JP2023082329A - 混繊糸及び織編物 - Google Patents
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Abstract
【課題】湿潤状態の防透性及や堅牢度、さらに製造工程通過性に優れた混繊糸及びそれを用いたコットンライクでソフトな風合いを有する高ストレッチ織編物を提供することを目的とする。【解決手段】芯糸と、鞘糸からなる混繊糸であり、芯糸がサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型の複合繊維であり、鞘糸が、酸化チタン含有率が0~2質量%の最外層部及び酸化チタン含有率が5~60質量%の内層部を有し、前記内層部の酸化チタンがルチル型である繊維であり、前記複合繊維を被覆する混繊糸。【選択図】なし
Description
本発明は、ストレッチ、湿潤時の防透性や堅牢度、さらに製造工程通過性に優れた混繊糸及びコットンライクでソフトな風合いを有する織編物に関するものである。
従来、防透性や紫外線遮蔽性、遮熱性等を織編物に付与する技術としては、セラミックス、中でも酸化チタンを、織編物を構成する繊維に練り込む方法が周知で一般に良く行われている。しかしながら単純に酸化チタンの含有量を増加すると、糸表面に存在する酸化チタンの量が増え、紡糸工程、延伸工程、混繊工程、撚糸工程、製織工程、製編工程などにおける糸道ガイド、ロ-ラ、筬、編針等が著しく摩耗され、頻繁に部品を交換する必要が生じる。また、繊維自体に毛羽、糸切れが多発する。従って酸化チタンの含有量は繊維構成材料の2~3重量%が限界であった。
かかる欠点を改善するため芯鞘型複合繊維が提案されている(特許文献1参照)。本手法では内層部に高濃度の酸化チタンを含有させ、外層部の酸化チタン含有率を少なくすることで、糸道ガイド類の摩耗を改善しつつ、一定の防透性効果を得ている。しかし、本手法では混繊後の防透け効果、また酸化チタンが高濃度で含有されたときの織編物の堅牢度は全く考慮されていないものであった。
また、上記芯鞘型複合繊維に異型断面糸を加え、防透性やドライ感、ドレープを付与した芯鞘複合繊維が提案されている(特許文献2参照)。しかし、本手法においても、混繊後の防透け効果、また織編物の堅牢度は全く考慮されていないものであった。
一方、防透性へのニーズが高まり、乾燥状態の防透性のみならず、湿潤状態の防透性も要望されるようになってきている。湿潤状態になると光散乱が抑制されることで、より透けるようになるので、高い防透け素材への要求がますます高まっている。この状況を鑑みて、2017年にはJIS L1923「繊維製品の防透性評価方法」において湿潤状態の防透性も規定された。
湿潤状態の防透性については、芯鞘型複合繊維に中空部断面を加味した中空マルチフィラメント糸の効能として提案されている(特許文献3参照)。しかしながら、本手法においては、混繊後の防透け効果、工程通過性を考慮しているものの、湿潤状態の防透性に関しては、湿潤状態の白度の低下を独自の手法で測定しているにすぎず、不十分なものであった。
その他にも芯鞘型ポリエステル扁平断面繊維とすることで、混繊後も高い防透性能を持つ繊維が提案されている(特許文献4参照)。しかし、本手法においても、湿潤状態の防透性能については言及されておらず、十分な効果が期待できるものではなかった。
また、上記の先行技術文献(特許文献1~4)では衣類のストレッチ性は考慮されておらず、湿潤状態を含む高い防透性とストレッチ性の両立は不可能であった。
近年ではストレッチ性と防透性の両立のために、中空断面糸とサイドバイサイド型コンジュゲートポリエステルマルチフィラメントを組み合わせた混繊追撚糸が提案されている(特許文献5参照)。しかし、本手法では防透性の高い中空糸と防透性に劣るサイドバイサイド型コンジュゲートポリエステルマルチフィラメントが繊維束内でランダムに配置されており、防透性に劣る部分のみを通過する光によって十分な防透性を得ることはできず、湿潤状態での防透性も評価されていない。
このように一般衣料に幅広く展開される混繊糸において、湿潤状態において優れた防透性を有し、さらにストレッチ性を有した素材は得られていなかった。
本発明においては上述の問題点を解決するものであり、湿潤状態の防透性や堅牢度、さらに製造工程通過性に優れた混繊糸及びそれを用いたコットンライクでソフトな風合いを有する高ストレッチ織編物を提供することを目的とする。
上記課題を解決するための本発明は、以下のいずれかの構成を特徴とする。
(1)芯糸と、鞘糸からなる混繊糸であり、芯糸がサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型の複合繊維であり、鞘糸が、酸化チタン含有率が0~2質量%の最外層部及び酸化チタン含有率が5~60質量%の内層部を有し、前記内層部の酸化チタンがルチル型である繊維であり、前記複合繊維を被覆する混繊糸。
(2)前記混繊糸の表層部に0.6mm以上のループ毛羽数が10~300ヶ/mの割合で存在する(1)に記載の混繊糸。
(3)0.5cN/dtexでの緊張後における伸縮伸長率が20~150%である(1)または(2)に記載の混繊糸。
(4)前記酸化チタン含有率が5~60質量%の内5~60質量%、酸化チタン含有率が0~2質量%の最内層部を有している(1)~(3)のいずれかに記載の混繊糸。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の混繊糸を用いた織編物。
(6)吸水性が5秒以内かつ、60分後の残留水分率が30%以下の(5)に記載の織編物。
(7)JIS L1923:2017「繊維製品の防透性評価方法」A法(視感法)に基づく乾燥状態と湿潤状態の防透性がいずれも4級以上の(5)または(6)に記載の織編物。
