JP2023091457A - 位相差フィルム、偏光板および画像表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】加熱による光学特性の変化が少ない位相差フィルムを提供する。【解決手段】本発明の位相差フィルムは、1層のポリマーフィルムからなる。位相差フィルムは、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たし、ガラス転移温度Tg1(K)と、NZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数が、(Tg1)2×(NZ)1/2≧120000を満たす。【選択図】なし
Description
本発明は、位相差フィルム、偏光板および画像表示装置に関する。
液晶表示装置等のディスプレイには、コントラスト向上、視野角拡大等の光学補償や、金属電極で反射した外光の遮蔽(反射防止)のために、位相差フィルムが用いられている。非液晶性のポリマーを用いた位相差フィルムは、ポリマーフィルムを少なくとも一方向に延伸することにより光学異方性が付与される。
ポリマーフィルムを、縦延伸(自由端一軸延伸)すると、延伸方向にポリマーの分子鎖が配向するとともに、延伸方向と直交する方向、すなわち、幅方向および厚み方向には収縮作用が生じる。正の固有屈折率を有するポリマーのフィルムを縦延伸すると、長手方向の屈折率(nx)が大きくなり、幅方向の屈折率(ny)および厚み方向の屈折率(nz)が小さくなる。自由端一軸延伸では、幅方向の収縮率(幅の減少率)と、厚みの減少率が略同一であるため、nx>ny≒nzの屈折率異方性を有する位相差フィルム(ポジティブAプレート)が得られる。
ポリマーフィルムの少なくとも一方の面に熱収縮性フィルムを積層した状態で加熱しながら積層体を延伸すると、熱収縮性フィルムの収縮力の影響により、通常の自由端一軸延伸に比べて幅方向(延伸方向と直交する方向)の収縮量が大きくなる。幅方向(進相軸方向)の屈折率nyがより小さくなり、厚み方向の屈折率nzが相対的に大きくなるため、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムが得られる(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムは、視認角度による位相差の変化が小さく、液晶表示装置の光学補償フィルムや、円偏光板用のλ/4板として用いられている。
画像表示装置に用いられる位相差フィルムは、画像表示装置の使用時に高温環境に長時間曝された場合でも、光学特性の変化が小さいことが要求されている。また、画像表示装置の製造工程においては、画像表示セルの表面に位相差フィルムや偏光板等の光学フィルムを貼り合わせた後に、アニールや点灯試験が行われ、その際の加熱によっても、位相差フィルムの光学特性の変化が小さいことが求められている。
nx>nz>nyの屈折率異方性を有するフィルムは、画像表示装置を斜め方向から視認した際の視認性(コントラスト、カラーシフト等)を向上する機能を有しているため、加熱による正面レターデーションの変化が少ないことに加えて、NZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数の変化が小さいことが要求される。
上記に鑑み、本発明は、nx>nz>nyの屈折率異方性を有し、加熱による光学特性の変化、特にNZ係数の変化が小さい位相差フィルムの提供を目的とする。
本発明の一態様は、1層のポリマーフィルムからなり、面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たす位相差フィルムである。位相差フィルムは、ガラス転移温度Tg1(K)とNZ係数が、(Tg1)2×(NZ)1/2≧120000を満たす。
一実施形態において、位相差フィルムは環状ポリオレフィン系フィルムである。位相差フィルムの正面レターデーションは230~320nmであってもよい。位相差フィルムのNZ係数は、0.4~0.6であってもよい。
上記の位相差フィルムを偏光子と積層一体化することにより、位相差フィルムを備える偏光板が得られる。この偏光板は、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置の形成に好適に用いられる。
本発明の位相差フィルムは、画像表示装置の製造プロセス等において、高温環境に晒された場合のNZ係数の変化が小さい。この位相差フィルムを備える画像表示装置は、画像表示装置を斜め方向から視認した際のコントラストの低下が生じ難く、視認性に優れている。
