JP2023119590A - 二層構造紡績糸および織編物 - Google Patents

二層構造紡績糸および織編物 Download PDF

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Abstract

【課題】ナイロン56短繊維および天然繊維またはセルロース系繊維を所定量以上含む二層構造紡績糸であって、吸水速乾性や風合い、染色性に優れる織編物を提供する。【解決手段】糸条長手方向に対して垂直な断面が芯部と鞘部とを有する紡績糸であって、芯部はナイロン56短繊維を40質量%以上、鞘部は天然繊維またはセルロース系繊維を50質量%以上含有し、紡績糸中のナイロン56短繊維の含有量が20質量%以上であり、かつ平均強力が150cN以上、伸度が5~25%、かつ、前記紡績糸を筒編地としたときのタテ方向の摩擦帯電圧(摩擦布:羊毛)が800V以下である二層構造紡績糸。【選択図】 図1

Description

本発明は、糸条長手方向に対して垂直な断面において芯部と鞘部とを有する二層構造紡績糸であって、芯部にナイロン56短繊維を含む、二層構造紡績糸および該紡績糸より得られる織編物に関するものである。
近年、SDGs(持続可能な開発目標)に向けた開発が進む中で、地球規模での環境に対する意識向上に伴い、石油資源の枯渇や石油資源の大量消費による地球温暖化の問題から、非石油由来の繊維素材の開発が望まれている。
二酸化炭素を大気中から取り込み成長する植物資源を原料とすることで、二酸化炭素の循環により地球温暖化を抑制できることが期待できると共に、資源枯渇の問題も解決できる可能性がある。
このため近年では、バイオマス由来のプラスチックに注目が集まっており、例えば、ポリ乳酸などが知られているが、ポリアミドと比較して耐熱性、耐衝撃性、加水分解性などの諸特性に劣るものであり、使用用途が大きく制限される。
ポリアミド繊維に関しては、ナイロン6、ナイロン66に代表されるポリアミド繊維はその優れた糸強度、吸湿性、耐摩耗性、深みのある染色性、高次加工のしやすさ等によって多くの衣料用途に使用されている。また、ポリアミド繊維は吸湿性を有するため、ポリエステル繊維と比べて着用時の摩擦等による静電気発生を抑えることができる。しかしながら、これら汎用のポリアミド繊維は石油原料を由来とした繊維である。
一方、一部もしくは全ての成分に非石油原料を由来とする成分を用いたポリアミドとして、ナイロン56、ナイロン11などが知られている。
ナイロン56を用いた繊維としては、特許文献1には、吸湿性ナイロン56短繊維からなる紡績糸が提案されている。特許文献1では、ナイロン56短繊維からなる紡績糸は、吸湿性が前記汎用ポリアミド繊維と比較してさらに高いことが示されているが、この紡績糸から得られた織編物の帯電防止性は綿などの天然繊維と比較すると不十分であり、肌着、中衣、スポーツ衣料などに使用すると、着用時の摩擦等による静電気発生を抑えることができなかった。
また、ナイロン56繊維は耐熱性、力学特性などに優れたものであるが、染色特性については、発色性や染色堅牢度に改善の余地があり、優れた染色特性が要求される用途への使用は制限があった。
特開2011-157639号
本発明は、上記のような問題点を解決するものであり、ナイロン56短繊維を用い、天然繊維またはセルロース系繊維との芯鞘構造の紡績糸とすることで、帯電防止性に優れる織編物を得ることができ、さらに天然繊維等のソフトな風合いや染色特性に優れる織編物を得ることができる二層構造紡績糸、および該二層構造紡績糸を使用した織編物を提供することを技術的な課題とする。
本発明者は、上記の様な課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、以下(1)~(4)を要旨とするものである。
(1) 糸条長手方向に対して垂直な断面が芯部と鞘部とを有する紡績糸であって、
前記芯部は、ナイロン56短繊維を40質量%以上含有し、
前記鞘部は、天然繊維またはセルロース系繊維を50質量%以上含有し、紡績糸中におけるナイロン56短繊維の含有量が20質量%以上であり、かつ平均強力が150cN以上、伸度が5~25%、