(1)芯糸と、鞘糸からなる混繊糸であり、芯糸がサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型の複合繊維であり、鞘糸が、酸化チタン含有率が0~2質量%の最外層部及び酸化チタン含有率が5~60質量%の内層部を有し、前記内層部の酸化チタンがルチル型である繊維であり、前記複合繊維を被覆する混繊糸。
(2)前記混繊糸の表層部に0.6mm以上のループ毛羽数が10~300ヶ/mの割合で存在する(1)に記載の混繊糸。
(3)0.5cN/dtexでの緊張後における伸縮伸長率が20~150%である(1)または(2)に記載の混繊糸。
(4)前記酸化チタン含有率が5~60質量%の内5~60質量%、酸化チタン含有率が0~2質量%の最内層部を有している(1)~(3)のいずれかに記載の混繊糸。
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の混繊糸を用いた織編物。
(6)吸水性が5秒以内かつ、60分後の残留水分率が30%以下の(5)に記載の織編物。
(7)JIS L1923:2017「繊維製品の防透性評価方法」A法(視感法)に基づく乾燥状態と湿潤状態の防透性がいずれも4級以上の(5)または(6)に記載の織編物。
本発明によれば、酸化チタンが内層部に高濃度で含有されるにもかかわらず、堅牢度、製造工程通過性に優れ、かつストレッチ性および湿潤状態の防透性を兼ね備えた混繊糸およびコットンライクでソフトな風合いを有する高織編物を提供することができる。
本発明の混繊糸は、少なくとも芯糸と鞘糸からなる混繊糸であり、鞘糸が酸化チタン高含有の内層部と酸化チタン低含有の最外層部を有することが重要である。酸化チタン含有率が0~2質量%の最外層部を有することで、紡糸や混繊、製織工程で酸化チタンとガイド等の糸道擦過を低減することができ、工業的に安定に生産することができる。また最外層部の酸化チタン含有率が低いことで、繊維表面の反射率が高くなるが、特に湿潤状態での正反射率が高くなることで、ミラー効果が発生し、織編物の場合裏側が視認しにくくなる。そのため、湿潤状態の防透性を向上させることができる。なお、鞘糸の最外層部の酸化チタン含有率は、最外層部の質量対比の値であって、その含有率が2質量%を超えると、製造工程通過性が極端に悪化する。さらに好ましい最外層部の酸化チタン含有率は0~1質量%であり、最外層部に酸化チタンを全く含有しなくてもよい。
また、酸化チタン含有率が5~60質量%の内層部を有することで、防透性、特に湿潤状態での防透性を向上させることができる。通常の乾燥状態での防透性のみであれば、酸化チタン含有率が5質量%未満でも得ることは可能であるが、湿潤状態では光散乱が抑制されることで、より透けるようになる。そのため、本発明においては、酸化チタン含有率が5質量%以上の内層部が必須である。しかし、内層部の酸化チタン含有率が60質量%を超えると、糸強度が極端に低下する問題が発生する。そのため内層部の酸化チタン含有率は、5~60質量%である。さらに好ましい内層部の酸化チタン含有率は11~35質量%である。
一方、内層部の酸化チタン含有率が高い混繊糸において、大きな課題は堅牢度である。酸化チタンは光照射によりラジカルが発生し、ポリマーや染料を酸化分解し、耐光堅牢度悪化や黄変発生という問題が発生する。特に混繊糸の鞘糸のループは繊維表面に突出していることで、たとえ最外層に保護層を有していても、耐光堅牢度悪化や黄変の問題が特に発生しやすい。
そのため、本発明の混繊糸の鞘糸においては、光照射してもラジカルを発生し難いルチル型の酸化チタンを内層部に用いる。こうすることで、耐光堅牢度悪化や黄変の発生を抑制することができる。ここで、酸化チタンとして通常のアナターゼ型を使用すると、安価に製造できるというメリットはあるが、光照射により、耐光堅牢度悪化や黄変は避けられない。そのため、本発明の混繊糸においては、酸化チタンを高濃度で含有せしめる内層部にはルチル型の酸化チタンを用いる。なお、酸化チタン含有率が少ない最外層部はルチル型でもアナターゼ型でもよい。
最外層部と内層部の質量比率は、最外層部:内層部が10:90~40:60の範囲であることが好ましい。この範囲の比率が防透性と工程通過性を両立する点で好ましい。さらに好ましくは15:85~25:75の比率である。
また、本発明の混繊糸の鞘糸は内層部と最外層部の2層構成のみならず、3層構成以上であっても構わない。積層数が増えると、積層界面でも光反射され、防透性がさらに向上するので、好ましい。コストと防透性能の両立の点から、好ましくは、最外層部と、内層部と、内層部のさらに内側に設けた最内層部とからなる3層構成である。このような3層構成の場合、酸化チタン含有率が高い内層部の質量比率が混繊糸の25質量%以上であれば、防透性能は維持できるので、最内層部の酸化チタン含有率は低くてもよい。このときの好ましい最外層部:内層部:最内層部の範囲は最外層部が10~40、内層部が25~50、最内層部が20~60である。とりわけ、最内層部の酸化チタン含有率が2質量%以下の場合には、防透性に加え、発色性も向上するので好ましい。好ましい下限は0質量%であるが、最内層部の酸化チタン含有率は紡糸性の点で0.1質量%以上であることが好ましい。
本発明において鞘糸はポリエステル繊維でもナイロン繊維でも構わないが、好ましくは高屈折で捲縮堅牢性が高いポリエステル繊維である。具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの芳香族系ポリエステル繊維、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などの脂肪族系ポリエステル繊維などが挙げられるが、これらに限定されない。なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートの繊維は、機械的特性や耐久性に優れ、捲縮が堅牢であるため好ましい。また、ポリエチレンテレフタレートの繊維はポリエステル繊維特有の洗濯耐久性が得られるため好ましい。
ポリエチレンテレフタレートとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコール成分とする、90モル%以上がエチレンテレフタレートの繰り返し単位からなるポリエステルを用いることができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲内において、他のエステル結合を形成可能な共重合成分を含んでも良い。共重合可能な化合物としては、例えばイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、スルホン酸などのジカルボン酸類を例示できる。
本発明における鞘糸は繊維断面の扁平度が1.5以下であることで、湿潤時の防透性を向上させることができ、好ましい。乾燥状態対比、湿潤状態で防透性が低下する理由の一つには、繊維間空隙に水が入り込み、光散乱を低下させ、透過光が増大することにある。鞘糸に扁平度1.5を超える異型断面や扁平断面を採用すると、乾燥状態での防透性は向上するが、湿潤状態での防透性が低下する傾向があるのはこのためである。より好ましい鞘糸の扁平度は1.0以上1.4以下である。
本発明の混繊糸の鞘糸断面形状は任意であるが、上記理由により丸型が好ましい。中空断面構造では染色工程において断面が潰れやすくなり、扁平度にバラツキが生じ易くなるので、実質的に中実断面構造であることが好ましい。
本発明の混繊糸はストレッチ性を有し、従来にはないストレッチ性を発現させるために芯糸の特性を調整することにより、加工後の混繊糸に心地よいストレッチ性を持たせることができる。このストレッチ性を発現させる要件としては、芯糸が伸縮伸長率および伸長回復率に優れる物であれば原理的には発現するものの、後工程における混繊糸の嵩高性やハリコシの観点から、本発明において芯糸に用いる繊維はサイドバイサイド型または偏心芯鞘型の複合繊維であることが好ましい。
また、サイドバイサイド型や偏心芯鞘型の複合繊維は染色後加工時に収縮するとともにコイル捲縮が発現するため、これらの繊維を芯糸に用いることで後加工時に防透性の高い鞘糸による被覆率が上がり、芯糸に鞘糸を強固に被覆することができる。このため、その他の繊維を芯糸に用いた場合と比較して防透性およびその耐久性が向上する。
ここで言うサイドバイサイド型複合繊維とは繊維軸に対して垂直方向の繊維断面において、異なる特性を有したAポリマーとBポリマーが張り合わされた形態を有した繊維を意味する。また、偏心芯鞘型複合繊維とは繊維軸に対して垂直方向の繊維断面において、重心から左右どちらかにAポリマーが配置され、これを被覆するようにBポリマーが配置された形態を有する繊維を意味する。
これらの繊維はいずれもAポリマーとBポリマーの収縮差と繊維径に応じたコイル捲縮を発現し、このコイル捲縮に応じて本発明における芯糸に必要なストレッチ性能を発現するものである。原糸段階においては、比較的フラットな繊維形態であり、加工後に細かい捲縮を発現することが混繊糸の耐久性並びに加工時の走行性などには好適である。
これらの複合繊維に用いられるポリマーの組合せは特に限定される物ではないが、高粘度ポリエチレンテレフタレート/低粘度ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(以下「PBT」という)/ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」という)、ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PPT」という)/PET、ナイロン6/ナイロン610などの組合せで構成されることで2成分の収縮特性の差が大きく、単位繊維長あたりのコイル数が多くなり、芯糸の捲縮ピッチが微細になることでソフトタッチかつストレッチ性に優れるため好ましい。
複合繊維を構成するAポリマーとBポリマー両成分の複合比率は重量比で2:8~8:2の範囲が好ましい。さらに好ましくは4:6~6:4である。この範囲以外の場合には、高収縮側か定収縮側の成分が少なくなり、コイル捲縮が粗くなる場合がある。
本発明の混繊糸の総繊度は芯糸、鞘糸共に20~250dtexであることが織物にハリ腰、防透性能を付与する点で好ましい。このとき総繊度が20dtex未満であると、防透性能を得にくくなる場合がある。また総繊度が250dtexを超えると、アウター向け衣服としたときに厚すぎる場合がある。
また本発明の混繊糸の芯糸単糸繊度は1.0~10dtexであることが最低限のハリコシを織編物に付与する点で好ましい。このとき単糸繊度が1.0dtex未満であると、繊維強度が極端に弱くなり、織編物の引裂強力や破裂強力が低下する傾向がある。また、単糸繊度が10dtexを超えると、単糸が太すぎて、鞘糸が絡みにくくなる場合がある。
また本発明の混繊糸の鞘糸単糸繊度は0.5~5dtexであることがソフトな肌触りを織編物に付与する点で好ましい。このとき単糸繊度が0.5dtex未満であると、繊維強度が極端に弱くなり、ピリングやスナッグが低下する傾向がある。また、単糸繊度が5dtexを超えると、単糸が太すぎて、芯糸と絡みにくくなる場合がある。
また本発明の混繊糸の表層部に形成されたループ毛羽数は、0. 6mm以上のループ毛羽の個数が10~300ケ/mであることが風合いと防透性、品質を両立する点で好ましい0. 6mm以上のループ毛羽数が10ヶ/m以上あることで、コットンライクでソフトな風合いを有する織編物とすることができる。ここで、ループ毛羽数が10ヶ/m未満であると、プレーンなふくらみ感のない織編物になる場合がある。一方、300ヶ/mを超えると、繊維間空隙が多くなり、湿潤時の防透性が低下し、かつループがガイドでしごかれやすくなり、糸切れ・解舒不良等が発生する場合がある。より好ましいループ毛羽数は30~250ケ/mである。
