JP2023090515A - 水硬性組成物、水硬性組成物硬化体の製造方法及び水硬性組成物硬化体 - Google Patents

水硬性組成物、水硬性組成物硬化体の製造方法及び水硬性組成物硬化体 Download PDF

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Yukiko Nishioka
正朗 小島
Masao Kojima
智己 山口
Tomomi Yamaguchi
卓哉 大石
Takuya Oishi
敦之 間瀬
Atsushi Mase
善將 田中
Yoshimasa Tanaka
伸二 玉木
Shinji Tamaki
拓海 前田
Takumi Maeda
慎也 伊藤
Shinya Ito
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Abstract

【課題】水硬性組成物硬化体の製造に際し、流動性の保持時間が良好であり、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、その後、経時により充分な強度が発現される硬化体が得られる水硬性組成物、水硬性組成物硬化体の製造方法及び該水硬性組成物の硬化物である水硬性組成物硬化体を提供する。【解決手段】水硬性結合材A、水B、側鎖にオキシアルキレン基を有する構成単位1とアクリル酸等の構成単位2とを含むビニル共重合体である水硬性組成物用混和剤C、及び、無機硫酸塩と、カルシウムサルフォアルミネートと、無機水酸化物とを所定の比率で含む水硬性組成物用硬化促進材Dを含有する水硬性組成物であり、水硬性組成物用硬化促進材Dを、水硬性結合材A100質量部に対して2質量部~10質量部含有する水硬性組成物及びその応用。【選択図】なし

Description

本開示は、水硬性組成物、該水硬性組成物を用いた水硬性組成物硬化体の製造方法、及び水硬性組成物硬化体に関する。
土木建築構造物に使用されるセメントコンクリート等の水硬性組成物を用いて作製される水硬性組成物硬化体は、通常、水硬性組成物を型枠に打設した後、所定時間静置することで脱型可能な強度を発現する。例えば、コンクリート製のプレキャストコンクリート部材等を製造するためには、スランプが3cm~10cm程度のコンクリート組成物を型枠内に充填し、所定時間静置した後、蒸気等により昇温し、50℃~70℃程度に保持したまま数時間放置し、脱型可能な強度、例えば、圧縮強度が8N/mm~25N/mm程度となった後脱型してコンクリート硬化体を得る。
従来、コンクリート組成物の練混ぜからコンクリート硬化体を得るまでの静置時間は少なくとも5時間程度を要しており、1つの型枠で製造できるコンクリート硬化体は、1日1体であり、生産性に劣るという問題があった。
近年、コンクリート等の水硬性材料の硬化速度を高めることが試みられ、例えば、超速硬コンクリート等が開発されてはいるが、特殊なセメント、超速硬性を有する混和材等を大量に必要とするため高価であり、緊急復旧工事等に使用されることはあっても、一般の建築構造物には使用されていないのが現状である。
また、鉄筋コンクリート建築物の生産性を向上するために、構造部材を分割して組み立てるプレキャスト工法が行われている。プレキャスト工法によれば、施工現地で構造部材を組み立て、鉄筋をジョイントした後に、プレキャストコンクリート部材の目地部分にグラウトを注入するだけでよいため、従来工法、すなわち鉄筋と型枠を組み立てた後にコンクリート組成物を流し込み、所定の強度が発現するのを待つ工法に比較して、短期間に構造物を構築することができる。しかしながら、プレキャスト工法に使用する部材を工場で事前に製造する際の生産性を改良しない限り、構造物構築する際の全体の生産性向上は望めず、プレキャスト工法に使用するコンクリート硬化体の生産性向上が求められている。
任意のコンクリート組成物を用いてコンクリート硬化体を効率よく生産する方法として、予め加熱した型枠内にコンクリート組成物を充填し、硬化が開始した時点で、底板のみを残して脱型するというコンクリート二次製品の製造方法が提案されている(特許文献1参照)。
プレキャスト工法に使用するコンクリート硬化体の生産性向上を目的として、特定の硬化促進材を含む水硬性組成物を用いて、流動性、及び硬化速度が良好であり、例えば、3時間程度で、吊り下げに耐える圧縮強度の硬化体を得ることができる水硬性組成物、上記水硬性組成物の硬化物である水硬性組成物硬化体及びその製造方法が提案されている(特許文献2参照)。
特開2001-260111号公報 特許第5982207号公報
プレキャストコンクリート部材において、サイズの大きい部材に関しては、内部まで充分な温度上昇を行わせるために加熱条件を厳しくすることがある。しかし、本発明者らの検討によれば、従来のコンクリート組成物、従来の超速硬混和材を用いたコンクリート組成物等の従来公知の水硬性組成物を用いて水硬性組成物硬化体を製造する場合、型枠注入後の急激な温度上昇により水硬性組成物の表面から水蒸気が発生し、得られた水硬性組成物硬化体の外観が悪化したり、経時による強度向上に悪影響を与えたりする懸念があることが見出された。
例えば、特許文献1に記載の方法によれば、プレキャスト工法に用いるコンクリート硬化体の脱型までの時間は短縮できるが、底板との接触面積が硬化に影響を与えるため、適用し得るコンクリート硬化体の形状が限定され、例えば、底板の面積に比較して、厚みが大きい等、体積の大きいコンクリート硬化体には適用し難いという問題があった。体積の大きいコンクリート硬化体では、さらに、底板を残して脱型した場合にも、脱型直後に搬送可能な程度の強度に達しない場合があり、使用範囲が限定されていた。
特許文献2に記載の水硬性組成物は、型枠注入時の流動性が良好であり、且つ、短時間で脱型可能な強度に達するため、効率よく水硬性組成物硬化体を製造しうるが、流動性の保持時間になお改良の余地があった。即ち、プレキャスト工法に用いる水硬性組成物硬化体を工場で製造する場合には好適な水硬性組成物といえるが、練混ぜした水硬性組成物を建設現場に搬送し、現場サイトで水硬性組成物硬化体を製造する際に使用する場合には、流動性が低下し、型枠注入が困難となる場合があった。
本発明のある実施形態が解決しようとする課題は、水硬性組成物硬化体の製造に際し、流動性の保持時間が良好であり、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、その後、経時により充分な強度が発現される硬化体が得られる水硬性組成物を提供することにある。
本発明の別の実施形態の課題は、練混ぜから経時した水硬性組成物を用いた場合においても、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、高品質な水硬性組成物硬化体が生産性良く得られる水硬性組成物硬化体の製造方法及び該製造方法により得られた初期強度、経時による長期養生後の強度のいずれにも優れた水硬性組成物硬化体を提供することにある。
上記課題の解決手段は、以下の実施態様を含む。
<1> 水硬性結合材A、水B、水硬性組成物用混和剤C、及び、水硬性組成物用硬化促進材Dを含有する水硬性組成物であり、
上記水硬性組成物用硬化促進材Dを、上記水硬性結合材A100質量部に対して2質量部~10質量部含有する水硬性組成物。
水硬性組成物用混和剤C:
下記一般式(I)で示される化合物である単量体1由来の構成単位1の少なくとも1種及び下記単量体2由来の構成単位2の少なくとも1種を含むビニル共重合体であり、上記ビニル共重合体における上記構成単位1及び上記構成単位2の合計含有量100質量%に対する上記構成単位1の含有量が82質量%~95質量%であり、上記構成単位2の含有量が5質量%~18質量%であり、且つ、重量平均分子量が5000~200000である水硬性組成物用混和剤。
Figure 2023090515000001
一般式(I)において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
mは30~300の整数を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
は水素原子、又は、炭素数1~22のアルキル基を表す。
単量体2:
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、又は、それらの塩
水硬性組成物用硬化促進材D:
無機硫酸塩、カルシウムサルフォアルミネート、及び、無機水酸化物を含有し、上記水硬性組成物用硬化促進材Dの全量100質量%に対し、上記無機硫酸塩の含有量が10質量%~30質量%であり、上記カルシウムサルフォアルミネートの含有量が10質量%~70質量%であり、上記無機水酸化物の含有量が10質量%~30質量%である水硬性組成物用硬化促進材。
上記水硬性組成物は、構成単位1と、水硬性組成物に含まれる水硬性結合材であるセメント粒子等に吸着しやすい構成単位2と、を上記比率で含むビニル共重合体である水硬性組成物用混和剤C(以下、混和剤Cとも称する)を含むことにより、初期の硬化性に影響を与えることなく、且つ、構成単位2の機能により、混和剤Cのセメント粒子への吸着が経時的に順次発現し、水硬性組成物の流動性の保持性が良好となる。このため、水硬性結合材を含む水硬性組成物を調製し、経時した場合でも、型枠への注入等を支障なく行うことができる。さらに、カルシウムサルフォアルミネート等を適量含有する水硬性組成物用硬化促進材D(以下、硬化促進材Dとも称する)を含むことで、水硬性組成物を硬化させる際に、水和反応に伴う発熱による硬化体組織への悪影響を抑制しつつ、初期強度を向上させることができる。
<2> さらに、下記水硬性組成物用混和剤Eを含有する<1>に記載の水硬性組成物。

