JP2023112439A - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】発熱を抑制できるデザイン性の高い空気入りタイヤを提供する。【解決手段】実施形態の一例である空気入りタイヤ1において、トレッド10は、接地端E2を含むタイヤ軸方向端領域において、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成された平面視台形の部分を含む第1の陸81と、タイヤ周方向に第1の陸81と交互に並ぶように形成された平面視台形の部分を含む第2の陸82とを有する。トレッド10には、第2の陸82の三方を囲むように副溝85が形成されている。【選択図】図2
Description
本発明は、空気入りタイヤに関する。
従来、タイヤ周方向又は軸方向に延びる複数の溝と、各溝により区画された複数のブロックとを有するトレッドを備えた空気入りタイヤが広く知られている。例えば、特許文献1には、タイヤ周方向に連続してジグザグに延びるセンター主溝と、主溝よりも小さい溝幅を有する細溝と、タイヤ軸方向に延びる横溝と、各溝により区画された複数のブロックとを含む空気入りタイヤが開示されている。特許文献1に開示された空気入りタイヤのトレッドパターンでは、平面視五角形のブロックと、平面視六角形のブロックがタイヤ周方向に交互に配置されている。また、各ブロックは、複数のサイプにより、小ブロック片と、大ブロック片とに区分けされ、大小のブロック片がタイヤ周方向に交互に並んでいる。
特許文献1には、上記トレッドパターンを有することにより、氷上性能と耐摩耗性を両立できるとの効果が記載されている。一方、特許文献1の空気入りタイヤでは、車両走行時における発熱の抑制について考慮されていない。タイヤの温度は、車両走行時におけるタイヤの変形、摩擦、路面温度等の影響で上昇するが、温度が上がり過ぎると、タイヤの性能が損なわれる場合がある。このため、タイヤの温度が上がり過ぎないように放熱性を改善して発熱を抑制することは重要な課題である。また、かかる性能が良好であると共に、高いデザイン性を有するタイヤが求められている。
本発明の目的は、発熱を抑制できるデザイン性の高い空気入りタイヤを提供することである。
本発明に係る空気入りタイヤは、トレッドを備えた空気入りタイヤであって、前記トレッドは、前記トレッドの接地端を含むタイヤ軸方向端領域において、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成された平面視台形の部分を含む第1の陸と、タイヤ周方向に前記第1の陸と交互に並ぶように形成された平面視台形の部分を含む第2の陸とを有し、前記第1および前記第2の陸は、各々の短辺がタイヤ軸方向において互いに反対方向を向くように配置され、前記第2の陸の三方を囲むように第1の溝が形成されている。
本発明に係る空気入りタイヤは、デザイン性が高く、かつ発熱抑制機能に優れる。本発明に係る空気入りタイヤのトレッドパターンは、アグレッシブな意匠を特徴とする斬新なパターンでありながら、優れた放熱性を発揮する。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る空気入りタイヤの実施形態の一例について詳細に説明する。以下で説明する実施形態はあくまでも一例であって、本発明は以下の実施形態に限定されない。また、以下で説明する複数の実施形態および変形例の各構成要素を選択的に組み合わせてなる形態は本発明に含まれている。
図1は、実施形態の一例である空気入りタイヤ1の斜視図である。図1では、空気入りタイヤ1の内部構造を併せて図示している。図1に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接地する部分であるトレッド10を備える。トレッド10は、タイヤ周方向に延びる主溝20,30を有し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。主溝20は、タイヤ軸方向に曲がらず、タイヤ周方向に沿って略真っ直ぐに形成されている。主溝30は、タイヤ軸方向に繰り返し屈曲しながらタイヤ周方向に延びている。
トレッド10は、平面視台形の部分を含むセンター陸40と、センター陸40の三方を囲むように形成された第1クオーター陸50とを有する。また、トレッド10は、平面視台形の部分を含む第1ショルダー陸60と、センター陸40と第1ショルダー陸60の間に形成された第2クオーター陸70と、第2ショルダー領域80とを有する。第1ショルダー陸60は、トレッド10のタイヤ軸方向一端側に形成され、第2ショルダー領域80は、トレッド10のタイヤ軸方向他端側に形成されている。
トレッド10は、さらに、溝状の窪み55と、第1ショルダー陸60と第2クオーター陸70を分断する副溝75とを有する。窪み55は、センター陸40と第1クオーター陸50の間に形成され、堀のようにセンター陸40の三方を囲んでいる。また、窪み55は、センター陸40と、第2ショルダー領域80とを分断する主溝20につながって平面視略U字に形成されている。副溝75は、トレッド10のタイヤ軸方向中央側から接地端E1側に向かって延び、平面視略U字に形成されている。
空気入りタイヤ1は、例えば、車両に対する装着方向が指定されたタイヤである。トレッド10は、タイヤ赤道CL(図2参照)に対して左右非対称のトレッドパターンを有し、空気入りタイヤ1は、車両の右側と左側とで車両に装着する向きが反対になる。赤道CLとは、トレッド10のタイヤ軸方向の丁度中央を通るタイヤ周方向に沿った線を意味する。空気入りタイヤ1は、第1ショルダー陸60が車両内側に位置するように車両に装着されることが好ましい。本明細書では、説明の便宜上「左右」の用語を使用するが、この左右とは、タイヤが車両に装着された状態で車両の進行方向に向かって左右を意味する。
空気入りタイヤ1は、タイヤ軸方向外側に膨らんだ一対のサイドウォール11と、一対のビード12とを備える。ビード12は、ホイールのリムに固定される部分であって、ビードコア17とビードフィラー18を有する。サイドウォール11とビード12は、タイヤ周方向に沿って環状に形成され、空気入りタイヤ1の側面を構成している。サイドウォール11は、トレッド10のタイヤ軸方向両端からタイヤ径方向に延びている。
空気入りタイヤ1には、トレッド10の接地端E1,E2と、サイドウォール11のタイヤ軸方向外側に最も張り出した部分との間に、サイドリブ13が形成されていてもよい。接地端E1は第1ショルダー陸60側の接地端、接地端E2は第2ショルダー領域80側の接地端である。サイドリブ13は、タイヤ軸方向外側に向かって突出し、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。空気入りタイヤ1の接地端E1,E2、又はその近傍から左右のサイドリブ13までの部分は、ショルダー又はバットレス領域とも呼ばれる。
