JP2023102524A - 複列円すいころ軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】ドライブピニオン軸支持用の複列円すいころ軸受において、ピニオン側と反ピニオン側の軸受剛性のバランスを適切に設定できるようにする。【解決手段】円すいころ7の長さをL、その両端の面取り部7b、7cの幅をL0、円すいころ7の有効長さをLwe、ころ本数をZ、アキシアル荷重をFa、接触角をαとしたとき、軸方向変位量δは下記(1)~(4)式を用いて算出するものとし、δ=K’・Fa0.9・・・(1)K’=0.6・K/{(sin α)1.9・Lwe0.8・Z0.9} ・・・(2)K=0.877+2.73・sin α+0.017・Lwe ・・・(3)Lwe=L-3.0・L0・・・(4)上記の式のαにピニオン側と反ピニオン側の接触角α1、α2を代入して算出した軸方向変位量δ1、δ2の比δ1/δ2が、1.0より小さく0.3以上となるようにした。【選択図】図2
Description
本発明は、車両のドライブピニオン軸をピニオン近傍で支持する複列円すいころ軸受に関する。
車両のデファレンシャル装置に駆動力を伝達するドライブピニオン軸を支持する転がり軸受としては、コンパクトでラジアル荷重とアキシアル荷重を同時に負荷でき、その負荷容量も大きい円すいころ軸受が適しており、円すいころを背面組合せの形態(DBセット)で複列に配列した複列円すいころ軸受を用いることが多い。その複列円すいころ軸受は、通常、軸方向の中心で軸方向と直交する平面に対して、その両側の構造が対称になっている。
ところが、上記のような複列円すいころ軸受でドライブピニオン軸のピニオン近傍を支持する場合、ピニオン側(ピニオンに近い側)の円すいころ列に加わるラジアル荷重が反ピニオン側(ピニオンから遠い側)の円すいころ列に加わるラジアル荷重よりも大きくなるため、ピニオン側の剛性が不足して、軸受寿命が短くなるという問題があった。
これに対し、特許文献1では、ピニオン側の円すいころ列の接触角(外輪の軌道面の母線と中心軸とがなす鋭角)を反ピニオン側の円すいころ列の接触角よりも大きくすることにより、ピニオン側と反ピニオン側で円すいころ列に加わるラジアル荷重の差を小さくしてピニオン側の剛性を高め、軸受寿命の延長を図っている。その実施例としては、ピニオン側の接触角を30度、反ピニオン側の接触角を20度とした例があげられている。
しかしながら、軸受剛性が高すぎると(軸受に荷重が加わったときの軸方向変位量が小さいと)、予圧設定時に軸受変位が敏感になるため設定作業が難しくなるとともに、運転時の温度上昇による周辺部品の膨張に対して、軸受変位量が小さいがゆえに追随できず、予圧抜けが生じることがある。
一方、軸受剛性が低すぎると、軸受に荷重が加わったときの軸方向変位量が大きくなるため、ピニオンの歯当たり不良の発生が懸念される。
そこで、本発明は、ドライブピニオン軸支持用の複列円すいころ軸受において、ピニオン側と反ピニオン側の軸受剛性のバランスを適切に設定できるようにすることを第1の課題とする。また、ドライブピニオン軸支持用の複列円すいころ軸受において、予圧設定を適切に行えるようにすることを第2の課題とする。
上記第1の課題を解決するために、本願の発明者は、軸受剛性が接触角だけでなく、ころ長さやころ本数に依存することから、それらの影響を考慮した円すいころ軸受の軸方向変位量の算出式を作成し、その算出式を用いて算出される複列円すいころ軸受のピニオン側と反ピニオン側の軸方向変位量の比を一定範囲内に収めるようにすれば、ピニオン側と反ピニオン側の軸受剛性のバランスを適切に設定できるという技術的思想に基づき、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、外周面に軌道面が形成された2個の内輪と、内周面に2つの軌道面が形成された1個の外輪と、前記内