JP2023067793A - 新規ラテラルフローアッセイ - Google Patents

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Abstract

【課題】新規なラテラルフローアッセイの提供。【解決手段】標識体に固定された抗体を用いて試料中の抗原を検出するラテラルフローアッセイであって、標識体が酸化鉄(III)粒子である、ラテラルフローアッセイ。【選択図】なし

Description

本発明は、新規ラテラルフローアッセイに関する。
従来から、タンパク質、特に抗体及びその分子認識部位を含む断片を利用したイムノアッセイが医療診断領域で活用されてきた。例えば、鼻ぬぐい液、血液、尿等の臨床試料中に存在する特定の疾病に関与する抗原タンパク質の検出、特定の病原微生物やウイルス及び化学物質を定性的又は定量的に検出する臨床検査が知られている。イムノアッセイの中でもラテラルフローアッセイは、抗原抗体反応によりメンブレン上で生じる発色を目視することで抗原の存在を可視化できるため特殊な検出機器が不要であり、かつ簡便な操作で標的の検出が可能であることから、医療診断領域のみならず、臨床、獣医学、農学、食品産業、生体防御や衛生環境等の幅広い分野で活用されている。
ラテラルフローアッセイは、臨床検査法として感度及び再現性ともに非常に優れた方法であるが、特に医療診断領域以外の分野(農学、食品産業、衛生環境調査等)ではランニングコストの面で課題がある。食物アレルゲン検査用ラテラルフローアッセイや住環境調査用ラテラルフローアッセイ等の検出デバイスが非医療診断用途として市販されているものの、そのほとんどが1試験あたりの費用が1,000円を超える価格帯で販売されている。例えば、食物アレルゲンや衛生環境調査等については本来消費者がそのようなデバイスを用いて必要なときに適宜行うべきであるが、デバイスが高価格であるために消費者の利用に制限が生じている。これはラテラルフローアッセイが基本的にディスポーザブル形態であり、その検出機能を担う高価な検出用担体や検出用タンパク質を再利用できないことに一因がある。特にラテラルフローアッセイ用の検出用担体については、金ナノ粒子が頻用されているが(例えば、非特許文献1)、金は希少金属であり、かつ世界の金市場の相場の影響を受け高価かつ価格不安定性があることが課題である。またラテックスナノ粒子や着色シリカナノ粒子、着色セルロースナノ粒子等も用いられているが、いずれも高度な技術を用いて製造されるナノ粒子であるために金ナノ粒子と同程度の価格帯で販売されており、そのような材料を用いても担体が高価であるという課題を解決するに至っていない。
一方、酸化鉄(II,III)(Fe)ナノ粒子を用いた磁性検出型ラテラルフローアッセイが利用されているが、やはりナノ粒子が高価であることに加え、磁性を検出することに主眼が置かれているため専用の検出装置の利用が前提であることが、一般消費者が利用する上での課題となっている。また、酸化鉄(II,III)ナノ粒子を利用したラテラルフローアッセイについては、目視での確認も可能とされているものの(非特許文献2)、その視認性は不十分である。
Tanaka, R. et al. A novel enhancement assay for immunochromatographic test strips using gold nanoparticles. Anal Bioanal Chem 385, 1414-1420, 2006 Connolly, R. & O’ Kennedy, R. Magnetic lateral flow immunoassay test strip development -Considerations for proof of concept evaluation. Methods 116, 132-140, 2017
本発明は、従来法と比較して格段に低コストで実施可能な新規ラテラルフローアッセイを提供することに関する。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、ラテラルフローアッセイの検出用抗体を固定する担体、すなわち検出用抗体の標識体として種々の物質について検討したところ、安価に入手が可能であり、金ナノ粒子に類した赤色系統の天然色を有し、化学的に安定、かつ水に不溶な酸化物であり、さらに顔料としても用いられている安全な化合物である酸化鉄(III)(Fe)粒子が標識体として適していることを見出した。また、酸化鉄(III)粒子に免疫グロブリンG(IgG)を固定した場合、及び酸化鉄(III)粒子に微生物培養による安価生産が期待される重鎖抗体由来の重鎖可変ドメイン抗体を固定した場合の双方で、酸化鉄(III)粒子による発色を目視確認するラテラルフローアッセイを構築できることを見出した。さらに驚くべきことに、酸化鉄(III)粒子を用いるラテラルフローアッセイでは、酸化鉄(II,III)粒子を用いる場合と比較して圧倒的に視認性に優れていることも見出した。
すなわち、本発明は、以下の1)及び2)に係るものである。
