JP2023093341A - 硬化物層の製造方法、これを用いたプリント配線板の製造方法および電子部品の製造方法 - Google Patents

硬化物層の製造方法、これを用いたプリント配線板の製造方法および電子部品の製造方法 Download PDF

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良朋 青山
Yoshitomo Aoyama
和貴 仲田
Kazuki Nakada
衆 管
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Abstract

【課題】デスミア処理により粗面化した硬化物層表面を無機充填剤の露出や脱落等のないものとし、さらにビア底の外周部における基板と硬化物層との隙間の発生が抑制された熱硬化性樹脂組成物の硬化物層を製造する方法、これを用いたプリント配線板の製造方法および電子部品の製造方法を提供する。【解決手段】硬化物層の製造方法は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物から構成された硬化物層の表面をデスミア処理するデスミア工程と、デスミア工程後の硬化物層を110℃以上で10分以上熱処理する熱処理工程と、を含む。熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、活性エステル化合物と、無機充填剤と、を含む。【選択図】なし

Description

本発明は、硬化物層の製造方法、これを用いたプリント配線板の製造方法および電子部品の製造方法に関する。
プリント配線板などの電子部品を形成する絶縁材料として、従来、熱硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物層が用いられている。
例えば、銅基板上に熱硬化性樹脂組成物層を形成し、これを硬化させた後、得られた硬化物層に対し炭酸ガスレーザーなどのレーザー光照射を行い、めっき処理を行うことにより、熱硬化性樹脂組成物の硬化物層(絶縁層)に小径のビアホールや微細な配線を形成する工法が採用されている。
一般に、硬化物層にレーザー光照射より穿孔されたビアホールの底(ビア底)には、硬化物層の残渣であるスミア(smear)が残留する。スミアが残留したまま、めっき工程へ進むと、めっきの密着性や、はんだ接続が十分に得られないことがあるため、スミアを除去するためのデスミア(desmear)処理が必要となる。デスミア処理としては、例えば、レーザー光照射後の硬化物層を過マンガン酸塩溶液等の薬液に浸漬する方法(湿式法)やプラズマ処理(乾式法)が用いられる。このようなデスミア処理によるとビア底に残存するスミアが除去されるのみならず、硬化物層表面が粗面化されることから、硬化物層に対してめっきが良好に付着し、密着性も向上するとともに、安定したはんだ接続が得られるようになる(特許文献1)。
国際公開第2008/090835号
しかしながら、レーザー光照射により硬化物層にビアホールの形成を行うと、硬化物層のビア底の外周部分において、基板と硬化物層が離間して隙間を生ずるハローイング(haloing)という現象が生ずる可能性がある。そして、隙間が生じた状態でめっき処理等が行われると、ボイドが生じ、硬化物層の剥がれや膨れの原因となる。
また、特許文献1のようなデスミア処理では、硬化物層表面が過度に粗面化され、硬化物層中の無機充填剤が表面に露出ないし表面から脱落してしまい、無機充填剤と樹脂成分との隙間にめっきが潜り込んでしまうことも生じる。
上記のめっきの潜り込みは、伝送損失の増大ないし絶縁信頼性の低下の原因となるなど、当該硬化物層を電子部品に用いた場合に高周波特性や信頼性の低下を誘発する傾向にある。
しかるに、本発明は、デスミア処理により粗面化した硬化物層表面を無機充填剤の露出や脱落等のないものとし、さらにビア底の外周部における基板と硬化物層との隙間の発生が抑制された硬化物層を製造する方法、これにより得られた硬化物層、およびこの硬化物層を有する電子部品を提供することをその目的とする。
本発明の目的は、
熱硬化性樹脂組成物の硬化物から構成された硬化物層の表面をデスミア処理するデスミア工程(工程i)、および
デスミア工程後の硬化物層を110℃以上で10分以上熱処理する熱処理工程(工程ii)を含み、
熱硬化性樹脂組成物が、
(A)エポキシ樹脂と、
(B)活性エステル化合物と、
(C)無機充填剤と、
を含むことを特徴とする、硬化物層の製造方法によって達成される。
この硬化物層の製造方法は、さらに、熱処理工程後の硬化物層にめっきを施すめっき工程(工程iii)を含むことが好ましい。
さらに、本発明の硬化物層の製造方法では、熱処理工程(工程ii)を130℃以上で行うことが好ましい。
また、本発明の硬化物層の製造方法では、熱処理工程(工程ii)を20分以上行うことが好ましい。
上記の(B)活性エステル化合物は、一般式(1)または(2)で表される構造を有することが好ましい。
Figure 2023093341000001
(式中、Xはそれぞれ独立的にベンゼン環またはナフタレン環を有する基であり、kは0または1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05~2.5である。)
Figure 2023093341000002
(式(2)中、Xはそれぞれ独立的に下記式(3):
Figure 2023093341000003
で表される基または下記式(4):
Figure 2023093341000004
で表される基であり、
mは1~6の整数であり、nはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、qはそれぞれ独立的に1~6の整数であり、
式(3)中、kはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、
式(4)中、Yは上記式(3)で表される基(kはそれぞれ独立的に1~5の整数)であり、tはそれぞれ独立的に0~5の整数である)
さらに、本発明の上記の各課題は、上記本発明の製造方法により得られた硬化物層、この硬化物層を有するプリント配線板、およびこのプリント配線板を有する電子部品によっても、それぞれ達成される。
本発明の硬化物層の製造方法によると、硬化物層表面にこれを構成する熱硬化性樹脂組成物の硬化物に含まれる無機充填剤が露出ないし脱落することを抑制し、不要な凹凸や隙間の発生を抑制する。これにより、その後に設けられるめっき層が硬化物層に潜り込むことを防止するとともに、硬化物層に対するめっき層の密着性を向上することができる。
さらに本発明の硬化物層の製造方法によると、基板とその上に設けられた硬化物層の間に隙間が発生することが抑制される。基板とその上に設けられた硬化物層の間の隙間は、硬化物層が基板から剥離する原因となるが、これらを未然に防止することができる。
結果として、本発明の製造方法により得られた硬化物層の絶縁材料としての信頼性が増大し、高周波特性も向上する。
したがって、本発明の硬化物層を有するプリント配線板等の電子部品も向上した電気的特性を発揮することになる。例えば、高周波特性、絶縁信頼性、および接続信頼性に優れた電子部品を得ることができる。
本発明の実施例および比較例に用いたハローイング評価基板の概略断面図である。
本発明の硬化物層の製造方法は、
熱硬化性樹脂組成物の硬化物から構成された硬化物層の表面をデスミア処理するデスミア工程(工程i)、および
デスミア工程後の硬化物層を110℃以上で10分以上熱処理する熱処理工程(工程ii)を含み、
熱硬化性樹脂組成物が、
(A)エポキシ樹脂(A成分ともいう)と、
(B)活性エステル化合物(B成分ともいう)と、
(C)無機充填剤と(C成分ともいう)、
を含むことを特徴とする。
[熱硬化性樹脂組成物の硬化物から構成された硬化物層の製造方法]
上記デスミア工程(工程i)に先立ち、熱硬化性樹脂組成物は、一般にはドライフィルム状の積層体とされ、次いで、銅基板に対するラミネート処理および硬化処理を経て硬化物層として形成される。さらに、通常は、レーザー処理により、硬化物層にビアホール等の開口が形成される。以下、これを詳細に説明する。
なお、本明細書において、数値範囲を「~」で表記する場合、それらの数値を含む範囲(即ち、・・・以上・・・以下)を意味するものとする。
<積層体の製造>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、上記のA~C成分の他、必要に応じてその他の成分を含有する熱硬化性樹脂組成物として調製される。本発明の熱硬化性樹脂組成物の使用時には、第一フィルム上に塗布し、乾燥することにより積層体に加工した状態で、基板上にラミネート処理することが一般的である。
積層体の製造は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を第一フィルム上に塗布し、乾燥して、樹脂層を形成することにより行われる。樹脂層の第一フィルムと反対面には、必要に応じて、第二フィルムを積層することができる。