水硬性組成物用混和剤E:
上記単量体2由来の構成単位2の少なくとも1種、下記一般式(II)で示される化合物である単量体3由来の構成単位3の少なくとも1種、及び、下記一般式(III)で示される化合物である単量体4由来の構成単位4の少なくとも1種を含むビニル共重合体であり、上記ビニル共重合体における、上記構成単位2、上記構成単位3、及び、上記構成単位4の合計含有量100質量%に対し、上記構成単位2の含有量が0質量%を超え5質量%未満、上記構成単位3の含有量が51質量%以上99質量%未満、及び、上記構成単位4の含有量が1質量%以上45質量%以下であり、重量平均分子量が5000~200000である水硬性組成物用混和剤である。
Figure 2023090515000002
一般式(II)において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
nは5~300の整数を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
は水素原子、又は、炭素数1~22のアルキル基を表す。
Figure 2023090515000003
一般式(III)において、Rは炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
pは0~4の整数を表し、pが2~4である場合、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
は水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を表し、pが0の場合、Rは炭素数1~22のアルキル基を表す。
水硬性組成物に含まれる構成単位2の共重合比が低く、且つ、特定の構造を有する構成単位4を含むビニル共重合体である水硬性組成物用混和剤E(以下、混和剤Eとも称する)をさらに含むことにより、初期に混和剤Cがセメント粒子に吸着して流動性を発現させ、さらに、経時後に、混和剤Eがセメント粒子へ順次吸着することで、水硬性組成物の流動性の保持時間がより長時間継続される。
<3> 上記水硬性組成物用混和剤C、及び、上記水硬性組成物用混和剤Eの合計100質量%に対し、上記水硬性組成物用混和剤Cを60質量%~99質量%含有し、且つ、上記水硬性組成物用混和剤Eを1質量%~40質量%含有する<2>に記載の水硬性組成物である。
水硬性組成物が、混和剤Eをさらに含む場合、混和剤Cに対し、混和剤Eの含有量を適切な比率とすることにより、混和剤のセメント粒子への吸着速度を最適化し、より長時間に亘り水硬性組成物の流動性を適切な範囲に維持することが可能になる。
<4> <1>~<3>のいずれか1つに記載の水硬性組成物を混練する工程と、混練された上記水硬性組成物を水硬性組成物の硬化体を形成する型枠であって、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm~150cmの型枠に注入する工程と、上記型枠に注入された上記水硬性組成物を50℃~95℃の温度で加熱する養生工程と、をこの順で有する水硬性組成物硬化体の製造方法である。
上記<4>に記載した養生条件の対象部材には特に制限はないが、なかでも、型枠の幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm~150cmである比較的大型の部材を製造する際に適する。養生温度、即ち、養生の際の環境温度を50℃~95℃とすることで、比較的大型の型枠内に充填された水硬性組成物における中心部近傍温度が、水和に適し、且つ、水和反応時に形成される硬化体の組織への悪影響を生じない適切な範囲に維持され、初期強度の向上と長期養生後の圧縮強度の低下抑制が両立される。
<5> <1>~<3>のいずれか1つに記載の水硬性組成物を混練する工程と、混練された上記水硬性組成物を水硬性組成物の硬化体を形成する型枠であって、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm未満の型枠に注入する工程と、上記型枠に注入された上記水硬性組成物を30℃~48℃の温度にて、0.6時間~1.5時間加熱する第一の養生工程と、上記第一の養生工程の後、60℃~85℃の温度で、0.8時間~2.0時間加熱する第二の養生工程と、をこの順で有する水硬性組成物の硬化体の製造方法である。
上記<5>に記載の養生方法の対象部材には特に制限はないが、なかでも、型枠の幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm未満である比較的小型の部材を製造する際に好適である。比較的小型の部材であると、型枠内に充填された水硬性組成物における中心部近傍温度が、環境温度を反映しやすい。従って、比較的小型の部材を製造する場合には、初期の養生温度を50℃以上の高温とすると、水硬性組成物の反応が急速に進行し、初期強度は高くなるが、条件によっては、硬化体の組織に影響を与えるおそれがある。このような場合には、第一の養生工程と、第二の養生工程の2段階の養生を行い、初期には、比較的低温で養生を行い、組織が安定した後に、より高温の条件で養生することで、初期強度の向上と長期養生後の圧縮強度の低下抑制が両立される。
<6> <1>~<3>のいずれか1項に記載の水硬性組成物の硬化物である水硬性組成物硬化体である。
本開示の水硬性組成物の作用は明確ではないが、以下のように推定される。
本開示の水硬性組成物に含まれる混和剤Cは、オキシアルキレン基を側鎖に有する構成単位1と、水硬性結合材であるセメント粒子等への吸着性が良好な構成単位2とを少なくとも含むビニル共重合体である。構成単位1は、比較的長鎖のオキシアルキレン基を側鎖に含むことで、オキシアルキレン基の立体障害による排除体積効果を与え、構成単位2は、カルボキシ基を含むことで、セメント粒子等へ吸着し、静電反発力を与える。そのため、混和剤Cを含む水硬性組成物の流動性が良好となる。また、上記ビニル共重合体において、構成単位1に対し、構成単位2の含有量を特定の比率とすることで、水硬性組成物の硬化性に影響を与えることなく、且つ、セメント粒子等に対して経時により順次吸着して、水硬性結合材の流動性発現に寄与するため、水硬性組成物の流動性が長時間に亘り維持されると考えられる。
硬化促進材Dは、硫酸塩と無機水酸化物とカルシウムサルフォアルミネートとが、水硬性結合材として、例えば、セメント粒子を含有する組成物を用いた場合、セメント水和の過程で生成されるエトリンガイトの析出を早め、セメント中のアルミネート鉱物の反応を促進し、その後、引き続き起こるセメント硬化体の強度発現の主因となる水和生成物を生じるエーライトの反応を促進することから、短時間で硬化体の強度発現が実現され、十分な初期硬度が発現されるものと推定される。
このため、混和剤Cと硬化促進材Dとの機能が相俟って、長期間流動性を維持しながら、水硬性組成物を練混ぜして、経時した後も型枠への注入が効率的に行われ、混和剤Cは、その構造に起因して水硬性組成物の硬化性に影響を与えることはなく、硬化促進材Dの機能が発現することで、型枠への注入後の水硬性組成物の硬化性が良好であると考えられる。
また、水硬性組成物を型枠内に注入した後、適切な温度条件で加熱養生を行うことで、硬化促進材Dの機能により、硬化反応が一層促進され、硬化性がより向上するものと考えられる。
水硬性組成物硬化体の製造における好ましい態様においては、部材の最小寸法が大きい柱部材や梁部材を製造する際には、熱容量が大きく部材の温度はすぐに上昇しないため、初めは、加熱養生温度を50℃以上として養生を行う。一方、部材の最小寸法が小さいスラブ部材や壁部材等を製造する際には、初期に比較的マイルドな条件で加熱し、一定時間の経過後により高温で加熱する2段階の養生工程を実施することで、初期の発熱温度上昇が緩やかになり、発熱が適切な範囲に維持される。このため、初期の急激な水和発熱に起因するひび割れの発生が抑制され、水和反応速度が適切に保たれることで、緻密な水和組織が形成されやすくなり、初期強度のみならず、長期的に圧縮強度の増進が得られるという効果をも得られるものと推定している。
上記は推定機構であり、本開示の水硬性組成物の機能に何らの制限を与えるものではない。
本発明のある実施形態によれば、水硬性組成物硬化体の製造に際し、流動性の保持時間が良好であり、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、その後、経時により充分な強度が発現される硬化体が得られる水硬性組成物が提供される。
本発明の別の実施形態によれば、練混ぜから経時した水硬性組成物を用いた場合でも、短時間で脱型可能な圧縮強度が発現され、高品質な水硬性組成物硬化体が生産性良く得られる水硬性組成物硬化体の製造方法及び該製造方法により得られた初期強度、経時による長期養生後の強度のいずれにも優れた水硬性組成物硬化体が提供される。
以下、本開示の水硬性組成物、水硬性組成物に含まれる有用な混和剤、硬化促進材並びに上記水硬性組成物を用いた水硬性組成物硬化体の製造方法及びそれにより得られた水硬性組成物硬化体について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本開示の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本開示はそのような実施態様に限定されない。
なお、本開示において、数値範囲を示す「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「常温」とは、特に断らない限り、25℃を指す。
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本開示において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくともいずれかを包含する概念で用いられ、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレートの少なくともいずれかを包含する概念で用いられる。
本開示において、水硬性組成物の流動性の保持時間が良好とは、水硬性組成物の混練が完了した後、少なくとも90分間は、型枠に注入可能な流動性を維持することを示す。
〔水硬性組成物〕
本開示の水硬性組成物は、以下に詳述する水硬性結合材A、水B、水硬性組成物用混和剤C、及び、水硬性組成物用硬化促進材Dを含有する水硬性組成物であり、上記水硬性組成物用硬化促進材Dを、上記水硬性結合材A100質量部に対して2質量部~10質量部含有する水硬性組成物である。
<水硬性組成物用混和剤C>
混和剤Cは、下記一般式(I)で示される化合物である単量体1由来の構成単位1の少なくとも1種及び下記単量体2由来の構成単位2の少なくとも1種を含むビニル共重合体であり、上記ビニル共重合体における上記構成単位1及び上記構成単位2の合計含有量100質量%に対する上記構成単位1の含有量が82質量%~95質量%であり、上記構成単位2の含有量が5質量%~18質量%であり、且つ、重量平均分子量が5000~200000である。
Figure 2023090515000004
一般式(I)において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
mは30~300の整数を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
は水素原子、又は、炭素数1~22のアルキル基を表す。
単量体2:
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、又は、それらの塩
(一般式(I)で示される化合物である単量体1由来の構成単位1)
上記一般式(I)において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、好ましくは、炭素数3~5のアルケニル基、又は、炭素数4の不飽和アシル基である。
Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、空気連行性と分散性の観点からは、オキシエチレン基がより好ましい。
mは30~300の整数を表す。
は水素原子、又は、炭素数1~22のアルキル基を表す。Rは水素原子、又は、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
単量体1の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられるが、単量体1は以下の例示には限定されない。
α-アリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)プロピレン、α-ビニル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-ビニル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)プロピレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシブチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等。
単量体1は、Rである炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基の部分で重合し、単量体1に由来する構成単位1は、側鎖にオキシアルキレン基を有する。オキシアルキレン基の数、即ち、一般式(I)におけるmは30~300の整数を表し、30~200が好ましく、30~150がより好ましい。mが上記範囲であることで、混和剤Cを含む水硬性組成物の初期強度発現性、及び流動性が良好となる。
(単量体2由来の構成単位2)
構成単位2は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、又は、それらの塩から選ばれる少なくとも1種の単量体2由来の構成単位である。
単量体2が塩の構造をとる場合、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等の無機塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、トリイソプロパノールアミン塩等の有機塩等が挙げられる。
単量体2の構造を以下に示す。
Figure 2023090515000005
構成単位2としては、混和剤Cを含む水硬性組成物の初期強度発現性及び流動性がより向上するという観点からは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、又は、(無水)マレイン酸由来の構成単位が好ましく、アクリル酸、又は、メタクリル酸由来の構成単位がより好ましい。
混和剤Cであるビニル共重合体は、上記構成単位1及び上記構成単位2の合計含有量100質量%に対する構成単位1の含有量が82質量%~95質量%であり、85質量%~93質量%であることが好ましい。
上記構成単位1及び上記構成単位2の合計含有量100質量%に対する構成単位2の含有量が5質量%~18質量%であり、7質量%~15質量%であることが好ましい。
上記構成単位1及び上記構成単位2の含有量が上記範囲であることで、混和剤Cは、水硬性組成物に対し、初期の硬化性に影響を与えることなく、良好な流動性を長期間与えることができる。
混和剤Cであるビニル共重合体は、上記構成単位1及び構成単位2に加え、効果を損なわない範囲において、上記構成単位1及び上記構成単位2以外の他の構成単位を含んでもよい。
他の構成単位としては、例えば、単量体として、(メタ)アリルスルホン酸およびその塩、(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステル等が挙げられる。
ビニル共重合体が他の構成単位を含む場合、他の構成単位の含有量は、ビニル共重合体に含まれる全構成単位100質量%に対し、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
混和剤Cであるビニル共重合体は、重量平均分子量が5000~200000であり、6000~150000であることが好ましく、8000~100000であることがより好ましく、10000~60000であることがさらに好ましい。
ビニル共重合体の重量平均分子量が5000未満、あるいは、重量平均分子量が200000を超える場合、水硬性組成物の初期流動性が低下する恐れがある。
ビニル共重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
本開示では、以下の条件で測定した値を用いている。
GPCは、Shodex GPC-101(昭和電工社製)を用い、カラムとして、OHpak SB-G、SB-804HQ、SB-802.5HQを用い、展開溶媒として50mM硝酸ナトリウム水溶液を用いる。
試料濃度:0.1質量%
流速:0.7ml/min(サンプル注入量:100μL)
測定温度:40℃
検出器は、RI(Refractive Index)検出器(示差屈折率検出器)を用いた。
検量線は、PEG/PEO(アジレント・テクノロジー社製)による換算値を用いる。
(混和剤Cの合成)
混和剤Cは、公知のビニル共重合体の合成方法により製造することができる。
以下に、混和剤Cの合成例を挙げるが、以下の記載の方法に限定されない。
1.混和剤:ビニル共重合体(C-1)の合成
イオン交換水680.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(45モル)オキシエチレン(単量体1:a-1)676.0g、メタクリル酸(単量体2:b-1)66.8g、アクリル酸メチル(他の単量体:c-1)14.9g、3-メルカプトプロピオン酸7.5g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液56.4gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。
次に、過硫酸ナトリウム10.0gをイオン交換水100.0gで希釈したものを反応容器に加え、重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム4.0gをイオン交換水40.0gで希釈したものを加え、2時間、65℃を維持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(C-1)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(C-1)を、上記の条件にてGPCにて分析したところ、重量平均分子量は32000であった。
2.混和剤:ビニル共重合体(C-2)の合成
イオン交換水383.0g及びα-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(115モル)オキシエチレン(単量体1:a-2)782.0gを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃に保持した。次に、3.5質量%過酸化水素水44.0gを3時間かけて滴下し、且つ、イオン交換水200.0gにヒドロキシエチルアクリレート(他の単量体:c-2)35.0gとアクリル酸(単量体2:b-2)58.7gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、同時に、イオン交換水35.0gにL-アスコルビン酸4.0gと連鎖移動剤としてチオグリコール酸5.0gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、60℃で2時間保持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(C-2)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(C-2)を、上記の条件にてGPCにて分析したところ、重量平均分子量は42000であった。
3.混和剤:ビニル共重合体(C-3)の合成
イオン交換水350.0g及びα-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(53モル)オキシエチレンポリ(2モル)オキシプロピレン(単量体1:a-3)700.0gを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃に保持した。次に、3.5質量%過酸化水素水44.0gを3時間かけて滴下し、且つ、イオン交換水200.0gにアクリル酸(単量体2:b-2)77.8gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、同時に、イオン交換水35.0gにL-アスコルビン酸4.0gと連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸3.2gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、60℃で2時間保持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(C-3)の40質量%水溶液を得た。このビニル共重合体(C-3)を、上記の条件にてGPCにて分析したところ、重量平均分子量は38000であった。
4.混和剤:ビニル共重合体(C-4)の合成
α-アリル-ω-メトキシ-ポリ(33モル)オキシエチレン(単量体1:a-4)1500.0g及び無水マレイン酸(単量体2:b-3)112.9gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して撹拌しながら均一に溶解した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル8.0gを反応用器内に投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、さらに2,2’-アゾビスイソブチロニトリル5.7gを投入し、ラジカル重合反応を2時間継続して行ない共重合体を得た。
得られた共重合体にイオン交換水及び30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(C-4)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(C-4)を、上記の条件にてGPCにて分析したところ、重量平均分子量は33000であった。
5.混和剤:ビニル共重合体(C-5)の合成
イオン交換水680.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(45モル)オキシエチレン(単量体1:a-1)623.1g、メタクリル酸(単量体2:b-1)118.7g、3-メルカプトプロピオン酸8.3g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液135.7gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。
次に、過硫酸ナトリウム10.0gをイオン交換水100.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム4.0gをイオン交換水40.0gで希釈したものを加え、2時間、65℃を維持し、重合反応を終了した。重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(C-5)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(C-5)を、上記の条件にてGPCにて分析したところ、重量平均分子量は34000であった。
上記合成例で得られた混和剤Cの組成を下記表1に示す。
Figure 2023090515000006