かつ、前記紡績糸を筒編地としたときのタテ方向の摩擦帯電圧(摩擦布:羊毛)が800V以下である二層構造紡績糸。
(2) 撚係数Kが3.2~5.7、ウースター斑(U%)が15.0%以下、英式綿番手が5~60番手である、(1)記載の二層構造紡績糸。
(3) 前記鞘部が綿繊維を50質量%以上含有する(1)または(2)に記載の二層構造紡績糸。
(4) (1)に記載の二層構造紡績糸を含む織編物。
本発明の二層構造紡績糸は、芯部にナイロン56短繊維、鞘部に天然繊維またはセルロース系繊維を特定量含み、かつ紡績糸全体として20質量%以上のナイロン56短繊維を含むため、ナイロン56短繊維による吸湿性を十分に生かすことが可能となり、帯電防止性に優れた織編物を得ることができる。さらには、天然繊維またはセルロース系繊維を鞘部に配しているため、ソフトな風合いや染色特性に優れた織編物を得ることができる。
本発明の織編物は、本発明の二層構造紡績糸を含むものであるため、中でも肌着、中衣、スポーツ衣料などの衣料用途に好適な素材となる。
粗紡機の一例を示す概略断面図である。 粗紡機の一例を示す概略断面図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の二層構造紡績糸は、糸条長手方向に対して垂直な断面が芯部と鞘部とを有する紡績糸であって、芯部にナイロン56短繊維を40質量%以上含み、鞘部に天然繊維またはセルロース系繊維を50質量%以上含有する紡績糸である。
まず、芯部について説明する。
芯部は、ナイロン56短繊維を40質量%以上含有し、中でも45質量%以上含有することが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。芯部においてナイロン56短繊維の含有量が40質量%以上であると、ナイロン56短繊維の優れた強力と吸湿性により、本発明の二層構造紡績糸が、後述する平均強力、伸度、摩擦帯電圧の全てを満足するものとできる。
本発明におけるナイロン56は、ペンタメチレンジアミンとアジピン酸とを主たる構成単位とし、重縮合反応によって製造される樹脂である。ペンタメチレンジアミンはバイオマス原料から製造されたものを用いることが好ましい。
芯部は、ナイロン56短繊維を40質量%以上含むものであり、ナイロン56短繊維以外の繊維を含んでいてもよい。ナイロン56短繊維以外の繊維としては、鞘部に用いる天然繊維またはセルロース系繊維、ポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、パラ系アラミド、メタ系アラミド、ポリアリレート等の合成繊維などが挙げられ、1種類のみ含有していてもよく、複数種類含有していてもよい。中でも染色性や風合いを考慮すると、鞘部と同じ天然繊維またはセルロース系繊維を用いることが好ましい。
次に、鞘部について説明する。
鞘部は、天然繊維またはセルロース系繊維を50質量%以上含有し、中でも60質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。鞘部において天然繊維またはセルロース系繊維の含有量が50質量%未満であると、本発明の二層構造紡績糸が帯電防止性や染色性、風合いに劣るものとなる。
本発明における天然繊維としては、植物繊維と動物繊維がある。植物繊維としては、綿、麻などが挙げられ、動物繊維としては、羊毛、絹などが挙げられる。本発明におけるセルロース系繊維としては、例えばビスコースレーヨン、テンセル(モダール、リヨセル)などの再生セルロース系繊維の短繊維が挙げられる。鞘部中にはこれらの繊維のうち1種類のみ含有していてもよく、複数種類含有していてもよい。中でも、帯電防止性や染色性や風合いを考慮すると、鞘部において綿を50質量%以上含有していることが好ましい。
鞘部は、天然繊維またはセルロース系繊維を50質量%以上含むものであり、天然繊維またはセルロース系繊維以外の繊維を含んでいてもよい。天然繊維またはセルロース系繊維以外の繊維としてはポリエステル、ナイロン、アクリル、ポリオレフィン、パラ系アラミド、メタ系アラミド、ポリアリレート等の合成繊維などが挙げられる。中でも染色性や風合いを考慮すると、アクリルなどの繊維を用いることが好ましい。