ここで、第一フィルムとは、積層体の樹脂層を支持する役割を有するもの(いわゆるキャリアフィルム)であり、該樹脂層を形成する際に、熱硬化性樹脂組成物が塗布されるフィルムである。第一フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、および、表面処理した紙等を用いることができる。これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。第一フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。第一フィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。また、第一フィルムの樹脂層を設ける面には、スパッタもしくは銅箔が形成されていてもよい。
また、第二フィルムとは、積層体の樹脂層の表面に塵等が付着するのを防止するとともに取扱性を向上させる目的で、樹脂層の第一フィルムとは反対の面に設けられるフィルム(いわゆる保護フィルム)である。第二フィルムとしては、例えば、前記第一フィルムで例示した熱可塑性樹脂からなるフィルム、および、表面処理した紙等を用いることができるが、これらの中でも、ポリエステルフィルムおよびポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムが好ましい。第二フィルムの厚さは、特に制限されるものではないが概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。第二フィルムの樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていてもよい。
<ラミネート処理>
上記第一フィルム、樹脂層、第二フィルムの三層構造からなる積層体を使用する場合、樹脂層から第一フィルムまたは第二フィルムのどちらかを剥離し、樹脂層のフィルムを有しない面を回路パターンが形成された回路基板(銅基板)に対向するようにこれらを積層し、ラミネーター等を用い、公知慣用の方法にて加熱ラミネートする。
なお、本発明では、基板上への積層体のラミネートに代えて、熱硬化性樹脂組成物を基板上に直接塗布し、乾燥することにより未硬化の樹脂層を得ることも可能である。
<硬化処理>
その後、上記のように得られた樹脂層を硬化する硬化処理に付す。硬化する方法は特に限定されず、従来公知の方法で硬化すればよく、例えば、150~230℃で加熱して硬化すればよい。また、前記硬化の前に、例えば、80~130℃で予備硬化を行っても良い。熱硬化は、例えばオーブン、もしくは熱板プレスを用いて行われる。
回路が形成された基板と本発明の積層体をラミネートもしくは熱板プレスする際に、銅箔もしくは回路形成された基板を同時に積層することもできる。
<レーザー処理>
上記のように硬化した熱硬化性樹脂組成物(硬化物層)に対しレーザー処理を行うことができる。レーザー処理は、基板上の回路パターンが形成された位置に対応するように、レーザー光照射等によりパターンやホールを形成し、回路配線を露出させる。レーザー処理を行うことで、後述するプリント配線板の製造時にビルドアップ配線板の層間接続を確保することができる。
第一フィルムまたは第二フィルムのうち残った方は、ラミネート処理後、硬化処理後、レーザー処理後のいずれかに、剥離すればよい。
<デスミア処理>
パターンやビアホール内の回路配線上に除去しきれないで残留したスミアの除去や、硬化物層表面の粗面化の目的でデスミア処理(工程i)を行う。
デスミア処理は、乾式法または湿式法によって行う。乾式法の場合にはプラズマ処理等が挙げられ、湿式法の場合は膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗化処理及び中和液による中和処理をこの順に行う方法が挙げられる。湿式のデスミア処理の方が、硬化物層表面に凸凹のアンカーを形成しながら、ビアホール内のスミアを除去することができる点で好ましい。
膨潤液による膨潤処理は、硬化物層を50~80℃で5~20分間(好ましくは55~70℃で8~15分間)、膨潤液に浸漬させることで行われる。膨潤液としてはアルカリ溶液、界面活性剤溶液等が挙げられ、好ましくはアルカリ溶液であり、該アルカリ溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液等が挙げられる。市販されている膨潤液としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のスウェリング・ディップ・セキュリガンスP(Swelling Dip Securiganth P)、スウェリング・ディップ・セキュリガンスSBU(Swelling Dip Securiganth SBU)等を挙げることができる。
酸化剤による粗化処理は、硬化物層を60~80℃で10~30分間(好ましくは70~80℃で15~25分間)、酸化剤溶液に浸漬させることで行われる。酸化剤としては、例えば、水酸化ナトリウムの水溶液に過マンガン酸カリウムや過マンガン酸ナトリウムを溶解したアルカリ性過マンガン酸溶液、重クロム酸塩、オゾン、過酸化水素/硫酸、硝酸等を挙げることができる。また、アルカリ性過マンガン酸溶液における過マンガン酸塩の濃度は5~10質量%とするのが好ましい。市販されている酸化剤としては、例えば、アトテックジャパン(株)製のコンセントレート・コンパクト CP、ドージングソリューション セキュリガンスP等のアルカリ性過マンガン酸溶液が挙げられる。
中和液による中和処理は、30~50℃で3~10分間(好ましくは35~45℃で3~8分間)、中和液に浸漬させることで行われる。中和液としては、酸性の水溶液が好ましく、市販品としては、アトテックジャパン(株)製のリダクションソリューシン・セキュリガントPが挙げられる。
<熱処理>
本発明では、デスミア処理後の硬化物層に対して、110℃以上、好ましくは130℃以上で、10分以上、好ましくは20分以上の熱処理(工程ii)を行う。さらに好ましくは130℃~160℃の範囲で、10分以上、30分以下の熱処理を行うとよい。この熱処理は、上述の硬化処理と同様にオーブン、もしくは熱板プレス等を用いて行うことができる。
なお、従来技術によれば、上記のようなレーザー処理において、硬化物層のビア底の外周部では、基板と硬化物層が離間して隙間を生じるハローイングが起こることがある。
また、従来技術における上記のようなデスミア処理により粗面化された後(無電解めっき処理前)の硬化物層においては、硬化物層の表面近傍に存在する無機充填剤が不安定な状態で表面から露出することや、表面から離脱するなどにより、無機充填剤と樹脂成分との間に隙間が生ずることがある。さらに、デスミア処理により、ビア底のハローイングがさらに進行することもある。
本発明では、本発明者らの知見に基づき、デスミア後の硬化物層を熱処理することで、従来技術とは異なり、硬化物層の表面からの無機充填剤の露出や脱離を抑制し、無機充填剤と樹脂成分との間に隙間が発生することを抑制可能とされた。また、硬化物層と基板との間に隙間が生じたとしても、熱処理により隙間を埋めることができる。
従って、硬化物層をさらに後述のめっき処理に付する場合にも無機充填剤と樹脂成分との隙間へのめっきの潜り込みを予め回避することができるとともに、硬化物層とめっき層との密着性を向上させることができる。さらに、硬化物層と基板との間の隙間に起因する硬化物層の剥離や膨れを防止することができる
ここで、熱処理により表面等の形状に影響が与えられる理由は明らかではないが、一旦硬化した硬化物層中の表面付近の一部の樹脂が熱処理により再度軟化し、軟化した樹脂が隙間等を埋めることにより、本発明の効果を得ることができるものと思われる。
以上により、本発明の硬化物層が製造される。
また、本発明の製造方法では、上記の熱処理 (工程ii)後の硬化物に対し、更にめっきを施すめっき処理(工程iii)を行うことが好ましい。
<めっき処理>
めっき処理は、乾式めっき又は湿式めっきにより硬化物層上に導体層を形成する。乾式めっきとしては、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の公知の方法を使用することができる。湿式めっきとしては、無電解めっきと電解めっきとを組み合わせて導体層を形成する方法、導体層とは逆パターンのめっきレジストを形成し、無電解めっきのみで導体層を形成する方法等が挙げられる。無電解めっきや電解めっきは、従来公知の方法を用いて行うことができる。
導体パターンの形成方法としては、サブトラクティブ法やセミアディティブ法等、従来公知の方法を用いることができ、上述の一連の工程を複数回繰り返すことで、ビルドアップ層を多段に積層した多層プリント配線板を製造することができる。