上記表1中の各構成単位は、上記合成例にて使用した各単量体種に由来するものである。即ち、構成単位1(a)は、単量体(a-1)、(a-2)、(a-3)又は(a-4)に由来する構成単位であり、構成単位2(b)は、単量体(b-1)、(b-2)、又は(b-3)に由来する構成単位であり、構成単位3(c)は、単量体(c-1)又は(c-2)に由来する構成単位である。
表1中、a-1はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(45モル)オキシエチレン、a-2はα-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(115モル)オキシエチレン、a-3はα-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(53モル)オキシエチレンポリ(2モル)オキシプロピレン、a-4はα-アリル-ω-メトキシ-ポリ(33モル)オキシエチレン、b-1はメタクリル酸、b-2はアクリル酸、b-3は無水マレイン酸、c-1はアクリル酸メチル、c-2はヒドロキシエチルアクリレートを示す。
表1に記載のビニル共重合体である混和剤Cにおける各構成単位の含有割合は、単量体の仕込み比を反映している。
(混和剤Cの含有量)
水硬性組成物における混和剤Cの含有量には特に制限はなく、必要とする流動性とその保持性を考慮して選択することができる。
例えば、混和剤Cの含有量は、後述の水硬性結合材Aの合計含有量100質量部に対し、0.05質量部~1.0質量部とすることができ、好ましくは、0.15質量部~0.5質量部の範囲である。
<水硬性組成物用硬化促進材D>
本開示の硬化促進材Dは、無機硫酸塩、カルシウムサルフォアルミネート、及び、無機水酸化物を含有し、硬化促進材Dの全量100質量%に対し、無機硫酸塩の含有量が10質量%~30質量%であり、カルシウムサルフォアルミネートの含有量が10質量%~70質量%であり、無機水酸化物の含有量が10質量%~30質量%である。
(無機硫酸塩)
硬化促進材Dに含まれる「無機硫酸塩」は、「硫酸塩、亜硫酸塩、及びチオ硫酸塩」を包含する意味で用いられる。
無機硫酸塩としては、硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、ピロ重亜硫酸塩等が挙げられ、硫酸塩、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩、及びピロ重亜硫酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
無機硫酸塩における無機塩としては、カルシウム塩、アルミニウム塩等の金属塩、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属塩等が挙げられ、カルシウム塩が好ましい。
無機硫酸塩としては、より具体的には、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム、及び硫酸ナトリウムが挙げられる。
無機硫酸塩は、市販品としても入手可能であり、例えば、デンカ(株)製のデンカエフダック、デンカクイックデモルダー等が挙げられる。
無機亜硫酸塩としては、亜硫酸塩、重亜硫酸塩、ピロ硫酸塩、ピロ亜硫酸塩及びピロ重亜硫酸塩等が挙げられ、特に限定されるものではないが、より具体的には、例えば、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸カルシウム、重亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸カリウム、重亜硫酸リチウム、重亜硫酸カルシウム、ピロ硫酸ナトリウム、ピロ硫酸カリウム、ピロ硫酸リチウム、ピロ硫酸カルシウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、ピロ亜硫酸リチウム、ピロ亜硫酸カルシウム、ピロ重亜硫酸ナトリウム、ピロ重亜硫酸カリウム、ピロ重亜硫酸リチウム及びピロ重亜硫酸カルシウム等が挙げられる。
また、チオ硫酸塩としては、チオ硫酸ナトリウムが挙げられる。
なかでも、早期強度発現における水酸化カルシウムとの相乗効果の観点から、硫酸カルシウムが好ましく用いられる。
硬化促進材Dに含まれる無機硫酸塩は、1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
硬化促進材D中の無機硫酸塩の含有量は、硬化促進材Dの全量を100質量%とした場合、10質量%以上30質量%以下の範囲であり、12質量%以上25質量%以下の範囲であることが好ましく、13質量%以上20質量%以下の範囲であることがより好ましい。
(カルシウムサルフォアルミネート)
硬化促進材Dは、カルシウムサルフォアルミネート(3CaO・3Al・CaSO)を含む。
カルシウムサルフォアルミネートは、水硬性組成物におけるコンクリート等の結合材の乾燥収縮あるいは温度変化による自己ひずみの発生を抑制するために用いられる混和材として知られる化合物である。
カルシウムサルフォアルミネートは、通常、石灰石、石膏、ボーキサイト等を出発原料として、高温焼成法によって得られるクリンカーを粉砕したものであり、主要構成鉱物である、Hauyne(3CaO・3Al23・CaSO4)に加え、酸化カルシウム(生石灰:CaO)及び硫酸カルシウム(無水石膏:CaSO4)等の化合物を不可避不純物として含む場合がある。Hauyne及び上記不可避不純物等は水と反応すると硬化し、カルシウムサルフォアルミネート水和物を生成する。得られる水和物は、針状結晶のエトリンガイト(Ettringite)と呼ばれる高硫酸塩(3CaO・Al23・3CaSO4・32H2O)と、六角板状結晶の低硫酸塩(3CaO・Al23・CaSO4・12H2O)である。
カルシウムサルフォアルミネートは、通常、上記方法により得られるが、入手方法には、特に制限はなく、例えば、特開平8-337453号公報に記載の方法により得ることもできる。
カルシウムサルフォアルミネートは合成により得てもよく、市販品としても入手可能である。カルシウムサルフォアルミネートの市販品としては、例えば、デンカ(株)製デンカエフダックタイプTには、60質量%以上のカルシウムサルフォアルミネートを含有する。
硬化促進材D中のカルシウムサルフォアルミネートの含有量は、硬化促進材Dの全量を100質量%とした場合、10質量%~70質量%の範囲であり、15質量%~65質量%の範囲であることが好ましく、20質量%~60質量%の範囲であることがより好ましい。
また、上記無機硫酸塩とカルシウムサルフォアルミネートとの含有比率は、質量基準で、1:1~1:10の範囲であることが好ましく、1:2~1:5の範囲であることがより好ましい。
(無機水酸化物)
硬化促進材Dは、無機水酸化物を含有する。
硬化促進材Dに含まれる無機水酸化物には、特に限定はないが、効果の観点からは、生石灰(主成分は酸化カルシウムCaO)に水を加えて消化させ、消石灰としたもの(主成分は水酸化カルシウムCa(OH)2)を用いることができる。生石灰から得られる水酸化カルシウムは、多少の不純物、例えば、未反応の酸化カルシウム等を含有する場合があるが、水酸化カルシウムの含有量が、90質量%以上であれば本開示における無機水酸化物として使用可能である。また、焼成ドロマイト、遊離石灰(f-CaO)を含む市販の膨張材に水を加えて消化させて得られる水酸化カルシウムを、無機水酸化物として使用してもよい。
硬化促進材Dにおける無機水酸化物の含有量は、硬化促進材Dの全量を100質量%としたとき、10質量%~30質量%の範囲であり、15質量%~28質量%の範囲であることが好ましく、20質量%~25質量%の範囲であることがより好ましい。
(硬化促進材Dに含まれるその他の添加剤)
硬化促進材Dには、上記3種の材料に加え、効果を損なわない限りにおいて公知の添加剤を含有してもよい。
使用しうる添加剤としては、硬化促進効果を有するギ酸塩、反応調整剤等を挙げることができる。ギ酸塩としては、ギ酸カルシウム、ギ酸アルミニウムが挙げられ、反応調整剤としては、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、クエン酸、グルコン酸ナトリウム、酒石酸等が挙げられ、これらは、水硬性組成物の使用目的、或いは、使用される水硬性材料の種類に応じて適宜選択される。
本開示の水硬性組成物に用い得る硬化促進材Dの一例を下記表2に示す。硬化促進材Dは以下の例示には限定されない。
下記表2中、d-1は硫酸カルシウム、e-1はカルシウムサルフォアルミネート、f-1は水酸化カルシウムを表す。
Figure 2023090515000007
水硬性組成物における硬化促進材Dの含有量は、後述の水硬性結合材Aの合計含有量100質量部に対し、2質量部~10質量部の範囲で適宜選択することができ、5質量部~8質量部の範囲とすることが好ましい。
硬化促進材Dの含有量を上記範囲とすることで、水硬性組成物の初期硬化促進性が良好となり、発熱が適正な範囲に維持される。
なお、上記水硬性結合材Aの合計含有量は、通常、水硬性組成物における結合材と称される材料の総量であり、セメント等の結合材に加え、通常、セメント等と併用される他の硬化性の材料、例えば、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ等との合計含有量を指す。
<水硬性結合材A>
本開示の水硬性組成物は、ポルトランドセメント等の水硬性結合材Aを含む。
水硬性結合材Aとしては、コンクリート、モルタル、グラウト等、水と混合して硬化体を形成しうる水硬性組成物に主成分として含まれる結合材を包含する。
以下、水硬性結合材Aとして、コンクリート組成物に通常用いられるポルトランドセメントの例を挙げて説明するが、本開示における水硬性結合材Aは、ポルトランドセメントには限定されない。
(ポルトランドセメント)
ポルトランドセメントには特に制限はなく、水硬性組成物の使用目的に応じて、各種セメント類の中から、適宜選択することができる。
水硬性結合材Aの一態様であるポルトランドセメントとしては、早強ポルトランドセメント、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント等が挙げられる。
ポルトランドセメントは、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム等でその一部に置換し、混合セメントとして用いることもできる。
ポルトランドセメントの添加量は、初期硬化性、初期強度、長期強度、水硬性組成物硬化体の使用目的等を考慮して適宜選択される。通常は、硬化体を構成する水硬性組成物中に、総量で270kg/m~650kg/m含有することが好ましく、320kg/m~530kg/m含有することがさらに好ましい。
<水B>
本開示の水硬性組成物は、水を含有する。
水硬性組成物に用いられる水には特に制限はなく、水道水等を使用することができる。
水硬性組成物における水の含有量は、水硬性組成物の流動性及び水硬性組成物の硬化物である水硬性組成物硬化体の所望の特性に応じて適宜選択すればよい。
水/水硬性結合材の含有比率は、最終的に得られる水硬性組成物硬化体の圧縮強度として、18N/mm以上の強度を発現する範囲とすることが好ましい。また、大気中の二酸化炭素との炭酸化反応を抑制し、水硬性組成物硬化体内に配置される鉄筋を腐食から保護するという観点から、水/水硬性結合材の含有比率は、質量換算で60%以下であることが好ましい。
水硬性組成物硬化体を形成するための水硬性組成物においては、水とセメントの含有比率のみならず、既述の混和剤C、硬化促進材D、骨材等の各種材料の含有比を適宜調整することで強度や物性を調整することもできる。
<その他の成分>
本開示の水硬性組成物は、既述の水硬性結合材A、水B、混和剤C及び硬化促進材Dに加え、効果を損なわない限りにおいて、目的に応じてその他の成分をさらに含有することができる。
水硬性組成物が含み得るその他の成分としては、既述の混和剤Cとは異なる水硬性組成物用混和剤E、セメント系水硬性組成物に通常用いられる各種添加剤、例えば、反応調整剤、減水剤、空気連行剤、消泡剤、既述の硬化促進材Dとは異なる硬化促進剤、凝結遅延剤、収縮低減剤、増粘剤、防腐剤、防錆剤等が挙げられる。
<水硬性組成物用混和剤E>
本開示の水硬性組成物は、さらに、下記水硬性組成物用混和剤E(以下、混和剤Eとも称する)を含有することができる。
混和剤Eは、既述の、混和剤Cに含まれる単量体2由来の構成単位2の少なくとも1種、下記一般式(II)で示される化合物である単量体3由来の構成単位3の少なくとも1種、及び、下記一般式(III)で示される化合物である単量体4由来の構成単位4の少なくとも1種を含むビニル共重合体であり、ビニル共重合体における、構成単位2、構成単位3、及び、構成単位4の合計含有量100質量%に対し、構成単位2の含有量が0質量%を超え5質量%未満、構成単位3の含有量が51質量%以上99質量%未満、及び、構成単位4の含有量が1質量%以上45質量%以下であり、ビニル共重合体の重量平均分子量が5000~200000である。
(単量体2由来の構成単位2)
混和剤Eに含まれる構成単位2は、既述の混和剤Cに含まれる構成単位2と同じものが例示される。従って、単量体2については、上記混和剤Cの記載を参照し、混和剤Eでは単量体2の詳細な説明を省略する。
混和剤Eにおいては、構成単位2を構成する単量体2は、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、フマル酸、及び、(無水)マレイン酸が好ましく、アクリル酸、及び、メタクリル酸がより好ましい。
(単量体3由来の構成単位3)
混和剤Eに含まれる構成単位3は、下記一般式(II)で示される化合物である単量体3由来の構成単位である。
Figure 2023090515000008
一般式(II)において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、好ましくは、炭素数3~5のアルケニル基、又は、炭素数4の不飽和アシル基である。
Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、空気連行性と分散性の観点からは、オキシエチレン基がより好ましい。
nは5~300の整数を表す。nは、混和剤Eによる水硬性組成物の流動性をより向上させるという観点から、5~200が好ましく、7~150がより好ましい。
は水素原子、又は、炭素数1~22のアルキル基を表す。Rは水素原子、又は、炭素数1~3のアルキル基が好ましい。
単量体3の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられるが、単量体3は以下の例示には限定されない。
α-アリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ブトキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-ブトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-ビニル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-ビニル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-ビニル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシブチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタリル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-ポリオキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等。
(単量体4由来の構成単位4)
混和剤Eに含まれる構成単位4は、下記一般式(III)で示される化合物である単量体4由来の構成単位である。
Figure 2023090515000009
一般式(III)において、Rは炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、好ましくは、炭素数3の不飽和アシル基である。
Oは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がより好ましい。
pは0~4の整数を表す。pは0~2が好ましい。
は水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を表し、pが0の場合、Rは炭素数1~22のアルキル基を表す。なかでも、Rとしては、水素原子、又は、炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
単量体4の具体例としては、以下に示す化合物が挙げられるが、単量体4は以下の例示には限定されない。
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリル、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-アクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-ヒドロキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシプロピレン、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-(ポリ)オキシエチレン(ポリ)オキシプロピレン等。
混和剤Eであるビニル共重合体における、既述の構成単位2、構成単位3、及び、構成単位4の合計含有量100質量%に対する構成単位2の含有量は、0質量%を超え5質量%未満であり、0質量%を超え4質量%以下が好ましい。なお、構成単位2の含有量が0質量%を超えるとは、ビニル共重合体において、合成時における原料由来の不可避不純物としての構成単位2を含み、構成単位2の含有量がビニル共重合体を構成する全構成単位の0.01質量%未満であることを示す。
混和剤Eであるビニル共重合体における、既述の構成単位2、構成単位3、及び、構成単位4の合計含有量100質量%に対する構成単位3の含有量は、51質量%以上99質量%未満であり、55質量%以上98質量%以下が好ましい。
混和剤Eであるビニル共重合体における、既述の構成単位2、構成単位3、及び、構成単位4の合計含有量100質量%に対する構成単位4の含有量は、1質量%~45質量%であり、2質量%~45質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましい。
混和剤Eであるビニル共重合体の重量平均分子量は5000~200000であり、8000~100000が好ましく、10000~60000がより好ましい。
本開示における混和剤Eとしてのビニル共重合体の重量平均分子量は、混和剤Cにおいて述べた方法と同様にして測定された値を用いている。
(混和剤Eの合成)
混和剤Eは、公知のビニル共重合体の合成方法により製造することができる。
以下に、混和剤Eの合成例を挙げるが、以下の記載の方法に限定されない。
1.混和剤:ビニル共重合体(E-1)の合成
イオン交換水700.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(7モル)オキシエチレン(単量体3:g-1)550.0g、メタクリル酸(単量体2:b-1)14.1g、ヒドロキシエチルアクリレート(単量体4:h-1)141.0g、3-メルカプトプロピオン酸12.2g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液3.7gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。
次に、過硫酸ナトリウム9.0gをイオン交換水90.0gで希釈したものを反応容器に加え、重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム4.5gをイオン交換水45.0gで希釈したものを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(E-1)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(E-1)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は46000であった。
2.混和剤:ビニル共重合体(E-2)の合成
イオン交換水383.0g及びα-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(137モル)オキシエチレン(単量体3:g-2)700.0gを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃に保持した。次に、3.5質量%過酸化水素水44.0gを3時間かけて滴下し、且つ、イオン交換水200.0gにアクリル酸(単量体2:b-2)30.8gとヒドロキシエチルアクリレート(単量体4:h-1)38.5gを均一に溶解させた水溶液を反応容器内に3時間かけて滴下し、さらに、同時に、イオン交換水35.0gにL-アスコルビン酸4.0gと連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸5.5gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、60℃で2時間保持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(E-2)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(E-2)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は44000であった。
3.混和剤:ビニル共重合体(E-3)の合成
イオン交換水400.0g及びα-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(53モル)オキシエチレンポリ(2モル)オキシプロピレン(単量体3:g-3)670.0gを反応容器に仕込み、撹拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃に保持した。次に、3.5質量%過酸化水素水44.0gを3時間かけて反応容器内に滴下し、且つ、イオン交換水200.0gにフマル酸(単量体2:b-4)15.6g、アクリル酸メチル(単量体4:h-2)93.5gを均一に溶解させた水溶液を3時間かけて滴下し、さらに、同時に、イオン交換水35.0gにL-アスコルビン酸4.0gと連鎖移動剤として3-メルカプトプロピオン酸3.2gを溶解させた水溶液を4時間かけて滴下した。その後、60℃で2時間保持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(E-3)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(E-3)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は38000であった。
4.混和剤:ビニル共重合体(E-4)の合成
イオン交換水300.0gを反応容器に仕込み、攪拌しながら雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて65℃とした。イオン交換水540.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(23モル)オキシエチレン(単量体3:g-4)600.0g、ジエチレングリコールモノアクリレート(単量体4:h-3)150.0g及びメルカプトエタノール5.5gを均一に溶解させた水溶液を2時間かけて滴下すると共に、過硫酸アンモニウム11.6gをイオン交換水116.0gで希釈したものを3時間かけて反応容器内に滴下した。その後、65℃で1時間保持し、重合反応を終了した。ビニル共重合体(E-4)には、単量体3の不可避不純物として存在する単量体2(メタクリル酸:b-1)由来の構成単位2を僅かに含む。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、共重合体1(E-4)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(E-4)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は33000であった。
5.混和剤:ビニル共重合体(E-5)の合成
イオン交換水700.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(7モル)オキシエチレン(単量体3:g-1)400.0g、メタクリル酸(単量体2:b-1)33.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(4モル)オキシエチレン(単量体4:h-4)300.9g、3-メルカプトプロピオン酸7.4g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液6.5gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。
次に、過硫酸ナトリウム10.0gをイオン交換水100.0gで希釈したものを反応容器内に加え、重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム4.0gをイオン交換水40.0gで希釈したものを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(E-5)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(E-5)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は62000であった。
上記合成例で得られた混和剤Eの組成を下記表3に示す。
(*1:下記表3において、混和剤E-4には、メタクリル酸由来の構成単位2を、0質量%を超え、0.01質量%未満の量で含む。)
Figure 2023090515000010