1)標識体に固定された抗体を用いて試料中の抗原を検出するラテラルフローアッセイであって、標識体が酸化鉄(III)粒子である、ラテラルフローアッセイ。
2)酸化鉄(III)粒子に固定された抗体を含む、ラテラルフローアッセイ用試薬。
本発明によれば、従来の金ナノ粒子を標識体として用いるラテラルフローアッセイと同等の検出感度を有し、格段に低コストでのラテラルフローアッセイが可能となる。よって、ラテラルフローアッセイ型デバイスのコストダウンが見込まれ、医療診断領域及び非医療領域を問わず幅広い分野においてラテラルフローアッセイ型デバイスの活用が促進されることが期待される。
ラテラルフローアッセイ用テストストリップの一般的構造。 酸化鉄(III)粒子と酸化鉄(II,III)粒子の検出ライン視認性の比較。
本明細書において、「ラテラルフローアッセイ」とは、抗原に特異的に結合する抗体であって標識体に固定された標識抗体と、抗原に特異的に結合する抗体であってメンブレンに固定された捕捉抗体とを用いて、試料に含まれる抗原の存在を視覚的に検出する方法のうち、試料をメンブレンと水平方向に展開させる方法をいう。ここで、「標識体」とは、抗体を担持し、且つ視覚的に検知し得るマーカーとして機能する物質を意味する。ラテラルフローアッセイでは、具体的には、標識抗体と試料中の抗原とが複合体を形成し、この複合体をメンブレンに固定された捕捉抗体が捕捉することで複合体が集積して発色するため、試料中の抗原の存在を検出できる。本明細書において、抗体を担体やメンブレンに担持させることあるいは担持させた状態を「固定化」、「固定」と表現する。
本明細書において、目的となる「抗原」としては、特に制限されず、例えば、アレルゲン、バイオマーカー、ウイルス、細菌、真菌、原生動物等に由来する抗原が挙げられる。尚、本明細書において、「検出」という用語は、「測定」とも言い換えることができ、「抗原の検出」とは、抗原の存在又は不存在の証明、及び抗原の定量を含めて最も広義に解釈する必要があり、いかなる意味においても限定的に解釈されない。
アレルゲンは、吸入、刺入、摂取又は接触により外部から生体に入り、過敏反応やアレルギー反応を惹起する物質を意味する。アレルゲンとしては、イネ科植物花粉(アシ、オオアワガエリ、オオスズメノテッポウ、カモガヤ、ギョウギシバ、小麦、コヌカグサ、スズメノヒエ、セイバンモロコシ、ナガハグサ、ハルガヤ、ヒロハウシノケグサ、ホソムギ等);雑草花粉(アキノキリンソウ、イラクサ、オオブタクサ、カナムグラ、シロザタンポポ、ニガヨモギ、ヒメスイバ、ブタクサ、ブタクサモドキ、フランスギク、ヘラオオバコ、ヨモギ等);樹木花粉(アカシア、オリ一ブ、カエデ、クルミ、クワ、コナラ、シラカンバ、スギニレ、ハンノキ、スギ、ヒノキ、ビャクシン、ブナ、マツ、ヤナギ等);真菌又は細菌類(アスペルギルス、アルテルナリア、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンA、黄色ブドウ球菌エンテロトキシンB、カンジダ、クラドスポリウム、トリコフィトン、ピティロスポリウム、ペニシリウム、ヘルミントスポリウム、マラセチア、ムコール等);動物表皮(アヒル羽毛、猫皮屑、犬皮屑、牛皮屑、馬皮屑、家兎上皮、ハムスター上皮、モルモット上皮、羊上皮、豚上皮、ヤギ上皮、ニワトリ羽毛、ガチョウ羽毛、セキセイインコ羽毛、セキセイインコのふん、マウス、ラット等);昆虫(アシナガバチ、ガ、ゴキブリ、スズメバチ、ミツバチ、ヤブカ、ユスリカ(成虫)等);寄生虫(アニサキス、回虫等);ダニ(アシブトコナダニ、ケナガコナダニ、コナヒョウダニ、サヤアシニクダニ、ヤケヒョウダニ等);食物(卵、乳、小麦、そば、落花生、えび、かに、アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン等);ヒトインシュリン等に由来するアレルゲンが挙げられる。
バイオマーカーは、血液、だ液、汗などの体液、尿、糞便などに含まれるタンパク質、核酸などの生体内の物質で、病状の変化や治療の効果の指標となり、疾患の診断や予後の予測などに用いられるものをいう。バイオマーカーとしてはCK-MB、H-FABP、BNP、NT-proBNP、トポロニン、ミオグロビン、アルブミン、セルロプラスミン、カルビンディン、クラステリン、シスタチンC、KIM-1、NGAL、Osteopontin、TFF3、TIMP-1、VEGF-A、L-FABP、絨毛性ゴナドトロピン、インターロイキン、アミラーゼ、NMP22、CEA、PSA、CYFRA21-1、SLX、CA125、SCC、NSE、ProGRP、CA19-9、CA19-9、AFP、PIVKA-II、AFP-L3、Span-1、DUPAN-2、CA50、BTA、CA15-3等が挙げられる。
