JP2023079305A - 被検者由来抗体の分析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィにより、唾液中に含まれる抗体を精度よく分析する方法を提供すること。【解決手段】 唾液をスポンジ体を用いて採取することで、前記課題を解決する。【選択図】 図2
Description
本発明は、被検者由来抗体を侵襲性低く分析する方法に関する。特に本発明は、侵襲性の低い被検者由来の唾液を用いて、当該被験者由来の抗体を精度よく分析する方法に関する。
リウマチ等の疾患を有した被検者由来の血液試料中に含まれる抗体と、健常人由来の血液試料中に含まれる抗体とでは、当該抗体に付加される糖鎖の構造が異なることが知られている(非特許文献1および非特許文献2)。このことから被検者由来血液試料中に含まれる抗体に付加される糖鎖構造の違いを検出することで、当該被験者における疾患の有無、疾患の発症リスクや、疾患の進行度合いなどが検出できることが示唆される。
抗体に付加された糖鎖構造を分析する方法として、従前より糖鎖の切り出しを含むLC-MS分析(特許文献1および特許文献2)が実施されている。しかしながら、LC-MS分析では非常に煩雑な操作を伴い、多大な時間を要する。より簡便な前記糖鎖構造の分析方法としては、アフィニティクロマトグラフィによる分析が挙げられる。一例として特許文献3では、抗体のFc領域に特異的に結合可能な、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィで、被検者由来試料中に含まれる抗体(ガンマグロブリン)を、糖鎖構造の違いに基づき分離し、得られた分離パターンにより当該被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、及び/又は加齢の進行度合いを検出する方法が報告されている。
特許文献3では、被検者由来試料として主に血液試料を用いている。しかしながら、血液試料の採取には穿刺が必要があり、侵襲を伴うことから、唾液など、より侵襲性の低い試料から分析できるとよい。しかしながら、唾液には夾雑物が多く含まれており、血液試料と同精度の分析はこれまで行なえなかった。
Science、320、373(2008)
Nature Communication、7、11205(2016)
本発明の課題は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムを用いたアフィニティクロマトグラフィにより、唾液中に含まれる抗体を精度よく分析する方法を提供することにある。
本発明者は上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、被験者の唾液由来試料中に含まれるガンマグロブリン(抗体)が有する糖鎖構造の違いを精度よく測定できる方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通り例示できる。
[1]Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに、被検者由来抗体含有試料を添加し、当該抗体を当該担体に吸着させる工程と、前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出し、抗体の分離パターンを得る工程とを含む、前記抗体の分析方法であって、抗体含有試料が唾液試料であり、当該唾液試料の採取をスポンジ体を用いて行なう、前記方法。
[2]Fc結合性タンパク質がヒトFcγレセプターである、[1]に記載の方法。
[3]ヒトFcγレセプターが、以下の(i)から(iii)のいずれかから選択されるポリペプチドである、[2]に記載の方法:
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換し、さらに当該176番目以外の1もしくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸配列において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換したアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、ただし前記置換が残存し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換し、さらに当該176番目以外の1もしくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸配列において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換したアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、ただし前記置換が残存し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
[4][1]から[3]のいずれかに記載の方法で得た分離パターンの特徴を指標として、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する方法。
[5]分離パターンの特徴が、当該パターンに存在するピークの面積および/もしくは高さ、または当該ピークの面積%および/もしくは高さ%である、[4]に記載の方法。
本発明は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに被検者由来唾液試料を添加し当該試料中に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程と、前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出し抗体の分離パターンを得る工程とを含む、前記抗体の分析方法において、前記唾液試料の採取をスポンジ体を用いて行なうことを特徴としており、夾雑物を除去するための前処理を要することなく、被検者由来唾液試料の抗体分析を、被検者由来血液試料の抗体分析と同精度で行なえる。被検者由来の抗体(ガンマグロブリン)は疾患と密接に関連していることから、本発明の抗体分析法により、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを、被検者の負担を抑えつつ、精度よく行なえる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、唾液試料中に含まれるガンマグロブリン(以下、「抗体」とも記載)をFc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体に吸着させた後、前記担体に吸着したガンマグロブリンを溶出液を用いて溶出し、ガンマグロブリンの分離パターンを得ることで、唾液試料中に含まれるガンマグロブリンを分析する方法を提供する。
本発明の方法は、具体的には、以下の工程<1>から<3>を含む、被検者の唾液由来試料に含まれるガンマグロブリン(抗体)の分析方法であってよい:
<1>被検者からスポンジ体を用いて唾液試料を採取する工程;
<2>採取した唾液試料を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに添加し、当該試料に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程;
<3>前記カラムに平衡化液を添加し、前記カラムを平衡化する工程;
<4>前記カラムに溶出液を添加し、前記担体に吸着した抗体を溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程。
<1>被検者からスポンジ体を用いて唾液試料を採取する工程;
<2>採取した唾液試料を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに添加し、当該試料に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程;
<3>前記カラムに平衡化液を添加し、前記カラムを平衡化する工程;
<4>前記カラムに溶出液を添加し、前記担体に吸着した抗体を溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程。
さらに、前記分離パターンの特徴を指標として、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する方法を提供してもよい。
上記より、本発明の方法は前述した工程<1>から<4>に加えて、以下の工程<5>から<6>をさらに含む、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを予測する方法であってもよい:
<5>前記分離パターンの特徴を求める工程;
<6>前記特徴を指標として、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する工程。
<5>前記分離パターンの特徴を求める工程;
<6>前記特徴を指標として、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する工程。
以下、工程<1>を「試料採取工程」、工程<2>を「吸着工程」、工程<3>を「平衡化工程」、工程<4>を「溶出工程」、工程<5>を「分析工程」、工程<6>を「検出工程」ともいう。
<1>試料採取工程
本発明において「被検者」とは、単に測定の対象とするヒト個体、またはリスクの検出の対象とするヒト個体を意味する。被検者は、男性であってもよく、女性であってもよい。被検者は、子供、若者、中年、老人等、いずれの年代の個体であってもよい。
本発明において「被検者」とは、単に測定の対象とするヒト個体、またはリスクの検出の対象とするヒト個体を意味する。被検者は、男性であってもよく、女性であってもよい。被検者は、子供、若者、中年、老人等、いずれの年代の個体であってもよい。
本発明において、「唾液試料」とは、被検者から得られた抗体を含む、または含み得る唾液由来の試料を意味する。唾液試料の例としては、唾液、歯肉溝滲出液等の唾液由来成分を含み得る試料、当該試料から分離された抗体、および当該試料に含む抗体を含み得る試料が挙げられる。