本発明の一実施形態にかかる位相差フィルムは、1層の延伸ポリマーフィルムからなり、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する。nxは面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内の進相軸方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率である。ポリマーフィルム(未延伸フィルム)に熱収縮性フィルムを積層した積層体を一方向に延伸することにより、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムが得られる。
ポリマーフィルムの材料としては、正の固有複屈折を有する非液晶性のポリマー材料が好ましく用いられる。正の固有複屈折を有するポリマーは、ポリマーを延伸等により配向させた場合に、その配向方向の屈折率が相対的に大きくなる。正の固有複屈折を有する非液晶性ポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のサルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド等のスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂、環状ポリオレフィン系(ポリノルボルネン系)樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、セルロースエステル類等が挙げられる。
一実施形態において、ポリマーフィルムの材料として、環状ポリオレフィン系樹脂が用いられる。環状ポリオレフィンは、透明性および耐熱性に優れるとともに、耐薬品性にも優れており、ディスプレイ用の光学フィルム材料として好適である。
環状ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、特開平1-240517号公報、特開平3-14882号公報、特開平3-122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα‐オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体や水素化物等が挙げられる。環状ポリオレフィン系樹脂の市販品としては、日本ゼオン製の「ゼオノア」および「ゼオネックス」、JSR製の「アートン」、三井化学製の「アペル」、TOPAS ADVANCEDPOLYMERS製の「トパス」等が挙げられる。
環状ポリオレフィン系フィルムは、環状ポリオレフィン系樹脂を50重量%以上含有するものが好ましい。環状ポリオレフィン系フィルムにおける環状ポリオレフィン系樹脂の含有量は、70重量%以上がより好ましく、80重量%以上がさら好ましく、90重量%以上または95重量%以上であってもよい。
ポリマーフィルムの製造方法としては、溶液キャスト法、溶融押出法等の公知の方法を採用できる。フィルムの厚みは特に限定されないが、一般には、5μm~300μm程度である。フィルムの厚みは、100μm以下または80μm以下であってもよい。フィルム中には、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の添加剤が含まれていてもよい。
耐熱性の観点から、ポリマーフィルムのガラス転移温度は、100℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましい。また、位相差フィルムの加熱による位相差特性(特にNZ係数)の変化を抑制する観点からも、ポリマーフィルムは高ガラス転移温度であることが好ましい。ポリマーフィルムのガラス転移温度は、130℃以上、135℃以上、140℃以上または145℃以上であってもよい。延伸加工性の観点から、ポリマーフィルムのガラス転移温度は200℃以下が好ましく、180℃以下がより好ましく、170℃以下または160℃以下であってもよい。ポリマーフィルムのガラス転移温度は、示差熱分析(DSC)により得られたDSC曲線の変曲点である。
熱収縮性フィルムは、上記のポリマーフィルムに貼り合わせて延伸する際に、延伸方向と直交する方向に熱収縮するものであれば特に限定されない。熱収縮性フィルムを構成する材料は特に限定されないが、ポリマーフィルムのガラス転移温度付近で熱収縮するものが好ましい。汎用性に優れ安価であることから、熱収縮性フィルムの材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンや、ポリエステル類が好ましく用いられる。
熱収縮性フィルムは、ポリマーフィルムのガラス転移温度Tg1における収縮応力が0.5N/4mm以上であるものが好ましい。熱収縮性フィルムは、収縮率が異方性を有していてもよい。熱収縮性フィルムが収縮率異方性を有している場合、ポリマーフィルムのガラス転移温度Tg1において、ポリマーフィルムの延伸方向と直交する方向における収縮応力が0.5N/4mm以上であることが好ましい。
