壁面の洗浄効果が更に高まり、前記不活性ガスの流量を低減しても、十分に処理室14の内壁面の洗浄効果が得られるため、不活性ガスの使用量を更に削減できる。
【0040】
また、処理室14の内壁面への分解生成物の付着が効果的に抑制されるため、不活性ガスの円滑な流れが維持される。そのため、タール等を含む排ガスが滞留することなく排気口から排出され、分解生成物の処理繊維への再付着による炭素繊維の汚染を確実に阻止することができる。また、排ガスの滞留による分解生成物の堆積も抑制されるため、堆積塊により処理繊維が損傷されるおそれもなく、また、堆積塊の除去作業の頻度が著しく減少し、長時間の連続運転が可能となり、炭素繊維の製造効率が向上する。
【0041】
更には、処理室14とシール部5との接続部位16においても、同処理室14とシール部5の繊維走行路5aの断面形状が同一であるため排ガスが滞留せず、分解生成物の堆積塊による処理繊維の損傷や糸切れが完全に阻止される。
【0042】
なお、上述した第1及び第2実施例はいずれも前炭素化炉であり、炭素化炉全体が前炭素化領域であるため、前記処理室4,14が炉本体2の前後壁部2a,2bを貫通して延設されているが、例えば1つの炭素化炉において前炭素化と炭素化とを連続して行う場合には、少なくとも前炭素化領域に前記処理室を設ければよい。また、その場合に、不活性ガスの供給口を炭素化炉の下流側に設け、排気口を前記処理室の上流側に設けることで、炭素化炉内に供給された不活性ガスを前炭素化領域及び炭素化領域において共通に利用できる。その結果、既述したようなガスの乱流による不都合を確実に防止することができることは勿論のこと、炭素化領域内の不活性ガスを汚染することなく、不活性ガスの効率的な利用がなされることになる。
【0043】
【発明の効果】
以上、述べてきたように、本発明は炭素繊維焼成用炭素化炉において、炉本体の中央を貫通して体積の小さい処理室を配し、前駆体繊維は同処理室内を走行して同室内で焼成される。そのため、不活性ガスは前記処理室内に供給すればよく、その供給量が大幅に減少されると共に、炭素化により発生する排ガスの量も減少し、同排ガスの処理コストが大幅に低減される。
【0044】
また、前記処理室の断面積が小さく、更に、同処理室内には内部ガスの流れを遮るものが存在しないため、前記不活性ガスの供給圧を効率よく利用して、同処理室内壁面を洗浄することができる。また、処理室の断面形状を、従来の上壁が円弧状に膨らんだ蒲鉾状から矩形状とするだけで、不活性ガス流による処理室の内壁面の洗浄効果が一層高まり、不活性ガスの円滑な流れが維持される。そのため、タール等を含む排ガスが滞留することなく排気口から排出され、分解生成物が処理繊維へ再付着して繊維を汚染することがない。また、前記内壁面へ分解生成物が付着、堆積するのを効果的に抑制することが可能となり、堆積塊の除去作業を頻繁に行う必要がないため、長期連続運転が可能となり、炭素繊維の製造効率が向上する。
【0045】
しかも、断面矩形状の処理室にあっては、同処理室とシール部との接続部位において断面形状の変化が皆無であるため、同接続部位において排ガスが滞留することがなく、分解生成物の堆積が抑制され、堆積塊により処理繊維が損傷されるおそれもない。更に、炉内の温度分布や不活性ガスの流速分布も良好で、安定した運転状態を維持することが可能になるとともに、ユーティリティーガスである不活性ガスの使用量を増加することなく、更には、低減することも可能となり、高品質の炭素繊維を安定して製造することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例である炭素繊維焼成用前炭素化炉の側面図である。
【図2】図1におけるA−A線に沿った断面図である。
【図3】本発明の第2実施例である炭素繊維焼成用前炭素化炉の側面図である。
【図4】図3におけるB−B線に沿った断面図である。
【図5】前記第2実施例の変形例である炭素化炉の、図4と同様の断面図である。
【符号の説明】
1 ,11 炭素繊維焼成用炭素化炉
2 ,12 炉本体
2a,12a 上壁部
2b,12b 下壁部
2c,12c 前壁部
2d,12d 後壁部
3 ,13 ヒータ
4 ,14 処理室
4a 上壁部
5 ,15 シール部
6 ,16 接続部位
F 糸条

Claims (4)

  1. 耐炎化処理がなされた多数本の前駆体繊維を不活性ガス雰囲気中で連続的に焼成して炭素化する炭素繊維焼成用炭素化炉であって、炉本体の中央に筒状の処理室が炉本体外まで延設され、前記処理室の前後端部にシール部が設けられ、前記処理室及び前記シール部の繊維走行路が同一断面形状を有してなり、前記多数本の前駆体繊維が前記繊維走行路を並走することを特徴とする炭素繊維焼成用炭素化炉。
  2. 前記処理室は上壁部が円弧状に膨出し、前記繊維の走行方向に直交する断面形状が略蒲鉾状をなす請求項1記載の炭素化炉。
  3. 前記処理室は前記繊維の走行方向に直交する断面形状が矩形状をなす請求項1記載の炭素化炉。
  4. 2以上の前記処理室が並設されてなる請求項1〜3のいずれかに記載の炭素化炉。
JP09860298A 1998-04-10 1998-04-10 炭素繊維焼成用炭素化炉 Expired - Lifetime JP4209963B2 (ja)

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