JP2023091748A - 紫外発光素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】発光中心波長が320nm超え350nm未満で大きな発光出力を得られる紫外発光素子及びその製造方法を提供する。【解決手段】発光素子100は、Al組成比xを有するAlxGa1-xNからなるn型半導体層3、量子井戸型発光層4、Al組成比yを有するAlyGa1-yNからなるp型電子ブロック層6、Al組成比zを有するAlzGa1-zNからなるp型クラッド層7、及びp型GaNコンタクト層8を、この順に備え、p型電子ブロック層6は、Al組成比yが0.35以上0.45以下で、その厚さが11nm以上70nm以下であり、p型電子ブロック層6とp型クラッド層7との合計厚さは、73nm以上100nm以下であり、p型GaNコンタクト層8の厚さは、5nm以上15nm以下である。【選択図】図1

Description

本発明は、紫外発光素子及びその製造方法に関する。
窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)を主な構成とする発光素子は、250~360nm程度の光を発することが可能である。UVC(~280nm)やUVB(280~320nm)の発光中心波長を有する紫外発光素子は、殺菌等に用いられることがあるため、これら波長域の深紫外発光素子の開発は特に盛んである。
特許文献1には、240~320nmの深紫外光を発する発光素子が記載されている。この発光素子では、電子ブロック層は1~10nm、p型クラッド層は10~100nm、p型コンタクト層は500nmを超える厚さが好ましいとされている。そして、p型コンタクト層を厚くすることでp型コンタクト層の平坦性を向上できることが記載されている。
特許文献2には、窒化物半導体紫外線発光素子が記載されている。この発光素子では、活性層の表面が、井戸層の厚さ以上の平均粗さを持つくらいに粗い方が出力が向上すると記載されている。また、電子ブロック層は15~30nm、p型クラッド層は500~600nm、p型コンタクト層は100~300nmであることが例示されている。
特許文献3には、紫外発光素子及びその製造方法が記載されている。この紫外発光素子では、波長が350nmより短い場合では、その電子ブロック層は、厚さが1~50nmで、Al組成を50%以上とすることが記載されている。
特許第06814902号公報 国際公開第2017/013729号 特開2017-050439号公報
上記のごとく、UVC(~280nm)やUVB(280~320nm)の発光中心波長を有する紫外発光素子は多数の報告がある一方で、UVA(320nm~)の紫外発光素子については報告が少ない。UVA(320nm~)の紫外発光素子は、樹脂硬化や医療用、分析用として用いられる場合がある。そのため、UVAに適した紫外発光素子の提供が望まれる。特に、発光中心波長が330nm超え350nm未満で大きな発光出力を得られる紫外発光素子を提供が望まれる。
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、発光中心波長が320nm超え350nm未満、特に330nm超え350nm未満で大きな発光出力を得られる紫外発光素子及びその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明に係る紫外発光素子は、以下のとおりである。
(1) Al組成比xを有するAlGa1-xNからなるn型半導体層、
量子井戸型発光層、
Al組成比yを有するAlGa1-yNからなるp型電子ブロック層、
Al組成比zを有するAlGa1-zNからなるp型クラッド層、及び
p型GaNコンタクト層を、この順に備え、
前記p型電子ブロック層は、
前記Al組成比yが0.35以上0.45以下で、
その厚さが11nm以上70nm以下であり、
前記p型電子ブロック層と前記p型クラッド層との合計厚さは、73nm以上100nm以下であり、
前記p型GaNコンタクト層の厚さは、5nm以上15nm以下である紫外発光素子。
(2) 前記p型GaNコンタクト層の表面は、
最大表面粗さが9nm以下であり、
平均表面粗さが、1nm以下である(1)に記載の紫外発光素子。
(3) 前記p型クラッド層は、前記Al組成比zが0.17以上0.27以下である(1)又は(2)に記載の紫外発光素子。
(4) 前記p型クラッド層の厚さを前記p型電子ブロック層の厚さで割った値が0.4以上である(1)から(3)の何れか一項に記載の紫外発光素子。
(5) 前記n型半導体層の表面は、平均表面粗さが、1nm以下である(1)から(4)の何れか一項に記載の紫外発光素子。
(6) 前記n型半導体層の(10-12)面のX線回折での半値幅が350秒以下である(1)から(5)の何れか一項に記載の紫外発光素子。
(7) 前記n型半導体層は、
前記Al組成比xが0.2以上0.35以下であり、
前記p型クラッド層の前記Al組成比zは前記n型半導体層の前記Al組成比x以下で
ある(1)から(6)の何れか一項に記載の紫外発光素子。
(8) 反射電極を更に備え、
前記反射電極は、前記p型GaNコンタクト層における、前記p型クラッド層に対向する側の面とは反対側の面上に配置されている(1)から(7)の何れか一項に記載の紫外発光素子。
(9) 発光中心波長が331nm以上349nm以下である(1)から(8)の何れか一項に記載の紫外発光素子。
また、上記目的を達成するための本発明に係る紫外発光素子の製造方法は、以下のとおりである。
(10) Al組成比xを有するAlGa1-xNからなるn型半導体層を形成するn型半導体層形成工程、
量子井戸型発光層を形成する発光層形成工程、
Al組成比yを有するAlGa1-yNからなるp型電子ブロック層を形成するp型電子ブロック層形成工程、
Al組成比zを有するAlGa1-zNからなるp型クラッド層を形成するp型クラッド層形成工程、及び、
