特許法第30条第2項適用申請有り 実施日 令和2年12月20日 実施の場所 大久伝内科
本発明は、外来医療用陽圧室とその製造方法に関する。
従来、医療施設における手術室や集中治療室、感染症患者の病室は、施設内において隔離された空間とされ、空気の流れが制御されている。例えば、手術室や集中治療室は、外部から菌やウイルス等が流入しないよう室内の気圧を高くした陽圧状態に保たれる。一方、感染症患者の病室は、外部へ菌やウイルス等が流出しないよう室内の気圧を低くした陰圧状態に保たれる。また、隔離空間の出入口の前には、隔離空間内の環境を保つための前室が設けられる。前室を介して隔離空間に出入りすることによって、隔離空間の扉を開くときに気圧差が維持され易くなると共に、汚染された空気が流入又は流出するのを防ぐことができる。
例えば特許文献1には、病室、前室、及び病室と前室の間に配置された遮断室から構成された感染症病室が開示されている。これらの室内の気圧は、前室より病室が低く、かつ病室よりも遮断室が低くなるように保たれている。これにより、患者が保有している病原菌が外部に漏れ出すのを防ぐと共に、一般の雑菌に起因した別の感染症を併発することを防いでいる。
ところで、感染症が疑われる外来患者に医療サービスを提供する場合、一般の外来患者とは隔離された空間を設けることが望ましい。しかしながら、空気の流れが制御された隔離室が設けられていない医療施設では、施設内への出入口や待合室で外来患者をそれぞれ個別に受け付けて対応することは困難である。さらに、医療施設内に新たに隔離室を設ける場合、スペースが確保できない、費用が高くなる等の問題が生じ得る。
特許文献2には、病室と前室から構成された病室ユニットが開示されている。病室ユニット内は陰圧状態に保たれ、病室内の細菌、ウイルス等が外部へ排出されるのを防いでいる。この病室ユニットは、建物の外に容易に設置できるため、既存の医療施設内でスペースが確保できない場合であっても、隔離病室を新設又は増設することができる。また、このようなユニット型の隔離室は、感染症が疑われる外来患者の検査、診察等を行うための部屋として設けることもできる。
特開2020-54791号公報
特開2006-145号公報
しかしながら、建物の外部において別棟に設けられた陰圧状態の隔離室で、感染症が疑われる外来患者への対応を行う場合、その都度医療従事者は通常の医療サービスを行う建物の外に出て隔離室に移動し、前室で防護服を着用し、隔離室内に入る必要がある。また、医療従事者は、患者が出入りする度に隔離室内の換気を十分に行う必要があり、感染症が疑われる外来患者への対応に手間や時間がかかる。さらに、外来患者の人数が多くなれば、同じ空間内で外来患者と接する医療従事者の感染のリスクが増大する懸念が生じる。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、医療従事者が通常の医療サービスの提供を行いつつ、施設の建物の外に出ることなく感染症が疑われる外来患者への対応ができ、感染症が疑われる外来患者への対応時にはその患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室とその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、次の手段をとる。先ず、第1の発明は、建物の内方空間である建物内空間において前記建物の外壁を境界の一部として設けられた外来医療用陽圧室であって、前記建物内空間の側から前記外壁における内法の面を覆うことで前記建物内空間が前記内法の面側の空間である閉鎖空間とその反対側の空間である室内空間とに区切られる第1の内壁と、前記閉鎖空間内の気圧である閉鎖空間内気圧を、前記建物の外の気圧である建物外気圧及び室内空間内の気圧である室内空間内気圧よりも高くする陽圧設備と、前記外壁に設けられ、前記閉鎖空間内の空気が前記建物の外に排出される通気口と、前記第1の内壁に設けられ、前記室内空間と前記閉鎖空間を出入り可能であり、かつ閉じているときに前記閉鎖空間の気密を保持する開閉可能な第1の出入口と、前記閉鎖空間における前記外壁に設けられ、複数の透光層を重ねた窓と、を有しており、前記窓は、閉じているときに前記閉鎖空間の気密を保持し、前記外壁の面方向に沿ってスライド移動して開閉可能な外来応対用の窓として機能する。
第1の発明によれば、外来医療用陽圧室は、第1の内壁及び外壁を境界とした閉鎖空間から構成される。閉鎖空間内は、陽圧設備によって室内空間内気圧及び外気圧より気圧が高い陽圧状態とされ、第1の出入口、又は窓を開けたときは、閉鎖空間すなわち陽圧室の室内から室外へ空気が流れる。また、通気口からも閉鎖空間内の空気が建物の外に排出される。閉鎖空間は室内空間と隣接しており、医療従事者は第1の内壁に設けられた第1の出入口から、閉鎖空間に直接出入りすることができる。一方外来患者は、閉鎖空間に出入りすることなく、外壁に設けられた外来応対用の窓を介して建物の外から検査等を受けることができる。よって、医療従事者と感染症が疑われる外来患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる。また、窓を開けたときに閉鎖空間から建物の外、すなわち外来患者側へ空気が流れるため、建物外からのウイルスや菌の流入を防ぐことができ、医療従事者は防護服を着用することなく外来患者に対応できる。さらに、防護服を着用するための前室を必ずしも設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。このようにして、医療従事者は、通常の医療サービスの提供を行いつつ、医療従事者が建物の内側、外来患者が建物の外側である位置関係を保ったまま、外来患者への対応等を行うことができる。よって、感染症の検査にかかる手間や時間が削減され、感染症が疑われる外来患者の対応を効率よく行うことができる。
第2の発明は、第1の発明による外来医療用陽圧室であって、前記第1の出入口は、引き戸により構成されている。
第2の発明によれば、室内空間と閉鎖空間との出入口の引き戸を開閉するときに、開く方向に対して気圧差による圧力の抵抗を受け易い開き戸の場合と比べて、小さな力で開閉できる。また、引き戸であれば、開閉中に第1の内壁の平面に沿って移動するため、開き戸よりも開放される部分が狭くなり、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持し易い。
第3の発明は、第1又は第2の発明による外来医療用陽圧室であって、前記第1の内壁の少なくとも一部は、前記室内空間側から前記閉鎖空間側に視認可能に構成されたのぞき窓を有する。
第3の発明によれば、第1の内壁におけるのぞき窓を通じて、室内空間の側から閉鎖空間内の様子を確認できる。よって第1の出入口を開けることなく、閉鎖空間内の確認ができるため、第1の出入口を開閉する回数が減り、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持しやすい。
第4の発明は、第1から第3のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記外壁に設けられ、前記閉鎖空間と前記建物の外を出入り可能な第2の出入口とを有する。
第4の発明によれば、建物の外から閉鎖空間内に、第2の出入口を介して出入りできる。これにより、必要に応じて感染症が疑われる外来患者を一般患者と接触させることなく閉鎖空間に入室させて、診察や経過観察等を行うことができる。
第5の発明は、第4の発明による外来医療用陽圧室であって、前記閉鎖空間内を仕切ることで互いに隣接する第1室と第2室が構成される第2の内壁と、前記第2の内壁に設けられ、前記第1室と前記第2室を出入り可能な第3の出入口とを有する。
第5の発明によれば、外来医療用陽圧室は、閉鎖空間が第2の内壁で仕切られ、第1室と第2室が構成されている。第1室は、医療従事者が室内空間から第1の出入口を介して直接出入りし、外壁における窓を介して外来患者の受付等を行うことができる。第2室は、隣接する第1室から第3の出入口を介して出入りできる。この構成により、第1室を外来患者の応対等を行う部屋として使用し、第2室を外来患者の診察や経過観察等を行う部屋として使用できる。
第6の発明は、第1から第5のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記建物の外側に、車両で通行可能な通路が設定されており、前記窓は、前記通路に面している。
第6の発明によれば、外来患者は車両に乗車したまま外来応対用の窓にアクセスできるため、ドライブスルー方式で検査等を受けることができる。
第7の発明は、建物の内方空間である建物内空間において前記建物の外壁を境界の一部として設けられた外来医療用陽圧室の製造方法であって、外来応対用の窓を有する前記外壁に対し、前記建物内空間の側から前記外壁における内法の面を第1の内壁で覆うことで、前記建物内空間が前記内法の面側の空間である閉鎖空間とその反対側の空間である室内空間とに区切られた区切り状態を実現させる区切りステップ、ならびに、前記閉鎖空間内の気圧である閉鎖空間内気圧を、前記建物の外の気圧である建物外気圧及び前記室内空間内の気圧である室内空間内気圧よりも高くする陽圧設備を設ける陽圧設備設置ステップ、を含み、前記窓は、複数の透光層を重ねた構成を有し、前記区切り状態において、前記外壁の面方向に沿ってスライド移動して開閉可能とされ、かつ、閉じているときに前記閉鎖空間の気密を保持するものとされ、前記外壁は、前記区切り状態において、前記閉鎖空間内の空気が前記建物の外に排出される通気口を有する状態とされ、前記第1の内壁は、前記区切り状態において、前記室内空間と前記閉鎖空間を出入り可能な第1の出入口を有する状態とされ、前記第1の出入口は、前記区切り状態において、開閉可能とされ、かつ、閉じているときに前記閉鎖空間の気密を保持するものとされる。
第7の発明によれば、外来医療用陽圧室を構成する閉鎖空間は、建物内空間を第1の内壁で仕切ることで構成される。そのため、建物の新設時だけでなく、既設の建物の建物内空間にも外来医療用陽圧室を設置することができる。閉鎖空間は、医療従事者が第1の内壁に設けられた第1の出入口を介して、室内空間から直接出入りすることができる。一方外来患者は、閉鎖空間に出入りすることなく、外壁に設けられた外来応対用の窓を介して検査等を受けることができる。よって、医療従事者と感染症が疑われる外来患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる陽圧室を、建物の内方において製造できる。
本発明は、上記の各発明の構成をもつことにより、医療従事者が通常の医療サービスの提供を行いつつ、施設の建物の外に出ることなく感染症が疑われる外来患者への対応ができ、感染症が疑われる外来患者への対応時にはその患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室とその製造方法を提供することができる。
実施形態に係る外来医療用陽圧室の概略を示す平面図である。
外来応対用の窓を閉鎖空間側からみた正面図である。
外来応対用の窓の構造を示す断面図である。
図3の部分拡大図である。
他の実施形態に係る外来医療用陽圧室の概略を示す平面図である。
図1の外来医療用陽圧室において、外来応対用の窓を開けたときの空気の流れを示す図である。
図1の外来医療用陽圧室において、第2の出入口を開けたときの空気の流れを示す図である。
<外来医療用陽圧室の構成>
本発明の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る外来医療用陽圧室は、建物1の内方空間である建物内空間2において、建物1の外壁3を境界の一部として設けられている。建物1として、診療所等の医療機関が挙げられ、建物内空間2として診察室等が挙げられる。
建物内空間2は、第1の内壁10によって外壁3の内法の面側の空間である閉鎖空間5とその反対側の空間である室内空間7とに区切られている。第1の内壁10は、建物内空間2の床から天井まで設けられている。また、第1の内壁10は、平面視においてコの字に配置され、建物内空間2の側から外壁3における内法の面を覆っている。閉鎖空間5は、天井、床、第1の内壁10及び外壁3に囲まれており、外来医療用陽圧室として機能する。このようにして、閉鎖空間5は、建物1内において一般患者のための玄関8a、待合室8b等とは隔離されて配置されている。
閉鎖空間5内は、第2の内壁12によって、互いに隣接する第1室13と第2室14に仕切られている。第2の内壁12は、外壁3の内法の面と交差する方向に沿って配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられている。第1室13と第2室14は、それぞれ天井、床、第1の内壁10、第2の内壁12及び外壁3に囲まれた空間とされている。第1室13における第1の内壁10には、室内空間7と閉鎖空間5を出入り可能な第1の出入口15が設けられている。第1室13における外壁3には、外来応対用の窓として機能する上げ窓23と、閉鎖空間5と建物1の外を出入り可能な第2の出入口17が設けられている。第1の出入口15、第2の出入口17及び上げ窓23は、閉じているときに閉鎖空間5内の気密を保持する。第1室13は、外来患者V又はその同伴者Yへの応対等を行う受付室として機能する。
第2の内壁12には、第1室13と第2室14を出入り可能な第3の出入口18が設けられている。第3の出入口18は、閉じているときに第1室13内及び第2室14内の気密を保持する。第2室14は、必要に応じて外来患者Vを入室させて診察を行うことができるほか、外来患者Vの検温や経過観察等のための待機室としても機能する。第3の出入口18は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられ、引き戸、開き戸等を適宜選択できる。第1の内壁10と第2の内壁12は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられている。
第1の出入口15は、引き戸により構成されている。室内空間7内の気圧(以下「室内空間内気圧」とする。)と陽圧状態である閉鎖空間5内の気圧(以下「閉鎖空間内気圧」とする。)は気圧差があるため、開き戸の場合は開く方向に対して圧力の抵抗を受け易い。この点、引き戸であれば、開き戸に比べて開閉時における力の負担を抑えることができる。引き戸は、閉じているときには隙間が塞がり閉鎖空間5内の気密を保持する構成になっている。第1の出入口15の引き戸は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられており、片引き戸のほか、設置される場所や広さ等に応じて両引き戸が選択できる。