トレッド10とサイドウォール11は、一般的に、異なる種類のゴムで構成されている。ショルダーは、トレッド10と同じゴムで構成されていてもよく、異なるゴムで構成されていてもよい。本明細書において、接地端E1,E2は、未使用の空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧となるように空気を充填した状態で所定の荷重を加えたときに平坦な路面に接地する領域のタイヤ軸方向両端と定義される。乗用車用タイヤの場合、所定の荷重は正規荷重の88%に相当する荷重である。
ここで、「正規リム」とは、タイヤ規格により定められたリムであって、JATMAであれば「標準リム」、TRAおよびETRTOであれば「Measuring Rim」である。「正規内圧」は、JATMAであれば「最高空気圧」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。正規内圧は、乗用車用タイヤの場合は通常180kPaとするが、Extra Load、又はReinforcedと記載されたタイヤの場合は220kPaとする。「正規荷重」は、JATMAであれば「最大負荷能力」、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」である。レーシングカート用タイヤの場合、正規荷重は392Nである。
空気入りタイヤ1は、カーカス14、ベルト15、およびインナーライナー16を備える。カーカス14は、ゴムで被覆されたコード層であり、荷重、衝撃、空気圧等に耐える空気入りタイヤ1の骨格を形成する。ベルト15は、トレッド10を構成するゴムとカーカス14の間に配置される補強帯である。ベルト15は、カーカス14を強く締めつけて空気入りタイヤ1の剛性を高める。インナーライナー16は、カーカス14の内周面に設けられたゴム層であって、空気入りタイヤ1の空気圧を保持する。
空気入りタイヤ1が車両に対する装着方向が指定された方向性タイヤとして使用される場合、空気入りタイヤ1は、車両に対する装着方向を示すための表示を有することが好ましい。装着方向を示す表示は、タイヤの主回転方向を示す矢印等であってもよく、その構成は特に限定されない。一般的に、空気入りタイヤ1の側面にはセリアルと呼ばれる記号が設けられているが、装着方向を示す表示としてセリアルを用いてもよい。
セリアルには、例えば、サイズコード、製造時期(製造年週)、製造場所(製造工場コード)などの情報が含まれる。車両の外側を向く空気入りタイヤ1の側面(サイドウォール11)のみにセリアルを設ける、或いは車両の外側を向く側面と内側を向く側面とで異なるセリアルを設けることで、車両に対する空気入りタイヤ1の装着方向を特定してもよい。具体例としては、空気入りタイヤ1の両側面に製造工場コードおよびサイズコードを設け、車両の外側を向く側面のみに製造年週を設けることが挙げられる。
以下、図2を参照しながら、空気入りタイヤ1のトレッドパターンについて詳説する。図2は、空気入りタイヤ1(トレッド10)の平面図である。図2では、各陸の上面にドットハッチングを付している。陸の上面とは、プロファイル面α(図4等参照)に沿った面であって、接地端E1からE2の範囲が路面に接地する接地面となる。プロファイル面αは、トレッド10の外周面に沿った面である。
図2に示すように、トレッド10は、タイヤ周方向に延びる2本の主溝20,30と、センター陸40の三方を囲む溝状の窪み55と、第1ショルダー陸60の三方を囲む副溝75と、各溝により区画された複数の陸とを有する。陸は、タイヤ径方向外側に向かって突出した部分であって、一般的に、タイヤ周方向に連続した形状のものが「リブ」、タイヤ周方向に連続せず溝により分断された形状のものが「ブロック」と呼ばれる。トレッド10は、陸として、センター陸40、第1クオーター陸50、第1ショルダー陸60、第2クオーター陸70、および第2ショルダー領域80を構成する複数の陸を有する。
主溝20は、センター陸40と接地端E2側の第2ショルダー領域80との間に形成され、タイヤ周方向に沿って略真っ直ぐに延びている。本実施形態では、赤道CL上において、センター陸40と第1クオーター陸50が窪み55を介してタイヤ周方向に交互に配置されている。トレッド10には、センター陸40および第1クオーター陸50と、第2ショルダー領域80とを分断するように、主溝20が形成されている。
主溝30は、センター陸40と接地端E1側の第1ショルダー陸60の間に形成され、タイヤ軸方向に繰り返し屈曲しながらタイヤ周方向に延びている。本実施形態では、センター陸40と第1ショルダー陸60の間に、第1クオーター陸50と第2クオーター陸70が介在している。第1クオーター陸50と第2クオーター陸70は、タイヤ周方向に連続したリブであって、センター陸40と第1ショルダー陸60を避けるようにタイヤ軸方向に屈曲しながらタイヤ周方向に延びている。トレッド10には、第1クオーター陸50と第2クオーター陸70を分断するように、主溝30が形成されている。
本実施形態において、センター陸40は、タイヤ周方向に連続していない平面視台形のブロックとして形成され、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。同様に、第1ショルダー陸60は、平面視台形のブロックであって、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。なお、センター陸40と第1ショルダー陸60は、第2ショルダー領域80を構成する後述の第1陸81のように、平面視台形を有する部分を含むリブであってもよい。
主溝20は、溝底に所定の間隔で形成された複数の細溝21を含む部分である第1部分23と、複数の細溝21が存在しない部分であって、タイヤ周方向に第1部分23と交互に配置された第2部分24とを含む。溝底に所定の間隔で複数形成された細溝21は、車両走行時においてタイヤから発生する騒音を低減する機能を有する。主溝20の第1部分23をタイヤ周方向に間隔をあけて配置することにより、騒音低減効果がより顕著になる。また、複数の細溝21は、陰影を際立たせてデザイン性を向上させ、ゴムの使用量削減にも寄与する。
主溝30には、主溝20と同様に、溝底に所定の間隔で形成された複数の細溝31を含む部分である第1部分33と、複数の細溝31が存在しない第2部分34とが設けられている。主溝30は、第1部分33と第2部分34がタイヤ周方向に交互に配置されて構成されている。第1部分33は、タイヤ騒音の低減、デザイン性の向上、ゴム使用量の削減等に寄与する。本実施形態では、主溝20の第1部分23と主溝30の第1部分33が、タイヤ軸方向に並んで配置されている。この場合、例えば、騒音低減効果がより顕著になり、またまとまりのあるデザインとなり洗練された印象を与える。