本発明は被検者から唾液試料を採取する際、スポンジ体を用いて採取することを特徴としている。口に含ませることで唾液試料を保持可能なスポンジ体を用いて採取することで、当該試料由来のガンマグロブリン(抗体)を精度よく分析できる。スポンジ体の素材としては、スポンジ状に成形可能な素材であれば特に限定されない。素材の一例として、木綿(コットン)、麻などの植物由来繊維でもよく、絹(シルク)、山羊(カシミヤ)、羊毛(ウール)などの動物由来繊維でもよく、ナイロン、ポリエステル、ポリアミドなどの合成繊維でもよく、ビスコースレーヨン、キュプラ(銅アンモニアレーヨン)などのセルロース再生繊維を含む化学繊維でもよく、ポリウレタン、エチレン-プロピレン共重合体、メラミンなどの合成樹脂でもよい。
前述した方法で採取した唾液試料は、そのまま、または適宜前処理に供してから、後述する<2>吸着工程に用いてよい。前処理は、例えば、遠心分離やカラムによる精製、濃縮などの定法により実施してよい。また唾液試料中のガンマグロブリン(抗体)を精製してから、<2>吸着工程に用いてもよい。唾液試料は、抗体を含む溶液の形態で吸着工程に用いられる。すなわち、唾液試料は、適宜、抗体を含む溶液の形態に調製して<2>吸着工程に用いてよい。例えば、前記例示したような唾液試料またはその前処理物を、適宜、液体媒体で溶解、懸濁、分散、または溶媒交換等した後、抗体を含む溶液として<2>吸着工程に用いてよい。そのような液体媒体については、例えば、後述する<3>平衡化工程で用いる平衡化液についての記載を準用できる。液体媒体は、平衡化液と同一であってもよく、同一でなくてもよい。前記前処理を行なった唾液試料や前記抗体を含む溶液を含めて、本明細書では「唾液試料」という。
<2>吸着工程
吸着工程は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに、<1>試料採取工程で採取した被検者由来唾液試料を添加し、当該試料に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程である。
吸着工程は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに、<1>試料採取工程で採取した被検者由来唾液試料を添加し、当該試料に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程である。
本発明において「抗体(ガンマグロブリン)」とは、Fc領域を含む分子を意味する。抗体は、Fc領域からなるものであってもよく、Fc領域に加えて他の領域を含んでいてもよい。Fc領域としては、免疫グロブリンのFc領域が挙げられる。抗体は、糖鎖が付加されていてもよい。抗体は、例えば、少なくともそのFc領域に糖鎖が付加されていてよい。抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体としては、免疫グロブリンが挙げられる。免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEが挙げられる。免疫グロブリンとしては、特に、IgGが挙げられる。IgGとしては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4が挙げられる。抗体に付加される糖鎖のうち、特に抗体の分離に寄与し得る糖鎖としては、G0、G0F、G1、G0F+GN、G1Fa、G1Fb、G1F+GN、G2、G2F、G1F+SA、G2F+SA、G2F+2SA、G2F+GN、G2+SA、G2+2SA、S1、S2、S3などが挙げられる(GNはバイセクティングGlcNAc(N-アセチルグルコサミン)の、Fはフコースの、SAはシアル酸の、それぞれ略)。
ヒト由来の抗体は、通常、シアル酸(SA)を有する抗体を含む。ヒト由来の抗体におけるシアル酸を有する抗体の含有量は、例えば、抗体の総含有量に対して、重量比で、0.1から20%程度であり得る。ヒト由来の抗体においては、シアル酸が糖鎖末端に2つ結合することが多い。さらに、ヒト由来の抗体は、通常、バイセクティングGlcNAc(GN)を、抗体の総含有量に対して、重量比で、1から20%程度含み得る。一方、ハムスターおよびマウス由来の抗体には、通常、バイセクティングGlcNAcは存在せず、糖鎖末端のシアル酸結合数は0または1個である。
吸着工程に供される抗体は、複数種類の抗体分子を含む混合物であってよい。吸着工程に供される抗体は、具体的には、糖鎖構造の異なる複数種類の抗体分子を含む混合物であってよい。吸着工程に供される抗体は、より具体的には、Fc領域に付加された糖鎖構造の異なる複数種類の抗体分子を含む混合物であってよい。
本発明において「Fc結合性タンパク質」とは、試料中に含まれる抗体のFc領域に対する結合能を有し、かつ抗体の糖鎖構造(例えば、Fc領域の糖鎖構造)の違いを認識できるポリペプチドであれば、特に制限はない。例えば、前記抗体がヒト由来の抗体である場合、Fc結合性タンパク質として、ヒトFc結合性タンパク質が挙げられる。ヒトFc結合性タンパク質の好ましい例として、ヒトFcレセプターが挙げられる。ヒトFcレセプターには、ヒト免疫グロブリンG(IgG)に対するレセプターであるヒトFcγレセプター、ヒト免疫グロブリンA(IgA)に対するレセプターであるヒトFcαレセプター、ヒト免疫グロブリンD(IgD)に対するレセプターであるヒトFcδレセプター、ヒト免疫グロブリンE(IgE)に対するレセプターであるヒトFcεレセプター等が挙げられるが、いずれのレセプターも本発明におけるヒトFc結合性タンパク質として利用可能である。なお本明細書において「ヒト由来の抗体」とは、少なくともヒト由来のFc領域を有したガンマグロブリン(抗体)であればよく、ヒト抗体でもよく、ヒト化抗体でもよく、ヒトとヒト以外の動物とのキメラ抗体であってもよい。
ヒトFcγレセプターの具体例として、ヒトFcγRI(CD64)、ヒトFcγRIIa(CD32a)、ヒトFcγRIIb(CD32b)、ヒトFcγRIIc(CD32c)、ヒトFcγRIIIa(CD16a)またはヒトFcγRIIIb(CD16b)の細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチド、ならびに当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入および/または付加したポリペプチドが挙げられる。中でも、ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチドや、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入おび/または付加したポリペプチドが、本発明でヒトFc結合性タンパク質として用いるヒトFcγレセプターとして好ましい。
ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチドや、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入および/または付加したポリペプチドの具体例として、以下の(i)から(iii)に記載のポリペプチドが挙げられる。
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換し、さらに当該176番目以外の1もしくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸配列において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換したアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、ただし前記置換が残存し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換し、さらに当該176番目以外の1もしくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸配列において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換したアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、ただし前記置換が残存し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
前記(ii)に記載のポリペプチドの一例として、
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち24番目のグリシンから199番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド、
特開2015-086216号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2016-169197号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2017-118871号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2018-197224号公報で開示のFc結合性タンパク質、
WO2019/083048号で開示のFc結合性タンパク質、
があげられる。
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち24番目のグリシンから199番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド、
特開2015-086216号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2016-169197号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2017-118871号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2018-197224号公報で開示のFc結合性タンパク質、