第1の内壁10の少なくとも一部は、のぞき窓22を有している。具体的には、第1室13と第2室14において、外壁3の内法の面と対向する第1の内壁10に、のぞき窓22がそれぞれ設けられている。のぞき窓22は、室内空間7側から閉鎖空間5側に視認可能に構成されており、例えば透光性を有するガラスやアクリル板等が用いられる。これにより、室内空間7から第1室13内と第2室14内をそれぞれ確認できる。
のぞき窓22は、第1の内壁10の範囲内において位置や大きさを任意に設定できる。第1室13におけるのぞき窓22は、室内空間7からのぞき窓22を通じて、外来応対用の窓を視認できる位置関係となるように配置されている。なお、のぞき窓22を第1の内壁10に複数配置しても良く、第1の出入口15や第3の出入口18に配置しても良い。また、のぞき窓22の室内空間7側に開閉可能な目隠し用のカバーや扉等を設けても良い。のぞき窓22の構造は、両方向から視認性を有するものとしても良く、ハーフミラー等一方向から視認性を有するものとしても良い。
上げ窓23は、複数の透光層を重ねた構成である。具体的には、上げ窓23は図2~4に示すように、長方形の複数層のガラス23aとアルミ製の框23bから構成されており、閉鎖空間5内と建物1の外で透光性を有している。上げ窓23は、外壁3の面方向に沿って窓枠23c内を上下方向にスライド移動する。なお、上げ窓23は、閉鎖空間内気圧と建物1の外の気圧(以下「建物外気圧」とする。)との気圧差による圧力の抵抗を受けるため、油圧式によりスライド開閉する構成となっている。これにより、開閉時の力の負担を軽減できる。
上げ窓23を開いたときの開口部分の幅、高さ、設置位置は、閉鎖空間5内の医療従事者Wが建物1の外から来る外来患者Vに対応できるように設定されている。上げ窓23の開口部分の上側と下側には、上げ窓23と同じ幅の嵌め殺し窓24,25がそれぞれ設けられている。上げ窓23を開いた状態のとき、上げ窓23は上側の嵌め殺し窓24と重なるように位置する。嵌め殺し窓24,25は、複数層のガラス24a,25aとアルミ製の框24b,25bから構成されており、閉鎖空間5内と建物1の外で透光性を有している。また、上げ窓23と嵌め殺し窓24,25におけるガラス23a,24a,25aは、耐火・遮熱性能を有している。
外壁3の外側の面には、略長方形の板状の受付台26が設けられている。受付台26は、上げ窓23の幅に対応しており、窓枠23cの下枠付近から水平方向に延出している。受付台26の下方は、検査を受けた外来患者Vの検体を保管するための箱等を設置でき、閉鎖空間5内から確認できる。
第2の出入口17は、図1に示すように、閉鎖空間5内側に戸が開く開き戸で構成されている。建物1の外とつながる開口部を密閉性の高い開き戸とすることにより、閉じているときの閉鎖空間5の気密保持機能をより高めることができる。第2の出入口17の開き戸は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられている。なお、第2の出入口17は、第2室14における外壁3に設けても良い。
外来医療用陽圧室は、上げ窓23を備えた開き戸が外壁3に設けられた構成としても良い。これにより、上げ窓23と隣接する第2の出入口17とで親子とびらが構成される。親子とびらを開いた状態では、外壁3の開口部がより広くなるため、例えば医療機器等の搬入口として利用できる。なお、上げ窓23を備えた開き戸を閉じているときには、閉鎖空間5の気密が保持される。
閉鎖空間5には、陽圧設備が備えられている。陽圧設備により、閉鎖空間内気圧を、室内空間内気圧及び建物外気圧よりも高くし、閉鎖空間5を陽圧状態にする。陽圧設備として、例えば任意の場所に設置できる床設置型の陽圧装置19が、第2室14に設置されている。また、第2室14における外壁3には、閉鎖空間5内の空気を建物1の外に排出するための通気口21が設けられている。
陽圧装置19は、細菌、ウイルス、粉塵等の除去に対応したエアフィルターと、循環ファンが内蔵されており、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続されている。エアフィルターは、例えばHEPAフィルター等の高性能フィルターを選択できる。また、第1室13及び第2室14に清浄な空気を供給するための給気経路と、第1室13内及び第2室14内の空気を排出する排気経路が設定されている。給気経路は、例えば陽圧装置19と、第1室13及び第2室14の天井に設けた給気口とが給気ダクトで接続された構成が挙げられる。排気経路は、例えば第1室13内の空気が第2室14における通気口21から排出されるように、排気ダクトが配設されている。なお、第2室14内の空気は、ダクト等を介さずに通気口21から排出される。通気ダクトから陽圧装置19に取り込まれた空気は、エアフィルターを通して浄化され、給気経路から第1室13及び第2室14にそれぞれ送り出される。
陽圧装置19は、外気を取り入れることにより、閉鎖空間5内への給気風量が閉鎖空間5外への排気風量より大きくなるように調整されている。陽圧装置19により、閉鎖空間5内へ清浄な空気を送り出し、閉鎖空間5内を陽圧状態に保つことができる。閉鎖空間5内は、第1室13と第2室14が共に陽圧状態に保たれる。また、閉鎖空間5内の空気は、通気口21から建物1の外に排出される。これにより、閉鎖空間5内の空気が建物1の外気と換気される。通気口21にはエアフィルターが備えられており、閉鎖空間5内の空気が汚染された場合でも、細菌やウイルス等が建物1の外へ拡散するのを抑制できる。
また、第1室13において、第1の内壁10にサーキュレータ27が設置されている。サーキュレータ27は、上げ窓23の開口部分に向かって風を送ることができるように設置位置と向きが設定されている。これにより、上げ窓23を介して閉鎖空間5内から建物1の外に向かう空気の流れをより強力にし、建物1の外からのウイルスや菌の流入防止を図っている。サーキュレータ27は、必要に応じて風量や風向きを調整できる。例えば、第2の出入口17を開放したときには、第2の出入口17を介して建物1の外へ風が送られるように風向きを変更できる構成にしても良い。
閉鎖空間内気圧と、室内空間内気圧及び建物外気圧との気圧差は、2.5ヘクトパスカル以上が望ましく、出入口の戸の開閉に支障が生じない範囲で設定される。また、閉鎖空間5内の1時間当たりの換気回数が、一定回数以上になるよう設定される。陽圧設備の構成は、陽圧室を設ける場所に応じて適宜選択でき、清浄な空気を送り出し陽圧状態を保つことができる給排気システムを備えていれば良い。例えば、天井吊り型の陽圧装置を設置しても良い。また、エアフィルターを内蔵した給気ファンを天井又は天井付近の第1の内壁10に設け、排気経路を、給気ファンの反対側に位置するように床付近の外壁3に設けた構成としても良い。
また、陽圧装置19を第1室13に設置し、第1室13と第2室14への給気経路を設定しても良い。給気経路として、給気ダクトを配設せず、第2の内壁12に給気ファンを設けても良い。この構成により、第1室13内へ陽圧装置19から直接清浄な空気が送り出され、給気ファンによって第1室13内の空気が第2室14へ送られる。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設定されている。通路9は、上げ窓23を有する外壁3に沿って配置されている。上げ窓23は、通路9に面した位置において、外来応対用の窓として機能する。外来患者Vが乗車している車両30は、通路9を利用して、少しカーブして上げ窓23に寄ることができ、また少しカーブして建物1より離れていくことができる。これにより、医療従事者Wは、感染が疑われる外来患者Vへの対応をドライブスルー方式で行うことができる。よって、外来患者同士の接触の機会を減らすことができる。また、例えば天候が雨の場合に、雨に濡れずに建物1の外から上げ窓23にアクセスできる。
閉鎖空間5は、図5に示すように、第2の内壁12で仕切らず、1つの部屋からなる構成としても良い。閉鎖空間5は、外来応対用の受付室として使用できる。また、給気ダクトを配設せず、陽圧装置19に閉鎖空間5内の空気を取り込み、エアフィルターを通して浄化し、閉鎖空間5内に送り出して循環させても良い。なお、陽圧装置19は、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続されており、陽圧装置19に取り込まれた閉鎖空間5外の空気は、エアフィルターを通して浄化され、閉鎖空間5内に送り出される。さらに、閉鎖空間5内の空気は、通気口21から排出されるため、陽圧装置19によって循環するだけでなく、建物1の外気と換気される。また、通気口21として差圧ダンパを設けても良い。差圧ダンパにより、例えば第2の出入口17を開くときに、通気口21からの排気風量が調整されるため、開き戸にかかる圧力が軽減される。
<外来医療用陽圧室の製造工程>
次に、上記実施形態に係る外来医療用陽圧室の製造方法について説明する。本実施形態に係る外来医療用陽圧室の製造工程は、図1を参照として、建物1の内方空間である建物内空間2において、第1の内壁10によって閉鎖空間5と室内空間7とに区切られた区切り状態を実現させる区切りステップと、陽圧設備設置ステップを含んでいる。
区切りステップでは、建物内空間2において、上げ窓23(外来応対用の窓)を有する外壁3に対し、建物内空間2の側から外壁3における内法の面を第1の内壁10で覆う。第1の内壁10は、平面視においてコの字に配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられる。第1の内壁10によって、建物内空間2が内法の面側の空間である閉鎖空間5とその反対側の空間である室内空間7とに区切られる。このようにして、建物内空間2に、天井、床、第1の内壁10及び外壁3に囲まれた閉鎖空間5が構成される。
閉鎖空間5内は、第2の内壁12によって、互いに隣接する第1室13と第2室14に仕切られる。第2の内壁12は、外壁3の内法の面と交差する方向に沿って配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられる。第2の内壁12には、第1室13と第2室14を出入り可能な第3の出入口18が設けられる。
上げ窓23は、複数の透光層を重ねた構成を有し、かつ区切り状態において、外壁3の面方向に沿ってスライド移動して開閉可能である。また、上げ窓23が閉じているときに、閉鎖空間5の気密が保持される。図2、図3に示すように、上げ窓23の開口部分の上側と下側には、嵌め殺し窓24,25が設けられる。また、外壁3の外側の面には、受付台26が設けられる。上げ窓23、嵌め殺し窓24,25、受付台26の構成は、外来医療用陽圧室の構成の説明において上述したとおりであるため、説明を省略する。なお、外来応対用の窓は、既存の窓を利用しても良い。また、扉等の既存の開口部を利用して、上げ窓23を備えた扉を設置しても良い。
図1に示すように、第1室13における第1の内壁10は、区切り状態において室内空間7と閉鎖空間5を出入り可能な第1の出入口15を有する。第1の出入口15は、開閉可能である引き戸で構成され、閉じているときに閉鎖空間5の気密を保持する。また、第1室13における外壁3は、外来応対用の上げ窓23を有している。第1室13は、外来患者Vへの応対等を行う受付室として機能する。
第1室13における第1の内壁10は、区切り状態において閉鎖空間5と建物1の外を出入り可能な第2の出入口17を有する。第2の出入口17は、第1室13において、上げ窓23と隣接して設けられており、閉鎖空間5内側に戸が開く開き戸で構成されている。建物1の外とつながる開口部を密閉性の高い開き戸とすることにより、閉じているときの閉鎖空間5の気密保持機能をより高めることができる。
第2室14は、第2の内壁12を境界として、第1室13の隣に設けられる。第2室14へは、第3の出入口18を介して第1室13から出入りできる。第2室14は、必要に応じて外来患者Vを入室させて診察を行うことができるほか、外来患者Vの検温や経過観察等のための待機室としても機能する。第3の出入口18は、引き戸、開き戸等を適宜選択できる。
第1の内壁10の少なくとも一部は、のぞき窓22を有する。具体的には、第1室13と第2室14において、外壁3の内法の面と対向する第1の内壁10に、のぞき窓22がそれぞれ設けられる。のぞき窓22の配置や構成は、外来医療用陽圧室の構成の説明において上述したとおりであるため、説明を省略する。
外壁3は、閉鎖空間5内の空気が建物1の外に排出される通気口21を有する。通気口21は、建物1の外壁3における換気口や窓等、既存の開口部を利用しても良い。
陽圧設備設置ステップでは、閉鎖空間内気圧を建物外気圧及び室内空間内気圧よりも高くする陽圧設備を設置する。陽圧設備として、陽圧装置19が第2室14に設置される。陽圧装置19は、エアフィルターと循環ファンが内蔵された床設置型の装置である。なお、天井吊り型等、他の構成の陽圧設備を選択しても良い。
陽圧装置19は、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続される。また、陽圧装置19から第1室13及び第2室14に清浄な空気を供給するための給気経路と、第1室13内及び第2室14内の空気を排出する排気経路が設定される。具体的には、給気経路として、陽圧装置19と、第1室13及び第2室14の天井に設けた給気口とが給気ダクトで接続される。また排気経路として、第1室13内の空気が第2室14における通気口21から排出されるように、排気ダクトが配設される。第1室13及び第2室14に対するそれぞれの給気風量は、それぞれの排気風量より大きくなるように調整される。陽圧装置19は、任意の場所に設置できるため、既存の建物においても設置が容易である。
また、第1室13においては、第1の内壁10にサーキュレータ27が設置される。サーキュレータ27は、上げ窓23の開口部分に向かって風を送ることができるように設置位置と向きが設定される。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設けられる。通路9は、上げ窓23を有する外壁3に沿って配置される。すなわち、上げ窓23が通路9に面する位置関係となる。
<作用・効果>
上記実施形態に係る外来医療用陽圧室の構成によれば、陽圧装置19(陽圧設備)により閉鎖空間5における第1室13と第2室14を陽圧状態にすることができる。第1室13内へは、室内空間7から第1の出入口15を介して入室できる。図6を参照として、外来患者V又はその同伴者Yに対しては、上げ窓23を介して対応できる。上げ窓23を開けると第1室13内から建物1の外へ空気が流れるため、閉鎖空間5内へのウイルス等の流入を抑制できる。また、図7を参照として、必要に応じて第2の出入口17及び第3の出入口18を通じて外来患者Vを第2室14内へ入室させることができる。上げ窓23、第2の出入口17及び第3の出入口18の開閉は、閉鎖空間5から室内空間7へ空気が流れないように、第1の出入口15を閉じた状態で行われる。