トレッド10には、接地端E1側から順に、第1ショルダー陸60、第2クオーター陸70、第1クオーター陸50、センター陸40、および第2ショルダー領域80が形成されている。上述のように、センター陸40と第1ショルダー陸60は、タイヤ周方向に連続しておらず、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。第1クオーター陸50と第2クオーター陸70は、タイヤ周方向に連続したリブであって、タイヤ周方向に沿って環状に形成されている。
センター陸40と第1ショルダー陸60は、平面視台形の陸であって、それぞれタイヤ周方向に一列に並んで配置されている。第1ショルダー陸60は、トレッド10の接地端E1側において、タイヤ周方向にセンター陸40と交互に並ぶように形成される。センター陸40の一部と第1ショルダー陸60の一部はタイヤ周方向に重なり、センター陸40と第1ショルダー陸60の間を、第1クオーター陸50、第2クオーター陸70、および主溝30がジグザグ状に曲がって形成されている。
センター陸40と第1ショルダー陸60は、台形の底辺である短辺および長辺がタイヤ周方向に沿うように配置されている。即ち、各陸の台形の斜辺は、タイヤ周方向および軸方向に傾斜している。このように、台形の陸を整列配置することで、安定したトラクション性能が発揮される。なお、台形の短辺、長辺はそれぞれ、上底、下底とも呼ばれる。また、センター陸40と第1ショルダー陸60は、各台形の短辺が主溝30側に配置されている。この場合、タイヤ周方向に沿って、センター陸40と第1ショルダー陸60を規則的に配置することが容易になる。
センター陸40は、第1ショルダー陸60と同じ大きさであってもよく、第1ショルダー陸60より大きくてもよいが、本実施形態では、第1ショルダー陸60よりやや小さく形成されている。詳しくは後述するが、センター陸40の台形の短辺、長辺、および斜辺に沿って、第1の斜面41、第2の斜面42、第3の斜面43,44がそれぞれ形成されている。同様に、第1ショルダー陸60の台形の短辺に沿って斜面61が形成されている。
センター陸40は、溝状の窪み55と主溝20に囲まれている。窪み55は、斜面41,43,44に沿って平面視略U字に形成され、斜面42に沿って延びる主溝20と共にセンター陸40の周りを囲んでいる。なお、センター陸40の各斜面は、窪み55および主溝20の溝壁および溝底の一部を構成している。窪み55の外側には、センター陸40と共に窪み55を挟むように第1クオーター陸50が形成されている。
第1クオーター陸50は、接地端E1の方向に凸となるように窪み55に沿って形成された第1ゾーン51と、タイヤ周方向に真っ直ぐに延びた第2ゾーン52とを含み、第1ゾーン51と第2ゾーン52が交互に繰り返された形状を有する。主溝30は第1クオーター陸50に沿って形成され、主溝30を隔てて第1クオーター陸50と対向するように第2クオーター陸70が形成されている。
第2クオーター陸70は、第1クオーター陸50と同様に、接地端E1の方向に凸となるように形成された第1ゾーン71と、タイヤ周方向に真っ直ぐに延びた第2ゾーン72とを含む。第1ゾーン71は、タイヤ周方向に隣り合う第1ショルダー陸60の間に入り込み、接地端E1を超える位置にわたって形成されている。
トレッド10には、第1ショルダー陸60の台形の短辺および斜辺に沿って、台形の三方を囲むように副溝75が形成されている。副溝75は、平面視略U字に形成され、第1ショルダー陸60と第2クオーター陸70を分断している。副溝75は、トレッド10の赤道CL側から軸方向外側に延び、接地端E1を超える位置にわたって形成されている。換言すると、接地端E1と、接地端E1につながった副溝75とにより、第1ショルダー陸60の台形が形成されている。
第2ショルダー領域80は、トレッド10の接地端E2を含むタイヤ軸方向端領域R2において、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成された平面視台形の部分を含む第1陸81と、タイヤ周方向に第1陸81と交互に並ぶように形成された平面視台形の部分を含む第2陸82とを有する。第1陸81および第2陸82の台形部分は、各々の短辺がタイヤ軸方向において互いに反対方向を向くように配置されている。また、トレッド10のタイヤ軸方向端領域R2には、第2陸82の三方を囲むように第1の溝である副溝85が形成されている。かかる構成を採用することにより、放熱性が効果的に改善され、車両走行時におけるタイヤの温度上昇が抑制される。
トレッド10のタイヤ軸方向端領域R2には、第1陸81および第2陸82よりもタイヤ軸方向外側に、タイヤ周方向に延びる第2の溝である副溝86が形成されている。副溝86を設けることにより、発熱抑制効果がより顕著になる。そして、副溝86を隔てて第1陸81とタイヤ軸方向に並ぶ第3陸83が形成されている。第3陸83は、タイヤ周方向に延びる細長いブロックであって、第3陸83の上面が接地端E2となる。
本実施形態では、タイヤ周方向に隣り合う第1陸81の第1部分81aが、副溝85,86の間に形成された第2部分81bを介して連結されている。第1部分81aは、平面視台形を有する。第2部分81bは、タイヤ周方向に延びる細長い形状を有し、2つの第1部分81aを連結することで第2ショルダー領域80の剛性を高めている。詳しくは後述するが、副溝85は、主溝20および副溝86につながらない平面視略U字の溝であり、タイヤ周方向に独立して複数形成されている。
以下、図2に加えて、図3~図10を適宜参照しながら、トレッドパターンの各構成要素について、さらに詳説する。図3、図6、および図7は、それぞれ、図2中のAA線断面、BB線断面、CC線断面の一部を示す図である。図4は図3中のF1部分拡大図、図5は図3中のF2部分拡大図である。図8は、第2ショルダー領域80の平面図である。図9は図8中のDD線断面図、図10は図8中のEE線断面図である。
[主溝20,30]
図2に示すように、主溝20,30は、赤道CLの両側にそれぞれ形成され、赤道CLと交差することなくタイヤ周方向に延びている。また、主溝20,30は、トレッド10のタイヤ軸方向中央に配置されたセンター陸40と第1クオーター陸50を左右両側から挟むように形成されている。上述の通り、主溝20はタイヤ周方向に沿って略真っ直ぐに形成され、主溝30はタイヤ周方向にジグザグ状に屈曲しながら延びている。主溝20,30の深さは、タイヤ周方向に沿って一定ではなく、例えば、深さが浅い部分と深い部分が規則的に繰り返されている。主溝20,30の最深地点は、窪み55および副溝75の最深地点より深くなっている。
図2に示すように、主溝20,30は、赤道CLの両側にそれぞれ形成され、赤道CLと交差することなくタイヤ周方向に延びている。また、主溝20,30は、トレッド10のタイヤ軸方向中央に配置されたセンター陸40と第1クオーター陸50を左右両側から挟むように形成されている。上述の通り、主溝20はタイヤ周方向に沿って略真っ直ぐに形成され、主溝30はタイヤ周方向にジグザグ状に屈曲しながら延びている。主溝20,30の深さは、タイヤ周方向に沿って一定ではなく、例えば、深さが浅い部分と深い部分が規則的に繰り返されている。主溝20,30の最深地点は、窪み55および副溝75の最深地点より深くなっている。
