本発明は、シートの前後位置調節装置、特に床に固定されて前後方向に延びる固定レールと、シートに固定されて固定レールに前後摺動可能に支持されるシート支持体と、シート支持体を固定レールに対し前後駆動し得る駆動装置とを備えたシートの前後位置調節装置に関する。尚、本明細書において、前後・左右とは、車両にセットされた状態のシートを基準とした前後・左右をいう。
上記シートの前後位置調節装置において、シート支持体を前後駆動する駆動装置が、シート側に設けたモータと、固定レール内を縦通するよう配置されてモータからシート支持体への駆動力伝達に関係する伝動部材(より具体的にはシート支持体に支持されてモータと連動回転するナットに螺合した固定のねじ軸)とを有するものが、例えば特許文献1に示されるように従来公知である。
日本特開平11-28954号公報
日本特開平5-330367号公報
<第1の課題>
特許文献1のシートでは、シート側の電装品に給電する給電装置が、前後方向に長いダクト状に形成されて給電用電線を収納する給電レールと、給電レールに摺動可能に支持されて給電レール内の電線の可動端部を支持するスライダとを備えており、スライダがシート支持体に連結されて、シート支持体と共に前後動できるようになっている。
しかしこのシート構造では、スライダを摺動可能に支持すべく前後に長いダクト状に形成される給電レールを、固定レールの外側に横並びに配置、固定する必要がある。そのため、レール構造が全体として大型複雑化する上、固定レールの床への取付構造の設計自由度が給電レールのために低下する、といった第1の課題がある。
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、上記第1の課題を解決可能なシートの前後位置調節装置を提供することを第1の目的としている。
<第2の課題>
シートの前後位置調節装置、特に床に固定されて前後方向に延びる固定レールと、シートに固定されて固定レールに前後摺動可能に支持される可動レールと、可動レールを固定レールに対し前後駆動し得る駆動装置とを備える前後位置調節装置において、駆動装置が、固定レール及び可動レールのうちの何れか一方のレール内を縦通するよう配置されるねじ軸と、何れか他方のレールに支持されてねじ軸に螺合されるナット部材と、ねじ軸及びナット部材相互を相対回転させるモータとを有するものは、例えば特許文献2に示されるように従来公知である。
ところが特許文献2のシートでは、ねじ軸に設けられるストッパを、剛体であるナット部材に当接させることで、可動レール(従ってシート)の固定レールに対する前進限又は後退限が規定される。しかし上記ストッパは、前後方向に扁平なフランジ状であるため、支持剛性を高めるためにはストッパを軸方向に厚肉に構成する必要があり、ストッパの軽量化を図る上で不利となる、といった第2の課題がある。尚、特許文献2のものでは、ねじ軸を貫通、支持する軸受部材がストッパから軸方向に間隙をおいて配置されており、その軸受部材がストッパを兼ねる構造ではない。
本発明は、上記第2の課題を解決可能なシートの前後位置調節装置を提供することを第2の目的としている。
<上記第1の課題の解決手段>
上記第1の目的を達成するために、本発明は、床に固定されて前後方向に延びる固定レールと、シートに固定されて前記固定レールに前後摺動可能に支持されるシート支持体と、前記シート支持体を前記固定レールに対し前後駆動し得る駆動装置と、シートに付設される電装品に給電する給電装置とを備えたシートの前後位置調節装置において、前記駆動装置は、モータと、前記固定レール内を縦通するよう配置されて前記モータから前記シート支持体への駆動力伝達に関係する伝動部材とを有し、前記給電装置は、給電用の電線を収納する収納ハウジングと、前記シート支持体に連結されて前記固定レール内を摺動可能なスライダとを備えていて、該スライダに、前記収納ハウジングより引き出されて前記固定レール内を摺動可能な前記電線が保持されており、前記スライダは、前記固定レール内で前記伝動部材との干渉を避ける干渉回避部を有することを第1の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記スライダは、前記固定レール内で左右方向に間隔をおいて並ぶ一対の電線保持部と、その両電線保持部間を連結する連結部とを有しており、前記干渉回避部は、前記連結部の、前記伝動部材との対向部に設けられることを第2の特徴とする。
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記スライダは、前記電線保持部の少なくとも一部がシート側面視で前記伝動部材と重なり合うように配置されることを第3の特徴としている。
また本発明は、第2又は第3の特徴に加えて、前記連結部は、前記伝動部材の上方を覆う頂壁部と、その頂壁部の左右両端より鉛直下方に延びる左右の側壁部とを有しており、それら頂壁部及び左右の側壁部の内面により、横断面コ字状の前記干渉回避部が構成されることを第4の特徴とする。
また本発明は、第2又は第3の特徴に加えて、前記連結部は、前記伝動部材の上方を覆う頂壁部と、その頂壁部の左右両端より斜め下方に先拡がり状に延びる左右の側壁部とを有しており、それら頂壁部及び左右の側壁部の内面で横断面山形状の前記干渉回避部が構成されることを第5の特徴とする。
また本発明は、第2~第5の何れかの特徴に加えて、前記連結部にその内面を上方に凹ませて形成した第1凹部が前記干渉回避部を構成し、また前記固定レールの底壁部は、少なくとも前記干渉回避部と対向する位置において、下方を凹ませた第2凹部を有しており、前記第1,第2凹部に挟まれた空間を前記伝動部材が貫通することを第6の特徴としている。
また本発明は、第1~第6の何れかの特徴に加えて、前記伝動部材を構成するねじ軸が、軸方向移動を規制された状態で前記固定レールに回転自在に支持される一方、該ねじ軸に螺合するナット部材が前記シート支持体に固定されており、前記モータと、該モータの出力を前記ねじ軸に伝達する伝動機構の伝動ケースとが前記固定レールの前後方向一端部に取付けられ、前記給電装置が、前記モータ及び前記伝動ケースよりも前記固定レールの前後方向他端部寄りに配設されることを第7の特徴とする。
また本発明は、第7の特徴に加えて、前記収納ハウジングは、平面視で前記固定レールに対し、該固定レールの前記一端部に向かってシート左右方向中央側に傾斜するように配置されると共に、該収納ハウジングの、前記電線が引き出される基端部が前記固定レールの前記他端部に接続されることを第8の特徴とする。
また本発明は、第7の特徴に加えて、前記収納ハウジングは、平面視で前記固定レールに対し略直交してシート左右方向中央側に延びるように配置されると共に、該収納ハウジングの、前記電線が引き出される基端部が前記固定レールの前記他端部に接続されることを第9の特徴とする。
また本発明は、第7~第9の何れかの特徴に加えて、前記モータ及び前記伝動ケースを含む駆動ユニットが、前記固定レールの前記一端部に板ばね部材を介して係脱可能に係止されることを第10の特徴とする。
尚、本発明の「固定レール」は、実施形態の左右一対ある固定レールL,Lのうち、特にスライダ50が摺動可能に設けられる側の固定レール(実施形態で言えば左側の固定レールL)を指す。
<上記第2の課題の解決手段>
上記第2の目的を達成するために、本発明は、床(F)に固定されて前後方向に延びる固定レール(L)と、シート(S)に固定されて前記固定レール(L)に前後摺動可能に支持される可動レール(U)と、前記可動レール(U)を前記固定レール(L)に対し前後駆動し得る駆動装置(D)とを備え、前記駆動装置(D)が、前記固定レール(L)及び可動レール(U)のうちの何れか一方のレール(L)内を縦通するよう配置されるねじ軸(41)と、何れか他方のレール(U)に支持されて該ねじ軸(41)に螺合されるナット部材(42)と、前記ねじ軸(41)及びナット部材(42)相互を相対回転させるモータ(M)とを有するシートの前後位置調節装置において、前記ねじ軸(41)を嵌挿させる貫通孔(61a,62a)を各々有して前後方向に間隔をおいて並ぶ複数の立壁(61,62)と、それら立壁(61,62)の先端相互を一体に結合する連結壁部(63)とを備えた、ねじ軸(41)支持のための軸受部材(60)が前記一方のレール(L)に固定されており、前記連結壁部(63)は、前記ねじ軸(41)を横切る横断面形状がアーチ状、或いは少なくとも中央部が頂部となるよう該ねじ軸(41)から離れる側又は近づく側に張出した屈曲形状に形成されることを第1の特徴とする。この第1の特徴によれば、一方のレールに固定されてねじ軸を支持する軸受部材が、ねじ軸を嵌挿させる貫通孔を各々有して前後方向に間隔をおいて並ぶ複数の立壁と、それら立壁の先端相互を一体に結合する連結壁部とを備えるので、軸受部材を前後方向に厚肉に形成しなくても、前後方向に長い支持スパンを以て軸受部材を一方のレールに安定よく支持可能となる。しかも複数の立壁相互を結合する連結壁部は、ねじ軸を横切る横断面形状がアーチ状、或いは少なくとも中央部が頂部となるよう該ねじ軸から離れる側又は近づく側に張出した屈曲形状に形成されるので、連結壁部自体の曲げ剛性も効果的に高めることができる。以上の結果、軸受部材は、これの軽量化を図りながら、ねじ軸に対する十分な支持剛性を確保することができる。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記複数の立壁(61,62)のうちの一部の立壁(61)の前記貫通孔(61a)には、前記ねじ軸(41)が遊びなく嵌合、支持され、またその他の前記立壁(62)の前記貫通孔(62a)には、前記ねじ軸(41)が遊びを介して嵌合されることを第2の特徴とする。この第2の特徴によれば、立壁(従って貫通孔)が複数有っても、その一部の立壁だけに、ねじ軸を遊びなく支持する貫通孔(軸受孔)を形成すればよく、従って、複数の貫通孔相互の同軸精度を厳格化する必要はなくなり、加工コストの節減に寄与することができる。
また本発明は、第2の特徴に加えて、前記軸受部材(60)は、屈曲した帯板材で構成され、前記一部の立壁(61)の貫通孔(61a)には軸受ブッシュ(65)を介して前記ねじ軸(41)が嵌合、支持されることを第3の特徴とする。この第3の特徴によれば、軸受孔となる貫通孔を有する立壁が板状で薄肉であっても、ねじ軸に対する支持剛性の低下を最小限に抑えることができる。
また本発明は、第2又は第3の特徴に加えて、前記一部の立壁(61)は、前記他の立壁(62)よりも前記ねじ軸(41)の軸方向で外方側に配置され、前記他の立壁(62)が、前記ナット部材(42)と直接又は間接に係合して前記可動レール(U)の前進限又は後退限を規制するストッパ面(62s)を有することを第4の特徴とする。この第4の特徴によれば、ねじ軸を支持する軸受部材が、可動レールの前進限又は後退限を規制するストッパ部材を兼ねることとなり、それだけ構造簡素化が図られる。しかも軸受部材の複数ある立壁のうち軸方向外方側の立壁を軸受壁に、また軸方向内方側の立壁をストッパ手段にそれぞれ機能分担させることで、個々の立壁の荷重負担の軽減が図られ、更なる軽量化に寄与することができる。
また本発明は、第1~第4の何れかの特徴に加えて、前後方向に間隔をおいて並ぶ第1,第2の前記立壁(61,62)の基端には、前後方向で互いに反対側に延びる延長壁(61w,62w)がそれぞれ一体に連設され、その両延長壁(61w,62w)で前記軸受部材(60)が前記一方のレール(L)に結合されることを第5の特徴とする。この第5の特徴によれば、一方のレールの軸受部材に対する支持スパンを延長壁特設により延ばすことができ、軸受部材に対する支持剛性が更に高められる。
また本発明は、第4の特徴に加えて、前記ナット部材(42)から前後少なくとも一方の方向に離間した位置で前記ねじ軸(41)を貫通させる板状のストッパ壁部(71)が前記他方のレール(U)に片持ちで固定支持され、前記ストッパ壁部(71)が前記ストッパ面(62s)に接離可能に当接することで前記可動レール(U)の前進限又は後退限が規制されることを第6の特徴とする。この第6の特徴によれば、板状のストッパ壁部が多少とも弾性変形することで、ナット部材がストッパ面に直接係合する構造と比べ係合時の衝撃吸収効果を高めることができる。
また本発明は、第4の特徴に加えて、前後一対の前記軸受部材(60)が、相互間に前記ナット部材(42)を挟むようにして前記一方のレール(L)に前後に間隔をおいて固定されると共に、前記ナット部材(42)から前後方向一方及び他方にそれぞれ離間した位置で前記ねじ軸(41)を貫通させる前後一対のストッパ壁部(71,72)が前記他方のレール(U)に固定され、前後一対の前記ストッパ壁部(71,72)が前記前後一対の軸受部材(60)の前記ストッパ面(62s)にそれぞれ接離可能に当接することで、前記可動レール(U)の前進限及び後退限がそれぞれ規制されることを第7の特徴とする。この第7の特徴によれば、ナット部材から前後一方及び他方にそれぞれ離間した位置でねじ軸を貫通させる前後一対のストッパ壁の特設により、ねじ軸の、芯振れ方向にフリーとなる中間部領域を減らすことができ、ねじ軸の芯ぶれ抑制に有効である。
