JP2023098470A - シール部材、及びコネクタ - Google Patents

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辰雄 平林
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Abstract

【課題】成形性が良好で、且つ優れたシール性を有するのシール部材を提供する。【解決手段】熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物からなり、前記反可塑剤の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であり、前記熱可塑性エラストマーは、ゴムと熱可塑性ポリエステルと架橋剤とを含み、前記熱可塑性ポリエステルの含有量は、ゴム100質量部に対して10質量部以上70質量部以下であり、前記架橋剤の含有量は、ゴム100質量部に対して0.1質量部以上3質量部以下である、シール部材。【選択図】図8

Description

本開示は、シール部材、及びコネクタに関する。
特許文献1、2は、パネルに取り付けられるコネクタを開示する。このコネクタは、パネルに取り付けられた状態で相手コネクタと接続される。パネルは、自動車のドアパネルなどである。パネルには取付孔が設けられている。コネクタと相手コネクタとは、パネルを挟んで配置されると共に、取付孔を通して嵌合される。コネクタは、ハウジングと、ハウジングに収容される端子金具と、ハウジングに装着されるパネルシール部材と、を備える。パネルシール部材は、コネクタがパネルに取り付けられたときにパネルと接触するように、ハウジングの開口部の端部に配置される。パネルシール部材は、ハウジングとパネルとの間に弾性的に挟まれて、ハウジングとパネルとの間を液密にシールする。パネルシール部材はシリコーンゴムなどのゴム製である。
特許文献3は、熱可塑性相(T)とエラストマー相(EL)とを有する熱可塑性エラストマー組成物を開示する。エラストマー相はゴムである。熱可塑性相は、熱可塑性プラスチック(TP)と熱可塑性エラストマー(TPE)とを含む。熱可塑性プラスチックは、ポリエステル、ポリアミド、又はポリウレタンである。熱可塑性エラストマーは、コポリエステルベース、ポリアミドベース、又はポリウレタンベースのTPEである。この熱可塑性エラストマー組成物は、エラストマー相を架橋するための架橋剤を含み得る。
特開2021-34236号公報 特開2021-34237号公報 特開2018-517020号公報
シール部材は、シール部材の弾性変形によりシール性を確保する観点から、優れた弾性特性を有することが要求される。具体的には、シール部材は圧縮永久ひずみが小さいことが要求される。シール部材の材料は、代表的には、シリコーンゴムなどのゴムである。ゴムは、柔軟性があり、圧縮永久ひずみが小さい。しかし、ゴムは成形性が悪い。そこで、ゴムの代替材料として、熱可塑性エラストマーを使用することが検討されている。
熱可塑性エラストマーは、ゴムと熱可塑性樹脂とを含む組成物である。熱可塑性エラストマーは、ゴムのような弾性を有しながら、熱可塑性樹脂のように加熱することによって成形することができる。しかし、熱可塑性エラストマーは、熱可塑性樹脂に比べると成形性が劣る。熱可塑性エラストマーは、ゴム成分を含んでいるため、加熱して溶融させたときの流動性が悪い。流動性が悪いと、熱可塑性エラストマーを金型へ充填する圧力が過大になるため、シール部材の成形時に成形不良が発生し易い。
また、熱可塑性エラストマーは、ゴムに比べて圧縮永久ひずみが大きい。特に、高温環境下では、熱可塑性エラストマーの圧縮永久ひずみが増加し易い。そのため、熱可塑性エラストマーからなるシール部材は、高温環境下に晒されるとシール性を十分に確保できないおそれがある。
本開示は、成形性が良好で、且つ優れたシール性を有するシール部材を提供することを目的の一つとする。また、本開示は、上記シール部材を備えるコネクタを提供することを別の目的の一つとする。
本開示のシール部材は、
熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物からなり、
前記反可塑剤の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であり、
前記熱可塑性エラストマーは、ゴムと熱可塑性ポリエステルと架橋剤とを含み、
前記熱可塑性ポリエステルの含有量は、ゴム100質量部に対して10質量部以上70質量部以下であり、
前記架橋剤の含有量は、ゴム100質量部に対して0.1質量部以上3質量部以下である。
本開示のコネクタは、
本開示のシール部材を備える。
本開示のシール部材は、成形性が良好で、且つ優れたシール性を有する。本開示のコネクタは、優れたシール性を有する。
図1は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物に含まれる熱可塑性エラストマーの模式図である。 図2は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物において、反可塑剤として用いられるターフェニル化合物の構造式の一例を示す図である。 図3は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物において、反可塑剤として用いられるターフェニル化合物の構造式の別の一例を示す図である。 図4は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物において、反可塑剤として用いられるターフェニル化合物の構造式の更に別の一例を示す図である。 図5は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物において、反可塑剤として用いられるビフェニル化合物の構造式の一例を示す図である。 図6は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物において、反可塑剤として用いられるビフェニル化合物の構造式の別の一例を示す図である。 図7は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物の溶融状態を示す模式図である。 図8は、実施形態に係るシール部材を構成するエラストマー組成物の固化状態を示す模式図である。 図9は、実施形態に係るコネクタの取り付け状態を示す模式図である。 図10は、実施形態に係るコネクタに備えるハウジングを正面側から見た概略斜視図である。 図11は、図10に示すハウジングを背面側から見た概略斜視図である。 図12は、図10のXII-XII断面図である。 図13は、実施形態に係るコネクタが対象物に取り付けられたときのシール部材の状態を示す断面図である。 図14は、実施形態に係るコネクタを備えるコネクタ付きケーブルにおける電線と端子金具とを示す模式図である。