ウイルスは、核酸の種類(RNA、DNA)及びエンベロープの有無を問わず、すべての種類のウイルスであり得る。例えば、核酸としてRNAを有するインフルエンザウイルス;コロナウイルス;SARSコロナウイルス;SARSコロナウイルス-2;RSウイルス;ムンプスウイルス;ラッサウイルス;デングウイルス;風疹ウイルス;ヒト免疫不全ウイルス、ノロウイルス;ポリオウイルス;エコーウイルス;A型肝炎ウイルス;E型肝炎ウイルス;ライノウイルス;アストロウイルス;ロタウイルス;コクサッキーウイルス;エンテロウイルス;サポウイルス、核酸としてDNAを有するヒトヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;B型肝炎ウイルス、アデノウイルス;B19ウイルス;パポバウイルス;ヒトパピローマウイルス等が挙げられる。細菌としては、百日咳菌、ジフテリア菌、大腸菌、インフルエンザ菌、ヘリコバクター、髄膜炎菌、緑膿菌、肺炎球菌、A群連鎖球菌、B群連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、破傷風菌、レジオネラ菌、結核菌、マイコプラズマ、腸炎ビブリオ、サルモネラ属菌、病原大腸菌、カンピロバクター、ウエルシュ菌、赤痢菌、セレウス菌、ボツリヌス菌、ミュータンス連鎖球菌等が挙げられる。真菌としては、アスペルギルス属真菌(例えばAspergillus fumigatus、Aspergillus flavus、Aspergillus terreus、Aspergillus nidulans、Aspergillus niger、Aspergillus ustus等)、ブラストミセス属真菌(例えば、Blastomyces dermatitidis等)、カンジダ属真菌(例えばCandida albicans等)、コクシジオイデス属真菌(例えばCoccidioides immitis等)、クリプトコッカス属真菌(例えばCryptococcus neoformans、Cryptococcus gattii等)、ヒストプラズマ属真菌(例えばHistoplasma capsulatum等)、パラコクシジオイデス属真菌(例えばParacoccidioides brasiliensis等)、スポロトリクス属真菌(例えばSporothrix schenckii等)等が挙げられる。原生動物としては、マラリア原虫、リーシュマニア、クリプトスポリジウム、ガンビアトリパノソーマ、ローデシアトリパノソーマ、クルーズトリパノソーマ、トリコモナス、トキソプラズマ、バベシア、赤痢アメーバ、ジアルジア等が挙げられる。
本発明のラテラルフローアッセイに供される試料としては、抗原を含有しているか、抗原を含有している可能性のある試料が挙げられる。斯かる試料としては、気管スワブ、鼻腔拭い液、口腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔洗浄液、鼻腔吸引液、鼻汁鼻かみ液、唾液、痰、涙、血液、血清、尿、糞便、組織、細胞、組織又は細胞の破砕物等の生体試料の他、食品原材料、加工食品、環境試料、硬質又は軟質表面から採取された試料等の何れでもよい。試料は、そのまま又は必要に応じて、試料の粉砕、抗原の抽出、抗原を含む溶液の回収の後にアッセイに供してもよく、また目的の抗原を適宜、濃縮、あるいは水もしくは緩衝液で希釈してもよい。好ましくは、試料は液体試料である。
本発明の方法は、標識体に固定された抗体を用いて試料中の抗原を検出するラテラルフローアッセイであって、標識体が酸化鉄(III)粒子である、ラテラルフローアッセイである。
酸化鉄(III)は、化学式Feで表される赤褐色固体である(CAS登録番号:1309-37-1)。酸化鉄(III)は、水に不溶で化学的に安定な化合物であり、顔料としての使用実績がある等安全性が高い。また、安価で大量に入手可能である。
酸化鉄(III)粒子の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、針状、紡錘状であり得る。
また、酸化鉄(III)粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、10nm以上が好ましく、50nm以上がより好ましく、1000nm以下が好ましく、500nm以下がより好ましい。酸化鉄(III)粒子の平均粒子径の具体的な範囲としては、10~1000nmが好ましく、50~500nmがより好ましい。尚、酸化鉄(III)粒子の平均粒子径は、レーザー回折/散乱法により測定することができる。
酸化鉄(III)粒子としては、例えば、酸化第二鉄(粒子径:300nm、株式会社高純度化学研究所)、Iron(III) oxide(粒子径:<5μm、シグマアルドリッチ)等が市販されており、これらを用いることができる。
酸化鉄(III)粒子に固定される抗体は、目的の抗原と特異的に結合する抗体であればよく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。また、抗体のフラグメント、例えば、F(ab’)、F(ab’)、一本鎖Fv(scFv)、VH及びVL中のシステイン残基に置換されたアミノ酸残基がジスルフィド結合を介して結合しているジスルフィド結合Fv(dsFv)若しくはこれらの重合体、又はscFvが二量体化した二量体化V領域(Diabody)であってもよい。さらに、目的の抗原と特異的に結合する限りにおいて、抗体の一部を含むペプチド、すなわち抗体を構成するアミノ酸配列の一部を備えるペプチドも抗体のフラグメントに含まれる。抗体のイムノグロブリンクラスは特に限定されるものではなく、IgG、IgM、IgA、IgE、IgD、IgYの何れのイムノグロブリンクラスであってもよいが、好ましくはIgGである。また、抗体は、非ヒト動物の抗体、ヒト型キメラ抗体、ヒト化抗体及びヒト抗体の何れであってもよい。非ヒト動物の抗体としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット、ウサギ、ヤギ、ラクダ、ラマ、アルパカ等の抗体を挙げることができる。