また本発明は、第7の特徴に加えて、前記前後一対のストッパ壁部(71,72)と、その両ストッパ壁部(71,72)を両端にそれぞれ連ねて前後方向に延び且つ前記他方のレール(U)に固定される中間壁部(73)とを有する支持板(70)が、前記前後一対の軸受部材(60)間で前記他方のレール(U)内に配置され、前記中間壁部(73)は、前記他方のレール(U)に固定した前記ナット部材(42)を抱持する中間曲げ部(73m)を有することを第8の特徴とする。この第8の特徴によれば、前後一対のストッパ壁部と、その両ストッパ壁部を両端にそれぞれ連ねて前後方向に延び且つ他方のレールに固定される中間壁部とを有する支持板が、前後一対の軸受部材間で他方のレール内に配置され、中間壁部は、他方のレールに固定したナット部材を抱持する中間曲げ部を有するので、前後一対のストッパ壁部を有して前後両方向のストッパ機能を発揮する単一の支持板を板材のプレス成形により容易且つ低コストで形成可能となる。しかもその支持板の中間曲げ部を利用してナット部材に対する支持強度を高めることができる。
また本発明は、第8の特徴に加えて、前記他方のレール(U)には、前記支持板(70)と軸方向で少なくとも一部が重なる位置に補強部(22b)が形成されることを第9の特徴とする。この第9の特徴によれば、他方のレールの、支持板が固定されることで荷重負担が増す領域を、補強部により効果的に補強することができる。
また本発明は、第1~第9の何れかの特徴に加えて、前記固定レール(L)に固定した前記軸受部材(60)に前記ねじ軸(41)が軸方向移動を規制された状態で回転自在に支持されると共に、前記ナット部材(42)が前記可動レール(U)に固定され、前記モータ(M)と、該モータ(M)の出力を前記ねじ軸(41)に伝達する伝動機構(30)とが前記固定レール(L)の前後方向一端部(Lf)に取付けられ、前記シート(S)に配備された電装品に給電する給電装置(E)が、前記モータ(M)及び前記伝動機構(30)よりも前記固定レール(L)の前後方向他端部(Lr)寄りに配設されることを第10の特徴とする。この第10の特徴によれば、給電装置を、モータ及び伝動機構との相互干渉を回避しつつ高い配置自由度を以て配備可能となる。しかもモータ及び伝動機構が固定レールに取付けられることで、それらモータや伝動機構からの振動がシート側に伝わるのを効果的に抑制可能となる。
上記第2の課題の解決手段において、固定レールLは一方のレールを構成し、また固定レールLの前端部Lf・後端部Lrはそれぞれ固定レールの一端部・他端部を構成し、また可動レールUは他方のレールを構成し、また第1の立壁61は一部の立壁を構成し、また第2の立壁62は、その他の立壁を構成する。
第1の特徴によれば、シート支持体を固定レールに対し前後駆動し得る駆動装置が、モータと、固定レール内を縦通するよう配置される伝動部材とを有するものにおいて、シート側の電装品に給電する給電装置が、シート支持体に連結されて固定レール内を摺動可能なスライダとを備えていて、このスライダに、固定レール内を摺動可能な給電用電線が保持され、スライダは、固定レール内で伝動部材との干渉を避ける干渉回避部を有している。これにより、駆動装置の、固定レール内を縦通する伝動部材と、固定レール内を摺動する電線保持用のスライダとを、相互の干渉を回避しながら固定レール内で近接配置可能となり、全体としてレール構造の簡単・小型化に寄与することができる。また固定レール内に伝動部材が縦通していても、スライダの摺動支持手段(例えば特許文献1の給電レール)を固定レール外側に別設する必要はないから、固定レールの床への取付構造の設計自由度が高められる。
また第2の特徴によれば、スライダは、固定レール内で左右方向に間隔をおいて並ぶ一対の電線保持部と、その両電線保持部間を連結する連結部とを有し、干渉回避部は、連結部の、伝動部材との対向部に設けられるので、左右の電線保持部を繋ぐ連結部を利用して干渉回避部を無理なくコンパクトに形成でき、従って、固定レールが、その内部に伝動部材及びスライダを両方配備したことで左右に大型化するのを抑制可能となる。
また第3の特徴によれば、スライダは、電線保持部の少なくとも一部がシート側面視で伝動部材と重なり合うように配置されるので、固定レールが、その内部に伝動部材及びスライダを両方配備したことで上下方向に大型化するのを抑制可能となる。
また第4の特徴によれば、連結部は、伝動部材の上方を覆う頂壁部と、その頂壁部の左右両端より鉛直下方に延びる左右の側壁部とを有し、それら頂壁部及び左右の側壁部の内面により、横断面コ字状の干渉回避部が構成されるので、干渉回避部の左右の側壁部を各々鉛直壁とすることで、干渉回避部が左右方向に幅広となるのを抑えて連結部、延いてはスライダを左右方向に小型化することができる。
また第5の特徴によれば、連結部は、伝動部材の上方を覆う頂壁部と、その頂壁部の左右両端より斜め下方に先拡がり状に延びる左右の側壁部とを有し、それら頂壁部及び左右の側壁部の内面で横断面山形状の干渉回避部が構成されるので、スライダは、これの連結部の下半部が下側に先拡がりとなることで伝動部材との干渉を無理なく回避でき、しかも連結部の頂壁部が相対的に幅狭化されるため、スライダの、固定レール上端からの露出部分を左右方向に小型化できて、他物との干渉回避に有効である。
また第6の特徴によれば、連結部にその内面を上方に凹ませて形成した第1凹部が干渉回避部を構成し、また固定レールの底壁部は、少なくとも干渉回避部と対向する位置において、下方を凹ませた第2凹部を有し、第1,第2凹部に挟まれた空間を伝動部材が貫通するので、その第1,第2凹部により、伝動部材及び周辺部品の配置スペースを広く確保可能となる。しかも固定レール底壁部の第2凹部対応部分が補強リブ効果を発揮し得るため、固定レールの曲げ剛性アップに寄与することができる。
また第7の特徴によれば、伝動部材を構成するねじ軸が、軸方向移動を規制された状態で固定レールに回転自在に支持される一方、ねじ軸に螺合するナット部材がシート支持体に固定され、モータと、モータの出力をねじ軸に伝達する伝動機構の伝動ケースとが固定レールの前後方向一端部に取付けられ、給電装置が、モータ及び伝動ケースよりも固定レールの前後方向他端部寄りに配設されるので、モータ及び伝動機構と、収納ハウジングとの相互干渉を無理なく回避でき、それらの配置自由度を高めることができる。しかもモータ及び伝動機構の振動がシート側に伝わるのを効果的に抑制でき、シートの乗り心地向上に寄与することができる。
また第8の特徴によれば、収納ハウジングは、平面視で固定レールに対し、固定レールの一端部に向かってシート左右方向中央側に傾斜するように配置されると共に、収納ハウジングの、電線が引き出される基端部が固定レールの他端部に接続されるので、収納ハウジングをシート直下の、左右の固定レール間のデッドスペースにおいて前後方向にコンパクトに収めることができる。しかも収納ハウジングを平面視で固定レールに対し傾斜させたことで、収納ハウジングを固定レールに沿設させた場合と比べて、収納ハウジングから引き出されて固定レール側に反転する電線の曲率を小さくできるため、電線を無理なくスムーズに曲げることができる。
また第9の特徴によれば、収納ハウジングは、平面視で固定レールに対し略直交してシート左右方向中央側に延びるように配置されると共に、収納ハウジングの、電線が引き出される基端部が固定レールの他端部に接続されるので、固定レールの床への固定部位と収納ハウジングとは上下に重なる心配がなく、設計自由度が更に向上する。しかも収納ハウジングを平面視で固定レールに対し略直交させたことで、収納ハウジングを固定レールに沿設させた場合と比べて、収納ハウジングから引き出されて固定レール側にカーブする電線の曲率を更に小さくできるため、電線を一層スムーズに曲げることができる。
また第10の特徴によれば、モータ及び伝動ケースを含む駆動ユニットが、固定レールの一端部に板ばね部材を介して係脱可能に係止されるので、モータ及び伝動ケースを含む駆動ユニットの固定レール一端部への取付作業性が良好となるばかりか、板ばね部材の弾性変形により、モータ及び伝動機構から床及びシートへの振動伝達量を効果的に低減可能となる。
図1は本発明の第1実施形態に係る自動車用シートの前後位置調節装置の一例を示す全体斜視図である。
図2は前記前後位置調節装置を示す全体平面図である。
図3は図2の3-3線拡大断面図である。
図4は図2の4-4線拡大断面図(図2,図5,図6の4-4線断面図)である。
図5は図4の5-5線拡大断面図である。
図6は図4の6-6線拡大断面図である。
図7は(A)(B)は、軸受部材の第1,第2変形例をそれぞれ示す図5対応断面図である。
図8は本発明の第2実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す平面図(図2対応図)である。
図9は本発明の第3実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す図6対応断面図である。
図10は本発明の第4実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す図3対応断面図である。
図11は本発明の第5実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す図2対応平面図である。
図12は図11の12-12線拡大断面図である。
A・・・・・前後位置調節装置
D・・・・・駆動装置
Du・・・・駆動ユニット
E・・・・・給電装置
F・・・・・床としてのフロアフレーム
H・・・・・収納ハウジング
Ha・・・・基端部
L・・・・・固定レール
Lf,Lr・・固定レールの前端部(一端部),後端部(他端部)
M・・・・・モータ
S・・・・・シートとしての自動車用シート
U・・・・・シート支持体としての可動レール
12・・・・固定レールの底壁部
12h・・・第2凹部
30・・・・伝動機構
31・・・・伝動ケースとしてのギヤボックス
41・・・・伝動部材としてのねじ軸
42・・・・ナット部材
50・・・・スライダ
50c・・・干渉回避部
51・・・・連結部
51h・・・第1凹部
51s・・・左右の側壁部
51t・・・頂壁部
52,53・・一対の電線保持部
80・・・・電線
90・・・・板ばね部材
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。尚、本発明及び本明細書において、前後・左右・上下は、シートに座る乗員から見ての前後・左右・上下をそれぞれいう。
先ず、図1~図6を参照して、第1実施形態について説明する。自動車用シートSは、車体の一部であるフロアフレームF上に前後位置調節装置Aを介して前後位置調節可能に支持される。フロアフレームFは、床の一例である。
前後位置調節装置Aは、フロアフレームFに複数の支持フレーム7~9を介して載置、固定(例えばボルト結合)されて前後方向に延び且つ互いに平行する左右の固定レールLと、各々の固定レールLに前後摺動可能に支持されるシート支持体としての左右の可動レールUと、可動レールU(従ってシートS)を固定レールLに対し前後駆動し得る駆動装置Dと、シートSに装備される不図示の電装品に給電する給電装置Eとを備える。ここで電装品とは、例えばシートバックの傾動角を調整するための電動リクライニング機構、シートSへの乗員の着座の有無を検出する着座センサ、シート上の乗員がシートベルトを装着しているか検出するシートベルトセンサ等がある。
シートSの座部底板には、下向きの垂壁部100が固設されており、垂壁部100に可動レールUの上部が、例えば複数組のボルト・ナット101を介して着脱可能に結合される。
また複数の支持フレーム7~9は、フロアフレームF上で前後に間隔をおいて配列され、またその一部(例えば前後の支持フレーム7,9)は左右方向に長く延びていて、左右の固定レールL間を結合するクロスメンバとして機能し、またその他の(例えば前後中間の支持フレーム8)は、左右方向に短く形成されて左右の固定レールLに個別に結合される。その結合手段として、本実施形態ではウエルドナット及びボルトが用いられるが、その他の結合手段(例えば溶接)も可能である。尚、支持フレーム7~9の長・短形状の組み合わせは、任意であって、実施形態に限定されない。更に、全部の支持フレーム7~9を実施形態の支持フレーム8のように短く形成してもよいし、或いは実施形態の支持フレーム7,9のように長く形成してもよい。
左右の各固定レールLは、特に図5に明示されるように、前後方向に延びる帯板状の底壁部12と、底壁部12の左右両端より上方に一体に起立する略鉛直な左右の側壁部13,14とを備える。底壁部12は、これの左右方向中央部において下方に凹む凹部12hを有しており、凹部12hの両側にそれぞれ連なる左右の水平な平坦部が、後述するローラ24の走行案内面12aとなる。
一方、左右の各可動レールUは、左右の可動レール半体22より分割構成され、その両可動レール半体22は、それらの上半部相互を突き合わせて一体的に結合(例えばリベット結合23)される。左右の可動レール半体22の下半部は、上半部に連なり且つ互いに反対側に略水平に張出す頂壁部22tと頂壁部22t外端より下向きに略鉛直に延びる側壁部22sとを一体に有する。そして、各側壁部22sの下端からは上方に反転して延びる上向きフランジ状のローラ支持部22fが一体に延びており、その各ローラ支持部22fに、前後に間隔をおいて並ぶ前後一対のローラ24が各々回転自在に軸支される。
各固定レールLの左右の側壁部13,14の上端にはフランジ部13f,14fが一体に連設され、フランジ部13f,14fは、ローラ24の上方を覆う内向き基部と、その内向き基部の内端より下方に略鉛直に延びる下向き先部とを有して横断面L字状に形成される。各フランジ部13f,14fの下向き先部は、可動レールUの側壁部22sとローラ支持部22fとの間の隙間に緩く嵌挿される。而して、各可動レールUのローラ24が各固定レールの上記走行案内面12aを転動することで、各可動レールUは各固定レールL上をローラ24を介してスムーズに前後摺動可能である。
次に可動レールU(シートS)を前後駆動する駆動装置Dの一例を説明する。
