JP2023069690A - 仮固定用、マスキング用又は成型用光硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】エネルギー線の照射によって硬化し、さらにその硬化物が吸水しにくく、かつ、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への高い溶解性を持つ、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物を提供する。【解決手段】本発明は、ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)及び光重合開始剤(C)を含む、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物であって、成分(A)は、O及びNから選ばれる1種以上の原子を含まない環状構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を含み、成分(A)中、OH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A2)の含有量が0重量%以上60重量%未満であり、2官能以上のオリゴマー及び2官能以上のモノマー(A3)の含有量が0重量%以上15重量%未満であることを特徴とする、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物に関する。【選択図】なし

Description

本発明は、仮固定用、マスキング用又は成型用光硬化性樹脂組成物に関する。
紫外線(UV)硬化後に、その硬化物が水や有機溶剤に溶解する組成物は、部材加工時の仮固定やマスキング剤、3Dプリンター印刷時の台座(サポート材)といった成型用途など、様々な分野への応用が期待される。特許文献1には、水に溶解する硬化物を与える、光硬化性樹脂組成物が開示されている。
特開2020-122120号公報
特許文献1に開示されたような光硬化性樹脂組成物の硬化物は、水を嫌う部材へ使用することが困難である。一方で、水に溶解しない場合であっても、吸水しやすい硬化物は、加工中に吸水して厚みや硬さが変化してしまうため、仮固定、マスキング又は成型の各用途への適用が困難である場合が多い。さらに吸水しやすい硬化物は、その多くが吸湿性も併せ持つため、一定期間の放置により、吸湿してサイズが変わってしまう恐れがあり、仮固定又は成型の用途での使用に懸念がある。このため、吸水しにくく、かつ、毒性の低いアセトンやメチルシクロヘキサン等の有機溶剤で溶解する組成物の開発が待たれている。
本発明は、エネルギー線の照射によって硬化し、さらにその硬化物が吸水しにくく、かつ、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への高い溶解性を持つ、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下に関する。
[1]ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)及び光重合開始剤(C)を含む、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物であって、
成分(A)は、O及びNから選ばれる1種以上の原子を含まない環状構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を含み、
成分(A)中、OH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A2)の含有量が0重量%以上60重量%未満であり、2官能以上のオリゴマー及び2官能以上のモノマー(A3)の含有量が0重量%以上15重量%未満であることを特徴とする、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物。
[2]成分(A)中、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A4)の含有量が0重量%以上60重量%以下である、[1]の光硬化性樹脂組成物。
[3]成分(A)中、成分(A1)の含有量が、40重量%以上である、[1]又は[2]の光硬化性樹脂組成物。
[4]成分(B)が、α-メチルスチレン構造を持つ化合物又はチオール基を持つ化合物である、[1]~[3]のいずれかの光硬化性樹脂組成物。
[5]光硬化性樹脂組成物中、成分(B)の含有量が0.5~10重量%である、[1]~[4]のいずれかの光硬化性樹脂組成物。
[6]さらに、ポリマー成分(D)を含有する、[1]~[5]のいずれかの光硬化性樹脂組成物。
[7]成分(D)が、水添ジエン系ポリマーである、[6]の光硬化性樹脂組成物。
本発明によれば、エネルギー線の照射によって硬化し、さらにその硬化物が吸水しにくく、かつ、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への高い溶解性を持つ、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物を提供できる。
[用語の定義]
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方の意味を有する。
「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の少なくとも一方の意味を有する。
「ラジカル重合反応性成分(A)」を「成分(A)」ともいう。「連鎖移動剤(B)」等についても同様である。
数値範囲に関して「~」は、その両端の値を含むことを意味する。また、「以下」は「同じ又は未満」を意味し、「以上」は「同じ又は超える」を意味する。即ち、「0.5重量%~10重量%」は、「0.5重量%以上10重量%以下」を意味し、「0.5重量%超10重量%以下」、「0.5重量%以上10重量%未満」、「0.5重量%超10重量%未満」の意味を包含する。
[仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物]
仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物(以下、単に「光硬化性樹脂組成物」ともいう)は、ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)及び光重合開始剤(C)を含み、成分(A)は、O及びNから選ばれる1種以上の原子を含まない環状構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を含み、成分(A)中、OH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A2)の含有量が0重量%以上60重量%未満であり、2官能以上のオリゴマー及び2官能以上のモノマー(A3)の含有量が0重量%以上15重量%未満である。
光硬化性樹脂組成物は、毒性の低いアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方で溶解する。よって、光硬化性樹脂組成物は、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方で溶解させるための組成物であり得る。ここで、光硬化性樹脂組成物は、アセトンに溶解するが、メチルシクロヘキサンに溶解しないものであってもよく、メチルシクロヘキサンに溶解するが、アセトンに溶解しないものであってもよく、又は、アセトン及びメチルシクロヘキサンの両方に溶解するものであってもよい。
<ラジカル重合反応性成分(A)>
ラジカル重合反応性成分(A)は、ラジカル重合反応性の官能基を有するものであれば特に限定されず、ラジカル重合反応性オリゴマー、ラジカル重合反応性モノマーが挙げられる。ラジカル重合反応性の官能基は、不飽和二重結合含有基であれば特に限定されないが、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)又は(メタ)アクリロイル基が好ましく、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。成分(A)は、前記成分(A1)のみからなってもよく、前記成分(A1)以外に、所定量のラジカル重合反応性オリゴマー及び/又はモノマーを含んでいてもよい。また、成分(A)は、ラジカル重合反応性モノマーのみからなってもよく、ラジカル重合反応性モノマー及びラジカル重合反応性オリゴマーの混合物であってもよい。
成分(A)において、ラジカル重合反応性オリゴマーの重量平均分子量は、1,500以上であることが好ましく、1,500~50,000であることが特に好ましい。重量平均分子量の測定方法としては、オリゴマーやポリマー等の分子量が比較的高い成分については、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)の測定結果を、標準ポリスチレンの検量線を用いて換算する手法が一般に知られている。また、モノマーは分子量分布を有さないため、構造式から求めることができる。
<<O及びNから選ばれる1種以上の原子を含まない環状構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)>>
成分(A1)は、O及びNから選ばれる1種以上の原子を含まない環状構造を持つラジカル重合反応性モノマーである。環状構造は、単環又は多環であってもよい。また、環状構造は、脂環構造であっても、芳香環構造であってもよい。1つの脂環構造を構成する原子の総数は、特に限定されないが、3~20であることが好ましい。1つの芳香環構造を構成する原子の総数は、特に限定されないが、6~20であることが好ましい。環状構造は、炭素原子のみからなることが好ましい。成分(A1)は、脂環式(メタ)アクリレートモノマー、芳香族(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
脂環式(メタ)アクリレートモノマーとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ノルボルネン(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフタレニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノールエチルオキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族(メタ)アクリレートモノマーとしては、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ナフタレン(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
<<OH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A2)>>
成分(A2)は、ラジカル重合反応性基及びOH基を持つ化合物である。成分(A2)が有するOH基の数は、1~3であることが好ましく、1であることが特に好ましい。成分(A2)が有するラジカル重合反応性基の数は、1~2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。成分(A2)としては、水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーとしては、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(例えば、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(例えば、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。
<<2官能以上のオリゴマー及び2官能以上のモノマー(A3)>>
2官能以上のオリゴマー及びモノマー(A3)とは、分子内にラジカル重合反応性基を2つ以上有するオリゴマー及びモノマーをいう。分子内にラジカル重合反応性基を2つ以上有するオリゴマーとしては、分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられ、(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、芳香族系、脂肪族系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリエステル系又はこれらの組合せのポリウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、実施例に記載のものの他に、EBECRYL4858(ダイセル・オルネクス社製)、UN-2301(根上化学社製)、EBECRYL4859(ダイセル・オルネクス社製)、EBECRYL4738(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の全てのエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマーである。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーは、エポキシ樹脂中の一部のエポキシ基が(メタ)アクリル酸と反応しているオリゴマー、すなわち、樹脂中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーを含んでいてもよい。ここで、エポキシ樹脂として、芳香族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂及びその他のエポキシ樹脂を挙げることができる。エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの市販品としては、EB3700(ダイセル・オルネクス製)、EB3708(ダイセル・オルネクス製)等が挙げられる。