上記表3中、ビニル共重合体における各構成単位は、上記合成例にて使用した各単量体種に由来するものである。即ち、構成単位2(b)は、上記合成例にて使用した単量体(b-1)、(b-2)、又は(b-4)に由来する構成単位であり、構成単位3(g)は、単量体(g-1)、(g-2)、(g-3)又は(g-4)に由来する構成単位であり、構成単位4(h)は、単量体(h-1)、(h-2)、(h-3)、又は(h-4)に由来する構成単位である。
表3中、b-1はメタクリル酸、b-2はアクリル酸、b-4はフマル酸、g-1はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(7モル)オキシエチレン、g-2はα-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(137モル)オキシエチレン、g-3はα-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(53モル)オキシエチレンポリ(2モル)オキシプロピレン、g-4はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(23モル)オキシエチレン、h-1はヒドロキシエチルアクリレート、h-2はアクリル酸メチル、h-3はジエチレングリコールモノアクリレート、h-4はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(4モル)オキシエチレンを示す。
ビニル共重合体である混和剤Eにおける各構成単位の含有割合は、単量体の仕込み比を反映している。
本開示の水硬性組成物が、混和剤Eをさらに含有する場合、混和剤C、及び、混和剤Eの合計含有量100質量%に対し、混和剤Cを60質量%~99質量%含有し、且つ、混和剤Eを1質量%~40質量%含有することが好ましい。
混和剤C、及び、混和剤Eの合計含有量100質量%に対し、混和剤Cは、65質量%~97質量%含有することがより好ましく、70質量%~97質量%含有することがさらに好ましく、混和剤Eは、3質量%~35質量%含有することがより好ましく、3質量%~30質量%含有することがさらに好ましい。
(反応調整剤)
本開示の水硬性組成物は、所要の速硬性が得られる範囲で水硬性結合材Aの反応調整剤を含んでもよい。
反応調整剤としては、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、クエン酸、グルコン酸ナトリウム、酒石酸等が挙げられる。
なお、その他の成分の種類、添加量は、上記に限定されず、水硬性組成物により形成される硬化体の形状、用途、必要な強度等、それぞれ所定の性能を満足する種類、添加量を適宜選定すればよい。
水硬性組成物には、目的に応じて骨材を使用することができる。骨材は、硬化反応に対して影響を及ぼすものではないため、添加のタイミングは特に制限されない。
水硬性組成物に用い得る骨材には特に制限はなく、硬化体の所望のサイズ、物性に応じて、公知の細骨材、粗骨材を用いることができ、含有量も、一般的なコンクリート組成物等の水硬性組成物同様に、効果を損なわない範囲で任意に選択することができる。
硬化体の使用目的によっては、骨材を必要とせず、その場合には、骨材を使用せずに水硬性組成物が調製される。
水を含む水硬性組成物の混練は公知のミキサにより行えばよい。
<水硬性組成物の調製方法>
コンクリート組成物に代表される水硬性組成物を用いて水硬性組成物硬化体(以下、単に硬化体とも言う)を製造するには、まず、水硬性組成物を調製し、型枠に注入して硬化させればよい。
水硬性組成物の調製は、公知の方法で実施することができる。例えば、少なくとも既述の水硬性結合材A、硬化促進材D、及び、反応調整剤等のその他の成分を、ミキサで混練し、十分に混合した後、水B、混和剤C、及び所望により用いられる混和剤Eを添加して、混合する方法が挙げられる。
水硬性組成物が、必要に応じて骨材を含む場合、骨材の混入量は、硬化体の用途、経済性、ハンドリング性等を考慮して適宜選択される。通常は、例えば、コンクリート組成物100体積部対して、5mm以上のサイズの粗骨材の混入量は25体積部~45体積部の範囲であることが好ましい。
各成分を混入した後の水硬性組成物の混合時間は、通常、1分~3分間程度である。
このようにして、硬化体を形成するための水硬性組成物が調製される。
本開示の水硬性組成物は、そこに均一に含まれる混和剤C及び硬化促進材Dがポルトランドセメント粒子等の水硬性結合材に適切に作用することにより、混合後、長時間にわたり、必要な流動性を維持することができ、型枠への注入後、養生を行うことにより短時間で必要な強度が発現される。
既述の本開示の水硬性組成物は、流動性の保持時間が良好であるため、調製後に経時した場合でも、型枠への注入を容易に行うことができる。
従って、従来困難であった、水硬性組成物を調製後に、現場に搬送し、現場にてプレキャストコンクリート部材を作製することも可能となる。
現場にて、水硬性組成物を型枠に打込み、蒸気養生、加熱シート等による養生を行うことで、速硬性が発現し、コンクリート組成物等の水硬性組成物の硬化体が得られることで、構造物構築の施工期間を短縮しうる。また、工場で製造したプレキャストコンクリート部材を現場に搬送する態様に比較し、現場にてプレキャストコンクリート部材を製造しうるため、部材の搬送にかかるコストを低減しうるという利点をも有する。
即ち、本開示の水硬性組成物は、現場にて製造されるプレキャストコンクリート部材の製造に好適に用いることができる。
水硬性組成物においては、流動性及びその保持性に加え、あと伸びも重要な物性といえる。水硬性組成物を混練した後、経時によりスランプが増加することがある。この現象を水硬性組成物のあと伸びと称し、あと伸びが生じると、混練した後の水硬性組成物の型枠への注入における工程管理が困難になる場合がある。
本開示の水硬性組成物は、流動性の保持時間が良好であることに加え、さらに、あと伸びも生じ難いという利点を有する。
本開示の水硬性組成物は、さらに、型枠注入後の速硬性に優れるため、種々の用途に好適に使用しうる。
例えば、コンクリート硬化体の製造に適用することで、工場におけるプレキャストコンクリート部材に代表されるコンクリート硬化体の生産性を向上しうる。
<水硬性組成物硬化体の製造方法>
本開示の水硬性組成物を適切な型枠に注入(充填、打設)して硬化させることで水硬性組成物硬化体を得ることができる。
即ち、本開示の水硬性組成物硬化体の製造方法(以下、本開示の製造方法とも称する)は、上記本開示の水硬性組成物、即ち、水硬性結合材Aと、水Bと、混和剤Cと、硬化促進材Dとを少なくとも含む水硬性組成物を混練する工程と、混練された水硬性組成物を型枠に注入する工程と、型枠に注入された水硬性組成物加熱して養生する工程と、をこの順で有する。
以下、プレキャストコンクリート部材の製造を例に挙げて、水硬性組成物硬化体の製造方法を工程順に詳細に説明する。本開示の硬化体の製造方法は、プレキャストコンクリート部材の製造には限定されない。
本開示の水硬性組成物は、混練することで、水硬性組成物に含まれる混和剤C及び硬化促進材Dの影響により、流動性が良好であるにも拘わらず、型枠内での水和反応が効率よく進行する。その後、行われる加熱による養生工程により、さらに硬化が促進されるために、短時間に脱型可能な強度を達成することができる。
通常、速硬性の水硬性組成物では、混練する工程で混合物を得てから、型枠注入までの時間は、30分以内であることが好ましいとされている。即ち、硬化性が良好である水硬性組成物は、短時間に流動性が低下し、硬化反応が開始されるためである。しかしながら、既述の本開示の水硬性組成物は、速硬性が良好であり、且つ、流動性を長時間に亘り維持することができるため、水硬性組成物の混練から型枠注入までの時間を、30分間~90分間程度までとすることができる。
従って、工場内で調製された水硬性組成物を現場まで搬送し、現場にて型枠内に注入することができる。
本開示の水硬性組成物は、流動性の保持時間が長期間に亘り、且つ、速硬性が良好である。本発明者らの検討によれば、水硬性組成物を注入する型枠のサイズにより、好ましい養生条件があることが明らかとなった。
型枠内の水硬性組成物を養生する工程においては、型枠のサイズ、即ち、型枠の幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が、熱の内部への影響を受けやすいために、型枠の幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm~150cmの型枠を用いる場合を第一の態様、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm未満の型枠を用いる態様を第二の態様として説明する。
<水硬性組成物硬化体の製造方法:第一の態様>
本開示の硬化体の製造方法の第一の態様では、上記本開示の水硬性組成物を混練する工程と、混練された上記水硬性組成物を水硬性組成物の硬化体を形成する型枠であって、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm~150cmの型枠に注入する工程と、
上記型枠に注入された上記水硬性組成物を50℃~95℃の温度で加熱する養生工程と、をこの順で有する。
(混練した水硬性組成物を型枠に注入する工程)
混練した水硬性組成物は、混練する工程から90分間以内に型枠に注入することが好ましく、60分間以内に注入することがより好ましい。
混練した後、経時した水硬性組成物は、雰囲気温度の影響を受け、混練直後よりも温度が低下することがある。本開示の水硬性組成物では、経時後も長時間に亘り流動性が維持されることから、型枠注入時の水硬性組成物の温度は、5℃~38℃の範囲であれば問題なく型枠内に注入することができる。
加熱による養生工程としては、製造される水硬性組成物硬化体の大きさによって、養生時の加熱条件が、水硬性組成物内部の温度上昇に与える影響が異なり、特に中心部近傍における温度条件が異なってくるために、目的とする硬化体のサイズに応じた最適な加熱養生の工程を選択することが好ましい。
本開示の第一の態様における本工程では、硬化体(「部材」とも称する)の最小寸法、即ち、硬化体を形成する型枠であって、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法(以下、単に「最小寸法」とも称する)が30cm~150cmの型枠を用いる。最小寸法が30cm以上であるような、部材厚が大きい硬化体を製造する場合には、水硬性組成物の熱容量が大きく、引き続き行われる加熱により水硬性組成物を養生する場合の温度を後述のように制御することが好ましい。
(型枠に注入した水硬性組成物を加熱する養生工程)
最小寸法が30cm~150cmの型枠を用いる場合、加熱温度は50℃~95℃の温度で加熱する。
加熱養生する際には、高い温度条件で加熱しても水硬性組成物の温度が上がりはじめるまでに時間が掛かるために、養生工程の当初から養生温度(環境温度)を高い温度にしておくことが好ましい。すなわち、昇温速度0.2℃/min以上5.0℃/min以下の条件で、型枠注入後0.1~1.0時間後に昇温を開始し、上記50℃~95℃の加熱到達温度で加熱する加熱養生を行う。加熱温度(加熱到達温度)は、さらに好ましくは、60℃~90℃の範囲である。
本開示の水硬性組成物を用いて、上記の養生工程で養生すると、最小断面の大きな部材でも、加熱養生を開始してから3時間後には脱型して吊り上げることが可能となる。
本開示における加熱養生における加熱到達温度は、雰囲気温度を測定した値を用いており、昇温速度も雰囲気温度に対する値である。ここに示した条件であれば、最小断面が100cm~150cmの柱のような厚部材でも、水硬性組成物内部の温度上昇速度は、表層から3cmの位置で0.3~0.5℃/min程度であり、中心部の温度上昇速度は0.1~0.2℃/minであることを本発明者らは確認している。
<水硬性組成物硬化体の製造方法:第二の態様>
本開示の硬化体の製造方法の第二の態様は、上記本開示の水硬性組成物を混練する工程と、混練された上記水硬性組成物を水硬性組成物の硬化体を形成する型枠であって、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm未満の型枠に注入する工程と、上記型枠に注入された上記水硬性組成物を30℃~48℃の温度にて、0.6時間~1.5時間加熱する第一の養生工程と、上記第一の養生工程の後、60℃~85℃の温度で、0.8時間~2.0時間加熱する第二の養生工程と、をこの順で有する。
部材の最小寸法が30cm未満と部材厚が小さい硬化体、例えば、少なくとも一辺の寸法が30cm未満の直方体又は立方体、直径が30cm未満、例えば直径が10cm~20cm程度の円柱等、を製造する場合には、部材厚が大きな型枠内に充填された水硬性組成物と比べて加熱養生により水硬性組成物全体の温度が上昇しやすい。
このため、本開示の水硬性組成物を使用したとしても、適切な条件で加熱しなければ、長期的な強度発現が低下したり、熱膨張ひび割れが生じたりする等、品質上の問題を生じる。このような薄部材の加熱による養生工程は、次のように2段階とすることが有効である。
2段階の養生のうち、第一の養生では、水硬性組成物を30℃~48℃の温度にて、0.6時間~1.5時間加熱する。養生温度は30℃~45℃が好ましい。養生時間は0.9時間~1.3時間が好ましい。
昇温速度としては、5℃/min~10℃/minの条件で、型枠注入後0.1時間~1.0時間後に昇温を開始し、48℃以下の加熱到達温度で加熱する加熱養生を行うことが好ましい。
初期の加熱到達温度が48℃を超えると、初期強度の向上効果は得られるが、急激な温度上昇により体積膨張が著しくなり、常温に降温する際の体積収縮によりクラックを生じたり、内部組織が粗な細孔構造となったりする虞があり、さらに、材齢28日といった経時後の圧縮強度が低下することが懸念される。