p型GaNコンタクト層を形成するp型GaNコンタクト層形成工程を含み、
前記n型半導体層形成工程、前記発光層形成工程、前記p型電子ブロック層形成工程、前記p型クラッド層形成工程、及び、前記p型GaNコンタクト層形成工程をこの順に行い、
前記p型電子ブロック層形成工程は、
前記Al組成比yを0.35以上0.45以下とし、
前記p型電子ブロック層の厚さを11nm以上70nm以下とし、
前記p型電子ブロック層形成工程とp型クラッド層形成工程とは、前記p型電子ブロック層と前記p型クラッド層との合計厚さを73nm以上100nm以下とし、
前記p型GaNコンタクト層形成工程は、前記p型GaNコンタクト層の厚さを、5nm以上15nm以下とする紫外発光素子の製造方法。
(11) 前記p型GaNコンタクト層形成工程は、
前記p型GaNコンタクト層の表面の最大表面粗さを9nm以下とし、
前記p型GaNコンタクト層の表面の平均表面粗さを、1nm以下とする(10)に記載の紫外発光素子の製造方法。
(12) 前記p型GaNコンタクト層上にp側電極を形成するp側電極形成工程を更に含む(9)又は(10)に記載の紫外発光素子の製造方法。
発光中心波長が320nm超え350nm未満、特に330nm超え350nm未満で大きな発光出力を得られる紫外発光素子及びその製造方法を提供することができる。
本実施形態に係る紫外線発光素子の層構造を示す図である。 紫外線発光素子の基板を形成する工程を説明する図である。 紫外線発光素子の層構造を形成する工程を説明する図である。 エッチングによりn型半導体層の一部を露出させる工程を説明する図である。 縦軸をp型クラッド層の厚さ、横軸をp型電子ブロック層の厚さとした、実施例と比較例における各厚さを示す図である。
まず、本発明の実施形態に係る紫外線発光素子の開発の経緯について説明する。従来技術の知見の範囲では、光を透過する電子ブロック層やクラッド層の厚さは厚い方が光の取り出しが増えるので出力が向上すると考えることができるが、本発明者らは、p型電子ブロック層のAl組成比と厚さとを特定範囲内とし、且つ、p型電子ブロック層とp型クラッド層との厚さの組み合わせを特定の範囲内にした場合には、従来技術の知見に基づいた予想に反し、紫外線発光素子の出力が向上することを見出した。更に、これらp型層の厚さを上記特定の範囲内とすることで、厚さの制御がしやすくてロット間のバラつきが減り、厚いp型層とするよりもウエハ面内で発光出力が安定して歩留まりが向上することを見出した。そして、p型電子ブロック層のAl組成比と厚さとを特定範囲内とし、且つ、p型電子ブロック層とp型クラッド層との厚さの組み合わせを特定の範囲内にした場合には、p型コンタクト層の厚さが薄くとも、電極を形成するp型コンタクト層表面の平坦性を確保できることを見出した。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態に係る紫外線発光素子及びその製造方法について説明する。
図1には、本実施形態に係る紫外線発光素子100(以下、発光素子100と記載する)を示している。発光素子100は、基板1上に、AlN層11、バッファ層2、Al組成比xを有するAlGa1-xNからなるn型半導体層3、n型ガイド層31、量子井戸型発光層4(以下、発光層4と記載する)、i型ガイド層5、Al組成比yを有するAlGa1-yNからなるp型電子ブロック層6、Al組成比zを有するAlGa1-zNからなるp型クラッド層7、及び、p型GaNコンタクト層8(以下、コンタクト層8と記載する)を、この順に備えている。なお、図1において示す発光素子100の各層の図面上の厚みは、説明の便宜のため、各層間の厚みの比率を図面上で見やすく変更して表示したものである。図1に示す図面上の各層の厚みの比率は、発光素子100における実際の各層の厚みの比率とは異なる。
そして、発光素子100は、コンタクト層8における、p型クラッド層7に対向する側の面とは反対側の面上に(反射電極としての)p側電極91を備え、n型半導体層3における、発光層4と同じ面上に、n側電極92を備えている。
この発光素子100では、発光中心波長が320nm超え350nm未満で大きな発光出力を得られる。発光素子100に適した発光中心波長は、331nm以上349nm以下である。
この発光素子100は、例えば下記の製造方法により製造可能である。すなわち、発光素子100の製造方法の一例は、n型半導体層3を形成するn型半導体層形成工程、発光層4を形成する発光層形成工程、p型電子ブロック層6を形成するp型電子ブロック層形成工程、p型クラッド層7を形成するp型クラッド層形成工程、及び、コンタクト層8を形成するp型GaNコンタクト層形成工程を含む。
上記発光素子100の製造方法では、n型半導体層形成工程、発光層形成工程、p型電子ブロック層形成工程、p型クラッド層形成工程、及び、p型GaNコンタクト層形成工程をこの順に行う。
p型電子ブロック層形成工程は、Al組成比yを0.35以上0.45以下とし、p型電子ブロック層6の厚さを11nm以上70nm以下とし、p型電子ブロック層形成工程とp型クラッド層形成工程は、p型電子ブロック層6とp型クラッド層7との合計厚さを73nm以上100nm以下とし、p型GaNコンタクト層形成工程は、コンタクト層8の厚さを、5nm以上15nm以下とする。
以下、発光素子100及びその製造方法の詳細を説明する。
<層厚さ>
本実施形態において、発光素子100の各層の厚さは、TEM―EDS(透過電子顕微鏡)で撮影した像に基づいて計測する。すなわち、各層の厚さは、発光素子100の断面を撮影した像における各層厚さの平均値を用いる。なお、基板1の厚さは、SEM(走査型電子顕微鏡)により計測した値を用いる。
<Al組成比の測定>