駆動装置Dは、左右の固定レールL内を各々縦通するよう配置されるねじ軸41と、ねじ軸41の前後両端部を固定レールLに回転自在に支持させる前後の軸受部材60と、前後の軸受部材60間でねじ軸41に螺合すると共に可動レールUに固定されるナット部材42と、ねじ軸41及びナット部材42を相対回転させる回転力を出力するモータMと、モータMの出力をねじ軸41に伝動してねじ軸41を回転させる伝動機構30とを備えている。
ナット部材42は、可動レールUの下半部(より具体的には頂壁部22t)内面に結合(例えば溶接)される。そして、ねじ軸41及びナット部材42は、互いに協働して、モータMから可動レールUへの駆動力伝達に関係する伝動部材として機能する。
左右の固定レールLの前端部Lfには、ねじ軸41を回転駆動する駆動ユニットDuが取付けられる。この駆動ユニットDuは、モータMと、伝動機構30を各々収納する左右のギヤボックス31と、モータM及びギヤボックス31が結合(例えばボルト結合)されるベース枠38とを備えており、ベース枠38は、左右方向に延びるチャンネル枠状に形成される。そして、左右のギヤボックス31が左右の固定レールLの前端部Lfにそれぞれ着脱可能に結合されることで、駆動ユニットDuが固定レールLに取付けられる。尚、ギヤボックス31は、伝動ケースの一例である。
ギヤボックス31は、例えばギヤボックス本体311と、それの開放端部に着脱可能に結合(例えば圧入)される蓋体312とで分割構成されていて、合成樹脂材よりボックス状に形成される。ギヤボックス31の、固定レールL側の側壁31wは、固定レールLの前端部Lf開口を着脱可能に閉塞するカバー35の外面に当接しており、その当接状態で板ばね部材90を介して固定レールLに係脱可能に係止、固定される。
即ち、その板ばね部材90の基部は、固定レールLの前端部Lfに支持フレーム7と共締め結合(例えばボルト結合)されており、板ばね部材90の先部には、その一部を切り起こして設けられる係止爪90aが設けられる。一方、ギヤボックス31は、側壁31w外面に開口し且つ板ばね部材90が抜差可能に挿入されるスリット孔31sと、スリット孔31s内面に開口して係止爪90aに係止可能な係止孔31hとを有する。
従って、板ばね部材90の先部をスリット孔31sに押し込むように挿入すれば、係止爪90aを係止孔31hに自動的に係止させることができるため、ギヤボックス31延いては駆動ユニットDuを左右の固定レールLにワンタッチで迅速簡単に係止、固定でき、ギヤボックス31(駆動ユニットDu)の固定レールLへの取付作業性が良好である。しかも板ばね部材90の弾性変形により、モータM及び伝動機構30からフロアフレームF及びシートSへの振動伝達量が効果的に低減可能となる。
モータMからは左右二方向にモータ軸37が延出していて左右のギヤボックス31内にそれぞれ突入しており、その突入端部外周にウォームギヤ37gが嵌合、固定される。またギヤボックス31には、ねじ軸41の前端にジョイントJを介して同軸上に連結される伝動軸36が回転自在に支持されており、伝動軸36の中間部外周には、ウォームギヤ37gと噛合してモータ軸37の回転を伝動軸36(従って、ねじ軸41)に伝えるウォームホイールギヤ36gが嵌合、固定される。
次に図3~図5を主に参照して、軸受部材60の一例を説明する。軸受部材60は、長手方向中間部が屈曲した帯板材で構成されるものであって、例えば、ねじ軸41を嵌挿させる貫通孔61a,62aを各々有して前後方向に間隔をおいて並ぶ第1,第2の立壁61,62と、それら立壁61,62の先端(上端)相互を一体に結合する連結壁部63とを備える。
第1,第2の立壁61,62の基端(下端)には、前後方向で互いに反対側に延びる延長壁61w,62wがそれぞれ一体に連設されており、その両延長壁61w,62wで軸受部材60が固定レールLの底壁部12に結合(例えばボルト結合)される。
連結壁部63は、ねじ軸41を横切る横断面形状がアーチ状に形成される。尚、連結壁部63の横断面形状は、図示例に限定されず、少なくとも中央部が頂部となるようねじ軸41から離れる側又は近づく側に張出した屈曲形状であってもよく、例えば図7(A)に示すように中央部のみがねじ軸41から離れる側に張り出した山形形状でもよく、或いは(B)に示すように開口部を下向きとしたコ字状でもよい。尚、図示はしないが、図7とは逆に、連結壁部63の横断面形状を中央部のみがねじ軸41から近づく側に張り出した山形形状であってもよく、或いは開口部を上向きとしたコ字状であってもよい。
第1,第2の立壁61,62のうち一方の(図示例では軸方向外方側の)第1の立壁61の貫通孔61aには、ねじ軸41が軸受ブッシュ65を介して遊びなく嵌合、支持され、また他方の(図示例では軸方向内方側の)第2の立壁62の貫通孔62aには、ねじ軸41が遊びを介して嵌挿される。尚、軸受ブッシュ65を省略して、貫通孔61aにねじ軸41を直接、回転自在に嵌合、支持させるようにした変形例の実施も可能である。
ねじ軸41は、ナット部材42を螺合させる大径の第1雄ねじ部41aと、第1雄ねじ部41aの前後両端にフランジ部41fを介して隣接し且つ軸受ブッシュ65を嵌合させるブッシュ支持部41bと、ブッシュ支持部41bの外端に段差部を介して隣接する小径の第2雄ねじ部41cとを一体に有している。
左右の第2雄ねじ部41cには、軸受ブッシュ65の外端に近接、対向するナット45がそれぞれ螺合され、このナット45が軸受部材60の第1の立壁61に係合することで、ねじ軸41の軸方向移動が規制される。またねじ軸41の特に前側の第2雄ねじ部41cには、更に小径の延長軸部41dが連設されており、この延長軸部41dがジョイントJを介してギヤボックス31側の伝動軸36に接続される。
第2の立壁62は、ナット部材42と間接に(即ち次に説明する支持板70を介して)係合して可動レールUの前進限又は後退限を規制するストッパ面62sを有する。
支持板70は、ねじ軸41を僅かに緩く貫通させる貫通孔を各々有して前後に間隔をおいて並列する前後のストッパ壁部71,72と、その両ストッパ壁部71,72を両端にそれぞれ一体に連ねるようにして前後方向に長く延びる中間壁部73とを備える。この支持板70は、前後の軸受部材60間で可動レールU内に配置されており、中間壁部73は、可動レールUに固定したナット部材42を抱持する中間曲げ部73mを有する。尚、中間曲げ部73mは、ナット部材42と固着(例えば溶接)させてもよいし、固着させなくてもよい。
中間壁部73は、可動レールUの下半部の左右一方の側壁部22s内面に結合(例えば溶接)される。これにより、支持板70が可動レールUに固定され、また前後のストッパ壁部71,72の各基端が中間壁部73を介して可動レールU(より具体的には側壁部22s)に固定、即ち片持ち支持される。
而して、支持板70は、これの前後のストッパ壁部71,72が、前後の軸受部材60における各ストッパ面62sにそれぞれ接離可能に当接することで、可動レールUの前進限・後退限が規制される。尚、支持板70を省略して、ナット部材42を前後の軸受部材60の各ストッパ面62sに直接当接させるようにしてもよい。
また可動レールU、特に各可動レール半体22の上半部には、支持板70と軸方向で少なくとも一部が重なる位置に補強部22bが設けられる。この補強部22bは、可動レール半体22の上半部の一部を左右方向外側に張出すリブ状に塑性変形させるようにして形成される。このような補強部22bの特設によれば、可動レールUの、支持板70固定に起因して荷重負担が増す領域を、補強部22bにより効果的に補強可能となる。
次に図1,2,4,6を主に参照して、給電装置Eの一例を説明する。
給電装置Eは、給電用の電線80と、電線80を収納する収納ハウジングHと、左右一方(図示例では左側)の可動レールUに連結されて同側の固定レールL内を摺動可能なスライダ50とを備える。電線80は、それの略全長に亘って、合成樹脂材で形成されて可撓性を有する蛇腹状の保護筒81内に緩く挿通されており、この保護筒81の被覆保護作用で電線80が無理に曲げられずに保護される。
そして、スライダ50には、後述するように収納ハウジングHより引き出されて固定レールL内を摺動可能な電線80の一部即ち可動端部80aが、これを囲繞する保護筒81の可動端部と共に埋設、保持される。
尚、本発明及び本明細書において「電線」とは、1本のリード線であってもよいし、或いは複数本のリード線を束ねてなるワイヤハーネスと呼ばれる状態のものであってもよいが、図示例ではワイヤハーネスを単に電線と呼ぶ。
収納ハウジングHは、これをシートS直下の狭小空間に無理なく配備できるように、所定方向に直線状に延び且つ上下に扁平なボックス状に形成されており、その内部に蛇腹状の保護筒81で各々囲繞された一対の電線80が収納される。一対の電線80の車体側の端部は互いに収束され、その収束部分が、収納ハウジングHの外面適所に固設されるカプラ82に接続される。このカプラ82は、車体側の電子制御装置(図示せず)から延びる電線83に連なるカプラ84と抜差可能に結合される。収納ハウジングHの基端部Haは、左右一方の固定レールLの後端部Lrに着脱可能に接続される。そして、その基端部Haには、固定レールLの内部空間に臨む開口が設けられており、この開口は、保護筒81で各々囲繞された一対の電線80の引出し口として機能する。従って、収納ハウジングH内に収納され且つ保護筒81で各々囲繞された一対の電線80は、収納ハウジングHの基端部Haの開口を通して固定レールL内に引き出され、スライダ50の前後摺動に追従して固定レールL内(より具体的には走行案内面12a上)を摺接可能である。
また特に本実施形態の収納ハウジングHは、平面視で固定レールLに対し、固定レールLの前端部Lfに向かってシート左右方向中央側に傾斜するように配置される。この配置によれば、収納ハウジングHをシートS直下の、左右の固定レールL,L間のデッドスペースにおいて前後方向にコンパクトに収めることができる。しかも収納ハウジングHを平面視で固定レールLに対し傾斜させたことで、収納ハウジングHを固定レールLに沿設させた場合と比べて、収納ハウジングHの基端部Haの開口から引き出されて固定レールL側に反転する電線80の曲率を小さくできるため、電線80を収納ハウジングH内で無理なくスムーズに曲げることができ、電線80の耐久性向上が図られる。
次にスライダ50の一例について説明する。スライダ50は、固定レールL内に大部分が配置されるスライダ基部50Bと、スライダ基部50Bの上部に括れ部50mを介して一体に連設されて固定レールLよりも上方に高く張出すスライダ先部50Aとを有していて、合成樹脂材より構成される。スライダ基部50Bは、固定レールL内で左右方向に間隔をおいて並ぶ一対の電線保持部52,53と、その両電線保持部52,53間を一体に連結する連結部51とを備えている。
両電線保持部52,53は、固定レールLの底壁部12の走行案内面12aに前後摺動可能に載置、支持される。また両電線保持部52,53には、収納ハウジングHの基端部Haの開口を通して固定レールL内に引き出された蛇腹状の保護筒81の先端部と、その保護筒81の先端部から延出した電線80の一部即ち可動端部80aとが一体的に被覆、保持される。その電線80の可動端部80aは、スライダ先部50A内を上方に延びて収束され、その収束部分が、スライダ先部50Aに固設したカプラ86に接続される。このカプラ86は、シートS側の前記電装品から延びる電線87に連なるカプラ88と抜差可能に結合される。
連結部51は、ねじ軸41及び軸受部材60の上方を被覆可能な頂壁部51tと、その頂壁部51tの左右両端より鉛直下方に延びる左右側壁部51sとを有しており、それら頂壁部51t及び左右側壁部51sの内面により、ねじ軸41及び軸受部材60との干渉を避ける横断面コ字状の干渉回避部50cが構成される。即ち、連結部51の内面(即ちねじ軸41との対向面)を上方に凹ませて形成される第1凹部51hが、ねじ軸41及び軸受部材60との干渉を回避する干渉回避部50cとして構成される。
そして、この第1凹部51h(干渉回避部50c)と、これに対面するように固定レールLの底壁部12に下方を凹ませて形成される第2凹部12hとで挟まれた広い空間が確保され、この空間をねじ軸41が縦通し且つ軸受部材60が相対的に通過可能となっている。即ち、第1,第2凹部51h,12hにより、ねじ軸41及び周辺部品(例えば軸受部材60)の配置スペースを十分広く確保可能となり、しかも固定レールLの底壁部12の第2凹部12h対応部分が補強リブ効果を発揮し得ることで、固定レールLの曲げ剛性アップが図られる。
またスライダ50は、電線保持部52,53の少なくとも一部がシート側面視でねじ軸41と重なり合うように配置される。この配置によれば、固定レールLが、その内部にスライダ50(特に電線保持部52,53)及びねじ軸41を両方配備したことで上下方向に大型化するのを抑制可能となる。
またスライダ50は可動レールUに対し、次に説明する連結手段を介して着脱可能に結合される。即ち、その連結手段は、スライダ50の連結部51(より具体的には側壁部51s)前端に突設されて前方に延びる弾性係止爪51aと、弾性係止爪51aに対応して可動レール半体22の下半部の側壁部22sに形成した係止孔22hとを備える。そして、係止爪51aの先部には係止突起51atが設けられ、この係止突起51atが係止孔22hに係脱可能に係止される。その係止により、スライダ先部50Aを可動レールUの上半部後端に突き当てた状態を保持しつつスライダ基部50Bを可動レールUの下半部に着脱可能に結合することができ、これにより、スライダ50を可動レールUと追従して前後動させることができる。
尚、スライダ50と可動レールU間の連結手段は、上記実施形態の構造に限定されず、種々の連結手段(例えばボルト結合、かしめ結合等)を採用可能である。
