JP2023088345A - 脱離能を有する有機溶剤系印刷インキ、印刷物および積層体 - Google Patents

脱離能を有する有機溶剤系印刷インキ、印刷物および積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、良好な印刷加工適性を有し、表刷り構成およびラミネート構成での積層体において、アルカリ水溶液によってプラスチックフィルムからインキ等を脱離することができ、かつ脱離後に微細化されたインキ片のプラスチックフィルムへの再付着が抑制可能な有機溶剤系印刷インキを提供することを目的とする。【解決手段】基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、基材1を剥離させてリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、前記有機溶剤系印刷インキが、末端に酸性基を有するウレタン樹脂を含む、有機溶剤系印刷インキ。【選択図】なし

Description

本発明は脱離能を有する有機溶剤系印刷インキ、およびそれを用いた印刷物および積層体に関する。
近年、プラスチックフィルムを原料とするパッケージ、プラスチックボトルその他のプラスチック製品が海洋にゴミとして廃棄・投棄され、環境汚染問題となっている。これらのプラスチック製品は海水中で分解されてサブミクロンサイズの破片(マイクロプラスチック)となり、海水中に浮遊する。当該プラスチックを魚類などの海洋生物が摂取すれば、生物体内中で濃縮される。そうすれば当該海洋生物を食料として摂取する海鳥や人間の健康にも影響することが懸念されている。
なお、マイクロプラスチック表面には後述の様なラミネートされたパッケージの場合にはインキや接着剤、更にはコーティング層などに起因する人体にとって有害な物質等も付着したままとなっており、より環境保全の点から懸念されている。このような問題を改善するためにマイクロプラスチックを減らす様々な取り組みが始まっている。
上記プラスチック製品としてはプラスチック基材を使用した食品包装パッケージなどが主として挙げられる。当該パッケージでは、フィルム基材としてポリエステル基材(PET)、ナイロン基材(NY)、ポリプロピレン基材(OPP)など、種々のプラスチック基材が使用されている。これらはグラビアインキ、フレキソインキその他の印刷インキにより絵柄層が施され、更に接着剤等を介して熱溶融樹脂基材と貼り合わされ(ラミネート)積層体としたのちに、当該積層体を適切なサイズに切断して熱融着されることでパッケージとなる。パッケージ形態としては絵柄層がパッケージ最外層となる形態(表刷りという)および絵柄層が基材同士の中間層として存在する形態(ラミネートまたは裏刷りという)がある。
なお、表刷りとは、絵柄層上に基材などがラミネートされず、絵柄層がむき出しの状態である形態、例えば、ラベルなどへの使用形態であっても表刷りに該当する。
上記マイクロプラスチックを削減する試みとしては上記パッケージにおいて(1)プラスチック基材を紙に代替する、(2)プラスチック基材を同種のみの使用に限定して(モノマテリアル化という)リサイクルを簡易化する、(3)不純物を除去した後にプラスチックをリサイクルする、などが挙げられる。
上記(1)では紙を原料とすれば安全性・リサイクル性の面で有望であるが、プラスチック基材と比べてガスバリア性や耐水性が劣るため問題となる。紙用のコーティング剤など検討がされているものの、実用に向けてはハードルが高い。上記(2)ではプラスチック基材を、ポリプロピレンなどのポリオレフィン基材のみでパッケージを構成し、基材をリサイクルする試みである。しかし、そもそも耐レトルト適性や遮光性など高機能を要求される使用形態では当該ポリオレフィン基材ではその性能が得られないという問題がある。そのためリサイクルの効率およびパッケージの性能を総合的に鑑みたうえで上記(3)についての技術開発がおこなわれている。
上記(3)としては、プラスチック基材のリサイクル過程において不純物となる、パッケージ外表面にある絵柄層(表刷りインキ層)をアルカリ水溶液で除去する試みが行われてきた。例えば引用文献1ではプラスチック基材上にアクリル系樹脂やスチレンマレイン酸系樹脂からなる下塗り層を設け、下塗り層上に配置された表刷り印刷層を、アルカリ水溶液により除去する技術が開示されている。また、特許文献2では酸性基を有するウレタン樹脂やアクリル樹脂をバインダー樹脂とするインキを表刷り印刷し、同じくアルカリ水溶液により当該印刷層を除去する技術が開示されている。
特許文献2では、酸性基および水酸性基を有するウレタン樹脂をバインダー樹脂とするインキを、アルカリ水溶液により表刷り印刷層およびラミネート積層体中からインキを除去する技術が開示されている。しかしながら、印刷層からインキを除去する際、基材から剥離したインキ膜が、基材へ再び付着しフィルムが着色するといった課題がある。
プラスチックリサイクルにおいては、再生プラスチックを再びフィルムやパッケージ等の製品として利用するうえで、再生品の品質向上は極めて重要な技術であるが、インキ皮膜を除去する技術については先行文献があるものの、再生後に除去されたインキ片の再付着の抑制まで成し得た技術は未だ報告されていない。
特開2001-131484号公報 特開平11-209677号公報
本発明は、良好な印刷加工適性を有し、表刷り構成およびラミネート構成での積層体における包装材の要求性能と、アルカリ水溶液によってプラスチックフィルムからインキ等の脱離を両立することができ、さらに脱離したインキが印刷基材への再付着を抑制することを可能とする有機溶剤系印刷インキを提供することを目的とする。
本発明者は本願課題に対して鋭意研究を重ねた結果、以下に記載の有機溶剤系印刷インキを用いることで解決することを見出し、本発明を成すに至った。
すなわち本発明の一実施形態は、基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、基材1を剥離させてリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、
前記有機溶剤系印刷インキが、末端に酸性基を有するウレタン樹脂を含む、有機溶剤系印刷インキに関する。
また、本発明は、末端に酸性基を有するウレタン樹脂の酸価が、15~70mgKOH/gである、上記有機溶剤系印刷インキに関する。
また、本発明は、末端に酸性基を有するウレタン樹脂の末端に有する酸性基に由来する酸価が、1~50mgKOH/gである、上記有機溶剤系印刷インキに関する。
また、本発明は、末端に酸性基を有するウレタン樹脂の水酸基価が、1~35mgKOH/gである、上記有機溶剤系印刷インキに関する。
また、本発明は、末端に酸性基を有するウレタン樹脂の、末端に有する酸性基が、環構造を有する酸無水物由来である、上記有機溶剤系印刷インキに関する。
また、本発明は、クリアインキである、上記有機溶剤系印刷インキに関する。
また、本発明は、基材1上に、上記有機溶剤系印刷インキから構成された脱離層を有する印刷物に関する。
また、本発明は、少なくとも基材1、上記有機溶剤系印刷インキからなる脱離層および基材2を有する積層体に関する。
また、本発明は、印刷物を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記印刷物は、基材1と、上記有機溶剤系印刷インキにより形成された脱離層と、絵柄層と、をこの順に印刷されてなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~15質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は室温~120℃である、リサイクル基材製造方法。
また、本発明は、積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
前記積層体は、基材1と基材2の間に、上記有機溶剤系印刷インキにより形成された脱離層を有してなり、
前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~15質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は室温~120℃である、リサイクル基材製造方法に関する。
