JP2023114400A - 溶接用メタル系フラックス入りワイヤ及びガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶接作業性に優れ、かつ、耐気孔欠陥性及び耐割れ性に優れ、溶着金属の機械的性質が良好な溶接用メタル系フラックス入りワイヤ、及びガスシールドアーク溶接方法を提供する。【解決手段】ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、C:0.13~0.25%、Si(Si酸化物として含まれるSiを除く):0.1~1.2%、Mn:0.5~2.0%、S:0.020~0.050%、及びP:0.03%以下を含有し、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、金属弗化物:F換算値の合計で0.003~0.120%、並びにNa酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上:Na2O換算値とK2O換算値の合計で0.02~0.10%を含有し、残部がFe及び不純物からなる、溶接用メタル系フラックス入りワイヤ及びそれを用いたガスシールドアーク溶接方法。【選択図】なし

Description

本開示は、溶接用メタル系フラックス入りワイヤ、及びガスシールドアーク溶接方法に関する。
ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、高能率で溶接作業性に優れており、建築、鉄骨及び海洋構造物等の分野に広く使用されている。特にメタル系フラックス入りワイヤは、ルチール系や塩基性系のようなスラグ生成量が多いフラックス入りワイヤと比較してスラグ生成量が少なく、かつ、連続多パス溶接におけるスラグ除去作業が簡便であるために、開先内を連続多パス溶接する条件では好まれて使用されている。
中でもAr-CO混合ガスを使用するガスシールドアーク溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、ソリッドワイヤやCOガスを使用するガスシールドアーク溶接用メタル系フラックス入りワイヤと比較して溶滴が小粒であるため、大粒のスパッタが発生しにくい。そのため、溶接部や溶接トーチのノズルにスパッタが付着しにくく、溶接部やノズルのスパッタ除去作業が軽減される。また、MnやSiなどの合金剤や脱酸剤の酸化によるスラグ化の度合いが小さいため、スラグ生成量を少なくすることができる。さらに、溶接金属の低酸素化により溶接金属の低温靭性の向上に有効であるために広く適用されている。
Ar-CO混合ガスを使用するガスシールドアーク溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、これまでに各種の開発が進められている。例えば、特許文献1には、水平すみ肉溶接においてスラグの生成量が少なく、ビード形状がフラットなビードを得ることができる混合ガスを使用するガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
また、特許文献2には、合金粉末を多く含み、低温靭性に優れた混合ガスを使用するガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
特許文献3には、アーク安定性が良好で、スパッタ発生量が少ない等溶接作業性が良好であり、かつ、低温靭性に優れた混合ガスを使用するガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤが開示されている。
特許文献4には、ショートアーク溶接及びスプレーアーク溶接に使用して、スラグ生成量及びスパッタ発生量が極めて少なく、良好なビード形状が得られ、さらに溶接金属の低温靭性も良好なAr-CO混合ガスを使用するガスシールドアーク溶接用メタル系フラックス入りワイヤが開示されている。
特開2000-197991号公報 特開2007-144516号公報 特開2020-203302号公報 特許5207994号
しかし、特許文献1や特許文献2に記載のフラックス入りワイヤは、C量が少なく、S量が規定されていないためスラグ生成量が多くなり、また、スラグがビード上に薄く広がって存在するため、スラグ剥離性が悪くスラグ除去に時間がかかる、さらにはビード外観が滑らかでないという問題点がある。加えて、スラグを除去しないで多パス溶接した場合、ビード上を覆うスラグの面積がさらに増えるため、次パスのアークスタート時に、消耗電極であるワイヤがスラグに接触した場合、通電しないためアークが発生しない。アークを発生させるには、ワイヤが接触する部分のスラグを除去する必要がある。自動溶接の場合、その作業が大きな時間ロスに繋がり、製造コストが増加する問題点がある。
また、特許文献2や特許文献3に記載のフラックス入りワイヤはTiを含有しているために、Ti酸化物が多く生成されスラグの生成量が多くなり、スラグ除去に時間がかかる問題点がある。
また、特許文献4に記載のフラックス入りワイヤもC量が少なく、スラグ生成量が多くなり易いため、さらに改善の余地がある。
