JP2023097078A - タングステン酸ナトリウムの製造方法 - Google Patents

タングステン酸ナトリウムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】タングステン原料をナトリウム塩と共に加熱熔融してタングステン酸ナトリウムの熔融処理物を製造してタングステン酸ナトリウム水溶液を得る製造方法において、硫化物イオンやニオブ酸イオンなどの不純物が少ない製造方法を提供する。【解決手段】タングステン原料をナトリウム塩原料と共に加熱熔融し、タングステン酸ナトリウムを主成分とする熔融処理物を得るタングステン酸ナトリウムの製造方法において、硫黄成分を含むナトリウム塩原料について、上記タングステン原料と該硫黄成分を含むナトリウム塩原料によるNa/Wモル比を3.0以上~5.0以下の範囲およびS/Wモル比を0.05以上~0.30以下の範囲に制御して硫化物の生成を抑制するタングステン酸ナトリウムの製造方法であり、ニオブを含むタングステン原料については、さらに金属鉄ないし硫酸第一鉄ないし硫酸第二鉄の少なくとも何れかの鉄原料を共存させて加熱熔融を行う製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、タングステン原料から不純物の少ないタングステン酸ナトリウム水溶液を得ることができる製造方法に関する。
近年、タングステンは切削工具用の超硬合金材料だけでなく、電極材料や配線材などの電子材料、タングステン触媒などの様々な材料として用いられており、 その需要は年々高まってきている。しかしながら、タングステン原料の資源は限られており、その安定な供給を図るため、タングステンスクラップからタングステンを回収して有効に利用することが求められている。
炭化タングステンや金属タングステンを含むタングステンスクラップからタングステンを回収する方法として、水酸化ナトリウムや硫酸ナトリウムなどのナトリウム塩を含むアルカリ薬剤をタングステンスクラップに加えて加熱反応させ、スクラップ中のタングステンをタングステン酸ナトリウムに転換させ、この熔融処理物を水に溶解させてタングステン酸ナトリウム水溶液として回収する方法が知られている。回収されたタングステン酸ナトリウム水溶液は各種精製工程を経て、パラタングステン酸アンモニウム、酸化タングステン、金属タングステン、炭化タングステンへと精製されて再利用される。
タングステンスクラップを、上記ナトリウム塩を含むアルカリ原料と共に加熱熔融してタングステン酸ナトリウムなどを得る方法は、例えば、特許文献1には、NaOH:60~90重量%とNaSO:10~40重量%からなる熔融塩を用いてタングステンの酸化処理を行う方法が記載されている。
また、特許文献2には、タングステンを副成分とする原料を、NaOH:60~95質量%とNaSO:5~40質量%を含む塩熔融液と共に加熱反応させ、生成した熔融液分解物を水に溶解し、ナトリウム化合物とタングステン等を含むアルカリメタレートとの混合物からなる溶液と、Co等の金属群からなる固体金属相と、Al等の水酸化物ないしオキシドヒドレートからなる固体相を含む水性懸濁液を得る方法が記載されており、上記ナトリウム化合物とアルカリメタレートとの混合物からなる溶液(タングステン酸ナトリウム水溶液)は濾過分離されることが記載されている。
また、特許文献3には、タングステンとコバルトを含む超硬スクラップを、硫酸ナトリウムを含む金属酸化物を添加した熔融塩と反応させ、タングステン酸ナトリウムを得る方法が記載されている。この方法では、金属酸化物として鉄を含む酸化物を用い、これを超硬スクラップ重量の10重量%以上~30重量%未満添加し、また硫酸ナトリウムを超硬スクラップ重量の70重量%以上~100重量%以下添加することが記載されている。
特許第3958790号公報 特許第5550336号公報 特許第6018958号公報
