JP2023072702A - 細胞培養基材 - Google Patents
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Abstract
【課題】疎水性高分子基材に対して細胞接着性を向上する手段を提供する。【解決手段】表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である高分子基材の少なくとも一方の面に、下記式(1)で表されるフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)から構成されかつ20万以上の重量平均分子量を有する重合体を含む被覆層を有する細胞培養基材。JPEG2023072702000012.jpg36161【選択図】なし
Description
本発明は、細胞接着活性に優れる細胞培養基材ならびに当該細胞培養基材を用いるバイオリアクターおよび幹細胞の培養方法に関する。
近年、再生医療や創薬の開発に際し、細胞培養技術が用いられている。特に幹細胞の使用に注目が集まっており、ドナー細胞から増殖した幹細胞を用いることにより、損傷や欠陥のある組織を修復・置換する技術が盛んに研究されている。ヒトを含め動物の細胞のほとんどは、浮遊状態では生存できず、何かに接着した状態で生存する接着(足場依存)性細胞である。このため、接着(足場依存)性細胞を高密度に培養して、生体組織と類似した培養組織を得るための機能的な培養基材の開発が様々行われている。
細胞培養基材としては、従来、プラスチック(例えば、ポリスチレン)やガラスの容器が使用されてきたが、これらの細胞容器の表面にプラズマ処理などを施すことが報告されている。当該処理がなされた基材は、細胞との接着性に優れ、細胞の増殖および機能維持を行うことができる。
一方、細胞培養基材(細胞培養容器)の構造は、従来の平面な皿(プレート)構造以外に、バッグ内に培養足場として多孔体を挿入した構造、中空糸(ホローファイバー)構造、スポンジ構造、綿状(ガラスウール)構造、複数のディッシュを積層した構造など、多様化が進んでいる。このように構造が多様化・複雑化した培養容器に対しては、プラズマ処理を行うことが困難もしくは不可能である。
そこで、プラズマ処理以外の方法として、細胞との接着性(細胞接着性)を促す高分子化合物を用いる技術が提案されている。例えば、非特許文献1には、テトラヒドロフルフリルアクリレートのホモポリマー(PTHFA;ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート)を含む溶液をポリエチレンテレフタレート(PET)膜に塗布することで、細胞培養基材への細胞接着性が向上することが開示されている。
Colloids and Surfaces B; Biointerfaces 145 (2016) 586-596.
通常の細胞皿では、非特許文献1に記載されるように、培地交換を行うために、PET等の親水性基材が使用される。一方、中空糸型バイオリアクターでは、高いガス交換能が要求される。当該観点から、疎水性高分子からなる基材を中空糸膜に使用することが好ましい。したがって、疎水性高分子基材に対して優れた細胞接着性が求められている。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、疎水性高分子基材に対して細胞接着性を向上する手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、特定の構造を有するフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)を有しかつ特定以上の分子量を有する重合体を用いて疎水性高分子基材の表面に被覆することによって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、上記目的は、表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である高分子基材の少なくとも一方の面に、下記式(1)で表されるフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)から構成されかつ20万以上の重量平均分子量を有する重合体を含む被覆層を有する細胞培養基材によって達成できる。
式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、下記(1-1)または下記式(1-2):
式(1-1)および式(1-2)中、R3は、炭素原子数1~3のアルキレン基である;で表される基である。
本発明によれば、疎水性高分子基材に対して、優れた細胞接着性を付与することができる。
本発明の細胞培養基材は、表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である高分子基材の少なくとも一方の面に、下記式(1)で表されるフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)から構成されかつ20万以上の重量平均分子量(Mw)を有する重合体を含む被覆層を有することを特徴とする:
式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基であり、R2は、下記(1-1)または下記式(1-2):
式(1-1)および式(1-2)中、R3は、炭素原子数1~3のアルキレン基である;で表される基である。
本明細書において、表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である高分子基材を単に「高分子基材」、「基材」、「疎水性高分子基材」または「疎水性基材」とも称する。また、本明細書において、重量平均分子量を単に「分子量」または「Mw」とも称する。
本明細書において、上記式(1)で表されるフルフリル(メタ)アクリレートを単に「フルフリル(メタ)アクリレート」と、また、上記式(1)で表されるフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)を単に「構成単位(1)」とも称する。また、構成単位(1)を有する重合体を単に「重合体」または「本発明に係る重合体」とも称する。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含する。同様にして、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸の双方を包含し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。
本発明の細胞培養基材は、上記特定構造(式(1))及び特定の分子量(Mw=20万以上)を有する重合体を含む被覆層が特定の疎水性(表面自由エネルギー=33mJ/m2未満)を有する高分子基材の少なくとも一方の面に形成されてなることを特徴とする。上記重合体を用いて形成される被覆層は、優れた細胞接着性を発揮できる。ここで、本発明の構成による上記作用効果の発揮のメカニズムは以下のように推測される。なお、本発明は下記推測に限定されるものではない。
従来、細胞培養は、細胞培養ディッシュ(ペトリディッシュ)や96ウェル等の細胞培養プレートで行われており、これらの細胞培養容器は、培地交換を行うために、ポリスチレンやPETなどの親水性材料で作製されている。一方、近年、別々の設備(例えば、インキュベーター、安全キャビネット、クリーンルーム)を一体化した中空糸型バイオリアクターを用いて、細胞培養をクローズドな環境でかつ自動的に行うことができるようになった。このような中空糸型バイオリアクターでは、高いガス交換能を確保するとの観点から、疎水性高分子からなる基材を中空糸膜に使用することが好ましい。そこで、本発明者らは、様々な材料について鋭意検討を行ったところ、特定分子量以上のポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)が特に有効であることを見出した。このような分子量のPTHFAであれば、安定してかつ均一な厚みで疎水性基材に被覆できる。また、このように均一な厚みのPTHFA被覆層(PTHFA膜)上には、培地に含まれる細胞接着因子(細胞接着性タンパク質)が良好に吸着し、これを介して細胞が接着しやすくなる(即ち、細胞接着活性を向上できる)と推測される。上記に加えて、分子量の大きな重合体を使用することにより、表面に露出したタンパク吸着官能基の数が増加し、これによっても細胞接着因子(細胞接着性タンパク質)の吸着を促進し、細胞接着活性を向上できると推測される。また、表面に吸着した細胞接着性タンパク質のインテグリン結合サイトが細胞側に向くことで良好な細胞増殖性を発揮する(即ち、細胞増殖活性を向上できる)と考えられる。
したがって、本発明に係る細胞培養基材であれば、優れた細胞接着性を達成できる。また、本発明に係る細胞培養基材であれば、優れた細胞増殖性を達成できる。