主溝20は、複数の細溝21が溝底に形成され、タイヤ騒音の低減機能を有する第1部分23において、第2部分24よりもやや幅広に形成されている。第1部分23は、複数の細溝21が形成された第1領域25aと、第1領域25aに向かって次第に深くなるように傾斜した第2領域25bとを含む。第1領域25aは、第2ショルダー領域80に隣接して形成され、第2領域25bは、第1領域25aの赤道CL側に隣接して形成されている。第1領域25aは、主溝20に沿って長くなった平面視台形に形成され、台形の底辺はタイヤ周方向と平行で、短辺が赤道CL側を向いている。トレッド10のプロファイル面αに対する第2領域25bの傾斜角度は、例えば、30°~70°である。
主溝20の各第1部分23は、第1クオーター陸50の第2ゾーン52に隣接し、各第2部分24は、センター陸40に隣接している。即ち、主溝20における第1部分23と第2部分24は、トレッド10のタイヤ軸方向中央の陸と同じ繰り返し単位長さ(ピッチ)で、タイヤ周方向に沿って形成されている。主溝30の第1部分33と第2部分34についても同様に、トレッド10のタイヤ軸方向中央の陸と同じピッチで形成されている。
主溝30は、複数の細溝31が溝底に形成された第1部分33において、第2部分34よりも幅広に形成されている。複数の細溝31は主溝30の全幅にわたって形成され、第1部分33は、全体として平面視台形に形成されている。第1部分33の台形は、底辺がタイヤ周方向と平行で、短辺が赤道CL側を向いている。第2部分34は、第1クオーター陸50の第1ゾーン51に沿って延びた幅が細い溝部分であって、接地端E1側に向かって凸となるように平面視略U字に形成されている。
複数の細溝21,31は、例えば、互いに異なる溝幅で、異なる向きにランダムなパターンで形成されていてもよいが、安定した騒音低減効果を発揮し、デザイン性を高めるためには、ある程度規則的に形成されることが好ましい。細溝21,31は、タイヤ軸方向および周方向に対して交差する方向に延びていてもよいが、本実施形態では、タイヤ軸方向又は周方向に沿って形成されている。空気入りタイヤ1から発生する騒音は、ロードノイズとパターンノイズに大別される。細溝21,31は、パターンノイズの周波数帯をずらすことで、タイヤから発生する騒音を低減する。
複数の細溝21は、例えば、互いに平行に形成され、第1部分23には、細溝21と、複数の細溝21に挟まれた部分であるリブ22とが、交互に繰り返されて溝底の凹凸構造が形成されている(細溝31についても同様)。細溝21,31は、第1部分23,33のタイヤ周方向中央においてタイヤ軸方向に延び、第1部分23,33のタイヤ周方向両端においてタイヤ周方向に延びている。この場合、パターンノイズの周波数帯をより効果的にずらすことができ、騒音低減効果がより顕著になる。また、デザイン面でも斬新で洗練された印象を与える。なお、細溝21,31は、途中で屈曲し、タイヤ周方向に延びる部分と、タイヤ軸方向に延びる部分とを有していてもよい。
図3~図5に示すように、主溝20の第2部分24と主溝30の第2部分34は、センター陸40、窪み55、および第1クオーター陸50を隔ててタイヤ軸方向に並んで配置されている。主溝20の第2部分24には、接地端E2側に向かって次第に深くなるように傾斜した斜面26と、第2ショルダー領域80に沿うように延びる側溝27とが形成されている。側溝27は、タイヤ周方向に真っ直ぐに延び、主溝30の第2部分34と同様に、細い幅で深く形成されている。本実施形態では、側溝27の底、および細溝21の底が同じ深さに形成され、主溝20の最深部分となっている。また、主溝30の細溝31の底、および第2部分34の底が同じ深さに形成され、主溝30の最深部分となっている。
第2部分24の溝の深さは、センター陸40側から第2ショルダー領域80側に向かって次第に深くなっている。第2部分24の溝壁を形成するセンター陸40の斜面42は、プロファイル面αに対して角度θ2で傾斜している。斜面26は、斜面42の下端から側溝27にわたって、第2部分24の幅の50%を超える幅で形成されている。斜面26は、プロファイル面αに平行な面βに対して角度θ5で傾斜している。角度θ5は、角度θ2よりも小さく、斜面26は斜面42と比べて傾斜が緩やかな斜面となっている。
図7に示すように、主溝20の第1部分23と主溝30の第1部分33は、第1クオーター陸50の第2ゾーン52を隔ててタイヤ軸方向に並んで配置されている。第1部分23,33において、細溝21,31は同じ深さで形成され、リブ22,32は同じ高さで形成されている。以下、第1部分23を例に挙げて、溝底凹凸形状の構成について補足説明する。
細溝21の深さの一例は、0.5mm~2mmである。なお、細溝21の深さは、言い換えると、細溝21の底からのリブ22の高さである。リブ22の上面は、例えば、主溝20の第2部分24の斜面26と同程度の深さに形成されており、主溝20の第1の溝底といえる。リブ22の上面は、第2領域25bと同様に傾斜していてもよいが、本実施形態では、プロファイル面αと平行に形成されている。細溝21の底は、第2部分24の側溝27の底と同程度の深さであり、第2の溝底といえる。即ち、主溝20は、少なくとも2段の深さで形成されている。
複数の細溝21の幅は、互いに異なっていてもよいが、本実施形態では、各細溝21が同じ幅Wで形成されている。細溝21の幅の一例は、0.1mm~0.5mmである。リブ22の幅は、細溝21の幅W以下であってもよいが、本実施形態では、細溝21の幅Wより大きくなっている。デザイン面、陸の耐久性等の観点から、溝底凹凸構造の好適な一例としては、細溝21の間隔が均一(リブ22の幅が一定)で、リブ22の幅が細溝21の幅より大きくなった構造が挙げられる。複数の細溝21は、主溝20の側壁から、少なくとも溝幅の10%に相当する間隔をあけて形成されていてもよい。この場合、陸からリブ22に伝わる荷重が低減され、溝底凹凸形状の安定性が向上する。
なお、トレッド10には、摩耗インジケータ(図示せず)が設けられている。摩耗インジケータは、主溝20,30の少なくとも一方の溝底に配置された突起であって、トレッドゴムの摩耗レベルを確認するための指標である。リブ22,32の高さは、摩耗インジケータの高さ以下であることが好ましく、摩耗インジケータの高さと同等であることが特に好ましい。この場合、トレッドゴムが摩耗インジケータの高さレベルまで摩耗しても、騒音低減機能、即ち溝底の凹凸構造を確保できる。
[センター陸40]
図2に示すように、センター陸40は、トレッド10のタイヤ軸方向中央に形成された平面視台形のブロックであって、台形の各辺に沿って斜面を有している。センター陸40は、上面(接地面)が台形であればよい。台形には、実質的に台形と認められるものが含まれ、例えば、角が面取りされて丸みを帯びた略台形であってもよい。センター陸40は、台形の短辺が接地端E1側を向き、長辺が接地端E2側を向いて、短辺と長辺がタイヤ周方向に平行な状態で配置されている。センター陸40の台形の長辺は、短辺よりも赤道CL寄りに位置している。