本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキを用いることで、表刷り構成およびラミネート構成での積層体において、アルカリ水溶液によってプラスチックフィルムからインキ等を脱離することができ、かつ基材から脱離したインキ膜の基材への再付着が抑制される有機溶剤系印刷インキを提供するものである。
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下に記載する実施形態または要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
以下の説明において、「有機溶剤系印刷インキ」を単に「印刷インキ」または「インキ」と略記する場合があるが同義である。また、有機溶剤系印刷インキより形成される層は、「基材からの脱離能を有する脱離層」と同一であり、単に「脱離層」または「インキ層」という場合もあるが同義である。これに対して基材に直接印刷されず当該脱離機能に影響しない印刷インキは「絵柄インキ」と称呼し、その印刷層は「絵柄インキ層」または「絵柄層」と称呼する。ただし、当該絵柄インキは、前記末端に酸性基を有するウレタン樹脂を含み、当該脱離能を有してもよい。なお、同一層でありながら、基材の直接印刷される部分と、基材の直接印刷されず、後述するプライマー(クリアインキともいう)からなる層を介して印刷される部分と、を有する層は、「脱離層」に分類される。
本発明における代表的な実施形態は、基材からの脱離能を有する脱離層を形成するための、有機溶剤系印刷インキであって、当該印刷インキは、基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、絵柄層および/または基材2を剥離させて、基材1をリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、前記有機溶剤系印刷インキが、末端に酸性基を有するウレタン樹脂を含むものである。
ウレタン樹脂は、末端に酸性基を有することでアルカリとの中和の相互作用により、アルカリ水溶液でのインキ層の脱離が容易になる。末端への酸性基の導入では酸無水物を使用する事で、アルカリ溶液中での基材へ、脱離したインキ成分が再付着することを抑制する事が可能となる。中でも酸価が1~50mgKOH/gである場合において、このような効果が更に改善する。
ただし、上記有機溶剤系印刷インキはインキ中において前記ウレタン樹脂の酸性成分が中和されて、酸価が実質ない場合を除くものである。
上記「脱離」とは塩基性水溶液(アルカリ水溶液)での中和・溶解等により、基材1より脱離層が脱離することをいう。当該塩基性水溶液に使用する塩基性物質は特に制限は無いが、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、アンモニア、水酸化バリウム(Ba(OH))、炭酸ナトリウム(NaCO)等が好適に挙げられる。好ましくはNaOHおよび/またはKOHである。ただし、本願発明の脱離条件の形態はこれらに限定されない。なお、脱離とは、基材から脱離層が溶解して剥離する場合および、溶解せずに膨潤することで剥離する場合との両方の形態を含む。
上記「再付着」とは塩基性水溶液(アルカリ水溶液)での溶解もしくは膨潤等により基材から一度脱離したインキ成分が、再び基材へ付着することをいう。
上記アルカリ水溶液で基材から脱離するのは、上記脱離層であるが、脱離層の脱離とともに後述の絵柄層、接着剤層、脱離層と接しない基材等が脱離する場合を含む。
本発明は脱離後の基材を、リサイクル基材・再生基材として得ることを目的とし、基材から脱離層、絵柄層その他の層をできる限り多く除く態様が好適である。具体的には、「基材からの脱離能を有する」とは、脱離層100質量%のうち、面積や膜厚方向において少なくとも50質量%以上の脱離層が脱離するということである。好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上を除去する態様で使用することが好ましい。さらに、再付着分を脱離していないと算定しても90質量%以上であることがなお好ましい。
脱離層は再生基材を得ることを目的とするために設けられている。従って、ソルダーレジストやカラーレジストなどの場合ではアルカリ水溶液により層の一部を溶解させる工程を有するが、活性エネルギー線での硬化層は、アルカリ水溶液処理後も、一定量残すことを目的とするため、本発明における脱離層とは技術的思想が異なる。従って、本発明における脱離層はソルダーレジストやカラーレジストその他の再生基材回収を目的としない感光性樹脂組成物からなる層である場合を除く。
脱離のメカニズムとして、推測されるのは、脱離層を含むラミネート積層体(例えば基材1/脱離層/基材2などの態様)にあっては基材同士の隙間からアルカリ水溶液が浸透して脱離層と接触し、脱離層の溶解もしくは膨潤等により基材からの脱離することが考えられる。断面に脱離層を有する形態で脱離工程を行うことが好ましい。ここで、ラミネート積層体において、アルカリ水溶液が浸透する隙間が無くとも、脱離工程において当該積層体を裁断し、その断面が脱離層を有していれば足る。
一方、脱離層を含む印刷層を有する表刷り印刷物(例えば基材1/脱離層/絵柄層などの態様)では、断面以外に、アルカリ水溶液は絵柄層を浸透して脱離層へ接触するため、断面に制限なく脱離ができる。ただし、表刷り印刷物またはラミネート積層体いずれの形態においても、裁断して脱離処理する態様であることが好ましい。
(脱離層)
本発明の実施形態における脱離層は、以下に説明する有機溶剤系印刷インキより形成される。まず、有機溶剤系印刷インキにバインダー樹脂として含まれるウレタン樹脂について説明する。バインダー樹脂とは脱離層を形成するための主たる樹脂成分をいう。「主たる」とは脱離層を構成する樹脂成分総量のうち50質量%以上であることをいう。
<ウレタン樹脂>
本発明の実施形態において、ウレタン樹脂は、末端に酸性基を有することを特徴とする。ウレタン樹脂が末端に有する酸性基に由来する酸価が、1~50mgKOH/gであることが好ましく、3~40mgKOH/gであることがなお好ましく、5~30mgKOH/gであることが更に好ましく、5~20mgKOH/gであることが特に好ましい。また更にウレタン樹脂は側鎖にも酸価を有してよく、側鎖由来等の酸価と末端酸性基由来の酸価を合計(以下全酸価ともいう)で15~70mgKOH/gであることが好ましく、20~50mgKOH/gであることがなお好ましく、25~40mgKOH/gであることが更に好ましい。
また、ウレタン樹脂は水酸基価を更に有する実施形態も好ましく、当該水酸基価1~35mgKOH/gであることが好ましい。酸価は、酸をアルカリで滴定して算出した樹脂1g中の酸量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値である。水酸基価は、樹脂中の水酸基をエステル化またはアセチル化し、残存する酸をアルカリで逆滴定して算出した樹脂1g中の水酸基量を、水酸化カリウムのmg数に換算した値である。酸価および水酸基価はいずれもJISK0070に従って行った値である。
アルカリ水溶液による脱離性と耐レトルト適性とのバランスの観点から、ウレタン樹脂は、全酸価が20~50mgKOH/gがより好ましく、25~40mgKOH/gであることがなお好ましい。更に水酸基価は10~30mgKOH/gであることが好ましく、水酸基価が15~27mgKOH/gであることがなお好ましい。
上記ウレタン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、10000~100000であることが好ましい。12000~70000であることがなお好ましく、15000~50000であることが更に好ましい。耐ブロッキング性および有機溶剤系印刷インキの印刷工程における作業効率、印刷適性などが良好となるためである。
上記ウレタン樹脂はアミン価を有していてもよく、アミン価を有する場合は0.1~20mgKOH/gであることが好ましく、1~10mgKOH/gであることがなお好ましい。基材密着性が良好となるためである。
(末端酸性基を有するウレタン樹脂)
ウレタン樹脂は酸性基を末端に有するものを含む。当該ウレタン樹脂が末端に有する酸性基の導入方法は制限なく、あらゆる方法が適用可能である。
一実施形態において、ウレタン樹脂において当該末端酸性基の導入には、例えば、ポリイソシアネート、ポリオール、ポリヒドロキシ酸およびポリアミンを反応させて得られる、末端にアミノ基を有するウレタン樹脂をあらかじめ準備しておき、そこへ酸無水物を当該アミノ基と反応(以下変性ともいう)させることで、ウレタン樹脂の末端に酸価を付与させることができる。なお、ウレタン樹脂末端への酸性基の導入方法は公知のいずれの方法をも適用できるものであり、上記に限定されない。