図1、図6を参照として、感染症が疑われる外来患者Vは、車両30で通路9に沿って上げ窓23にアクセスする。医療従事者Wは、上げ窓23を介して、車両30内に乗車している外来患者Vの症状聞き取りを行い、検査等の対応をする。外来患者Vは、検査結果が出るまでの間、駐車場に車両30を移動させて待機する。検査結果判明後、必要な薬の受け渡しや会計のため、再度車両30で通路9に沿って駐車場から上げ窓23にアクセスする。このようにして、感染症が疑われる外来患者Vの検査、受診、会計のすべてを、建物1の外壁3を隔てて完了することができる。また、医療従事者Wはこれらの対応を効率よく行うことができる。そのため、外来患者Vの待ち時間短縮につながる。
外来患者Vの症状の程度によっては、例えば肺の呼吸音を聞く等の診察が必要となるが、この場合は外来患者Vを車両30から降ろして、第2の出入口17から閉鎖空間5内へ入室させる。このとき、車両30が第2の出入口17の前に停車しているため、外来患者Vは短時間で診察を受けることができ、診察後は速やかに車両30に戻って待機できる。
実施形態に係る外来医療用陽圧室は、第1の内壁10及び外壁3を境界とした閉鎖空間5から構成される。閉鎖空間内5は、陽圧装置19(陽圧設備)によって室内空間内気圧及び外気圧より気圧が高い陽圧状態とされ、第1の出入口15、又は上げ窓23(外来応対用の窓)を開けたときは、閉鎖空間5すなわち陽圧室の室内から室外へ空気が流れる。また、通気口21からも閉鎖空間5内の空気が建物1の外に排出される。閉鎖空間5は室内空間7と隣接しており、医療従事者Wは第1の内壁10に設けられた第1の出入口15から、閉鎖空間5に直接出入りすることができる。一方外来患者Vは、閉鎖空間5に出入りすることなく、外壁3に設けられた上げ窓23を介して建物1の外から検査等を受けることができる。よって、医療従事者Wと感染症が疑われる外来患者Vとの接触を少なくして、医療従事者Wの感染のリスクを減らすことができる。
また、上げ窓23を開けたときに閉鎖空間5から建物1の外、すなわち外来患者V側へ空気が流れるため、建物1外からのウイルスや菌の流入を防ぐことができ、医療従事者Wは防護服を着用することなく外来患者Vに対応できる。さらに、防護服を着用するための前室を必ずしも設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。このようにして、医療従事者Wは、通常の医療サービスの提供を行いつつ、医療従事者Wが建物1の内側、外来患者Vが建物1の外側である位置関係を保ったまま、外来患者Vへの対応等を行うことができる。よって、感染症の検査にかかる手間や時間が削減され、感染症が疑われる外来患者Vの対応を効率よく行うことができる。
第1の出入口15は、引き戸により構成されている。これにより、室内空間7と閉鎖空間5との出入口の引き戸を開閉するときに、開く方向に対して気圧差による圧力の抵抗を受け易い開き戸の場合と比べて、小さな力で開閉できる。また、引き戸であれば、開閉中に第1の内壁10の平面に沿って移動するため、開き戸よりも開放される部分が狭くなり、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持し易い。
第1の内壁10の一部には、室内空間7の側から閉鎖空間5の側に視認可能なのぞき窓22が設けられている。これにより、室内空間7から閉鎖空間5の様子を確認できる。よって第1の出入口15を開けることなく、閉鎖空間5内の確認ができるため、第1の出入口15を開閉する回数が減り、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持しやすい。また、のぞき窓22は、上げ窓23を視認できる位置関係となるように、配置されている。これにより、外来患者Vが来た場合に室内空間7内から容易に確認できる。
閉鎖空間5における外壁3には、第2の出入口17が設けられている。これにより、建物1の外から閉鎖空間5内に、第2の出入口17を介して出入りできる。よって、必要に応じて感染症が疑われる外来患者Vを一般患者と接触させることなく閉鎖空間5に入室させて、診察や経過観察等を行うことができる。
閉鎖空間5は、第2の内壁12で仕切られ、第1室13と第2室14が構成されている。第1室13は、医療従事者Wが室内空間7から第1の出入口15を介して直接出入りし、外壁3における上げ窓23を介して外来患者Vの受付等を行うことができる。第2室14は、隣接する第1室13から第3の出入口18を介して出入りできる。この構成により、第1室13を外来患者Vへの応対等を行う部屋として使用し、第2室14を外来患者Vの診察や経過観察等を行う部屋として使用できる。また、例えば感染症が疑われる外来患者Vが徒歩で来院した場合には、一般患者の待合室と隔離された待機室として第2室14を使用できる。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設定されており、上げ窓23が通路9に面している。これにより、外来患者Vは車両30に乗車したまま上げ窓23にアクセスできるため、外来患者Vはドライブスルー方式で検査等を受けることができる。また、外来患者Vが駐車場において車両30内で待機できるため、感染が疑われる患者の待合室等を別途設けなくても良い。さらに、外来患者Vが小さい子供、高齢者であっても、同伴者Yと共に車両30内で自由にストレスなく待ち時間を過ごすこともできる。
外壁3における上げ窓23、嵌め殺し窓24,25に複数層のガラスを用いることにより、外来応対用の窓の防火、防犯機能を高めることができる。
上記実施形態に係る外来医療用陽圧室の製造工程により、閉鎖空間5は、建物内空間2を第1の内壁10で仕切ることで構成される。そのため、建物1の新設時だけでなく、既設の建物1の建物内空間2にも外来医療用陽圧室を設置することができる。閉鎖空間5は、医療従事者Wが第1の内壁10に設けられた第1の出入口15を介して、室内空間7から直接出入りすることができる。一方外来患者Vは、閉鎖空間5に出入りすることなく、外壁3に設けられた外来応対用の上げ窓23を介して検査等を受けることができる。よって、医療従事者Wと感染症が疑われる外来患者Vとの接触を少なくして、医療従事者Wの感染のリスクを減らすことができる陽圧室を、建物1の内方において製造できる。
<変更例>
本発明に係る外来医療用陽圧室とその製造方法は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
上記実施形態において、第1の内壁10にのぞき窓22を設けた構成を示したが、第1の内壁10の全体に、例えば透光性のあるガラス等を用いて室内空間7側から閉鎖空間5側に視認可能な構成としても良い。また、外来応対用の窓として上下方向にスライド移動する上げ窓23を設けた構成を示したが、これに限られず、例えば左右方向にスライド移動する引き窓を設けても良い。
上記実施形態において、陽圧設備として陽圧装置19を閉鎖空間5内に設置した例を示したが、これに限られず、建物1の構造、レイアウトに応じて他の構成からなる陽圧設備を選択できる。例えば、エアフィルターを内蔵した給気ファンを天井又は天井付近の第1の内壁10に設け、排気経路を、給気ファンの反対側に位置するように床付近の外壁3に設けた構成としても良い。
上記実施形態において、第1室13に第2の出入口17を設けた構成としたが、第2室14に第2の出入口17を設けても良い。なお、陽圧設備の構成を第3の出入口18を開けたときに第1室13から第2室14へ空気が流れるようにして、第1室13を前室として使用しても良い。
外来医療用陽圧室を設ける場所は、外来応対用の窓を設けることができるように建物内空間2において設定されており、この範囲内で閉鎖空間5と室内空間7のレイアウトを適宜変更できる。また、閉鎖空間5内における第2の内壁12の配置も適宜変更できる。
1 建物
2 建物内空間
3 外壁
5 閉鎖空間
7 室内空間
9 通路
10 第1の内壁
12 第2の内壁
13 第1室
14 第2室
15 第1の出入口
17 第2の出入口
18 第3の出入口
19 陽圧装置(陽圧設備)
21 通気口
22 のぞき窓
23 上げ窓(外来応対用の窓)
30 車両
本発明は、外来医療用陽圧室とその設置方法に関する。
従来、医療施設における手術室や集中治療室、感染症患者の病室は、施設内において隔離された空間とされ、空気の流れが制御されている。例えば、手術室や集中治療室は、外部から菌やウイルス等が流入しないよう室内の気圧を高くした陽圧状態に保たれる。一方、感染症患者の病室は、外部へ菌やウイルス等が流出しないよう室内の気圧を低くした陰圧状態に保たれる。また、隔離空間の出入口の前には、隔離空間内の環境を保つための前室が設けられる。前室を介して隔離空間に出入りすることによって、隔離空間の扉を開くときに気圧差が維持され易くなると共に、汚染された空気が流入又は流出するのを防ぐことができる。
例えば特許文献1には、病室、前室、及び病室と前室の間に配置された遮断室から構成された感染症病室が開示されている。これらの室内の気圧は、前室より病室が低く、かつ病室よりも遮断室が低くなるように保たれている。これにより、患者が保有している病原菌が外部に漏れ出すのを防ぐと共に、一般の雑菌に起因した別の感染症を併発することを防いでいる。
感染症が疑われる外来患者に医療サービスを提供する場合、一般の外来患者とは隔離された空間を設けることが望ましい。しかしながら、空気の流れが制御された隔離室が設けられていない医療施設では、施設内への出入口や待合室で外来患者をそれぞれ個別に受け付けて対応することは困難である。さらに、医療施設内に新たに隔離室を設ける場合、スペースが確保できないとともに、費用が高くなる等の問題が生じ得る。
特許文献2には、病室と前室から構成された病室ユニットが開示されている。病室ユニット内は陰圧状態に保たれ、病室内の細菌、ウイルス等が外部へ排出されるのを防いでいる。この病室ユニットは、建物の外に容易に設置できるため、既存の医療施設内でスペースが確保できない場合であっても、隔離病室を新設又は増設することができる。また、このようなユニット型の隔離室は、感染症が疑われる外来患者の検査、診察等を行うための部屋として設けることもできる。
特開2020-54791号公報
特開2006-145号公報
しかしながら、建物の外部において別棟に設けられた陰圧状態の隔離室で、感染症が疑われる外来患者への対応を行う場合、その都度医療従事者は通常の医療サービスを行う建物の外に出て隔離室に移動し、前室で防護服を着用し、隔離室内に入る必要がある。また、医療従事者は、患者が出入りする度に隔離室内の換気を十分に行う必要があり、感染症が疑われる外来患者への対応に手間や時間がかかる。さらに、外来患者の人数が多くなれば、同じ空間内で外来患者と接する医療従事者の感染のリスクが増大する懸念が生じる。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、医療従事者が通常の医療サービスの提供を行いつつ、施設の建物の外に出ることなく感染症が疑われる外来患者への対応ができ、感染症が疑われる外来患者への対応時にはその患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室とその製造方法(設置方法)を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、次の手段をとる。先ず、第1の発明は、建物の内方空間である建物内空間に設けられて、境界の一部が前記建物の外壁の一部とされている外来医療用陽圧室であって、一部の前記外壁における前記建物内側の面を囲んで前記建物内空間に閉鎖空間を形成して、前記建物内空間を、前記閉鎖空間と、前記閉鎖空間周囲の空間である室内空間と、に区切る第1の内壁と、前記閉鎖空間内の気圧を、前記建物外の気圧及び前記室内空間内の気圧よりも高くする陽圧設備と、前記閉鎖空間を形成している前記外壁に設けられ、前記閉鎖空間内の空気を前記建物外に排出する通気口と、前記第1の内壁に設けられた開閉可能な第1の出入口であって、開いているときには前記室内空間から前記閉鎖空間へ、あるいは前記閉鎖空間から前記室内空間へ、利用者の出入りを可能とし、かつ、閉じているときには前記閉鎖空間の気圧を保持する前記第1の出入口と、前記閉鎖空間を形成している前記外壁に設けられた開閉可能な外来応対窓であって、開いているときには外来応対用の窓として機能するとともに前記閉鎖空間内の空気を前記建物外に流出させ、かつ、閉じているときには前記閉鎖空間の気圧を保持する前記外来応対窓と、を有している。
第1の発明によれば、外来医療用陽圧室は、第1の内壁及び外壁を境界とした閉鎖空間から構成される。閉鎖空間内は、陽圧設備によって室内空間内気圧及び外気圧より気圧が高い陽圧状態とされ、第1の出入口、又は窓(外来応対窓)を開けたときは、閉鎖空間すなわち外来医療用陽圧室の室内から室外へ空気が流れる。また、通気口からも閉鎖空間内の空気が建物の外に排出される。閉鎖空間は室内空間と隣接しており、医療従事者は第1の内壁に設けられた第1の出入口から、閉鎖空間に直接出入りすることができる。一方外来患者は、閉鎖空間に出入りすることなく、外壁に設けられた外来応対用の窓を介して建物の外から検査等を受けることができる。よって、医療従事者と感染症が疑われる外来患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる。また、窓(外来応対窓)を開けたときに閉鎖空間から建物の外、すなわち外来患者側へ空気が流れるため、建物外からのウイルスや菌の流入を防ぐことができ、医療従事者は防護服を着用することなく安心して外来患者に対応できる。さらに、防護服を着用するための前室を必ずしも設ける必要がなく、前室を設けない場合では省スペース化を図ることができる。このようにして、医療従事者は、通常の医療サービスの提供を安全に行いつつ、医療従事者が建物の内側、外来患者が建物の外側である位置関係を保ったまま、外来患者への対応等を行うことができる。よって、感染症の検査にかかる手間や時間が削減され、感染症が疑われる外来患者の対応を効率よく行うことができる。
第2の発明は、第1の発明による外来医療用陽圧室であって、前記第1の出入口は、引き戸により構成されており、前記外来応対窓は、複数の透光層が重ねられており、前記外壁の面方向に沿ってスライド移動して開閉可能である。
第2の発明によれば、室内空間と閉鎖空間との出入口の引き戸を開閉するときに、開く方向に対して気圧差による圧力の抵抗を受け易い開き戸の場合と比べて、小さな力で開閉できる。また、引き戸であれば、開閉中に第1の内壁の平面に沿って移動するため、開き戸よりも開放される部分が狭くなり、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持し易い。
第3の発明は、第1又は第2の発明による外来医療用陽圧室であって、前記第1の内壁の少なくとも一部には、前記室内空間内に居る利用者が前記閉鎖空間内を視認可能に構成されたのぞき窓が設けられている。