また本発明の混繊糸の鞘糸熱収縮率は0~5%であることが湿潤状態での防透性を維持する点で好ましい。鞘糸熱収縮率が5%を超えると、ノズル部で形成し固定された鞘糸のループの一つ一つがばらけやすくなる。そうなると、繊維間に空隙ができ、湿潤状態での防透性が低下する一因になる場合がある。一方、鞘糸熱収縮率が0%未満であると、鞘糸のループが大きくなり、スナッグが低下する傾向がある。
また本発明の混繊糸の芯糸熱収縮率が0~10%であることが好ましい。芯糸熱収縮率が10%を超えると、鞘糸のループが大きくなり、スナッグが低下する傾向がある。一方、芯糸熱収縮率が0%未満であると、織編物で目ヨレが発生しやすくなる。
また、本発明の混繊糸はふくらみ感を得るために、無撚り使いが好ましいが、撚糸加工を施しても構わない。好ましい撚数は50~1000T/mである。
次に、本発明の混繊糸及び織編物の製造方法について説明する。
まず、本発明の混繊糸の元糸となる原糸を紡糸するにあたっては、高配向未延伸糸であっても、延伸糸であっても構わないが、鞘糸の熱収縮率を低下させるためには、高配向未延伸糸を用い、非晶部が高配向状態であることが好ましく、好ましい紡糸速度は2800~3500m/minである。
鞘糸の熱収縮率を低下させるためには、混繊前に鞘糸を高温熱処理することが好ましい。熱処理にはヒータ汚れによる毛羽発生を防ぐために中空ヒータが好ましく、好ましいヒータ温度は180~230℃である。前述の鞘糸熱収縮率は0~5%になるように適宜調整する。
続いて、芯糸と鞘糸を混繊するにあたっては、任意のノズルを選定できるが、好ましくは安定したループを形成できるタスランノズル等の乱流加工ノズルである。ノズルに供給する芯糸、鞘糸のオーバーフィードを調整することで、鞘糸にループを形成させることができる。0. 6mm以上のループ毛羽の個数を10~300ケ/mの範囲で形成させるためには、鞘糸と芯糸のオーバーフィード差は3~25%であることが好ましい。また、交絡圧は0.1~1.0MPaであることが好ましい。より好ましくは0.5~0.9MPaである。
タスランノズルで混繊させる際、ループをより強固に絡ませるために芯糸に水を付与することもできる。鞘糸が強固に絡みつくことで防透性能やスナッグ・ピリングなどの物性が向上するため、水付与しても構わない。
また、混繊する前に鞘糸にホットピンで低倍率熱処理延伸を行い、シックアンドシン部を糸に付与しても構わない。フィラメントに太細を付与し、杢感をランダムにすることでよりコットンライクな表面感を実現することができるが、シック部の染料吸着性が大きくなり、染色堅牢度が悪くなるので、ホットピン延伸条件として、好ましいホットピン延伸条件は1.2~1.8倍であり、ホットピン温度条件は70~90℃の範囲である。
混繊する際の加工速度については早ければ生産性が高くなり好ましいが、安定加工性を考慮すると、100~800(m/min)が好ましい。
また、本発明の混繊糸は、0.5cN/dtexでの緊張後において、伸縮伸長率は20~150%であることが好ましい。3次元コイル捲縮発現を阻害しないように、流体乱流処理条件を制御し、伸縮伸長率をこのようにすることにより、織編物にした際に、良好なストレッチ性を得ることができる。伸縮伸長率が20%未満の場合には、織編物で十分なストレッチ性を得ることができない場合がある。また、伸縮伸長率が150%を超える場合には、ストレッチ性が強すぎ、織編物表面に凹凸が発生し、ソフト風合いを得ることができない場合がある。好ましい伸縮伸長率は20~125%であり、さらに好ましくは20~100%である。
このようにして製造した本発明の混繊糸を、公知の製織方法、編成方法を用いて、織物や編物とする。本発明において、織物と編物を総称して「織編物」という。本発明の織編物は組織あるいは密度になんら制約されることはない。湿潤状態での防透性を向上させるには、本発明の混繊糸を30質量%以上用いた織編物が好ましい。特にセルロース系のフィラメントまたはスパン糸は、湿潤状態での防透性が低いが、例えば織編物の30質量%以上に本発明の混繊糸を用いて交織または交編することで、湿潤状態での防透性を向上することができる。
製織に用いる織機としては、一般に使用される普通織機、レピア織機、ウォータージェットルーム、エアージェットルーム等の機種が、特に限定されることなく採用できる。
また、製編の際は、丸編み機、トリコット機およびラッシェル機等市販の編機を使用することができる。本発明の混繊糸を、編糸の少なくとも一部に使用する際は、各々の張力を適正化して製編を行うことが好ましい。
編組織は天竺、カノコ、スムース、フライス、ポンチ、リブ、モックロディ、接結リバーシブル、ハーフ、デンビー、サテン、アトラスなど限定されないが、防透効果を最大限に得るために、本発明の混繊糸とその他の繊維を交編する場合は混繊糸が表面に配置され、その他の繊維が表面に露出しない組織にすることが好ましい。丸編の場合、シングル・ダブル編機を問わないがリバーシブル天竺、リバーシブルカノコ、接結組織、インレー組織など表裏を完全に分けることができる組織であることがより好ましい。経編の場合は本発明の混繊糸をフロント筬に配置し、表裏ともに混繊糸がその他の繊維の上に配置される編み条件がより好ましく、ダブルデンビ、ハーフ、サテン、アトラスなど組織は限定されない。
また、染色加工工程は、一般のポリエステルやナイロンの混繊糸による織編物の染色工程及び条件に準じて行うことができる。必要に応じて耐熱加工、防縮加工、防しわ加工、柔軟加工、減量加工などを施してもよい。
また本発明の織編物には、必要に応じて、少量の樹脂材、例えば柔軟剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤、蛍光増白剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、艶消し剤、耐電防止剤、硬仕上げ剤、形態安定剤、撥水剤、吸水剤等を含ませてもよい。