本発明の二層構造紡績糸は、紡績糸中におけるナイロン56短繊維の含有量が20質量%以上であり、40質量%以上であることがより好ましく、環境配慮の観点からは55質量%以上含有することが好ましい。紡績糸中に20質量%以上含有することで、ナイロン56短繊維による強力と吸湿性を十分に発現させることが可能となり、二層構造紡績糸が後述する平均強力、伸度、摩擦帯電圧を同時に満足するものとなる。
本発明の二層構造紡績糸の平均強力は、150cN以上であるが、中でも160~500cNであることが好ましい。150cN未満であると織編物を製織編する際の作業性が悪くなったり、得られる織編物は耐久性に劣るものとなる。一方、平均強力が500cNを超えるものとするには、二層構造紡績糸の番手を小さくする必要があり、衣料用途に適さないものとなりやすい。
本発明の二層構造紡績糸は、得られる織編物を肌着、中衣、スポーツ衣料などの衣類に好適に使用するために、伸度を5~25%とすることが必要であり、中でも7~20%であることが好ましい。伸度が上記範囲であれば、製織性・製編性が良好であり、得られる織編物の品位が優れるものとなる。
本発明の二層構造紡績糸は、筒編地としたときの、摩擦布に羊毛を用いた場合のタテ方向の摩擦帯電圧が800V以下であり、500V以下が好ましく、400V以下がさらに好ましい。また、ヨコ方向の摩擦帯電圧は800V以下であることが好ましく、500V以下がより好ましく、400V以下がさらに好ましい。また、摩擦布に綿を用いた場合の摩擦帯電圧はタテ方向が2000V以下であることが好ましく、1700V以下であることがより好ましく、1600V以下であることがさらに好ましい。また、ヨコ方向は2000V以下であることが好ましく、1700V以下であることがより好ましく、1600V以下であることがさらに好ましい。摩擦帯電圧が上記範囲を満足するものであれば、本発明の紡績糸を用いた織編物を衣料に使用した場合に、着用時の摩擦等による静電気発生を抑えることができる。なお、タテ方向の摩擦帯電圧とは、後述する摩擦帯電圧の測定方法における筒編地のウェール方向での摩擦帯電圧の値を指し、ヨコ方向の摩擦帯電圧とは筒編地のコース方向での摩擦帯電圧の値を指す。
本発明の紡績糸は上記のとおりナイロン56短繊維を芯部に配し、天然繊維またはセルロース系繊維を鞘部に配した二層構造を呈することを特徴とする。すなわち、ナイロン56短繊維よりも高い吸湿性を有する天然繊維またはセルロース系繊維で、芯部のナイロン56短繊維の周囲を覆っているため、ナイロン56短繊維が紡績糸表面の大部分を占めるように配置された紡績糸よりも、より帯電防止性に優れるものとできる。さらに、ナイロン56短繊維自体も吸湿性を有するため、吸湿性の低いポリエステル繊維などを芯部に用いた場合と比較して帯電防止性に優れるものとなる。
また、本発明では上記のような二層構造を呈する形態とすることにより、帯電防止性に加えて、芯部のナイロン56短繊維による優れた平均強力と、鞘部の天然繊維またはセルロース系繊維による優れた染色性や風合いとを同時に備える紡績糸とすることが可能となる。
なお、摩擦帯電圧は、本発明の二層構造紡績糸のみを用いて、下記方法で製編、精練を施した後に得られる加工上がり筒編地を使用し、JIS L 1094:2014 B法に記載の摩擦帯電圧測定法(摩擦布は羊毛(及び綿)を使用する。)に従い測定する。
(製編方法)
英光産業社製筒編機(釜径:3.5インチ、針本数:260N)を使用し筒編地を得る。
(染色・仕上処理)
得られた編地に対して、ミニカラーを用い、下記に示す処理(精練、漂白、染色、乾燥)を行い、加工上がり筒編地を得る。
(精練)
水酸化ナトリウム5g/l、サンモール1g/l、浴比1:50、処理温度:80℃×20分
(湯洗・乾燥)
湯洗、マングル脱水後、吊り干し
さらに、本発明の二層構造紡績糸は、得られる織編物のソフトな風合いを向上させるためには、撚係数Kが3.2~5.7、ウースター斑(U%)が15.0%以下であることが好ましい。
