JP2023082115A - 老化関連症状を治療する方法および医薬組成物 - Google Patents

老化関連症状を治療する方法および医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】成体哺乳動物における老化関連症状を治療する方法、および、その方法のために使用される医薬組成物を提供する。【解決手段】この方法の態様は、哺乳動物におけるTIMP活性、例えばTIMP2活性を、老化関連症状について成体哺乳動物を治療するために十分な程度に増強することを含む。認知障害を含む種々の老化関連症状が、この医薬組成物を使用した方法の実施によって治療され得る。【選択図】図2

Description

有機体の老化は、経時的な変化の蓄積を伴う。神経系において、老化は、健康な個体における認知低下および退行性障害に対する感受性を引き起こす構造的および神経生理学的変化を伴う(HeedenおよびGabrieli、「老化マインドへの洞察:認知神経科学からの見解」、Nat.Rev.Neurosci.(2004)5:87-96;Raz等、「認知的老化の神経解剖学的相関:構造磁気共鳴画像法からのエビデンス」、Neuropsychology(1998)12:95-114;MattsonおよびMagnus、「老化およびニューロン脆弱性」、Nat.Rev.Neurosci.(2006)7:278-294;ならびにRappおよびHeindel、「正常老化および病理学上老化の記憶システム」、Curr.Opin.Neurol.(1994)7:294-298)。これらの変化には、シナプス喪失およびその結果生じる神経機能の喪失が含まれる。したがって、自然な老化過程では顕著なニューロン死は通常、観察されないが、老化脳におけるニューロンは、構造、シナプスの完全性、およびシナプスにおける分子プロセシング上の亜致死性の老化関連変化に対して脆弱であり、これらはすべて認知機能を損なう。
自然な老化中の正常なシナプス喪失に加えて、シナプス喪失は、多くの神経変性症状に共通する早期の病理学的事象であり、これらの症状に関連する神経および認知障害と最も相関している。事実、老化は、アルツハイマー病(AD)などの認知症関連神経変性疾患の単一の最も支配的なリスク因子のままである(Bishop等、「老化および認知低下の神経メカニズム」、Nature(2010)464:529-535(2010);HeedenおよびGabrieli、「老化マインドへの洞察:認知神経科学からの見解」、Nat.Rev.Neurosci.(2004)5:87-96;MattsonおよびMagnus、「老化およびニューロン脆弱性」、Nat.Rev.Neurosci.(2006)7:278-294)。
ヒトの寿命が増すにつれて、老化関連認知障害に罹患する人口の割合が増え、老化の影響を防御または妨害さえすることによって認知の完全性を維持する手段を解明することが重要となっている(Hebert等、「米国人口におけるアルツハイマー病:2000年の国勢調査を用いた有病率推定」、Arch.Neurol.(2003)60:1119-1122;Bishop等、「老化および認知低下の神経メカニズム」、Nature(2010)464:529-535)。
メタロプロテイナーゼ2(TIMP-2)の組織阻害剤は、マトリックスメタロプロテイナーゼの特異的阻害剤群のメンバーである。これらの阻害剤が調節するタンパク質、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMPs)は、成長、創傷治癒、組織修復、および細胞発生を含むいくつかの生理学的プロセスならびにホメオスタシスにおいて役割を果たす。MMPsの広範なカテゴリーは、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼ、ストロメリシン、マトリリシン、膜型MMPs(MT-MMPs)などからなる。これらの酵素は、MMP活性に対する制御の喪失が、関節炎、癌、アテローム性動脈硬化症、動脈瘤、腎炎、組織潰瘍、線維症、および他の組織損傷をもたらし得るので、正確に調節されなければならない(VisseおよびNagase、「マトリックスメタロプロテイナーゼおよびメタロプロテイナーゼの組織阻害剤」、Circulation Research(2003)92:827-39)。4つのTIMPs(1~4)が脊椎動物において同定されている。
成体哺乳動物における老化関連症状の治療方法が提供される。この方法の態様は、哺乳動物におけるTIMP活性、例えばTIMP2活性を、老化関連症状について成体哺乳動物を治療するために十分な程度に増強することを含む。また、本発明の方法の実施において使用するための組成物も提供される。認知障害を含む種々の老化関連症状が、この方法の実施によって治療され得る。
組換えTIMP2(腹腔内、50μg/kg)(下)で処置した老齢野生型マウスまたは対照(上)から単離した脳スライスの結果を示す。 図1Aに示されるPSAの維持相の定量化を提供する。 対象識別に対する抗TIMP2抗体処置の結果を示す。
老化関連症状について成体哺乳動物を治療する方法が提供される。この方法の態様は、哺乳動物におけるTIMP活性、例えばTIMP2活性を、老化関連症状について成体哺乳動物を治療するために十分な程度に増強することを含む。また、本発明の方法の実施において使用するための組成物も提供される。認知障害を含む種々の老化関連症状が、この方法の実施によって治療され得る。
本方法および組成物が記載される前に、本発明は記載された特定の方法または組成物に限定されず、当然、様々であり得ることが理解されるべきである。本明細書で使用する用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるので、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
ある範囲の値が提供される場合、その範囲の上限と下限との間に、文脈上明確に別様に指示されない限り、下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されることが理解される。記載された範囲内の任意の記載値または介在値と、記載された範囲内の他の任意の記載値または介在値との間のそれぞれのより小さな範囲が、本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立して範囲内に含まれ、または、排除されてもよく、記載された範囲内の任意の特定の排除限界について、どちらか一方または両方がより小さい範囲に含まれる、または、いずれも含まれない各範囲もまた、本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方または両方を含む場合、これらの含まれる限界の一方または両方を除く範囲も本発明に含まれる。
別様に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または均等な任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、いくつかの潜在的かつ好ましい方法および材料をここでは説明する。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が引用されている方法および/または材料を開示および記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。本開示は、矛盾が存在する限り、組み込まれた刊行物の任意の開示に優先することが理解される。
本開示を読むと当業者には明らかなように、本明細書に記載され図示された個々の実施形態の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなくいずれかの他のいくつかの実施形態の特徴から容易に分離されるか、または、それに組み合わせられ得る個別の要素および特徴を有する。いずれの記載された方法も、引用された事象の順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上、別様に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のこのような細胞を含み、「ペプチド」への言及は、1つ以上のペプチドおよびその均等物、例えば、当業者に公知のポリペプチドなどへの言及を含む。
本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書中のいかなるものも、本発明が先行発明によりそのような刊行物に先行する資格を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供された公開日は、実際に公開された日付とは異なるかもしれず、それは独立して確認する必要があるかもしれない。
方法
上記で要約したように、本発明の態様には、成体哺乳動物における老化関連症状を治療する方法が含まれる。老化関連症状は、多数の異なる態様で、例えば老化関連認知障害および/または生理的障害として、例えば、これらに限定されないが細胞傷害、組織損傷、臓器機能不全、老化関連寿命短縮および発癌などの身体の中枢または末梢器官への損傷の形で現れ得、関心対象の特定器官および組織には、これらに限定されないが、皮膚、ニューロン、筋肉、膵臓、脳、腎臓、肺、胃、腸、脾臓、心臓、脂肪組織、精巣、卵巣、子宮、肝臓および骨が含まれ、あるいは、神経可塑性の低下などの形で現れ得る。
いくつかの実施形態では、老化関連症状は、個体における認知能力における老化関連障害、すなわち老化関連認知障害である。認知能力、すなわち「認知」とは、注意と集中、複雑なタスクや概念の学習、記憶(短期間および/または長期間の新しい情報の取得、保持および検索)、情報処理(五感によって収集された情報の取り扱い)、視覚空間機能(視覚認識、奥行き知覚、心的イメージ形成能の使用、図の複製、物体や形の構築)、言語の生成と理解、言葉の流暢性(言葉探索)、問題の解決、意思決定および執行機能(計画と優先順位付け)を含む精神プロセスを意味する。「認知低下」とは、記憶、言語、思考、判断等の低下など、これらの能力のうちの1つ以上が漸進的に低下することを意味する。「認知能力の障害」および「認知障害」とは、健康な個体、例えば年齢に一致した健康な個体に対する、または、より早い時点、例えば2週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年、10年またはそれ以上前の個体の能力に対する、認知能力の低下を意味する。老化関連認知障害には、例えば軽度認知障害(M.C.I.)などの自然老化プロセスに関連する認知障害を含む、老化に通常伴う認知能力の障害、ならびに、老化関連障害に伴う認知障害、すなわち、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、緑内障、筋ジストロフィー、血管性認知症などの神経変性症状のような、老齢が進むにつれて頻度が増加して見られる障害が含まれる。
「治療」とは、少なくとも成体哺乳動物を苦しめている老化関連症状に関連する1つ以上の症候の改善が達成されることを意味し、改善とは、少なくともパラメータの大きさ、例えば、治療されている障害に関連する症候における、減少を指すものとして広義で使用される。そのようなものとして、治療はまた、成体哺乳動物がもはや障害、あるいは、少なくとも障害を特徴付ける症候に罹患しないように、病的症状またはそれに関連する少なくとも症候が、完全に阻止される、例えば起こらないようにされる、または、停止される、例えば終息する状況を含む。いくつかの例では、「治療」、「治療する」などは、所望の薬理学的および/または生理学的効果を得ることを指す。この効果は、その疾患またはその症候を完全にまたは部分的に防止する点で予防的であり得、および/または、疾患についての部分的または完全な治癒および/または疾患に起因する有害作用の点で治療的であり得る。「治療」は、哺乳動物における疾患の任意の治療であり得、(a)疾患にかかりやすいかもしれないがまだそれを有すると診断されていない対象において疾患が生じるのを予防すること、(b)疾患を阻害すること、すなわちその発展を阻止すること、(c)疾患を緩和すること、すなわち疾患を退行させること、を含む。治療は、例えば遺伝子発現の調節、シナプスの有効性の増加、神経新生の増加、組織または器官の若返りなど、種々の異なる物理的発現をもたらすことがある。患者の望ましくない臨床症候を安定化または低減する、進行中の疾患の治療が、一部の実施形態では発生する。そのような治療は、罹患組織における機能の完全な喪失に先立って行われ得る。本療法は、疾患の症候性段階の前、疾患の症候性段階の間、およびいくつかの場合では疾患の症候性段階の後に行われ得る。
老化関連症状が老化関連認知低下であるいくつかの例では、本開示の方法による治療は、老化関連認知低下の進行を遅らせるか、または減少させる。言い換えれば、個体における認知能力の低下は、開示された方法による治療後では、開示された方法による治療の前よりも、またはその治療を行わない場合よりも、あるとしてもよりゆっくりとなる。いくつかの例では、本開示の方法による治療は、個体の認知能力を安定化させる。例えば、老化関連認知低下に罹患している個体における認知低下の進行は、開示された方法による治療の後に停止される。別の例として、老化関連認知低下に罹患すると予測される個体、例えば40歳以上の個体における認知低下は、開示された方法による治療後に防止される。言い換えれば、(さらなる)認知障害は観察されない。いくつかの例では、本開示の方法による治療は、例えば、老化関連認知低下を患っている個体における認知能力の改善によって観察されるように、認知障害を軽減するかまたは逆転させる。言い換えれば、開示された方法による治療後の老化関連認知低下を患う個体の認知能力は、開示された方法による治療前の状態よりも良好である、すなわち、治療により改善する。いくつかの例では、本開示の方法による治療は、認知障害を無効にする。言い換えれば、老化関連認知低下に罹患する個体の認知能力は、開示された方法による治療後に、例えば老化関連認知低下に罹患する個体における改善された認知能力で実証されるように、例えば、個体が約40歳以下であった時の程度にまで回復される。
いくつかの例では、この方法に従った成体哺乳動物の治療は、脳、脊髄などの中枢神経系器官のような中枢器官の変化をもたらし、その変化は、多数の異なる方法で発現し得、例えば以下にさらに詳細に記載されるように、例えばシナプス可塑性が増強された形態のように、分子、構造および/または機能的なものを含むが、これに限定されない。いくつかの例では、この方法に従った対象の治療は、肝臓、筋肉、心臓、血液などの末梢器官の変化をもたらし、その変化は、例えば以下でより詳細に説明するように、多数の異なる方法で発現し得る。
上記で要約したように、本明細書に記載の方法は、成体哺乳動物において、例えば上記のような老化関連症状を治療する方法である。成体哺乳動物とは、成熟に達した、すなわち完全に発達した哺乳動物を意味する。このように、成体哺乳動物は若年ではない。本方法で治療し得る哺乳動物種には、イヌおよびネコ;馬;ウシ;ヒツジ等、ならびにヒトを含む霊長類が含まれる。本方法、組成物および試薬はまた、例えば実験的研究において、小さな哺乳動物、例えばネズミ、ウサギ目などを含む動物モデルに適用し得る。以下の議論は、本方法、組成物、試薬、デバイスおよびキットのヒトへの応用に焦点を当てるが、当業者であれば、そのような説明は、本技術分野の知識に基づいて関心対象の他の哺乳動物に容易に改変できることが理解されるであろう。
成体哺乳動物の年齢は、治療される哺乳動物のタイプによって様々であり得る。成体哺乳動物がヒトである場合、ヒトの年齢は一般に18歳以上である。いくつかの例では、成体哺乳動物は、老化関連認知障害などの老化関連障害に罹患しているかまたは罹患するリスクがある個体であり、成体哺乳動物は、例えば、老化関連認知障害などの老化関連障害に罹患しているか、罹患するリスクのある、と判断されたもの、例えば診断を受けた形態で判断されたものであり得る。「老化関連認知障害に罹患しているか、または罹患するリスクがある個体」とのフレーズは、約50歳以上、例えば60歳以上、70歳以上、80歳以上などの個体を指し、時には50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、または約90歳など、約50歳から約100歳の間の、90歳などの100歳以下であることもある。個体は、老化関連症状、例えば、自然の老化過程に関連する認知障害、例えば、M.C.I.に罹患しているかもしれない。あるいは、個体は、50歳以上、例えば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、時には50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、または約100歳など、約50歳から約100歳の間の100歳以下の年齢であり、例えば認知障害などの老化関連症状の症候をまだ示し始めていない。さらに他の実施形態では、個体は、老化関連疾患、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症、緑内障、筋ジストロフィー、認知症などによる認知障害に罹患している任意の年齢であり得る。いくつかの例では、個体は、アルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、進行性核上麻痺、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、多発性硬化症、多系統萎縮症、緑内障、運動失調、筋ジストロフィー、認知症などの一般に認知障害を伴う老化関連疾患と診断され、認知障害の症候をまだ呈し始めていない任意の年齢の個体である。