(メタ)アクリレートオリゴマーが有する(メタ)アクリロイル基の数は、2~6であってもよく、2~4であってもよい。
分子内にラジカル重合反応性基を2つ以上有するモノマーは、公知の成分から適宜選択できる。
<<成分(A1)~成分(A3)以外のラジカル重合反応性成分>>
成分(A1)~成分(A3)以外のラジカル重合反応性成分としては、このような成分として、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A4)、並びに、その他のラジカル重合反応性成分(A5)が挙げられる。
<<O及び/又はNを含むヘテロ環構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A4)>>
成分(A4)は、ラジカル重合反応性基と、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を有する化合物である。成分(A4)が有するヘテロ環構造は、環構造を構成するヘテロ原子として、酸素原子及び窒素原子からなる群より選択される1種以上を有する。
ヘテロ環構造が酸素原子を含む場合、当該環ヘテロ構造が有する酸素原子の数は、1~3であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。ヘテロ環構造が窒素原子を含む場合、当該ヘテロ環構造が有する窒素原子の数は、1~2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。ヘテロ環構造が酸素原子及び窒素原子の両方を含む場合、当該ヘテロ環構造が有する酸素原子及び窒素原子の合計の数は、2~4であることが好ましく、2~3であることが特に好ましい。
ヘテロ環構造は、単環又は多環であってもよい。1つのヘテロ環構造を構成する原子の総数は、特に限定されないが、3~20であることが好ましい。ヘテロ環構造は、5員環又は6員環の単環のヘテロ環構造であることが好ましい。ヘテロ環構造の例として、モルホリン、フラン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリドン、マレイミド等が挙げられる。
成分(A4)が有するヘテロ環構造の総数は、1~3であることが好ましく、1~2であることが特に好ましい。ここで、ヘテロ環構造が多環構造である場合は、当該多環構造を1とする。また、成分(A4)が有するラジカル重合反応性基の数は、1~2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。成分(A4)は、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
成分(A4)の具体例としては、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレートカプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリン(メタ)アクリレート(4-(メタ)アクリロイルモルホリン等)、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
<<その他のラジカル重合反応性成分(A5)>>
成分(A5)は、成分(A1)~成分(A4)以外のラジカル重合反応性成分である。成分(A5)としては、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマー又はオリゴマーであることが好ましい。成分(A5)である(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルキル(メタ)アクリレートモノマー、(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルの(メタ)アクリレートモノマーとしては、アルコキシエチル(メタ)アクリレート、アルコキシプロピル(メタ)アクリレート、アルコキシブチル(メタ)アクリレート、それらアルキレングリコールの多量体(例えば、メトキシトリエチレンオキシエチル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。ここで、アルキル基、アルコキシ基及びアルキレン基の炭素原子数は、1~6であることが好ましい。
成分(A5)である(メタ)アクリレートオリゴマーは、分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーであれば特に限定されない。成分(A5)である(メタ)アクリレートオリゴマーについては、分子中の(メタ)アクリロイル基の数が1であることを除いて、成分(A3)で前記したとおりである。
成分(A5)は、それぞれ、1種又は2種以上の組合せであってもよい。例えば、成分(A5)は、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートモノマーと、1種又は2種以上の(メタ)アクリレートオリゴマーとの組合せでもよい。
<連鎖移動剤(B)>
連鎖移動剤(B)は、連鎖移動反応を起こす成分である。ここで、連鎖移動反応とは、ラジカル重合において、成長ラジカルが重合系中の他の化学種と反応し、成長の停止、ラジカルの移動及び成長の再開始を伴う反応をいう。成分(B)としては、α-メチルスチレン、α-メチルスチレンダイマー等のα-メチルスチレン構造を持つ化合物;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン類;及び、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のチオール基を持つ化合物からなる群から選ばれる一種以上が挙げられ、α-メチルスチレン構造を持つ化合物又はチオール基を持つ化合物が好ましい。
