JP2023077764A - がん罹患者の生存期間を予測する方法 - Google Patents

がん罹患者の生存期間を予測する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 がんを患っている被検者の血液由来試料から、当該被検者の予後、特に生存期間を精度よく予測する方法を提供すること。【解決手段】 抗体医薬品の投与回数4回目以降において採取した、がんを患っている被検者の血液由来試料をFc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに供し当該試料中に含まれるガンマグロブリンを分離することで前記ガンマグロブリンの分離パターンを得る第一工程と、第一工程で得られた分離パターンから各ピーク面積を算出し当該面積の比を算出する第二工程と、第二工程で得られた比に基づき前記患者における生存期間を予測する工程とを含む方法により、前記課題を解決する。【選択図】 図3

Description

本発明は、がん罹患者の生存期間を予測する方法に関する。特に本発明は、がん罹患者から治療開始後に採取した血液由来試料に含まれる成分を解析することで、当該罹患者の生存期間を精度よく予測する方法に関する。
近年、がんや免疫疾患等の治療に抗体を含む医薬品(抗体医薬品)が用いられている。抗体医薬品に用いる抗体は、遺伝子工学的手法により得られた、当該抗体を発現可能な細胞(たとえば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等)を培養後、カラムクロマトグラフィー等を用いて高純度に精製し製造されている。しかし、近年の研究により、そのようにして製造される抗体は酸化、還元、異性化、糖鎖付加等の修飾を受けることで多様な分子の集合体となっていることが判明しており、薬効や安全性への影響が懸念されている。特に、抗体に結合している糖鎖構造は、抗体医薬品の活性、動態、および安全性に大きな影響を与えることが報告されており、詳細な糖鎖構造の解析が重要である(非特許文献1)。
抗体医薬に用いる抗体の糖鎖構造を分析する方法として、糖鎖の切り出しを含むLC-MS分析(特許文献1および特許文献2)が主に実施されている。しかしながら、前記分析方法では非常に煩雑な操作を伴い、多大な時間を要する。より簡便な抗体の分子構造の分析方法としては、クロマトグラフィーによる分析が挙げられる。具体的には、ゲルろ過クロマトグラフィを用いて、抗体を分子量に基づき分離することで凝集体や分解物を分離および定量することが可能である。
さらに、特許文献3では、血液由来試料に含まれるガンマグロブリンを糖鎖構造の違いに基づいてアフィニティークロマトグラフィーによる分離を行うことで、当該分離パターンにより被検者における疾患の有無、疾患の発症リスク、疾患の進行度合い、及び/又は加齢の進行度合いを検出する方法が報告されている。
特開2016-194500号公報 特開2016-099304号公報 WO2019/244901号公報
CHROMATOGRAPHY、34(2)、83-88(2013)
本発明の課題は、がん罹患者の血液由来試料から当該罹患者の予後、特に生存期間を精度よく予測する方法を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、がん罹患者の血液由来試料中に含まれるガンマグロブリンが有する糖鎖構造の違いに基づき、前記罹患者の生存期間を精度よく予測できることを見出した。
より具体的には、抗体医薬品を未投与または複数回投与しているがん罹患者から採取した血液由来試料を、抗体分離剤カラムに供した。そして、得られた当該試料中に含まれるガンマグロブリンの分離パターンと、がん罹患者の生存期間との関連性とについて鋭意解析、検討した。その結果、抗体医薬品の投与回数4回以降に得られる分離パターンにおけるピーク面積比と生存期間とは有意に相関することを明らかにした。一方、抗体医薬品の投与回数がそれよりも少ない又は未投与の血液由来試料に関するピーク面積比は生存期間と相関しないことも見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、以下の通り例示できる。
[1] がんを患っている被検者の生存期間を予測する方法であって、
以下の(1)から(3)の工程を含み、
(1)前記被検者から採取された血液由来試料を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに供し、当該試料中に含まれるガンマグロブリンを分離することで、前記ガンマグロブリンの分離パターンを得る工程;
(2)(1)で得られた分離パターンから各ピーク面積を算出し、当該面積の比を算出する工程;
(3)(2)で得られた比に基づき、前記被検者の生存期間を予測する工程;
かつ、前記血液由来試料は、前記被検者への抗体医薬品の投与回数4回以降において採取された試料である、方法。
[2] (3)の工程が、前記抗体医薬品の投与回数4回以降において採取された試料において前記(2)で得られた比と、前記(2)において採取された投与回数よりも前に採取された試料から得られた前記各ピーク面積の比との変動に基づき、前記被験者の生存期間を予測する工程である、[1]に記載の方法。
[3] 前記生存期間が無増悪生存期間または全生存期間である、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記がんが肺がんである、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記Fc結合性タンパク質がヒトFcγレセプターである、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記ヒトFcγレセプターが、以下の(i)から(iii)のいずれかから選択されるポリペプチドである、[5]に記載の方法:
(i)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列を含み、当該アミノ酸配列において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
(ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列を含み、当該アミノ酸配列において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有し、さらに当該176番目以外の1もしくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(iii)配列番号1に記載の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列において、配列番号1に記載の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換されており、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
本発明は、がん罹患者から、抗体医薬品の投与回数4回以降に採取した血液由来試料を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに供することで、当該試料中に含まれるガンマグロブリンの分離パターンを取得し、当該分離パターンから各ピークの面積比を算出し、当該比に基づき前記罹患者の生存期間を予測することを特徴としている。前記生存期間を予測することで、予後が良好または不良な罹患者を層別化できることから、治療方針を決める上での指標や、新たな治療薬の開発ターゲットを選定する上での指標となり得る。また本発明の方法は、血液由来試料に多く含まれているガンマグロブリンを測定対象としていることから、測定に供する血液由来試料の量が非常に少なく済み、採血に伴う罹患者の負担を抑えられる。
Fc結合性タンパク質固定化ゲル充填カラムで抗体を分析して得られる標準物質および測定サンプルの分離パターンの一例を示した図。 健常者および肺がん患者由来ガンマグロブリンをFc結合性タンパク質固定化ゲルを充填したカラムで分析した際の第1ピーク面積%値(area1%)および第3ピーク面積%値(area3%)の箱ひげ図を示した図。 肺がん患者由来ガンマグロブリンをFc結合性タンパク質固定化ゲルを充填したカラムで分析して得られた第3ピーク面積%値(area3%)に対して、ペンブロリズマブ投与前に対する投与回数3回、もしくは6回でのarea3%の当該測定値の変動度の中央値で高値の群と低値の群とに分けた際の無増悪生存期間および全生存期間をカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)法により示した図。 肺がん患者由来ガンマグロブリンをFc結合性タンパク質固定化ゲルを充填したカラムで分析して得られた第3ピーク面積%値(area3%)に対して、ペンブロリズマブ投与による治療期間中の画像診断による最も良い治療効果判定において、CR群およびPR群と、SD群およびPD群とに分けた患者集団での、各投与時点において当該測定値をプロットした図、ならびに当該治療効果判定で分けた各群間での有意差検定により得られたP値を記載した図。 肺がん患者でのニボルマブ投与による治療期間中の画像診断による最も良い治療効果判定においてCR群およびPR群と、SD群およびPD群とに分けた際の無増悪生存期間および全生存期間をカプラン・マイヤー法により示した図、ならびに当該SD群またはPD群に属する肺がん患者由来のガンマグロブリンをFc結合性タンパク質固定化ゲルを充填したカラムで分析して得られた第3ピーク面積%値(area3%)に対して、ニボルマブ投与前に対する投与回数6回でのarea3%の当該測定値の変動度の中央値で高値の群と低値の群とに分けた際の無増悪生存期間および全生存期間をカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)法により示した図。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を利用して血液由来試料に含まれるガンマグロブリン(以下、「抗体」とも記載)を分離して得られる分離パターンから各ピークの面積比を算出し、当該面積比から、がん罹患者の生存期間を予測する方法を提供する。
本発明の方法は、具体的には、以下の工程<1>から<5>を含む、前記罹患者(被検者)の生存期間を予測する方法であってよい:
<1>被検者の血液由来試料を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに添加し、当該試料に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程;
<2>前記カラムに平衡化液を添加し、前記カラムを平衡化する工程;
<3>前記カラムに溶出液を添加し、前記担体に吸着した抗体を溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程;
<4>前記分離パターンから各ピーク面積を算出し、当該面積の比を算出する工程;
<5>前記面積比に基づき、前記被検者における生存期間を予測する工程。
以下、工程<1>から<5>を、それぞれ、「吸着工程」および「平衡化工程」、「溶出工程」、「ピーク面積算出工程」、「予測工程」ともいう。
<被検者の血液由来試料>
本発明の方法の対象となる「被検者」とは、がんを患っており、生存期間予測の対象とするヒト個体を意味する。被検者は、男性であってもよく、女性であってもよい。被検者は、子供、若者、中年、老人等、いずれの年代の個体であってもよい。
本発明の方法に供される血液由来試料は、被検者から抗体医薬品の投与回数4回以降に採取されたものであることを特徴としている。抗体医薬品の投与回数4回以降に採取した血液由来試料に含まれるガンマグロブリンを対象とすることで、被検者の生存期間を精度よく予測でき、不要な治療を行なうことなく適した治療方針を策定する指標として用いることも可能となる。特に、前記抗体医薬品の投与回数4回以降において採取された試料と、前記試料に対する比較試料として前記採取された投与回数よりも前に採取された試料とを用いると、さらに精度よく生存期間を予測できる点で好ましい。
投与回数としては、4回以降であれば良く、例えば、5回以上、6回以上が挙げられる。また、早期に生存予後を予測することで適した治療方針を早期に策定することが可能となるため、各抗体医薬品に合わせて、好ましい投与回数の上限を設定しても良く、かかる上限としては、例えば、抗体医薬品の投与回数が20回未満、16回未満、12回未満、10回未満が挙げられる。より具体的には、ペンブロリズマブでは投与回数4回以上9回未満で採取した試料を用いると好ましく、アテゾリズマブでは投与回数4回以上9回未満で採取した試料を用いると好ましく、ニボルマブでは投与回数4回以上16回未満で採取した試料を用いると好ましい。
特定の投与回数における試料を採取する期間としては、特定回数目の投与前から次に投与するまでの期間のことを言い、例えば、投与回数4回において採取された試料とは、4回目の投与前から5回目の投与を行うまでに採取された試料を意味する。また、特定回数目の投与前とは投与1日前から投与当日の投与直前までの採取を含んで良い。
「血液由来試料」とは、被検者から得られた抗体を含む、もしくは含み得る血液由来の試料を意味する。血液由来試料としては、血液(全血)、希釈血液、血清、血漿、髄液、臍帯血、成分採血液等の血液試料;尿、唾液、精液、糞便、痰、羊水、腹水等の血液由来成分を含み得る試料;それらから分離された抗体もしくはそれらに含む抗体を含み得る試料が挙げられる。血液由来試料は、そのまま、または適宜前処理に供してから、吸着工程に用いてよい。前処理は、例えば、定法により実施してよい。前処理としては、遠心分離やカラムによる精製が挙げられる。具体的には、例えば、ガンマグロブリンを精製して吸着工程に用いてもよい。血液由来試料は、抗体を含む溶液の形態で吸着工程に用いられる。すなわち、血液由来試料は、適宜、抗体を含む溶液の形態に調製して吸着工程に用いてよい。例えば、上記例示したような血液由来試料またはその前処理物を、適宜、液体媒体で溶解、懸濁、分散、または溶媒交換等して、抗体を含む溶液として吸着工程に用いてよい。そのような液体媒体については、例えば、後述する平衡化液についての記載を準用できる。液体媒体は、平衡化液と同一であってもよく、同一でなくてもよい。前記前処理を行なった血液由来試料や前記抗体を含む溶液を含めて、本明細書では「血液由来試料」という。
「抗体医薬品」とは、被検者に投与される抗体医薬品を意味し、特に制限はない。抗体医薬品の一例として、abagovomab、abatacept、abciximab、ABT-414、adalimumab、adalimumab、adalimumab-atto、aducanumab、afelimomab、aflibercept、aflibercept、alefacept、alemtuzumab、alemtuzumab、alirocumab、altumomab、ALX-0061、amatuximab、amivantamab、anifrolumab、arcitumomab、atezolizumab、avelumab、bapineuzumab、basiliximab、bavituximab、begelomab、belatacept、belimumab、benralizumab、besilesomab、bevacizumab、bezlotoxumab、bimagrumab、blinatumomab、bococizumab、brentuximab vedotin、Briakinumab、brodalumab、canakinumab、capromab、catumaxomab、certolizumab pegol、cetuximab、crenezumab、daclizumab、daclizumab、daratumumab、demcizumab、denosumab、denosumab、denosumab、dinutuximab、dupilumab、durvalumab、dusigitumab、eculizumab、edrecolomab、efalizumab、efungumab、elotuzumab、epratuzumab、etanercept、etanercept、etanercept-szzs、etaracizumab、etrolizumab、evolocumab、fresolimumab、gantenerumab、gemtuzumab ozogamicin、gevokizumab、girentuximab、golimumab、golimumab、GSK2398852、guselkumab、ibritumomab tiuxetan、idarucizumab、igovomab、imciromab pentetate、infliximab、infliximab、infliximab、infliximab-dyyb、inotuzumab ozogamicin、ipilimumab、ixekizumab、labetuzumab、lampalizumab、lebrikizumab、lifastuzumab vedotin、lintuzumab、lorvotuzumab mertansine、lulizumab pegol、margetuximab、mavrilimumab、mepolizumab、milatuzumab、mitumomab、mogamulizumab、motavizumab、moxetumomab pasudotox、muromonab-CD3、natalizumab、natalizumab、necitumumab、necitumumab、nesvacumab、nimotuzumab、nivolumab、nofetumomab、obiltoxaximab、obinutuzumab、ocrelizumab、ofatumumab、olaratumab、omalizumab、otelixizumab、ozanezumab、palivizumab、panitumumab、pascolizumab、pembrolizumab、pemtumomab、pertuzumab、pidilizumab、polatuzumab vedotin、racotumomab、ramucirumab、ranibizumab、raxibacumab、reslizumab、rilonacept、rilotumumab、rituximab、romiplostim、romosozumab、sacituzumab govitecan、satumomab、secukinumab、seribantumab、sifalimumab、silutuximab、simtuzumab、sirukumab、solanezumab、sulesomab、tabalumab、tanezumab、tarextumab、tildrakizumab、tilmanocept、tocilizumab、tositumomab、tralokinumab、trastuzumab、trastuzumab emtansine、trastuzumab deruxtecan、tremelimumab、ustekinumab、vantictumab、vedolizumab、veltuzumab、votumumab、yttrium(90Y) clivatuzumab tetraxetanが挙げられる。
<1>吸着工程
吸着工程は、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに前記被検者から採取した血液由来試料を添加し、当該試料に含まれる抗体を当該担体に吸着させる工程である。
「抗体(ガンマグロブリン)」とは、Fc領域を含む分子を意味する。抗体は、Fc領域からなるものであってもよく、Fc領域に加えて他の領域を含んでいてもよい。Fc領域としては、免疫グロブリンのFc領域が挙げられる。抗体は、糖鎖が付加されていてよい。抗体は、例えば、少なくともそのFc領域に糖鎖が付加されていてよい。抗体は、モノクローナル抗体であってもよく、ポリクローナル抗体であってもよい。抗体としては、免疫グロブリンが挙げられる。免疫グロブリンとしては、IgG、IgM、IgA、IgD、IgEが挙げられる。免疫グロブリンとしては、特に、IgGが挙げられる。IgGとしては、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4が挙げられる。抗体に付加される糖鎖のうち、特に抗体の分離に寄与し得る糖鎖としては、G0、G0F、G1、G0F+GN、G1Fa、G1Fb、G1F+GN、G2、G2F、G1F+SA、G2F+SA、G2F+2SA、G2F+GN、G2+SA、G2+2SA、S1、S2、S3などが挙げられる(GNはバイセクティングGlcNAcの、Fはフコースの、SAはシアル酸の、それぞれ略)。