水硬性組成物を混練し、型枠に充填し、加熱養生を施すと、混練を開始した時間から1.2時間前後が経過すると、水硬性組成物の反応を進めるための加熱時の熱膨張に係る変形が生じ難くなる。これは水硬性結合材の温度が除々に上昇してゆき、水和反応が活発化し、流動性が失われて水硬性結合材が徐々に固体化するためと考えている。硬化時の加熱養生温度が低いほど、より熱膨張による悪影響を受け難く、加熱養生温度としては48℃以下、好ましくは45℃以下である。この反面、加熱養生温度が低いとセメントの水和反応が遅くなり、狙いとする打込み後3時間での早強性が得られなくなるために、加熱到達温度が低すぎるのは好ましくなく、従って、到達温度の下限値は30℃としている。
第一の養生では、加熱到達温度としては、熱膨張の影響が大きい、混練してから1.2時間前後の期間を、より熱膨張の悪影響を受け難く、且つ、水和反応の促進も期待できる30℃~48℃とし、加熱養生の保持時間としては、水硬性組成物を混練して型枠に充填するまで0.1時間~0.5時間程度、長ければ1時間程度を要することを考慮して、0.6時間~1.5時間と規定した。
既述の第一の養生工程の後、60℃~85℃の温度で、0.8時間~2.0時間加熱する第二の養生を行う。
第二の養生では、既述の第一の養生の加熱到達温度において0.6時間~1.5時間保持された後、さらに、好ましくは、昇温速度0.2℃/min~1.4℃/minの条件で、昇温を開始し、加熱到達温度を60℃~85℃、好ましくは、70℃~80℃として、0.8時間~2.0時間加熱養生を行う態様が挙げられる。
第一の養生により、比較的低温の加熱養生にて穏やかに水硬性組成物の凝結促進を行い、組織が安定した後に、第二の養生工程で、さらに高温度で加熱養生を行うことで、水硬性組成物の水和反応が促進され、得られた硬化体は、初期強度のみならず経時後の圧縮強度にも優れる。
本開示の製造方法の第二の態様における、加熱養生の加熱到達温度及び昇温速度は、既述のように、雰囲気温度の値であるが、ここに示した条件であれば、水硬性組成物内部の温度上昇速度は、部材厚が20cmのスラブ部材でも、0.1℃/min~1.0℃/minになることが本発明らの検討で明らかとなっている。
本開示の製造方法では、型枠、即ち、得られる硬化体の最小寸法を踏まえて最適な加熱養生を行う。このため、型枠内に打設した水硬性組成物は、硬化促進材D、所望により含まれる反応調整剤等が水硬性結合材Aに複合的に作用することにより、硬化体にクラックを生じさせるような高温に達する温度上昇もなく、迅速に硬化反応が進行するため、打設後3時間経過した後の圧縮強度が、8N/mm以上、好ましくは、12N/mm以上となり、その時点で型枠を取り外した場合でも、搬送に耐える圧縮強度を実現するものである。
従って、本開示の製造方法によれば、型枠内での硬化時間が従来よりも短縮され、生産性に優れた水硬性組成物硬化体の製造が可能になる。
(その他の工程)
加熱養生後は、硬化体は脱型され、表面温度が常温(25℃)となるまで空気中に放置される。放置する場合には、硬化体の表面に養生剤を塗布する、硬化体をシートで被覆する、等の公知の手段を施すことにより、得られる硬化体の強度、中性化抵抗性等をより高い水準で維持することができる。
養生剤及び養生シートの使用方法は特に制限はなく、公知のものを使用することができる。使用しうる養生剤としては、例えば、優れた界面活性の浸透作用により、脱型後の初期材齢のコンクリート表面の急激な乾燥を抑制する養生剤である特許第4033474号公報に記載の養生剤が挙げられ、市販品としては、例えば、ポールケアW(竹本油脂製)、脱型直後のコンクリート面を緻密な防水性の被膜で覆い、コンクリートの初期の乾燥収縮を遅らせることによりクラックの発生を低減できるバーティキュア(ノックス社製)、脱型後の浸透型コンクリート表面養生剤であって脱型直後のコンクリートに塗布することにより、コンクリート表面に浸透し水分の蒸発を抑制するとともに、空隙中の自由水の表面張力を下げ、乾燥収縮を低減しコンクリート面の微細なクラックの発生を防ぐコンクリック(ノックス製)等が挙げられる。養生剤の塗布量は、種類によって適宜選択されるが、一般的には、100g/m~200g/m程度であることが望ましい。
物理的な効果により乾燥を防止できる養生シート、養生マット等を用いてもよく、使用しうる市販の養生マットとしては、例えば、アクアマット(早川ゴム製)、コンマット(アオイ化学)等が挙げられ、その他にも、一般的に使用されている養生シート等をいずれも用いることができる。
養生マットとしては、水分の散逸を抑制する効果を有し、且つ、断熱性が良好で硬化体表面の温度が急激に変化することを抑制する効果を有するものが好ましい。
また、養生剤と養生マットとを併用することも効果の観点から好ましい態様といえる。
<水硬性組成物硬化体>
本開示の水硬性組成物硬化体は、既述の本開示の水硬性組成物の硬化物である。
本開示の水硬性組成物硬化体は、調製後の流動性が長時間に亘り維持され、速硬性が良好な水硬性組成物の硬化物であり、調製後の搬送先においても流動性が維持されることで製造工程の自由度が高く、短時間で脱型可能であり、生産性が良好である。このため、構造材等の形成に用いることで、工期を短縮することができる。また、プレキャストコンクリート部材に適用した場合にも、現場での製造が可能であり、且つ、養生が短時間ですむため、生産性に優れる。さらに、急激な温度上昇による温度ひび割れの発生を抑え、初期の高温履歴を受けることによる長期強度発現の停滞が無くなる等の利点を有するために、その応用範囲は広い。
従って、本開示の水硬性組成物硬化体は、例えば、型枠注入後、養生して3時間経過すれば、圧縮強度が、8N/mm以上となり、脱型、吊り下げ搬送が可能であるという優れた効果を奏する。
以下、実施例を挙げて、本開示の水硬性組成物、水硬性組成物硬化体の製造方法、及び水硬性組成物硬化体についてさらに詳細に説明するが、本開示は、以下に記載の具体例に限定されない。
〔混和剤の調製〕
既述の合成例にて得た混和剤C(混和剤C-1、混和剤C-2、混和剤C-3、混和剤C-4、混和剤C-5)、混和剤E(混和剤E-1、混和剤E-2、混和剤E-3、混和剤E-4、混和剤E-5)、及び以下に詳述する合成例で得た比較混和剤(混和剤CR-1、混和剤CR-2、混和剤CR-3、混和剤ER-1、混和剤ER-2)を用いて、実施例及び比較例の水硬性組成物に用いる混和剤を調製した。
1.比較混和剤CR-1の合成
イオン交換水650.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(27モル)オキシエチレン(単量体1:a-5)530.0g、メタクリル酸(単量体2:b-1)65.5g、3-メルカプトプロピオン酸10.0g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液85.0gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。単量体a-5は、一般式(I)において、オキシアルキレン基の鎖長を示すmが27である比較単量体である。
次に、過硫酸ナトリウム10.0gをイオン交換水100.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム5.0gをイオン交換水50.0gで希釈したものを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(CR-1)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(CR-1)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は28000であった。
2.比較混和剤CR-2の合成
イオン交換水650.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(9モル)オキシエチレン(単量体1:a-6)430.0g、メタクリル酸(単量体:b-1)107.5g、3-メルカプトプロピオン酸12.0gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。単量体a-6は、一般式(I)において、オキシアルキレン基の鎖長を示すmが9である比較単量体である。また、比較混和剤CR-2では、単量体1と単量体2との含有比率が、質量基準で80/20である。
次に、過硫酸ナトリウム10.0gをイオン交換水100.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム3.8gをイオン交換水38.0gで希釈したものを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(CR-2)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(CR-2)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は15000であった。
3.比較混和剤CR-3の合成
イオン交換水400.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(45モル)オキシエチレン(単量体1:a-1)263.0g、メタクリル酸(単量体2:b-1)61.7g、アクリル酸メチル(他の単量体:c-1)6.5g、3-メルカプトプロピオン酸3.3g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液55.0gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。比較混和剤CR-3では、単量体1と単量体2との含有比率は、質量基準で81/19である。
次に、過硫酸ナトリウム5.8gをイオン交換水58.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム1.5gをイオン交換水15.0gで希釈したものを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(CR-3)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(CR-3)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は34000であった。
4.比較混和剤ER-1の合成
イオン交換水700.0g、α-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(4モル)オキシエチレン(単量体3:g-5)550.0g、アクリル酸(単量体2:b-2)40.6g、ヒドロキシアクリレート(単量体4:h-1)147.7g、3-メルカプトプロピオン酸15.3g、30質量%水酸化ナトリウム水溶液9.4gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。単量体g-5は、一般式(II)において、オキシアルキレン基の鎖長を示すnが5である比較単量体である。比較混和剤ER-1であるビニル共重合体において、全構成単位に対する構成単位2の含有量は、5.5質量%である。
次に、過硫酸ナトリウム10.0gをイオン交換水100.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、過硫酸ナトリウム4.0gをイオン交換水40.0gで希釈したものを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(ER-1)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(ER-1)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は57000であった。
5.比較混和剤ER-2の合成
イオン交換水650.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(23モル)オキシエチレン(単量体3:g-4)360.0g、メタクリル酸(単量体2:b-1)15.0g、α-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(7モル)オキシエチレン(比較単量体4:h-5)375.0g、3-メルカプトプロピオン酸9.0gを温度計、撹拌機、滴下ロート、及び窒素導入管を備えた反応容器に仕込み、攪拌しながら均一に溶解した後、雰囲気を窒素置換し、反応系の温度を温水浴にて60℃とした。単量体h-5は、一般式(III)において、オキシアルキレン基の鎖長を示すpが7である比較単量体である。比較混和剤ER-2であるビニル共重合体の全構成単位に対する構成単位3の含有量は、50.0質量%である。
次に、過硫酸アンモニウム10.0gをイオン交換水100.0gで希釈したものを加え重合反応を開始した。2時間後、過硫酸アンモニウム3.8gをイオン交換水38.0gで希釈したものを加え、2時間、60℃を維持し、重合反応を終了した。
重合反応終了後、30質量%水酸化ナトリウム水溶液を加えて反応系をpH=7に調整し、イオン交換水にて濃度を40質量%に調整して、ビニル共重合体(ER-2)の40質量%水溶液を得た。
得られたビニル共重合体(ER-2)を、既述の方法でGPCにて分析したところ、重量平均分子量は34000であった。
上記で得られた混和剤C及び比較混和剤CRの組成を表4に示し、混和剤E及び比較混和剤ERの組成を表5に示す。
(*1:下記表5において、混和剤E-4には、メタクリル酸由来の構成単位2を、0質量%を超え、0.01質量%未満の量で含む。)
Figure 2023090515000011

