JP2021162586A - 抗体の分析方法およびそれを利用した疾患の検出方法 - Google Patents

抗体の分析方法およびそれを利用した疾患の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 試料中に含まれる抗体を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を用いたアフィニティクロマトグラフィで分析する際に、前記抗体を再現性高く分析できる方法を提供すること。【解決手段】 Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに試料を添加し当該試料中に含まれる抗体を前記担体に吸着させる工程と、前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させ抗体の分離パターンを得る工程と、前記分離パターンにおける抗体の溶出時間と当該時間における検出値との積を総和した値を算出する工程とを含む、抗体の分析方法により、前記課題を解決する。【選択図】 図2

Description

本発明は、抗体の分析方法およびそれを利用した疾患の検出方法に関する。特に本発明は、抗体を再現性高く分析し、その結果を利用して、疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する方法に関する。
近年、ガンや免疫疾患等の治療に抗体を含む医薬品(抗体医薬品)が用いられている。抗体医薬品に用いる抗体は、遺伝子工学的手法により得られた、当該抗体を発現可能な細胞(たとえば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等)を培養後、カラムクロマトグラフィ等を用いて高純度に精製し製造されている。しかしながら近年の研究により、前記製造により得られた抗体は、酸化、還元、異性化、糖鎖付加等の修飾を受けることで多様な分子の集合体となっていることが判明しており、薬効や安全性への影響が懸念されている。特に、抗体に結合している糖鎖構造は、抗体医薬品の活性、動態、および安全性に大きな影響を与えることが報告されており、詳細な糖鎖構造の解析が重要である(非特許文献1)。またリウマチ等の疾患では、血液中の抗体に付加される糖鎖構造の変化が知られており(非特許文献2および3)、抗体に付加された糖鎖構造を分析することで疾患を検出できる可能性がある。
抗体の糖鎖構造を分析する方法として、糖鎖の切り出しを含むLC−MS分析(特許文献1および2)が主に実施されている。しかしながら、前記分析方法では非常に煩雑な操作を伴い、多大な時間を要する。より簡便な抗体の分子構造の分析方法として、不溶性担体に固定化されたFc結合性タンパク質と抗体との親和性に基づくアフィニティクロマトグラフィ分析による方法があり、当該方法は抗体のFc領域に結合した糖鎖構造の違いに基づく分析ができる(特許文献3)。しかしながら、前記分析で得られる分離パターンのばらつきが大きく、試料中に含まれる抗体を再現性高く分析するのは困難であった。
特開2016−194500号公報 特開2016−099304号公報 WO2019/244901号
CHROMATOGRAPHY、34(2)、83−88(2013) Science、320、373−376(2008) Nature Communication、7、11205(2016)
本発明の課題は、試料中に含まれる抗体を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を用いたアフィニティクロマトグラフィで分析する際、前記抗体を再現性高く分析できる方法を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、Fc結合性タンパク質を固定
化した不溶性担体を用いたアフィニティクロマトグラフィで試料中に含まれる抗体を分析する際に、抗体の分離パターンを数値化することで、前記抗体を再現性高く分析できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、以下の[1]から[8]に記載の態様を包含する。
[1]
以下の(a)から(c)の工程を含む、試料中に含まれる抗体の分析方法:
(a)Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに試料を添加し、当該試料中に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程;
(b)前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程;および
(c)前記分離パターンにおける抗体の溶出時間と当該時間における検出値との積を総和した値を算出する工程。
[2]
前記溶出時間が、標準抗体の溶出時間の変動に基づいて補正されている、[1]に記載の分析方法。
[3]
さらに、以下の(A)から(D)の工程を含む、[1]または[2]に記載の分析方法:
(A)前記(a)の工程の前に、前記カラムに標準抗体溶液を添加して当該標準抗体を当該担体に吸着させ、当該担体に吸着した標準抗体を前記溶出液を用いて溶出させ、標準抗体の第1の分離パターンを得る工程;
(B)前記(a)および(b)の工程の前または後に、前記(A)の工程を再度実施し、標準抗体の第2の分離パターンを得る工程;
(C)前記第1の分離パターンにおける標準抗体の溶出時間と、前記第2の分離パターンにおける標準抗体の溶出時間とを比較する工程;および
(D)前記(C)の比較結果に基づき、前記(b)で得られた分離パターンにおける抗体の溶出時間を補正する工程。
[4]
前記(C)の工程が、前記第1の分離パターンにおける抗体の2点以上の溶出時間と、前記第2の分離パターンにおける抗体の2点以上の溶出時間とを比較する工程である、[3]に記載の分析方法。
[5]
前記(B)の工程が、前記(a)の工程の直前または前記(b)の工程の直後に実施される、[3]または[4]に記載の分析方法。
[6]
前記試料が、体液である、[1]から[5]のいずれかに記載の分析方法。
[7]
以下の(a)から(d)の工程を含む、被検者における疾患および/またはその発症リスクの検出方法:
(a)Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに被検者から得た試料を添加し、当該試料中に含まれる抗体を前記担体に吸着させる工程;
(b)前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程;
(c)前記分離パターンにおける抗体の溶出時間と、当該時間における検出値との積の総和値を算出する工程;
(d)前記工程(c)で算出した総和値に基づき、前記被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する工程。
[8]
抗体がヒト由来の抗体であり、Fc結合性タンパク質が以下の(1)から(3)のいず
れかのポリペプチドである、[1]から[7]のいずれかに記載の方法:
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17番目から192番目までのアミノ酸残基を含み、ただし当該17番目から192番目までのアミノ酸残基において、少なくとも176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17番目から192番目までのアミノ酸残基を含み、ただし当該17番目から192番目までのアミノ酸残基において、少なくとも176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有し、さらに前記置換以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目から192番目までのアミノ酸配列において176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有するアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ただし前記置換を含むアミノ酸配列を含み、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
本発明によれば、試料中に含まれる抗体を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を用いたアフィニティクロマトグラフィで分析する際、前記抗体を再現性高く分析できる。
Fc結合性タンパク質固定化ゲル充填カラムで抗体を分析して得られる分離パターンの一例を示した図。 検体分析する前と後における、Fc結合性タンパク質固定化ゲル充填カラムで標準抗体を分析して得られる分離パターンの違いの一態様を示した図。 検体分析する前と後における、Fc結合性タンパク質固定化ゲル充填カラムで標準抗体を分析して得られる分離パターンの違いの別態様を示した図。 実施例6において、検体分析する前と後における、Fc結合性タンパク質固定化ゲル充填カラムで標準抗体を分析して得られる分離パターンの違いを示した図。(a)がヒトミエローマ血漿由来IgG3(mIgG3)を標準抗体としたときの、(b)がヒトミエローマ血漿由来IgG1(mIgG1)を標準抗体としたときの、(c)がヒト血漿由来IgG1(pIgG1)を標準抗体としたときの、それぞれ結果である。 実施例7における、標準抗体と血清サンプルとの測定間隔を示した図。 検体分析する前と後における、Fc結合性タンパク質固定化ゲル充填カラムで標準抗体としてヒトミエローマ血漿由来IgG1(mIgG1)を分析して得られる分離パターンの違いを示した図。 実施例8において、溶出時間の補正をそれぞれ行った血液サンプルの測定1回目および50回目における、Fc結合性タンパク質固定化ゲル充填カラムで血液サンプルを分析して得られる分離パターンの違いを示した図。 実施例8において、標準物質のピーク溶出時間と、標準物質のピーク溶出時間から基準値となる検体分析する前における標準物質のピーク溶出時間を差し引いた値をプロットし、当該プロットを最小二乗法による単回帰式から得られた近似線の一例を示した図。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において、「Fc結合性タンパク質」とは、試料中に含まれる抗体のFc領域に対する結合能を有し、かつ抗体の糖鎖構造(例えば、Fc領域の糖鎖構造)の違いを認識できるポリペプチドを意味する。Fc結合性タンパク質は、そのようなポリペプチドであれば、特に制限はない。例えば、前記抗体がヒト由来の抗体である場合、Fc結合性タン
パク質として、ヒトFc結合性タンパク質が挙げられる。ヒトFc結合性タンパク質の好ましい例として、ヒトFcレセプターが挙げられる。ヒトFcレセプターには、ヒト免疫グロブリンG(IgG)に対するレセプターであるヒトFcγレセプター、ヒト免疫グロブリンA(IgA)に対するレセプターであるヒトFcαレセプター、ヒト免疫グロブリンD(IgD)に対するレセプターであるヒトFcδレセプター、ヒト免疫グロブリンE(IgE)に対するレセプターであるヒトFcεレセプター等が挙げられるが、いずれのレセプターも本発明におけるヒトFc結合性タンパク質として利用可能である。なお、本明細書において、「ヒト由来の抗体」とは、少なくともヒト由来のFc領域を有した免疫グロブリンを意味する。ヒト由来の抗体は、ヒト抗体であってもよく、ヒト化抗体であってもよく、キメラ抗体であってもよい。
ヒトFcγレセプターの具体例として、ヒトFcγRI(CD64)、ヒトFcγRIIa(CD32a)、ヒトFcγRIIb(CD32b)、ヒトFcγRIIc(CD32c)、ヒトFcγRIIIa(CD16a)、またはヒトFcγRIIIb(CD16b)の細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチド、ならびに当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入、および/または付加したポリペプチドが挙げられる。中でも、ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチドや、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入、および/または付加したポリペプチドが、本発明でヒトFc結合性タンパク質として用いるヒトFcγレセプターとして好ましい。
ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチドや、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入、および/または付加したポリペプチドの具体例として、以下の(1)から(3)に記載のポリペプチドが挙げられる。