ヒト由来の抗体は、通常、シアル酸(SA)を有する抗体を含む。ヒト由来の抗体におけるシアル酸を有する抗体の含有量は、例えば、抗体の総含有量に対して、重量比で、0.1から20%程度であり得る。ヒト由来の抗体においては、シアル酸が糖鎖末端に2つ結合することが多い。さらに、ヒト由来の抗体は、通常、バイセクティングGlcNAc(GN)を、抗体の総含有量に対して、重量比で、1から20%程度含み得る。一方、ハムスターおよびマウス由来の抗体には、通常、バイセクティングGlcNAcは存在せず、糖鎖末端のシアル酸結合数は0または1個である。
吸着工程に供される抗体は、複数種類の抗体分子を含む混合物であってよい。吸着工程に供される抗体は、具体的には、糖鎖構造の異なる複数種類の抗体分子を含む混合物であってよい。吸着工程に供される抗体は、より具体的には、Fc領域に付加された糖鎖構造の異なる複数種類の抗体分子を含む混合物であってよい。
「Fc結合性タンパク質」とは、試料中に含まれる抗体のFc領域に対する結合能を有し、かつ抗体の糖鎖構造(例えば、Fc領域の糖鎖構造)の違いを認識できるポリペプチドであれば、特に制限はない。例えば、前記抗体がヒト由来の抗体である場合、Fc結合性タンパク質として、ヒトFc結合性タンパク質が挙げられる。ヒトFc結合性タンパク質の好ましい例として、ヒトFcレセプターが挙げられる。ヒトFcレセプターには、ヒト免疫グロブリンG(IgG)に対するレセプターであるヒトFcγレセプター、ヒト免疫グロブリンA(IgA)に対するレセプターであるヒトFcαレセプター、ヒト免疫グロブリンD(IgD)に対するレセプターであるヒトFcδレセプター、ヒト免疫グロブリンE(IgE)に対するレセプターであるヒトFcεレセプター等が挙げられるが、いずれのレセプターも本発明におけるヒトFc結合性タンパク質として利用可能である。なお本明細書において「ヒト由来の抗体」とは、少なくともヒト由来のFc領域を有したガンマグロブリン(抗体)であればよく、ヒト抗体でもよく、ヒト化抗体でもよく、キメラ抗体であってもよい。
ヒトFcγレセプターの具体例として、ヒトFcγRI(CD64)、ヒトFcγRIIa(CD32a)、ヒトFcγRIIb(CD32b)、ヒトFcγRIIc(CD32c)、ヒトFcγRIIIa(CD16a)またはヒトFcγRIIIb(CD16b)の細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチド、ならびに当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入および/または付加したポリペプチドが挙げられる。中でも、ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチドや、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入おび/または付加したポリペプチドが、本発明でヒトFc結合性タンパク質として用いるヒトFcγレセプターとして好ましい。
ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチドや、当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入および/または付加したポリペプチドの具体例として、以下の(i)から(iii)に記載のポリペプチドが挙げられる。
(i)配列番号1に記載の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列を含み、当該アミノ酸配列において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されているポリペプチド;
(ii)配列番号1に記載の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列を含み、当該アミノ酸配列において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換され、さらに当該176番目以外の1若しくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
(iii)配列番号1に記載の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列において、配列番号1に記載の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換されており、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
前記(ii)に記載のポリペプチドの一例として、
配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち24番目から199番目までのアミノ酸残基を少なくとも含むポリペプチド、
特開2015-086216号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2016-169197号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2017-118871号公報で開示のFc結合性タンパク質、
特開2018-197224号公報で開示のFc結合性タンパク質、
WO2019/083048号で開示のFc結合性タンパク質、
が挙げられる。
また前記(ii)に記載の置換、欠失、挿入および付加の例として、前述した公報(特開2015-086216号公報、特開2016-169197号公報、特開2017-118871号公報、特開2018-197224号公報およびWO2019/083048号)で開示しているアミノ酸残基の置換が挙げられる。前記(ii)における「1もしくは数個」とは、例えば、1から50個、好ましくは1から40個、より好ましくは1から30、更に好ましくは1から20個、特に好ましくは1から10個であってよい。「1もしくは数個」のアミノ酸残基の置換は、例えば、抗体結合活性を有する限り、前述した公報で開示のアミノ酸残基の置換以外の位置に生じてよい。
前記(iii)において「相同性」とは、類似性(similarity)または同一性(identity)を意味し、BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)やFASTA等のアラインメントプログラムを用いて決定できる。例えば、「アミノ酸配列の同一性」とは、blastpを用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味してよく、具体的には、blastpをデフォルトのパラメータで用いて算出されるアミノ酸配列間の同一性を意味してもよい。相同性は70%以上であればよく、80%以上、85%以上、90%以上、または95%以上(例えば、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上)の相同性を有していてもよい。
また、本発明において、各アミノ酸残基の「何番目」とは、各配列番号に記載のアミノ酸配列において最初のメチオニンを1番目とする順番を意味する。したがって、本発明にかかる「176番目」とは、配列番号1に記載のアミノ酸配列の176番目を意味する。さらに、「配列番号1の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基」とは、前記70%以上の相同性を有するアミノ酸配列におけるアミノ酸残基であって、当該アミノ酸配列と配列番号1に記載の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列とのアラインメントにおいて、配列番号1に示すアミノ酸配列における176番目のバリンと同一の位置に配列されるアミノ酸残基を意味する。
Fc結合性タンパク質は、例えば、Fc結合性タンパク質をコードする遺伝子を有する宿主に同遺伝子を発現させることで製造できる。Fc結合性タンパク質をコードする遺伝子は、例えば、クローニング、化学合成、変異導入、またはそれらの組み合わせにより取得できる。宿主は、Fc結合性タンパク質を発現できるものであれば、特に制限されない。宿主としては、動物細胞、昆虫細胞、微生物などが挙げられる。動物細胞としては、COS細胞、CHO細胞、Hela細胞、NIH3T3細胞、HEK293細胞などが挙げられる。昆虫細胞としては、Sf9細胞、BTI-TN-5B1-4細胞などが挙げられる。微生物としては、酵母や細菌が挙げられる。酵母としては、Saccharomyces cerevisiae等のSaccharomyces属酵母、Pichia Pastoris等のPichia属酵母、Schizosaccharomyces pombe等のSchizosaccharomyces属酵母などが挙げられる。細菌としては、Escherichia coli等のEscherichia属細菌などが挙げられる。Escherichia coliとしては、W3110株、JM109株、BL21(DE3)株などが挙げられる。また、Fc結合性タンパク質は、例えば、Fc結合性タンパク質をコードする遺伝子を無細胞タンパク質合成系で発現させることでも製造できる。
「不溶性担体」とは、本発明においてカラムに通液される液体(例えば、平衡化液や溶出液等の、抗体の吸着または溶出に用いる液体)に対して不溶性である担体を意味する。不溶性担体は、Fc結合性タンパク質を共有結合で固定化するための官能基(例えばヒドロキシ基)を備えていてよい。不溶性担体としては、ジルコニア、ゼオライト、シリカ、皮膜シリカ等の無機系物質に由来した担体、セルロース、アガロース、デキストラン等の天然有機高分子物質に由来した担体、ポリアクリル酸、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリメタクリレート、ビニルポリマー等の合成有機高分子物質に由来した担体などが挙げられる。
Fc結合性タンパク質は、不溶性担体に固定化されている。前記担体へのFc結合性タンパク質の固定化は、例えば、不溶性担体が有する、Fc結合性タンパク質を共有結合で固定化するための官能基(例えばヒドロキシ基)を利用して、共有結合で不溶性担体に固定化できる。例えば、不溶性担体が表面にヒドロキシ基を有する場合、活性化剤を用いて当該ヒドロキシ基からFc結合性タンパク質と共有結合可能な活性化基を形成し、当該活性化基とFc結合性タンパク質とを共有結合させることで固定化できる。ヒドロキシ基に対する活性化剤の具体例として、エピクロロヒドリン(活性化基としてエポキシ基を形成)、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル(活性化基としてエポキシ基を形成)、トレシルクロリド(活性化基としてトレシル基を形成)、ビニルブロミド(活性化基としてビニル基を形成)などが挙げられる。また、ヒドロキシ基をアミノ基やカルボキシル基等に変換した後、活性化剤を作用させて活性化することもできる。アミノ基やカルボキシル基等に対する活性化剤の具体例として、3-マレイミドプロピオン酸 N-スクシンイミジル(活性化基としてマレイミド基を形成)、1,1’-カルボニルジイミダゾール(活性化基としてカルボニルイミダゾール基を形成)、ハロゲン化酢酸(活性化基としてハロアセチル基を形成)などが挙げられる。
Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体(以下、「抗体分離剤」とも記載)を充填したカラム(以下、「抗体分離剤カラム」とも記載)に、試料採取工程で被検者から採取した血液由来試料を添加することで、当該試料に含まれる抗体を抗体分離剤に吸着できる。血液由来試料は、例えば、ポンプ等の送液手段を用いてカラムに添加できる。液体をカラムに添加することを、「液体をカラムに送液する」ともいう。血液由来試料の添加量、液相の種類、液相の送液速度、カラム温度等の吸着工程の実施条件は、前記試料に含まれる抗体が抗体分離剤に吸着できる限り、特に制限されない。吸着工程の実施条件は、抗体の種類、Fc結合性タンパク質の種類、不溶性担体の種類、カラムのスケール等の諸条件に応じて適宜設定できる。液相としては、後述する平衡化液が挙げられる。送液速度は、例えば、カラムの内径が4.6mmの場合に、0.1mL/分以上2.0mL/分以下、0.2mL/分以上1.5mL/分以下、または0.4mL/分以上1.2mL/分以下であってよい。送液速度は、例えば、カラムの内径の2乗に比例するように設定してよい。カラム温度は、例えば、0℃以上から50℃以下であってよい。
<2>平衡化工程
平衡化工程は、吸着工程で抗体分離剤に吸着した抗体を平衡化液(同様の意味で「平衡化緩衝液」とも記載)を用いて、抗体分離剤カラムを平衡化する工程である。抗体を含む溶液を前記カラムに添加する前に、平衡化液を用いて平衡化してよい。すなわち、本発明は、吸着工程の前に、前記カラムに平衡化液を添加し平衡化する工程を含んでいてよい。
平衡化することで、不溶性担体に固定化されたFc結合性タンパク質とは結合しない、または吸着工程では抗体分離剤に吸着できたが平衡化緩衝液では吸着できない抗体を抗体分離剤カラムから除ける。平衡化工程で抗体分離剤に吸着できない(脱離した)抗体を含む画分を未吸着画分といい、血液由来試料を前記カラムに添加後、検出されるピークが平衡化中に最小値を取るまでの領域の画分のことをいう。未吸着画分と溶出液添加後に検出されるピーク領域とは分離時間として離れている方が分離精度が高く好ましく、特に未吸着画分と溶出液添加後に検出されるピーク領域との間の検出値が一定値を取っていると、平衡化工程により未吸着画分が前記カラムから十分に除かれたことがわかる点で好ましい。「一定値」とは、同一の値以外にも検出値が一定の傾きをもって変化する状態をも含める。
平衡化液(平衡化緩衝液)としては、水性緩衝液が挙げられる。平衡化液はpH5.0より大きくpH9.0未満の弱酸性から弱アルカリ性緩衝液であり、好ましくはpH5.2以上pH8.0以下の緩衝液であり、さらに好ましくはpH5.4以上pH7.5以下の緩衝液である。緩衝液の成分は、緩衝液のpH等の諸条件に応じて適宜選択できる。緩衝液の成分としては、リン酸、酢酸、ギ酸、MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)、MOPS(3-Morpholinopropanesulfonic acid)、クエン酸、コハク酸、グリシン、ピペラジンなどが挙げられる。また、緩衝液にさらに塩を加えてもよく、当該塩も塩化ナトリウムや塩化カリウム等の同業者が容易に想定し得る塩であれば特に限定されない。
<3>溶出工程
溶出工程は、平衡化工程で平衡化した抗体分離剤カラムに、溶出液(以下、「溶出緩衝液」とも記載)を添加し、前記分離剤に吸着した抗体を溶出させ、抗体の分離パターンを得る工程である。
すなわち、前記カラムに溶出液を添加することにより、抗体分離剤に吸着した抗体を溶出できる。溶出液の種類、溶出液の送液形式、液相の送液速度、カラム温度等の溶出工程の実施条件は、所望の態様で抗体が分離される限り、例えば、所望の分離パターンが得られる限り、特に制限されない。溶出工程の実施条件は、抗体の種類、Fc結合性タンパク質の種類、不溶性担体の種類、カラムのスケール等の諸条件に応じて適宜設定できる。溶出液としては、抗体とFc結合性タンパク質との親和性を弱める溶液を利用できる。溶出液としては、溶出前の液相(例えば、平衡化液)よりもpHが低い水性緩衝液が挙げられる。溶出液として、具体的には、pH2.5以上4.5以下の酸性緩衝液が挙げられる。例えば、溶出前の液相(例えば、平衡化液)がpH5.0以上8.0以下の弱酸性から弱アルカリ性緩衝液である場合、溶出液がpH2.5以上4.5以下の酸性緩衝液であってよい。緩衝液の成分は、緩衝液のpH等の諸条件に応じて適宜選択できる。緩衝液の成分としては、リン酸、酢酸、ギ酸、MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)、MOPS(3-Morpholinopropanesulfonic acid)、クエン酸、コハク酸、グリシン、ピペラジンなどが挙げられる。溶出液の送液形式は、例えば、グラジエント(gradient)であってもよく、イソクラティック(isocratic)であってもよい。溶出液の送液形式は、特に、グラジエントであってよい。すなわち、溶出は、特に、液相中の溶出液の比率を増大させることにより実施されてよい。グラジエントは、例えば、リニアグラジエントであってもよく、ステップワイズ(stepwise)グラジエントであってもよく、それらの組み合わせであってもよい。グラジエントは、具体的には、例えば、10分以上60分以下、15分以上から50分以下、または20分以上40分以下で、液相中の溶出液の比率が0%(v/v)から100%(v/v)に増大するよう、設定されてよい。送液速度は、例えば、カラムの内径が4.6mmの場合、0.1mL/分以上2.0mL/分以下、0.2mL/分以上1.5mL/分以下、または0.4mL/分以上1.2mL/分以下であってよい。送液速度は、例えば、カラムの内径の2乗に比例するように設定してよい。カラム温度は、例えば、0℃以上50℃以下であってよい。
溶出工程により、分離された抗体が得られてよい。分離された抗体は、例えば、同抗体を含む溶出画分として得られてよい。すなわち、分離された抗体を含む溶出画分を分取することにより、分離された抗体が得られる。溶出画分は、例えば、常法により分取できる。溶出画分は、具体的には、例えば、オートサンプラー等の自動フラクションコレクターで分取できる。さらに、分離された抗体を溶出画分から回収してもよい。分離された抗体は、例えば、常法により溶出画分から回収できる。分離された抗体は、具体的には、例えば、タンパク質の分離精製に用いられる公知の方法により溶出画分から回収できる。
抗体の分離パターンは、検出器により抗体を検出することにより得られる。検出器としては、紫外可視検出器や質量検出器などが挙げられる。抗体の分離パターンとしては、抗体の溶出時のクロマトグラムが挙げられる。
<4>ピーク面積算出工程
ピーク面積算出工程は、溶出工程で得られた抗体の分離パターンから溶出ピークを抽出し、抽出した各溶出ピークの面積を算出後、ピーク面積比を算出する工程である。溶出ピーク検出に用いる抗体の分離パターンは、そのまま、あるいは適宜、ベースラインの補正等の補正を実施してから、溶出ピークの抽出に用いてよい。ピーク面積を算出する対象となる溶出ピークを、以下「対象ピーク」ともいう。なお後述するピーク面積%が1%未満の溶出ピークは対象ピークから除外してもよい。
対象ピークは、諸条件に応じて適宜選択できる。一例として、抗体分離剤として、ヒトFcγRIIIaの細胞外領域の部分配列を少なくとも含むポリペプチド、または当該ポリペプチドを構成するアミノ酸残基の一部を置換、欠失、挿入おび/または付加したポリペプチド(以下、「ヒトFcγRIIIaリガンド」とも記載)を固定化した不溶性担体を用いた場合、抗体の分離パターンから、3つの溶出ピークが抽出される(ヒトFcγRIIIaリガンドとの結合能が低いピーク順に、第1ピーク、第2ピーク、第3ピークと命名する)が、対象ピークとしては、当該第1ピークから第3ピークのいずれを用いてもよい。また抗体分離剤として、前述したヒトFcγRIIIaリガンドを固定化した不溶性担体を用い、溶出工程をpH変化に基づくグラジエント溶出で行なう場合、例えば、液相のpHが5.4以下、5.2以下、5.0以下、または4.8以下になって最初に溶出するピークを第1ピークと命名してもよく、液相のpHが5.4から4.4、5.2から4.5、または5.0から4.6である期間に溶出するピークを第1ピークと命名してもよい。なお、液相のpHは、溶出の開始前の液相(例えば、平衡化液)のpHがX、溶出液のpHがY、液相中の溶出液の比率がZ%である場合、下記式(I)で算出されるものとする。また、ピークが溶出したpHは、カラムの容積等の流路の容積を考慮して、適宜補正されるものとする。
液相のpH=X-((X-Y)×Z[%]) ・・・ (I)
本発明は、対象ピーク面積の絶対値ではなく、相対値を用いることで全生存期間を予測する。相対値としては、特定の対象ピーク面積に対する他の対象ピーク面積の比や、対象ピーク面積全ての合計に対する特定の対象ピーク面積の比などが挙げられる。他の対象ピークとしては、1つの対象ピークを用いてもよく、2つまたはそれ以上の対象ピークを組み合わせて用いてもよい。ピーク面積比の一例として、具体的には、ピーク面積%が挙げられる。「ピーク面積%」とは、対象ピーク面積全ての合計に対する特定の対象ピークの面積比(%)を意味する。
なお対象ピーク面積の算出にあたり、内部標準物質で得られたピークに基づく補正や被検者の性質に基づく補正等の、補正がなされていてもよい。例えば、ピーク面積を被検者の年齢に基づいて補正がなされていてもよい。すなわち、例えば、ピーク面積が被検者の年齢に影響を受ける場合、ピーク面積を被検者の年齢に基づいて補正してから、予測工程に用いてよい。
<5>予測工程
予測工程は、ピーク面積算出工程で得られたピーク面積比(対象ピーク面積の相対値)を指標として、がんを患っている被検者における生存期間を予測する工程である。
