JP2023111812A - 熱可塑性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】セルロースに基づく組成物でありながら熱可塑性であり、しかも製造過程で溶媒の廃棄や、含ハロゲン化物等の環境負荷物質の使用を必要としない材料及びその製造方法を提供すること。【解決手段】セルロース、並びに、単糖及び/又は二糖とヒドロキシカルボン酸との共晶混合物を含有する、熱可塑性組成物。ヒドロキシカルボン酸と単糖及び/又は二糖とを150~240℃の温度で混合する第1の工程、及び第1の工程で得られた混合物とセルロースとを150~240℃の温度で混合する第2の工程を含む、熱可塑性組成物の製造方法。並びに、セルロースと、ヒドロキシカルボン酸と単糖及び/又は二糖とを、押出機にて150~240℃の温度で混合する工程を含む、熱可塑性組成物の製造方法。共晶混合物は、好ましくは乳酸とグルコースとの混合物である。また、セルロース含有量が0.05~60.0質量%であることが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロースを基材とする熱可塑性組成物に、具体的にはセルロース、並びに、ヒドロキシカルボン酸及び糖類の共晶混合物を含有する、熱可塑性組成物に関する。
近年、地球環境の保全や石油枯渇等の問題を背景に、バイオマス由来の材料が注目を集めている。環境面からはまた、プラスチック廃棄物が問題視され、生分解性を有する熱可塑性材料の重要度が増大している。セルロースはバイオマス由来の代表的な材料の一つであり、従来から多用されて来た。特に植物由来のセルロースは、生分解性も備えるため、環境面から再び注目されつつある。昨今は、こうしたセルロースを、樹脂のような材料として新たに活用する検討が、幾つかなされ始めている。
例えば特許文献1には、パルプ等のセルロース系繊維状材料を深共晶溶媒と水の共存下で膨潤・懸濁させて水酸化ナトリウム等で処理し、濾過・洗浄後に高圧均質化して、ナノセルロース材料を製造する方法が開示されている。ここで、深共晶溶媒(Deep Eutectic Solvent)とは、水素結合ドナー性の化合物と水素結合アクセプター性の化合物とをある一定の割合で混ぜることで得られる、室温で液体の溶媒である。ドナー性化合物とアクセプター性化合物との組み合わせにより、任意の物性の溶媒を作り出すことができ、様々な組み合わせが報告されている(例えば非特許文献1)。深共晶溶媒は、一般に溶解性に優れるので、セルロース等を微分散させることができ、原料の組み合わせによってはナノセルロースファイバーのコロイド溶液のようにすることも可能である。特許文献1では、尿素/塩化コリン系の深共晶溶媒を用いている。
また、非特許文献2では、漂白したカンバパルプを、尿素/アンモニウムチオシアネート系、尿素/スルファミン酸系、又はグリセロール/塩酸アミノグアニジン系等の反応性又は非反応性の深共晶溶媒中に分散させた後、濾過・洗浄して木材ベースの繊維体を作製する技術が開示されている。非特許文献3では、おが屑をイミダゾール/塩化トリエチルアンモニウム系の深共晶溶媒中に分散させて無水琥珀酸で処理し、得られた懸濁液を濾別して乾燥して、様々な機械的特性を有するフィルムを作製する技術が開示されている。こうした技術によれば、例えば一旦廃棄された紙のようなセルロース系材料からも樹脂様の材料を製造することが可能となるため、廃棄物の低減にも貢献できる。
特表2020-518715号公報
L. Wils, et al.,Molecules,26, 6556-6575(2021) P. Li,ACTA UNIVERSITSTIS OULUENSIS,C Technica 739(2020) J. Antti Sirvio, et al.,Cellulose,28, 6881-6898(2021)
上記のように、深共晶溶媒を用いてセルロースから樹脂様の材料を得ることができるが、こうして得られる従来の材料は、いずれも熱可塑性ではなく、そのために用途が限定されるきらいがある。特許文献1、非特許文献2及び3記載の技術においても、調製されたセルロース材料はいずれも、濾別によってフィルター上にフィルムとして成形されている。そのため、作製に手間が掛かるだけでなく、深共晶溶媒の廃棄処理の問題も生じる。これら技術ではまた、深共晶溶媒としてスルファミン酸等の含硫黄強酸化合物や塩化物を使用しており、環境面からも改善の余地がある。
本発明は、上記のような問題を解決すべく、セルロースに基づく組成物でありながら熱可塑性であり、しかも製造過程で溶媒の廃棄や、含ハロゲン化物等の環境負荷物質の使用を必要としない材料及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、セルロース、並びに、単糖及び/又は二糖とヒドロキシカルボン酸との共晶混合物を含有する組成物が、樹脂様の特性を有する上に熱可塑性を示し、しかも溶媒の廃棄や環境負荷物質の使用を伴うことなく製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、以下の(1)~(11)を提供する。
(1)セルロース、並びに、単糖及び/又は二糖とヒドロキシカルボン酸との共晶混合物を含有する、熱可塑性組成物。
(2)前記共晶混合物が乳酸とグルコースとの混合物である、(1)の熱可塑性組成物。
(3)ヘミセルロース及び/又はリグニンをさらに含有し、かつ前記セルロースが植物由来セルロースである、(1)又は(2)の熱可塑性組成物。