また固定レールLは、フロアフレームFの上面を覆うフロアカーペット(図示せず)で体裁よく覆われる。この場合、フロアカーペットには、可動レールUやスライダ50の前後移動を許容するスリットが適宜、設けられ、即ち、そのスリットの隙間を可動レールUの左右に幅狭の上半部やスライダ50の前記括れ部50mが前後できるようにする。
次に、以上説明した第1実施形態の作用を説明する。例えば、乗員が、ドア内面にある操作スイッチ(図示せず)の操作することでモータMを正転又は逆転させると、その回転力は、モータ軸37、左右の伝動機構30、伝動軸36、ジョイントJを介してねじ軸41を正転又は逆転させ、これに連動してナット部材42(従って可動レールU延いてはシートS)が固定レールL上を前進又は後退摺動させる。この摺動は、固定レールL内面の走行案内面12a上を転動するローラ24を介して行われるので、摺動抵抗を極めて小さくすることができる。
そして、シートSが所望の前後位置に来ると、前記操作スイッチの操作を止めることでモータMを停止させ、これにより、シートSを前後方向で所望の位置に随時調整することができる。尚、モータMへの通電制御を電子制御装置により自動化して、予め設定した前後位置に自動調節できるようにしてもよい。
上記したシートSの前後摺動に追従してスライダ50は固定レールL内で前後摺動し、これに追従して収納ハウジングHから引き出された電線80の一部が保護筒81と共に固定レールL内(より具体的には走行案内面12a上)を前後摺動する。
また本実施形態では、可動レールU(シートS)を前後駆動する駆動力を出力モータMと、モータMの出力をねじ軸41に伝達する伝動機構30のギヤボックス31とを含む駆動ユニットDuが固定レールLの前端部Lfに取付けられ、またシートS側の電装品に給電する給電装置E(例えば収納ハウジングH、スライダ50等)が、駆動ユニットDu(例えばモータM、ギヤボックス31、伝動機構30)よりも固定レールLの後端部Lr寄りに配設される。これにより、駆動ユニットDu(モータM、ギヤボックス31、伝動機構30)と、給電装置E(収納ハウジングH、スライダ50)との相互干渉を無理なく回避でき、それらの配置自由度を高めることができる。しかもモータM及び伝動機構30の発する振動がシートS側に伝わるのを効果的に抑制でき、シートSの乗り心地向上が図られる。
また本実施形態では、駆動装置EがモータMと、固定レールL内を縦通するよう配置される伝動部材としてのねじ軸41とを有する一方、シートS側の電装品に給電する給電装置Eが、可動レールUに連結されて固定レールL内を摺動可能なスライダ50とを備えていて、このスライダ50に、固定レールL内を摺動可能な給電用電線80の可動端部80aが保持され、スライダ50は、固定レールL内でねじ軸41との干渉を避ける干渉回避部50cを有している。
これにより、駆動装置Dの、固定レールL内を縦通するねじ軸41や軸受部材60と、固定レールL内を摺動する電線保持用のスライダ50とを、相互の干渉を回避しながら固定レールL内で近接配置可能となり、全体としてレール構造の簡単・小型化に寄与することができる。また固定レールL内にねじ軸41が縦通していても、スライダ50の摺動支持手段(例えば特許文献1の給電レール)を固定レールL外側に別設する必要はないから、そのような摺動支持手段が例えば支持フレーム7~9と上下に重なることもなく、固定レールLのフロアフレームF上への取付構造の設計自由度が高められる。
その上、本実施形態のスライダ50は、固定レールL内で左右方向に間隔をおいて並ぶ一対の電線保持部52,53と、その両電線保持部52,53間を連結する連結部51とを有しており、干渉回避部50cは、連結部51の、ねじ軸41との対向部に設けられる。これにより、左右の電線保持部52,53を繋ぐ連結部51を利用して干渉回避部50cを無理なくコンパクトに形成できるため、固定レールLが、その内部にねじ軸41、軸受部材60及びスライダ50を配備したことで左右に大型化するのを効果的に抑制可能となる。
しかも上記連結部51は、ねじ軸41の上方を覆う頂壁部51tと、その頂壁部51tの左右両端より鉛直下方に延びる左右の側壁部51sとを有し、それら頂壁部51t及び左右の側壁部51sの内面により、横断面コ字状の干渉回避部50cが構成される。その場合、干渉回避部50cの左右の側壁部51sを各々鉛直壁とすることで、干渉回避部50cが左右方向に幅広となるのが極力抑えられ、連結部51延いてはスライダ50を左右方向に小型化する上で有利となる。
更に本実施形態では、固定レールLに固定されてねじ軸41を支持する軸受部材60が、ねじ軸41を嵌挿させる貫通孔61a,62aを各々有して前後方向に間隔をおいて並ぶ複数の立壁61,62と、それら立壁61,62の先端相互を一体に結合する連結壁部63とを備えている。これにより、軸受部材60は、これを前後方向に厚肉に形成しなくても、前後方向に長い支持スパンを以て固定レールLに安定よく支持可能となる。
しかも複数の立壁61,62相互を結合する連結壁部63は、ねじ軸41を横切る横断面形状がアーチ状(図5を参照)、或いは少なくとも中央部が頂部となるよう該ねじ軸41から離れる側又は近づく側に張出した屈曲形状(図7を参照)に形成されているため、連結壁部63自体の曲げ剛性も効果的に高められる。以上の結果、軸受部材60は、これの軽量化を図りながら、ねじ軸41に対する十分な支持剛性を確保することができる。
その上、複数の立壁61,62のうちの第1の立壁61の貫通孔61aには、ねじ軸41が遊びなく嵌合、支持され、また第2の立壁62の貫通孔62aには、ねじ軸41が遊びを介して嵌合されるので、立壁61,62(従って貫通孔61a,62a)が複数有っても、その一部の立壁61だけに、ねじ軸41を遊びなく支持する貫通孔61a(軸受孔)を形成すればよく、これにより、複数の貫通孔61a,62a相互の同軸精度を厳格化する必要はなくなり、加工コストの節減が図られる。
また軸受部材60は、屈曲した帯板材で構成されており、一部の(第1の)立壁61の貫通孔61aには軸受ブッシュ65を介してねじ軸41が嵌合、支持される。これにより、軸受孔となる貫通孔61aを有する立壁61が板状で薄肉であっても、ねじ軸41に対する支持剛性の低下が最小限に抑えられる。
しかも第1の立壁61は、第2の立壁62よりもねじ軸41の軸方向で外方側に配置され、第2の立壁62が、ナット部材42と直接、又は間接に(即ち支持板70を介して)係合して可動レールUの前進限又は後退限を規制するストッパ面62sを有しているため、ねじ軸41を支持する軸受部材60が、可動レールUの前進限又は後退限を規制するストッパ部材を兼ねることとなり、それだけ構造簡素化が図られる。しかもまた軸受部材60の複数ある立壁61,62のうち軸方向外方側の立壁61を軸受壁に、また軸方向内方側の立壁62をストッパ手段にそれぞれ機能分担させることで、個々の立壁61,62の荷重負担の軽減が図られ、更なる軽量化が図られる。
更に前後方向に間隔をおいて並ぶ第1,第2の立壁61,62の基端には、前後方向で互いに反対側に延びる延長壁61w,62wがそれぞれ一体に連設され、その両延長壁61w,62wで軸受部材60が固定レールLに結合される。これにより、固定レールLの軸受部材60に対する支持スパンを延長壁特設により延ばすことができ、軸受部材60に対する支持剛性が更に高められる。
更に本実施形態では、ナット部材42から前後少なくとも一方(実施形態では両方)の方向に離間した位置でねじ軸41を貫通させる板状のストッパ壁部71,72が可動レールUに片持ちで固定支持され、ストッパ壁部71,72が軸受部材60のストッパ面62sに接離可能に当接することで可動レールUの前進限又は後退限が規制される。これにより、ストッパ面62sとの当接時に板状のストッパ壁部71,72が多少とも弾性変形するから、ナット部材42がストッパ面62sに直接係合する構造と比べ係合時の衝撃吸収効果が高められる。
更にまた本実施形態では、前後一対の軸受部材60が、相互間にナット部材42を挟むようにして固定レールLに前後に間隔をおいて固定されると共に、ナット部材42から前後方向一方及び他方にそれぞれ離間した位置でねじ軸41を貫通させる前後のストッパ壁部71,72が可動レールUに固定され、前後一対のストッパ壁部71,72が前後一対の軸受部材60のストッパ面62sにそれぞれ接離可能に当接することで可動レールUの前進限及び後退限がそれぞれ規制される。これにより、ナット部材42から前後一方及び他方にそれぞれ離間した位置でねじ軸41を貫通させる前後一対のストッパ壁部71,72の特設により、ねじ軸41の、芯振れ方向にフリーとなる中間部領域を減らすことができ、ねじ軸41の芯ぶれ抑制に有効である。
また本実施形態の支持板70は、前後のストッパ壁部71,72と、その両ストッパ壁部71,72を両端にそれぞれ連ねて前後方向に延び且つ可動レールUに固定(例えば溶接)される中間壁部73とを有していて、前後の軸受部材60間で可動レールU内に配置されており、中間壁部73は、可動レールUに固定したナット部材42を抱持する中間曲げ部73mを有している。これにより、前後のストッパ壁部71,72を有して前後両方向のストッパ機能を発揮する単一の支持板70を帯板材のプレス成形により容易且つ低コストで形成可能となる。しかもその支持板70は、これの中間曲げ部73mを利用してナット部材42に対する支持強度を高めることができる。
また図8には、本発明の第2実施形態が示される。即ち、第1実施形態では、収納ハウジングHが平面視で固定レールLに対し、固定レールLの前端部Lfに向かってシート左右方向中央側に傾斜させたものを示したが、第2実施形態では、収納ハウジングHが平面視で固定レールLに対し略直交してシート左右方向中央側に延びるように配置される。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第2実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第2実施形態では、収納ハウジングHを固定レールLと略直交させたことで、固定レールLのフロアフレームFへの固定部位(例えば支持フレーム7~9)と収納ハウジングHとが上下に重なる心配はなく、設計自由度が更に向上する。しかも収納ハウジングHを平面視で固定レールLに対し略直交させたことで、収納ハウジングHを固定レールLに沿設させた場合と比べて、収納ハウジングHから引き出されて固定レールL側にカーブする電線80の曲率を更に小さくでき、電線80を一層スムーズに曲げることができる等の利点がある。
また図9には、本発明の第3実施形態が示される。この実施形態では、スライダ50における連結部51が、ねじ軸41の上方を覆う頂壁部51tと、その頂壁部51tの左右両端より斜め下方に先拡がり状に延びる左右側壁部51sとを有しており、それら頂壁部51及び左右側壁部51sの内面で横断面山形状の干渉回避部50cが構成される。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第3実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第3実施形態では、スライダ50は、これの連結部51の下半部が下側に先拡がりとなることでねじ軸41との干渉を無理なく回避できる。しかも連結部51の頂壁部51tが相対的に幅狭化されるため、スライダ50の、固定レールL上端からの露出張出部分を左右方向に小型化できて、他物との干渉回避に有効である。
また図10には、本発明の第4実施形態が示される。第1実施形態では、ギヤボックス31(駆動ユニットDu)が板ばね部材90を介して固定レールLに係脱可能に係止できるようにしたものを示したが、第4実施形態では、ねじ軸41の延長軸部41dにジョイントJを介して結合される伝動軸36の外端を、ギヤボックス31の外側壁(蓋体312)の外側方に突出させ、その突出端面に外側から螺挿したボルト200の頭部を該突出端面に係合させることで、ギヤボックス31を固定レールLの前端部Lfに固定する。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第4実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第4実施形態では、伝動軸36がボルト200と協働して、ギヤボックス31の抜け止め手段に兼用できるため、それだけギヤボックス31の固定構造が簡素化される。尚、第4実施形態の変形例として、例えばねじ軸41の延長軸部41dと伝動軸36とを一体に形成した構造も実施可能である。
また図11,12には、本発明の第5実施形態が示される。第1実施形態では、固定レールLの上端開口部がフロアカーペットで覆われるだけであってモールでは覆われないものを示したが、第5実施形態では、左右少なくとも一方(図示例では右方)の固定レールLの上端開口部が左右一対のモール14,15で閉塞されるように構成される。そして、それらモール14,15の上方は、必要に応じてフロアカーペット(図示せず)で覆われる。
また第5実施形態の可動レールUは、一対の可動レール半体22,22′が左右非対称に形成されていて、可動レールUの上半部やそれとシート底板の垂壁部100との結合部がシート内方側(図12で左側)にオフセット配置される。即ち、シート内方側の第2可動レール半体22′は、上半部及び下半部の大部分が連続した鉛直壁であるのに対し、シート外方側(図12で右側)の第1可動レール半体22の下半部は、左右方向で幅広の頂壁部22tと、頂壁部22tの外端より鉛直に下がる側壁部22sとを備え、その幅広の頂壁部22tによりナット45及び支持板70ばかりか、ねじ軸41及び軸受部材60の一部も覆われる。尚、上記したシート内方側へのオフセット配置によれば、可動レールUの上半部やそれとシート底板の垂壁部100との結合部をシート内方側に極力寄せることができるから、シート外側方より見えにくくできる利点もある。
