JP7333736B2 - 硬化性樹脂組成物、ドライフィルム、樹脂付き銅箔、硬化物、及び電子部品 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1は、エポキシ樹脂と、硬化剤としての活性エステル基を有する化合物及びトリアジン含有フェノール樹脂と、マレイミド化合物と、フェノキシ化合物と、を含むエポキシ樹脂組成物を開示する。特許文献1のエポキシ樹脂組成物によれば、得られた硬化物はめっき導体に対する高い密着力を示し、線膨張率が低い絶縁層を達成し得ることが開示されている。
しかし、従来の硬化性樹脂組成物により各特性の何れか一つを向上させることは比較的容易だが、全ての特性をまんべんなく向上させることは困難である。例えば、エポキシ樹脂は硬化物の強度やめっき導体に対する高い密着性に寄与する成分であるが、エポキシ樹脂の配合量によっては硬化物の誘電正接を増加させてしまったり、めっき導体に対する密着性が低下するなど、それらの特性を同時に満足させることが困難になることが発明者らの検討によりわかってきている。
前記課題を鑑みた本発明の目的は、高い耐熱性、低誘電正接、及び導体に対する高い密着性を備えた硬化物が得られる熱硬化性樹脂組成物、該組成物から得られる樹脂層を有するドライフィルム、樹脂付き銅箔、硬化物、及び電子部品を提供することにある。
(A)エポキシ樹脂と、
(B)活性エステル基を有する化合物と、
(C)フェノキシ樹脂と、
(D)無機フィラーと、
を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(C)フェノキシ樹脂の第二級水酸基当量が300g/eq.以上であり、かつ
前記(A)エポキシ樹脂におけるエポキシ基の総量の、前記(B)活性エステル基を有する化合物におけるエステル基の総量に対する比が0.2~0.6であることを特徴とする硬化性樹脂組成物により達成されることが見出された。
本発明の硬化性樹脂組成物で用いられる(B)活性エステル基を有する化合物は、下記一般式(1)
下記一般式(2):
mは1~6の整数であり、nはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、qはそれぞれ独立的に1~6の整数であり、
式(3)中、kはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、
式(4)中、Yは上記式(3)で表される基(kはそれぞれ独立的に1~5の整数)であり、tはそれぞれ独立的に0~5の整数である)
で表される構造部位を有し、その両末端が一価のアリールオキシ基である構造を有する活性エステル樹脂であることが好ましい。
さらに、本発明の目的は、上記硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とするドライフィルム、
銅箔またはキャリア付き銅箔上に、上記の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする樹脂付き銅箔、
上記硬化性樹脂組成物、ドライフィルムの樹脂層、又は樹脂付き銅箔の樹脂層の硬化物、および
上記の硬化物を有することを特徴とする電子部品によっても、それぞれ達成される。
本発明の硬化性樹脂組成物は、
(A)エポキシ樹脂(A成分ともいう)と、
(B)活性エステル基を有する化合物(B成分ともいう)と、
(C)フェノキシ樹脂(C成分ともいう)と、
(D)無機フィラーと、
を含有し、
(C)フェノキシ樹脂の第二級水酸基当量が300g/eq.以上であり、かつ
前記(A)エポキシ樹脂におけるエポキシ基の総量の、前記(B)活性エステル基を有する化合物におけるエステル基の総量に対する比を0.2~0.6とするものである。
一般に、活性エステル基を有する化合物は、フェノール系硬化剤よりも導体に対する密着性が低いことが知られているため、上記比率のようにエポキシ基よりも活性エステル基の方が多い硬化性樹脂組成物においては、導体に対する密着性が悪くなると考えられていた。しかしながら、本発明においては、活性エステル基の方が多い上記比率の硬化性樹脂組成物においても、導体に対する高い密着性、高い耐熱性、及び低誘電正接を全て兼ね備えた硬化物を得ることができる。
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂を含む。(A)エポキシ樹脂は、エポキシ基を有する樹脂であり、従来公知のものをいずれも使用することができる。好ましくは、分子中にエポキシ基を2個有する2官能性エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を3個以上有する多官能エポキシ樹脂等が挙げられる。なお、水素添加された2官能エポキシ樹脂であってもよい。また、(A)エポキシ樹脂は、固形エポキシ樹脂、半固形エポキシ樹脂、液状エポキシ樹脂のいずれか一種または2種以上であってもよい。(A)エポキシ樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。本明細書において、固形エポキシ樹脂とは40℃で固体状であるエポキシ樹脂をいい、半固形エポキシ樹脂とは20℃で固体状であり、40℃で液状であるエポキシ樹脂をいい、液状エポキシ樹脂とは20℃で液状のエポキシ樹脂をいう。液状の判定は、危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)の別紙第2の「液状の確認方法」に準じて行う。例えば、特開2016-079384の段落23~25に記載の方法にて行なう。