成分(B)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
<光重合開始剤(C)>
光重合開始剤(C)は、エネルギー線の照射によりラジカルを発生する化合物であれば特に限定されない。成分(C)は、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、2-メチル-1-[4-メチルチオ]フェニル]-2-モルホリノプロパンー1-オン、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノール、オリゴ2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノール、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、イソプロピルチオキサントン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]フェニルメタン、2,4-ジエチルチオキサントン、2ークロロチオキサントン、ベンゾフェノン、エチルアントラキノン、ベンゾフェノンアンモニウム塩、チオキサントンアンモニウム塩、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4ジベンゾイルベンゼン、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラキス(3,4,5-トリメトキシフェニル)1,2’-ビイミダゾール、2,2’ビス(o-クロロフェニル)4,5,4’,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール、4-ベンゾイルジフェニルエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウム、o-メチルベンゾイルベンゾエート、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエチルエステル、活性ターシャリアミン、カルバゾール・フェノン系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、ベンゾイル系光重合開始剤などが挙げられる。
成分(C)の市販品としては、DKSHジャパン製のKIP-150、IGM Resins B.V.製の、Omnirad184、Omnirad819、Omnirad127、Omnirad1173等のOmnirad(登録商標)シリーズ、Darocur1173等のDarocur(登録商標)シリーズ、Lucirin TPO等のLucirin(登録商標)シリーズ、ESACUR日本シイベルヘグナー社のESACURE 1001M等が挙げられる。成分(A)のラジカル反応において未硬化の要因となる酸素阻害を受けにくくするという観点、さらには成分(A)及びアルコール系洗浄剤への溶解性の観点からOmnirad1173やOmnirad184が好ましい。
成分(C)は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
<更なる成分>
光硬化性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、更なる成分を含むことができる。更なる成分として、ポリマー成分(D)、無機物を含むチキソ付与剤、シランカップリング剤、界面活性剤、スリップ剤、重合禁止剤、光増感剤、酸化防止剤、安定剤、着色剤、溶剤、充填剤等が挙げられる。
更なる成分は、それぞれ、1種の成分又は2種以上の組合せの成分であってもよい。
ポリマー成分(D)は、光硬化性樹脂組成物の粘度を調整する(例えば、光硬化性樹脂組成物の粘度を高める)成分である。成分(D)は、ラジカル重合反応性の官能基を有さず、光硬化性樹脂組成物に溶解する性質を有する高分子であれば特に限定されない。また、成分(D)を選択することにより組成物を溶解できる溶剤を選択できる。成分(D)としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、又はそれらの共重合体等のアクリル系ポリマー;ポリイソプレンン、水添ポリイソプレンン、ポリブタジエン、又は水添ポリブタジエン等の(水添)ジエン系ポリマー等が挙げられる。(水添)ジエン系ポリマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系モノマーの単独共重合体であってもよく、共役ジエン系モノマーと、スチレン等の芳香族ビニルモノマーとの共重合体であってもよい。成分(D)は、25℃で100,000mPa・s以上の高粘度液体又は固体であることが好ましく、固体であることが特に好ましい。また、成分(D)は、25℃で100,000mPa・s以上の高粘度液体又は固体であるような重量平均分子量を有することが好ましい。ここで、粘度は、E型粘度計を用い、大気圧下、25℃で、適切なコーンプレートと回転速度を選定して測定した値である。アセトンへの溶解性の観点から、ポリ(メタ)アクリル酸エステルの共重合体等のアクリル系ポリマーであることが好ましい。また、メチルシクロヘキサンへの溶解性の観点から、(水添)ジエン系ポリマーであることが好ましく、水添ジエン系ポリマーであることが特に好ましい。
無機物を含むチキソ付与剤は、少量の添加で増粘又はチキソ化効果の高いものであれば特に限定されない。チキソ付与剤に含まれる無機物としては、フュームドシリカ、炭酸カルシウム、カーボンブラック、カオリン、クレー、活性白土、ケイ砂、ケイ石、ケイ藻土、無水ケイ酸アルミニウム、含水ケイ酸マグネシウム、タルク、パーライト、ホワイトカーボン、マイカ微粉末、ベントナイト等のなどが挙げられる。また、チキソ付与剤は、無機物のみからなっていてもよく、脂肪酸及び/又は樹脂酸で表面処理された無機物であってもよい。
上記した成分以外の更なる成分は、光硬化性樹脂組成物で通常用いられている成分であれば特に制限されず、目的に応じて適宜選択できる。
(各成分の含有量)
光硬化性樹脂組成物において、各成分の含有量は以下である。
成分(A)中、O及びNから選ばれる1種以上の原子を含まない環状構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)の含有量は、エネルギー線硬化性の観点から、40重量%以上であることが好ましい。成分(A)中、成分(A1)の含有量は100重量%であってもよい。