また車体のフロアフレームFには、固定レールLを受容すべく前後方向に延びる溝状の取付凹所Faが形成されており、その取付凹所Faの底部に固定レールLの底壁部12が結合(例えばボルト結合)される。取付凹所Faの左右の開口縁部には、前後方向に延びる凹状又は凸状(図示例は凹状)の係止部16がそれぞれ形成されており、その両係止部16に、固定レールLの上端開口部を互いに協働して覆う左右一対の第1,第2モール14,15が係止される。
各々のモール14,15は、帯板状に形成されて略水平姿勢で固定レールLの全長に亘って延びるモール本体14m,15mと、モール本体14m,15mの内側縁に連設されて対応する可動レール半体22の上半部に摺動可能に弾力的に圧接するリップ部14l,15lが一体的に連設される。尚、このリップ部14l,15lは、モール本体14m,15mと別素材で形成されて後付けでモール本体14m,15mに結合されてもよいし、或いは、弾性材でモール本体14m,15mと一体成形されてもよい。またリップ部14l,15lの、可動レール半体22との摺接面には、必要に応じて、摺動抵抗を低減するための保護膜を被着してもよい。
特にシート外方側の第1モール14のモール本体14mは、同側の可動レール半体22下半部の頂壁部22tおよび固定レールLの同側の上端フランジ部13fを被覆し得るように左右に幅広に形成される。そのモール本体14mの外側縁部には、取付凹所Fa外側のフロアフレームF上面に係合、圧接する下向きの第1係合突部14moが沿設され、またモール本体14mの内側縁部には、第1可動レール半体22の頂壁部22t上面に摺動可能に係合、圧接する下向きの第2係合突部14miが沿設される。またモール本体14mの下面には、固定レールLの外側面と取付凹所Fa内側面との対向間隙に突入する少なくとも1個(実施形態では前後に間隔をおいて複数個)の下向き係止片14mkが一体に突設され、この係止片14mkの先部に設けた係止爪部14mkaが取付凹所Fa内側面の係止部16に係脱可能に係止する。
一方、シート内方側の第2モール15のモール本体15mは、主として固定レールLの同側の上端フランジ部13fを被覆するもので左右に比較的幅狭に形成される。そのモール本体15mの外側縁部には、取付凹所Fa外側のフロアフレームF上面に係合、圧接する下向きの第1係合突部15moが沿設され、また、モール本体15mの内側縁部には、固定レールLの同側の上端フランジ部13f上面に係合、圧接する下向きの第2係合突部15miが沿設される。またモール本体15mの下面には、固定レールLの外側面と取付凹所Fa内側面との対向間隙に突入する少なくとも1個(実施形態では前後に間隔をおいて複数個)の下向き係止片15mkが一体に突設され、この係止片15mkの先部に設けた係止爪部15mkaが取付凹所Fa内側面の係止部16に係脱可能に係止する。
而して、第1モール14は、第1,第2係合突部14mo,14miをそれぞれフロアフレームF及び頂壁部22tの各上面に当接させた状態で係止片14mkを係止部16に弾性係止させることで、リップ部14lを第1可動レール半体22上半部に圧接させつつ取付凹所Faに係止、固定される。また第2モール15は、第1,第2係合突部15mo,15miをそれぞれフロアフレームF及び固定レールLの上面に当接させた状態で係止片15mkを係止部16に弾性係止させることで、リップ部15lを第2可動レール半体22上半部に圧接させつつ取付凹所Faに係止、固定される。
そして、上述の係止、固定状態で第1,第2モール14,15は、互いに協働して(主として第1モール14が)固定レールLの上端開口部を(従って固定レールL内のねじ軸41、軸受部材60、スライダ50や、固定レールLと第1,第2可動レール半体22,22′上半部との各間の空隙も)被覆すると共に、固定レールLと取付凹所Faとの隙間も被覆することができる。これにより、固定レールL内のねじ軸41、軸受部材60、スライダ50等の備品や、備品相互の係合部等への塵埃その他の異物の付着を効果的に防止でき、また固定レールL内部を体裁よく隠蔽できて商品性が高められる。
第1,第2モール14,15のリップ部14l,15lの形状は、リップ部14l,15lが可動レールUの上半部と対向していない領域では、自己の弾性で互いに接近するよう復元してリップ部14l,15l相互が直接接触するように設定してもよいし、或いは、接触しないまでも相互間隙を狭小とするように設定してもよい。
その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第5実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第5実施形態では、前記したように第1,第2モール14,15の特設により固定レールLの上端開口部を被覆し得る効果が発揮される。
尚、第5実施形態では、固定レールLの上端開口部を覆うモール構造を左右一方(図示例で右側)の固定レールLに設けたものを示したが、同様のモール構造を左右他方(図示例で左側)の固定レールLに設けてもよい。この場合、特に第1実施形態の左側の固定レールLのように給電用電線80を保持するスライダ50を固定レールL内に摺動可能に設けたものに第5実施形態のモール構造を適用する場合には、第1,第2モール14,15のリップ部14l,15lを可動レールUの上半部のみならず、スライダ50の括れ部50m内面にも摺動可能に圧接させるようにする。また第5実施形態の可動レールUのように可動レール半体22,22′の上半部がシート内方側にオフセット配置される場合には、スライダ50の括れ部50mも、同様にシート内方側にオフセット配置することが望ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、シートとして自動車用シートSを例示したが、本発明では、自動車以外の車両(例えば鉄道車両)に用いられるシートや、車両以外の乗物(例えば船舶、航空機)に用いられるシートにも適用可能であり、或いはまた乗物以外に用いられるシートにも適用可能である。尚、自動車用シートとして用いる場合に、シートは前席でもよいし、後席でもよい。
また前記実施形態では、給電用の電線80(ワイヤハーネス)が蛇腹状の保護筒81内に挿通されて保護されるものを示したが、保護筒81は、少なくとも可撓性を有し且つ電線80を保護できる強度を備えておればよく、必ずしも蛇腹状に形成されなくてもよい。或いはまた、保護筒81を省略した別実施形態の実施も可能である。
また前記実施形態では、ねじ軸41を床側の固定レールLに軸受部材60を介して回転自在に支持する一方、ねじ軸41と螺合するナット部材42をシート側の可動レールUに固定し、ねじ軸41を回転駆動するためのモータMや伝動機構30を固定レールL(車体側)に取付けるものを示したが、ねじ軸41及びナット部材42は、何れを回転側・固定側にしてもよく、例えば、ねじ軸41を固定レールLに軸受部材60を介して固定、支持する一方、ナット部材42を可動レールUに回転自在に支持し、ナット部材42を回転駆動するモータMや伝動機構30をシートS側に取付けるようにしてもよい。
またねじ軸41及びナット部材42の上下位置関係は実施形態に限定されず、例えば、ねじ軸41を上側の可動レールUに軸受部材を介して回転自在に支持する一方、ナット部材42を下側の固定レールLに固定し、ねじ軸41を回転駆動するためのモータや伝動機構をシート側に取付けるようにしてもよい。尚、この場合においても、回転側・固定側の配置を逆の配置として、例えば、ねじ軸41を可動レールUに軸受部材を介して固定、支持する一方、ナット部材42を固定レールLに回転自在に支持し、ナット部材42を回転駆動するためのモータや伝動機構を車体側に取付けるようにしてもよい。
本発明は、シートの前後位置調節装置、特に床に固定されて前後方向に延びる固定レールと、シートに固定されて固定レールに前後摺動可能に支持されるシート支持体と、シート支持体を固定レールに対し前後駆動し得る駆動装置とを備えたシートの前後位置調節装置に関する。尚、本明細書において、前後・左右とは、車両にセットされた状態のシートを基準とした前後・左右をいう。
上記シートの前後位置調節装置において、シート支持体を前後駆動する駆動装置が、シート側に設けたモータと、固定レール内を縦通するよう配置されてモータからシート支持体への駆動力伝達に関係する伝動部材(より具体的にはシート支持体に支持されてモータと連動回転するナットに螺合した固定のねじ軸)とを有するものが、例えば特許文献1に示されるように従来公知である。
日本特開平11-28954号公報
日本特開平5-330367号公報
<第1の課題>
特許文献1のシートでは、シート側の電装品に給電する給電装置が、前後方向に長いダクト状に形成されて給電用電線を収納する給電レールと、給電レールに摺動可能に支持されて給電レール内の電線の可動端部を支持するスライダとを備えており、スライダがシート支持体に連結されて、シート支持体と共に前後動できるようになっている。
しかしこのシート構造では、レール構造が全体として大型化するといった課題がある。
<第2の課題>
特許文献2のシートでは、ねじ軸に設けられるストッパを、剛体であるナット部材に当接させることで、可動レール(従ってシート)の固定レールに対する前進限又は後退限が規定される。しかし上記ストッパは、前後方向に扁平なフランジ状であるため、支持剛性を高めるためにはストッパを軸方向に厚肉に構成する必要があり、ストッパの軽量化を図る上で不利となる、といった第2の課題がある。
本発明は、上記に鑑み提案されたものであり、上記第1の課題を解決可能なシートの前後位置調節装置を提供することを目的としている。
<上記第1の課題の解決手段>
上記第1の目的を達成するために、本発明は、固定レールと、前記固定レールに対して可動な可動レールと、前記可動レールを前記固定レールに対して移動させるためのモータと、前記モータにより駆動されて前記可動レールを移動させるねじ軸と、シートに付設される電装品に給電する給電装置とを備えたシートの前後位置調節装置において、前記給電装置は、給電用の電線を前記可動レールに連結し且つ前記固定レールに対して前記可動レールと共に移動するスライダを備え、前記スライダの一部および前記ねじ軸は、前記固定レールの上下幅内もしくは左右幅内に配置されることを第1の特徴とする。
また本発明は、第1の特徴に加えて、前記スライダの一部は、前記固定レールの一部から外方に露出することを第2の特徴とする。
また本発明は、第1又は第2の特徴に加えて、前記固定レールの高さ方向において、前記ねじ軸は、前記スライダの上端よりも低い位置に設けられることを第3の特徴としている。
また本発明は、第1~第3の何れかの特徴に加えて、前記固定レールの高さ方向において、前記ねじ軸は、前記スライダが支持する前記電線と同じ位置に設けられることを第4の特徴とする。
また本発明は、第1~第4の何れかの特徴に加えて、前記ねじ軸を前記可動レールに対して支持する支持板を備え、前記可動レールの長さ方向において、前記支持板の長さは前記スライダの長さよりも長いことを第5の特徴とする。
また本発明は、第1~第5の何れかの特徴に加えて、前記固定レールは、底壁と、該底壁の幅方向両端から上方に立ち上がる一対の立壁と、該立壁の上端に繋がる一対の上壁と、該上壁から下方へ折り曲げられて前記立壁と対向する一対の垂下壁とからなり、前記スライダは前記電線を保持する一対の電線保持部を備えてそれらの電線保持部が前記立壁および垂下壁の間に配置され、前記電線保持部は、前記固定レールの高さ方向において前記ねじ軸よりも下方に配置される一対の下方連結部と、それら一対の下方連結部を前記ねじ軸よりも上方で連結する頂壁部とを有する連結部で連結されることを第6の特徴としている。
また本発明は、第1~第6の何れかの特徴に加えて、前記固定レールおよび前記可動レールは各々一対設けられ、前記給電装置は前記電線を収納する収納ハウジングを備え、前記収納ハウジングは前記一対の固定レール間に配置され、前記一対の固定レールは、それらを車体フロアに固定する第1固定部と第2固定部とを有し、前記第1固定部は前記収納ハウジングと上下方向で重なる位置に配置されるとともに、前記第2固定部は前記収納ハウジングと上下方向で重ならない位置に配置されることを第7の特徴とする。
また本発明は、第1~第7の何れかの特徴に加えて、前記固定レールの幅方向において、前記ねじ軸の幅は前記スライダの幅よりも小さいことを第8の特徴とする。
尚、実施形態の固定レールL、可動レールU、モータM、ねじ軸41、シートS、給電装置E、電線80、支持板70、スライダ50、固定レールLの底壁部12、同じく側壁部13、同じくフランジ部13fの内向き基部、同じくフランジ部13fの下向き先部、スライダ50の下方連結部51u、同じく頂壁部51t、同じく連結部51、同じく電線保持部52,53、収納ハウジングH、支持フレーム9、支持フレーム8は、本発明の固定レール、可動レール、モータ、ねじ軸、シート、給電装置、電線、支持板、スライダ、底壁、立壁、上壁、垂下壁、下方連結部、頂壁部、連結部、電線保持部、収納ハウジング、第1固定部、第2固定部にそれぞれ対応する。
また更に、本発明の「固定レール」は、実施形態の左右一対ある固定レールL,Lのうち、特にスライダ50が摺動可能に設けられる側の固定レール(実施形態で言えば左側の固定レールL)を指す。
図1は本発明の第1実施形態に係る自動車用シートの前後位置調節装置の一例を示す全体斜視図である。