がんとしては、脳腫瘍、乳がん、子宮体がん、子宮頚がん、卵巣がん、食道がん、胃がん、虫垂がん、大腸がん、肝がん、胆嚢がん、胆管がん、膵がん、副腎がん、消化管間質腫瘍(GIST)、中皮腫、頭頚部がん、腎がん、肺がん、骨肉腫、ユーイング(Ewing)肉腫、軟骨肉腫、前立腺がん、精巣腫瘍、腎細胞がん、膀胱がん、横紋筋肉腫、皮膚がん、肛門がんが挙げられる。がんとしては、特に、肺がんが挙げられる。
前記被検者における生存期間の予測とは、臨床試験において治療法の割り付け開始日もしくは治療開始日から前記被検者が生存する期間を予測することをいい、生存予後が良いか悪いかのリスク判定を行なうことも含む。生存期間としては、死亡をエンドポイントとして評価する全生存期間、もしくは腫瘍の増悪をエンドポイントとして評価する無増悪生存期間が挙げられる。また、本発明において予測される生存期間は、全生存期間および無増悪生存期間の両期間であってもよい。
例えば、ペンブロリズマブ投与肺がん患者において、投与回数6回のピーク面積比として第3ピーク面積/全面積が≧43.6%であった場合、無増悪生存期間(中央値)は1000日以上、全生存期間(中央値)は1000日以上となる(生存予後が良い)と判定することができる。一方、第3ピーク面積/全面積が<43.6%であった場合、無増悪生存期間(中央値)は250日以下、全生存期間(中央値)は550日以下となる(生存予後が悪い)と判定することができる。
がん患者において、抗体医薬品の投与回数4回以降において採取された試料と、前記試料に対する比較試料として前記採取された投与回数よりも前に採取された試料とを用い、それぞれの試料に対して前記ピーク面積比を求め、当該ピーク面積比間の変動を基に前記予測工程を行うと、生存期間を精度高く予測できるため良い。前記ピーク面積比間の変動とは、前記ピーク面積比同士の差を求めて評価しても良く、前記ピーク面積比同士を除することで評価しても良い。
例えば、ペンブロリズマブ投与肺がん患者において、投与前に対する投与回数6回のピーク面積比である第3ピーク面積/全面積の変動度が≧0.98であった場合、無増悪生存期間(中央値)は1000日以上、全生存期間(中央値)は1000日以上となる(生存予後が良い)と判定することができる。一方、前記変動度が<0.98であった場合、無増悪生存期間(中央値)は200日以下、全生存期間(中央値)は550日以下となる(生存予後が悪い)と判定することができる。
また、特定の指標を基に選出したがん患者群に対して、予測工程を行っても良い。特定の指標とは、画像診断から得られる情報であってもよく、血液検査から得られる情報であってもよく、問診から得られる情報であってもよく、特に限定されない。特定の指標が、画像診断による治療効果判定である場合、完全奏効(CR)、部分奏効(PR)、安定(SD)、進行(PD)にがん患者を分けることができる。例えばSDもしくはPDの群に対して前記予測工程を行うことで、画像診断上では治療効果が十分得られなかった群の中でも予後の良い群を判別することができるため、SDもしくはPDの患者集団の中でも治療を継続した方が良いと判定することもできる。
予測工程は、例えば、ピーク面積比の値の高低(すなわち、ピーク面積比の値が高いか低いか)やピーク面積比の前記変動度の高低(すなわち、ピーク面積比の変動度が高いか低いか)を指標として実施できる。以下、ピーク面積比を指標とした場合の予測工程に関して説明するが、ピーク面積比の変動度として読み替えても良い。ピーク面積比の値の高低は、例えば、ピーク面積比の値を所定の閾値と比較することで決定できる。言い換えると、予測工程は、例えば、ピーク面積比の値を閾値と比較する工程を含んでいてよい。すなわち、「ピーク面積比の値が高い」とは、例えば、ピーク面積比の値が閾値を基準として高いことを意味してよい。「ピーク面積比の値が閾値を基準として高い」とは、例えば、ピーク面積比の値が閾値以上であること、ピーク面積比の値が閾値を超えること、またはピーク面積比の値が閾値よりも統計学的に有意に高いことを意味してよい。「ピーク面積比の値が閾値を基準として高い」とは、具体的には、例えば、ピーク面積比の値が閾値の1.01倍以上、1.02倍以上、1.03倍以上、1.05倍以上、1.07倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.5倍以上、1.7倍以上、2倍以上、2.5倍以上、または3倍以上であることを意味してもよい。また、「ピーク面積比の値が低い」とは、例えば、ピーク面積比の値が閾値を基準として低いことを意味してよい。「ピーク面積比の値が閾値を基準として低い」とは、例えば、ピーク面積比の値が閾値以下であること、ピーク面積比の値が閾値未満であること、またはピーク面積比の値が閾値よりも統計学的に有意に低いことを意味してよい。「ピーク面積比の値が閾値を基準として低い」とは、具体的には、例えば、ピーク面積比の値が閾値の0.99倍以下、0.98倍以下、0.97倍以下、0.95倍以下、0.93倍以下、0.9倍以下、0.85倍以下、0.8倍以下、0.7倍以下、0.6倍以下、0.5倍以下、0.4倍以下、または0.3倍以下であることを意味してもよい。
ピーク面積比の値は、例えば、閾値を基準に、危険範囲に区分されてよい。ピーク面積比の値は、例えば、閾値を基準に、非危険範囲に区分されてよい。ピーク面積比の値は、具体的には、例えば、閾値を基準に、危険範囲と非危険範囲とに区分されてもよい。「危険範囲」とは、ピーク面積比の値について、被検者において全生存期間が短いというリスク(以下、単に「リスク」という)がある可能性が高い範囲を意味してよい。「非危険範囲」とは、ピーク面積比の値について、被検者においてリスクがない可能性が高い範囲を意味してよい。すなわち、ピーク面積比の値が危険範囲にあれば、被検者においてリスクがある、またはリスクが高いと判定してよい。一方、ピーク面積比の値が非危険範囲にあれば、被検者においてリスクがない、またはリスクが低いと判定してよい。例えば、肺がん患者において、ピーク面積比として第3ピーク面積/全面積が≧43.6%であった場合、3年生存率は40%以上となる(リスクが低い)と判定することができる。一方、第3ピーク面積/全面積が<43.6%であった場合、3年生存率は20%以下となる(リスクが高い)と判定することができる。
閾値は、例えば、ピーク面積比の内容や所望の判定精度等の諸条件に応じて、当業者が適宜設定できる。閾値は、例えば、疾患や加齢等の判定対象の症状(例えば、がんの種類、その進行具合(悪性度等))ごとに設定されてよい。閾値を決定する手段は、特に制限されない。閾値は、例えば、集団を2群に区分するためのデータ解析に利用される公知の手法に従って決定することができる。
閾値は、例えば、対照者から得た抗体試料のピーク面積比の値に基づいて決定できる。対照者から得られたピーク面積比を、「対照ピーク面積比」ともいう。対照ピーク面積比は、閾値の決定に用いられることにより、検出工程に用いられてよい。対照ピーク面積比は、具体的には、閾値の決定に用いられることにより、ピーク面積比との比較に用いられてよい。言い換えると、検出工程は、例えば、ピーク面積比を対照ピーク面積比と比較する工程を含んでいてよい。なお、2つの異なるデータ群を比較する場合、統計的確率(P値)を用いて2つの異なる検体群から得られた前記ピーク面積比の差が有意な差であるかを評価できる。P値が小さくなると、前記評価結果は有意になるといわれており、P値が有意水準未満の場合、前記評価結果は統計的に有意な差があるといえる。有意水準は一般的に5%である。
対照者としては、陽性対照や陰性対照が挙げられる。「陽性対照」とは、リスクがある、または高いと判定され得る個体を意味してよい。「陰性対照」とは、リスクがない、または低いと判定され得る個体を意味してよい。陽性対照としては、がんを患っている、または患ったことがある個体や、がんの病態が進行した個体、抗体医薬品投与後の生存予後が悪いがん罹患個体、それらの組み合わせの性質を有する個体が挙げられる。陰性対照としては、がん(特に、リスクの検出対象となるがんと同一のがん)を患っていない、または患ったことがない個体や、がんの病態が進行していない個体、抗体医薬品投与後の生存予後が良いがん罹患個体、それらの組み合わせの性質を有する個体が挙げられる。閾値は、陽性対照を測定し算出したピーク面積比の値のみに基づいて決定してもよく、陰性対照を測定し算出したピーク面積比のみに基づいて決定してもよく、陽性対照と陰性対照の両方を測定し算出したピーク面積比の値に基づいて決定してもよい。閾値は、通常、陽性対照と陰性対照の両方の血液由来試料を測定し算出したピーク面積比の値に基づいて決定してよい。陽性対照と陰性対照の測定人数は、リスクの判定が所望の精度で可能となる閾値が得られる限り、特に制限されない。陽性対照と陰性対照の測定人数は、それぞれ、1人であってもよく、2人またはそれ以上であってもよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、通常、複数名であってよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、例えば、5人以上、10人以上、20人以上、または50人以上であってもよい。陽性対照と陰性対照の人数は、それぞれ、例えば、10000人以下、1000人以下、または100人以下であってもよい。
陽性対照を測定し算出したピーク面積比の値のみに基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陽性対照の複数個体で測定し算出したピーク面積比の値の上限から下限までの範囲から選択される値、例えば平均値、を閾値として設定してもよい。また、例えば、陽性対照の複数個体で測定し算出したピーク面積比の値の分布において、陽性対照の所定の割合が危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。所定の割合とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。
陰性対照について測定し算出したピーク面積比の値のみに基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陰性対照の複数個体で測定し算出したピーク面積比の値の上限から下限までの範囲から選択される値、例えば平均値、を閾値として設定してもよい。また、例えば、陰性対照の複数個体で測定し算出したピーク面積比の値の分布において、陰性対照の所定の割合が非危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。所定の割合とは、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。