上記で要約したように、本方法の態様は、哺乳動物におけるTIMP活性、例えば全身性TIMP活性を、老化関連症状について成体哺乳動物を治療するために十分な程度に増強することを含む。TIMP活性を増強することは、対象における1つ以上の標的TIMP活性を増加させることを意味する。いくつかの例では、増強されるTIMP活性は、全身性TIMP活性であり、これは、哺乳動物の循環系におけるTIMP活性を意味する。増加の大きさは様々であり得、いくつかの例では、増加の大きさが(適切な対照と比較して)例えば15倍以上、20倍以上、25倍以上などの10倍以上を含む、5倍以上などの2倍以上である。この方法の実施によって増加するTIMP活性は、老化関連症状の治療に有益なTIMP媒介プロセスである。言い換えれば、増強されるTIMP活性は、例えば上記のように、老化関連症状についての対象の治療をもたらす活性である。
増強される標的TIMP活性は、様々であり得る。いくつかの例では、標的TIMP活性はTIMP2活性、すなわちTIMP2タンパク質によって示される活性である。このように、TIMP2活性とは、TIMP2タンパク質の関心対象の活性、すなわち、例えば上記のような老化関連症状の治療をもたらす活性を意味する。関心対象は、ヒトなどの霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ウサギなどの哺乳動物TIMP2タンパク質であるが、これらに限定されない。ヒトTIMP2の配列は、以下の通りである。
10 20 30 40 50
MGAAARTLRL ALGLLLLATL LRPADACSCS PVHPQQAFCN ADVVIRAKAV
60 70 80 90 100
SEKEVDSGND IYGNPIKRIQ YEIKQIKMFK GPEKDIEFIY TAPSSAVCGV
110 120 130 140 150
SLDVGGKKEY LIAGKAEGDG KMHITLCDFI VPWDTLSTTQ KKSLNHRYQM
160 170 180 190 200
GCECKITRCP MIPCYISSPD ECLWMDWVTE KNINGHQAKF FACIKRSDGS
210 220
CAWYRGAAPP KQEFLDIEDP (SEQ ID NO:01)
いくつかの例では、標的TIMP活性はTIMP1活性、すなわちTIMP1タンパク質によって示される活性である。このように、TIMP1活性とは、TIMP1タンパク質の関心対象の活性、すなわち、例えば上記のような老化関連症状の治療をもたらす活性を意味する。関心対象は、ヒトなどの霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ウサギなどの哺乳動物TIMP1タンパク質であるが、これらに限定されない。ヒトTIMP1の配列は、以下の通りである。
10 20 30 40 50
MAPFEPLASG ILLLLWLIAP SRACTCVPPH PQTAFCNSDL VIRAKFVGTP
60 70 80 90 100
EVNQTTLYQR YEIKMTKMYK GFQALGDAAD IRFVYTPAME SVCGYFHRSH
110 120 130 140 150
NRSEEFLIAG KLQDGLLHIT TCSFVAPWNS LSLAQRRGFT KTYTVGCEEC
160 170 180 190 200
TVFPCLSIPC KLQSGTHCLW TDQLLQGSEK GFQSRHLACL PREPGLCTWQ

SLRSQIA (SEQ ID NO:02)
いくつかの例では、標的TIMP活性はTIMP3活性、すなわちTIMP3タンパク質によって示される活性である。このように、TIMP3活性とは、TIMP3タンパク質の関心対象の活性、すなわち、例えば上記のような老化関連症状の治療をもたらす活性を意味する。関心対象は、ヒトなどの霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ウサギなどの哺乳動物TIMP3タンパク質であるが、これらに限定されない。ヒトTIMP3の配列は、以下の通りである。
10 20 30 40 50
MTPWLGLIVL LGSWSLGDWG AEACTCSPSH PQDAFCNSDI VIRAKVVGKK
60 70 80 90 100
LVKEGPFGTL VYTIKQMKMY RGFTKMPHVQ YIHTEASESL CGLKLEVNKY
110 120 130 140 150
QYLLTGRVYD GKMYTGLCNF VERWDQLTLS QRKGLNYRYH LGCNCKIKSC
160 170 180 190 200
YYLPCFVTSK NECLWTDMLS NFGYPGYQSK HYACIRQKGG YCSWYRGWAP
210
PDKSIINATD P (SEQ ID NO:03)
いくつかの例では、標的TIMP活性はTIMP4活性、すなわちTIMP4タンパク質によって示される活性である。このように、TIMP4活性とは、TIMP4タンパク質の関心対象の活性、すなわち、例えば上記のような老化関連症状の治療をもたらす活性を意味する。関心対象は、ヒトなどの霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヒツジ、ネズミ、ウサギなどの哺乳動物TIMP4タンパク質であるが、これらに限定されない。ヒトTIMP4の配列は、以下の通りである。
10 20 30 40 50
MPGSPRPAPS WVLLLRLLAL LRPPGLGEAC SCAPAHPQQH ICHSALVIRA
60 70 80 90 100
KISSEKVVPA SADPADTEKM LRYEIKQIKM FKGFEKVKDV QYIYTPFDSS
110 120 130 140 150
LCGVKLEANS QKQYLLTGQV LSDGKVFIHL CNYIEPWEDL SLVQRESLNH
160 170 180 190 200
HYHLNCGCQI TTCYTVPCTI SAPNECLWTD WLLERKLYGY QAQHYVCMKH
210 220
VDGTCSWYRG HLPLRKEFVD IVQP (SEQ ID NO:04)
関心対象の標的TIMP活性(複数可)は、任意の都合がよいプロトコルを用いて増強され得る。いくつかの例において、標的TIMP活性は、哺乳動物におけるTIMP活性剤の全身レベルを増加させることによって増強される。全身レベルとは、哺乳動物の循環系におけるTIMP活性剤のレベル(例えば、濃度または量)を意味する。増加の大きさは様々であり得、いくつかの例では、増加の大きさが(適切な対照と比較して)例えば15倍以上、20倍以上、25倍以上などの10倍以上を含む、5倍以上などの2倍以上である。
これらの実施形態では、関心対象のTIMP活性剤の全身レベルは、任意の好都合なプロトコルを使用して増加され得る。いくつかの例では、TIMP活性剤を対象に投与することにより、全身レベルが上昇する。そのような場合、TIMP活性剤は様々であり得る。本発明のこれらの実施形態において使用され得るTIMP活性剤には、TIMPポリペプチドおよびそれをコードする核酸が含まれる。
TIMPポリペプチドは、対象への投与の際に、例えば上記のような所望のTIMP老化関連症状治療活性を示すポリペプチドである。本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、全長タンパク質ならびに所望のTIMP活性を示すその一部またはフラグメントを指す。この用語には、天然に存在するタンパク質の変異体も含まれ、そのような変異体は、以下でより詳細に説明するように、天然に存在するタンパク質と同種であるかまたは実質的に類似しており、天然に存在するタンパク質は、ヒトタンパク質、マウスタンパク質、または、TIMPタンパク質を天然に発現するいくつかの他の種からのタンパク質である。以下の説明において、用語TIMPは、TIMPタンパク質のヒト形態だけでなく、非ヒト種において発現されるそれらの同族体をも指すために使用される。
関心対象のTIMPポリペプチドは、アミノ酸配列の長さおよび分子量に関して様々であり得る。いくつかの例では、TIMPポリペプチドの長さは、175~350、例えば200~250、および約200~225アミノ酸残基の範囲であり、平均分子量110ダルトン(19~39kDa、例えば22~28kDa、例えば22~25kDa)と仮定してタンパク質中のアミノ酸残基の数のみに基づいて予測される分子量を有し、実際の分子量は、タンパク質のグリコシル化量に依存して様々であり得、見かけの分子量は、ゲル上のSDS結合のためにかなり少なくなり得る。本明細書中に記載されるTIMPポリペプチドは、例えば精製技術を介して、天然供給源から獲得し得、所望により、化学的に合成されるかまたは組換えプロトコルを使用して産生される。
いくつかの例では、対象に投与されるTIMPポリペプチドは、ヒトTIMP2タンパク質であり、ヒトTIMP2タンパク質は、配列ID番号01に現れる配列と実質的に同じまたは同一の領域を含むアミノ酸配列を有する。実質的に同じとは、デフォルト設定を使用してBLASTによって決定されるように、配列ID番号01の配列と60%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、および98%以上の配列同一性を有する配列を有する領域を有するタンパク質を意味する。いくつかの例では、対象に投与されるTIMPポリペプチドは、ヒトTIMP1タンパク質であり、ヒトTIMP1タンパク質は、配列ID番号02として現れる配列と実質的に同じまたは同一の領域を含むアミノ酸配列を有する。実質的に同じとは、デフォルト設定を使用してBLASTによって決定されるように、配列ID番号02の配列と60%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、および98%以上の配列同一性を有する配列を有する領域を有するタンパク質を意味する。いくつかの例では、対象に投与されるTIMPポリペプチドは、ヒトTIMP3タンパク質であり、ヒトTIMP3タンパク質は、配列ID番号03に現れる配列と実質的に同じまたは同一の領域を含むアミノ酸配列を有する。実質的に同じとは、デフォルト設定を使用してBLASTによって決定されるように、配列ID番号03の配列と60%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、および98%以上の配列同一性を有する配列を有する領域を有するタンパク質を意味する。いくつかの例では、対象に投与されるTIMPポリペプチドは、ヒトTIMP4タンパク質であり、ヒトTIMP4タンパク質は、配列ID番号04に現れる配列と実質的に同じまたは同一の領域を含むアミノ酸配列を有する。実質的に同じとは、デフォルト設定を使用してBLASTによって決定されるように、配列ID番号04の配列と60%以上、例えば75%以上、例えば90%以上、および98%以上の配列同一性を有する配列を有する領域を有するタンパク質を意味する。
上記の特定のTIMPタンパク質に加えて、他の種、例えば他の動物種由来の同族体またはタンパク質(またはそのフラグメント)も、方法の実施形態において使用することができ、このような同族体またはタンパク質は、哺乳動物、例えばマウス、ラットなどのげっ歯類;例えばウマ、ウシ、イヌ、ネコなどの家畜のような動物を含む様々な異なる種由来であり得る。同族体とは、配列ID番号01~04で特定される特定のTIMPタンパク質に対して35%以上、例えば40%以上、60%以上のアミノ酸配列同一性を有するタンパク質を意味し、配列同一性はデフォルト設定でBLASTを使用して決定される。
上記のような天然に存在するTIMPタンパク質に加えて、天然に存在するTIMPタンパク質とは異なるTIMPポリペプチドも、本発明の方法の実施において使用され得る。置換、挿入および/または欠失変異、ならびに例えば以下に示すような他のタイプの非アミノ酸配列変異を含むが、これに限定されない、異なる変異が存在し得る。使用され得るTIMPポリペプチドには、TIMP遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)によってコードされるアミノ酸配列を有するタンパク質が含まれ、これには、完全長TIMPタンパク質およびそのフラグメント(生物活性フラグメントおよび/または機能ドメインに対応するフラグメントなど)が含まれ、本ポリペプチドの他のタンパク質またはその一部に対する融合体が含まれる。関心対象のフラグメントは、長さが様々であり得、いくつかの例では、10aa以上、例えば50aa以上、100aa以上であり、いくつかの例では長さが150aaを超えない程度であり、所与のフラグメントが、配列ID番号1~4のいずれかに見出される部分配列と実質的に同じまたは同一であるアミノ酸のストレッチを有し、部分シーケンスは長さが様々であり得、いくつかの例では10aa以上、例えば15aa以上、50aaまでも、さらにはそれ以上でもある。
いくつかの例では、本発明の方法において使用されるTIMPポリペプチドは、またはそれ以上の修飾を含む。存在し得る修飾は、様々であり得、アミド結合置換、システイン残基/類似体を含むアミノ酸置換、環化、ペグ化などを含むが、これらに限定されない。本発明の方法に用いられるTIMPポリペプチドに見出され得る修飾の例が、以下により詳細に検討される。
いくつかの場合において、TIMPポリペプチドは、ペプチド結合以外の1つ以上の結合を含み、例えば、少なくとも2つの隣合ったアミノ酸は、アミド結合以外の結合を介して結合される。例えば、望ましくないタンパク質分解または他の分解手段を減少または排除するため、および/または、血清安定性を増加させるため、および/または、立体配座の柔軟性を制限または増加するために、TIMPポリペプチドの骨格内の1つ以上のアミド結合を置換することができる。別の例では、TIMPポリペプチド中の1つ以上のアミド結合(-CO-NH-)は、例えば-CH2 NH-、-CH2 S-、-CH2 CH2 -、-CH=CH-(シスおよびトランス)、-COCH2 -、-CH(OH)CH2 -または-CH2 SO-などのアミド結合の同配体である結合で置換されることができる。TIMPポリペプチド中の1つ以上のアミド結合は、例えば、還元された同配体擬似ペプチド結合によって置換されていてもよい。
1つ以上のアミノ酸置換は、TIMPポリペプチドにおいて行うことができる。以下は非限定的例示である。a)アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ノルロイシン、(S)-2-アミノ酪酸、(S)-シクロヘキシルアラニン、または、分枝状、環状および直鎖アルキル、アルケニルもしくはアルキニル置換基を含むC1 -C10炭素から脂肪族側鎖により置換された他の単純なα-アミノ酸を含むアルキル置換疎水性アミノ酸の置換、b)フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、スルホチロシン、ビフェニルアラニン、1-ナフチルアラニン、2-ナフチルアラニン、2-ベンゾチエニルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、ヒスチジンを含む、芳香族置換疎水性アミノ酸の置換(上述の芳香族アミノ酸の、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アザ、ハロゲン化(フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨード)またはアルコキシ(C1 -C4 からの)置換形態を含む)、その例示的な例は、2-、3-または4-アミノフェニルアラニン、2-、3-または4-クロロフェニルアラニン、2-、3-または4-メチルフェニルアラニン、2-、3-または4-メトキシフェニルアラニン、5-アミノ-、5-クロロ-、5-メチル-または5-メトキシトリプトファン、2’-、3’-または4’-アミノ-、2’-、3’-または4’-クロロ-、2、3または4-ビフェニルアラニン、2’-、3’-または4’-メチル-、2-、3-または4-ビフェニルアラニン、および2-または3-ピリジルアラニン、c)アルギニン、リシン、ヒスチジン、オルニチン、2,3-ジアミノプロピオン酸、ホモアルギニンを含む塩基性側鎖を含むアミノ酸の置換(上述のアミノ酸のアルキル、アルケニルまたはアリール置換(C1 -C10分枝状、直鎖状、または環状からの)誘導体を含む)、ただし、置換基が例えばプロ-R位にて、ヘテロ原子(α窒素または遠位窒素(複数可)など)上であろうと、α炭素上であろうと問わない。例示的な例として役立つ化合物は、N-ε-イソプロピル-リジン、3-(4-テトラヒドロピリジル)-グリシン、3-(4-テトラヒドロピリジル)-アラニン、N,N-γ、γ’-ジエチル-ホモアルギニンである。α-メチル-アルギニン、α-メチル-2,3-ジアミノプロピオン酸、α-メチル-ヒスチジン、α-メチル-オルニチンなどの化合物もまた含まれる(アルキル基はα-炭素のプロ-R位を占める)。アルキル、芳香族、ヘテロ芳香族(ヘテロ芳香族基は、1つ以上の窒素、酸素または硫黄原子を単独でまたは組み合わせて有する)、カルボン酸、または、酸塩化物、活性エステル、活性アゾリドおよび関連誘導体のような多くの公知の活性化誘導体のいずれかから形成されたアミド、ならびに、リジン、オルニチンまたは2,3-ジアミノプロピオン酸もまた含まれる。d)アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、チロシン、2,4-ジアミノプロピオン酸、オルニチンまたはリジンのアルキル、アリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールスルホンアミド、ならびに、テトラゾール置換アルキルアミノ酸を含む、酸性アミノ酸の置換、e)アスパラギン、グルタミン、および、アスパラギンまたはグルタミンのアルキルまたは芳香族置換誘導体を含む、側鎖アミド残基の置換、および、f)セリン、トレオニン、ホモセリン、2,3-ジアミノプロピオン酸、および、セリンまたはトレオニンのアルキルまたは芳香族置換誘導体を含むヒドロキシル含有アミノ酸の置換。