熱収縮性フィルムは、ポリマーフィルムの一方の面に積層してもよく、ポリマーフィルムの両面に積層してもよい。ポリマーフィルムの表面に適宜の粘着剤層を介して熱収縮性フィルムを貼り合わせることにより、ポリマーフィルムと熱収縮性フィルムとの積層体が形成される。熱収縮性フィルムを支持基材として、その上にポリマー溶液を塗布して溶媒を乾燥し、熱収縮性フィルム上に延伸対象のポリマーフィルム(塗膜)が密着積層された積層体を形成してもよい。
ポリマーフィルム(未延伸フィルム)と熱収縮性フィルムとの積層体を搬送しながら、加熱炉内で一方向に延伸することにより、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムが得られる。延伸倍率は、目的とする光学特性に応じて、例えば、1.01倍~2倍程度の範囲で設定される。延伸時の加熱温度は、一般には、ポリマーフィルムのガラス転移温度±15℃程度の範囲である。
熱収縮性フィルムを積層していない単体のフィルムを、搬送方向に沿って延伸倍率p倍で延伸すると、幅と厚みが同一の比率で減少するため、幅および厚みは、それぞれ延伸前の(1/√p)倍となる。熱収縮性フィルムを積層した状態で搬送方向に沿って延伸すると、熱収縮性フィルムが幅方向に収縮するため、ポリマーフィルム単体の場合よりも、幅方向の収縮量が大きくなる。そのため、延伸倍率がp倍の場合、延伸後のフィルムの幅は、延伸前の(1/√p)倍よりも小さくなり、延伸後のフィルムの厚みは、延伸前の(1/√p)倍よりも大きくなる。これに伴って、幅方向(進相軸方向)の屈折率nyはより小さくなり、厚み方向の屈折率nzが相対的に大きくなるため、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムが得られる。
加熱炉内で積層体を延伸した後、ポリマーフィルムから熱収縮性フィルムを剥離除去することにより、位相差フィルムが得られる。位相差フィルムの正面レターデーションReは、例えば15nm~400nm程度であり、100nm以上であってもよく、150nm以上であってもよく、200nm以上であってもよい。位相差フィルムを1/2波長板(λ/2板)として使用する場合、波長550nmにおける正面レターデーションは、230~320nmが好ましく、240~310nmがより好ましく、250~300nmであってもよい。
nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムは、NZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数が、0<NZ<1を満たす。位相差フィルムのNZ係数は、0.2~0.8が好ましく、0.3~0.7がより好ましく、0.4~0.6がさらに好ましい。NZ係数が0.5に近い位相差フィルムは、視認角度によるレターデーションの変化がなく、液晶表示装置の光学補償フィルムや、円偏光板用の位相差フィルムとして用いられている。
延伸時の熱収縮性フィルムの収縮力による幅方向の収縮作用が大きいほど、位相差フィルムのNZ係数が小さくなる傾向がある。延伸時の加熱温度(延伸温度)が高いほど、熱収縮性フィルムの収縮量が大きくなるため、NZ係数が小さくなる傾向がある。延伸温度が低いほど、NZ係数が大きく(1に近く)、正面レターデーションが大きくなる傾向がある。また、同一の延伸温度では、延伸倍率が大きいほど、正面レターデーションが大きく、NZ係数が大きくなる傾向がある。NZ係数は0.5以上であってもよい。
本発明の一態様において、位相差フィルムは、NZ係数が0<NZ<1を満たすことに加えて、ガラス転移温度Tg1(単位は絶対温度:K)の二乗:(Tg1)2と、NZ係数の平方根:(NZ)1/2との積:(Tg1)2×(NZ)1/2が、120000以上である。(Tg1)2×(NZ)1/2が120000以上であることにより、加熱による位相差フィルムの光学特性、特にNZ係数の変化が小さくなる傾向がある。
(Tg1)2×(NZ)1/2は、123000以上、125000以上、127000以上または129000以上であってもよい。フィルムのガラス転移温度が高く、NZ係数が大きいほど、(Tg1)2×(NZ)1/2が大きく、位相差フィルムを加熱した際のNZ係数の変化が小さくなる傾向がある。厚みの小さなフィルムを用い、低温・高延伸倍率で延伸を実施して正面レターデーションReを大きくすれば、NZ係数が大きくなる傾向があるため、ガラス転移温度Tg1が低い場合でも、(Tg1)2×(NZ)1/2が上記範囲である位相差フィルムが得られる。
前述のように、延伸前のポリマーフィルムの厚みは、100μm以下または80μm以下であってもよい。フィルムの厚みが100μm以下であっても、低温・高延伸倍率で延伸することにより、λ/2板として使用可能な高レターデーションの位相差フィルムを作製できる。