液状エポキシ樹脂の市販品の例としては、三官能以上の液状エポキシ樹脂、例えば日産化学社製TEPIC-VL;三菱ケミカル社製jER(登録商標)630およびJER(登録商標)630LSD、またはADEKA社製EP-3950SおよびEP-3950SL;2官能グリシジルアミン、例えばN,N-ビス(オキシラニルメチル)-2-(メチルアニリン)(ADEKA社製 EP-3980S)、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、例えばDIC社製EPICLON(登録商標)EXA-835LVなどを用いることができる。
本発明においては、(A)エポキシ樹脂が液状エポキシ樹脂および半固形エポキシ樹脂の少なくともいずれかを含むことが好ましい。液状エポキシ樹脂や半固形エポキシ樹脂を含むことにより、誘電正接を低く維持したまま、ガラス転移温度を向上させることができる。
また、ドライフィルムや樹脂付き銅箔の作製の際に柔軟性とタック性の調整の点で液状または半固形のエポキシ樹脂を用いること、特に液状または半固形のグリシジルアミン型のエポキシ樹脂を用いることも適している。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂の硬化剤として(B)活性エステル基を有する化合物を含む。
(B)活性エステル基を有する化合物は、一分子中に1個以上、好ましくは2個以上の活性エステル基を有する化合物である。活性エステル基を有する化合物は、一般に、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物との縮合反応によって得ることができる。中でも、ヒドロキシ化合物としてフェノール化合物またはナフトール化合物を用いて得られる活性エステル基を有する化合物が好ましい。フェノール化合物またはナフトール化合物としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエニルジフェノール、フェノールノボラック等が挙げられる。また、(B)活性エステル基を有する化合物としては、ナフタレンジオールアルキル/安息香酸型でもよい。(B)活性エステル基を有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。(B)活性エステル基を有する化合物としては、ベンゼン、α-ナフトール、β-ナフトールおよびジシクロペンタジエン骨格のいずれかを有するものが好ましい。
(B1)活性エステル基を有する化合物は、(b1)脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール類が結節された分子構造を有するフェノール樹脂、(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライド、および、(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物を反応させて得られる構造を有するものである。前記(b2)芳香族ジカルボン酸またはそのハライド中のカルボキシル基または酸ハライド基1モルに対して、前記(b1)フェノール樹脂中のフェノール性水酸基が0.05~0.75モル、前記(b3)芳香族モノヒドロキシ化合物が0.25~0.95モルとなる割合で反応させて得られる構造を有するものが好ましい。
で表される構造のものがとりわけ硬化物の誘電正接が低く、かつ、有機溶剤に溶解させた際の溶液粘度が低くなる点から好ましい。前記ベンゼン環またはナフタレン環を有する基は、特に限定されず、フェニル基、ナフチル基等でもよく、また、他の原子を介してベンゼン環またはナフタレン環が分子末端に結合していてもよく、置換基を有していてもよい。また、(B1)活性エステル基を有する化合物は、その分子末端にナフタレン環を有するものであることが好ましい。
[一般式(1)中のnの求め方]
下記の条件にて行ったGPC測定によりn=1、n=2、n=3、n=4のそれぞれに対応するスチレン換算分子量(α1、α2、α3、α4)と、n=1、n=2、n=3、n=4のそれぞれの理論分子量(β1、β2、β3、β4)との比率(β1/α1、β2/α2、β3/α3、β4/α4)を求め、これら(β1/α1~β4/α4)の平均値を求める。GPCで求めた数平均分子量(Mn)にこの平均値を掛け合わせた数値を平均分子量とする。次いで、前記一般式(1)の分子量を前記平均分子量としてnの値を算出する。
測定装置:東ソー社製「HLC-8220 GPC」、
カラム:東ソー社製ガードカラム「HXL-L」
+東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー社製「TSK-GEL G2000HXL」
+東ソー社製「TSK-GEL G3000HXL」
+東ソー社製「TSK-GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折径)
データ処理:東ソー社製「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPC-8020モデルIIバージョン4.10」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー社製「A-500」