いくつかの場合では、TIMPポリペプチドは、1つ以上の天然に存在する非遺伝的にコードされたL-アミノ酸、合成L-アミノ酸、またはアミノ酸のD-エナンチオマーを含む。例えば、TIMPポリペプチドは、D-アミノ酸のみを含むことができる。例えば、TIMPポリペプチドは、1つ以上の下記の残基を含むことができる。ヒドロキシプロリン、β-アラニン、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、m-アミノメチル安息香酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、α-アミノイソ酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、オルニチン、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン、ナフチルアラニン、ピリジルアラニン3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、β-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、ホモアルギニン、N-アセチルリジン、2,4-ジアミノ酪酸、ρアミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン、ε-アミノヘキサン酸、ω-アミノヘキサン酸、ω-アミノヘプタン酸、ω-アミノオクタン酸、ω-アミノデカン酸、ω-アミノテトラデカン酸、シクロヘキシルアラニン、α,γ-ジアミノ酪酸、α,β-ジアミノプロピオン酸、δ-アミノ吉草酸、および、2,3-ジアミノ酪酸。
システイン残基またはシステイン類似体をTIMPポリペプチドに導入して、ジスルフィド結合を介して別のペプチドへの結合を提供するか、またはTIMPポリペプチドの環化を提供することができる。TIMPポリペプチドは環化することができる。TIMPポリペプチドに、1つまたは複数のシステインまたはシステイン類似体を導入することができ、導入されたシステインまたはシステイン類似体は、導入された第2のシステインまたはシステイン類似体とジスルフィド結合を形成することができる。環化の他の手段には、オキシムリンカーまたはランチオニンリンカーの導入が含まれ、例えば、米国特許第8,044,175号を参照のこと。環化結合を形成することができるアミノ酸(または非アミノ酸部分)の任意の組み合わせを使用および/または導入することができる。環化結合は、架橋の導入を可能にする官能基を伴うアミノ酸(またはアミノ酸と-(CH2n -CO-または-(CH2n -C64 -CO-)との任意の組み合わせにより、生成することができる。いくつかの例は、ジスルフィド、-(CH2n -カルバ架橋などのジスルフィド模倣物、チオアセタール、チオエーテル架橋(シスタチオニンまたはランチオニン)ならびにエステルおよびエーテルを含有する架橋である。これらの例では、nは任意の整数であってもよいが、しばしば10未満である。
他の修飾には、例えば、N-アルキル(またはアリール)置換(Ψ[CONR])、またはラクタムおよび他の環状構造を構築するための骨格架橋が含まれる。他の誘導体としては、C末端ヒドロキシメチル誘導体、o-修飾誘導体(例えば、C末端ヒドロキシメチルベンジルエーテル)、アルキルアミドおよびヒドラジドなどの置換アミドを含むN末端修飾誘導体が挙げられる。
TIMPポリペプチドの1つ以上の物理的特性の改善を提供する修飾が存在し得る。物理的特性の改善には、例えば、免疫原性の調節;水溶性、バイオアベイラビリティー、血清半減期および/または治療的半減期を増加させる方法;および/または生物活性を調節することが含まれる。そのような修飾の例には、ペグ化、グリコシル化(N-およびO-リンク化);ポリシアル化;血清アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン(HSA)、サイノ血清アルブミン、またはウシ血清アルブミン(BSA))を含むアルブミン融合分子;例えばコンジュゲート脂肪酸鎖(アシル化)を介したアルブミン結合;およびFc融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
ペグ化:タンパク質治療の臨床効果は、短い血漿半減期およびプロテアーゼ分解に対する感受性によって制限され得る。種々の治療用タンパク質(例えば、フィルグラスチム)の研究により、ポリペプチド配列を様々な非タンパク質性ポリマーのいずれか、例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレンにコンジュゲートまたは結合することを含む種々の修飾によって、このような困難を克服し得ることが示された。これは、タンパク質および非タンパク質性ポリマー、例えばPEGの両方に共有結合した結合部分によってしばしば影響される。このようなPEGコンジュゲート生体分子により、より良好な物理的および熱的安定性、酵素分解への感受性に対する保護、溶解性の増大、より長い生体内循環半減期およびクリアランスの減少、免疫原性および抗原性の低下、ならびに毒性の低減を含む、臨床的に有用な特性を有することが示された。ペグ化が薬物動態パラメータに及ぼす有益な効果に加えて、ペグ化自体が活性を増強し得る。ポリペプチド配列へのコンジュゲーションに適したPEGは、一般に室温で水に可溶性であり、一般式R(O-CH2 -CH2n O-Rを有し、ここでRは水素またはアルキル基もしくはアルカノール基などの保護基であり、nは1~1000の整数である。Rが保護基である場合、それは一般に1~8個の炭素を有する。ポリペプチド配列にコンジュゲートされたPEGは直鎖または分枝鎖であることができる。分枝PEG誘導体、「スター-PEG」およびマルチアームPEGが、本開示によって企図される。本開示において使用されるPEGの分子量は、いずれの特定の範囲にも限定されず、例は、本明細書の他の箇所に記載される。一例として、特定の実施形態は5kDa~20kDaの分子量を有し、他の実施形態は4kDa~10kDaの分子量を有する。ペグ化TIMPポリペプチドは、PEGが異なるn値を有し、したがって、様々な異なるPEGが特定の比で存在するコンジュゲートであり得る。例えば、いくつかの組成物は、n=1,2,3および4であるコンジュゲートの混合物を含む。いくつかの組成物では、n=1であるコンジュゲートのパーセンテージは18~25%であり、n=2であるコンジュゲートのパーセンテージは50~66%であり、n=3であるコンジュゲートのパーセンテージは12~16%であり、n=4であるコンジュゲートのパーセンテージは5%までである。このような組成物は、任意の好都合な反応条件および精製によって製造することができる。ペグ化は、ポリペプチドのN末端のαアミノ基、リジン残基の側鎖のεアミノ基、およびヒスチジン残基の側鎖上のイミダゾール基で最も頻繁に起こる。大部分の組換えポリペプチドは単一のαおよび多数のεアミノおよびイミダゾール基を有するので、リンカーの化学的性質に依存して多数の位置異性体を生成することができる。当技術分野で公知のもののような一般的なペグ化戦略を本明細書に適用することができる。PEGは、1つまたは複数のポリペプチド配列の遊離アミノまたはカルボキシル基とポリエチレングリコールとの間の結合を仲介する末端反応基(「スペーサー」)を介して、本開示のポリペプチドに結合されてもよい。遊離アミノ基に結合され得るスペーサーを有するPEGには、ポリエチレングリコールのコハク酸エステルをN-ヒドロキシスクシニルイミドで活性化することにより調製し得るN-ヒドロキシスクシニルイミドポリエチレングリコールが含まれる。遊離アミノ基に結合され得る別の活性化ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルを塩化シアヌルと反応させることによって調製し得る2,4-ビス(O-メトキシポリエチレングリコール)-6-クロロ-s-トリアジンである。遊離カルボキシル基に結合した活性化ポリエチレングリコールは、ポリオキシエチレンジアミンを含む。1つ以上のポリペプチド配列の、スペーサーを有するPEGへのコンジュゲーションは、様々な従来の方法によって行い得る。例えば、コンジュゲーション反応は、試薬対タンパク質のモル比4:1~30:1を使用して、pH5~10、温度4℃~室温で、30分~20時間、溶液中で行うことができる。主として所望の置換度を生成するように反応を導くために反応条件を選択し得る。一般に、低温、低pH(例えばpH=5)および短い反応時間は、結合したPEGの数を減少させる傾向があるが、高温、中性~高pH(例えばpH≧7)および長い反応時間は、結合したPEGの数を増加させる傾向がある。当技術分野で公知の様々な手段を用いて反応を停止し得る。いくつかの実施形態では、反応混合物を酸性化し、例えば-20℃で凍結させることによって反応を終了させる。種々の分子のペグ化は、例えば、米国特許第5,252,714号、第5,643,575号、第5,919,455号、第5,932,462号および第5,985,263号に記載されている。本開示はまた、PEG模倣体の使用を企図する。PEGの特性(例えば、血清半減期の向上)を保持しながら、いくつかのさらなる有利な特性を付与する組換えPEG模倣物が開発されている。例として、PEGと同様の延長されたコンフォメーションを形成することができる単純なポリペプチド鎖(例えば、Ala、Glu、Gly、Pro、SerおよびThrを含む)を、関心対象のペプチドまたはタンパク質薬物に組換えて既に融合させて、生成することができる。これは、製造プロセス中の付加的なコンジュゲーション工程の必要性を排除する。さらに、確立された分子生物学技術は、ポリペプチド鎖の側鎖組成の制御を可能にし、免疫原性および製造特性の最適化を可能にする。
グリコシル化:本開示の目的のために、「グリコシル化」は、タンパク質、脂質または他の有機分子にグリカンを結合させる酵素的プロセスを広く指すことを意味する。本開示と関連して「グリコシル化」という用語を使用することは、一般に、1つまたは複数の炭水化物部分を(下にあるグリコシル化部位を除去することによって、または化学的および/または酵素的手段によりグリコシル化を削除することによって)付加または削除すること、および/または、天然配列に存在していてもいなくてもよい1つ以上のグリコシル化部位を付加することを意味するよう企図される。加えて、このフレーズは、存在する様々な炭水化物部分の性質および割合の変化を含む天然タンパク質のグリコシル化における定性的変化を含む。グリコシル化は、TIMPポリペプチドなどのポリペプチドの物理的性質(例えば可溶性)に劇的に影響を及ぼし、タンパク質安定性、分泌および細胞下局在においても重要であり得る。また、グリコシル化ポリペプチドは、安定性の増強を示し得るか、または半減期のような1つまたは複数の薬物動態学的特性を改善し得る。さらに、溶解度の改善は、例えば、非グリコシル化ポリペプチドを含む製剤よりも医薬投与に適した製剤の生成を可能にする。グリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列を改変することによって達成することができる。ポリペプチドに対する改変は、例えば、1つ以上のセリンまたはトレオニン残基(O-結合型グリコシル化部位の場合)またはアスパラギン残基(N-結合性グリコシル化部位の場合)の付加または置換によって行い得る。N-結合およびO-結合型オリゴ糖の構造および各タイプで見出される糖残基は、異なっていてもよい。両方に一般的に見られる1つのタイプの糖は、N-アセチルノイラミン酸(以下、シアル酸と称する)である。シアル酸は、通常、N-結合オリゴ糖およびO-結合オリゴ糖の両方の末端残基であり、その負電荷のために、糖タンパク質に酸性特性を付与し得る。本開示の特定の実施形態は、N-グリコシル化変異体の生成および使用を含む。本開示のポリペプチド配列は、核酸レベルでの変化により、特に所望のアミノ酸に翻訳されるコドンが生成されるように予め選択された塩基でポリペプチドをコードする核酸を突然変異させることによって任意選択的に改変され得る。ポリペプチド上の炭水化物部分の数を増加させる別の手段は、ポリペプチドへのグリコシドの化学的または酵素的カップリングによる。炭水化物の除去は、化学的または酵素的に、またはグリコシル化されたアミノ酸残基をコードするコドンの置換によって達成し得る。化学的脱グリコシル化技術は公知であり、ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、様々なエンドおよびエキソ-グリコシダーゼの使用によって達成することができる。ジヒドロ葉酸還元酸素(DHFR)欠損チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、組換え糖タンパク質の産生のために一般的に使用される宿主細胞である。これらの細胞は酵素β-ガラクトシドα-2,6-シアル酸転移酵素を発現せず、したがってこれらの細胞で産生された糖タンパク質のN-結合型オリゴ糖にα-2,6結合でシアル酸を付加しない。
いくつかの実施形態では、ポリペプチドは非天然にグリコシル化される。非天然にグリコシル化されるとは、ポリペプチドが、対応する天然に存在するタンパク質に見られるグリコシル化パターンと同じでないグリコシル化パターンを、存在する場合、有することを意味する。例えば、この特定の実施形態の本発明の方法において使用されるヒトTIMP2は、グリコシル化される場合に、天然に存在するヒトTIMP2のものとは異なるグリコシル化パターンを有することを特徴とする。したがって、この実施形態の非天然グリコシル化TIMPポリペプチドは、非グリコシル化TIMPポリペプチド、すなわち、共有結合したグリコシル基を有しないタンパク質を含む。
ポリシアル化:本開示はまた、ポリペプチドの安定性および生体内で薬物動態を改善するために、ポリシアル化の使用、天然に存在する生分解性α-(2→8)結合ポリシアル酸(「PSA」)へのポリペプチドのコンジュゲーションを企図する。PSAは、生分解性の非毒性の天然ポリマーであり、親水性が高く、血液中に高い見かけの分子量を与え、血清半減期を延長させる。さらに、ある範囲のペプチドおよびタンパク質治療のポリシアル化は、顕著に減少したタンパク質分解、生体内で活性の保持、ならびに免疫原性および抗原性の低下をもたらした(例えば、G.Gregoriadis等、Int.J.Pharmaceutics300(1-2):125-30を参照)。他のコンジュゲート(例えばPEG)による修飾と同様に、部位特異的ポリシアル化のための様々な技術が利用可能である(例えば、T.Lindhout等、(2011)PNAS108(18)7397-7402を参照)。
