JP2023094407A - 油脂感が向上した油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリング - Google Patents

油脂感が向上した油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリング Download PDF

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茜 今泉
Akane Imaizumi
信人 五十嵐
Nobuhito IGARASHI
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Abstract

【課題】油脂感が向上した油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングの提供。【解決手段】本発明によれば、分岐グルカンが、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンを含有してなる、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングが提供される。本発明によれば、上記特定重合度の分岐グルカンを有効成分とする油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上剤も提供される。【選択図】なし

Description

本発明は、油脂感が向上した油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングに関する。
クロワッサンやデニッシュのような油脂性ベーカリー食品およびバタークリームのような油脂性フィリングは油脂含量が高く、これらの食品は、油脂の風味やバター感に代表される油脂感といった濃厚さがおいしさにつながっている。油脂感の増強を増強するための手段として、油脂の増量や、油脂への香料の添加が挙げられるが、油脂の増量は原料コストが増加するだけでなく、増量しすぎると油っぽさや食品としてのバランスが崩れる。また、香料やバターオイルの添加率を増加しすぎると、違和感のある風味となることもある。更に、油脂は近年の需要拡大により価格が高騰していることから、安価な素材で油脂感を増強させ、油脂の配合量を低減することも検討課題となっている。
これまでに様々な素材により油脂感の向上が検討されてきた(例えば、特許文献1および2)。しかし、油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおける分岐グルカンを用いた油脂感の向上はこれまでに報告されていない。
特開2021-78395号公報 特開2018-22号公報
本発明は、油脂感が向上した油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングの提供を目的とする。本発明はまた、油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングの油脂感向上剤と、油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングの油脂感向上方法の提供を目的とする。
本発明によれば以下の発明が提供される。
[1]α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を含有してなる、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
[2]α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を含有してなる、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
[3]油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングが、マーガリン、バター、コンパウンドマーガリン、ファットスプレッドおよびショートニングから選択される1種または2種以上の油脂を含有する、上記[1]または[2]に記載の油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
[4]分岐グルカンまたはその還元物を油脂に対して0.3~26質量%で含有してなる、上記[1]~[3]のいずれかに記載の油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
[5]α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を有効成分とする、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上剤。
[6]α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を有効成分とする、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上剤。
[7]油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの製造方法において、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を配合する工程を含む、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上方法。
[8]油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの製造方法において、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を配合する工程を含む、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上方法。
