JP2023094028A - ソレノイドの製造方法、ソレノイド製造用工具、およびソレノイド - Google Patents
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Abstract
【課題】製造コストを低減できるソレノイドの製造方法、ソレノイド製造用工具、およびソレノイドを提供する。【解決手段】固定磁極、後部磁極、および非磁性パイプを有するチューブと、チューブに収容され、軸方向に移動可能な可動鉄心と、チューブの外周面との間に隙間をあけて配置されるケースと、を備えるソレノイドの製造方法であって、ケースは、固定磁極と対向する位置にフランジを有し、固定磁極とケースのうち少なくとも一方は、他方へ向かって突出して他方に接触するリング状の第1段付き部を有し、第1段付き部の他方との接触面近傍を、チューブの外周面とケースの内周面との間の隙間に挿入した筒状の工具の先端で軸方向にプレスすることにより、第1段付き部の他方との接触面の一部を他方へ向かって塑性変形させて塑性変形部を形成するとともに、他方の第1段付き部との被接触面に塑性変形部を食い込ませることで、チューブとケースとを接合する。【選択図】図1
Description
本発明は、ソレノイドの製造方法、ソレノイド製造用工具、およびソレノイドに関する。
一般に、流体の流量制御などに、ソレノイドと呼ばれる電磁弁が用いられる。従来のソレノイドとして、例えば下記特許文献1記載のソレノイドが挙げられる。特許文献1記載のソレノイドは、非磁性材料からなる非磁性パイプ(特許文献1では円筒状部材)を、磁性材料からなる固定磁極(特許文献1ではステータ)および後部磁極(特許文献1ではヨーク)で挟んだ構造のチューブ(特許文献1ではインナハウジング)と、チューブの外周側に配置されたコイルと、チューブの内部に収容された磁性体の可動鉄心(特許文献1ではプランジャ)とを含む。固定磁極は、端部に油圧ポンプなどに接合するためのフランジ部を有し、チューブとコイルは、磁性材料で形成されるケースに覆われている。
ソレノイドは、チューブの外周側に配置されたコイルに電流を流してチューブと可動鉄心に磁気回路を形成し、その電流を制御することによって可動鉄心の位置を制御して、可動鉄心に連結されたロッドを動かし、それによって弁を制御する。
近年、ソレノイドにもコストダウンの要求がある。特許文献1の例においては、固定磁極とフランジ部が一体成形されており、当該一体成形体を用いてチューブを組み立てた後、最終的にケースを接合しているが、本発明者らが製造工程を見直したところ、前記一体成形体の固定磁極とフランジ部を分け、フランジ部のない固定磁極からチューブを組み立てる方がチューブの加工がしやすく、高精度かつ低コストで製造できることがわかった。
さらに、本発明者らは、さらなるコストダウンのため、フランジ部とケースを一体成形し、当該一体成形体にチューブを接合することを検討した。ところが、接合部分の周辺に、油圧ポンプから供給されるオイルがコイル部分に侵入することを防ぐためのOリングがあるため、接合に際して溶接や接着は採用できないことがわかった。
本発明は、製造コストを低減できるソレノイドの製造方法、ソレノイド製造用工具、およびソレノイドを提供することを目的とする。
本発明のソレノイドの製造方法は、磁性材料により構成された筒状部材からなる固定磁極、前記固定磁極と同軸上に軸方向に離れて配置される磁性材料により構成された後部磁極、および前記固定磁極と同軸上に配置されて前記固定磁極と前記後部磁極を繋ぐ、非磁性材料により構成された非磁性パイプを有するチューブと、
前記チューブに収容され、前記固定磁極と同軸上で軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記チューブの外周面との間に隙間をあけて配置されて前記チューブを覆うケースと、
前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の隙間に配置されるソレノイドコイルと、を備えるソレノイドの製造方法であって、
