<用語および記号の定義>
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)偏光板の透過率
透過率(T)は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
(2)屈折率(nx、ny、nz):
「nx」は面内の屈折率が最大となる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(3)面内の位相差値:
面内の位相差値(Re[λ])は、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの面内の位相差値をいう。Re[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Re[λ]=(nx−ny)×dによって求められる。
(4)厚み方向の位相差値:
厚み方向の位相差値(Rth[λ])は、23℃で波長λ(nm)におけるフィルムの厚み方向の位相差値をいう。Rth[λ]は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、Rth[λ]=(nx−nz)×dによって求められる。
(5)Nz係数:
Nz係数は、式;Rth[550]/Re[550]により算出される値である。
(6)R40[λ]は、23℃で波長λ(nm)における層(フィルム)の法線方向から40°傾斜させて測定した位相差値をいう。
(7)波長分散値D(B/G)は、式;R40[450]/R40[550]から算出される値である。
(8)本明細書において、「nx=ny」または「ny=nz」と記載するときは、これらが完全に同一である場合だけでなく、実質的に同一である場合を包含する。したがって、例えば、nx=nyと記載する場合は、Re[550]が10nm未満である場合を包含する。
(9)本明細書において「実質的に直交」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、90°±2°である場合を包含し、好ましくは90°±1°である。「実質的に平行」とは、光学的な2つの軸のなす角度が、0°±2°である場合を包含し、好ましくは0°±1°である。
(10)本明細書において、例えば、添え字の「1」は第1の光学補償層を表し、添え字の「2」は第2の光学補償層を、「CELL」は液晶セルをそれぞれ表す。
<A.液晶パネルの概要>
図1(a)は、本発明の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。図1(a)の実施形態において、液晶パネル100は、視認側から、第1の偏光板10、第1の光学補償層20、VAモードの液晶セル30、第2の光学補償層40、および、第2の偏光板50をこの順に備える。図1(b)は、本発明の別の好ましい実施形態による液晶パネルの概略断面図である。図1(b)の実施形態においては、液晶パネル100’は、視認側から、第2の偏光板50、第2の光学補償層40、VAモードの液晶セル30、第1の光学補償層20、および、第1の偏光板10をこの順に備える。第1の偏光板10と第1の光学補償層20との間、第1の光学補償層20と液晶セル30との間、液晶セル30と第2の光学補層層40との間、および、第2の光学補償層40と第2の偏光板50との間には、任意の接着層(図示せず)が配置され得る。該第1の光学補償層20は、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を満たす。該第2の光学補償層40は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を満たす。
本発明の液晶パネル100,100’において、第1の光学補償層20の波長分散値D1(B/G)と第2の光学補償層40の波長分散値D2(B/G)は、D1(B/G)≦D2(B/G)の関係を満たし、かつ、第2の光学補償層40の波長分散値D2(B/G)と液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)が1.040<D2(B/G)/DCELL(B/G)<1.220の関係を満たす。第1の光学補償層20の波長分散値、液晶セル30の波長分散値、および、第2の光学補償層40の波長分散値が上記の関係を満たすことにより、斜め方向における光抜けを低減することができ、液晶パネルのコントラスト比を向上させることができる。
好ましくは、上記第1の偏光板は第1の偏光子を含み、上記第2の偏光板は第2の偏光子を含む。好ましくは、上記第1の偏光子の吸収軸と上記第1の光学補償層の遅相軸とは実質的に直交している。好ましくは、上記第2の偏光子の吸収軸と上記第2の光学補償層の遅相軸とは実質的に直交している。このような配置であれば、斜め方向からの光抜けをより低減することができ、液晶パネルのコントラスト比を向上させることができる。
<B.液晶セル>
本発明に用いられるVAモードの液晶セルとしては、任意の適切なものが採用され得る。図1(a)(b)に示すように、上記液晶セルは、好ましくは、一対の基板11,11’と、該一対の基板に挟持された表示媒体としての液晶層12を有する。一方の基板(アクティブマトリクス基板)には、液晶の電気光学特性を制御するスイッチング素子(代表的には、TFT)と、このスイッチング素子にゲート信号を与える走査線およびソース信号を与える信号線とが設けられる。他方の基板(カラーフィルター基板)には、カラーフィルターが設けられる。
上記カラーフィルターは、上記アクティブマトリクス基板に設けてもよい。あるいは、フィールドシーケンシャル方式のように液晶表示装置の照明手段にRGB3色光源(さらに、多色の光源を含んでいてもよい)が用いられる場合は、上記カラーフィルターは省略され得る。2つの基板の間隔(セルギャップ)は、スペーサー(図示せず)によって制御される。各基板の液晶層を接する側には、例えば、ポリイミドからなる配向膜が設けられる。あるいは、例えば、パターニングされた透明電極によって形成されるフリンジ電界を利用して、液晶分子の初期配向が制御される場合には、上記配向膜は省略され得る。
上記液晶セルは、好ましくは、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を含む。本明細書において、「ホメオトロピック配列」とは、液晶分子の配向ベクトルが、配向処理された基板と液晶分子の相互作用の結果、基板平面に対し、垂直(法線方向に)に配向した状態のものをいう。なお、上記ホメオトロピック配列は、液晶分子の配向ベクトルが、基板法線方向に対し、わずかに傾いている場合、すなわち液晶分子がプレチルトを有する場合も包含される。液晶分子がプレチルトを有する場合は、そのプレチルト角(基板法線からの角度)は、好ましくは5°以下であり、より好ましくは3°以下である。プレチルト角を上記範囲とすることによって、コントラスト比の高い液晶表示装置が得られ得る。
上記液晶分子は、目的に応じて、任意の適切なものが採用され得る。好ましくは、上記液晶分子は、誘電率異方性が負のネマチック液晶である。誘電率異方性が負のネマチック液晶は、例えば、共立出版(株)版「カラー液晶ディスプレイ」p.196 図6.2.10に記載のものが挙げられる。上記ネマチック液晶の23℃における波長589nmの光で測定した複屈折率は、好ましくは0.05〜0.15である。なお、上記複屈折率は、液晶分子を一様に均一に配向させ、異常光屈折率(ne)と常光屈折率(no)を測定し、その差(ne−no)から求めることができる。