本発明によれば、油脂以外の成分を用いて油脂感が向上した油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングを得ることができる。本発明によれば、油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおいて油脂感を維持しつつ油脂を低減することができるため、製造コストの低減や脂質摂取量の抑制を図ることができる点で有利である。
発明の具体的説明
<<分岐グルカン>>
本発明において「分岐グルカン」とは、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有するグルカンを意味し、特に重合度が4~6の分岐グルカンを「本発明の特定重合度分岐グルカン」という。本発明において、「直鎖状グルカン」とは単一のグルコシド結合によりグルコース分子が結合して構成された直鎖状のグルカンを意味する。
本発明において、「分岐構造」とはα-1,4-グルコシド結合以外のグルコシド結合により直鎖状グルカンに結合した1個以上のグルコース残基からなるグルカン残基を意味する。α-1,4-グルコシド結合以外のグルコシド結合としては、α-1,6-グルコシド結合、α-1,3-グルコシド結合、α-1,2-グルコシド結合が挙げられる。本発明において分岐グルカンは、非還元末端にα-1,6-グルコシド結合の分岐構造を有するグルカン、すなわち、グルカン鎖の非還元末端グルコース残基がα-1,6-グルコシド結合により結合した分岐構造を有しているグルカンが好ましい。
本発明において、分岐グルカンの分岐構造のグルカン残基を構成するグルコース残基の個数は、分岐グルカンの所定の重合度を満たす限り特に限定されないが、好ましくは1~数個、より好ましくは1~3個、1~2個または1個とすることができる。
本発明において、「還元末端」とは還元性を示す糖残基を意味し、「非還元末端」とは還元性を示さない糖残基、すなわち「還元末端」以外の末端糖残基を意味する。
本発明において「重合度」(DP)とは、グルカンを構成するグルコース残基の個数を指し、直鎖状グルカンを構成するグルコース残基の個数のみならず、分岐構造を構成するグルコース残基の個数を含む。分岐糖類の重合度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって測定することができる。
本発明において「還元物」とは、糖の還元末端のグルコシル基のアルデヒド基が還元され、水酸基となっているものをいう。糖の還元物を得る方法は当業者に周知であり、使用可能な還元方法を例示すれば、ヒドリド還元剤を用いる方法、プロトン性溶媒中の金属を用いる方法、電解還元方法、接触水素化反応方法等が挙げられる。本発明においては、少量の還元物を調製する場合にはヒドリド還元剤を用いる方法が簡便且つ特殊な装置を必要とせず便利であり、一方で、工業的に大規模に実施する場合には、経済性に優れ、副生成物も少ないという点から、接触水素化反応を用いる方法が好ましい。なお、本明細書において「分岐グルカン」や「糖組成物」という場合には分岐グルカンの還元物を含むものとする。
本発明に用いる分岐グルカンはまた、「α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下の糖組成物」(以下、「本発明の糖組成物」ということがある)で使用することが好ましい。上記分岐グルカンは、非還元末端に導入された分岐構造がα-1,6-グルコシド結合により結合した分岐構造であることが特に好ましい。
本発明において、「ヨード呈色値」とは、ヨード呈色試験、すなわち5.0質量%(固形分濃度)の糖組成物水溶液1mLに0.05Mヨウ素水溶液100μLを加え、よく撹拌した後の波長660nmの吸光度をいう。ヨード呈色値はマスキングの指標となる値であり、この値が大きいほどマスキング効果が高く、この値が小さいほどマスキング効果は低く本発明による呈味向上効果がより発揮されることとなる。
本発明の特定重合度分岐グルカンは特定糖質の純品の形態で使用することができ、あるいは糖混合物(糖組成物)の形態で使用することもできる。また、使用の際の性状も特に制限はなく、粉末状で使用することもでき、あるいはシラップ状で使用することもできる。
本発明の糖組成物中の重合度4~6の分岐グルカン(本発明の特定重合度分岐グルカン)の含有量は、その下限値(以上または超える)を20質量%、22質量%、25質量%、27質量%または34質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を100質量%、99質量%、90質量%、80質量%、70質量%または67質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、上記含有量の範囲は、例えば、20~100質量%、25~80質量%または34~67質量%とすることができる。
本発明の糖組成物中における重合度4~6の分岐グルカン(本発明の特定重合度分岐グルカン)の含有量は、糖組成物をβ-アミラーゼで処理した後、残存した4糖~6糖の含有量としてHPLC分析で測定することができる。前記糖組成物中の分岐グルカンの具体例としては、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、その直鎖状グルカンの非還元末端のみに導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度4~6の分岐オリゴ糖が挙げられる。