第3の発明によれば、第1の内壁におけるのぞき窓を通じて、室内空間の側から閉鎖空間内の様子を確認できる。よって第1の出入口を開けることなく、閉鎖空間内の確認ができるため、第1の出入口を開閉する回数が減り、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持しやすい。
第4の発明は、第1から第3のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記閉鎖空間を形成している前記外壁に設けられた開閉可能な第2の出入口であって、開いているときには前記閉鎖空間から前記建物外へ、あるいは前記建物外から前記閉鎖空間へ、利用者の出入りを可能とし、かつ、閉じているときには前記閉鎖空間の気圧を保持する前記第2の出入口を有している。
第4の発明によれば、建物の外から閉鎖空間内に、第2の出入口を介して出入りできる。これにより、必要に応じて感染症が疑われる外来患者を一般患者と接触させることなく閉鎖空間に入室させて、診察等を行うことができる。
第5の発明は、第1から第4のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記閉鎖空間を、互いに隣接する第1室と第2室に仕切る第2の内壁と、前記第2の内壁に設けられた開閉可能な第3の出入口であって、開いているときには前記第1室から前記第2室へ、あるいは前記第2室から前記第1室へ、利用者の出入りを可能とする前記第3の出入口と、を有している。
第5の発明によれば、外来医療用陽圧室は、閉鎖空間が第2の内壁で仕切られ、第1室と第2室が構成されている。第1室は、医療従事者が室内空間から第1の出入口を介して直接出入りし、外壁における窓(外来応対窓)を介して外来患者の受付等を行うことができる。第2室は、隣接する第1室から第3の出入口を介して出入りできる。この構成により、第1室を外来患者の応対等を行う部屋として使用し、第2室を外来患者の診察等を行う部屋として使用できる。
第6の発明は、第1から第5のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記建物の外側には、車両で通行可能な通路が設定されており、前記外来応対窓は、前記通路に面している。
第6の発明によれば、外来患者は車両に乗車したまま外来応対用の窓(外来応対窓)にアクセスできるため、ドライブスルー方式で検査等を受けることができる。
第7の発明は、建物の内方空間である建物内空間に設けられて、境界の一部が前記建物の外壁の一部とされている外来医療用陽圧室の設置方法であって、外来応対用の窓である外来応対窓を有する前記外壁に対し、前記外来応対窓周囲の前記外壁における前記建物内側の面を第1の内壁で囲むことで、前記建物内空間を、前記外来応対窓周囲の前記外壁と前記第1の内壁とで囲まれた閉鎖空間と、前記閉鎖空間周囲の空間である室内空間と、に区切られた区切り状態を実現させる区切りステップ、ならびに、前記閉鎖空間内の気圧を、前記建物外の気圧及び前記室内空間内の気圧よりも高くする陽圧設備を設ける陽圧設備設置ステップ、を含み、前記閉鎖空間を形成している前記外壁は、前記区切り状態において、前記閉鎖空間内の空気を前記建物の外に排出する通気口を有する状態とされ、前記第1の内壁は、前記区切り状態において、前記室内空間から前記閉鎖空間へ、あるいは前記閉鎖空間から前記室内空間へ、利用者の出入りを可能とする第1の出入口を有する状態とされ、前記第1の出入口は、前記区切り状態において、開閉可能とされ、かつ、閉じているときに前記閉鎖空間の気圧を保持するものとされ、前記外来応対窓は、前記区切り状態において、開閉可能とされ、開いているときには外来応対用の窓として機能するとともに前記閉鎖空間内の空気を前記建物外に流出させ、かつ、閉じているときに前記閉鎖空間の気圧を保持するものとされる。
第7の発明によれば、外来医療用陽圧室を構成する閉鎖空間は、建物内空間を第1の内壁で仕切ることで構成される。そのため、建物の新設時だけでなく、既設の建物の建物内空間にも外来医療用陽圧室を設置することができる。閉鎖空間は、医療従事者が第1の内壁に設けられた第1の出入口を介して、室内空間から直接出入りすることができる。一方外来患者は、閉鎖空間に出入りすることなく、外壁に設けられた外来応対用の窓(外来応対窓)を介して検査等を受けることができる。よって、医療従事者と感染症が疑われる外来患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる安心かつ安全な外来医療用陽圧室を、建物の内方において製造(設置)できる。
本発明は、上記の各発明の構成をもつことにより、医療従事者が通常の医療サービスの提供を行いつつ、施設の建物の外に出ることなく感染症が疑われる外来患者への対応ができ、感染症が疑われる外来患者への対応時にはその患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室とその製造方法(設置方法)を提供することができる。
実施形態に係る外来医療用陽圧室の概略を示す平面図である。
外来応対用の窓(外来応対窓)を閉鎖空間側からみた正面図である。
外来応対用の窓(外来応対窓)の構造を示す断面図である。
図3の部分拡大図である。
他の実施形態に係る外来医療用陽圧室の概略を示す平面図である。
図1の外来医療用陽圧室において、外来応対用の窓(外来応対窓)を開けたときの空気の流れを示す図である。
図1の外来医療用陽圧室において、第2の出入口を開けたときの空気の流れを示す図である。
<外来医療用陽圧室4の構成>
本発明の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る外来医療用陽圧室4は、建物1の内方空間である建物内空間2において、建物1の外壁3を境界の一部として設けられている(建物1の内方空間である建物内空間2に設けられて、境界の一部が前記建物1の外壁3の一部とされている)。建物1として、診療所等の医療機関が挙げられ、建物内空間2として診察室等が挙げられる。
建物内空間2は、第1の内壁10によって、一部の外壁3の内法(うちのり)の面側の空間である閉鎖空間5とその反対側の空間である室内空間7とに区切られている(建物内空間2は、一部の外壁3における建物内側の面を第1の内壁10にて囲った空間である閉鎖空間5と、閉鎖空間周囲の空間である室内空間7と、に区切られている)。第1の内壁10は、建物内空間2の床から天井まで設けられている。また、第1の内壁10は、平面視においてコの字に配置され、建物内空間2の側から、一部の外壁3における内法(うちのり)の面を覆っている(一部の外壁3における建物内側の面を囲っている)。閉鎖空間5は、天井、床、第1の内壁10及び外壁3に囲まれており、外来医療用陽圧室4として機能する。このようにして、閉鎖空間5は、建物1内において一般患者のための玄関8a、待合室8b等とは隔離されて配置されている。
閉鎖空間5内は、第2の内壁12によって、互いに隣接する第1室13と第2室14に仕切られている。第2の内壁12は、外壁3の内法(うちのり)の面(外壁3における建物内側の面)と交差する方向に沿って配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられている。第1室13と第2室14は、それぞれ天井、床、第1の内壁10、第2の内壁12及び外壁3に囲まれた空間とされている。第1室13における第1の内壁10には、室内空間7と閉鎖空間5を出入り可能な第1の出入口15が設けられている(室内空間7から閉鎖空間5へ、あるいは閉鎖空間から室内空間7へ、利用者の出入りを可能とする第1の出入口15が設けられている)。第1室13における外壁3には、外来応対用の窓(外来応対窓)として機能する上げ窓23と、閉鎖空間5と建物1の外を出入り可能な第2の出入口17が設けられている(閉鎖空間5から建物1の外へ、あるいは建物1の外から閉鎖空間5へ、利用者の出入りを可能とする第2の出入口17が設けられている)。第1の出入口15、第2の出入口17及び上げ窓23(外来応対窓)は、閉じているときに閉鎖空間5内の気密(気圧)を保持する。
第2の内壁12には、第1室13と第2室14を出入り可能な第3の出入口18が設けられている(第1室13から第2室14へ、あるいは第2室14から第1室13へ、利用者の出入りを可能とする第3の出入口18が設けられている)。第3の出入口18は、閉じているときに第1室13内及び第2室14内の気密(気圧)を保持する。第2室14は、必要に応じて外来患者Vを入室させて診察を行うことができる。第3の出入口18は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられ、引き戸、開き戸等を適宜選択できる。第1の内壁10と第2の内壁12は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられている。
第1の出入口15は、引き戸により構成されている。室内空間7内の気圧(以下「室内空間内気圧」とする。)と陽圧状態である閉鎖空間5内の気圧(以下「閉鎖空間内気圧」とする。)は気圧差があるため、開き戸の場合は開く方向に対して圧力の抵抗を受け易い。この点、引き戸であれば、開き戸に比べて開閉時における力の負担を抑えることができる。引き戸は、閉じているときには隙間が塞がり閉鎖空間5内の気密(気圧)を保持する構成になっている。第1の出入口15の引き戸は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられており、片引き戸のほか、設置される場所や広さ等に応じて両引き戸が選択できる。
第1の内壁10の少なくとも一部は、のぞき窓22を有している。具体的には、第1室13と第2室14において、外壁3の内法(うちのり)の面(外壁3における建物内側の面)と対向する第1の内壁10に、のぞき窓22がそれぞれ設けられている。のぞき窓22は、室内空間7側から閉鎖空間5側に視認可能(室内空間7内に居る利用者が閉鎖空間5内を視認可能)に構成されており、例えば透光性を有するガラスや厚みのあるアクリル板等が用いられる。これにより、室内空間7から(室内空間7内の利用者は)、第1室13内と第2室14内をそれぞれ確認できる。
のぞき窓22は、第1の内壁10の範囲内において位置や大きさを任意に設定できる。第1室13におけるのぞき窓22は、室内空間7からのぞき窓22を通じて、外来応対用の窓(外来応対窓)を視認できる位置関係となるように配置されている。なお、のぞき窓22を第1の内壁10に複数配置しても良く、第1の出入口15や第3の出入口18に配置しても良い。また、のぞき窓22の室内空間7側に開閉可能な目隠し用のカバーや扉等を設けても良い。のぞき窓22の構造は、両方向から視認性を有するものとしても良く、ハーフミラー等一方向から視認性を有するものとしても良い。
上げ窓23(外来応対窓)は、複数の透光層を重ねた構成である。具体的には、上げ窓23は図2~4に示すように、長方形の複数層のガラス23aとアルミ製の框(かまち)23bから構成されており、閉鎖空間5内と建物1の外で透光性を有している。上げ窓23は、外壁3の面方向に沿って窓枠23c内を上下方向にスライド移動する。なお、上げ窓23は、閉鎖空間内気圧と建物1の外の気圧(以下「建物外気圧」とする。)との気圧差による圧力の抵抗を受けるため、油圧式によりスライド開閉する構成となっている。これにより、開閉時の力の負担を軽減できる。
上げ窓23(外来応対窓)を開いたときの開口部分の幅、高さ、設置位置は、閉鎖空間5内の医療従事者Wが建物1の外から来る外来患者Vに対応できるように設定されている。上げ窓23の開口部分の上側と下側には、上げ窓23と同じ幅の嵌め殺し窓24,25がそれぞれ設けられている。上げ窓23を開いた状態のとき、上げ窓23は上側の嵌め殺し窓24と重なるように位置する。嵌め殺し窓24,25は、複数層のガラス24a,25aとアルミ製の框(かまち)24b,25bから構成されており、閉鎖空間5内と建物1の外で透光性を有している。また、上げ窓23と嵌め殺し窓24,25におけるガラス23a,24a,25aは、耐火・遮熱性能を有している。
外壁3の外側の面には、略長方形の板状の受付台26(図3、図4参照)が設けられている。受付台26は、上げ窓23(外来応対窓)の幅に対応しており、窓枠23cの下枠付近から水平方向に延出している。受付台26の下方は、検査を受けた外来患者Vの検体を保管するための箱等を設置でき、閉鎖空間5内から確認できる。
第2の出入口17は、図1に示すように、閉鎖空間5内側に戸が開く開き戸で構成されている。建物1の外とつながる開口部を密閉性の高い開き戸とすることにより、閉じているときの閉鎖空間5の気密(気圧)保持機能をより高めることができる。第2の出入口17の開き戸は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられている。
閉鎖空間5には、陽圧設備が備えられている。陽圧設備は、閉鎖空間内気圧を、室内空間内気圧及び建物外気圧よりも高くし、閉鎖空間5を陽圧状態にする。陽圧設備として、例えば任意の場所に設置できる床設置型の陽圧装置19が、第2室14に設置されている。また、第2室14における外壁3には、閉鎖空間5内の空気を建物1の外に排出するための通気口21が設けられている。
陽圧装置19は、細菌、ウイルス、粉塵等の除去に対応したエアフィルターと、循環ファンが内蔵されており、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続されている。エアフィルターは、例えばHEPAフィルター等の高性能フィルターを選択できる。また、第1室13及び第2室14に清浄な空気を供給するための給気経路と、第1室13内及び第2室14内の空気を排出する排気経路が設定されている。給気経路は、例えば陽圧装置19と、第1室13及び第2室14の天井に設けた給気口とが給気ダクトで接続された構成が挙げられる。排気経路は、例えば第1室13内の空気が第2室14における通気口21から排出されるように、排気ダクトが配設されている。なお、第2室14内の空気は、ダクト等を介さずに通気口21から排出される。通気ダクトから陽圧装置19に取り込まれた空気は、エアフィルターを通して浄化され、給気経路から第1室13及び第2室14にそれぞれ送り出される。
陽圧装置19は、外気を取り入れることにより、閉鎖空間5内への給気風量が閉鎖空間5外への排気風量より大きくなるように調整されている。陽圧装置19により、閉鎖空間5内へ清浄な空気を送り出し、閉鎖空間5内を陽圧状態に保つことができる。閉鎖空間5内は、第1室13と第2室14が共に陽圧状態に保たれる。また、閉鎖空間5内の空気は、通気口21から建物1の外に排出される。これにより、閉鎖空間5内の空気が建物1の外気と換気される。通気口21にはエアフィルターが備えられており、閉鎖空間5内の空気が汚染された場合でも、細菌やウイルス等が建物1の外へ拡散するのを抑制できる。