そこで本開示は、上述した問題点に鑑みて案出されたものであり、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ生成量及びビード形状などの溶接作業性に優れ、かつ、耐気孔欠陥性及び耐割れ性に優れ、溶着金属の機械的性質が良好な溶接用メタル系フラックス入りワイヤ、及びガスシールドアーク溶接方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための本開示の要旨は、以下の通りである。
<1> 鋼製外皮と、鋼製外皮に充填されたフラックスと、を含む溶接用メタル系フラックス入りワイヤであって、
ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.13~0.25%、
Si(Si酸化物として含まれるSiを除く):0.1~1.2%、
Mn:0.5~2.0%、
S:0.020~0.050%、及び
P:0.03%以下、を含有し、
さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
金属弗化物:F換算値の合計で0.003~0.120%、並びに
Na酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上:NaO換算値とKO換算値の合計で0.02~0.10%を含有し、
残部が、鋼製外皮及びフラックスに含まれるFe及び不純物からなる、溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
<2> ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Si酸化物:SiO換算値の合計で0.20%以下を含有する、<1>に記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
<3> 下記式1により算出される値が、0.47~1.90である、<1>又は<2>に記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
式1:(10[S]+3[C])/[Mn]
但し、式1中、[元素記号]は、鋼製外皮及びフラックスに含まれる各元素のワイヤ全質量に対する質量%を意味する。
<4> ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Ni:1.5%以下及びB:0.010%以下の1種又は2種を含有する、<1>~<3>のいずれか1つに記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
<5> ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Mo:0.30%以下、Cu:0.50%以下、Cr:0.05%以下、V:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Ti:0.05%以下、及びAl:0.05%以下の1種又は2種以上を含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤとシールドガスを用いて溶接を行う、ガスシールドアーク溶接方法。
本開示によれば、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ生成量及びビード形状などの溶接作業性に優れ、かつ、耐気孔欠陥性及び耐割れ性に優れ、溶着金属の機械的性質が良好な溶接用メタル系フラックス入りワイヤ、及びガスシールドアーク溶接方法を提供することができる。
以下、本開示の一例である実施形態について説明するが、本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤ及びガスシールドアーク溶接方法は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
なお、本開示において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されていない場合は、これらの数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、「~」の前後に記載される数値に「超」又は「未満」が付されている場合の数値範囲は、これらの数値を下限値又は上限値として含まない範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階的な数値範囲の上限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値に置き換えてもよく、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、ある段階的な数値範囲の下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の下限値に置き換えてもよく、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