(酸無水物により変性されてなるウレタン樹脂)
酸無水物により変性されてなるウレタン樹脂は当該ウレタン樹脂の末端に酸無水物由来の構成単位を有する態様(環構造を有する酸無水物により変性されてなるウレタン樹脂)が好ましく、用いられる酸無水物は、限定されるものではないが、芳香族環や脂環構造を有する(以下、環式という)ことが好ましい。
(環構造を有する酸無水物)
環構造を有する酸無水物としては、環式ジカルボン酸の無水物であることが好ましく、具体的には無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水1,8-ナフタレン酸、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、cis-4-シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、exo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、等が挙げられる。中でも、無水フタル酸が好ましい。なお、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸など、環式でない酸無水物でもよい。
なお、上記末端アミノ基を有するウレタン樹脂と酸無水物は、アミノ基の当量を1として、酸無水物は0.1~1モル反応させることで得ることができる。なお、当該反応は有機溶剤中で行われ、特段制限はない。反応条件として、温度は20~80℃であることが好ましく、時間としては30分~3時間であることが好ましい。
(ポリイソシアネート)
本発明の有機溶剤系印刷インキに使用されるウレタン樹脂に用いるポリイソシアネートとしてはジイソシアネートおよびまたはトリイソシアネートが好ましく、芳香族、脂肪族または脂環族のジイソシアネートを好適に使用することができる。
例えば、1,5-ナフチレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4、4’-ジベンジルイソシアネート、ジメチルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネートおよび2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネートその他の芳香族ジイソシアネート、
テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートその他の脂肪族ジイソシアネート、
シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネートやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネートその他の脂環族ジイソシアネートが好適に挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
上記のうち、反応性等の面から、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネートから選ばれる少なくとも一種の使用が好ましい。なお、これらジイソシアネートは三量体となりイソシアヌレート構造を有するトリイソシアネートである場合も好ましい。
(ポリオール)
本発明の有機溶剤系印刷インキに使用されるウレタン樹脂はポリオール由来の構成単位を有し、ポリオールとしては特に制限は無く以下に限定されないが、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが好適に用いられる。ポリオールとは一つの分子内に水酸基を少なくとも二つ持った化合物の総称であるが、後述のポリヒドロキシ酸を含まないものとする。
更にポリオールは、その他ダイマージオール、水添ダイマージオール、ひまし油変性ポリオールなどを使用しても良い。当該ウレタン樹脂はポリエーテル構成単位、ポリエステル構成単位およびポリカーボネート構成単位から選ばれる少なくとも一種の構成単位を有することが好ましく、ポリエステルポリオール由来の構成単位を含有することがより好ましい。
ウレタン樹脂総質量中にポリオール由来の構成単位を10~75質量%含むことが好ましく、15~70質量%含むことがなお好ましい。20~65質量%含むことが更に好ましい。
ポリオールの使用形態としては、ポリオール由来の構成単位の総質量中、ポリエステルポリオール由来の構成単位を5質量%以上含むことが好ましい。30質量%以上含むことがなお好ましく、40質量%以上含むことが更に好ましい。なお、後述するポリヒドロキシ酸をウレタン樹脂に組み込むことでアルカリによる脱離性、すなわちアルカリ水溶液によってプラスチック基材から脱離層および絵柄層を脱離する性能を付与することができる作用に加え、ポリエステルポリオールのエステル結合部位がアルカリ加水分解することにより脱離性がさらに向上させるためには、50質量%以上含むことが好ましく、70質量%以上含むことがなお好ましい。80質量%以上含むことが更に好ましい。
ポリオールの数平均分子量は500~10000であることが好ましい。ここでポリオールに用いる数平均分子量は水酸基価から算出されるものである。なお当該水酸基価とはJISK0070による測定値をいう。ポリオールの数平均分子量が10000以下であると、プラスチックフィルムに対する耐ブロッキング性に優れる。また、ポリオールの数平均分子量が500以上であると、ウレタン樹脂被膜の柔軟性に優れプラスチックフィルムへの密着性に優れる。以上の理由より、より好ましくは数平均分子量が1000~5000である。
(ポリエステルポリオール)
ポリエステルポリオールとしては例えば、二塩基酸とジオールとの縮合物からなるポリエステルポリオールや、環状エステル化合物の開環重合物であるポリラクトンポリオールからなるポリエステルポリオールが好適に挙げられる。ポリエステルジオールであることが好ましい。当該二塩基酸としてはアジピン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、1、4-シクロヘキシルジカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸等が好適に挙げられ、中でもアジピン酸、コハク酸などが好ましい。
当該ジオールとしてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3,5-トリメチルペンタンジオール、2、4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,2-アルカンジオール、1,3-アルカンジオール、1-モノグリセライド、2-モノグリセライド、1-モノグリセリンエーテル、2-モノグリセリンエーテル、ダイマージオール、水添ダイマージオール等が好適に挙げられる。ポリエステルポリオールは単独で、または2種以上を混合して用いることができる。さらにポリエステルポリオールの原料としてヒドロキシル基を3個以上有するポリオール、カルボキシル基を3個以上有する多価カルボン酸を併用することもできる。上記環状エステル化合物としては、α-アセトラクトン、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどが好適に挙げられる。
またポリエステルジオールは分岐構造を有するジオールと二塩基酸の縮合物であるポリエステル由来の構成単位を含む場合も好ましい。またプラスチック基材との密着性を向上させることができるためである。なお、分岐構造を有するジオールとは、アルキレングリコールの少なくとも1つの水素原子がアルキル基で置換された構造を有するジオールであることが好ましく、分岐構造を有するジオールとしては、例えば、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサンジオールなどが好適に挙げられる。中でも好ましいのは1,2-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールから選ばれる少なくとも1種であり、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)および/または3-メチル-1,5-ペンタンジオールを含むポリエステルポリオールの使用がなお好ましい。