本発明の糖組成物の糖組成は、所定の効果を奏する限り特に制限はないが、例えば、重合度1~3の糖質の含有量の下限値(以上または超える)を0質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%または10質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を60質量%、58質量%、55質量%、50質量%または45質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、重合度1~3の糖質の含有量の範囲は、例えば、0~60質量%、0.5~58質量%、1~55質量%、5~50質量%または10~45質量%とすることができる。本発明の糖組成物の糖組成はまた、重合度1の糖質の含有量を20質量%以下(好ましくは18質量%以下、より好ましくは15質量%以下)とすることができ、重合度2の糖質の含有量を25質量%以下(好ましくは20質量%以下、より好ましくは18質量%以下)とすることができ、重合度3の糖質の含有量を25質量%以下(好ましくは20質量%以下、より好ましくは19質量%以下)とすることができる。本発明の糖組成物の糖組成はまた、重合度7以上の糖質の含有量の下限値(以上または超える)を0質量%、0.5質量%、1質量%、5質量%または7質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を50質量%、48質量%、45質量%、40質量%または35質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、重合度7以上の糖質の含有量の範囲は、例えば、0~50質量%、0.5~48質量%、1~45質量%、5~40質量%、5~35質量%または7~35質量%とすることができる。本発明の糖組成物の糖組成はまた、重合度4~6の糖質の含有量の下限値(以上または超える)を20質量%、25質量%、30質量%または35質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)を100質量%、90質量%、80質量%、70質量%または60質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、重合度4~6の糖質の含有量の範囲は、例えば、20~100質量%、25~90質量%または30~80質量%とすることができる。なお、本発明において糖組成物や呈味向上剤中の糖成分に関して言及する場合は、いずれも固形分当たり(固形分換算)の含有量を意味する。
本発明の糖組成物のヨード呈色値は、0.04以下であることが好ましく、0.03以下であることがより好ましく、0.02以下であることが特に好ましい。ヨウ素は直鎖状のグルカン鎖のらせん構造内に包接されることで呈色を示す。以下の理論に拘束されるものではないが、ヨード呈色値が0.05を上回る糖組成物は、高分子成分が多いこと等の理由によりグルカン鎖の包接能が高く、飲食品中の風味成分を包接し、マスキングしてしまうため呈味向上効果に劣ると考えられる。すなわち、本発明においてヨード呈色値はマスキング効果の指標として用いることができる。
本発明の特定重合度分岐グルカンおよびそれを含む本発明の糖組成物は、その製造方法に特に制限はないが、澱粉分解物に糖転移酵素を作用させることで安価かつ効率的に製造可能である。具体的には、澱粉分解物の5~50%溶液に糖転移酵素を添加し、使用酵素に応じた好適なpH、温度で反応させる。反応は通常、pH4~9の範囲で実施することができ、好適な反応pHはpH5~7の範囲である。反応は通常、70℃付近までの温度範囲で実施することができ、好適な反応温度は40~60℃の範囲である。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜反応時間を調節することができ、通常は15~96時間程度反応させる。目的組成物の生成を確認後、必要に応じてろ過、脱塩、脱色等の精製を行い、製品形態に応じて濃縮または粉末化してもよい。
ここで、糖転移作用を有する酵素は、例えば、α-グルコシダーゼ、6-α-グルコシルトランスフェラーゼ、デキストリンデキストラナーゼおよび環状マルトシルマルトース生成酵素から選択することができる。α-グルコシダーゼは、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)またはアクレモニウム・スピーシーズ(Acremonium sp.)由来のものを使用することができる。
糖転移作用を有する酵素としてα-グルコシダーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるα-グルコシダーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.01~30単位とすることができる。ここで、α-グルコシダーゼ1単位とは後述するα-グルコシダーゼの活性測定方法の条件下において、1分間に1μmolのマルトースを加水分解するのに必要な酵素量をいう。
本発明の特定重合度分岐グルカンおよびそれを含む本発明の糖組成物はまた、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素とを組み合わせてデンプン分解物に作用させることによってより効率的に製造することができる。前記アミラーゼとしては、例えば、シクロデキストリン生成酵素やα-アミラーゼが挙げられる。
ここで、シクロデキストリン生成酵素は、パエニバチルス・スピーシーズ(Paenibacillus sp.)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、およびバチルス・マゼランス(Bacillus macerans)由来のものから選択することができる。また、α-アミラーゼは、市販のα-アミラーゼであるクライスターゼL-1およびクライスターゼT-5(いずれも天野エンザイム)から選択することができる。
アミラーゼとしてシクロデキストリン生成酵素を使用する場合、前記酵素反応に用いられるシクロデキストリン生成酵素の添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり0.1~10単位とすることができる。ここで、シクロデキストリン生成酵素1単位とは後述するシクロデキストリン生成酵素の活性測定方法の条件下において、1分間に1mgのβ-シクロデキストリンを生成するのに必要な酵素量をいう。
アミラーゼとしてα-アミラーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるα-アミラーゼの添加量は、反応性および製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.0005~0.1質量%とすることができる。