[本開示の実施形態の説明]
本発明者は鋭意研究を重ねた結果、熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加することにより、成形性を高めると共に、熱可塑性エラストマーの圧縮永久ひずみを低減できることを見出した。特に、高温環境下でも圧縮永久ひずみの増加を抑制できる。そして、熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物をシール部材の材料に使用することで、成形性が良好で、且つ優れたシール性を有するシール部材を得られることが分かった。
反可塑剤は、熱可塑性エラストマーに含まれる熱可塑性樹脂の融点よりも低い融点又は軟化点を有すると共に、剛直な分子構造を有する低分子の化合物である。熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加したエラストマー組成物は、熱可塑性樹脂の融点以上に加熱すると溶融して流動性を示す。エラストマー組成物が溶融した状態では、反可塑剤は、溶融又は軟化して潤滑剤として機能し、溶融状態におけるエラストマー組成物の流動性を高める。エラストマー組成物が冷えて固化すると、反可塑剤は固体状態で熱可塑性樹脂内に存在する。エラストマー組成物が固化した状態では、反可塑剤は、熱可塑性樹脂中に分散して補強剤として機能し、エラストマー組成物の圧縮永久ひずみを改善する。反可塑剤は、高温環境下で、圧縮永久ひずみの増加を抑制する効果がある。
本開示は上記の知見に基づくものである。最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示の実施形態に係るシール部材は、
熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物からなり、
前記反可塑剤の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であり、
前記熱可塑性エラストマーは、ゴムと熱可塑性ポリエステルと架橋剤とを含み、
前記熱可塑性ポリエステルの含有量は、ゴム100質量部に対して10質量部以上70質量部以下であり、
前記架橋剤の含有量は、ゴム100質量部に対して0.1質量部以上3質量部以下である。
本開示のシール部材は、成形性が良好で、且つ優れたシール性を有する。その理由は、熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物からなるからである。熱可塑性エラストマーは、ゴムと熱可塑性ポリエステルとを主成分として含むポリエステル系熱可塑性エラストマーである。反可塑剤の含有量が0.1質量部以上であることで、エラストマー組成物が溶融した状態では、反可塑剤が潤滑剤として機能して、溶融状態におけるエラストマー組成物の流動性を高めることができる。よって、シール部材の成形性が向上する。また、反可塑剤の含有量が0.1質量部以上であることで、エラストマー組成物が固化した状態では、反可塑剤が補強剤として機能して、エラストマー組成物の圧縮永久ひずみを改善することができる。よって、シール部材のシール性が向上する。反可塑剤の含有量が15質量部以下であることで、成形性の悪化を抑制できる。
(2)上記本開示のシール部材において、
前記ゴムはアクリルゴムであってもよい。
アクリルゴムは、熱可塑性ポリエステルと相性がよい。
(3)上記本開示のシール部材において、
前記反可塑剤はターフェニル化合物又はビフェニル化合物であってもよい。
ターフェニル化合物又はビフェニル化合物は、反可塑剤として好ましい。
(4)上記(3)に記載のシール部材において、
前記ターフェニル化合物の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して1質量部以上5質量部以下であってもよい。
ターフェニル化合物の含有量が上記特定の範囲であることで、反可塑剤としての効果を発揮し易い。
(5)上記(3)に記載のシール部材において、
前記ビフェニル化合物の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して1質量部以上10質量部以下であってもよい。
ビフェニル化合物の含有量が上記特定の範囲であることで、反可塑剤としての効果を発揮し易い。
(6)本開示の実施形態に係るコネクタは、
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載のシール部材を備える。
本開示のコネクタは、本開示のシール部材を備えることで、優れたシール性を有する。
(7)上記本開示のコネクタは、
ハウジングを備え、
前記ハウジングは、開口部と、前記開口部の周縁を取り囲む環状の端部と、を有し、
前記端部は、前記コネクタが対象物に取り付けられたとき、前記対象物と向かい合うように設けられており、
前記シール部材は、前記コネクタが対象物に取り付けられた状態で前記対象物と接触するように前記端部に沿って環状に設けられていてもよい。
上記のコネクタは、コネクタが対象物に取り付けられた状態でシール部材が弾性変形して対象物に密着する。そのため、上記のコネクタは、シール部材によってハウジングと対象物との間を止水することができる。
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
<シール部材>