上記表4中、ビニル共重合体における各構成単位は、上記合成例にて使用した各単量体種に由来するものである。上記表4中、構成単位1(a)は、上記合成例にて使用した単量体(a-1)、(a-2)、(a-3)、(a-4)、(a-5)又は(a-6)に由来する構成単位であり、構成単位2(b)は、単量体(b-1)、(b-2)、又は(b-3)に由来する構成単位であり、構成単位3(c)は、単量体(c-1)又は(c-2)に由来する構成単位である。
表4中、a-1はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(45モル)オキシエチレン、a-2はα-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(115モル)オキシエチレン、a-3はα-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(53モル)オキシエチレンポリ(2モル)オキシプロピレン、a-4はα-アリル-ω-メトキシ-ポリ(33モル)オキシエチレン、a-5はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(27モル)オキシエチレン、a-6はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(9モル)オキシエチレン、b-1はメタクリル酸、b-2はアクリル酸、b-3は無水マレイン酸、c-1はアクリル酸メチル、c-2はヒドロキシエチルアクリレートを示す。
ビニル共重合体である混和剤C及び比較混和剤CRにおける各構成単位の含有割合は、単量体の仕込み比を反映している。
Figure 2023090515000012

上記表5中、ビニル共重合体における各構成単位は、上記合成例にて使用した各単量体種に由来するものである。上記表5中、構成単位2(b)は、上記合成例にて使用した単量体(b-1)、(b-2)、又は(b-4)に由来する構成単位であり、構成単位3(g)は、単量体(g-1)、(g-2)、(g-3)、(g-4)又は(g-5)に由来する構成単位であり、構成単位4(h)は、単量体(h-1)、(h-2)、(h-3)、(h-4)又は(h-5)に由来する構成単位である。
表5中、b-1はメタクリル酸、b-2はアクリル酸、b-4はフマル酸、g-1はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(7モル)オキシエチレン、g-2はα-(3-メチル-3-ブテニル)-ω-ヒドロキシ-ポリ(137モル)オキシエチレン、g-3はα-メタリル-ω-ヒドロキシ-ポリ(53モル)オキシエチレンポリ(2モル)オキシプロピレン、g-4はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(23モル)オキシエチレン、g-5はα-アクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(4モル)オキシエチレン、h-1はヒドロキシエチルアクリレート、h-2はアクリル酸メチル、h-3はジエチレングリコールモノアクリレート、h-4はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(4モル)オキシエチレン、h-5はα-メタクリロイル-ω-メトキシ-ポリ(7モル)オキシエチレンを示す。
ビニル共重合体である混和剤E及び比較混和剤ERにおける各構成単位の含有割合は、単量体の仕込み比を反映している。
混和剤C、比較混和剤CR、混和剤E、比較混和剤ERから選ばれる1種以上を用いて調製した、実施例、比較例に用いる混和剤(X-●)、比較混和剤(XR-●)の組成を表6に示す。
Figure 2023090515000013