0<NZ<1を満たす位相差フィルムは、視認角度によるレターデーションの変化がなく、液晶表示装置の光学補償フィルムや、円偏光板用の位相差フィルムとして用いられている。
例えば、IPS方式の液晶表示装置は、偏光子の吸収軸に対して45度の角度(方位角45度、135度、225度、315度)において斜め方向から視認した場合に、黒表示の光漏れが大きく、コントラストの低下やカラーシフトが生じ易い。液晶セルと偏光子との間に、正面レターデーションが波長λの1/2であり、NZ係数が0.5である位相差フィルムを配置することにより、斜め方向の黒輝度を低減し、コントラストを向上できる。
有機EL表示装置では、金属電極で光が反射し、外部から反射光が鏡面のように視認されることを防止するために、有機ELセルの視認側に円偏光板が配置されている。円偏光板は、偏光子の一方の面(有機ELセル側の面)に、正面レターデーションが波長λの1/4であるλ/4板を配置した構成を有している。nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムは、視認角度によるレターデーションの変化が小さいため、円偏光板のλ/4板として、nx>nz>nyの屈折率異方性を有する位相差フィルムを用いれば、表示装置の正面(法線方向)だけでなく、斜め方向の光の遮蔽性も高められる。
位相差フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度や取扱性等の作業性の観点から、5~300μmが好ましい正面レターデーションを大きくするために、位相差フィルムの厚みは、10μm以上が好ましく、20μm以上がより好ましく、30μm以上、40μm以上、または50μm以上であってもよい。位相差フィルムの厚みは250μm以下または200μm以下であってもよく、100μm以下または80μm以下であってもよい。
本発明の位相差フィルムは、偏光子と積層一体化して偏光板を形成してもよい。偏光子の一方の主面に、適宜の接着剤層または粘着剤層を介して位相差フィルムを貼り合わせることにより、偏光板が得られる。偏光子と位相差フィルムの間に、他のフィルムが積層されていてもよい。
偏光子としては、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等のポリエン系配向フィルム等が挙げられる。
中でも、高い偏光度を有することから、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が好ましい。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。
PVA系偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51-069644号公報、特開2000-338329号公報、WO2010/100917号パンフレット、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に記載されている薄型偏光膜を挙げることができる。このような薄型偏光子は、例えば、PVA系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸し、ヨウ素染色することにより得られる。
偏光子と位相差フィルムの配置角度は特に限定されない。例えば、液晶表示装置を斜め方向から視認した際の光抜けを抑制する光学補償の目的で位相差フィルムを用いる場合、偏光子の吸収軸方向と、位相差フィルムの遅相軸方向とが、平行または直交となるように、両者を配置することが好ましい。偏光子と位相差フィルムとを積層して円偏光板を形成する場合は、偏光子の吸収軸方向と位相差フィルムの遅相軸方向とのなす角度が45°となるように両者を配置することが好ましい。なお、配置角度は、厳密に上記の範囲である必要はなく、±2°程度の誤差を含んでいてもよい。
偏光子の他方の面には、適宜の接着剤層または粘着剤層を介して、偏光子保護フィルムとしての透明フィルムが貼り合わせられていてもよい。偏光板には、上記の位相差フィルムおよび偏光子保護フィルム以外の光学フィルムが積層されていてもよい。偏光板には、画像表示セル等との貼り合わせのための接着剤層や粘着剤層が積層されていてもよい。
位相差フィルムおよび偏光板は、画像表示装置用光学フィルムとして用いることができる。例えば、画像表示セルの表面に、位相差フィルムを備える偏光板を、適宜の粘着剤を介して貼り合わることにより、画像表示パネルが得られる。画像表示セルが液晶セルである場合には、さらに光源としてのバックライトを組み合わせることにより、液晶表示装置が形成される。