WO2019/083048号で開示のFc結合性タンパク質、
があげられる。
また前記(ii)に記載の置換、欠失、挿入および付加の例として、前述した公報(特開2015-086216号公報、特開2016-169197号公報、特開2017-118871号公報、特開2018-197224号公報およびWO2019/083048号)で開示しているアミノ酸残基の置換があげられる。前記(ii)における「1もしくは数個」とは、例えば、1個以上50個以下、1個以上40個以下、1個以上30個以下、1個以上20個以下、1個以上10個以下、のいずれかであってよい。
「1もしくは数個」のアミノ酸残基の置換は、例えば、抗体結合活性を有する限り、前述した公報で開示のアミノ酸残基の置換以外の位置に生じてよい。
「1もしくは数個」のアミノ酸残基の置換は、例えば、抗体結合活性を有する限り、前述した公報で開示のアミノ酸残基の置換以外の位置に生じてよい。
前記(iii)において「相同性」とは、類似性(similarity)または同一性(identity)を意味し、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)やFASTA等のアラインメント(alignment)プログラムを用いて決定できる。例えば、「アミノ酸配列の同一性」とは、blastpを用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味してよく、具体的には、blastpをデフォルトのパラメータで用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味してもよい。相同性は70%以上であればよく、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の相同性を有していてもよい。
また、本発明において、各アミノ酸残基の「何番目」とは、各配列番号に記載のアミノ酸配列において最初のメチオニンを1番目とする順番を意味する。したがって、本発明にかかる「176番目」とは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の176番目を意味する。さらに、「配列番号1の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基」とは、前記70%以上の相同性を有するアミノ酸配列におけるアミノ酸残基であって、当該アミノ酸配列と配列番号1の17番目から192番目までのアミノ酸残基からなる配列とのアラインメントにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列における176番目のバリンと同一の位置に配列されるアミノ酸残基を意味する。
Fc結合性タンパク質は、例えば、Fc結合性タンパク質をコードする遺伝子を有する宿主に同遺伝子を発現させることで製造できる。Fc結合性タンパク質をコードする遺伝子は、例えば、クローニング、化学合成、変異導入、またはそれらの組み合わせにより取得できる。宿主は、Fc結合性タンパク質を発現できるものであれば、特に制限されない。宿主としては、動物細胞、昆虫細胞、微生物などが挙げられる。動物細胞としては、COS細胞、CHO細胞、Hela細胞、NIH3T3細胞、HEK293細胞などが挙げられる。昆虫細胞としては、Sf9細胞、BTI-TN-5B1-4細胞などが挙げられる。微生物としては、酵母や細菌が挙げられる。酵母としては、Saccharomyces cerevisiae等のSaccharomyces属酵母、Pichia Pastoris等のPichia属酵母、Schizosaccharomyces pombe等のSchizosaccharomyces属酵母などが挙げられる。細菌としては、Escherichia coli等のEscherichia属細菌などが挙げられる。Escherichia coliとしては、W3110株、JM109株、BL21(DE3)株などが挙げられる。また、Fc結合性タンパク質は、例えば、Fc結合性タンパク質をコードする遺伝子を無細胞タンパク質合成系で発現させることでも製造できる。
本発明において「不溶性担体」とは、本発明においてカラムに通液される液体(例えば、平衡化液や溶出液等の、抗体の吸着または溶出に用いる液体)に対して不溶性である担体を意味する。不溶性担体は、Fc結合性タンパク質を共有結合で固定化するための官能基(例えばヒドロキシ基)を備えていてよい。不溶性担体としては、ジルコニア、ゼオライト、シリカ、皮膜シリカ等の無機系物質に由来した担体、セルロース、アガロース、デキストラン等の天然有機高分子物質に由来した担体、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリレート、ビニルポリマー等の合成有機高分子物質に由来した担体などが挙げられる。
Fc結合性タンパク質は、不溶性担体に固定化されている。前記担体へのFc結合性タンパク質の固定化は、例えば、不溶性担体が有する、Fc結合性タンパク質を共有結合で固定化するための官能基(例えばヒドロキシ基)を利用して、共有結合で不溶性担体に固定化できる。例えば、不溶性担体が表面にヒドロキシ基を有する場合、活性化剤を用いて当該ヒドロキシ基からFc結合性タンパク質と共有結合可能な活性化基を形成し、当該活性化基とFc結合性タンパク質とを共有結合させることで固定化できる。ヒドロキシ基に対する活性化剤の具体例として、エピクロロヒドリン(活性化基としてエポキシ基を形成)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(活性化基としてエポキシ基を形成)、トレシルクロリド(活性化基としてトレシル基を形成)、ビニルブロミド(活性化基としてビニル基を形成)が挙げられる。また、ヒドロキシ基をアミノ基やカルボキシル基等に変換した後、活性化剤を作用させて活性化することもできる。アミノ基やカルボキシル基等に対する活性化剤の具体例として、3-マレイミドプロピオン酸 N-スクシンイミジル(活性化基としてマレイミド基を形成)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(活性化基としてカルボニルイミダゾール基を形成)、ハロゲン化酢酸(活性化基としてハロアセチル基を形成)などが挙げられる。
Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体(以下、「抗体分離剤」とも記載)を充填したカラム(以下、「抗体分離剤カラム」とも記載)に、<1>試料採取工程で被検者から採取した唾液試料を添加すると、当該試料に含まれる抗体が抗体分離剤に吸着される。唾液試料は、例えば、ポンプ等の送液手段を用いてカラムに添加できる。なお本明細書では、液体をカラムに添加することを、「液体をカラムに送液する」ともいう。唾液試料の添加量、液相の種類、液相の送液速度、カラム温度等の吸着工程の実施条件は、前記試料に含まれる抗体が抗体分離剤に吸着できる限り、特に制限されない。吸着工程の実施条件は、抗体の種類、Fc結合性タンパク質の種類、不溶性担体の種類、カラムのスケール等の諸条件に応じて適宜設定できる。液相としては、後述する平衡化液が挙げられる。送液速度は、例えば、カラムの内径が4.6mmの場合に、0.1mL/分以上2.0mL/分以下、0.2mL/分以上1.5mL/分以下、または0.4mL/分以上1.2mL/分以下であってよい。送液速度は、例えば、カラムの内径の2乗に比例するように設定してよい。カラム温度は、例えば、0℃以上から50℃以下であってよい。
<3>平衡化工程
平衡化工程は、<2>吸着工程で抗体分離剤に吸着した抗体を平衡化液(同様の意味で「平衡化緩衝液」とも記載)を用いて、抗体分離剤カラムを平衡化する工程である。抗体を含む唾液試料を前記カラムに添加する前に、平衡化液を用いて平衡化してよい。すなわち、本発明は、<2>吸着工程の前に、前記カラムに平衡化液を添加し平衡化する工程を含んでいてよい。
平衡化工程は、<2>吸着工程で抗体分離剤に吸着した抗体を平衡化液(同様の意味で「平衡化緩衝液」とも記載)を用いて、抗体分離剤カラムを平衡化する工程である。抗体を含む唾液試料を前記カラムに添加する前に、平衡化液を用いて平衡化してよい。すなわち、本発明は、<2>吸着工程の前に、前記カラムに平衡化液を添加し平衡化する工程を含んでいてよい。
平衡化することで、不溶性担体に固定化されたFc結合性タンパク質とは結合しない、または<2>吸着工程では抗体分離剤に吸着できたが平衡化緩衝液では吸着できない抗体を抗体分離剤カラムから除去できる。平衡化工程で抗体分離剤に吸着できない(脱離した)抗体を含む画分を未吸着画分といい、当該画分は例えば、唾液試料の前記カラムへの添加後に検出されるピークが平衡化工程中に最小値を取るまでの領域の画分に相当する。なお前記未吸着画分と溶出液添加後に検出されるピーク領域とが分離時間として離れている方が分離精度が高くなり好ましい。特に未吸着画分と溶出液添加後に検出されるピーク領域との間の検出値が一定値を取っていると、平衡化工程により未吸着画分が前記カラムから十分に除かれたことがわかる点で好ましい。当該「一定値」は、同一の値以外にも検出値が一定の傾きをもって変化する状態をも含める。
平衡化液(平衡化緩衝液)としては、水性緩衝液が挙げられる。平衡化液はpH5.0より大きくpH9.0未満の弱酸性から弱アルカリ性緩衝液であり、好ましくはpH5.2以上pH8.0以下の緩衝液であり、さらに好ましくはpH5.4以上pH7.5以下の緩衝液である。緩衝液の成分は、緩衝液のpH等の諸条件に応じて適宜選択できる。緩衝液の成分としては、リン酸、酢酸、ギ酸、MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)、MOPS(3-Morpholinopropanesulfonic acid)、クエン酸、コハク酸、グリシン、ピペラジンなどが挙げられる。また、緩衝液にさらに塩を加えてもよく、当該塩も塩化ナトリウムや塩化カリウム等の同業者が容易に想定し得る塩であれば特に限定されない。