以下、本発明の好ましい実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20~25℃)/相対湿度40~50%RHの条件で測定する。
<細胞培養基材>
本発明の細胞培養基材は、表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である高分子基材の少なくとも一方の面に、上記重合体を含む被覆層が形成されてなる。
本発明の細胞培養基材は、表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である高分子基材の少なくとも一方の面に、上記重合体を含む被覆層が形成されてなる。
疎水性高分子基材の表面に、本発明に係る重合体を含む被覆層を形成すると、優れた細胞接着性を発揮できる。また、本発明に係る細胞培養基材は、細胞増殖性(細胞伸長性)にも優れる。
[被覆層]
被覆層は、下記で説明する重合体を含む。
被覆層は、下記で説明する重合体を含む。
(重合体)
本発明に係る重合体は、下記式(1)で表されるフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)を有する。当該重合体を用いることで、均一な厚みの被覆層を疎水性基材に安定して形成できる。このため、疎水性高分子基材に優れた細胞接着性(さらには細胞増殖性)を付与することができる。加えて、当該重合体の溶液を疎水性高分子基材表面に塗布することによって、様々な形状の基材に対しても被覆層を簡便に形成できる。このため、本発明に係る重合体であれば、様々な形状・設計の細胞培養基材(細胞培養容器)対して、細胞接着性(さらには細胞増殖性)に優れた被覆層を形成できる。
本発明に係る重合体は、下記式(1)で表されるフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位(1)を有する。当該重合体を用いることで、均一な厚みの被覆層を疎水性基材に安定して形成できる。このため、疎水性高分子基材に優れた細胞接着性(さらには細胞増殖性)を付与することができる。加えて、当該重合体の溶液を疎水性高分子基材表面に塗布することによって、様々な形状の基材に対しても被覆層を簡便に形成できる。このため、本発明に係る重合体であれば、様々な形状・設計の細胞培養基材(細胞培養容器)対して、細胞接着性(さらには細胞増殖性)に優れた被覆層を形成できる。
本発明に係る重合体は、構成単位(1)を必須に含むが、構成単位(1)に加えて、他のモノマーに由来する構成単位をさらに有していてもよい。ここで、他のモノマーは、細胞接着性を阻害しないものであれば特に制限されない。具体的には、他のモノマーとしては、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、メタアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、エチレン、プロピレン、N-ビニルアセトアミド、N-イソプロペニルアセトアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン等がある。これらの他のモノマーは、1種単独であっても、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。重合体が他のモノマーに由来する構成単位をさらに有する場合の他のモノマーに由来する構成単位の組成は、細胞接着性を阻害しないものであれば特に制限されないが、構成単位(1)に対して、0モル%を超えて10モル%未満であることが好ましく、3~8モル%程度であることがより好ましい。
ただし、細胞接着性(さらには細胞増殖性)のさらなる向上の観点から、重合体は、他のモノマーに由来する構成単位を含まない、すなわち、構成単位(1)のみから構成されることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態によると、重合体は、構成単位(1)から構成される。
(構成単位(1))
構成単位(1)は、下記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート由来である。なお、重合体を構成する構成単位(1)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。すなわち、構成単位(1)は、1種単独の下記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位のみから構成されても、あるいは下記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート由来の2種以上の構成単位から構成されてもよい。なお、後者の場合、各構成単位は、ブロック状に存在しても、ランダム状に存在してもよい。
構成単位(1)は、下記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート由来である。なお、重合体を構成する構成単位(1)は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。すなわち、構成単位(1)は、1種単独の下記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート由来の構成単位のみから構成されても、あるいは下記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート由来の2種以上の構成単位から構成されてもよい。なお、後者の場合、各構成単位は、ブロック状に存在しても、ランダム状に存在してもよい。
上記式(1)中、R1は、水素原子またはメチル基である。
R2は、下記式(1-1)または下記式(1-2)で表される基である。これらのうち、細胞接着性(さらには細胞増殖性)のさらなる向上などの観点から、R2は、下記式(1-1)で表される基であると好ましい。
上記式(1-1)および(1-2)中、R3は、炭素原子数1~3のアルキレン基である。ここで、炭素原子数1~3のアルキレン基としては、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-CH2CH2-)、トリメチレン基(-CH2CH2CH2-)、およびプロピレン基(-CH(CH3)CH2-または-CH2CH(CH3)-)がある。中でも、細胞接着性(さらには細胞増殖性)のさらなる向上の観点から、R3は、メチレン基(-CH2-)、エチレン基(-CH2CH2-)が好ましく、メチレン基(-CH2-)がより好ましい。
すなわち、フルフリル(メタ)アクリレートとしては、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フルフリルアクリレート、フルフリルメタクリレート、5-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフラン、5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフラン、5-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フラン、5-[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]フラン等がある。これらは、1種単独であっても、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。中でも、細胞接着性(さらには細胞増殖性)のさらなる向上の観点から、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートであることが好ましく、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)であることがより好ましい。
上記重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上である。ここで、重合体の重量平均分子量が20万未満であると、被覆層の厚みの均一性が不十分である。また、表面に露出したタンパク吸着官能基の数が少なく、十分量の細胞接着因子(細胞接着性タンパク質)が吸着できない。ゆえに、十分な細胞接着性を達成できない。細胞接着性(さらには細胞増殖性)のさらなる向上の観点から、重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30万を超え、より好ましくは35万以上、特に好ましくは40万以上である。また、重合体の溶媒に対する溶解性の向上、塗膜形成性の向上、および塗膜(ゆえに被覆層)の厚みのより均一性の観点から、重合体の重量平均分子量(Mw)の上限は、好ましくは90万以下であり、より好ましくは80万以下であり、さらに好ましくは70万以下であり、特に好ましくは60万以下である。すなわち、本発明の好ましい形態では、重合体の重量平均分子量(Mw)は、20万以上90以下である。本発明のより好ましい形態では、重合体の重量平均分子量(Mw)は、30万を超え80万以下である。本発明のさらに好ましい形態では、重合体の重量平均分子量(Mw)は、35万以上70万以下である。本発明の特に好ましい形態では、重合体の重量平均分子量(Mw)は、40万以上60万以下である。