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に背面組合せの形態で複列に配列される円すいころと、前記各列の円すいころをそれぞれ転動自在に保持する保持器とを備え、車両のドライブピニオン軸をピニオン近傍で支持する複列円すいころ軸受において、前記円すいころは、円すい台状に形成された転動面と、前記転動面の両側に連続する面取り部とを有しており、前記円すいころの長さ(ころ軸方向長さ)をL、前記円すいころの一端および他端の面取り部の幅(ころ軸方向長さ)をL0、前記円すいころの有効長さをLwe、前記円すいころの1列あたりの本数をZ、負荷されるアキシアル荷重をFa、接触角をαとしたときに、軸方向変位量δは下記(1)~(4)式を用いて算出するものとし、
δ=K’・Fa0.9 ・・・(1)
K’=0.6・K/{(sin α)1.9・Lwe0.8・Z0.9} ・・・(2)
K=0.877+2.73・sin α+0.017・Lwe ・・・(3)
Lwe=L-3.0・L0 ・・・(4)
前記ピニオン側の円すいころ列の接触角をα1、反ピニオン側の円すいころ列の接触角をα2とし、そのα1とα2を上記(2)式および(3)式における接触角αにそれぞれ代入してピニオン側の軸方向変位量δ1と反ピニオン側の軸方向変位量δ2を算出したときに、δ1/δ2が1.0より小さく0.3以上となっている構成とした。
δ=K’・Fa0.9 ・・・(1)
K’=0.6・K/{(sin α)1.9・Lwe0.8・Z0.9} ・・・(2)
K=0.877+2.73・sin α+0.017・Lwe ・・・(3)
Lwe=L-3.0・L0 ・・・(4)
前記ピニオン側の円すいころ列の接触角をα1、反ピニオン側の円すいころ列の接触角をα2とし、そのα1とα2を上記(2)式および(3)式における接触角αにそれぞれ代入してピニオン側の軸方向変位量δ1と反ピニオン側の軸方向変位量δ2を算出したときに、δ1/δ2が1.0より小さく0.3以上となっている構成とした。
なお、上記(4)式において、円すいころの面取り部の幅L0に乗ずる係数を3.0としているのは、面取り部の幅L0の公差が大きいことを考慮したものであり、その係数を公差等に応じて適宜(例えば2.0~3.0の間で)設定して、(1)~(3)式に相当する軸方向変位量δの算出式を作成することもできる。また、円すいころの一端と他端で面取り部の幅が異なる場合は、その平均値をL0に代入すればよい。
上記のようにピニオン側と反ピニオン側の軸方向変位量の比δ1/δ2を1.0より小さくすることにより、ピニオン側の剛性が反ピニオン側よりも高くなり、軸受寿命を延長できるとともに、ピニオンの歯当たり不良を防止できる。また、δ1/δ2を0.3以上とすることにより、ピニオン側の軸受剛性が高くなりすぎず、予圧設定作業に手間がかかったり運転時に予圧抜けが生じたりする懸念をなくすことができる。
ここで、一般に、円すいころ軸受において、円すいころの大端面(以下「ころ大端面」ともいう)と、これを受ける内輪の大鍔面(以下「内輪大鍔面」ともいう)との滑り接触は、昨今の低粘度オイルの使用で油膜形成が厳しくなっており、特に、ドライブピニオン軸を背面組合せの形態で支持する複列円すいころ軸受では、コンパクトであるがゆえに軸たわみ等の外乱により内輪大鍔面への荷重負荷が増加しやすく、潤滑不良による焼き付き等の不具合が生じやすい。
そこで、本発明では、上記の構成に加えて、内輪大鍔面内にころ大端面との接触楕円が収まるように、ころ大端面の曲率半径を設定することが望ましい。
具体的には、前記円すいころの大端面の設定曲率半径をRとし、前記円すいころの大端面の実曲率半径をRACTUALとしたとき、RACTUAL/Rが0.3以上0.98以下であり、前記転動面の円すい角の頂点から前記円すいころの大端面を受ける内輪の大鍔面までの基本曲率半径をRBASEとしたとき、R/RBASEが0.50以上0.95以下となるようにするとよい。