(1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17番目から192番目までのアミノ酸残基を含み、ただし当該17番目から192番目までのアミノ酸残基において、少なくとも176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(2)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17番目から192番目までのアミノ酸残基を含み、ただし当該17番目から192番目までのアミノ酸残基において、少なくとも176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有し、さらに前記置換以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(3)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目から192番目までのアミノ酸配列において176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有するアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ただし前記置換を含むアミノ酸配列を含み、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
前記(1)に記載のポリペプチドの一例として、配列番号2に記載のアミノ酸配列の24番目から199番目までのアミノ酸残基を含むポリペプチドや、特開2018−197224号公報に開示のポリペプチド(Fc結合性タンパク質)が挙げられる。また前記(2)に記載の置換、欠失、挿入、および付加の例として、特開2015−086216号公報、特開2016−169167号公報、および特開2017−118871号公報に開示されているアミノ酸残基の置換が挙げられる。
前記(3)において、「相同性」とは、類似性(similarity)または同一性(identity)を意味する。相同性は、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)等のアラインメントプログラムを用いて決定できる。例えば、「アミノ酸配列の同一性」とは、blastpを用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味してよく、具体的には、blastpをデフォルトのパラメ
ータで用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味してもよい。相同性は、70%以上であればよく、80%以上、90%以上、または95%以上であってもよい。
本発明において、「不溶性担体」とは、当該担体を充填したカラムに通液される液体(例えば、平衡化液や溶出液等の、抗体の吸着または溶出に用いる液体)に対して不溶性の担体を意味する。「担体が液体に対して不溶性」とは、液体への担体の溶解度が20℃において100mg/L以下、10mg/L以下、または約0mg/Lであることを意味してよい。不溶性担体は、Fc結合性タンパク質を共有結合で固定化するための官能基(例えばヒドロキシ基)を備えていてよい。不溶性担体としては、ジルコニア、ゼオライト、シリカ、皮膜シリカ等の無機系物質に由来した担体、セルロース、アガロース、デキストラン等の天然有機高分子物質に由来した担体、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリレート、ビニルポリマー等の合成有機高分子物質に由来した担体が挙げられる。
Fc結合性タンパク質の不溶性担体への固定化は、例えば、当該担体表面に存在する、Fc結合性タンパク質と共有結合で固定化可能な官能基を利用して実施できる。例えば、不溶性担体表面にヒドロキシ基が存在する場合、活性化剤を用いて当該ヒドロキシ基からFc結合性タンパク質と共有結合可能な活性化基を形成することで、当該活性化基とFc結合性タンパク質とを共有結合できる。ヒドロキシ基に対する活性化剤の具体例として、エピクロロヒドリン(活性化基としてエポキシ基を形成)、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル(活性化基としてエポキシ基を形成)、トレシルクロリド(活性化基としてトレシル基を形成)、ビニルブロミド(活性化基としてビニル基を形成)が挙げられる。また、ヒドロキシ基をアミノ基やカルボキシ基等に変換した後、活性化剤を作用させて活性化することもできる。アミノ基やカルボキシ基等に対する活性化剤の具体例として、3−マレイミドプロピオン酸N−スクシンイミジル(活性化基としてマレイミド基を形成)、1,1’−カルボニルジイミダゾール(活性化基としてカルボニルイミダゾール基を形成)、ハロゲン化酢酸(活性化基としてハロゲン化アセチル基を形成)が挙げられる。
本発明における分析対象の抗体は、少なくとも糖鎖が付加されたFc領域を含む免疫グロブリンであればよく、他の領域を含んでいてもよい。また、本発明における分析対象の抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。免疫グロブリンは、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEのいずれであってもよい。ただし、Fc結合性タンパク質としてFcレセプターを用いる場合は、本発明における分析対象の抗体は、当該レセプターに対応した免疫グロブリンである必要がある。例えば、Fc結合性タンパク質としてヒトFcγレセプターを用いる場合は、本発明における分析対象の抗体は、ヒト由来のIgGであり、特にヒトIgGであってよい。なお、前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4のいずれであってもよい。
抗体の由来は特に制限はなく、抗体は、単一の生物に由来するものであってもよく、2種またはそれ以上の生物の組み合わせに由来するものであってもよい。抗体は、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、またはそれらのバリアント(例えばアミノ酸置換体)であってもよい。また、抗体としては、二重特異性抗体(バイスペシフィック抗体)、Fc領域と他のタンパク質との融合抗体、Fc領域と薬物との複合体(ADC)等の人工的に構造改変した抗体も挙げられる。さらに、抗体医薬も本発明における「抗体」に包含される。抗体医薬の一例として、抗TNF−α(腫瘍壊死因子α)抗体であるインフリキシマブや抗IL−6(インターロイキン6)抗体であるトシリズマブ、癌遺伝子HER2に対する抗体であるトラスツズマブが挙げられる。中でも、本発明の分析方法は、後述する体液由来の抗体の分析に好適な分析方法である。
本発明において「試料」とは、前述した抗体を含むまたは含み得る溶液のことを意味する。試料は、例えば、被検者から得られたものであってよい。試料の一例として、前述した抗体を含むもしくは含み得る体液または緩衝液が挙げられる。よって、抗体は、例えば、体液に由来するものであってよい。前記体液の例として、被検者から得られた、
血液(全血)、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液等の血液検体(血液試料);
尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水等の血液由来成分を含み得る検体(試料);
肝臓、肺、脾臓、腎臓、皮膚、腫瘍、リンパ節等の組織の断片(組織片)もしくは細胞を含み得る検体(試料);
それらから分離された抗体またはそれらに含有される抗体を含み得る検体(試料);
が挙げられる。なお、前記被検者は、単に測定の対象とするヒト個体、またはリスクの検出の対象とするヒト個体を意味する。被検者は、それに由来する試料を利用できるもの(すなわち抗体試料を取得できるか、既に取得したもの)であれば、特に制限されない。被検者は男性でもよく女性でもよい。また、被検者は、子供、若者、中年、老人等、いずれの年代の個体であってもよい。さらに、被検者は、健常者であってもよく、そうでなくてもよい。
本発明の分析方法は、試料中に含まれる抗体を以下の(a)から(c)の工程を含む方法で分析することを特徴としている。すなわち、本発明の分析方法は、以下の(a)から(c)の工程を含む、試料中に含まれる抗体の分析方法である:
(a)Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに試料を添加し、当該試料中に含まれる抗体を前記担体に吸着させる工程(以下、「吸着工程」とも表記する);
(b)前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程(以下、「分離工程」とも表記する);および
(c)前記分離パターンにおける抗体の溶出時間と当該時間における検出値との積を総和した値を算出する工程(以下、「解析工程」とも表記する)。
以下、各工程を詳細に説明する。
(a)吸着工程
吸着工程は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに抗体を含む試料を添加し、当該抗体を前記担体に吸着させる工程である。
吸着工程に供される試料は、複数種類の抗体分子を含む混合溶液であってもよい。吸着工程に供される試料は、具体的には、糖鎖構造の異なる複数種類の抗体分子を含む混合溶液であってもよい。吸着工程に供される試料は、より具体的には、Fc領域に付加された糖鎖構造の異なる複数種類の抗体分子を含む混合溶液であってもよい。
なお、試料として体液を用いる場合、そのままカラムに添加してもよいし、適宜前処理に供してからカラムに添加してもよい。前処理を行なう場合、例えば、遠心分離やカラムによる精製といった、当業者が通常行なう方法により実施すればよい。体液または前処理後の体液は、適宜液体媒体で溶解、懸濁、分散、または溶媒交換等した後、カラムに添加してもよい。前記液体媒体の例として、後述する平衡化液が挙げられる。本発明において、「体液」には、このように前処理や溶媒交換等の処理がなされたものも包含される。
Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムへの、抗体を含む試料の添加は、例えば、ポンプ等の送液手段を用いて添加すればよい(以降、本明細書では、液体をカラムに添加することを「液体をカラムに送液する」とも表記する)。抗体を含む試料の添加(送液)量、液相の種類、液相の送液速度、カラム温度等の吸着工程の実施条
件は、抗体が前記担体に吸着される限り、特に制限されない。吸着工程の実施条件は、抗体の種類、Fc結合性タンパク質の種類、不溶性担体の種類、カラムのスケール等の諸条件に応じて適宜設定できる。液相としては、後述する平衡化液が例示できる。送液速度は、例えば、カラムの内径が4.6mmの場合に、0.1mL/分から2.0mL/分、0.2mL/分から1.5mL/分、または0.4mL/分から1.2mL/分であってよい。送液速度は、例えば、カラムの内径の2乗に比例するように設定してよい。カラム温度は、例えば、0℃から50℃の範囲で適宜設定してよい。
吸着工程前および/または吸着工程後に、平衡化液をカラムに添加(送液)する平衡化工程をさらに実施してもよい。特に、吸着工程後に平衡化工程を実施すると、Fc結合性タンパク質に結合しない抗体や、試料雰囲気下では前記タンパク質に結合するが平衡化緩衝液雰囲気下では結合しない抗体を、カラムから排除できる点で好ましい。そのようにして排除される、抗体を含む画分のことを、本明細書では「未吸着画分」とも表記する。未吸着画分は、具体的には、後述する分離パターンにおいて、試料をカラムに添加(送液)後、検出されるピークが平衡化工程中に最小値を取るまでの領域の画分である。未吸着画分と、後述する分離工程で溶出液添加後に検出されるピークとは、溶出時間として離れている方が分離精度が高く、好ましい。特に、未吸着画分と溶出液添加後に検出されるピーク領域との間の検出値が一定値を取っていると、平衡化工程により未吸着画分がカラムから十分に除かれたことがわかり好ましい。ここでいう「一定値」とは、同一の値に限られず、検出値が一定の傾きをもって変化する状態をも包含する。
平衡化液の例として水性緩衝液が挙げられる。水性緩衝液として、具体的には、pH5.0から8.0の弱酸性から弱アルカリ性緩衝液が例示できる。緩衝液の成分は、緩衝液のpH等の諸条件に応じて適宜選択できる。緩衝液の成分としては、リン酸、酢酸、ギ酸、MES(2−Morpholinoethanesulfonic acid)、MOPS(3−Morpholinopropanesulfonic acid)、クエン酸、コハク酸、グリシン、ピペラジンが例示できる。なお、前記緩衝液に、塩化ナトリウムや塩化カリウム等の塩をさらに添加してもよい。当該塩は、同業者が容易に想定し得る塩であれば特に限定されない。
(b)分離工程