酸化鉄(III)粒子に固定される抗体は、市販のポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用することができる。あるいは、公知の手段を用いて作製されたポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を使用することもできる。哺乳動物由来のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマから産生されるもの、及び抗体遺伝子又は抗体フラグメント遺伝子を設計し周知の遺伝子工学的手法を用いて生産されるものが包含される。
例えば、抗体は、H鎖可変領域をコードするDNAと、L鎖可変領域をコードするDNAを、それぞれ適当なベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体ベクターを造成し、それを宿主細胞に導入した形質転換体からH鎖可変領域及びL鎖可変領域を製造し、これらを連結可能なペプチドで連結させる、或いはH鎖可変領域をコードするDNAとL鎖可変領域をコードするDNAを、公知のリンカーをコードするDNAで繋いで適当なベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体ベクターを造成し、それを宿主細胞内で発現させる、等により抗原結合能を持った一本鎖の組換え抗体タンパク質(scFv)を生産することが挙げられる(MacCfferty, J. et al., Nature, 348, 552-554,1990、Tim Clackson et al, Nature, 352, 642-628, 1991等参照)。また、さらに、可変領域をコードするDNAと定常領域をコードするDNAとを結合させて発現させたものを生産することであってもよい。この場合、定常領域は、可変領域の由来する抗体と同一のものであっても、あるいは異なる抗体に由来するものであってもよい。
抗体産生ハイブリドーマは、基本的には公知技術を使用し、以下のようにして作製できる。例えば、抗原ペプチドを、必要に応じて、適当なキャリアータンパク質、例えばキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)やウシ血清アルブミン等と結合することによって、より免疫原性を高め、非ヒト哺乳動物に免疫することにより作製することができる。尚、感作抗原(免疫原)として用いられる抗原ペプチドは、遺伝子工学的手法又は化学合成により作製することができる。
感作抗原で免疫される哺乳動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞である哺乳動物のミエローマ細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター等が使用される。
感作抗原を動物に免疫するには、公知の方法に従って行われる。例えば、感作抗原を哺乳動物の腹腔内又は皮下に注射することにより行われる。具体的には、感作抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものを所望により通常のアジュバント、例えば、フロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、動物の皮下、皮内、腹腔等に投与して一時刺激後、必要に応じて同様の操作を繰り返し行う。抗原の投与量は投与経路、動物種に応じて適宣決定されるが、通常の投与量は1回当たり10μg~1mg程度が好ましい。このように免疫し、血清中に所望の抗体レベルが上昇するのを確認した後に、哺乳動物から採血し、血清成分を精製することでポリクローナル抗体を得ることができる。血清成分を精製する際には、感作抗原を固定化したアフィニティーカラム等を使用することができる。
モノクローナル抗体を作製する際には、抗体レベルが上昇した哺乳動物から免疫細胞を取り出し、細胞融合を行う。細胞融合を行う際の好ましい免疫細胞としては、特に脾細胞が挙げられる。
前記免疫細胞と融合される他方の親細胞としての哺乳動物のミエローマ細胞は、すでに、公知の種々の細胞株、例えばP3X63、NS-1、MPC-11、SP2/0等が適宜使用される。