アルブミン融合:コンジュゲーションのためのさらなる適切な成分および分子には、ヒト血清アルブミン(HSA)、サイノ血清アルブミン、およびウシ血清アルブミン(BSA)などのアルブミンが含まれる。成熟HSA、約20日の血清半減期を有する585アミノ酸ポリペプチド(約67kDa)は、コロイド浸透血圧、血中pH、および多数の内因性および外因性リガンドの輸送および分布の維持に主に関与する。このタンパク質は3つの構造的に相同なドメイン(ドメインI、IIおよびIII)を有し、ほぼ完全にαらせんコンフォメーションを有し、17個のジスルフィド架橋によって高度に安定化されている。アルブミンの3つの主要薬物結合領域は、サブドメインIB、IIAおよびIIIA内の3つのドメインのそれぞれに位置する。アルブミン合成は肝臓で起こり、短命の一次産物プレプロアルブミンを産生する。したがって、完全長HSAは、18アミノ酸(MKWVTFISLLFLFSSAYS;配列ID番号5)のシグナルペプチドと、それに続く6アミノ酸のプロドメイン(RGVFRR;配列ID番号6)とを有する。この24アミノ酸残基のペプチドは、プレプロドメインと呼ばれ得る。その内因性シグナルペプチドをプレプロドメインとして用いてHSAを発現させ分泌させることができる。あるいは、成熟構築物に融合したIgKシグナルペプチドを用いてHSAを発現させ、分泌させることができる。プレプロアルブミンは、そのアミノ末端の小胞体内腔で迅速に共翻訳的に切断され、安定な609アミノ酸前駆体ポリペプチド、プロアルブミンを産生する。次いで、プロアルブミンは、ゴルジ装置に移り、それは、フリン依存性アミノ末端切断によって585アミノ酸の成熟アルブミンに変換される。アルブミンの合成および分泌のプロセスと同様に、アルブミンの主要なアミノ酸配列、構造および機能は種間で高度に保存されている。HSAに匹敵するアルブミン血清タンパク質は、例えば、カニクイザル、ウシ、イヌ、ウサギおよびラットにおいて見出される。非ヒト種のうち、ウシ血清アルブミン(BSA)は、HSAと最も構造的に類似している(例えば、Kosa等、Nov2007 J Pharm Sci.96(11):3117-24を参照)。本開示は、非ヒト種由来のアルブミンの使用を意図しており、限定されないが、例えば、薬物開発プロセスにおいて、上記のものを含む。本開示によれば、アルブミンは、カルボキシル末端、アミノ末端、カルボキシル末端およびアミノ末端の両方において、および内部で薬物分子(例えば、本明細書に記載のポリペプチド)にコンジュゲートしてもよい(例えば、米国特許第5,876,969号および米国特許第7,056,701号を参照)。本開示によって企図されるHSA-TIMPコンジュゲートにおいて、アルブミン分泌プレ配列およびその変異体、そのフラグメントおよび変異体、ならびにHSA変異体のような種々の形態のアルブミンを使用し得る。そのような形態は、一般に、1つ以上の所望のアルブミン活性を有する。さらなる実施形態では、本開示は、アルブミン、アルブミンフラグメント、およびアルブミン変異体などに直接的または間接的に融合されたポリペプチド薬物分子を含む融合タンパク質を含み、融合タンパク質は、融合していない薬物分子よりも高い血漿安定性を有し、および/または、融合タンパク質は、融合していない薬物分子の治療活性を保持する。いくつかの実施形態では、間接的な融合は、リンカー、例えばペプチドリンカーまたはその修飾されたバージョンによって行われる。細胞内切断は、例えば、フリンまたはカスパーゼによって酵素的に行い得る。細胞は、細胞内で融合分子の一部を切断することができるこれらの内在性酵素の低レベルを発現し、したがって、ポリペプチドのいくつかはHSAにコンジュゲートすることなく細胞から分泌されるが、ポリペプチドのいくつかはHSAを含む融合分子の形態で分泌される。本開示の実施形態は、様々なフリン融合構築物の使用を企図する。例えば、配列RGRR、RKRKKR、RKKR、またはRRRKKRを含む構築物を設計し得る。本開示はまた、融合分子が細胞から分泌され、精製に供され、次いで切断される、細胞外切断(すなわち、生体外切断)を企図する。切除は、成熟TIMPポリペプチドからHSA-リンカー複合体全体を解離し得るか、またはHSA-リンカー複合体全体より少なく解離し得ることが理解される。上記で示唆したように、本開示の1つ以上のポリペプチドへのアルブミンの融合は、例えば、遺伝子操作によって達成することができ、その結果、HSAまたはそのフラグメントをコードする核酸は、1つ以上のポリペプチド配列をコードする核酸に結合される。その後、融合ポリペプチドを発現させるために、適切な宿主を、例えば適切なプラスミドの形態の融合ヌクレオチド配列で形質転換またはトランスフェクトすることができる。発現は、例えば原核または真核細胞から試験管内で、または例えばトランスジェニック有機体から生体内で行い得る。本開示のいくつかの実施形態では、融合タンパク質の発現は、哺乳動物細胞系、例えばCHO細胞系で行われる。形質転換は、本明細書では、細胞膜を介した直接的取り込み、外因性遺伝物質(外因性核酸)の取り込みおよび発現に起因する細胞の遺伝子改変を指すために広義に使用される。形質転換は、いくつかの細菌種において自然に起こるが、他の細胞にて人為的手段によっても行うことができる。さらに、アルブミン自体を修飾して、その循環半減期を延長し得る。修飾されたアルブミンとTIMPポリペプチドとの融合は、上記の遺伝子操作技術によって、または化学的コンジュゲーションによって達成することができ、得られた融合分子は、非修飾アルブミンとの融合体の半減期を超える半減期を有する。関心対象のTIMP2-アルブミン融合タンパク質には、米国特許第7,163,805号に記載されているものが含まれ、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
コンジュゲートした脂肪酸鎖を介したアルブミン結合(アシル化)を含む、直接融合の代替物として、いくつかのアルブミン結合戦略が開発されている。血清アルブミンは脂肪酸の輸送タンパク質であるため、アルブミン結合活性を有するこれらの天然リガンドは、小タンパク質治療の半減期延長に使用されている。例えば、糖尿病用に承認された製品であるインスリンデテミル(LEVEMIR)は、遺伝子修飾インスリンにコンジュゲートされたミリスチル鎖を含み、長期作用性インスリン類似体をもたらす。本開示はまた、アルブミン結合ドメイン(ABD)ポリペプチド配列および本明細書に記載の1つまたは複数のポリペプチドの配列を含む融合タンパク質を企図する。文献に記載された任意のABDポリペプチド配列は、融合タンパク質の成分であることができる。融合タンパク質の成分は、任意選択的に、本明細書に記載のリンカーなどのリンカーを介して共有結合させることができる。本開示のいくつかの実施形態において、融合タンパク質は、N末端部分としてのABDポリペプチド配列およびC末端部分として本明細書に記載されるポリペプチドを含む。本開示はまた、実質的にフラグメントがアルブミン結合を保持するアルブミン結合ポリペプチドのフラグメントを含む融合タンパク質、または、少なくとも2つのアルブミン結合ポリペプチドまたはそれらのフラグメントをモノマー単位として含むアルブミン結合ポリペプチドまたはそのフラグメントの多量体、を企図する。
他の分子とのコンジュゲーション:コンジュゲーションのためのさらなる適切な成分および分子には、例えば、サイログロブリン;破傷風トキソイド;ジフテリアトキソイド;ポリ(D-リジン:D-グルタミン酸)のようなポリアミノ酸;ロタウイルスのVP6ポリペプチド;インフルエンザウイルスヘマグルチニン、インフルエンザウイルス核タンパク質;キーホールリンペットヘモシアニン(KLH);およびB型肝炎ウイルスコアタンパク質および表面抗原;またはこれらの任意の組み合わせを含む。したがって、本開示は、別のポリペプチド(例えば、本ポリペプチドに対して異種のアミノ酸配列を有するポリペプチド)または担体分子のような、ポリペプチド配列のN末端および/またはC末端における1つ以上の追加の成分または分子のコンジュゲーションを企図する。したがって、例示的なポリペプチド配列は、別の成分または分子とのコンジュゲートとして提供されることができる。コンジュゲート修飾は、第2の分子に由来する、さらなるまたは相補的な機能または活性を有する活性を保持するポリペプチド配列をもたらし得る。例えば、ポリペプチド配列は、例えば、溶解性、貯蔵、生体内または貯蔵の半減期または安定性、免疫原性の低下、生体内での遅延放出または制御放出などを促進するために、分子にコンジュゲートされ得る。他の機能または活性には、コンジュゲートされていないポリペプチド配列と比較して毒性を低下させるコンジュゲート、コンジュゲートされていないポリペプチド配列よりも効率的に細胞または器官のタイプを標的とするコンジュゲート、または、本明細書に記載の疾患、障害または症状(例えば癌)に関連する原因または効果にさらに対抗するための薬が含まれる。TIMPポリペプチドはまた、タンパク質;セファロース、アガロース、セルロースまたはセルロースビーズのような多糖類;ポリグルタミン酸またはポリリシンなどのポリマー性アミノ酸;アミノ酸コポリマー;不活性化ウイルス粒子;ジフテリア、破傷風、コレラ、またはロイコトキシン分子からのトキソイドなどの不活性化細菌毒素;不活性化細菌;および樹状細胞などの大きくて緩徐に代謝された巨大分子にコンジュゲートしてもよい。このようなコンジュゲート型は、所望であれば、本開示のポリペプチドに対する抗体を産生するために使用することができる。コンジュゲーションのためのさらなる候補成分および分子には、単離または精製に適したものが含まれる。特定の非限定的な例には、ビオチン(ビオチン-アビジン特異的結合対)などの結合分子、抗体、受容体、リガンド、レクチン、または、例えばプラスチックもしくはポリスチレンビーズ、プレートもしくはビーズ、磁気ビーズ、試験ストリップおよび膜を含む固体支持体を含む分子が含まれる。電荷差によってコンジュゲートを分離するために、陽イオン交換クロマトグラフィーのような精製方法を用いてもよく、コンジュゲートを種々の分子量に効果的に分離する。例えば、陽イオン交換カラムは、約20mMの酢酸ナトリウム、pH約4で負荷され、次いで洗浄され、次いで約3~5.5のpH、例えばpH約4.5で緩衝された線状(0M~0.5M)のNaCl勾配で溶出されることができる。陽イオン交換クロマトグラフィーで得られた画分の含有量は、通常の方法、例えば質量分析、SDS-PAGE、分子量別に分子体を分離する他の公知の方法を用いて分子量で同定し得る。
Fc融合分子:特定の実施形態では、本開示のポリペプチド配列のアミノ末端またはカルボキシル末端を免疫グロブリンFc領域(例えばヒトFc)と融合させて融合コンジュゲート(または融合分子)を形成することができる。Fc融合コンジュゲートは、バイオ医薬品の全身半減期を増加させることが示されており、したがって、バイオ医薬品は、より少ない頻度で投与する必要があり得る。Fcは、血管を覆う内皮細胞の新生児型Fc受容体(FcRn)に結合し、結合すると、Fc融合分子は分解から保護され、循環中に再放出され、循環中の分子をより長く維持する。このFc結合は、内在性IgGがその長い血漿半減期を保持する機構であると考えられている。より最近のFc融合技術は、生物医薬品の単一コピーを抗体のFc領域に結合して、従来のFc融合コンジュゲートと比較してバイオ医薬品の薬物動態特性および薬力学特性を最適化する。
他の修飾:本開示は、1つまたは複数の特性を改善するためのTIMPポリペプチドの現在知られているかまたは将来開発される他の修飾の使用を企図する。本開示のポリペプチドの循環半減期を延長し、安定性を増大させ、クリアランスを減少させ、または免疫原性またはアレルゲン性を改変するためのそのような方法の1つは、ポリペプチド配列の特徴を修飾するために他の分子に連結されたヒドロキシエチルデンプン誘導体を利用する、ヘス化によるポリペプチド配列の修飾を含む。
リンカー:リンカーおよびそれらの使用は上述されている。本開示のポリペプチド配列を修飾するために使用される前述の成分および分子のいずれかは、リンカーを介して任意選択的にコンジュゲートされ得る。適切なリンカーには、一般に、修飾されたポリペプチド配列と結合された成分および分子との間のいくらかの動きを可能にするために十分な長さの「フレキシブルリンカー」が含まれる。リンカー分子は、一般に約6~50原子の長さである。リンカー分子は、例えば、アリールアセチレン、2~10モノマー単位を含むエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであってもよい。適切なリンカーは、容易に選択することができ、1アミノ酸(例えば、Gly)、2、3、4、5、6、7、8、9、10、10~20、20~30、30~50または50を超えるアミノ酸などの任意の適切な長さであることができる。例示的なフレキシブルリンカーには、グリシンポリマー(G)n 、グリシン-セリンポリマー(例えば(GS)n 、GSGGSn 、GGGSn 、(Gmon 、(Gmomn 、(Gmomomn 、(GSGGSmn 、(GSGSm G)n および(GGGSmn 、ならびに、それらの組み合わせ、ここでmおよびoはそれぞれ独立して少なくとも1である整数から選択される)、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマーおよび他のフレキシブルリンカーが含まれる。グリシンおよびグリシン-セリンポリマーは、比較的構造化されておらず、したがって、成分間の中性テザーとして役立ち得る。例示的なフレキシブルリンカーには、GGSG、GGSGG、GSGSG、GSGGG、GGGSG、およびGSSSGが含まれるが、これらに限定されない。
いくつかの例では、全身性TIMPポリペプチドレベルは、コード配列が対象において発現されるために十分な条件下で対象に核酸コード配列を投与することによって増加される。所望のTIMPポリペプチドに依存して、核酸コード配列は様々であり得る。関心対象の核酸には、上記で提供されたTIMPポリペプチドをコードする核酸が含まれる。関心対象の特定の核酸には、ヒトTIMP2(NCBI参照配列:NM_003255.4);ヒトTIMP1(NCBI参照配列:NM_003254.2);ヒトTIMP3(NCBI参照配列:NM_000362.4)およびヒトTIMP4(NCBI参照配列:NM_003256.3)が含まれるが、これらに限定されない。
核酸組成物とは、関心対象のTIMPポリペプチド、すなわちTIMPコード配列をコードし、適切な条件下でTIMPポリペプチドとして発現することができるオープンリーディングフレームを有するDNAの配列を含む組成物を意味する。また、この用語には、上記の特定の核酸と相同、実質的に類似または同一の核酸が包含される。上述の特定の核酸組成物に加えて、上記配列の同族体が関心対象である。特定の実施形態では、同族体間の配列類似性は、75%、80%、85%、90%および95%以上を含む30%、35%、40%、50%、60%、70%以上を含む、25%以上などの20%以上である。配列類似性は、保存されたモチーフ、コード領域、隣接領域などのより大きな配列のサブセットであり得る参照配列に基づいて計算される。参照配列は、長さが30ntなど、18nt以上の長さであり得、比較されている完全な配列まで拡張し得る。配列分析のためのアルゴリズムは、Altschul等、(1990)、J.Mol.Biol.215:403-10に記載のBLASTなど、当技術分野で公知である(デフォルト設定、すなわちパラメータw=4およびT=17を使用)。特定の実施形態において特に関心対象となるのは、上記の特定のヒトTIMP1~TIMP4核酸と実質的に同じ長さの核酸であり、実質的に同じ長さとは、長さの差異が約20%を超えない、通常は約10%を超えない、より通常には約5%を超えないことを意味し、核酸の全長にわたって90%以上、例えば95%以上、さらには99%以上のこれらの配列のいずれかとの配列同一性を有する。いくつかの実施形態では、核酸は、上記の特定の配列と実質的に類似または同一の配列を有する。実質的に類似とは、配列同一性が60%以上、例えば75%以上、80、85、90または95%以上であることを意味する。関心対象の核酸はまた、上記の核酸によってコードされるタンパク質をコードするが、遺伝コードの縮重のために上記の核酸とは配列が異なる核酸を含む。
本明細書に記載の核酸は、ベクター中に存在してもよい。本発明に従って、様々なベクター(例えば、ウイルスベクター、細菌ベクター、または真核生物および原核生物宿主において複製することができるベクター)を使用することができる。真核生物および原核生物宿主中で複製することができる多数のベクターが当技術分野で公知であり、市販されている。いくつかの例では、本発明に従って使用されるそのようなベクターは、細菌の複製起点と関心対象のDNAに作動可能に結合された真核生物プロモーターとから構成される。
本発明に従って使用されるウイルスベクターは、ウイルスの複製を欠損させ、本発明による関心対象の組換え遺伝子を発現するように遺伝的に改変された天然のウイルスに由来するウイルス粒子から構成され得る。ウイルスがその遺伝物質を細胞に送達すると、それは追加の感染性ウイルスを生成しないが、外因性組換え遺伝子を細胞、好ましくは細胞のゲノムに導入する。例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ワクシニアおよびポリオウイルスベクターを含む多数のウイルスベクターが当技術分野で公知である。
関心対象のDNAは、非ウイルスベクター、例えばDNA-またはRNA-リポソーム複合体製剤を用いて投与し得る。そのような複合体は、遺伝物質(DNAまたはRNA)に結合する脂質の混合物を含み、遺伝物質が細胞内に送達されることを可能にする疎水性コートを提供する。本発明に従って使用することができるリポソームには、DOPE(ジオレイルホスファチジルエタノールアミン)、CUDMEDA(N-(5-コレストラム-3-β-オール3-ウレタニル)-N’,N’-ジメチルエチレンジアミン)が含まれる。関心対象のDNAがリポソームを用いて導入される場合、いくつかの例では、細胞死および特定のタイプの細胞が形質転換される形質転換効率の関数として、DNA:脂質比ならびにDNAおよび脂質の絶対濃度に関する最適値を試験管内で最初に決定する。これらの値は、生体内形質転換に使用する、または外挿法で使用することができる。これらの値の試験管内での決定は、当技術分野で公知の技術を用いて容易に行うことができる。
他の非ウイルスベクターも本発明に従って使用され得る。これらには、宿主細胞の生物学的特性を改変する目的で宿主細胞への送達を容易にする担体分子(例えば抗体または受容体リガンド)にカップリングしたDNAまたはRNAの化学製剤が含まれる。用語「化学製剤」とは、タンパク質もしくは脂質またはその誘導体のような担体分子に核酸化合物をカップリングさせ得る核酸の修飾を意味する。例示的なタンパク質担体分子には、標的分泌腺または受容体リガンドの細胞に特異的な抗体、すなわち、標的分泌腺の細胞に関連した受容体と相互作用することができる分子が含まれる。
DNA構築物は、標的細胞内の関心対象のDNAの発現を促進するためのプロモーター、例えば強力な真核生物プロモーターを含み得る。例示的な真核生物プロモーターには、サイトメガロウイルス(CMV)、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)およびアデノウイルス由来のプロモーターが含まれる。より具体的には、例示的なプロモーターは、ヒトCMVの前初期遺伝子由来のプロモーター(Boshart等、Cell41:521-530,1985)およびRSVの長い末端反復(LTR)由来のプロモーター(Gorman等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA79:6777-6781,1982)を含む。
上記のようなTIMPポリペプチドの投与の代わりに、生体内でTIMPポリペプチドの内因性産生および/または放出を刺激することによって、対象における全身性TIMP活性剤のレベルを高め得る。