東ソー社製「A-1000」
東ソー社製「A-2500」
東ソー社製「A-5000」
東ソー社製「F-1」
東ソー社製「F-2」
東ソー社製「F-4」
東ソー社製「F-10」
東ソー社製「F-20」
東ソー社製「F-40」
東ソー社製「F-80」
東ソー社製「F-128」
試料:樹脂固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
ここで使用し得るアルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ピリジン等が挙げられる。これらのなかでも特に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが水溶液の状態で使用することができ、生産性が良好となる点から好ましい。
たとえば、m=1のとき、式(2)は下記式(2-I)の構造を表す。
式(2)中、mとnの関係を念のため記載するに、例えば、mが2以上の整数である場合、2以上のnが生じるが、その際、nはそれぞれ独立的な値である。すなわち、前記nの数値範囲内であるかぎり、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
(B2)の活性エステル基を有する化合物の製造方法は、ジヒドロキシナフタレン化合物とベンジルアルコールとを、酸触媒の存在下に反応させてベンジル変性ナフタレン化合物を得る工程(以下、この工程を「工程1」と略記する場合がある)、次いで、得られたベンジル変性ナフタレン化合物と芳香族ジカルボン酸塩化物と一価フェノール系化合物とを反応させる工程(以下、この工程を「工程2」と略記する場合がある)とから構成される。
本発明の硬化性樹脂組成物は、(C)第二級水酸基当量が300g/eq.以上のフェノキシ樹脂(単に(C)フェノキシ樹脂という)を含む。
(C)フェノキシ樹脂は後述の方法等により合成可能なポリヒドロキシポリエーテルであり、本発明では第二級水酸基当量が300g/eq.以上フェノキシ樹脂1種類または2種類以上を使用することができる。
Aは、下式(3a)~(3e)の何れかの架橋基であり、
Rは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、好ましくは炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基またはアルコキシ基、特に水素、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、ハロゲン元素(F,Cl,Br,I)、またはヒドロキシル基であり、
R1は互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、好ましくは炭素数1~6の直鎖状又は分岐状アルキル基またはアルコキシ基、特に水素またはメチルから選ばれる基であり、特にメチル、ハロゲン元素(F,Cl,Br,I)、またはヒドロキシル基であり、
R2は水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基であり、
R3は互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子、炭素数1~10の炭化水素基又はハロゲン元素から選ばれる基であり
R1が水素以外の原子または基を意味する場合のpは0~5の整数であり、
R3が水素以外の原子または基を意味する場合のqは0~4の整数であり、
mは平均で、1~200、好ましくは10~100である。
式(4a)、(4b)中、X、R、R3、qは上記(3a)~(3e)における定義と同じであり、
nは1~200、好ましくは10~100である。
Xは単結合、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-O-、-S-、-SO2-、-CO-、
Rは互いに同一であっても異なっていてもよく水素または-CH3、
R3は互いに同一であっても異なっていてもよく水素または-CH3、
R3が-CH3である場合のqは0~2であることが好ましい)。
このほか、ビスフェノールのフェノール性水酸基がグリシジルエーテル化した化合物、例えば、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-メチルフェニル)フルオレンなどの9,9-ビス(炭素数1~4のいずれかのアルキル-グリシジルオキシフェニル)フルオレン)と、例えば、ジヒドロキシアレーン、ビスフェノール類などのジオール成分との反応等によっても製造可能である。
ビフェノール型エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、好ましくはビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4‘-ビフェノール及び3,3’,5,5‘-テトラメチル-4,4’-ビフェノールのジグリシジルエーテルがある。ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂の例としては、特にビスフェノールアセトフェノンのジグリシジルエーテルが好ましい。
特にビスフェノールフルオレノンのジグリシジルエーテルが好ましい。
本発明の目的を損なわない限りこれ以外の分子内に芳香族環に結合した水酸基を2個持つ化合物を併用しても良い。