このように本発明の二層構造紡績糸は適度な撚りを有し、かつ太さ斑の小さいものであることにより、摩擦帯電圧が小さく、安定したものとなりやすいため帯電防止性に優れたものとでき、また得られる織編物の品位や風合いも優れたものとなりやすい。撚係数Kが高すぎると風合いに劣るものとなりやすく、撚係数Kが低すぎると糸切れしやすいものとなる。また、ウースター斑(U%)が15.0%を超えると、得られる織編物の品位が低下する。なお、撚係数Kについては後述する。
本発明の二層構造紡績糸は、肌着、中衣、スポーツ衣料などの衣料用途に好適なものであるため、英式綿番手が5~60番手であることが好ましく、中でも10~50番手であることが好ましい。
そして、上記したような本発明の二層構造紡績糸を得るには、芯部に用いるナイロン56短繊維として、繊維長が30~80mm、引張強度が2.5~5.5cN/dtex、伸度が35~95%であるものを用いることが好ましい。
さらには、ナイロン56短繊維として、熱収縮率が1.5~2.0%、捲縮率が5~15%であるものを用いることが好ましい。
このような特性値を有するナイロン56短繊維を二層構造紡績糸の芯部中に40質量%以上含有し、かつ紡績糸中に20質量%以上含む紡績糸とすることにより、上記したような特性値を満足する二層構造紡績糸を得ることができる。
鞘部に用いる天然繊維またはセルロース系繊維としては、例えばセルロース系繊維を用いる場合は、繊維長が25~64mmのものであることが好ましく、単繊維繊度としては、0.5~6.0dtexの範囲が好ましく、より好ましくは1.0~5.0dtexの範囲が挙げられる。
次に、本発明の二層構造紡績糸の製造方法について図面を用いて説明する。芯鞘構造の二層構造紡績糸を得る際には、粗紡工程において、2種類のスライバー(スライバーS1とスライバーS2)を用意し、スライバーS1を芯部とし、スライバーS2をスライバーS1に巻き付けて鞘部を形成するように粗紡した後、精紡することにより、二層構造紡績糸を得ることができる。
具体的には、まず、芯部用のカードスライバーを得るにあたり、ナイロン56短繊維と必要に応じてその他繊維を混用し、混打綿機へ投入してシート状のラップを得る。このラップをカード機に投入し、カード機内で梳綿工程を経た後、ウェブを紡出、集束し、カレンダーロールで押圧して芯部用のカードスライバーを得る。一方、鞘部用のカードスライバーを得るにあたり、天然繊維またはセルロース系繊維と必要に応じてその他繊維を混用した後、上記と同様にして鞘部用のカードスライバーを得る。
次に、芯部用および鞘部用のカードスライバーをそれぞれ練条工程において、複数本合わせて延伸を行い、芯部用のスライバーS1および鞘部用のスライバーS2を得る。次いで、図1(概略断面図)及び図2(概略断面図)に示す構造の粗紡機を用いて、図2に示すようにスライバーS1とスライバーS2を供給し、図2におけるドラフト方向に対するスライバーS1のフライヤーヘッドへの進行角度θを60°とし、スライバーS1にスライバーS2を巻き付けて、フライヤーによる仮撚り効果を与えながら巻き取ることで、スライバーS1が芯部、スライバーS2が鞘部となる二層構造糸(粗糸)を形成することができる。この粗糸を精紡機のトランペット(ガイド)に通し、バックローラ、エプロン、フロントローラの順を経て、延伸を行った後、撚りをかけることで本発明の二層構造紡績糸を得る。
さらに、本発明では上記方法以外にもコンパクト紡績によっても二層構造紡績糸を得ることができる。
コンパクト紡績とは、精紡時、必要に応じてフロントローラ付近にスリット状の吸引装置とメッシュエプロン(コンパクト装置)を取り付けることにより、ドラフト時に低下した繊維束(フリース)の収束性を、スリットの吸引力によってメッシュ上で再度向上させるように行うものである(このような紡績手段をコンパクトスピニング紡績ということがある)。こうすることで、紡績糸表面の毛羽が減り、強度が増すと共に織編物に優れた光沢感を付与できるようになる。コンパクトスピニング紡績を採用した場合、紡績糸表面の毛羽指数としては、5mmを超える毛羽指数が15個/10m以下であることが好ましく、これに加え3mmを超える毛羽指数が80個/10m以下であることがより好ましい。毛羽指数は、F-INDEX TESTER(敷島テクノ社製)を使用し、JIS L1095 9.22 B法に基づいて測定するものである