分離工程は、前記(a)の工程で不溶性担体に吸着した抗体を、溶出液を用いて溶出させ、当該抗体の分離パターンを得る工程である。すなわち、カラムに溶出液を添加(送液)することで、担体に吸着した抗体を溶出できる。溶出液の種類、溶出液の送液形式、液相の送液速度、カラム温度等の溶出工程の実施条件は、所望の態様で抗体が分離される限り、例えば、所望の分離パターンが得られる限り、特に制限されない。溶出工程の実施条件は、抗体の種類、Fc結合性タンパク質の種類、不溶性担体の種類、カラムのスケール等の諸条件に応じて適宜設定できる。溶出液としては、抗体とFc結合性タンパク質との親和性を弱めるものを用いればよい。溶出液としては、例えば、溶出前の液相(例えば、平衡化工程を行なう場合は当該工程で用いた平衡化液)よりもpHが酸性側の水性緩衝液が挙げられる。具体例として、溶出前の液相(例えば、平衡化液)がpH5.0からpH8.0の弱酸性から弱アルカリ性緩衝液である場合は、pH2.5からpH4.5の酸性緩衝液を溶出液として用いればよい。緩衝液の成分は、緩衝液のpH等の諸条件に応じて適宜選択できる。緩衝液の成分としては、リン酸、酢酸、ギ酸、MES(2−Morpholinoethanesulfonic acid)、MOPS(3−Morpholinopropanesulfonic acid)、クエン酸、コハク酸、グリシン、ピペラジンが挙げられる。溶出液の送液形式は、液相中の溶出液の比率を連続的に変化させて溶出させるリニアグラジエント(linear gradient)溶出であってもよく、前記比率を段階的に変化させて溶出させるステップワイズ(stepwise)溶出であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。グラジエントは、例えば、10
分から60分、15分から50分、または20分から40分で液相中の溶出液の比率が0%(v/v)から100%(v/v)に増大するように設定してよい。送液速度は、例えば、カラムの内径が4.6mmの場合に、0.1mL/分から2.0mL/分、0.2mL/分から1.5mL/分、または0.4mL/分から1.2mL/分であってよい。送液速度は、例えば、カラムの内径の2乗に比例するように設定してよい。カラム温度は、例えば、0℃から50℃の範囲で適宜設定してよい。
カラムから溶出した抗体を検出器を用いて検出することで、抗体の分離パターンが得られる。前記検出器としては、UV検出器や質量検出器が例示できる。抗体の分離パターンとしては、抗体の溶出時のクロマトグラムが例示できる。検出器による測定データの取得間隔は任意の時間間隔でよいが、時間間隔が広がることで抗体の分離パターンの本来の特徴をクロマトグラムに反映する際の精度が低下するため、時間間隔は1分以下が好ましく、10秒以下がさらに好ましく、さらに2秒以下が特に好ましい。
分離工程により、試料中に含まれる抗体が分離された態様で得られる。分離された抗体は、例えば、当該抗体を含有する溶出画分として得てもよい。すなわち、分離された抗体を含有する溶出画分を分取することにより、分離された抗体が得られる。溶出画分は、例えば、常法により分取できる。溶出画分は、具体的には、例えば、オートサンプラー等の自動フラクションコレクター等により分取できる。さらに、分離された抗体を溶出画分から回収してもよい。分離された抗体は、例えば、常法により溶出画分から回収できる。分離された抗体は、具体的には、例えば、タンパク質の分離精製に用いられる公知の方法により溶出画分から回収できる。
(c)解析工程
解析工程は、前記(b)の工程で得られた分離パターンにおける抗体の溶出時間と当該時間における検出値との積を総和した値を算出する工程である。本発明の分析方法は、前記(b)の工程により得られた分離パターンを基に、抗体の溶出時間と、当該時間における検出値との積の総和値を算出することを特徴としている。以降、前記総和値を、「分離パターンの特徴値」とも表記する。
総和する領域として、任意の解析開始時間から任意の解析終了時間までの領域が挙げられる。解析開始時間は特に限定はなく、例えば、カラムへの試料添加(送液)時でもよく、カラムへの溶出液添加(送液)時でもよい。解析開始時間は、カラムに充填したFc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体に結合しない非吸着画分のピークから、当該担体に結合した抗体由来の分離ピークが得られるまでの間に設定すると好ましい。解析終了時間は特に限定はなく、例えば、測定終了時間でもよく、カラムへの溶出液の添加(送液)割合が100%になった時間でもよい。解析終了時間は、前記(a)の工程前に平衡化工程を行なう場合は、前記カラムに充填したFc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体に結合した抗体由来の分離ピークが得られた後の時間から、前記カラムを溶出液で洗浄後、平衡化液に切り替えて当該カラムを平衡化する際、当該切り替わりに伴い発生する、検出値の変動が得られるまでの間に設定すると好ましい。
解析工程で用いる溶出時間は、任意の時点から溶出時までに経過した時間の値であってよい。解析工程で用いる溶出時間は、例えば、カラムへの試料添加(送液)時からの値でもよく、カラムへの溶出液添加(送液)時からの値でもよく、解析開始時点からの値でもよい。また、解析工程で用いる溶出時間は、任意の時点から溶出時までに経過した時間を反映する限り、特定の時間から溶出時間を引いた、溶出時間を累乗した値、溶出時間に係数を掛け合わせた値等の、上記のような溶出時間から算出される値であってもよい。
抗体の溶出時間と当該時間における検出値との積の総和値は、一定の時間間隔の溶出時
間に対する検出値との積の総和でもよく、不規則な時間間隔の溶出時間に対する検出値との積の総和でもよく、連続した溶出時間に対する検出値との積の総和(積分)でもよい。前記時間間隔は、例えば、検出値のデータ取得間隔であってよい。また、前記時間間隔は、例えば、秒単位でもよく、分単位でもよい。時間間隔が広がることで抗体の分離パターンの特徴を数値に反映する際の精度が低下するため、1分以下の時間間隔での総和値を求めるのが好ましい。総和値は、例えば、溶出時間と実測定した検出値との積の総和値であってもよく、近似曲線で関数化した溶出時間と検出値との関係性の式から算出した総和値であってもよく、前記近似曲線を基に積分することで得た総和値であってもよい。
一例として、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体と強く結合する抗体の分離パターンでは、溶出時間が遅い領域に高い検出値を示すため、溶出時間と当該溶出時間における検出値との積の総和値(分離パターンの特徴値)は高い値を示す。一方、前記担体と弱く結合する抗体の分離パターンでは、溶出時間が早い領域に高い検出値を示すため、溶出時間と当該溶出時間における検出値との積の総和値(分離パターンの特徴値)は低い値を示す。
また、特定の時間から溶出時間を引いた値と、当該溶出時間における検出値との積の総和値を算出する場合、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体と強く結合する抗体の分離パターンでは低い値が算出され、前記担体と弱く結合する抗体の分離パターンでは高い値が算出される(逆相関)。そのため、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体と強く結合する抗体の量を強調させるデータを取得したい場合は、前記抗体の溶出時間と当該溶出時間における検出値との積の総和値を、分離パターンの特徴値として用いてもよい。
また、溶出時間と当該溶出時間における検出値との積の総和値を、検出値の総和値で除した値(本明細書では「形状正規化値」とも表記する)を、分離パターンの特徴値として用いてもよい。
さらに、抗体の溶出時間として、前記溶出時間を累乗した値を用いてもよい。すなわち、抗体の溶出時間を累乗した値と当該糖出時間における検出値との積の総和値を、分離パターンの特徴値として用いてもよい。前記累乗することで、総和値もしくは形状正規化値への溶出時間の影響が大きくなり、前記担体への抗体結合能の違いをより顕著に評価することが可能となる。一方で累乗することで、測定再現性を示す変動係数CV値が大きくなるため、累乗の回数(冪指数)は、10以下が好ましく、7以下がより好ましい。
一方、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体と弱く結合する抗体の量を強調させるデータを取得したい場合は、特定の時間と前記抗体の溶出時間との差と、当該溶出時間における検出値との積の総和値を、分離パターンの特徴として用いればよく、特定の時間と前記抗体の溶出時間との差を累乗した値と、当該溶出時間における検出値との積の総和値を、分離パターンの特徴として用いてもよい。
総和値および/または形状正規化値から、ピーク分割値を換算してもよい。「ピーク分割値」とは、分離パターン中に出現する各ピークのパラメータを意味する。ピークのパラメータとしては、ピーク面積、ピーク面積%、ピーク幅、ピーク幅%、ピーク高さ、ピーク高さ%が挙げられ、特に、ピーク面積やピーク面積%が挙げられる。本発明における「第Nピーク」(Nは正の整数)とは、特記しない限り、溶出の開始後(例えば、グラジエントの開始後)にN番目に溶出するピークを意味してよい。例えば、本発明における「第1〜第3ピーク」とは、それぞれ、特記しない限り、溶出の開始後(例えば、グラジエントの開始後)に1〜3番目に溶出するピークを意味してよい。なお、ピークは、特に、ピーク面積%が1%以上のものであってもよい。言い換えると、「第Nピーク」(Nは正の
整数)とは、特に、溶出の開始後にN番目に溶出する、ピーク面積%が1%以上のピークを意味してもよい。例えば、「第1〜第3ピーク」とは、特に、それぞれ、溶出の開始後に1〜3番目に溶出する、ピーク面積%が1%以上のピークを意味してもよい。「ピーク面積%」とは、各ピーク(ピーク領域)の面積を、全ピークの面積の合計値で割った値(百分率)を意味する。また、「ピーク幅%」とは、各ピーク(ピーク領域)の幅を、全ピークの幅の合計値で割った値(百分率)を意味する。また、「ピーク高さ%」とは、各ピーク(ピーク領域)の高さを、全ピークの高さの合計値で割った値(百分率)を意味する。本発明における「ピーク領域」とは、ピークを有する領域であって、特定の溶出時間に挟まれた検出値の領域のことをいう。例えば、「第Nピーク領域」とは、第Nピークを有する領域であって、特定の溶出時間に挟まれた検出値の領域のことをいう。すなわち、例えば、「第1ピーク領域」とは、第1及び第2ピークの境界となる溶出時間(以下、境界時間とも記載)と当該境界時間より前の溶出時間の任意の値との間の検出値の領域のことをいう。前記溶出時間の任意の値とは、ベースライン補正を行った際の基準点であってもよく、溶出の開始時間であってもよく特に限定されないが、当該カラムに充填したFc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体に結合しない非吸着画分のピークから、当該担体に結合した抗体由来の分離ピークが得られるまでの間に設定すると好ましい。また、「第2ピーク領域」とは、第1及び第2ピークの境界時間と第2及び第3ピークの境界時間との間の検出値の領域のことをいう。また、「第3ピーク領域」とは、第2及び第3ピークの境界時間と当該境界時間より後の溶出時間の任意の値との間の検出値の領域のことをいう。前記溶出時間の任意の値とは、ベースライン補正を行った際の基準点であってもよく、溶出の終了時間であってもよく特に限定されないが、前記カラムに充填したFc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体に結合した抗体由来の分離ピークが得られた後の時間から、前記カラムを溶出液で洗浄後、平衡化液に切り替えて当該カラムを平衡化する際、当該切り替わりに伴い発生する、検出値の変動が得られるまでの間に設定すると好ましい。
各ピーク分割値を換算するために、各ピーク分割値と総和値および/または形状正規化値との関係式を求めるとよい。各ピーク面積は総和値から、各ピーク面積%は形状正規化値から、それぞれ換算すると相関性が高く好ましい。各ピーク分割値は、総和値および/または形状正規化値から直接的もしくは間接的に換算してもよい。間接的に換算する一例として、ピークが第1〜第3ピークからなる場合、第1ピーク面積%および第3ピーク面積%を前記関係式により直接的に換算した後、全ピーク面積%である100から前記換算した値を除することで間接的に第2ピーク面積%を求めてもよい。
総和値および/または形状正規化値からの換算により、各ピーク分割値を精度よく算出することができる。総和値および/または形状正規化値からの換算により、例えば、ピークの分離が不明瞭な場合であっても、各ピーク分割値を精度よく算出することができる。算出した各ピーク分割値は、例えば、各ピーク分割値は、任意の用途に利用されてよい。
解析工程で用いる検出値としては、前記(b)の工程で用いる検出器で得られた値を用いるとよい。前記(b)の工程で用いる検出器で得られた値は、そのまま、あるいは適宜、ベースライン等を補正してから、検出値として用いてよい。
分離パターンの特徴の算出で用いる溶出時間や検出値は、標準物質で得られた分離パターンに基づく補正や被検者の性質に基づく補正等の、補正がなされていてもよい。標準物質で得られた分離パターンに基づく補正を行なう場合、当該標準物質として標準抗体を用いると、測定再現性が向上するため好ましい。前記標準抗体は、不溶性担体に固定化されたFc結合性タンパク質に吸着する抗体であればよい。前記標準抗体として、具体的には、Fc結合性タンパク質がFcγレセプターの場合、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4が挙げられる。前記標準抗体は、試料中に含まれる抗体と同一由来の抗体であると