本実施形態における「AlGaN」は、Al組成比をαとするとAlαGa1-αNであることを意味する。本実施形態におけるAlGaNのAl組成比αの値は、各層を成長した際に各層表面に対して行ったフォトルミネッセンス測定により観測された波長から特定する。Al組成比αは、規定がなければ0以上1以下の範囲内である。発光素子100の断面からAl組成を特定する方法としては、例えばEDS(エネルギー分散型X線分光)を使用することができる。
また、本実施形態において「GaN」「AlN」と表記する場合は、それぞれGa及びAlの組成比が1.0であることを意味する。「GaN」「AlN」「AlGaN」は、インジウムを含め記載されていない他のIII族元素の組成比が0.04以下(モル分率で4%以下)の微量含まれるようなものは許容するものとする。
<表面粗さの測定>
本実施形態における表面粗さの値は、5μm×5μmの矩形状の範囲に対してAFM(原子間力顕微鏡)測定を行って求める。平均算術粗さ(Ra)及び最大表面粗さ(Rmax)は、AFM測定により取得した表面プロファイルに基づいて、JIS(B0601-2001)の定めに従って求める。平均算術粗さ(Ra)及び最大表面粗さ(Rmax)は、AFM装置に付属するアプリケーション・ソフトウェアにより自動計算して求めてよい。
<結晶性の測定>
本実施形態における結晶性の評価は、X線回折装置によるX線ロッキングカーブの半値幅(arcsec)の値とする。半値幅は、X線回折装置に付属するアプリケーション・ソフトウェアにより自動計算してもとめてよい。本実施形態では、評価対象の(0001)面と(10-12)面のそれぞれに対してX線を照射してその回折プロファイルを評価する。特に(10-12)面における測定結果は、結晶内の貫通転位密度(螺旋及び刃状の混合転位)の指標となる。
<ドーパント濃度の測定>
本発明におけるドーパント濃度は、SIMS(二次イオン質量分析)により測定した値を用いる。なお、アンドープとはMOCVD成長時にMgやSi等の特定のドーパントの原料ガスを意図的には供給しないことをいい、製造過程におけるC、H、Oのような不可避的な不純物が含まれていても良い。また、本発明におけるi型とは、アンドープであって、キャリア密度が4×1016cm-3以下であることをいう。
基板1は、III族窒化物をエピタキシャル成長することが可能な公知の基板を用いることができる。例えば、サファイア基板、AlN基板、GaN基板、SiC基板などを使用できる。本実施形態では、基板1がサファイア基板である場合を例示して以下説明する。
基板1としてサファイア基板を用いる場合は、図2に示すように、基板1上にAlN層11を形成し、そのAlN層11を高温で熱処理することによってAlN層11の(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅を400秒以下まで低転位化したAlNテンプレート基板を使用することがより好ましい。以下では、基板1上にAlN層11が形成されたものをAlNテンプレート基板と称する。
<バッファ層>
次に、図1、図3に示すように、AlNテンプレート基板上にバッファ層2を形成する。バッファ層2は、基板1上のAlN層11とn型半導体層3との間に位置し、基板1及びAlN層11とn型半導体層3との間の格子定数差を緩和する層である。バッファ層2はAl組成の異なる複数のAlGaN層を積層させた層により、又は、Al組成傾斜層により構成されることが好ましい。また、バッファ層2は、アンドープとすることが好ましい。バッファ層2の厚さは、例えば500nm以上2000nm以下であることが好ましい。
図1、図3では、バッファ層2が、それぞれAl組成の異なるAlGaN層である第一バッファ層21と第二バッファ層22とを積層させた層である場合を示している。
<n型半導体層>
n型半導体層3は、Al組成比xを有するAlGa1-xNにSiなどのn型ドーパントを含有してn型半導体として機能する層である。n型ドーパントの濃度は1×1018cm-3から5×1019cm-3程度であることが好ましい。n型半導体層3はバッファ層2を形成した後に、バッファ層2における、AlNテンプレート基板に対向する側の面とは反対側の面側に形成される(n型半導体層形成工程の一例)。
n型半導体層3の表面の5μm角範囲の平均表面粗さ(Ra)は1nm以下であることが好ましい。n型半導体層3表面が平坦であることで、その上に成長される層も平坦性を維持することができる。
また、n型半導体層3の(10-12)面のX線回折での半値幅が350秒以下であることが好ましく、300秒以下であることがより好ましい。n型半導体層3のAl組成比xは0.2以上0.35以下であることが好ましい。Al組成比xは、後述の井戸層41のAl組成比wより大きく、w<xである。
n型半導体層3の層の厚さは、キャリアを供給するのに十分な厚さであればよく、例えば300nm以上3000nm以下であることが好ましい。
後述するように、露出したn型半導体層3上の一部には、n側電極92が形成される。変形例としては、n型半導体層3とn側電極92との間に、Al組成がn型半導体層3よりも低い、Al組成が0以上0.2以下のAlGaN層を有していても良い。
n型半導体層3上には、n型半導体層3と同じAl組成比を有するAlGaNにSiなどのn型ドーパントを含有してn型半導体として機能する層であって、n型半導体層3よりも薄いn型ガイド層31を形成してもよい。
<発光層>
発光層4は、AlGaNからなる層を含む層である。発光層4は、複数の井戸層41と複数の障壁層42(バリア層)とを有し、これらが交互に積層された層である。すなわち、発光層4は、発光中心波長に応じたAl組成比を有する井戸層41と、井戸層41,41を挟む障壁層42とを有し、井戸層41と障壁層42の組み合わせを1ペア以上繰り返す構成を有する。発光層4の両面は障壁層42である。発光層4は、n型半導体層3を形成した後に、n型半導体層3における、AlNテンプレート基板に対向する側の面とは反対側の面側に形成される(発光層形成工程の一例)。