通常、触媒の使用量は反応固形分に対して0.001~1質量%である。
Q1は-CH2-または-C(CH3)2-、
Q2は-CH2-または-C(CH3)2-又は-O-、-S-、-SO2-、-CO-であり、
Q1とQ2は相互に異なり、
R’は互いに同一であっても異なっていてもよく水素原子またはメチルであり、
R’がメチルを意味する場合のn’は0~4である。
kは20~30の範囲である。
なお、共重合型のフェノキシ樹脂とは、式(4-1)に示されるようにフェノキシ樹脂の繰り返し単位中、複数種類、例えば2種類の異なるビスフェノール又はビフェニル骨格を有するフェノキシ樹脂を意味する。例えば式4-1のフェノキシ樹脂は、Q1とQ2は相互に異なる2価の基であることから、共重合型のビスフェノールである。
共重合タイプのフェノキシ樹脂の市販品としては、jER(登録商標)YX6954 (三菱化学社製、330g/eq)、jER(登録商標)YX8100 (三菱化学社製、311g/eq)、jER(登録商標)YX7200 (三菱化学社製、340g/eq))、YPS-007(日鉄ケミカル&マテリアル社製)を挙げることができる。
その中でもビスフェノールフルオレノン型フェノキシである上記FX-293、FX-280Sが特に好ましい。
(C)フェノキシ樹脂の第二級水酸基当量は、上述のとおり300g/eq.以上であるが、300~1000g/eq.であることが好ましい。(C)フェノキシ樹脂の分子内の水酸基の量が上記第二級水酸基当量の範囲内であることにより、上記の相反する各特性を同時に満足させることができたと考えられる。
なお、フェノキシ樹脂のうち、第二級水酸基当量が300g/eq.未満の化合物は、本発明の効果が得られる範囲であれば、硬化性樹脂組成物に含まれていてもよい。
本発明の硬化性樹脂組成物には、(D)無機フィラーが配合される。(D)無機フィラーを配合することによって、得られる硬化物の硬化収縮を抑制し、より低CTEとなり、密着性、硬度、絶縁層の周囲にある銅等の導体層と熱強度を合わせることによるクラック耐性等の熱特性を向上させることができる。(D)無機フィラーとしては従来公知の無機フィラーが使用でき、特定のものに限定されないが、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、無定形シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、球状シリカなどのシリカ、タルク、クレー、ノイブルグ珪土粒子、ベーマイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ジルコン酸カルシウム等の体質顔料や、銅、錫、亜鉛、ニッケル、銀、パラジウム、アルミニウム、鉄、コバルト、金、白金等の金属粉体が挙げられる。(D)無機フィラーは球状粒子であることが好ましい。中でもシリカが好ましく、硬化性樹脂組成物の硬化物の硬化収縮を抑制し、より低CTEとなり、また、密着性、硬度などの特性を向上させることができる。(D)無機フィラーの平均粒子径(メディアン径、D50)は、0.01~10μmであることが好ましく、無機フィラーとしては0.01~3μmのシリカであることが好ましい。なお、本明細書において、(D)無機フィラーの平均粒子径は、一次粒子の粒径だけでなく、二次粒子(凝集体)の粒径も含めた平均粒子径である。平均粒子径は、レーザー回折式粒子径分布測定装置により求めることができる。レーザー回折法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製マイクロトラックMT3000IIなどが挙げられる。
なお、本明細書において、樹脂組成物中の固形分とは有機溶剤を除く成分を意味する。
本発明の硬化性樹脂組成物には、得られる硬化膜の機械的強度を向上させるために、上記の(C)フェノキシ樹脂の他に、さらに熱可塑性樹脂を含有することができる。熱可塑性樹脂は、溶剤に可溶であることが好ましい。溶剤に可溶である場合、ドライフィルム化した場合に柔軟性が向上し、クラックの発生や粉落ちを抑制できる。熱可塑性樹脂としては、熱可塑性ポリヒドロキシポリエーテル樹脂や、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ブロック共重合体等が挙げられる。熱可塑性樹脂は1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を含有することができる。硬化促進剤は、熱硬化反応を促進させるものであり、密着性、耐薬品性、耐熱性等の特性をより一層向上させるために使用される。
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じてゴム状粒子を含有することができる。このようなゴム状粒子としては、ポリブタジエンゴム、ポリイソプロピレンゴム、ウレタン変性ポリブタジエンゴム、エポキシ変性ポリブタジエンゴム、アクリロニトリル変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基変性ポリブタジエンゴム、カルボキシル基または水酸基で変性したアクリロニトリルブタジエンゴム、およびそれらの架橋ゴム粒子、コアシェル型ゴム粒子等が挙げられ、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのゴム状粒子は、得られる硬化膜の柔軟性を向上させたり、クラック耐性が向上したり、酸化剤による表面粗化処理を可能とし、銅箔等との密着強度を向上させるために添加される。