(ポリヒドロキシ酸)
ポリヒドロキシ酸とは、活性水素基である複数の水酸基と酸性官能基の両方を一分子中に有する化合物をいう。ポリヒドロキシ酸由来の酸性基はウレタン樹脂において側鎖に位置する。このような上記ポリヒドロキシ酸としては特に限定されないが、例えば2,2-ジメチロールプロピオン酸、2,2-ジメチロールブタン酸、2,2-ジメチロール吉草酸等のジメチロールアルカン酸が好ましい。これらは単独または2種以上を混合して用いることができ、ウレタン樹脂の酸価が15~70mgKOH/gとなるように適宜調整して使用すればよい。なお当該酸価とはJISK0070による測定値をいう。
なお、上記において酸性官能基とは酸価を測定する際に、水酸化カリウムで中和されうる官能基を示し、具体的にはカルボキシル基やスルホン酸基等があげられ、カルボキシル基であることが好ましい。なお、ウレタン樹脂の合成過程において当該酸性基はイソシアネート基とは未反応である確率が高いためウレタン樹脂において酸価を保持させることができるものである。
また、ウレタン樹脂は上記のように、ポリイソシアネート、ポリオールおよびポリヒドロキシ酸を反応させてなる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを、さらにポリアミンと反応させて(鎖延長反応という)なるウレタン樹脂であることが好ましい。この場合ウレタン結合に加え、ウレア結合が生成する。当該ポリイソシアネート、ポリオールおよびポリヒドロキシ酸としては上記と同様のものを用いることが好ましい。
(ポリアミン)
上記ポリアミンとしては、ジアミンを有することが好ましく、以下に限定されないが、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン、さらにダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に転化したダイマージアミン等などのジアミンが好適に挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して用いることができる。
特に好ましくは、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなどの、水酸基を有するジアミンである。これらを使用することでウレタン樹脂製造工程において水酸基が一定量未反応で残存し、ウレタン樹脂に水酸基価を含有させることができる。
なお、鎖延長にはアミノ酸も使用することができる。アミノ酸とは、アミノ基と酸性官能基の両方を一分子中に有する化合物をいい、グルタミン、アスパラギン、リジン、ジアミノプロピオン酸、オルニチン、ジアミノ安息香酸、ジアミノベンゼンスルホン酸等が好適に挙げられる。なお、ウレタン樹脂の合成過程において当該酸性基はイソシアネート基と未反応である確率が高いためウレタン樹脂において当該酸価を保持させることができるものである。
(重合停止剤)
上記ポリアミンと併用して重合停止剤を使用することもできる。かかる重合停止剤としては、例えば、ジ-n-ジブチルアミンなどのジアルキルアミン化合物、
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ブタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリ(ヒドロキシメチル)アミノメタン、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール、N-ジ-2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N-ジ-2-ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等の水酸基を有するアミン化合物、
さらにグリシン、アラニン、グルタミン酸、タウリン、アスパラギン酸、アミノ酪酸、バリン、アミノカプロン酸、アミノ安息香酸、アミノイソフタル酸、スルファミン酸などのモノアミン型アミノ酸化合物が挙げられる。ウレタン樹脂に水酸基価を含有させるためには水酸基を有するアミン化合物を用いることが好ましい。
(ウレタン樹脂の合成)
本発明の実施形態におけるウレタン樹脂の合成方法について説明する。ウレタン樹脂は、ポリイソシアネート、ポリオールおよびポリヒドロキシ酸を反応させてなる(ウレタン化工程という)。ポリイソシアネートと、ポリオールおよびポリヒドロキシ酸と、の反応比(NCO/OH)は1.05~3.0、より好ましくは1.1~2.8であることが好ましい。ウレタン化反応工程は、必要に応じイソシアネート基に不活性な有機溶剤を用い、また、さらに必要であれば触媒を用いて70~90℃の温度で2~8時間かけて行われることが好ましい。この際ポリオールおよび有機溶剤を混合撹拌しているところでポリイソシアネートを適当な速度で滴下することもできる。反応中の撹拌速度は反応液が均一に混合されることが好ましく、過剰に遅い撹拌または過剰に速い撹拌でなく適切な速度でかつ均一であることが好ましい。
ウレタン樹脂は、前記ウレタン化反応工程により得られた末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーとして更にポリアミンと鎖延長反応を行う場合(ウレア化反応工程という)は、ウレタンプレポリマーないしポリアミンの固形分を適切に設定してうえで行うことが好ましく、滴下速度を比較的ゆっくり一定速度として制御することが好ましい。ウレア化反応工程は反応が進むにつれて粘度が大きく変化するため、均一な反応液とすることが好ましく、撹拌速度も速めで設定することが好ましい。なお、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基とポリアミンの有するアミノ基の比率であるアミノ基/NCOは0.7~1.0であることが好ましく、当該反応は20~60℃の温度範囲で1~8時間かけて行われることが好ましい。
さらに、本発明の実施形態におけるウレタン樹脂は、前記ウレア化反応工程で得られたウレタン樹脂の末端アミノ基を酸無水物と反応させることで末端の酸変性を行う。当該反応は、20~80℃の温度範囲で、30分~3時間かけて行われることが好ましい。
(併用樹脂)
本発明の実施形態においてバインダー樹脂は上記ウレタン樹脂以外にもその他樹脂を併用する場合も好適であり、例としては、以下に限定されるものではないが、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル-アクリル系共重合樹脂などの塩化ビニル系樹脂、ロジン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ダンマル樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、スチレン-アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、ポリアセタール樹脂、石油樹脂、およびこれらの変性樹脂などを挙げることができる。これらの樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも塩化ビニル系樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ロジン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の使用が好ましい。塩化ビニル系樹脂、スチレン-マレイン酸共重合樹脂、ロジン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種であることがなお好ましい。ウレタン樹脂と当該併用樹脂との質量比率は前者:後者が95:5~50:50であることがなお好ましい。脱離した絵柄層などの回収が容易となるためである。
<有機溶剤>