本発明の特定重合度分岐グルカンおよびそれを含む本発明の糖組成物はさらに、アミラーゼと糖転移作用を有する酵素に加えて、枝切り酵素をさらに組み合わせてデンプン分解物作用させることによって製造することができる。枝切り酵素は、アミラーゼおよび糖転移作用を有する酵素と一緒に、デンプン分解物に作用させることが好ましい。
ここで、枝切り酵素は、イソアミラーゼ、プルラナーゼ、およびこれらの組み合わせからなる群から選択して使用することができ、より好ましい態様では、マイロイデス・オドラータス(Myroides odoratus)由来イソアミラーゼ、シュードモナス・アミロデラモサ(Pseudomonas amyloderamosa)由来イソアミラーゼ、およびクレブシエラ・プネウモニアエ(Klebsiella pneumoniae)由来プルラナーゼ、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
枝切り酵素としてイソアミラーゼを使用する場合、前記酵素反応に用いられるイソアミラーゼの添加量は、反応効率および製造コストの観点から、対基質(固形)1g当たり10~1000単位とすることができる。前記製造方法の酵素反応に用いられる枝切り酵素のうちプルラナーゼの添加量は、反応性および製造コストの観点から、対基質(固形)当たり0.001~0.1質量%とすることができる。ここで、イソアミラーゼ1単位とは、後述するイソアミラーゼの活性測定方法の条件下において610nmの吸光度を0.01増加させる酵素力価である。
本発明の特定重合度分岐グルカンを糖組成物の形態で得る場合には、必要に応じて生成物の必要画分を分画することで糖組成物中の重合度4~6の分岐グルカン含有量を20質量%以上とすることができる。また、生成物の高重合度の画分を除去することで糖組成物の前記ヨード呈色値を0.05以下とすることができる。除去方法としては分画、あるいは酵素で分解する方法が挙げられる。前記の分画を行う方法に特に制限は無く、膜分画、クロマト分画、沈殿分画等を例示することができる。酵素で分解する際に使用する酵素にも特に制限は無く、α-アミラーゼ等を例示することができる。
<<油脂性ベーカリー食品>>
本発明において油脂性ベーカリー食品とは、小麦粉等の澱粉質原料に、砂糖、卵、油脂等の種々の副原料および適量の水を加えて混練して得た生地を、焼く、揚げる、または蒸す等の加熱処理を施して得られる油脂性の菓子類と、上記生地を発酵させて気泡を含ませた上で焼く、揚げる、または蒸す等の加熱処理を施して得られる油脂性のパン類をいう。
油脂性の菓子類には洋菓子および和菓子のうち油脂性のものが挙げられる。油脂性の洋菓子としては、焼き洋菓子(例えば、デコレーションケーキ、ショートケーキ、ロールケーキ等のスポンジケーキ類;パウンドケーキ、バウムクーヘン、フルーツケーキ、マドレーヌ、マフィン、フィナンシェ等のバターケーキ類;ワッフル、ホットケーキ、ブッセ、クッキー等のその他焼き洋菓子)、揚げ洋菓子(例えば、ドーナッツ等)、蒸し洋菓子(例えば、蒸しケーキ、蒸しカステラ等)、が挙げられる。油脂性の和菓子としては、焼き和菓子(例えば、どら焼き、今川焼き、たい焼き、カステラ等)、揚げ和菓子(例えば、かりんとう等)が挙げられる。油脂性のパン類としては、クロワッサン、デニッシュ、菓子パン、イーストドーナツ等が挙げられる。
本発明の油脂性ベーカリー食品は、ベーカリー食品原料として油脂が配合され、かつ、分岐グルカンが配合されていれば特に制限されるものではなく、公知のベーカリー食品の製造条件や製造方法を適用できる。一例を挙げれば、小麦粉等の穀粉、油脂、砂糖等の糖類、乳製品(脱脂粉乳、牛乳等)、卵(全卵、液卵、卵加工品)、食塩、水等の原料を捏ね上げることで得られる生地を焼成することで本発明の油脂性ベーカリー食品を製造できる。また、上記以外の原料としては、ベーカリー食品の種類や望まれる品質等により、必要に応じて、活性グルテン、でんぷん、セルロース粉末等の粉類、イースト、イーストフード、酵素、人工甘味料、糖アルコール類、食物繊維、大豆タンパク、豆乳等の水性成分、乳化剤、増粘多糖類、香料、抹茶パウダー、チョコレート、ココアパウダー、香辛料(例えば、シナモン、バジリコ等)、洋酒類(例えば、ブランデー、ラム酒等)、ドライフルーツ(例えば、レーズン、ドライチェリー等)、ナッツ類(例えば、アーモンド、ピーナツ等)を通常量配合することができる。
<<油脂性フィリング>>
本発明の油脂性フィリングとは、製菓・製パン材料の一種で、食パン、デニッシュ、ドーナツ、サンドイッチ、ケーキ、パイ、クッキー、ビスケット等のベーカリー食品にトッピング、注入、塗布、サンド等により添えられる副食材(フィリング)のうち油脂性のものをいい、これらの食品等に挟む、上乗せする等して用いられる。油脂性フィリングとしては、例えば、ファットスプレッド、バタークリーム、サンドクリーム、マーガリン、チョコレートクリーム、ピーナッツバター、フラワーペースト等が挙げられる。
本発明の油脂性フィリングは、フィリング原料として油脂が配合され、かつ、分岐グルカンが配合されていれば特に制限されるものではなく、公知の油脂性フィリングの製造条件や製造方法を適用できる。一例を挙げれば、穀物、穀物粉、油脂、糖類、デキストリン、食物繊維類、卵、乳原料、香辛料、野菜、果実、ナッツ類、緑茶、ココア、チョコレート、コーヒー、植物性蛋白質および調味料等を用いて製造することができる。
<<油脂>>
本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングに用いることができる油脂としては、食用油脂であれば特に限定されないが、例えば、バター、マーガリン、ショートニング、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、オリーブ油、綿実油、大豆油、ナタネ(キャノーラ)油、ハイエルシンナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、微細藻類油、カカオバター、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂、並びにこれらに水素添加、分別およびエステル交換から選択される1種または2種以上の処理を施した加工油脂からなる群から選択される1種または2種以上を使用することができる。本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおいては、好ましくは、バター、マーガリンおよびショートニングからなる群から選択される1種または2種以上を油脂として使用することができる。