本実施形態に係るシール部材は、対象物と接触して弾性変形することにより止水するものである。本実施形態のシール部材は、熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物からなる。シール部材は、特定のエラストマー組成物からなることで、成形性が良好で、且つ優れたシール性を有する。初めに、図1から図8を参照して、シール部材を構成するエラストマー組成物の成分について詳しく説明する。
(熱可塑性エラストマー)
図1に示すように、本実施形態の熱可塑性エラストマー10は、ゴム11と熱可塑性ポリエステル12と架橋剤13とを含む。熱可塑性エラストマー10は、ゴム11と熱可塑性ポリエステル12とを含む混合物を、架橋剤13の存在下にて動的に架橋したものである。熱可塑性エラストマー10は、熱可塑性ポリエステル12のマトリクス中に、架橋されたゴム11の粒子が分散した海島構造を有する。
本実施形態の熱可塑性エラストマー10は、ゴム11と熱可塑性ポリエステル12とを主成分として含むポリエステル系熱可塑性エラストマーである。ここでいう「主成分」とは、熱可塑性エラストマー10中のゴム11と熱可塑性ポリエステル12との合計の含有量が70質量%以上であることを意味する。ゴム11と熱可塑性ポリエステル12との合計の含有量は80質量%以上であることが好ましい。ポリエステル系熱可塑性エラストマーは耐熱性に優れる。熱可塑性エラストマー10は公知のものを用いることができる。
〈ゴム〉
ゴム11は、熱可塑性エラストマー10のソフトセグメントとして機能する。ゴム11は動的架橋されたゴムである。ゴム11は、主として熱可塑性エラストマー10に柔軟性、ゴム弾性を付与する成分である。ゴム11の種類は、例えば、アクリルゴム(ACM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、エチレン-プロピレンゴム(EPDM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、クロロプレンゴム(CR)などである。ゴム11はACMが好ましい。ACMは、熱可塑性ポリエステル12との相性が良い。本実施形態のゴム11はACMである。
〈熱可塑性ポリエステル〉
熱可塑性ポリエステル12は、熱可塑性エラストマー10のハードセグメントとして機能する。熱可塑性ポリエステル12は熱可塑性樹脂である。熱可塑性ポリエステル12は、主として熱可塑性エラストマー10の成形性、耐熱性に寄与する成分である。熱可塑性ポリエステル12は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル系樹脂である。熱可塑性ポリエステル12の種類は特に限定されない。
熱可塑性ポリエステル12の融点は、耐熱性の観点から、100℃超であることが好ましい。熱可塑性ポリエステル12の融点が100℃超であることで、100℃以上の高温環境下でシール部材を使用することができる。熱可塑性ポリエステル12の融点は、更に120℃以上であることがより好ましい。熱可塑性ポリエステル12の融点は、例えば120℃以上280℃以下、180℃以上280℃以下、更に200℃以上260℃以下である。
熱可塑性ポリエステル12の含有量は、ゴム100質量部に対して10質量部以上70質量部以下である。熱可塑性ポリエステル12の含有量が10質量部以上であることで、熱可塑性エラストマー10の成形性を確保できる。熱可塑性ポリエステル12の含有量が70質量部以下であることで、熱可塑性エラストマー10の柔軟性及びゴム弾性を確保できる。熱可塑性ポリエステル12の含有量は、ゴム100質量部に対して11質量部以上67質量部以下であることが好ましい。熱可塑性ポリエステル12の含有量は、更に12質量部以上62質量部以下、16質量部以上50質量部以下、18質量部以上46質量部以下、20質量部以上40質量部以下であることがより好ましい。
〈架橋剤〉
架橋剤13は、ゴム11を架橋するためのものである。架橋剤13は、ゴム11の種類に応じて適宜選択するとよい。架橋剤13は、一般的に使用されている公知のものを用いることができる。ゴム11がACMである場合、架橋剤13は、代表的には、ヘキサメチレンジアミンカーバメート(HMDAC)などである。
架橋剤13の含有量は、ゴム11の種類及び分量などに応じて適宜選択するとよい。架橋剤13の含有量は、ゴム100質量部に対して0.1質量部以上3質量部以下である。架橋剤13の含有量は、0.5質量部以上2質量部以下であることが好ましい。
熱可塑性エラストマー10は、その他の成分として、必要に応じて、例えば可塑剤、老化防止剤、充填剤、カーボンブラックなどの各種添加剤を更に含んでいてもよい。これらの添加剤の含有量は、特に限定されないが、熱可塑性エラストマー10の特性を損なわない範囲で適宜選択するとよい。これらの添加剤の含有量は、例えば、合計で、ゴム100質量部に対して0質量部以上20質量部以下であるとよい。
(反可塑剤)
反可塑剤は、熱可塑性エラストマーの成形性及び強度を向上させる機能を有する。反可塑剤は、熱可塑性ポリエステルの融点よりも低い融点又は軟化点を有し、且つ剛直な分子構造を有する低分子の化合物である。ここでいう「剛直な分子構造」とは、例えば、ビフェニル基又はターフェニル基を有する構造である。また、「低分子」とは、分子量が5000以下のものを指す。好ましくは、分子量が100以上5000以下、更に200以上4000以下である。反可塑剤として機能する具体的な化合物は、例えばターフェニル化合物、ビフェニル化合物である。
反可塑剤の融点又は軟化点は、熱可塑性ポリエステルの融点よりも低い。これにより、熱可塑性エラストマー10の成形性を向上できる。反可塑剤の融点又は軟化点は、例えば、260℃以下である。反可塑剤の融点又は軟化点は、更に240℃以下、220℃以下であってもよい。反可塑剤の融点又は軟化点が高いほど、高温環境下における強度を向上させることができる。反可塑剤の融点又は軟化点は、耐熱性の観点から、例えば60℃超、80℃超、更に100℃超であることが好ましい。反可塑剤の融点又は軟化点は、更に120℃以上、125℃以上、180℃以上、200℃以上であってもよい。反可塑剤の融点又は軟化点は、例えば100℃超260℃以下、120℃以上240℃以下、125℃以上220℃であることが好ましい。
