JP2023101278A - 位相差フィルムの製造方法 - Google Patents

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【課題】光学軸の配向角のバラツキが小さい位相差フィルムを提供する。【解決手段】位相差フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす。位相差フィルムの製造においては、ガラス転移温度がTg1であるポリマーフィルムの少なくとも一方の面に熱収縮性フィルムが積層された積層体(10)を、加熱しながら一方向に延伸する。ポリマーフィルムのガラス転移温度Tg1と延伸温度Tとの差(T-Tg1)を、延伸前のポリマーフィルムの厚みd1で割った値(T-Tg1)/d1は、0.03℃/μm以上である。延伸時間(延伸工程において、Tg1以上の温度での加熱時間)は、40秒以上である。【選択図】図1

Description

本発明は、位相差フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置等のディスプレイには、コントラスト向上、視野角拡大等の光学補償や、金属電極で反射した外光の遮蔽(反射防止)のために、位相差フィルムが用いられている。非液晶性のポリマーを用いた位相差フィルムは、ポリマーフィルムを少なくとも一方向に延伸することにより光学異方性が付与される。
ポリマーフィルムを、縦延伸(自由端一軸延伸)すると、延伸方向にポリマーの分子鎖が配向するとともに、延伸方向と直交する方向、すなわち、幅方向および厚み方向には収縮作用が生じる。正の固有屈折率を有するポリマーのフィルムを縦延伸すると、長手方向の屈折率(nx)が大きくなり、幅方向の屈折率(ny)および厚み方向の屈折率(nz)が小さくなる。自由端一軸延伸では、幅方向の収縮率(幅の減少率)と、厚みの減少率が略同一であるため、nx>ny≒nzの屈折率異方性を有する位相差フィルム(ポジティブAプレート)が得られる。
ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に熱収縮性フィルムを積層した状態で加熱しながら積層体を延伸すると、熱収縮性フィルムの収縮力の影響により、通常の自由端一軸延伸に比べて幅方向(延伸方向と直交する方向)の収縮量が大きくなる。幅方向(進相軸方向)の屈折率nyがより小さくなり、厚み方向の屈折率nzが相対的に大きくなるため、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムが得られる(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムは、視認角度による位相差の変化が小さく、液晶表示装置の光学補償フィルムや、円偏光板用のλ/4板として用いられている。
特開2006-72309号公報 特開2006-91836号公報
画像表示装置に用いられる位相差フィルムは、画像表示装置の使用時に高温環境に長時間曝された場合でも、光学特性の変化が小さいことが要求されている。特に、車載用の画像表示装置に用いられる位相差フィルムには、より高温での耐久性が求められ、近年では100℃以上の高温耐久試験後でも光学特性の変化が生じないことが要求されている。
熱収縮性フィルムの収縮力を利用して、nx>nz>nyの屈折率異方性を持たせた位相差フィルムは、自由端一軸延伸によりnx>ny≒nzの屈折率異方性を持たせた位相差フィルムに比べて、加熱によるレターデーションの変化が生じやすく、加熱耐久性の向上が求められている。
上記に鑑み、本発明は、nx>nz>nyの屈折率異方性を有し、加熱によるレターデーションの変化が小さい位相差フィルムの提供を目的とする。
本発明の一態様は、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす位相差フィルムの製造方法である。ガラス転移温度がTgであるポリマーフィルムの少なくとも一方の面に熱収縮性フィルムが積層された積層体を、加熱しながら一方向に延伸し、熱収縮性フィルムを剥離除去することにより、nx>nz>nyを満たす位相差フィルムが得られる。
延伸に際しては、ポリマーフィルムのガラス転移温度Tgよりも高温の延伸温度Tで延伸が行われる。ガラス転移温度Tgと延伸温度Tとの差(T-Tg)を、延伸前のポリマーフィルムの厚みdで割った値(T-Tg)/dは、0.03℃/μm以上である。延伸工程において、Tg以上の温度での加熱時間は、40秒以上である。