(4)前記セルロースを0.05~60.0質量%含有する、(1)~(3)のいずれかの熱可塑性組成物。
(5)前記ヒドロキシカルボン酸:前記単糖及び/又は二糖の質量比が1:2~6:1の範囲内である、(1)~(4)のいずれかの熱可塑性組成物。
(6)無機フィラー、天然熱可塑性樹脂、合成熱可塑性樹脂、及び生分解性樹脂からなる群より選択される1以上の物質をさらに含有する、(1)~(5)のいずれかの熱可塑性組成物。
(7)ヒドロキシカルボン酸と単糖及び/又は二糖とを、150~240℃の温度で混合する第1の工程、及び
前記第1の工程で得られた混合物と前記セルロースとを、150~240℃の温度で混合する第2の工程、
を含む、熱可塑性組成物の製造方法。
(8)前記第2の工程で得られた混合物を、押出機で混練及び成形する第3の工程をさらに含む、(7)の熱可塑性組成物の製造方法。
(9)セルロースと、ヒドロキシカルボン酸と、単糖及び/又は二糖とを、押出機にて150~240℃の温度で混合する工程を含む、熱可塑性組成物の製造方法。
(10)(1)~(6)のいずれかの熱可塑性組成物からなる、熱可塑性ペレット。
(11)(1)~(6)のいずれかの熱可塑性組成物からなる、成形体。
本発明の熱可塑性組成物は、セルロースに基づく組成物でありながら熱可塑性であるため、セルロース由来の良好な機械特性を有し、かつ成形性にも優れる。そのため、各種成形体の材料として好適であり、例えば熱可塑性ペレットのような工業用材料として有用である。しかも製造過程で溶媒の廃棄や、含ハロゲン化物等の環境負荷物質の使用を必要としない利点を有する。本発明の熱可塑性組成物及びその製造方法はまた、原料とするセルロースが不純物を含む、例えばおが屑等の木屑や古紙のようなものであっても適用し得るため、廃棄物処理にも活用することができ、地球環境保全の観点からも有用である。
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
[熱可塑性組成物]
本発明は第一に、セルロース、並びに、単糖及び/又は二糖とヒドロキシカルボン酸との共晶混合物を含有する、熱可塑性組成物である。初めに、これらの成分について詳記する。なお、本明細書では単糖及び/又は二糖を纏めて、「糖類」等ということがある。
<セルロース>
本発明の熱可塑性組成物を構成するセルロースに特に制限はなく、種々の公知のものを使用することができる。例として植物等に由来する天然セルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを始めとする変性セルロース、再生セルロース等が挙げられるが、これらに限定されない。セルロースはまた、木材パルプや非木材パルプ等に限らず、精製度の低いもの、さらにはおが屑や廃棄木材、古紙等の廃棄物中に含まれるものであってもよい。
セルロースは炭水化物の一種、多糖類であり、植物繊維の主成分である。植物中では通常、ヘミセルロースやリグニンと結合又は混合した、リグノセルロースとして存在している。一般に、植物由来のセルロース繊維は、30~40分子のセルロースが束となって直径約3nm、長さ数百nmから数十μmの超極細幅で高結晶性のミクロフィブリルを形成し、これらが軟質な非結晶部を介しながらさらに束となった構造を形成している。
本発明の熱可塑性組成物を構成するセルロースは、植物由来セルロースであることが好ましい。本発明の組成物は、セルロース成分が例えば上記のようなリグノセルロースであっても、樹脂様の特性と熱可塑性とを発現する。そのため、パルプ等を精製せずに使用することもでき、古紙等の廃材を原料とすることもできる。本発明の好ましい一実施形態においては、セルロースが植物由来セルロースであり、かつヘミセルロース及び/又はリグニンをさらに含有する。
植物由来セルロースにも、特に制限はない。例として木材、竹、麻、ジュート、ケナフ、さらには麦や稲の藁、とうもろこし、綿花等の茎、サトウキビを始めとする農作物残廃物から採取したものが挙げられるが、これらに限定されない。おが屑、木片、廃棄木材、古紙、古布、打ち直した布団の綿、再生パルプ等に由来するセルロースであってもよい。熱可塑性組成物の用途にもよるが、一般に組成物の外観や機械特性、品質安定性、及び原料入手の容易性の点からは、木材由来のセルロース、特に木材パルプが好ましい。木材パルプは季節による供給量の変動が小さく、コスト面でも有利である。
所望により、植物由来セルロースからヘミセルロースやリグニンを取り除いてもよい。例えば苛性ソーダ等で化学処理してヘミセルロースとリグニンを除去し、高純度のセルロースとした、クラフトパルプを使用することも可能である。
本発明の熱可塑性組成物において、セルロースは分子中の水酸基の一部が、アセチル化やカルボキシ化されていてもよく、また、水酸基中の水素原子がナトリウムやカリウム等の金属イオン、もしくはアンモニウムイオン等で置換されていてもよい。
これらセルロースは、本発明の熱可塑性組成物全100質量%中に、好ましくは0.05~60.0質量%程度、より好ましくは0.1~50.0質量%程度、さらに好ましくは0.2~40.0質量%程度含有される。本発明の熱可塑性組成物は、セルロースの含有量が0.05質量%程度の少量であっても、セルロース由来の質感や優れた機械強度が発現する。また、セルロースの含有量が60.0質量%程度以下であれば、十分な熱可塑性が担保される。なお、本発明の熱可塑性組成物がヘミセルロース及び/又はリグニンを含有する場合、これら成分はリグノセルロースを構成する物質であるので、その量は上記のセルロース含有量に含めるものとする。