図2は前記前後位置調節装置を示す全体平面図である。
図3は図2の3-3線拡大断面図である。
図4は図2の4-4線拡大断面図(図2,図5,図6の4-4線断面図)である。
図5は図4の5-5線拡大断面図である。
図6は図4の6-6線拡大断面図である。
図7は(A)(B)は、軸受部材の第1,第2変形例をそれぞれ示す図5対応断面図である。
図8は本発明の第2実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す平面図(図2対応図)である。
図9は本発明の第3実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す図6対応断面図である。
図10は本発明の第4実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す図3対応断面図である。
図11は本発明の第5実施形態に係る前後位置調節装置の要部を示す図2対応平面図である。
図12は図11の12-12線拡大断面図である。
A・・・・・前後位置調節装置
E・・・・・給電装置
H・・・・・収納ハウジング
L・・・・・固定レール
M・・・・・モータ
S・・・・・シートとしての自動車用シート
U・・・・・シート支持体としての可動レール
8・・・・・第2固定部(支持フレーム)
9・・・・・第1固定部(支持フレーム)
12・・・・底壁(固定レールの底壁部)
13・・・・立壁(側壁部)
13f・・・上壁、垂下壁(側壁部のフランジ部)
41・・・・ねじ軸
50・・・・スライダ
51u・・・下方連結部
51t・・・頂壁部
52,53・・一対の電線保持部
80・・・・電線
本発明の実施形態を添付図面に基づいて以下に説明する。尚、本発明及び本明細書において、前後・左右・上下は、シートに座る乗員から見ての前後・左右・上下をそれぞれいう。
先ず、図1~図6を参照して、第1実施形態について説明する。自動車用シートSは、車体の一部であるフロアフレームF上に前後位置調節装置Aを介して前後位置調節可能に支持される。フロアフレームFは、床の一例である。
前後位置調節装置Aは、フロアフレームFに複数の支持フレーム7~9を介して載置、固定(例えばボルト結合)されて前後方向に延び且つ互いに平行する左右の固定レールLと、各々の固定レールLに前後摺動可能に支持されるシート支持体としての左右の可動レールUと、可動レールU(従ってシートS)を固定レールLに対し前後駆動し得る駆動装置Dと、シートSに装備される不図示の電装品に給電する給電装置Eとを備える。ここで電装品とは、例えばシートバックの傾動角を調整するための電動リクライニング機構、シートSへの乗員の着座の有無を検出する着座センサ、シート上の乗員がシートベルトを装着しているか検出するシートベルトセンサ等がある。
シートSの座部底板には、下向きの垂壁部100が固設されており、垂壁部100に可動レールUの上部が、例えば複数組のボルト・ナット101を介して着脱可能に結合される。
また複数の支持フレーム7~9は、フロアフレームF上で前後に間隔をおいて配列され、またその一部(例えば前後の支持フレーム7,9)は左右方向に長く延びていて、左右の固定レールL間を結合するクロスメンバとして機能し、またその他の(例えば前後中間の支持フレーム8)は、左右方向に短く形成されて左右の固定レールLに個別に結合される。その結合手段として、本実施形態ではウエルドナット及びボルトが用いられるが、その他の結合手段(例えば溶接)も可能である。尚、支持フレーム7~9の長・短形状の組み合わせは、任意であって、実施形態に限定されない。更に、全部の支持フレーム7~9を実施形態の支持フレーム8のように短く形成してもよいし、或いは実施形態の支持フレーム7,9のように長く形成してもよい。
左右の各固定レールLは、特に図5に明示されるように、前後方向に延びる帯板状の底壁部12と、底壁部12の左右両端より上方に一体に起立する略鉛直な左右の側壁部13aとを備える。底壁部12は、これの左右方向中央部において下方に凹む凹部12hを有しており、凹部12hの両側にそれぞれ連なる左右の水平な平坦部が、後述するローラ24の走行案内面12aとなる。
一方、左右の各可動レールUは、左右の可動レール半体22より分割構成され、その両可動レール半体22は、それらの上半部相互を突き合わせて一体的に結合(例えばリベット結合23)される。左右の可動レール半体22の下半部は、上半部に連なり且つ互いに反対側に略水平に張出す頂壁部22tと頂壁部22t外端より下向きに略鉛直に延びる側壁部22sとを一体に有する。そして、各側壁部22sの下端からは上方に反転して延びる上向きフランジ状のローラ支持部22fが一体に延びており、その各ローラ支持部22fに、前後に間隔をおいて並ぶ前後一対のローラ24が各々回転自在に軸支される。
各固定レールLの左右の側壁部13aの上端にはフランジ部13fが一体に連設され、フランジ部13fは、ローラ24の上方を覆う内向き基部と、その内向き基部の内端より下方に略鉛直に延びる下向き先部とを有して横断面L字状に形成される。各フランジ部13fの下向き先部は、可動レールUの側壁部22sとローラ支持部22fとの間の隙間に緩く嵌挿される。而して、各可動レールUのローラ24が各固定レールの上記走行案内面12aを転動することで、各可動レールUは各固定レールL上をローラ24を介してスムーズに前後摺動可能である。
次に可動レールU(シートS)を前後駆動する駆動装置Dの一例を説明する。
駆動装置Dは、左右の固定レールL内を各々縦通するよう配置されるねじ軸41と、ねじ軸41の前後両端部を固定レールLに回転自在に支持させる前後の軸受部材60と、前後の軸受部材60間でねじ軸41に螺合すると共に可動レールUに固定されるナット部材42と、ねじ軸41及びナット部材42を相対回転させる回転力を出力するモータMと、モータMの出力をねじ軸41に伝動してねじ軸41を回転させる伝動機構30とを備えている。
ナット部材42は、可動レールUの下半部(より具体的には頂壁部22t)内面に結合(例えば溶接)される。そして、ねじ軸41及びナット部材42は、互いに協働して、モータMから可動レールUへの駆動力伝達に関係する伝動部材として機能する。
左右の固定レールLの前端部Lfには、ねじ軸41を回転駆動する駆動ユニットDuが取付けられる。この駆動ユニットDuは、モータMと、伝動機構30を各々収納する左右のギヤボックス31と、モータM及びギヤボックス31が結合(例えばボルト結合)されるベース枠38とを備えており、ベース枠38は、左右方向に延びるチャンネル枠状に形成される。そして、左右のギヤボックス31が左右の固定レールLの前端部Lfにそれぞれ着脱可能に結合されることで、駆動ユニットDuが固定レールLに取付けられる。尚、ギヤボックス31は、伝動ケースの一例である。
ギヤボックス31は、例えばギヤボックス本体311と、それの開放端部に着脱可能に結合(例えば圧入)される蓋体312とで分割構成されていて、合成樹脂材よりボックス状に形成される。ギヤボックス31の、固定レールL側の側壁31wは、固定レールLの前端部Lf開口を着脱可能に閉塞するカバー35の外面に当接しており、その当接状態で板ばね部材90を介して固定レールLに係脱可能に係止、固定される。
即ち、その板ばね部材90の基部は、固定レールLの前端部Lfに支持フレーム7と共締め結合(例えばボルト結合)されており、板ばね部材90の先部には、その一部を切り起こして設けられる係止爪90aが設けられる。一方、ギヤボックス31は、側壁31w外面に開口し且つ板ばね部材90が抜差可能に挿入されるスリット孔31sと、スリット孔31s内面に開口して係止爪90aに係止可能な係止孔31hとを有する。
従って、板ばね部材90の先部をスリット孔31sに押し込むように挿入すれば、係止爪90aを係止孔31hに自動的に係止させることができるため、ギヤボックス31延いては駆動ユニットDuを左右の固定レールLにワンタッチで迅速簡単に係止、固定でき、ギヤボックス31(駆動ユニットDu)の固定レールLへの取付作業性が良好である。しかも板ばね部材90の弾性変形により、モータM及び伝動機構30からフロアフレームF及びシートSへの振動伝達量が効果的に低減可能となる。
モータMからは左右二方向にモータ軸37が延出していて左右のギヤボックス31内にそれぞれ突入しており、その突入端部外周にウォームギヤ37gが嵌合、固定される。またギヤボックス31には、ねじ軸41の前端にジョイントJを介して同軸上に連結される伝動軸36が回転自在に支持されており、伝動軸36の中間部外周には、ウォームギヤ37gと噛合してモータ軸37の回転を伝動軸36(従って、ねじ軸41)に伝えるウォームホイールギヤ36gが嵌合、固定される。
次に図3~図5を主に参照して、軸受部材60の一例を説明する。軸受部材60は、長手方向中間部が屈曲した帯板材で構成されるものであって、例えば、ねじ軸41を嵌挿させる貫通孔61a,62aを各々有して前後方向に間隔をおいて並ぶ第1,第2の立壁61,62と、それら立壁61,62の先端(上端)相互を一体に結合する連結壁部63とを備える。
第1,第2の立壁61,62の基端(下端)には、前後方向で互いに反対側に延びる延長壁61w,62wがそれぞれ一体に連設されており、その両延長壁61w,62wで軸受部材60が固定レールLの底壁部12に結合(例えばボルト結合)される。
連結壁部63は、ねじ軸41を横切る横断面形状がアーチ状に形成される。尚、連結壁部63の横断面形状は、図示例に限定されず、少なくとも中央部が頂部となるようねじ軸41から離れる側又は近づく側に張出した屈曲形状であってもよく、例えば図7(A)に示すように中央部のみがねじ軸41から離れる側に張り出した山形形状でもよく、或いは(B)に示すように開口部を下向きとしたコ字状でもよい。尚、図示はしないが、図7とは逆に、連結壁部63の横断面形状を中央部のみがねじ軸41から近づく側に張り出した山形形状であってもよく、或いは開口部を上向きとしたコ字状であってもよい。
第1,第2の立壁61,62のうち一方の(図示例では軸方向外方側の)第1の立壁61の貫通孔61aには、ねじ軸41が軸受ブッシュ65を介して遊びなく嵌合、支持され、また他方の(図示例では軸方向内方側の)第2の立壁62の貫通孔62aには、ねじ軸41が遊びを介して嵌挿される。尚、軸受ブッシュ65を省略して、貫通孔61aにねじ軸41を直接、回転自在に嵌合、支持させるようにした変形例の実施も可能である。
ねじ軸41は、ナット部材42を螺合させる大径の第1雄ねじ部41aと、第1雄ねじ部41aの前後両端にフランジ部41fを介して隣接し且つ軸受ブッシュ65を嵌合させるブッシュ支持部41bと、ブッシュ支持部41bの外端に段差部を介して隣接する小径の第2雄ねじ部41cとを一体に有している。
左右の第2雄ねじ部41cには、軸受ブッシュ65の外端に近接、対向するナット45がそれぞれ螺合され、このナット45が軸受部材60の第1の立壁61に係合することで、ねじ軸41の軸方向移動が規制される。またねじ軸41の特に前側の第2雄ねじ部41cには、更に小径の延長軸部41dが連設されており、この延長軸部41dがジョイントJを介してギヤボックス31側の伝動軸36に接続される。
第2の立壁62は、ナット部材42と間接に(即ち次に説明する支持板70を介して)係合して可動レールUの前進限又は後退限を規制するストッパ面62sを有する。
支持板70は、ねじ軸41を僅かに緩く貫通させる貫通孔を各々有して前後に間隔をおいて並列する前後のストッパ壁部71,72と、その両ストッパ壁部71,72を両端にそれぞれ一体に連ねるようにして前後方向に長く延びる中間壁部73とを備える。この支持板70は、前後の軸受部材60間で可動レールU内に配置されており、中間壁部73は、可動レールUに固定したナット部材42を抱持する中間曲げ部73mを有する。尚、中間曲げ部73mは、ナット部材42と固着(例えば溶接)させてもよいし、固着させなくてもよい。
中間壁部73は、可動レールUの下半部の左右一方の側壁部22s内面に結合(例えば溶接)される。これにより、支持板70が可動レールUに固定され、また前後のストッパ壁部71,72の各基端が中間壁部73を介して可動レールU(より具体的には側壁部22s)に固定、即ち片持ち支持される。
而して、支持板70は、これの前後のストッパ壁部71,72が、前後の軸受部材60における各ストッパ面62sにそれぞれ接離可能に当接することで、可動レールUの前進限・後退限が規制される。尚、支持板70を省略して、ナット部材42を前後の軸受部材60の各ストッパ面62sに直接当接させるようにしてもよい。
また可動レールU、特に各可動レール半体22の上半部には、支持板70と軸方向で少なくとも一部が重なる位置に補強部22bが設けられる。この補強部22bは、可動レール半体22の上半部の一部を左右方向外側に張出すリブ状に塑性変形させるようにして形成される。このような補強部22bの特設によれば、可動レールUの、支持板70固定に起因して荷重負担が増す領域を、補強部22bにより効果的に補強可能となる。
次に図1,2,4,6を主に参照して、給電装置Eの一例を説明する。
給電装置Eは、給電用の電線80と、電線80を収納する収納ハウジングHと、左右一方(図示例では左側)の可動レールUに連結されて同側の固定レールL内を摺動可能なスライダ50とを備える。電線80は、それの略全長に亘って、合成樹脂材で形成されて可撓性を有する蛇腹状の保護筒81内に緩く挿通されており、この保護筒81の被覆保護作用で電線80が無理に曲げられずに保護される。
そして、スライダ50には、後述するように収納ハウジングHより引き出されて固定レールL内を摺動可能な電線80の一部即ち可動端部80aが、これを囲繞する保護筒81の可動端部と共に埋設、保持される。