また、第1室13において、第1の内壁10にサーキュレータ27が設置されている。サーキュレータ27は、上げ窓23(外来応対窓)の開口部分に向かって風を送ることができるように設置位置と向きが設定されている。これにより、上げ窓23を介して閉鎖空間5内から建物1の外に向かう空気の流れをより強力にし、建物1の外からのウイルスや菌の流入防止を図っている。サーキュレータ27は、必要に応じて風量や風向きを調整できる。例えば、第2の出入口17を開放したときには、第2の出入口17を介して建物1の外へ風が送られるように風向きを変更できる構成にしても良い。
閉鎖空間内気圧と、室内空間内気圧及び建物外気圧との気圧差は、出入口の戸の開閉に支障が生じない範囲で設定される。なお、閉鎖空間5内の1時間当たりの換気回数が、一定回数以上になるよう(単位時間あたりの換気頻度が一定頻度以上となるよう)設定される。陽圧設備の構成は、外来医療用陽圧室を設ける場所に応じて適宜選択でき、清浄な空気を送り出し陽圧状態を保つことができる給排気システムを備えていれば良い。例えば、天井吊り型の陽圧装置を設置しても良い。また、エアフィルターを内蔵した給気ファンを天井又は天井付近の第1の内壁10に設け、排気経路を、給気ファンの反対側に位置するように床付近の外壁3に設けた構成としても良い。
また、陽圧装置19を第1室13に設置し、第1室13と第2室14への給気経路を設定しても良い。給気経路として、給気ダクトを配設せず、第2の内壁12に給気ファンを設けても良い。この構成により、第1室13内へ陽圧装置19から直接清浄な空気が送り出され、給気ファンによって第1室13内の空気が第2室14へ送られる。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設定されている。通路9は、上げ窓23(外来応対窓)を有する外壁3に沿って配置されている。上げ窓23は、通路9に面した位置において、外来応対用の窓(外来応対窓)として機能する。外来患者Vが乗車している車両30は、通路9を利用して、少しカーブして上げ窓23に寄ることができ、また少しカーブして建物1より離れていくことができる。これにより、医療従事者Wは、感染が疑われる外来患者Vへの対応をドライブスルー方式で行うことができる。よって、外来患者同士の接触の機会を減らすことができる。また、例えば天候が雨の場合に、雨に濡れずに建物1の外から上げ窓23にアクセスできる。
図1に示す閉鎖空間5は第2の内壁12で仕切られているが、図5に示すように、閉鎖空間5を第2の内壁12(図1参照)で仕切らず、1つの部屋からなる構成としても良い。閉鎖空間5は、外来応対用の受付室として使用される。また、給気ダクトを配設せず、陽圧装置19に閉鎖空間5内の空気を取り込み、エアフィルターを通して浄化し、閉鎖空間5内に送り出して循環させても良い。なお、陽圧装置19は、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続されており、陽圧装置19に取り込まれた閉鎖空間5外の空気は、エアフィルターを通して浄化され、閉鎖空間5内に送り出される。さらに、閉鎖空間5内の空気は、通気口21から排出されるため、陽圧装置19によって循環するだけでなく、建物1の外気と換気される。また、通気口21として差圧ダンパを設けても良い。差圧ダンパにより、例えば第2の出入口17を開くときに、通気口21からの排気風量が調整されるため、開き戸にかかる圧力が軽減される。
<外来医療用陽圧室4の製造(設置)工程>
次に、上記実施形態に係る外来医療用陽圧室4の製造(設置)方法について説明する。本実施形態に係る外来医療用陽圧室4の製造(設置)工程は、図1を参照として、建物1の内方空間である建物内空間2において、第1の内壁10によって閉鎖空間5と室内空間7とに区切られた区切り状態を実現させる区切りステップと、陽圧設備設置ステップを含んでいる。
区切りステップでは、建物内空間2において、上げ窓23(外来応対用の窓)を有する外壁3に対し、建物内空間2の側から外壁3における内法(うちのり)の面を第1の内壁10で覆う(建物内空間2において、上げ窓23(外来応対窓)を有する外壁3に対し、外来応対窓周囲の外壁3における建物内側の面を第1の内壁10で囲う)。第1の内壁10は、平面視においてコの字に配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられる。第1の内壁10によって、建物内空間2が内法(うちのり)の面側の空間である閉鎖空間5とその反対側の空間である室内空間7とに区切られる(建物内空間2は、外来応対窓周囲の外壁3と第1の内壁10とで囲まれた閉鎖空間5と、閉鎖空間周囲の空間である室内空間7と、に区切られる)。このようにして、建物内空間2に、天井、床、第1の内壁10及び外壁3に囲まれた閉鎖空間5が構成される。
閉鎖空間5内は、第2の内壁12によって、互いに隣接する第1室13と第2室14に仕切られる。第2の内壁12は、外壁3の内法(うちのり)の面(外壁3における建物内側の面)と交差する方向に沿って配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられる。第2の内壁12には、第1室13と第2室14を出入り可能な第3の出入口18が設けられる(第1室13から第2室14へ、あるいは第2室14から第1室13へ、利用者の出入りを可能とする第3の出入口18が設けられる)。
上げ窓23(外来応対窓)は、複数の透光層を重ねた構成を有し、かつ区切り状態において、外壁3の面方向に沿ってスライド移動して開閉可能である。また、上げ窓23が閉じているときに、閉鎖空間5の気密(気圧)が保持される。図2、図3に示すように、上げ窓23の開口部分の上側と下側には、嵌め殺し窓24,25が設けられる。また、外壁3の外側の面には、受付台26が設けられる。上げ窓23、嵌め殺し窓24,25、受付台26の構成は、外来医療用陽圧室4の構成の説明において上述したとおりであるため、説明を省略する。
図1に示すように、第1室13における第1の内壁10は、区切り状態において、室内空間7と閉鎖空間5を出入り可能な第1の出入口15を有する(室内空間7から閉鎖空間5へ、あるいは閉鎖空間5から室内空間7へ、利用者の出入りを可能とする第1の出入口15を有する)。第1の出入口15は、開閉可能である引き戸で構成され、閉じているときに閉鎖空間5の気密(気圧)を保持する。また、第1室13における外壁3は、外来応対用の上げ窓23(外来応対窓)を有している。第1室13は、外来患者Vへの応対等を行う受付室として機能する。
第1室13における第1の内壁10は、区切り状態において閉鎖空間5と建物1の外を出入り可能な第2の出入口17を有する(閉鎖空間5から建物外へ、あるいは建物外から閉鎖空間5へ、利用者の出入りを可能とする第2の出入口17を有する)。第2の出入口17は、第1室13において、上げ窓23(外来応対窓)と隣接して設けられており、閉鎖空間5内側に戸が開く開き戸で構成されている。建物1の外とつながる開口部を密閉性の高い開き戸とすることにより、閉じているときの閉鎖空間5の気密(気圧)保持機能をより高めることができる。
第2室14は、第2の内壁12を境界として、第1室13の隣に設けられる。利用者は、第2室14へは、第3の出入口18を介して第1室13から出入りできる。第2室14は、必要に応じて外来患者Vを入室させて診察を行うことができる。第3の出入口18は、引き戸に代えて開き戸等を適宜選択できる。
第1の内壁10の少なくとも一部は、のぞき窓22を有する。具体的には、第1室13と第2室14において、外壁3の内法(うちのり)の面と対向する第1の内壁10に、のぞき窓22がそれぞれ設けられる。のぞき窓22の配置や構成は、外来医療用陽圧室4の構成の説明において上述したとおりであるため、説明を省略する。
閉鎖空間5を形成している外壁3は、閉鎖空間5内の空気が建物1の外に排出される通気口21を有する。通気口21は、建物1の外壁3における換気口や窓等、既存の開口部を利用しても良い。
陽圧設備設置ステップでは、閉鎖空間内気圧を建物外気圧及び室内空間内気圧よりも高くする陽圧設備を設置する。陽圧設備として、陽圧装置19が第2室14に設置される。陽圧装置19は、エアフィルターと循環ファンが内蔵された床設置型の装置である。なお、天井吊り型等、他の構成の陽圧設備を選択しても良い。
陽圧装置19は、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続される。また、陽圧装置19から第1室13及び第2室14に清浄な空気を供給するための給気経路と、第1室13内及び第2室14内の空気を排出する排気経路が設定される。具体的には、給気経路として、陽圧装置19と、第1室13及び第2室14の天井に設けた給気口とが給気ダクトで接続される。また排気経路として、第1室13内の空気が第2室14における通気口21から排出されるように、排気ダクトが配設される。第1室13及び第2室14に対するそれぞれの給気風量は、それぞれの排気風量より大きくなるように調整される。陽圧装置19は、任意の場所に設置できるため、既存の建物においても設置が容易である。
また、第1室13においては、第1の内壁10にサーキュレータ27が設置される。サーキュレータ27は、上げ窓23(外来応対窓)の開口部分に向かって風を送ることができるように設置位置と向きが設定される。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設けられる。通路9は、上げ窓23(外来応対窓)を有する外壁3に沿って配置される。すなわち、上げ窓23(外来応対窓)が通路9に面する位置関係となる。
<作用・効果>
上記実施形態に係る外来医療用陽圧室4の構成によれば、陽圧装置19(陽圧設備)により閉鎖空間5における第1室13と第2室14を陽圧状態にすることができる。利用者(医療従事者)は、第1室13内へは、室内空間7から第1の出入口15を介して入室できる。図6を参照として、利用者(医療従事者)は、車両に乗ったままの外来患者V又はその同伴者Yに対して、上げ窓23(外来応対窓)を介して対応できる。上げ窓23(外来応対窓)を開けると第1室13内から建物1の外へ空気が流れるため、閉鎖空間5内へのウイルス等の流入を抑制できる。また、図7を参照として、利用者(医療従事者)は、必要に応じて第2の出入口17及び第3の出入口18を通じて外来患者Vを第2室14内へ入室させることができる。上げ窓23(外来応対窓)、第2の出入口17及び第3の出入口18の開閉は、閉鎖空間5から室内空間7へ空気が流れないように、第1の出入口15を閉じた状態で行われる。
図1、図6を参照として、感染症が疑われる外来患者Vは、車両30で通路9に沿って上げ窓23(外来応対窓)にアクセスする。医療従事者Wは、上げ窓23(外来応対窓)を介して、車両30内に乗車している外来患者Vの症状聞き取りを行い、検査等の対応をする。外来患者Vは、検査結果が出るまでの間、駐車場に車両30を移動させて待機する。検査結果判明後、必要な薬の受け渡しや会計のため、再度車両30で通路9に沿って駐車場から上げ窓23(外来応対窓)にアクセスする。このようにして、感染症が疑われる外来患者Vの検査、受診、会計のすべてを、建物1の外壁3を隔てて完了することができる。また、医療従事者Wはこれらの対応を効率よく行うことができる。そのため、外来患者Vは、待ち時間が短縮されるとともに、楽しく楽に待ち時間を過ごすことができる。
外来患者Vの症状の程度によっては、例えば肺の呼吸音を聞く等の診察が必要となるが、この場合は外来患者Vを車両30から降ろして、第2の出入口17から閉鎖空間5内へ入室させる。このとき、車両30が第2の出入口17の前に停車しているため、外来患者Vは短時間で診察を受けることができ、診察後は速やかに車両30に戻って待機できる。
実施形態に係る外来医療用陽圧室4は、第1の内壁10及び外壁3を境界とした閉鎖空間5から構成される。閉鎖空間内5は、陽圧装置19(陽圧設備)によって室内空間内気圧及び外気圧より気圧が高い陽圧状態とされ、第1の出入口15、又は上げ窓23(外来応対窓)を開けたときは、閉鎖空間5すなわち外来医療用陽圧室の室内から室外へ空気が流れる。また、通気口21からも閉鎖空間5内の空気が建物1の外に排出される。閉鎖空間5は室内空間7と隣接しており、医療従事者Wは第1の内壁10に設けられた第1の出入口15から、閉鎖空間5に直接出入りすることができる。一方外来患者Vは、閉鎖空間5に出入りすることなく、外壁3に設けられた上げ窓23(外来応対窓)を介して建物1の外から検査等を受けることができる。よって、医療従事者Wと感染症が疑われる外来患者Vとの接触を少なくして、医療従事者Wの感染のリスクを減らすことができる。
また、上げ窓23(外来応対窓)を開けたときに閉鎖空間5から建物1の外、すなわち外来患者V側へ空気が流れるため、建物1外からのウイルスや菌の流入を防ぐことができ、医療従事者Wは防護服を着用することなく外来患者Vに対応できる。さらに、防護服を着用するための前室を必ずしも設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。このようにして、医療従事者Wは、通常の医療サービスの提供を行いつつ、医療従事者Wが建物1の内側、外来患者Vが建物1の外側である位置関係を保ったまま、外来患者Vへの対応等を行うことができる。よって、感染症の検査にかかる手間や時間が削減され、感染症が疑われる外来患者Vの対応を効率よく行うことができる。
第1の出入口15は、引き戸により構成されている。これにより、室内空間7と閉鎖空間5との出入口の引き戸を開閉するときに、開く方向に対して気圧差による圧力の抵抗を受け易い開き戸の場合と比べて、小さな力で開閉できる。また、引き戸であれば、開閉中に第1の内壁10の平面に沿って移動するため、開き戸よりも開放される部分が狭くなり、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持し易い。
第1の内壁10の一部には、室内空間7の側から閉鎖空間5の側に視認可能な(室内空間7内に居る利用者が閉鎖空間5内を視認可能な)のぞき窓22が設けられている。これにより、医療従事者(利用者)は、室内空間7から閉鎖空間5の様子を確認できる。よって第1の出入口15を開けることなく、閉鎖空間5内の確認ができるため、第1の出入口15を開閉する回数が減り、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持しやすい。また、のぞき窓22は、上げ窓23(外来応対窓)を視認できる位置関係となるように、配置されている。これにより、医療従事者(利用者)は、外来患者Vが来た場合に室内空間7内から容易に確認できる。
閉鎖空間5を形成している外壁3には、第2の出入口17が設けられている。これにより、利用者は、建物1の外から閉鎖空間5内に、第2の出入口17を介して出入りできる。よって、必要に応じて感染症が疑われる外来患者Vを一般患者と接触させることなく閉鎖空間5に入室させて、診察等を行うことができる。