含有量について、「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。
また、含有量(%)について下限値を限定せずに「~%以下」として上限値のみを限定している場合は、0%超~上限値の範囲内で含み得ることを意味する。
本発明者らは、前記課題を解決するために、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ生成量及びビード形状などの溶接作業性に優れ、かつ、耐気孔欠陥性及び耐割れ性に優れ、溶着金属の機械的性質が良好な溶接用メタル系フラックス入りワイヤを得るべく、鋭意検討を行った。その結果、メタル系フラックス入りワイヤのS及びCを適量にすることでスラグの凝集効果が得られ、ビード外観が良好になる効果が得られることを見出した。
<溶接用メタル系フラックス入りワイヤ>
本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、鋼製外皮と、鋼製外皮に充填されたフラックスと、を含み、ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
C:0.13~0.25%、
Si(Si酸化物として含まれるSiを除く):0.1~1.2%、
Mn:0.5~2.0%、
S:0.020~0.050%、及び
P:0.03%以下を含有し、
さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
金属弗化物:F換算値の合計で0.003~0.120%、並びに
Na酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上:NaO換算値とKO換算値の合計で0.02~0.10%を含有し、
残部が、鋼製外皮及びフラックスに含まれるFe及び不純物からなる。
以下に、本開示の溶接用メタル系フラックス入りワイヤの成分組成の限定理由について説明する。なお、本開示における各成分組成の含有量は、ワイヤ全質量に対する質量%であり、単に%と記載する。
本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、C、Si(Si酸化物として含まれるSiを除く)、Mn、S、P、金属弗化物、並びにNa酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上を必須成分とする。本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、フラックス中にSi酸化物を含んでもよい。
[鋼製外皮とフラックスの合計でC:0.13~0.25%]
Cは、溶接金属の強度を向上させる効果がある。また、Cは、スラグの生成量を調整する効果がある。Cが0.13%未満では、スラグ生成量が増加する。一方、Cが0.25%を超えると、高温割れが生じる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計で、Cは0.13~0.25%とする。なお、Cは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属粉及び合金粉末等から添加できる。C含有量は、好ましくは0.13~0.20%である。
[鋼製外皮とフラックスの合計でSi(Si酸化物として含まれるSiを除く):0.1~1.2%]
Siは溶接金属の強度及び靭性を向上させる効果がある。またSiは、溶融金属の粘性を大きくしてビード外観及び形状を良好にする効果がある。さらにSiは、スラグの生成量を調整する効果がある。Siが0.1%未満では、ビード外観及びビード形状が劣化する。また、耐気孔欠陥性が低下する。一方、Siが1.2%を超えると、Siが溶接金属中に過剰に歩留まり、溶接金属の強度が高くなり、低温靭性が低下する。また、Siが1.2%を超えると、スラグの生成量が多くなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSiは0.1~1.2%とする。なお、本開示におけるSi含有量は、Si酸化物が含まれる場合、Si酸化物として含まれるSiは考慮しない。Siは鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Si、Fe-Si、Fe-Si-Mn等の合金粉末から添加できる。Si含有量は、好ましくは0.4~1.1%である。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMn:0.5~2.0%]
Mnは、脱酸剤として作用するとともに、溶接金属の強度と低温靭性を向上させる効果がある。Mnが0.5%未満では、溶接金属の強度及び低温靭性が低下する。一方、Mnが2.0%を超えると、Mnが溶接金属中に過剰に歩留まり、溶接金属の強度が高くなって低温靭性が低下する。また、スラグ生成量が多くなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でMnは0.5~2.0%とする。なお、Mnは鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属Mn、Fe-Mn、Fe-Si-Mn等の合金粉末から添加できる。Mn含有量は、好ましくは0.8~1.8%である。