特許文献1~3に記載されている熔融処理方法は反応性が高く、タングステンの酸化と可溶性塩への転換を同時に生じさせる方法として効率的である。一方、この方法は非常に反応性が高いので、タングステンスクラップ中のタングステン以外の微量元素や添加薬剤中の元素も副次的な反応を生じ、熔融処理後の回収物であるタングステン酸ナトリウム水溶液中のタングステン以外の元素の濃度、不純物濃度が非常に上昇しやすいという課題もある。
例えば、硫酸ナトリウムなどのように硫黄が含まれていると、大気雰囲気など酸素存在下では、炭化タングステンと硫酸ナトリウムが反応してタングステン酸ナトリウムが生成する。このとき硫酸ナトリウム添加量が過剰であると、硫化ナトリウム(NaS)が副次的に大量発生する。このようなNaSを大量に含む熔融処理物を水に溶解すると不純物である硫化物イオン(S2-)が大量に溶存したタングステン酸ナトリウム水溶液になってしまう。
また例えば、タングステンスクラップにはタングステン以外にも超硬工具としての添加剤や被覆材としてチタン(Ti)やニオブ(Nb)、タンタル(Ta)などが含まれている場合がある。これらの元素はアルカリと容易に反応し、酸化反応を経て可溶性のチタン酸ナトリウム(NaTi11)、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO)、タンタル酸ナトリウム(NaTaO)などが生成する。これらの化合物を含む熔融処理物を水に溶解すると、チタン酸イオン(HTiO )、ニオブ酸イオン(NbO )、タンタル酸イオン(TaO )が大量に溶存したタングステン酸ナトリウム水溶液になってしまう。とくにニオブは最も溶解しやすいので、不純物であるニオブを多く含むタングステン酸ナトリウム水溶液になってしまうと云う問題があった。
特許文献1、2の方法は、このような硫化物イオンによる影響が十分に対処されていない。特に特許文献1の方法では、硫酸ナトリウム含有量の多い熔融塩を用いると硫化物イオンによる影響が顕著になる。さらに、ニオブ等の不純物を分離する手段が設けられていないため、ニオブ濃度の高いタングステン酸ナトリウム水溶液になってしまう。また、特許文献2の方法では、熔融液分解物を水に溶解したナトリウム化合物とタングステン等を含むアルカリメタレートとの混合物からなる溶液と、固体金属相などを濾過分離することが記載されているが、ニオブは可溶性塩類を形成して水溶液中に溶存するので、このような濾過分離方法では不純物として溶存しているニオブを分離除去することができない。
特許文献3の方法では、金属酸化物を用いた硫化物イオンの対策方法として、硫化ナトリウムと金属酸化物を熔融塩中で反応させて硫化物イオンの発生を抑制することが示されているが、特許文献3の方法は、スクラップ原料に対して70重量%以上の大量の硫酸ナトリウムを添加するため過剰な硫化ナトリウムが生じ、この過剰な硫化ナトリウムを酸化させるために、さらに大量の金属酸化物を添加しており、処理負荷が高く、ニオブの除去も十分ではない。
本発明の製造方法は、タングステン原料を、硫黄成分を含むナトリウム塩原料と共に加熱熔融してタングステン酸ナトリウムを主成分とする熔融処理物を製造したときに、該熔融処理物中の硫化物不純物が少なく、該熔融処理物を水に溶解したときに、硫化物イオンなどの不純物が格段に少ないタングステン酸ナトリウム水溶液を得ることができる製造方法に関し、また好ましくは、硫化物と共にニオブなどの不純物が格段に少ないタングステン酸ナトリウム水溶液を得ることができる製造方法に関する。
本発明の製造方法は以下の構成を有するタングステン酸ナトリウムの製造方法である。
〔1〕タングステン原料をナトリウム塩原料と共に加熱熔融し、タングステン酸ナトリウムを主成分とする熔融処理物を得るタングステン酸ナトリウムの製造方法において、硫黄成分を含むナトリウム塩原料について、上記タングステン原料と該硫黄成分を含むナトリウム塩原料によるNa/Wモル比を3.0以上~5.0以下の範囲およびS/Wモル比を0.05以上~0.30以下の範囲に制御して硫化物の生成を抑制するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