<4>溶出工程
溶出工程は、<3>平衡化工程で平衡化した抗体分離剤カラムに、溶出液(以下、「溶出緩衝液」とも記載)を添加し、前記分離剤に吸着した抗体を溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程である。
溶出工程は、<3>平衡化工程で平衡化した抗体分離剤カラムに、溶出液(以下、「溶出緩衝液」とも記載)を添加し、前記分離剤に吸着した抗体を溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程である。
すなわち、前記カラムに溶出液を添加することにより、抗体分離剤に吸着した抗体を溶出できる。溶出液の種類、溶出液の送液形式、液相の送液速度、カラム温度等の溶出工程の実施条件は、所望の態様で抗体が分離される限り、例えば、所望の分離パターンが得られる限り、特に制限されない。溶出工程の実施条件は、抗体の種類、Fc結合性タンパク質の種類、不溶性担体の種類、カラムのスケール等の諸条件に応じて適宜設定できる。溶出液としては、抗体とFc結合性タンパク質との親和性を弱める溶液を利用できる。溶出液としては、溶出前の液相(例えば、平衡化液)よりもpHが低い水性緩衝液が挙げられる。溶出液として、具体的には、pH2.5以上4.5以下の酸性緩衝液が挙げられる。例えば、溶出前の液相(例えば、平衡化液)がpH5.0以上8.0以下の弱酸性から弱アルカリ性緩衝液である場合、溶出液がpH2.5以上4.5以下の酸性緩衝液であってよい。緩衝液の成分は、緩衝液のpH等の諸条件に応じて適宜選択できる。緩衝液の成分としては、リン酸、酢酸、ギ酸、MES、MOPS、クエン酸、コハク酸、グリシン、ピペラジンなどが挙げられる。溶出液の送液形式は、例えば、グラジエント(gradient)であってもよく、イソクラティック(isocratic)であってもよい。溶出液の送液形式は、特に、グラジエントであってよい。すなわち、溶出は、特に、液相中の溶出液の比率を増大させることにより実施されてよい。グラジエントは、例えば、リニアグラジエントであってもよく、ステップワイズ(stepwise)グラジエントであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。グラジエントは、具体的には、例えば、10分以上60分以下、15分以上から50分以下、または20分以上40分以下で、液相中の溶出液の比率が0%(v/v)から100%(v/v)に増大するよう、設定されてよい。送液速度は、例えば、カラムの内径が4.6mmの場合、0.1mL/分以上2.0mL/分以下、0.2mL/分以上1.5mL/分以下、または0.4mL/分以上1.2mL/分以下であってよい。送液速度は、例えば、カラムの内径の2乗に比例するように設定してよい。カラム温度は、例えば、0℃以上50℃以下であってよい。
溶出工程により、分離された抗体が得られてよい。分離された抗体は、例えば、同抗体を含む溶出画分として得られてよい。すなわち、分離された抗体を含む溶出画分を分取することにより、分離された抗体が得られる。溶出画分は、例えば、常法により分取できる。溶出画分は、具体的には、例えば、オートサンプラー等の自動フラクションコレクターで分取できる。さらに、分離された抗体を溶出画分から回収してもよい。分離された抗体は、例えば、常法により溶出画分から回収できる。分離された抗体は、具体的には、例えば、タンパク質の分離精製に用いられる公知の方法により溶出画分から回収できる。
抗体の分離パターンは、検出器により抗体を検出することにより得られる。検出器としては、紫外可視検出器や質量検出器などが挙げられる。抗体の分離パターンとしては、抗体の溶出時のクロマトグラムが挙げられる。
<5>分析工程
分析工程は、<4>溶出工程で取得した抗体の分離パターンに基づき、被検者由来唾液試料中に含まれる抗体(以降、「被検抗体」とも記載)を分析する工程である。被検抗体の分析としては、被検抗体の分離パターンの特徴を取得することが挙げられる。分析工程では、具体的には、例えば、被検抗体の分離パターンを特定の溶出時間で分割し、当該分割された領域の特徴を取得してもよい。分離パターンの特徴の取得にあたっては、標準抗体の分離パターンを併せて参照してもよい。
分析工程は、<4>溶出工程で取得した抗体の分離パターンに基づき、被検者由来唾液試料中に含まれる抗体(以降、「被検抗体」とも記載)を分析する工程である。被検抗体の分析としては、被検抗体の分離パターンの特徴を取得することが挙げられる。分析工程では、具体的には、例えば、被検抗体の分離パターンを特定の溶出時間で分割し、当該分割された領域の特徴を取得してもよい。分離パターンの特徴の取得にあたっては、標準抗体の分離パターンを併せて参照してもよい。
前記特定の溶出時間(以下、「分割時間」とも記載)は、被検抗体の分離パターン中の特定の溶出時間としてよい。また、被検抗体の分離パターンが不明瞭な場合には、分離パターンが明瞭な標準抗体の分離パターンに存在する特徴点での溶出時間、または当該溶出時間に任意の値を加減した時間を分割時間としてよい。また、被検抗体の測定毎に前記分割時間を定めてもよく、複数の被検抗体もしくは標準抗体の分離パターンよりそれぞれ定めた分割時間の平均値または中央値を、固定した分割時間として用いてもよい。
なお、標準抗体または被検抗体の分離パターンに共通して存在する特徴点での溶出時間を分割時間とし、当該分割時間で分割した領域から求められる特徴を取得すると、被検抗体の分析を再現性高く行なえるため、好ましい。
分離パターンの特徴は、前記分割時間で分割した領域における極値(極大値または極小値)や当該極値をとる溶出時間、前記分割した領域における変曲点での値や当該変曲点での溶出時間、前記分割した領域に存在するピークの数や高さ、前記分割した領域の面積など、分離パターンを特徴づける値であれば特に限定はない。なお、前記検出値としては、例えば、前述した検出器で得られた値をそのまま用いてもよく、適宜ベースライン等を補正してから用いてもよい。
前記特徴の一例として、溶出工程で得られた抗体の分離パターンから溶出ピークを抽出し、抽出した各溶出ピークの面積を算出後、ピーク面積比を算出してもよい。溶出ピーク検出に用いる抗体の分離パターンは、そのまま、または適宜、ベースラインの補正等の補正を実施してから、溶出ピークの抽出に用いてよい。ピーク面積を算出する対象となる溶出ピークを、以下「対象ピーク」ともいう。なお後述するピーク面積%が1%未満の溶出ピークは対象ピークから除外してもよい。
対象ピークは、諸条件に応じて適宜選択できる。一例として、抗体分離剤として、ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチド、または当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入おび/または付加したポリペプチド(以下、「ヒトFcγRIIIaリガンド」とも記載)を固定化した不溶性担体を用いた場合、抗体の分離パターンから、3つの溶出ピークが抽出される(ヒトFcγRIIIaリガンドとの結合能が低いピーク順に、第1ピーク、第2ピーク、第3ピークと命名する)が、対象ピークとしては、当該第1ピークから第3ピークのいずれを用いてもよい。また抗体分離剤として、前述したヒトFcγRIIIaリガンドを固定化した不溶性担体を用い、溶出工程をpH変化に基づくグラジエント溶出で行なう場合、例えば、液相のpHが5.4以下、5.2以下、5.0以下、または4.8以下になって最初に溶出するピークを第1ピークと命名してもよく、液相のpHが5.4から4.4、5.2から4.5、または5.0から4.6である期間に溶出するピークを第1ピークと命名してもよい。なお、液相のpHは、溶出の開始前の液相(例えば、平衡化液)のpHがX、溶出液のpHがY、液相中の溶出液の比率がZ%である場合、下記式(I)で算出されるものとする。また、ピークが溶出したpHは、カラムの容積等の流路の容積を考慮して、適宜補正されるものとする。
液相のpH=X-((X-Y)×Z[%]) ・・・ (I)
本発明では、対象ピーク面積の絶対値もしくは相対値を用いてもよい。相対値としては、特定の対象ピーク面積に対する他の対象ピーク面積の比や、対象ピーク面積全ての合計に対する特定の対象ピーク面積の比などが挙げられる。他の対象ピークとしては、1つの対象ピークを用いてもよく、2つまたはそれ以上の対象ピークを組み合わせて用いてもよい。ピーク面積比の一例として、具体的には、ピーク面積%が挙げられる。「ピーク面積%」とは、対象ピーク面積全ての合計に対する特定の対象ピークの面積比(%)を意味する。
なお特徴を、抗体の分離パターンに存在するピーク面積および/もしくはピーク高さ、または当該ピーク面積%および/もしくはピーク高さ%とすると、被検抗体を再現性高く分析できるため、好ましい。
本発明では、対象ピーク面積の絶対値もしくは相対値を用いてもよい。相対値としては、特定の対象ピーク面積に対する他の対象ピーク面積の比や、対象ピーク面積全ての合計に対する特定の対象ピーク面積の比などが挙げられる。他の対象ピークとしては、1つの対象ピークを用いてもよく、2つまたはそれ以上の対象ピークを組み合わせて用いてもよい。ピーク面積比の一例として、具体的には、ピーク面積%が挙げられる。「ピーク面積%」とは、対象ピーク面積全ての合計に対する特定の対象ピークの面積比(%)を意味する。
なお特徴を、抗体の分離パターンに存在するピーク面積および/もしくはピーク高さ、または当該ピーク面積%および/もしくはピーク高さ%とすると、被検抗体を再現性高く分析できるため、好ましい。
また分離パターンの特徴は、被検者の性質に基づき補正してもよい。当該補正の例として、被検者の年齢に基づく補正が挙げられる。例えば、分離パターンの特徴が被検者の年齢に影響を受ける場合、得られた特徴を被検者の年齢に基づいて補正してから、後述する<6>検出工程に用いてもよい。被検者の年齢に基づいて補正された特徴は、例えば、加齢以外の症状についてのリスクの検出に利用でき得る。
このようにして同定されたピーク領域によって、試料に含まれる抗体に結合した前述のN結合型糖鎖の糖鎖構造の違い等を識別できる(WO2019/244901号)。
<6>検出工程