すなわち、RACTUAL/RおよびR/RBASEを上記範囲とすることにより、内輪大鍔面内にころ大端面との接触楕円が収まるようになり、厳しい潤滑環境下でも、ころ大端面と内輪大鍔面の滑り接触部における潤滑不良を抑え、耐焼付き性を向上させることができる。
また、前記内輪の軌道面の母線と中心軸とがなす鋭角をθとし、前記円すいころの転動面の大端径をDwとし、前記円すいころの大端面を受ける内輪の大鍔面の幅をWとしたときに、前記内輪の大鍔面の幅Wが下記(5)式を満足する値とするとよい。
W≧{Dw×(1/2)×tan θ/(L/Dw)} ・・・(5)
このようにすると、内輪大鍔面をころ大端面と十分に対向させておき、ころ大端面と内輪大鍔面の滑り接触部が内輪の大鍔外径側に広がったときにも良好な接触を保つことができる。
W≧{Dw×(1/2)×tan θ/(L/Dw)} ・・・(5)
このようにすると、内輪大鍔面をころ大端面と十分に対向させておき、ころ大端面と内輪大鍔面の滑り接触部が内輪の大鍔外径側に広がったときにも良好な接触を保つことができる。
また、本発明は、上記第2の課題を解決するために、外周面に軌道面が形成された2個の内輪と、内周面に2つの軌道面が形成された1個の外輪と、前記内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に背面組合せの形態で複列に配列される円すいころと、前記各列の円すいころをそれぞれ転動自在に保持する保持器とを備え、車両のドライブピニオン軸をピニオン近傍で支持する複列円すいころ軸受において、前記内輪は、前記軌道面を1つ有するものどうしが、それぞれの小径側の端面を互いに対向させ、隙間をおいた状態で前記ドライブピニオン軸に組み付けられている構成とした。
すなわち、複列円すいころ軸受において、通常のように2個の内輪を小径側の端面どうしが当接する状態で組み込む場合は、軸受の組立後の高さを管理して予圧設定を行っており、内輪の幅および軸受の組立後の幅の寸法公差を小さくする必要があるため、適切な予圧荷重の設定が難しい。これに対して、上記のように2個の内輪を小径側の端面どうしの間に隙間のある状態で組み込むようにすれば、軸受組立時に反ピニオン側の内輪の大径側端面からの締め込みにより予圧荷重を負荷することが可能となるので、内輪の幅や軸受の組立後の幅の公差によらず、締め込み量により予圧荷重が調整可能となる。したがって、予圧荷重と軸受回転トルクとの関係を予め把握しておき、軸受組立時に締め込みを行いながら軸受回転トルクを測定して、予圧荷重を間接的に管理することにより、適切な予圧荷重を容易に設定することができる。
上述したように、本発明の複列円すいころ軸受は、接触角のほかに円すいころの長さや本数の影響も考慮した算出式で算出したピニオン側と反ピニオン側の軸方向変位量の比を一定範囲内に収めるようにしたものであるから、ピニオン側と反ピニオン側の軸受剛性のバランスを適切に設定でき、軸受寿命の延長、ピニオンの歯当たり不良の防止、予圧設定の作業性向上および運転時の予圧抜けの防止を図ることができる。
また、本発明の複列円すいころ軸受は、2個の内輪を小径側の端面どうしの間に隙間のある状態で組み込むようにしたものであるから、軸受組立時に反ピニオン側の内輪の大径側端面からの締め込みを行いながら軸受回転トルクを測定して、予圧荷重を間接的に管理することにより、予圧設定を適切に行うことができる。
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1は、第1実施形態の複列円すいころ軸受1を車両の固定部材としてのハウジング2とドライブピニオン軸3との間に取り付けた状態を示す。ドライブピニオン軸3は、先端に図示省略したリングギアに噛み合うピニオン4を有しており、そのピニオン4の近傍を複列円すいころ軸受1によって支持されている。また、ドライブピニオン軸3の軸部の外周には、複列円すいころ軸受1の反ピニオン側への軸方向移動を阻止するナット11がねじ結合している。