下記表7に、本開示の水硬性組成物に用いる硬化促進材D(上記表2に記載の成分)及び比較例に用いた比較硬化促進材DRの組成を示す。
下記表7中、d-1は硫酸カルシウム、e-1はカルシウムサルフォアルミネート、f-1は水酸化カルシウムを表す。
比較硬化促進材DR-1は、無機硫酸塩の含有量が請求項1で規定される量を超え、比較硬化促進材DR-2は、無機硫酸塩の含有量が請求項1で規定される量よりも少なく、且つ、カルシウムサルフォアルミネートの含有量が規定を超えており、比較硬化促進材DR-3は、無機水酸化物の含有量が本開示にて規定される量を超えている。
Figure 2023090515000014

〔実施例1~実施例22、比較例1~比較例15〕
水硬性組成物として代表的なコンクリート組成物を調製した。
(コンクリート組成物の調製)
以下の処方でコンクリート組成物を調製した。まず、下記材料を下記表8に記載の含有量で、水を除いた各材料に、下記表9に記載の種類と使用量で硬化促進材を加え、強制二軸ミキサで30秒間撹拌し、その後、水および下記表9に示した含有量で混和剤を加え、2分間混練して、コンクリート組成物を得た。なお、硬化促進材D又は比較硬化促進材DRは、所定の含有量を、下記細骨材(2)と置換して加えた。
コンクリート組成物の調製時に、所定の空気量とするため、AE剤「AE-300(竹本油脂製)」及び消泡剤「AFK-2(竹本油脂製)」を、混練水(上水道水)の一部として適宜添加した。
水/セメント比、細骨材含有量、使用するポルトランドセメントの種類を変えた4種のコンクリート組成物を下記表8に従って調製した。
<コンクリート組成物の調製に使用した材料>
(セメント)
・セメント(1):早強ポルトランドセメント(密度:3.13g/cm
(住友大阪セメント製)
・セメント(2):普通ポルトランドセメント(密度:3.16g/cm
(住友大阪セメント製)
(細骨材)
・細骨材(1)(海砂:表乾密度:2.58g/cm、FM:2.60)
・細骨材(2)(砕砂:表乾密度:2.69g/cm、FM:2.75)
(粗骨材)
・粗骨材(砕石:表乾密度:2.70g/cm、実績率:58.0%、Gmax:20mm)
Figure 2023090515000015

下記表9において、混和剤の含有量(*1)は、セメントと硬化促進材との総含有量、即ち、結合材全量に対する含有比率であり、硬化促進材の含有量(*2)は、セメントの総含有量に対する含有比率である。
Figure 2023090515000016

(コンクリート組成物の物性)
1.スランプ試験
JIS A 1101(2020年)コンクリートのスランプ試験法に準じて測定した。
測定は、混練した直後、混練完了30分後、60分後、及び90分後に実施した。
2.空気量
JIS A 1128(2019年)フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法-空気室圧力方法に準じて、スランプ試験と同時に、混練した直後、混練完了30分後、60分後、及び90分後に測定した。
なお、上記コンクリート組成物の各配合No.の組成における、混練した直後のスランプ及び空気量の目標値は以下のとおりである。

(1) 配合No.1:スランプ 23±2cm 空気量 3.0±1.5%
(2) 配合No.2:スランプ 21±2.5cm 空気量 4.5±1.5%
(3) 配合No.3:スランプ 21±2.5cm 空気量 4.5±1.5%
(4) 配合No.4:スランプ 18±2.5cm 空気量 4.5±1.5%
3.あと伸び評価
コンクリート組成物の所定時間(30分、60分、90分)における混練した直後からのスランプの増加量を算出し、下記基準にて評価した。スランプの増加量が少ないほど、経時による流動性が安定していることを示し、ランクB以上が実用上問題のないレベルであり、ランクS及びランクAが好ましい。
(評価基準)
S:スランプの増加量が1cm以下
A:スランプの増加量が1cmを超え、2cm以下
B:スランプの増加量が2cmを超え、3cm以下
C:スランプの増加量が3cmを超える
4.保持性の評価
コンクリート組成物の所定時間(30分、60分、90分)における混練した直後からのスランプの低下量を算出し、下記基準にて評価した。スランプの低下量が少ないほど、経時による流動性の低下が抑制され、混練後のコンクリート組成物の流動性の保持時間が良好であることを示し、ランクB以上が実用上問題のないレベルであり、ランクS及びランクAが好ましい。
(評価基準)
S:スランプの低下量が2.5cm以下
A:スランプの低下量が2.5cmを超え、5.0cm以下
B:スランプの低下量が5.0cmを超え、7.0cm以下
C:スランプの低下量が7.0cmを超える
上記評価の結果を下記表10に示す。
Figure 2023090515000017

表10に明らかなように、実施例のコンクリート組成物はいずれも、流動性及び流動性の安定性、保持性が良好であることが分かる。また、空気量も、目標値の範囲で推移している。
流動性の観点からは、混和剤Cと混和剤Eとを好ましい比率で含有する混和剤X-1~X-4と、硬化促進材D-1と、を含む実施例1~実施例7のコンクリート組成物が、流動性とその保持性が特に良好であった。
他方、混和剤Cを含まない混和剤RX-4を含む比較例8では、目的とする流動性が得られず、経時で分離することが確認された。
<コンクリート組成物硬化体の製造:第一の態様>
上記で得られた実施例1~実施例22及び比較例1~比較例15のコンクリート組成物を用いて、JIS A 1132(2020年)(コンクリートの強度試験体用供試体の作り方)に準拠して、型枠として一辺が表11に示す最小部材厚(30cm~125cm)の立方体である型枠を用い、且つ、養生条件を下記表11に記載の温度による、打込み後30分から3時間まで一定温度に設定して蒸気養生を行って、コンクリート組成物の硬化体を作製した。それぞれの部材には、部材の中心部に熱電対を設置し、3時間後の加熱養生中の部材内部の温度を測定した。
既述の実施例及び比較例のコンクリート組成物を上記型枠内に注入した。打込み温度は、表11に記載されるように、20℃~35℃の範囲とした。
打込み温度は、コンクリート組成物の打込み時(混練を開始してから60分後)の温度を、JIS A 1156(2006年)に準拠して測定した。
その後、部材厚が比較的大きい、柱などの構造部材を想定して加熱して養生を行った。
実施例1では、配合No.1のコンクリート組成物を用い、加熱条件は、型枠注入後、0.5時間で加熱を開始し、加熱条件としては、昇温速度30℃/hr、加熱到達温度70℃にてその温度を2時間保持し、加熱完了後に外気温(約25℃)で暴露養生し、コンクリート組成物の硬化体を得た。
実施例2~実施例22及び比較例1~比較例15に使用したコンクリート組成物の配合No.及び、養生における加熱到達温度は、それぞれ下記表11に示すとおりである。
1.型枠注入後3時間経過後の圧縮強度
型枠注入後3時間で脱型して、得られたコンクリート硬化体の圧縮強度をJIS A 1108(2018年:コンクリートの圧縮強度試験方法)の方法により測定した。
さらに、圧縮強度の測定結果に基づき、各配合No.のコンクリート組成物について、下記基準にて評価した。
コンクリート組成物の配合、水/セメント比等により、目的とする圧縮強度は異なるが、いずれの配合においても、ランクA以上が実施例用上問題のないレベルであり、ランクSが好ましい。
評価結果を下記表11に併記する。
(コンクリート組成物の3時間後の圧縮強度の評価基準)
配合No.1
S:15N/mm以上
A:12N/mm以上15N/mm未満
B:9N/mm以上12N/mm未満
C:9N/mm未満
配合No.2及びNo.3
S:10N/mm以上
A:8N/mm以上10N/mm未満
B:6N/mm以上8N/mm未満
C:6N/mm未満
配合No.4
S:8N/mm以上
A:6N/mm以上8N/mm未満
B:4N/mm以上6N/mm未満
C:4N/mm未満
2.材齢28日の圧縮強度
上記で得られたコンクリート硬化体を保存し、材齢28日における圧縮強度を、3時間後の圧縮強度の測定方法と同様にして測定した。
また、混和剤Cを含み、硬化促進材Dを含まないコンクリート組成物である比較例1(配合No.1)、比較例2(配合No.2)、比較例3(配合No.3)、及び比較例4(配合No.4)を対照例(コントロール)として、同配合の実施例及び比較例の材齢28日の圧縮強度に対する、対照例の材齢28日の圧縮強度を対比し、下記基準で評価を行った。評価基準は、配合No.1~配合No.4まで同じである。
(評価基準)
S:対照例の圧縮強度に対し0.9以上
A:対照例の圧縮強度に対し0.8以上0.9未満
B:対照例の圧縮強度に対し0.7以上0.8未満
C:対照例の圧縮強度に対し0.7未満
実施例2~実施例22及び比較例1~比較例15のコンクリート組成物硬化体について、実施例1と同様にして測定した3時間後に脱型した際の圧縮強度の測定結果、材齢28日における圧縮強度の測定結果、及び材齢28日の圧縮強度の対照例との対比の評価結果を下記表11に併記した。
Figure 2023090515000018