ここで、本発明の熱可塑性組成物全100質量%中のセルロース含有量は、熱可塑性組成物の成形加工性を高める、あるいは剪断力が低目の混合装置で少量作製する場合には、0.05~20.0質量%、中でも0.1~10.0質量%、さらには0.2~5.0質量%、特に0.4~2.0質量%程度とするのが好ましい。一方で熱可塑性組成物の耐熱性や機械特性を高める、あるいはより多くのセルロース廃材を活用する観点からは、5.0~60.0質量%程度、例えば10.0~50.0質量%、中でも15.0~40.0質量%、さらには18.0~30.0質量%、特に20.0~25.0質量%程度とするのが好ましい。
<共晶混合物>
本発明の熱可塑性組成物は、上記セルロースと共に、ヒドロキシカルボン酸と糖類との共晶混合物を含有する。この共晶混合物は深共晶溶媒のように機能し、セルロースをナノファイバーレベル近くにまでほぐし、さらには溶解又は微分散して、ほぼ均質な混合物を形成することができる。この共晶混合物はまた、セルロース等と混合すると、室温で固体で、かつ熱可塑性の組成物を形成することも可能である。これは前述のイミダゾール/塩化アンモニウム系等の深共晶溶媒では起こらない、予想外の現象である。本発明の組成物がこのような熱可塑性材料となる理由は不明であるが、ヒドロキシカルボン酸と糖類が、共晶を形成すると同時にセルロースとの相互作用を生じている可能性が考えられる。但し、本発明は特定の理論に限定されるものではない。
本発明においては、上記のように共晶混合物がセルロースと共に熱可塑性組成物を構成し、(例えば非特許文献2等に記載の調製方法におけるように)セルロース材料作製後に分離・除去する必要がない。そのため、分離や廃溶媒処理等の手間やコストを削減することができる。本発明の熱可塑性組成物中の共晶混合物はまた、ヒドロキシカルボン酸並びに単糖及び/又は二糖という、いずれもハロゲン等不含の天然物で構成されており、この点からも地球環境に負荷を掛けない優れた材料といえる。
(ヒドロキシカルボン酸)
本発明においてヒドロキシカルボン酸は、単糖及び/又は二糖と共晶混合物を形成する化合物であればどのようなものであってもよく、その種類に特に制限はない。例としてグリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、γ-ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、及びシキミ酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;サリチル酸、クレオソート酸、バニリン酸、シリング酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、ケイヒ酸、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、及びシナピン酸等の芳香族ヒドロキシカルボン酸等が挙げられるが、これらに限定されない。単糖及び/又は二糖との組み合わせによっては、複数のヒドロキシカルボン酸を併用することも可能である。
ヒドロキシカルボン酸としては、分子中にヒドロキシ基とカルボキシ基とを1つづつ有する化合物が好ましく、また、脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。より好ましくは、炭素数2~4の脂肪族ヒドロキシカルボン酸を使用する。こうしたヒドロキシカルボン酸は単糖や二糖と深共晶溶媒を形成し易く、また、セルロースとの組成物も良好な熱可塑性を示す。特に、乳酸が好ましい。なお、乳酸はD体、L体、DL体等、どのようなものであってもよい。
(単糖)
本発明における単糖も、ヒドロキシカルボン酸と共晶混合物を形成する化合物であればどのようなものであってもよく、その種類に特に制限はない。例としてグリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、及びイドース等のアルドース;ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、キシルロース、リブロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、及びタガトース等のケトースが挙げられるが、これらに限定されない。ヒドロキシカルボン酸との組み合わせによっては、複数の単糖を併用することも可能である。
(二糖)
本発明における二糖にも、特に制限はない。例としてスクロース(ショ糖)、ラクツロース、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、トレハロース、及びセロビオース等が挙げられるが、これらに限定されない。2種以上の二糖を併用することや、単糖と二糖とを併用することも可能である。
上記糖類の中でも、単糖が好ましい。より好ましくはアルドース類、さらに好ましくはアルドヘキソース類を使用する。これらの単糖はヒドロキシカルボン酸と共晶混合物を形成し易く、また、セルロースとの組成物も良好な熱可塑性を示す。アルドヘキソースの中でも、グルコース、アロース、マンノース、ガラクトース等が、特にグルコース(ブドウ糖)が好ましい。すなわち、本発明の熱可塑性組成物を構成する共晶混合物は、乳酸とグルコースとの混合物であることが特に好ましい。グルコース等の単糖にもそれぞれ幾つかの光学異性体が存在するが、本発明においてはどのような構造のものをも使用することができる。