この複列円すいころ軸受1は、図1および図2に示すように、外周面に1つのテーパ状の軌道面5aが形成された2個の内輪5と、内周面に2つのテーパ状の軌道面6aが形成された1個の外輪6と、各内輪5の軌道面5aと外輪6の軌道面6aとの間に複列に配列される円すいころ7と、各列の円すいころ7をそれぞれ転動自在に保持する2個の保持器8とを備えている。その円すいころ7は、円すい台状に形成された転動面7aと、転動面7aの両側に連続する面取り部7b、7cと、大径側の面取り部7bに連続する大端面7dと、小径側の面取り部7cに連続する小端面7eとを有し、背面組合せの形態で(小端面7eどうしが対向する姿勢で)複列に配列されている。
各内輪5は、それぞれ軌道面5aの大径側端よりも大径に形成された大鍔9と、軌道面5aの小径側端よりも大径に形成された小鍔10とを有しており、小鍔10側(小径側)の端面どうしが当接する状態でドライブピニオン軸3の外周に嵌合固定されている。その大鍔9は、円すいころ7の大端面7dを受ける大鍔面9aと外径面9bとの間に面取り部9cが形成されており、大鍔面9aと軌道面5aとの間に研削逃げ部5bが形成されている(図5参照)。また、ピニオン側の内輪5は、大鍔9側の端面がピニオン4の背面に当接している。
外輪6は、2つのテーパ状の軌道面6aが小径側を軸方向中央に向けた状態で形成されたもので、ハウジング2の開口部の内周面に嵌合固定されている。
各保持器8は、周方向に等間隔に形成されたポケットに円すいころ7を収納する環状のかご形のものが用いられている。
ここで、この複列円すいころ軸受1では、負荷されるアキシアル荷重に対するピニオン側と反ピニオン側の軸方向変位量の比が一定範囲内に収まるように設計されており、その軸方向変位量の算出には、本願の発明者らが一般的な円すいころ軸受に対する多岐にわたる実験および解析に基づいて作成した算出式を用いている。
具体的には、まず、円すいころ7の長さ(ころ軸方向長さ)をL、円すいころ7の一端および他端の面取り部7b、7cの幅(ころ軸方向長さ)をL0とし(図2参照)、円すいころ7の有効長さをLwe、円すいころの1列あたりの本数をZ、負荷されるアキシアル荷重をFa、接触角をαとしたとき、軸方向変位量δは下記(1)~(4)式を用いて算出するものとする。
δ=K’・Fa0.9 ・・・(1)
K’=0.6・K/{(sin α)1.9・Lwe0.8・Z0.9} ・・・(2)
K=0.877+2.73・sin α+0.017・Lwe ・・・(3)
Lwe=L-3.0・L0 ・・・(4)
δ=K’・Fa0.9 ・・・(1)
K’=0.6・K/{(sin α)1.9・Lwe0.8・Z0.9} ・・・(2)
K=0.877+2.73・sin α+0.017・Lwe ・・・(3)
Lwe=L-3.0・L0 ・・・(4)
そして、図2に示すように、ピニオン側の円すいころ列の接触角をα1、反ピニオン側の円すいころ列の接触角をα2とし、そのα1とα2を上記(2)式および(3)式における接触角αにそれぞれ代入してピニオン側の軸方向変位量δ1と反ピニオン側の軸方向変位量δ2を算出したときに、その比δ1/δ2が1.0より小さく0.3以上となるように、ピニオン側と反ピニオン側の接触角α1、α2および円すいころ7の長さL、面取り部7b、7cの幅L0、1列あたりの本数Zを設定している。
上記のようにピニオン側と反ピニオン側の軸方向変位量の比δ1/δ2を1.0より小さくしているので、ピニオン側の剛性が反ピニオン側よりも高くなって、軸受寿命を延長できるとともに、ピニオンの歯当たり不良を防止できる。また、δ1/δ2を0.3以上としているので、ピニオン側の軸受剛性が高すぎず、予圧設定作業に手間がかかったり運転時に予圧抜けが生じたりするおそれがない。