前記ケースは、前記固定磁極と対向する位置にフランジを有し、
前記固定磁極と前記ケースのうち少なくとも一方は、他方へ向かって突出して前記他方に接触するリング状の第1段付き部を有し、
前記第1段付き部の前記他方との接触面近傍を、前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間に挿入した筒状の工具の先端で軸方向にプレスすることにより、
前記第1段付き部の前記他方との接触面の一部を前記他方へ向かって塑性変形させて塑性変形部を形成するとともに、前記他方の前記第1段付き部との被接触面に前記塑性変形部を食い込ませることで、前記チューブと前記ケースとを接合する。
前記チューブに収容され、前記固定磁極と同軸上で軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記チューブの外周面との間に隙間をあけて配置されて前記チューブを覆うケースと、
前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の隙間に配置されるソレノイドコイルと、を備えるソレノイドの製造方法であって、
前記ケースは、前記固定磁極と対向する位置にフランジを有し、
前記固定磁極と前記ケースのうち少なくとも一方は、他方へ向かって突出して前記他方に接触するリング状の第1段付き部を有し、
前記第1段付き部の前記他方との接触面近傍を、前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間に挿入した筒状の工具の先端で軸方向にプレスすることにより、
前記第1段付き部の前記他方との接触面の一部を前記他方へ向かって塑性変形させて塑性変形部を形成するとともに、前記他方の前記第1段付き部との被接触面に前記塑性変形部を食い込ませることで、前記チューブと前記ケースとを接合する。
この構成によれば、フランジをケースに設け、このケースとチューブを接合するため、ソレノイドの製造コストを低減できる。また、ケースとチューブをプレスにより接合するため、接合部分の周辺にOリングがあってもOリングへの悪影響が少ない。
本発明のソレノイドにおいて、前記固定磁極が前記第1段付き部を有し、
前記第1段付き部は、前記ケースとの接触面に全周に亘って形成されて、Oリングが嵌められる周方向溝を備える、という構成でもよい。
前記第1段付き部は、前記ケースとの接触面に全周に亘って形成されて、Oリングが嵌められる周方向溝を備える、という構成でもよい。
この構成によれば、固定磁極から径方向外側に向かって突出する第1段付き部の外周面に周方向溝が形成されることとなり、切削加工により容易に周方向溝を形成できる。
本発明のソレノイドにおいて、前記固定磁極が前記第1段付き部を有し、前記ケースが前記第1段付き部と対向する第2段付き部を有する、という構成でもよい。
この構成によれば、固定磁極とケースがそれぞれ段付き部を有するため、両者の強度を高めることができる。
また、本発明のソレノイド製造用工具は、上記のソレノイドの製造方法に用いられる工具であって、
周方向に配置される複数のカシメ用刃を前記先端に有する。
周方向に配置される複数のカシメ用刃を前記先端に有する。
この構成によれば、周方向に複数の塑性変形部が形成されるため、固定磁極とケースの周方向の接合強度を高めることができる。
本発明のソレノイド製造用工具において、前記カシメ用刃の刃先は、周方向に沿って延びている、という構成でもよい。
この構成によれば、塑性変形部が径方向に向かって生じるため、径方向に接する固定磁極とケースの接合強度を高めることができる。
また、本発明のソレノイドは、磁性材料により構成された筒状部材からなる固定磁極、前記固定磁極と同軸上に軸方向に離れて配置される磁性材料により構成された後部磁極、および前記固定磁極と同軸上に配置されて前記固定磁極と前記後部磁極を繋ぐ、非磁性材料により構成された非磁性パイプを有するチューブと、