前記免疫細胞とミエローマ細胞の細胞融合は公知の方法、たとえば、ケラーらの方法(Kohler et al., Nature, vol, 256, p495-497(1975))等に準じて行うことができる。すなわち、ポリエチレングリコール(平均分子量1000~6000のPEG、30~60%濃度)、センダイウィルス(HVJ)等の細胞融合促進剤の存在下、所望によりジメチルスルホキシド等の補助剤を添加し、RPMI1640培養液、MEM培養液等の栄養培養液中で、免疫細胞とミエローマ細胞を混合することによって、融合細胞(ハイブリドーマ)の形成が行われる。
融合により形成されたハイブリドーマをヒポキサンチン、チミジン及びアミノプテリンを含む培地(HAT培地)等の選択培地で1日~7日間培養し、未融合細胞と分離する。得られたハイブリドーマをその産生する抗体によりさらに選択する。選択したハイブリドーマを公知の限界希釈法に従って単一クローン化し、単一クローン性抗体産生ハイブリドーマとして樹立する。
ハイブリドーマが産生する抗体の活性を検出する方法は、公知の方法を使用することができる。例えばELISA法、凝集反応法、ラジオイムノアッセイ法が挙げられる。
得られたハイブリドーマからモノクローナル抗体を取得するには、当該ハイブリドーマを通常の方法に従って培養し、その培養上清として得る方法、あるいはハイブリドーマをこれと適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、その腹水として得る方法等が採用される。
抗体の精製は、塩析法、ゲル濾過法、イオン交換クロマト法又はアフィニティークロマト法等の公知の精製手段を用いて行うことができる。
あるいは、酸化鉄(III)粒子に固定される抗体は、重鎖可変ドメイン抗体であってもよい。重鎖可変ドメイン抗体としては、VHH抗体やIgNAR抗体が挙げられる。VHH抗体は、ラクダ科の動物によって産生される軽鎖を持たない重鎖抗体の可変領域を含む単一のドメイン(シングルドメイン)からなる低分子抗体である。VHH抗体は、IgG抗体のH鎖等と同様に3本の抗原結合ループ(抗原相補性決定領域;CDR)を有する。VHH抗体は、その分子量がIgG抗体の10分の1と小さいため、通常のIgGでは立体構造上の問題からエピトープに結合することができない場合でも結合が可能で、また多くの糖鎖で修飾されたウイルス粒子の表面等にも結合できるため、標的分子になり得る幅が広い。さらに、VHH抗体は耐酸性や耐熱性にも優れており、IgGとは異なって培養細胞で産生させる必要がなく、大腸菌、酵母等で生産することができる。このため、大量生産しやすく、精製も容易であるという利点がある。さらに、VHH抗体は1本鎖のペプチドで構成されているため、蛋白質工学の技術又は化学修飾等の技術を用いて機能の改変がしやすい。これらの点から、酸化鉄(III)粒子に固定される抗体は、重鎖可変ドメイン抗体であることが好ましく、VHH抗体であることがより好ましい。
重鎖可変ドメイン抗体の作製方法は特に限定されず、当該技術分野における公知技術により容易に作製することができる。例えば、ペプチド固相合成法とネイティブ・ケミカル・リゲーション(Native Chemical Ligation;NCL)法を組み合わせて作製することや遺伝子工学的に作製することができるが、抗体をコードする核酸を適当なベクター(例えば、プラスミド)に組み込んで、これを宿主細胞に導入し、組換え抗体として産生させる方法が好ましい。
ここで、抗体発現用プラスミドとしては、各種の宿主細胞に適したプラスミドを用いることができる。例えば、pBR322、pBR325、pUC12、pUC13、pUC19その他の大腸菌由来のプラスミド;pUB110、pTP5、pC194、pHY300pLKその他の枯草菌由来のベクター;pSH19、pSH15その他の酵母由来ベクター;λファージその他のバクテリオファージ;アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルスその他のウイルスベクターの他、これらを適宜改変したベクターを用いることができる。
これらの発現プラスミドは、各々のプラスミドに適した、複製開始点、選択マーカー及びプロモーターを有しており、必要に応じて、エンハンサー、転写終結配列(ターミネーター)、リボソーム結合部位及びポリアデニル化シグナル等を有していてもよい。さらに、発現プラスミドには、発現したポリペプチドの精製を容易にするため、FLAGタグ、Hisタグ、HAタグ及びGSTタグ等を融合させて発現させるための塩基配列が挿入されていてもよい。
抗体産生菌は、所望の方法、例えば、エレクトロポレーション、プロトプラスト-PEG法などによって、上記の発現プラスミドを所望の菌に導入することにより作製できる。組換え抗体の産生に使用される宿主細胞としては、例えば、大腸菌、枯草菌、コリネ菌、各種のカビ、動物細胞、植物細胞その他の細胞、バキュロウイルス/昆虫細胞又は酵母細胞等を挙げることができる。これらのうちでも、コリネ菌と枯草菌が好適に使用でき、生産性が高い枯草菌がより好ましい。