成分(A)中、OH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A2)の含有量は、0重量%以上60重量%未満である。吸水性抑制の観点から、成分(A)中、成分(A2)の含有量は、0重量%以上50重量%以下であることが好ましく、0重量%以上40重量%以下であることが特に好ましい。また、エネルギー線硬化性の観点から、成分(A)中、成分(A2)の含有量は、10重量%以上40重量%以下であることが好ましい。
成分(A)中、2官能以上のオリゴマー及び2官能以上のモノマー(A3)の含有量は、0重量%以上15重量%未満である。成分(A)中、成分(A3)の含有量が15重量%以上である場合、エネルギー線硬化後のアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への溶解性が劣る傾向がある。
成分(A)中、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A4)の含有量は、0重量%以上60重量%以下であることが好ましい。吸水率がより低下した硬化物が得られる観点から、成分(A)中、成分(A4)の含有量は、0重量%以上50重量%以下であることがより好ましく、0重量%以上40重量%以下であることが特に好ましい。
成分(A5)の含有量は、成分(A)中の成分(A1)~成分(A4)を除いた残余となる含有量であり、エネルギー線硬化性の観点から、30重量%未満であることが好ましいる。
エネルギー線硬化後のアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への溶解性がより優れる観点から、成分(A)中、成分(A1)の含有量は、100重量%未満であることが好ましく、50~90重量%であることが特に好ましい。
成分(A)の含有量は、光硬化性樹脂組成物の主剤として、光硬化性樹脂組成物中、55重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることが特に好ましい。
成分(B)の含有量は、エネルギー線硬化性の観点、硬化物の吸水性、及びエネルギー線硬化後のアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への溶解性等の観点から、光硬化性樹脂組成物中、0.5~10重量%であることが好ましく、0.8~10重量%であることがより好ましく、1.0~7.0重量%であることが特に好ましい。
成分(C)の含有量は、エネルギー線硬化性の観点、及びエネルギー線硬化後のアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への溶解性等の観点から、光硬化性樹脂組成物中、0.1~10重量%であることが好ましく、0.5~8.0重量%であることがより好ましく、1.0~7.0重量%であることが特に好ましい。
成分(D)の含有量は、エネルギー線硬化後のアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への溶解性がより優れる観点から、成分(A)の100重量部に対して、50重量部未満であることが好ましく、0~40重量部であることがより好ましく、1~20重量部であることが特に好ましい。また、成分(D)の含有量が、成分(A)の100重量部に対して0重量部である光硬化性樹脂組成物は、アセトンに溶解する組成物であってもよい。
成分(D)以外の更なる成分の含有量は、光硬化性樹脂組成物中、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることが特に好ましく、5.0重量%以下であることが特に好ましい。この他に、光硬化性樹脂組成物内に、O又はN等の含有量が多くなる場合は、極性が高くなりアセトンに溶解しやすくなる傾向がある。一方、光硬化性樹脂組成物内に、炭化水素の構造が多くなる場合(即ち、O又はN等の含有量が少なくなる場合)、極性が低くなりメチルシクロヘキサンに溶解しやすくなる傾向がある。
(光硬化性樹脂組成物の製造方法)
光硬化性樹脂組成物は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び任意成分である更なる成分(成分(D)等)を混合する工程を含む製造方法により得られる。
(光硬化性樹脂組成物の硬化方法)
光硬化性樹脂組成物は、エネルギー線を照射することにより、硬化させることができる。エネルギー線等については、仮固定材において後述するとおりである。
[用途]
光硬化性樹脂組成物は、仮固定用の光硬化性樹脂組成物(仮固定材)、マスキング用の光硬化性樹脂組成物(マスキング材)、又は成型用の光硬化性樹脂組成物(成型材)として用いることができる。ここで、光硬化性樹脂組成物は、前記用途において、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方に溶解させる。よって、光硬化性樹脂組成物は、前記用途において、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方に溶解させるために用いられる。光硬化性樹脂組成物は、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ及び光ディスクの加工における仮固定に適用可能である。また、光硬化性樹脂組成物は、プリント配線板、電子部品、自動車部品等のマスキングに適用可能である。また、光硬化性樹脂組成物は、3Dプリンター印刷用の台座等の成型材に適用可能である。
(仮固定材)
仮固定とは、一方の部材をもう一方の部材に、光硬化性樹脂組成物の硬化物を介して、一時的に接着させることをいう。光硬化性樹脂組成物の硬化物は、後にアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方に溶解することで除去されて、これにより、一方の部材ともう一方の部材との光硬化性樹脂組成物の硬化物による接着性が失われ、仮固定の目的を達成する。
<仮固定方法>
仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた部材の仮固定方法は、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いて基材を貼り合わせる、又は2つの部材を重ねてその外周部に光硬化性樹脂組成物を塗布する工程と、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を硬化させて基材を接着して、仮固定する工程と、仮固定した基材を加工する工程と、加工した基材をアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方である洗浄剤と接触させて、硬化した仮固定用の光硬化性樹脂組成物を除去する工程とを含む。