位相差フィルムの正面レターデーションは230~320nmであってもよい。位相差フィルムのNZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数は、0.4~0.8であってもよい。
本発明の位相差フィルムは、高温環境に長時間曝された場合でも光学特性の変化が小さく、加熱耐久性に優れている。
ポリマーフィルムと熱収縮性フィルムとの積層体を自由端一軸延伸する様子を模式的に示す断面図である。 実施例および比較例の位相差フィルムの加熱試験後のレターデーションの変化率を示すグラフである。
本発明の一実施形態にかかる位相差フィルムは、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する。nxは面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内の進相軸方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率である。ポリマーフィルム(未延伸フィルム)に熱収縮性フィルムを積層した積層体を一方向に延伸することにより、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムが得られる。
ポリマーフィルムの材料としては、正の固有複屈折を有する非液晶性のポリマー材料が好ましく用いられる。正の固有複屈折を有するポリマーは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に大きくなる。正の固有複屈折を有する非液晶性ポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド等のスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系(ポリノルボルネン系)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロースエステル類等が挙げられる。
一実施形態において、ポリマーフィルムの材料として、環状ポリオレフィン系樹脂が用いられる。環状ポリオレフィンは、透明性および耐熱性に優れるとともに、耐薬品性にも優れており、ディスプレイ用の光学フィルム材料として好適である。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα‐オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体や水素化物等が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、日本ゼオン製の「ゼオノア」および「ゼオネックス」、JSR製の「アートン」、三井化学製の「アペル」、TOPAS ADVANCEDPOLYMERS製の「トパス」等が挙げられる。
環状ポリオレフィン系フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂を50重量%以上含有するものが好ましい。環状ポリオレフィン系フィルムにおける環状ポリオレフィン系樹脂の含有量は、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上または95重量%以上であってもよい。
ポリマーフィルムの製造方法としては、溶液キャスト法、溶融押出法等の公知の方法を採用できる。フィルム中には、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
フィルムの厚みdは特に限定されないが、一般には、5μm~300μm程度である。フィルムの厚みdは、200μm以下、150μm以下、120μm以下または100μm以下であってもよい。後述のように、ポリマーフィルムの厚みdが小さく、延伸温度が高いほど、位相差フィルムが加熱耐久性に優れる傾向がある。位相差発現性の観点から、フィルムの厚みdは、50μm以上、70μm以上または80μm以上であってもよい。
耐熱性の観点から、ポリマーフィルムのガラス転移温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、130℃以上または135℃以上であってもよい。延伸加工性の観点から、ポリマーフィルムのガラス転移温度は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、170℃以下または160℃以下であってもよい。ポリマーフィルムのガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により得られたDSC曲線の変曲点である。