前記チューブに収容され、前記固定磁極と同軸上で軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記チューブの外周面との間に隙間をあけて配置されて前記チューブを覆うケースと、
前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の隙間に配置されるソレノイドコイルと、を備え、
前記ケースは、前記固定磁極と対向する位置にフランジを有し、
前記固定磁極と前記ケースのうち少なくとも一方は、他方へ向かって突出して前記他方に接触するリング状の第1段付き部を有し、
前記第1段付き部は、前記他方との接触面の一部を前記他方へ向かって塑性変形させて形成された塑性変形部を有し、
前記塑性変形部が、前記他方の前記第1段付き部との被接触面に食い込むことで、前記チューブと前記ケースとが接合されている。
前記チューブに収容され、前記固定磁極と同軸上で軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記チューブの外周面との間に隙間をあけて配置されて前記チューブを覆うケースと、
前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の隙間に配置されるソレノイドコイルと、を備え、
前記ケースは、前記固定磁極と対向する位置にフランジを有し、
前記固定磁極と前記ケースのうち少なくとも一方は、他方へ向かって突出して前記他方に接触するリング状の第1段付き部を有し、
前記第1段付き部は、前記他方との接触面の一部を前記他方へ向かって塑性変形させて形成された塑性変形部を有し、
前記塑性変形部が、前記他方の前記第1段付き部との被接触面に食い込むことで、前記チューブと前記ケースとが接合されている。
この構成によれば、フランジをケースに設け、このケースとチューブが接合されるため、ソレノイドの製造コストを低減できる。また、ケースとチューブをプレスにより接合するため、接合部分の周辺にOリングがあってもOリングに悪影響を与えない。
[ソレノイドの構成]
以下、本発明のソレノイドの実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
以下、本発明のソレノイドの実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
図1はソレノイドの一例を示す縦断面図である。ソレノイド1は、軸線Lに沿って配置されている。以下の説明では、軸線Lに平行な方向を軸方向D1とし、軸線Lを中心とした円の半径方向を径方向D2、軸線Lを中心とした円に沿った方向を周方向D3と呼ぶ。また、ソレノイド1を基準として軸方向D1を定義することがあり、例えばロッド51がソレノイド1から離れる方向を前方向、ロッド51がソレノイド1に近付く方向を後方向ともいう。すなわち、各図において、軸方向D1のうち、矢印方向は、前方向ともいい、軸方向D1のうち、矢印方向と反対方向は、後方向ともいう。
ソレノイド1は、軸線Lを中心とした略円筒状のチューブ2と、チューブ2を取り囲むように配置されるソレノイドコイル3と、ソレノイドコイル3を取り囲むように配置されるケース4と、を備えている。チューブ2の内部には、可動鉄心5が収容されている。ソレノイド1は、ソレノイドコイル3に電流を流すことにより、可動鉄心5がチューブ2の内周面に案内されながら軸方向D1に移動するように構成されている。
チューブ2は、磁性材料により構成された固定磁極21と、磁性材料により構成された後部磁極22と、非磁性材料により構成された非磁性パイプ23とを有する。固定磁極21、後部磁極22、および非磁性パイプ23は、互いに同軸上に配置されている。