発現させた抗体を培養菌体又は培養細胞から抽出する際には、培養後、公知の方法で菌体又は培養細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチーム及び/又は凍結融解などによって菌体又は細胞を破壊したのち、遠心分離や濾過により、可溶性抽出液を取得する。また分泌発現の場合は培養液の遠心上清から発現させた抗体を取得することもできる。得られた抽出液から、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて目的のペプチドを取得することができる。
公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、SDS-PAGE等の主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの電荷の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法又は等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
一例において、目的の抗原が卵に含まれるリゾチームである場合、VHH抗体の具体例としては、配列番号13で示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体(後記実施例においては「1ZVY」と称する)、配列番号15で示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体(後記実施例においては「1ZVH」と称する)等が挙げられる。別の一例において、目的の抗原がSARS-CoV-2由来の抗原であるSARS-CoV-2 S1タンパク質である場合、VHH抗体の具体例としては、配列番号17で示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体(後記実施例においては「E9」と称する)等が挙げられる。別の一例において、目的の抗原がイムノグロブリンG(IgG)である場合、VHH抗体の具体例としては、配列番号19で示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体(後記実施例においては「VHH28-His」と称する)等が挙げられる。
酸化鉄(III)粒子への抗体の固定化は、物理的吸着によるものであっても、官能基を介した共有結合等の化学的な結合によるものであっても、素材吸着ペプチドなどを用いた吸着によるものであってもよいが、操作性の点から、物理的吸着又は素材吸着ペプチドなどを用いた吸着が好適に用いられる。物理的吸着又は素材吸着ペプチドなどを用いた吸着は、通常、所定の緩衝液中で実施することができる。緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等通常使用される緩衝液を挙げることができる。緩衝液のpHは、6.0~9.5が好ましく、6.5~8.5がより好ましく、7.0~8.0がさらに好ましい。抗体の濃度は、0.01~100μg/mLが好ましく、0.1~20μg/mLがより好ましく、1~10μg/mLがさらに好ましい。
抗体の固定化にあたって、酸化鉄(III)粒子は、そのまま用いてもよいし、抗体固定化前に、固定化対象以外のタンパク質の非特異的な固定化を減少させるべく、タンパク質固定化に関する化学修飾、例えば、PEG、NHS、カルボキシル基、アミン基、ストレプトアビジン等による修飾を予め行ってもよいが、本発明においては、抗体固定化前に斯かる化学修飾を受けていない未修飾の酸化鉄(III)粒子を用いるのが好ましい。
抗体固定化後、酸化鉄(III)粒子は、さらに、通常使用されるブロッキング剤によりブロッキングしてもよい。ブロッキングには、BSA、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質や、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、PEG等の高分子化合物が使用可能である。
斯くして酸化鉄(III)粒子に固定された抗体、すなわち酸化鉄(III)粒子標識抗体は、変性を阻止するための保存試薬中に分散させて保存すればよい。変性阻止剤としては、BSA等のタンパク質、グリセリン、糖等が用いられる。
本発明のラテラルフローアッセイにおいては、酸化鉄(III)粒子標識抗体を用いて試料中の抗原を検出する。具体的には、当該アッセイは、酸化鉄(III)粒子標識抗体と試料とを接触させることを含む。一実施形態において、本発明のラテラルフローアッセイは、酸化鉄(III)粒子標識抗体を含む試薬、好ましくは酸化鉄(III)粒子標識抗体、及び捕捉抗体が固定されたメンブレンを含む試薬を用いて行うことができる。
ここで、捕捉抗体は、目的の抗原と特異的に結合する抗体であればよく、上記の酸化鉄(III)粒子に固定される抗体と同様のものが挙げられる。検出感度の点から、捕捉抗体としては、所謂サンドイッチアッセイにより抗原を検出することができるように、酸化鉄(III)粒子に固定される抗体とは異なるエピトープを認識する抗体を用いることが好ましい。