以下に、本発明の熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について説明する。
[(A)エポキシ樹脂]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂としては、1個以上のエポキシ基を有する樹脂であり、従来公知のものをいずれも使用することができる。分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を3個以上有する多官能エポキシ樹脂等が好ましく使用される。水素添加されたエポキシ樹脂も使用可能である。また、固形エポキシ樹脂、半固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂も好ましく使用される。
固形エポキシ樹脂としては、DIC社製EPICLON HP-4700(ナフタレン型エポキシ樹脂)、日本化薬社製NC-7000L(ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂)、日鉄ケミカル&マテリアル社製ESN-475V等のナフタレン型エポキシ樹脂;日本化薬社製EPPN-502H(トリスフェノールエポキシ樹脂)等のフェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ樹脂(トリスフェノール型エポキシ樹脂);DIC社製EPICLON HP-7200H(ジシクロペンタジエン骨格含有多官能エポキシ樹脂)等のジシクロペンタジエンアラルキル型エポキシ樹脂;日本化薬社製NC-3000H、NC-3000L(ビフェニル骨格含有多官能エポキシ樹脂)等のビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂;DIC社製EPICLON N660、EPICLON N690、日本化薬社製EOCN-104S等のノボラック型エポキシ樹脂;三菱ケミカル社製YX-4000等のビフェニル型エポキシ樹脂;日鉄ケミカル&マテリアル社製TX0712等のリン含有エポキシ樹脂が挙げられる。固形エポキシ樹脂を含むことにより、硬化物層のガラス転移温度が高くなり耐熱性に優れる。固形エポキシ樹脂の中でも、より高Tgかつ低誘電正接の硬化物層が得られることから、ESN-475VやNC3000Hのようなナフタレン骨格またはビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。
半固形エポキシ樹脂としては、DIC社製EPICLON 860、EPICLON 900-IM、EPICLON EXA―4816、EPICLON EXA-4822、東都化成社製エポトートYD-134、三菱ケミカル社製jER834、jER872、住友化学社製ELA-134等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;DIC社製EPICLON HP-4032等のナフタレン型エポキシ樹脂;DIC社製EPICLON N-740等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。半固形状エポキシ樹脂を含む場合には、硬化物のガラス転移温度(Tg)が高く、線熱膨張係数(CTE)が低く、クラック耐性に優れる熱硬化性樹脂組成物を得ることができる。また、半固形エポキシ樹脂を含むことにより、積層体の保存安定性に優れ、割れや剥がれを防止することができる。
液状エポキシ樹脂としては、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製YD-8125、YD-825GS等のビスフェノールA型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製YDF-8170C、YDF-870GS等のビスフェノールF型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製ZX-1059等のビスフェノール型エポキシ樹脂の混合物、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との混合物、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、tert-ブチル-カテコール型エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製ZX-1658GS等の脂環式エポキシ樹脂、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製PG-207GS等のポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、複素環式エポキシ樹脂等が挙げられる。液状エポキシ樹脂を含む場合には、積層体のしなやかさを向上させることができる。
(A)エポキシ樹脂は、固形エポキシ樹脂、半固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂の何れか、またはこれらの任意の組み合わせであってもよいが、液状エポキシ樹脂または半固形エポキシ樹脂を含む場合には、(A)エポキシ樹脂の合計質量に対する、液状エポキシ樹脂と半固形エポキシ樹脂の合計質量を5%~50%の範囲にすることが好ましい。これにより積層体の樹脂層のタックフリー性および柔軟性のバランスが良好となる。
本明細書において、固形エポキシ樹脂とは40℃で固体状であるエポキシ樹脂をいい、半固形エポキシ樹脂とは20℃で固体状であり、40℃で液状であるエポキシ樹脂をいい、液状エポキシ樹脂とは20℃で液状のエポキシ樹脂をいう。液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。例えば、特開2016-079384の段落23~25に記載の方法にて行なう。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含有してもよく、例えば、イソシアネート樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、アミノ樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、カルボジイミド樹脂、シクロカーボネート樹脂、多官能オキセタン樹脂、エピスルフィド樹脂、マレイミド樹脂などの公知慣用の熱硬化性樹脂を使用することができる。
[(B)活性エステル化合物]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の硬化剤として(B)活性エステル化合物を含む。エポキシ樹脂の硬化剤として活性エステル化合物を用いることで、上述した熱処理により樹脂が隙間等を埋めることが可能となり、本発明の効果を得ることができる。
(B)活性エステル化合物は、一分子中に1個以上、好ましくは2個以上の活性エステル基を有する化合物である。活性エステル化合物は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。また、(B)活性エステル化合物としては、ナフタレンジオールアルキル/安息香酸型でもよい。(B)活性エステル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)活性エステル化合物としては、ベンゼン、α-ナフトール、β-ナフトールおよびジシクロペンタジエン骨格のいずれかを有するものが好ましい。
(B)活性エステル化合物の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中の固形分を100質量%とした場合、硬化物層の強度の観点から、上限が40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが特に好ましい。また、より低誘電正接の硬化物層が得られることから、下限が3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、(A)エポキシ樹脂におけるエポキシ基の総量の、(B)活性エステル化合物における活性エステル基の総量に対する比が0.2~2.0であることが好ましく、0.5~1.5であることがより好ましい。
(B)活性エステル化合物は、通常、有機溶媒溶液として得られる為、積層板用ワニスやビルドアップ用積層体として用いる場合には、そのままで他の配合成分と混合し、更に、適宜、有機溶媒量を調節して、目的とする熱硬化性樹脂組成物を製造することができる。
(B)活性エステル化合物は、以下の(B1)または(B2)の活性エステル化合物を有することが好ましい。
[(B1)活性エステル化合物]