粗紡工程の撚数は、次工程の精紡工程の延伸不良を起こさない程度で設定することが好ましく、例えば、撚係数Kを0.4~1.5に調整することができる。ここで、芯部となるスライバーと、鞘部となるスライバーとの質量比率は、(芯層):(鞘層)=20:80~80:20となるように調整することが好ましく、特に、繊維の比重、強力、捲縮等の様々な要因を考慮した配分とすることが好ましい。
精紡工程の撚り数は、特に限定されないが、物性(強力・毛羽等)や風合いの観点から、撚係数Kは、3.2~5.7の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3.5~4.5の範囲内である。撚係数Kが3.2未満のような甘撚では、糸の素抜けの発生原因になったり、織編物にした際の物性(特にピリング)が悪化したりする場合がある。逆に撚係数Kを上げると、一定の強力の向上、シャリ感の良化が達成できるが、5.7を超えて高過ぎると、生産性の悪化、風合い硬化、または継ぎ目不良・スナール等の欠点につながりやすい場合がある。
なお、撚係数Kは、以下の式で求められる。
撚係数(K)=撚数(回数/2.54cm)/√(英式綿番手)
本発明の織編物は、本発明の二層構造紡績糸を含むものである。織編物中に含まれる本発明の二層構造紡績糸の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、さらに環境問題に配慮するという目的を果たすためには70質量%以上であることがより好ましく、100質量%すなわち、本発明の二層構造紡績糸のみを用いた織編物であることが特に好ましい。
織編物は、特に組織など限定されない。織物としては、平、綾、朱子、パイル及びこれらの変化組織等が挙げられる。編物としては、経編物又は緯編物のいずれであってもよい。経編物としては、例えば、デンビー編、コード編、アトラス編等が挙げられ、具体的にはトリコットハーフ、トリコットサテン等が挙げられる。また、緯編物としては、例えば、平編、ゴム編、パール編、スムース編等が挙げられ、具体的には、天竺、鹿の子、スムース等が挙げられる。
本発明の織編物は、本発明の二層構造紡績糸を含むものであり、芯部に配されたナイロン56短繊維が、天然繊維またはセルロース系繊維を含む鞘部によって覆われた紡績糸である。そのため、ナイロン56短繊維が糸表面に多く存在するような紡績糸と比較して、染色性および染色堅ろう度に優れる。すなわち、染料を用いた染色により高い発色性を示し、また、織編物を繰り返し使用する過程での黄ばみなどの変退色や汚染を抑えることができる。そのため、本発明の織編物は、所定の洗濯堅ろう度を具備していることが好ましい。具体的には、JIS L0844 A-2法に準じて測定される、洗濯堅ろう度における変退色および汚染として、いずれも4級以上であることが好ましい。洗濯堅ろう度がこの範囲を満足すると、洗濯による色落ちや他の洗濯物への色移りなどが発生し難くなる。
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、実施例中の各種の特性値及び評価は以下の通りである。
(番手の測定)
得られた二層構造紡績糸を用い、JISのL-1095 9.4.1に従って測定した。
(撚数の測定)
得られた二層構造紡績糸を用い、JISのL-1095 9.15.1のB法に従って測定した。
(強力・伸度)
得られた二層構造紡績糸を用い、引張試験機:敷島紡績株式会社製ST―2000を用いて、引張速度:30cm/分、つかみ間隔:50cmの条件にて、JISのL-1095 9.5.に従って測定した。
(ウースター斑(U%))
得られた二層構造紡績糸を糸むら試験機(計測器工業社製KET-80V/B)を用いて、測定速度:200m/分、測定時間:2分の条件にて、JISのL-1095 9.20.1のA法に従って測定した。