好ましい。一例として、試料中に含まれる抗体がヒト由来の抗体である場合、標準抗体は、ヒト由来の抗体であるのが好ましく、例えば、ヒト血液由来でもよく、ヒトミエローマ由来でもよく、ヒト培養細胞由来でもよく、特に限定されない。
溶出時間の補正は、例えば、基準となる標準抗体の分離パターン(以下、「標準抗体の第1の分離パターン」とも表記する)から得られる溶出時間と、別途測定した標準抗体の分離パターン(以下、「標準抗体の第2の分離パターン」とも表記する)から得られる溶出時間との差異(すなわち、標準抗体の溶出時間の変動)に基づいて実施してよい。これにより、例えば、カラムの長期間および/または多数回の使用に伴って生じ得る抗体の溶出時間の変動を補正できる。標準抗体の第1の分離パターンは、前記(a)の工程の前の任意の測定で得られた標準抗体の分離パターンであってよい。すなわち、標準抗体の第1の分離パターンは、前記(a)の工程の前に標準抗体を分析して得られた標準抗体の分離パターンであってよい。標準抗体の第2の分離パターンは、試料の分析(すなわち、前記(a)および(b)の工程)の前または後に標準抗体を分析して得られた標準抗体の分離パターンであってよい。すなわち、標準抗体の第2の分離パターンの取得は、試料の分析の前または後に実施されてよい。標準抗体の第2の分離パターンの取得は、試料の分析と近い時期に実施されるのが、溶出時間の補正の精度が向上し得る点で好ましい。標準抗体の第2の分離パターンの取得と試料の分析との間隔(すなわち、標準抗体の第2の分離パターンの取得と試料の分析との間に含まれる任意の対象物の分析の回数)は、10回以内、7回以内、5回以内、3回以内、2回以内、または1回以内であってもよく、ゼロ回(すなわち、標準抗体の第2の分離パターンの取得が試料の分析の直前または直後に実施される)であってもよい。標準抗体の第2の分離パターンの取得は、特に、試料の分析の直前または直後に実施されてよい。標準抗体の第2の分離パターンの取得が試料の分析の直前または直後に実施される場合としては、標準抗体の分析と試料の分析が交互に実施される場合が挙げられる。標準抗体の第1の分離パターンから得られる溶出時間と、標準抗体の第2の分離パターンの溶出時間との差異を、ピーク時間や任意の検出値における溶出時間などから求め、溶出時間の補正に用いてよい。前記補正は、1点の溶出時間の差異に基づいて実施してもよいが、2点以上の溶出時間の差異から当該点を結んだ線もしくは関係式である最小二乗法を含む近似線に基づいて実施すると好ましく、さらに3点以上の溶出時間の差異から前記関係式に基づいて実施するとさらに好ましい。前記溶出時間の点は、前記標準抗体の分離パターンからデータ処理上抽出しやすいピークまたは谷(微分値0の点)の溶出時間とすると、再現性高く補正できるため好ましい。検出値としては、例えば、特定の抗体量で得られた補正抗体による分離パターンの面積値が挙げられる。標準抗体溶液の分析については、試料に代えて標準抗体溶液を用いること以外は、試料の分析(すなわち、前記(a)および(b)の工程)についての記載を準用できる。
すなわち、本発明の分析方法は、例えば、さらに、以下の(A)から(D)の工程を含んでいてよい:
(A)前記(a)の工程の前に、前記カラムに標準抗体溶液を添加して当該標準抗体を当該担体に吸着させ、当該担体に吸着した標準抗体を前記溶出液を用いて溶出させ、標準抗体の第1の分離パターンを得る工程;
(B)前記(a)および(b)の工程の前または後に、前記(A)の工程を再度実施し、標準抗体の第2の分離パターンを得る工程;
(C)前記第1の分離パターンにおける標準抗体の溶出時間と、前記第2の分離パターンにおける標準抗体の溶出時間とを比較する工程;および
(D)前記(C)の比較結果に基づき、前記(b)で得られた分離パターンにおける抗体の溶出時間を補正する工程。
標準抗体の分析で得られた分離パターンに基づく、溶出時間の補正方法の具体例として、抗体を含む検体(例えば、体液)を分析する前に標準抗体溶液を分析して標準抗体の第
1の分離パターンを取得し、抗体を含む検体の分析前または分析後(例えば、直前または直後)に標準抗体溶液を再度分析して標準抗体の第2の分離パターンを取得し、前記第1および第2の分離パターン(特に、標準抗体の溶出時間)を比較し、前記比較結果に基づき抗体の溶出時間(例えば、ピーク時間)を補正する方法が挙げられる。
また、分離パターンの特徴は、被検者の性質に基づき補正してもよい。当該補正の例として、被検者の年齢に基づく補正が挙げられる。例えば、分離パターンの特徴が被検者の年齢に影響を受ける場合、得られた分離パターンの特徴を被検者の年齢に基づいて補正してから、後述する検出工程に用いてもよい。被検者の年齢に基づいて補正された特徴は、例えば、加齢以外の症状についてのリスクの検出に利用でき得る。
本発明の分析方法は、さらに、下記(d)の工程を含んでいてよい:
(d)前記(c)の工程で算出した総和値に基づき、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する工程(以下、「検出工程」とも表記する)。
具体的には、試料が被検者から得たものである場合、本発明の分析方法は、前記(d)の工程を含んでいてよい。本発明の分析方法が前記(d)の工程を含む場合、試料(検体)を提供した被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出できる。すなわち、本発明の分析方法の一態様は、被検者(具体的には、試料を提供した被検者)における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いの検出方法(以下、単に「本発明の検出方法」とも表記する)であってよい。
(d)検出工程
検出工程は、前記(c)の工程で算出した総和値(分離パターンの特徴)を指標として、被検者におけるリスク(すなわち、疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合い)を検出する工程である。
疾患の例として、免疫細胞の活性(例えば、損傷作用や貪食作用)に影響を受ける疾患が挙げられる。前記免疫細胞としては、ナチュラルキラー細胞、単球、マクロファージが例示できる。免疫細胞の活性に影響を受ける疾患として、具体的には、ガン、自己免疫疾患、感染症、アレルギー、炎症疾患が例示できる。
ガンの例として、脳腫瘍、乳ガン、子宮体ガン、子宮頚ガン、卵巣ガン、食道ガン、胃ガン、虫垂ガン、大腸ガン、肝ガン、胆嚢ガン、胆管ガン、膵ガン、副腎ガン、消化管間質腫瘍(GIST)、中皮腫、頭頚部ガン、腎ガン、肺ガン、骨肉腫、ユーイング肉腫、軟骨肉腫、前立腺ガン、精巣腫瘍、腎細胞ガン、膀胱ガン、横紋筋肉腫、皮膚ガン、肛門ガンが挙げられる。ガンの例として、中でも、膵ガン、胃ガン、乳ガン、大腸ガン、腎ガンが挙げられる。
自己免疫疾患の例として、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、多発性硬化症、慢性胃炎、慢性萎縮性胃炎、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、原発性胆汁性胆管炎、自己免疫性膵炎、高安動脈炎、グッドパスチャー症候群、急速進行性糸球体腎炎、巨赤芽球性貧血、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性好中球減少症、特発性血小板減少性紫斑病、バセドウ病、橋本病、原発性甲状腺機能低下症、特発性アジソン病、1型糖尿病、慢性円板状エリテマトーデス、限局性強皮症、天疱瘡、膿疱性乾癬、尋常性乾癬、類天疱瘡、妊娠性疱疹、線状IgA水疱性皮膚症、後天性表皮水疱症、円形脱毛症、尋常性白斑、サットン後天性遠心性白斑・サットン母斑、原田病、自己免疫性視神経症、自己免疫性内耳障害、特発性無精子症、習慣性流産、リウマチ、全身性エリテ
マトーデス、抗リン脂質抗体症候群、多発性筋炎、皮膚筋炎、強皮症、シェーグレン症候群、IgG4関連疾患、血管炎症候群、混合性結合組織病が挙げられる。自己免疫疾患の例として、中でも、リウマチやシェーグレン症候群が挙げられる。
感染症の例として、細菌感染症、真菌感染症、寄生性原虫感染症、寄生性蠕虫感染症、ウイルス感染症が挙げられる。細菌感染症の例として、レンサ球菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、腸球菌、リステリア、髄膜炎菌、淋菌、病原性大腸菌、クレブシエラ、プロテウス、百日咳菌、緑膿菌、セラチア、シトロバクター、アシネトバクター、エンテロバクター、マイコプラズマ、クロストリジウム、リケッチア、クラミジア等の各種細菌による感染症;結核、非結核性抗酸菌症、コレラ、ペスト、ジフテリア、赤痢、猩紅熱、炭疽、梅毒、破傷風、ハンセン病、レジオネラ肺炎、レプトスピラ症、ライム病、野兎病、Q熱が挙げられる。真菌感染症の例として、アスペルギルス症、カンジダ症、クリプトコッカス症、白癬菌症、ヒストプラズマ症、ニューモシスチス肺炎(カリニ肺炎)が挙げられる。寄生性原虫感染症の例として、アメーバ赤痢、マラリア、トキソプラズマ症、リーシュマニア症、クリプトスポリジウム症が挙げられる。寄生性蠕虫感染症の例として、エキノコックス症、日本住血吸虫症、フィラリア症、回虫症、広節裂頭条虫症が挙げられる。ウイルス感染症の例として、インフルエンザ、ウイルス性肝炎、ウイルス性髄膜炎、ウイルス性胃腸炎、ウイルス性結膜炎、後天性免疫不全症候群(AIDS)、成人T細胞白血病、エボラ出血熱、黄熱、風邪症候群、狂犬病、サイトメガロウイルス感染症、重症急性呼吸器症候群(SARS)、中東呼吸器症候群(MERS)、新型コロナウイルス感染症(COVID−19)、進行性多巣性白質脳症、水痘・帯状疱疹、単純疱疹、手足口病、デング熱、日本脳炎、伝染性紅斑、伝染性単核球症、天然痘、風疹、急性灰白髄炎(ポリオ)、麻疹、咽頭結膜熱(プール熱)、マールブルグ出血熱、腎症候性出血熱、ラッサ熱、流行性耳下腺炎、ウエストナイル熱、ヘルパンギーナ、チクングニア熱が挙げられる。感染症は、例えば、日和見感染症であってもよい。
アレルギーの例として、アナフィラキシーショック、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、溶血性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、薬剤性溶血性貧血、顆粒球減少症、血小板減少症、グッドパスチャー症候群、血清病、全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ、糸球体腎炎、過敏性肺炎、アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)、接触性皮膚炎、アレルギー性脳炎、移植拒絶反応、結核性空洞、類上皮細胞性肉芽腫が挙げられる。
炎症疾患の例として、IL−6やTNF−α等の炎症性サイトカインにより誘導される疾患が挙げられる。炎症疾患の例として、具体的には、脳炎、骨髄炎、髄膜炎、神経炎、眼の炎症(涙腺炎、強膜炎、上強膜炎、角膜炎、脈絡網膜炎、網膜炎、脈絡網膜炎、眼瞼炎、結膜炎、ぶどう膜炎等)、耳の炎症(外耳炎、中耳炎、内耳炎等)、乳腺炎、心炎(心内膜炎、心筋炎、心膜炎等)、血管炎(動脈炎、静脈炎、毛細血管炎等)、呼吸器の炎症(副鼻腔炎、鼻炎、咽頭炎、喉頭炎、気管炎、気管支炎、細気管支炎、肺炎、胸膜炎、縦隔炎等)、口腔の炎症(口内炎、歯肉炎、歯肉口内炎、舌炎、扁桃炎、シラデン炎、耳下腺炎、口唇炎、歯髄炎、鼻炎等)、消化器の炎症(食道炎、胃炎、胃腸炎、腸炎、小腸炎、大腸炎、十二指腸炎、回腸炎、虫垂炎、直腸炎等)、皮膚炎、蜂巣炎、汗腺炎、関節炎、皮膚筋炎、筋炎、滑膜炎、腱炎、脂肪織炎、骨炎、骨髄炎、骨膜炎、腎炎、輸尿管炎、膀胱炎、尿管炎、卵巣炎、卵管炎、子宮内膜炎、子宮頸管炎、膣炎、外陰炎、精巣炎、精巣上体炎、前立腺炎、精嚢膀胱炎、亀頭炎、包皮炎、絨毛膜羊膜炎、臍帯炎、臍炎、肝炎、上行性胆管炎、胆嚢炎、膵炎、腹膜炎、下垂体炎、甲状腺炎、副甲状腺炎、副腎炎、リンパ管炎、リンパ節炎、悪液質、フレイル(虚弱)、サルコペニア、ロコモティブシンドローム等の加齢関連疾患が例示できる。炎症疾患の例として、中でも、膵炎が挙げられる。