熱収縮性フィルムは、上記のポリマーフィルムに貼り合わせて延伸する際に、延伸方向と直交する方向に熱収縮するものであれば特に限定されない。熱収縮性フィルムを構成する材料は特に限定されないが、ポリマーフィルムのガラス転移温度付近で熱収縮するものが好ましい。汎用性に優れ安価であることから、熱収縮性フィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリエステル類が好ましく用いられる。
熱収縮性フィルムは、ポリマーフィルムのガラス転移温度Tgにおける収縮応力が0.5N/4mm以上であるものが好ましい。熱収縮性フィルムは、収縮率が異方性を有していてもよい。熱収縮性フィルムが収縮率異方性を有している場合、ポリマーフィルムのガラス転移温度Tgにおいて、ポリマーフィルムの延伸方向と直交する方向における収縮応力が0.5N/4mm以上であることが好ましい。
熱収縮性フィルムは、ポリマーフィルムの一方の面に積層してもよく、ポリマーフィルムの両面に積層してもよい。ポリマーフィルムの表面に適宜の粘着剤層を介して熱収縮性フィルムを貼り合わせることにより、ポリマーフィルムと熱収縮性フィルムとの積層体が形成される。熱収縮性フィルムを支持基材として、その上にポリマー溶液を塗布して溶媒を乾燥し、熱収縮性フィルム上に延伸対象のポリマーフィルム(塗膜)が密着積層された積層体を形成してもよい。
図1は、ポリマーフィルムと熱収縮性フィルムとの積層体10を自由端一軸延伸する様子を模式的に示す断面図である。加熱炉30の入口側(上流)には、一対のニップロール51,52が設けられており、加熱炉30の出口側(下流)には、一対のニップロール61,62が設けられている。出口側ニップロール61,62の周速度を入口側ニップロール51,52の周速度よりも大きくすることにより、積層体10は、加熱炉30内で、搬送方向に延伸される。延伸倍率(出口側ニップロールと入口側ニップロールの周速比)は、目的とする光学特性に応じて、例えば、1.01倍~2倍程度の範囲で設定される。
加熱炉30は、積層体10の搬送方向(延伸方向)に沿って、個別に温度調整可能な複数の加熱ゾーンを有していてもよい。図1では、加熱炉30が、上流側の第一ゾーン31と下流側の第二ゾーン32を有する形態を示している。加熱炉には3以上の加熱ゾーンが設けられていてもよい。各加熱ゾーンは隔壁により仕切られていてもよい。加熱炉が複数の加熱ゾーンに仕切られている場合、各加熱ゾーンにおける加熱温度は同一であってもよく異なっていてもよい。
熱収縮性フィルムを積層していない単体のフィルムを、搬送方向に沿って延伸倍率p倍で延伸すると、幅と厚みが同一の比率で減少するため、幅および厚みは、それぞれ延伸前の(1/√p)倍となる。熱収縮性フィルムを積層した状態で搬送方向に沿って延伸すると、熱収縮性フィルムが幅方向に収縮するため、ポリマーフィルム単体の場合よりも、幅方向の収縮量が大きくなる。そのため、延伸倍率がp倍の場合、延伸後のフィルムの幅は、延伸前の(1/√p)倍よりも小さくなり、延伸後のフィルムの厚みは、延伸前の(1/√p)倍よりも大きくなる。これに伴って、幅方向(進相軸方向)の屈折率nyはより小さくなり、厚み方向の屈折率nzが相対的に大きくなるため、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムが得られる。
加熱炉30内での加熱温度(延伸温度)Tは、ポリマーフィルムのガラス転移温度Tgよりも高温である。延伸温度は、加熱炉30内において、積層体10から10mmの範囲内での最高温度である。加熱炉30内で搬送方向に沿って温度分布が存在する場合は、最も温度が高い場所で、フィルムの延伸が進行しやすい。複数の加熱ゾーンの加熱温度が異なる場合は、最も温度が高い加熱ゾーンの温度を延伸温度Tとする。
延伸温度Tは、(Tg+3)℃以上が好ましく、(Tg+5)℃以上がより好ましく、(Tg+7)℃以上がさらに好ましく、(Tg+9)℃以上、(Tg+10)℃以上または(Tg+11)℃以上であってもよい。延伸温度が高いほど、位相差フィルムが加熱耐久性に優れる傾向がある。一方、延伸温度が過度に高い場合は、延伸による位相差発現性が低く、目的とする正面レターデーションが得られない場合がある。そのため、延伸温度Tは、(Tg+20)℃以下が好ましく、(Tg+15)℃以下がより好ましい。