本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキは有機溶剤を含む。有機溶剤は以下に限定されるものではないが、使用される有機溶剤としては、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンといったケトン系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系有機溶剤、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのグリコールエーテル系溶剤など公知の有機溶剤を使用でき、混合して使用することが好ましい。中でも炭化水素系ワックスを含有した場合のグラビアインキの経時安定性が良好となるため、トルエン、キシレンといった芳香族系有機溶剤を含まない有機溶剤(ノントルエン系有機溶剤)が好ましく、ケトン系有機溶剤を含むことがなお好ましく、エステル系有機溶剤およびアルコール系有機溶剤を含むことが更に好ましい。エステル系有機溶剤およびアルコール系有機溶剤を含む場合、エステル系有機溶剤:アルコール系有機溶剤を質量比90:10~40:60で含有する混合有機溶剤がより好ましい。更にインキ100質量%中、5質量%以下の量でグリコールエーテル系有機溶剤を含んでよい。
<添加剤>
有機溶剤系印刷インキは、添加剤として従来公知のものを適宜含むことができ、グラビアインキの製造においては必要に応じて添加剤、例えば顔料誘導体、分散剤、湿潤剤、接着補助剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、粘度調整剤、金属キレート、トラッピング剤、ブロッキング防止剤、上記以外のワックス成分、イソシアネート系硬化剤、シランカップリング剤などを使用することができる。
<有機溶剤系印刷インキ>
本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキとは、クリアインキまたはカラーインキである形態を含むものである。ただし、本発明の趣旨を変更しない範囲で、有機溶剤や他のインキ等を更に含む形態を除外するものではない。
<クリアインキ(以下、プライマーともいう)>
クリアインキは、印刷されてプライマー層である脱離層を形成する。
クリアインキとしてはインキまたは印刷層が、およそ白濁もしくは無色・透明である形態を意味し、バインダー樹脂や体質顔料、添加剤等に起因する僅かな着色等をも除外するものではない。当該クリアインキは絵柄層などのプライマーとしての使用が好ましい。当該プライマーの実施形態は後述の積層構成に含まれるものである。
当該クリアインキはインキ総質量中の固形分は5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがなお好ましい。更にバインダー樹脂はインキ総質量中に固形分で0.5~50質量%含有することが好ましく、5~30質量%含有することがなお好ましい。上記範囲であることによってクリアインキの粘度が適性となり、任意の印刷方式を用いてインキをプラスチックフィルムに塗布した際の、網点再現性などの印刷適性が良好となる。なお、「固形分」とは不揮発成分の総質量%をいう。
(体質顔料)
クリアインキは体質顔料を含有することが好ましい。体質顔料としては、シリカ、硫酸バリウム、カオリン、クレー、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムや、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム等の金属酸化物などが好ましい。これらは流動性,被膜強度,光学的性質の改善のために用いられる。中でもシリカの使用が好ましく、親水性であることが好ましい。体質顔料は平均粒子径が0.5~10μmであることが好ましく、1~8μmであることがなお好ましい。体質顔料はインキ総質量中に0.5~10質量%含有することが好ましく、1~5質量%含有することがなお好ましい。絵柄インキを重ね印刷するとき絵柄インキの濡れ性が良好となるためである。
<カラーインキ>
カラーインキとは着色剤を含有する有機溶剤系印刷インキをいい、上記クリアインキである場合を含まない。当該着色剤成分としては着色染料および/または着色顔料であることが好ましい。カラーインキはインキ総質量中の固形分は5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがなお好ましい。着色剤は、インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキ総質量中に1~50質量%含有することが好ましく、3~15質量%含有することがなお好ましい。バインダー樹脂はインキ総質量中に固形分で0.5~50質量%含有することが好ましく、5~30質量%含有することがなお好ましい。上記範囲であることによってカラーインキの粘度が適性となり、任意の印刷方式を用いてインキをプラスチックフィルムに塗布した際の、網点再現性などの印刷適性が良好となる。カラーインキは、補助的に体質顔料を使用してもよく、体質顔料としては上記クリアインキの場合と同様のものが好ましい。
(着色顔料)
上記着色剤は顔料であることが好ましく、バインダー樹脂と着色顔料の質量比率(バインダー樹脂/顔料)は99/1~10/90であることが好ましい。更には80/20~20/80であることがより好ましい。なお、着色顔料は、有機顔料、無機顔料であることが好ましく、無機顔料では酸化チタンを含むもの、有機顔料では、有機化合物、有機金属錯体からなるものの使用が好ましい。
着色顔料のうち有機顔料は、以下の例には限定されないが、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系、カーボンブラック系などの顔料が挙げられる。また、例えば、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド、インダンスロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジゴボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、ジケトピロロピロールレッド、昼光蛍光顔料等が挙げられる。
着色顔料のうち無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、酸化クロムなどの白色無機顔料が挙げられる。無機顔料の中では酸化チタンの使用が特に好ましい。酸化チタンは、白色を呈し、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましく、印刷性能の観点から該酸化チタンはシリカおよび/またはアルミナ処理を施されているものが好ましい。
着色顔料のうち白色以外の無機顔料としては、例えば、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられ、アルミニウムは粉末またはペースト状であるが、取扱い性および安全性の面からペースト状で使用するのが好ましく、リーフィングタイプまたはノンリーフィングタイプいずれでもよい。
<有機溶剤系印刷インキの製造>
有機溶剤系印刷インキは、バインダー樹脂、体質顔料または着色顔料等を有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。
例えば、顔料、ウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂等のバインダー樹脂、シリカ粒子および必要に応じて有機溶剤を分散させておき、顔料分散体に、ウレタン樹脂、必要に応じて有機溶剤、その他樹脂や添加剤などを配合することにより有機溶剤系印刷インキを製造することができる。また、有機溶剤系印刷インキの粘度や色味は分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。サンドミルを用いて製造することが好ましい。
有機溶剤系印刷インキの粘度は、20~1500mPa・sの範囲であることが好ましく、50~1000mPa・sであることがなお好ましい。印刷工程において適切な印刷適性が得られるためである。印刷インキの粘度は上記ウレタン樹脂その他のバインダー樹脂の量や、有機溶剤量、更には顔料の分散条件にて調節をすることができる。
(絵柄層)
絵柄層は、プライマー層上に印刷される層であり、上記脱離機能を有さない印刷インキにより形成されてもよく、具体的には、スクリーンインキ、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキ、オフセットインキその他の印刷インキが好適に挙げられ、例えば、特開2005-298618号公報、特開2006-299136号公報、特開2009-249388号公報、特開2013-127038号公報、特開2017-19991号公報、特開2006-131844号公報、特開2013-40248号公報、特開2007-231148号公報、特開2006-257302号公報等に記載されている印刷インキを好適に使用することができる。ただしこれらに限定されない。中でも、グラビアインキ、フレキソインキ、インクジェットインキの使用が好ましく、グラビアインキおよび/またはフレキソインキの使用がなお好ましい。