[鋼製外皮とフラックスの合計でS:0.020~0.050%]
Sは、溶接時の溶融プールの表面張力を下げることにより湯流れを変化させ、スラグを凝集しやすくする。スラグが凝集すると、溶接後にスラグが剥離しやすくなる。また、スラグが剥離した後に良好なビード外観が得られる。Sが0.020%未満では、溶融スラグの凝集が起こらず、細かくまばらに分散して付着するためビード外観が劣る。一方、Sが0.050%を超えると、溶接金属の低温靭性が低下する。また、Sが0.050%を超えると、溶接金属に高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でSは0.020~0.050%とする。なお、Sは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスから金属粉、合金粉及び硫化鉄等から添加できる。S含有量は、好ましくは0.022~0.040%である。
[鋼製外皮とフラックスの合計でP:0.03%以下]
Pは、溶着金属の高温割れを発生させる主要元素の一つであり、鋼製外皮及びフラックスの原料に微量含まれる不純物である。そのため、Pは0.03%以下とする。
[フラックス中の金属弗化物:F換算値の合計で0.003~0.120%]
金属弗化物は、アークを安定化させる効果がある。金属弗化物のF換算値の合計が0.003%未満では、アークが弱くなり不安定となる。一方、金属弗化物のF換算値の合計が0.120%を超えると、アークの強さが過剰となり、スパッタ発生量が増加する。従って金属弗化物のF換算値の合計は0.003~0.120%とする。なお、金属弗化物はCaF、NaF、LiF、MgF、KSiF、NaAlF、AlF等から添加でき、F換算値はこれらに含有されるF含有量の合計である。金属弗化物のF換算値の合計は、好ましくは0.003~0.030%である。
なお、Si、Mg、Alは、金属弗化物の構成元素であってもワイヤ中に含まれると、溶接時にスラグになってスラグ量が増えてしまうため、これらの含有量は少ない方が好ましい。そのため、金属弗化物を構成し得るSi、Mg、Alについては、それぞれ本開示に係るフラックス入りワイヤに含み得る元素としても考慮し、Si(Si酸化物として含まれるSiを除く):0.1~1.2%、Mg:0.05%以下、Al:0.05%以下で含まれるものとする。一方、金属弗化物を構成し得るCa、Na、Li、K等の他の金属元素は金属弗化物としてのみ考慮する。
[フラックス中のNa酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上:NaO換算値とKO換算値の合計で0.02~0.10%]
Na酸化物及びK酸化物はアーク安定剤として作用し、アークの安定性を良好にする効果がある。Na酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上のNaO換算値とKO換算値の合計が0.02%未満では、アークが不安定となって、スパッタ発生量が増加する。一方、Na酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上のNaO換算値とKO換算値の合計が0.10%を超えると、アーク長が長くなりアークが不安定となって、スパッタ発生量が増加する。従って、フラックス中のNa酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上のNaO換算値とKO換算値の合計は0.02~0.10%とする。なお、Na酸化物及びK酸化物は、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分、カリ長石、NaTi等の粉末から添加できる。Na酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上のNaO換算値とKO換算値の合計は、好ましくは0.03~0.07%である。
[フラックス中のSi酸化物:SiO換算値の合計で0.20%以下]
Si酸化物はビード止端部のなじみを良好にしてビード外観及び形状を良好にするため、フラックス中にSi酸化物を含んでもよい。しかし、一方でスラグの生成量が増加し、かつ、溶接金属中の酸素量が増加するために、Si酸化物の含有量を制限する必要がある。Si酸化物のSiO換算値の合計が0.20%を超えると、溶接金属中の酸素量が増加し、低温靭性が低下する。従って、Si酸化物のSiO換算値の合計は0.20%以下とする。なお、Si酸化物はフラックスからの珪砂、正長石、珪酸ソーダ及び珪酸カリからなる水ガラスの固質成分等から添加できる。Si酸化物のSiO換算値の合計は、好ましくは0.15%以下である。
本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、下記式1により算出される値が0.47~1.90を満たすことが好ましい。
[式1:(10[S]+3[C])/[Mn]の値が0.47~1.90]