閉鎖空間5は、第2の内壁12で仕切られ、第1室13と第2室14が構成されている。第1室13は、医療従事者Wが室内空間7から第1の出入口15を介して直接出入りする部屋である。第1室13に入った医療従事者は、外壁3における上げ窓23(外来応対窓)を介して外来患者Vの受付等を行うことができる。第2室14は、隣接する第1室13から第3の出入口18を介して出入りできる部屋である。この構成により、第1室13を外来患者Vへの応対等を行う部屋として使用し、第2室14を外来患者Vの診察等を行う部屋として使用できる。また、例えば感染症が疑われる外来患者Vが徒歩で来院した場合には、一般患者の待合室と隔離された待機室として第2室14を使用できる。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設定されており、上げ窓23(外来応対窓)が通路9に面している。これにより、外来患者Vは車両30に乗車したまま上げ窓23(外来応対窓)にアクセスできるため、外来患者Vはドライブスルー方式で検査等を受けることができる。また、外来患者Vが駐車場において車両30内で待機できるため、感染が疑われる患者の待合室等を別途設けなくても良い。さらに、外来患者Vが小さい子供、高齢者であっても、同伴者Yと共に車両30内で自由にストレスなく待ち時間を過ごすこともできる。
外壁3における上げ窓23(外来応対窓)、嵌め殺し窓24,25に複数層のガラスを用いることにより、外来応対用の窓の防火、防犯機能を高めることができる。
上記実施形態に係る外来医療用陽圧室4の製造(設置)工程により、閉鎖空間5は、建物内空間2を第1の内壁10で仕切ることで構成される。そのため、建物1の新設時だけでなく、既設の建物1の建物内空間2にも外来医療用陽圧室4を設置することができる。閉鎖空間5は、医療従事者Wが第1の内壁10に設けられた第1の出入口15を介して、室内空間7から直接出入りすることができる空間である。一方外来患者Vは、閉鎖空間5に出入りすることなく、外壁3に設けられた外来応対用の上げ窓23(外来応対窓)を介して検査等を受けることができる。よって、医療従事者Wと感染症が疑われる外来患者Vとの接触を少なくして、医療従事者Wの感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室を、建物1の内方において製造(設置)できる。
<変更例>
本発明に係る外来医療用陽圧室4とその製造(設置)方法は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
上記実施形態において、第1の内壁10にのぞき窓22を設けた構成を示したが、第1の内壁10の全体に、例えば透光性のあるガラス等を用いて室内空間7側から閉鎖空間5側を視認可能な構成としても良い。また、外来応対用の窓として上下方向にスライド移動する上げ窓23(外来応対窓)を設けた構成を示したが、これに限られず、例えば左右方向にスライド移動する引き窓を設けても良い。
上記実施形態において、陽圧設備として陽圧装置19を閉鎖空間5内に設置した例を示したが、これに限られず、建物1の構造、レイアウトに応じて他の構成からなる陽圧設備を選択できる。例えば、エアフィルターを内蔵した給気ファンを天井又は天井付近の第1の内壁10に設け、排気経路を、給気ファンの反対側に位置するように床付近の外壁3に設けた構成としても良い。
上記実施形態において、第1室13に第2の出入口17を設けた構成としたが、第2室14に第2の出入口17を設けても良い。なお、第3の出入口18を開けたときに第1室13から第2室14へ空気が流れるように陽圧設備を構成して、第1室13を前室として使用しても良い。
外来医療用陽圧室4を設ける場所は、外来応対用の窓を設けることができるように建物内空間2において設定されており、この範囲内で閉鎖空間5と室内空間7のレイアウトを適宜変更できる。また、閉鎖空間5内における第2の内壁12の配置も適宜変更できる。
1 建物
2 建物内空間
3 外壁
4 外来医療用陽圧室
5 閉鎖空間
7 室内空間
9 通路
10 第1の内壁
12 第2の内壁
13 第1室
14 第2室
15 第1の出入口
17 第2の出入口
18 第3の出入口
19 陽圧装置(陽圧設備)
21 通気口
22 のぞき窓
23 上げ窓(外来応対窓)
26 受付台
30 車両
本発明は、感染症が疑われる患者対応用の外来医療用陽圧室とその設置方法に関する。
従来、医療施設における手術室や集中治療室、感染症患者の病室は、施設内において隔離された空間とされ、空気の流れが制御されている。例えば、手術室や集中治療室は、外部から菌やウイルス等が流入しないよう室内の気圧を高くした陽圧状態に保たれる。一方、感染症患者の病室は、外部へ菌やウイルス等が流出しないよう室内の気圧を低くした陰圧状態に保たれる。また、隔離空間の出入口の前には、隔離空間内の環境を保つための前室が設けられる。前室を介して隔離空間に出入りすることによって、隔離空間の扉を開くときに気圧差が維持され易くなると共に、汚染された空気が流入又は流出するのを防ぐことができる。
例えば特許文献1には、病室、前室、及び病室と前室の間に配置された遮断室から構成された感染症病室が開示されている。これらの室内の気圧は、前室より病室が低く、かつ病室よりも遮断室が低くなるように保たれている。これにより、患者が保有している病原菌が外部に漏れ出すのを防ぐと共に、一般の雑菌に起因した別の感染症を併発することを防いでいる。
感染症が疑われる外来患者に医療サービスを提供する場合、一般の外来患者とは隔離された空間を設けることが望ましい。しかしながら、空気の流れが制御された隔離室が設けられていない医療施設では、施設内への出入口や待合室で外来患者をそれぞれ個別に受け付けて対応することは困難である。さらに、医療施設内に新たに隔離室を設ける場合、スペースが確保できないとともに、費用が高くなる等の問題が生じ得る。
特許文献2には、病室と前室から構成された病室ユニットが開示されている。病室ユニット内は陰圧状態に保たれ、病室内の細菌、ウイルス等が外部へ排出されるのを防いでいる。この病室ユニットは、建物の外に容易に設置できるため、既存の医療施設内でスペースが確保できない場合であっても、隔離病室を新設又は増設することができる。また、このようなユニット型の隔離室は、感染症が疑われる外来患者の検査、診察等を行うための部屋として設けることもできる。
特開2020-54791号公報
特開2006-145号公報
しかしながら、建物の外部において別棟に設けられた陰圧状態の隔離室で、感染症が疑われる外来患者への対応を行う場合、その都度医療従事者は通常の医療サービスを行う建物の外に出て隔離室に移動し、前室で防護服を着用し、隔離室内に入る必要がある。また、医療従事者は、患者が出入りする度に隔離室内の換気を十分に行う必要があり、感染症が疑われる外来患者への対応に手間や時間がかかる。さらに、外来患者の人数が多くなれば、同じ空間内で外来患者と接する医療従事者の感染のリスクが増大する懸念が生じる。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、医療従事者が通常の医療サービスの提供を行いつつ、施設の建物の外に出ることなく感染症が疑われる外来患者への対応ができ、感染症が疑われる外来患者への対応時にはその患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室とその製造方法(設置方法)を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明は、次の手段をとる。先ず、第1の発明は、建物の内方空間である建物内空間に設けられて、境界の一部が前記建物の外壁の一部とされている外来医療用陽圧室であって、一部の前記外壁における前記建物内側の面を囲んで前記建物内空間に閉鎖空間を形成して、前記建物内空間を、前記閉鎖空間と、前記閉鎖空間周囲の空間である室内空間と、に区切る第1の内壁と、前記閉鎖空間内の気圧を、前記建物外の気圧及び前記室内空間内の気圧よりも高くする陽圧設備と、前記閉鎖空間を形成している前記外壁に設けられ、前記閉鎖空間内の空気を前記建物外に排出する通気口と、前記第1の内壁に設けられた開閉可能な第1の出入口であって、開いているときには前記室内空間から前記閉鎖空間へ、あるいは前記閉鎖空間から前記室内空間へ、利用者の出入りを可能とし、かつ、閉じているときには前記閉鎖空間の気圧を保持する前記第1の出入口と、前記閉鎖空間を形成している前記外壁に設けられた開閉可能な外来対応窓であって、開いているときには外来対応用の窓として機能するとともに前記閉鎖空間内の空気を前記建物外に流出させ、かつ、閉じているときには前記閉鎖空間の気圧を保持する前記外来対応窓と、を有している。
第1の発明によれば、外来医療用陽圧室は、第1の内壁及び外壁を境界とした閉鎖空間から構成される。閉鎖空間内は、陽圧設備によって室内空間内気圧及び外気圧より気圧が高い陽圧状態とされ、第1の出入口、又は窓(外来対応窓)を開けたときは、閉鎖空間すなわち外来医療用陽圧室の室内から室外へ空気が流れる。また、通気口からも閉鎖空間内の空気が建物の外に排出される。閉鎖空間は室内空間と隣接しており、医療従事者は第1の内壁に設けられた第1の出入口から、閉鎖空間に直接出入りすることができる。一方外来患者は、閉鎖空間に出入りすることなく、外壁に設けられた外来対応用の窓を介して建物の外から検査等を受けることができる。よって、医療従事者と感染症が疑われる外来患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる。また、窓(外来対応窓)を開けたときに閉鎖空間から建物の外、すなわち外来患者側へ空気が流れるため、建物外からのウイルスや菌の流入を防ぐことができ、医療従事者は防護服を着用することなく安心して外来患者に対応できる。さらに、防護服を着用するための前室を必ずしも設ける必要がなく、前室を設けない場合では省スペース化を図ることができる。このようにして、医療従事者は、通常の医療サービスの提供を安全に行いつつ、医療従事者が建物の内側、外来患者が建物の外側である位置関係を保ったまま、外来患者への対応等を行うことができる。よって、感染症の検査にかかる手間や時間が削減され、感染症が疑われる外来患者の対応を効率よく行うことができる。
第2の発明は、第1の発明による外来医療用陽圧室であって、前記第1の出入口は、引き戸により構成されており、前記外来対応窓は、複数の透光層が重ねられており、前記外壁の面方向に沿ってスライド移動して開閉可能である。
第2の発明によれば、室内空間と閉鎖空間との出入口の引き戸を開閉するときに、開く方向に対して気圧差による圧力の抵抗を受け易い開き戸の場合と比べて、小さな力で開閉できる。また、引き戸であれば、開閉中に第1の内壁の平面に沿って移動するため、開き戸よりも開放される部分が狭くなり、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持し易い。
第3の発明は、第1又は第2の発明による外来医療用陽圧室であって、前記第1の内壁の少なくとも一部には、前記室内空間内に居る利用者が前記閉鎖空間内を視認可能に構成されたのぞき窓が設けられている。
第3の発明によれば、第1の内壁におけるのぞき窓を通じて、室内空間の側から閉鎖空間内の様子を確認できる。よって第1の出入口を開けることなく、閉鎖空間内の確認ができるため、第1の出入口を開閉する回数が減り、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持しやすい。
第4の発明は、第1から第3のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記閉鎖空間を形成している前記外壁に設けられた開閉可能な第2の出入口であって、開いているときには前記閉鎖空間から前記建物外へ、あるいは前記建物外から前記閉鎖空間へ、利用者の出入りを可能とし、かつ、閉じているときには前記閉鎖空間の気圧を保持する前記第2の出入口を有している。
第4の発明によれば、建物の外から閉鎖空間内に、第2の出入口を介して出入りできる。これにより、必要に応じて感染症が疑われる外来患者を一般患者と接触させることなく閉鎖空間に入室させて、診察等を行うことができる。
第5の発明は、第1から第4のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記閉鎖空間を、互いに隣接する第1室と第2室に仕切る第2の内壁と、前記第2の内壁に設けられた開閉可能な第3の出入口であって、開いているときには前記第1室から前記第2室へ、あるいは前記第2室から前記第1室へ、利用者の出入りを可能とする前記第3の出入口と、を有している。
第5の発明によれば、外来医療用陽圧室は、閉鎖空間が第2の内壁で仕切られ、第1室と第2室が構成されている。第1室は、医療従事者が室内空間から第1の出入口を介して直接出入りし、外壁における窓(外来対応窓)を介して外来患者の受付等を行うことができる。第2室は、隣接する第1室から第3の出入口を介して出入りできる。この構成により、第1室を外来患者の対応等を行う部屋として使用し、第2室を外来患者の診察等を行う部屋として使用できる。
第6の発明は、第1から第5のいずれか一の発明による外来医療用陽圧室であって、前記建物の外側には、車両で通行可能な通路が設定されており、前記外来対応窓は、前記通路に面している。
第6の発明によれば、外来患者は車両に乗車したまま外来対応用の窓(外来対応窓)にアクセスできるため、ドライブスルー方式で検査等を受けることができる。
第7の発明は、建物の内方空間である建物内空間に設けられて、境界の一部が前記建物の外壁の一部とされている外来医療用陽圧室の設置方法であって、外来対応用の窓である外来対応窓を有する前記外壁に対し、前記外来対応窓周囲の前記外壁における前記建物内側の面を第1の内壁で囲むことで、前記建物内空間を、前記外来対応窓周囲の前記外壁と前記第1の内壁とで囲まれた閉鎖空間と、前記閉鎖空間周囲の空間である室内空間と、に区切られた区切り状態を実現させる区切りステップ、ならびに、前記閉鎖空間内の気圧を、前記建物外の気圧及び前記室内空間内の気圧よりも高くする陽圧設備を設ける陽圧設備設置ステップ、を含み、前記閉鎖空間を形成している前記外壁は、前記区切り状態において、前記閉鎖空間内の空気を前記建物の外に排出する通気口を有する状態とされ、前記第1の内壁は、前記区切り状態において、前記室内空間から前記閉鎖空間へ、あるいは前記閉鎖空間から前記室内空間へ、利用者の出入りを可能とする第1の出入口を有する状態とされ、前記第1の出入口は、前記区切り状態において、開閉可能とされ、かつ、閉じているときに前記閉鎖空間の気圧を保持するものとされ、前記外来対応窓は、前記区切り状態において、開閉可能とされ、開いているときには外来対応用の窓として機能するとともに前記閉鎖空間内の空気を前記建物外に流出させ、かつ、閉じているときに前記閉鎖空間の気圧を保持するものとされる。