(B1)活性エステル化合物は(b1)脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール類が結節された分子構造を有するフェノール樹脂(以下、(b1)フェノール樹脂という)(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライド、および、(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物を反応させて得られる構造を有するものである。前記(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライド中のカルボキシル基または酸ハライド基1モルに対して、前記(b1)フェノール樹脂中のフェノール性水酸基が0.05~0.75モル、前記(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物が0.25~0.95モルとなる割合で反応させて得られる構造を有するものが好ましい。
ここで(b1)フェノール樹脂において、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール類が結節された分子構造とは、1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物とフェノール類とを重付加反応させて得られる構造が挙げられる。ここで、フェノール類としては、無置換フェノール、およびアルキル基、アルケニル基、アリル基、アリール基、アラルキル基或いはハロゲン基等で1個または複数個置換した置換フェノール類が挙げられる。置換フェノールの具体的としては、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等が例示されるが、これらに限定されるものではない。またこれらの混合物を用いても構わない。これらの中でも流動性および硬化性が優れる活性エステル化合物が得られる点から無置換フェノールが特に好ましい。
また、不飽和脂環族環状炭化水素化合物としては、具体的には、ジシクロペンタジエン、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニルノルボナ-2-エン、α-ピネン、β-ピネン、リモネン等が挙げられる。これらの中でも特性バランス、特に耐熱性、吸湿性に優れる活性エステル化合物が得られる点からジシクロペンタジエンが好ましい。またジシクロペンタジエンは石油留分中に含まれることから、工業用ジシクロペンタジエンには他の脂肪族或いは芳香族性ジエン類等が不純物として含有されることがあるが、耐熱性、硬化性、成形性等を考慮すると、ジシクロペンタジエンの純度90質量%以上の製品であることが望ましい。
次に、前記(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライドは、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-、2,3-、あるいは2,6-ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、およびこれらの酸フッ化物、酸塩化物、酸臭化物、酸ヨウ化物等の酸ハロゲン化物が挙げられる。これらのなかでも特に反応性が良好である点から芳香族ジカルボン酸の酸塩化物であること、なかでもイソフタル酸のジクロライド、テレフタル酸のジクロライドが好ましく、特にイソフタル酸のジクロライドが好ましい。
次に、(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物としては、例えば、フェノール;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3,5-キシレノール等のアルキルフェノール類;o-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、2-ベンジルフェノール、4-ベンジルフェノール、4-(α-クミル)フェノール等のアラルキルフェノール類;α-ナフトール、β-ナフトール等のナフトール類が挙げられる。これらのなかでも、特に硬化物層の誘電正接が低くなる点からα-ナフトール、β-ナフトールが好ましい。
(B1)活性エステル化合物は、(b1)フェノール樹脂、(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライド、および、(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物を反応させて得られる構造を有するものであるが、特に、下記一般式(1)
Figure 2023093341000005
(式中、Xはベンゼン環またはナフタレン環を有する基であり、kは0または1を表し、nは繰り返し単位の平均値で0.05~2.5である。)で表される構造のものがとりわけ硬化物層の誘電正接が低く、かつ、有機溶剤に溶解させた際の溶液粘度が低くなる点から好ましい。前記ベンゼン環またはナフタレン環を有する基は、特に限定されず、フェニル基、ナフチル基等でもよく、また、他の原子を介してベンゼン環またはナフタレン環が分子末端に結合していてもよく、置換基を有していてもよい。また、(B1)活性エステル化合物は、その分子末端にナフタレン環を有するものであることが好ましい。
特に、上記一般式(1)においてnの値、即ち、繰り返し単位の平均値が0.25~1.5の範囲にあるものが、溶液粘度が低くビルドアップ用積層体への製造が容易となる点から好ましい。また、上記一般式(1)中、kの値は0であることが、高耐熱性と低誘電正接の観点から好ましい。
ここで上記一般式(1)中のnは以下の様にして求めることができる。
[一般式(1)中のnの求め方]
下記の条件にて行ったGPC測定によりn=1、n=2、n=3、n=4のそれぞれに対応するポリスチレン換算分子量の実測値(α1、α2、α3、α4)と、n=1、n=2、n=3、n=4のそれぞれの理論分子量(β1、β2、β3、β4)との比率(β1/α1、β2/α2、β3/α3、β4/α4)を求め、これら(β1/α1~β4/α4)の平均値を求める。GPCで求めた数平均分子量(Mn)にこの平均値を掛け合わせた数値を平均分子量とする。次いで、前記一般式(1)の理論分子量を前記平均分子量としてnの値を算出する。
(GPC測定条件)
測定装置:東ソー社製「HLC-8220 GPC」、
カラム:東ソー社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー社製「A-500」
東ソー社製「A-1000」
東ソー社製「A-2500」
東ソー社製「A-5000」
東ソー社製「F-1」
東ソー社製「F-2」
東ソー社製「F-4」
東ソー社製「F-10」
東ソー社製「F-20」
東ソー社製「F-40」
東ソー社製「F-80」
東ソー社製「F-128」
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
(b1)フェノール樹脂、(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライド、および、(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物を反応させる方法は、具体的には、これらの各成分をアルカリ触媒の存在下に反応させることができる。
ここで使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
前記反応は、具体的には有機溶媒の存在下、(b1)フェノール樹脂、(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライド、および、(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物を混合し、前記アルカリ触媒またはその水溶液を連続的乃至断続的に滴下しながら反応させる方法が挙げられる。その際、アルカリ触媒の水溶液の濃度は、3.0~30%の範囲であることが好ましい。また、ここで使用し得る有機溶媒としては、トルエン、ジクロロメタンなどが挙げられる。
反応終了後は、アルカリ触媒の水溶液を用いている場合には、反応液を静置分液し、水層を取り除き、残った有機層を洗浄後の水層がほぼ中性になるまで繰り返し、目的とする樹脂を得ることができる。
(B1)活性エステル化合物は、有機溶媒に溶解させて樹脂溶液とした際の溶融粘度が低いことを特徴としており、具体的には、固形分65%のトルエン溶液の活性エステル化合物にした場合の溶液粘度が300~10,000mPa・s(25℃)となる。
[(B2)活性エステル化合物]
(B2)活性エステル化合物は、下記一般式(2):
Figure 2023093341000006
で表される構造部位を有し且つその両末端が一価のアリールオキシ基である構造を有するものであると好ましい。
(式(2)中、Xはそれぞれ独立的に下記式(3):