尚、本発明及び本明細書において「電線」とは、1本のリード線であってもよいし、或いは複数本のリード線を束ねてなるワイヤハーネスと呼ばれる状態のものであってもよいが、図示例ではワイヤハーネスを単に電線と呼ぶ。
収納ハウジングHは、これをシートS直下の狭小空間に無理なく配備できるように、所定方向に直線状に延び且つ上下に扁平なボックス状に形成されており、その内部に蛇腹状の保護筒81で各々囲繞された一対の電線80が収納される。一対の電線80の車体側の端部は互いに収束され、その収束部分が、収納ハウジングHの外面適所に固設されるカプラ82に接続される。このカプラ82は、車体側の電子制御装置(図示せず)から延びる電線83に連なるカプラ84と抜差可能に結合される。収納ハウジングHの基端部Haは、左右一方の固定レールLの後端部Lrに着脱可能に接続される。そして、その基端部Haには、固定レールLの内部空間に臨む開口が設けられており、この開口は、保護筒81で各々囲繞された一対の電線80の引出し口として機能する。従って、収納ハウジングH内に収納され且つ保護筒81で各々囲繞された一対の電線80は、収納ハウジングHの基端部Haの開口を通して固定レールL内に引き出され、スライダ50の前後摺動に追従して固定レールL内(より具体的には走行案内面12a上)を摺接可能である。
また特に本実施形態の収納ハウジングHは、平面視で固定レールLに対し、固定レールLの前端部Lfに向かってシート左右方向中央側に傾斜するように配置される。この配置によれば、収納ハウジングHをシートS直下の、左右の固定レールL,L間のデッドスペースにおいて前後方向にコンパクトに収めることができる。しかも収納ハウジングHを平面視で固定レールLに対し傾斜させたことで、収納ハウジングHを固定レールLに沿設させた場合と比べて、収納ハウジングHの基端部Haの開口から引き出されて固定レールL側に反転する電線80の曲率を小さくできるため、電線80を収納ハウジングH内で無理なくスムーズに曲げることができ、電線80の耐久性向上が図られる。
次にスライダ50の一例について説明する。スライダ50は、固定レールL内に大部分が配置されるスライダ基部50Bと、スライダ基部50Bの上部に括れ部50mを介して一体に連設されて固定レールLよりも上方に高く張出すスライダ先部50Aとを有していて、合成樹脂材より構成される。スライダ基部50Bは、固定レールL内で左右方向に間隔をおいて並ぶ一対の電線保持部52,53と、その両電線保持部52,53間を一体に連結する連結部51とを備えている。
両電線保持部52,53は、固定レールLの底壁部12の走行案内面12aに前後摺動可能に載置、支持される。また両電線保持部52,53には、収納ハウジングHの基端部Haの開口を通して固定レールL内に引き出された蛇腹状の保護筒81の先端部と、その保護筒81の先端部から延出した電線80の一部即ち可動端部80aとが一体的に被覆、保持される。その電線80の可動端部80aは、スライダ先部50A内を上方に延びて収束され、その収束部分が、スライダ先部50Aに固設したカプラ86に接続される。このカプラ86は、シートS側の前記電装品から延びる電線87に連なるカプラ88と抜差可能に結合される。
連結部51は、ねじ軸41及び軸受部材60の上方を被覆可能な頂壁部51tと、その頂壁部51tの左右両端より鉛直下方に延びる左右側壁部51sと、その左右側壁部51sから両電線保持部52,53に伸びる下方連結部と51uとを有しており、それら頂壁部51t及び左右側壁部51sの内面により、ねじ軸41及び軸受部材60との干渉を避ける横断面コ字状の干渉回避部50cが構成される。即ち、連結部51の内面(即ちねじ軸41との対向面)を上方に凹ませて形成される第1凹部51hが、ねじ軸41及び軸受部材60との干渉を回避する干渉回避部50cとして構成される。
そして、この第1凹部51h(干渉回避部50c)と、これに対面するように固定レールLの底壁部12に下方を凹ませて形成される第2凹部12hとで挟まれた広い空間が確保され、この空間をねじ軸41が縦通し且つ軸受部材60が相対的に通過可能となっている。即ち、第1,第2凹部51h,12hにより、ねじ軸41及び周辺部品(例えば軸受部材60)の配置スペースを十分広く確保可能となり、しかも固定レールLの底壁部12の第2凹部12h対応部分が補強リブ効果を発揮し得ることで、固定レールLの曲げ剛性アップが図られる。
またスライダ50は、電線保持部52,53の少なくとも一部がシート側面視でねじ軸41と重なり合うように配置される。この配置によれば、固定レールLが、その内部にスライダ50(特に電線保持部52,53)及びねじ軸41を両方配備したことで上下方向に大型化するのを抑制可能となる。
またスライダ50は可動レールUに対し、次に説明する連結手段を介して着脱可能に結合される。即ち、その連結手段は、スライダ50の連結部51(より具体的には側壁部51s)前端に突設されて前方に延びる弾性係止爪51aと、弾性係止爪51aに対応して可動レール半体22の下半部の側壁部22sに形成した係止孔22hとを備える。そして、係止爪51aの先部には係止突起51atが設けられ、この係止突起51atが係止孔22hに係脱可能に係止される。その係止により、スライダ先部50Aを可動レールUの上半部後端に突き当てた状態を保持しつつスライダ基部50Bを可動レールUの下半部に着脱可能に結合することができ、これにより、スライダ50を可動レールUと追従して前後動させることができる。
尚、スライダ50と可動レールU間の連結手段は、上記実施形態の構造に限定されず、種々の連結手段(例えばボルト結合、かしめ結合等)を採用可能である。
また固定レールLは、フロアフレームFの上面を覆うフロアカーペット(図示せず)で体裁よく覆われる。この場合、フロアカーペットには、可動レールUやスライダ50の前後移動を許容するスリットが適宜、設けられ、即ち、そのスリットの隙間を可動レールUの左右に幅狭の上半部やスライダ50の前記括れ部50mが前後できるようにする。
次に、以上説明した第1実施形態の作用を説明する。例えば、乗員が、ドア内面にある操作スイッチ(図示せず)の操作することでモータMを正転又は逆転させると、その回転力は、モータ軸37、左右の伝動機構30、伝動軸36、ジョイントJを介してねじ軸41を正転又は逆転させ、これに連動してナット部材42(従って可動レールU延いてはシートS)が固定レールL上を前進又は後退摺動させる。この摺動は、固定レールL内面の走行案内面12a上を転動するローラ24を介して行われるので、摺動抵抗を極めて小さくすることができる。
そして、シートSが所望の前後位置に来ると、前記操作スイッチの操作を止めることでモータMを停止させ、これにより、シートSを前後方向で所望の位置に随時調整することができる。尚、モータMへの通電制御を電子制御装置により自動化して、予め設定した前後位置に自動調節できるようにしてもよい。
上記したシートSの前後摺動に追従してスライダ50は固定レールL内で前後摺動し、これに追従して収納ハウジングHから引き出された電線80の一部が保護筒81と共に固定レールL内(より具体的には走行案内面12a上)を前後摺動する。
また本実施形態では、可動レールU(シートS)を前後駆動する駆動力を出力モータMと、モータMの出力をねじ軸41に伝達する伝動機構30のギヤボックス31とを含む駆動ユニットDuが固定レールLの前端部Lfに取付けられ、またシートS側の電装品に給電する給電装置E(例えば収納ハウジングH、スライダ50等)が、駆動ユニットDu(例えばモータM、ギヤボックス31、伝動機構30)よりも固定レールLの後端部Lr寄りに配設される。これにより、駆動ユニットDu(モータM、ギヤボックス31、伝動機構30)と、給電装置E(収納ハウジングH、スライダ50)との相互干渉を無理なく回避でき、それらの配置自由度を高めることができる。しかもモータM及び伝動機構30の発する振動がシートS側に伝わるのを効果的に抑制でき、シートSの乗り心地向上が図られる。
また本実施形態では、駆動装置EがモータMと、固定レールL内を縦通するよう配置される伝動部材としてのねじ軸41とを有する一方、シートS側の電装品に給電する給電装置Eが、可動レールUに連結されて固定レールL内を摺動可能なスライダ50とを備えていて、このスライダ50に、固定レールL内を摺動可能な給電用電線80の可動端部80aが保持され、スライダ50は、固定レールL内でねじ軸41との干渉を避ける干渉回避部50cを有している。
これにより、駆動装置Dの、固定レールL内を縦通するねじ軸41や軸受部材60と、固定レールL内を摺動する電線保持用のスライダ50とを、相互の干渉を回避しながら固定レールL内で近接配置可能となり、全体としてレール構造の簡単・小型化に寄与することができる。また固定レールL内にねじ軸41が縦通していても、スライダ50の摺動支持手段(例えば特許文献1の給電レール)を固定レールL外側に別設する必要はないから、そのような摺動支持手段が例えば支持フレーム7~9と上下に重なることもなく、固定レールLのフロアフレームF上への取付構造の設計自由度が高められる。
その上、本実施形態のスライダ50は、固定レールL内で左右方向に間隔をおいて並ぶ一対の電線保持部52,53と、その両電線保持部52,53間を連結する連結部51とを有しており、干渉回避部50cは、連結部51の、ねじ軸41との対向部に設けられる。これにより、左右の電線保持部52,53を繋ぐ連結部51を利用して干渉回避部50cを無理なくコンパクトに形成できるため、固定レールLが、その内部にねじ軸41、軸受部材60及びスライダ50を配備したことで左右に大型化するのを効果的に抑制可能となる。
しかも上記連結部51は、ねじ軸41の上方を覆う頂壁部51tと、その頂壁部51tの左右両端より鉛直下方に延びる左右の側壁部51sとを有し、それら頂壁部51t及び左右の側壁部51sの内面により、横断面コ字状の干渉回避部50cが構成される。その場合、干渉回避部50cの左右の側壁部51sを各々鉛直壁とすることで、干渉回避部50cが左右方向に幅広となるのが極力抑えられ、連結部51延いてはスライダ50を左右方向に小型化する上で有利となる。
更に本実施形態では、固定レールLに固定されてねじ軸41を支持する軸受部材60が、ねじ軸41を嵌挿させる貫通孔61a,62aを各々有して前後方向に間隔をおいて並ぶ複数の立壁61,62と、それら立壁61,62の先端相互を一体に結合する連結壁部63とを備えている。これにより、軸受部材60は、これを前後方向に厚肉に形成しなくても、前後方向に長い支持スパンを以て固定レールLに安定よく支持可能となる。
しかも複数の立壁61,62相互を結合する連結壁部63は、ねじ軸41を横切る横断面形状がアーチ状(図5を参照)、或いは少なくとも中央部が頂部となるよう該ねじ軸41から離れる側又は近づく側に張出した屈曲形状(図7を参照)に形成されているため、連結壁部63自体の曲げ剛性も効果的に高められる。以上の結果、軸受部材60は、これの軽量化を図りながら、ねじ軸41に対する十分な支持剛性を確保することができる。
その上、複数の立壁61,62のうちの第1の立壁61の貫通孔61aには、ねじ軸41が遊びなく嵌合、支持され、また第2の立壁62の貫通孔62aには、ねじ軸41が遊びを介して嵌合されるので、立壁61,62(従って貫通孔61a,62a)が複数有っても、その一部の立壁61だけに、ねじ軸41を遊びなく支持する貫通孔61a(軸受孔)を形成すればよく、これにより、複数の貫通孔61a,62a相互の同軸精度を厳格化する必要はなくなり、加工コストの節減が図られる。
また軸受部材60は、屈曲した帯板材で構成されており、一部の(第1の)立壁61の貫通孔61aには軸受ブッシュ65を介してねじ軸41が嵌合、支持される。これにより、軸受孔となる貫通孔61aを有する立壁61が板状で薄肉であっても、ねじ軸41に対する支持剛性の低下が最小限に抑えられる。
しかも第1の立壁61は、第2の立壁62よりもねじ軸41の軸方向で外方側に配置され、第2の立壁62が、ナット部材42と直接、又は間接に(即ち支持板70を介して)係合して可動レールUの前進限又は後退限を規制するストッパ面62sを有しているため、ねじ軸41を支持する軸受部材60が、可動レールUの前進限又は後退限を規制するストッパ部材を兼ねることとなり、それだけ構造簡素化が図られる。しかもまた軸受部材60の複数ある立壁61,62のうち軸方向外方側の立壁61を軸受壁に、また軸方向内方側の立壁62をストッパ手段にそれぞれ機能分担させることで、個々の立壁61,62の荷重負担の軽減が図られ、更なる軽量化が図られる。
更に前後方向に間隔をおいて並ぶ第1,第2の立壁61,62の基端には、前後方向で互いに反対側に延びる延長壁61w,62wがそれぞれ一体に連設され、その両延長壁61w,62wで軸受部材60が固定レールLに結合される。これにより、固定レールLの軸受部材60に対する支持スパンを延長壁特設により延ばすことができ、軸受部材60に対する支持剛性が更に高められる。
更に本実施形態では、ナット部材42から前後少なくとも一方(実施形態では両方)の方向に離間した位置でねじ軸41を貫通させる板状のストッパ壁部71,72が可動レールUに片持ちで固定支持され、ストッパ壁部71,72が軸受部材60のストッパ面62sに接離可能に当接することで可動レールUの前進限又は後退限が規制される。これにより、ストッパ面62sとの当接時に板状のストッパ壁部71,72が多少とも弾性変形するから、ナット部材42がストッパ面62sに直接係合する構造と比べ係合時の衝撃吸収効果が高められる。