ターフェニル化合物は、中央のベンゼン環に置換基である2つのフェニル基が結合した構造を有する化合物である。ターフェニル化合物は、フェニル基の結合の位置により、オルト‐ターフェニル(o‐ターフェニル)、メタ‐テルフェニル(m‐ターフェニル)、パラ‐テルフェニル(p‐ターフェニル)の3種類がある。図2はo‐ターフェニルの構造式を示す。図3はm‐ターフェニルの構造式を示す。図4はp‐ターフェニルの構造式を示す。o‐ターフェニルの融点は58℃から59℃である。m‐ターフェニルの融点は89℃である。p‐ターフェニルの融点は213℃から214℃である。反可塑剤がターフェニル化合物である場合、ターフェニル化合物の種類は、耐熱性の観点から、p‐ターフェニルが好ましい。
ビフェニル化合物は、2つのフェニル基が単結合で共有結合した構造を有する化合物である。ビフェニル化合物には、例えばビフェニルアラルキル型フェノール樹脂などのフェノール系硬化剤を用いることができる。図5は、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の構造式の一例を示す。図5に示す構造式においてnは正の整数である。図5に示す構造式を有する市販のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の具体例は、日本化薬株式会社の製品名「KAYAHARD GPH-103」、「KAYAHARD GPH-65」などがある。「KAYAHARD GPH-103」と「KAYAHARD GPH-65」とではnの数が異なる。図6は、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の構造式の別の一例を示す。図6に示す構造式においてnは3から5の整数である。図6に示す構造式を有する市販のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂の具体例は、明和化成株式会社の製品名「MEH-7851-SS」などがある。
ビフェニル化合物は、上記の例に限定されるものではなく、単分子系の化合物であってもよい。単分子系のビフェニル化合物の一例は、3,3′,5,5′-Tetrakis(methoxymethyl)-[1,1′-biphenyl]-4,4′-diolである。この化合物は、本州化学工業株式会社の「TMOM-BP」という製品名で市販されている。別の一例は、2-Propenoic acid,[1,1’-biphenyl]-4,4’-diylbis(oxy-2,1-ethanediyl) esterである。この化合物は、本州化学工業株式会社の「A-BP-2EO」という製品名で市販されている。
反可塑剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下である。反可塑剤の含有量が0.1質量部以上であることで、成形性及び強度を向上させる効果が得られる。反可塑剤を過剰に含有すると、かえって成形性が低下する。よって、反可塑剤の含有量の上限は15質量部とする。反可塑剤の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。反可塑剤の含有量は、更に1質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
ここでいう「成形性」は、成形時の成形不良の発生し難さを示すものである。「成形不良」とは、フローマーク、バリなどの外観不良である。成形不良が発生しない場合は成形性が良いといえる。成形不良が発生する場合は成形性が悪いといえる。成形性の良し悪しは、エラストマー組成物の溶融時の流動性に左右される。エラストマー組成物の流動性が高ければ、金型への充填圧力が低くても、金型の細部にまで充填され易い。充填圧力が過大にならないため、フローマーク、バリなどの成形不良が発生し難い。一方で、エラストマー組成物の流動性が低ければ、金型への充填圧力を高くする必要がある。それに伴って、充填圧力が過大になるため、成形不良が発生し易くなる。
反可塑剤の含有量は、反可塑剤として用いられる化合物の種類に応じて適宜選択することが好ましい。反可塑剤がターフェニル化合物である場合、ターフェニル化合物の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、更に1質量部以上5質量部以下であることが好ましい。反可塑剤がビフェニル化合物である場合、ビフェニル化合物の含有量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下、更に1質量部以上10質量部以下、特に5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。
図7、図8を参照して、反可塑剤の機能について詳しく説明する。図7は、エラストマー組成物が加熱されて溶融した状態を示している。図7では、熱可塑性エラストマーに含まれるゴムは図示を省略している。エラストマー組成物が溶融した状態では、熱可塑性ポリエステル12を構成する分子鎖120の動きが活発になり、分子鎖120同士が自由に動く状態になる。エラストマー組成物の溶融状態では、反可塑剤20は、溶融した熱可塑性ポリエステル12中に溶融又は軟化した状態で存在する。溶融又は軟化した反可塑剤20は、潤滑剤として機能することで、溶融状態におけるエラストマー組成物の流動性を高める。溶融状態のエラストマー組成物の流動性が向上することで、成形時に成形不良が発生し難い。よって、シール部材の成形性が向上する。
図8は、エラストマー組成物が冷やされて固化した状態を示している。図8では、熱可塑性エラストマーに含まれるゴムは図示を省略している。エラストマー組成物が固化した状態では、熱可塑性ポリエステル12を構成する分子鎖120の動きが少なくなり、複数の分子鎖120が集合して結晶化する。エラストマー組成物の固化状態では、反可塑剤20は、固化した熱可塑性ポリエステル12内に固体状態で分散している。固体状態の反可塑剤20は、補強剤として機能することで、固体状態におけるエラストマー組成物の強度を高める。固化したエラストマー組成物の強度が向上することで、圧縮永久ひずみを改善することができる。よって、シール部材のシール性が向上する。反可塑剤20の融点又は軟化点が高いほど、高温環境下での圧縮永久ひずみの増加を抑制する効果が高い。