メンブレンとしては、任意の材質のものが使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロプレン、ナイロン類、ガラス、セルロースやセルロース誘導体等の多糖類、セラミックス等をメンブレン状にしたものが使用できる。メンブレンの孔径と構造を適宜選択することにより、酸化鉄(III)粒子標識抗体と抗原とから形成される複合体が該メンブレン上を展開する速度を制御することが可能である。メンブレンとしては、ニトロセルロースメンブレンを用いるのが好ましく、その孔径は、展開速度の点から、1~20μmが好ましく、5~10μmがより好ましい。
メンブレンには、捕捉抗体が固定されている。捕捉抗体は、メンブレン上に検出ラインを形成するように固定されるのが好ましい。捕捉抗体のメンブレンへの固定化は、物理的吸着によるものであっても、官能基を介した共有結合等の化学的な結合によるものであっても、素材吸着ペプチドなどを用いた吸着によるものであってもよいが、操作性の点から、物理的吸着又は素材吸着ペプチドなどを用いた吸着が好適に用いられる。捕捉抗体のメンブレンへの固定化は、公知の方法により実施することができる。例えば、捕捉抗体を所定の濃度に調整し、その液をノズルから一定の速度で吐出しながら水平方向に移動させることのできる機構を有する装置等を用いて、メンブレンにライン状に塗布することにより行われる。この際、捕捉抗体の濃度は、0.01~100mg/mLが好ましく、0.1~10mg/mLがより好ましい。また、捕捉抗体のメンブレンへの固定量は、0.5~2μL/cmが好適である。メンブレン上の捕捉抗体を固定化する位置は、アッセイ系の設計に適合するよう適宜選択することができる。
また、上記の捕捉抗体液は、通常所定の緩衝液を用いて調製することができる。その緩衝液の種類としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド緩衝液等通常使用される緩衝液を挙げることができる。緩衝液のpHは6.0~9.5の範囲が好ましく、6.5~8.5がより好ましく、7.0~8.0がさらに好ましい。
捕捉抗体固定化後、メンブレンは、さらに、通常使用されるブロッキング剤によりブロッキングしてもよい。ブロッキングには、BSA、カゼイン、ゼラチン等のタンパク質や、PVA、PVP、PEG等の高分子が使用可能である。
捕捉抗体が塗布されたメンブレンを乾燥することにより、適当な量の捕捉抗体が固定されたメンブレンを得ることができる。
メンブレンには、さらにコントロール捕捉抗体が固定されていてもよい。コントロール捕捉抗体は、メンブレン上にコントロールラインを形成するように固定されるのが好ましい。コントロール捕捉抗体は、酸化鉄(III)粒子標識抗体と結合できる抗体であればよく、酸化鉄(III)粒子標識抗体の種類、由来等に応じて、適宜選択することができる。コントロールラインは、アッセイの信頼性を担保するためのものである。コントロール捕捉抗体のメンブレンへの固定化方法は、上述の捕捉抗体の場合と同様である。メンブレン上のコントロール捕捉抗体を固定化する位置は、アッセイ系の設計に適合するよう適宜選択することができ、検出ラインよりも下流とすることが好ましい。
具体的なアッセイの一例を以下に示す。酸化鉄(III)粒子標識抗体と試料とを接触させて試料液を調製し、捕捉抗体が固定されたメンブレンに試料液を滴下する、あるいは捕捉抗体が固定されたメンブレンを試料液に浸漬すると、試料液は毛細管現象によりメンブレン上を展開していく。試料中に目的の抗原を含む場合には、酸化鉄(III)粒子標識抗体と試料中の目的の抗原とが複合体を形成し、これをメンブレン上の捕捉抗体が捕捉して複合体が集積することで、検出ラインに酸化鉄(III)粒子に由来する赤色の発色を生じる。一方、試料中に目的の抗原を含まない場合は、検出ラインには発色を生じない。斯かる発色を指標に、試料中の目的の抗原の有無を測定できる。すなわち、検出ラインに発色が認められれば、試料には目的の抗原が含まれていると判定でき、検出ラインに発色が認められなければ、試料には目的の抗原が含まれていないと判定することができる。尚、メンブレンがコントロールラインを有する場合、試料中の目的の抗原の有無にかかわらず、コントロール捕捉抗体が余剰の酸化鉄(III)粒子標識抗体を捕捉して酸化鉄(III)粒子標識抗体が集積することで、コントロールラインに酸化鉄(III)粒子に由来する赤色の発色を生じる。斯かる発色を指標に、アッセイの妥当性を評価することができる。すなわち、コントロールラインに発色が認められれば、アッセイが正常に行われたと判定でき、コントロールラインに発色が認められなければ、アッセイが正常に行われなかったと判定することができる。
別の一実施形態において、本発明のラテラルフローアッセイは、サンプルパッド、コンジュゲートパッド、メンブレン、及び吸収パッドで構成される一般的なラテラルフローアッセイ用試薬(テストストリップ)を用いて行うことができる。テストストリップの一般的構造を図1に示す。本発明において、コンジュゲートパッドには酸化鉄(III)粒子標識抗体が保持され、メンブレンには捕捉抗体が固定されている。