上記液晶セルの駆動モードは、バーティカル・アライメント(VA)モードである。該VAモードの液晶セルは、電圧制御複屈折効果を利用し、電界が存在しない状態で、ホメオトロピック配列に配向させた液晶分子を、基板に対して法線方向の電界で応答させる。具体的には、例えば、特開昭62−210423号公報や、特開平4−153621号公報に記載されているように、ノーマリブラック方式の場合、電界が存在しない状態では、液晶分子が基板に対して法線方向に配向しているために、上下の偏光板を直交配置させると、黒表示が得られる。一方、電界が存在する状態では、液晶分子が偏光板の吸収軸に対して、45°方位に倒れるように動作することによって、透過率が大きくなり、白表示が得られる。
上記VAモードの液晶セルは、例えば、特開平11−258605号公報に記載されているように、電極にスリットを形成したものや、表面に突起を形成した基材を用いることによって、マルチドメイン化したものであってもよい。このような液晶セルは、例えば、シャープ(株)製 ASV(Advanced Super View)モード、同社製 CPA(Continuous Pinwheel Alignment)モード、富士通(株)製 MVA(Multi−domain Vertical Alignment)モード、三星電子(株)製 PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、同社製 EVA(Enhanced Vertical Alignment)モード、三洋電機(株)製 SURVIVAL(Super Ranged Viewing by Vertical Alignment)モード等が挙げられる。
上記液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)は、目的に応じて、適宜、適切な値を設定することができ、第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)との比(D2(B/G)/DCELL(B/G))が1.040<D2(B/G)/DCELL(B/G)<1.220の関係を満たすように設定すればよい。液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)は、第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)よりも小さい。好ましくは、液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)は、好ましくは0.83〜1.05であり、より好ましくは0.85〜1.04であり、特に好ましくは0.85〜1.03である。液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)を上記の範囲内にすることにより、表示特性により優れた液晶表示装置を得ることができる。
上記液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)の調整方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、共立出版(株)版「カラー液晶ディスプレイ」p.195 図6.2.9に記載されているように、一般的に、フッ素系の液晶分子は、シアノ系の液晶分子に比べて屈折率の波長依存性が小さい。上記液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)は、液晶分子の置換基の種類や、2種類以上の波長依存性の異なる液晶分子の混合比率によって、適宜、適切な値に設定することができる。また、緑色(G)および/または青色(B)のカラーフィルター領域における液晶層の厚みを適宜調整することによっても適切な値に設定することができる。
上記液晶セルの、電界が存在しない状態におけるRthCELL[550]は、好ましくは−500nm〜−200nmであり、さらに好ましくは−450nm〜−210nm、特に好ましくは−400nm〜−220nmである。上記RthCELL[550]は、液晶分子の複屈折率とセルギャップによって、適宜、設定される。上記液晶セルのセルギャップ(基板間隔)は、通常、1.0μm〜7.0μmである。セルギャップが上記の範囲内であれば、応答時間の短い液晶表示装置が得られる。
上記液晶セルは、市販の液晶表示装置に搭載されているものをそのまま用いてもよい。VAモードの液晶セルを含む、市販の液晶表示装置としては、例えば、シャープ(株)製 液晶テレビ 商品名「AQUOSシリーズ」、ソニー社製 液晶テレビ 商品名「BRAVIAシリーズ」、SUMSUNG社製 32V型ワイド液晶テレビ 商品名「LN32R51B」、(株)ナナオ製 液晶テレビ 商品名「FORIS SC26XD1」、AU Optronics社製 液晶テレビ 商品名「T460HW01」等が挙げられる。
<C.偏光板>
本発明に用いられる第1の偏光板10および第2の偏光板50は、任意の適切なものが採用され得る。本明細書において「偏光板」は、自然光または偏光を直線偏光に変換するものをいう。好ましくは、上記第1の偏光板および第2の偏光板は、入射する光を直交する2つの偏光成分に分離し、一方の偏光成分を透過させ、他方の偏光成分を、吸収、反射および/または散乱させる機能を有する。第1の偏光板10と第2の偏光板50は同一であっても、異なっていてもよい。本発明の液晶パネルにおいて、液晶セル10の一方の側に第1の偏光板が配置され、該液晶セルの他方の側に第2の偏光板が配置される。好ましくは、第1の偏光板に含まれる第1の偏光子の吸収軸と、第2の偏光板に含まれる第2の偏光子の吸収軸とが実質的に直交するように配置される。
上記偏光板は、単層の偏光機能を有する層(偏光子ともいう)であってもよいし、複数の層からなる積層体であってもよい。上記偏光板が積層体である場合、その構成としては、例えば、(a)偏光子と保護層とを含む積層体(例えば、実施例における構成)、(b)偏光子と保護層と表面処理層とを含む積層体、(c)2層以上の偏光子を含む積層体などが挙げられる。上記偏光板は、表面処理層を2層以上有していてもよい。
上記偏光板の厚みは、特に制限されず、薄膜、フィルム、シートの一般的な概念を包含する。上記偏光板の厚みは、通常、1μm〜250μmであり、好ましくは1μm〜150μmである。偏光板の厚みを上記の範囲とすることによって、機械的強度に優れるものが得られ得る。
上記第1の偏光板および第2の偏光板の透過率は、任意の適切な値に設定することができる。好ましくは、第1の偏光板および第2の偏光板の透過率は、40%以上であり、さらに好ましくは40.5%以上である。透過率の上限値は、理論上50%である。
上記第1の偏光板および上記第2の偏光板の偏光度(P)は、好ましくは99.8%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。偏光度(P)を上記の範囲にすることによって、より一層、斜め方向のコントラスト比が高い液晶表示装置を得ることができる。
上記偏光度は、分光光度計[村上色彩技術研究所(株)製 製品名「DOT−3」]を用いて測定することができる。上記偏光度の具体的な測定方法としては、上記偏光板の平行透過率(H0)および直交透過率(H90)を測定し、式:偏光度(%)={(H0−H90)/(H0+H90)}1/2×100より求めることができる。上記平行透過率(H0)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が平行となるように重ね合わせて作製した平行型積層偏光板の透過率の値である。また、上記直交透過率(H90)は、同じ偏光板2枚を互いの吸収軸が直交するように重ね合わせて作製した直交型積層偏光板の透過率の値である。なお、これらの透過率は、JlS Z 8701−1982の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