したがって、上述した特定のエラストマー組成物からなる本実施形態のシール部材は、成形性が良好で、且つ優れたシール性を有する。
溶融状態におけるエラストマー組成物のメルトボリュームレイト(MVR)は、例えば10.0cc/min以上、更に12.0cc/min以上であることが好ましい。MVRが大きいほど、流動性が高いことを示す。
エラストマー組成物のMVRは、例えば、次のようにして測定できる。エラストマー組成物を加熱して溶融状態にする。このときのエラストマー組成物の温度は、熱可塑性ポリエステルの融点以上とする。溶融状態のエラストマー組成物を一定の温度に維持した状態で、エラストマー組成物を円筒の孔から一定の荷重で押し出した際の1分間あたりの流動量を測定する。孔のサイズは、直径1mm、長さ2mmである。押出荷重は20kgである。MVRの測定は、市販のフローテスタを使用して行うことができる。市販のフローテスタは、例えば、株式会社島津製作所製の「CFT-500D」である。
シール部材の形状は、特に限定されるものではなく、シール部材の用途に合わせて適宜選択すればよい。シール部材の形状は、例えば、板状、環状、筒状、ブロック状などの所望の形状とすることができる。シール部材の成形は、例えば射出成形、押出成形などの方法を用いることができる。シール部材は、コネクタ、ケースなどの各種製品の止水用途に好適である。
<コネクタ>
次に、図9から図14を参照して、本実施形態に係るシール部材を備えるコネクタの具体例を説明する。図9に示すコネクタ付きケーブル1は、コネクタ2とケーブル3とを備える。コネクタ2は対象物に取り付けられる。本実施形態では、対象物はパネル8である。このパネル8は、自動車の車体を構成するパネルである。パネル8には、貫通孔80が設けられている。本実施形態では、コネクタ2はエンジンルーム内に配置される。コネクタ2は、貫通孔80を塞ぐようにパネル8に取り付けられる。コネクタ2は、パネル8に取り付けられた状態で相手コネクタ9と接続される。コネクタ2と相手コネクタ9とは、パネル8を挟んで配置されると共に、貫通孔80を通して嵌合される。
図9を参照して、コネクタ2と相手コネクタ9との接続状態について説明する。コネクタ2は、後述するハウジング4を備える。ハウジング4には、後述するカムフォロア45が設けられている。相手コネクタ9は、コネクタ2と相手コネクタ9とを嵌合させるレバー90を備える。レバー90には、カムフォロア45を受け入れるカム溝95が設けられている。コネクタ2と相手コネクタ9とが嵌合されると、カムフォロア45がカム溝95に挿入される。この状態でレバー90を紙面上方に倒すと、カムフォロア45がカム溝95に沿って移動する。カムフォロア45の移動に伴い、コネクタ2と相手コネクタ9とが互いに近づく方向に移動することで、コネクタ2と相手コネクタ9とが接続される。このとき、コネクタ2のハウジング4はパネル8に押し付けられた状態になる。以下、コネクタ付きケーブル1の構成を説明する。
<ケーブル>
ケーブル3は複数の電線が束ねられたものである。ケーブル3はシースで被覆されている。上記電線は、図14に示すように、導体31と絶縁層32とを備える電線30である。導体31は、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、又はアルミニウム合金などで構成されている。絶縁層32は、電気絶縁性を有する樹脂で構成されている。電線30の先端は、絶縁層32が剥がされて導体31が露出している。露出した導体31には、端子金具5が取り付けられる。
<コネクタ>
コネクタ2は、図10、図11に示すように、ハウジング4を備える。ハウジング4には、図14に示す端子金具5が収容されている。端子金具5は、オス端子でもメス端子でもよい。本実施形態では、端子金具5はメス端子である。端子金具5は、筒状の本体部50とワイヤバレル51とインシュレーションバレル52とを備える。本体部50は、図示しないオス端子の先端が挿入されて、オス端子と電気的に接続される。ワイヤバレル51は、図14に示す電線30の導体31を把持する。インシュレーションバレル52は、電線30の絶縁層32を把持する。
(ハウジング)
ハウジング4は、図14に示す端子金具5が収容される第一部分40Aと、筒状の第二部分40Bと、から構成されている。図11に示すように、第一部分40Aには、端子金具5が収容される複数のキャビティ40cが設けられている。本実施形態では、第一部分40Aには、図示しないサブハウジングが配置される貫通孔40hが設けられている。サブハウジングには、例えば同軸ケーブルの端子などが配置される。図10に示すように、第二部分40Bの内周面には、カムフォロア45が設けられている。
ハウジング4は、樹脂などの絶縁材料によって構成されている。本実施形態では、ハウジング4はPBTからなる。図示しない上記サブハウジングもPBTなどの絶縁材料によって構成されている。
ハウジング4は、図10に示すように、開口部40aを有する。開口部40aには、図9に示す相手コネクタ9が挿入される。開口部40aは、第二部分40Bのうち、第一部分40Aと反対側の端部に設けられている。開口部40aは、図9に示すようにコネクタ2がパネル8に取り付けられたとき、貫通孔80を取り囲むように配置される。また、ハウジング4は、開口部40aの周縁を取り囲む環状の端部40eを有する。端部40eは、図9に示すようにコネクタ2がパネル8に取り付けられたとき、パネル8と向かい合うように設けられている。ハウジング4の開口部40aが設けられた側を正面とし、その反対側を背面とする。
(シール部材)
ハウジング4は、図10に示すように、シール部材41を備える。シール部材41は、ハウジング4の端部40eに設けられている。シール部材41は、端部40eに沿って環状に形成されている。シール部材41は、図9に示すようにコネクタ2がパネル8に取り付けられた状態で、パネル8と接触するように設けられている。シール部材41は、コネクタ2が相手コネクタ9と接続されたときにパネル8に押し付けられた状態になる。そのため、シール部材41が弾性変形してパネル8に密着する。シール部材41によってハウジング4とパネル8との間が止水される。ハウジング4の外部に水分が付着しても、その水分がハウジング4の内部に浸入し難い。