検出工程においては、前記(c)の工程で算出した分離パターンの特徴値を指標として、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出してよい。すなわち、前記特徴値は、被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出するための指標として用いられるデータとみなしてよい。具体的には、被検者から得た抗体をFc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムを用いて分離することで得られる分離パターンに基づき算出した分離パターンの特徴値を指標として、当該被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出できる。すなわち、本発明の分析方法または検出方法は、被検者から得た抗体を前記カラムを用いて分離することで得られる分離パターンの特徴値を指標として、当該被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを精度よく検出するための方法として提供してもよい。なお、本明細書では、疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを総称して、単に「リスク」とも表記する。また、本明細書において「リスクの検出」および「リスクの評価」は、同義に用いられてよい。
被検者における発症リスクの検出としては、被検者において発症リスクがあるかないかの検出(定性的検出)や、被検者においてリスクが高いか低いかの検出(定量的検出)が挙げられる。
疾患の有無の検出としては、被検者が現在疾患を発症している可能性があるかないかの検出(定性的検出)や、被検者が現在疾患を発症している可能性が高いか低いかの検出(定量的検出)が挙げられる。
疾患の発症リスクの検出としては、被検者が将来疾患を発症する可能性または発症した場合に重症化する可能性があるかないかの検出(定性的検出)や、被検者が将来疾患を発症する可能性または発症した場合に重症化する可能性が高いか低いかの検出(定量的検出)が挙げられる。
疾患の進行度合いの検出としては、被検者における現在の疾患の進行度合い(例えば重症度)が大きいか小さいかの検出(定量的検出)が挙げられる。
加齢の進行度合いの検出としては、被検者における現在の加齢の進行度合い(例えば重症度)が大きいか小さいかの検出(定量的検出)が挙げられる。
すなわち、「被検者において発症リスクがある」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性があること、被検者が将来疾患を発症する可能性があること、および/または被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性があることを意味してよい。一方、「被検者において発症リスクがない」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性がないこと、被検者が将来疾患を発症する可能性がないこと、および/または被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性がないことを意味してよい。
また、「被検者において発症リスクが高い」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性が高いこと、被検者が将来疾患を発症する可能性が高いこと、被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性が高いこと、被検者における現在の疾患の進行度合いが大きいこと、および/または被検者における現在の加齢の進行度合いが大きいことを意味してよい。一方、「被検者において発症リスクが低い」とは、例えば、被検者が現在疾患を発症している可能性が低いこと、被検者が将来疾患を発症する可能性が低いこと、被検者が将来疾患を発症した場合に重症化する可能性が低いこと、被検者における現在の疾患の進行度合いが小さいこと、および/または被検者における現在の加齢の進行度合
いが小さいことを意味してよい。
検出工程は、例えば、分離パターンの特徴値の高低を指標として実施できる。前記特徴値の高低は、例えば、前記(c)の工程で算出した分離パターンの特徴値を所定の閾値と比較することにより決定できる。言い換えると、検出工程は、例えば、分離パターンから得られた特徴値を閾値と比較する工程を含んでいてよい。
すなわち、「分離パターンの特徴値が高い」とは、例えば、分離パターンの特徴値が閾値を基準として高いことを意味してよい。また、「分離パターンの特徴値が閾値を基準として高い」とは、例えば、分離パターンの特徴値が閾値以上であること、分離パターンの特徴値が閾値を超えていること、または分離パターンの特徴値が閾値よりも統計学的に有意に高いことを意味してよい。「分離パターンの特徴値が閾値を基準として高い」場合の具体例として、分離パターンの特徴値が閾値の1.01倍以上、1.02倍以上、1.03倍以上、1.05倍以上、1.07倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、1.7倍以上、2倍以上、2.5倍以上、または3倍以上である場合が挙げられる。
一方、「分離パターンの特徴値が低い」とは、例えば、分離パターンの特徴値が閾値を基準として低いことを意味してよい。また、「分離パターンの特徴値が閾値を基準として低い」とは、例えば、分離パターンの特徴値が閾値以下であること、分離パターンの特徴値が閾値未満であること、または分離パターンの特徴値が閾値よりも統計学的に有意に低いことを意味してよい。「分離パターンの特徴値が閾値を基準として低い」場合の具体例として、分離パターンの特徴値が閾値の0.99倍以下、0.98倍以下、0.97倍以下、0.95倍以下、0.93倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、または0.3倍以下である場合が挙げられる。
分離パターンの特徴値は、例えば、閾値を基準に、危険範囲に区分されてよい。分離パターンの特徴値は、例えば、閾値を基準に、非危険範囲に区分されてよい。分離パターンの特徴値は、具体的には、例えば、閾値を基準に、危険範囲と非危険範囲とに区分されてもよい。「危険範囲」とは、分離パターンの特徴値について、被検者においてリスクがある可能性が高い範囲を意味してよい。「非危険範囲」とは、分離パターンの特徴値について、被検者においてリスクがない可能性が高い範囲を意味してよい。すなわち、分離パターンの特徴値が危険範囲にあれば、被検者においてリスクがある、またはリスクが高いことを検出してよい。一方、分離パターンの特徴値が非危険範囲にあれば、被検者においてリスクがない、またはリスクが低いことを検出してよい。
なお、「特定の分離パターンの特徴値が一定の基準を満たす(例えば、低いもしくは高い、または特定の範囲にある)場合に被検者においてリスクがある、ない、高い、または低いことを検出する」とは、少なくとも当該基準を満たす範囲において被検者においてリスクがある、ない、高い、または低いことを検出することを意味し、当該基準を満たさない範囲において被検者においてリスクが検出されることを要求しない。しかし、一態様においては、「特定の分離パターンの特徴値が一定の基準を満たす(例えば、低いもしくは高い、または特定の範囲にある)場合に被検者においてリスクがある、ない、高い、または低いことを検出する」場合、当該基準を満たさない範囲において、それぞれ、被検者においてリスクがない、ある、低い、または高いことを検出してもよい。
閾値は、例えば、分離パターンの特徴の種類や所望の判定精度等の諸条件に応じて、当業者が適宜設定できる。閾値は、例えば、疾患や加齢等の判定対象の症状ごとに設定されてよい。閾値を決定する手段は、特に制限されない。閾値は、例えば、集団を2群に区分
するためのデータ解析に利用される公知の手法に従って決定できる。
閾値は、例えば、対照被検者から得た抗体試料の、分離パターンの特徴値に基づいて決定できる(本明細書では、対照被検者から得た抗体試料の分離パターンを「対照分離パターン」とも表記する)。すなわち、対照分離パターンの特徴値に基づき、閾値を決定し、検出工程を実施してもよい。具体的には、対照分離パターンの特徴値を閾値の決定に用いることで、分離パターンの特徴値との比較に用いられてよい。言い換えると、検出工程では、例えば、分離パターンの特徴値と対照分離パターンの特徴値との比較を行なってもよい。
前記対照被検者としては、陽性対照や陰性対照が挙げられる。「陽性対照」とは、リスクがある、または高いと検出され得る被検者を意味してよい。「陰性対照」とは、リスクがない、または低いと検出され得る被検者を意味してよい。陽性対照としては、上記例示したような疾患(特に、リスクの検出対象となる疾患と同一の疾患)に罹患している、または罹患したことがある個体や、加齢が進行した個体、それらの組み合わせの性質を有する個体が挙げられる。陰性対照としては、上記例示したような疾患(特に、リスクの検出対象となる疾患と同一の疾患)に罹患していない、または罹患したことがない個体や、加齢が進行していない個体、それらの組み合わせの性質を有する個体が挙げられる。閾値は、陽性対照を分析し算出した分離パターンの特徴値のみに基づいて決定してもよく、陰性対照を分析し算出した分離パターンの特徴値のみに基づいて決定してもよく、陽性対照と陰性対照の両方を分析し算出した分離パターンの特徴値に基づいて決定してもよい。閾値は、通常は、陽性対照と陰性対照の両方を分析し算出した分離パターンの特徴値に基づいて決定すればよい。陽性対照と陰性対照の人数は、リスクの判定が所望の精度で可能となる閾値が得られる限り、特に制限されない。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、1人であってもよく、2人またはそれ以上であってもよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、通常、複数名であってよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、例えば、5人以上、10人以上、20人以上、または50人以上であってもよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、例えば、10000人以下、1000人以下、または100人以下であってもよい。
陽性対照を分析し算出した分離パターンの特徴値のみに基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陽性対照の複数個体を分析し算出した分離パターンの特徴値の上限から下限までの範囲から選択される値、例えば平均値、を閾値として設定してもよい。また、例えば、陽性対照の複数個体を分析し算出した分離パターンの特徴値の分布において、陽性対照の所定の割合が危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。所定の割合とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。
陰性対照を分析し算出した分離パターンの特徴値のみに基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陰性対照の複数個体を分析し算出した分離パターンの特徴値の上限から下限までの範囲から選択される値、例えば平均値、を閾値として設定してもよい。また、例えば、陰性対照の複数個体を分析し算出した分離パターンの特徴値の分布において、陰性対照の所定の割合が非危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。所定の割合とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。
陽性対照を分析し算出した分離パターンの特徴値と陰性対照を分析し算出し分離パターンの特徴値との両方に基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陽性対照の所定の割合が危険範囲に含まれ、かつ、陰性対照の所定の割合が非危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。陽性対照のうち危険範囲に含まれるものの割合、および、陰性対照のう
ち非危険範囲に含まれるものの割合は、いずれも高い方が好ましい。これらの割合は、それぞれ、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。これらの割合の両方を高くすることが困難な場合は、例えば、本発明による検出結果の利用目的等の諸条件に応じて、いずれかの割合が優先的に高くなるように閾値を設定してもよい。例えば、偽陰性率を下げるためには、陽性対照の内の危険範囲に含まれるものの割合が優先的に高くなるように閾値を設定してよい。
閾値の決定は、例えば、ソフトウェアを用いて実施してもよい。例えば、統計解析ソフトウェアを用い、陰性対照と陽性対照とを統計学的に最も適切に判別できるような閾値を決定してもよい。そのようなソフトウェアとしては、「R」等の統計解析ソフトウェアが挙げられる。
また、対照被検者としては、標的被検者自体も挙げられる。すなわち、例えば、被検者における分離パターンの特徴値の変動を指標として、被検者におけるリスクを検出してもよい。本明細書において「分離パターンの特徴値が高い」とは、分離パターンの特徴値が増大した場合も包含してよい。本明細書において「分離パターンの特徴値が増大した」とは、具体的には、分離パターンの特徴値が過去の値と比較して増大したことを意味してよい。また、本明細書において「分離パターンの特徴値が低い」とは、分離パターンの特徴値が低下した場合も包含してよい。本明細書において「分離パターンの特徴値が低下した」とは、具体的には、分離パターンの特徴値が過去の特徴値と比較して低下したことを意味してよい。すなわち、閾値としては、過去の特徴値も挙げられる。本明細書において「過去の特徴値」とは、標的被検者から過去の特定時点で得た抗体試料の分離パターンの特徴値を意味する。過去の特定時点における標的被検者は、例えば、陽性対照であってもよく、陰性対照であってもよい。