表11に明らかなように、実施例のコンクリート組成物を用いて、本開示の製造方法により作製された実施例1~実施例22の最小部材厚が50cm以上のコンクリート硬化体は、3時間で脱型可能な圧縮強度である目標値8N/mm以上を実現し、且つ、長期保存後の材齢28日圧縮強度も、対照例のコンクリート組成物硬化体とほぼ同等であり、実用に耐える圧縮強度を達成することが明らかとなった。
また、表10の結果より、実施例1~実施例22のコンクリート組成物はいずれも、流動性を長期間維持することが確認されており、流動性の保持性と、硬化体を作製した場合の高い圧縮強度との双方を満たすことが分かる。
他方、本開示に係る硬化促進材Dを含まない比較例1~比較例4のコンクリート組成物を用いて得た硬化体では、初期の圧縮強度が得られないことがわかる。また、表11の結果より、比較例10、比較例13及び比較例15のコンクリート組成物は、流動性の保持時間が不十分であり、硬化促進材Dの含有量が少なすぎる比較例11のコンクリート組成物を用いた硬化体は初期強度が低く、硬化促進材Dの含有量が多すぎる比較例12のコンクリート組成物を用いて得た硬化体は材齢28日の圧縮強度が不十分であった。
なお、比較例1~比較例4の結果より、硬化促進材Dを含有しないコンクリート組成物では、20℃で封緘養生したのみでは、3時間後の圧縮強度が測定できないか、脱型に堪えない強度であった。
また、実施例1~実施例7の評価結果により、本開示の混和剤C及び硬化促進材Dを好ましい量で含有するコンクリート組成物では、コンクリート組成物の配合No.に拘わらず、流動性の保持性が良好であり、得られる硬化体の硬化物性にも優れることが分かる。
<コンクリート組成物硬化体の製造:第二の態様>
上記で得られた実施例1~実施例22及び比較例1~比較例15のコンクリート組成物を用いて、JIS A 1132(2020年)(コンクリートの強度試験体用供試体の作り方)に準拠して、型枠として、表12に記載される直径(表12には「最小部材厚」と記載)、即ち、直径10cmであり、高さが20cmのブリキ製の軽量サミットモールドを用いて硬化体を作製した。
既述の実施例及び比較例のコンクリート組成物を上記型枠内に注入した。打込み温度は、表12に記載されるように、20℃~35℃の範囲とした。
打込み温度は、コンクリート組成物の打込み時(混練開始から60分後)の温度を、JIS A 1156(2006年)に準拠して測定した。
その後、部材厚が比較的小さいスラブや壁等の薄部材を想定して加熱して養生を行った。
実施例1では、配合No.1のコンクリート組成物を用い、加熱条件は、型枠注入後、第一の養生として、0.5時間で加熱を開始し、加熱条件としては、昇温速度30℃/hr、加熱到達温度45.0℃にて1.3時間加熱し、その後、さらに、第二の養生として、加熱到達温度80℃として1.2時間加熱し、加熱完了後に外気温(約25℃)で暴露養生し、コンクリート組成物の硬化体を得た。
実施例2~実施例22及び比較例1~比較例15の養生条件は下記表12に示すとおりである。
(性能評価:圧縮強度)
1.型枠注入後3時間経過後の圧縮強度
型枠注入後3時間で脱型して、得られたコンクリート硬化体の圧縮強度をJIS A 1108(2018年:コンクリートの圧縮強度試験方法)の方法により測定した。
なお、比較例5~比較例8の硬化体の作製に用いたコンクリート組成物は、硬化促進材Dを含むが、硬化体を作製するに際し、加熱養生を実施しない、すなわち20℃で封緘養生したときの圧縮強度を測定した結果である。本開示の硬化促進材Dを含むコンクリート組成物を用いても、20℃の封緘養生のみでは、3時間後にはまだ硬化していないので圧縮強度は測定できないが、材齢28日における圧縮強度は、比較例1~4の強度発現を評価する上で重要であるため測定した結果を示した。
さらに、圧縮強度の測定結果に基づき、各配合について、本開示の製造方法の第一の態様と同様の基準にて評価した。
部材厚が小さい硬化体においても、コンクリート組成物の配合、水/セメント比等により、目的とする圧縮強度は異なるが、いずれの配合においても、ランクA以上が実用上問題のないレベルであり、ランクSが好ましい。
評価結果を下記表12に併記する。
2.材齢28日の圧縮強度
上記で得られたコンクリート硬化体を保存し、材齢28日における圧縮強度を、3時間後の圧縮強度の測定方法と同様にして測定した。
また、混和剤Cを含み、硬化促進材Dを含まないコンクリート組成物である比較例1(配合No.1)、比較例2(配合No.2)、比較例3(配合No.3)、及び比較例4(配合No.4)を対照例(コントロール)として、同配合の比較例の材齢28日の圧縮強度に対する材齢28日の圧縮強度を対比し、上記第一の態様と同じ基準で評価を行った。評価基準は、配合No.1~配合No.4まで同じである。
実施例2~実施例22及び比較例1~比較例15のコンクリート組成物硬化体について、実施例1と同様にして測定した3時間後に脱型した際の圧縮強度、及び材齢28日における圧縮強度の測定結果、上記圧縮強度比の評価結果を下記表12に併記する。
Figure 2023090515000019

表12に明らかなように、実施例のコンクリート組成物を用いて、本開示の製造方法により作製された実施例1~実施例22のコンクリート硬化体は、3時間で脱型可能な圧縮強度である目標値 8N/mm以上を実現し、且つ、長期的な28日圧縮強度も、対照例のコンクリート組成物硬化体とほぼ同等であり、実用に耐える圧縮強度を達成することが明らかとなった。
他方、本開示に係る硬化促進材Dを含まない比較例1~比較例4、比較例14、及び、所定の加熱養生条件を満たさない比較例5~比較例9のコンクリート組成物を用いて得た硬化体では、初期の圧縮強度が得られず、本開示に係る混和剤C及び硬化促進材Dの少なくともいずれかを含まない比較例6~比較例8、比較例10、比較例13及び比較例15のコンクリート組成物は、流動保持性が低く、硬化促進材Dの含有量が少なすぎる比較例11のコンクリート組成物を用いた硬化体は初期強度が低く、硬化促進材Dの含有量が多すぎる比較例12のコンクリート組成物を用いて得た硬化体は材齢28日の圧縮強度は不十分であった。
なお、比較例5~比較例8の結果より、硬化体の部材圧が10cm以下であっても、20℃で封緘養生したのみでは、硬化促進材Dを含有しても、3時間後には圧縮強度を測定できなかった。
また、実施例1~実施例7の結果により、本開示の混和剤C及び硬化促進材Dを好ましい量で含有するコンクリート組成物では、コンクリート組成物の配合No.に拘わらず、流動性の保持性が良好であり、得られる硬化体の硬化物性にも優れることが分かる。
上記、実施例及び比較例の結果より、実施例のコンクリート組成物は、流動性が長時間に亘り維持されるため、コンクリート組成物の練混ぜから、打込みまでの時間の自由度が高く、且つ、実施例のコンクリート組成物を用いてプレキャストコンクリート部材を製造する場合には、従来の脱型までに5時間以上の養生を必要とするコンクリート組成物に比較して、高い生産性を実現しうることがわかる。さらに、材齢28日の圧縮強度も、対照例と同等であり、実施例用上問題のない良好な結果であった。
従って、本開示のコンクリート組成物によれば、コンクリート組成物を練混ぜした後、現場へ搬送して型枠への注入が可能となり、現場にてプレキャストコンクリート部材を作製することが可能となった。さらに、型枠に所要の鉄筋や打込み金物等を1時間程度で設置した後、コンクリート組成物を注入後、3時間程度で吊り上げ又は脱型が可能となるため、従来は1日1回しか製造できなかったコンクリート硬化体を8時間の作業で1日2回の作製が可能となり、養生期間も短くすることができるという利点を有する。

Claims (6)

  1. 水硬性結合材A、水B、水硬性組成物用混和剤C、及び、水硬性組成物用硬化促進材Dを含有する水硬性組成物であり、
    前記水硬性組成物用硬化促進材Dを、前記水硬性結合材A100質量部に対して2質量部~10質量部含有する水硬性組成物。

    水硬性組成物用混和剤C:
    下記一般式(I)で示される化合物である単量体1由来の構成単位1の少なくとも1種及び下記単量体2由来の構成単位2の少なくとも1種を含むビニル共重合体であり、前記ビニル共重合体における前記構成単位1及び前記構成単位2の合計含有量100質量%に対する前記構成単位1の含有量が82質量%~95質量%であり、前記構成単位2の含有量が5質量%~18質量%であり、且つ、重量平均分子量が5000~200000である水硬性組成物用混和剤。
    Figure 2023090515000020

    一般式(I)において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
    mは30~300の整数を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
    は水素原子、又は、炭素数1~22のアルキル基を表す。
    単量体2:
    アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、イタコン酸無水物、又は、それらの塩

    水硬性組成物用硬化促進材D:
    無機硫酸塩、カルシウムサルフォアルミネート、及び、無機水酸化物を含有し、前記水硬性組成物用硬化促進材Dの全量100質量%に対し、前記無機硫酸塩の含有量が10質量%~30質量%であり、前記カルシウムサルフォアルミネートの含有量が10質量%~70質量%であり、前記無機水酸化物の含有量が10質量%~30質量%である水硬性組成物用硬化促進材。
  2. さらに、下記水硬性組成物用混和剤Eを含有する請求項1に記載の水硬性組成物。

    水硬性組成物用混和剤E:
    前記単量体2由来の構成単位2の少なくとも1種、下記一般式(II)で示される化合物である単量体3由来の構成単位3の少なくとも1種、及び、下記一般式(III)で示される化合物である単量体4由来の構成単位4の少なくとも1種を含むビニル共重合体であり、前記ビニル共重合体における、前記構成単位2、前記構成単位3、及び、前記構成単位4の合計含有量100質量%に対し、前記構成単位2の含有量が0質量%を超え5質量%未満、前記構成単位3の含有量が51質量%以上99質量%未満、及び、前記構成単位4の含有量が1質量%以上45質量%以下であり、重量平均分子量が5000~200000である水硬性組成物用混和剤。
    Figure 2023090515000021

    一般式(II)において、Rは炭素数2~5のアルケニル基、又は、炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
    nは5~300の整数を表し、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
    は水素原子、又は、炭素数1~22のアルキル基を表す。
    Figure 2023090515000022

    一般式(III)において、Rは炭素数3~4の不飽和アシル基を表し、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基を表す。
    pは0~4の整数を表し、pが2~4である場合、複数存在するAOは互いに同じであっても異なっていてもよい。
    は水素原子又は炭素数1~22のアルキル基を表し、pが0の場合、Rは炭素数1~22のアルキル基を表す。
  3. 前記水硬性組成物用混和剤C、及び、前記水硬性組成物用混和剤Eの合計100質量%に対し、前記水硬性組成物用混和剤Cを60質量%~99質量%含有し、且つ、前記水硬性組成物用混和剤Eを1質量%~40質量%含有する請求項2に記載の水硬性組成物。
  4. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の水硬性組成物を混練する工程と、
    混練された前記水硬性組成物を水硬性組成物の硬化体を形成する型枠であって、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm~150cmの型枠に注入する工程と、
    前記型枠に注入された前記水硬性組成物を50℃~95℃の温度で加熱する養生工程と、をこの順で有する水硬性組成物硬化体の製造方法。
  5. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の水硬性組成物を混練する工程と、
    混練された前記水硬性組成物を水硬性組成物の硬化体を形成する型枠であって、幅、長さ、及び高さのうち最小の寸法が30cm未満の型枠に注入する工程と、
    前記型枠に注入された前記水硬性組成物を30℃~48℃の温度にて、0.6時間~1.5時間加熱する第一の養生工程と、
    前記第一の養生工程の後、60℃~85℃の温度で、0.8時間~2.0時間加熱する第二の養生工程と、をこの順で有する水硬性組成物硬化体の製造方法。
  6. 請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の水硬性組成物の硬化物である水硬性組成物硬化体。
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