本発明の織編物は、吸水性が5秒以内、60分後の残留水分率が30%以下であることが、吸水速乾性に優れる点で、好ましい。このような本発明の織編物は、コットンライクでありながら綿では達成できない吸水速乾性を併せ持つことができる点で好ましい。
また、本発明の織編物は、JIS L1923:2017「繊維製品の防透性評価方法」A法(視感法)に基づく乾燥状態と湿潤状態の防透性がいずれも4級以上であることが、乾燥状態、湿潤状態いずれにおいても防透性に優れる点で好ましい。
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明における各種測定法は下記の通りである。
1.繊度
枠周1.0mの検尺機を用いて100回分のカセを作製し、下記式に従って繊度を測定した。
・繊度(dtex)=100回分のカセ重量(g)×100
枠周1.0mの検尺機を用いて100回分のカセを作製し、下記式に従って繊度を測定した。
・繊度(dtex)=100回分のカセ重量(g)×100
2.伸縮伸長率
枠周0.8mの検尺機に90mg/デシテックスの張力下で10回巻回してカセ取りした後、2cm以下の棒に吊り下げ、約24時間放置する。このカセを無緊張状態下で、90℃の温度で20分間熱処理した後、2cm以下の棒に吊り下げ無緊張状態のまま放置する。約12時間後、カセ長を測定し、Lとする。その後、測定加重(g)=90mg/デシテックスを付加し、そのカセ長を測定し、L1とする。次式により、伸縮伸長率を求める。10点測定し、その平均値を伸縮伸長率とした。
・伸縮伸長率(%)={(L-L1)/L}×100
枠周0.8mの検尺機に90mg/デシテックスの張力下で10回巻回してカセ取りした後、2cm以下の棒に吊り下げ、約24時間放置する。このカセを無緊張状態下で、90℃の温度で20分間熱処理した後、2cm以下の棒に吊り下げ無緊張状態のまま放置する。約12時間後、カセ長を測定し、Lとする。その後、測定加重(g)=90mg/デシテックスを付加し、そのカセ長を測定し、L1とする。次式により、伸縮伸長率を求める。10点測定し、その平均値を伸縮伸長率とした。
・伸縮伸長率(%)={(L-L1)/L}×100
3.ループ毛羽数
混繊糸の糸表面から0.6mm以上突出したループ毛羽の個数を光電型毛羽測定機(TORAYFRAY COUNTER)を用い、糸速度10m/分、走行糸張力0.1g/dの条件で2分間測定し、1mあたりのループ毛羽数を算出した。
混繊糸の糸表面から0.6mm以上突出したループ毛羽の個数を光電型毛羽測定機(TORAYFRAY COUNTER)を用い、糸速度10m/分、走行糸張力0.1g/dの条件で2分間測定し、1mあたりのループ毛羽数を算出した。
4.酸化チタン含有率
混繊糸から取り出した鞘糸を長手方向に5箇所サンプリングし、カーボン蒸着の後、日本電子製 電子線プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA) JXA-8530Fで加速電圧15kV、照射電流40nAの条件で最外層部および内層部の元素定量分析を実施、Ti(チタン)元素の含有率からそれぞれの酸化チタン含有率平均を求めた。
混繊糸から取り出した鞘糸を長手方向に5箇所サンプリングし、カーボン蒸着の後、日本電子製 電子線プローブマイクロアナライザー(FE-EPMA) JXA-8530Fで加速電圧15kV、照射電流40nAの条件で最外層部および内層部の元素定量分析を実施、Ti(チタン)元素の含有率からそれぞれの酸化チタン含有率平均を求めた。
5.防透性
JIS L1923:2017 「繊維製品の防透性評価方法」A法(視感法)に基づき、乾燥状態と湿潤状態の防透性を求めた。4級以上を合格基準とした。
JIS L1923:2017 「繊維製品の防透性評価方法」A法(視感法)に基づき、乾燥状態と湿潤状態の防透性を求めた。4級以上を合格基準とした。
6.耐光堅牢度
JIS L0842:2004:「紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法」に基づいて耐光堅牢度を求めた。3級以上を合格基準とした。
JIS L0842:2004:「紫外線カーボンアーク灯光に対する染色堅牢度試験方法」に基づいて耐光堅牢度を求めた。3級以上を合格基準とした。
7.工程通過性
混繊加工の操業性を評価実施し(36錘・5日間)、糸切れ率を下記基準で判定を行った。◎および○を合格基準とした。
・◎:糸切れ率が3%未満
・○:糸切れ率が3%以上5%未満
・△:糸切れ率が5%以上10%未満
・×:糸切れ率が10%以上
混繊加工の操業性を評価実施し(36錘・5日間)、糸切れ率を下記基準で判定を行った。◎および○を合格基準とした。
・◎:糸切れ率が3%未満
・○:糸切れ率が3%以上5%未満
・△:糸切れ率が5%以上10%未満
・×:糸切れ率が10%以上
8.扁平度
混繊糸を繊維軸方向に5箇所サンプリングし樹脂埋めして断面観測用サンプルを切り出し、おのおの断面顕微鏡写真を撮影した。撮影された全繊維断面について、最も長い部位(長軸)の長さ(A)と、該長軸に直交する短軸の最大長さ(B)との比A/Bを測定し、全測定値の平均値で表した。
混繊糸を繊維軸方向に5箇所サンプリングし樹脂埋めして断面観測用サンプルを切り出し、おのおの断面顕微鏡写真を撮影した。撮影された全繊維断面について、最も長い部位(長軸)の長さ(A)と、該長軸に直交する短軸の最大長さ(B)との比A/Bを測定し、全測定値の平均値で表した。
9.速乾性(拡散性残留水分率)
10cm×10cmの試験片の質量(W)を測定後、試験片に水0.6mlを滴下し、質量(W0)を測定した。標準状態(20℃、65%RH)で吊干しして5分毎に質量(Wt)を測定し、時間毎に以下の式で表される拡散性残留水分率(%)を算出する。得られた残留水分率を直線近似し、残留水分率が10%に至る時間が55分以下の物を合格とした。
・拡散性残留水分率(%)={(Wt-W)/(W0-W)}×100