ポリマーフィルムのガラス転移温度Tgと延伸温度Tとの差(T-Tg)を、延伸前のポリマーフィルムの厚みdで割った値(T-Tg)/dは、0.03℃/μm以上である。(T-Tg)/dは、0.05℃/μm以上が好ましく、0.07℃/μm以上がより好ましく、0.10℃/μm以上がさらに好ましい。(T-Tg)/dが大きいほど、位相差フィルムが加熱耐久性に優れ、高温で加熱した際の正面レターデーションの変化が小さくなる傾向がある。
加熱炉30内での積層体10の加熱時間(延伸時間)は、40秒以上が好ましく、50秒以上であってもよい。加熱時間が過度に短いと、(T-Tg)/dの値が大きい場合でも、位相差フィルムの加熱耐久性が不十分となる場合がある。加熱時間(延伸)が短い場合は、ポリマーの分子鎖が急激に引き伸ばされるために、位相差フィルムに歪みが残留しやすい。位相差フィルムを加熱すると、歪が解放される際にポリマーの分子鎖の配向が緩和するために、歪みが大きい位相差フィルムは、加熱により分子鎖の配向が緩和されやすく、これに伴ってレターデーションが低下しやすいと考えられる。
延伸時間が長いほど、位相差フィルムの加熱によるレターデーションの変化が小さくなる傾向がある。一方、生産性および位相差発現性の観点から、延伸時間は、360秒以下が好ましく、300秒以下であってもよい。
加熱炉30内で、延伸方向(搬送方向)に沿って温度が均一である場合は、加熱炉の温度が延伸温度であり、加熱炉内を積層体10が滞留している時間が延伸時間である。加熱炉30内で延伸方向に沿った温度分布が存在する場合、例えば、加熱炉30が複数の加熱ゾーン31,32を有し、各加熱ゾーンの温度が異なる場合は、加熱炉内での最高温度が延伸温度Tであり、加熱炉内で温度がTg以上である時間が延伸時間である。例えば、第一ゾーン31の温度TがTgよりも低く、第二ゾーン32の温度TがTgよりも高い場合は、積層体10の第二ゾーン32での滞留時間が延伸時間である。
加熱炉内で積層体を延伸した後、ポリマーフィルムから熱収縮性フィルムを剥離除去することにより、位相差フィルムが得られる。位相差フィルムの正面レターデーションReは、例えば15nm~400nm程度であり、100nm以上であってもよく、150nm以上であってもよく、200nm以上であってもよい。位相差フィルムを1/2波長板(λ/2板)として使用する場合、波長550nmにおける正面レターデーションは、230~320nmが好ましく、240~310nmがより好ましく、250~300nmであってもよい。
nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムは、NZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数が、0<NZ<1を満たす。位相差フィルムのNZ係数は、0.2~0.8が好ましく、0.3~0.7がより好ましく、0.4~0.6がさらに好ましい。NZ係数が0.5に近い位相差フィルムは、視認角度によるレターデーションの変化がなく、液晶表示装置の光学補償フィルムや、円偏光板用の位相差フィルムとして用いられている。
延伸時の熱収縮性フィルムの収縮力による幅方向の収縮作用が大きいほど、位相差フィルムのNZ係数が小さくなる傾向がある。延伸温度Tが高いほど、熱収縮性フィルムの収縮量が大きくなるため、NZ係数が小さくなる傾向がある。延伸温度が低いほど、NZ係数が大きく(1に近く)、正面レターデーションが大きくなる傾向がある。また、同一の延伸温度では、延伸倍率が大きいほど、正面レターデーションが大きく、NZ係数が大きくなる傾向がある。
位相差フィルムの正面レターデーションReは、面内複屈折Δn=nx-nyと、厚みdの積Δn×dで表される。延伸前のフィルムの厚みdが大きいほど、延伸後のフィルムの厚みdが大きくなる傾向があるため、dが大きいほど、正面レターデーションReが大きくなる傾向がある。
上記の通り、本発明においては、延伸温度Tが高く、フィルムの厚みdが小さいことにより、(T-Tg)/dが大きくなり、加熱による正面レターデーションの変化が小さい位相差フィルムが得られる。一方、延伸温度Tが高く、厚みdが小さい場合は、正面レターデーションReが小さくなる傾向がある。そのため、λ/2板として使用可能な高レターデーションの位相差フィルムを得るためには、延伸倍率を高める必要がある。
(T-Tg)/dが上述の範囲を満たしつつ、λ/2板として適用可能な位相差フィルムを得る観点から、延伸倍率は、1.18倍以上が好ましく、1.22倍以上がより好ましく、1.24倍以上がさらに好ましく、1.26倍以上、1.28倍以上または1.30倍以上であってもよい。前述のように、延伸倍率は一般に2倍以下であり、1.8倍以下、1.6倍以下、1.5倍以下または1.4倍以下であってもよい。