<熱可塑性組成物の組成>
本発明の熱可塑性組成物において、ヒドロキシカルボン酸と糖類の含有量に特に制限はなく、例えばヒドロキシカルボン酸:糖類の質量比を1:4~99:1の範囲内から選定することも可能である。しかしながら本発明においては、好ましくはヒドロキシカルボン酸:単糖及び/又は二糖の質量比を1:2~6:1の範囲内、より好ましくは1:1~4:1の範囲内、さらに好ましくは2:1~3:1の範囲内とする。両者の比がこうした範囲内であれば、共晶混合物が形成され易く、また、セルロースとの組成物も良好な熱可塑性を示す。本発明の特に好ましい実施形態においては、乳酸とグルコースが、1:1~4:1の質量比で、特に2:1~3:1の質量比で含有される。
本発明の熱可塑性組成物の好ましい一実施形態は、セルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類3者の合計100質量%に対し、セルロースを0.05~20.0質量%、ヒドロキシカルボン酸を20.0~99.0質量%、糖類を1.0~80.0質量%の量で含有し;より好ましくはセルロースを0.1~5.0質量%、ヒドロキシカルボン酸を50.0~90.0質量%、糖類を5.0~50.0質量%の量で含有し;さらに好ましくはセルロースを0.2~2.0質量%、ヒドロキシカルボン酸を60~80質量%、糖類を20~40質量%の量で含有する。こうした組成であれば、本発明の熱可塑性組成物は特に質感と成形加工性に優れ、例えば50~230℃、典型的には60~200℃、特に70~150℃程度の温度で溶融又は凝固する熱可塑性の組成物となり得る。
本発明の熱可塑性組成物の他の好ましい一実施形態は、セルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類3者の合計100質量%に対し、セルロースを5~60質量%、ヒドロキシカルボン酸を20~80質量%、糖類を5~50質量%の量で含有し;より好ましくはセルロースを10~50質量%、ヒドロキシカルボン酸を30~60質量%、糖類を10~40質量%の量で含有し;さらに好ましくはセルロースを20~45質量%、ヒドロキシカルボン酸を35~50質量%、糖類を15~30質量%の量で含有する。こうした組成であれば、本発明の熱可塑性組成物は特に質感や耐熱性、機械特性等に優れ、例えば150~240℃、典型的には160~230℃、中でも170~220℃、特に180~210℃程度の温度で溶融又は冷却後凝固する熱可塑性の組成物となり得る。
<添加物>
本発明の熱可塑性組成物は、上記したセルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類以外に、無機フィラー、天然熱可塑性樹脂、合成熱可塑性樹脂、及び生分解性樹脂からなる群より選択される1以上の物質をさらに含有していてもよい。無機フィラーの含有により、熱可塑性組成物の硬度や強度等の機械特性、さらには耐熱性等の物性を制御することができる。また、各種樹脂を含有することにより、熱可塑性組成物の溶融・凝固温度や物性を制御することも可能である。
(無機フィラー)
本発明の熱可塑性組成物に配合される無機フィラーに、特に制限はない。例として、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛、バリウム等の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、酸化物、若しくはこれらの水和物の粉末状のものが挙げられ、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、ウォラストナイト、ドロマイト、黒鉛等が挙げられるが、これらに限定されない。無機フィラーはまた、合成のものであっても天然鉱物由来のものであっても良く、単独又は2種類以上併用して含有されてもよい。これらの内でも、安全性とコストの観点から、炭酸カルシウム、クレー、タルク、カオリン等が好ましい。特に炭酸カルシウムは、様々な粒径及び粒子形状のものが市販されているので、目的とする熱可塑性組成物の物性に応じた品種を選択することができ、好ましい。食品工場から出される卵殻由来の炭酸カルシウムを使用すれば、廃棄物の削減にも貢献し得る。
本発明の熱可塑性組成物に無機フィラーを配合する場合、その含有量に特に制限はないが、セルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び単糖3者の合計100質量%に対して10~400質量%、さらには20~200質量%、特に30~100質量%程度とすることが好ましい。こうした配合量であれば、熱可塑性組成物の溶融加工性を損なうことなく、硬度等の物性を制御することができる。
(樹脂)