本発明の硬化性樹脂組成物は、難燃剤を含有することができる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水和金属系、赤燐、燐酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、ホウ酸亜鉛、錫酸亜鉛、モリブデン化合物系、臭素化合物系、塩素化合物系、燐酸エステル、含燐ポリオール、含燐アミン、メラミンシアヌレート、メラミン化合物、トリアジン化合物、グアニジン化合物、シリコンポリマー等が使用できる。難燃剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などが挙げることができる。より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、2-メトキシプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の他、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラクロロエチレン、テレビン油等が挙げられる。また、丸善石油化学社製スワゾール1000、スワゾール1500、三共化学社製ソルベント#100、ソルベント#150、シェルケミカルズジャパン社製シェルゾールA100、シェルゾールA150、出光興産社製イプゾール100番、イプゾール150番等の有機溶剤を用いてもよい。有機溶剤は、1種を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、さらに必要に応じて、シリコンパウダー、フッ素パウダー、ナイロンパウダー等の有機フィラー、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラック等の従来公知の着色剤、アスベスト、オルベン、ベントン、微紛シリカ等の従来公知の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系等の消泡剤および/またはレベリング剤、チアゾール系、トリアゾール系、シランカップリング剤等の密着性付与剤、チタネート系、アルミニウム系の従来公知の添加剤類を用いることができる。
本発明のドライフィルムは、本発明の硬化性樹脂組成物をキャリアフィルム状に塗布し、乾燥して、乾燥塗膜としての樹脂層を形成することにより、製造することができる。樹脂層上には、必要に応じて、保護フィルムをラミネートすることができる。
本発明の樹脂付き銅箔は、本発明の硬化性樹脂組成物を銅箔またはキャリア付き銅箔の銅箔面に塗布、乾燥して得られる樹脂層を有する。
キャリア付き銅箔は、キャリア箔および銅箔をこの順に備えた構成であればよく、本発明の硬化性樹脂組成物からなる樹脂層は、銅箔と接するように積層されていればよい。銅箔としては極薄銅箔を用いることが好ましい。
本発明の硬化物は、本発明の硬化性樹脂組成物、本発明のドライフィルムの樹脂層、又は本発明の樹脂付き銅箔の樹脂層を硬化して得られる。
本発明の電子部品は、本発明の硬化物、すなわち、本発明の硬化性樹脂組成物、本発明のドライフィルムの樹脂層、又は本発明の樹脂付き銅箔の樹脂層の硬化物を有する。
電子部品としては、例えば、プリント配線板の永久保護膜が挙げられ、中でもソルダーレジスト層、層間絶縁層、フレキシブルプリント配線板のカバーレイが挙げられる。また、プリント配線板以外の用途、例えば、インダクタなどの受動部品も電子部品に含まれる。
[合成例1]
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコにイソフタル酸クロリド 203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン 1338gを、仕込み系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、α-ナフトール96.0g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂220g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイド 1.12gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し固形分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂(B-1)を得た。
得られた活性エステル樹脂(B-1)の固形分換算のエステル基当量は223g/molであった。
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、2,7-ジヒドロキシナフタレン 320g(2.0モル)、ベンジルアルコール 184g(1.7モル)、パラトルエンスルホン酸・1水和物 5.0gを仕込み、室温下、窒素を吹き込みながら撹拌した。その後、150℃に昇温し、生成する水を系外に留去しながら4時間攪拌した。反応終了後、メチルイソブチルケトン 900g、20%水酸化ナトリウム水溶液 5.4gを添加して中和した後、分液により水層を除去し、水280gで3回水洗を行い、メチルイソブチルケトンを減圧下除去してベンジル変性ナフタレン化合物(B-2中間体)を460g得た。得られたベンジル変性ナフタレン化合物(B-2中間体)は黒色固体であり、水酸基当量は180グラム/当量であった。