本実施形態の井戸層41は、Al組成比wを有するAlGa1-wNからなる層である。Al組成比wは、例えば、発光中心波長を320nm超えとする場合、w<0.3とすることが好ましい。また、発光中心波長を331nm以上とする場合はw≦0.15とすることが好ましい。また、発光中心波長を349nm以下とする場合は0.07≦wとすることが好ましい。井戸層41の厚さは1nm以上5nm以下とすることが好ましい。井戸層41はアンドープであることが好ましい。
障壁層42は、は、Al組成比bを有するAlGa1-bNからなる層である。障壁層42のAl組成比bは、w+0.05≦b≦w+0.3の範囲内とすることが好ましい。障壁層42の厚さは3nm以上20nm以下とすることが好ましい。障壁層42は、アンドープまたはSiなどのn型ドーパントを入れたn型であって良い。
<i型ガイド層>
i型ガイド層5は、障壁層42よりも高いAl組成比を有し、厚さが0.7nm以上1.3nm以下のi型層である。i型ガイド層5のAl組成比は、後述するp型電子ブロック層6のAl組成比yよりも高いことが好ましく、最も好ましくはAlNである。i型ガイド層5は、発光層4を形成した後に、発光層4における、AlNテンプレート基板に対向する側の面とは反対側の面側に形成される(発光層形成工程の一例)。
i型ガイド層5の製造方法としては2種類存在する。一つは、直接的に上記の厚さとAl組成を有するi型ガイド層5を形成する方法である。もう一つは、上記の厚さ以上の厚さを有するAlGaN層を形成後に、キャリアガスを窒素から水素に変える過程で、窒素分圧の減少から当該AlGaN層のGaが揮発してAl組成が上昇して結果として上記の厚さとAl組成を有するi型ガイド層5とする方法である。本実施形態では、いずれの方法も採用しうる。
<p型電子ブロック層>
p型電子ブロック層6は、Al組成比yを有するAlGa1-yNからなるp型半導体として機能する層である。p型電子ブロック層6にドープされるp型ドーパント(p型不純物)は、例えばMgである。p型ドーパントの濃度は1×1018cm-3から5×1019cm-3程度であってよい。p型電子ブロック層6は、i型ガイド層5を形成した後に、i型ガイド層5における、AlNテンプレート基板に対向する側の面とは反対側の面側に形成される。
Al組成比yは、0.35以上0.45以下である。p型電子ブロック層6は、厚さが11nm以上70nm以下である。このようなAl組成比y及び厚さを有することにより、p型電子ブロック層6は、その表面粗さの悪化を抑制しつつ、電子ブロック層としての役割を果たして発光出力の向上を実現する。発光出力の向上には60nm以下とすることがさらに好ましい。
Al組成比yが0.45を超える場合や、p型電子ブロック層6の厚さが70nmを超える場合では、p型電子ブロック層6及びコンタクト層8の表面粗さ(特に最大表面粗さ)が大幅に増加する恐れがある。Al組成比yが0.35未満の場合やp型電子ブロック層6の厚さが10nm以下または70nm超の場合は、信頼性が悪化または発光出力が低下する恐れがある。
p型電子ブロック層6は、単一層で構成されても、複数層で構成されても良い。p型電子ブロック層6が複数層で構成される場合は、Al組成の異なる層や、ドーパント濃度が異なる層、Siドープ層やSiとMgのコドープ層を有していてもよい。
<p型クラッド層>
p型クラッド層7は、Al組成比zを有するAlGa1-zNからなるp型半導体として機能する層である。Al組成比zは0.17以上0.27以下であることが好ましい。p型クラッド層7にドープされるp型ドーパントは、例えばMgである。p型ドーパントの濃度は1×1018cm-3から5×1019cm-3程度であってよい。p型クラッド層7は、p型電子ブロック層6を形成した後に、p型電子ブロック層6における、AlNテンプレート基板に対向する側の面とは反対側の面側に形成される(p型クラッド層形成工程の一例)。
p型クラッド層7のAl組成比zと他の層のAl組成比との関係としては、p型クラッド層7のAl組成比zはp型電子ブロック層6のAl組成比y未満(z<y)である。p型クラッド層7のAl組成比zはp型電子ブロック層6のAl組成比yの0.48倍以上0.60倍以下とすることが好ましい。以下では、p型電子ブロック層6のAl組成比yに対するp型クラッド層7のAl組成比zの比率を、Al比と称する場合がある。また、Al組成比zは、n型半導体層3のAl組成比x以下(z≦x)であることも好ましい。Al組成比zは、前述の井戸層41のAl組成比wより大きい(w<z)。
p型クラッド層7の厚さは、以下のようにp型電子ブロック層6の厚さに応じて調整することが好ましい。
p型クラッド層7の厚さを決めるにあたって、p型電子ブロック層6とp型クラッド層7との合計厚さは、73nm以上100nm以下とする。この範囲内に納めることにより、発光出力と平坦性とを両立させることができる。発光出力の向上にはp型電子ブロック層6とp型クラッド層7との合計厚さを79nm以上とすることがより好ましい。
また、電子ブロック層の厚さが60nm以下では、電子ブロック層の厚さが一定の場合に合計厚さが厚い方がより出力が大きい傾向を示していることから、出力の向上効果が顕著となる範囲としては、電子ブロック層の厚さを11nm以上60nm以下、かつ、p型電子ブロック層6とp型クラッド層7との合計厚さを79nm以上100nm未満とすることがより好ましい。
p型クラッド層7の厚さをp型電子ブロック層6の厚さで割った値(以下、層厚比と記載する場合がある)は少なくとも0.1以上であれば良い。コンタクト層8の最大表面粗さ(Rmax)を抑制するためには、層厚比は0.4以上であることが好ましく、0.55以上であることがより好ましい。層厚比の上限は6.0以下とすることができる。層厚比が0.4未満となると、p型クラッド層7の表面平坦性が悪化してコンタクト層8のRmaxが大きくなる傾向がある。
<コンタクト層>