Figure 2023093341000007
で表される基または下記式(4):
Figure 2023093341000008
で表される基であり、mは1~6の整数であり、nはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、qはそれぞれ独立的に0~6の整数であり、式(3)中、kはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、式(4)中、Yは上記式(3)で表される基(kはそれぞれ独立的に1~5の整数)であり、tはそれぞれ独立的に0~5の整数である)
(B2)活性エステル化合物は、前記一般式(2)中の
Figure 2023093341000009
で表される部分構造が、水酸基当量が170~200グラム/当量の変性ナフタレン化合物の由来構造であることが好ましい。
式(2)中、mとnの関係を明確にするために、以下、いくつかのパターンを例示するが(B2)活性エステル化合物はこれらに限定されるものではない。
たとえば、m=1のとき、式(2)は下記式(2-I)の構造を表す。
Figure 2023093341000010
式(2-I)中、nは1~5の整数であり、nが2以上の場合にはqはそれぞれ独立的に0~6の整数である。
また、たとえば、m=2のとき、式(2)は下記式(2-II)の構造を表す。
Figure 2023093341000011
式(2-II)中、nはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、nが2以上の場合には、qはそれぞれ独立的に0~6の整数である。
(B2)活性エステル化合物は、分子主骨格にナフチレンエーテル構造部位を有することから、硬化物層により優れた耐熱性および難燃性を付与できると共に、該構造部位が下記式(5)で表される構造部位で結合した構造を有することから、硬化物層により優れた誘電特性を兼備させることができる。また、(B2)活性エステル化合物の構造中、両末端の構造としてアリールオキシ基を有するものとしたことで、多層プリント基板用途においても十分高度な硬化物層の耐熱分解性の向上が得られる。
Figure 2023093341000012
(B2)活性エステル化合物は、特に、硬化物層の耐熱性に優れる点から、その軟化点が100~200℃の範囲、特に100~190℃の範囲にあるものが好ましい。
(B2)活性エステル化合物において、式(2)中のmは1~6の整数であるものが挙げられる。なかでも、mが1~5の整数であるものが好ましい。また、式(2)中のnはそれぞれ独立的に1~5の整数であるものが挙げられる。なかでも、nが1~3の整数であるものが好ましい。
式(2)中、mとnの関係を念のため記載するに、例えば、mが2以上の整数である場合、2以上のnが生じるが、その際、nはそれぞれ独立的な値である。すなわち、前記nの数値範囲内であるかぎり、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
(B2)活性エステル化合物において、式(2)中、qが1以上の場合、Xはナフタレン環構造中のいずれの位置に置換していてもよい。
前記構造の両末端のアリールオキシ基は、フェノール、クレゾール、p-t-ブチルフェノール(パラ-ターシャリーブチルフェノール)、1-ナフトール、2-ナフトールなどの一価フェノール系化合物由来のものが挙げられる。なかでも、硬化物層の耐熱分解性の観点から、フェノキシ基、トリルオキシ基または1-ナフチルオキシ基が好ましく、1-ナフチルオキシ基がさらに好ましい。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(B)活性エステル化合物以外の硬化剤を含有してもよく、例えば、フェノール性水酸基を有する化合物、ポリカルボン酸およびその酸無水物、シアネートエステル基を有する化合物、マレイミド基を有する化合物、脂環式オレフィン重合体等が挙げられる。
[(C)無機充填剤]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(C)無機充填剤を含む。(C)無機充填剤を含むことによって、熱硬化性樹脂組成物の硬化収縮を抑制し、硬化物層がより低CTEとなり、密着性、硬度にも優れ、硬化物層と導体層との熱強度を合わせることによりクラック耐性等の熱特性を向上させることができる。(C)無機充填剤としては従来公知の無機充填剤が使用でき、特定のものに限定されないが、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカなどのシリカ、タルク、クレー、ノイブルグ珪土粒子、ベーマイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコン酸カルシウム等の体質顔料や、銅、錫、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、アルミニウム、鉄、コバルト、金、白金等の金属粉体が挙げられる。(C)無機充填剤は球状粒子であることが好ましい。中でもシリカが好ましく、熱硬化性樹脂組成物の硬化収縮を抑制し、より低CTEとなり、また、密着性、硬度などの特性を向上させることができる。(C)無機充填剤の平均粒子径(メディアン径、D50体積%)は、0.01~10μmであることが好ましい。(C)無機充填剤としては、平均粒子径が0.01~3μmのシリカであることが好ましい。なお、本明細書において、(C)無機充填剤の平均粒子径は、一次粒子の粒径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒径も含めた累積50体積%粒子径である。平均粒子径は、その平均粒子径に応じてレーザー回折式粒子径分布測定装置や動的光散乱法による測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製マイクロトラックMT3000II、動的光散乱法による測定装置としてはマイクロトラック・ベル社製Nanotrac Wave II UT151が挙げられる。例えば、平均粒子径が1μm以上である場合にはマイクロトラックMT3000IIを用い、平均粒径が1μm未満である場合にはNanotrac Wave II UT151を用いる。
(C)無機充填剤は、表面処理された無機充填剤であることが好ましい。表面処理としては、カップリング剤による表面処理や、アルミナ処理等の有機基を導入しない表面処理がされていてもよい。(C)無機充填剤の表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよく、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有するカップリング剤等で(C)無機充填剤の表面を処理すればよい。
(C)無機充填剤の表面処理は、カップリング剤による表面処理であることが好ましい。カップリング剤としては、シラン系、チタネート系、アルミネート系およびジルコアルミネート系等のカップリング剤が使用できる。中でもシラン系カップリング剤が好ましい。かかるシラン系カップリング剤の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N-(2-アミノメチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アニリノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができ、これらは単独で、あるいは併用して使用することができる。これらのシラン系カップリング剤は、予め無機充填剤の表面に吸着あるいは反応により固定化されていることが好ましい。ここで、無機充填剤100質量部に対するカップリング剤の処理量は、例えば、0.1~10質量部である。
硬化性反応基としては熱硬化性反応基が好ましい。熱硬化性反応基としては、水酸基、カルボキシル基、イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、エポキシ基、オキセタニル基、メルカプト基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、オキサゾリン基等が挙げられる。中でも、アミノ基およびエポキシ基のいずれか少なくとも1種が好ましい。なお、表面処理された無機充填剤は、熱硬化性反応基に加え、光硬化性反応基を有していてもよい。
なお、表面処理がされた無機充填剤は、表面処理された状態で熱硬化性樹脂組成物に含有されていればよく、熱硬化性樹脂組成物に無機充填剤と表面処理剤とを別々に配合して熱硬化性樹脂組成物中で無機充填剤が表面処理されてもよいが、予め表面処理した無機充填剤を配合することが好ましい。予め表面処理した無機充填剤を配合することによって、別々に配合した場合に表面処理で消費されなかった表面処理剤が残存することによるクラック耐性等の低下を防ぐことができる。予め表面処理する場合は、溶剤や硬化性樹脂に無機充填剤を予備分散した予備分散液を配合することが好ましく、表面処理した無機充填剤を溶剤に予備分散し、該予備分散液を熱硬化性樹脂組成物に配合するか、表面未処理の無機充填剤を溶剤に予備分散する際に十分に表面処理した後、該予備分散液を熱硬化性樹脂組成物に配合することがより好ましい。