また、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法としては、下記工程(A)又は(B)と、(C)~(E)とを含む方法が挙げられる。
(A)(a1)一方の基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程と、(a2)光硬化性樹脂組成物層の上にもう一方の基材を貼り合わせて、積層体を得る工程と、又は
(B)一方の基材の上にもう一方の基材を重ね合わせた後に、その外周周辺端部又は重ね合わせ部に光硬化性樹脂組成物を適用して、積層体を得る工程と、
(C)工程(A)又は工程(B)で得られる積層体にエネルギー線を照射して、接着体を得る工程と、
(D)接着体を加工して、粗加工体を得る工程と、
(E)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る方法を含む。
工程(A)は、工程(a1)及び工程(b1)である。工程(a1)は、一方の基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程である。基材の材質は、特に制限はないが、紫外線を透過できる材料からなる基材が好ましい。このような紫外線を透過できる材料としては、水晶、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
光硬化性樹脂組成物を基材に適用する方法は、特に限定されず、インクジェット印刷法(インクジェット3Dプリンターを用いたインクジェット印刷法)、刷毛塗り法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、スプレー法、ディップ法、バーコーター、ロールコーター、スピンコーター、ダイコーター、ディスペンサー、その他の公知の塗布手段が挙げられる。光硬化性樹脂組成物を適用して形成される硬化性樹脂組成物層の厚みは、特に限定されないが、10~500μmであることが好ましく、30~350μmであることが特に好ましい。
工程(a2)は、光硬化性樹脂組成物層の上にもう一方の基材を貼り合わせて、積層体を得る工程である。光硬化性樹脂組成物層を形成した基材の上に、硬化樹脂層に接するようにもう一方の基材を載置して、基材同士を貼り合わせることにより積層体が得られる。工程(a2)において、積層体を加圧処理する工程を含んでいてもよい。
工程(B)は、一方の基材の上にもう一方の基材を重ね合わせた後に、その外周周辺端部又は重ね合わせ部に光硬化性樹脂組成物を適用して、積層体を得る工程である。工程(B)では、一方の基材の上に、もう一方の基材を載置し、その外周部周辺端部又は重ね合わせ部において、一方の基材ともう一方の基材とが光硬化性樹脂組成物によって固定されるように、光硬化性組成物が適用される条件であれば任意である。光硬化性樹脂組成物の適用方法は、工程(a1)で前記した方法が挙げられる。
工程(C)は、工程(A)又は工程(B)で得られる積層体にエネルギー線を照射して、接着体を得る工程である。積層体にエネルギー線を照射することにより、一方の基材及びもう一方の基材の間の光硬化性樹脂組成物が硬化し、基材同士が接着する。
エネルギー線は、特に限定されず、可視光線、紫外線、X線、電子線等の活性エネルギー線を使用することができる。エネルギー線は、紫外線であるのが好ましい。紫外線の光源としては、紫外線(UV)が発せられる光源を使用することができる。紫外線の光源としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、ハロゲンランプ、パルスキセノンランプ、LED等が挙げられる。エネルギー線の積算光量は、例えば、365nmにおいて500~10,000mJ/cmであることが好ましく、1,000~8,000mJ/cmであることが特に好ましい。
工程(D)は、接着体を加工して、粗加工体を得る工程である。加工としては、例えば、仮固定された接着体を所望の形状に切断、研削、研磨、孔開けを施すこと、塗装すること等が挙げられ、得られる加工体に応じて適宜設定される。
工程(E)は、粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る方法である。光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去する方法は、粗加工体と洗浄剤とを接触させる方法が挙げられ、例えば、洗浄剤を光硬化性樹脂組成物の硬化物にスプレー塗布する方法、洗浄剤中に粗加工体を浸漬する方法等が挙げられる。粗加工体と洗浄剤とを接触させる方法により、粗加工体から光硬化性樹脂組成物の硬化物は、基材から剥離するか、溶解することにより除去される。
洗浄剤は、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方であり、光硬化性樹脂組成物の種類に応じて適宜選択することができる。
洗浄剤は、更なる成分として、界面活性剤等の有機溶剤系洗浄剤に通常添加される成分を含んでいてもよい。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、及び陽イオン性界面活性剤が挙げられる。界面活性剤は、1種又は2種以上の組合せであってもよい。
工程(E)における洗浄剤の温度は、特に限定されず、25~70℃であることが好ましい。また、工程(E)における粗加工体と洗浄剤との接触時間は、粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去できる条件であれば特に限定されず、当業者によって適宜設定できる。光硬化性樹脂組成物の硬化物の洗浄剤への溶解を加速させる観点から、超音波等により洗浄剤を振動させることが好ましい。工程(E)により、仮固定の目的は達成される。
仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法により得られる加工体としては、水晶振動子、ガラスレンズ、プラスチックレンズ及び光ディスクが挙げられる。
(マスキング材)