位相差フィルムは、液晶表示装置の光学補償等を目的とした画像表示装置用光学フィルムとして適用できる。NZ係数が1より小さい位相差フィルムの用途としては、液晶表示装置の光学補償や、有機EL表示装置の反射光を遮蔽するための円偏光板が挙げられる。位相差フィルムの正面レターデーションおよびNZ係数は、位相差フィルムの用途や、画像表示装置の光学設計等に応じて適宜に設定される。
例えば、IPS方式の液晶表示装置は、偏光子の吸収軸に対して45度の角度(方位角45度、135度、225度、315度)において斜め方向から視認した場合に、黒表示の光漏れが大きく、コントラストの低下やカラーシフトが生じ易い。液晶セルと偏光子との間に、正面レターデーションが波長λの1/2であり、NZ係数が0.5である位相差フィルムを配置することにより、斜め方向の黒輝度を低減し、コントラストを向上できる。
位相差フィルムを偏光子と積層一体化して偏光板を形成してもよい。偏光子の一方の主面に、適宜の接着剤層または粘着剤層を介して位相差フィルムを貼り合わせることにより、偏光板が得られる。偏光子と位相差フィルムの間に、他のフィルムが積層されていてもよい。
偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。
PVA系偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号パンフレット、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。このような薄型偏光子は、例えば、PVA系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸し、ヨウ素染色することにより得られる。
偏光子と位相差フィルムの配置角度は特に限定されない。例えば、液晶表示装置を斜め方向から視認した際の光抜けを抑制する光学補償の目的で位相差フィルムを用いる場合、偏光子の吸収軸方向と、位相差フィルムの遅相軸方向とが、平行または直交となるように、両者を配置することが好ましい。偏光子と位相差フィルムとを積層して円偏光板を形成する場合は、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度が45°となるように両者を配置することが好ましい。なお、配置角度は、厳密に上記の範囲である必要はなく、±2°程度の誤差を含んでいてもよい。
偏光子の他方の面には、適宜の接着剤層または粘着剤層を介して、偏光子保護フィルムとしての透明フィルムが貼り合わせられていてもよい。偏光板には、上記の位相差フィルムおよび偏光子保護フィルム以外の光学フィルムが積層されていてもよい。偏光板には、画像表示セル等との貼り合わせのための接着剤層や粘着剤層が積層されていてもよい。
位相差フィルムおよび偏光板は、画像表示装置用光学フィルムとして用いることができる。例えば、画像表示セルの表面に、位相差フィルムを備える偏光板を、適宜の粘着剤を介して貼り合わることにより、画像表示パネルが得られる。画像表示セルが液晶セルである場合には、さらに光源としてのバックライトを組み合わせることにより、液晶表示装置が形成される。
以下に、実施例および比較例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[フィルムの製造例]
<製造例1>
環状ポリオレフィン樹脂のペレット(JSR製「ARTON R5000」、ガラス転移温度:136℃)を用い、溶融押出法により、厚み133μm、153μm、174μmまたは194μmの未延伸フィルムを作製した。
<製造例2>
環状ポリオレフィン樹脂のペレット(JSR製「ARTON RH4900」、ガラス転移温度:141℃)を用い、溶融押出法により、厚み92μm、133μm、153μm、174μmまたは194μmの未延伸フィルムを作製した。
[フィルムの延伸]
製造例1,2で得られた未延伸フィルムの両面に、熱収縮性を有する二軸延伸プロピレンフィルム(東レ製「トレファン」)を、粘着剤を介して貼り合わせて積層体を得た。ロール延伸機により、この積層体を、表1に示す条件で自由端一軸延伸(縦延伸)した後、両面に貼り合わせられた熱収縮性フィルムを剥離除去して、位相差フィルムを得た。
[評価]
<位相差特性>