上記偏光板としては、市販のものをそのまま用いてもよい。市販の偏光板としては、例えば、日東電工(株)製 NPFシリーズ(商品名「SIG1423DU」等)が挙げられる。このような偏光板は、偏光子の両側に保護層を備え、該保護層が、実質的に光学的に等方性を有する。さらに、光学特性、光学的均一性、耐久性等に優れるという特徴を有する。
<C−1.偏光子>
本発明に用いられる偏光子は、任意の適切なものが採用され得る。好ましくは、上記第1の偏光板は第1の偏光子を含み、上記第2の偏光板は第2の偏光子を含み、当該偏光子は、それぞれヨウ素または二色性染料等の二色性物質を含有するポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする。上記偏光子は、通常、ヨウ素または二色性染料等の二色性物質を含有するポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを延伸して得ることができる。このような偏光子を含む偏光板は、光学特性に優れる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステル系モノマーを重合して得られるビニルエステル系重合体をケン化することによって得ることができる。上記ビニルエステル系モノマーとしては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ビバリン酸ビニル、バーサティック酸ビニル等が挙げられる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、好ましくは95.0〜99.9モル%である。上記ケン化度は、JIS K 6726−1994に準じて求めることができる。ケン化度が上記の範囲であるポリビニルアルコール系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子が得られ得る。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを得る方法としては、任意の適切な成形加工法が採用され得る。上記成形加工法としては、例えば、特開2000−315144号公報[実施例1]に記載の方法が挙げられる。
上記二色性物質としては、任意の適切なものが採用され得る。本明細書において、「二色性」とは、光学軸方向とそれに直交する方向との2方向で光の吸収が異なる光学的異方性をいう。上記二色性染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等が挙げられる。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムは、市販のフィルムをそのまま用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムとしては、例えば、(株)クラレ製 商品名「クラレビニロンフィルム」、東セロ(株)製 商品名「トーセロビニロンフィルム」、日本合成化学工業(株)製 商品名「日合ビニロンフィルム」等が挙げられる。
偏光子の製造方法の一例について、図2を参照して説明する。図2は、本発明に用いられる偏光子の代表的な製造工程の概念を示す模式図である。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルム301は、繰り出し部300から繰り出され、純水を含む膨潤浴310、およびヨウ素水溶液を含む染色浴320に浸漬され、速比の異なるロール311、312、321および322でフィルム長手方向に張力を付与されながら、膨潤処理および染色処理が施される。次に、膨潤処理および染色処理されたフィルムは、ヨウ化カリウムを含む第1の架橋浴330中および第2の架橋浴340中に浸漬され、速比の異なるロール331、332、341および342でフィルムの長手方向に張力を付与されながら、架橋処理および最終的な延伸処理が施される。架橋処理されたフィルムは、ロール351および352によって、純水を含む水洗浴350中に浸漬され、水洗処理が施される。水洗処理されたフィルムは、乾燥手段360で乾燥されることにより、水分率が、例えば10%〜30%に調節され、巻き取り部380にて巻き取られる。偏光子370は、これらの工程を経て、上記ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする高分子フィルムを元長の5倍〜7倍に延伸することで得ることができる。
<C−2.保護層>
本発明に用いられる第1の偏光板および第2の偏光板は、好ましくは、偏光子と、該偏光子の少なくとも片側に配置された保護層とを備える。上記保護層は、例えば、偏光子が収縮や膨張することを防いだり、紫外線による劣化を防いだりすることができ、耐久性の高い偏光板を得ることができる。
上記保護層と上記偏光子とは、任意の適切な接着層を介して、積層させることができる。本明細書において、「接着層」とは、隣り合う光学部材の面と面とを接合し、実用上十分な接着力と接着時間で一体化させるものをいう。上記接着層を形成する材料としては、例えば、接着剤、粘着剤、アンカーコート剤が挙げられる。上記接着層は、被着体の表面にアンカーコート層が形成され、その上に接着剤層が形成されたような、多層構造であってもよい。また、肉眼的に認知できないような薄い層(ヘアーラインともいう)であってもよい。
上記接着層の厚みは、目的に応じて、任意の適切な値に設定され得る。上記接着層の厚みは、好ましくは0.01μm〜50μmである。接着層の厚みを上記の範囲とすることによって、接合される偏光子に浮きや剥がれが生じず、実用上十分な接着力と接着時間が得られ得る。
上記接着層を形成する材料としては、被着体の種類や目的に応じて、任意の適切なものが選択され得る。上記偏光子が、ヨウ素を含有するポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする場合、上記接着層を形成する材料としては、好ましくは、水溶性接着剤である。上記水溶性接着剤としては、好ましくは、ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水溶性接着剤である。上記接着層は、市販の接着剤をそのまま用いることもできる。あるいは、市販の接着剤に溶剤や添加剤を混合して用いることもできる。市販のポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする接着剤としては、例えば、日本合成化学工業(株)製 ゴーセノールシリーズ(商品名「NH−18S、GH−18S、T−300等」)、同社製 ゴーセファイマーシリーズ(商品名「Z−100、Z−200、Z−210等」)等が挙げられる。
上記水溶性接着剤は、添加剤として、架橋剤をさらに含有し得る。架橋剤の種類としては、例えば、アミン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、および多価金属塩等が挙げられる。上記架橋剤は、市販のものをそのまま用いることもできる。市販の架橋剤としては、三菱ガス化学(株)製 アミン化合物 商品名 「メタシキレンジアミン」、日本合成化学工業(株)製 アルデヒド化合物 商品名「グリオキサザール」、大日本インキ(株)製 メチロール化合物 商品名「ウォーターゾール」等が挙げられる。上記架橋剤の添加量は、目的に応じて、適宜、調整され得るが、通常、水溶性接着剤の固形分100重量部に対して、0を超え10重量部以下である。