本発明の油脂感向上効果をより発揮させる観点から、本発明の油脂性ベーカリー食品は、全使用原料に対する油脂の使用比率を22%以上(好ましくは24質量%以上、より好ましくは26質量%以上)とすることができる。このような油脂性ベーカリー食品としては、クロワッサン、スポンジケーキ、蒸しケーキ、デニッシュ、パウンドケーキ、パイ、フィナンシェ、ワッフル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の油脂性ベーカリー食品における全使用原料に対する油脂の使用比率は、上限値(以下または未満)を38質量%、37質量%または36質量%とすることができる。
本発明の油脂感向上効果をより発揮させる観点から、本発明の油脂性フィリングは、全使用原料に対する油脂の使用比率を40質量%以上(好ましくは45質量%以上、46質量%以上、または47質量%以上)とすることができる。このような油脂性フィリングとしては、ファットスプレッド、バタークリーム、サンドクリーム、マーガリン、チョコレートクリーム、ピーナッツバター、フラワーペースト等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、本発明の油脂性フィリングにおける全使用原料に対する油脂の使用比率は、上限値(以下または未満)を80%質量、78質量%未満または76質量%とすることができる。
<<分岐グルカンの配合量等>>
本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおける分岐グルカンの含有量に特に制限はなく、飲食品に求められる甘味等を考慮して適宜調整すればよい。油脂感の向上という本発明の趣旨を考慮すると、本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおける油脂に対する分岐グルカンの含有量の下限値(以上または超える)は0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%または0.6質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)は26質量%、25質量%、24質量%または23質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおける油脂に対する分岐グルカンの含有量の範囲は、例えば0.3~26質量%、0.4~25質量%、0.5~24質量%または0.6~23質量%とすることができる。また、本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおける油脂に対する本発明の特定重合度分岐グルカンの含有量の下限値(以上または超える)は0.06質量%、0.1質量%、0.2質量%または0.3質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)は26質量%、25質量%、23質量%または9質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおける油脂に対する特定重合度分岐グルカンの含有量の範囲は、例えば0.06~26質量%、0.1~25質量%、0.2~23質量%、0.3~9質量%とすることができる。なお、本発明の特定重合度分岐グルカンを液糖(水溶液)で含有させる場合、上記含有量は固形分換算の値を意味する。
本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングおける油脂に対する本発明の糖組成物の含有量の下限値(以上または超える)は0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%または0.6質量%とすることができ、その上限値(以下または下回る)は26質量%、25質量%、24質量%または23質量%とすることができる。これらの下限値および上限値はそれぞれ任意に組み合わせることができ、本発明の油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングにおける油脂に対する本発明の糖組成物の含有量の範囲は、例えば0.3~26質量%、0.4~25質量%、0.5~24質量%または0.6~23質量%とすることができる。なお、本発明の特定重合度分岐グルカンや本発明の糖組成物を液糖(水溶液)で含有させる場合、上記含有量は固形分換算の値を意味する。
本発明においては、油脂性ベーカリー食品および油脂性フィリングに本発明の特定重合度分岐グルカンを配合することで、油脂感を向上することができる。本発明において「油脂感」とは、油脂により付与される風味(例えば、濃厚感、特に、バター様風味の濃厚感)を意味する。以下の理論に拘束される訳ではないが、本発明の特定重合度分岐グルカンを油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングに存在させると該食品またはフィリングに配合された油脂の風味が引き立つとともに、油脂の濃厚感が付与されると考えられる。
以下の例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、本明細書において「固形分」当たりの割合や「固形分」の含有割合に言及した場合には、固形成分の質量に基づいて定められた割合を意味するものとする。
糖組成分析
糖組成分析は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して行った。分析カラムはMCI GEL CK04S(三菱ケミカル)を用い、超純水を溶離液として流速0.4mL/分、カラム温度70℃で分析を行った。検出には示差屈折率検出器(RID-10A、島津製作所)を使用し、分析時間は35分とした。得られるクロマトグラムのピーク面積より各重合度成分の含有量を求めた。