コンタクト層8は、GaNからなる、p型半導体として機能する層である。コンタクト層8にドープされるp型ドーパントは、例えばMgである。p型ドーパントの濃度は1×1019cm-3から5×1021cm-3程度であってよい。コンタクト層8は、p型クラッド層7を形成した後に、p型クラッド層7における、AlNテンプレート基板に対向する側の面とは反対側の面側に形成される(p型GaNコンタクト層形成工程の一例)。
コンタクト層8の厚さは、5nm以上15nm以下である。コンタクト層8の厚さは、より好ましくは、5nm以上10nm以下である。p型電子ブロック層6とp型クラッド層7とを上述のものとすることで、コンタクト層8をこのように薄い層としても、コンタクト層8の表面を平坦なものとすることができる。
コンタクト層8の表面における5μm×5μmの矩形状の範囲の最大表面粗さ(Rmax)は、9nm以下であり、8nm以下であることが好ましく、6.5nm未満であることがより好ましい。p型電子ブロック層6のAl組成比の範囲を0.35以上0.45以下とし、かつ上記の層厚比を0.4以上とすることでコンタクト層8の表面における最大表面粗さを8nm以下とすることができる。そして、p型電子ブロック層6のAl組成比の範囲を0.35以上0.45以下とし、かつ上記の層厚比を0.55以上とすることでコンタクト層8の表面における最大表面粗さを6.5nm未満とすることができる。最大表面粗さ(Rmax)が大きいと、その最大表面粗さを持つ表面にp側電極91が形成された場合に、p側電極91の信頼性が損なわれる場合がある。これにより、発光素子100への通電時にp側電極91が壊れ、発光素子100が突然発光しなくなることがある。
コンタクト層8の表面における5μm×5μmの矩形状の範囲の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下であることが好ましく、0.01以上0.6nm以下であることがより好ましい。
コンタクト層8は単一層で構成されても、複数層で構成されても良い。複数層で構成される場合は、Al組成の異なる層や、ドーパント濃度が異なる層、Siドープ層やSiとMgのコドープ層を有していてもよい。コンタクト層8のp側電極91を形成する側の最表面に、p型ドーパントの濃度が1×1020cm-3~5×1021cm-3程度に高い領域を有していることも好ましい。
発光素子100をフィリップチップ型の素子とする場合、図4に示すように、n型半導体層3よりも上にあるn型ガイド層31及び発光層4からコンタクト層8までの一部をドライエッチング法により除去して、n型半導体層3の一部を露出させ、その後、図1に示すように、露出したn型半導体層3上(本実施形態では、発光層4と同じ側の面上)の一部にn側電極92を形成する。また、コンタクト層8上(コンタクト層8における、AlNテンプレート基板に対向する側の面とは反対側の面上)の一部にp側電極91を形成する(p側電極形成工程の一例)。なお、変形例として、n型半導体層3の一部を露出させた後に、露出させたn型半導体層3上に、Al組成比がn型半導体層3よりも低く、そのAl組成比が0以上0.2以下のAlGaNからなる層を形成し、その上にn側電極92を形成しても良い。
p側電極91としては、コンタクト層8に用いることが可能な公知の電極を選択すればよい。p側電極91は、発光中心波長の反射率が50%以上ある反射電極であることが好ましい。p側電極91としては、例えば、第一の金属(Ni)と第二の金属(Au、Rh)の組み合わせや、導電性の金属窒化物を用いることができる。p側電極91を反射電極とする場合は、p側電極91にRhを含有させることが好ましい。
n側電極92としては、コンタクト層8に用いることが可能な公知の電極を選択すればよい。n側電極92はとしては、例えば、第一の金属(Ti)と第二の金属(Al、Rh)の組み合わせや、導電性の金属窒化物を用いることができる。
ウエハから個々の発光素子100のチップに個片化するにあたり、分離予定位置における基板上の各層は、ドライエッチング等を用いて除去することが好ましい。その際、各層の側面にメサ(傾斜部)が生じても良い。発光素子100のチップサイズは1辺が200μmから2000μmの正方形、長方形や六角形とすることができる。基板の個片化においては、スクライブやレーザーダイシングが使用できる。個片化の前に研削等によって基板の厚さを調整しても良い。
発光素子100の他の実施形態としては、垂直型の素子としても良い。導電性の基板をエピタキシャル成長用基板として使用する方法や、エピタキシャル成長時に用いた基板を除去したりすることにより、垂直型の素子とすることが出来る。エピタキシャル成長時に用いた基板を除去する場合は、コンタクト層8上にp側電極91を形成し、その上に、発光素子100としてハンドリングが可能な厚さとなるのに十分な厚さを有する導電性の支持体を形成し、その後に成長用基板(サファイア基板)を公知の方法によって除去して露出させたn型半導体層3上の一部にn側電極92を形成する。
各層のエピタキシャル成長の方法としては、MOCVD法を採用しうる。各層のエピタキシャル成長にあたっては、トリメチルアルミニウムガス(TMAガス)、トリメチルガリウムガス(TMGガス)、及びアンモニアガス(NHガス)からなる原料ガスを用いることが好ましい。エピタキシャル成長の成長温度としては、Al組成比にもよるが、1000℃以上1400℃以下が好ましい。また、エピタキシャル成長を行うチャンバ内の成長圧力は、例えば10Torrから760Torrとすることができる。なお、成長温度及び成長圧力に応じて最適なIII族元素に対するV族元素のモル比(V/III比)が存在するため、原料ガスの流量を適宜設定することが好ましい。
以下、実施例により本実施形態に係る発光素子100を説明する。
(実施例1)
サファイア基板(直径2インチ、厚さ430μm、面方位(0001)、m軸方向オフ角θ:0.5度)を用意して、MOCVD法により、上記サファイア基板上に中心膜厚600nmのAlN層を成長させた。その後、熱処理炉により窒素ガス雰囲気で1650℃で4時間加熱して、AlNテンプレート基板を得た。