被検者における分離パターンの特徴値の変動を指標として、被検者におけるリスクの増減を検出してもよい。本明細書において「リスクがある、または高い」とは、リスクが増大した場合も包含してよい。本明細書において「リスクが増大した」とは、具体的には、リスクが過去の特定時点と比較して増大したことを意味してよい。一方、本明細書において「リスクがない、または低い」とは、リスクが低下した場合も包含してよい。本明細書において「リスクが低下した」とは、具体的には、リスクが過去の特定時点と比較して低下したことを意味してよい。
本明細書において「特定の分離パターンを得てリスクの検出の指標とする」とは、当該分離パターンの特徴値そのものを得てリスクの検出の指標とする場合に限られず、当該分離パターンの特徴値を反映する他の値を得て検出の指標とすることも包含する。
リスクの検出結果は、被検者に対してリスクを低減するための処置(以下、「リスク軽減処置」ともいう)を実施するかを決定するための指標として用いてもよい。言い換えると、本発明の検出方法を実施することで、被検者に対してリスク軽減処置を実施するかを決定するための指標が得られる。すなわち、例えば、本発明の検出方法により被検者においてリスクがある、または高いと検出された場合に、被検者に対してリスク軽減処置を実施すると決定してよい。本発明の検出方法は、例えば、単独で、または他の手段と組み合わせて、被検者に対してリスク軽減処置を実施するかを決定するための指標として用いてよい。例えば、本発明の検出方法により被検者においてリスクがある、または高いと検出された症状について、他の手段により確定診断を実施してから、被検者に対してリスク軽減処置を実施すると決定してもよい。リスク軽減処置は、医療行為であってもよく、非医療行為であってもよい。リスク軽減処置としては、前記例示したような疾患や加齢の予防や治療が挙げられる。すなわち、本発明は、例えば、疾患や加齢等の症状の予防または治療方法を提供してよい。予防または治療方法は、例えば、本発明の検出方法を実施する工
程、および本発明の検出方法により被検者においてリスクがある、または高いと検出された場合に、被検者に対して予防または治療を実施する工程を含む、疾患や加齢等の症状の予防または治療方法であってよい。具体的には、本発明の検出方法により被検者においてリスクがある、または高いと検出された症状について予防または治療を実施してよい。予防または治療は、例えば、各症状についての一般的な手段(例えば、投薬や外科手術)により実施できる。
本発明は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに試料を添加し当該試料中に含まれる抗体を前記担体に吸着させる工程と、前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させ抗体の分離パターンを得る工程とを含む、試料中に含まれる抗体の分析方法であって、前記分離パターンにおける抗体の溶出時間と当該時間における検出値との積を総和した値を算出する工程をさらに含むことを特徴としている。
Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムによる抗体の分離パターンにおいて、試料によってはピーク間の明瞭な分離ができない場合や、ピーク数が異なる場合がある。そうなると、抗体分離パターンのピーク面積またはピーク面積%の再現性が得られず、他の試料との前記面積等の比較が困難となる。本発明の方法は、分離パターン全体の傾向として前記カラムに対して結合性の高い抗体が多く存在するか、または結合性の低い抗体が多く存在するかを数値化できる。Fc結合性タンパク質への結合能の高い抗体は、ADCC(抗体依存性細胞傷害)活性が高いため、本発明の方法を用いれば抗体を含む試料全体のADCC活性を見積もれる。検出対象とする抗体の分離パターンを数値化することにより、例えば、被検者の抗体を特定の疾患や加齢等の症状についてのリスクに特徴的な分離パターンを、再現性高く数値化でき、基準となる分離パターンにおける数値化データと比較することで、前述したリスクを精度高く検出できる。また、疾患に対する何らかの処置(投薬、手術等)の前および/またはその後において分離パターンを取得して、基準となる分離パターンと比較することにより、疾患の治療経過のモニタリングや当該処置に対する方針決定の精度が向上する。基準となる分離パターンとしては、対照被検者の分離パターンが挙げられる。基準となる分離パターンとして、具体的には、同一被検者の別の時点(例えば、健常時や同一疾患を発症している時点)での分離パターン、健常者の分離パターン、同一疾患を発症している異なる患者の分離パターン、前記処置に対して奏効性の違いが得られる2群もしくはそれ以上の群に分ける際の基準となる分離パターンが挙げられる。
例えば、健常者(モデル)の分離パターンをモデル分離パターンとし、被験者の分離データをモデル分離パターンと比較することで、何らかの疾病を有するリスクや疾病を発症するリスク等を評価できる。さらに、モデルと被験者の分離パターンの差の要因となるピークの画分を分取することで、健常者(モデル)と被験者との抗体の糖鎖パターンの差を抽出できる。また、患者本人のある時点での分離パターンをモデル分離パターンとし、同一患者の別の時点での分離パターンとモデル分離パターンとを比較することで、当該患者の疾患のモニタリングが行なえる。なお、2つの異なる検体群を比較する場合、統計的確率(P値)を用いて2つの異なる検体群から得られた前記分離データの差が有意な差であるかを評価できる。P値が小さくなると、前記評価結果は有意になるといわれており、P値が有意水準未満の場合、前記評価結果は統計的に有意な差があるといえる。有意水準は一般的に5%である。
本発明によるFc結合性タンパク質に対する抗体の親和性の強さは、当該抗体が結合した結合性物質に対する損傷または貪食作用を持つナチュラルキラー細胞および単球、マクロファージ等の免疫細胞の活性に影響を与えるため、当該親和性の違いを検出することで、ナチュラルキラー細胞および単球、マクロファージによる損傷もしくは貪食作用に影響を受ける疾患の発症リスクを評価できる。当該疾患としては、ガン、自己免疫疾患、感染
症、アレルギー、炎症疾患が挙げられる。感染症としては、日和見感染症が挙げられる。日和見感染症とは健康な状態では感染症を起こさないような病原体が原因で発症する感染症である。病原体としては、ウイルス、細菌、真菌、原虫が挙げられる。また、ワクチン接種や罹患によって獲得した抗体の免疫細胞に対する活性化への効果も、Fc結合性タンパク質に対する抗体の親和性の強さから評価できる。当該獲得した抗体の血液中の量を測定する他に、当該抗体のFc結合性タンパク質に対する親和性の強さを測定することで、感染症に対する発症のリスクを精度よく予測することもできる。
以下、実施例および比較例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
実施例1 アフィニティクロマトグラフィカラム(FcR9_Fカラム)の作製
特開2018−197224号公報の方法で得られたFc結合性タンパク質FcR9_F_Cys(配列番号2)を、以下に示す方法でゲルに固定化し、FcR9_Fカラムを作製した。なおFcR9_F_Cys(配列番号2)において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までが改良PelBシグナルペプチドであり、24番目のグリシン(Gly)から199番目のグルタミン(Gln)までがFc結合性タンパク質FcR9_F(特開2018−197224号公報)のアミノ酸配列(配列番号1の17番目から192番目までの領域に相当)、200番目のグリシン(Gly)から207番目のグリシン(Gly)までがシステインタグ配列である。また前記FcR9_Fは、配列番号1に示す天然型FcγRIIIaの17番目から192番目までのアミノ酸残基であり、ただし以下の(I)から(X)に示すアミノ酸置換を有したポリペプチドである:
(I)配列番号1の27番目(配列番号4では34番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
(II)配列番号1の29番目(配列番号4では36番目)のフェニルアラニン(Phe)をイソロイシン(Ile)に置換
(III)配列番号1の35番目(配列番号4では42番目)のチロシン(Tyr)をアスパラギン(Asn)に置換
(IV)配列番号1の48番目(配列番号4では55番目)のグルタミン(Gln)をアルギニン(Arg)に置換
(V)配列番号1の75番目(配列番号4では82番目)のフェニルアラニン(Phe)をロイシン(Leu)に置換
(VI)配列番号1の92番目(配列番号4では101番目)のアスパラギン(Asn)をセリン(Ser)に置換
(VII)配列番号1の117番目(配列番号4では124番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
(VIII)配列番号1の121番目(配列番号4では128番目)のグルタミン酸(Glu)をグリシン(Gly)に置換
(IX)配列番号1の171番目(配列番号4では178番目)のフェニルアラニン(Phe)をセリン(Ser)に置換
(X)配列番号1の176番目(配列番号4では183番目)のバリン(Val)をフェニルアラニン(Phe)に置換。
(1)2mLの分離剤用親水性ビニルポリマー(東ソー社製:液体クロマトグラフィ用充填剤)の表面の水酸基をヨードアセチル基で活性化後、特開2018−197224号公報の方法で得られたFcR9_F_Cysを4mg反応させることで、FcR9_F固定化ゲルを得た。
(2)(1)で作製したFcR9_F固定化ゲル1.2mLをφ4.6mm×75mmのステンレスカラムに充填してFcR9_Fカラムを作製した。
実施例2 FcR9_Fカラムを用いた血清中の抗体分析(溶出時間補正なし1)
(1)インフォームドコンセントを得た被験者から採血した血液を遠心し、血清を得た。当該血清をPBS(Phosphate Buffered Saline)(pH7.4)で10倍希釈後、0.2μm径のフィルター(Merck Millipore社製)に通すことで血清サンプルを調製した。
(2)実施例1で作製したFcR9_Fカラムを高速液体クロマトグラフィー装置(東ソー社製)に接続し、100mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH6.5)(以下「平衡化液」とも表記)で平衡化後、(1)で調製した血清サンプルを流速1.0mL/minにて10μL添加した。検出器による測定間隔は、1/5秒毎にデータを取得することで行った。
(3)流速1.0mL/minのまま平衡化液で10分洗浄後、500mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH4.0)(以下「溶出液」とも表記)を用いたpHグラジエント(25分で溶出液が100%となるグラジエント)で吸着したガンマグロブリンを溶出し、分離パターンを得た。
(4)使用回数の異なるカラムを用いて、(2)および(3)の操作を合計3回行なった。
(5)(3)で得た分離パターン(図1)を、pHグラジエントを開始した時間(溶出開始後10分、解析開始時間T)、およびpHグラジエントが終了した(すなわち溶出液が100%となった)時間(溶出開始後35分、解析終了時間T)がともに検出値I=0となるよう、ベースライン補正した。
(6)ベースライン補正した分離パターンから、下記式1を用いてガンマグロブリンの分離パターンにおける検出値の検出器による測定間隔と同じ1/5秒毎の総和値を、下記式2を用いてガンマグロブリン分離パターンの形状正規化値を、それぞれ求めた。
Figure 2021162586
比較例1
(1)実施例2で用いた血清サンプルと同一の検体を用いて、実施例2(1)から(5)と同様な方法でガンマグロブリンの分離パターンを得、ベースライン補正した。
(2)図1の<1>領域から第1ピーク面積を算出し、当該第1ピーク面積を図1の<1>、<2>、および<3>領域の合計面積で割った値(百分率)から第1ピーク面積%を算出した。
実施例3 FcR9_Fカラムを用いた血清中の抗体分析(溶出時間補正なし2)
(1)ヒトミエローマ血漿由来IgG3(mIgG3、Sigma社製)を0.2μm
径のフィルター(Merck Millipore社製)に通すことで、標準抗体溶液を調製した。溶液中のタンパク濃度はNanoDrop超微量分光光度計(Thermo Scientific社製)で測定した。
(2)測定試料として(1)で調製した標準抗体溶液を用いた他は、実施例2(2)および(3)と同様な手順で分離パターンを得た。