また、この複列円すいころ軸受1では、以下に詳述するように、円すいころ7の大端面7dと内輪5の大鍔面9aとの間の潤滑不良による焼き付き等の不具合を防止するために、内輪5の大鍔面9a内に円すいころ7の大端面7dとの接触楕円が収まるような設計を行っている。
まず、一般に、円すいころは、円柱状の素材に圧造加工、研削加工を順に施すことにより製造されており、その圧造加工の際に、成形後の大端面となる面の中央部に圧造装置のパンチの押圧による凹部が形成される。
図3は、この複列円すいころ軸受1における円すいころ7の大端面7d付近の断面形状を模式的に示すものであり、円すいころ7の大端面7dの中央部に上述の凹部7fが形成されている。ここで、円すいころ7の大端面7dが設定した球面であるときの曲率半径(設定曲率半径)をRとし、ころ大端面7dと面取り部7bとの接続点をP1、P4、ころ大端面7dと凹部7fとの接続点をP2、P3、点P1とP2の中間点をP5、点P3とP4の中間点をP6とし、点P1、P5、P2を通る円弧の曲率半径をR152、点P3、P6、P4を通る円弧の曲率半径をR364、点P1、P5、P6、P4を通る円弧の曲率半径をR1564とすると、理想的には、R=R152=R364=R1564である。しかし、実際には、研削加工の際に大端面7dの面取り部7bおよび凹部7fとの接続領域がだれることにより、大端面7d全体の曲率半径R1564に対して、片側の曲率半径R152、R364は同一にできず、それぞれ小さく形成されてしまう。この大端面7dの研削加工後の片側の曲率半径R152、R364を実曲率半径RACTUALという。
そして、内輪5の大鍔面9aは円すいころ7の凹部7fとは滑り接触せず、円すいころ7が実際に滑り接触する部分の曲率半径は、ころ大端面7dの設定曲率半径Rよりも小さい実曲率半径RACTUAL(R152、R364)となる。この分、実際のころ大端面7dと内輪大鍔面9aとの接触面圧および円すいころ7のスキュー角は、それぞれの設計上の理想値に比して大きくなる。油膜が十分でない環境でスキュー角や接触面圧が大きくなると、内輪大鍔面9a内にころ大端面7dとの接触楕円が収まらなくなり、ころ大端面7dと内輪大鍔面9aの滑り接触が不安定になって、焼付き発生の懸念が高まる。これに対し、この複列円すいころ軸受1では、円すいころ7の大端面7dの実曲率半径RACTUALと設定曲率半径Rの比RACTUAL/Rを0.3以上とすることにより、スキュー角や接触面圧の増大を抑え、内輪大鍔面9a内にころ大端面7dとの接触楕円が収まるようにしている。また、RACTUAL/Rの上限値は、ころ大端面7dの加工性を考慮して0.98以下としている。
ここで、この複列円すいころ軸受1では、ピニオン側に負荷される荷重が反ピニオン側よりも高くなるため、ピニオン側のころ大端面7dの設定曲率半径Rもしくは実曲率半径RACTUALを反ピニオン側よりも大きくすることが好ましい。
また、円すいころ7の大端面7dの設定曲率半径Rと、図4に示す転動面7aの円すい角βの頂点Oから内輪5の大鍔面9aまでの基本曲率半径RBASEとの比R/RBASEは、ころ大端面7dと内輪大鍔面9aの滑り接触部における油膜形成能力に関係する。その滑り接触部に形成される油膜厚さをKarnaの式を用いて計算すると、油膜厚さはR/RBASEが0.76のときに最大となり、1.0に近づくと急激に減少する。一方、R/RBASEが小さくなるほど、ころ大端面7dと内輪大鍔面9aとの接触面圧や円すいころ7のスキュー角は大きくなる。そこで、この複列円すいころ軸受1では、R/RBASEを0.50以上0.95以下に設定して、十分な油膜厚さを確保しつつ、接触面圧およびスキュー角の増大を抑えて、内輪大鍔面9a内にころ大端面7dとの接触楕円が収まるようにしている。ここで、良好な油膜厚さを保つには、内輪大鍔面9aの表面粗さを0.12μmRa以下とすることが好ましい。なお、図4は、反ピニオン側のみを示しているが、ピニオン側についても同様の設計となる(後述の図5、図6も同じ)。