シール部材41は、上記<シール部材>の項目で説明したように、特定のエラストマー組成物からなる。本実施形態では、シール部材41は二色成形によってハウジング4の端部40eに一体成形されている。具体的には、第一の金型にてハウジング4を成形した後、第二の金型にてハウジング4に対してシール部材41の成形を行う。本実施形態のコネクタ2は、ハウジング4にシール部材41が一体に成形されているため、ハウジング4にシール部材41を取り付ける作業が不要である。よって、コネクタ2は生産性に優れる。
本実施形態のシール部材41は、上述した特定のエラストマー組成物からなるため、圧縮永久ひずみが比較的小さい。そのため、シール部材41がパネル8に押し付けられた状態において、シール部材41の弾性変形によってパネル8に作用する面圧が所定値以上となり易い。このようなシール部材41はパネル8に隙間なく密着し易い。その結果、シール部材41によってハウジング4とパネル8との間のシール性が確保される。また、特定のエラストマー組成物からなるシール部材41は、高温環境下での圧縮永久ひずみの増加を抑制できる。よって、シール部材41が高温環境下に晒されても、ハウジング4とパネル8との間のシール性が維持される。シール部材41は、エンジンルーム内に配置されるコネクタ2の止水に好適に使用することができる。
上述したように、エラストマー組成物を構成する熱可塑性エラストマーはポリエステル系熱可塑性エラストマーである。ポリエステル系熱可塑性エラストマーはPBTとの密着性に優れる。本実施形態では、ハウジング4がPBTによって構成されているので、シール部材41がハウジング4から非常に外れ難い。
本実施形態のシール部材41は、図10に示すように、図9に示すパネル8と接触する先端部41Aを有する。先端部41Aは、内周面41iと外周面41uとを有する。本実施形態では、図10に示す軸線40sに沿った平面で先端部41Aを切断した切断面において、外周面41uは軸線40sに沿って延び、内周面41iは先端に向かうに従って外周面41uに向かって傾斜している。つまり、先端部41Aの断面形状は、図12に示すように、略直角三角形状である。軸線40sは、ハウジング4における筒状の第二部分40Bの中心軸である。上記切断面において、内周面41iは、内側に膨らむように湾曲していてもよいし、外周面41u側に凹となるように湾曲していてもよい。
シール部材41の先端部41Aが上記した形状を有することで、図13に示すように、シール部材41がパネル8に押し付けられたときに、先端部41Aが外周側、つまり図10に示す軸線40sから離れる方向に変形し易い。仮に先端部41Aの内周面41iと外周面41uとが先端に向かうに従い互いに近づく方向に傾斜している場合、先端部41Aの断面形状は略二等辺三角形状となる。このような形状の先端部41Aは、シール部材41がパネル8に押し付けられたときに、先端部41Aがシール部材41の軸方向に圧縮され易い。この場合、シール部材41の反発力が強くなる。シール部材41の反発力が強くなり過ぎると、図9に示すコネクタ2と相手コネクタ9との接続が行い難い。
更に、先端部41Aの内周面41iには、図10、図12に示すように、シール部材41の周方向に沿うように環状のリブ41rが設けられている。本実施形態では、図12に示すように、複数のリブ41rが内周面41iに設けられている。複数のリブ41rは、内周面41iの先端側から端部40eに近い側に向かって階段状に形成されている。図13に示すように、先端部41Aが図10に示す軸線40sから離れる方向に変形したとき、リブ41rがパネル8に密着する。その結果、ハウジング4とパネル8との間のシール性が向上する。リブ41rの数は単数であってもよい。
<試験例1>
エラストマー組成物からなるシール部材の特性を調べた。
エラストマー組成物の材料として、熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを用意した。熱可塑性エラストマーは、市販のポリエステル系熱可塑性エラストマーである。このポリエステル系熱可塑性エラストマーは、ゴムと熱可塑性ポリエステルと架橋剤とを含む。更に、このポリエステル系熱可塑性エラストマーは、その他の成分として可塑剤及び老化防止剤などの添加剤を含む。熱可塑性エラストマーに含まれるゴムはACMである。熱可塑性ポリエステルはPBTである。
熱可塑性エラストマーの各成分の含有量を下記に示す。下記に示す各成分の含有量は、熱可塑性エラストマー全体を100質量%としたときの質量%で表す。なお、下記に示す添加剤の含有量(質量%)は、架橋剤も含めた含有量である。
ゴム:70質量%
熱可塑性ポリエステル:15質量%
添加剤:15質量%
PBTの含有量は、ACM100質量部に対して21質量部である。架橋剤の含有量は、ACM100質量部に対して1.4質量部である。可塑剤と老化防止剤との合計の含有量は、ACM100質量部に対して20質量部である。
試料No.1からNo.5のエラストマー組成物を用意した。試料No.1からNo.5は、熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加して、熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを混合したものである。反可塑剤は、ターフェニル化合物又はビフェニル化合物である。ターフェニル化合物はp‐ターフェニルである。ビフェニル化合物はビフェニルアラルキル型フェノール樹脂である。ビフェニル化合物には、市販のフェノール系硬化剤を用いた。このフェノール系硬化剤の軟化点は102℃である。試料No.1からNo.3は、反可塑剤としてターフェニル化合物を添加した。試料No.4とNo.5は、反可塑剤としてビフェニル化合物を添加した。試料No.1からNo.3は、ターフェニル化合物の含有量がそれぞれ、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、1質量部、3質量部、5質量部となるように添加した。試料No.4とNo.5は、ビフェニル化合物の含有量がそれぞれ、熱可塑性エラストマー100質量部に対して、5質量部、10質量部となるように添加した。表1に、試料No.1からNo.5のエラストマー組成物に含まれる反可塑剤の種類と添加量を示す。表1において、「p-tPh」はp‐ターフェニルを意味する。また、反可塑剤の添加量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対する添加量を意味する。