図2に示すように、センター陸40は、トレッド10のタイヤ軸方向中央に形成された平面視台形のブロックであって、台形の各辺に沿って斜面を有している。センター陸40は、上面(接地面)が台形であればよい。台形には、実質的に台形と認められるものが含まれ、例えば、角が面取りされて丸みを帯びた略台形であってもよい。センター陸40は、台形の短辺が接地端E1側を向き、長辺が接地端E2側を向いて、短辺と長辺がタイヤ周方向に平行な状態で配置されている。センター陸40の台形の長辺は、短辺よりも赤道CL寄りに位置している。
センター陸40の台形の斜辺は、タイヤ周方向および軸方向に対して傾斜している。台形の2つの斜辺は、タイヤ軸方向に対し、接地端E1側から接地端E2側に向かって互いに離れるように傾斜しているが、例えば、タイヤ軸方向に対する各斜辺の傾斜角度は同じであり、また各斜辺の長さも同じである。センター陸40のタイヤ周方向両端には、台形の斜辺に沿った第3の斜面43,44が形成されている。斜面43,44は、互いに同じ大きさで形成されている。
センター陸40は、上述の通り、タイヤ周方向に一列に並んで等間隔で配置されている。ここで、等間隔には、完全な等間隔だけでなく、実質的に等間隔と認められる場合が含まれる。センター陸40を等間隔で配置することにより、安定したトラクション性能を確保できる。タイヤ周方向に隣り合うセンター陸40の間隔(第1のセンター陸40の斜面43と、第2のセンター陸40の斜面44との最短距離)は、例えば、センター陸40の台形の短辺の長さより長く、台形の長辺の長さより短い。タイヤ周方向に沿ったセンター陸40の個数の一例は、20個~30個である。
図4~図6に示すように、トレッド10の外周面に沿ったプロファイル面αに対する各斜面の傾斜角度は、第3の斜面43,44、第1の斜面41、第2の斜面42の順で次第に大きくなっている(θ3,θ4<θ1<θ2)。プロファイル面αに対する斜面43,44の傾斜角度θ3,θ4は、互いに異なっていてもよいが、本実施形態では同じである。即ち、タイヤ周方向に向いた斜面43,44は傾斜が緩やかで、タイヤ軸方向に向いた斜面41,42は傾斜がきつくなっている。この場合、良好な乗り心地性能を確保しつつ、トラクション性能を改善できる。特に、車両の外側を向く斜面42の傾斜角度θ2を大きくすることで、例えば、コーナリングパワー(CP)が向上する。
プロファイル面αに対する斜面41の傾斜角度θ1は、30°~70°が好ましく、40°~60°がより好ましい。プロファイル面αに対する斜面42の傾斜角度θ2は、60°~80°が好ましく、65°~75°がより好ましい。プロファイル面αに対する斜面43の傾斜角度θ3は、20°~50°が好ましく、25°~45°がより好ましい。センター陸40の各斜面の傾斜角度が当該範囲内であれば、良好な乗り心地性能とトラクション性能をより効果的に両立できる。
[第1クオーター陸50]
図2に示すように、第1クオーター陸50は、窪み55を隔ててセンター陸40の三方を囲むように形成され、主溝30に沿ってタイヤ周方向に連続している。第1クオーター陸50の第1ゾーン51は、一定の幅を有する細い帯状に形成され、窪み55を隔ててセンター陸40の台形の短辺と2つの斜辺に沿うように延びている。そして、第1ゾーン51は、接地端E1側に向かって凸となるように平面視略U字に形成されている。第1クオーター陸50の第2ゾーン52は、各センター陸40の間でタイヤ周方向に沿って延び、2つの第1ゾーン51を連結している。
図2に示すように、第1クオーター陸50は、窪み55を隔ててセンター陸40の三方を囲むように形成され、主溝30に沿ってタイヤ周方向に連続している。第1クオーター陸50の第1ゾーン51は、一定の幅を有する細い帯状に形成され、窪み55を隔ててセンター陸40の台形の短辺と2つの斜辺に沿うように延びている。そして、第1ゾーン51は、接地端E1側に向かって凸となるように平面視略U字に形成されている。第1クオーター陸50の第2ゾーン52は、各センター陸40の間でタイヤ周方向に沿って延び、2つの第1ゾーン51を連結している。
第1クオーター陸50の高さは、センター陸40の高さ以下であり、かつ摩耗インジケータの高さより高いことが好ましい。本明細書において、陸の高さとは、主溝20,30の最深部分に沿ったトレッド10の基準面から陸上面までの最短距離を意味する(摩耗インジケータについても同様)。本実施形態では、第1クオーター陸50がセンター陸40と同じ高さで形成され、第1クオーター陸50の上面は、路面に接する接地面となっている。
図3および図4に示すように、第1クオーター陸50の第1ゾーン51は、主溝30と窪み55によって挟まれている。主溝30と窪み55の間に第1クオーター陸50を設けることにより、良好な排水性を確保しつつ、トレッド10の陸剛性を全体として高めることができる。また、接地面積が大きくなり、例えば、トラクション性能、制動性能等が向上する。第1ゾーン51の幅は、特に限定されないが、本実施形態では、窪み55の幅より細く、主溝30の第2部分34の幅より太くなっている。
図6に示すように、トレッド10の赤道CL上には、タイヤ周方向に沿って、センター陸40と第1クオーター陸50の第2ゾーン52が、窪み55を隔てて交互に配置されている。センター陸40のタイヤ周方向に沿った長さは、主溝20側で長く、主溝30側で短いが、第2ゾーン52のタイヤ周方向に沿った長さは、主溝20側で短く、主溝30側で長い。赤道CL上において、センター陸40のタイヤ周方向に沿った長さは、第2ゾーン52のタイヤ周方向に沿った長さより長くなっている。
図7に示すように、第1クオーター陸50の第2ゾーン52は、主溝20,30の幅が広くなった第1部分23,33によりタイヤ軸方向両側から挟まれている。なお、第1部分23,33において、主溝20,30同士の間隔が最小となっている。第2ゾーン52は、第1部分23,33よりも幅広に形成されている。この場合、2本の主溝の幅が広がって接近した部分において、トレッド10の陸の剛性を高くし、陸の耐久性を効果的に改善できる。さらに、第1部分23,33に形成されたリブ22,32によって第2ゾーン52が補強される。
[窪み55]
図2に示すように、窪み55は、センター陸40の台形の短辺および斜辺に沿って溝状に延び、平面視略U字に形成されている。窪み55は、接地端E2側の両端が主溝20に連通しており、センター陸40の周囲の雨水等を主溝20に流すことができる。窪み55は、センター陸40の台形の短辺に沿った部分よりも、斜面に沿った部分で幅広に形成され、かつ主溝20に近づくほど、次第に幅が広がっている。この場合、トレッド10のタイヤ軸方向中央における排水性がより良好になる。