上記第1の保護層を形成する材料としては、任意の適切なものが採用され得る。好ましくは、上記保護層は、セルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、またはアクリル系樹脂を含有する高分子フィルムである。上記セルロース系樹脂を含有する高分子フィルムは、例えば、特開平7−112446号公報の実施例1に記載の方法によって得ることができる。上記ノルボルネン系樹脂を含有する高分子フィルムは、例えば、特開2001−350017号公報に記載の方法によって得ることができる。上記アクリル系樹脂を含有する高分子フィルムは、例えば、特開2004−198952号公報の実施例1に記載の方法によって得ることができる。
<D.光学補償層>
本発明の液晶パネル100,100’において、第1の光学補償層20は第1の偏光板10とVAモードの液晶セル30との間に配置され、第2の光学補償層40は第2の偏光板50とVAモードの液晶セル30との間に配置される。好ましくは、該第1の光学補償層20の遅相軸と第1の偏光板10に含まれる第1の偏光子の吸収軸とが直交するように、第1の光学補償層20が配置される。同様に、好ましくは、第2の光学補償層40の遅相軸と第2の偏光板50に含まれる第2の偏光子の吸収軸とが直交するように、第2の光学補償層40が配置される。第1の光学補償層20および第2の光学補償層40は、好ましくは位相差フィルムにより構成される。
<D−1.第1の光学補償層>
本発明の第1の光学補償層20は、屈折率楕円体がnx>nz>nyの関係を有する。このような第1の光学補償層を用いることにより、液晶表示装置の斜め方向の光抜けを低減し、コントラスト比を高くすることができる。好ましくは、第1の光学補償層は、波長が大きくなるほど面内位相差が大きくなる位相差波長分散特性を有する。
本発明の液晶パネルにおいて、上記第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)は第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)と同一またはより小さい値であり、好ましくは第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)は第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)よりも小さい値(D1(B/G)<D2(B/G))である。第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)をこのような値に設定することにより、斜め方向における光抜けを防止することができ、コントラスト比の高い液晶表示装置が得られる。
上記第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)は、好ましくは0.90〜1.10であり、より好ましくは0.90〜1.08であり、さらに好ましくは0.90〜1.05であり、特に好ましくは0.90〜1.01である。第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)を上記の範囲内にすることにより、斜め方向における光抜けを防止することができ、コントラスト比の高い液晶表示装置が得られる。
上記第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)の調整方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、特開平5−027119号公報 図2に記載されているように、上記波長分散値は、第1の光学補償層を形成する材料に、適切なものを選択することによって、任意の値に設定することができる。また、上記波長分散値は、第1の光学補償層を形成する材料の分子設計によっても、調整することができる。具体的には、例えば、WO00/26705号公報に記載されているように、上記波長分散値は、2種類のモノマーを共重合させた樹脂において、使用するモノマーの種類や、共重合比によって任意の値に設定することもできる。あるいは、帝人化成工業(株)カタログ「PURE−ACE」(2005年)p.8に記載されているように、異なる波長分散値を有する市販の位相差フィルムの中から、適切なものを選択して利用することもできる。
上記第1の光学補償層の面内位相差Re1[550]は、10nm以上であり、好ましくは200nm〜350nm、より好ましくは220nm〜330nmであり、さらに好ましくは240nm〜310nmであり、特に好ましくは250nm〜300nmである。Re1[550]を上記の範囲にすることにより、斜め方向のコントラスト比をより一層向上させることができる。
上記第1の光学補償層の厚み方向の位相差Rth1[550]は、好ましくは10nm〜210nmであり、より好ましくは20nm〜180nmであり、さらに好ましくは50nm〜180nmであり、特に好ましくは80nm〜180nmである。Rth1[550]が上記の範囲内であることにより、斜め方向のコントラスト比をより一層向上させることができる。
上記第1の光学補償層の屈折率楕円体がnx>nz>nyを満足する範囲内であるので、Rth1[550]はRe1[550]よりも小さい。すなわち、第1の光学補償層のNz係数は、0を超え1より小さい。第1の光学補償層のNz係数は、0.2〜0.8であり、より好ましくは0.3〜0.7であり、さらに好ましくは0.4〜0.65である。Nz係数が上記の範囲内にあることによって、斜め方向のコントラスト比をより一層向上させることができる。
第1の光学補償層を構成する位相差フィルムの透過率は、通常、80%以上であり、好ましくは90%以上である。透過率の理論上の上限値は100%である。
上記第1の光学補償層を構成する位相差フィルムの光弾性係数の絶対値(C[550](m2/N))は、好ましくは1×10−12〜60×10−12であり、より好ましくは1×10−12〜30×10−12であり、さらに好ましくは1×10−12〜20×10−12であり、特に好ましくは1×10−12〜10×10−12である。光弾性係数の絶対値が上記の範囲内であれば、表示均一性に優れる液晶表示装置が得られる。
第1の光学補償層を構成する位相差フィルムとしては、波長分散値D1(B/G)が第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)と同一またはより小さくなるものであれば、任意の適切なものを用いることができる。例えば、第1の光学補償層は単独の位相差フィルムで構成されるものであってもよく、2枚以上の位相差フィルムを積層した積層体であってもよい。液晶表示装置の厚みを薄くすることができるので、好ましくは第1の光学補償層は単独の位相差フィルムで構成される。第1の光学補償層が2枚以上の位相差フィルムの積層体から構成される場合、同一の位相差フィルムを積層してもよく、異なる位相差フィルムを積層してもよい。