固定磁極21の材料としては、炭素量の少ない炭素鋼が好ましく、S10Cなど鉄材全般を使用することができる。固定磁極21は、固定鉄心21aと、固定鉄心21aの外周面から径方向D2外側に突出するリング状の第1段付き部21bと、第1段付き部21bの外周面から径方向D2外側に突出するリング状の係止部21cと、を備える。固定磁極21は、軸線Lに沿って固定鉄心21aを貫通する貫通孔21dを備えており、全体として略円筒状の部材である。第1段付き部21bは、固定鉄心21aの前端に全周に亘って設けられる。係止部21cは、第1段付き部21bの前端に全周に亘って設けられる。
第1段付き部21bは、ケース4の第2段付き部4c(後述する)と接触する。ここで、第1段付き部21bと第2段付き部4cが接触するとは、第1段付き部21bの外周面と第2段付き部4cの内周面との間の隙間が完全にゼロとなる場合のほか、第1段付き部21bの外周面と第2段付き部4cの内周面との間の隙間が十分に小さい場合を含み、例えば両者の間の隙間が0.5mm以下となる場合も含む。
第1段付き部21bは、径方向D2外側へ向かって塑性変形させて形成された塑性変形部21eを有する。塑性変形部21eは、第2段付き部4cの内周面に食い込んでいる。なお、符号21p(図2を参照)は、後述する製造方法にて塑性変形部21eを形成する際に生じた爪痕である。
また、第1段付き部21bは、外周面に全周に亘って形成された周方向溝21fを備える。周方向溝21fにはOリング24が嵌められる。Oリング24は、不図示の油圧ポンプから供給されるオイルが、ソレノイドコイル3が配置される空間に侵入することを防止するためのものである。第1段付き部21bの後端から周方向溝21fまでの距離h21は、後述の図3Cに示す状態への筒状工具9の軸方向D1の移動量以上であることが好ましく、具体的には1mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましい。距離h21が1.5mmより小さいと、塑性変形部21eを形成する際にOリング24に悪影響を及ぼすおそれがある。
また、固定磁極21は、固定鉄心21aの後端の周縁部から後方向へ突出する円環状部21gを備えている。円環状部21gの内部には可動鉄心5の前部が配置される。
また、固定磁極21の外周面の後端には、第1凹部21hが形成されている。第1凹部21hは、固定磁極21の全周に亘って形成されており、非磁性パイプ23が嵌め込まれる。
後部磁極22は、固定磁極21と軸方向D1に離れて配置される。後部磁極22の材料としては、炭素量の少ない炭素鋼が好ましく、S10C(炭素鋼)など鉄材全般を使用することができる。後部磁極22は、チューブ2の後部を構成する後部22aと、後部22aから前方向へ延びる長筒部22bと、を備えている。長筒部22bの外周面は、後部22aの外周面と面一となっている。長筒部22bの内周面は、可動鉄心5の外周面に接触し、可動鉄心5を軸方向D1に案内する。
後部磁極22は、長筒部22bの外周面の前端に形成された第2凹部22cを備えている。第2凹部22cは、後部磁極22の全周に亘って形成されており、非磁性パイプ23が嵌め込まれる。
後部磁極22は、後部22aを貫通するネジ孔22dを備えている。ネジ孔22dには、ネジ25が挿入される。ネジ25と可動鉄心5の間には、不図示のばねがその両端が可動鉄心5の後端とネジ25の先端に接触するように挿入されており、当該ばねとネジ25の回転によって可動鉄心5を押圧する力を調整することができ、これにより、ソレノイド1の吸引力を調整することができる。なお、ネジ25は必ずしも設ける必要はなく、ネジ25を設けない場合にはネジ孔22dを設けなくてもよい。また、前述の不図示のばねも必ずしも設けなくてもよい。
非磁性パイプ23の材料としては、SUS304などの非磁性ステンレスを使用することができる。非磁性パイプ23は、円筒状の部材であり、軸方向D1の両端がそれぞれ固定磁極21の第1凹部21hと後部磁極22の第2凹部22cに嵌め込まれる。非磁性パイプ23の外周面は、固定鉄心21aの外周面および長筒部22bの外周面と面一となっている。