図2に示すように、窪み55は、センター陸40の台形の短辺および斜辺に沿って溝状に延び、平面視略U字に形成されている。窪み55は、接地端E2側の両端が主溝20に連通しており、センター陸40の周囲の雨水等を主溝20に流すことができる。窪み55は、センター陸40の台形の短辺に沿った部分よりも、斜面に沿った部分で幅広に形成され、かつ主溝20に近づくほど、次第に幅が広がっている。この場合、トレッド10のタイヤ軸方向中央における排水性がより良好になる。
窪み55は、主溝20から接地端E1側に延び、タイヤ周方向に副溝75と重なる位置にわたって形成されている。副溝75は、トレッド10のタイヤ軸方向一端において、タイヤ周方向に間隔をあけて形成され、窪み55は、タイヤ周方向に隣り合う副溝75の間に入り込むように形成されている。タイヤ周方向に窪み55と副溝75が重なるように配置することで、排水性をより効果的に高めることができる。
図3、図4、および図6に示すように、窪み55の深さは、主溝20,30よりも浅く、主溝20に近づくほど、次第に深くなっている。この場合、センター陸40および第1クオーター陸50の耐久性を確保しつつ、排水性を向上させることができる。また、窪み55の幅方向の深さは、センター陸40の台形の斜面に沿って次第に深くなり、斜面の下端で最も深くなっている。窪み55は、最も浅い部分において、摩耗インジケータの上面より深く形成されていることが好ましい。
[第1ショルダー陸60]
図2に示すように、第1ショルダー陸60は、トレッド10のタイヤ軸方向一端に形成された平面視台形の陸であって、少なくとも短辺に沿って斜面61を有している。空気入りタイヤ1は、第1ショルダー陸60が車両内側に位置するように、車両に装着されることが好適である。第1ショルダー陸60は、接地面が実質的に台形と認められる形状を有していればよい。第1ショルダー陸60の台形の短辺、斜辺は副溝75により形成され、接地端E1が台形の長辺となっている。
図2に示すように、第1ショルダー陸60は、トレッド10のタイヤ軸方向一端に形成された平面視台形の陸であって、少なくとも短辺に沿って斜面61を有している。空気入りタイヤ1は、第1ショルダー陸60が車両内側に位置するように、車両に装着されることが好適である。第1ショルダー陸60は、接地面が実質的に台形と認められる形状を有していればよい。第1ショルダー陸60の台形の短辺、斜辺は副溝75により形成され、接地端E1が台形の長辺となっている。
第1ショルダー陸60は、台形の短辺が赤道CL側を向いて、短辺と長辺がタイヤ周方向に平行な状態で配置されている。第1ショルダー陸60の台形の斜辺は、センター陸40の場合と同様に、タイヤ周方向および軸方向に対して傾斜している。台形の2つの斜辺は、タイヤ軸方向に対し、赤道CL側から接地端E1側に向かって互いに離れるように傾斜しているが、例えば、タイヤ軸方向に対する各斜辺の傾斜角度は同じであり、また各斜辺の長さも同じである。なお、第1ショルダー陸60の台形の斜辺に沿って、斜面が形成されていてもよい。
第1ショルダー陸60は、タイヤ周方向に隣り合うセンター陸40の間に入り込み、タイヤ周方向にセンター陸40と重なる位置にわたって形成されている。この場合、トレッド10の全体として陸剛性を高めることができ、安定した陸耐久性、トラクション性能を実現できる。第1ショルダー陸60の接地面積は、例えば、センター陸40の接地面積より大きく、1.1倍~1.5倍であってもよい。第1ショルダー陸60は、タイヤ周方向にセンター陸40と同じピッチで同数形成されている。
図7に示すように、第1ショルダー陸60の台形の短辺に沿った斜面61は、主溝20,30のリブ22,32と同等、又はそれ以上の深さまで形成されていてもよい。斜面61は、副溝75の溝壁および溝底を形成し、副溝75の深さは斜面61の下端で最も深くなっている。プロファイル面αに対する斜面61の傾斜角度は、主溝20の第2領域25bの傾斜角度より大きく、センター陸40の斜面42の傾斜角度θ2より小さくてもよい。車両の外側を向く斜面61の傾斜角度を大きくすることで、例えば、CP特性が向上する。
[第2クオーター陸70]
図2に示すように、第2クオーター陸70は、副溝75を隔てて第1ショルダー陸60の三方を囲むように形成されている。また、第1クオーター陸50と同様に、主溝30に沿って形成され、タイヤ周方向に連続している。第2クオーター陸70の第1ゾーン71は、赤道CL側から接地端E1側に延びてタイヤ周方向に隣り合う第1ショルダー陸60の間に入り込み、接地端E1を超える位置にわたって形成されている。第2クオーター陸70の第2ゾーン72は、各センター陸40の間でタイヤ周方向に沿って延び、2つの第1ゾーン71を連結している。
図2に示すように、第2クオーター陸70は、副溝75を隔てて第1ショルダー陸60の三方を囲むように形成されている。また、第1クオーター陸50と同様に、主溝30に沿って形成され、タイヤ周方向に連続している。第2クオーター陸70の第1ゾーン71は、赤道CL側から接地端E1側に延びてタイヤ周方向に隣り合う第1ショルダー陸60の間に入り込み、接地端E1を超える位置にわたって形成されている。第2クオーター陸70の第2ゾーン72は、各センター陸40の間でタイヤ周方向に沿って延び、2つの第1ゾーン71を連結している。
第2クオーター陸70の高さは、センター陸40、第1ショルダー陸60等と同じ高さで形成され、第2クオーター陸70の上面は、路面に接地する接地面となっている。第2クオーター陸70の第1ゾーン71は、接地端E1側から赤道CL側に向かってタイヤ周方向長さが次第に長くなるように拡大した第1の部分と、第1の部分から主溝30に沿って二股に分かれた第2の部分とを含む。
図7に示すように、第2クオーター陸70の第2ゾーン72は、主溝30の第1部分33と副溝75により挟まれた部分であって、第1クオーター陸50の第2ゾーン52と平行に形成されている。第2ゾーン72の幅は、例えば、副溝75の幅と同等であり、第1部分33の幅より細くなっている。本実施形態では、第1部分33のリブ32により第2ゾーン52,72が連結された構造となっている。また、副溝75の溝壁および溝底を形成する第2ゾーン72の側壁は、第1ショルダー陸60に向かって緩やかに傾斜している。このため、溝幅が広くなった部分においても、陸の高い耐久性を確保できる。
[副溝75]
図2に示すように、副溝75は、第1ショルダー陸60の台形の短辺および斜辺に沿って延び、平面視略U字に形成されている。副溝75は、台形の短辺と第2クオーター陸70との間において、他の部分よりも幅広に形成されている。副溝75は、タイヤ周方向に等間隔で形成され、タイヤ周方向につながっておらず、主溝30にもつながっていない。また、副溝75は、トレッド10のタイヤ軸方向中央から接地端E1を超える位置にわたって延び、当該中央から雨水等を容易に排水できる。この場合、高い陸の剛性を確保しつつ、良好な排水性を実現できる。