10cm×10cmの試験片の質量(W)を測定後、試験片に水0.6mlを滴下し、質量(W0)を測定した。標準状態(20℃、65%RH)で吊干しして5分毎に質量(Wt)を測定し、時間毎に以下の式で表される拡散性残留水分率(%)を算出する。得られた残留水分率を直線近似し、残留水分率が10%に至る時間が55分以下の物を合格とした。
・拡散性残留水分率(%)={(Wt-W)/(W0-W)}×100
10.吸水性
JIS L 1907:2010「繊維製品の吸水性試験法」に記載の滴下法によって吸水性を求めた。5秒以下を合格基準とした。
JIS L 1907:2010「繊維製品の吸水性試験法」に記載の滴下法によって吸水性を求めた。5秒以下を合格基準とした。
11.ストレッチ性
JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」引っ張り強さ及び伸び率に記載のJIS B法(グラブ法)によって求めた。タテヨコともに40%以上を合格基準とし、合格したものを良好、合格しなかったものを不適として評価した。
JIS L 1096:2010「織物及び編物の生地試験方法」引っ張り強さ及び伸び率に記載のJIS B法(グラブ法)によって求めた。タテヨコともに40%以上を合格基準とし、合格したものを良好、合格しなかったものを不適として評価した。
<実施例1>
アナターゼ型酸化チタンを0.2質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを30質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3000(m/min)で紡糸し、繊度110dtex-36F、伸度170%の高配向未延伸糸Aを得た。
アナターゼ型酸化チタンを0.2質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを30質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3000(m/min)で紡糸し、繊度110dtex-36F、伸度170%の高配向未延伸糸Aを得た。
PTT/PETを50:50の質量比率でサイドバイサイド型に配置し、紡速1500(m/min)で紡糸し、4000(m/min)で延伸することで56dtex-24F、伸度36%の延伸糸Bを得た。
混繊機を用いて、上記高配向未延伸糸Aを混繊前に中空ヒータ温度:200℃、延伸倍率1.4倍で延伸を行った後、オーバーフィード率14%でタスランノズルに鞘糸として供給し、オーバーフィード率10%で供給される延伸糸B(芯糸)と交絡圧0.75(MPa)、加工速度400m/minで混繊加工を行い、繊度150dtex-60F、扁平度:1.4、0.6mm以上のループ毛羽数:105個/m、伸縮伸長率:38.2%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、上記原糸を用いてシングル丸編機(Fukuhara製、XA-3FA、28G、30×2.54mm)で天竺に編成、次に得られた編地を98℃連続精練、120℃液流リラックス、160℃仕上げセットを施し、巾:133cm、ウェル密度:47W、コース密度:70Cの編地を得た。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
<実施例2>
ルチル型酸化チタンの含有量を15質量%とし、高配向未延伸糸Aのオーバーフィード率を16%とした以外は、実施例1と同様にして、0.6mm以上のループ毛羽数:168個/m、伸縮伸長率:38.5%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
ルチル型酸化チタンの含有量を15質量%とし、高配向未延伸糸Aのオーバーフィード率を16%とした以外は、実施例1と同様にして、0.6mm以上のループ毛羽数:168個/m、伸縮伸長率:38.5%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
<実施例3>
延伸糸Bの延伸速度を3500(m/min)とし、PTT/PETを偏心芯鞘型、伸度32%の延伸糸を用い、高配向未延伸糸Aのオーバーフィード率を13%とした以外は、実施例2と同様にして、繊度150dtex-60F、扁平度:1.2、0.6mm以上のループ毛羽数:68個/m、伸縮伸長率:34.1%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
延伸糸Bの延伸速度を3500(m/min)とし、PTT/PETを偏心芯鞘型、伸度32%の延伸糸を用い、高配向未延伸糸Aのオーバーフィード率を13%とした以外は、実施例2と同様にして、繊度150dtex-60F、扁平度:1.2、0.6mm以上のループ毛羽数:68個/m、伸縮伸長率:34.1%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
<実施例4>
延伸糸Bとして、PBT/PETを50:50の質量比率でサイドバイサイド型に配置し、紡速1200(m/min)で紡糸し、3500(m/min)で延伸することで56dtex-24F、伸度32%の延伸糸Bを得た。
延伸糸Bとして、PBT/PETを50:50の質量比率でサイドバイサイド型に配置し、紡速1200(m/min)で紡糸し、3500(m/min)で延伸することで56dtex-24F、伸度32%の延伸糸Bを得た。
混繊機を用いて、実施例2と同様の高配向未延伸糸Aを混繊前にホットピン温度80℃、1.4倍で低倍率熱処理延伸を施してシックアンドシン部を形成、中空ヒータ温度:180℃、定長熱処理をした後にオーバーフィード率19%でタスランノズルに鞘糸として供給し、オーバーフィード率10%で供給される延伸糸B(芯糸)と交絡圧0.75(MPa)、加工速度400m/minで混繊加工を行い、繊度150dtex-60F、扁平度:1.4、0.6mm以上のループ毛羽数:282個/m、伸縮伸長率:29.2%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