マスキングとは、基材等を光硬化性樹脂組成物の硬化物で一時的に保護することにより、当該基材の傷つき、汚れの付着、変質等を防止すること、又は成膜工程での配線上の成膜を防止すること等をいう。光硬化性樹脂組成物の硬化物は、後に除去されて、光硬化性樹脂組成物の硬化物によるマスキングの目的を達成する。光硬化性樹脂組成物は、被マスキング用の基材等(例えば、プリント配線板、電子部品)を一時的にマスキングするために用いることができる。
<マスキング方法>
基材のマスキング方法としては、例えば、基材の表面の一部又は全部を、光硬化性樹脂組成物の硬化物で一時的に覆う方法が挙げられる。基材のマスキング方法によって、基材が取り扱われる場合や複数の基材が積み重ねられる場合などに、基材間に硬化膜が介在することで、基材が直接接触しなくなり、基材にキズ等の破損が生じること、異物が付着すること等を、抑制できる。また、自動車部品等を塗装する際、塗装されない領域をマスキング材の硬化膜で一時的に覆うことによって、塗装されない領域への塗料の飛び散りを抑制することができる。
また、マスキング用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法としては、下記工程(F)~(I)を含む方法が挙げられる。
(F)基材に、光硬化性樹脂組成物を適用して、光硬化性樹脂組成物層を形成する工程、
(G)光硬化性樹脂組成物層にエネルギー線を照射して、光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を得る工程、
(H)光硬化性樹脂組成物の硬化物でマスキングされた基材を加工して、粗加工体を得る工程、及び
(I)粗加工体から、光硬化性樹脂組成物の硬化物を除去して、加工体を得る工程。
基材への光硬化性樹脂組成物の塗布方法、光硬化性樹脂組成物の硬化方法、基材の加工方法、光硬化性樹脂組成物の硬化物の除去方法としては、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法において前記した方法が挙げられる。
マスキング用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法により得られる加工体としては、プリント配線板、ディスプレイ等の電子部品、自動車部品等が挙げられる。
(成型材)
光硬化性樹脂組成物は、3Dプリンター印刷用の台座等の成型材(サポート材)として用いることができる。3Dプリンター印刷法を用いた成形品の製造方法としては、3Dプリンターのインクジェットノズルから吐出した3Dプリンター用インクを硬化させて、積層して光造形する方法が挙げられる。ここで、3Dプリンター用インクは、UV等の光硬化により成型体を構成するモデル材と、当該モデル材を立体的に積み上げる際の支持材として使用されるサポート材を含む。成型材の上にモデル材を積層することで、オーバーハング構造、中空構造等の構造を有する成形品を製造することが可能となる。
成型用の光硬化性樹脂組成物を用いた、成形品の製造方法としては、下記工程(J)~(L)を含む方法が挙げられる。ここで、工程(J)及び工程(K)は、成形品の形状に応じて、順不同で行うことができ、同時に行うこともできる。
(J)成型材を形成する工程、
(K)モデル材を形成する工程、
(L)成型材を除去して、成形品を得る工程。
成型材を形成する工程では、成型用の光硬化性樹脂組成物を3Dプリンター(インクジェット3Dプリンター)のノズルから噴射、印刷等にて造形した後、光硬化させることにより、成型材を形成する。光硬化性樹脂組成物の硬化方法としては、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法において前記した方法が挙げられる。
モデル材を形成する工程では、モデル材用組成物を3Dプリンターを用いて造形した後、光硬化させて、成形品を構成するモデル材を形成する。モデル材用組成物は、公知の成分から適宜設定することができるが、但し、成型材を溶解する溶剤では溶解しない組成物である。モデル材の硬化方法は、公知の光硬化条件から適宜設定することができる。
成型材の除去工程では、仮固定用の光硬化性樹脂組成物を用いた加工体の製造方法において前記した光硬化性樹脂組成物の硬化物の除去方法が挙げられる。ここで、成型材の除去工程で用いられる洗浄剤の種類は、アセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方であり、成形用の光硬化性樹脂組成物の種類に応じて、適宜選択することができる。
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。表における値は、特に断らない限り重量部である。
(使用成分)
<成分(A):ラジカル重合反応性成分>
成分(A1):IBOA:イソボルニルアクリレート(日本触媒製)
成分(A1):FA-513AS:ジシクロペンタニルアクリレート(昭和電工マテリアル製)
成分(A2):4HBA:ヒドロキシブチルアクリレード(大阪有機化学製)
成分(A3):UN-7700:2官能ウレタンアクリレート(根上工業製)
成分(A4):THF-A:テトラヒドロフルフリルアクリレート(昭和電工マテリアル製)
成分(A5):L-A:ラウリルアクリレート(共栄社化学製)
<成分(B):連鎖移動剤>
カレンズMT PE1:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(昭和電工製)
カレンズMT BD1:1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン(昭和電工製)
MSD-100:α-メチルスチレンダイマー(三井化学製)
<成分(C):光重合開始剤>
オムニラッド1173:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(IGM Resins B.V.製)
<成分(D):ポリマー成分>
LA1892:アクリルポリマー(クラレ製)(25℃で固体)
SEP2002:スチレン水添イソプレン共重合ポリマー(クラレ製)(25℃で固体)
〔評価条件〕
(1)UV硬化性(紫外線硬化性)
20×5×1mmとなるよう光硬化性樹脂組成物を型に流し込んでPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム(パナック社製、品名ルミラー100T60、厚さ100μm)で貼り合わせ、さらにスライドガラスで挟み込んだ後、メタルハライドランプ(アイグラフィックス社製ECS-301)にて波長365nmの光を3000mJ/cm照射して光硬化性樹脂組成物を硬化させた。PETフィルムを剥がしてから、光硬化性樹脂組成物が指触にて硬化しているかどうかを確認した。
○:硬化している(手に液(光硬化性樹脂組成物)がつかない)