TIMP活性増強剤もまた関心対象である。TIMP増強剤とは、治療される対象に存在する内因性TIMPポリペプチドの望ましいTIMP活性を増加させる作用を有する薬剤または薬剤の組み合わせを意味する。増加の大きさは様々であり得、いくつかの例では、増加の大きさが(適切な対照と比較して)例えば15倍以上、20倍以上、25倍以上などの10倍以上を含む、5倍以上などの2倍以上である。関心対象のTIMP増強剤は、例えば、TIMPポリペプチドと所望の標的との間の結合相互作用を増強することによって、内因性プールの生体利用効率を増加させることによって、例えば、望ましくない競合結合標的を封鎖することによってなど、様々な異なる機構を介して作用し得る。
さらに他の実施形態では、薬剤は、所望のTIMP活性を示す小分子薬剤である。関心対象の天然に存在するまたは合成の小分子化合物は、有機分子、例えば分子量が50ダルトンより大きく約2,500ダルトン未満の小さな有機化合物などの多数の化学的クラスを含む。候補薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合のための官能基を含み、典型的には、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシルまたはカルボキシル基、好ましくは少なくとも2つの機能性化学基を含む。候補薬剤は、環状炭素または複素環構造および/または1つ以上の上記官能基で置換された芳香族またはポリ芳香族構造を含み得る。候補薬剤はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体またはそれらの組み合わせを含む生体分子の間に見出される。そのような分子は、他の方法の中で、以下に記載するスクリーニングプロトコルを用いることによって同定し得る。
本発明の方法の実施において、所望の活性をもたらすことができる任意の好都合な投与プロトコルを用いて、成体哺乳動物に活性物質(複数可)を投与し得る。従って、薬剤は、治療的投与のために、種々の製剤、例えば、薬学的に許容される基剤に組み込むことができる。より具体的には、本発明の薬剤は、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物に製剤することができ、固体、半固体、液体または気体形態の製剤、例えば錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏(例えば皮膚クリーム)、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルなどに製剤することができる。このように、薬剤の投与は、経口、頬内、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内投与などの様々な方法で達成することができる。
医薬剤形では、薬剤は、それらの薬学的に許容される塩の形態で投与されてもよく、または単独でまたは適切に共同して、ならびに他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用されてもよい。以下の方法および賦形剤は単なる例示であり、決して限定的ではない。
経口製剤の場合、薬剤は、例えば、ラクトース、マンニトール、トウモロコシデンプンまたはジャガイモデンプンのような通常の添加剤;結晶セルロース、セルロース誘導体、アラビアゴム、トウモロコシデンプンまたはゼラチンのような結合剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの崩壊剤;タルクまたはステアリン酸マグネシウムなどの滑石;所望により、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、防腐剤および香味剤を用いて、錠剤、散剤、顆粒剤またはカプセル剤を製造するために単独でまたは適切な添加剤と組み合わせて使用することができる。
薬剤は、所望であれば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤および防腐剤などの通常の添加剤とともに、植物油または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールのような水性または非水性溶媒中にそれらを溶解、懸濁または乳化することによって注射用製剤に製剤することができる。
薬剤は、吸入により投与されるエアロゾル製剤に利用することができる。本発明の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのような加圧された許容可能な噴射剤に製剤することができる。
さらに、薬剤は、乳化基剤または水溶性基剤のような種々の基剤と混合することによって坐剤にすることができる。本発明の化合物は、座薬を介して直腸投与することができる。坐剤は、体温で融解するが室温では凝固するココアバター、カーボワックスおよびポリエチレングリコールのような基剤を含むことができる。
シロップ、エリキシルおよび懸濁液のような経口または直腸投与のための単位剤形は、各服用量単位、例えば茶さじ、大さじなどの、錠剤または座薬が1つ以上の阻害剤を含む所定量の組成物を含むように提供され得る。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水または他の薬学的に許容される担体中の溶液として組成物中に阻害剤(複数可)を含んでもよい。
本明細書で使用する用語「単位剤形」は、ヒトおよび動物である対象の単位用量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体または基剤とともに所望の効果を生じるために十分な量で計算された本発明の所定量の化合物を含む。本発明の新規単位剤形のための仕様は、使用される特定の化合物および達成される効果、ならびに宿主中の各化合物に関連する薬力学に依存する。
基剤、補助薬、担体または希釈剤のような薬学的に許容される賦形剤は、公衆に容易に入手可能である。さらに、pH調整剤および緩衝剤、等張化剤、安定化剤、湿潤剤などの医薬的に許容される補助物質は、公衆に容易に入手可能である。
薬剤がポリペプチド、ポリヌクレオチド、その類似体または模倣物である場合、それはウイルス感染、マイクロインジェクションまたは小胞の融合を含む任意の数の経路によって組織または宿主細胞に導入され得る。ジェット注射はまた、Furth等、Anal Biochem.(1992)205:365-368に記載されているように、筋肉内投与のために使用されてもよい。DNAは、金微粒子に被覆され、文献に記載されているように粒子衝撃装置または「遺伝子銃」によって皮内に送達され得(例えば、Tang等、Nature(1992)356:152-154を参照)、金微粒子発射体がDNAでコーティングされ、次いで皮膚細胞に衝突する。核酸治療剤については、当技術分野で公知のように、ウイルスおよび非ウイルスベクター系を含む多くの異なる送達基剤が使用される。
当業者は、用量レベルが、特定の化合物、送達基剤の性質などの関数として様々に変化し得ることを容易に理解するであろう。所与の化合物の好ましい投薬量は、当業者によって様々な手段によって容易に決定可能である。
効果的な量の活性剤が成体哺乳動物に投与されるこれらの実施形態では、成体哺乳動物における認知低下および/または認知改善などの障害の減少を証明するために、量または投与量は、2週間以上、例えば3週間以上、4週間以上、8週間以上などを含む、1週間以上のような適切な期間、投与された際に、実効的なものである。例えば、有効用量は、適切な期間、例えば少なくとも約1週間、そしておそらくは約2週間以上、約3週間、4週間、8週間、またはそれ以上の期間にわたって投与された際に、約20%以上、例えば30%以上、40%以上、または50%以上、いくつかの例では60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、自然老化または老化関連障害を患っている患者の認知低下を遅くする、例えば、停止させるであろう用量である。いくつかの例では、有効量または有効用量の活性薬剤は、疾患状態の進行を遅くするかまたは停止させるだけでなく、状態の逆転を誘導する、すなわち認知能力の改善を引き起こすであろう。例えば、いくつかの例では、有効量は、適切な期間、通常は少なくとも約1週間、そしておそらくは約2週間以上、約3週間、4週間、8週間、またはそれ以上の期間にわたって投与された際に、血液製剤の投与前の認知と比較して例えば1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、いくつかの例では6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、またはそれ以上、老化関連認知障害に罹患している個体の認知能力を改善するであろう量である。
所望される場合、任意の都合がよいプロトコルを用いて治療の有効性を評価し得る。注意と集中、複雑なタスクや概念を習得する能力、記憶、情報処理、視覚空間機能、言語を生成し理解する能力、問題を解決し決定を下す能力、および、執行機能を実行する能力などの認知能力を測定するための認知テストおよびIQテストは、当技術分野において公知であり、そのいずれも本血液製剤による治療の前および/または途中および後における個体の認知能力を測定するため、例えば、有効量が投与されていることを確認するために使用され得る。これらには、例えば、認知症一般医評価(GPCOG)試験、記憶障害スクリーニング、ミニメンタルステート検査(MMSE)、記憶のためのカリフォルニア言語学習テスト、第2版、短縮形式、デリス-カプラン実行機能系検査、アルツハイマー病評価尺度(ADAS-Cog)、心理栄養評価尺度(PAS)などが含まれる。機能的な脳の改善の進行は、磁気共鳴イメージング(MRI)または陽電子放射断層撮影(PET)などの脳イメージング技術によって検出し得る。日常生活、執行機能、モビリティなどの活動を監視するために、幅広い追加機能評価を適用し得る。いくつかの実施形態では、この方法は、認知能力を測定し、血液製剤を投与する前の個体の認知能力と比較して血液製剤の投与後の認知低下率の減少、認知能力の安定化、および/または、認知能力の増加を検出するステップを含む。このような測定は、血液製剤の投与後、例えば1週間、2週間、3週間またはそれ以上、例えば4週間、6週間、8週間またはそれ以上、例えば3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月またはそれ以上など、1週間以上の後に行われ得る。
生化学的には、活性薬剤の「有効量」または「有効用量」とは、約20%以上、例えば30%以上、40%以上、50%以上、いくつかの例では60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上、ある場合には約100%、すなわち無視できる量まで、自然な老化プロセス中または老化関連障害の進行中に起こるシナプス可塑性およびシナプス喪失を、阻害、拮抗、減少または抑制でき、いくつかの例では逆転させることができる活性薬剤の量を意味する。言い換えれば、本発明の方法に従って治療された成体哺乳動物に存在する細胞は、シナプスの形成および維持を促進する手がかり、例えば活性の手がかりに、より敏感になるであろう。
例えば、上記のような本発明の方法の効能は、長期増強の誘導として試験管内および生体内の両方で観察されるシナプス可塑性の改善として現れ得る。例えば、神経回路におけるLTPの誘導は、目覚めた個体において、例えば、覚醒した個体に対する非侵襲的刺激技術を実施して、局所的な神経活動におけるLTP様の持続的変化を誘導することによって(Cooke SF、Bliss TV(2006)「ヒト中枢神経系の可塑性」Brain.129(Pt7):1659-73);例えば、陽電子放出断層撮影法、機能的磁気共鳴画像法、および/または経頭蓋磁気刺激を使用することによる個体の可塑性および神経回路活性増加のマッピングによって(CramerおよびBastings、「脳卒中後の臨床的に関連する可塑性のマッピング」、Neuropharmacology(2000)39:842-51);および、学習後の神経可塑性、すなわち記憶の改善の検出によって、例えば、検索関連の脳活動を分析することによって(Buchmann等、「プリオンタンパク質M129V多型は検索関連脳活動に影響を及ぼす」、Neuropsychologia(2008)46:2389-402)、または、例えば、身近なおよび未知の物体を用いた繰り返しプライミングに続く、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による脳組織の画像化によって(Soldan等、「視覚刺激のグローバルな親密性は、反復関連の神経可塑性に影響するが、反復プライミングには影響しない」、Neuroimage(2008)39:515-26;Soldan等、「老化は新規物体の知覚的プライミングに伴う反復効果の脳パターンに影響しない」、J.Cogn.Neurosci.(2008)20:1762-76)、観察され得る。いくつかの実施形態では、この方法は、シナプス可塑性を測定し、シナプス可塑性の喪失率の減少、シナプス可塑性の安定化、および/または血液製剤を投与する前の個体のシナプス可塑性と比較した血液製剤の投与後のシナプス可塑性の増加を検出するステップを含む。このような測定は、血液製剤の投与後、例えば1週間、2週間、3週間またはそれ以上、例えば4週間、6週間、8週間またはそれ以上、例えば3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月またはそれ以上など、1週間以上の後に行われ得る。
いくつかの例では、この方法は、例えば(以下の実験セクションに記載されるような)適切な対照と比較して、宿主の1つ以上の組織における1つ以上の遺伝子の発現レベルの変化をもたらす。所与遺伝子の発現レベルの変化は、0.5倍以上、例えば1.0倍以上、1.5倍以上であってもよい。組織は様々であり得、いくつかの例では、脳組織、例えば海馬組織を含む中枢神経系組織などの神経系組織である。いくつかの例では、海馬遺伝子発現の調節は、例えば、適切な対照と比較して、海馬の可塑性の増強として現れる。いくつかの例では、その発現が調節された、例えば増強された1つ以上の遺伝子は、可塑性関連シグナル伝達経路(すなわち、シナプス可塑性調節遺伝子)のメンバーである産物をコードする遺伝子、例えば、Tlr4、Gria1、Kcnj10、Kdr、Ncam、Sdfr1、Egr1、Fosタンパク質、例えば、c-Fos、Drd1a、Stxbp1、Mef2c、Cntn2、Junb、BdnfおよびCamK2aである。いくつかの例では、海馬の遺伝子発現の調節は、例えば適切な対照と比較して増強された海馬可塑性として現れる。いくつかの例では、その発現が調節された、例えば増強された1つ以上の遺伝子は、シナプス可塑性ならびに学習および記憶に関連するネットワークのメンバーである産物をコードする遺伝子、例えば限定されないがRELN、NTRK3、EPHA4などである。
いくつかの例では、例えば、(以下の実験の項に記載されるような)適切な対照と比較して、治療は、宿主の1つ以上の組織における1つ以上のタンパク質のレベルの増強をもたらす。所与のタンパク質のタンパク質レベルにおける変化は、0.5倍以上、例えば1.0倍以上、1.5倍以上であってもよく、いくつかの例では、レベルは健康な野生型レベルの値に近くてもよく、例えば健康な野生型レベルの50%以下、例えば25%以下、10%以下、5%以下である。組織は様々であり得、いくつかの例では、脳組織、例えば海馬組織を含む中枢神経系組織などの神経系組織である。
いくつかの例では、この方法は、1つ以上の組織における1つ以上の構造変化をもたらす。組織は様々であり得、いくつかの例では、脳組織、例えば海馬組織を含む中枢神経系組織などの神経系組織である。関心対象の構造変化は、例えば、適切な対照と比較して、海馬の歯状回(DG)における成熟ニューロンの樹状突起棘密度の増加を含む。いくつかの例では、海馬構造の調節は、例えば、適切な対照と比較して、シナプス形成または機能の増強として現れる。いくつかの例では、この方法は、例えば、適切な対照と比較して、長期増強作用の増強をもたらし得る。
いくつかの例では、例えば上記のような方法の実施は、成体哺乳動物における神経発生の増加をもたらす。この増加は、例えば以下の実験セクションで説明するように、多数の異なる方法で識別し得る。いくつかの例では、神経発生の増加は、Dcx陽性未成熟ニューロン量の増加として現れ、例えば、増加は1.5倍以上であり得る。いくつかの例では、神経発生の増加は、BrdU/NeuN陽性細胞の数の増加として現れ、その増加は1.5倍以上であり得る。
いくつかの例では、この方法は、例えば、適切な対照と比較して、学習および記憶の増強をもたらす。学習および記憶における増強は、以下の実験セクションに記載された文脈恐怖条件付け、バーンズ迷路および/または放射状アーム水迷路(RAWM)パラダイムのような多数の異なる方法で評価され得る。文脈恐怖条件付けによって測定される場合、治療はいくつかの例では、文脈上の、しかしキュー付けされない記憶試験において凍結の増加を伴う場合がある。バーンズ迷路によって測定された場合、治療はいくつかの例において、タスクの任意の日におけるタスクのテスト段階の間にエスケープホールの位置についての強化された学習および記憶をもたらす。RAWMで測定した場合、治療はいくつかの例において、タスクのテスト段階の間にプラットフォームの場所についての強化された学習および記憶をもたらす。いくつかの例では、治療は、例えば、適切な対照と比較して、海馬依存性学習および記憶における認知向上の増強として現れる。