AlNテンプレート基板のAlN層のX線回折装置(D8 DISCOVER AUTOWAFS;Bruker AXS社製、CuKα1線)による(10-12)のX線ロッキングカーブの半値幅は288秒であり、300秒以下であった。
AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、ウエハの中心部に対して5μm×5μmの矩形状の範囲における、AlNテンプレート基板の表面粗さを測定したところ、平均表面粗さ(Ra)は0.23nmであり、最大表面粗さ(Rmax)は3nmであった。
AlNテンプレート基板を得た後、MOCVD法により、上記AlNテンプレート基板上に、アンドープのAl0.4Ga0.6Nからなる厚さ30nmの第一バッファ層を形成し、次に、アンドープのAl0.25Ga0.75Nからなる厚さ1000nmの第二バッファ層を形成した。
続いて、Siドープした厚さ2400nmのn型半導体層を、上記第二バッファ層上に形成した。なお、この時点でMOCVD炉から取り出したときのn型半導体層の、X線回折による結晶性を上記と同様に測定したところ、(10-12)面のX線ロッキングカーブの半値幅は270秒であり、300秒以下であった。
AFMを用いて、ウエハの中心部に対して5μm×5μmの矩形状の範囲における、n型半導体層の表面粗さを測定したところ、平均表面粗さ(Ra)は0.5nmであり、最大表面粗さ(Rmax)は7.4nmであった。SIMS分析の結果、n型半導体層のSi濃度は1.0×1019atoms/cmであった。
続いて、成長温度を1200℃から1100℃に変更した後、n型半導体層上に、SiドープのAl0.25Ga0.75Nからなる厚さ25nmのn型ガイド層を形成した後、発光層として、SiドープのAl0.25Ga0.75Nからなる厚さ12nmの障壁層と、アンドープのAl0.10Ga0.90Nからなる厚さ2.4nmの井戸層との形成を3回繰り返して量子井戸構造とした。
その後、発光層上(3回目の井戸層上)に、アンドープのAl0.25Ga0.75Nからなる厚さ3nmのi型ガイド層を形成した後、V族原料ガスの供給は継続したままIII族原料ガスの供給を停止し、キャリアガスとしての窒素ガスを停止してキャリアガスを水素ガスへ変更し、水素ガスの供給開始から1分後にIII族原料ガスの供給を開始して、MgドープのAl0.4Ga0.6Nからなる厚さ54nmのp型電子ブロック層を形成し、MgドープのAl0.22Ga0.78Nからなる厚さ29nmのp型クラッド層を形成し、MgドープのGaNからなる厚さ8nmのp型コンタクト層(p型GaNコンタクト層)を形成した。上記のキャリアガスの変更に伴い、i型ガイド層は、Ga成分が揮発して分解し、Al組成比がおよそ1である厚さ1.0nmのi型ガイド層に変質している。
AFMを用いて、エピタキシャル形成直後のウエハの中心部に対して5μm×5μmの矩形状の範囲における、p型コンタクト層の表面粗さを測定したところ、p型コンタクト層の平均表面粗さ(Ra)は0.39nmであり、最大表面粗さ(Rmax)は7.4nmであった。SIMS分析の結果、p型電子ブロック層、p型クラッド層、p型コンタクト層のMg濃度は、それぞれ、1.0×1019atoms/cm、5.0×1019atoms/cm、2.0×1020atoms/cmであった。
実施例1の各層のAl組成比、ドーパントの種類、及び厚さを表1に示す。表1に記載の厚さの測定値については、TEMによる測定結果を元に記載している。各層のAl組成は、フォトルミネッセンス測定により観測された波長から特定している。
Figure 2023091748000002
更に、p型コンタクト層上にマスクを形成し、ドライエッチングによるメサエッチングを行って、n型半導体層の一部を露出させた。その後、p型コンタクト層上のマスクを除去した。
次いで、p型コンタクト層上に厚さ7nmのNi層及び厚さ50nmのRh層を形成して、反射電極としてのp側電極とした。
また、上記のn型半導体層の露出した一部上に、n型電極として厚さ20nmのTi層及び厚さ150nmのAl層を形成し、n型電極とした。
p側電極及びn型電極の積層にはスパッタ法を用いた。p側電極及びn型電極の電極パターンの形成にはレジストを用いたリフトオフ法を使用した。
更に赤外線ランプアニール加熱装置を用いて550℃で10分間のコンタクトアニールを行った後、レーザースクライバを用いてチップサイズ1000μm×1000μmの矩形状の個々の素子に分離して実施例1にかかる紫外発光素子(以下、単に発光素子と記載する)を作製した。分離後のサファイア基板の厚さは430μmであった。
(実施例2から16、比較例1から6及び従来例)
実施例1におけるp型電子ブロック層とP型クラッド層のAl組成比及び層の厚さを表2及び表3に記載の通りに変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2から16、比較例1から6及び従来例に係る発光素子を作成した。
具体的には、実施例2は、p型クラッド層の厚さを35nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例3は、p型クラッド層の厚さを41nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例4は、p型ブロック層の厚さを22nm、p型クラッド層の厚さを64nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例5は、p型ブロック層の厚さを38nm、p型クラッド層の厚さを41nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例6は、p型ブロック層の厚さを38nm、p型クラッド層の厚さを35nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例7は、p型ブロック層の厚さを11nm、p型クラッド層の厚さを64nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例8は、p型ブロック層の厚さを54nm、p型クラッド層の厚さを23nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例9は、p型ブロック層の厚さを70nm、p型クラッド層の厚さを29nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例10は、p型ブロック層の厚さを70nm、p型クラッド層の厚さを12nmにした以外は、実施例1と同様である。