△:硬化しているが粘着性が強い(手に液がつかない)
×:硬化していない(手に液がつく)
(2)吸水率
上記の「(1)UV硬化性」にて、UV硬化性が「○」及び「△」であった試験片の重量を測定後、1Lビーカーに入れて水を100g程度注いだ。そのビーカーを24時間、室温(23℃)で静置した。水から取り出してよくふき取った後、再度重量を測定した。下記の式(1)より水への浸漬前後での試験片の重量変化から、吸水率を計算した。吸水率が3.0%未満である場合は特に良好であり、3.0%以上5.0%未満である場合は良好であり、5.0%以上である場合は不良であるとした。
吸水率(%)=(水浸漬後の試験片の重量-水浸漬前の試験片の重量)/水浸漬前の試験片の重量×100・・・式(1)
(3)溶剤溶解性
上記の「(1)UV硬化性」にて、UV硬化性が「○」及び「△」であった試験片を1Lビーカーに入れ、アセトンを100g程度注いだ。そのビーカーを超音波洗浄器(エスエヌディー製、US-20PS)に入れて最も弱いレベルの超音波を5分間かけた。その後、試験片を取り出し、目視で光硬化性樹脂組成物の硬化物が残っているかどうかを確認した。アセトンで溶解しないものは、次にメチルシクロヘキサン100gで上記と同様の試験を行なった。
○1:アセトンでの試験にて光硬化性樹脂組成物が残っていない
〇2:メチルシクロヘキサンでの試験にて光硬化性樹脂組成物が残っていない
×:アセトン及びメチルシクロヘキサンでの試験にて光硬化性樹脂組成物が残っている
(4)密着性
スライドガラス基板上に50μm厚となるようにスペーサーを置いて光硬化性樹脂組成物を0.05g程度塗布し、上からPETフィルムを貼った。メタルハライドランプ(アイグラフィックス製、M06-L31)にて3000mJ/cmのUVを照射した後、PETフィルムを剥がしてから24時間放置してから目視で観察し、スライドガラス基板から剥がれていないかどうかを確認した。
○:剥がれなし
×:剥がれあり
〔光硬化性樹脂組成物の製造〕
表に記載の配合比に従い、成分(A)~成分(C)及びその他の成分をかくはん機付きフラスコで均一になるまで30分~1時間攪拌混合した。このうち、実施例18及び19に関しては成分(A)、成分(C)及び成分(D)を80℃で加熱しながら撹拌して、固体成分を溶解させた後、成分(B)を添加することにより、実施例及び比較例の液状の光硬化性樹脂組成物を得た。
結果を以下の表に示す。各成分の配合量の値は全て重量部である。また、吸水率の単位は%である。
Figure 2023069690000001
Figure 2023069690000002
Figure 2023069690000003
表1及び表2から、実施例の光硬化性樹脂組成物は、UV硬化性に優れており、密着性に優れていた。実施例の光硬化性樹脂組成物の硬化物は、吸水率が低かった。また、実施例の光硬化性樹脂組成物は、UV硬化後のアセトン及びメチルシクロヘキサンの少なくとも一方への溶解性を有していた。よって、光硬化性樹脂組成物は、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物として用いることができる。
実施例2、6~8と実施例9との結果より、成分(A)が成分(A1)及び成分(A2)を含む場合、成分(A)中、成分(A2)の含有量が10~40重量%である場合に、UV硬化性がより優れており、また、成分(A2)の含有量が少なくなる場合に、吸水率がより低くなった。
実施例12と実施例6等との比較により、成分(A)中、成分(A5)の含有量が30重量%未満である場合に、UV硬化性がより優れていた。
実施例13~16の結果より、成分(A4)の含有量が少なくなる場合に、吸水率がより低くなった。
実施例6、10及び11の結果より、成分(A3)の含有量が少なくなる場合に、吸水率がより低くなった。
実施例18と実施例19との比較により、ポリマー成分がアクリル系ポリマーである場合に、アセトンに溶解し、また、ポリマー成分が水添ジエン系ポリマーである場合に、アセトンには溶解せずメチルシクロヘキサンに溶解した。
一方、表3において、比較例1の組成物は、成分(B)を含まないため、比較例1の光硬化性樹脂組成物の硬化物は、アセトン及びメチルシクロヘキサンへの溶解性が劣っていた。比較例2の組成物は、成分(A1)を含まないため、UV硬化性が劣っていた。比較例3の組成物は、成分(A)中の2官能以上のオリゴマー及びモノマーの合計の含有量が20重量%であるため、比較例3の光硬化性樹脂組成物の硬化物は、アセトン及びメチルシクロヘキサンへの溶解性が劣っていた。

Claims (7)

  1. ラジカル重合反応性成分(A)と、連鎖移動剤(B)及び光重合開始剤(C)を含む、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物であって、
    成分(A)は、O及びNから選ばれる1種以上の原子を含まない環状構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A1)を含み、
    成分(A)中、OH基を持つラジカル重合反応性モノマー(A2)の含有量が0重量%以上60重量%未満であり、2官能以上のオリゴマー及び2官能以上のモノマー(A3)の含有量が0重量%以上15重量%未満であることを特徴とする、仮固定用、マスキング用又は成型用の光硬化性樹脂組成物。
  2. 成分(A)中、O及び/又はNを含むヘテロ環構造を持つラジカル重合反応性モノマー(A4)の含有量が0重量%以上60重量%以下である、請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物。
  3. 成分(A)中、成分(A1)の含有量が、40重量%以上である、請求項1又は2に記載の光硬化性樹脂組成物。
  4. 成分(B)が、α-メチルスチレン構造を持つ化合物又はチオール基を持つ化合物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
  5. 光硬化性樹脂組成物中、成分(B)の含有量が0.5~10重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
  6. さらに、ポリマー成分(D)を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の光硬化性樹脂組成物。
  7. 成分(D)が、水添ジエン系ポリマーである、請求項6に記載の光硬化性樹脂組成物。
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