(摩擦帯電圧)
前記のとおりに測定し、算出した。
(染色性)
得られた加工上がり生地を用い、パネリストによる目視にて以下の2段階で評価した。
○;所望の色に染色されている。
×;所望の色に染色されていない(色が薄い)。
(染色堅ろう度判定)
得られた加工上がり生地を用い、JIS L-0842 A-2法に従い、洗濯堅ろう度試験による評価を行った。
実施例で使用するナイロン56短繊維、綿スライバーは以下のとおりである。
ナイロン56短繊維(S1);単糸繊度1.90dtex、強度3.63cN/dtex、伸度88.4%、繊維長39.6mm、熱収縮率1.8%、捲縮率10.5%
綿スライバー(S2);綿100%からなるコーマスライバーであって、JIS L 1019綿繊維試験方法において、有効繊維長32.8mm、短繊維含有率9.4%、繊度<マイクロネヤリーディング>4.3となるもの
実施例1
(スライバーS1)
上記記載のナイロン56短繊維のみを用いて、混打綿機へ投入してシート状のラップを得た。このラップをカード機に投入し、カード機内で梳綿工程を経た後、ウェブを紡出、集束し、カレンダーロールで押圧して235ゲレン/6ヤードのカードスライバー得た。
次に、カードスライバーを練条工程において、8本合わせて9.4倍に延伸を行う工程を2回行い、200ゲレン/6ヤードのスライバーS1を得た。
(スライバーS2)
スライバーS2として綿スライバーを準備した。
芯部用のスライバーとして、スライバーS1を、鞘部用のスライバーとして、スライバーS2を用意した。
図1(概略断面図)及び図2(概略断面図)に示す構造の粗紡機を用いて、芯部用のスライバーS1と鞘部用のスライバーS2を供給し、延伸後の各スライバーの質量比をS1:S2=30:70となるようにし、図2におけるドラフト方向に対する芯部用のスライバーS1のフライヤーヘッドへの進行角度θを60°として、粗糸質量275gr/30yd(1gr=0.65g、1yd=0.9144m)、撚数を0.76回/2.54cmとした粗糸を得た。
この粗糸を用い、コンパクト精紡機(豊田自動織機社製、RX300)にて、精紡を行った。具体的には、精紡機のトランペット(ガイド)に粗糸を通し、バックローラ、エプロン、フロントローラの順を経て、35.6倍の延伸を行った後、撚係数3.8(撚数20.8回/2.54cm)となる様、Z方向に撚りをかけ、30番手(英式綿番手)の二層構造紡績糸を得た。
得られた二層構造紡績糸のみを経糸および緯糸に用いて、経糸密度104本/2.54cm、緯糸密度76本/2.54cmの平織物の生機を製織した。得られた生機に対して、下記に示す染色・仕上処理(精練、プレセット、染色、乾燥、ファイナルセット)を行い、加工上り生地を得た。
(精練)
サンモール1g/l、浴比1:50、80℃×20分
(プレセット)
ピンテンター、170℃×1分
(染色)
酸性染料:Nylosan Blue NFL(180%)1%o.m.f.、レベランNKD2%o.m.f.、酢酸0.2cc/l、浴比1:50、100℃×30分
反応染料:Sumifix Spura Blue BRF 1%o.m.f.、芒硝60g/l、ソーダ灰20g/l、処理温度:60℃×45分
ソーピング・水洗・乾燥:リポトールRK-5 1g/l、処理温度:100℃×10分、水洗い、マングル脱水後、吊り干し。
実施例2
延伸後の芯部用のスライバーS1と鞘部用のスライバーS2の質量比がS1:S2=40:60となるようにした以外は実施例1と同様にして、30番手(英式綿番手)の二層構造紡績糸を得た。
得られた二層構造紡績を用いて実施例1と同様にして平織物の生機を得て、さらに実施例1と同様に染色・仕上処理を行い、加工上り生地を得た。
実施例3
延伸後の芯部用のスライバーS1と鞘部用のスライバーS2の質量比がS1:S2=55:45となるようにした以外は実施例1と同様にして、30番手(英式綿番手)の二層構造紡績糸を得た。
得られた二層構造紡績を用いて実施例1と同様にして平織物の生機を得て、さらに実施例1と同様に染色・仕上処理を行い、加工上り生地を得た。
比較例1