本発明が<5>分析工程を含む場合、当該工程で得られた分析結果(例えば、分離パターンの特徴)を指標として、抗体含有唾液試料を提供した被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出できる。すなわち、本発明の分析方法の一態様は、被検者(具体的には、被検抗体を含む試料を提供した被検者)における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いの検出方法(以下、単に「本発明の検出方法」とも表記する)であってよい。
本発明が<5>分析工程を含む場合、当該工程で得られた分析結果(例えば、分離パターンの特徴)を指標として、抗体含有唾液試料を提供した被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出できる。すなわち、本発明の分析方法の一態様は、被検者(具体的には、被検抗体を含む試料を提供した被検者)における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いの検出方法(以下、単に「本発明の検出方法」とも表記する)であってよい。
以下、分離パターンの特徴を指標として被検者におけるリスクを検出する場合について説明するが、当該説明は、任意の分析結果を指標とする場合にも準用できる。
疾患の例として、免疫細胞の活性(例えば、損傷作用や貪食作用)に影響を受ける疾患が挙げられる。前記免疫細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージが例示できる。免疫細胞の活性に影響を受ける疾患として、具体的には、ガン、自己免疫疾患、感染症、アレルギー、炎症疾患が例示できる。
ガンの例として、脳腫瘍、乳ガン、子宮体ガン、子宮頚ガン、卵巣ガン、食道ガン、胃ガン、虫垂ガン、大腸ガン、肝ガン、胆嚢ガン、胆管ガン、膵ガン、副腎ガン、消化管間質腫瘍(GIST)、中皮腫、頭頚部ガン、腎ガン、肺ガン、骨肉腫、ユーイング(Ewing)肉腫、軟骨肉腫、前立腺ガン、精巣腫瘍、腎細胞ガン、膀胱ガン、横紋筋肉腫、皮膚ガン、肛門ガンが挙げられる。
自己免疫疾患の例として、ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群、重症筋無力症、多発性硬化症、慢性胃炎、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性膵炎、高安動脈炎、グッドパスチャー(Goodpasture’s)症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病、橋本病、原発性甲状腺機能低下症、特発性アジソン(Addison)病、1型糖尿病、慢性円板状エリテマトーデス(erythematosus)、限局性強皮症、天疱瘡、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、類天疱瘡、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、尋常性白斑、サットン(Sutton)後天性遠心性白斑・サットン母斑、原田病、自己免疫性視神経症、自己免疫性内耳障害、特発性無精子症、習慣性流産、リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン(Sjoegren)症候群、IgG4関連疾患、血管炎症候群、混合性結合組織病が挙げられる。
感染症の例として、細菌感染症、真菌感染症、寄生性原虫感染症、寄生性蠕虫感染症、ウイルス感染症が挙げられる。細菌感染症の例として、レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腸球菌、リステリア(Listeria)、髄膜炎菌、淋菌、病原性大腸菌、クレブシエラ(Klebsiella)、プロテウス(Proteus)、百日咳菌、緑膿菌、セラチア(Serratia)、シトロバクター(Citrobacter)、アシネトバクター(Acinetobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、マイコプラズマ(Mycoplasma)、クロストリジウム(Clostridium)、リケッチア(Rickettsia)、クラミジア(Chlamydia)等の各種細菌による感染症;結核、非結核性抗酸菌症、コレラ、ペスト、ジフテリア(Diphtheria)、赤痢、猩紅熱、炭疽、梅毒、破傷風、ハンセン病、レジオネラ(Legionella)肺炎、レプトスピラ(Leptospira)症、ライム病、野兎病、Q熱が挙げられる。真菌感染症の例として、アスペルギルス(Aspergillus)症、カンジダ(Candida)症、クリプトコッカス(Cryptococcus)症、白癬菌症、ヒストプラズマ(Histoplasma)症、ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎(カリニ肺炎)が挙げられる。寄生性原虫感染症の例として、アメーバ赤痢、マラリア、トキソプラズマ(Toxoplasma)症、リーシュマニア(Leishmania)症、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)症が挙げられる。寄生性蠕虫感染症の例として、エキノコックス(Echinococcus)症、日本住血吸虫症、フィラリア(Filaria)症、回虫症、広節裂頭条虫症が挙げられる。ウイルス感染症の例として、インフルエンザ、ウイルス性肝炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性結膜炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)、成人T細胞白血病、エボラ出血熱、黄熱、風邪症候群、狂犬病、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)感染症、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)、進行性多巣性白質脳症、水痘・帯状疱疹、単純疱疹、手足口病、デング(Dengue)熱、日本脳炎、伝染性紅斑、伝染性単核球症、天然痘、風疹、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻疹、咽頭結膜熱(プール熱)、マールブルグ(Marburg)出血熱、腎症候性出血熱、ラッサ(Lassa)熱、流行性耳下腺炎、ウエストナイル熱、ヘルパンギーナ(Herpangina)、チクングニア(Chikungunya)熱が挙げられる。感染症は、例えば、日和見感染症であってもよい。
アレルギーの例として、アナフィラキシーショック、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、薬剤性溶血性貧血、顆粒球減少症、血小板減少症、グッドパスチャー症候群、血清病、全身性エリテマトーデス、リウマチ、糸球体腎炎、過敏性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、接触性皮膚炎、アレルギー性脳炎、移植拒絶反応、結核性空洞、類上皮細胞性肉芽腫が挙げられる。
炎症疾患の例として、IL-6(インターロイキン-6)やTNF(腫瘍壊死因子)α等の炎症性サイトカインにより誘導される疾患が挙げられる。炎症疾患の例として、具体的には、脳炎、骨髄炎、髄膜炎、神経炎、眼の炎症(涙腺炎、強膜炎、上強膜炎、角膜炎、脈絡網膜炎、網膜炎、脈絡網膜炎、眼瞼炎、結膜炎、ぶどう膜炎等)、耳の炎症(外耳炎、中耳炎、内耳炎等)、乳腺炎、心炎(心内膜炎、心筋炎、心膜炎等)、血管炎(動脈炎、静脈炎、毛細血管炎等)、呼吸器の炎症(副鼻腔炎、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、気管炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎、胸膜炎、縦隔炎等)、口腔の炎症(口内炎、歯肉炎、歯肉口内炎、舌炎、扁桃炎、シラデン炎、耳下腺炎、口唇炎、歯髄炎、鼻炎等)、消化器の炎症(食道炎、胃炎、胃腸炎、腸炎、小腸炎、大腸炎、十二指腸炎、回腸炎、虫垂炎、直腸炎等)、皮膚炎、蜂巣炎、汗腺炎、関節炎、皮膚筋炎、筋炎、滑膜炎、腱炎、脂肪織炎、骨炎、骨髄炎、骨膜炎、腎炎、輸尿管炎、膀胱炎、尿管炎、卵巣炎、卵管炎、子宮内膜炎、子宮頸管炎、膣炎、外陰炎、精巣炎、精巣上体炎、前立腺炎、精嚢膀胱炎、亀頭炎、包皮炎、絨毛膜羊膜炎、臍帯炎、臍炎、肝炎、上行性胆管炎、胆嚢炎、膵炎、腹膜炎、下垂体炎、甲状腺炎、副甲状腺炎、副腎炎、リンパ管炎、リンパ節炎、悪液質、フレイル(虚弱)、サルコペニア、ロコモティブシンドローム等の加齢関連疾患が例示できる。
検出工程においては、<5>分析工程で取得した分離パターンの特徴を指標として、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出してよい。すなわち、前記特徴値は、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出するための指標として用いられるデータとみなしてよい。具体的には、被検者から得た抗体(被検抗体)をFcRカラムを用いて分離して得られる分離パターンに基づき求めた特徴値を指標として、当該被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出できる。すなわち、本発明の分析方法または検出方法は、被検抗体をFcRカラムを用いて分離することで得られる特徴値を指標として、前記被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを精度よく検出するための方法として提供してもよい。なお本明細書では、疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを総称して、単に「リスク」とも表記する。また本明細書において「リスクの検出」および「リスクの評価」は、同義に用いられてよい。