ソレノイドコイル3は、ボビン31と、コイル線32と、外装モールド33と、を備える。ボビン31は、略円筒状に形成されている本体部分と、本体部分の軸方向D1の両端に形成されているフランジと、を有する。コイル線32は、ボビン31の2つのフランジの間における本体部分に巻き付けられている。コイル線32には不図示の制御装置が接続されて、制御した電流が流される。外装モールド33は、ボビン31とともにコイル線32を収容する。ソレノイドコイル3の後端には、蓋部材34が設けられている。
ケース4は、円筒状のケース本体4aと、ケース本体4aの前端に形成されたフランジ4bと、ケース本体4aの前端に形成され、ケース本体4aの内周面から径方向D2内側に突出する第2段付き部4cと、ケース本体4aの後端の周縁部から後方向へ突出する折り曲げ部4dと、を備えている。ケース4の材料としては、炭素量の少ない炭素鋼が好ましく、S10C(炭素鋼)など鉄材全般を使用することができる。
ケース本体4aは、ソレノイドコイル3を介してチューブ2を覆っている。フランジ4bは、ケース本体4aと例えば鍛造で一体成形されている。
第2段付き部4cは、固定磁極21の第1段付き部21bに対向して配置される。第2段付き部4cの後端面は、第1段付き部21bの後端面と略面一である。第2段付き部4cの内周面の前端には、全周に亘って切り欠かれた被係止部4eが形成されている。被係止部4eは、固定磁極21の係止部21cに係止される。
折り曲げ部4dは、径方向D2内側に折り曲げられて蓋部材34を固定している。これにより、ソレノイドコイル3がケース4とチューブ2との間に封止される。
可動鉄心5は、磁性材料で構成される。可動鉄心5の材料としては、炭素量の少ない炭素鋼が好ましく、S10C(炭素鋼)など鉄材全般を使用することができる。また、可動鉄心5の外周面は、樹脂で被覆されてもよい。
可動鉄心5は、前端から後方へ延びるピン穴5aを備える。ピン穴5aにはロッド51の後部が挿入され、可動鉄心5とロッド51は一体となっている。可動鉄心5の軸方向D1の移動に伴ってロッド51も軸方向D1へ移動し、ロッド51は、不図示のスプールを押圧する。
可動鉄心5の前端面にはスペーサー52が配置されている。スペーサー52は、可動鉄心5とロッド51の間に挟持されている。
[ソレノイドの製造方法]
次いで、ソレノイド1の製造方法について説明する。図3A~図3Eは、ソレノイド1の製造工程を模式的に示す図である。
次いで、ソレノイド1の製造方法について説明する。図3A~図3Eは、ソレノイド1の製造工程を模式的に示す図である。
初めに、図3Aに示すように、不図示のプレス台にチューブ2(可動鉄心5を含む)およびケース4を、固定磁極21の第1段付き部21bとケース4の第2段付き部4cが互いに接触するように配置する。前述のように、第1段付き部21bの外周面と第2段付き部4cの内周面との間の隙間は、0.5mm以下に設定される。なお、Oリング24は予めチューブ2の周方向溝21fに嵌められている。
ケース4のチューブ2に対する軸方向D1の位置は、ケース4の被係止部4eが固定磁極21の係止部21cに係止されることで定まる。第1段付き部21bの後端面と第2段付き部4cの後端面は略面一である。
チューブ2の外周面とケース4の内周面との間には、後工程でソレノイドコイル3が挿入される隙間がある。なお、図3Aの段階では、チューブ2の第1段付き部21bには、上記の塑性変形部21eは形成されていない。また、図3Aの段階では、ケース4の折り曲げ部4dは、径方向D2内側に折り曲げられていない。
次いで、図3Bに示すように、チューブ2の外周面とケース4の内周面との間の隙間に、先端に設けられたカシメ用刃91が第1段付き部21bの後端面に接する位置まで筒状工具9(図4を参照、詳細については後述する)を軸方向D1へ挿入する。カシメ用刃91の刃先91aが第1段付き部21bに接する位置は、第1段付き部21bの外周面(第2段付き部4cとの接触面)の近傍であり、具体的には第1段付き部21bの外周面よりも径方向D2内側に0.1~0.5mmの位置であるのが好ましく、0.2~0.4mmの位置であるのがより好ましい。