本発明の熱可塑性組成物に配合される天然熱可塑性樹脂、合成熱可塑性樹脂、及び生分解性樹脂にも、特に制限はない。例として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリメチル-1-ペンテン、エチレン-環状オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体の金属塩(アイオノマー)、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、マレイン酸変性ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン等の官能基含有ポリオレフィン系樹脂;ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシバレレート)共重合体(PHBV)を始めとする脂肪族ポリエステル系樹脂等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸(エステル)、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等のポリカーボネート樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン(AS)共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体等のポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のポリ塩化ビニル系樹脂;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル系樹脂;さらにはポリビニルアルコール、ロジン、酢酸セルロース系熱可塑性樹脂、石油炭化水素樹脂、クマロンインデン樹脂等の種々の公知の熱可塑性樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。複数種の熱可塑性樹脂を、併用することもできる。また、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン-エチレン共重合体、スチレン-イソプレン-エチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、フッ素系エラストマー等のエラストマー成分を含有していても良い。
こうした樹脂類の配合によって、本発明の熱可塑性組成物の物性を、様々に変化させることができる。例えばロジン等を配合することにより、熱可塑性組成物の耐水性を改善することができる。また、ポリ乳酸やPHBV等の生分解性樹脂を配合することによって、熱可塑性組成物を廃棄した際の生分解を促進し、環境面に貢献することも可能である。
本発明の熱可塑性組成物の物性や加工性、さらにはセルロース由来の質感をできるだけ活かす観点からは、上記の熱可塑性樹脂を配合しない選択も考えられる。また、これら熱可塑性樹脂を配合する場合には、その含有量は、セルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類3者の合計100質量%に対して5~120質量%、さらには10~100質量%、特に20~80質量%程度とすることが好ましい。
本発明の熱可塑性組成物の、上記した実施形態とはまた別の好ましい一実施形態は、セルロースを5~40質量%、ヒドロキシカルボン酸を5~40質量%、糖類を3~25質量%、樹脂やフィラーを20~80質量%の量で含有し;より好ましくはセルロースを10~35質量%、ヒドロキシカルボン酸を10~35質量%、糖類を5~20質量%、樹脂やフィラーを30~70質量%の量で含有し;さらに好ましくはセルロースを15~30質量%、ヒドロキシカルボン酸を15~30質量%、糖類を7~15質量%、樹脂やフィラーを35~60質量%の量で含有する。こうした組成であれば、特に質感や耐熱性、耐水性、機械特性等に優れる熱可塑性の組成物となり得る。
(その他添加剤)
本発明の熱可塑性組成物には、所望により、上記以外の添加剤を配合することも可能である。その他の添加剤としては、例えば、色剤、滑剤、カップリング剤、流動性改良材(流動性調整剤)、架橋剤、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、安定剤、帯電防止剤、発泡剤、可塑剤、デンプン、カゼイン等が挙げられるが、これらに限定されない。これら添加剤は、単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。また、後述の混練工程において配合しても良く、混練工程の前に予め原料成分中に配合していても良い。例えば、カップリング剤をセルロースや無機フィラーの表面に予め付与する形で含有させることもできる。
本発明の熱可塑性組成物において、これらのその他添加剤の含有量は、目的とする物性及び加工性に応じて任意に設定することができるが、セルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類3者の合計100質量%に対して、これら他の添加剤はそれぞれ0~10質量%程度、特に0.05~5質量%程度の割合で、かつ当該その他の添加剤全体で20質量%以下、例えば0.05~20質量%となる割合とすることが好ましい。
[熱可塑性組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性組成物は、各成分を混合することにより製造することができる。その製造方法に特に制限はなく、例えばセルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類の3者、さらには無機フィラーや他樹脂成分等の添加物を、同時に混練してもよく、また、上記3者の内の2成分を先に混練し、他の成分を後から添加・混練することも可能である。