被検者における発症リスクの検出としては、被検者において発症リスクがあるかないかの検出(定性的検出)や、被検者においてリスクが高いか低いかの検出(定量的検出)が挙げられる。
疾患の有無の検出としては、被検者が現在疾患を発症している可能性があるかないかの検出(定性的検出)や、被検者が現在疾患を発症している可能性が高いか低いかの検出(定量的検出)が挙げられる。
疾患の発症リスクの検出としては、被検者が将来疾患を発症する可能性または発症した場合に重症化する可能性があるかないかの検出(定性的検出)や、被検者が将来疾患を発症する可能性または発症した場合に重症化する可能性が高いか低いかの検出(定量的検出)が挙げられる。
疾患の進行度合いの検出としては、被検者における現在の疾患の進行度合い(例えば重症度)が大きいか小さいかの検出(定量的検出)が挙げられる。
加齢の進行度合いの検出としては、被検者における現在の加齢の進行度合い(例えば重症度)が大きいか小さいかの検出(定量的検出)が挙げられる。
すなわち、「被検者において発症リスクがある」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性があること、被検者が将来疾患を発症する可能性があること、および/または被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性があることを意味してよい。一方、「被検者において発症リスクがない」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性がないこと、被検者が将来疾患を発症する可能性がないこと、および/または被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性がないことを意味してよい。
また、「被検者において発症リスクが高い」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性が高いこと、被検者が将来疾患を発症する可能性が高いこと、被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性が高いこと、被検者における現在の疾患の進行度合いが大きいこと、および/または被検者における現在の加齢の進行度合いが大きいことを意味してよい。一方、「被検者において発症リスクが低い」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性が低いこと、被検者が将来疾患を発症する可能性が低いこと、被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性が低いこと、被検者における現在の疾患の進行度合いが小さいこと、および/または被検者における現在の加齢の進行度合いが小さいことを意味してよい。
検出工程は、例えば、分離パターンの特徴から得られた特徴値の高低を指標として実施できる。前記特徴値の高低は、例えば、所定の閾値と比較することにより決定できる。言い換えると、検出工程は、例えば、分離パターンの特徴から得られた特徴値を閾値と比較する工程を含んでいてよい。
すなわち、「特徴値が高い」とは、例えば、特徴値が閾値を基準として高いことを意味してよい。また、「特徴値が閾値を基準として高い」とは、例えば、特徴値が閾値以上であること、特徴値が閾値を超えていること、または特徴値が閾値よりも統計学的に有意に高いことを意味してよい。「特徴値が閾値を基準として高い」場合の具体例として、特徴値が閾値の1.01倍以上、1.02倍以上、1.03倍以上、1.05倍以上、1.07倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、1.7倍以上、2倍以上、2.5倍以上、または3倍以上である場合が挙げられる。
一方、「特徴値が低い」とは、例えば、特徴値が閾値を基準として低いことを意味してよい。また、「特徴値が閾値を基準として低い」とは、例えば、特徴値が閾値以下であること、特徴値が閾値未満であること、または特徴値が閾値よりも統計学的に有意に低いことを意味してよい。「特徴値が閾値を基準として低い」場合の具体例として、特徴値が閾値の0.99倍以下、0.98倍以下、0.97倍以下、0.95倍以下、0.93倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、または0.3倍以下である場合が挙げられる。
特徴値は、例えば、閾値を基準に、危険範囲に区分されてよい。特徴値は、例えば、閾値を基準に、非危険範囲に区分されてよい。特徴値は、具体的には、例えば、閾値を基準に、危険範囲と非危険範囲とに区分されてもよい。「危険範囲」とは、特徴値について、被検者においてリスクがある可能性が高い範囲を意味してよい。「非危険範囲」とは、特徴値について、被検者においてリスクがない可能性が高い範囲を意味してよい。すなわち、特徴値が危険範囲にあれば、被検者においてリスクがある、またはリスクが高いことを検出してよい。一方、特徴値が非危険範囲にあれば、被検者においてリスクがない、またはリスクが低いことを検出してよい。
なお、「特定の特徴値が一定の基準を満たす(例えば、低いもしくは高い、または特定の範囲にある)場合に被検者においてリスクがある、ない、高い、または低いことを検出する」とは、少なくとも当該基準を満たす範囲において被検者においてリスクがある、ない、高い、または低いことを検出することを意味し、当該基準を満たさない範囲において被検者においてリスクが検出されることを要求しない。しかし、一態様においては、「特定の特徴値が一定の基準を満たす(例えば、低いもしくは高い、または特定の範囲にある)場合に被検者においてリスクがある、ない、高い、または低いことを検出する」場合、当該基準を満たさない範囲において、それぞれ、被検者においてリスクがない、ある、低い、または高いことを検出してもよい。
閾値は、例えば、特徴値の種類や所望の判定精度等の諸条件に応じて、当業者が適宜設定できる。閾値は、例えば、疾患や加齢等の判定対象の症状ごとに設定されてよい。閾値を決定する手段は、特に制限されない。閾値は、例えば、集団を2群に区分するためのデータ解析に利用される公知の手法に従って決定できる。
閾値は、例えば、対照被検者から得た被検抗体の分離パターンの特徴から得られた特徴値に基づいて決定できる(本明細書では、対照被検者から得た被検抗体の分離パターンを「対照分離パターン」とも表記する)。すなわち、対照分離パターンの特徴から得られた特徴値に基づき、閾値を決定し、検出工程を実施してもよい。具体的には、対照分離パターンの特徴から得られた特徴値を閾値の決定に用いることで、特徴値との比較に用いられてよい。言い換えると、検出工程は、例えば、特徴値と対照分離パターンの特徴値との比較を行なってもよい。
前記対照被検者としては、陽性対照や陰性対照が挙げられる。「陽性対照」とは、リスクがある、または高いと検出され得る被検者を意味してよい。「陰性対照」とは、リスクがない、または低いと検出され得る被検者を意味してよい。陽性対照としては、上記例示したような疾患(特に、リスクの検出対象となる疾患と同一の疾患)に罹患している、または罹患したことがある個体や、加齢が進行した個体、それらの組み合わせの性質を有する個体が挙げられる。陰性対照としては、上記例示したような疾患(特に、リスクの検出対象となる疾患と同一の疾患)に罹患していない、または罹患したことがない個体や、加齢が進行していない個体、それらの組み合わせの性質を有する個体が挙げられる。閾値は、陽性対照を分析し求めた特徴値のみに基づいて決定してもよく、陰性対照を分析し求めた特徴値のみに基づいて決定してもよく、陽性対照と陰性対照の両方を分析し算出した特徴値に基づいて決定してもよい。閾値は、通常は、陽性対照と陰性対照の両方を分析し求めた特徴値に基づいて決定すればよい。陽性対照と陰性対照の人数は、リスクの判定が所望の精度で可能となる閾値が得られる限り、特に制限されない。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、1人であってもよく、2人またはそれ以上であってもよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、通常、複数名であってよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、例えば、5人以上、10人以上、20人以上、または50人以上であってもよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、例えば、10000人以下、1000人以下、または100人以下であってもよい。
陽性対照を分析し求めた特徴値のみに基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陽性対照の複数個体を分析し求めた特徴値の上限から下限までの範囲から選択される値、例えば平均値、を閾値として設定してもよい。また、例えば、陽性対照の複数個体を分析し求めた特徴値の分布において、陽性対照の所定の割合が危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。所定の割合とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。
陰性対照を分析し求めた特徴値のみに基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陰性対照の複数個体を分析し求めた特徴値の上限から下限までの範囲から選択される値、例えば平均値、を閾値として設定してもよい。また、例えば、陰性対照の複数個体を分析し求めた特徴値の分布において、陰性対照の所定の割合が非危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。所定の割合とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。