次いで、筒状工具9を軸方向D1へ移動させ、図3Cに示す位置まで軸方向D1にプレスする。なお、図3Aから図3Bへの工程と、図3Bから図3Cへの工程とは連続的に実行しても構わない。プレス深さ、すなわち図3Bに示す状態から図3Cに示す状態への筒状工具9の軸方向D1の移動量は、ソレノイド1の大きさにもよるが、1~1.5mm程度が好ましい。
図3Dは、図3Cに示すプレス工程後、筒状工具9を後退させた状態を示している。プレス工程を行うことにより、図3Dに示すように、第1段付き部21bの外周面に、径方向D2外側へ向かって塑性変形された塑性変形部21eが形成され、この塑性変形部21eが第2段付き部4cの内周面に食い込んでいる。これにより、チューブ2とケース4とが接合される。また、第1段付き部21bの後端面には、カシメ用刃91による爪痕21pが残存している。
なお、図3Cに示すプレス工程の後、筒状工具9を一旦後退させてから軸線Lの回りに所定角度(図4に示す筒状工具9の場合は22.5°)回転させ、再度プレス工程を行ってもよい。後述のように、筒状工具9の先端には、周方向D3に沿って複数のカシメ用刃91が配置されており、筒状工具9を回転させて複数回プレスすることにより、多くの箇所を加締めることができるため接合強度が増す。また、一回で多くの箇所を加締めるよりも低圧でプレスできるため、Oリング24へのプレスの悪影響が少ない。
最後に、チューブ2の外周面とケース4の内周面との間の隙間に、ソレノイドコイル3(蓋部材34を含む)を挿入し、ケース4の折り曲げ部4dを径方向D2内側に折り曲げて、図3Eに示すようにソレノイドコイル3を封止する。
[筒状工具の構成]
図4は、筒状工具9の正面図および側面図である。筒状工具9の材質は、硬く粘り強い材質が好ましく、例えばSKD11(焼き入れ鋼)が使用される。筒状工具9は、円筒状の工具本体90と、工具本体90の先端90aに設けられた複数のカシメ用刃91と、を有する。本実施形態のカシメ用刃91は、略三角柱状をしている。
図4は、筒状工具9の正面図および側面図である。筒状工具9の材質は、硬く粘り強い材質が好ましく、例えばSKD11(焼き入れ鋼)が使用される。筒状工具9は、円筒状の工具本体90と、工具本体90の先端90aに設けられた複数のカシメ用刃91と、を有する。本実施形態のカシメ用刃91は、略三角柱状をしている。
カシメ用刃91は、周方向D3に沿って4~16個設けられるのが好ましい。また、複数のカシメ用刃91は、周方向D3に沿って等間隔に配置されるのが好ましい。図4に示す例では、カシメ用刃91が、周方向D3に沿って等間隔で8個設けられている。カシメ用刃91の刃先91aは、周方向D3に沿って延びている。
カシメ用刃91は、軸線Lを中心として角度θ1の範囲に設けられる。角度θ1は、10~15°であるのが好ましい。角度θ1が10°よりも小さいとカシメ用刃91の周方向D3の幅が小さくなり、十分な接合強度が得られにくい。また、角度θ1が15°よりも大きいと、周方向D3に沿って複数のカシメ用刃91を設けるのが難しくなる。
図5は、図4に示す筒状工具9のV-V線の要部拡大断面図である。カシメ用刃91は、径方向D2内側の内側面91bと径方向D2外側の外側面91cとを有する。内側面91bと外側面91cが交差する線が刃先91aである。内側面91bは、軸方向D1に対して角度θ2傾斜している。角度θ2は、10~30°であるのが好ましい。一方、外側面91cは、軸方向D1に対して角度θ3傾斜している。角度θ3は、30~40°であるのが好ましい。
なお、ソレノイド1、ソレノイド1の製造方法、および筒状工具9は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、ソレノイド1、ソレノイド1の製造方法、および筒状工具9は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