<実施例5>
アナターゼ型酸化チタンを0.7質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを20質量%含有する内層とアナターゼ型酸化チタンを0.7質量%含有する最内層を20:30:50の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3000(m/min)で紡糸することにより得られた繊度110dtex-36F、伸度170%の高配向未延伸糸を用いた以外は、実施例1と同様にして、繊度150dtex-60F、扁平度:1.4、0.6mm以上のループ毛羽数:110個/m、伸縮伸長率:38.4%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
アナターゼ型酸化チタンを0.7質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを20質量%含有する内層とアナターゼ型酸化チタンを0.7質量%含有する最内層を20:30:50の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを紡速3000(m/min)で紡糸することにより得られた繊度110dtex-36F、伸度170%の高配向未延伸糸を用いた以外は、実施例1と同様にして、繊度150dtex-60F、扁平度:1.4、0.6mm以上のループ毛羽数:110個/m、伸縮伸長率:38.4%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
<実施例6>
アナターゼ型酸化チタンを0.2質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを30質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のナイロン6を紡速3300(m/min)で紡糸し、繊度67dtex-36F、伸度55%の延伸糸Cを得た。その後、ナイロン6/ナイロン610を50:50の質量比率で配した偏心芯鞘型の66dtex-24F、伸度35%の延伸糸Dを得た。
アナターゼ型酸化チタンを0.2質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを30質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のナイロン6を紡速3300(m/min)で紡糸し、繊度67dtex-36F、伸度55%の延伸糸Cを得た。その後、ナイロン6/ナイロン610を50:50の質量比率で配した偏心芯鞘型の66dtex-24F、伸度35%の延伸糸Dを得た。
混繊機を用いて延伸糸Cをオーバーフィード率:40%でタスランノズルに鞘糸として供給し、オーバーフィード率:3%で供給されるもう1本の延伸糸D(芯糸)と交絡圧:0.75MPa、加工速度:400m/minで混繊加工を行い、:123dtex-60F、扁平度:1.2、ループ毛羽数:144個/m、伸縮伸長率25.8%の混繊糸を得た。その際の混繊工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、上記原糸を用いてシングル丸編機(Fukuhara製、XA-3FA、28G、30×2.54mm)で天竺に編成、次に得られた編地を98℃連続精練、98℃液流リラックス、130℃仕上げセットを施し、巾:133cm、ウェル密度:47W、コース密度:70Cの製品とした。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有する防透素材として好適であった。
<比較例1>
実施例1において、内層に用いる酸化チタンとしてアナターゼ型を用いる以外は実施例1と同様にして繊度110dtex-36F、扁平度:1.4、0.6mm以上のループ毛羽数:105個/m、伸縮伸長率:38.6%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
実施例1において、内層に用いる酸化チタンとしてアナターゼ型を用いる以外は実施例1と同様にして繊度110dtex-36F、扁平度:1.4、0.6mm以上のループ毛羽数:105個/m、伸縮伸長率:38.6%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有するが、耐光による変退色が大きく、衣料用途として不適であった。
<比較例2>
高配向未延伸糸Aとして、アナターゼ型酸化チタンを15質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを0.7質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを用いて紡糸した以外は、実施例1と同様にして、編地を作成した。
高配向未延伸糸Aとして、アナターゼ型酸化チタンを15質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを0.7質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを用いて紡糸した以外は、実施例1と同様にして、編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有するが、耐光での変退色が少し目立ち、衣料用素材として好適ではなかった。
<実施例7>