(3)標準抗体溶液分析後、実施例2(2)および(3)と同様な手順で、実施例2(1)で調製した血清サンプルを分析し、ガンマグロブリンの分離パターンを得た。
(4)使用回数の異なるカラムを用いて、(2)および(3)の操作を合計3セット行なった。
(5)実施例2(5)と同様な方法でベースライン補正した。
(6)ベースライン補正した分離パターンから、下記式3を用いて標準抗体サンプルで補正したガンマグロブリンの分離パターンにおける検出値の検出器による測定間隔と同じ1/5秒毎の総和値を、前記式2を用いてガンマグロブリン分離パターンの形状正規化値を、それぞれ求めた。
Figure 2021162586
実施例4 FcR9_Fカラムを用いた血清中の抗体分析(溶出時間補正あり1)
(1)実施例3(2)から(5)と同様な方法で、ベースライン補正したガンマグロブリンの分離パターンを得た。なお本実施例では、1セット目に標準抗体溶液を分析した結果から得られた分離パターンを基準値としている。
(2)下記式4および式5を用いて補正したガンマグロブリンの分離パターンにおける検出値の検出器による測定間隔と同じ1/5秒毎の総和値を、下記式5および式6を用いてガンマグロブリン分離パターンの形状正規化値を、それぞれ求めた。なお式4から式6の補正式は、図2に示すように、解析開始時間Tは1セット目(基準値)と2セット目以降(補正対象)で差異は生じない一方、ピーク時間は基準値Tcsと補正対象Tcで差異が生じると仮定して作成した式である。
Figure 2021162586
実施例5 FcR9_Fカラムを用いた血清中の抗体分析(溶出時間補正あり2)
(1)実施例4(1)と同様な方法でガンマグロブリンの分離パターンを取得した。
(2)下記式7から式9を用いて補正したガンマグロブリンの分離パターンにおける検出値の検出器による測定間隔と同じ1/5秒毎の総和値を、式8から式10を用いてガンマグロブリン分離パターンの形状正規化値を、それぞれ求めた。なお式7から式10の補正式は、図3に示すように、解析開始時間、ピーク時間ともに基準値(解析開始時間Tcs、ピーク時間Tcs)と補正対象(解析開始時間Tc、ピーク時間Tc)とで差異が生じており、かつ基準値における解析終了時間Tcsと補正対象における解析終了時間Tcとの差が、TcsとTcとの差に等しいと仮定して作成した式である。
Figure 2021162586
実施例2から5および比較例1の結果をまとめて表1に示す。表1では、同一血清サンプルを3回測定した際の値のばらつき(CV値[%])で記載しており、当該値が小さい程、ばらつきが低く、測定再現性の高い結果といえる。
Figure 2021162586
第1ピーク面積および面積%で解析した場合(比較例1)、CV値が16.6%および15.3%と大きくばらついた。一方、抗体の溶出時間(T−T)と当該時間における検出値Iとの積の総和値、または当該総和値を検出値Iの総和値で除することで補正した形状正規化値で解析する(実施例2および3)と、CV値が改善し(ともに総和値で6.1%、形状正規化値で4.5%)、測定再現性が向上していることがわかる。比較例
1の解析方法では第1ピーク(図1の<1>)とその他のピーク(図1の<2>および<3>)との分割領域が明確でなく、ピーク面積値の算出にばらつきが生じやすいが、実施例2および実施例3の解析方法ではピークを分割することなく解析するため、比較例1の解析方法と比較し、ばらつきが生じにくいと考えられる。
標準抗体溶液におけるピーク時間Tcsと、抗体を含む検体(血清サンプル)におけるピーク時間Tcとの差異に基づき、前記総和値を補正する(実施例4および実施例5)と、CV値がそれぞれ2.4%(実施例4)および2.7%(実施例5)となり、溶出時間による補正をしない場合(実施例2および実施例3)と比較し測定再現性が向上していることがわかる。血清サンプルを繰り返し測定をすると、カラム内の担体に前記サンプル由来のタンパク質が吸着したり、血清由来のプロテアーゼにより当該担体に結合したFc結合性タンパク質が断片化されるおそれがあるため、同一検体を分析しても溶出時間が変化するおそれがある。そのため、溶出時間の補正を行なうことで測定再現性が向上したと考えられる。
標準抗体におけるピーク時間Tcsと、抗体を含む検体(血清サンプル)におけるピーク時間Tcとの差異に基づき、前記形状正規化値を補正する(実施例4および実施例5)と、CV値がそれぞれ1.3%(実施例4)および0.4%(実施例5)となり、総和値から補正したときと比較して測定再現性がさらに向上した。特に実施例5において顕著にCV値が低下した。このことから標準抗体溶液におけるピーク時間Tcsと抗体を含む検体(血清サンプル)におけるピーク時間Tcとの差異が、当該検体中に含まれる抗体の分離パターン全体のずれに等しいという仮定が、解析開始時間Tは1セット目(基準値)と2セット目以降(補正対象)で差異は生じない一方、ピーク時間は基準値Tcsと補正対象Tcで差異が生じると仮定するより、標準抗体を用いた抗体を含む検体(血清サンプル)の溶出時間補正において測定再現性を向上させることがわかる。
実施例6 標準抗体の検討
(1)ヒトミエローマ血漿由来IgG3(mIgG3、Sigma社製)、ヒトミエローマ血漿由来IgG1(mIgG1、Sigma社製)およびヒト血漿由来IgG1(pIgG1、Fitzgerald社製)をそれぞれ0.2μm径のフィルター(Merck Millipore社製)に通し、標準抗体溶液を調製した。溶液中のタンパク濃度はNanoDrop超微量分光光度計(Thermo Scientific社製)で測定した。
(2)(1)で調製したmIgG3、mIgG1、pIgG1すべての標準抗体溶液を分析後、実施例2とは異なる血清サンプルを分析した他は、実施例4(1)と同様な方法で、ベースライン補正したガンマグロブリンの分離パターンを得た。
(3)標準抗体におけるピーク時間Tcsとして、図4のパネル(a)に示すmIgG3のピーク、図4のパネル(b)に示すmIgG1の第1/第2/第3/第4ピーク、ならびに図4のパネル(c)に示すpIgG1のピークのいずれかを用いた他は、実施例5(2)と同様な方法で、ガンマグロブリンの分離パターンにおける検出値の検出器による測定間隔と同じ1/5秒毎の総和値および形状正規化値を求めた。
結果を表2に示す。表2も表1と同様、同一血清サンプルを3回測定した際の値のばらつき(CV値[%])で記載している。
Figure 2021162586
総和値では、標準抗体におけるピークとしてmIgG3またはmIgG1第3ピークを選択したときにCV値が低くなった(mIgG3:1.1%、mIgG1第3ピーク:1.2%)。また形状正規化値では、標準抗体におけるピークとしてmIgG3、mIgG1第3ピークおよびpIgG1のいずれかを選択したときにCV値が低くなった(mIgG3:0.6%、mIgG1第3ピーク:0.4%、pIgG1:0.3%)。
本実施例で分析した、血清サンプル中に含まれる抗体は、由来がpIgG1(血漿由来)と近い。そしてIgG3およびmIgG1第3ピークのピーク時間は、pIgG1のピーク時間に比較的近い(図4)。このことから理論上は、抗体を含む検体の分離パターンにおける当該抗体の溶出時間近傍にある、IgG3、mIgG1第3ピークおよびpIgG1のいずれかのピーク時間の差異に基づき補正をすると、測定再現性が向上するといえる。一方で今回、pIgG1の総和値での結果が芳しくなかった(CV=2.8%)。この原因として、今回用いたpIgG1が溶出液導入前に溶出される未吸着画分の量が多く(図4のパネル(c))、抗体を含む検体での総和値の補正に用いる、標準抗体での総和値にばらつきが発生したためと推測される。
実施例7 標準抗体測定間隔の検討
(1)実施例2(1)で調製した血清サンプルを、以下の1)から3)に示すいずれかの方法で分析し、血清サンプルとして合計30回分析した(図5)他は、実施例4(1)と同様な方法で、ベースライン補正したガンマグロブリンの分離パターンを得た。
1)血清サンプル連続6回分析:標準抗体溶液を1回測定後、血清サンプルを6回測定する操作を5サイクル実施した。
2)血清サンプル連続3回分析:標準抗体溶液を1回測定後、血清サンプルを3回測定する操作を10サイクル実施した。
3)標準抗体と血清サンプルとの交互分析:標準抗体溶液を1回測定後、血清サンプルを1回測定する操作を30サイクル実施した。
(2)標準抗体におけるピーク時間Tcsとして、mIgG1の第3ピークを用いた他は、実施例5(2)と同様な方法で、ガンマグロブリンの分離パターンにおける検出値の検出器による測定間隔と同じ1/5秒毎の総和値および形状正規化値を求めた。
結果を表3に示す。表3は、同一血清サンプルを30回測定した際の値のばらつき(C
V値)で記載している。総和値、形状正規化値とも、3)標準抗体と血清サンプルとの交互分析、が最も測定再現性が良かった(総和値:CV=0.6%、形状正規化値:CV=0.4%)。
Figure 2021162586
実施例8 溶出時間の補正方法の検討
(1)実施例1(1)で作製したFcR9_F固定化ゲル0.8mLをφ4.6mm×50mmのステンレスカラムに充填してFcR9_Fカラムを作製した。
(2)実施例6(1)と同様な方法で標準抗体溶液であるmIgG1を、実施例2(1)と同様な方法で血清サンプルを調製した。
(3)(1)で作製したFcR9_Fカラムを高速液体クロマトグラフィー装置(東ソー社製)に接続し、100mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH6.5)(以下「平衡化液」とも表記)で平衡化後、(2)で調製したmIgG1を流速1.2mL/minにて10μL添加した。検出器による測定間隔は、1/5秒毎にデータを取得することで行った。
(4)流速1.2mL/minのまま平衡化液で7分洗浄後、500mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH4.5)(以下「溶出液」とも表記)を用いたpHグラジエント(11分で溶出液が100%となるグラジエント)で吸着したガンマグロブリンを溶出し、分離パターンを得た。
(5)(3)および(4)の測定方法を用いて、(2)で調製したmIgG1および血清サンプルをそれぞれ交互に測定する操作を50サイクル実施した。
(6)(5)より得られたmIgG1および血清サンプルの分離パターンを、pHグラジエントを開始した時間(溶出開始後7分、解析開始時間T)、およびpHグラジエントが終了した(すなわち溶出液が100%となった)時間(溶出開始後18分、解析終了時間T)がともに検出値I=0となるよう、ベースライン補正した。
(7)(6)より得られたベースライン補正した前記分離パターンに対して、以下の(a)から(c)における溶出時間の補正方法を適用し、溶出時間を補正した分離パターンを得た。なお標準物質の測定結果から行う溶出時間の補正適用範囲は、当該標準物質および当該標準物質の次に測定した血液サンプルまでである。
(a)溶出時間の補正なし
(b)図6において標準物質であるmIgG1の第3ピーク時間であるTcP3を式11におけるTcとして、基準値として測定開始前に取得したmIgG1の第3ピーク時間
であるTcsP3を式11におけるTcsとして代入することで得られる式11より補正する方法。式11は繰り返し測定による分離パターンの変動が、解析開始時間から解析終了時間の範囲の溶出時間において、均一な時間だけシフトしていると仮定して補正する式である。
(c)図6において標準物質であるmIgG1の第1〜3ピーク時間を用いて、式13における補正に使用するピーク数mが3であるとした条件における、式12および式13より補正する方法。式12および式13は繰り返し測定による分離パターンの変動が、解析開始時間から解析終了時間の範囲の溶出時間において、溶出時間に依存して変動幅が異なると仮定し、最小二乗法による単回帰式で、各溶出時間における溶出時間の変動幅と当該溶出時間の複数点との近似線(図8)より得られる値を溶出時間から引くことで補正する式である。
(8)(7)より得られた溶出時間を補正した分離パターンに対して、補正後の溶出開始後7分、および補正後の溶出開始後18分がともに補正後の溶出時間に対する検出値ITca=0となるよう、ベースライン補正して分離パターンを得た。
(9)式14および式16を用いて(8)で得られた分離パターンにおける検出値の検出器による測定間隔と同じ1/5秒毎の総和値を、式15および式17を用いて(8)で得られた分離パターンの形状正規化値をそれぞれ求めた。なお式14から式17における冪指数nはすべて3であり、溶出時間が与える総和値および形状正規化値への影響を高めた。また式14および式15は、分離パターンの溶出時間が遅い領域に検出される抗体が多いと値が増大し、分離パターン全体の傾向としてFc結合性タンパク質に対して結合性の高い抗体が多く存在すると、それに比例して値が増大する。一方、式16および式17は、分離パターンの溶出時間が遅い領域に検出される抗体が多いと値が減少し、分離パターン全体の傾向としてFc結合性タンパク質に対して結合性の高い抗体が多く存在すると、それに反比例して値が減少する。
(10)(9)より得た総和値および形状正規化値から、測定50サイクル分の変動係数(CV値)を得た。
Figure 2021162586
Figure 2021162586