(C)無機充填剤は、粉体または固体状態でエポキシ樹脂等と配合してもよく、溶剤や分散剤と混合してスラリーとした後でエポキシ樹脂等と配合してもよい。
(C)無機充填剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合物として用いてもよい。(C)無機充填剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中の固形分を100質量%とした場合、低CTE化の観点から、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がさらに好ましい。また、硬化物の靭性の観点から、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましい。
なお、本明細書において、熱硬化性樹脂組成物中の固形分とは有機溶剤を除く成分を意味する。
[熱可塑性樹脂]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、得られる硬化物の機械的強度を向上させるために、さらに熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂は、溶剤に可溶であることが好ましい。溶剤に可溶である場合、積層体とした場合に柔軟性が向上し、クラックの発生や粉落ちを抑制できる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、エピクロルヒドリンと各種2官能フェノール化合物の縮合物であるフェノキシ樹脂或いはその骨格に存在するヒドロキシエーテル部の水酸基を各種酸無水物や酸クロリドを使用してエステル化したフェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これら熱可塑性樹脂の中でも、誘電正接を低く維持したまま、ガラス転移温度を向上させることができるので、フェノキシ樹脂が好ましい。
ポリビニルアセタール樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂をアルデヒドでアセタール化することで得られる。前記アルデヒドとしては、特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β-フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられ、ブチルアルデヒドが好ましい。
フェノキシ樹脂の具体例としては、東都化成社製のFX280S、FX293、三菱ケミカル社製のjER(登録商標)YX8100BH30、jER(登録商標)YX6954BH30、YL6954、YL6974、jER(登録商標)YX7200B35等が挙げられる。また、ポリビニルアセタール樹脂の具体例としては、積水化学工業社製のエスレックKSシリーズ、ポリアミド樹脂としては、日立化成社製のKS5000シリーズ、日本化薬社製のBPシリーズ、さらに、ポリアミドイミド樹脂としては、日立化成社製のKS9000シリーズ等が挙げられる。熱可塑性樹脂の配合量は、熱硬化性樹脂組成物中の(A)エポキシ樹脂、および(B)活性エステル化合物の合計を100質量%とした場合、得られる硬化物の機械的強度の観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。また、硬化物の誘電特性の観点から、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましい。
[硬化促進剤]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。本発明において、硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂、および(B)活性エステル化合物の反応を主に促進させるために使用可能である。
(A)エポキシ樹脂と(B)活性エステル化合物との硬化反応の硬化促進剤の具体例としては、イミダゾールおよびその誘導体;アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類;ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類;これらの有機酸塩および/またはエポキシアダクト;三フッ化ホウ素のアミン錯体;エチルジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-S-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-キシリル-S-トリアジン等のトリアジン誘導体類;トリメチルアミン、トリエタノールアミン、N,N-ジメチルオクチルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、ピリジン、ジメチルアミノピリジン、N-メチルモルホリン、ヘキサ(N-メチル)メラミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m-アミノフェノール等のアミン類;ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類;トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス-2-シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類;トリ-n-ブチル(2,5-ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類;ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;前記多塩基酸無水物;ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボロエート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6-トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート等の光カチオン重合触媒;スチレン-無水マレイン酸樹脂;フェニルイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物や、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートとジメチルアミンの等モル反応物、金属触媒等の従来公知の硬化促進剤が挙げられる。硬化促進剤の中でも、イミダゾールおよびその誘導体、ジメチルアミノピリジンが好ましい。
硬化促進剤は、1種を単独または2種以上混合して用いることができる。硬化促進剤が本発明の熱硬化性樹脂組成物に配合される場合、その配合量は、(A)エポキシ樹脂および(B)活性エステル化合物の合計量を100質量%とした場合、熱硬化反応前の熱硬化性樹脂組成物の保存安定性の観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。また、硬化性の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。
[その他の成分]
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、ゴム状粒子、シリコンパウダー、フッ素パウダー、ナイロンパウダー等の有機フィラー、リン系化合物や水酸化アルミニウム等の難燃剤、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の従来公知の着色剤、アスベスト、オルベン、ベントン、微紛シリカ等の従来公知の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、チタネート系、アルミニウム系の従来公知の添加剤類、公知慣用の有機溶剤等を用いることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、積層体として用いても液状として用いても良い。液状として用いる場合は、1液性でも2液性以上でもよいが、保存安定性の観点から2液性以上であることが好ましい。
以上の各成分を含む熱硬化性樹脂組成物を用い、上述の処理を含む製造方法により、本発明の硬化物層が製造される。