いくつかの実施形態では、方法は、老化関連認知障害を治療するために適した活性を有する活性薬剤と併せて実施し得る。例えば、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン)、メマンチンおよびビタミンEのように、多数の活性薬剤が、アルツハイマー病の認知症候(例えば、記憶喪失、混乱および思考および推論の問題)の治療に何らかの有効性を持つと示されている。他の例として、例えば、シタロプラム(セレクサ)、フルオキセチン(プロザック)、パロキセイン(パキシル)、セルトラリン(ゾロフト)、トラゾドン(デシレル)、ロラゼパム(アチバン)、オキサゼパム(セラックス)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クロザピン(クロザリル)、ハロペリドール(ハルドール)、オランザピン(ジプレクサ)、クエチアピン(セロクエル)、リスペリドン(リスパダール)およびジプラシドン(ジオドン)のように、多数の薬剤が、アルツハイマー病の行動または精神症候の治療に何らかの有効性を持つと示されている。
いくつかの例では、方法は、1つ以上の追加の非TIMPポリペプチド活性剤と組み合わせて実施され、そのような非TIMPポリペプチド活性剤は、例えば上記のような望ましい老化関連症状対抗活性を示す。このような非TIMPポリペプチド活性剤の例には、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)(すなわちMCP1)およびC-Cモチーフケモカイン11(すなわち、走化性タンパク質またはエオタキシン-1)およびそのアゴニスト/模倣体(例えばUS出願公開第2013/0040844号に記載されており、その開示が参照0により本願に組み込まれる)、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(すなわち、コロニー刺激因子2またはCSF2)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような場合、活性剤は、TIMP活性剤、例えば、ポリペプチドおよびその模倣体/フラグメント、小分子、核酸、増強剤などに関連して上述した薬剤のタイプを含む、任意のタイプの便利な活性剤であり得る。
本方法のいくつかの態様では、本方法は、例えば本明細書に記載の方法または当技術分野で知られている方法を使用して、治療後の認知および/またはシナプス可塑性を測定し、認知低下またはシナプス可塑性喪失の速度が低下していること、および/または認知能力またはシナプス可塑性が個体において改善されていることを決定するステップを含む。いくつかのこのような場合には、認知またはシナプス可塑性試験の結果を、より早い時期、例えば2週間前、1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前、1年前、2年前、5年前、10年前、またはそれ以上前に同じ個体に対して行った試験の結果と比較することにより、この決定は行われる。
いくつかの実施形態では、本方法は、本血漿含有血液製剤を投与する前に、例えば、本明細書に記載の方法または認知およびシナプス可塑性を測定するための当技術分野で公知の方法を使用して、認知障害を有すると個体を診断することをさらに含む。いくつかの例では、診断は、認知および/またはシナプス可塑性を測定することと、認知またはシナプス可塑性試験の結果を1つ以上の参照、例えば、陽性対照および/または陰性対照と比較することとを含む。例えば、参照は、老化関連認知障害を経験する(すなわち、陽性対照)か、または、老化関連認知障害を経験しない(すなわち、陰性対照)1人以上の年齢が一致した個体によって行われる試験の結果(複数可)であり得る。別の例として、参照は、より早い時期、例えば、2週間前、1ヶ月前、2ヶ月前、3ヶ月前、6ヶ月前、1年前、2年前、5年前、10年前、またはそれ以上前に同じ個体によって行われた試験の結果(複数可)であり得る。
いくつかの実施形態では、本方法はさらに、老化関連障害、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、進行性核上麻痺、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症、多発性硬化症、多系統萎縮症、緑内障、運動失調、筋ジストロフィー、認知症などを有すると個体を診断することをさらに含む。そのような老化関連障害を診断するための方法は、当技術分野において公知であり、そのいずれも、個体を診断する際に当業者によって使用され得る。いくつかの実施形態において、本方法は、個体を、老化関連障害が有すると診断することと、認知障害が有すると診断することとの両方をさらに含む。
ユーティリティ
本方法は、個体の認知能力の障害などの、老化関連障害およびそれに関連する症状を治療、さらには予防することにおける使用を見出す。老化関連認知障害に罹患しているか、またはそれを発症するリスクがある個体には、約50歳以上、例えば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、通常は100歳以下、すなわち、例えば50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳または約100歳などの約50歳~100歳の間であり、軽度認知障害(MCI)などの自然老化プロセスに関連する認知障害に罹患する個体、および、約50歳以上、例えば、60歳以上、70歳以上、80歳以上、90歳以上、通常は100歳以下、すなわち、例えば50歳、55歳、60歳、65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳または約100歳などの約50歳~90歳の間であり、認知障害の症候をまだ示し始めていない個体が含まれる。自然老化による認知障害の例には、以下が含まれる。
軽度認知機能障害(M.C.I.)は、計画する、指示に従う、または、決定を下すなどの記憶や他の精神機能の問題として現れる認識の中程度の混乱であり、全体的な精神機能や日常活動は損なわれないが時間経過とともに悪化するものである。したがって、重大なニューロン死は典型的には起こらないが、老化脳におけるニューロンは、構造、シナプス完全性、およびシナプスにおける分子プロセシングの亜致死性の年齢変化に脆弱であり、それらの全てが認知機能を損なう。
例えば本明細書中に開示される方法により、本血漿含有血液製剤での治療から利益を得る老化関連認知障害に罹患しているか、または罹患するリスクがある個体には、老化関連障害による認知障害に罹患している任意の年齢の個体、および、個体がまだ認知障害の症候を呈し始めていないが、典型的に認知障害を伴う老化関連障害と診断された任意の年齢の個体が含まれる。そのような老化関連障害の例には、以下が含まれる。
アルツハイマー病(AD)。アルツハイマー病は、大脳皮質および皮質灰白質における過度の数の老人斑に関連する、進行性の、認知機能の冷酷な喪失であり、τタンパク質からなるβ-アミロイドおよび神経原線維変化も含まれる。共通の形態は60歳超の人に影響を及ぼし、年齢が進むにつれて発生率が上昇する。それは高齢者の認知症の65%超を占める。
アルツハイマー病の原因は不明である。この疾患は、家系において約15~20%の症例で起こる。残りのいわゆる散発性の症例にはいくつかの遺伝的決定要因がある。この疾患は、ほとんどの早期発症の症例およびいくつかの後期発症の症例では常染色体優性の遺伝的パターンを有するが、後期生存率は変化する。環境要因が積極的な調査の焦点である。この病気の過程で、シナプス、そして最終的にはニューロンは、大脳皮質、海馬、および皮質構造(Meynertの核底における選択的細胞喪失を含む)、青斑および背側縫線核内で失われる。脳のグルコースの使用および灌流は、脳のいくつかの領域では減少する(初期段階の疾患では頭頂葉および側頭皮質、後期段階の疾患では前頭前野)。神経突起または老人斑(神経突起、星状細胞およびアミロイド核周囲のグリア細胞からなる)および神経原線維変化(対になったらせん状フィラメントからなる)は、アルツハイマー病の病因に関与する。老人斑および神経原線維変化は、正常な老化とともに起こるが、アルツハイマー病を有する人では、はるかによく起こる。
パーキンソン病。パーキンソン病(PD)は、ゆっくりと減少した動き、筋肉の剛性、静止した振戦、および姿勢の不安定性を特徴とする、特発性で緩徐進行性の変性CNS障害である。もともと主には運動障害と考えられていたが、PDは今や、認識、行動、睡眠、自律機能、および感覚機能にも影響することが認識されている。最も一般的な認知障害には、注意と集中、作業記憶、執行機能、言語の生成、および視覚空間機能の障害が含まれる。原発性パーキンソン病では、黒質、青斑および他の脳幹ドーパミン作動性細胞群の色素ニューロンが失われる。原因は不明である。尾状核および被殻に突出する黒質ニューロンの喪失は、これらの領域における神経伝達物質ドーパミンの枯渇をもたらす。発症は一般的に40歳以降であり、高齢群では発症率が増加する。
二次性パーキンソン症候群は、他の特発性変性疾患、薬物、または外因性毒素による基底核におけるドーパミンの作用の喪失または妨害に起因する。二次性パーキンソン症候群の最も一般的な原因は、抗精神病薬またはレセルピンの摂取であり、ドーパミン受容体を遮断することによってパーキンソン症候群を引き起こす。あまり一般的ではない原因には、一酸化炭素またはマンガン中毒、水頭症、構造病変(腫瘍、中脳または基底核に影響を与える梗塞)、硬膜下血腫および線条体黒質変性を含む変性障害が含まれる。
前頭側頭型認知症。前頭側頭型認知症(FTD)は、脳の前頭葉の進行性の悪化から生じる状態である。時間が経つにつれて、変性が側頭葉に進むことがある。アルツハイマー病(AD)を除く罹患率において、FTDは初老期認知症の症例の20%を占めている。症候は、影響を受ける前頭葉および側頭葉の機能に基づいて3つの群に分類され、症候を伴う行動変種FTD(bvFTD)は、一方では嗜眠および自発性喪失を、他方では脱抑制を含み、進行性非流暢性失語(PNFA)は、明瞭な発音の困難性に起因する音声の流暢性の崩壊、音韻的および/または構文的な誤りが観察されるが、言葉の理解は維持され、意味性認知症(SD)は、患者が正常な音韻学および構文は流暢であるが、命名および語彙理解の困難性が増す。すべてのFTD患者に共通する他の認知症候には、執行機能および集中する能力の障害が含まれる。知覚、空間的スキル、記憶およびプラクシスを含む他の認知能力は、通常、そのまま残る。FTDは、構造的MRIスキャンにおける前頭葉および/または前側の側頭葉の萎縮発生の観察によって診断することができる。
多くの形態のFTDが存在し、そのいずれも本方法および組成物を用いて治療または予防し得る。例えば、前頭側頭型認知症の1つの形態は、意味性認知症(SD)である。SDは、言語領域と非言語領域との両方における意味記憶の喪失を特徴とする。SD患者は、しばしば言葉発見の困難の訴えを提示する。臨床的徴候には、流暢な失語症、失名詞症、言葉の意味の理解の障害、および関連性のある視覚認知障害(意味論的に関連する画像または対象に一致できないこと)が含まれる。疾患が進行するにつれて、前頭側頭型認知症に見られるものと同様の行動および人格の変化がしばしば見られるが、後期の行動症候がほとんどない「純粋な」意味性認知症の症例が記載されている。構造的MRI画像化は、側頭葉(主に左)における萎縮の特徴的パターンを示し、上部よりも下部において大きな関与を、そして後方よりも前方での側頭葉の大きな萎縮を示す。
別の例として、前頭側頭型認知症の別の形態はピック病(PiD、PcD)である。この疾患の定義的特徴は、ニューロンにおけるτタンパク質の蓄積であり、「ピックボディ」として知られる銀染色の球状凝集物へと蓄積する。症候としては、失語症(言語不随)や認知症が含まれる。眼窩前頭の機能障害を有する患者は、攻撃的かつ社会的に不適切なものになる可能性がある。彼らは、盗みを行うか、または強迫観念的または反復的な常同行動を示し得る。背側正中または背側外側の前頭部機能不全を有する患者は、関心の欠如、無関心、または自発性の低下を示し得る。患者は、自己監視の欠如、異常な自己認識、および意味を理解できないことを示す場合がある。両側後外眼窩前頭皮質および右前島における灰白質喪失を有する患者は、病的な甘党のような摂食行動の変化を示し得る。前外側の眼窩前頭皮質においてより重大な灰白質の損失を有する患者は、過食症を発症し得る。症候のいくつかは当初軽減することができるが、疾患は進行し、患者はしばしば2~10年以内に死亡する。
ハンチントン病。ハンチントン病(HD)は、感情的、行動的および精神的異常;知的または認知機能の喪失;および運動異常(運動障害)の発症を特徴とする遺伝性進行性神経変性疾患である。HDの古典的な徴候には、舞踏病の発症、すなわち顔面、腕、脚、または胴体に影響し得る、不随意な急速で不規則なぎざぎざの動き、ならびに思考処理および獲得済みの知的能力を徐々に失うことを含む認知低下が含まれる。記憶、抽象的思考、判断の障害;時間、場所、またはアイデンティティの誤った認識(見当識障害);動揺の増加;人格の変化(人格の崩壊)があり得る。症候は、典型的には、生後40~50年の間に明らかになるが、発症時の年齢は、様々であり、幼児期から成人期後期(例えば、70または80歳代)までの範囲である。
HDは家系内で常染色体優性形質として伝達される。この異常は、染色体4(4p16.3)の遺伝子内のコードされた命令の異常に長い配列または「反復」の結果として生じる。HDに関連する神経系機能の進行性喪失は、脳の特定の領域(基底核および大脳皮質を含む)におけるニューロンの喪失に起因する。
筋萎縮性側索硬化症。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンを攻撃する急速進行性の、常に致死的な神経学的疾患である。筋肉の衰弱および萎縮ならびに前角細胞機能不全の徴候は、最初は手に最も頻繁に見られ、足にはあまり頻繁には見られない。発症部位はランダムであり、進行は非対称である。痙攣は一般的であり、衰弱に先行し得る。まれに、患者は30年生存するが、50%は発症から3年以内に死亡し、20%は5年生存し、10%は10年生存する。診断的特徴には、成人の中期または後期の発症、および感覚異常がない進行性の全身運動が含まれる。神経伝導速度は、疾患の後期まで正常である。最近の研究では、認知障害の提示、特に即時の口頭記憶、視覚記憶、言語、および執行機能の低下についても報告されている。
ALS患者の正常に出現するニューロンでさえ、細胞体面積、シナプス数および全シナプス長の減少が報告されている。活性領域の可塑性がその限界に達すると、シナプスの持続的な喪失が機能障害を引き起こす可能性があることが示唆されている。新しいシナプス形成の促進またはシナプス喪失の予防は、これらの患者のニューロン機能を維持し得る。
多発性硬化症。多発性硬化症(MS)は、寛解および再発の悪化とともに、CNS機能不全の様々な症候および兆候を特徴とする。最も一般的に現れる症候は、1つ以上の四肢、胴体、または顔の片側の感覚異常;脚や手の弱さや不器用さ;または、例えば片眼の部分失明と痛み(例えば眼球後眼部の視神経炎)、視力の薄暗さ、または暗点のような視覚障害である。一般的な認知障害には、記憶(新しい情報の獲得、保持、検索)、注意と集中(特に注意の分散)、情報処理、執行機能、視覚空間機能、および言語流暢性の障害が含まれる。一般的な早期症候は、複視(二重視)を生じる眼麻痺、一過性の1つ以上の肢体不自由、肢体の軽度硬直または異常疲労性、軽度の歩行障害、膀胱調節障害、めまい、および軽度の情動障害であり、これらのすべてが、散在したCNSの関与を示し、疾患が認識される数ヶ月または数年前に起こることが多い。過度の熱は症候や徴候を強めることがある。
経過は非常に多様であり、予測不能であり、ほとんどの患者では、寛解である。最初に、寛解の数ヶ月または数年は、特に、眼球後眼部の視神経炎で疾患が始まる場合に、エピソードを分離し得る。しかし、一部の患者は頻繁に発作を起こし、急速に能力を失い、いくつかの経過は急速に進行することがある。
緑内障。緑内障は、網膜神経節細胞(RGC)に影響を与える一般的な神経変性疾患である。エビデンスは、RGCを含むシナプスおよび樹状突起におけるコンパートメント化された変性プログラムの存在を支持する。最近のエビデンスはまた、高齢者の認知障害と緑内障との間に相関関係があることを示している(Yochim BP等、緑内障を有する高齢者の認知障害、うつ病、および不安症候の罹患率、J Glaucoma.2012;21(4):250-254)。
筋緊張性ジストロフィー。筋緊張性ジストロフィー(DM)は、ジストロフィー筋衰弱および筋緊張を特徴とする常染色体優性多系統障害である。分子欠損は、染色体19q上のミオトニン-タンパク質キナーゼ遺伝子の3’非翻訳領域における拡大されたトリヌクレオチド(CTG)反復である。症候は任意の年齢で起こることがあり、臨床的重症度の範囲は広い。筋緊張症は手の筋肉で顕著であり、眼瞼下垂は軽度の症例でも一般的である。重篤な症例では、しばしば白内障、早期脱毛、痩せてとがった顔、心臓不整脈、精巣萎縮および内分泌異常(例えば、真性糖尿病)を伴う顕著な末梢筋衰弱が生じる。重度の先天性の形態では精神遅滞が一般的であるが、より軽度の障害の成体形態では、前頭側頭認知機能、特に言語機能および執行機能の老化関連低下が観察される。重度の罹患者は、50代前半に死亡する。
認知症。認知症は、日常機能を妨げるために十分深刻な、思考および社会的能力に影響する症候を有する障害のクラスを表す。上記の老化関連障害の後期段階で観察される認知症に加えて、認知症の他の例には、血管性認知症および以下に記載されるレビー小体による認知症が含まれる。