図2に示すように、副溝75は、第1ショルダー陸60の台形の短辺および斜辺に沿って延び、平面視略U字に形成されている。副溝75は、台形の短辺と第2クオーター陸70との間において、他の部分よりも幅広に形成されている。副溝75は、タイヤ周方向に等間隔で形成され、タイヤ周方向につながっておらず、主溝30にもつながっていない。また、副溝75は、トレッド10のタイヤ軸方向中央から接地端E1を超える位置にわたって延び、当該中央から雨水等を容易に排水できる。この場合、高い陸の剛性を確保しつつ、良好な排水性を実現できる。
本実施形態では、上述のように、窪み55の一部と副溝75の一部がタイヤ周方向に重なり、窪み55と副溝75がタイヤ周方向に交互に並ぶように形成されている。即ち、窪み55と副溝75は、センター陸40と第1ショルダー陸60の配置と同様に、タイヤ周方向に沿って千鳥状に配置されている。また、窪み55と副溝75の間には、第1クオーター陸50と第1ショルダー陸60を介して主溝30が形成されている。これにより、高い陸の剛性と良好な排水性の両立が容易になる。
図7に示すように、副溝75の幅が広くなった部分、即ち第1ショルダー陸60の台形の短辺と第2クオーター陸70との間に位置する部分には、副溝75の幅方向両側から溝底に向かって斜面が形成されている。当該斜面は、第1ショルダー陸60の短辺に沿って形成された斜面61、および第2クオーター陸70の第2ゾーン72の傾斜した側壁である。斜面61は、第2ゾーン72の側壁よりも、プロファイル面αに対する傾斜角度が大きくなっている。
[第2ショルダー領域80]
図2に示すように、第2ショルダー領域80は、互いに形状が異なる複数の陸から構成され、トレッド10のタイヤ軸方向端領域R2に形成されている。タイヤ軸方向端領域R2は、接地端E2を含む領域であって、例えば、接地端E1からE2までの範囲をタイヤ軸方向に三等分した場合に、接地端E2を含む1/3の領域を意味する。即ち、接地端E2から接地幅の1/3の領域に第2ショルダー領域80が形成されている。第2ショルダー領域80は、主溝20に隣接する位置から接地端E2を超える位置にわたって形成されていてもよい。
図2に示すように、第2ショルダー領域80は、互いに形状が異なる複数の陸から構成され、トレッド10のタイヤ軸方向端領域R2に形成されている。タイヤ軸方向端領域R2は、接地端E2を含む領域であって、例えば、接地端E1からE2までの範囲をタイヤ軸方向に三等分した場合に、接地端E2を含む1/3の領域を意味する。即ち、接地端E2から接地幅の1/3の領域に第2ショルダー領域80が形成されている。第2ショルダー領域80は、主溝20に隣接する位置から接地端E2を超える位置にわたって形成されていてもよい。
トレッド10は、上述のように、赤道CL上において、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成された平面視台形のセンター陸40と、タイヤ周方向に延びて、センター陸40と、第2ショルダー領域80を構成する第1陸81および第2陸82とを分断する主溝20とを有する。本実施形態では、センター陸40と第2陸82が、主溝20を介して対向配置されている。センター陸40と第2陸82の各底辺の中点がタイヤ軸方向に並んでいてもよい。第2陸82は、例えば、センター陸40と同じピッチでタイヤ周方向に複数配置されている。
本実施形態において、第2陸82は、タイヤ周方向に連続していない平面視台形のブロックとして形成され、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成されている。他方、第1陸81は、平面視台形の第1部分81aと、副溝85,86の間に形成され、タイヤ周方向に隣り合う第1部分81a同士を連結する第2部分81bとを含み、全体としてタイヤ周方向に連続したリブ形状を有している。なお、第1陸81は、リブの形態に限定されず、ブロックとして形成されてもよい。
図8~図10に示すように、第2ショルダー領域80は、複数の陸として、副溝85,86により区画された第1陸81、第2陸82、第3陸83を含む。第1陸81の第1部分81aおよび第2陸82は平面視台形に形成され、第1部分81aの短辺が主溝20の方向を向き、第2陸82の短辺が接地端E2の方向を向いた状態で、タイヤ周方向に交互に配置されている。第3陸83は、副溝86を隔てて第1陸81の第1部分81aとタイヤ軸方向に並び、第1陸81の第2部分81bは、副溝85を隔てて第2陸82とタイヤ軸方向に並んでいる。
第1陸81の第1部分81aおよび第2陸82は、接地面が台形又は略台形であればよい。なお、図8に示す例において、第1部分81aは平面視略台形であるが、第1部分81aの長辺が両端近傍で短辺側に小さく屈曲し、長辺の中央部分が接地端E2の方向に小さく張り出した形状となっている。各陸の台形の底辺は、タイヤ周方向に沿って形成され、第1部分81aの短辺と第2陸82の長辺は、主溝20の縁に沿って同一直線上に形成されている。そして、各陸の台形の斜辺は、タイヤ周方向および軸方向に対して傾斜している。
本実施形態では、第1部分81aの斜辺にタイヤ周方向に延びた細長い第2部分81bがつながり、各第2陸82の間に配置された第1部分81a同士を連結している。第2部分81bは、副溝85,86に挟まれ第2陸82の短辺に沿って延びている。図8に示す例では、第1部分81aの接地端E2に近い部分に第2部分81bがつながっているが、第2部分81bはより主溝20側につながっていてもよい。或いは、第2部分81bを有さない形態とすることも可能であるが、ブロックの耐久性、放熱性等を考慮すると、第2部分81bを設けることが好ましい。
第1陸81の第1部分81aは、主溝20に向かって次第に小さくなる一方、第2陸82は、主溝20に向かって次第に大きくなっている。言い換えると、第1部分81aは接地端E2側に向かって次第に大きくなり、第2陸82は接地端E2側に向かって次第に小さくなっている。第1部分81aは、例えば、第2陸82よりも大きな面積で形成されている。即ち、トレッド10のタイヤ軸方向端領域R2には、主溝20に沿って大小の台形の陸がタイヤ周方向に交互に配置されている。
第1陸81の第1部分81aおよび第2陸82は、主溝20と隣接する部分に斜面88を有する。斜面88は、例えば、第1部分81aおよび第2陸82の接地面から主溝20の底に向かって次第に赤道CLに近づくように一定の角度で傾斜している。斜面88を形成することにより、主溝20の幅が広がって排水性が向上すると共に、ゴムの使用量を削減してタイヤの軽量化を図ることができる。また、斜面88は陸の表面積を拡大して放熱性を向上させる。プロファイル面αに対する斜面88の傾斜角度は特に限定されないが、一例としては60°~80°である。
副溝85は、第2陸82の短辺および斜辺に沿って形成され、タイヤ周方向に延びる第1の部分と、タイヤ周方向および軸方向に交差する第2の部分とを有する。また、副溝85は、斜面88において終端する溝であって、主溝20に連通していない。この場合、陸の高い耐久性を確保しつつ、第1陸81と第2陸82を形成してエッジを増やすことができ、またトレッド10の表面積を拡大して放熱性を高めることができる。副溝85は、例えば、副溝86より幅が細く、全長にわたって一定の幅で形成されている。副溝85は、幅が1mm未満のサイプであってもよい。