重合度4~6の分岐グルカン含有量の定量
分岐グルカンの含有量を次の方法で確認した。5質量%に調整した糖液1mLに1M酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.5)に溶解した10mg/mL β-アミラーゼ#1500(ナガセケムテックス)50μLを添加し、55℃にて1時間作用させ、煮沸失活させた。これをアンバーライトMB4(オルガノ)にて脱塩した後、0.45μmフィルターにてろ過したものを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供した。酵素処理後に残存する重合度4~6の糖質を重合度4~6の分岐グルカンとした。
β-シクロデキストリン生成酵素の活性測定
酵素反応は、50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解した1%可溶性デンプン(ナカライテスク)0.9mLに適宜水で希釈した酵素溶液0.1mLを添加し、40℃に10分間保持した。これに40mM水酸化ナトリウム水溶液を2.5mL添加して反応を停止した。生成したβ-シクロデキストリンをフェノールフタレイン法により測定した。具体的には、0.1mg/mLフェノールフタレインおよび2.5mM炭酸ナトリウムからなる溶液0.3mLを前記溶液に添加し、攪拌後550nmの吸光度を測定した。0~0.1mg/mLの範囲で作成したβ-シクロデキストリンの標準曲線に基づき生成したβ-シクロデキストリン量を求めた。
α-グルコシダーゼの活性測定
酵素反応は、50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)に溶解した0.25%マルトース80μLに0.05%トリトンX-100を含む10mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.2)で適宜希釈した酵素溶液20μLを添加し、37℃に10分間保持した。反応10分で反応液50μLを抜き出し、2Mトリス塩酸緩衝液(pH7.0)100μLと混合して反応を停止した。これにグルコースCII-テストワコー(富士フイルム和光純薬)を40μL添加した後、室温に1時間保持して発色させ、490nmの吸光度を測定した。生成したグルコース量は0~0.01%の範囲で作成したグルコースの標準曲線に基づき算出した。
イソアミラーゼの活性測定
酵素反応は、20mM塩化カルシウムを含む50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)100μLに5mg/mLワキシーコーンスターチ(日本食品化工)350μLを添加し、45℃に5分間保持したものに同緩衝液にて適宜希釈した酵素溶液100μL添加して45℃に15分間保持した。これに反応失活用ヨウ素液(6.35mg/mLヨウ素および83mg/mLヨウ化カリウムからなる溶液2mLと0.1N塩酸8mLを混合したもの)500μLを添加して反応を停止した。この反応停止液を室温に15分間保持し、これに純水10mL添加したものの610nmの吸光度を測定した。
ヨード呈色試験
固形分濃度5.0%の糖組成物水溶液1mLに0.05Mヨウ素水溶液100μLを加え、よく撹拌した後に1cm石英セルにいれ、660nmの吸光度を分光光度計(U-2900、日立ハイテクサイエンス)で測定した。得られた吸光度から、超純水を試験溶液として同様に測定して得た吸光度を減じたものを、その糖組成物のヨード呈色値とした。
製造例1:糖組成物1の製造
30%(w/w)DE6.5コーンスターチ液化液を温度53℃、pH6.0に調整し、これにパエニバシルス・スピーシーズのシクロデキストリン生成酵素を対固形分1g当たり0.3単位、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼを対固形分1g当たり200単位、プルラナーゼ「アマノ」3(天野エンザイム)を対固形分1g当たり0.2mg、トランスグルコシダーゼL「アマノ」(天野エンザイム)を対固形分1g当たり3.75単位、クライスターゼL-1(天野エンザイム)を対固形分1g当たり0.06mg添加して50時間糖化した。これを80℃に加温し、クライスターゼL-1を対固形分1g当たり0.15mg添加して1時間作用させた。続いて、定法に従い精製、濃縮した。得られた糖組成物(糖組成物1)中のDP4~6の分岐グルカン含有量を測定したところ、33.7%であった。なお、パエニバシルス・スピーシーズのシクロデキストリン生成酵素はAgr. Biol. Chem., 40(9), 1785-1791(1976)の記載に従って調製し、マイロイデス・オドラータスのイソアミラーゼは特開平5-227959号公報に従って調製した。
製造例1で製造した糖組成物1および後記例3で比較例として使用する分岐グルカン1~3の糖組成、DP4~6の分岐グルカン含有量およびヨード呈色値を表1に示した。なお、分岐グルカン3は、分岐グルカン2よりも低分子のイソマルトオリゴ糖であり、その糖組成からDP4~6の分岐グルカン含有量およびヨード呈色値は分岐グルカン2の値と同程度であることは明らであるため、一部データ取得を省略した。
Figure 2023094407000001
例1:クロワッサンの製造(1)/油脂添加率の検討
表2(クロワッサン配合1)に示した配合でクロワッサンを調製した。折り込み油脂以外をミキサーボウルに入れ、フックにて撹拌し、生地を調製し、袋に入れて-5℃にて16時間冷却した。必要に応じて生地の表裏に強力粉をふった後に、冷却した生地をシーターに通して圧延し、折り込み油脂を包み、シーターにて圧延した後に3つ折りをして-20℃で20分間冷却した。伸展方向を90℃ずらして圧延し、3つ折りをして-20℃で20分間冷却した。更に伸展方向を90℃ずらして圧延し、3つ折りをして-20℃で15分間冷却し、伸展方向を90℃ずらして3.0mm厚まで圧延し、11cm×16cmの二等辺三角形にカットし、クロワッサン形に成形した。天板に並べて27℃、75%にて60分間発酵させ、オーブン(上火温度/下火温度)で210℃/180℃にて15分間焼成し、30分間放冷し、袋に入れて一日常温保存し、サンプルを得た。