血管性認知症、または「多発性梗塞性認知症」において、認知障害は、脳への血液の供給の問題、典型的には一連の軽度の脳卒中、時には他の小さな脳卒中の前または後の1回の大きな脳卒中によって引き起こされる。血管病変は、小血管疾患、限局性病変、またはその両方のような、びまん性脳血管疾患の結果である場合がある。血管性認知症に罹患している患者は、急性の脳血管イベントの後に、急性または亜急性の認知障害を示し、その後、進行性の認知低下が観察される。認知障害は、言語、記憶、複雑な視覚処理、または執行機能の障害を含む、アルツハイマー病で観察される障害と類似しているが、脳の関連する変化はAD病理によるものではなく、脳における慢性的な血流低下によるものであり、最終的に認知症をもたらす。精神状態検査を含む評価と組み合わせて、多梗塞性認知症の診断を確認するために、単一光子放出コンピュータ断層撮影(SPECT)および陽電子放射断層撮影(PET)神経イメージングを使用し得る。
レビー小体型認知症(DLB、レビー小体認知症、びまん性レビー小体病、皮質レビー小体病およびレビー型の老人性認知症などの多種の別名でも知られる)は、死後の脳組織学において検出可能な、ニューロンにおけるレビー小体(α-シヌクレインおよびユビキチンタンパク質の塊)の存在により解剖学的に特徴づけられるタイプの認知症である。その主な特徴は、特に執行機能の認知低下である。注意力と短期記憶が上昇し、下降する。しばしば、生き生きとした詳細な画像を伴う持続的または反復的な視覚幻覚が、初期の診断症候である。DLBはしばしば、アルツハイマー病および/または血管性認知症と初期段階で混同されるが、アルツハイマー病が通常は非常に徐々に始まる一方、DLBはしばしば急速にまたは急性で発症する。DLB症候には、パーキンソン病と同様の運動症候も含まれる。DLBは、認知症症候がパーキンソン症候群に関連して現れる時間枠によってパーキンソン病において時々起こる認知症とは区別される。認知症を伴うパーキンソン病(PDD)は、認知症がパーキンソン病発症後1年超、経過した時点で発症する際の診断となるであろう。DLBは、認知症候がパーキンソン症候群と同時またはそれから1年以内に始まる際に診断される。
進行性核上麻痺。進行性核上麻痺(PSP)は、複雑な眼の動きや思考の問題とともに、歩行とバランスとのコントロールに深刻で漸進的な問題を引き起こす脳障害である。この疾患の古典的な徴候の1つは、目を適切に動かすことができないことであり、これは、目の動きを調整する脳の領域の病変のために起こる。一部の個体は、この効果を像ブレと記述している。冒された人は、しばしばうつ病および無関心を含む気分および行動の変化、ならびに、進行性軽度認知症を示す。障害の長い名前が示す通り、病気はゆっくりと始まり、悪化を続け(進行性)、目の動きを制御する核と呼ばれるエンドウ豆サイズの構造の上(核上)の脳の特定の部分を損傷することによって衰弱(麻痺)が引き起こされる。PSPは、1964年に3人の科学者がパーキンソン病からその症状を区別する論文を発表した際に、別個の障害として最初に記載された。これは、障害を定義した科学者の結合した名前を反映して、スティールーリチャードソンーオルツェフスキー症候群と呼ばれることもある。PSPは進行的に悪化するものの、PSP自体にて死ぬことはない。
運動失調症。運動失調を患っている人は、運動とバランスとを制御する神経系の部分が影響を受けるため、調整に問題がある。運動失調症は、指、手、腕、脚、身体、発語、および眼の動きに影響を及ぼし得る。運動失調症という単語は、中枢神経系の感染、傷害、他の疾患、または変性変化に関連し得る協調不能の症候を記述するためにしばしば用いられる。運動失調症はまた、米国運動失調症財団の主な重点である遺伝性および散発性の運動失調と呼ばれる、神経系の特定の変性疾患群を示すためにも使用される。
多系統萎縮症。多系統萎縮症(MSA)は、変性神経障害である。MSAは、脳の特定領域の神経細胞の変性と関連している。この細胞変性は、動き、バランス、および膀胱制御または血圧調節などの身体の他の自律機能に問題を引き起こす。MSAの原因は不明であり、特定のリスク要因は特定されていない。症例のおよそ55%が男性に発生し、典型的な発症年齢は50歳代後半から60歳代前半である。MSAはしばしば、パーキンソン病と同じ症候のいくつかを示す。しかし、MSA患者においては一般に、パーキンソン病に使用されるドーパミン薬物に対する応答が、たとえあるとしても最小限であることを示す。
いくつかの実施形態では、本方法および組成物は、老化関連認知障害の進行を遅らせるために有用である。言い換えれば、個体における認知能力は、開示された方法による治療後に、開示された方法による治療の前またはそれがない場合に比べてより緩やかに低下するであろう。いくつかのそのような例では、本治療法は、治療後の認知低下の進行の測定、および認知低下の進行の減少の決定を含む。このようないくつかの例では、例えば本血液製剤投与前の事前の2つ以上の時点での認識測定によって決定されるように、例えば治療前の個体の認知低下の割合など、基準と比較することによって決定が行われる。
本方法および組成物は、個体、例えば老化関連認知低下を患っている個体または老化関連認知低下を患うリスクがある個体の認知能力を安定化するためにも有用である。例えば、個体は何らかの老化関連認知障害を示すことがあり、開示された方法による治療の前に観察される認知障害の進行は、開示された方法による治療後に停止するであろう。別の例として、個体は、老化関連認知低下を発症するリスクがあり(例えば、50歳以上であるか、老化関連障害と診断されたことがあるかもしれない)、開示された方法による治療の前に比べて、個体の認知能力が実質的に変化していない、すなわち、開示された方法による治療の後で認知低下が検出されない場合がある。
本方法および組成物はまた、老化関連認知障害に罹患している個体における認知障害を減少させるためにも有用である。換言すれば、本方法による治療後の個体において、認知能力が改善される。例えば、個体における認知能力は、本方法による治療前に個体において観察される認知能力と比較して、本方法による治療後に、例えば、2倍以上、5倍以上、10倍以上、15倍以上、20倍以上、30倍以上、40倍以上、さらには50倍以上、60倍以上、70倍以上、80倍以上、90倍以上、または100倍以上、増加する。いくつかの例では、本方法および組成物による治療は、老化関連認知低下を患っている個体における認知能力を、例えば個体が約40歳以下であるときのレベルまで回復させる。換言すれば、認知障害は排除される。
併用療法
本発明の活性薬剤は、単独で、または追加の、すなわち第2の活性薬剤と組み合わせて、対象に投与することができる。このように、いくつかの場合では、本方法は、対象に少なくとも1つのさらなる化合物を投与することをさらに含む。任意の便利な薬剤を利用し得る。例えば、TIMP活性剤を単独で、または、例えば、コリンエステラーゼ阻害剤(例えば、ドネペジル、リバスチグミン、ガランタミン、タクリン)、メマンチン、ビタミンE、シタロプラム(セレクサ)、フルオキセチン(プロザック)、パロキセチン(パキシル)、セルトラリン(ゾロフト)、トラゾドン(デシレル)、ロラゼパム(アチバン)、オキサゼパム(セラックス)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クロザピン(クロザリル)、ハロペリドール(ハルドール)、オランザピン(ジプレクサ)、クエチアピン(セロクエル)、リスペリドン(リスパダール)およびジプラシドン(ジオドン);非TIMPポリペプチド活性剤;例えばケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド2(CCL2)(すなわち、MCP1);C-Cモチーフケモカイン11(すなわち、走化性タンパク質またはエオタキシン-1);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)(すなわち、コロニー刺激因子2またはCSF2)などの老化関連症状の治療に用いられる薬物のような、1つ以上の他の薬物と組み合わせて、供給することができる。
用語「共投与」および「組み合わせて」は、2つ以上の治療薬の同時、同時または逐次の投与を含み、特定の時間制限内ではない。1つの実施形態では、薬剤は、細胞内または対象の体内に同時に存在するか、または同時に生物学的または治療的効果を発揮する。一実施形態では、治療薬剤は同じ組成物または単位剤形である。他の実施形態では、治療薬剤は別々の組成物または単位剤形である。特定の実施形態において、第1の薬剤は、第2の治療薬剤の投与前(例えば、数分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前に)、それに付随して、またはそれに続いて(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間または12週間後)、投与されることができる。
本発明の医薬組成物と公知の治療薬の「同時投与」は、公知の薬剤と本発明の組成物との両方が治療効果を有することになるような時間での薬物およびヌクレオシド剤の投与を意味する。そのような同時投与は、本ヌクレオシド剤の投与に関して薬物の同時(すなわち、同じ時)、その前、またはその後の投与を伴い得る。2つの剤の投与経路は様々であり得、代表的な投与経路は以下でより詳細に記載される。当業者であれば、本発明の特定の薬物およびヌクレオシド剤の投与の適切なタイミング、順序および投与量を決定することが困難ではない。
いくつかの実施形態において、化合物は、互いに24時間以内、例えば互いに12時間以内、互いに6時間以内、互いに3時間以内、互いに1時間以内に、対象に投与される。特定の実施形態では、化合物は、互いに1時間以内に投与される。特定の実施形態では、化合物は実質的に同時に投与される。実質的に同時に投与するとは、化合物が互いに約10分以内、例えば互いに5分以内または1分以内に対象に投与されることを意味する。
薬学的調製
また、本化合物の医薬製剤も提供される。本化合物は、対象への投与のための様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、本発明の化合物は、適切な薬学的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物に製剤することができ、固体、半固体、液体または気体形態の製剤、例えば錠剤、カプセル剤、粉末、顆粒、軟膏、溶液、坐剤、注射剤、吸入剤およびエアロゾルに製剤され得る。製剤は、経口、頬内、直腸、非経口、腹腔内、皮内、経皮、気管内投与などの多数の異なる経路を介した投与のために設計され得る。
医薬剤形では、化合物は、その薬学的に許容される塩の形態で投与されてもよく、または単独でまたは適切に共同で、ならびに他の薬学的に活性な化合物と組み合わせて使用されてもよい。以下の方法および賦形剤は単なる例示であり、決して限定的ではない。
有効成分を含有する医薬組成物は、例えば錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、ハードもしくはソフトカプセル、または、シロップもしくはエリキシルなどの経口用途に適した形態であり得る。経口使用を意図した組成物は、医薬組成物の製造のための当技術分野で公知の任意の方法に従って調製され得、そのような組成物は、甘味剤、香味剤、着色剤および保存剤からなる群から選択される1つ以上の剤を含み得、薬学的にエレガントで口当たりが良い調製物を提供する。錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物中に活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、乳糖、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウムのような不活性希釈剤;顆粒化剤および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;デンプン、ゼラチンまたはアラビアゴムなどの結合剤、およびステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルクなどの潤滑剤であり得る。錠剤はコーティングされていなくてもよく、または胃腸管における崩壊および吸収を遅延させ、それにより長期間にわたって持続作用を提供するための公知の技術によってコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延材料を使用し得る。それらはまた、制御放出のための浸透圧治療用錠剤を形成するための米国特許第4,256,108号、第4,166,452号および第4,265,874号に記載された技術によってコーティングされ得る。
経口使用のための製剤はまた、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合されている硬質ゼラチンカプセルとして、または活性成分が水または油媒体、例えばピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油と混合されている軟質ゼラチンカプセルとして、提示され得る。
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性物質を含有する。そのような賦形剤は、懸濁剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガムおよびアラビアゴムであり、分散剤または湿潤剤は、天然リン脂質、例えばレシチン、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、例えばポリオキシエチレンステアレート、または、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または、脂肪酸およびヘキシトール由来の部分エステルとのエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、またはエチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物由来の部分エステルとの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。水性懸濁液はまた、1つ以上の保存剤、例えばエチル、またはn-プロピル、p-ヒドロキシ安息香酸、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、および1つ以上の甘味剤、例えばスクロース、サッカリンまたはアスパルテームを含み得る。
油性懸濁液は、植物油、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油、または流動パラフィンなどの鉱油中に活性成分を懸濁させることによって製剤化され得る。油性懸濁液は、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィンまたはセチルアルコールを含有してもよい。口当たりの良い経口製剤を提供するために、上記のような甘味剤、および香味剤を添加してもよい。これらの組成物は、アスコルビン酸などの抗酸化剤の添加によって保存されてもよい。
水を添加することによって水性懸濁液を調製するために適した分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁化剤および1つ以上の防腐剤との混合物中に活性成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤は、既に上記で言及したものによって例示される。さらなる賦形剤、例えば甘味剤、香味剤および着色剤もまた存在してもよい。
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油性相は、植物油、例えばオリーブ油もしくは落花生油、または鉱油、例えば流動パラフィンまたはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然由来のリン脂質、例えば大豆、レシチン、ならびに脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導されるエステルまたは部分エステル、例えばモノオレイン酸ソルビタン、および前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンモノオレイン酸ソルビタンであり得る。エマルジョンはまた、甘味剤および香味剤を含有してもよい。
シロップ剤およびエリキシル剤は、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースを用いて製剤化し得る。そのような製剤は、粘滑剤、防腐剤および香味剤および着色剤も含み得る。医薬組成物は、滅菌注射用水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、上記の適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、公知の技術に従って製剤化し得る。滅菌した注射用製剤は、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液のような非毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよい。使用し得る許容される基剤および溶媒の中には、水、リンガー溶液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油は、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の不揮発性油を使用し得る。さらに、オレイン酸のような脂肪酸は注射剤の調製に使用される。