陽性対照を分析し求めた特徴値と陰性対照を分析し求めた特徴値との両方に基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陽性対照の所定の割合が危険範囲に含まれ、かつ、陰性対照の所定の割合が非危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。陽性対照のうち危険範囲に含まれるものの割合、および、陰性対照のうち非危険範囲に含まれるものの割合は、いずれも高い方が好ましい。これらの割合は、それぞれ、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。これらの割合の両方を高くすることが困難な場合は、例えば、本発明による検出結果の利用目的等の諸条件に応じて、いずれかの割合が優先的に高くなるように閾値を設定してもよい。例えば、偽陰性率を下げるためには、陽性対照の内の危険範囲に含まれるものの割合が優先的に高くなるように閾値を設定してよい。
閾値の決定は、例えば、ソフトウェアを用いて実施してもよい。例えば、統計解析ソフトウェアを用い、陰性対照と陽性対照とを統計学的に最も適切に判別できるような閾値を決定してもよい。そのようなソフトウェアとしては、「R」等の統計解析ソフトウェアが挙げられる。
また、対照被検者としては、標的被検者自体も挙げられる。すなわち、例えば、被検者における特徴値の変動を指標として、被検者におけるリスクを検出してもよい。本明細書において「特徴値が高い」とは、特徴値が増大した場合も包含してよい。本明細書において「特徴値が増大した」とは、具体的には、特徴値が過去の値と比較して増大したことを意味してよい。また本明細書において「特徴値が低い」とは、特徴値が低下した場合も包含してよい。本明細書において「特徴値が低下した」とは、具体的には、特徴値が過去の特徴値と比較して低下したことを意味してよい。すなわち、閾値としては、過去の特徴値も挙げられる。本明細書において「過去の特徴値」とは、標的被検者から過去の特定時点で得た被検抗体での特徴値を意味する。過去の特定時点における標的被検者は、例えば、陽性対照であってもよく、陰性対照であってもよい。
被検者における特徴値の変動を指標として、被検者におけるリスクの増減を検出してもよい。本明細書において「リスクがある、または高い」とは、リスクが増大した場合も包含してよい。本明細書において「リスクが増大した」とは、具体的には、リスクが過去の特定時点と比較して増大したことを意味してよい。一方、本明細書において「リスクがない、または低い」とは、リスクが低下した場合も包含してよい。本明細書において「リスクが低下した」とは、具体的には、リスクが過去の特定時点と比較して低下したことを意味してよい。
本明細書において「特徴値を得てリスクの検出の指標とする」とは、当該特徴値そのものを得てリスクの検出の指標とする場合に限られず、当該特徴値を反映する他の値を得て検出の指標とすることも包含する。
リスクの検出結果は、被検者に対してリスクを低減するための処置(以下、「リスク軽減処置」ともいう)を実施するかを決定するための指標として用いてもよい。言い換えると、本検出工程を実施することで、被検者に対してリスク軽減処置を実施するかを決定するための指標が得られる。すなわち、例えば、本検出工程により被検者においてリスクがある、または高いと検出された場合に、被検者に対してリスク軽減処置を実施すると決定してよい。本検出工程は、例えば、単独で、または他の手段と組み合わせて、被検者に対してリスク軽減処置を実施するかを決定するための指標として用いてよい。例えば、本検出工程により被検者においてリスクがある、または高いと検出された症状について、他の手段により確定診断を実施してから、被検者に対してリスク軽減処置を実施すると決定してもよい。リスク軽減処置は、医療行為であってもよく、非医療行為であってもよい。リスク軽減処置としては、前記例示したような疾患や加齢の予防や治療が挙げられる。すなわち、本発明は、例えば、疾患や加齢等の症状の予防または治療方法を提供してよい。予防または治療方法は、例えば、本検出工程により被検者においてリスクがある、または高いと検出された場合に、被検者に対して予防または治療を実施する工程を含む、疾患や加齢等の症状の予防または治療方法であってよい。具体的には、本検出工程により被検者においてリスクがある、または高いと検出された症状について予防または治療を実施してよい。予防または治療は、例えば、各症状についての一般的な手段(例えば、投薬や外科手術)により実施できる。
以下、実施例および比較例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。なお参考例は本発明を構成しない。
実施例1 抗体分離剤カラム(FcR9_Fカラム)の作製
特開2018-197224号公報の方法で得られたFc結合性タンパク質FcR9_F_Cys(配列番号2)を、以下に示す方法で不溶性担体(ゲル)に固定化し、FcR9_Fカラムを作製した。なおFcR9_F_Cys(配列番号2)において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までが改良PelBシグナルペプチドであり、24番目のグリシン(Gly)から199番目のグルタミン(Gln)までがFc結合性タンパク質FcR9_F(特開2018-197224号公報)のアミノ酸配列(配列番号1の17番目から192番目までの領域に相当)、200番目のグリシン(Gly)から207番目のグリシン(Gly)までがシステインタグ配列である。また前記FcR9_Fは、配列番号1に示す天然型ヒトFcγRIIIaの17番目から192番目までのアミノ酸残基であり、ただし以下に示す10箇所のアミノ酸置換を有したポリペプチドである:
配列番号1の27番目(配列番号2では34番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
配列番号1の29番目(配列番号2では36番目)のフェニルアラニン(Phe)をイソロイシン(Ile)に置換
配列番号1の35番目(配列番号2では42番目)のチロシン(Tyr)をアスパラギン(Asn)に置換
配列番号1の48番目(配列番号2では55番目)のグルタミン(Gln)をアルギニン(Arg)に置換
配列番号1の75番目(配列番号2では82番目)のフェニルアラニン(Phe)をロイシン(Leu)に置換
配列番号1の92番目(配列番号2では99番目)のアスパラギン(Asn)をセリン(Ser)に置換
配列番号1の117番目(配列番号2では124番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
配列番号1の121番目(配列番号2では128番目)のグルタミン酸(Glu)をグリシン(Gly)に置換
配列番号1の171番目(配列番号2では178番目)のフェニルアラニン(Phe)をセリン(Ser)に置換
配列番号1の176番目(配列番号2では183番目)のバリン(Val)をフェニルアラニン(Phe)に置換。
特開2018-197224号公報の方法で得られたFc結合性タンパク質FcR9_F_Cys(配列番号2)を、以下に示す方法で不溶性担体(ゲル)に固定化し、FcR9_Fカラムを作製した。なおFcR9_F_Cys(配列番号2)において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までが改良PelBシグナルペプチドであり、24番目のグリシン(Gly)から199番目のグルタミン(Gln)までがFc結合性タンパク質FcR9_F(特開2018-197224号公報)のアミノ酸配列(配列番号1の17番目から192番目までの領域に相当)、200番目のグリシン(Gly)から207番目のグリシン(Gly)までがシステインタグ配列である。また前記FcR9_Fは、配列番号1に示す天然型ヒトFcγRIIIaの17番目から192番目までのアミノ酸残基であり、ただし以下に示す10箇所のアミノ酸置換を有したポリペプチドである:
配列番号1の27番目(配列番号2では34番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
配列番号1の29番目(配列番号2では36番目)のフェニルアラニン(Phe)をイソロイシン(Ile)に置換
配列番号1の35番目(配列番号2では42番目)のチロシン(Tyr)をアスパラギン(Asn)に置換
配列番号1の48番目(配列番号2では55番目)のグルタミン(Gln)をアルギニン(Arg)に置換
配列番号1の75番目(配列番号2では82番目)のフェニルアラニン(Phe)をロイシン(Leu)に置換
配列番号1の92番目(配列番号2では99番目)のアスパラギン(Asn)をセリン(Ser)に置換
配列番号1の117番目(配列番号2では124番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
配列番号1の121番目(配列番号2では128番目)のグルタミン酸(Glu)をグリシン(Gly)に置換
配列番号1の171番目(配列番号2では178番目)のフェニルアラニン(Phe)をセリン(Ser)に置換
配列番号1の176番目(配列番号2では183番目)のバリン(Val)をフェニルアラニン(Phe)に置換。
(1)2mLの分離剤用親水性ビニルポリマー(東ソー社製:液体クロマトグラフィ用充填剤)の表面のヒドロキシ基をヨードアセチル基で活性化後、特開2018-197224号公報の方法で得られたFcR9_F_Cysを4mg反応させることで、FcR9_F固定化ゲルを得た。
(2)(1)で作製したFcR9_F固定化ゲル1.2mLをφ4.6mm×50mmのステンレスカラムに充填してFcR9_Fカラムを作製した。
参考例1
(1)インフォームドコンセントを得た健常者から得た血清を、PBS(Phosphate Buffered Saline)(pH7.4)で20倍希釈後、0.2μm径のフィルター(Merck Millipore社製)に通すことで測定試料を調製した。
(1)インフォームドコンセントを得た健常者から得た血清を、PBS(Phosphate Buffered Saline)(pH7.4)で20倍希釈後、0.2μm径のフィルター(Merck Millipore社製)に通すことで測定試料を調製した。