〔2〕上記硫黄成分を含むナトリウム塩原料が、硫酸ナトリウム、または硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの併用、または硫酸と水酸化ナトリウムの併用である上記[1]に記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
〔3〕ニオブを含むタングステン原料について、Na/Wモル比を3.0~5.0の範囲およびS/Wモル比を0.05~0.30の範囲に制御すると共に、金属鉄ないし硫酸鉄(硫酸第一鉄ないし硫酸第二鉄)の少なくとも何れかの鉄原料を、上記硫黄成分を含むナトリウム塩原料と共存させることによって上記ニオブを不溶解固体として固定化する上記[1]または上記[2]の何れかに記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
〔4〕上記熔融処理物を水に溶解してタングステン酸ナトリウム水溶液を得る上記[1]~上記[3]の何れかに記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
〔5〕上記熔融処理物を水に溶解させて得たタングステン酸ナトリウム水溶液の酸化還元電位が-200mV(vs.Ag/AgCl)以上である上記[4]に記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
〔具体的な説明〕
本発明の方法は、タングステン原料をナトリウム塩原料と共に加熱熔融して、タングステン酸ナトリウムを主成分とする熔融処理物を得るタングステン酸ナトリウムの製造方法において、硫黄成分を含むナトリウム塩原料について、上記タングステン原料と該硫黄成分を含むナトリウム塩原料によるNa/Wモル比を3.0以上~5.0以下の範囲およびS/Wモル比を0.05以上~0.30以下の範囲に制御して硫化物の生成を抑制するタングステン酸ナトリウムの製造方法である。
タングステン原料をナトリウム塩原料と共に加熱熔融することによってタングステン酸ナトリウムを主成分とする熔融処理物が得られる。ナトリウム塩として、硫酸ナトリウムを含むナトリウム塩原料を用いることができる。また、硫酸ナトリウムと共に水酸化ナトリウムを含むナトリウム塩原料を用いることができる。また、これらのナトリウム塩原料に硫酸を加えてもよい。例えば、水酸化ナトリウムに硫酸を加えたものは硫酸ナトリウムを用いた場合と同様の効果が得られる。加熱熔融の加熱温度は700℃以上~1000℃以下がよく、850℃以上~1000℃以下が好ましい。700℃未満では反応の進行が不十分であり、1000℃を超えると高温環境のために設備や装置の腐食劣化の懸念が生じる。
上記加熱熔融によってタングステン酸ナトリウムを主成分とする熔融処理物が得られる。例えば、タングステン原料として炭化タングステンを用い、水酸化ナトリウムないし硫酸ナトリウムを含むナトリウム塩原料と共に加熱熔融すると、次式[1][2][3]に示すように、炭化タングステンが水酸化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムと反応し、タングステン酸ナトリウムが生成する。
2WC(s)+4NaOH(s)+5O→ 2NaWO(s)+2HO(g)+2CO(g) ・・・ [式1]
2WC(s)+3NaSO(s)+3/2O(g) → 2NaWO(s)+NaO(s)+2CO(g)+3SO(g)・[式2]
2WC(s) + 3NaSO(s) → 2NaWO(s) + NaS(s) + 2CO(g) + 2SO(g) ・・[式3]