本明細書において、「重量平均分子量(Mw)」は、標準物質としてポリスチレンを、移動相としてテトラヒドロフラン(THF)をそれぞれ使用するゲル浸透クロマトグラフィー(Gel Permeation Chromatography、GPC)により測定した値を採用するものとする。具体的には、重合体をテトラヒドロフラン(THF)に10mg/mlの濃度となるように溶解し、試料を調製する。このようにして調製された試料について、GPCシステムLC-20((株)島津製作所製)にGPCカラムLF-804(昭和電工(株)製)を取り付け、移動相としてTHFを流し、標準物質としてポリスチレンを用いて、重合体のGPCを測定する。標準ポリスチレンで較正曲線を作製した後、この曲線に基づいて重合体の重量平均分子量(Mw)を算出する。
本発明に係る重合体は、特に制限されず、例えば、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、リビングラジカル重合法、マクロ開始剤を用いた重合法、重縮合法等など、従来公知の重合法を適用して作製可能である。
上記方法において、単量体溶液の調製で使用できる重合溶媒は、上記使用される単量体を溶解できるものであれば特に制限されない。例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール、ポリエチレングリコール類などの水性溶媒;トルエン、キシレン、テトラリン等の芳香族系溶媒;およびクロロホルム、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒などが挙げられる。これらのうち、単量体の溶解しやすさなどを考慮すると、メタノールまたはエタノールが好ましい。また、単量体溶液中の単量体濃度は、特に制限されないが、単量体溶液中の単量体濃度は、通常5~60質量%であり、より好ましくは10~50質量%であり、特に好ましくは20~45質量%である。なお、上記単量体濃度は、上記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレートと、使用する際にはこれと共重合し得る単量体(他のモノマー、共重合性単量体)との合計濃度を意味する。
重合開始剤は特に制限されず、公知のものを使用すればよい。好ましくは、重合安定性に優れる点で、ラジカル重合開始剤であり、具体的には、過硫酸カリウム(KPS)、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩;過酸化水素、t-ブチルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド等の過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジスルフェートジハイドレート、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン)]ハイドレート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシピバレート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネート、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物が挙げられる。また、例えば、上記ラジカル重合開始剤に、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤を組み合わせてレドックス系開始剤として用いてもよい。重合開始剤の配合量は、単量体合計量1molに対して、0.5~5mmolが好ましい。このような重合開始剤の配合量であれば、単量体の重合が効率よく進行する。
上記重合開始剤は、上記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート、および使用する際にはこれらと共重合し得る単量体(他のモノマー、共重合性単量体)と、重合溶媒とそのまま混合されてもよいが、予め他の溶媒に溶解した溶液の形態で単量体および重合溶媒とそのまま混合されてもよい。後者の場合、他の溶媒としては、重合開始剤を溶解できるものであれば特に制限されないが、上記重合溶媒と同様の溶媒が例示できる。また、他の溶媒は、上記重合溶媒と同じであってもまたは異なってもよいが、重合の制御のしやすさなどを考慮すると、上記重合溶媒と同じ溶媒であることが好ましい。また、この場合の他の溶媒における重合開始剤の濃度は、特に制限されないが、混合のしやすさなどを考慮すると、重合開始剤の添加量が、他の溶媒100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
また、重合開始剤を溶液の形態で使用する場合には、単量体(フルフリル(メタ)アクリレート、および任意で用いられる共重合性単量体)を重合溶媒に溶解した溶液を、重合開始剤溶液の添加前に予め脱気処理を行ってもよい。脱気処理は、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスにて、上記溶液を10秒~5時間程度バブリングすればよい。脱気処理の際は、上記溶液を30℃~80℃程度、好ましくは下記の重合工程における重合温度に調温してもよい。
次に、上記単量体溶液を加熱することにより、単量体を重合する。ここで、重合方法は、例えば、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合などの公知の重合方法が採用でき、好ましくは製造が容易なラジカル重合を使用する。
重合条件は、上記式(1)のフルフリル(メタ)アクリレート、および使用する際にはこれらと共重合し得る単量体(他のモノマー、共重合性単量体))が重合できる条件であれば特に制限されない。具体的には、重合温度は、好ましくは30~80℃であり、より好ましくは40℃~55℃である。また、重合時間は、好ましくは1~24時間であり、好ましくは5~12時間である。上記したような条件であれば、単量体の重合が効率よく進行する。また、重合工程におけるゲル化を有効に抑制・防止すると共に、高い製造効率を達成できる。
また、必要に応じて、連鎖移動剤、重合速度調整剤、界面活性剤、およびその他の添加剤を、重合の際に適宜使用してもよい。
重合反応を行う雰囲気は特に制限されるものではなく、大気雰囲気下、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガス雰囲気等で行うこともできる。また、重合反応中は、反応液を攪拌してもよい。
重合後の重合体は、再沈澱法(析出法)、透析法、限外濾過法、抽出法など一般的な精製法により精製することができる。
精製後の重合体は、凍結乾燥、減圧乾燥、噴霧乾燥、または加熱乾燥等、任意の方法によって乾燥することもできるが、重合体の物性に与える影響が小さいという観点から、凍結乾燥または減圧乾燥が好ましい。
[疎水性高分子基材]
本発明では、疎水性高分子基材の少なくとも一方の面に、上記重合体を含む被覆層が形成される。ここで、本発明に係る疎水性高分子基材は、表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である。ここで、基材を構成する材料によっては材料の表面自由エネルギーが公知であり、この場合には、基材の表面自由エネルギーは当該材料の表面自由エネルギーとなる。また、基材の表面自由エネルギーは、接触角測定、ウィルヘルミ法など公知の方法によっても測定できる。基材の表面自由エネルギーが不明である場合の、本明細書における表面自由エネルギー(mJ/m2)は、下記接触角測定法によって測定される。
本発明では、疎水性高分子基材の少なくとも一方の面に、上記重合体を含む被覆層が形成される。ここで、本発明に係る疎水性高分子基材は、表面自由エネルギーが33mJ/m2未満である。ここで、基材を構成する材料によっては材料の表面自由エネルギーが公知であり、この場合には、基材の表面自由エネルギーは当該材料の表面自由エネルギーとなる。また、基材の表面自由エネルギーは、接触角測定、ウィルヘルミ法など公知の方法によっても測定できる。基材の表面自由エネルギーが不明である場合の、本明細書における表面自由エネルギー(mJ/m2)は、下記接触角測定法によって測定される。
(表面自由エネルギーの測定方法)