陽性対照について測定し算出したピーク面積比の値と陰性対照について測定し算出したピーク面積比の値の両方に基づいて閾値を決定する場合には、例えば、陽性対照の所定の割合が危険範囲に含まれ、且つ、陰性対照の所定の割合が非危険範囲に含まれるように閾値を決定してもよい。陽性対照の内の危険範囲に含まれるものの割合、および、陰性対照の内の非危険範囲に含まれるものの割合は、いずれも高い方が好ましい。これらの割合は、それぞれ、例えば、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、97%以上、または100%であってよい。これらの割合の両方を高くすることが難しい場合は、例えば、本発明による予測結果の利用目的等の諸条件に応じて、いずれかの割合が優先的に高くなるように閾値を設定してもよい。例えば、偽陰性率を下げるためには、陽性対照の内の危険範囲に含まれるものの割合が優先的に高くなるように閾値を設定してよい。
閾値の決定は、例えば、ソフトウェアを用いて実施してもよい。例えば、統計解析ソフトウェアを用い、陰性対照と陽性対照とを統計学的に最も適切に判別できるような閾値を決定してもよい。そのようなソフトウェアとしては、「R」等の統計解析ソフトウェアが挙げられる。
なお、「ピーク面積比が一定の値を得てリスクの検出の指標とする」とは、当該ピーク面積比の値そのものを得てリスクの検出の指標とする場合に限られず、当該ピーク面積比の値を反映する他の値を得て検出の指標とすることも含まれる。例えば、抗体分離剤として、前述したヒトFcγRIIIaリガンドを固定化した不溶性担体を用いた場合、溶出ピークとして第1ピーク、第2ピークおよび第3ピークが抽出されるが、その場合、「第1ピークのピーク面積%を得てリスクの検出の指標とする」とは、第1ピークのピーク面積%の値そのものを得てリスクの検出の指標とする場合に限られず、第2から第3ピークのピーク面積%の合計値等の、第1ピークのピーク面積%の値を反映する他の値を得て検出の指標とすることも含まれる。いずれの場合にも、リスクの検出に用いられるピーク面積比が第1から第3ピークからなる場合や閾値等の数値は、ピーク面積比の内容に応じて、適宜補正して用いられる。例えば、溶出ピークが第1から第3ピークからなる場合、第1ピークのピーク面積%の値をX、第2から第3ピークのピーク面積%の合計値をYとすると、「X=100%-Y」の関係が成立する。よって、第1ピークのピーク面積%の値そのもの(すなわち、「X」)に代えて第2から第3ピークのピーク面積%の合計値(すなわち、「Y」)を検出の指標とする場合、「Xが一定の基準を満たす(例えば、低いもしくは高い、または或る範囲にある)」とは、「Yの補正値(すなわち、「100%-Y」)が当該基準を満たす」と読み替えるものとする。
リスクの検出結果は、被検者に対してリスクを低減するための処置(以下、「リスク軽減処置」ともいう)を実施するかを決定するための指標として用いてもよい。言い換えると、本発明の予測方法を実施することで、被検者に対してリスク軽減処置を実施するかを決定するための指標が得られる。すなわち、例えば、本発明における検出方法により被検者においてリスクがある、または高いと判定された場合に、被検者に対してリスク軽減処置を実施すると決定してよい。本発明における検出方法は、例えば、単独で、または他の手段と組み合わせて、被検者に対してリスク軽減処置を実施するかを決定するための指標として用いてよい。例えば、本発明の予測方法により被検者においてリスクがある、または高いと判定された症状について、他の手段により確定診断を実施してから、被検者に対してリスク軽減処置を実施すると決定してもよい。リスク軽減処置は、医療行為であってもよく、非医療行為であってもよい。前記医療行為としては、投薬の開始・中止・変更や放射線治療や外科治療への治療法の選択・変更が例示でき、非医療行為としては食事内容の変更や運動の開始・中止・変更が例示できるが、同業者が容易に想定し得る範囲であれば特に制限はない。
以下、実施例および比較例を参照して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら例に限定されるものではない。
<抗体分離剤カラム(FcR9_Fカラム)の作製>
特開2018-197224号公報の方法で得られたFc結合性タンパク質FcR9_F_Cys(配列番号2)を、以下に示す方法で不溶性担体(ゲル)に固定化し、FcR9_Fカラムを作製した。なおFcR9_F_Cys(配列番号2)において、1番目のメチオニン(Met)から22番目のアラニン(Ala)までが改良PelBシグナルペプチドであり、24番目のグリシン(Gly)から199番目のグルタミン(Gln)までがFc結合性タンパク質FcR9_F(特開2018-197224号公報)のアミノ酸配列(配列番号1の17番目から192番目までの領域に相当)、200番目のグリシン(Gly)から207番目のグリシン(Gly)までがシステインタグ配列である。また前記FcR9_Fは、配列番号1に示す天然型ヒトFcγRIIIaの17番目から192番目までのアミノ酸残基であり、ただし以下に示す10箇所のアミノ酸置換を有したポリペプチドである:
配列番号1の27番目(配列番号2では34番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
配列番号1の29番目(配列番号2では36番目)のフェニルアラニン(Phe)をイソロイシン(Ile)に置換
配列番号1の35番目(配列番号2では42番目)のチロシン(Tyr)をアスパラギン(Asn)に置換
配列番号1の48番目(配列番号2では55番目)のグルタミン(Gln)をアルギニン(Arg)に置換
配列番号1の75番目(配列番号2では82番目)のフェニルアラニン(Phe)をロイシン(Leu)に置換
配列番号1の92番目(配列番号2では101番目)のアスパラギン(Asn)をセリン(Ser)に置換
配列番号1の117番目(配列番号2では124番目)のバリン(Val)をグルタミン酸(Glu)に置換
配列番号1の121番目(配列番号2では128番目)のグルタミン酸(Glu)をグリシン(Gly)に置換
配列番号1の171番目(配列番号2では178番目)のフェニルアラニン(Phe)をセリン(Ser)に置換
配列番号1の176番目(配列番号2では183番目)のバリン(Val)をフェニルアラニン(Phe)に置換。
(1)2mLの分離剤用親水性ビニルポリマー(東ソー社製:液体クロマトグラフィ用充填剤)の表面の水酸基をヨードアセチル基で活性化後、特開2018-197224号公報の方法で得られたFcR9_F_Cysを4mg反応させることで、FcR9_F固定化ゲルを得た。
(2)(1)で作製したFcR9_F固定化ゲル1.2mLをφ4.6mm×50mmのステンレスカラムに充填してFcR9_Fカラムを作製した。
(参考例1) <肺がん患者と健常者由来のガンマグロブリン分離>
(1)インフォームドコンセントを得たペンブロリズマブ投与前の肺がん患者から得た138の検体および東北メディカルメガバンク機構から分譲を受けた健常者由来の50検体(検体は共に血清)を、PBS(Phosphate Buffered Saline)(pH7.4)で20倍希釈後、0.2μm径のフィルター(Merck Millipore社製)に通すことで血清サンプルを調製した。
(2)上記にて作製したFcR9_Fカラムを高速液体クロマトグラフィ装置(東ソー社製)に接続し、100mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH6.5)(以下「平衡化液」とも表記)で平衡化後、標準物質として1mg/mLのリツキシマブ(rituximab、全薬工業製、販売名:リツキサン点滴静注100mg)抗体溶液を流速1.2mL/minにて10μL添加した。検出器による測定間隔は、1/5秒毎にデータを取得することで行なった。
(3)流速1.2mL/minのまま平衡化液で7分間洗浄後、500mMの塩化ナトリウムを含む10mMのクエン酸緩衝液(pH4.5)(以下「溶出液」とも表記)を用いたpHグラジエント(11分で溶出液が100%となるグラジエント)で吸着したガンマグロブリンを溶出し、分離パターンを得た。
(4)標準物質の分析後、(2)および(3)と同様な手順で、測定サンプルとして(1)で調製した血清サンプルを10μL添加することで分析し、ガンマグロブリンの分離パターンを得た。標準物質と測定サンプルを交互に測定することで分析を行なった。
(5)(3)および(4)で得た分離パターンを、pHグラジエントを開始した時間(溶出開始後7分)、およびpHグラジエントが終了した(すなわち溶出液が100%となった)時間(溶出開始後18分)がともに検出値0となるよう、ベースライン補正した。
(6)ベースライン補正した標準物質の分離パターン(図1)から、溶出開始後7分から18分までの間に検出される3つのピーク間(溶出時間が短い(FcR9_Fとの結合能が低い)順に第1ピーク、第2ピーク、第3ピーク)の谷領域で導関数が0を取る2つの溶出時間で分割した領域をピーク領域とした。すなわち第1ピーク領域は溶出開始後7分から第1ピークと第2ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間までの範囲とし、第2ピーク領域は第1ピークと第2ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間から第2ピークと第3ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間までの範囲とし、第3ピーク領域は第2ピークと第3ピークの間の谷領域の導関数が0を取る溶出時間から溶出開始後18分までの範囲とした。当該標準物質で定義付けたピーク領域を標準物質の分析直後に測定した測定サンプル(図1)に適用することで、当該測定サンプルのピーク領域の定義付けを標準物質を用いて行なった。
(7)(6)で定義付けた測定サンプルの各ピーク領域のピーク面積を算出し、当該ピーク面積を溶出開始後7分から18分までの間のピーク面積の合計値(すなわち第1ピーク面積、第2ピーク面積および第3ピーク面積の和)で割った値から各ピーク面積%(第1ピーク面積%、第2ピーク面積%、第3ピーク面積%を、以下area1%、area2%、area3%とも記載)を算出した。