<有機溶剤系印刷インキの印刷>
有機溶剤系印刷インキの印刷法としては、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、ドライオフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷などの印刷法を好適に使用できる。中でもグラビア印刷またはフレキソ印刷であることがなお好ましい。
<グラビア印刷>
(グラビア版)
グラビア版は金属製の円筒状のものであり、彫刻または腐蝕・レーザーにて凹部が各色用に作製される。彫刻とレーザーは使用に制限は無く、柄に合わせて任意に設定が可能である。線数としては100線~300線のものが適宜使用され、線数の大きいものほど目の細かい印刷が可能である。印刷層の厚みとしては、0.1μm~100μmが好ましい。
(グラビア印刷機)
グラビア印刷機において一つの印刷ユニットには上記グラビア版およびドクターブレードを備えている。印刷ユニットは多数あり、有機溶剤系印刷インキおよび絵柄インキに対応する印刷ユニットを設定でき、各ユニットはオーブン乾燥ユニットを有する。印刷は輪転により行われ、巻取印刷方式である。版の種類やドクターブレードの種類は適宜選択され、仕様に応じたものが選定できる。
<フレキソ印刷>
(フレキソ版)
フレキソ印刷に使用される版としてはUV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版またはダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。フレキソ版の画像部の形成方法に関わらず版のスクリーニング線数において75lpi以上のものが使用される。版を貼るスリーブやクッションテープについては任意のものを使用することができる。
(フレキソ印刷機)
フレキソ印刷機としてはCI型多色フレキソ印刷機、ユニット型多色フレキソ印刷機等があり、インキ供給方式についてはチャンバー方式、2ロール方式が挙げることが出来、適宜の印刷機を使用することができる。
<印刷物および積層体>
本発明の実施形態における印刷物および積層体の形態は、限定されるものではないが、以下の態様が好適に挙げられる。
・基材1/脱離層(クリア)/絵柄層
・基材1/脱離層(カラー)/絵柄層
・基材1/脱離層(クリア)/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(カラー)/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(クリア)/絵柄層/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(カラー)/絵柄層/接着剤層/基材2
・絵柄層/脱離層(クリア)/基材1/接着剤層/基材2
・絵柄層/脱離層(カラー)/基材1/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(クリア)/絵柄層/脱離層(クリア)/接着剤層/基材2
・基材1/脱離層(カラー)/絵柄層/脱離層(カラー)/接着剤層/基材2
上記において「クリア」とはクリアインキを表し、「カラー」とはカラーインキを表す。
<基材1>
有機溶剤系印刷インキを適用できる基材1としては、ポリエチレンおよびポリプロピレンその他のポリオレフィン基材、ポリカーボネート基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸その他のポリエステル基材、ポリスチレン基材、AS樹脂もしくはABS樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアミド基材、ポリ塩化ビニル基材、ポリ塩化ビニリデンの各種基材、セロハン基材、紙基材もしくはアルミニウム箔基材など、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム状、またはシート状のものがある。中でも、ガラス転移温度が高いポリエステル基材、ポリアミド基材が好適に用いられる。
上記基材は、金属酸化物などを表面に蒸着コート処理および/またはポリビニルアルコールなどコート処理が施されていてもよく、例えば、酸化アルミニウムを基材表面に蒸着させた凸版印刷株式会社製GL-AEや、大日本印刷株式会社製IB-PET-PXB等が挙げられる。さらに、必要に応じて帯電防止剤、紫外線防止剤などの添加剤を処理したものや、基材の表面をコロナ処理あるいは低温プラズマ処理したものなども使用することができる。
<基材2>
基材2は基材1と同様のものが挙げられ、同一でも異なっていてもよい。なお、熱可塑性基材(シーラントと称する場合がある)であることが好ましく、無延伸ポリエチレン基材、無延伸ポリプロピレン基材、無延伸ポリエステル基材等が好ましい。
基材2の厚みは特に限定されず、包装容器への加工性又はヒートシール性等を考慮すると、好ましくは10μm以上150μm以下であり、より好ましくは20μm以上70μm以下である。基材2に数μm程度の高低差を有する凸凹を設けることで、滑り性や包装材の引き裂き性を付与することができる。
基材2を積層する方法は特に限定されず、例えば、基材1、脱離層及び印刷層を有する積層フィルムの印刷面と、基材2とを、ラミネート接着剤を用いて貼り合わせる方法;基材2を構成する樹脂を溶融させて、印刷層上に押出し、冷却固化する方法;等が挙げられる。
印刷層と、基材2との間には、接着剤層、その他の基材などのそれ以外の層が存在していてもよい。また、絵柄層、接着剤層、その他の基材が複数あってもよい。
<接着剤層>
基材1と基材2とを貼り合わせるには接着剤を用いたラミネート加工工程を必要とする。ラミネート加工の代表例として、エクストルジョンラミネート法、ドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法等が挙げられる。ラミネート加工は、印刷物のいずれかの面に接着剤層を塗工・乾燥等により具備させ、更に基材2と圧着して積層する方法である。接着剤層は、以下に限定されないが、アンカー剤層、溶融樹脂層、ウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層などが好適に挙げられ、溶融押し出し法や、塗工法等により得られる。例えば、ウレタン系接着剤としてはポリオールおよびイソシアネート硬化剤の混合物からなる2液型接着剤などが好適であり、ポリオールとしてはポリエステル系、ポリエーテル系などが挙げられる。
(脱離工程)
本発明の実施形態におけるリサイクル基材製造方法は、印刷物またはラミネート積層体を塩基性水溶液(アルカリ水溶液)に浸漬する工程を含む。本発明の実施形態における脱離層等(脱離層、絵柄層、その他の各層)の除去条件として、アルカリ水溶液の濃度としては0.5~15質量%であることが好ましく、1~5質量%であることがなお好ましい。濃度が上記範囲内にあることで、アルカリ水溶液は脱離に充分なアルカリ性を保持することができる。
脱離において、印刷物にあってはその印刷層表面、ラミネート積層体にあっては断面部からアルカリ水溶液が浸透して脱離層と接触して脱離層が溶解するため脱離ができる。より好ましくは印刷物または積層体の断面に脱離層を有している場合であり、より短時間で絵柄インキ層・基材等を脱離することができる。
塩基性水溶液への浸漬時間としては1分~12時間、更に好ましくは1分~6時間である。その後水洗・乾燥してリサイクル基材を得ることができる。基材1から脱離層とそれに伴う絵柄層・接着剤層などの除去率は、脱離層の脱離能が面方向に一様であるならば(部分硬化などしていない)、基材の脱離層のうち好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。なお、浸漬時には撹拌をしながら脱離を行う事が好ましい。例えば、撹拌装置回転羽根で撹拌する場合、80~250rpmであることが好ましく、80~200rpmであることがなお好ましい。