基材と標準液体(純水、ニトロメタンおよびヨウ化メチレン)との接触角を、23℃、相対湿度55%RHで、接触角計(協和界面科学株式会社製、接触角計DMs-401)を用いて測定する(測定方法;JIS R 3257:1999(静滴法)準拠)(計3回)。測定値の平均から平均接触角を求める。次に、下記Young-Dupreの式及び拡張Fowkesの式に基づき、基材の表面自由エネルギーの3成分を算出する。
基材と標準液体(純水、ニトロメタンおよびヨウ化メチレン)との接触角を、23℃、相対湿度55%RHで、接触角計(協和界面科学株式会社製、接触角計DMs-401)を用いて測定する(測定方法;JIS R 3257:1999(静滴法)準拠)(計3回)。測定値の平均から平均接触角を求める。次に、下記Young-Dupreの式及び拡張Fowkesの式に基づき、基材の表面自由エネルギーの3成分を算出する。
なお、標準液体の表面自由エネルギー(mJ/m2)は、下記表1に示す。接触角の値に基づいて、基材表面の表面自由エネルギー各成分値(γs
d、γs
p、γs
h)を求める。
上述したように、基材の表面自由エネルギーは、基材表面の水に対する接触角と相関する。基材表面の水に対する接触角は、通常、78°を超え、100°以上であることが好ましい。
上記したような基材の例としては、ポリプロピレン(表面自由エネルギー=29mJ/m2、接触角=100~110°)、ポリメチルペンテン(表面自由エネルギー=19mJ/m2、接触角=108°)、ポリテトラフルオロエチレン(表面自由エネルギー=18mJ/m2、接触角=105~115°)、ポリカーボネート(表面自由エネルギー=46.7mJ/m2、接触角=90°)などが挙げられる。上記材料は、単独で使用されてもまたは2種以上を併用してもよい。これらのうち、より高いガス交換性、塗膜均一化しやすいなどの観点から、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネートが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。すなわち、本発明の好ましい形態では、高分子基材が、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種を含む。本発明のより好ましい形態では、高分子基材がポリプロピレンを含む。本発明の特に好ましい形態では、高分子基材がポリプロピレンで形成される。なお、非特許文献1に記載のポリエチレンテレフタレート(PET)や細胞培養容器として通常使用されるポリスチレンの表面自由エネルギーは、それぞれ、43mJ/m2(接触角=65~75°)および33mJ/m2(接触角=78°)である。
疎水性高分子基材の構造は、限定されず、平面構造に加えて、多孔体を挿入した構造、中空糸構造、多孔質膜構造、スポンジ構造、綿状(ガラスウール)構造など様々な構造(形状)に設計することが可能である。後述するように、本発明の細胞培養基材は、バイオリアクター、特に中空糸型バイオリアクターに好適に使用できる。このため、疎水性高分子基材は中空糸を有することが好ましく、複数の中空糸から構成される多孔質膜(中空糸膜)であることがより好ましい。ここで、高分子基材としての多孔質膜(中空糸膜)は、少なくとも一部がポリプロピレンからなる多孔質膜であることが好ましい。ここで、高分子基材は、一部がポリプロピレンからなりかつ他の部位がポリプロピレン以外の材料(他の材料)から構成されても、または一部または全部がポリプロピレン及び他の材料から構成されてもよい。好ましくは、高分子基材としての中空糸膜はポリプロピレンのみから構成される。なお、上記他の材料としては、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート等の高分子材料などが挙げられる。なお、中空糸膜がポリプロピレン及び上記したような他の材料から構成される場合の、ポリプロピレンの含有量は、高分子基材の表面自由エネルギーが33mJ/m2未満となる限り、特に制限されない。ポリプロピレンの含有量は、高分子基材(中空糸膜)を構成する全材料に対して、通常、80質量%(固形分換算)を超え、好ましくは90質量%(固形分換算)以上であり、より好ましくは95質量%(固形分換算)以上(上限:100質量%未満)である。
中空糸の内径(直径)は、特に制限されないが、好ましくは50~1,000μm、より好ましくは100~500μm、特に好ましくは150~350μm程度である。また、中空糸の外径(直径)は、特に制限されないが、好ましくは100~1,200μm、より好ましくは150~700μm、特に好ましくは200~500μm程度である。中空糸の長さは、特に制限されないが、好ましくは50~900mm、より好ましくは100~700mm、特に好ましくは150~500mm程度である。中空糸膜を構成する中空糸の数は、特に制限されないが、例えば、約1,000~100,000本、より好ましくは3,000~50,000本、特に好ましくは5,000~25,000本程度である。一実施形態においては、疎水性高分子基材は、平均長約295mm、平均内径215μm、平均外径315μmの中空糸約9000本から構成される。ここで、被覆層は、中空糸膜の内面または外面に形成されてもよいが、内面(内腔)表面に形成されることが好ましい。
中空糸の外側層は一定の表面粗さを有する開孔構造を有していてもよい。細孔の開口(直径)は、特に制限されないが、約0.5~約3μmの範囲であり、中空糸の外側表面の細孔数は1平方ミリメートル(1mm2)当たり約10,000から約150,000の範囲であってもよい。ここで、中空糸の外側層の厚みは、特に制限されないが、例えば、約1~約10μmの範囲である。中空糸は、外側に次の層(第2層)を有していてもよく、この際、次の層(第2層)は、約1~約15μmの厚さのスポンジ構造を有することが好ましい。このような構造を有する第2層は、前記外側層の支持体として機能できる。また、本形態において、中空糸は、上記第2層の外側にさらに次の層(第3層)を有していてもよく、この際、さらなる次の層(第3層)は、指状構造を有することが好ましい。このような構造を有する第3層であれば、機械的安定性が得られる。また、分子の膜移動抵抗が低くなるような高い空隙容量を提供できる。本形態において、使用中は、指状空隙は流体で満たされ、該流体によって、拡散および対流における抵抗は、空隙容量が小さいスポンジ充填(sponge-filled)構造を有するマトリックスの場合よりも、低くなる。この第3層は、好ましくは約20~約60μmの厚さを有する。
中空糸および多孔質膜の製造方法は、特に制限されず、公知の製造方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。例えば、中空糸は、延伸法または固液相分離法により壁に微細孔が形成されてなることが好ましい。
疎水性高分子基材の製造方法は、特に制限されず、例えば、上記材料を用いて、または上記材料と上記他の材料との混合物を用いて、従来公知の方法で疎水性高分子基材を製造する方法等が挙げられる。
[被覆層の形成方法]
疎水性高分子基材表面に本発明に係る重合体を含む被覆層を形成する方法は特に制限されない。例えば、疎水性高分子基材の表面が平面な皿(プレート)構造を有する場合には、本発明に係る重合体を溶解させた重合体含有溶液を所定の面に塗布(例えば、ウェルに添加)した後、乾燥する方法が使用できる。また、例えば、疎水性高分子基材が中空糸または多孔質膜である場合には、本発明に係る重合体を溶解させた重合体含有溶液を中空糸の細胞接触部に接触させた(例えば、中空糸内表面(内腔)または外表面に流通させた)後、乾燥する方法が使用できる。なお、疎水性高分子基材が複数の中空糸からなる多孔質膜である場合には、重合体含有溶液による被覆は、1本の中空糸に対して行った後中空糸を束ねても、または複数の中空糸を束ねて多孔質膜を作製した後に行ってもよい。
疎水性高分子基材表面に本発明に係る重合体を含む被覆層を形成する方法は特に制限されない。例えば、疎水性高分子基材の表面が平面な皿(プレート)構造を有する場合には、本発明に係る重合体を溶解させた重合体含有溶液を所定の面に塗布(例えば、ウェルに添加)した後、乾燥する方法が使用できる。また、例えば、疎水性高分子基材が中空糸または多孔質膜である場合には、本発明に係る重合体を溶解させた重合体含有溶液を中空糸の細胞接触部に接触させた(例えば、中空糸内表面(内腔)または外表面に流通させた)後、乾燥する方法が使用できる。なお、疎水性高分子基材が複数の中空糸からなる多孔質膜である場合には、重合体含有溶液による被覆は、1本の中空糸に対して行った後中空糸を束ねても、または複数の中空糸を束ねて多孔質膜を作製した後に行ってもよい。