さらに、図4に示すように内輪5の軌道面5aの母線と中心軸CLとがなす鋭角をθとし、円すいころ7の転動面7aの大端径をDwとし、図5に示すように内輪5の大鍔面9aの幅(径方向長さ)をWとしたときに、その内輪大鍔面9aの幅Wは下記(5)式を満足する値となるように設定している。
W≧{Dw×(1/2)×tan θ/(L/Dw)} ・・・(5)
W≧{Dw×(1/2)×tan θ/(L/Dw)} ・・・(5)
この(5)式は、ころ大端面7dと内輪大鍔面9aとを良好な接触状態に保てるように、適正な内輪大鍔面9aの幅Wの下限値を決めるためのものである。すなわち、この複列円すいころ軸受1に負荷されるラジアル荷重(アキシアルとの複合では動等価荷重)は、内輪5の軌道面5aの傾斜角θに従って、その軌道面5aに負荷される荷重と、内輪大鍔面9aに負荷される荷重とに分配される。この分配の比率をtan θで表し、軸受負荷容量に関わりの深い円すいころ7の転動面7aの大端径Dwを乗ずる。また、通常、円すいころ軸受の運転時に負荷される荷重は凡そ軸受負荷容量の半分以下の大きさであるから、これを考慮するために(1/2)を乗ずる。さらに、ころ長さLが長いと、前述の分配比率における内輪5の軌道面5aでの受け率が大きくなることも考慮し、円すいころ7の長さLと転動面7aの大端径Dwの関係も(L/Dw)-1として考慮に入れた。この(5)式により、負荷荷重に応じた内輪大鍔面9aの幅Wの下限値を設定した。これにより、円すいころ7のスキューや、大きなモーメント荷重による内輪5の大鍔9の倒れ等が発生して、ころ大端面7dと内輪大鍔面9aの滑り接触部が内輪5の大鍔9の外径側に広がったときにも、良好な接触を保つことができる。
ここで、内輪5は大鍔面9aの外径側縁にころ大端面7dが滑り接触すること(エッジ当たり)を防ぐために、図6に示す変形例のように、大鍔面9aと面取り部9cとの間に逃げ面9dを形成してもよく、その場合の逃げ面9dの幅は(5)式における大鍔面9aの幅Wに含めない。
また、前述のように、この複列円すいころ軸受1ではピニオン側に負荷される荷重が反ピニオン側よりも高くなることから、ピニオン側の内輪大鍔面9aの幅Wを反ピニオン側よりも大きくすることが好ましい。
この複列円すいころ軸受1は、上述したように、接触角のほかに円すいころの長さや本数の影響も考慮した(1)~(4)式を用いて算出されるピニオン側と反ピニオン側の軸方向変位量の比δ1/δ2を1.0より小さく0.3以上となるようにしたので、ピニオン側と反ピニオン側の軸受剛性のバランスを適切に設定でき、軸受寿命の延長、ピニオンの歯当たり不良の防止、予圧設定の作業性向上および運転時の予圧抜けの防止を図ることができる。
また、RACTUAL/Rを0.3以上0.98以下とし、かつR/RBASEを0.50以上0.95以下としたので、内輪大鍔面9a内にころ大端面7dとの接触楕円が収まり、厳しい潤滑環境下でも、ころ大端面7dと内輪大鍔面9aの滑り接触部における潤滑不良が生じにくく、耐焼付き性に優れたものとなっている。
さらに、内輪5の大鍔面9aの幅Wが上述の(5)式を満足するようにしているので、外乱によってころ大端面7dと内輪大鍔面9aの滑り接触部が内輪5の大鍔9の外径側に広がったときにも、その滑り接触部を良好な接触状態に保つことができ、この点も耐焼付き性を高める要因となっている。
図7は第2実施形態の複列円すいころ軸受1を示す。この実施形態は、第1実施形態をベースとして、2個の内輪5の幅寸法を第1実施形態よりも小さくし、その2個の内輪5を小径側の端面どうしの間に隙間のある状態で組み込んでおり、軸受組立時に反ピニオン側の内輪5の大径側端面からの幅方向(軸方向)の締め込みにより予圧荷重をかけることができるようになっている。