上記加熱熔融において、ナトリウム塩原料として硫酸ナトリウムを用いた場合、添加した硫黄分に対して酸素が十分に存在する雰囲気では、[式2]に示すように、タングステン酸ナトリウムの生成と共に硫酸ナトリウムが分解されて酸化ナトリウムと二酸化硫黄が生じ、二酸化硫黄はガス化して系外に抜ける。一方、硫酸ナトリウムが過剰に存在すると、[式3]に示すように、タングステン酸ナトリウムの生成と共に、副次的に硫化ナトリウムおよび一酸化硫黄が生じる。一酸化硫黄はガス化して系外に抜けるが、硫化ナトリウムは熔融処理物中に残留してしまう。このような大量の硫化ナトリウムを含む熔融処理物を水に溶解すると、不純物である硫化物イオンを大量に含むタングステン酸ナトリウム水溶液になってしまう。ナトリウム塩原料として、硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを併用した場合や、硫酸と水酸化ナトリウムを併用した場合にも同様のことが生じる。以下、硫酸ナトリウムを用いるもの、あるいは硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムを併用するもの、あるいは硫酸と水酸化ナトリウムを併用するものを何れも硫黄成分を含むナトリウム塩原料と云う。
このような硫黄成分を含むナトリウム塩原料を用いた加熱熔融において、タングステン原料と硫黄成分を含むナトリウム塩原料によるNa/Wモル比およびS/Wモル比を制御することによって、硫化ナトリウムの発生が抑制されることが見出された。本発明の製造方法は上記知見に基づいたものであり、硫化ナトリウムの生成を格段に少なくし、従って不純物である硫化物イオンを殆ど含まないタングステン酸ナトリウム水溶液を得ることができるタングステン酸ナトリウムの製造方法である。
本発明の製造方法は、具体的には、硫黄成分を含むナトリウム塩原料を用いた加熱熔融において、タングステン原料と上記硫黄成分を含むナトリウム塩原料によるNa/Wモル比を3.0以上~5.0以下の範囲およびS/Wモル比を0.05以上~0.30以下の範囲に制御して硫化物の生成を抑制するタングステン酸ナトリウムの製造方法である。
Na/Wモル比=3.0未満、あるいはS/Wモル比=0.05未満では、ナトリウム塩原料が不足するので、[式1][式2]の反応が十分に進行しない。一方、Na/Wモル比=3.0以上、およびS/Wモル比=0.05以上であれば、[式1][式2]の反応が十分に進行する。このタングステン酸ナトリウムの生成反応において、[式1]の反応が主に進行すれば、[式2]の反応は限定的で良いことが見出された。[式1]の反応を進めるには、ナトリウム塩原料として水酸化ナトリウムを用いれば良いので、硫黄成分を含むナトリウム塩原料として硫酸ナトリウムを用いる場合には、硫酸ナトリウムと共に水酸化ナトリウムを含むナトリウム塩原料を用いればよい。
硫黄成分を含むナトリウム塩原料とタングステン原料の量比が、S/Wモル比=0.30未満になるS量であれば、[式3]に示される硫化ナトリウム(NaS)は殆ど発生せず、一部局所的に発生しても、その発生量は極微量である。しかも、生じた硫化ナトリウム(NaS)は熔融処理工程において、下記[式4]に示すように、空気酸化を容易に受けて硫酸ナトリウム(NaSO)に酸化されるか、あるいは、下記[式5]に示すように、熔融処理物を水溶解させたときに、水溶解懸濁液中にスクラップ中の金属から発生した金属水酸化物などと反応して硫化物の安定固相となり、不溶解固体として固定化される。このため液中に硫化物イオンが殆ど生じない。
NaS + 2O → NaSO(s) [式4]
NaS + M(OH)(s) → MS(s) + 2NaOH [式5]
一方、S/Wモル比=0.30を上回るS量の場合、[式3]の進行が著しくなり、熔融処理物中に大量の硫化ナトリウムを含むようになるので、これを水溶解すると硫化物イオンを大量に含む水溶液になるので好ましくない。また、この場合、酸化反応が十分進行するなどして硫化ナトリウムが殆ど発生しなくても、硫酸ナトリウムなど由来の硫黄は硫酸塩の形態で熔融処理物中に含まれることとなる。これを水溶解してタングステン酸ナトリウム水溶液中を得たときに、該水溶液中に硫酸イオン(SO 2-)の形態で溶出することになる。