好ましくは、上記第1の光学補償層は、正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含む。「固有複屈折値」とは、結合鎖(主鎖)が延びきって理想状態まで配向した時の複屈折率の値(すなわち、理想配向条件下での複屈折率の値)である。本明細書において、正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂とは、上記熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを一方向に延伸した場合に、フィルム面内の屈折率が大きくなる方向(遅相軸方向)が、延伸方向と実質的に平行となるものをいう。
正の固有複屈折を示す熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂等の汎用プラスチック;ポリアミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂等の汎用エンジニアリングプラスチック;ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、液晶性樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂等のスーパーエンジニアリングプラスチック等が挙げられる。上記の熱可塑性樹脂は、単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。また、上記の熱可塑性樹脂は、任意の適切なポリマー変性を行ってから用いることもできる。上記ポリマー変性の例としては、共重合、架橋、分子末端、立体規則性等の変性が挙げられる。
好ましくは、上記第1の光学補償層は、ノルボルネン系樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムを含む。ノルボルネン系樹脂は、正の固有複屈折値を示し、延伸することにより、上記の光学特性を満足し、さらに、光弾性係数の絶対値が小さいため、表示均一性に優れる液晶表示装置を得られる。本明細書において「ノルボルネン系樹脂」とは、出発原料(モノマー)の一部または全部に、ノルボルネン環を有するノルボルネン系モノマーを用いて得られる(共)重合体をいう。上記「(共)重合体」は、ホモポリマーまたは共重合体(コポリマー)を表す。
上記ノルボルネン系樹脂は、出発原料としてノルボルネン環(ノルボルナン環に二重結合を有するもの)を有するノルボルネン系モノマーが用いられる。上記ノルボルネン系樹脂は、(共)重合体の状態では、構成単位にノルボルナン環を有していても、有していなくてもよい。(共)重合体の状態では、構成単位にノルボルナン環を有するノルボルネン系樹脂は、例えば、テトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メチルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.12,5.17,10.0]デカ−3−エン等が挙げられる。(共)重合体の状態で構成単位にノルボルナン環を有さないノルボルネン系樹脂は、例えば、開裂により5員環となるモノマーを用いて得られる(共)重合体である。上記開裂により5員環となるモノマーとしては、例えば、ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−フェニルノルボルネン等やそれらの誘導体等が挙げられる。上記ノルボルネン系樹脂が共重合体である場合、その分子の配列状態は、特に制限はなく、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよいし、グラフト共重合体であってもよい。
上記ノルボルネン系樹脂としては、例えば、(A)ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂、(B)ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂などが挙げられる。上記ノルボルネン系モノマーの開環共重合体は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類、および/または非共役ジエン類との開環共重合体を水素添加した樹脂を包含する。上記ノルボルネン系モノマーを付加共重合させた樹脂は、1種以上のノルボルネン系モノマーと、α−オレフィン類、シクロアルケン類および/または非共役ジエン類との付加型共重合させた樹脂を包含する。
上記ノルボルネン系モノマーの開環(共)重合体を水素添加した樹脂は、ノルボルネン系モノマー等をメタセシス反応させて、開環(共)重合体を得、さらに、当該開環(共)重合体を水素添加して得ることができる。具体的には、例えば、特開平11−116780号公報の段落[0059]〜[0060]に記載の方法、特開2001−350017号公報の段落[0035]〜[0037]に記載の方法等が挙げられる。上記ノルボルネン系モノマーを付加(共)重合させた樹脂は、例えば、特開昭61−292601号公報の実施例1に記載の方法により得ることができる。
上記ノルボルネン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ法(ポリスチレン標準)で測定した値が、好ましくは20,000〜500,000であり、より好ましくは30,000〜200,000である。上記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110〜185℃であり、より好ましくは120〜170℃であり、さらに好ましくは125〜150℃である。上記の樹脂であれば、優れた熱安定性を有し、延伸性に優れたフィルムが得られ得る。なお、ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121に準じたDSC法により算出される値である。
上記第1の光学補償層は、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。上記添加剤の含有量は、好ましくは、上記の各樹脂100重量部に対し、0を超え10重量部以下である。
上記ノルボルネン系樹脂を含む位相差フィルムは、任意の適切な成形加工法によって得ることができる。好ましくは、上記ノルボルネン系樹脂を含む位相差フィルムは、ソルベントキャスティング法または溶融押出法によって、シート状に成形された高分子フィルムを、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、または縦横逐次二軸延伸法により、延伸して作製される。上記高分子フィルムを延伸する温度(延伸温度)は、好ましくは120〜200℃である。また、上記高分子フィルムを延伸する倍率(延伸倍率)は、好ましくは1を超え3倍以下である。
上記正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムを延伸する方法としては、任意の適切な延伸方法が採用され得る。好ましくは、熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せて、ロール延伸機にて縦一軸延伸法で、加熱延伸する方法である。当該収縮性フィルムは、加熱延伸時に延伸方向と直交する方向の収縮力を付与し、厚み方向の屈折率(nz)を高めるために用いられる。上記高分子フィルムの両面に収縮性フィルムを貼り合せる方法としては、特に制限はないが、上記高分子フィルムと上記収縮性フィルムとの間に、アクリル系ポリマーをベースポリマーとするアクリル系粘着剤層を設けて接着する方法が、作業性、経済性に優れる点から好ましい。