実施例11は、p型ブロック層の厚さを11nm、p型クラッド層の厚さを76nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例12は、p型ブロック層の厚さを11nm、p型クラッド層の厚さを70nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例13は、p型ブロック層の厚さを11nm、p型クラッド層の厚さを89nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例14は、p型ブロック層の厚さを22nm、p型クラッド層の厚さを78nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例15は、p型ブロック層の厚さを38nm、p型クラッド層の厚さを62nmにした以外は、実施例1と同様である。実施例16は、p型ブロック層の厚さを70nm、p型クラッド層の厚さを3nmにした以外は、実施例1と同様である。
また、比較例1は、p型クラッド層の厚さを18nmにした以外は、実施例1と同様である。比較例2は、p型ブロック層の厚さを38nm、p型クラッド層の厚さを29nmにした以外は、実施例1と同様である。比較例3は、p型ブロック層の厚さを86nm、p型クラッド層の厚さを29nmにした以外は、実施例1と同様である。比較例4は、p型ブロック層の厚さを22nm、p型クラッド層の厚さを41nmにした以外は、実施例1と同様である。比較例5は、p型ブロック層の厚さを11nm、p型クラッド層の厚さを53nmにした以外は、実施例1と同様である。比較例6は、p型ブロック層の厚さを5nm、p型クラッド層の厚さを64nmにした以外は、実施例1と同様である。従来例は、p型クラッド層の厚さを350nmにした以外は、実施例1と同様である。
なお、表2、表3中、「BL」及び「CL」は、それぞれ、p型電子ブロック層及びp型クラッド層を意味する略称である。また、「Al比」は、p型電子ブロック層のAl組成比に対する型クラッド層のAl組成比の比率である。また、「層厚比CL/BL」は、p型クラッド層の厚さをp型電子ブロック層の厚さで割った値である。また、「合計厚さBL+CL」は、p型電子ブロック層とp型クラッド層との合計厚さである。なお、従来例及び比較例の発光素子は、いずれも、p型電子ブロック層とp型クラッド層との合計厚さが73nm以上100nm以下の範囲を外れるように、p型電子ブロック層及びp型クラッド層の厚さを定めている。以下の説明において、従来例とされる発光素子は、p型電子ブロック層とp型クラッド層との合計厚さが極めて厚い場合を説明の便宜上従来例と呼称したにすぎず、本実施形態に係る実施例に対しては、比較例として位置付けられるものである。
Figure 2023091748000003
Figure 2023091748000004
実施例、比較例及び従来例のそれぞれの発光素子は、フリップチップ方式で球状Auバンプを用いてAlN製サブマウント(サイズ2mm×2mm、厚さ0.2mm)に実装した。更にAlN製サブマウントにAl製ヒートシンクを接続した状態で、定電流電源装置を用いて350mAの通電を行い、その際の順方向電圧(Vf)を測定すると共にサファイア基板側に配置した積分球により全光束の発光出力(Po)の測定を行った。
特に発光出力(Po)については、実施例、比較例及び従来例のそれぞれのウエハの中心部分から5個の発光素子をサンプリングして測定する抜き取り測定を併せて行い、その平均値を算出した。この測定結果は、表2及び表3中、「チップ測定」における「Po平均」として示している。なお、実施例1~10、比較例1~5及び従来例の測定結果を表2に、実施例11~16、比較例6の測定結果を表3に示す。
実施例1~10、比較例1~5及び従来例の、エピタキシャル形成直後のウエハ中心部に対しては、AFMを用い、p型コンタクト層の表面の表面粗さ(Ra及びRmax)を測定した。これら測定の結果については、表2中、「コンタクト層AFM」以下の項目に記載する。なお、実施例11~16、比較例6については、AFMを用いた、表面粗さ測定は行わなかった。
なお、実施例、比較例及び従来例のチップに対して発光中心波長(λp)を分光機により測定したところ、いずれのチップの発光中心波長も340nm±5nmの範囲内であった。
また、各実施例の発光素子は、いずれも、従来例及び比較例の発光素子と比べて、発光出力の平均が高い。すなわち、本実施形態のごとくp型電子ブロック層の厚さが11nm以上70nm以下であり、かつ、p型AlGaN電子ブロック層およびp型AlGaNクラッド層の合計厚さが73nm以上100nm以下である場合の発光素子は、そうでない場合の発光素子と比べて、発光出力が高くなる。図5に、縦軸をp型クラッド層の厚さ、横軸をp型電子ブロック層の厚さとした場合の、実施例と比較例を図示した。図内の数値は、Po平均(mW)の値である。なお、比較例6ではp型電子ブロック層の厚さが薄いため、初期発光出力は実施例7に比べると大きいものの、600mAでの500時間通電による発光出力の低下割合が80%以下となり、実施例に比べて信頼性が低下しており、表2においても、「信頼性悪化」と示した。