ここで、熱可塑性組成物の成形加工性を高める、あるいは剪断力が低目の混合装置で少量作製する場合には、例えばヒドロキシカルボン酸と糖類とを溶融混練し、次いでセルロースを混練することが好ましい。ヒドロキシカルボン酸と糖類とは共晶混合物を形成し得るので、これら2成分を先に混合することにより、以後の混合をマイルドな温度、かつ低剪断下で進めることが可能となり、エネルギー消費量を低減できる上、また、高温での有機物の劣化を防ぐこともできる。
本発明はまた、ヒドロキシカルボン酸と単糖及び/又は二糖とを、150~240℃の温度で混合する第1の工程、及び第1の工程で得られた混合物とセルロースとを、150~240℃の温度で混合する第2の工程、を含む、熱可塑性組成物の製造方法(以下で、この製造方法を「製造方法-A」という場合がある。)をも包含する。例えばセルロース含有量が全体の0.05~20.0質量%程度の熱可塑性組成物を作製する場合は、こうした製造方法-Aが有効である。
本発明の製造方法、例えば製造方法-Aにおいて、各成分の混合手法に特に制限はない。例えば、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、プラネタリーミキサー、ヘンシェルミキサー、熱ロール等の一般的な混練装置で、150~240℃、特に160~200℃の温度で混合する方法が挙げられるが、これらに限定されない。小バッチであれば、後記するように撹拌機付きのフラスコ中で混合することも可能である。
但し、ある程度以上の規模で混合する場合には(後記する製造方法-B に限らず、製造方法-Aにおいても)、押出機、特に二軸押出機を使用するのが好ましい。押出機であれば、混合時に高い剪断力を作用させて各成分を均一に分散させることができ、また、押出後段でセルロースを添加して上記第1の工程と第2の工程とを同一の装置で行うことも可能となる。勿論、これら第1の工程と第2の工程とを、例えば時間を置いて別々の装置で行ってもよい。また、第1の工程と第2の工程とをニーダーで行い、得られた混合物を押出機でさらに混練して成形することも可能である。
本発明の製造方法-Aの一実施形態では、例えば第1の工程と第2の工程とを二軸押出機やニーダーで行い、得られた混合物を一軸又は二軸押出機で押出成形する。このようにして本発明の熱可塑性組成物を例えばストランド状に押し出し、ペレタイザー等で例えば2~5mm角程度のサイズの角柱や円柱へと切断することにより、上記のような組成の熱可塑性組成物をペレットの形状で得ることができる。本発明はまた、上記した第2の工程で得られた混合物を、押出機で混練及び成形する第3の工程をさらに含む、熱可塑性組成物の製造方法をも包含する。
本発明の熱可塑性組成物はまた、セルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類の3者を、同時に混練すること(この製造方法を「製造方法-B」という場合がある。)によっても製造することができる。例えばセルロース含有量が全体の5~60質量%程度の熱可塑性組成物を作製する場合には、高剪断力の混合装置を用いて製造方法-Bを採用するのが有利である。ここで、高剪断力の混合装置に特に制限はなく、例えば押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等が挙げられるが、押出機、特に二軸押出機が好ましい。こうした混合装置によれば、高い剪断力によってヒドロキシカルボン酸と糖類とが混合され、他成分共存下でも深共晶溶媒が形成され得るため、これら二成分のみを事前に混合する工程は、さらに省略可能なものとなる。
本発明はまた、セルロースと、ヒドロキシカルボン酸と単糖及び/又は二糖とを、押出機にて150~240℃の温度で混合する工程を含む、熱可塑性組成物の製造方法を包含する。こうした製造方法-Bによれば、耐熱性や機械特性により優れる熱可塑性組成物の製造が容易となり、また、より多くのセルロース廃材を活用することが可能となる。
製造方法-Bにおいて使用する押出機に特に制限はない。二軸押出機が好ましいが、これに限定されず、また、どのようなタイプの二軸押出機を使用することもできる。混練・押出条件にも制限はなく、例えば150~240℃、中でも160~230℃、特に170~210℃の温度で行うことができる。また、無機フィラーや樹脂等の成分を、セルロース、ヒドロキシカルボン酸、及び糖類の3者と同時に混練してもよく、これら3者の混合物中に後から混練してもよい。例えば押出機を用いた製造方法-Bによって上記3者のみ、あるいは他の成分の一部を混練し、次いで押出機やニーダー等の混合装置で残りの成分を混練することも可能である。
製造方法-Bにおいては、押出機から混練物を押し出して直接成形品とする、あるいはペレットへと成形することも可能である。また、得られた混合物を、上記製造方法-Aにおける第3の工程と同様の工程に付してもよい。例えば製造方法-Bで得られた混合物を、一軸又は二軸押出機に掛けてストランド状に押し出し、ペレタイザー等で例えば2~5mm角程度のサイズの角柱や円柱へと切断することにより、上記のような組成の熱可塑性組成物をペレットの形状で得ることもできる。
[成形品]
本発明はさらに、上記の熱可塑性組成物からなる、熱可塑性ペレットを包含する。本発明の熱可塑性組成物は上記のように概して50~230℃、具体的にはセルロース含有量が0.05~20.0質量%程度の場合は60~200℃、さらには70~150℃、特に70~100℃程度の温度で、また、セルロース含有量が5~60質量%程度の場合は150~240℃、さらには160~230℃、特に170~210℃程度の温度で溶融又は凝固するため、成形性に優れる。そのため、本発明の熱可塑性ペレットは、熱可塑性高分子材料として好適である。