過剰量の硫酸イオンを含む水溶液は、後段のタングステン精製工程、例えばイオン交換精製工程や溶媒抽出工程において、陰イオンであるタングステンのイオン種と競合してタングステンの精製工程の効率を低下させ、またタングステンの精製反応に付随するなどしてタングステン製品に硫黄が混入するなどの問題を引き起こす。従って、S/Wモル比=0.30以下が好ましい。
また、Na/Wモル比=5.0を上回ると、ナトリウム塩原料の使用量が過剰であるためコスト増になり、また、加熱熔融中のナトリウム塩の飛散も多く、装置の腐食なども懸念されるため好ましくない。
熔融処理物中を水溶解して得たタングステン酸ナトリウム水溶液について、液中に含まれる硫化物イオン(S2-)は、該水溶液の酸化還元電位によって把握することができる。酸化還元電位が-200mV(vs Ag/AgCl)以上であれば硫化物イオンが殆ど存在しない。酸化還元電位が-200mV(vs Ag/AgCl)より低いと、加熱熔融反応に添加した硫黄量が過剰であるために液が大きく還元性に傾き、硫化物イオンが生じる。液を過剰な還元性にしないためには、[式3]に示すよう硫化ナトリウムの生成が過剰に進行しないように抑制することが好ましい。
連続的に熔融処理および熔融処理物を水溶解してタングステン酸ナトリウム水溶液を回収する処理を実施する場合、得られたタングステン酸ナトリウム水溶液の酸化還元電位を連続的に測定し、酸化還元電位が-200mV(vs Ag/AgCl)を下回りそうな傾向や挙動が確認できた場合には、原料投入時の硫酸ナトリウム量などを減少させるように投入量を制御するとよい。これにより得られたタングステン酸ナトリウム水溶液の酸化還元状態を酸化性傾向に制御することができる。
酸化還元電位が-200mV(vs Ag/AgCl)より低下してしまい液性が還元性になってしまった場合は、硫酸ナトリウム投入量などを減少させて熔融処理して得られた熔融処理物を水溶解して回収した、十分に酸化性の高いタングステン酸ナトリウム水溶液を適宜混合することにより酸化還元電位を-200mV(vs Ag/AgCl)以上に調整すると良い。
また、酸化還元電位が-200mV(vs Ag/AgCl)より著しく低下して液性が大きく還元性に傾いてしまい、酸化性のタングステン酸ナトリウム水溶液の混合のみでは-200mV(vs Ag/AgCl)以上に調整することが困難となってしまった場合は、酸化剤添加や酸素吹込みなどによる公知の方法により酸化還元電位を-200mV(vs Ag/AgCl)以上に調整すると良い。
酸化還元電位を-200mV(vs Ag/AgCl)以上に調整すれば、溶存している硫化物イオンは、硫酸イオンなどに酸化して転換させることができる。後段の精製処理において硫酸イオンは硫化物イオンよりも析出物精製や閉塞や処理妨害などの悪影響は相対的に発生しに難いため、タングステン酸ナトリウム水溶液中に生成してしまった硫化物イオンは硫酸イオンに転換しておくことが望ましい。
タングステン原料はニオブを含むものがある。例えば、ニオブを含む炭化タングステン製の超硬工具スクラップや合金スクラップなどはタングステン原料として用いることができる。タングステン原料として、炭化ニオブを含有するタングステンスクラップをナトリウム塩原料と共に加熱熔融すると、通常、次式[6]に示すように、タングステン原料に含まれる炭化ニオブは、ニオブ酸ナトリウム(NaNbO)などのナトリウム可溶塩を形成する。この熔融処理物を水に溶解してタングステン酸ナトリウム水溶液として回収するときに、次式[7]に示すように、可溶塩であるニオブ酸イオン(NbO )が溶解して液中の不純物になる。
2NbC(s)+6NaOH(s)+15/2O2 → 2Na3NbO4(s)+3H2O(g)+2CO2(g) ・・・[式6]
Na3NbO4+H2O → NbO3 (aq)+3Na(aq)+2OH(aq) ・・・[式7]