参考例1の結果を図2に示す。健常者と比較して、肺がん患者では血液に含まれるガンマグロブリンの第1ピーク面積%の値が有意に高く、第3ピーク面積%の値が有意に低い結果となった。
なお、以下の実施例および比較例において対象とする検体は全て、各種抗体医薬品を投与後又は投与前の肺がん患者に由来する血清である。また、全ての検体はインフォームドコンセントを経た上で患者より提供されたものである。
(実施例1) <FcR9_Fカラムを用いたペンブロリズマブ投与患者における血中抗体分析(ピーク面積比)>
(1)検体として、免疫チェックポイント阻害薬であるペンブロリズマブを複数回投与した患者由来の血清を用いた。より具体的には、6回目のペンブロリズマブ投与直前である患者由来の77検体、および9回目の投与直前である患者由来の57検体を用いた。それ以外は、参考例1(1)から(6)と同様な方法で測定サンプルのピーク領域の定義付けを行なった。
(2)(1)で定義付けた測定サンプルの各ピーク領域のピーク面積を算出し、当該ピーク面積を溶出開始後7分から18分までの間のピーク面積の合計値で割った値、および各ピーク面積同士で割った値から各ピーク面積比を算出した。
(3)(2)で算出した前記各ピーク面積比を基に、評価指標として各ピーク面積比の中央値を閾値として高値の群と低値の群とに分けた検体に対して、無増悪生存期間および全生存期間との相関をカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)法により評価した。各評価指標の生存期間との相関性を比較するために、ログランクテスト(log-rank test)により有意性を示すP値およびハザード比(無増悪生存期間ではがん増悪、全生存期間では死亡のイベント発生の危険性が2群間で相対的に何倍異なるかを示す指標)を求めた。なお、本実施例において、P値が0.05未満となる場合に有意であると判断した。
(比較例1) <FcR9_Fカラムを用いたペンブロリズマブ投与患者における血中抗体分析(ピーク面積比、異なる評価時点)>
検体として、ペンブロリズマブ投与前の患者由来138検体、3回目のペンブロリズマブ投与直前である患者由来の107検体を用いた。その他は、実施例1と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
(比較例2) <FcR9_Fカラムを用いたペンブロリズマブ投与患者における血中抗体分析(ピーク面積)>
実施例1(1)の検体として、ペンブロリズマブを投与前の患者由来138検体、3回目の投与直前である患者由来107検体、6回目の投与直前である患者由来77検体、および9回目の投与直前である患者由来57検体を用いた。また、実施例1(3)において、無増悪生存期間および全生存期間との相関を、各ピーク面積の絶対値(全ピーク面積、第1ピーク面積、第2ピーク面積、第3ピーク面積を、以下area、area1、area2、area3とも記載)を基に評価した他は、実施例1と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
実施例1、比較例1および比較例2の結果をまとめて表1に示す。表および以降の記載において、「CX」という表記は、X回目の抗体医薬品投与直前またはその時点の患者から採取された検体であることを示す。「pre」という表記は、抗体医薬品が未投与である時点またはその時点の患者から採取された検体であることを示す。ハザード比におけるHigh/Lowは、低値の群に対する高値の群における無増悪生存期間ではがん増悪、全生存期間では死亡のイベント発生の危険性の相対値を示し、Low/Highでは、高値の群に対する低値の群における当該危険性の相対値を示す。
Figure 2023077764000002
表1に示すとおり、実施例1のC6において、評価指標をarea1%またはarea3%とした場合、無増悪生存期間および全生存期間はどちらとも有意差が認められた。また、C9のarea1%を評価指標とした場合、無増悪生存期間において有意差が認められた。一方、比較例1では有意差が認められる評価指標はなく、比較例2ではC6のarea3を評価指標とした場合、全生存期間でのみ有意差が認められる結果となった。
さらに、C6のarea3%を評価指標とした場合、全生存期間のハザード比 Low/Highの値は2.57であり、C6のarea3の当該ハザード比2.37と比較して高い値となった。ハザード比は1を基準として値が離れるほど相対的な危険性をより顕著に識別できることを意味するため、当該結果からC6における評価指標としてarea3よりarea3%の方が、全生存期間を精度高く予測できることがわかる。
以上の結果から、C6およびC9における各ピーク面積比を評価指標として用いた方が、無増悪生存期間および全生存期間を共に精度高く予測できることがわかる。
(実施例2) <FcR9_Fカラムを用いたペンブロリズマブ投与患者における血中抗体分析(ピーク面積比の変動度)>
実施例1(1)の検体として、C6時点の患者由来77検体、ならびに当該検体と由来を同一とするPreの検体を用いた。また、実施例1(3)において、当該同一患者由来の検体群に関し、preに対するC6での各ピーク面積比の変動度(C6での各ピーク面積比/preでの各ピーク面積比)を算出し、これら各ピーク面積比の変動度を基に評価した他は、実施例1と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
(比較例3) <FcR9_Fカラムを用いたペンブロリズマブ投与患者における血中抗体分析(異なる評価時点でのピーク面積比の変動度)>
実施例1(1)の検体として、C3時点の107検体および当該検体と由来を同一にするpreの検体を用いた。また、実施例1(3)において、preに対するC3での各ピーク面積比の変動度を算出し、それらを基に評価した他は、実施例1と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
実施例2、比較例3の結果をまとめて表2に示す。
Figure 2023077764000003
表2に示すとおり、実施例2におけるpreに対するC6(以下、C6/preとも記載)での各ピーク面積比の変動度に関し、area1%またはarea3%を評価指標とした場合、無増悪生存期間および全生存期間のどちらにおいても有意差が認められた。一方、比較例3におけるpreに対するC3での各ピーク面積比の変動度(C3/pre)においては、無増悪生存期間および全生存期間のすべてにおいて有意差が認められなかった。
以上の結果から、C6以前の検体に対するC6時点の検体における変動度を評価指標として用いることによって、無増悪生存期間および全生存期間を共に精度高く予測できることがわかる。
実施例2および比較例3での、preに対するC3、C6でのarea3%変動度を基にしたカプラン・マイヤー法により評価した結果を図3に示す。C6/preを基準とした2群でのカプラン・マイヤーの図と比較して、C3/preにおいては高値、低値の群に関わらずどちらも低い生存期間を示した。投与回数が少ない場合、十分な治療効果が得られていないため生存期間に差は見られなかったと考えられる。この結果からも、C6の値を基にした評価を行うと生存期間を精度よく予測できることがわかる。
また、評価指標をarea1%またはarea3%とした場合、無増悪生存期間のハザード比 High/Lowにおいて、area1%に関し、C6(実施例1)2.08と比較して、C6/pre(実施例2)では2.83と値が大きくなった。area3%に関し、C6(実施例1)0.46と比較して、C6/pre(実施例2)では0.40と値が小さくなった。ハザード比は1を基準として値が離れるほど相対的な危険性をより顕著に識別できることを意味する。そのため、本結果から、C6のみのピーク面積比を評価指標とするよりも、C6以前のピーク面積比に対するC6のそれの変動度を評価指標とした方が、無増悪生存期間を精度高く予測できることがわかる。
(実施例3) <FcR9_Fカラムを用いたペンブロリズマブ投与患者における血中抗体分析(経時変化)>
(1)実施例1(1)の検体として、preの患者由来138検体、C3の時点である患者由来107検体、C6の時点である患者由来77検体、およびC9の時点である患者由来57検体を用いた他は、実施例1(1)から(2)と同様な方法で各ピーク面積比を算出した。
(2)治療期間中の画像診断による最も良い治療効果判定により、完全奏効(以下CRとも記載)、部分奏効(以下PRとも記載)の群と、安定(以下SDとも記載)、進行(以下PDとも記載)の群に分け、それぞれarea3%の値の推移を評価し、当該群間に有意差があるかP値を求め評価した。得られた結果を図4に示す。
図4に示すとおり、pre、C3の時点では、CR群およびPR群とSD群およびPD群とはarea3%の値において有意差は無かった。しかしながら、C6およびC9の時点において当該2群間で有意差が認められた。この結果からも、特にC6以降において腫瘍の画像診断における治療効果判定と連動して評価指標が変動することがわかる。
またCR群およびPR群におけるarea3%は、参考例1における健常者のarea3%の値に接近していく結果となっており、治療効果によりがん患者特有のIgGの分離パターンから健常者の当該分離パターンに変化していったと考えられる。
(実施例4) <FcR9_Fカラムを用いたアテゾリズマブ投与患者における血中抗体分析>
実施例1(1)の検体として、ペンブロリズマブの代わりに、免疫チェックポイント阻害薬であるアテゾリズマブを複数回投与または投与前の患者から得た血清を用いた。より具体的には、C6時点の患者由来の12検体、ならびに当該検体と由来を同一にするpreおよびC3時点の検体も各々用いた。また、実施例1(3)において、preまたはC3に対するC6での各ピーク面積比の変動度(C6での各ピーク面積比/preおよびC3での各ピーク面積比)を算出し、それらを基に評価した他は、実施例1と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
(比較例4) <FcR9_Fカラムを用いたアテゾリズマブ投与患者における血中抗体分析>
検体として、C6時点の患者由来の30検体、当該検体と由来を同一にするpreおよびC3時点の検体も各々用いた。また、preに対するC3での各ピーク面積比の変動度(C3での各ピーク面積比/preでの各ピーク面積比)、およびpreおよびC3での各ピーク面積比を算出し、それらを基に評価した他は、実施例4と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