式1中、[元素記号]は、鋼製外皮及びフラックスに含まれる各元素のワイヤ全質量に対する質量%を意味する。式1によって算出される値が、0.47未満であれば、スラグ生成量がやや多くなる。一方で、式1によって算出される値が、1.90を超えると、ビード外観がやや悪くなる。従って、式1によって算出される値は、0.47~1.90であることが好ましい。式1によって算出される値は、好ましくは、0.50~1.30である。
本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、Feの一部に代えて、上記元素以外にNi及びBの1種又は2種を含むことができる。これらの各元素を含有させる場合には、それぞれ以下の含有量とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でNi:1.5%以下]
Niは溶接金属の低温靭性をさらに向上させる効果がある。しかし、Niが1.5%を超えると溶接金属の強度が過剰となり、また、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でNiは1.5%以下とする。なお、低温靭性向上の効果を得るために、Niは0.3%以上であることが好ましい。さらに低温での靭性を向上させるためには、Niを0.5%以上とすることが好ましい。Niは、鋼製外皮に含まれる成分の他、フラックスからの金属Ni、Fe-Ni等の金属粉末から添加できる。
[鋼製外皮とフラックスの合計でB:0.010%以下]
Bは溶接金属の低温靭性をさらに向上させる効果がある。しかし、Bが0.010%を超えると溶接金属の強度が過剰となり、また、高温割れが発生しやすくなる。従って、鋼製外皮とフラックスの合計でBは0.010%以下とする。Bによって溶接金属の低温靭性を向上させる効果を得るには、Bを0.004%以上とすることが好ましい。Bは、Fe-B、硼砂、コレマナイト等の合金や酸化物から添加できる。
本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、Feの一部に代えて、上記元素以外に他の元素をさらに含むことができる。例えば、Mo、Cu、Cr、V、Mg、Ti及びAlは、本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤにおいて、以下の各含有量の範囲内で1種又は2種以上を含有してもよい。これらの各元素を溶接用メタル系フラックス入りワイヤに含有させる場合には、それぞれ以下の含有量とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMo:0.30%以下]
Moは含有しなくてもよいし、引張強さを向上させるため含有させてもよいが、過剰に含有させた場合、溶接部の引張強さが高くなりすぎて靭性が低下する。従って、Mo含有量は、0.30%以下とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCu:0.50%以下]
Cuは含有しなくてもよいし、例えば、耐チップ摩耗性向上のため鋼製外皮にCu系めっきを施すことでCuを含んでもよい。鋼製外皮にCu系めっきを施すことでチップの内部(挿通孔)を通るワイヤによるチップの摩耗を抑制することができる。ただし、ワイヤがCuを過剰に含有する場合、高温割れが生じやすくなる。従って、Cu含有量は、0.50%以下とする。なお、鋼製外皮にCu系めっきが施されている場合、当該めっきは鋼製外皮の一部とみなす。
[鋼製外皮とフラックスの合計でCr:0.05%以下]
Crは含有しなくてもよいし、含有してもよいが、Crは、強度を高める一方で、過剰に含有させた場合、溶接部の靭性が低下する。従って、Cr含有量は、0.05%以下とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でV:0.05%以下]
Vは含有しなくてもよいし、含有してもよいが、Vは、強度を高める一方で、過剰に含有させた場合、溶接部の靭性が低下する。従って、V含有量は、0.05%以下とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でMg:0.05%以下]
Mgは含有しなくてもよいし、含有してもよいが、Mgは、スラグ生成量を増加させて溶接作業性を悪くするので、添加しないことが好ましい。含有する場合は、Mgは0.05%以下とする。
[鋼製外皮とフラックスの合計でTi:0.05%以下]
Tiは含有しなくてもよいし、含有してもよいが、Tiは、Ti酸化物を生成してスラグ生成量を増加させて溶接作業性を悪くするので、含有しないことが好ましい。含有する場合は、Tiは0.05%以下が好ましい。
[鋼製外皮とフラックスの合計でAl:0.05%以下]
Alは含有しなくてもよいし、含有してもよいが、Alは、スラグ生成量を増加させて溶接作業性を悪くするので、含有しないことが好ましい。含有する場合は、Alは0.05%以下が好ましい。
本開示の溶接用メタル系フラックス入りワイヤの残部はFe及び不純物である。例えば、鋼製外皮のFe、フラックス中の鉄粉、Fe-Mn、Fe-Si-Mn、Fe-Ni合金等の鉄合金粉のFe分及び不純物である。