浸漬時の塩基性水溶液の温度は室温~120℃が好ましく、さらに25~110℃が好ましく、30~90℃であることがより好ましく、35~80℃であることが更に好ましい。浸漬時間としては1分~24時間、更に好ましくは1分~12時間である。その後プラスチック基材(リサイクル基材)を水洗・乾燥したときの、脱離層とそれに伴う絵柄インキ層・接着剤層等の除去率は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である。なお、塩基性水溶液のアルカリ濃度としては0.5~15質量%であることが好ましく、1.0~12質量%であることがより好ましく、1.5~10質量%であることが更に好ましい。
アルカリ水溶液の使用量は、印刷物または積層体の質量に対して4~999倍量が好ましい。また、印刷物または積層体を含むアルカリ水溶液の内、印刷物または積層体を0.1~20質量%含む実施形態が好ましく用いられる。また、効率向上のために循環式の洗い流し、印刷物または積層体の粉砕、撹拌を行ってもよい。
本発明の実施形態によれば、印刷物あるいは積層体に対し、アルカリ水溶液中で脱離層の除去を行い、基材を水洗・乾燥することで、再生プラスチック基材(リサイクル基材)を得ることができる。また、再生プラスチック基材を押出機等によりペレット状に再生して再利用することができる。
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本発明における部および%は、特に注釈の無い場合、質量部および質量%を表す。
(分子量および分子量分布)
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定を行い、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。
GPC装置:昭和電工社製 Shodex GPC-104
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
昭和電工社製 Shodex LF-404 2本
昭和電工社製 Shodex LF-G
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.3mL/分
(酸価および水酸基価)
以下において、JISK0070(1992)に記載の方法に従って酸価および水酸基価を測定した。
<合成例1>(ポリウレタン樹脂P1の合成)
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素ガス導入管を備えた四ツ口フラスコにPPA(数平均分子量(以下Mnという)2000のポリ(プロピレングリコール)アジペートジオール)を136.3部、PPG(Mn2000のポリプロピレングリコール)を13.6部、DMPA(2,2-ジメチロールプロパン酸)を25.1部、NPG(ネオペンチルグリコール)3.9部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)88.7部、及びNPAC(酢酸ノルマルプロピル)200部を仕込み、窒素気流下に90℃で3時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶液を得た。次いでAEA(2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール)16.9部、MEA(モノエタノールアミン)0.2部、IPA(イソプロピルアルコール)350部の混合物に、得られた末端イソシアネートプレポリマーを室温で徐々に添加、次に50℃で1時間反応させた。その後、IPDI 11.3部を加えて、アミン価5.0mgKOH/gに調整した後、アミノ基と当mol量の無水フタル酸4.0部添加して50℃1時間反応させた。得られた樹脂溶液にNPAC150部を加えて固形分を調整し、固形分30%、質量平均分子量26000、Mw/Mn=2.8、全酸価40.0mgKOH/g、水酸基価30.8、末端酸価5.0mgKOH/gの油性ポリウレタン樹脂P1溶液を得た。
なお、P1中のポリオール中のポリエステルポリオール比率は100質量%である。
表1に記載した記載の原料および仕込み比率を使用した以外は合成例1と同様の操作で、ポリウレタン樹脂(P2~P18)を得た。Mw、Mw/Mnおよび全酸価、水酸基価、末端官能基の性状は表1に記した。合成例1で使用していない表1に記載された原料化合物の略称は以下に表されるものである。
BD:1,4-ブタンジオール
IPDA:イソホロンジアミン
[比較合成例1](ポリウレタン樹脂PP1)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた反応器中で窒素ガスを導入しながら、PPAを147.9部、PPG14.8部、DMBA25.2部、IPDI96.8部、NPAC200部を仕込み、90℃で3時間反応させて末端イソシアネート基プレポリマーの樹脂溶液を得た。得られた末端イソシアネート基プレポリマーに対し、AEA15.4部、IPA350部を混合したものを室温で60分かけて滴下してウレア化反応を行い、更に70℃で3時間反応させることにより、末端のイソシアネート基とIPAを反応させた。更にNPAC150部を用いて固形分を調整し、固形分30%、重量平均分子量29000、Mw/Mn=3.2、酸価35.1mgKOH/g、水酸基価27.7mgKOH/gのポリウレタン樹脂(PP1)溶液を得た。
なお、P15中のポリオール中のポリエステルポリオール比率は100質量%である。
[比較合成例2](ポリウレタン樹脂PP2)
表1に記載した記載の原料および仕込み比率を使用した以外は比較合成例1と同様の操作で、ポリウレタン樹脂(PP2)を得た。なお、末端はMEA(モノエタノールアミン)で封鎖し、末端官能基は水酸基とした。Mw、Mw/Mnおよび全酸価、水酸基価、末端官能基の性状は表1に記した。
[比較合成例3](ポリウレタン樹脂PP3)
表1に記載した記載の原料および仕込み比率を使用した以外は比較合成例1と同様の操作で、アミン価10.0mgKOH/gに調整した後、酸無水物による末端酸変性を行わずに固形分を調整しポリウレタン樹脂(PP3)を得た。Mw、Mw/Mnおよび全酸価、水酸基価、末端官能基の性状は表1に記した。
[実施例1](クリアインキS1の作製)
ポリウレタン樹脂P1溶液(固形分30%)を87部、酢酸エチル(EA)5部、IPA5部、シリカ(水澤化学社製 平均粒子径3.8μmの親水性シリカ粒子 ミズカシルP-73)3部を、羽根つき撹拌機を用いて撹拌混合して、クリアインキS1を得た。
[実施例2~18](クリアインキS2~S18の作製)
表2に示した原料および配合比率を使用した以外は実施例1と同様の手法により、クリアインキS2~S18を得た。
[実施例19](カラーインキS19の作製)
銅フタロシアニン藍(トーヨーカラー社製 フタロシアニン LIONOL BLUE FG-7358-G)10部、ポリウレタン樹脂(P2)40部、EA3部、IPA3部を撹拌混合し、更にサンドミルで20分顔料分散した後、更にウレタン樹脂溶液(P2)40部、EA2部、IPA2部を攪拌混合し、藍色カラーインキ(S19)を得た。なお、表2に示した各成分については合計の値を示した。
(比較例1~3)(インキSS1~3の作製)
表2に示した原料を記載された配合率を用いた以外は実施例1と同様の手法によりインキSS1~3を得た。
<クリアインキS1を用いた印刷物の作成>
(印刷構成A:基材1/脱離層/絵柄層)
クリアインキS1を酢酸エチル/IPA混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)15秒(25℃)になるように希釈した。その後、コロナ処理延伸ポリプロピレン基材(厚さ20μm)に対し、クリアインキS1、およびレアルNEX 39 藍 BOS3(東洋インキ社製 有機溶剤系グラビアインキ)を、版深15μmのグラビア版を備えたグラビア印刷機にてこの順で印刷し、50℃にて乾燥し、OPP基材/脱離層(S1)/絵柄層である表刷り印刷物を得た。
<実施例または比較例で得られた各インキを用いた印刷物の作製>
クリアインキS1以外の、上記実施例または比較例で得られた各インキについてもクリアインキS1を用いた印刷物の作製と同様の手順で、同様の印刷構成を有する印刷物をそれぞれ作製した。
<クリアインキS1を用いたラミネート積層体の作製>
(積層構成A:基材1/脱離層/絵柄層/接着剤層/基材2)