エラストマー組成物に含まれる各成分の同定と定量は次のようにして行うことができる。エラストマー組成物の試料をアセトンに投入し、不溶分と可溶分とを分離する。アセトン不溶分には、ACMなどのゴム成分、ポリエステル系樹脂などの樹脂成分が含まれる。回収したアセトン不溶分をヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に投入し、不溶分と可溶分とを分離する。HFIP不溶分には、ゴム成分が含まれる。HFIP可溶分には、樹脂成分が含まれる。HFIP不溶分を分析することにより、ゴム成分の同定及び定量を行う。HFIP可溶分を分析することにより、樹脂成分の同定及び定量を行う。また、HFIP不溶分、HFIP可溶分、及びアセトン可溶分をそれぞれ分析することにより、架橋剤、反可塑剤、その他の添加剤などの成分を同定及び定量を行う。各成分の同定及び定量は、例えば、プロトン核磁気共鳴分析(H NMR)、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI-TOF MS)、液体クロマトグラフ質量分析(LC/MS)などの分析方法を用いて行うことができる。
比較として、試料No.10からNo.14のエラストマー組成物を用意した。試料No.10からNo.14はいずれも、熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加していない。試料No.10は、熱可塑性エラストマーをそのまま使用したものである。試料No.11からNo.14は、熱可塑性エラストマーに樹脂を添加したものである。添加した樹脂は、液晶ポリマー(LCP)又はPBTである。試料No.11とNo.12は、添加樹脂としてLCPを添加した。試料No.13とNo.14は、添加樹脂としてPBTを添加した。表1に、試料No.11からNo.14における添加樹脂の種類と添加量を示す。添加樹脂の添加量は、熱可塑性エラストマー100質量部に対する添加量を意味する。
Figure 2023098470000002
試料No.1からNo.5及び試料No.10からNo.14のエラストマー組成物の流動性と圧縮永久ひずみの評価を行った。
(流動性の評価)
流動性の評価は、フローテスタを用いて、溶融状態におけるエラストマー組成物のMVRを測定した。フローテスタには、株式会社島津製作所製の「CFT-500D」を使用した。エラストマー組成物の温度は260℃とした。溶融状態のエラストマー組成物を、直径1mm、長さ2mmの孔に対し、所定の荷重で押し出した際の1分間あたりのMVRを求めた。押出荷重は20kgとした。各試料のMVRの測定結果を表2に示す。MVRが大きいほど、流動性が高いことを意味する。
(圧縮永久ひずみの評価)
エラストマー組成物の圧縮永久ひずみは、JIS K 6262:2013に基づいて測定した。各試料のエラストマー組成物を成形して試験片を作製した。試験片は、JIS K 6262:2013に記載された大型試験片である。大型試験片は、直径29.0mm、厚さ12.5mmの円柱体である。試験片を所定の圧縮率で圧縮した状態で120℃の環境下に1000時間保持した後の圧縮永久ひずみを求めた。圧縮率は25%とした。
圧縮永久ひずみの評価は、試料No.10に対する改善率として表2に示す。改善率は、試料No.10の圧縮永久ひずみを各試料の圧縮永久ひずみで割った値をパーセントで表したものである。改善率が100%超の場合、圧縮永久ひずみが試料No.10の圧縮永久ひずみよりも小さいことから、試料No.10に対して圧縮永久ひずみが改善されたこと意味する。改善率が100%未満の場合、圧縮永久ひずみが試料No.10の圧縮永久ひずみよりも大きいことから、試料No.10に対して圧縮永久ひずみが悪化したこと意味する。
試料No.1からNo.5及び試料No.10からNo.14のエラストマー組成物を成形したシール部材の成形性とシール性の評価を行った。
(成形性)
成形性の評価は次のようにして行った。各試料のエラストマー組成物を成形してシール部材を作製した。この試験では、シール部材とハウジングとを二色成形によって一体に成形して、シール部材付きハウジングを作製した。ハウジングは、実施形態の<コネクタ>の(ハウジング)の項目で説明した、図7、図8に示すハウジング4である。シール部材の外観を目視にて観察し、フローマーク、バリなどの成形不良の有無を確認した。成形不良がない場合、成形性の評価を「A」とした。成形不良がある場合、成形性の評価を「B」とした。
(シール性)
シール性の評価は、上記成形性の評価で作製したシール部材付きハウジングを用いて、次のようにして行った。各試料のシール部材付きハウジングを120℃の環境下に1000時間保持する。次に、各試料のシール部材付きハウジングを、シール部材がパネルに接触するように、所定の圧力でパネルに押し付けた状態で水中に入れる。水中に入れた後、シール部材とは反対側からハウジング内に空気を100kPaの圧力で30秒間送り込む。シール部材の位置から気泡の漏れがない場合、シール性の評価を「A」とした。シール部材の位置から気泡の漏れがある場合、シール性の評価を「B」とした。
Figure 2023098470000003
表2に示す流動性の評価結果から、熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加した試料No.1からNo.5のエラストマー組成物のMVRは、熱可塑性エラストマーをそのまま使用した試料No.10のエラストマー組成物のMVRよりも大きい。よって、試料No.1からNo.5のエラストマー組成物は、試料No.10のエラストマー組成物に比べて流動性が高い。試料No.1からNo.5は、MVRが10.0cc/min以上、更に12.0cc/min以上であることから流動性が非常に高い。この結果から、熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加することで、エラストマー組成物の流動性が向上することが分かる。