このように、本実施形態によれば、発光中心波長が320nm超え350nm未満、特に330nm超え350nm未満で大きな発光出力を得られる紫外発光素子を提供することができるのである。
なお、実施例間の比較では、p型コンタクト層の平均表面粗さ(Ra)は、1nm以下であることが好ましく、0.01以上0.6nm以下であることがより好ましい。更に好ましくは、0.3以上0.6nm以下である。また、p型コンタクト層の最大表面粗さ(Rmax)は、8nm以下が好ましいようである。
以上のようにして、発光中心波長が320nm超え350nm未満で大きな発光出力を得られる紫外発光素子及びその製造方法を提供することができる。
従来例と実施例1について、チップ選別機を用い、ウエハ内に得られた全ての発光素子から製造されたチップについて行った(すなわち、全数測定を行った)。この全数測定は、20ロットについて行った。この20ロットに対して実施した全数測定結果の平均とロット間のバラつきは、従来例では平均出力が77.9mWで標準偏差が16.0mWであったのに対し、実施例1では平均出力が89.1mWで標準偏差が12.2mWであった。従来例に比べてp型層の厚さの薄い実施例1の発光素子は、発光出力の平均が高く、ロット間の標準偏差値(バラつき)が小さいことが分かる。
なお、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
本発明は、発光素子及びその製造方法に適用できる。
1 :基板
11 :AlN層
100 :発光素子(紫外線発光素子)
2 :バッファ層
21 :第一バッファ層
22 :第二バッファ層
3 :n型半導体層
31 :n型ガイド層
4 :発光層(量子井戸型発光層)
41 :井戸層
42 :障壁層
5 :i型ガイド層
6 :p型電子ブロック層
7 :p型クラッド層
8 :p型コンタクト層(p型GaNコンタクト層)
91 :p側電極
92 :n側電極

Claims (12)

  1. Al組成比xを有するAlGa1-xNからなるn型半導体層、
    量子井戸型発光層、
    Al組成比yを有するAlGa1-yNからなるp型電子ブロック層、
    Al組成比zを有するAlGa1-zNからなるp型クラッド層、及び
    p型GaNコンタクト層を、この順に備え、
    前記p型電子ブロック層は、
    前記Al組成比yが0.35以上0.45以下で、
    その厚さが11nm以上70nm以下であり、
    前記p型電子ブロック層と前記p型クラッド層との合計厚さは、73nm以上100nm以下であり、
    前記p型GaNコンタクト層の厚さは、5nm以上15nm以下である紫外発光素子。
  2. 前記p型GaNコンタクト層の表面は、
    最大表面粗さが9nm以下であり、
    平均表面粗さが、1nm以下である請求項1に記載の紫外発光素子。
  3. 前記p型クラッド層は、前記Al組成比zが0.17以上0.27以下である請求項1又は2に記載の紫外発光素子。
  4. 前記p型クラッド層の厚さを前記p型電子ブロック層の厚さで割った値が0.4以上である請求項1又は2に記載の紫外発光素子。
  5. 前記n型半導体層の表面は、平均表面粗さが、1nm以下である請求項1又は2に記載の紫外発光素子。
  6. 前記n型半導体層の(10-12)面のX線回折での半値幅が350秒以下である請求項1又は2に記載の紫外発光素子。
  7. 前記n型半導体層は、
    前記Al組成比xが0.2以上0.35以下であり、
    前記p型クラッド層の前記Al組成比zは前記n型半導体層の前記Al組成比x以下である請求項1又は2に記載の紫外発光素子。
  8. 反射電極を更に備え、
    前記反射電極は、前記p型GaNコンタクト層における、前記p型クラッド層に対向する側の面とは反対側の面上に配置されている請求項1又は2に記載の紫外発光素子。
  9. 発光中心波長が331nm以上349nm以下である請求項1又は2に記載の紫外発光素子。
  10. Al組成比xを有するAlGa1-xNからなるn型半導体層を形成するn型半導体層形成工程、
    量子井戸型発光層を形成する発光層形成工程、
    Al組成比yを有するAlGa1-yNからなるp型電子ブロック層を形成するp型電子ブロック層形成工程、
    Al組成比zを有するAlGa1-zNからなるp型クラッド層を形成するp型クラッド層形成工程、及び、
    p型GaNコンタクト層を形成するp型GaNコンタクト層形成工程を含み、
    前記n型半導体層形成工程、前記発光層形成工程、前記p型電子ブロック層形成工程、前記p型クラッド層形成工程、及び、前記p型GaNコンタクト層形成工程をこの順に行い、
    前記p型電子ブロック層形成工程は、
    前記Al組成比yを0.35以上0.45以下とし、
    前記p型電子ブロック層の厚さを11nm以上70nm以下とし、
    前記p型電子ブロック層形成工程とp型クラッド層形成工程とは、前記p型電子ブロック層と前記p型クラッド層との合計厚さを73nm以上100nm以下とし、
    前記p型GaNコンタクト層形成工程は、前記p型GaNコンタクト層の厚さを、5nm以上15nm以下とする紫外発光素子の製造方法。
  11. 前記p型GaNコンタクト層形成工程は、
    前記p型GaNコンタクト層の表面の最大表面粗さを9nm以下とし、
    前記p型GaNコンタクト層の表面の平均表面粗さを、1nm以下とする請求項10に記載の紫外発光素子の製造方法。
  12. 前記p型GaNコンタクト層上にp側電極を形成するp側電極形成工程を更に含む請求項9又は10に記載の紫外発光素子の製造方法。
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