本発明の熱可塑性組成物は、上記のように熱可塑性が良好であり、様々な形状へと成形することができる。本発明はまた、上記の熱可塑性組成物からなる、成形体をも包含する。これら成形体の形状及びサイズに特に制限はなく、シート状、管状、ストランド状、その他の、目的に応じた任意の形状とすることができる。成形方法も限定されず、押出成形、射出成形、ロール成形、トランスファー成形、ブロー成形等のどのような成形法をも用いることができる。例えば上記した本発明の熱可塑性ペレットから、押出機や射出成形機を用いて所望の形状に成形してもよく、また、熱可塑性組成物をペレット化することなく押出し、シートや管状物へと成形してもよい。カレンダー成形等によって他材料と複合することも可能である。
本発明の熱可塑性組成物及び成形品の用途にも、特に制限はない。例えば玩具や歯ブラシ、浴用品等の日用品、家電製品等の筐体、自動車や電車等の輸送機器の高分子材料等として使用することができる。特に、セルロース原料としてクラフトパルプ等の精製品を用いた場合には、医療用や食品用に使用することも可能である。セルロース、ヒドロキシカルボン酸、単糖、及び二糖はいずれも、安全性が高い物質であるため、これら成分で構成される本発明の熱可塑性組成物は、医療・食品用途に好適である。本発明の熱可塑性組成物はまた、従来の生分解性樹脂とは異なる概念の天然物由来材料ともいえ、バイオマス度を上げる目的で、他材料への添加剤として活用することも可能である。
以下、本発明を、実施例に基づきより具体的に説明する。なお、これらの実施例は、本明細書に開示され、また添付の請求の範囲に記載された、本発明の概念及び範囲の理解を、より容易なものとする上で、特定の態様及び実施形態の例示の目的のためにのみ記載するのであって、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
(第1の工程/製造方法-A)
撹拌機を備えたフラスコ中に、乳酸100g、及びグルコース40gを入れ、150~200℃の温度で30分間攪拌した。得られた混合物は室温で液体であり、100%天然物の深共晶溶媒となっていた。
(第2の工程/製造方法-A)
撹拌機を備えたフラスコ中に、第1の工程で得られた混合物100gを入れ、150~200℃に加熱した。ここに、パルプ0.5gを入れて、150~200℃程度で1時間以上攪拌すると、ほぼ均一な褐色の液状物となった。上記温度での加熱攪拌は、全8時間行った。次いで、この液状物を清浄なアルミニウム板上に移したところ、凝固して固形物となった。
(組成物の性状)
上記第2の工程で得られた固形物は、樹脂様の外観及び触感を有していた。この固形物を清浄な金槌で叩いたところ、粉状となった。この粉状物は150℃前後の温度で溶融し、室温付近に冷却すると再び固形物となった。また、この粉状物は、射出成形によりダンベル型試験片とすることができた。すなわち、本実施例で得られた組成物は、熱可塑性であることが示された。
なお、第1の工程において、乳酸及びグルコースの代わりに他の深共晶溶媒を用いて実施例1と類似の簡易実験を行ったところ、第2の工程でパルプが均一に微分散せず、熱可塑性も発現しなかった(比較例1)。混合時の温度制御等を精密に行っていない簡易実験のため確言は出来ないが、セルロースを単に深共晶溶媒と加熱・混合しただけでは、本発明のような熱可塑性材料は得られないことが示唆される。
[実施例2]
実施例1で得られた粉状物(熱可塑性組成物)とデンプンとを、7:3の質量比で小型二軸押出機に投入し、80~120℃で混練押出して、ペレットを作製した。得られたペレットからは、実施例1と同様、射出成形によりダンベル状試験片を作製することができた。
[実施例3]
実施例1で得られた粉状物(熱可塑性組成物)とタルクとを、6:4の質量比で小型二軸押出機に投入し、実施例2と同様にしてペレットを作製した。得られたペレットからは、実施例1及び2と同様、射出成形によりダンベル状試験片を作製することができた。
[実施例4]
実施例2で得られたペレットとポリ(3-ヒドロキシブチレート/3-ヒドロキシバレレート)(PHBV、生分解性樹脂)とを、1:1の質量比で小型二軸押出機に投入し、実施例2と同様にしてペレットを作製した。得られたペレットからは、実施例1~3と同様、射出成形によりダンベル状試験片を作製することができた。
[実施例5]
実施例3で得られたペレットとガムロジンとを、8:2の質量比で小型二軸押出機に投入し、実施例3と同様にしてペレットを作製した。得られたペレットからは、実施例1~4と同様、射出成形によりダンベル状試験片を作製することができた。
[実施例6]
ガムロジンの代わりにリグニン(日本製紙株式会社製のバニレックス(登録商標)CN)を使用して、実施例5と同様にしてペレットを作製した。得られたペレットからは、実施例1~5と同様、射出成形によりダンベル状試験片を作製することができた。
[実施例7]
二軸押出機(テクノベル社製の二軸混練押出機、φ15mm、L/D=50)中に、40質量部の杉の木粉、50質量部の乳酸、25質量部のグルコース、及び50質量部のタルクを投入し、設定温度160~220℃で混練しながらストランド状に押し出した(上記した製造方法-Bによって熱可塑性組成物を調製した)。次いでストランドをペレタイザーで切断し、熱可塑性組成物のペレットとした。