本発明の製造方法により得られた硬化物層は、プリント配線板の永久保護膜として用いられるが、中でもソルダーレジスト層、層間絶縁層、フレキシブルプリント配線板のカバーレイ、銅張積層板(CCL)やプリプレグとしての使用に適している。また、プリント配線板以外の用途、例えば、インダクタとしても用いることができる。
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物の硬化物層は誘電特性に優れることから、これを用いることにより高周波用途においても伝送品質が良好とされる。高周波用途の具体例としては、例えば、自動運転向けミリ波レーダーやミリ波センサー用基板、高速通信対応モバイル用マザーボードやモディファイド・セミアディティブプロセス(MSAP)法で回路を形成するSLP(Substrate-Like PCB)、モバイルおよびパソコン用アプリケーションプロセッサ(AP)、基地局用サーバーやルーター向け高多層基板、アンテナ向け基板や半導体封止材料などが挙げられる。
本発明の硬化物層を用いた回路形成材料の形態は、モディファイド・セミアディティブプロセス(MSAP)対応の樹脂付き銅箔(RCC:Resin-Coated-Copper)やセミアディティブプロセス(SAP)対応のビルドアップフィルムであってもよい。
[プリント配線板]
本発明の電子部品の一例を、プリント配線板の製造例により説明する。
本発明の硬化物層の製造方法により得られた硬化物層を用い、プリント配線板を製造することができる。
例えば、回路パターンが形成された回路基板に積層した硬化物層に対して、配線層の全部または一部としてモディファイド・セミアディティブプロセス(MSAP)法で回路を形成し、ビルドアップ配線板を製造してもよい。また、セミアディティブプロセス(SAP)法で回路を形成したビルドアップ配線板を製造してもよい。また、半導体集積回路上へ樹脂付銅箔の積層と回路形成を交互に繰りかえすダイレクト・ビルドアップ・オン・ウェハーでプリント配線板を製造してもよい。また、コア基板を用いずに、樹脂層と導体層とが交互に積層されたコアレスビルドアップ法を用いてもよい。
なお、上記処理の他、プリント配線板の製造工程において従来用いられている処理を適宜用いることも可能である。
[電子部品]
本発明において電子部品とは、電子回路に使用する部品を意味し、プリント配線板、トランジスタ、発光ダイオード、レーザーダイオード等の能動部品の他、抵抗、コンデンサ、インダクタ、コネクタ等の受動部品も含まれ、本発明の熱硬化性樹脂組成物による硬化物層を含み、本発明の効果を奏するものである。
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において特に断りのない限り、「部」、「%」は、質量部、質量%を意味するものとする。
((B)活性エステル化合物の合成)
[合成例1(一般式(1)で表される構造を有する活性エステル化合物)]
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド 203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン 1338gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、α-ナフトール96.0g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂220g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイド 1.12gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し固形分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル化合物(B-1)を得た。
得られた活性エステル化合物(B-1)の固形分換算のエステル基当量は223g/molであった。
[合成例2(一般式(2)で表される構造を有する活性エステル化合物)]
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレン 320g(2.0モル)、ベンジルアルコール 184g(1.7モル)、パラトルエンスルホン酸・1水和物 5.0gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、150℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した。反応終了後、メチルイソブチルケトン 900g、20%水酸化ナトリウム水溶液 5.4gを添加して中和した後、分液により水層を除去し、水280gで3回水洗を行い、メチルイソブチルケトンを減圧下除去してベンジル変性ナフタレン化合物(B-2中間体)を460g得た。得られたベンジル変性ナフタレン化合物(B-2中間体)は黒色固体であり、水酸基当量は180グラム/当量であった。
次いで、温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けた別のフラスコに、イソフタル酸クロリド 203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン 1400gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、α-ナフトール 96.0g(0.67モル)、ベンジル変性ナフタレン化合物(B-2中間体) 240g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイド 0.70gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液 400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン層に水を投入して15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し固形分62質量%のトルエン溶液状態にある活性エステル化合物(B-2)を得た。得られた活性エステル化合物(B-2)の固形分換算のエステル基当量は230g/molであった。
[実施例1~8および比較例1~5]
<熱硬化性樹脂組成物の調製>
下記表1の実施例、比較例に記載の成分を配合し十分に撹拌を行った。その後、3本ロールミルにて混練し、熱硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表中の数値は質量部(ワニス換算)を示す。
<積層体の作成>
上記の熱硬化性樹脂組成物に溶剤としてシクロヘキサノンを添加して、粘度0.5~20dPa・s(回転粘度計5rpm、25℃)とした。粘度調整した熱硬化性樹脂組成物をそれぞれバーコーターを用いて第一フィルム(PETフィルム;東洋紡社製TN200、厚さ38μm)に乾燥後膜厚が40μmとなるように塗布した。これを熱風循環式乾燥炉にて100℃で5~10分間乾燥させることにより膜厚40μmの樹脂層を第一フィルム上に備える積層体を得た。(樹脂層の残留溶剤:0.5~2.5質量%)。
<評価用基板Aの作製>
銅厚15μmで回路が形成されている板厚0.4mmの両面プリント配線板に対し、メック社製メックエッチボンドCZ-8100を使用して、1.0μm相当の化学研磨処理を行った。
2チャンバー式真空ラミネーターCVP-600(ニッコー・マテリアルズ社製)を用い、上記の前処理後の回路基板に対し、上述の積層体を樹脂層と回路基板が対向するように、温度80~110℃、圧力0.5MPaの真空ラミネーターにより張り合わせた。次いで温度80~110℃、圧力0.5MPaにて大気圧下で熱プレスし、未硬化の積層基板aを作成した。その後、未硬化の積層体aを熱風循環式乾燥炉にて100℃にて30分、更に180℃にて30分間加熱することにより、樹脂層を硬化させた。その後、第一フィルムを剥離し、これを基板Aとした。
<ハローイングの評価>
1.ハローイング評価基板Bの作成
上記のように作製した基板Aに対して、COレーザー加工機(ビアメカニクス社製)を用いて出力2.2W、設定開口径65μm、ショット数2の条件でビア形成を行うことにより、積層基板bを作成した。
図1には、回路基板10と、その上に設けられた熱硬化性樹脂組成物の硬化物層20とを有し、硬化物層20には上記のビア形成により、トップ径(ビアの硬化物層の上端部に対応する面の直径)20aが約65μm、ボトム径(ビアの硬化物層の下端部に対応する面の直径)20bが約50μmの開口が形成された積層基板bが示されている。
さらに上記の積層基板bを、それぞれ下記の条件のデスミア処理および熱処理に付し、本発明のハローイング評価基板Bとした。
<デスミア処理>