(2)実施例1で作製したFcR9_Fカラムを高速液体クロマトグラフィ装置(東ソー社製)に接続し、100mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH6.5)(以下「平衡化液」とも表記)で平衡化後、標準物質として1mg/mLのリツキシマブ(rituximab、全薬工業製、販売名:リツキサン点滴静注100mg)抗体溶液を流速1.2mL/minにて10μL添加した。検出器による測定間隔は、1/5秒毎にデータを取得することで行なった。
(3)流速1.2mL/minのまま平衡化液で7分間洗浄後、500mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH4.5)(以下「溶出液」とも表記)を用いたpHグラジエント(11分で溶出液が100%となるグラジエント)で吸着したガンマグロブリンを溶出し、分離パターンを得た。
(4)標準物質の分析後、(2)および(3)と同様な手順で、(1)で調製した測定試料を10μL添加することで分析し、ガンマグロブリンの分離パターンを得た。
(5)(3)および(4)で得た分離パターンを、pHグラジエントを開始した時間(溶出開始後7分)、およびpHグラジエントが終了した(すなわち溶出液が100%となった)時間(溶出開始後18分)がともに検出値0となるよう、ベースライン補正した。
(6)ベースライン補正した標準物質の分離パターン(図1)から、溶出開始後7分から18分までの間に検出される3つのピーク間(溶出時間が短い(FcR9_Fとの結合能が低い)順に第1ピーク、第2ピーク、第3ピーク)の谷領域で導関数が0を取る2つの溶出時間で分割した領域をピーク領域とした。すなわち第1ピーク領域は溶出開始後7分から第1ピークと第2ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間までの範囲とし、第2ピーク領域は第1ピークと第2ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間から第2ピークと第3ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間までの範囲とし、第3ピーク領域は第2ピークと第3ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間から溶出開始後18分までの範囲とした。当該標準物質で定義付けたピーク領域を標準物質の分析直後に測定した試料(図1)に適用することで、標準物質(リツキシマブ)に基づく当該測定試料のピーク領域の定義付けを行なった。
(7)(6)で定義付けた測定サンプルの各ピーク領域のピーク面積を算出し、当該ピーク面積を溶出開始後7分から18分までの間のピーク面積の合計値(すなわち第1ピーク面積、第2ピーク面積および第3ピーク面積の和)で割った値から各ピーク面積%(第1ピーク面積(area 1)%、第2ピーク面積(area 2)%、および第3ピーク面積(area 3)%を、それぞれ算出した。
実施例2 唾液試料含有ガンマグロブリン分離(スポンジ体で採取)
(1)参考例1(1)と同じ健常者の口に、コットン製スポンジ体(ザルスタット社製)を含ませることで唾液2mLを採取した。スポンジ体を遠心することで回収した唾液を、0.45μm径のフィルター(Merck Millipore社製)に通し、分画分子量30000の限外濾過膜(Merck Millipore社製)を用いて100μLに濃縮することで、唾液試料を調製した。
(1)参考例1(1)と同じ健常者の口に、コットン製スポンジ体(ザルスタット社製)を含ませることで唾液2mLを採取した。スポンジ体を遠心することで回収した唾液を、0.45μm径のフィルター(Merck Millipore社製)に通し、分画分子量30000の限外濾過膜(Merck Millipore社製)を用いて100μLに濃縮することで、唾液試料を調製した。
(2)FcR9_Fカラムに添加する試料として、(1)で調製した唾液試料50μLとした他は、参考例1(2)から(7)と同様な方法で当該試料中に含まれる抗体を分析し、得られた分離パターンから各ピーク面積%を算出した。
(3)血清試料を測定し得られた分離パターンから算出した各ピークの面積%(参考例1)に対する(2)で算出した唾液試料における前記ピーク面積%の割合を算出した。
(4)標準物質(リツキシマブ)の溶出開始後7分から18分までの間に検出されるピーク(検出値)の積分値を基に、当該積分値に対する抗体濃度の検量線を作成し、当該検量線に基づき、(2)で得られた分離パターンの当該積分値から、FcR9_Fカラムに吸着したガンマグロブリン(抗体)量を算出した。
比較例1 唾液試料含有ガンマグロブリン分離(流涎で採取)
唾液の採取を流涎で採取した他は、実施例2と同様な方法で各ピーク面積%、血清におけるピーク面積%(参考例1)に対する各ピーク面積%の割合、およびFcR9_Fカラムへのガンマグロブリン(抗体)吸着量を算出した。
唾液の採取を流涎で採取した他は、実施例2と同様な方法で各ピーク面積%、血清におけるピーク面積%(参考例1)に対する各ピーク面積%の割合、およびFcR9_Fカラムへのガンマグロブリン(抗体)吸着量を算出した。
参考例1、実施例2および比較例1の結果をまとめて図2および表1に示す。
図2から血清から得られたガンマグロブリンの分離パターン(参考例1、図2a)と、スポンジ体を用いて採取した唾液から得られたガンマグロブリンの分離パターン(実施例2、図2b)とが似ていることがわかる。一方、流涎で採取した唾液から得られたガンマグロブリンの分離パターン(比較例1、図2c)は大きく異なる形状となった。これらの結果より、スポンジ体を用いて唾液を採取することで、血清と同様なガンマグロブリンの分離パターンの取得が可能なことがわかる。
図2から血清から得られたガンマグロブリンの分離パターン(参考例1、図2a)と、スポンジ体を用いて採取した唾液から得られたガンマグロブリンの分離パターン(実施例2、図2b)とが似ていることがわかる。一方、流涎で採取した唾液から得られたガンマグロブリンの分離パターン(比較例1、図2c)は大きく異なる形状となった。これらの結果より、スポンジ体を用いて唾液を採取することで、血清と同様なガンマグロブリンの分離パターンの取得が可能なことがわかる。
表1のうち、血清試料におけるピーク面積%(参考例1)に対する各ピーク面積%の割合から、実施例2でのスポンジ体で採取した唾液ではどのピーク(area 1、area 2およびarea 3)面積%においても10%以内の変動に収まっており血清とほぼ同一値を取るのに対して、比較例1の流涎で採取した唾液ではピーク面積%によっては40%程度値が変動していることがわかる。また吸着量においても、実施例2でのスポンジ体で採取した唾液では5.45μg吸着していたのに対して、比較例1の流涎で採取した唾液では3.72μgと吸着量も低下していた。これらの結果から、唾液をスポンジ体で採取することで、検出されるガンマグロブリン(抗体)の量が増え、さらに血清での分離パターンと同等の、精度の高い分離パターンを取得できることがわかる。
以上説明したように、本発明により、夾雑物を除去するための前処理を要することなく被験者由来唾液試料に含まれるガンマグロブリン(抗体)を精度よく分析できる。本発明で得られる、前記ガンマグロブリンの分離パターンは疾患と密接に関連していることから、臨床診断を行なう上での有用な指標となる。特に唾液試料は血液試料と比べ侵襲性低く採取できるため、被検者への検体採取リスクを低減できる。また唾液試料は、被検者個々人での自己採取もできることから医療施設外での採取も可能となり、前処理を要しないため、簡便に分析することができる。そのため、本発明は、採血が困難な場合でも、採血に必要な医師や看護師の介在無く、抗体の分析が可能となるため、特に健常者においての健康管理用途、ならびにそれに用いられる医薬品および医療機器の開発等において有用である。
Claims (5)
- Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに、被検者由来抗体含有試料を添加し、当該抗体を当該担体に吸着させる工程と、
前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出し、抗体の分離パターンを得る工程とを含む、前記抗体の分析方法であって、
抗体含有試料が唾液試料であり、当該唾液試料の採取をスポンジ体を用いて行なう、前記方法。 - Fc結合性タンパク質がヒトFcγレセプターである、請求項1に記載の方法。
- ヒトFcγレセプターが、以下の(i)から(iii)のいずれかから選択されるポリペプチドである、請求項2に記載の方法:
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸残基を少なくとも含み、ただし当該アミノ酸残基において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換し、さらに当該176番目以外の1もしくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(iii)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目のグリシンから192番目のグルタミンまでのアミノ酸配列において、少なくとも配列番号1の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換したアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であり、ただし前記置換が残存し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の方法で得た分離パターンの特徴を指標として、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する方法。
- 分離パターンの特徴が、当該パターンに存在するピークの面積および/もしくは高さ、または当該ピークの面積%および/もしくは高さ%である、請求項4に記載の方法。
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