クリアインキS1をEA/IPA混合溶剤(質量比70/30)でザーンカップ#3(離合社製)14秒(25℃)になるように希釈した。その後、コロナ処理延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(厚さ20μm)に対し、クリアインキS1、およびリオアルファS R39藍(東洋インキ社製 有機溶剤系グラビアインキ)を、版深15μmのグラビア版を備えたグラビア校正2色機にてこの順で印刷し、各ユニットで50℃にて乾燥し、OPP基材/脱離層(S1)/絵柄層の順で有する印刷物を得た。
ドライラミネート機を用いて、この印刷物の絵柄層上に接着剤(東洋モートン社製TM250HV/CAT-RT86L-60)を塗工し、ライン速度40m/分にてCPP(無延伸ポリプロピレンフィルム 厚さ30μm)と貼り合わせ、OPP基材/脱離層(S1)/絵柄層/接着剤層/CPP基材の順で積層されたラミネート積層体を得た。
<実施例2~18または比較例1~3で得られた各インキを用いたラミネート積層体の作製>
クリアインキS1以外の、上記実施例2~18または比較例1~3で得られた各インキについても上記と同様の手順で、同様のラミネート構成を有するラミネート積層体をそれぞれ得た。
<脱離性評価>
上記実施例および比較例で作製した印刷構成Aの印刷物および積層構成Aのラミネート積層体を1cm×1cmの大きさに切り出した。そのサンプル12gを2質量%の水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液400g中で、70℃、3000rpmで撹拌した。撹拌開始15分、30分、1時間、2時間で基材を10枚ずつサンプリングし、水洗・乾燥した後、印刷層の除去率については目視で確認した。得られたサンプルから透明なフィルムを回収し、フィルムの表裏5ヶ所について、FT-IRを用いて接着剤組成物の吸収ピークの有無を確認し、接着剤層の除去率を確認した。脱離性については、以下の基準で評価した。
5(優):15分未満で印刷層、接着剤層の90面積%以上が基材から剥離する。
4(良):15分以上30分未満で印刷層、接着剤層の90面積%以上が基材から剥離する。
3(可):30分以上60分未満で印刷層、接着剤層の90面積%以上が基材から剥離する。
2(不可):60分以上120分未満で印刷層、接着剤層の90面積%以上が基材から剥離する。
1(劣):120分以上においても印刷層、接着剤層が基材から剥離しない。
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
<再付着性評価>
撹拌開始3時間後、脱離した基材を回収し、水洗、乾燥した後、得られた基材10枚を重ねて分光測色計(X-rite社製、X-rite eXact)で色彩値L*x、a*x、b*xを測定した。脱離性評価で印刷層、接着剤層の90%が剥離したときにサンプリングした基材についても同様に、基材10枚を重ねて色彩値L*y、a*y、b*yを測定し、下記計算式により色差Δを求めた。
ΔE=((L*x-L*y)2+(a*x-a*y)2+(b*x―b*y)2)1/2
再付着性については、以下の基準で評価した。
5(優):ΔEが3未満。
4(良):ΔEが3以上20未満。
3(可):ΔEが20以上40未満。
2(不可):ΔEが40以上60未満
1(劣):ΔEが60以上
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
<表刷り印刷物における基材密着性(テープ密着性)評価>
上記実施例および比較例で作製した印刷構成Aの印刷物について、ニチバン社製セロハンテープ(12mm幅)を印刷層上に貼り、テープをゆっくり引き剥がし、途中から急激に引き剥がした時の、インキ被膜の剥離程度を評価した。
5(優):急激に剥がしてもインキ被膜が全く剥離しない。
4(良):急激に剥がした部分のうち25%未満の面積のインキ被膜が剥離する。
3(可):急激に剥がした部分のうち25%以上75%未満の面積のインキ被膜が剥離する。
2(不可):急激に剥がした部分のうち75%以上の面積のインキ被膜が剥離する、またはゆっくり剥がした部分のうちインキ被膜の一部が剥離する
1(劣):ゆっくり剥がした部分のインキ被膜が全面剥離する
3、4および5は実用上問題がない範囲である。
<実施例19>
上記評価においてカラーインキS19を使用し、絵柄層は不使用とした以外は同様の方法にて印刷構成Aの印刷物、積層構成Aのラミネート積層体を作製した。以下に印刷構成および積層構成を示す。
(印刷物の印刷構成)
OPP基材/脱離層(S19)
(ラミネート積層体の積層構成)
OPP基材/脱離層(S19)/接着剤層/CPP基材それぞれを使用して上記と同様の特性評価を行ったところ、テープ密着性評価:5、表刷り印刷物における脱離性評価:4、ラミネート積層体における剥脱離評価:3、表刷り印刷物における再付着性評価:4、ラミネート積層体における再付着性評価:4、であった。
上記の評価結果より、本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキを用いれば、良好な印刷加工適性を有し、表刷り構成およびラミネート構成での積層体において、アルカリ水溶液によってプラスチックフィルムからインキ等を脱離することができ、かつ微細化したインキ片の基材への再付着を抑制できることが示された。さらに、本発明の実施形態の有機溶剤系印刷インキを用いれば、表刷り構成において、良好な基材密着性を発現することが示された。
Figure 2023088345000001
Figure 2023088345000002

Claims (10)

  1. 基材1、脱離層、並びに、絵柄層および/または基材2をこの順に有する印刷物ないし積層体から、基材1を剥離させてリサイクルするための脱離層を形成することに用いられる有機溶剤系印刷インキであって、
    前記有機溶剤系印刷インキが、末端に酸性基を有するウレタン樹脂を含む、有機溶剤系印刷インキ。
  2. 末端に酸性基を有するウレタン樹脂の酸価が、15~70mgKOH/gである、請求項1に記載の有機溶剤系印刷インキ。
  3. 末端に酸性基を有するウレタン樹脂の末端に有する酸性基に由来する酸価が、1~50mgKOH/gである、請求項1または2に記載の有機溶剤系印刷インキ。
  4. 末端に酸性基を有するウレタン樹脂の水酸基価が、1~35mgKOH/gである、請求項1~3いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキ。
  5. 末端に酸性基を有するウレタン樹脂の、末端に有する酸性基が、環構造を有する酸無水物由来である、請求項1~4いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキ。
  6. クリアインキである、請求項1~5いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキ。
  7. 基材1上に、請求項1~6いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキから構成された脱離層を有する印刷物。
  8. 少なくとも基材1、請求項1~6いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキからなる脱離層および基材2を有する積層体。
  9. 印刷物を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
    前記印刷物は、基材1と、請求項1~6いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキにより形成された脱離層と、絵柄層と、をこの順に印刷されてなり、
    前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~15質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は室温~120℃である、リサイクル基材製造方法。
  10. 積層体を塩基性水溶液に浸漬する工程を含むリサイクル基材製造方法であって、
    前記積層体は、基材1と基材2の間に、請求項1~6いずれかに記載の有機溶剤系印刷インキにより形成された脱離層を有してなり、
    前記塩基性水溶液は、塩基性化合物を塩基性水溶液全体の0.5~15質量%含み、かつ浸漬時の塩基性水溶液の水温は30~120℃である、リサイクル基材製造方法。
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