第7の発明によれば、外来医療用陽圧室を構成する閉鎖空間は、建物内空間を第1の内壁で仕切ることで構成される。そのため、建物の新設時だけでなく、既設の建物の建物内空間にも外来医療用陽圧室を設置することができる。閉鎖空間は、医療従事者が第1の内壁に設けられた第1の出入口を介して、室内空間から直接出入りすることができる。一方外来患者は、閉鎖空間に出入りすることなく、外壁に設けられた外来対応用の窓(外来対応窓)を介して検査等を受けることができる。よって、医療従事者と感染症が疑われる外来患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる安心かつ安全な外来医療用陽圧室を、建物の内方において製造(設置)できる。
本発明は、上記の各発明の構成をもつことにより、医療従事者が通常の医療サービスの提供を行いつつ、施設の建物の外に出ることなく感染症が疑われる外来患者への対応ができ、感染症が疑われる外来患者への対応時にはその患者との接触を少なくして、医療従事者の感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室とその製造方法(設置方法)を提供することができる。
実施形態に係る外来医療用陽圧室の概略を示す平面図である。
外来対応用の窓(外来対応窓)を閉鎖空間側からみた正面図である。
外来対応用の窓(外来対応窓)の構造を示す断面図である。
図3の部分拡大図である。
他の実施形態に係る外来医療用陽圧室の概略を示す平面図である。
図1の外来医療用陽圧室において、外来対応用の窓(外来対応窓)を開けたときの空気の流れを示す図である。
図1の外来医療用陽圧室において、第2の出入口を開けたときの空気の流れを示す図である。
<外来医療用陽圧室4の構成>
本発明の実施形態について、図1から図7を用いて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る外来医療用陽圧室4は、建物1の内方空間である建物内空間2において、建物1の外壁3を境界の一部として設けられている(建物1の内方空間である建物内空間2に設けられて、境界の一部が前記建物1の外壁3の一部とされている)。建物1として、診療所等の医療機関が挙げられ、建物内空間2として診察室等が挙げられる。
建物内空間2は、第1の内壁10によって、一部の外壁3の内法(うちのり)の面側の空間である閉鎖空間5とその反対側の空間である室内空間7とに区切られている(建物内空間2は、一部の外壁3における建物内側の面を第1の内壁10にて囲った空間である閉鎖空間5と、閉鎖空間周囲の空間である室内空間7と、に区切られている)。第1の内壁10は、建物内空間2の床から天井まで設けられている。また、第1の内壁10は、平面視においてコの字に配置され、建物内空間2の側から、一部の外壁3における内法(うちのり)の面を覆っている(一部の外壁3における建物内側の面を囲っている)。閉鎖空間5は、天井、床、第1の内壁10及び外壁3に囲まれており、外来医療用陽圧室4として機能する。このようにして、閉鎖空間5は、建物1内において一般患者のための玄関8a、待合室8b等とは隔離されて配置されている。
閉鎖空間5内は、第2の内壁12によって、互いに隣接する第1室13と第2室14に仕切られている。第2の内壁12は、外壁3の内法(うちのり)の面(外壁3における建物内側の面)と交差する方向に沿って配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられている。第1室13と第2室14は、それぞれ天井、床、第1の内壁10、第2の内壁12及び外壁3に囲まれた空間とされている。第1室13における第1の内壁10には、室内空間7と閉鎖空間5を出入り可能な第1の出入口15が設けられている(室内空間7から閉鎖空間5へ、あるいは閉鎖空間から室内空間7へ、利用者の出入りを可能とする第1の出入口15が設けられている)。第1室13における外壁3には、外来対応用の窓(外来対応窓)として機能する上げ窓23と、閉鎖空間5と建物1の外を出入り可能な第2の出入口17が設けられている(閉鎖空間5から建物1の外へ、あるいは建物1の外から閉鎖空間5へ、利用者の出入りを可能とする第2の出入口17が設けられている)。第1の出入口15、第2の出入口17及び上げ窓23(外来対応窓)は、閉じているときに閉鎖空間5内の気密(気圧)を保持する。
第2の内壁12には、第1室13と第2室14を出入り可能な第3の出入口18が設けられている(第1室13から第2室14へ、あるいは第2室14から第1室13へ、利用者の出入りを可能とする第3の出入口18が設けられている)。第3の出入口18は、閉じているときに第1室13内及び第2室14内の気密(気圧)を保持する。第2室14は、必要に応じて外来患者Vを入室させて診察を行うことができる。第3の出入口18は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられ、引き戸、開き戸等を適宜選択できる。第1の内壁10と第2の内壁12は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられている。
第1の出入口15は、引き戸により構成されている。室内空間7内の気圧(以下「室内空間内気圧」とする。)と陽圧状態である閉鎖空間5内の気圧(以下「閉鎖空間内気圧」とする。)は気圧差があるため、開き戸の場合は開く方向に対して圧力の抵抗を受け易い。この点、引き戸であれば、開き戸に比べて開閉時における力の負担を抑えることができる。引き戸は、閉じているときには隙間が塞がり閉鎖空間5内の気密(気圧)を保持する構成になっている。第1の出入口15の引き戸は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられており、片引き戸のほか、設置される場所や広さ等に応じて両引き戸が選択できる。
第1の内壁10の少なくとも一部は、のぞき窓22を有している。具体的には、第1室13と第2室14において、外壁3の内法(うちのり)の面(外壁3における建物内側の面)と対向する第1の内壁10に、のぞき窓22がそれぞれ設けられている。のぞき窓22は、室内空間7側から閉鎖空間5側に視認可能(室内空間7内に居る利用者が閉鎖空間5内を視認可能)に構成されており、例えば透光性を有するガラスや厚みのあるアクリル板等が用いられる。これにより、室内空間7から(室内空間7内の利用者は)、第1室13内と第2室14内をそれぞれ確認できる。
のぞき窓22は、第1の内壁10の範囲内において位置や大きさを任意に設定できる。第1室13におけるのぞき窓22は、室内空間7からのぞき窓22を通じて、外来対応用の窓(外来対応窓)を視認できる位置関係となるように配置されている。なお、のぞき窓22を第1の内壁10に複数配置しても良く、第1の出入口15や第3の出入口18に配置しても良い。また、のぞき窓22の室内空間7側に開閉可能な目隠し用のカバーや扉等を設けても良い。のぞき窓22の構造は、両方向から視認性を有するものとしても良く、ハーフミラー等一方向から視認性を有するものとしても良い。
上げ窓23(外来対応窓)は、複数の透光層を重ねた構成である。具体的には、上げ窓23は図2~4に示すように、長方形の複数層のガラス23aとアルミ製の框(かまち)23bから構成されており、閉鎖空間5内と建物1の外で透光性を有している。上げ窓23は、外壁3の面方向に沿って窓枠23c内を上下方向にスライド移動する。なお、上げ窓23は、閉鎖空間内気圧と建物1の外の気圧(以下「建物外気圧」とする。)との気圧差による圧力の抵抗を受けるため、油圧式によりスライド開閉する構成となっている。これにより、開閉時の力の負担を軽減できる。
上げ窓23(外来対応窓)を開いたときの開口部分の幅、高さ、設置位置は、閉鎖空間5内の医療従事者Wが建物1の外から来る外来患者Vに対応できるように設定されている。上げ窓23の開口部分の上側と下側には、上げ窓23と同じ幅の嵌め殺し窓24,25がそれぞれ設けられている。上げ窓23を開いた状態のとき、上げ窓23は上側の嵌め殺し窓24と重なるように位置する。嵌め殺し窓24,25は、複数層のガラス24a,25aとアルミ製の框(かまち)24b,25bから構成されており、閉鎖空間5内と建物1の外で透光性を有している。また、上げ窓23と嵌め殺し窓24,25におけるガラス23a,24a,25aは、耐火・遮熱性能を有している。
外壁3の外側の面には、略長方形の板状の受付台26(図3、図4参照)が設けられている。受付台26は、上げ窓23(外来対応窓)の幅に対応しており、窓枠23cの下枠付近から水平方向に延出している。受付台26の下方は、検査を受けた外来患者Vの検体を保管するための箱等を設置でき、閉鎖空間5内から確認できる。
第2の出入口17は、図1に示すように、閉鎖空間5内側に戸が開く開き戸で構成されている。建物1の外とつながる開口部を密閉性の高い開き戸とすることにより、閉じているときの閉鎖空間5の気密(気圧)保持機能をより高めることができる。第2の出入口17の開き戸は、耐久性、不燃性を備えた材料が用いられている。
閉鎖空間5には、陽圧設備が備えられている。陽圧設備は、閉鎖空間内気圧を、室内空間内気圧及び建物外気圧よりも高くし、閉鎖空間5を陽圧状態にする。陽圧設備として、例えば任意の場所に設置できる床設置型の陽圧装置19が、第2室14に設置されている。また、第2室14における外壁3には、閉鎖空間5内の空気を建物1の外に排出するための通気口21が設けられている。
陽圧装置19は、細菌、ウイルス、粉塵等の除去に対応したエアフィルターと、循環ファンが内蔵されており、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続されている。エアフィルターは、例えばHEPAフィルター等の高性能フィルターを選択できる。また、第1室13及び第2室14に清浄な空気を供給するための給気経路と、第1室13内及び第2室14内の空気を排出する排気経路が設定されている。給気経路は、例えば陽圧装置19と、第1室13及び第2室14の天井に設けた給気口とが給気ダクトで接続された構成が挙げられる。排気経路は、例えば第1室13内の空気が第2室14における通気口21から排出されるように、排気ダクトが配設されている。なお、第2室14内の空気は、ダクト等を介さずに通気口21から排出される。通気ダクトから陽圧装置19に取り込まれた空気は、エアフィルターを通して浄化され、給気経路から第1室13及び第2室14にそれぞれ送り出される。
陽圧装置19は、外気を取り入れることにより、閉鎖空間5内への給気風量が閉鎖空間5外への排気風量より大きくなるように調整されている。陽圧装置19により、閉鎖空間5内へ清浄な空気を送り出し、閉鎖空間5内を陽圧状態に保つことができる。閉鎖空間5内は、第1室13と第2室14が共に陽圧状態に保たれる。また、閉鎖空間5内の空気は、通気口21から建物1の外に排出される。これにより、閉鎖空間5内の空気が建物1の外気と換気される。通気口21にはエアフィルターが備えられており、閉鎖空間5内の空気が汚染された場合でも、細菌やウイルス等が建物1の外へ拡散するのを抑制できる。
また、第1室13において、第1の内壁10にサーキュレータ27が設置されている。サーキュレータ27は、上げ窓23(外来対応窓)の開口部分に向かって風を送ることができるように設置位置と向きが設定されている。これにより、上げ窓23を介して閉鎖空間5内から建物1の外に向かう空気の流れをより強力にし、建物1の外からのウイルスや菌の流入防止を図っている。サーキュレータ27は、必要に応じて風量や風向きを調整できる。例えば、第2の出入口17を開放したときには、第2の出入口17を介して建物1の外へ風が送られるように風向きを変更できる構成にしても良い。
閉鎖空間内気圧と、室内空間内気圧及び建物外気圧との気圧差は、出入口の戸の開閉に支障が生じない範囲で設定される。なお、閉鎖空間5内の1時間当たりの換気回数が、一定回数以上になるよう(単位時間あたりの換気頻度が一定頻度以上となるよう)設定される。陽圧設備の構成は、外来医療用陽圧室を設ける場所に応じて適宜選択でき、清浄な空気を送り出し陽圧状態を保つことができる給排気システムを備えていれば良い。例えば、天井吊り型の陽圧装置を設置しても良い。また、エアフィルターを内蔵した給気ファンを天井又は天井付近の第1の内壁10に設け、排気経路を、給気ファンの反対側に位置するように床付近の外壁3に設けた構成としても良い。
また、陽圧装置19を第1室13に設置し、第1室13と第2室14への給気経路を設定しても良い。給気経路として、給気ダクトを配設せず、第2の内壁12に給気ファンを設けても良い。この構成により、第1室13内へ陽圧装置19から直接清浄な空気が送り出され、給気ファンによって第1室13内の空気が第2室14へ送られる。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設定されている。通路9は、上げ窓23(外来対応窓)を有する外壁3に沿って配置されている。上げ窓23は、通路9に面した位置において、外来対応用の窓(外来対応窓)として機能する。外来患者Vが乗車している車両30は、通路9を利用して、少しカーブして上げ窓23に寄ることができ、また少しカーブして建物1より離れていくことができる。これにより、医療従事者Wは、感染が疑われる外来患者Vへの対応をドライブスルー方式で行うことができる。よって、外来患者同士の接触の機会を減らすことができる。また、例えば天候が雨の場合に、雨に濡れずに建物1の外から上げ窓23にアクセスできる。
図1に示す閉鎖空間5は第2の内壁12で仕切られているが、図5に示すように、閉鎖空間5を第2の内壁12(図1参照)で仕切らず、1つの部屋からなる構成としても良い。閉鎖空間5は、外来対応用の受付室として使用される。また、給気ダクトを配設せず、陽圧装置19に閉鎖空間5内の空気を取り込み、エアフィルターを通して浄化し、閉鎖空間5内に送り出して循環させても良い。なお、陽圧装置19は、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続されており、陽圧装置19に取り込まれた閉鎖空間5外の空気は、エアフィルターを通して浄化され、閉鎖空間5内に送り出される。さらに、閉鎖空間5内の空気は、通気口21から排出されるため、陽圧装置19によって循環するだけでなく、建物1の外気と換気される。また、通気口21として差圧ダンパを設けても良い。差圧ダンパにより、例えば第2の出入口17を開くときに、通気口21からの排気風量が調整されるため、開き戸にかかる圧力が軽減される。
<外来医療用陽圧室4の製造(設置)工程>
次に、上記実施形態に係る外来医療用陽圧室4の製造(設置)方法について説明する。本実施形態に係る外来医療用陽圧室4の製造(設置)工程は、図1を参照として、建物1の内方空間である建物内空間2において、第1の内壁10によって閉鎖空間5と室内空間7とに区切られた区切り状態を実現させる区切りステップと、陽圧設備設置ステップを含んでいる。