得られたペレットを次に、射出成型機(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のHAAKE Process11)に掛けたところ、180~220℃でJIS K7171(ISO 178)曲げ試験用試験片(80×10×4mm)及びJIS K7161-2引張試験用ダンベル状試験片へと成形することができた。本実施例の組成物は、セルロース成分を多量に含有するにも拘らず熱可塑性であり、良好な成形加工性を示すことが明らかとなった。
次にこれらの試験片各3体を用いて、JIS K7171に従う曲げ試験(試験速度2mm/分)及びJIS K7161-2に従う引張試験(引張速度5mm/分)を行い、機械強度を評価した。また、耐水性も評価した。尚、耐水性は、作製した熱可塑性樹脂ペレット及びダンベル試験片を水を入れたガラスビーカーに投入し、形状の変化を目視観察して下記の基準に基づき評価した。
(耐水性評価基準)
〇:形状の変化が観察されなかった
△:試験片の形状は変化したが、崩壊はしなかった
×:試験片が水中で崩壊し、形状が保持されなかった
評価結果を、熱可塑性組成物の配合と共に、後記する表1に示す。
[実施例8~13]
実施例7で用いた成分と共に、ロジン又はPHBVを使用し、実施例7と同様の操作を行った。各熱可塑性組成物の配合及び評価結果を、表1に示す。
Figure 2023111812000001
上記の実施例より、セルロース並びにヒドロキシカルボン酸及び糖類の共晶混合物を含有する本発明の組成物は、熱可塑性を示し、各種材料と熱溶融混練して様々な熱可塑性の樹脂様材料を提供できることが示された。セルロースを単に深共晶溶媒と混合しただけでは、熱可塑性の材料は得られなかった(比較例1)ことに鑑み、本発明は予想外の特性を示す熱可塑性材料と考えられる。
[実施例14~19]
ロジン又はPHBVの代わりにポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)を使用し、実施例8~13と同様の操作を行った。熱可塑性組成物の配合と評価結果を、表2に示す。
Figure 2023111812000002
本発明の熱可塑性組成物は、ポリプロピレンやポリエチレンのような汎用樹脂を含有することもでき、それによって機械特性や耐水性等の物性を改善し得ることが示された。このように本発明の熱可塑性組成物には、様々な樹脂や無機フィラー等を多量に配合することができ、それによって耐水性等の物性を改善し、あるいは低コスト化を図ることが可能である。例えば、実施例8~10と同様にして、ロジンを175質量部まで配合して耐水性を高め得ることが、確かめられている。
以上のように本発明の熱可塑性組成物は、セルロースを多量に配合した組成物であっても熱可塑性を示し、セルロース系の廃材等のリサイクル用途として有用である。ポリエチレンを始めとする石油系樹脂等に混合して、バイオマス度を高めることもできる。本発明の熱可塑性組成物はまた、PHBVを始めとする生分解性樹脂に混合して、物性を低下させることなく廃材使用率を高めると共に低コスト化する、いわば増量剤のように使用することも可能である。しかも本発明の熱可塑性組成物は、製造過程で溶媒の廃棄や、含ハロゲン化物等の環境負荷物質の使用を必要としない。こうした点に鑑み、本発明の効果は顕著である。

Claims (11)

  1. セルロース、並びに、単糖及び/又は二糖とヒドロキシカルボン酸との共晶混合物を含有する、熱可塑性組成物。
  2. 前記共晶混合物が乳酸とグルコースとの混合物である、請求項1記載の熱可塑性組成物。
  3. ヘミセルロース及び/又はリグニンをさらに含有し、かつ前記セルロースが植物由来セルロースである、請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物。
  4. 前記セルロースを0.05~60.0質量%含有する、請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物。
  5. 前記ヒドロキシカルボン酸:前記単糖及び/又は二糖の質量比が1:2~6:1の範囲内である、請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物。
  6. 無機フィラー、天然熱可塑性樹脂、合成熱可塑性樹脂、及び生分解性樹脂からなる群より選択される1以上の物質をさらに含有する、請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物。
  7. ヒドロキシカルボン酸と単糖及び/又は二糖とを、150~240℃の温度で混合する第1の工程、及び
    前記第1の工程で得られた混合物とセルロースとを、150~240℃の温度で混合する第2の工程、
    を含む、熱可塑性組成物の製造方法。
  8. 前記第2の工程で得られた混合物を、押出機で混練及び成形する第3の工程をさらに含む、請求項7記載の熱可塑性組成物の製造方法。
  9. セルロースと、ヒドロキシカルボン酸と単糖及び/又は二糖とを、押出機にて150~240℃の温度で混合する工程を含む、熱可塑性組成物の製造方法。
  10. 請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物からなる、熱可塑性ペレット。
  11. 請求項1又は2に記載の熱可塑性組成物からなる、成形体。

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