次いで、温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けた別のフラスコに、イソフタル酸クロリド 203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン 1400gを仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。次いで、α-ナフトール 96.0g(0.67モル)、ベンジル変性ナフタレン化合物(B-2中間体) 240g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換し溶解させた。その後、テトラブチルアンモニウムブロマイド 0.70gを溶解させ、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液 400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン層に水を投入して15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し固形分65質量%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂(B-2)を得た。得られた活性エステル樹脂(B-2)の固形分換算のエステル基当量は230g/molであった。
下記表1の実施例、比較例に示す種々の成分と共に表1に示す割合(質量部)にて混錬混合し、硬化後フィルム(硬化膜)作製用の硬化性樹脂組成物を調製した。なお、表中の数値は質量部(固形分換算)を示す。
前記各硬化性樹脂組成物について、以下に示すように、試験用試料を作成し、ガラス転移温度(Tg)、誘電正接、及びピール強度の評価を行った。その結果を表1に示す。
フィルムアプリケーターを用いて、硬化性樹脂組成物を実施例および比較例ごとに銅箔(古河電気工業社製F2-WS、18μm厚)の光沢面上に塗布し、熱風循環式乾燥炉にて90℃で10分間乾燥後、続けて200℃で60分間硬化させた後、銅箔を剥離し、厚み約40μmの硬化後フィルム(硬化膜)を作製した。
前記<硬化後フィルムの作製>で得られたサンプルを測定サイズ(3mm×10mmのサイズ)に切り出し、ティー・エイ・インスツルメント社製TMA Q400EMを用いて、ガラス転移温度(Tg)を測定した。10℃/minの昇温速度で室温より昇温、連続して2回測定し、2回目における線熱膨張係数の異なる2接線の交点であるガラス転移温度(Tg)を下記の基準で評価した。
◎:175℃以上
○:175℃未満~170℃以上
×:170℃未満
-:得られる硬化物が脆い為、強度不足により測定不可
前記<硬化後フィルムの作製>で得られたサンプルを測定サイズ(50mm×60mmのサイズ)に切り出し、SPDR誘電体共振器とネットワークアナライザー(ともにアジレント社製)を用い、23℃における10GHzの誘電正接の測定を行い、下記の基準で評価した。
◎:0.003未満
○:0.003以上~0.005未満
×:0.005以上
-:得られる硬化物が脆い為、強度不足により測定不可
(1)積層板の粗化処理
内層回路の形成されたガラス布基材エポキシ樹脂両面銅張積層板[銅箔の厚さ18μm、基板厚み0.3mm、パナソニック社製R5715ES]の両面をメック社製CZ8100に浸漬して銅表面の粗化処理(エッチング量:約1μm)を行った。
(2)樹脂付き銅箔の作製
フィルムアプリケーターを用いて、硬化性樹脂組成物を各実施例および比較例ごとにキャリア付き極薄銅箔(三井金属社製MT18Ex、極薄銅3μm厚)の極薄銅箔面上に塗布し、熱風循環式乾燥炉にて90℃で10分間乾燥し、樹脂層の厚み約40μmの樹脂付き銅箔を得た。
(3)樹脂付き銅箔のラミネート
バッチ式真空加圧ラミネーターMVLP-500(名機製作所社製)を用いて、粗化処理(1)を行った積層板の両面に、樹脂付き銅箔(2)の樹脂組成物塗工面をラミネートした。ラミネートは、30秒間減圧して気圧を13hPa以下とし、その後30秒間、80℃、圧力0.5MPaでプレスすることにより行った。
(4)樹脂組成物の硬化
樹脂付き銅箔をラミネートした積層板(3)を、熱風循環式乾燥炉にて170℃で30分間、硬化させた。
(5)電解銅めっき
硬化後、積層板の両面からキャリア銅箔を剥離し、電解銅めっきにより、両面の極薄銅箔(3μm)を約25μm厚にした。
(6)アニール処理
電解銅めっき後の積層板を、熱風循環式乾燥炉にて200℃で60分間、アニール処理を行った。
前記の方法で作製したサンプルを用いて、JIS C6481に従って測定し、下記の基準で評価した。
◎:0.5kN/m以上
○:0.5kN/m未満0.4kN/m以上
×:0.4kN/m未満
-:得られる硬化物が脆い為、強度不足により測定不可
NC-3000-H: ビフェニル骨格含有多官能固形エポキシ樹脂(日本化薬社製)
B-1: 合成例1により製造
B-2: 合成例2により製造
FX-280S: ビスフェノールフルオレノン型フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製、第二級水酸基当量:350g/eq.)