ここで、本発明に係る重合体を溶解させる溶媒は、重合体を溶解できるものであることが好ましい。これにより、高分子基材に重合体含有溶液をより安定して塗布し、より均一な厚みの被覆層を形成できる。また、本発明に係る重合体を溶解させる溶媒は、細胞培養基材への影響(変形、ひび、破壊等)が小さい溶媒が適している。このような溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール、ポリエチレングリコール類などの水性溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル溶媒などが挙げられる。上記溶媒は、1種単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。中でも、本発明に係る重合体の溶解性の向上等を考慮すると、溶媒がアルコールとエーテル溶媒との混合溶媒であると好ましい。当該混合溶媒に用いられるアルコールは、重合体の溶解性の向上という観点から、炭素数1~3の低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール)であると好ましく、中でも、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが特に好ましい。また、当該混合溶媒に用いられるエーテル溶媒は、重合体の溶解性の向上という観点から、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンが好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)が特に好ましい。すなわち、溶媒は、メタノールおよびテトラヒドロフランから構成されることが好ましい。ここで、アルコール(特にメタノール)とエーテル溶媒(特にテトラヒドロフラン)の混合比は、特に制限されないが、例えば、アルコール:エーテル溶媒の混合比(体積比)が、1~10:1であることが好ましく、3~7:1であることがより好ましい。このような混合比であれば、重合体をより容易に混合溶媒に溶解できる。ゆえに、より均一な厚みでかつ平坦な(コートむらの少ないまたはない)被覆層を高分子基材に形成できる。また、高分子基材に容易に塗布できる(塗工性に優れる)。
また、重合体含有溶液中の重合体の濃度は、低いことが好ましい。具体的には、重合体含有溶液中の重合体の濃度は、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001質量%以上5質量%未満、さらに好ましくは0.05~4質量%、さらにより好ましくは0.1~2.5質量%、特に好ましくは0.2重量%以上2.5質量%未満である。このような濃度の重合体含有溶液であれば、より均一な厚みでかつ平坦な(コートむらの少ないまたはない)被覆層を高分子基材に形成できる。また、高分子基材に容易に塗布できる(塗工性に優れる)。
また、重合体の被覆方法は、特に制限されないが、充填、ディップコーティング(浸漬法)、噴霧、スピンコーティング、滴下、ドクターブレード、刷毛塗り、ロールコーター、エアーナイフコート、カーテンコート、ワイヤーバーコート、グラビアコート、混合溶液含浸スポンジコート等、従来公知の方法を適用することができる。
また、重合体の塗膜の形成条件は、特に制限されない。例えば、重合体含有溶液と疎水性高分子基材との接触時間(例えば、重合体含有溶液の中空糸内腔または外表面に流通させる時間)は、塗膜(ゆえに被覆層)の形成しやすさ、コートむらの低減効果などを考慮すると、1~5分が好ましく、1~3分がより好ましい。また、重合体含有溶液と疎水性高分子基材との接触温度(例えば、重合体含有溶液の中空糸内腔または外表面に流通させる温度)は、塗膜(ゆえに被覆層)の形成しやすさ、コートむらの低減効果などを考慮すると、5~40℃が好ましく、15~30℃がより好ましい。
重合体含有溶液の疎水性高分子基材表面への塗布量は、特に制限されないが、乾燥後の被覆層における重合体の単位面積あたりの質量の割合が上記範囲内となるような量であることが好ましい。なお、1回の接触(塗布)にて上記塗布量が得られない場合には、所望の塗布量となるまで、接触(塗布)工程(または塗布工程および下記乾燥工程)を繰り返してもよい。
次に、疎水性高分子基材と重合体含有溶液との接触後に、塗膜を乾燥させることによって、本発明に係る重合体による被覆層(被膜)が疎水性高分子基材表面に形成される。ここで、乾燥条件は、本発明に係る重合体による被覆層(被膜)形成できる条件であれば特に制限されない。具体的には、乾燥温度は、5~50℃が好ましく、15~40℃がより好ましい。上記乾燥工程は、単一の条件で行われても、または異なる条件で段階的に行ってもよい。また、乾燥時間は、特に制限されないが、例えば1~60時間程度、好ましくは240分~18時間である。また、疎水性高分子基材が多孔質膜(中空糸膜)である場合には、5~40℃、より好ましくは15~30℃のガスを中空糸の重合体含有溶液塗布面に連続してまたは段階的に流通させることによって、塗膜を乾燥させてもよい。ここで、ガスの種類は、塗膜(被覆層)に何ら影響を及ぼさず、塗膜を乾燥できるものであれば特に制限されない。具体的には、空気、および窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスなどが挙げられる。また、ガスの流通量は、塗膜を十分乾燥できる量であれば特に制限されないが、ガスの流通量が好ましく5~150L/分であり、より好ましく30~100L/分となるような量である。
このような方法によれば、本発明に係る重合体を含む被覆層を、疎水性高分子基材上に効率よく形成できる。なお、接着させる細胞のタイプに応じて、疎水性高分子基材を、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲン等の細胞接着因子によってさらに処理してもよい。このような処理により、細胞の基材表面への接着や細胞の成長をさらに促進できる。なお、疎水性高分子基材が複数の中空糸からなる多孔質膜である場合には、細胞接着因子による処理は、1本の中空糸に対して行った後中空糸を束ねても、または複数の中空糸を束ねて多孔質膜を作製した後に行ってもよい。また、細胞接着因子による処理は、本発明に係る重合体を含む被覆層を形成した後であっても、または本発明に係る重合体を含む被覆層を形成する前であっても、または本発明に係る重合体を含む被覆層を形成するのと同時であってもよい。
本発明において、疎水性高分子基材上に形成される被覆層の厚み(乾燥膜厚)は、0.005~20μm、好ましくは0.1~2μm、より好ましくは0.2~1.5μmであることが好ましい。
<バイオリアクター>
本発明の細胞培養基材は、細胞接着性(さらには細胞増殖性)に優れる。このため、本発明の細胞培養基材は、バイオリアクターに好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の細胞培養基材を有するバイオリアクターを提供する。ここで、バイオリアクターは、平面型バイオリアクターであっても中空糸型バイオリアクターであってもよいが、中空糸型バイオリアクターが特に好ましい。このため、以下では、好ましい実施形態として、中空糸型バイオリアクターについて説明するが、本発明のバイオリアクターは平面型バイオリアクターであってもよく、この場合でも下記実施の形態を適宜変更することによって適用できる。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の細胞培養基材は、細胞接着性(さらには細胞増殖性)に優れる。このため、本発明の細胞培養基材は、バイオリアクターに好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明の細胞培養基材を有するバイオリアクターを提供する。ここで、バイオリアクターは、平面型バイオリアクターであっても中空糸型バイオリアクターであってもよいが、中空糸型バイオリアクターが特に好ましい。このため、以下では、好ましい実施形態として、中空糸型バイオリアクターについて説明するが、本発明のバイオリアクターは平面型バイオリアクターであってもよく、この場合でも下記実施の形態を適宜変更することによって適用できる。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の細胞培養基材が好適に使用できるバイオリアクターは、特に制限されないが、本発明の細胞培養基材およびバイオリアクターを、例えば、特表2010-523118号公報(特許第5524824号)(WO 2008/124229 A2)、特表2013-524854号公報(特許第6039547号)(WO 2011/140231 A1)、特表2013-507143号公報(特許第5819835号)(WO 2011/045644 A1)、特開2013-176377号公報(WO 2008/109674)、特表2015-526093号公報(WO 2014/031666 A1)、特表2016-537001号公報(WO 2015/073918 A1)、および特表2017-509344号公報(WO 2015/148704 A1)などに記載される細胞培養/増殖システム;さらにはテルモBCT株式会社製のQuantum細胞増殖システムに適用することができる。従来、細胞培養では、インキュベーター、安全キャビネット、クリーンルーム等の設備が別々に必要であるが、上記したような培養システムはこれらの機能を全て備えているため、設備を非常に簡略化できる。また、上記したようなシステムを用いて細胞培養中の温度やガスを制御することで、機能的にクローズドなシステムを確保でき、細胞培養をクローズドな環境でかつ自動的に行うことができる。