得られたクロワッサンは7名のパネルによりバター様風味の濃厚感(油脂感)を評価した。バター様風味の濃厚感が強い程高評点とし、バター様風味の濃厚感が弱い程低評点として、参考区12を0点として±5点にて官能評価を行った。7名のパネルの評点の平均値を、××(-3~-5点)、×(-1~-2点)、△(0点)、○(1~2点)、◎(3~5点)の5段階評価にて結果を表3に示した。
Figure 2023094407000002
Figure 2023094407000003
油脂含量が同じ参考区11、参考区12および試験区11を比較すると、無添加の参考区11では油脂感が非常に弱かったが、本発明の特定重合度分岐グルカンを配合した試験区11ではバター様風味の濃厚感が非常に強く認められ、油脂感について特に顕著な効果が確認された。また、直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合した参考区12は、無添加の参考区11と比較した場合には若干のバター様風味の濃厚感が付与されたものの、全体的に風味や味質がこもっており(風味等が立ちにくく、風味等が薄く感じる)、十分な効果が確認されなかった。また、本発明の特定重合度分岐グルカンを配合した試験区11~13を比較すると、油脂含量が増加するにつれてバター様風味の濃厚感がより強く付与される傾向が認められ、試験区11および12のクロワッサン(油脂含量が23%以上)は試験区13と比較してバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が増強していることが確認された。
例2:クロワッサンの製造(2)/糖組成物の添加率の検討
表4(クロワッサン配合2)に示した内容で配合した以外は例1と同様にクロワッサンを調製し、官能評価を行った。結果を表5に示した。
Figure 2023094407000004
Figure 2023094407000005
本発明の特定重合度分岐グルカンを含む糖組成物1を油脂に対して0.5~8.6%の割合で配合したクロワッサン(試験区21~試験区25)は、いずれも直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合したクロワッサン(参考区22)と比較してバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が向上していた。特に、試験区21、23、24および25はバター様風味の濃厚感が強く、油脂感について特に顕著な効果が確認された。
例3:クロワッサンの製造(3)/糖の種類の検討
表6(クロワッサン配合3)に示した内容で配合した以外は例1と同様にクロワッサンを調製し、官能評価を行った。結果を表7に示した。
Figure 2023094407000006
Figure 2023094407000007
本発明の特定重合度分岐グルカンを配合したクロワッサン(試験区31)は、参考区31と比較してバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が向上していたのに対して、各種分岐グルカンを配合したクロワッサン(比較区31~33)は若干のバター様風味の濃厚感が付与されたものの、単一の味質を強く感じる傾向にあり、バランスが悪かった。一方で、直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合したクロワッサン(参考区32)は、無添加のクロワッサン(参考区31)と比較した場合には若干のバター様風味の濃厚感が付与されたものの、全体的に風味や味質がこもっており(風味等が立ちにくく、風味等が薄く感じる)、十分な効果が確認されなかった。
例4:クロワッサンの製造(4)/油脂の種類の検討
表8(クロワッサン配合4)に示した内容で配合した以外は例1と同様にクロワッサンを調製した。
得られたクロワッサンは10名のパネルによりバター様風味の濃厚感(油脂感)を評価した。具体的には、折り込み油脂1を用いた参考区41と試験区41との比較、折り込み油脂2を用いた参考区42と試験区42との比較で、バター様風味の濃厚感について「マルトースシラップを使用したクロワッサンの方が強く感じた」、「糖組成物を使用したクロワッサンの方が強く感じた」、「同等」のいずれに相当するかを評価し、強く感じた試験区を1点、同等の場合は0点として合計点を算出し、×(0~1点)、△(2~4点)、○(5~7点)、◎(8~10点)の4段階評価にて結果を表9に示した。
Figure 2023094407000008
Figure 2023094407000009
マーガリンを使用したクロワッサン(参考区41、試験区41)について、本発明の特定重合度分岐グルカンを配合したクロワッサン(試験区41)は、直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合したクロワッサン(参考区41)と比較して顕著にバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が向上していた。また、コンパウンドマーガリンを使用したクロワッサン(参考区42、試験区42)について、本発明の特定重合度分岐グルカンを配合したクロワッサン(試験区42)は、直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合したクロワッサン(参考区42)と比較してバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が向上していた。
例5:パウンドケーキの製造
表10(パウンドケーキ配合)に示した配合でパウンドケーキを調製した。油脂と食塩をミキサーボウルに入れて撹拌し、砂糖を加えて比重を0.7となるよう撹拌した。卵・水・糖液(マルトースシラップ或いは糖組成物)を数回に分けて添加しながら撹拌し、比重を0.7とした。薄力粉とベーキングパウダーを、投入して比重0.8まで撹拌した。得られた生地を500gずつ型に入れてオーブン(上火温度/下火温度)で180℃/180℃にて45分間焼成し、1時間30分間放冷し、袋に入れて一日常温保存し、サンプルを得た。