また、フラックス充填率は特に規定しないが、生産性の観点からワイヤ全質量に対して8~20質量%とすることが好ましい。
本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤの直径は特に限定されないが、例えば、1.0~2.0mmである。
<ガスシールドアーク溶接方法>
次に、本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤを用いて行う、ガスシールドアーク溶接方法について説明する。本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤは、溶接する際にシールドガスを用いて行う溶接方法に好適に用いることができる。
すなわち、本開示に係るガスシールドアーク溶接方法は、本開示に係る溶接用メタル系フラックス入りワイヤとシールドガスを用いて溶接を行うガスシールドアーク溶接方法である。
溶接時のシールドガスは、公知のシールドガスを用いることができる。例えば100%COはスラグが生成し易く、100%Arはアーク安定性が低下し易い。溶接金属の酸素量を低減するために、好ましくはAr-5~25容積%COの混合ガスを用いるが、これには限定されない。
なお、本開示に係るガスシールドアーク溶接方法は、特に限定されないが、パルス溶接としてもよい。
以下、本開示の効果を実施例により更に詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
[溶接用メタル系フラックス入りワイヤの製造]
まず、鋼製外皮にJIS G3141:2017 SPCC帯鋼を使用し、鋼製外皮をU字形にして成形し、乾燥させて水分を十分に除去したフラックスを充填した。その後、鋼製外皮の合わせ目を溶接した継ぎ目なしのワイヤと鋼製外皮同士をかしめた継ぎ目有りのワイヤとを造管及び伸線し、表1に示すワイヤ径1.2mmの各種主成分のフラックス入りワイヤを試作した。なお、フラックス充填率は10~18質量%とした。
表1において、任意要件も含め、本開示の範囲外の数値には下線を付した。また、表1中の空欄は、その元素を意図的に添加しなかったことを示す。
また、Cuを含むワイヤは、鋼製外皮にめっきが施されていることを意味する。
また、金属弗化物は、CaF、NaF、LiF、MgF、KSiF、NaAlF、AlFの1種又は2種以上を用い、Si、Mg、Alが金属弗化物として含まれている場合は、それぞれ、Si、Mg、Alとしての含有量にも含めた。一方、Si酸化物として含まれるSiはSi含有量には含めていない。

シールドガスの記号の意味は以下のとおりである。
C:CO
M:Ar-20%CO
[評価]
上記のようにして製造したワイヤを用い、下向の溶接作業性及び溶着金属の機械性能を評価した。
溶接作業性は板厚20mmのJIS G3126:2015 SLA365に規定される鋼板を用いてJIS Z3111:2005に準じて溶接を行い、表2に示す溶接条件で溶接を行い、アーク安定性、スパッタ発生量、スラグ生成量、並びにビード外観及び形状の良否を目視確認で調査し、また、気孔欠陥の有無及び高温割れの有無も調査した。
(アーク安定性)
アーク安定性とは、アークの安定の程度を示すものである。アークが安定している状態とは、ワイヤ先端と鋼板間に発生するアークの長さの変動が少ないことをいう。アークの長さの変動が多いと、スパッタ発生量が増えたり、ビード外観が悪化したりする。アークの安定性は、溶接中に目視で判断した。
(スパッタ発生量)
スパッタ発生量は、JIS G 3106:2017 SM490A(板厚12mm)の鋼板の上に、表2に示す、電流、電圧、溶接速度、シールドガスにて、1分間溶接した際に発生するスパッタを銅製の捕集箱により捕集して、その重量を測定することにより求めた。そのスパッタ発生量は5回測定して、その平均値が1.5g以下を良好とした。
少ない:スパッタ発生量が1.5g以下
多い :スパッタ発生量が1.5g超
(スラグ生成量)
スラグ生成量については、スパッタ発生量測定後のビード上に占めるスラグの面積率で評価した。
非常に少ない:スラグ面積率が5%以下
少ない :スラグ面積率が5%超、10%以下
多い :スラグ面積率が10%超
(ビード外観及び形状)
ビード外観及び形状の調査については、ビード外観及び形状が美麗で均一に揃っている様子であれば良好と判別し、ビード外観及び形状の一部又は全部が不揃いで安定していない様子であれば不良と判別している。
本実施例においてこのビード外観及び形状の良好か不良かの判別は、目視による観察を通じて判別する。具体的なビード外観及び形状の判断基準としては、アンダーカットやオーバーラップなどが1箇所でもあれば不良と判断し、それ以外は何れも良好と判断した。
(耐気孔欠陥性)
ビード表面にピットなどの気孔欠陥の発生有無を目視で確認して評価した。各パス溶接後に気孔欠陥が一つでも現れた場合に「有り」とした。
<溶着金属試験>