また、熱可塑性エラストマーに樹脂を添加した試料No.11からNo.14のエラストマー組成物は、試料No.10のエラストマー組成物に比べて流動性が高い。よって、熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加することで、エラストマー組成物の流動性を高めることができる。しかしながら、添加樹脂による流動性の向上効果は、反可塑剤による流動性の向上効果に比べて小さい。例えば、反可塑剤の添加量と添加樹脂の添加量とが同じ、試料No.3、No.4と試料No.11、No.13とを比較した場合、反可塑剤を添加した試料No.3、No.4の方が流動性が高い。したがって、反可塑剤による流動性の向上効果は、添加樹脂による流動性の向上効果に比べて大きい。
熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物は流動性が高い。そのため、表2の成形性の評価結果に示すように、試料No.1からNo.5のエラストマー組成物からなるシール部材は、成形性が良好である。これに対し、試料No.10のエラストマー組成物は流動性が悪いため、シール部材の成形性が悪い。
表2に示す圧縮永久ひずみの評価結果から、試料No.1からNo.5のエラストマー組成物の圧縮永久ひずみの改善率は、110%以上、更に120%である。よって、試料No.1からNo.5のエラストマー組成物の圧縮永久ひずみは、試料No.10のエラストマー組成物の圧縮永久ひずみに比べて改善されている。この結果から、熱可塑性エラストマーに反可塑剤を添加することで、エラストマー組成物の圧縮永久ひずみを改善できることが分かる。
これに対し、試料No.11からNo.14のエラストマー組成物の圧縮永久ひずみは、試料No.10のエラストマー組成物の圧縮永久ひずみに比べて悪化している。この結果から、試料No.11からNo.14のエラストマー組成物は、添加樹脂による流動性の向上効果はあるが、圧縮永久ひずみが悪化することが分かる。
熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物は圧縮永久ひずみの増加を抑制できる。そのため、表2の成形性の評価結果に示すように、試料No.1からNo.5のエラストマー組成物からなるシール部材は、優れたシール性を有する。これに対し、試料No.11からNo.14のエラストマー組成物は圧縮永久ひずみが悪化するため、シール部材のシール性が低い。
1 コネクタ付きケーブル
2 コネクタ
3 ケーブル
10 熱可塑性エラストマー
11 ゴム
12 熱可塑性ポリエステル
120 分子鎖
13 架橋剤
20 反可塑剤
30 電線
31 導体
32 絶縁層
4 ハウジング
40A 第一部分
40B 第二部分
40c キャビティ
40h 貫通孔
40a 開口部
40e 端部
40s 軸線
41 シール部材
41A 先端部
41i 内周面
41u 外周面
41r リブ
45 カムフォロア
5 端子金具
50 本体部
51 ワイヤバレル
52 インシュレーションバレル
8 パネル
80 貫通孔
9 相手コネクタ
90 レバー
95 カム溝
(7)上記本開示のコネクタは、
ハウジングを備え、
前記ハウジングは、開口部と、前記開口部の周縁を取り囲む環状の端部と、を有し、
前記端部は、前記コネクタが対象物に取り付けられたとき、前記対象物と向かい合うように設けられており、
前記シール部材は、前記コネクタが前記対象物に取り付けられた状態で前記対象物と接触するように前記端部に沿って環状に設けられていてもよい。
(成形性)
成形性の評価は次のようにして行った。各試料のエラストマー組成物を成形してシール部材を作製した。この試験では、シール部材とハウジングとを二色成形によって一体に成形して、シール部材付きハウジングを作製した。ハウジングは、実施形態の<コネクタ>の(ハウジング)の項目で説明した、図10、図11に示すハウジング4である。シール部材の外観を目視にて観察し、フローマーク、バリなどの成形不良の有無を確認した。成形不良がない場合、成形性の評価を「A」とした。成形不良がある場合、成形性の評価を「B」とした。

Claims (7)

  1. 熱可塑性エラストマーと反可塑剤とを含むエラストマー組成物からなり、
    前記反可塑剤の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して0.1質量部以上15質量部以下であり、
    前記熱可塑性エラストマーは、ゴムと熱可塑性ポリエステルと架橋剤とを含み、
    前記熱可塑性ポリエステルの含有量は、ゴム100質量部に対して10質量部以上70質量部以下であり、
    前記架橋剤の含有量は、ゴム100質量部に対して0.1質量部以上3質量部以下である、
    シール部材。
  2. 前記ゴムはアクリルゴムである、請求項1に記載のシール部材。
  3. 前記反可塑剤はターフェニル化合物又はビフェニル化合物である、請求項1又は請求項2に記載のシール部材。
  4. 前記ターフェニル化合物の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して1質量部以上5質量部以下である、請求項3に記載のシール部材。
  5. 前記ビフェニル化合物の含有量は、前記熱可塑性エラストマー100質量部に対して1質量部以上10質量部以下である、請求項3に記載のシール部材。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のシール部材を備える、
    コネクタ。
  7. ハウジングを備え、
    前記ハウジングは、開口部と、前記開口部の周縁を取り囲む環状の端部と、を有し、
    前記端部は、前記コネクタが対象物に取り付けられたとき、前記対象物と向かい合うように設けられており、
    前記シール部材は、前記コネクタが対象物に取り付けられた状態で前記対象物と接触するように前記端部に沿って環状に設けられている、請求項6に記載のコネクタ。
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