得られたパウンドケーキは7名のパネルによりバター様風味の濃厚感(油脂感)を評価した。バター様風味の濃厚感が強い程高評点とし、バター様風味の濃厚感が弱い程低評点として、参考区52を0点として±5点にて官能評価を行った。7名のパネルの評点の平均値を、××(-3~-5点)、×(-1~-2点)、△(0点)、○(1~2点)、◎(3~5点)の5段階評価にて結果を表11に示した。
Figure 2023094407000010
Figure 2023094407000011
本発明の特定重合度分岐グルカンを配合したパウンドケーキ(試験区51)は、直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合したパウンドケーキ(参考区52)と比較してバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が向上していた。参考区52は、無添加のパウンドケーキ(参考区51)と比較した場合には若干のバター様風味の濃厚感が付与されたものの、全体的に風味や味質がぼんやりとしており(風味等の立ちが遅く、濃さも低い)、十分な効果が確認されなかった。
例6:バタークリームの製造
表12(バタークリーム配合)に示した配合でバタークリームを調製した。油脂を撹拌した後、水あめ、糖および水を添加し、比重0.9まで撹拌した後、加糖練乳を添加し撹拌し、更にブランデーを添加して撹拌し、バタークリームを調製した。
得られたバタークリームは10名のパネルによりバター様風味の濃厚感(油脂感)を評価した。具体的には、油脂1を用いた参考区61と試験区61との比較、油脂2を用いた参考区62と試験区62との比較で、バター様風味の濃厚感について「マルトースシラップを使用したバタークリームの方が強く感じた」、「糖組成物を使用したバタークリームの方が強く感じた」、「同等」のいずれに相当するかを評価し、強く感じた試験区を1点、同等の場合は0点として合計点を算出し、×(0~1点)、△(2~4点)、○(5~7点)、◎(8~10点)の4段階評価にて結果を表13に示した。
Figure 2023094407000012
Figure 2023094407000013
コンパウンドマーガリンを使用したバタークリーム(参考区61、試験区61)について、本発明の特定重合度分岐グルカンを配合したバタークリーム(試験区61)は、直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合したバタークリーム(参考区61)と比較して顕著にバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が向上していた。また、バターを使用したバタークリーム(参考区62、試験区62)についても同様で、本発明の特定重合度分岐グルカンを配合したバタークリーム(試験区62)は、直鎖グルカンであるマルトースシラップを配合したバタークリーム(参考区62)と比較してバター様風味の濃厚感が増強しており、油脂感が向上していた。

Claims (8)

  1. α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を含有してなる、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
  2. α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を含有してなる、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
  3. 油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングが、マーガリン、バター、コンパウンドマーガリン、ファットスプレッドおよびショートニングから選択される1種または2種以上の油脂を含有する、請求項1または2に記載の油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
  4. 分岐グルカンまたはその還元物を油脂に対して0.3~26質量%で含有してなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリング。
  5. α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を有効成分とする、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上剤。
  6. α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を有効成分とする、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上剤。
  7. 油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの製造方法において、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を20質量%以上含有し、かつ、ヨード呈色値(ヨード呈色試験における波長660nmの吸光度)が0.05以下である糖組成物を配合する工程を含む、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上方法。
  8. 油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの製造方法において、α-1,4-グルコシド結合により構成された直鎖状グルカンと、少なくともその直鎖状グルカンの非還元末端に導入された分岐構造とからなる構造を有する、重合度が4~6の分岐グルカンまたはその還元物を配合する工程を含む、油脂性ベーカリー食品または油脂性フィリングの油脂感向上方法。
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