画像表示セルの表面に偏光板を貼り合わせた後、偏光子の水分量の調整等を目的として加熱が行われる場合がある。また、点灯試験の際には、パネルが80~100℃程度の高温となる。上記のように、(Tg1)2×(NZ)1/2の値が大きい位相差フィルムは、加熱によるNZ係数の変化が小さい。そのため、加熱や点灯試験等により温度が上昇した場合でも、NZ係数が変化し難く、斜め方向から視認した際のレターデーションの変化が小さいため、画像表示装置の斜め方向のコントラスト低下が抑制される。
以下に、実施例および比較例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[フィルムの製造例]
<製造例1>
環状ポリオレフィン樹脂のペレット(JSR製「ARTON R5000」、ガラス転移温度:136℃=409K)を用い、溶融押出法により、厚み120μmまたは138μmの未延伸フィルムを作製した。
<製造例1>
環状ポリオレフィン樹脂のペレット(JSR製「ARTON R5000」、ガラス転移温度:136℃=409K)を用い、溶融押出法により、厚み120μmまたは138μmの未延伸フィルムを作製した。
<製造例2>
環状ポリオレフィン樹脂のペレット(JSR製「ARTON RH4900」、ガラス転移温度:141℃=414K)を用い、溶融押出法により、厚み60μm、120μm、138μmまたは157μmの未延伸フィルムを作製した。
環状ポリオレフィン樹脂のペレット(JSR製「ARTON RH4900」、ガラス転移温度:141℃=414K)を用い、溶融押出法により、厚み60μm、120μm、138μmまたは157μmの未延伸フィルムを作製した。
<製造例3>
窒素置換した反応容器に、モノマーとして、ジシクロペンタジエン:21重量部、8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン:78重量部、および2-ノルボルネン:1重量部、分子量調整剤として1-ヘキセン:14.7重量部、ならびに溶媒としてトルエン:150重量部を投入し、107℃に加熱した。この溶液に、エチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l):0.4重量部、およびメタノール変性した六塩化タングステンのトルエン溶液(0.025mol/l):1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させて開環重合体を得た。得られた開環重合体の溶液360重量部に、水素添加反応触媒としてRu[4-CH3(CH2)4C6H4CO2]H(CO)[P(C6H5)3]:0.04重量部を添加し、水素ガス圧を9~10MPaとし、160~165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物(水素添加物)をメタノール中で沈殿させ、真空乾燥して環状ポリオレフィン樹脂A(重量平均分子量:46000、ガラス転移温度:155℃=428K)を得た。2軸押出機を用い、得られた樹脂を溶融混練した後、ストランド状に押出し、水冷後にフィーダールーダーを通してペレットを得た。このペレットを用い、溶融押出法により、厚み65μmまたは120μmの未延伸フィルムを作製した。
窒素置換した反応容器に、モノマーとして、ジシクロペンタジエン:21重量部、8-メチル-8-カルボキシメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン:78重量部、および2-ノルボルネン:1重量部、分子量調整剤として1-ヘキセン:14.7重量部、ならびに溶媒としてトルエン:150重量部を投入し、107℃に加熱した。この溶液に、エチルアルミニウムのトルエン溶液(0.6mol/l):0.4重量部、およびメタノール変性した六塩化タングステンのトルエン溶液(0.025mol/l):1.8重量部を加え、107℃で1時間反応させて開環重合体を得た。得られた開環重合体の溶液360重量部に、水素添加反応触媒としてRu[4-CH3(CH2)4C6H4CO2]H(CO)[P(C6H5)3]:0.04重量部を添加し、水素ガス圧を9~10MPaとし、160~165℃の温度で、3時間反応させた。反応終了後、得られた生成物(水素添加物)をメタノール中で沈殿させ、真空乾燥して環状ポリオレフィン樹脂A(重量平均分子量:46000、ガラス転移温度:155℃=428K)を得た。2軸押出機を用い、得られた樹脂を溶融混練した後、ストランド状に押出し、水冷後にフィーダールーダーを通してペレットを得た。このペレットを用い、溶融押出法により、厚み65μmまたは120μmの未延伸フィルムを作製した。
[フィルムの延伸]
製造例1~3で得られた未延伸フィルムの両面に、熱収縮性を有する二軸延伸プロピレンフィルム(東レ製「トレファン」)を、粘着剤を介して貼り合わせて積層体を得た。ロール延伸機により、この積層体を、表1に示す条件で自由端一軸延伸(縦延伸)した後、両面に貼り合わせられた熱収縮性フィルムを剥離除去して、位相差フィルムを得た。