高配向未延伸糸Aのオーバーフィード率を24%と、延伸糸B(芯糸)との交絡圧を0.77(MPa)とする以外は実施例1と同様にして、0.6mm以上のループ毛羽数:375個/m、伸縮伸長率:37.9%の混繊糸を得た。その際の工程通過性はノズルやガイドの汚れによる糸切れが多く、生産が困難であった。
高配向未延伸糸Aのオーバーフィード率を24%と、延伸糸B(芯糸)との交絡圧を0.77(MPa)とする以外は実施例1と同様にして、0.6mm以上のループ毛羽数:375個/m、伸縮伸長率:37.9%の混繊糸を得た。その際の工程通過性はノズルやガイドの汚れによる糸切れが多く、生産が困難であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であったが、表面毛羽が多く、実施例1から6で得られた編地に比較して柔らかさ、風合い面で劣る物ではあったが、コットンライク素材として使用できる範疇であり、用途を選択すれば衣料用途に適用可能な物であった。
<比較例3>
高配向未延伸糸Aとして、アナターゼ型酸化チタンを0.2質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを2.3質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを用いて紡糸する以外は実施例1と同様にして、繊度150dtex-60F、扁平度:1.2、0.6mm以上のループ毛羽数:98個/m、伸縮伸長率:38.3%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
高配向未延伸糸Aとして、アナターゼ型酸化チタンを0.2質量%含有する最外層とルチル型酸化チタンを2.3質量%含有する内層とを20:80の質量比率で配した丸断面のポリエチレンテレフタレートを用いて紡糸する以外は実施例1と同様にして、繊度150dtex-60F、扁平度:1.2、0.6mm以上のループ毛羽数:98個/m、伸縮伸長率:38.3%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
その後、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性も良好であり、コットンライクでソフトな風合いを有するが乾・湿いずれの状態においても防透性が不十分であり、防透素材としては不適であった。
<比較例4>
実施例1と同様の方法で高配向未延伸糸A、延伸糸Bを得た。
実施例1と同様の方法で高配向未延伸糸A、延伸糸Bを得た。
混繊機を用いて、上記高配向未延伸糸Aを混繊前に中空ヒータ温度:200℃、延伸倍率1.4倍で延伸を行った後、オーバーフィード率0.5%で同じくオーバーフィード率0.5%とした延伸糸Bと交絡圧0.2(Mpa)、加工速度550(m/min)のインターレース混繊により、繊度150dtex-60F、扁平度:1.2、0.6mm以上のループ毛羽数:0個/m、伸縮伸長率:39.5%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は、耐光堅牢度・ストレッチ性・速乾性は良好であるが、膨らみがなくソフトな風合いとは言い難く、乾・湿いずれの状態においても防透性が不十分であり防透素材として不適であった。
<比較例5>
PETのみで構成された丸断面の56dtex-24F、伸度30%の仮撚加工糸を得た。
PETのみで構成された丸断面の56dtex-24F、伸度30%の仮撚加工糸を得た。
混繊機を用いて、実施例1と同様の高配向未延伸糸Aを混繊前に中空ヒータ温度:200℃、延伸倍率1.4倍で延伸を行った後、オーバーフィード率13%でタスランノズルに鞘糸として供給し、オーバーフィード率9%で供給される前記仮撚加工糸(芯糸)と交絡圧0.77(MPa)、加工速度3800m/minで混繊加工を行い、繊度150dtex-60F、扁平度:1.0、0.6mm以上のループ毛羽数:90個/m、伸縮伸長率:31.1%の混繊糸を得た。その際の工程通過性は糸切れが少なく、大変良好であった。
次いで、実施例1と同様の工程で編地を作成した。
得られた編地は乾・湿いずれの状態においても大変良好な防透性を持ち、耐光堅牢度・速乾性も良好であったが、風合いが粗硬であり、ストレッチが不十分であるためコットンライクでソフトな風合いを有する防透素材としては不適であった。
本発明によれば、湿潤状態の防透性及び堅牢度、さらに製造工程通過性に優れた混繊糸及びそれを用いたコットンライクでソフトな風合いを有する高ストレッチ織編物を提供することができる。その結果、かかる織編物は、防透性のみならず、遮熱性やUVカット性にも優れ、カジュアル衣料、フォーマル衣料、ユニフォーム衣料、スポーツ衣料等に好適に利用できる。
Claims (7)
- 芯糸と、鞘糸からなる混繊糸であり、芯糸がサイドバイサイド型あるいは偏心芯鞘型の複合繊維であり、鞘糸が、酸化チタン含有率が0~2質量%の最外層部及び酸化チタン含有率が5~60質量%の内層部を有し、前記内層部の酸化チタンがルチル型である繊維であり、前記複合繊維を被覆する混繊糸。
- 前記混繊糸の表層部に0.6mm以上のループ毛羽数が10~300ヶ/mの割合で存在する請求項1に記載の混繊糸。
- 0.5cN/dtexでの緊張後における伸縮伸長率が20~150%である請求項1または2に記載の混繊糸。
- 前記酸化チタン含有率が5~60質量%の内層部の内側に、酸化チタン含有率が0~2質量%の最内層部を有している請求項1~3のいずれかに記載の混繊糸。
- 請求項1~4のいずれかに記載の混繊糸を用いた織編物。
- 吸水性が5秒以内かつ、60分後の残留水分率が30%以下の請求項5に記載の織編物。
- JIS L1923:2017「繊維製品の防透性評価方法」A法(視感法)に基づく乾燥状態と湿潤状態の防透性がいずれも4級以上の請求項5または6に記載の織編物。
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