副溝86は、第1陸81のタイヤ軸方向外側の縁に沿って形成され、タイヤ周方向に連続している。接地端E2の近傍に副溝86を形成することにより、発熱抑制効果がより顕著になり、また排水性も向上する。副溝86は、一定の幅で形成されていてもよいが、図8に示す例では、第1陸81の第1部分81aの長辺に沿った部分が他の部分よりもやや幅広に形成されている。副溝85,86の深さは、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。本実施形態では、副溝85,86が主溝20,30と同じ深さで形成されている。
トレッド10のタイヤ軸方向端領域R2には、さらに、副溝86を隔てて第2陸82とタイヤ軸方向に並ぶ位置に斜面87が形成され、第3陸83と斜面87が、タイヤ周方向に交互に配置されている。第3陸83は、第1陸81と同様の高さを有し、その上面は路面に接地するが、斜面87は、第3陸83より低く形成され路面に接地しない。
即ち、トレッド10のタイヤ軸方向端領域R2の外縁には、タイヤ周方向に沿って、第3陸83と斜面87による凹凸構造が形成されている。言い換えると、接地端E2がタイヤ周方向に不連続となっている。この場合、タイヤの軽量化を図りつつ、発熱抑制効果をさらに向上させることができる。また、トレッド10のタイヤ軸方向中央部分の接地圧を高めることができ、良好な摩耗形態を実現し易い。
第3陸83は、上述のように、第1陸81よりもタイヤ軸方向外側に形成された細長いブロックであって、空気入りタイヤ1のショルダーに角ばった凸形状を形成する。斜面87は、空気入りタイヤ1のショルダーに平坦な斜面を形成する。空気入りタイヤ1では、左右の接地端近傍の外周面の形状が大きく異なっており、接地端E1側では緩やかな湾曲面となっているのに対し、接地端E2側では凹凸のある角ばった形状となっている。
以上のように、空気入りタイヤ1は、アグレッシブな意匠を特徴とする斬新なトレッドパターンを有し、かつ優れた放熱性を発揮して車両走行時における大幅な温度上昇を抑制する。第2ショルダー領域80は、トレッド10の表面積を拡大し、不連続な接地端E2を形成する。これにより、タイヤの軽量化を図りつつ、放熱性を効果的に改善できる。空気入りタイヤ1のトレッドパターンは、斬新で洗練されたデザインでありながら、優れた発熱抑制機能を発揮し、またタイヤの軽量化、陸の耐久性およびトラクション性能の向上に寄与する。
なお、上述の実施形態は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜設計変更できる。第1ショルダー陸60と第2ショルダー領域80を含むトレッドパターンは、陸の高い耐久性と良好なトラクション性能、そして優れた放熱性を実現し、オールシーズンタイヤに好適であるが、必要により、第2ショルダー領域80の上記構成をトレッドのタイヤ軸方向両側に適用してもよい。
また、本実施形態のトレッドパターンにおいて、センター陸40、第1クオーター陸50、第1ショルダー陸60、および第2クオーター陸70の陸構造は、上述の通り、陸の耐久性、トラクション性能等の向上にとって有用である。また、主溝20,30の構成は、騒音の低減、排水性の向上等にとって有用である。しかし、第2ショルダー領域80以外の構成を他の構成に変更して、本発明の目的を実現することは可能である。
1 空気入りタイヤ、10 トレッド、11 サイドウォール、12 ビード、13 サイドリブ、14 カーカス、15 ベルト、16 インナーライナー、17 ビードコア、18 ビードフィラー、20,30 主溝、21,31 細溝、22,32 リブ、22a 第1リブ、22b 第2リブ、23,33 第1部分、24,34 第2部分、25a 第1領域、25b 第2領域、26,41,42,43,44,61,87,88 斜面、27 側溝、40 センター陸、50 第1クオーター陸、51,71 第1ゾーン、52,72 第2ゾーン、55 窪み、60 第1ショルダー陸、70 第2クオーター陸、75,85,86 副溝、80 第2ショルダー領域、81 第1陸、81a 第1部分、81b 第2部分、82 第2陸、83 第3陸、CL 赤道、E1,E2 接地端
Claims (6)
- トレッドを備えた空気入りタイヤであって、
前記トレッドは、
前記トレッドの接地端を含むタイヤ軸方向端領域において、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成された平面視台形の部分を含む第1の陸と、
タイヤ周方向に前記第1の陸と交互に並ぶように形成された平面視台形の部分を含む第2の陸と、
を有し、
前記第1および前記第2の陸は、各々の短辺がタイヤ軸方向において互いに反対方向を向くように配置され、
前記第2の陸の三方を囲むように第1の溝が形成されている、空気入りタイヤ。 - 前記トレッドの前記タイヤ軸方向端領域には、前記第1および前記第2の陸よりもタイヤ軸方向外側に、タイヤ周方向に延びる第2の溝が形成されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドの前記タイヤ軸方向端領域には、前記第2の溝を隔てて前記第1の陸とタイヤ軸方向に並ぶ第3の陸が形成されている、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドの前記タイヤ軸方向端領域には、前記第2の溝を隔てて前記第2の陸とタイヤ軸方向に並ぶ位置に斜面が形成され、
前記第3の陸と前記斜面が、タイヤ周方向に交互に配置されている、請求項3に記載の空気入りタイヤ。 - 前記第1の陸は、平面視台形の第1の部分と、前記第1の溝と前記第2の溝の間に形成され、タイヤ周方向に隣り合う前記第1の部分を連結する第2の部分とを含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
- 前記トレッドは、
タイヤ赤道上において、タイヤ周方向に間隔をあけて複数形成された平面視台形のセンターブロックと、
タイヤ周方向に延びて、前記センターブロックと、前記第1および前記第2の陸とを分断する主溝と、
を有し、
前記第1および前記第2の陸は、前記主溝と隣接する部分に斜面を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の空気入りタイヤ。
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2022
- 2022-02-01 JP JP2022014235A patent/JP2023112439A/ja active Pending
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