芯部を構成する短繊維として、ナイロン56短繊維に換えて、下記ポリエステル短繊維を使用した。
ポリエステル短繊維;単繊維繊度1.3dtex、繊維長38mm、引張強さ5.6cN/dtex
次いで、下記の条件で芯部用のスライバーS1を得た。
(スライバー1)
上記記載のポリエステル短繊維のみを用いて、混打綿機へ投入してシート状のラップを得た。このラップをカード機に投入し、カード機内で梳綿工程を経た後、ウェブを紡出、集束し、カレンダーロールで押圧して235ゲレン/6ヤードのカードスライバー得た。
次に、カードスライバーを練条工程において、8本合わせて9.4倍に延伸を行う工程を2回行い、200ゲレン/6ヤードのスライバーS1を得た。
次いで、延伸後の芯部用のスライバーS1と鞘部用のスライバーS2の質量比がS1:S2=40:60となるようにした以外は実施例1と同様にして、30番手(英式綿番手)の二層構造紡績糸を得た。
得られた二層構造紡績を用いて実施例1と同様にして平織物の生機を得た後、分散染料を用いて染色を行ったこと以外は実施例1と同様に染色・仕上処理を行い、加工上り生地を得た。
比較例2
上記記載のナイロン56短繊維のみを用いて、混打綿機へ投入してシート状のラップを得た。このラップをカード機に投入し、カード機内で梳綿工程を経た後、ウェブを紡出、集束し、カレンダーロールで押圧して300ゲレン/6ヤードのカードスライバーを得た。
次に、カードスライバーを練条工程において、8本合わせて6.93倍に延伸を行う工程を2回行い、400ゲレン/6ヤードのスライバーSを得た。スライバーSを粗紡機に供給し、粗紡機において、供給されたスライバーSを8.3倍に延伸し、240ゲレン/30ヤードの粗糸を得た。
この粗糸を用い、実施例1と同様にして、コンパクト精紡機(豊田自動織機社製、RX300)にて精紡を行い、ナイロン56短繊維100%からなるコンパクト紡績糸を得た。
得られたコンパクト紡績糸を用いて実施例1と同様にして平織物の生機を得た後、酸性染料のみを用いて染色を行ったこと以外は実施例1と同様に染色・仕上処理を行い、加工上り生地を得た。
比較例3
紡績糸を構成する短繊維として、ナイロン56短繊維に換えて、下記ナイロン6短繊維を使用した以外は、比較例2と同様の紡績工程を行い、ナイロン6短繊維100%のコンパクト紡績糸を得た。
ナイロン6短繊維;繊度1.76dtex、強度3.58cN/dtex、伸度59.5%、繊維長51.0mm、熱収縮率1.5%、捲縮率9.3%
得られたコンパクト紡績糸を用いて実施例1と同様にして平織物の生機を得た後、酸性染料のみを用いて染色を行ったこと以外は実施例1と同様に染色・仕上処理を行い、加工上り生地を得た。
実施例1~3、比較例1~3で得られた二層構造紡績糸、コンパクト紡績糸及び加工上り生地の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1~3で得られた二層構造紡績糸は、本発明で規定する特性値を満足するものであったため、得られた織物は強力や帯電防止性の他、染色性および染色堅ろう度にも優れるものであった。

Claims (4)

  1. 糸条長手方向に対して垂直な断面が芯部と鞘部とを有する紡績糸であって、
    前記芯部は、ナイロン56短繊維を40質量%以上含有し、
    前記鞘部は、天然繊維またはセルロース系繊維を50質量%以上含有し、紡績糸中におけるナイロン56短繊維の含有量が20質量%以上であり、かつ平均強力が150cN以上、伸度が5~25%、
    かつ、前記紡績糸を筒編地としたときのタテ方向の摩擦帯電圧(摩擦布:羊毛)が800V以下であることを特徴とする二層構造紡績糸。
  2. 撚係数Kが3.2~5.7、ウースター斑(U%)が15.0%以下、英式綿番手が5~60番手である、請求項1記載の二層構造紡績糸。
  3. 前記鞘部が綿繊維を50質量%以上含有する請求項1または2に記載の二層構造紡績糸。
  4. 請求項1に記載の二層構造紡績糸を含む織編物。
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