したがって、図8に示すような予圧荷重と軸受回転トルクの関係を予め把握しておき、軸受組立時に締め込みを行いながら軸受回転トルクを測定して、予圧荷重を間接的に管理することにより、適切な予圧荷重を設定することができる。その設定方法は、例えば、図8に示すように、予圧荷重の適正範囲(適正予圧範囲)に対応する軸受回転トルクの範囲の中央値を狙いトルク値として、締め込みを行うようにすればよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 複列円すいころ軸受
2 ハウジング
3 ドライブピニオン軸
4 ピニオン
5 内輪
5a 軌道面
6 外輪
6a 軌道面
7 円すいころ
7a 転動面
7b、7c 面取り部
7d 大端面
8 保持器
9 大鍔
9a 大鍔面
2 ハウジング
3 ドライブピニオン軸
4 ピニオン
5 内輪
5a 軌道面
6 外輪
6a 軌道面
7 円すいころ
7a 転動面
7b、7c 面取り部
7d 大端面
8 保持器
9 大鍔
9a 大鍔面
Claims (4)
- 外周面に軌道面が形成された2個の内輪と、内周面に2つの軌道面が形成された1個の外輪と、前記内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に背面組合せの形態で複列に配列される円すいころと、前記各列の円すいころをそれぞれ転動自在に保持する保持器とを備え、車両のドライブピニオン軸をピニオン近傍で支持する複列円すいころ軸受において、
前記内輪は、前記軌道面を1つ有するものどうしが、それぞれの小径側の端面を互いに対向させ、隙間をおいた状態で前記ドライブピニオン軸に組み付けられていることを特徴とする複列円すいころ軸受。 - 外周面に軌道面が形成された2個の内輪と、内周面に2つの軌道面が形成された1個の外輪と、前記内輪の軌道面と外輪の軌道面との間に背面組合せの形態で複列に配列される円すいころと、前記各列の円すいころをそれぞれ転動自在に保持する保持器とを備え、車両のドライブピニオン軸をピニオン近傍で支持する複列円すいころ軸受において、
前記円すいころは、円すい台状に形成された転動面と、前記転動面の両側に連続する面取り部とを有しており、
前記円すいころの長さをL、前記円すいころの一端および他端の面取り部の幅をL0、前記円すいころの有効長さをLwe、前記円すいころの1列あたりの本数をZ、負荷されるアキシアル荷重をFa、接触角をαとしたときに、軸方向変位量δは下記(1)~(4)式を用いて算出するものとし、
δ=K’・Fa0.9 ・・・(1)
K’=0.6・K/{(sin α)1.9・Lwe0.8・Z0.9} ・・・(2)
K=0.877+2.73・sin α+0.017・Lwe ・・・(3)
Lwe=L-3.0・L0 ・・・(4)
前記ピニオン側の円すいころ列の接触角をα1、反ピニオン側の円すいころ列の接触角をα2とし、そのα1とα2を上記(2)式および(3)式における接触角αにそれぞれ代入してピニオン側の軸方向変位量δ1と反ピニオン側の軸方向変位量δ2を算出したときに、δ1/δ2が1.0より小さく0.3以上となっていることを特徴とする複列円すいころ軸受。 - 前記円すいころの大端面の設定曲率半径をRとし、前記円すいころの大端面の実曲率半径をRACTUALとしたとき、RACTUAL/Rが0.3以上0.98以下であり、
前記転動面の円すい角の頂点から前記円すいころの大端面を受ける内輪の大鍔面までの基本曲率半径をRBASEとしたとき、R/RBASEが0.50以上0.95以下である請求項1または2に記載の複列円すいころ軸受。 - 前記内輪の軌道面の母線と中心軸とがなす鋭角をθとし、前記円すいころの転動面の大端径をDwとし、前記円すいころの大端面を受ける内輪の大鍔面の幅をWとしたときに、前記内輪の大鍔面の幅Wが下記(5)式を満足する値である請求項1乃至3のいずれかに記載の複列円すいころ軸受。
W≧{Dw×(1/2)×tan θ/(L/Dw)} ・・・(5)
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