ところが、上記加熱熔融において、金属鉄または硫酸鉄(硫酸第一鉄ないし硫酸第二鉄)の少なくとも一種以上の鉄原料が共存すると、次式[8][9][10]に示すように、炭化ニオブは鉄と反応して水に不溶なニオブ酸鉄(FeNbO)を形成することが見出された。また、共存する上記鉄原料が酸化鉄に固相変化する際に、該酸化鉄の結晶構造中にニオブが取り込まれて不溶化することが見出された。
NbC(s)+Fe(s)+5/2O→ FeNbO(s)+CO・・・[式8]
NbC(s)+FeSO(s)+2NaOH+2O→ FeNbO(s)+NaSO+HO+CO・・・ [式9]
2NbC(s)+Fe(SO)(s)+6NaOH+7/2O→ 2FeNbO(s)+3NaSO+3HO+2CO ・・・[式10]
使用する鉄原料は、金属鉄と硫酸鉄(硫酸第一鉄ないし硫酸第二鉄)の少なくとも何れか1種以上である。酸化鉄(FeO)は好ましくない。酸化鉄は非常に安定であるためニオブ酸鉄(FeNbO)の生成が不十分であり、また酸化鉄に固相変化する際の結晶構造中へのニオブの取り込みが殆ど行われず、ニオブの固定化が不十分になる。
また、鉄原料として硫酸鉄を用いると、硫酸鉄とナトリウム塩原料の水酸化ナトリウムが反応して硫酸ナトリウムを生成するので、ナトリウム塩原料の一部として用いる硫酸ナトリウムの使用量を節減することができる。また、金属鉄を用いると、鉄粉や鉄スクラップなどの安価な金属鉄を含む原料を用いることができるので経済的である。
上記鉄原料の使用量は、ニオブ含有量が0.01~5.0質量%のタングステン原料に対して、鉄量として1.0質量%以上~10.0質量%未満になる量が好ましい。該鉄原料量が1.0質量%未満では鉄量が少な過ぎてニオブの固定化が不十分になる。該鉄原料量が10.0質量%以上では生成する酸化鉄が大量となってナトリウム塩原料とタングステン原料の接触が阻害され、主反応であるタングステンの熔融酸化反応が不十分になるので好ましくない。
特許文献1、2の方法では、水酸化ナトリウムと硫酸ナトリウムを用いたタングステン原料のアルカリ熔融において、硫酸ナトリウムを最大40重量%使用するため、熔融処理物中に大量の硫化ナトリウムが含まれ、これを水溶解して得たタングステン酸ナトリウム水溶液には大量の硫化物イオンが含まれる虞がある。また、特許文献3の方法では、硫酸ナトリウムを大量に添加し(スクラップ重量の70質量%以上~100質量%以下)、このために大量に発生したNaSを酸化するために金属酸化物を大量に加えており、処理工程の負担が増し処理コストも嵩む。
一方、本発明の製造方法では、硫酸ナトリウムの使用量はNa/Wモル比およびNa/Wモル比によって制御されるので、加熱熔融によって得られる熔融処理物には硫化ナトリウムなどが殆ど含まれておらず、硫化物イオンを殆ど含まないタングステン酸ナトリウム水溶液を得ることができる。
さらに、タングステン酸ナトリウム水溶液の酸化還元電位の測定によって硫化物イオンが発生しないように硫黄量を制御することができ、特許文献3の方法のような高コストの金属酸化物を用いる必要がない。また、本発明の方法では各処理段階において硫化物イオンが殆ど発生しないので、突発的な硫化水素ガスの発生が起こらず、処理プロセスの安全性が高く、高度な臭気対策や排ガス設備などの保安設備も削減することができる。
タングステン原料がニオブなどを含む場合、特許文献1、2のアルカリ熔融では、ニオブは水に可溶なナトリウム塩を生成するので、熔融生成物からニオブとタングステンを選択的に分離することはできない。また、特許文献3の方法で用いる金属酸化物(酸化鉄など)は過剰に生成した硫化ナトリウムを酸化するためであり、しかも酸化鉄ではニオブを不溶化することができない。
一方、本発明の方法では、ニオブを含むタングステン原料の加熱熔融において、Na/Wモル比およびNa/Wモル比を制御して硫化ナトリウム等の生成を抑制し、さらに金属鉄ないし硫酸鉄を共存させることによってニオブ安定固相を生成させ、熔融処理物の水溶解時にニオブの溶解を抑制することができるので、硫化物イオンと共にニオブ酸イオンを殆ど含まないタングステン酸ナトリウム水溶液を回収することができる。