上記第1の光学補償層に用いられる位相差フィルムの製造方法の一例について、図3を参照して説明する。図3は、本発明に用いられる位相差フィルムの代表的な製造工程の概念を示す模式図である。高分子フィルム402は、第1の繰り出し部401から繰り出され、ラミネートロール407および408により、該高分子フィルムの両面に、2枚の粘着剤層を備える収縮性フィルムが貼り合わされる。一方の収縮性フィルム404は、第2の繰り出し部403から繰り出され、他方の収縮性フィルム406は、第3の繰り出し部405から繰り出される。両面に収縮性フィルムが貼着された高分子フィルムは、温度制御手段409によって一定温度に保持されながら、速比の異なるロール410、411、412、および413によって、フィルム長手方向の張力を付与され(同時に、収縮性フィルムが収縮することによって、該高分子フィルムへ厚み方向にも張力が付与される)ながら、延伸処理に供される。延伸処理後、粘着剤層を備える収縮性フィルム404および406は、第1の巻き取り部414および第2の巻き取り部416にて巻き取られ、位相差フィルム418が第3の巻き取り部419で巻き取られる。
上記収縮性フィルムは、140℃におけるフィルム長手方向の収縮率:S(MD)が、4.5%〜7.7%であって、幅方向の収縮率:S(TD)が、8.1%〜15.4%であるものが好ましく用いられる。また、上記収縮性フィルムは、幅方向の収縮率と長手方向の収縮率の差:ΔS=S(TD)−S(MD)が、1.5%〜7.7%の範囲にあるものが好ましく、5.1%〜7.7%であることがより好ましい。上記の範囲であれば、光学均一性に優れ、上記の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。
別の実施形態においては、好ましくは、上記収縮性フィルムは、160℃におけるフィルム長手方向の収縮率:S[MD]が14.4%〜23.5%であり、且つ、160℃におけるフィルム幅方向の収縮率:S[TD]が28.5%〜54.6%である。さらに好ましくは、上記収縮性フィルムは、160℃におけるS[MD]が15.7%〜23.5%であり、且つ、S[TD]が36.4%〜54.6%である。収縮性フィルムの各温度における収縮率を上記の範囲とすることによって、目的とする位相差値を有し、且つ、均一性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
上記収縮性フィルムの140℃における幅方向の2mm幅あたりの収縮応力:T[TD]は、好ましくは0.36N/2mm〜0.80N/2mmであり、さらに好ましくは0.50N/2mm〜0.80N/2mmである。上記収縮性フィルムの150℃における幅方向の2mm幅あたりの収縮応力:T[TD]は、好ましくは0.44N/2mm〜0.90N/2mmであり、さらに好ましくは0.60N/2mm〜0.90N/2mmである。収縮性フィルムの収縮率を上記の範囲とすることによって、目的とする位相差値を有し、且つ、光学均一性に優れた位相差フィルムが得られ得る。
上記収縮率S(MD)およびS(TD)は、JIS Z 1712:1997の加熱収縮率A法に準じて求めることができる(ただし、加熱温度は120℃に代えて140℃または160℃とし、試験片に荷重3gを加えたことが異なる)。具体的には、幅20mm、長さ150mmの試験片を縦(MD)、横(TD)方向から各5枚採り、それぞれの中央部に約100mmの距離において標点をつけた試験片を作製する。該試験片は、温度140℃±3℃に保持された空気循環式乾燥オーブンに、荷重3gをかけた状態で垂直につるし、15分間加熱した後、取り出し、標準状態(室温)に30分間放置してから、JIS B 7507に規定するノギスを用いて、標点間距離を測定して、5個の測定値の平均値を求め、S(%)=[{加熱前の標点間距離(mm)−加熱後の標点間距離(mm)}/加熱前の標点間距離(mm)]×100より算出することができる。
上記収縮性フィルムは、好ましくは、二軸延伸フィルムおよび一軸延伸フィルム等の延伸フィルムである。上記収縮性フィルムは、例えば、押出法によりシート状に成形された未延伸フィルムを同時二軸延伸機等で所定の倍率に縦および/または横方向に延伸して得ることができる。なお、成形および延伸条件は、用いる樹脂の組成や種類や目的に応じて、適宜選択され得る。
上記収縮性フィルムを形成する材料としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。本発明に用いられる収縮性フィルムとしては、これらのなかでも、特に、機械的強度、熱安定性、表面均一性等に優れる点で、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが好ましく用いられる。
また、上記収縮性フィルムとしては、本発明の目的を満足するものであれば、一般包装用、食品包装用、パレット包装用、収縮ラベル用、キャップシール用、および電気絶縁用等の用途に使用される市販の収縮性フィルムも適宜、選択して用いることができる。これら市販の収縮性フィルムは、そのまま用いてもよく、延伸処理や収縮処理などの2次加工を施してから用いてもよい。市販の収縮性フィルムの具体例としては、王子製紙(株)製 商品名「アルファンシリーズ」、グンゼ(株)製 商品名「ファンシートップシリーズ」、東レ(株)製 商品名「トレファンシリーズ」、サン・トックス(株) 商品名「サントックス−OPシリーズ」、東セロ(株) 商品名「トーセロOPシリーズ」等が挙げられる。
上記正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を加熱延伸する際の温度制御手段内の温度(延伸温度ともいう)は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。好ましくは、上記高分子フィルムのガラス転移点(Tg)に対し、Tg+1℃〜Tg+30℃の範囲で行う。位相差値が均一になり易く、かつ、フィルムが結晶化(白濁)しにくいからである。より具体的には、上記延伸温度は、好ましくは90℃〜185℃であり、さらに好ましくは90℃〜170℃であり、最も好ましくは90℃〜160℃である。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121:1987に準じたDSC法により求めることができる。
上記温度制御手段としては、特に制限はないが、熱風又は冷風が循環する空気循環式恒温オーブン、マイクロ波もしくは遠赤外線などを利用したヒーター、温度調節用に加熱されたロール、ヒートパイプロール又は金属ベルトなどを用いた適切な加熱方法や温度制御方法を挙げることができる。
また、上記正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムと収縮性フィルムとの積層体を延伸する際の、延伸倍率は、目的とする位相差値、用いる高分子フィルムの種類や厚み等に応じて適宜選択され得る。上記延伸倍率は、通常、元長に対し、1〜3倍であり、好ましくは1〜2倍であり、さらに好ましくは1〜1.8倍である。また、延伸時の送り速度は、特に制限はないが、延伸装置の機械精度、安定性等から好ましくは1m/分〜20m/分である。第1の光学補償層に用いられる位相差フィルムのRe[550]およびRth[550]は、延伸前の位相差値および厚み、延伸倍率、延伸温度等によって、適宜、調整される。上記の延伸条件であれば、上記Eの光学特性を満足し得るのみならず、光学均一性に優れた位相差フィルムを得ることができる。