溶着金属試験は、板厚20mmのJIS G3126:2015 SLA365に規定される鋼板を用いてJIS Z3111:2005に準じて溶接を行い、「JIS Z 2343-1:2017 非破壊試験-浸透探傷試験-第1部」の方法に基づいて試験を実施した。
(耐割れ性)
溶着金属試験においてビード表面に割れが1つでも認められた場合は「有り」とした。各パス溶接後に高温割れの有無を目視確認で調査した。
(耐チップ摩耗性)
溶着金属試験後、チップの摩耗状態を目視で確認、評価した。
極めて良好:ほとんど摩耗なし
良好 :僅かに摩耗あり
(機械的性質)
溶着金属の板厚方向中心から引張試験(A0号)及び衝撃試験片(Vノッチ試験片)を採取し、機械試験を実施した。
引張試験の評価は0.2%耐力が460MPa以上、引張強さが540~680MPaを良好とした。
衝撃試験の評価は-40℃におけるシャルピー衝撃試験(vE-40)を行い、繰り返し3本の吸収エネルギーの平均が60J以上を良好とした。なお、参考までに-60℃におけるシャルピー衝撃試験(vE-60)も実施した。
これらの結果を表3にまとめて示す。全ての評価項目で良好以上であれば、総合評価を○、1つでも良好に満たない場合は×とした。

表3中のワイヤ記号W1~W20、W31及びW32が本発明例、ワイヤ記号W21~W30は比較例である。本発明例であるワイヤ記号W1~W20、W31及びW32は、メタル系フラックス入りワイヤの鋼製外皮とフラックスの合計でC、Si、Mn、S、Pが適量であり、フラックス中の金属弗化物のF換算値の合計、並びにNa酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上のNaO換算値とKO換算値の合計が適量であった。そのため、これらの本発明例では、アークが安定し、スパッタ発生量が少なく、スラグ生成量が少なく、ビード外観及び形状が良好であり、気孔欠陥も高温割れも発生しなかった。さらに、これらの本発明例では、溶着金属の0.2%耐力、引張強さ及び吸収エネルギー等の機械的性質が良好であった。
比較例であるワイヤ記号W21~W30では、メタル系フラックス入りワイヤの鋼製外皮とフラックスの合計で成分が本開示で規定する範囲外であったため、1以上の評価項目において不合格となった。

Claims (6)

  1. 鋼製外皮と、鋼製外皮に充填されたフラックスと、を含む溶接用メタル系フラックス入りワイヤであって、
    ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、
    C:0.13~0.25%、
    Si(Si酸化物として含まれるSiを除く):0.1~1.2%、
    Mn:0.5~2.0%、
    S:0.020~0.050%、及び
    P:0.03%以下、を含有し、
    さらに、ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、
    金属弗化物:F換算値の合計で0.003~0.120%、並びに
    Na酸化物及びK酸化物の1種又は2種以上:NaO換算値とKO換算値の合計で0.02~0.10%を含有し、
    残部が、鋼製外皮及びフラックスに含まれるFe及び不純物からなる、溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
  2. ワイヤ全質量に対する質量%で、フラックス中に、Si酸化物:SiO換算値の合計で0.20%以下を含有する、請求項1に記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
  3. 下記式1により算出される値が、0.47~1.90である、請求項1又は請求項2に記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
    式1:(10[S]+3[C])/[Mn]
    但し、式1中、[元素記号]は、鋼製外皮及びフラックスに含まれる各元素のワイヤ全質量に対する質量%を意味する。
  4. ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Ni:1.5%以下及びB:0.010%以下の1種又は2種を含有する、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
  5. ワイヤ全質量に対する質量%で、鋼製外皮とフラックスの合計で、Mo:0.30%以下、Cu:0.50%以下、Cr:0.05%以下、V:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Ti:0.05%以下、及びAl:0.05%以下の1種又は2種以上を含有する、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤ。
  6. 請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の溶接用メタル系フラックス入りワイヤとシールドガスを用いて溶接を行う、ガスシールドアーク溶接方法。
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