本発明の製造方法によれば、硫化物イオンやニオブ酸イオンなどの不純物を殆ど含まないタングステン酸ナトリウム水溶液を得ることができる。また、タングステン精製工程によって不純物濃度の低いタングステン化学種、例えばパラタングステン酸アンモニウムを回収することができ、高純度のタングステン製品を得ることができる。タングステン精製工程では例えばイオン交換処理や溶媒抽出処理などが適用されるが、不純物濃度が高いタングステン酸ナトリウム水溶液を使用すると、イオン交換樹脂や有機溶媒などが不純物によって汚染され劣化する虞があるが、本発明の方法によって製造したタングステン酸ナトリウムではこのような汚染や劣化を避けることができ、精製設備の保護やランニングコストの低減を図ることができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に示す。
〔実施例1〕
ニオブを含むタングステン原料として、ニオブ0.6質量%およびタングステン89質量%を含む超硬工具スクラップを用いた。このタングステン原料約50gを反応容器に入れ、該タングステン原料の重量に対して2.0質量%の鉄量となる金属鉄粉末を加え、さらに該タングステン原料のタングステン量に対してNa/Wモル比が2.5、3.0、3.5、4.0になり、S/Wモル比が0、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5になるように、水酸化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムからなるナトリウム塩原料を加えた。
上記タングステン原料と上記ナトリウム塩原料および上記金属鉄粉末を加えた反応容器を850℃に加熱して5時間保持した後に自然冷却した。降温後に反応容器内の熔融処理物を取り出して、タングステン原料中のタングステン量に対して4倍量の純水を用いて懸濁(1次水溶解)させて、1次水溶解スラリーとした。この1次水溶解スラリーを1時間混合撹拌して酸化還元電位(ORP:mV vs.Ag/AgCl)を測定した後、1.0μmのメンブレンフィルターを用いて濾過し、1次回収液と1次脱水残渣を得た。
さらに、1次水溶解時に用いた水量と等量の純水を用いて1次脱水残渣を再度懸濁させて2次水溶解スラリーとした。この2次水溶解スラリーを1時間混合撹拌した後、1.0μmのメンブレンフィルターで濾過し、2次回収液と2次脱水残渣を得た。2次脱水残渣はさらに105℃で24時間乾燥させて乾燥残渣とし、乾燥残渣中に未熔融反応のタングステン原料が含まれる場合は篩分けにより選別して固体残渣として回収した。固体残渣を回収した後の乾燥残渣は粉末残渣として回収した。1次回収液、2次回収液はICP-AESにより溶存元素濃度を測定した。固体残渣、粉末残渣は化学分析処理(硝酸塩によるアルカリ全溶解後にICP-AES)により含有元素濃度を測定した。また、W回収率を求めた。W回収率は下記式の百分率として算出した。この結果を表1に示した。
W回収率=(1次回収液と2次回収液中のW量)/(1次回収液と2次回収液と固体残渣と粉末残渣中の全W量)
表1に示すように、S/W=0.05~0.3の範囲(No.2~No.5)、かつNa/W=3.0~4.0の範囲(No.B~No.D)は、何れも1次水溶解スラリーの酸化還元電位が-200mV(vs. Ag/AgCl)以上(-198mV以上)であり、硫化物イオンは含まれていない(S2-:0ppm)。さらに、W回収率は何れも90%以上である。なお、2次回収液についても硫化物イオンの濃度は全て0ppmであった。一方、上記条件を何れも満たさない試料(No.AのNo.1)はNa量やS量が不足し、W回収が68%と低い。また試料No.AのNo.6およびNo.7はS量が過剰であるため、上記酸化還元電位が-522mV以下であり、硫化物イオンが多い。
なお、何れの試料においても、タングステン原料の重量に対して2.0質量%のFe量を満たすように金属鉄粉末を共存させて熔融反応させているので、Nb固定化率は94~95%であり、十分なNbの不溶化が達成された。Nb固定化率は下記式の百分率として求められる。