Figure 2021162586
実施例8の結果を表4に示す。式14から得られた値は総和値冪指数3、式15は総和値逆相関冪指数3、式16は形状正規化値冪指数3、式17は形状正規化値逆相関冪指数3とした。溶出時間の補正として、(a)の未補正では式14から式17から得られる値のCV値は17.2%から35.1%となったが、(b)の1点補正では、当該CV値は1.9%から5.6%、(c)の3点補正では、当該CV値は1.0%から3.5%となり、溶出時間の補正を入れることで、大幅にCV値は低下し、さらに補正物質の溶出時間の補正に用いるピーク数を1点から3点に増やすことでCV値はさらに低下し、測定値の繰り返し測定による変動幅が低下した。
図7は実施例7(8)において得られた分離パターンとして、測定1回目と50回目の測定結果を溶出時間の補正方法毎にプロットした図である。当該図から、未補正時に見られる大幅な溶出時間のシフトが、1点補正により第3ピーク位置に溶出時間が補正されていることがわかり、3点補正をすると分離パターン全体がほぼ同一の線上に位置していることから、精度高く補正され、繰り返し測定による変動が抑えられていることがわかる。
3点補正時に用いた補正物質の各ピーク溶出時間および標準物質のピーク溶出時間から基準値のピーク溶出時間を引いた溶出時間のシフトをプロットし、前記点の最小二乗法による近似線を示した図を図8に示す。各ピーク時間における溶出時間のシフト幅は、各溶出時間によって異なっていることがわかる。また、前記プロットした点はほぼ直線上に位置していることがわかり、最小二乗法による単回帰式で溶出時間が補正可能なことがわかる。
Figure 2021162586
実施例9 各ピーク領域との相関
(1)実施例8(2)の標準抗体溶液として抗ヒトCD20ヒト・マウスキメラ抗体(リツキシマブ、全薬工業社製)を用いた他は、実施例8(1)および(2)と同様な方法で標準抗体溶液および血清サンプルを調製した。
(2)実施例8(5)の測定する操作として、(1)で調製したリツキシマブおよび血液サンプルをそれぞれ交互に1日あたり25サイクル測定し、かつ同一の血液サンプルを1日の測定開始および終了時に計5サンプルの測定を行う操作を、8日間実施した他は、実施例8(3)から(5)と同様な方法で、抗体の分離パターンを得た。
(3)実施例8(7)の溶出時間の補正方法として、(c)の補正方法を適用した他は、実施例8(6)から(8)と同様な方法で、補正した分離パターンを得た。
(4)実施例8(9)の冪指数nとして、式14から式17においてそれぞれ1、3、5、7を代入した他は、実施例8(9)および(10)と同様な方法で総和値および形状正規化値のCV値を得た。
(5)(3)で補正した標準物質の分離パターンから、溶出開始後7分から18分の間に検出される3つのピーク間(溶出時間が短い方から第1、2、3ピーク)の谷領域で導関数が0を取る2つの溶出時間で分割した領域をピーク領域とした。第1ピーク領域は溶出開始後7分から第1と第2ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間(第1と第2ピークとの境界時間)までの範囲とし、第2ピーク領域は第1と第2ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間から第2と第3ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間までの範囲(第2と第3ピークとの境界時間)とし、第3ピーク領域は第2と第3ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間から溶出開始後18分までの範囲とした。当該標準物質で定義付けたピーク領域を、測定した前記血清サンプルのそれにすべて適用することで、当該サンプルのピーク領域の同定を行った。
(6)(5)より得られるピーク領域を基に、ピーク分割値として血液サンプルにおける第1ピーク面積、第2ピーク面積、第3ピーク面積、また各ピーク面積を溶出開始後7分から18分のピーク面積で割って得られる第1ピーク面積%、第2ピーク面積%、第3ピーク面積%を得た。各ピーク面積は(4)で得られた総和値と、各ピーク面積%は(4)で得られた形状正規化値との決定係数を求めた。
実施例9の結果を表5から表8に示す。表5の総和値とピーク分割値との決定係数から、第1ピーク面積とは、式14と比較して(決定係数0.06から0.42)、式16の冪指数nが3以上(決定係数0.97から1.00)で総和値を求めることにより相関が高い値を得ることができた。一方、第3ピーク面積とは、式16と比較して(決定係数0.10から0.54)、式14の冪指数3以上(決定係数0.91から0.98)で総和値を求めることにより相関が高い値を得ることができた。第1ピーク面積とは溶出時間の早い領域が強調される式16で得られた値で相関性が高くなり、第3ピーク面積とは溶出時間の遅い領域が強調される式14で得られた値で相関性が高くなる結果となった。また冪指数を1と比較して3以上とすることで、より溶出時間による影響が強調され各ピーク面積と高く相関する結果となった。第2ピーク面積は、式16の冪指数nが1の時の最も高い決定係数0.98を得たが、第1ピークと第3ピークの中間の領域となるため、強く溶出時間が強調される条件では相関が低下する結果となった。表5の結果から各ピーク面積と総和値との決定係数はどのピークにおいても0.98以上となり、総和値を求めることで、各ピーク面積を精度高く算出可能であることがわかる。
Figure 2021162586
表6の形状正規化値とピーク分割値との決定係数から、第1ピーク面積%とは、式15と比較して(決定係数0.74から0.96)、式17(決定係数0.96から0.99)で形状正規化値を求めることにより相関が高い値を得ることができた。一方、第3ピーク面積%とは、式15(決定係数0.81から0.98)および式17(決定係数0.90から0.98)を用いても、どちらも変わらず高い相関を得ることができた。第1ピーク面積%と第3ピーク面積%とは多くの場合に逆相関の関係であるため、総和値の場合と異なり、第3ピーク面積%であっても、溶出時間の早い領域が強調される式17と強く相関したと考えられる。また、第2ピーク面積%とは、式15(決定係数0.71から0.78)および式17(決定係数0.56から0.75)どちらを用いても低い相関を示した。しかしながら、第1および第3ピーク面積%と形状正規化値との決定係数が0.98以上あるため、精度高く第1および第3ピーク面積%を算出することができ、それぞれの値を全ピーク面積%である100から除することで、第2ピーク面積%を求めることができるため、形状正規化値を求めることで各ピーク面積%を精度高く算出可能であることがわかる。
Figure 2021162586
表7および表8はそれぞれ総和値と形状正規化値のCV値を示す。表7の総和値では冪指数が増えることでわずかにCV値が増加し、表8の形状正規化値では冪指数が増えることで大幅にCV値が増加することがわかる。この結果から、各ピーク分割値を総和値もしくは形状正規化値から算出するのに適した冪指数は、決定係数が高くかつCV値が低い値となるよう選択する必要があることがわかる。一例として、求められる決定係数およびCV値がそれぞれ0.95以上、6%未満である場合、第1ピーク面積を算出するのに適した総和値は式16より得られる逆相関冪指数3となり、第3ピーク面積では総和値の冪指数3もしくは5、第1ピーク面積%では形状正規化値の逆相関冪指数1、3もしくは5、第3ピーク面積%では形状正規化値の冪指数1もしくは3、逆相関冪指数1もしくは3が、それぞれに適した式および冪指数となる。
Figure 2021162586
Figure 2021162586

Claims (8)

  1. 以下の(a)から(c)の工程を含む、試料中に含まれる抗体の分析方法:
    (a)Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに試料を添加し、当該試料中に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程;
    (b)前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程;および
    (c)前記分離パターンにおける抗体の溶出時間と当該時間における検出値との積を総和した値を算出する工程。
  2. 前記溶出時間が、標準抗体の溶出時間の変動に基づいて補正されている、請求項1に記載の分析方法。
  3. さらに、以下の(A)から(D)の工程を含む、請求項1または2に記載の分析方法:(A)前記(a)の工程の前に、前記カラムに標準抗体溶液を添加して当該標準抗体を当該担体に吸着させ、当該担体に吸着した標準抗体を前記溶出液を用いて溶出させ、標準抗体の第1の分離パターンを得る工程;
    (B)前記(a)および(b)の工程の前または後に、前記(A)の工程を再度実施し、標準抗体の第2の分離パターンを得る工程;
    (C)前記第1の分離パターンにおける標準抗体の溶出時間と、前記第2の分離パターンにおける標準抗体の溶出時間とを比較する工程;および
    (D)前記(C)の比較結果に基づき、前記(b)で得られた分離パターンにおける抗体の溶出時間を補正する工程。
  4. 前記(C)の工程が、前記第1の分離パターンにおける抗体の2点以上の溶出時間と、前記第2の分離パターンにおける抗体の2点以上の溶出時間とを比較する工程である、請求項3に記載の分析方法。
  5. 前記(B)の工程が、前記(a)の工程の直前または前記(b)の工程の直後に実施される、請求項3または4に記載の分析方法。
  6. 前記試料が、体液である、請求項1から5のいずれか1項に記載の分析方法。
  7. 以下の(a)から(d)の工程を含む、被検者における疾患および/またはその発症リスクの検出方法:
    (a)Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに被検者から得た試料を添加し、当該試料中に含まれる抗体を前記担体に吸着させる工程;
    (b)前記担体に吸着した抗体を溶出液を用いて溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程;
    (c)前記分離パターンにおける抗体の溶出時間と、当該時間における検出値との積の総和値を算出する工程;
    (d)前記工程(c)で算出した総和値に基づき、前記被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、および/または加齢の進行度合いを検出する工程。
  8. 抗体がヒト由来の抗体であり、Fc結合性タンパク質が以下の(1)から(3)のいずれかのポリペプチドである、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法:
    (1)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17番目から192番目までのアミノ酸残基を含み、ただし当該17番目から192番目までのアミノ酸残基において、少なくとも176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
    (2)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17番目から192番目までのアミノ酸残基を
    含み、ただし当該17番目から192番目までのアミノ酸残基において、少なくとも176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有し、さらに前記置換以外に1もしくは数個の位置での1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入、および付加のうち、いずれか1つ以上をさらに有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
    (3)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち17番目から192番目までのアミノ酸配列において176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有するアミノ酸配列全体に対して70%以上の相同性を有するアミノ酸配列であって、ただし前記置換を含むアミノ酸配列を含み、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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EP3812759A4 (en) * 2018-06-20 2022-07-27 Tosoh Corporation METHOD FOR SEPARATION OF ANTIBODIES, AND METHOD FOR TESTING FOR A DISEASE

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