実施例4、比較例4の結果をまとめて表3に示す。
Figure 2023077764000004
実施例4におけるC6/preでの各ピーク面積比の変動度において、評価指標をarea1%とした場合、無増悪生存期間および全生存期間はどちらとも有意差が認められた。また、C3に対するC6(以下、C6/C3とも記載)での各ピーク面積比の変動度において、評価指標をarea1%またはarea3%とした場合、無増悪生存期間で有意差が認められた。一方、比較例4においてはどの評価時点および評価指標においても、無増悪生存期間および全生存期間のすべてにおいて有意差は認められなかった。
以上の結果から、アテゾリズマブの投与例においても、C6以前のピーク面積比に対するC6のそれの変動度を基準として評価を行うことで、ペンブロリズマブ投与時の評価結果(実施例1および2)と同様に、無増悪生存期間および全生存期間を共に精度高く予測できることがわかる。
(実施例5) <FcR9_Fカラムを用いたニボルマブ投与患者における血中抗体分析>
実施例1(1)の検体として、ペンブロリズマブの代わりに、免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブを複数回(複数ヶ月)投与または投与前の患者から得た血清を用いた。より具体的には、投与開始から3か月後(以下3Mとも記載)の患者から得た73検体を用いた。なお、当該3Mに関し、評価した患者の内、ニボルマブ投与4回目の投与直前の患者割合が6.8%、5回目が19.2%、6回目が23.3%、7回目が45.2%、8回目が5.5%となっている。
さらに検体として、投与開始から6か月後(以下6Mとも記載)の患者から得た52検体、および当該検体と由来を同一にする3M時点の検体も用いた。なお、当該6Mに関し、評価した患者の内、ニボルマブ投与9回目の投与直前の患者割合が10.9%、当該10回目が8.7%、当該11回目が26.1%、当該12回目が32.6%、当該13回目が17.4%、当該15回目が4.3%となっている。
また、実施例1(3)において、3Mに対する6Mでの各ピーク面積比の変動度(6Mでの各ピーク面積比/preまたは3Mでの各ピーク面積比)、ならびに、3Mおよび6Mでの各ピーク面積比を各々算出した。そして、これらを基に評価した他は、実施例1と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
(比較例5) <FcR9_Fカラムを用いたニボルマブ投与患者における血中抗体分析>
検体として、preの患者由来52検体を用い、当該時点での各ピーク面積比を基に評価した他は、実施例5と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
実施例5、比較例5の結果をまとめて表4に示す。
Figure 2023077764000005
実施例5に関し、6M/3Mでのarea1%およびarea3%の変動度を評価指標とした場合、無悪生存期間および全生存期間のどちらにおいても有意差が認められた。また、3Mのarea1%もしくはarea3%、または6Mのarea1%もしくはarea3%を評価指標とした場合、全生存期間において有意差が認められた。
一方、比較例5においてはどのピーク面積比を評価指標としても、無増悪生存期間および全生存期間のどちらにおいても有意差が認められなかった。
以上の結果から、3Mおよび6M(各々、ニボルマブ投与4~8回目の投与直前およびニボルマブ投与9~15回目の投与直前)を基準として評価を行うことで、無増悪生存期間および全生存期間を共に精度高く予測できることがわかる。
(実施例6) <FcR9_Fカラムを用いたペンブロリズマブ投与患者における血中抗体分析(P値が最小となるピーク面積比の変動度の閾値)>
評価指標である各ピーク面積比の変動度の閾値として、閾値を境として分けた2群間のカプラン・マイヤー法によるログランクテストにおける最も小さいP値を取る閾値を用いた他は、実施例2と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。実施例6の結果をまとめて表5に示す。
Figure 2023077764000006
実施例6に関し、C6/preのすべての評価指標において、無増悪生存期間および全生存期間はどちらも有意差が認められた。
実施例2における閾値を各ピーク面積比の中央値とした場合と比較すると、すべての結果においてハザード比1から値が離れる結果となり、無増悪生存期間および全生存期間の評価指標における相対的な危険性をより明確に識別できることがわかった。
(実施例7) <FcR9_Fカラムを用いたニボルマブ投与患者における血中抗体分析(治療効果判定によりグループ分けした症例群での評価)>
(1)検体として、ニボルマブを投与6か月まで継続的に治療が続けられた患者由来の53検体に対して、治療期間中の画像診断による最も良い治療効果判定により、CR群およびPR群と、SD群および進行群とに分け、無増悪生存期間および全生存期間との相関をカプラン・マイヤー(Kaplan-Meier)法により評価した。
(2)さらに、SD群およびPD群に属する患者に関し、6Mおよびpreの検体を対象とし、各ピーク面積比を算出した。そして、preに対する6Mでの各ピーク面積比の変動度を基に、当該変動度の閾値として、閾値を境として分けた2群間のカプラン・マイヤー法によるログランクテストにおける最も小さいP値を取る閾値を用いた他は、実施例1と同様な方法でP値およびハザード比を求めた。
実施例7の結果を表6および図5に示す。図5では治療効果判定を基にグループ分けした群に対するカプラン・マイヤー法による図と、SDもしくはPDの群においてさらに6M/preでのarea3%による変動度を基に評価したカプラン・マイヤー法による図を示す。
Figure 2023077764000007
治療効果判定により分離した無増悪生存期間および全生存期間に対して、さらに当該変動度を基に再度有意に分離できることがわかった(表6の6M/preでのarea1%およびarea3%においてP値<0.05)。特に全生存期間において、SDもしくはPDの群の中からCRもしくはPRの群と同等の生存期間を示す群を6M/preでのarea3%による変動度から選出できることがわかった。
以上の結果より、治療効果判定により得られる無増悪生存期間および全生存期間の予測とは異なる、新たな生存期間予測要因としてFcRカラムによるIgG分離パターンを用いることができることがわかる。
以上説明したように、本発明によれば、がん罹患者の予後、特に無増悪生存期間および/または全生存期間を精度よく予測することが可能となる。がん患者の予後を明らかにすることは、治療方針や治療効果のモニタリングにおいて重要な情報を与えることから、最適な療法の選択を行なう上での有用な指標となる。予後診断は、患者が抱える病状における危険性や生存の確率に関する情報を医師に与え、最適な療法を選択できるため、不必要な治療を患者に行なうリスクを低減させることに繋がる。このように、不必要な治療に対する費用の節約だけでなく、最適な治療選択による患者の予後改善に寄与できる。そのため、本発明は、コンパニオン診断、並びにそれに用いられる医薬品及び医療機器の開発等において有用である。

Claims (6)

  1. がんを患っている被検者の生存期間を予測する方法であって、
    以下の(1)から(3)の工程を含み、
    (1)前記被検者から採取された血液由来試料を、Fc結合性タンパク質を固定化した不溶性担体を充填したカラムに供し、当該試料中に含まれるガンマグロブリンを分離することで、前記ガンマグロブリンの分離パターンを得る工程;
    (2)(1)で得られた分離パターンから各ピーク面積を算出し、当該面積の比を算出する工程;
    (3)(2)で得られた比に基づき、前記被検者の生存期間を予測する工程;
    かつ、前記血液由来試料は、前記被検者への抗体医薬品の投与回数4回以降において採取された試料である、方法。
  2. (3)の工程が、前記抗体医薬品の投与回数4回以降において採取された試料において前記(2)で得られた比と、前記(2)において採取された投与回数よりも前に採取された試料から得られた前記各ピーク面積の比との変動に基づき、前記被験者の生存期間を予測する工程である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記生存期間が無増悪生存期間または全生存期間である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記がんが肺がんである、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 前記Fc結合性タンパク質がヒトFcγレセプターである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記ヒトFcγレセプターが、以下の(i)から(iii)のいずれかから選択されるポリペプチドである、請求項5に記載の方法:
    (i)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列を含み、当該アミノ酸配列において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンがフェニルアラニンに置換されたポリペプチド;
    (ii)配列番号1に記載のアミノ酸配列の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列を含み、当該アミノ酸配列において、少なくとも配列番号1に記載の176番目のバリンのフェニルアラニンへの置換を有し、さらに当該176番目以外の1もしくは数個の位置にて、1もしくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、挿入および/または付加を有し、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド;
    (iii)配列番号1に記載の17~192番目までのアミノ酸残基からなる配列と70%以上の相同性を有するアミノ酸配列において、配列番号1に記載の176番目のバリンに相当するアミノ酸残基がフェニルアラニンに置換されており、かつ抗体結合活性を有するポリペプチド。
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