化合物は、所望であれば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定化剤および防腐剤などの通常の添加剤を用いて、植物油または他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステルまたはプロピレングリコールのような水性または非水性溶媒中にそれらを溶解、懸濁または乳化することによって注射用製剤に製剤することができる。
化合物は、吸入により投与されるエアロゾル製剤に利用することができる。本発明の化合物は、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などのような加圧された許容可能な噴射剤に製剤することができる。
さらに、化合物は、乳化基剤または水溶性基剤などの様々な基剤と混合することによって坐剤にすることができる。本発明の化合物は、座薬を介して直腸投与することができる。坐剤は、体温で融解するが室温では凝固するココアバター、カーボワックスおよびポリエチレングリコールのような基剤を含むことができる。
本発明の化合物および局所投与で活性なその薬学的に許容される塩は、経皮組成物または経皮送達装置(「パッチ」)として製剤化することができる。そのような組成物には、例えば、バッキング、活性化合物リザーバ、制御膜、ライナおよび接触接着剤が含まれる。そのような経皮パッチは、本発明の化合物を制御された量で連続的または不連続的に注入するために使用し得る。医薬剤の送達のための経皮パッチの構築および使用は、当技術分野で公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、1991年6月11日に発行された米国特許第5,023,252号を参照のこと。そのようなパッチは、薬剤の連続的、脈動的、またはオンデマンド送達のために構築され得る。
任意選択的に、医薬組成物は、緩衝剤、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、防腐剤などの他の薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。これらの成分の各々は当該技術分野において公知である。例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,985,310号を参照のこと。
本発明の製剤に使用するために適した他の成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mace Publishing Company、Philadelphia、Pa.、第17版(1985)に見ることができる。1つの実施形態では、水性シクロデキストリン溶液は、デキストロース、例えば約5%デキストロースをさらに含む。
1日当たり約0.01mg~約140mg/kg体重のオーダーの投与量レベルが、代表的な実施形態において有用であり、あるいは1日当たり約0.5mg~約7g/患者である。例えば、炎症は、1日当たり体重1キログラム当たり約0.01~50mgの化合物、または一日当たり患者当たり約0.5mg~約3.5gの化合物の投与によって効果的に治療され得る。当業者は、用量レベルが、特定の化合物、症状の重篤度、および副作用に対する対象の感受性の関数として様々であり得ることを容易に理解するであろう。所与の化合物の投与量は、当業者によって様々な手段によって容易に決定可能である。
単一の剤形を製造するために担体材料と組み合わせ得る活性成分の量は、治療するホストおよび特定の投与様式に依存して様々であろう。例えば、ヒトの経口投与を意図した製剤は、組成物全体の約5~約95%の範囲で様々であり得る、適切でかつ都合がよい量の担体物質を用いて化合物化された、0.5mg~5gの活性剤を含み得る。投与単位形態は、一般に、約1mg~約500mgの間、典型的には25mg、50mg、100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、800mgまたは1000mgの活性成分を含むであろう。
しかしながら、任意の特定の患者の特定の用量レベルは、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、併用薬物および治療を受ける特定の疾患の重症度などの様々な要因に依存することが理解されるであろう。
したがって、シロップ、エリキシル、および懸濁液のような経口または直腸投与のための単位剤形が提供され得、各服用量単位、例えば茶さじ、大さじなどの、錠剤または座薬は、1つまたは複数の阻害剤を含む所定量の化合物を含む。同様に、注射または静脈内投与用の単位剤形は、滅菌水、生理食塩水または他の薬学的に許容される担体中の溶液として組成物中に阻害剤(複数可)を含んでもよい。本明細書で使用する用語「単位剤形」は、ヒトおよび動物対象の単位用量として適切な物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容される希釈剤、担体または基剤とともに所望の効果を生じるために十分な量で計算された本発明の所定量の化合物を含む。本発明の新規単位剤形のための仕様は、使用される特定のペプチド模倣化合物、達成すべき効果、およびホスト中の各化合物に関連する薬力学に依存する。
キットおよびシステム
また、上述のように記載されたもののような、方法の実施形態の実施で使用されるキットおよびシステムも提供される。本明細書で使用される「システム」という用語は、本方法を実施する目的で一緒にされた、単一の組成物または異なる組成物中に存在する2つ以上の異なる活性物質の集まりを指す。「キット」という用語は、パッケージングされた活性剤(複数可)を指す。例えば、本方法を実施するためのキットおよびシステムは、1つまたは複数の医薬製剤を含み得る。そのようなものとして、特定の実施形態では、キットは、1つ以上の単位用量として存在する単一の医薬組成物を含み得、組成物は、1つ以上の発現/活性阻害剤化合物を含み得る。さらに他の実施形態において、キットは、それぞれ異なる活性化合物を含有する2つ以上の別個の医薬組成物を含み得る。
また、例えば上記のような、本発明の分析における使用を見出すキットおよびシステムも関心対象である。そのようなキットおよびシステムは、分析の1つまたは複数の成分、例えば、融合タンパク質をコードするベクター、酵素基質、緩衝液などを含み得る。
上記の成分に加えて、本キットは、本方法を実施するための説明書をさらに含み得る。これらの説明書は、様々な形態で本キットに存在し得、その1つまたは複数がキット内に存在し得る。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、例えば、キットのパッケージング内、パッケージインサート内などで情報が印刷された紙片(複数可)などの、適切な媒体または基材上の印刷された情報としてである。さらに別の手段は、情報が記録されたコンピュータ可読媒体、例えばディスケット、CD、携帯用フラッシュドライブなどである。存在し得るさらに別の手段は、除去されたサイトでの情報にインターネットを介してアクセスするために使用され得るウェブサイトアドレスである。任意の便利な手段がキットに存在し得る。
以下の実施例は、例示のために提供されるものであって、本発明を限定するものではない。
実験
老齢野生型(C57Bl/6J)マウスの腹腔内注射により、組換えTIMP2タンパク質を50μg/kgの濃度で1週間にわたって4回送達した。処置されたマウスの脳は、活性ニューロン、すなわち海馬の歯状回部分領域において前初期遺伝子c-Fosを発現するニューロンのレベル上昇を明らかにした。TIMP2の8回(長期)腹腔内注射(50μg/kg)を、バーンズ迷路、ネスティングおよび恐怖条件付け評価の前に、老齢野生型マウスに1日おきに与えた。行動試験により、TIMP2処置マウスの3つのタスク全てにおいて有意に改善された効能が明らかになった。TIMP2の7回(長期)腹腔内注射(50μg/kg)を、老齢野生型マウスに1日おきに単独で、または別の認知促進因子、CSF2と組み合わせて与えた。TIMP2およびTIMP2+CSF2マウスの脳は、歯状回におけるc-Fos+(活性)ニューロンのレベルの有意な上昇を示した。
結果は、TIMP2が、老齢マウスの海馬におけるc-Fos発現細胞の数を上昇させるために十分であったことを実証した。長い時間をかけて全身投与すると、TIMP2はc-Fos発現細胞の数を増やし、いくつかの行動パラダイムで学習と記憶との障害を逆転させ、ネスティング能力の障害を回復させるために十分である。上記の結果は、TIMP2が、アルツハイマー病などの、老化関連認知障害またはシナプス機能を低下させる神経変性疾患に罹患している患者に認知(学習および記憶)利益を提供するために適していることを実証する。我々の発見は、シナプス可塑性における障害および老齢関連の学習および記憶障害を逆転させるために使用され得る、血液中の年齢と共に低下するタンパク質(TIMP2)の最初の記述を表す。TIMP2は、約2週間しか全身投与されない場合、脳への直接的な送達を必要とせずに、可塑性ならびに記憶および学習機能を高めることができる。
老齢のマウスにおける全身性TIMP2処置は、学習および記憶の細胞相関である長期増強を堅牢に改善する。組換えTIMP2(腹腔内、50μg/kg)で処置した老齢野生型マウスから単離した脳スライスは、対照(基剤)と比較して長期増強(LTP)の向上を示す。図1Aに示されるのは、海馬の穿孔経路における刺激後の歯状回内の集合スパイク振幅(PSA)である。図1Aに示すPSAの維持相の定量化を図1Bに示す。(平均+/-SEM;スチューデントt検定;P<0.05。)
全身性TIMP2は、新規な位置認識タスクで評価されるように、海馬依存性空間記憶に必要である。若年野生型マウスのTIMP2レベルは、訓練から24時間後の物体位置変位識別の評価に先立って、抗体媒介中和アプローチ(60μg/kg)を用いて約1ヶ月間、標的化された。(平均+/-SEM;2-way ANOVA、続いてTukeyの事後検定;****P<0.0001)。結果を図2に示す。
現在のところ、シナプス可塑性、学習/記憶、および正常な脳老化または神経変性に関連する他の認知能力の有意な低下に対する有効な治療はない。我々は、若返り活性が強い若年由来タンパク質TIMP2を同定した。TIMP2は、比較的短期間の治療のために全身投与された場合、脳への直接的な送達を必要とせずに、可塑性ならびに記憶および学習機能を高めることができる。TIMP2は増殖因子ではなく、また標準的な免疫シグナル伝達分子でもないが、他の臓器系に害を及ぼし得る腫瘍形成性または炎症誘発性の分子を供給することなく脳老化プロセスを標的とする能力をTIMP2がもたらすというさらなる利点が強調される。さらに、認知機能障害を制限するために自然に産生され、血液中に見られるタンパク質を利用することは、従来の小分子薬物設計と比較して有害な副作用を引き起こす可能性は低い。
CNS老化の年齢関連転帰を治療する有効な治療剤は存在しない。我々のアプローチは、身体が通常、作り出すタンパク質であるTIMP2を用いて、老齢の患者や別様に認知障害を患っている患者の簡単な全身治療を可能にする。
添付の請求項にもかかわらず、本明細書に記載される開示は、以下の付記によっても定義される。
1.老化関連症状についての成体哺乳動物の治療方法であって、哺乳動物におけるTIMP活性を、老化関連症状について成体哺乳動物を治療するために十分な程度に増強することを含む方法。
2.TIMP活性が、TIMP1、TIMP2、TIMP3またはTIMP4活性である、付記1に記載の方法。
3.TIMP活性がTIMP2活性である、付記2に記載の方法。
4.全身性TIMP活性を増強することを含む、付記1~3のいずれか一つに記載の方法。
5.哺乳動物におけるTIMP活性剤の全身レベルを増加させることを含む、付記1~4のいずれか一つに記載の方法。
6.TIMP活性剤の全身レベルが、TIMP活性剤を哺乳動物に投与することによって増加する、付記5に記載の方法。
7.TIMP活性剤がTIMPポリペプチドまたはその模倣物である、付記6に記載の方法。
8.TIMP活性剤がTIMPポリペプチドである、付記7に記載の方法。
9.TIMPポリペプチドが、配列ID番号1~4のいずれかSEQ ID NOSと少なくとも60%同一である配列を有する、付記8に記載の方法。
10.内因性TIMPコード配列の発現を増強することを含む、付記1~5のいずれか一つに記載の方法。
11.方法が対象においてTIMPを増強することを含む、付記1~4のいずれか一つに記載の方法。
12.哺乳動物が霊長類である、付記1~11のいずれか一つに記載の方法。
13.霊長類がヒトである、付記12に記載の方法。
14.成体哺乳動物が老齢哺乳動物である、付記1~13のいずれか一つに記載の方法。
15.老齢哺乳動物が60歳以上のヒトである、付記14に記載の方法。
16. 老化関連症状が認知障害を含む、付記1~15のいずれか一つに記載の方法。
17. 成体哺乳動物が老化関連疾患症状に罹患している、付記1~16のいずれか一つに記載の方法。
18. 老化関連疾患症状が認知低下疾患症状である、付記1~17のいずれか一つに記載の方法。
上記は、単に本発明の原理を説明するものである。当業者であれば、本明細書に明示的に記載または図示していないが、本発明の原理を具現化し、その精神および範囲内に含まれる様々な構成を考案できることが理解されよう。さらに、本明細書に記載されているすべての例および条件付き言語は、主として、本発明の原理および発明者が技術を進歩させるために寄与する概念を読者が理解する助けとなるよう意図されており、そのように具体的に列挙された例および条件に限定されるものではないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様および実施形態、ならびにその具体例を記載する本明細書におけるすべての記述は、その構造的および機能的均等物の両方を包含するように意図されている。さらに、そのような均等物は、現在知られている均等物、および、将来開発される均等物、すなわち、構造に関わらず同じ機能を果たす任意の開発された要素、の両方を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に示し説明した例示的な実施形態に限定されるものではないことが意図される。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所により授与された契約AG045034に基づく政府の支援によってなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
関連出願との相互参照
35U.S.C.§119(e)に従って、本願は、2015年6月15日に出願された米国仮特許出願第62/175,981号の出願日の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。

Claims (15)

  1. 老化関連症状についての成体哺乳動物の治療方法であって、
    前記成体哺乳動物におけるTIMP活性を、老化関連症状について前記成体哺乳動物を治療するために十分な程度に増強することを含む、方法。
  2. 前記TIMP活性が、TIMP1、TIMP2、TIMP3またはTIMP4活性である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記TIMP活性がTIMP2活性である、請求項2に記載の方法。
  4. 全身性TIMP活性を増強することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記成体哺乳動物におけるTIMP活性剤の全身レベルを増加させることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. TIMP活性剤の全身レベルが、TIMP活性剤を成体哺乳動物に投与することによって増加する、請求項5に記載の方法。
  7. 前記TIMP活性剤がTIMPポリペプチドまたはその模倣物である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記TIMP活性剤がTIMPポリペプチドである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記TIMPポリペプチドが、配列ID番号1~4のいずれかSEQ ID NOSと少なくとも60%同一である配列を有する、請求項8に記載の方法。
  10. 内因性TIMPコード配列の発現を増強することを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記成体哺乳動物が霊長類である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記成体哺乳動物が老齢哺乳動物である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記霊長類がヒトである、請求項11に記載の方法。
  14. 前記老化関連症状が認知障害または認知低下疾患症状を含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 前記成体哺乳動物が老化関連疾患症状に罹患している、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
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