(1)上記実施形態に係るソレノイド1においては、固定磁極21が第1段付き部21bを有し、ケース4が第1段付き部21bに対向する第2段付き部4cを有する、という構成である。しかしながら、ソレノイド1は、かかる構成に限られない。ケース4が第1段付き部を有し、固定磁極21が第2段付き部を有するようにしてもよい。このとき、図6Aに示すように、ケース4の第1段付き部(上記実施形態における第2段付き部4c)の固定磁極21との接触面近傍を筒状工具9の先端で軸方向D1にプレスすることにより、第1段付き部(上記実施形態における第2段付き部4c)の第2段付き部(上記実施形態における第1段付き部21b)との接触面の一部を固定磁極21へ向かって塑性変形させて塑性変形部4fを形成するとともに、固定磁極21の第1段付き部(上記本実施形態における第2段付き部4c)との被接触面に塑性変形部4fを食い込ませる、という構成でもよい。
(2)上記実施形態に係るソレノイド1においては、固定磁極21が第1段付き部21bを有し、ケース4が第1段付き部21bと対向する第2段付き部4cを有する、という構成である。しかしながら、ソレノイド1は、かかる構成に限られない。例えば、図6Bに示すように、ケース4が第2段付き部を有さなくともよい。このとき、塑性変形部21eは、ケース4のケース本体4aに食い込んでいる。
また、図6Cに示すように、固定磁極21が第1段付き部21bを有さなくともよい。このとき、第2段付き部4cに固定磁極21へ向かって塑性変形させて塑性変形部4fを形成するとともに、固定磁極21の固定鉄心21aに塑性変形部4fを食い込ませる。
(3)上記実施形態に係るソレノイド1においては、固定磁極21が第1段付き部21bを有し、第1段付き部21bは、ケース4との接触面(第1段付き部21bの外周面)に全周に亘って形成されて、Oリング24が嵌められる周方向溝21fを備える、という構成である。しかしながら、ソレノイド1は、かかる構成に限られない。ケース4の第2段付き部4cが、固定磁極21との接触面に全周に亘って形成されて、Oリング24が嵌められる周方向溝を備える、という構成でもよい。ただし、加工の容易さを考慮すると、第1段付き部21bのケース4との接触面(第1段付き部21bの外周面)に周方向溝21fを形成するのが好ましい。
(4)上記実施形態に係る筒状工具9においては、略三角柱状をしたカシメ用刃91が、周方向D3に沿って等間隔で8個設けられている。しかしながら、筒状工具9は、かかる構成に限られない。図7A~図7Dは、他の実施形態に係る筒状工具9の正面図および側面図である。図7Aに示す例では、カシメ用刃91は、先端が丸められた円柱状をしている。図7Bに示す例では、カシメ用刃91は、略四角錐状をしている。図7Cに示す例では、カシメ用刃91が略三角柱状をしているが、刃先91aが、径方向D2に沿って延びている。ただし、刃先91aが径方向D2に沿って延びる場合、塑性変形部が主として周方向D3に向かって生じるため、径方向D2に接するチューブ2とケース4を接合する強度が弱くなる傾向がある。図7Dに示す例では、略三角柱状をしたカシメ用刃91が、周方向D3に沿って等間隔で16個設けられている。
(5)上記実施形態に係る筒状工具9においては、周方向D3に配置される複数のカシメ用刃91を先端90aに有する、という構成である。しかしながら、筒状工具9は、かかる構成に限られない。筒状工具9は、全周に亘って連続するカシメ用刃91を先端90aに有する、という構成でもよい。この場合、チューブ2とケース4の軸方向D1の接合強度は得られるが、周方向D3の接合強度は得られにくい。よって、好ましくは、筒状工具9、周方向D3に配置される複数のカシメ用刃91を先端90aに有する。