以下に、本発明のバイオリアクターの一実施形態を図面を参照しながら説明するが、本発明は下記形態に限定されない。
図1は、本発明のバイオリアクター(中空糸型バイオリアクター)の一実施形態を示す部分側面図である。また、図2は、図1のバイオリアクターの一部切欠側面図である。図1および図2において、バイオリアクター1は、本発明の細胞培養基材2が細胞培養チャンバー3内に収納されてなる。細胞培養チャンバー3は、4つの開口部すなわち4つのポート(入口ポート4、出口ポート6、入口ポート8、出口ポート10)を有する。ここで、細胞を含む培地が、入口ポート4を介して、細胞培養チャンバー3内の細胞培養基材2の中空糸の毛細管内側(IC)空間に流されて、出口ポート6から排出される。これにより、細胞が効率よく中空糸内腔表面に接着(付着)・培養する。一方、培地やガス(酸素、二酸化炭素等)は、入口ポート8を介して、細胞培養チャンバー3内の細胞培養基材2の中空糸の毛細管外側(EC)と接触するように流され、出口ポート10から排出される。これにより、細胞培養チャンバー3内で培地成分等の小分子が中空糸内に流入するまたは不要成分が中空糸内から排出され、中空糸表面に接着した細胞が培養される。また、所定時間培養した後は、トリプシンを含む液(例えば、PBS)を、入口ポート4を介して細胞培養チャンバー3内の細胞培養基材2の中空糸の毛細管内側(IC)空間に導入し、所定時間(例えば、5~10分程度)保持する。次に、培地やPBS等の等張液を、入口ポート4を介して細胞培養チャンバー3内の細胞培養基材2の中空糸の毛細管内側(IC)空間に流して細胞にせん断力を付加することによって、細胞を中空糸内壁から剥離し、バイオリアクターから細胞を、出口ポート6を介して回収する。なお、上記形態では、細胞が中空糸の毛細管内側(IC)に接着したが、本発明は上記形態に限定されず、細胞を含む培地を入口ポート8から出口ポート10に流して、細胞を効率よく中空糸外表面に接着(付着)させ、培地を入口ポート4から出口ポート6に中空糸内腔に流して、細胞を培養させてもよい。また、入口ポート4から出口ポート6への流体の流れは、入口ポート8から出口ポート10への流体の流れに対して、並流方向または逆流方向のいずれであってもよい。
[バイオリアクターの用途]
上述したように、本発明のバイオリアクターは、細胞接着性(さらには細胞増殖性)に優れる細胞培養基材を備えている。ここで、本発明のバイオリアクターで培養できる細胞は、接着(足場依存)性細胞、非接着性細胞、またはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよいが、細胞接着性に優れる細胞培養基材を備えていることから、本発明のバイオリアクターは、接着(足場依存)性細胞の培養に特に好適に使用できる。ここで、接着(足場依存)性細胞としては、間葉系幹細胞(MSC)等の幹細胞、線維芽細胞などの、動物の細胞などがある。上述したように、幹細胞が再生医療や創薬の開発にあたって注目が集めている。このため、本発明のバイオリアクターは、幹細胞の培養に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明のバイオリアクターを用いて幹細胞を培養する、幹細胞の培養方法を提供する。ここで、幹細胞の培養方法は、特に制限されず、通常の培養方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。
上述したように、本発明のバイオリアクターは、細胞接着性(さらには細胞増殖性)に優れる細胞培養基材を備えている。ここで、本発明のバイオリアクターで培養できる細胞は、接着(足場依存)性細胞、非接着性細胞、またはこれらの任意の組み合わせのいずれであってもよいが、細胞接着性に優れる細胞培養基材を備えていることから、本発明のバイオリアクターは、接着(足場依存)性細胞の培養に特に好適に使用できる。ここで、接着(足場依存)性細胞としては、間葉系幹細胞(MSC)等の幹細胞、線維芽細胞などの、動物の細胞などがある。上述したように、幹細胞が再生医療や創薬の開発にあたって注目が集めている。このため、本発明のバイオリアクターは、幹細胞の培養に好適に使用できる。すなわち、本発明は、本発明のバイオリアクターを用いて幹細胞を培養する、幹細胞の培養方法を提供する。ここで、幹細胞の培養方法は、特に制限されず、通常の培養方法が同様にしてあるいは適宜修飾して適用できる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」および「部」は、それぞれ、「質量%」および「質量部」を意味する。
<重合体の製造>
[製造例1:重合体1(Mw=20万)の合成]
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール190gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 60gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:24質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体1の重量平均分子量は200,000であった。
[製造例1:重合体1(Mw=20万)の合成]
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール190gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 60gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:24質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体1の重量平均分子量は200,000であった。
[製造例2:重合体2(Mw=40万)の合成]
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール120gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 60gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:33.3質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体2の重量平均分子量は400,000であった。
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール120gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 60gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:33.3質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体2の重量平均分子量は400,000であった。
[製造例3:重合体3(Mw=60万)の合成]
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール90gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 60gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:40質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体3の重量平均分子量は600,000であった。
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール90gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 60gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:40質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体3の重量平均分子量は600,000であった。
[製造例4:重合体4(Mw=10万)の合成]