上記の積層基板bに対して、スウェリング ディップ セキュリガントP(アトテック社製、500ml/l)および48%水酸化ナトリウム(4.1ml/l)の混合液からなる膨潤液に60℃で5分浸漬した。次に、コンセントレート コンパクトCP(アトテック社製、600ml/l)および48%水酸化ナトリウム(55.3ml/l)の混合液からなる粗化液に80℃で20分浸漬し、最後に、リダクション セキュリガントP500(アトテック社製、100ml/l)および96%硫酸(35.7ml/l)からなる中和液に40℃で5分間浸漬してデスミア処理を行った。
<熱処理>
実施例1~8、比較例3~5については、上記デスミア処理後に、熱風循環式乾燥を用いて、表1に記載の温度、時間条件で熱処理を行ったものをハローイング評価基板Bとした。なお、比較例1および2のハローイング評価基板Bは、デスミア処理後に、熱処理を行わないものとした。
2.ハローイング評価
本発明および比較例のハローイング評価基板Bを、それぞれIM4000PLUS (日立ハイテク社製)を用いて、イオンミリング法により図1のようにハローイング部分が観察可能となるように、基板に対して垂直な断面を切り出し、SEMを用いて断面観察しハローイング量(図1のHに対応)を10か所で測定し、その平均値を用いて以下の基準で評価した。
◎:ハローイング量が3μm未満
〇:ハローイング量が3μm以上、7μm未満
×:ハローイング量が7μm以上
結果を表1に示す。
<無電解めっき潜り込みの評価>
1.無電解めっき潜り込みの評価基板の作成
上記のように作製した実施例1~8、比較例1~5のハローイング評価基板Bに対して、MCD-PL(上村工業株式会社製、50ml/l)に40℃で5分浸漬し(クリナーコンディショナー工程)、次にMDP-2(上村工業株式会社製、8ml/l)および96%硫酸(0.81ml/l)の混合液に25℃で2分浸漬し(プレディップ工程)、次にMAT-SP(上村工業株式会社製、50ml/l)および1規定水酸化ナトリウム(40ml/l)の混合液に40℃で5分浸漬し(触媒付与工程)、次にMRD-2-C(上村工業株式会社製、10ml/l)、MAB-4-C(上村工業株式会社製、50ml/l)およびMAB-4-A(上村工業株式会社製、10ml/l)の混合液に35℃で3分浸漬し(還元工程)、MEL-3-A(上村工業株式会社製、50ml/l)に25℃で1分浸漬し(アクセレーター工程)、最後にPEA-6-A(上村工業株式会社製、100ml/l)、PEA-6-B(上村工業株式会社製、50ml/l)、PEA-6-C(上村工業株式会社製、14ml/l)、PEA-6-D(上村工業株式会社製、12ml/l)、PEA-6-E(上村工業株式会社製、50ml/l)および37%ホルムアルデヒド水溶液(5ml/l)の混合液に36℃で20分浸漬し(無電解銅めっき工程)、その後、熱風循環式乾燥機にて150℃で30分乾燥して無電解銅めっき処理を行た。
これらを、各実施例および比較例の無電解めっき潜り込み評価基板とした。
2.無電解めっき潜り込みの評価
無電解めっき潜り込み評価基板を、それぞれIM4000PLUS (日立ハイテク社製)を用いてイオンミリング法により無電解めっき潜り込み部分が観察可能となるように基板に対して垂直に断面を切り出し、SEMを用いて断面観察し樹脂表面からの無電解銅めっきの潜り込み深さを測定した。10か所の潜り込み深さを測定し、その平均値を用いて以下の基準で評価した。
◎:潜り込み深さが2μm未満
〇:潜り込み深さが2μm以上、4μm未満
×:潜り込み深さが4μm以上
結果を表1に示す。
<ピール強度の評価>
1.ピール強度評価基板の作成
上記のように作製した実施例1~8、比較例1~5の無電解めっき潜り込み評価基板にについて、酸洗クリーナーFR(アトテック社製、100ml/l)および96%硫酸(100ml/l)の混合液に23℃で1分浸漬した(酸洗クリーナー工程)。次に96%硫酸(100ml/l)に23℃で1分浸漬し(酸浸漬工程)、最後に硫酸銅(II)5水和物(60g/l)および96%硫酸(125ml/l)、塩化ナトリウム(70mg/l)、ベーシックレベラーカパラシドHL(アトテック製、20ml/l)、補正剤カパラシドGS(アトテック社製、0.2ml/l)の混合液に23℃で60分(電流密度1A/dm2)浸漬した(硫酸銅電気めっき工程)。その後、熱風循環式乾燥機にて150℃で60分乾燥し電解銅めっき処理を行った。
これらを、各実施例および比較例のピール強度評価基板とした。
2.ピール強度の測定
上記電解銅めっき処理後の各評価基板について、銅めっき層に幅10mm(短辺)、長さ60mm(長辺)の方形が描かれるように縦横それぞれ2本の切込みをいれた。切り込みにより方形状に画定された銅めっき層の短辺一端を剥がすと共につかみ具にて剥離箇所を挟み、卓上型引張試験器(島津製作所製EZ-SX)にて90度の角度で、50mm/分の速度で銅めっき層を35mmの長さを引き剥がし、ピール強度(N/cm)を測定し、以下の基準で評価を行った。
◎ 4N/cm以上
〇:3N/cm以上、4N/cm未満
×:3N/cm未満
Figure 2023093341000013
表中の成分の詳細は以下のとおりである。また、表中の配合量の記載は有機溶媒込みのワニス換算の質量部である。
ZX-1059:ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂との混合物(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製)
NC-3000-H: ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(日本化薬社製)
活性エステル化合物(B-1):合成例1により合成 固形分濃度65質量%
活性エステル化合物(B-2):合成例2により合成 固形分濃度62質量%
TD-2090(フェノールノボラック、水酸基当量:105、DIC社製)
SO-C2: フェニルアミノシラン処理した球状シリカ(平均粒径:0.5μm、単位質量あたりのカーボン量0.18)(アドマテックス社製)
jER YX6954 BH30: フェノキシ樹脂 固形分濃度30質量% (三菱ケミカル社製)
実施例の熱硬化性樹脂組成物の硬化物においては、無電解めっき潜り込み、ハローイングの発生が良好に抑制されていること、およびピール強度も良好であることがわかる。
以上、本発明者等によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
10 回路基板
20 硬化物層
20a 硬化物層のトップ径
20b 硬化物層のボトム径
H ハローイング量

Claims (7)

  1. 熱硬化性樹脂組成物の硬化物から構成された硬化物層の表面をデスミア処理するデスミア工程(工程i)、および
    前記デスミア工程後の硬化物層を110℃以上で10分以上熱処理する熱処理工程(工程ii)を含み、
    前記熱硬化性樹脂組成物が、
    (A)エポキシ樹脂と、
    (B)活性エステル化合物と、
    (C)無機充填剤と、
    を含むことを特徴とする、硬化物層の製造方法。
  2. さらに、前記熱処理工程(工程ii)後の硬化物層にめっきを施すめっき工程(工程iii)を含む、請求項1に記載の硬化物層の製造方法。
  3. 前記熱処理工(工程ii)程を130℃以上で行う請求項1に記載の硬化物層の製造方法。
  4. 前記熱処理工程(工程ii)を20分以上行う請求項1に記載の硬化物層の製造方法。
  5. 前記(B)活性エステル化合物が一般式(1)または(2)で表される構造を有する請求項1に記載の硬化物層の製造方法。
    Figure 2023093341000014
    (式中、X1はそれぞれ独立的にベンゼン環またはナフタレン環を有する基であり、kは0または1を表し、nは繰り返し単位の平均で0.05~2.5である。)
    Figure 2023093341000015
    (式(2)中、X2はそれぞれ独立的に下記式(3):
    Figure 2023093341000016
    で表される基または下記式(4):
    Figure 2023093341000017
    で表される基であり、
    mは1~6の整数であり、nはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、qはそれぞれ独立的に1~6の整数であり、
    式(3)中、kはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、
    式(4)中、Yは上記式(3)で表される基(kはそれぞれ独立的に1~5の整数)で
    あり、tはそれぞれ独立的に0~5の整数である)
  6. 請求項1に記載の硬化物層の製造方法を用いたプリント配線板の製造方法。
  7. 請求項1~6のいずれか1項に記載の硬化物層の製造方法を用いた電子部品の製造方法。
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