FX-293: ビスフェノールフルオレノン型フェノキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル社製、二級水酸基当量:376g/eq.)
1256B40: ビスフェノールA型フェノキシ樹脂(三菱ケミカル社製、第二級水酸基当量:280g/eq.)
4250: ビスフェノールA型フェノキシ樹脂/ビスフェノールF型フェノキシ樹脂混合タイプ(三菱ケミカル社製、第二級水酸基当量:265g/eq.)
4275: ビスフェノールA型フェノキシ樹脂/ビスフェノールF型フェノキシ樹脂混合タイプ(三菱ケミカル社製、第二級水酸基当量:258g/eq.)
SO-C2: フェニルアミノシラン処理した球状シリカ(平均粒径:0.5μm、単位質量あたりのカーボン量0.18)(アドマテックス社製)
2E4MZ: 2-エチル-4-メチルイミダゾール
Claims (7)
- (A)エポキシ樹脂と、
(B)活性エステル基を有する化合物と、
(C)フェノキシ樹脂と、
(D)無機フィラーと、
を含有する硬化性樹脂組成物であって、
前記(C)フェノキシ樹脂の第二級水酸基当量が300g/eq.以上であり、かつ
前記(A)エポキシ樹脂におけるエポキシ基の総量の、前記(B)活性エステル基を有する化合物におけるエステル基の総量に対する比が0.2~0.6であり、
前記(C)フェノキシ樹脂が、ビスフェノールフルオレノン型フェノキシ樹脂を含み、
前記(C)フェノキシ樹脂の配合量は、前記(A)エポキシ樹脂と、前記(B)活性エステル基を有する化合物合計を100質量%とした場合、0.1質量%以上15質量%以下であり、
前記(D)無機フィラーの配合量は、硬化性樹脂組成物中の固形分を100質量%とした場合、50質量%以上90質量%以下であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。 - 前記(B)活性エステル基を有する化合物が、下記一般式(2):
mは1~6の整数であり、nはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、qはそれぞれ独立的に1~6の整数であり、
式(3)中、kはそれぞれ独立的に1~5の整数であり、
式(4)中、Yは上記式(3)で表される基(kはそれぞれ独立的に1~5の整数)であり、tはそれぞれ独立的に0~5の整数である)
で表される構造部位を有し、その両末端が一価のアリールオキシ基である構造を有する活性エステル樹脂であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。 - 請求項1~3の何れか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とするドライフィルム。
- 銅箔またはキャリア付き銅箔上に、請求項1~3の何れか一項に記載の硬化性樹脂組成物を樹脂層として有することを特徴とする樹脂付き銅箔。
- 請求項1~3の何れか一項に記載の硬化性樹脂組成物、請求項4に記載のドライフィルムの樹脂層、又は請求項5に記載の樹脂付き銅箔の樹脂層の硬化物。
- 請求項6に記載の硬化物を有することを特徴とする電子部品。
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