区切りステップでは、建物内空間2において、上げ窓23(外来対応用の窓)を有する外壁3に対し、建物内空間2の側から外壁3における内法(うちのり)の面を第1の内壁10で覆う(建物内空間2において、上げ窓23(外来対応窓)を有する外壁3に対し、外来対応窓周囲の外壁3における建物内側の面を第1の内壁10で囲う)。第1の内壁10は、平面視においてコの字に配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられる。第1の内壁10によって、建物内空間2が内法(うちのり)の面側の空間である閉鎖空間5とその反対側の空間である室内空間7とに区切られる(建物内空間2は、外来対応窓周囲の外壁3と第1の内壁10とで囲まれた閉鎖空間5と、閉鎖空間周囲の空間である室内空間7と、に区切られる)。このようにして、建物内空間2に、天井、床、第1の内壁10及び外壁3に囲まれた閉鎖空間5が構成される。
閉鎖空間5内は、第2の内壁12によって、互いに隣接する第1室13と第2室14に仕切られる。第2の内壁12は、外壁3の内法(うちのり)の面(外壁3における建物内側の面)と交差する方向に沿って配置され、建物内空間2の床から天井まで設けられる。第2の内壁12には、第1室13と第2室14を出入り可能な第3の出入口18が設けられる(第1室13から第2室14へ、あるいは第2室14から第1室13へ、利用者の出入りを可能とする第3の出入口18が設けられる)。
上げ窓23(外来対応窓)は、複数の透光層を重ねた構成を有し、かつ区切り状態において、外壁3の面方向に沿ってスライド移動して開閉可能である。また、上げ窓23が閉じているときに、閉鎖空間5の気密(気圧)が保持される。図2、図3に示すように、上げ窓23の開口部分の上側と下側には、嵌め殺し窓24,25が設けられる。また、外壁3の外側の面には、受付台26が設けられる。上げ窓23、嵌め殺し窓24,25、受付台26の構成は、外来医療用陽圧室4の構成の説明において上述したとおりであるため、説明を省略する。
図1に示すように、第1室13における第1の内壁10は、区切り状態において、室内空間7と閉鎖空間5を出入り可能な第1の出入口15を有する(室内空間7から閉鎖空間5へ、あるいは閉鎖空間5から室内空間7へ、利用者の出入りを可能とする第1の出入口15を有する)。第1の出入口15は、開閉可能である引き戸で構成され、閉じているときに閉鎖空間5の気密(気圧)を保持する。また、第1室13における外壁3は、外来対応用の上げ窓23(外来対応窓)を有している。第1室13は、外来患者Vへの対応等を行う受付室として機能する。
第1室13における第1の内壁10は、区切り状態において閉鎖空間5と建物1の外を出入り可能な第2の出入口17を有する(閉鎖空間5から建物外へ、あるいは建物外から閉鎖空間5へ、利用者の出入りを可能とする第2の出入口17を有する)。第2の出入口17は、第1室13において、上げ窓23(外来対応窓)と隣接して設けられており、閉鎖空間5内側に戸が開く開き戸で構成されている。建物1の外とつながる開口部を密閉性の高い開き戸とすることにより、閉じているときの閉鎖空間5の気密(気圧)保持機能をより高めることができる。
第2室14は、第2の内壁12を境界として、第1室13の隣に設けられる。利用者は、第2室14へは、第3の出入口18を介して第1室13から出入りできる。第2室14は、必要に応じて外来患者Vを入室させて診察を行うことができる。第3の出入口18は、引き戸に代えて開き戸等を適宜選択できる。
第1の内壁10の少なくとも一部は、のぞき窓22を有する。具体的には、第1室13と第2室14において、外壁3の内法(うちのり)の面と対向する第1の内壁10に、のぞき窓22がそれぞれ設けられる。のぞき窓22の配置や構成は、外来医療用陽圧室4の構成の説明において上述したとおりであるため、説明を省略する。
閉鎖空間5を形成している外壁3は、閉鎖空間5内の空気が建物1の外に排出される通気口21を有する。通気口21は、建物1の外壁3における換気口や窓等、既存の開口部を利用しても良い。
陽圧設備設置ステップでは、閉鎖空間内気圧を建物外気圧及び室内空間内気圧よりも高くする陽圧設備を設置する。陽圧設備として、陽圧装置19が第2室14に設置される。陽圧装置19は、エアフィルターと循環ファンが内蔵された床設置型の装置である。なお、天井吊り型等、他の構成の陽圧設備を選択しても良い。
陽圧装置19は、閉鎖空間5外の空気が導入される通気ダクト(不図示)と接続される。また、陽圧装置19から第1室13及び第2室14に清浄な空気を供給するための給気経路と、第1室13内及び第2室14内の空気を排出する排気経路が設定される。具体的には、給気経路として、陽圧装置19と、第1室13及び第2室14の天井に設けた給気口とが給気ダクトで接続される。また排気経路として、第1室13内の空気が第2室14における通気口21から排出されるように、排気ダクトが配設される。第1室13及び第2室14に対するそれぞれの給気風量は、それぞれの排気風量より大きくなるように調整される。陽圧装置19は、任意の場所に設置できるため、既存の建物においても設置が容易である。
また、第1室13においては、第1の内壁10にサーキュレータ27が設置される。サーキュレータ27は、上げ窓23(外来対応窓)の開口部分に向かって風を送ることができるように設置位置と向きが設定される。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設けられる。通路9は、上げ窓23(外来対応窓)を有する外壁3に沿って配置される。すなわち、上げ窓23(外来対応窓)が通路9に面する位置関係となる。
<作用・効果>
上記実施形態に係る外来医療用陽圧室4の構成によれば、陽圧装置19(陽圧設備)により閉鎖空間5における第1室13と第2室14を陽圧状態にすることができる。利用者(医療従事者)は、第1室13内へは、室内空間7から第1の出入口15を介して入室できる。図6を参照として、利用者(医療従事者)は、車両に乗ったままの外来患者V又はその同伴者Yに対して、上げ窓23(外来対応窓)を介して対応できる。上げ窓23(外来対応窓)を開けると第1室13内から建物1の外へ空気が流れるため、閉鎖空間5内へのウイルス等の流入を抑制できる。また、図7を参照として、利用者(医療従事者)は、必要に応じて第2の出入口17及び第3の出入口18を通じて外来患者Vを第2室14内へ入室させることができる。上げ窓23(外来対応窓)、第2の出入口17及び第3の出入口18の開閉は、閉鎖空間5から室内空間7へ空気が流れないように、第1の出入口15を閉じた状態で行われる。
図1、図6を参照として、感染症が疑われる外来患者Vは、車両30で通路9に沿って上げ窓23(外来対応窓)にアクセスする。医療従事者Wは、上げ窓23(外来対応窓)を介して、車両30内に乗車している外来患者Vの症状聞き取りを行い、検査等の対応をする。外来患者Vは、検査結果が出るまでの間、駐車場に車両30を移動させて待機する。検査結果判明後、必要な薬の受け渡しや会計のため、再度車両30で通路9に沿って駐車場から上げ窓23(外来対応窓)にアクセスする。このようにして、感染症が疑われる外来患者Vの検査、受診、会計のすべてを、建物1の外壁3を隔てて完了することができる。また、医療従事者Wはこれらの対応を効率よく行うことができる。そのため、外来患者Vの待ち時間短縮につながる。
外来患者Vの症状の程度によっては、例えば肺の呼吸音を聞く等の診察が必要となるが、この場合は外来患者Vを車両30から降ろして、第2の出入口17から閉鎖空間5内へ入室させる。このとき、車両30が第2の出入口17の前に停車しているため、外来患者Vは短時間で診察を受けることができ、診察後は速やかに車両30に戻って待機できる。
実施形態に係る外来医療用陽圧室4は、第1の内壁10及び外壁3を境界とした閉鎖空間5から構成される。閉鎖空間内5は、陽圧装置19(陽圧設備)によって室内空間内気圧及び外気圧より気圧が高い陽圧状態とされ、第1の出入口15、又は上げ窓23(外来対応窓)を開けたときは、閉鎖空間5すなわち外来医療用陽圧室の室内から室外へ空気が流れる。また、通気口21からも閉鎖空間5内の空気が建物1の外に排出される。閉鎖空間5は室内空間7と隣接しており、医療従事者Wは第1の内壁10に設けられた第1の出入口15から、閉鎖空間5に直接出入りすることができる。一方外来患者Vは、閉鎖空間5に出入りすることなく、外壁3に設けられた上げ窓23(外来対応窓)を介して建物1の外から検査等を受けることができる。よって、医療従事者Wと感染症が疑われる外来患者Vとの接触を少なくして、医療従事者Wの感染のリスクを減らすことができる。
また、上げ窓23(外来対応窓)を開けたときに閉鎖空間5から建物1の外、すなわち外来患者V側へ空気が流れるため、建物1外からのウイルスや菌の流入を防ぐことができ、医療従事者Wは防護服を着用することなく外来患者Vに対応できる。さらに、防護服を着用するための前室を必ずしも設ける必要がなく、省スペース化を図ることができる。このようにして、医療従事者Wは、通常の医療サービスの提供を行いつつ、医療従事者Wが建物1の内側、外来患者Vが建物1の外側である位置関係を保ったまま、外来患者Vへの対応等を行うことができる。よって、感染症の検査にかかる手間や時間が削減され、感染症が疑われる外来患者Vの対応を効率よく行うことができる。
第1の出入口15は、引き戸により構成されている。これにより、室内空間7と閉鎖空間5との出入口の引き戸を開閉するときに、開く方向に対して気圧差による圧力の抵抗を受け易い開き戸の場合と比べて、小さな力で開閉できる。また、引き戸であれば、開閉中に第1の内壁10の平面に沿って移動するため、開き戸よりも開放される部分が狭くなり、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持し易い。
第1の内壁10の一部には、室内空間7の側から閉鎖空間5の側に視認可能な(室内空間7内に居る利用者が閉鎖空間5内を視認可能な)のぞき窓22が設けられている。これにより、医療従事者(利用者)は、室内空間7から閉鎖空間5の様子を確認できる。よって第1の出入口15を開けることなく、閉鎖空間5内の確認ができるため、第1の出入口15を開閉する回数が減り、閉鎖空間内気圧と室内空間内気圧の気圧差を維持しやすい。また、のぞき窓22は、上げ窓23(外来対応窓)を視認できる位置関係となるように、配置されている。これにより、医療従事者(利用者)は、外来患者Vが来た場合に室内空間7内から容易に確認できる。
閉鎖空間5を形成している外壁3には、第2の出入口17が設けられている。これにより、利用者は、建物1の外から閉鎖空間5内に、第2の出入口17を介して出入りできる。よって、必要に応じて感染症が疑われる外来患者Vを一般患者と接触させることなく閉鎖空間5に入室させて、診察等を行うことができる。
閉鎖空間5は、第2の内壁12で仕切られ、第1室13と第2室14が構成されている。第1室13は、医療従事者Wが室内空間7から第1の出入口15を介して直接出入りする部屋である。第1室13に入った医療従事者は、外壁3における上げ窓23(外来対応窓)を介して外来患者Vの受付等を行うことができる。第2室14は、隣接する第1室13から第3の出入口18を介して出入りできる部屋である。この構成により、第1室13を外来患者Vへの対応等を行う部屋として使用し、第2室14を外来患者Vの診察等を行う部屋として使用できる。また、例えば感染症が疑われる外来患者Vが徒歩で来院した場合には、一般患者の待合室と隔離された待機室として第2室14を使用できる。
建物1の外側には、車両30で通行可能な通路9が設定されており、上げ窓23(外来対応窓)が通路9に面している。これにより、外来患者Vは車両30に乗車したまま上げ窓23(外来対応窓)にアクセスできるため、外来患者Vはドライブスルー方式で検査等を受けることができる。また、外来患者Vが駐車場において車両30内で待機できるため、感染が疑われる患者の待合室等を別途設けなくても良い。さらに、外来患者Vが小さい子供、高齢者であっても、同伴者Yと共に車両30内で自由にストレスなく待ち時間を過ごすこともできる。
外壁3における上げ窓23(外来対応窓)、嵌め殺し窓24,25に複数層のガラスを用いることにより、外来対応用の窓の防火、防犯機能を高めることができる。
上記実施形態に係る外来医療用陽圧室4の製造(設置)工程により、閉鎖空間5は、建物内空間2を第1の内壁10で仕切ることで構成される。そのため、建物1の新設時だけでなく、既設の建物1の建物内空間2にも外来医療用陽圧室4を設置することができる。閉鎖空間5は、医療従事者Wが第1の内壁10に設けられた第1の出入口15を介して、室内空間7から直接出入りすることができる空間である。一方外来患者Vは、閉鎖空間5に出入りすることなく、外壁3に設けられた外来対応用の上げ窓23(外来対応窓)を介して検査等を受けることができる。よって、医療従事者Wと感染症が疑われる外来患者Vとの接触を少なくして、医療従事者Wの感染のリスクを減らすことができる外来医療用陽圧室を、建物1の内方において製造(設置)できる。
<変更例>
本発明に係る外来医療用陽圧室4とその製造(設置)方法は、上記実施形態において説明した外観、構成に限られず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除、構成の組み合わせにより、その他各種の形態で実施できるものである。
上記実施形態において、第1の内壁10にのぞき窓22を設けた構成を示したが、第1の内壁10の全体に、例えば透光性のあるガラス等を用いて室内空間7側から閉鎖空間5側を視認可能な構成としても良い。また、外来対応用の窓として上下方向にスライド移動する上げ窓23(外来対応窓)を設けた構成を示したが、これに限られず、例えば左右方向にスライド移動する引き窓を設けても良い。
上記実施形態において、陽圧設備として陽圧装置19を閉鎖空間5内に設置した例を示したが、これに限られず、建物1の構造、レイアウトに応じて他の構成からなる陽圧設備を選択できる。例えば、エアフィルターを内蔵した給気ファンを天井又は天井付近の第1の内壁10に設け、排気経路を、給気ファンの反対側に位置するように床付近の外壁3に設けた構成としても良い。
上記実施形態において、第1室13に第2の出入口17を設けた構成としたが、第2室14に第2の出入口17を設けても良い。なお、第3の出入口18を開けたときに第1室13から第2室14へ空気が流れるように陽圧設備を構成して、第1室13を前室として使用しても良い。
外来医療用陽圧室4を設ける場所は、外来対応用の窓を設けることができるように建物内空間2において設定されており、この範囲内で閉鎖空間5と室内空間7のレイアウトを適宜変更できる。また、閉鎖空間5内における第2の内壁12の配置も適宜変更できる。
1 建物
2 建物内空間
3 外壁
4 外来医療用陽圧室
5 閉鎖空間
7 室内空間
9 通路
10 第1の内壁
12 第2の内壁
13 第1室
14 第2室
15 第1の出入口
17 第2の出入口
18 第3の出入口
19 陽圧装置(陽圧設備)
21 通気口
22 のぞき窓
23 上げ窓(外来対応窓)
26 受付台
30 車両