1…ソレノイド、2…チューブ、3…ソレノイドコイル、4…ケース、4a…ケース本体、4b…フランジ、4c…第2段付き部、4d…折り曲げ部、4e…被係止部、4f…塑性変形部、5…可動鉄心、5a…ピン穴、9…筒状工具、21…固定磁極、21a…固定鉄心、21b…第1段付き部、21c…係止部、21d…貫通孔、21e…塑性変形部、21f…周方向溝、21g…円環状部、21h…第1凹部、21p…爪痕、22…後部磁極、22a…後部、22b…長筒部、22c…第2凹部、22d…ネジ孔、23…非磁性パイプ、24…Oリング、25…ネジ、31…ボビン、32…コイル線、33…外装モールド、34…蓋部材、51…ロッド、52…スペーサー、90…工具本体、90a…先端、91…カシメ用刃、91a…刃先、91b…内側面、91c…外側面、D1…軸方向、D2…径方向、D3…周方向、L…軸線
Claims (6)
- 磁性材料により構成された筒状部材からなる固定磁極、前記固定磁極と同軸上に軸方向に離れて配置される磁性材料により構成された後部磁極、および前記固定磁極と同軸上に配置されて前記固定磁極と前記後部磁極を繋ぐ、非磁性材料により構成された非磁性パイプを有するチューブと、
前記チューブに収容され、前記固定磁極と同軸上で軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記チューブの外周面との間に隙間をあけて配置されて前記チューブを覆うケースと、
前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の隙間に配置されるソレノイドコイルと、を備えるソレノイドの製造方法であって、
前記ケースは、前記固定磁極と対向する位置にフランジを有し、
前記固定磁極と前記ケースのうち少なくとも一方は、他方へ向かって突出して前記他方に接触するリング状の第1段付き部を有し、
前記第1段付き部の前記他方との接触面近傍を、前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の前記隙間に挿入した筒状の工具の先端で軸方向にプレスすることにより、
前記第1段付き部の前記他方との接触面の一部を前記他方へ向かって塑性変形させて塑性変形部を形成するとともに、前記他方の前記第1段付き部との被接触面に前記塑性変形部を食い込ませることで、前記チューブと前記ケースとを接合する、ソレノイドの製造方法。 - 前記固定磁極が前記第1段付き部を有し、
前記第1段付き部は、前記ケースとの接触面に全周に亘って形成されて、Oリングが嵌められる周方向溝を備える、請求項1に記載のソレノイドの製造方法。 - 前記固定磁極が前記第1段付き部を有し、前記ケースが前記第1段付き部と対向する第2段付き部を有する、請求項1又は2に記載のソレノイドの製造方法。
- 前記請求項1~3の何れか1項に記載のソレノイドの製造方法に用いられる工具であって、
周方向に配置される複数のカシメ用刃を前記先端に有する、ソレノイド製造用工具。 - 前記カシメ用刃の刃先は、周方向に沿って延びている、請求項4に記載のソレノイド製造用工具。
- 磁性材料により構成された筒状部材からなる固定磁極、前記固定磁極と同軸上に軸方向に離れて配置される磁性材料により構成された後部磁極、および前記固定磁極と同軸上に配置されて前記固定磁極と前記後部磁極を繋ぐ、非磁性材料により構成された非磁性パイプを有するチューブと、
前記チューブに収容され、前記固定磁極と同軸上で軸方向に移動可能な可動鉄心と、
前記チューブの外周面との間に隙間をあけて配置されて前記チューブを覆うケースと、
前記チューブの外周面と前記ケースの内周面との間の隙間に配置されるソレノイドコイルと、を備え、
前記ケースは、前記固定磁極と対向する位置にフランジを有し、
前記固定磁極と前記ケースのうち少なくとも一方は、他方へ向かって突出して前記他方に接触するリング状の第1段付き部を有し、
前記第1段付き部は、前記他方との接触面の一部を前記他方へ向かって塑性変形させて形成された塑性変形部を有し、
前記塑性変形部が、前記他方の前記第1段付き部との被接触面に食い込むことで、前記チューブと前記ケースとが接合されている、ソレノイド。
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