位相差フィルムの幅方向の中央部から、50mm×50mmのサイズの試料を10個切り出し、それぞれの試料を粘着剤付きのガラス板に貼り合わせた。偏光・位相差測定システム(Axometrics製「AxoScan」)により、測定波長550nmで、正面レターデーション、および遅相軸方向を回転中心として試料を40°傾斜した状態でのレターデーションを測定した。これらの測定値から、波長550nmにおける正面レターデーション:Re=(nx-ny)×dおよびNZ係数:NZ=(nx-nz)/(nx-ny)を算出した。nxは面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内の進相軸方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率、dは厚みである。10個の試料の正面レターデーションReおよびNZ係数の平均値を、実施例および比較例の位相差フィルムのReおよびNZとした。
<加熱試験>
位相差特性を測定後の試料10点のうち、5点を85℃のオーブン、5点を105℃のオーブンに投入し、500時間加熱を行った後、再度正面レターデーションReを測定し、それぞれの試料について、加熱前の正面レターデーションReからの変化率(%):100×(Re―Re)/Reを算出した。85℃で加熱試験を実施した5点の試料の変化率の平均値、および105℃で加熱試験を実施した5点の試料の正面レターデーションReの変化率の平均値を算出した。
実施例および比較例における未延伸フィルムのガラス転移温度Tgおよび厚みd、延伸条件(延伸温度T、延伸倍率および延伸時間)、ならびに位相差フィルムの評価結果を表1に示す。また、延伸時間が60秒である実施例1~8,10、比較例1,3~6について、横軸に(T-Tg)/d、縦軸に加熱試験後のReの変化率をプロットしたものを図2に示す。
Figure 2023101278000002
延伸時間が60秒である実施例1~8,10、比較例1,3~6では、(T-Tg)/dの値が大きいほど、加熱試験後のReの変化が小さく、加熱耐久性に優れる傾向がみられた。図2によれば、(T-Tg)/dと加熱試験後のReの変化量には高い相関がみられており、ガラス転移温度が136℃である製造例1のフィルムを用いた実施例1~8および比較例1と、ガラス転移温度が141℃である製造例2のフィルムを用いた実施例10および比較例3~5で、同一の傾向を示していることが分かる。
実施例5と同一の延伸温度および延伸倍率で延伸時間を30秒に変更した比較例2では、実施例5に比べて加熱試験後のReの変化率が大きくなっていた。一方、実施例5と同一の延伸温度および延伸倍率で延伸時間を300秒に変更した実施例9では、実施例5と同等の優れた加熱耐久性を有していた。
これらの結果から、(T-Tg)/dが大きく、かつ延伸時間を確保することにより、加熱による正面レターデーションの変化が小さく、加熱耐久性に優れる位相差フィルムを得られることが分かる。
10 積層体
30 加熱炉
31,32 加熱ゾーン
51,52 入口側ニップロール
61,62 出口側ニップロール

Claims (5)

  1. 面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす位相差フィルムの製造方法であって、
    ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に熱収縮性フィルムが積層された積層体を、加熱しながら一方向に延伸する延伸工程を有し、
    前記ポリマーフィルムは、厚みがd、ガラス転移温度がTgであり、
    前記延伸工程における延伸温度Tが、前記ポリマーフィルムのガラス転移温度がTgよりも高温であり、
    (T-Tg)/dが0.03℃/μm以上であり、
    前記延伸工程において、Tg以上の温度での加熱時間が40秒以上である、
    位相差フィルムの製造方法。
  2. 位相差フィルムの正面レターデーションが230~320nmである、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
  3. 位相差フィルムのNZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数が、0.4~0.6である、請求項1または2に記載の位相差フィルムの製造方法。
  4. 前記ポリマーフィルムが環状ポリオレフィン系フィルムである、請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。
  5. 前記延伸工程における延伸倍率が1.18以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の位相差フィルムの製造方法。

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