上記正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を主成分とする高分子フィルムの延伸フィルムの厚み(延伸して得られる位相差フィルムの厚み)は、設計しようとする位相差値や積層枚数などに応じて、適宜選択され得る。好ましくは5μm〜200μmであり、さらに好ましくは10μm〜180μmである。上記の範囲であれば、機械的強度や光学均一性に優れ、上記の光学特性を満足する位相差フィルムを得ることができる。第1の光学補償層の厚みは、所望の特性を有するように、適宜設計することができる。上記第1の光学補償層の厚みは、好ましくは5μm〜200μmであり、より好ましくは5μm〜180μmである。
また、第1の光学補償層に用いられる位相差フィルムには、上述した他にも、市販の光学フィルムをそのまま用いることもできる。また、市販の光学フィルムに延伸処理および/または緩和処理などの2次加工を施してから用いても良い。市販のノルボルネン系樹脂フィルムとしては、具体的には、日本ゼオン(株)製 商品名「ゼオネックスシリーズ」(480、480R等)、同社製 商品名「ゼオノアシリーズ」(ZF14、ZF16等)、JSR(株)製 商品名「アートンシリーズ」(ARTON G、ARTON F等)、三井化学(株)製 商品名「アペルシリーズ」(APL 8008T、APL6509T等)、TICONA社製 COC樹脂 商品名「TOPAS」等が挙げられる。
<D−2.第2の光学補償層>
本発明の第2の光学補償層は、屈折率楕円体がnx=ny>nzの関係を満たす。このような第2の光学補償層を用いることにより、電界が存在しない状態における液晶セルの厚み方向の位相差値(RthCELL[550])を光学的に補償し、液晶セルと第2の光学補償層との積層体が実質的に等方性となるよう補償することができる。好ましくは、第2の光学補償層は、正の位相差波長分散特性を有する。
上記第2の光学補償層の面内位相差Re2[550]は、10nm未満であり、好ましくは8nm以下であり、さらに好ましくは5nm以下である。第2の光学補償層の面内位相差を上記の範囲にすることにより、斜め方向のコントラスト比が高い液晶表示装置が得られる。
上記第2の光学補償層の厚み方向の位相差Rth2[550]は、上記液晶セルの厚み方向の位相差に応じて、任意の適切な値に設定され得る。上記第2の光学補償層の厚み方向の位相差Rth2[550]は、好ましくは150nm〜550nmであり、より好ましくは150nm〜450nmであり、さらに好ましくは200nm〜400nmである。Rth2[550]が上記の範囲内であることにより、斜め方向のコントラスト比が高い液晶表示装置が得られる。
本発明の液晶パネルにおいて、上記第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)は第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)と同一またはより大きい値であり、好ましくは第2の光学補償層の波長分散値D1(B/G)は第1の光学補償層の波長分散値D1(B/G)よりも大きい値(D2(B/G)>D1(B/G))である。第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)をこのような値に設定することにより、斜め方向における光抜けを低減することができ、コントラスト比の高い液晶表示装置が得られる。
上記第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)は、好ましくは1以上であり、より好ましくは1.01〜1.18である。第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)を上記の範囲内にすることにより、斜め方向のコントラスト比が高く、斜め方向からの光抜けが低減された液晶表示装置が得られる。第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)の調整方法としては、任意の適切な方法を用いることができ、例えば、上記D−1項に記載の方法が挙げられる。
本発明の液晶パネルは、上記第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)と液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)が、1.040<D2(B/G)/DCELL(B/G)<1.220の関係を満たす。好ましくは、1.045<D2(B/G)/DCELL(B/G)<1.220であり、より好ましくは1.050<D2(B/G)/DCELL(B/G)<1.220である。第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)と液晶セルの波長分散値DCELL(B/G)との比が上記の範囲内となるように設定することにより、斜め方向の光抜けが低減され、コントラスト比に優れた液晶表示装置が得られる。
第2の光学補償層を構成する位相差フィルムの透過率は、通常、80%以上であり、好ましくは90%以上である。
上記第2の光学補償層を構成する位相差フィルムの光弾性係数の絶対値(C[550](m2/N))は、好ましくは1×10−12〜80×10−12であり、より好ましくは1×10−12〜50×10−12であり、さらに好ましくは1×10−12〜30×10−12である。光弾性係数の絶対値が上記の範囲内であれば、表示均一性に優れる液晶表示装置が得られる。
上記第2の光学補償層を構成する位相差フィルムとしては、第2の光学補償層の波長分散値D2(B/G)が上記の特性を満たしていれば良く、任意の適切なものを用いることができる。好ましくは、第2の光学補償層は、上記D−1項に記載の正の固有複屈折値を有する熱可塑性樹脂を含む位相差フィルムが用いられる。さらに好ましくは、上記第2の光学補償層は、セルロース系樹脂を主成分とする位相差フィルムを含み、該位相差フィルムは、延伸フィルムであってもよく、未延伸フィルムであってもよい。
上記セルロース系樹脂としては、任意の適切なものが採用され得る。上記セルロース系樹脂は、好ましくは、セルロースの水酸基の一部または全部がアセチル基、プロピオニル基および/またはブチル基で置換されたセルロース有機酸エステルまたはセルロース混合有機酸エステルである。上記セルロース有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート等が挙げられる。上記セルロース混合有機酸エステルとしては、例えば、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等が挙げられる。上記セルロース系樹脂は、例えば、特開2001−188128号公報[0040]〜[0041]に記載の方法により得ることができる。
なお、本明細書において、アセチル置換度(又はプロピオニル置換度)とは、セルロース骨格における2、3、6位の炭素についた水酸基をアセチル基(又はプロピオニル基)で置換した数を示す。セルロース骨格における2、3、6位の炭素のどれかにアセチル基(又はプロピオニル基)が偏って存在しても良く、また平均的に存在しても良い。上記アセチル置換度は、ASTM−D817−91(セルロースアセテート等の試験法)によって求めることができる。また、上記プロピオニル置換度は、ASTM−D817−96(セルロースアセテート等の試験法)によって求めることができる。
上記セルロース系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフラン溶媒によるゲル・パーミエーション・クロマトグラフ(GPC)法で測定した値が、好ましくは20,000〜1,000,000、さらに好ましくは25,000〜800,000である。重量平均分子量が上記の範囲であれば、機械的強度に優れ、溶解性、成形性、流延の操作性が良いものができる。