更にまた本実施形態では、前後一対の軸受部材60が、相互間にナット部材42を挟むようにして固定レールLに前後に間隔をおいて固定されると共に、ナット部材42から前後方向一方及び他方にそれぞれ離間した位置でねじ軸41を貫通させる前後のストッパ壁部71,72が可動レールUに固定され、前後一対のストッパ壁部71,72が前後一対の軸受部材60のストッパ面62sにそれぞれ接離可能に当接することで可動レールUの前進限及び後退限がそれぞれ規制される。これにより、ナット部材42から前後一方及び他方にそれぞれ離間した位置でねじ軸41を貫通させる前後一対のストッパ壁部71,72の特設により、ねじ軸41の、芯振れ方向にフリーとなる中間部領域を減らすことができ、ねじ軸41の芯ぶれ抑制に有効である。
また本実施形態の支持板70は、前後のストッパ壁部71,72と、その両ストッパ壁部71,72を両端にそれぞれ連ねて前後方向に延び且つ可動レールUに固定(例えば溶接)される中間壁部73とを有していて、前後の軸受部材60間で可動レールU内に配置されており、中間壁部73は、可動レールUに固定したナット部材42を抱持する中間曲げ部73mを有している。これにより、前後のストッパ壁部71,72を有して前後両方向のストッパ機能を発揮する単一の支持板70を帯板材のプレス成形により容易且つ低コストで形成可能となる。しかもその支持板70は、これの中間曲げ部73mを利用してナット部材42に対する支持強度を高めることができる。
また図8には、本発明の第2実施形態が示される。即ち、第1実施形態では、収納ハウジングHが平面視で固定レールLに対し、固定レールLの前端部Lfに向かってシート左右方向中央側に傾斜させたものを示したが、第2実施形態では、収納ハウジングHが平面視で固定レールLに対し略直交してシート左右方向中央側に延びるように配置される。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第2実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第2実施形態では、収納ハウジングHを固定レールLと略直交させたことで、固定レールLのフロアフレームFへの固定部位(例えば支持フレーム7~9)と収納ハウジングHとが上下に重なる心配はなく、設計自由度が更に向上する。しかも収納ハウジングHを平面視で固定レールLに対し略直交させたことで、収納ハウジングHを固定レールLに沿設させた場合と比べて、収納ハウジングHから引き出されて固定レールL側にカーブする電線80の曲率を更に小さくでき、電線80を一層スムーズに曲げることができる等の利点がある。
また図9には、本発明の第3実施形態が示される。この実施形態では、スライダ50における連結部51が、ねじ軸41の上方を覆う頂壁部51tと、その頂壁部51tの左右両端より斜め下方に先拡がり状に延びる左右側壁部51sとを有しており、それら頂壁部51及び左右側壁部51sの内面で横断面山形状の干渉回避部50cが構成される。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第3実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第3実施形態では、スライダ50は、これの連結部51の下半部が下側に先拡がりとなることでねじ軸41との干渉を無理なく回避できる。しかも連結部51の頂壁部51tが相対的に幅狭化されるため、スライダ50の、固定レールL上端からの露出張出部分を左右方向に小型化できて、他物との干渉回避に有効である。
また図10には、本発明の第4実施形態が示される。第1実施形態では、ギヤボックス31(駆動ユニットDu)が板ばね部材90を介して固定レールLに係脱可能に係止できるようにしたものを示したが、第4実施形態では、ねじ軸41の延長軸部41dにジョイントJを介して結合される伝動軸36の外端を、ギヤボックス31の外側壁(蓋体312)の外側方に突出させ、その突出端面に外側から螺挿したボルト200の頭部を該突出端面に係合させることで、ギヤボックス31を固定レールLの前端部Lfに固定する。その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第4実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第4実施形態では、伝動軸36がボルト200と協働して、ギヤボックス31の抜け止め手段に兼用できるため、それだけギヤボックス31の固定構造が簡素化される。尚、第4実施形態の変形例として、例えばねじ軸41の延長軸部41dと伝動軸36とを一体に形成した構造も実施可能である。
また図11,12には、本発明の第5実施形態が示される。第1実施形態では、固定レールLの上端開口部がフロアカーペットで覆われるだけであってモールでは覆われないものを示したが、第5実施形態では、左右少なくとも一方(図示例では右方)の固定レールLの上端開口部が左右一対のモール14,15で閉塞されるように構成される。そして、それらモール14,15の上方は、必要に応じてフロアカーペット(図示せず)で覆われる。
また第5実施形態の可動レールUは、一対の可動レール半体22,22′が左右非対称に形成されていて、可動レールUの上半部やそれとシート底板の垂壁部100との結合部がシート内方側(図12で左側)にオフセット配置される。即ち、シート内方側の第2可動レール半体22′は、上半部及び下半部の大部分が連続した鉛直壁であるのに対し、シート外方側(図12で右側)の第1可動レール半体22の下半部は、左右方向で幅広の頂壁部22tと、頂壁部22tの外端より鉛直に下がる側壁部22sとを備え、その幅広の頂壁部22tによりナット45及び支持板70ばかりか、ねじ軸41及び軸受部材60の一部も覆われる。尚、上記したシート内方側へのオフセット配置によれば、可動レールUの上半部やそれとシート底板の垂壁部100との結合部をシート内方側に極力寄せることができるから、シート外側方より見えにくくできる利点もある。
また車体のフロアフレームFには、固定レールLを受容すべく前後方向に延びる溝状の取付凹所Faが形成されており、その取付凹所Faの底部に固定レールLの底壁部12が結合(例えばボルト結合)される。取付凹所Faの左右の開口縁部には、前後方向に延びる凹状又は凸状(図示例は凹状)の係止部16がそれぞれ形成されており、その両係止部16に、固定レールLの上端開口部を互いに協働して覆う左右一対の第1,第2モール14,15が係止される。
各々のモール14,15は、帯板状に形成されて略水平姿勢で固定レールLの全長に亘って延びるモール本体14m,15mと、モール本体14m,15mの内側縁に連設されて対応する可動レール半体22の上半部に摺動可能に弾力的に圧接するリップ部14l,15lが一体的に連設される。尚、このリップ部14l,15lは、モール本体14m,15mと別素材で形成されて後付けでモール本体14m,15mに結合されてもよいし、或いは、弾性材でモール本体14m,15mと一体成形されてもよい。またリップ部14l,15lの、可動レール半体22との摺接面には、必要に応じて、摺動抵抗を低減するための保護膜を被着してもよい。
特にシート外方側の第1モール14のモール本体14mは、同側の可動レール半体22下半部の頂壁部22tおよび固定レールLの同側の上端フランジ部13fを被覆し得るように左右に幅広に形成される。そのモール本体14mの外側縁部には、取付凹所Fa外側のフロアフレームF上面に係合、圧接する下向きの第1係合突部14moが沿設され、またモール本体14mの内側縁部には、第1可動レール半体22の頂壁部22t上面に摺動可能に係合、圧接する下向きの第2係合突部14miが沿設される。またモール本体14mの下面には、固定レールLの外側面と取付凹所Fa内側面との対向間隙に突入する少なくとも1個(実施形態では前後に間隔をおいて複数個)の下向き係止片14mkが一体に突設され、この係止片14mkの先部に設けた係止爪部14mkaが取付凹所Fa内側面の係止部16に係脱可能に係止する。
一方、シート内方側の第2モール15のモール本体15mは、主として固定レールLの同側の上端フランジ部13fを被覆するもので左右に比較的幅狭に形成される。そのモール本体15mの外側縁部には、取付凹所Fa外側のフロアフレームF上面に係合、圧接する下向きの第1係合突部15moが沿設され、また、モール本体15mの内側縁部には、固定レールLの同側の上端フランジ部13f上面に係合、圧接する下向きの第2係合突部15miが沿設される。またモール本体15mの下面には、固定レールLの外側面と取付凹所Fa内側面との対向間隙に突入する少なくとも1個(実施形態では前後に間隔をおいて複数個)の下向き係止片15mkが一体に突設され、この係止片15mkの先部に設けた係止爪部15mkaが取付凹所Fa内側面の係止部16に係脱可能に係止する。
而して、第1モール14は、第1,第2係合突部14mo,14miをそれぞれフロアフレームF及び頂壁部22tの各上面に当接させた状態で係止片14mkを係止部16に弾性係止させることで、リップ部14lを第1可動レール半体22上半部に圧接させつつ取付凹所Faに係止、固定される。また第2モール15は、第1,第2係合突部15mo,15miをそれぞれフロアフレームF及び固定レールLの上面に当接させた状態で係止片15mkを係止部16に弾性係止させることで、リップ部15lを第2可動レール半体22上半部に圧接させつつ取付凹所Faに係止、固定される。
そして、上述の係止、固定状態で第1,第2モール14,15は、互いに協働して(主として第1モール14が)固定レールLの上端開口部を(従って固定レールL内のねじ軸41、軸受部材60、スライダ50や、固定レールLと第1,第2可動レール半体22,22′上半部との各間の空隙も)被覆すると共に、固定レールLと取付凹所Faとの隙間も被覆することができる。これにより、固定レールL内のねじ軸41、軸受部材60、スライダ50等の備品や、備品相互の係合部等への塵埃その他の異物の付着を効果的に防止でき、また固定レールL内部を体裁よく隠蔽できて商品性が高められる。
第1,第2モール14,15のリップ部14l,15lの形状は、リップ部14l,15lが可動レールUの上半部と対向していない領域では、自己の弾性で互いに接近するよう復元してリップ部14l,15l相互が直接接触するように設定してもよいし、或いは、接触しないまでも相互間隙を狭小とするように設定してもよい。
その他の構成は、第1実施形態と同様であるので、各構成要素には、第1実施形態の対応する構成要素と同じ参照符号を付すに止め、それ以上の説明は省略する。
従って、第5実施形態でも、第1実施形態と基本的に同様の作用効果を発揮し得るが、更に第5実施形態では、前記したように第1,第2モール14,15の特設により固定レールLの上端開口部を被覆し得る効果が発揮される。
尚、第5実施形態では、固定レールLの上端開口部を覆うモール構造を左右一方(図示例で右側)の固定レールLに設けたものを示したが、同様のモール構造を左右他方(図示例で左側)の固定レールLに設けてもよい。この場合、特に第1実施形態の左側の固定レールLのように給電用電線80を保持するスライダ50を固定レールL内に摺動可能に設けたものに第5実施形態のモール構造を適用する場合には、第1,第2モール14,15のリップ部14l,15lを可動レールUの上半部のみならず、スライダ50の括れ部50m内面にも摺動可能に圧接させるようにする。また第5実施形態の可動レールUのように可動レール半体22,22′の上半部がシート内方側にオフセット配置される場合には、スライダ50の括れ部50mも、同様にシート内方側にオフセット配置することが望ましい。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、シートとして自動車用シートSを例示したが、本発明では、自動車以外の車両(例えば鉄道車両)に用いられるシートや、車両以外の乗物(例えば船舶、航空機)に用いられるシートにも適用可能であり、或いはまた乗物以外に用いられるシートにも適用可能である。尚、自動車用シートとして用いる場合に、シートは前席でもよいし、後席でもよい。
また前記実施形態では、給電用の電線80(ワイヤハーネス)が蛇腹状の保護筒81内に挿通されて保護されるものを示したが、保護筒81は、少なくとも可撓性を有し且つ電線80を保護できる強度を備えておればよく、必ずしも蛇腹状に形成されなくてもよい。或いはまた、保護筒81を省略した別実施形態の実施も可能である。
また前記実施形態では、ねじ軸41を床側の固定レールLに軸受部材60を介して回転自在に支持する一方、ねじ軸41と螺合するナット部材42をシート側の可動レールUに固定し、ねじ軸41を回転駆動するためのモータMや伝動機構30を固定レールL(車体側)に取付けるものを示したが、ねじ軸41及びナット部材42は、何れを回転側・固定側にしてもよく、例えば、ねじ軸41を固定レールLに軸受部材60を介して固定、支持する一方、ナット部材42を可動レールUに回転自在に支持し、ナット部材42を回転駆動するモータMや伝動機構30をシートS側に取付けるようにしてもよい。
またねじ軸41及びナット部材42の上下位置関係は実施形態に限定されず、例えば、ねじ軸41を上側の可動レールUに軸受部材を介して回転自在に支持する一方、ナット部材42を下側の固定レールLに固定し、ねじ軸41を回転駆動するためのモータや伝動機構をシート側に取付けるようにしてもよい。尚、この場合においても、回転側・固定側の配置を逆の配置として、例えば、ねじ軸41を可動レールUに軸受部材を介して固定、支持する一方、ナット部材42を固定レールLに回転自在に支持し、ナット部材42を回転駆動するためのモータや伝動機構を車体側に取付けるようにしてもよい。