Nb固定率=(固体残渣と粉末残渣中のNb量)/(1次回収液と2次回収液と固体残渣と粉末残渣中の全Nb量)
Figure 2023097078000001
〔実施例2〕
ニオブを含むタングステン原料として、ニオブ0.7質量%およびタングステン85質量%を含む超硬工具スクラップを用いた。このタングステン原料約50gを反応容器に入れ、該タングステン原料の重量に対して2.0質量%の鉄量となる金属鉄粉末を加え、さらに該タングステン原料のタングステン量に対してNa/Wモル比が2.5、3.0、3.5、4.0になり、S/Wモル比が0.05、0.1、0.2、0.3、0.4になるように、水酸化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムからなるナトリウム塩原料を加えた以外は実施例1と同様に処理した。この結果を表2に示す。
表2に示すように、S/W=0.05~0.3の範囲(No.10~No.13)、かつNa/W=3.0~4.0の範囲(No.B~No.D)は、No.BのNo.13の試料を除き、1次水溶解スラリーの酸化還元電位が-200mV(vs. Ag/AgCl)以上(-187mV以上)であり、硫化物イオンは含まれていない(S2-:0ppm)。さらに、W回収率は何れも95%以上である。なお、2次回収液についても硫化物イオンの濃度は全て0ppmであった。一方、上記条件を何れも満たさない試料(No.AのNo.1)はNa量が不足し、W回収が90%未満である。また試料No.14はS量が過剰であるため、上記酸化還元電位が-582mV以下であり、硫化物イオンが多い。
なお、何れの試料においても、タングステン原料の重量に対して2.0質量%のFe量を満たすように金属鉄粉末を共存させて熔融反応させているので、Nb固定化率は93~95%であり、十分なNbの不溶化が達成された。
Figure 2023097078000002

Claims (5)

  1. タングステン原料をナトリウム塩原料と共に加熱熔融し、タングステン酸ナトリウムを主成分とする熔融処理物を得るタングステン酸ナトリウムの製造方法において、硫黄成分を含むナトリウム塩原料について、上記タングステン原料と該硫黄成分を含むナトリウム塩原料によるNa/Wモル比を3.0以上~5.0以下の範囲およびS/Wモル比を0.05以上~0.30以下の範囲に制御して硫化物の生成を抑制するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
  2. 硫黄成分を含むナトリウム塩原料が、硫酸ナトリウム、または硫酸ナトリウムと水酸化ナトリウムの併用、または硫酸と水酸化ナトリウムの併用である請求項1に記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
  3. ニオブを含むタングステン原料について、Na/Wモル比を3.0~5.0の範囲およびS/Wモル比を0.05~0.30の範囲に制御すると共に、金属鉄ないし硫酸鉄(硫酸第一鉄ないし硫酸第二鉄)の少なくとも何れかの鉄原料を上記ナトリウム塩原料と共存させることによって上記ニオブを不溶解固体として固定化する請求項1または請求項2の何れかに記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
  4. 上記熔融処理物を水に溶解してタングステン酸ナトリウム水溶液を得る請求項1~請求項3の何れかに記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
  5. 上記熔融処理物を水に溶解させて得たタングステン酸ナトリウム水溶液の酸化還元電位が-200mV(vs.Ag/Agcl)以上である請求項4に記載するタングステン酸ナトリウムの製造方法。
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