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール220gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 30gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:12質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体4の重量平均分子量は100,000であった。
300mL容の4ネック丸底フラスコに、メタノール220gおよびテトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)(富士フイルム和光純薬株式会社製) 30gを順次添加した後、窒素ガスをバブリングした。次いで、重合開始剤として2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、V-70) 0.06gを2mL アセトンに溶解した溶液を、上記フラスコに添加して、単量体溶液を調製した(単量体濃度:12質量%)。この単量体溶液を、45℃(液温)で6時間、重合を行い、重合液を得た。この重合液をビーカーに移し、ドラフト内に2時間放置した後、上澄み液を除去して、ポリマー成分を回収た。ポリマー成分にアセトンを加えて溶解させた後、溶液をシクロヘキサンに加えて、析出したポリマー成分を回収、減圧乾燥し、ポリテトラヒドロフルフリルアクリレート(PTHFA)(重合体1)を得た。重合体4の重量平均分子量は100,000であった。
<疎水性高分子基材へのコーティング>
(実施例1)
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に0.2質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=0.2質量%)を調製した。
(実施例1)
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に0.2質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=0.2質量%)を調製した。
この重合体溶液 50μLを、市販の96穴組織培養用ポリプロピレンディッシュ(プラズマ処理なし、Evergreen社製、表面自由エネルギー=29mJ/m2、表面の水に対する接触角=100~110°)の各ウェルに添加し、ドラフト内で25℃で240分間乾燥し、ウェル表面に重合体1被膜(乾燥時の厚み:0.3μm)を形成し、細胞培養皿(1)を得た。
(実施例2)
実施例1において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例1と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:0.3μm)を形成し、細胞培養皿(2)を得た。
実施例1において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例1と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:0.3μm)を形成し、細胞培養皿(2)を得た。
(実施例3)
実施例1において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例1と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:0.3μm)を形成し、細胞培養皿(3)を得た。
実施例1において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例1と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:0.3μm)を形成し、細胞培養皿(3)を得た。
(比較例1)
実施例1において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例1と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:0.3μm)を形成し、比較細胞培養皿(1)を得た。
実施例1において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例1と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:0.3μm)を形成し、比較細胞培養皿(1)を得た。
(実施例4)
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に1.0質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=1.0質量%)を調製した。
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に1.0質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=1.0質量%)を調製した。
この重合体溶液 50μLを、市販の96穴組織培養用ポリプロピレンディッシュ(プラズマ処理なし、Evergreen社製、表面自由エネルギー=29mJ/m2、表面の水に対する接触角=100~110°)の各ウェルに添加し、ドラフト内で25℃で240分間乾燥し、ウェル表面に重合体1被膜(乾燥時の厚み:1μm)を形成し、細胞培養皿(4)を得た。
(実施例5)
実施例4において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例4と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:1μm)を形成し、細胞培養皿(5)を得た。
実施例4において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例4と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:1μm)を形成し、細胞培養皿(5)を得た。
(実施例6)
実施例4において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例4と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:1μm)を形成し、細胞培養皿(6)を得た。
実施例4において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例4と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:1μm)を形成し、細胞培養皿(6)を得た。
(比較例2)
実施例4において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例4と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:1μm)を形成し、比較細胞培養皿(2)を得た。
実施例4において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例4と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:1μm)を形成し、比較細胞培養皿(2)を得た。
(実施例7)
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に2.5質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=2.5質量%)を調製した。
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に2.5質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=2.5質量%)を調製した。
この重合体溶液 50μLを、市販の96穴組織培養用ポリプロピレンディッシュ(プラズマ処理なし、Evergreen社製、表面自由エネルギー=29mJ/m2、表面の水に対する接触角=100~110°)の各ウェルに添加し、ドラフト内で25℃で240分間分間乾燥し、ウェル表面に重合体1被膜(乾燥時の厚み:2μm)を形成し、細胞培養皿(7)を得た。
(実施例8)
実施例7において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例7と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:2μm)を形成し、細胞培養皿(8)を得た。
実施例7において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例7と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:2μm)を形成し、細胞培養皿(8)を得た。