上記セルロース系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは110℃〜185℃である。Tgが110℃以上あれば、熱安定性の良好なフィルムが得られやすくなり、185℃以下であれば、成形加工性に優れる。ガラス転移温度(Tg)は、JIS K 7121:1987に準じたDSC法により求めることができる。
上記セルロース系樹脂を含む位相差フィルムは、任意の適切な成形加工法によって得ることができる。好ましくは、上記セルロース系樹脂を含む位相差フィルムは、ソルベントキャスティング法または溶融押出法によって、シート状に成形された高分子フィルムを、横一軸延伸法、縦横同時二軸延伸法、または縦横逐次二軸延伸法により、延伸して作製される。上記高分子フィルムを延伸する温度(延伸温度)は、好ましくは120℃〜200℃である。また、上記高分子フィルムを延伸する倍率(延伸倍率)は、好ましくは1を超え3倍以下である。
上記セルロース系樹脂を含むフィルムとしては、市販のフィルムを用いることができる。市販のセルロース系樹脂フィルムとしては、例えば、富士写真フィルム(株)製 フジタックシリーズ(商品名;ZRF80S,TD80UF,TDY−80UL)、コニカミノルタオプト(株)製 商品名「KC8UX2M」、ダイセルファインケミカル(株)製 セルロースアセテートプロピオネート樹脂(商品名;307E−09,360A−09,360E−16)、EASTMAN社製 セルロースアセテート(商品名;CA−398−30,CA−398−30L,CA−320S,CA−394−60S,CA−398−10,CA−398−3,CA−398−30,CA−398−6)、EASTMAN社製 セルロースブチレート(商品名;CAB−381−0.1,CAB−381−20,CAB−500−5,CAB−531−1,CAB−551−0.2,CAB−553−0.4)、EASTMAN社製 セルロースアセテートプロピオネート(商品名;CAP−482−0.5,CAP−482−20,CAP−504−0.2)等が挙げられる。
上記第2の光学補償層を構成する位相差フィルムは、任意の適切な添加剤をさらに含有し得る。上記添加剤としては、例えば、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、帯電防止剤、相溶化剤、架橋剤、および増粘剤等が挙げられる。上記添加剤の含有量は、好ましくは、上記の各樹脂100重量部に対し、0を超え10重量部以下である。
<E.接着層>
好ましい実施形態においては、上記偏光板(第1の偏光板および第2の偏光板)および光学補償層(第1の光学補償層および第2の光学補償層)は、接着層を介して液晶パネルを構成する他の部材に貼着される。上記接着層を形成する材料としては、被着体の種類や用途に応じて、適切な接着剤および/またはアンカーコート剤が選択され得る。接着剤の具体例としては、形状による分類によれば、溶剤形接着剤、エマルジョン形接着剤、感圧性接着剤、再湿性接着剤、重縮合形接着剤、無溶剤形接着剤、フィルム状接着剤、ホットメルト形接着剤などが挙げられる。化学構造による分類によれば、合成樹脂接着剤、ゴム系接着剤、および天然物接着剤が挙げられる。なお、上記接着剤は、加圧接触で感知しうる接着力を常温で示す粘弾性物質(粘着剤ともいう)を包含する。
好ましくは、上記接着層を形成する材料は、アクリル系重合体をベースポリマーとする感圧性接着剤(アクリル系粘着剤ともいう)である。透明性、接着性、耐候性、および耐熱性に優れるからである。上記アクリル系粘着剤層の厚みは、被着体の材質や用途に応じて、適宜、調整され得るが、通常、5μm〜50μmである。
<F.液晶表示装置>
本発明の液晶表示装置は、上記液晶パネルを含む。図4は、本発明の好ましい実施形態による液晶表示装置の概略断面図である。なお、見やすくするために、図4の各構成部材の縦、横および厚みの比率は、実際とは異なっていることに留意されたい。この液晶表示装置200は、液晶パネル100と、液晶パネル100の一方の側に配置されたバックライトユニット80とを備える。図示しないが、液晶パネル100と同様に、図1(b)に示す液晶パネル100’を用いることができる。なお、図示例では、バックライトユニットとして、直下方式が採用された場合を示しているが、これは例えば、サイドライト方式のものであってもよい。
直下方式が採用される場合、上記バックライトユニット80は、好ましくは、光源81と、反射フィルム82と、拡散板83と、プリズムシート84と、輝度向上フィルム85とを備える。サイドライト方式が採用される場合、好ましくは、バックライトユニットは、上記の構成に加え、さらに導光板と、ライトリフレクターとを備える。なお、図4に例示した光学部材は、本発明の効果が奏する限りにおいて、液晶表示装置の照明方式や液晶セルの駆動モードなど、用途に応じてその一部が省略され得るか、または、他の光学部材に代替され得る。
上記液晶表示装置は、液晶パネルの背面から光を照射して画面を見る、透過型であっても良いし、液晶パネルの視認側から光を照射して画面を見る、反射型であっても良い。あるいは、上記液晶表示装置は、透過型と反射型の両方の性質を併せ持つ、半透過型であっても良い。好ましくは、透過型である。斜め方向のコントラスト比が高い液晶表示装置が得られ得るからである。
本発明の液晶表示装置は、任意の適切な用途に使用される。その用途は、例えば、パソコンモニター,ノートパソコン,コピー機などのOA機器、携帯電話,時計,デジタルカメラ,携帯情報端末(PDA),携帯ゲーム機などの携帯機器、ビデオカメラ,テレビ,電子レンジなどの家庭用電気機器、バックモニター,カーナビゲーションシステム用モニター,カーオーディオなどの車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニターなどの展示機器、監視用モニターなどの警備機器、介護用モニター,医療用モニターなどの介護・医療機器等である。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
[実施例1−20、比較例1−5]
表1に示す構成の液晶パネルから第1の偏光板および第2の偏光板の保護層を除いたものをシミュレーションモデルとしてシミュレーションを実施し、斜め方向のコントラストを算出した。表1に示す構成の液晶パネルにおいて、第1の偏光板に含まれる第1の偏光子の吸収軸と第1の光学補償層の遅相軸が直交、第2の偏光板に含まれる第2の偏光子の吸収軸と第2の光学補償層の遅相軸が直交となるよう設定した。
シミュレーションには、シンテック社製、液晶表示器用シミュレーター「LCD MASTER Ver.6.084」を用いた。LCD Masterの拡張機能を使用して4分割のマルチドメインで計算し、2×2計算によって極角60°、方位角45°、135°、225°、315°での値の平均値をコントラストとして算出した。なお、白表示時に液晶セルに印加する電圧を5.0Vとし、黒表示時に印加する電圧を0.0Vとした。VAモード液晶層のプレチルトは89.8°とした。各実施例および比較例における液晶セル、第1の光学補償層、第2の光学補償層、ならびに液晶セルの波長分散値、および、シュミレーションの結果を表2に示す。
[評価]
実施例1〜20に示すように、本発明の液晶パネルを備える液晶表示装置は、比較例1〜5の液晶パネルを備えた液晶表示に比べて、高い斜め方向のコントラスト比を示した。