製造例1~3で得られた未延伸フィルムの両面に、熱収縮性を有する二軸延伸プロピレンフィルム(東レ製「トレファン」)を、粘着剤を介して貼り合わせて積層体を得た。ロール延伸機により、この積層体を、表1に示す条件で自由端一軸延伸(縦延伸)した後、両面に貼り合わせられた熱収縮性フィルムを剥離除去して、位相差フィルムを得た。
[評価]
<位相差特性>
位相差フィルムを50mm×50mmのサイズに切り出して、粘着剤付きのガラス板に貼り合わせた。偏光・位相差測定システム(Axometrics製「AxoScan」)により、測定波長550nmで、正面レターデーション、および遅相軸方向を回転中心として試料を40°傾斜した状態でのレターデーションを測定した。これらの測定値から、波長550nmにおける正面レターデーション:Re=(nx-ny)×dおよびNZ係数:NZ=(nx-nz)/(nx-ny)を算出した。nxは面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内の進相軸方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率、dは厚みである。
<位相差特性>
位相差フィルムを50mm×50mmのサイズに切り出して、粘着剤付きのガラス板に貼り合わせた。偏光・位相差測定システム(Axometrics製「AxoScan」)により、測定波長550nmで、正面レターデーション、および遅相軸方向を回転中心として試料を40°傾斜した状態でのレターデーションを測定した。これらの測定値から、波長550nmにおける正面レターデーション:Re=(nx-ny)×dおよびNZ係数:NZ=(nx-nz)/(nx-ny)を算出した。nxは面内の遅相軸方向の屈折率、nyは面内の進相軸方向の屈折率、nzは厚み方向の屈折率、dは厚みである。
<加熱試験>
位相差特性を測定後の試料を、95℃で3時間加熱し、室温で20分放冷した後、再度位相差特性(正面レターデーションおよびNZ係数)を測定し、加熱前の初期値からの変化量を算出した。
位相差特性を測定後の試料を、95℃で3時間加熱し、室温で20分放冷した後、再度位相差特性(正面レターデーションおよびNZ係数)を測定し、加熱前の初期値からの変化量を算出した。
実施例および比較例における未延伸フィルムのガラス転移温度および厚み、延伸条件(延伸温度および延伸倍率)、ならびに位相差フィルムの評価結果(加熱前後のReおよびNZ、ならびにこれらの変化量)を表1に示す。
(Tg1)2×(NZ)1/2が120000未満である比較例1~5の位相差フィルムは、95℃で3時間の加熱によるNZ係数の変化量(絶対値)が0.030を超えていた。一方、(Tg1)2×(NZ)1/2が120000以上である実施例1~5の位相差フィルムは、加熱後のNZ係数の変化量(絶対値)が0.030以下であり、(Tg1)2×(NZ)1/2が大きいほど、NZ係数の変化量が小さくなる傾向がみられた。
製造例2で作製したフィルム(ガラス転移温度:414K)の延伸により得られた比較例4および比較例5の位相差フィルムは、製造例1で作成したフィルム(ガラス転移温度:409K)の延伸により得られた実施例1の位相差フィルムよりもガラス転移温度が高いにも関わらず、比較例4,5では、実施例1に比べて加熱によるNZ係数の変化量が大きくなっていた。これらの結果から、単にガラス転移温度が高いフィルムを用いるだけでなく、延伸条件を調整してNZ係数を大きくすることにより、加熱による光学特性の変化が小さい位相差フィルムを得られることが分かる。
Claims (6)
- 1層のポリマーフィルムからなる位相差フィルムであって、
面内の遅相軸方向の屈折率nx、面内の進相軸方向の屈折率ny、および厚み方向の屈折率nzが、nx>nz>nyを満たし、
ガラス転移温度Tg1(K)と、NZ=(nx-nz)/(nx-ny)で定義されるNZ係数が、
(Tg1)2×(NZ)1/2≧120000
を満たす、位相差フィルム。 - 前記ポリマーフィルムが環状ポリオレフィン系フィルムである、請求項1に記載の位相差フィルム。
- 位相差フィルムの正面レターデーションが230~320nmである、請求項1または2に記載の位相差フィルム。
- NZ係数が0.4~0.6である、請求項1~3のいずれか1項に記載の位相差フィルム。
- 偏光子の一方の面に請求項1~4のいずれか1項に記載の位相差フィルムが積層されている、偏光板。
- 画像表示セルと、請求項5に記載の偏光板とを備える、画像表示装置。
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JP2021206211A JP2023091457A (ja) | 2021-12-20 | 2021-12-20 | 位相差フィルム、偏光板および画像表示装置 |
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