(実施例9)
実施例7において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例7と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:2μm)を形成し、細胞培養皿(9)を得た。
実施例7において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例7と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:2μm)を形成し、細胞培養皿(9)を得た。
(比較例3)
実施例7において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例7と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:2μm)を形成し、比較細胞培養皿(3)を得た。
実施例7において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例7と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:2μm)を形成し、比較細胞培養皿(3)を得た。
(実施例10)
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に5.0質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=5.0質量%)を調製した。
上記製造例1で得た重合体1(Mw=20万)を、テトラヒドロフラン(THF)とメタノールとの混合溶媒(THF:メタノール=1:3(体積比))に5.0質量%濃度となるように溶解し、重合体溶液(濃度=5.0質量%)を調製した。
この重合体溶液 50μLを、市販の96穴組織培養用ポリプロピレンディッシュ(プラズマ処理なし、Evergreen社製、表面自由エネルギー=29mJ/m2、表面の水に対する接触角=100~110°)の各ウェルに添加し、ドラフト内で25℃で240分間間乾燥し、ウェル表面に重合体1被膜(乾燥時の厚み:4μm)を形成し、細胞培養皿(10)を得た。
(実施例11)
実施例10において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例10と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:4μm)を形成し、細胞培養皿(11)を得た。
実施例10において、重合体1の代わりに、上記製造例2で得た重合体2(Mw=40万)を使用する以外は実施例10と同様にして、ウェル表面に重合体2被膜(乾燥時の厚み:4μm)を形成し、細胞培養皿(11)を得た。
(実施例12)
実施例10において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例10と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:4μm)を形成し、細胞培養皿(12)を得た。
実施例10において、重合体1の代わりに、上記製造例3で得た重合体3(Mw=60万)を使用する以外は実施例10と同様にして、ウェル表面に重合体3被膜(乾燥時の厚み:4μm)を形成し、細胞培養皿(12)を得た。
(比較例4)
実施例10において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例10と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:4μm)を形成し、比較細胞培養皿(4)を得た。
実施例10において、重合体1の代わりに、上記製造例4で得た重合体4(Mw=10万)を使用する以外は実施例10と同様にして、ウェル表面に重合体4被膜(乾燥時の厚み:4μm)を形成し、比較細胞培養皿(4)を得た。
<細胞接着活性測定>
上記実施例1~12で得られた細胞培養皿(1)~(12)および上記比較例1~4で得られた比較細胞培養皿(1)~(4)を用いて、下記に従って、細胞を培養し、細胞接着活性(細胞接着性)を評価した。
上記実施例1~12で得られた細胞培養皿(1)~(12)および上記比較例1~4で得られた比較細胞培養皿(1)~(4)を用いて、下記に従って、細胞を培養し、細胞接着活性(細胞接着性)を評価した。
細胞として、ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞(ロンザ、ウォーカーズビル、メリーランド州、アメリカ合衆国)を使用した。ドナーは22歳男性で、CD13、CD29、CD44、CD73、CD90、CD105、SD166≧90%、CD14、CD31、CD45≦5%のものを使用した。
各細胞培養皿の各ウェルに、上記ヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を8×103細胞/ウェルとなるように播種したのち、37℃にて、加湿、5%CO2存在下で、Mesenchymal Stem Cell Growth Medium 2(プロモセル、ベッドフォード、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)で1日間培養した。培養終了後、10%WST-1(Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System、タカラバイオ、滋賀、日本)を含むMesenchymal Stem Cell Growth Medium 2に交換して、加湿、常圧下(37℃、5%CO2)で4時間インキュベートしたのち、マイクロプレートリーダー(コロナマルチグレーティングマイクロプレートリーダ SH-9000、株式会社日立ハイテクサイエンス製)で吸光度(450nm、対照600nm)を測定して、細胞接着活性とした。結果を下記表2に示す。
<細胞増殖活性測定>
上記実施例1~12で得られた細胞培養皿(1)~(12)および上記比較例1~4で得られた比較細胞培養皿(1)~(4)を用いて、下記に従って、細胞を培養・増殖させ、細胞増殖活性(細胞増殖性)を評価した。
上記実施例1~12で得られた細胞培養皿(1)~(12)および上記比較例1~4で得られた比較細胞培養皿(1)~(4)を用いて、下記に従って、細胞を培養・増殖させ、細胞増殖活性(細胞増殖性)を評価した。
各細胞培養皿の各ウェルに、上記細胞接着活性測定で用いたものと同じヒト脂肪組織由来間葉系幹細胞を4×103細胞/ウェルとなるように播種したのち、37℃にて、加湿、5%CO2存在下で、Mesenchymal Stem Cell Growth Medium 2(プロモセル、ベッドフォード、マサチューセッツ州、アメリカ合衆国)で2日間培養した。培養終了後、10%WST-1(Premix WST-1 Cell Proliferation Assay System、タカラバイオ、滋賀、日本)を含むMesenchymal Stem Cell Growth Medium 2に交換して、加湿、常圧下(37℃、5%CO2)で4時間インキュベートしたのち、マイクロプレートリーダーで吸光度(450nm、対照600nm)を測定して、細胞増殖活性とした。結果を下記表2に示す。
上記表2に示すように、実施例の細胞培養皿(1)~(12)は、比較細胞培養皿(1)~(4)に比して、高い細胞接着活性および細胞増殖活性を示すことがわかる。また、実施例1と実施例2~3または実施例4と実施例5~6とまたは実施例7と実施例8~9とまたは実施例10と実施例11~12との比較から、特に重量平均分子量が40万以上の重合体被膜を有する細胞培養皿で、優れた細胞接着活性を示すことがわかる。
1…バイオリアクター、
2…細胞培養基材、
3…細胞培養チャンバー、
4,8…入口ポート、
6,10…出口ポート。
2…細胞培養基材、
3…細胞培養チャンバー、
4,8…入口ポート、
6,10…出口ポート。
Claims (5)
- 前記重合体の重量平均分子量は、30万を超え80万以下である、請求項1に記載の細胞培養基材。
- 前記高分子基材が、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリカーボネートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の細胞培養基材。
- 請求項1~3のいずれか1項に記載の細胞培養基材を有する、バイオリアクター。
- 請求項4に記載のバイオリアクターを用いて幹細胞を培養する、幹細胞の培養方法。
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