サンプルパッドとは、試料を滴下する部位であり、パッドに成型された状態で試料を吸収し、試料が通り抜けることができるどんな物質及び形態をも含む。サンプルパッドに適した材料としては、ガラス繊維(グラスファイバー)、アクリル繊維、親水性ポリエチレン材、乾燥紙、紙パルプ、織物等が挙げられるが、これらに限定されない。サンプルパッドには、後述するコンジュゲートパッドの機能を併せ持たせることもできる。
コンジュゲートパッドとは、酸化鉄(III)粒子標識抗体を保持し、試料が該コンジュゲートパッドを通過する際、酸化鉄(III)粒子標識抗体と試料中の目的の抗原とが複合体を形成する機能を有する部位をいう。
コンジュゲートパッドに適した材料としては、紙、セルロース混合物、ニトロセルロース、ポリエステル、アクリロニトリルコポリマー、ガラス繊維又はレーヨンのような不織繊維が挙げられるが、これらに限定されない。
メンブレンとしては、上述と同様のものを用いることができる。メンブレンには、捕捉抗体が固定された検出ラインを含み、さらに、コントロール捕捉抗体が固定されたコントロールラインを含むことが好ましい。メンブレンへの捕捉抗体、コントロール捕捉抗体又はこれら両方の固定化方法は、上述したとおりである。
吸収パッドとは、最下流に位置し、メンブレン上を展開した試料を吸収することにより試料の展開を制御する液体吸収性を有する部位である。吸収パッドに適した材料としては、例えば、ろ紙を挙げることができるが、これに限定されない。
上記試薬は、メンブレンにサンプルパッド、コンジュゲートパッド、吸収パッドが配置装着されたものである。配置については、適宜に変更可能であるが、サンプルパッドに滴下された試料が、毛細管現象によってサンプルパッドを通過し、コンジュゲートパッドに移送され、さらに毛細管現象によってコンジュゲートパッドを通過してメンブレンに移送され、メンブレン上を展開し、吸収パッドに吸収されるように、各部位を配置するのが好ましい。これらは、通常、プラスチック製粘着シートのような固相支持体上に配列させる。固相支持体は、試料の展開を妨げない物質で構成することが好ましく、また、接着剤の成分も試料の展開を妨げない物質とすることが好ましい。尚、メンブレンの機械的強度を上げ、且つアッセイ中の水分の蒸発(乾燥)を防ぐ目的でポリエステルフィルム等をラミネートすることも可能である。該試薬は、試薬の大きさや、試料の添加方法・位置、捕捉抗体の固定化位置等を考慮した適当な容器(ハウジング)に格納・搭載して使用することができる。このように格納・搭載された状態を「デバイス」という。
具体的なアッセイの一例を以下に示す。試料液をサンプルパッドに滴下すると、試料液は毛細管現象によりサンプルパッド、コンジュゲートパッドを順次通過し、メンブレン上を展開していく。試料中に目的の抗原を含む場合には、コンジュゲートパッドに保持された酸化鉄(III)粒子標識抗体と試料中の目的の抗原とが複合体を形成し、これをメンブレン上の捕捉抗体が捕捉して複合体が集積することで、検出ラインに酸化鉄(III)粒子に由来する赤色の発色を生じる。一方、試料中に目的の抗原を含まない場合は、検出ラインには発色を生じない。斯かる発色を指標に、試料中の目的の抗原の有無を測定できる。すなわち、検出ラインに発色が認められれば、試料には目的の抗原が含まれていると判定でき、検出ラインに発色が認められなければ、試料には目的の抗原が含まれていないと判定することができる。尚、メンブレンがコントロールラインを有する場合、試料中の目的の抗原の有無にかかわらず、コントロール捕捉抗体が余剰の酸化鉄(III)粒子標識抗体を捕捉して酸化鉄(III)粒子標識抗体が集積することで、コントロールラインに酸化鉄(III)粒子に由来する赤色の発色を生じる。斯かる発色を指標に、アッセイの妥当性を評価することができる。すなわち、コントロールラインに発色が認められれば、アッセイが正常に行われたと判定でき、コントロールラインに発色が認められなければ、アッセイが正常に行われなかったと判定することができる。
後記実施例に示すように、ラテラルフローアッセイにおいて、抗原に特異的に結合する抗体を固定化する標識体として酸化鉄(III)粒子を用いると、酸化鉄(II,III)粒子(前記非特許文献2)を用いる場合と比較して、圧倒的に視認性に優れる。斯かるアッセイでは、酸化鉄(III)粒子の磁性を指標とせずに、発色を指標とすることから、専用の検出装置が不要であり、目視という簡便な手法で試料中の抗原を検出することができる。また、標識体として酸化鉄(III)粒子を用いると、標識体として汎用されている金コロイド粒子と同等の検出感度が得られる。酸化鉄(III)粒子は、容易に安価で入手可能であることから、金コロイド粒子と比べて、1アッセイあたりの標識体のコストが100分の1以下であり、ラテラルフローアッセイの格段のコストダウンが可能である。さらに、酸化鉄(III)粒子に固定する抗体として、通常のIgG抗体より安価大量生産できるVHH抗体を用いれば、量産性向上やさらなるコストダウンも可能である。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の態様を開示する。
<1>標識体に固定された抗体を用いて試料中の抗原を検出するラテラルフローアッセイであって、標識体が酸化鉄(III)粒子である、ラテラルフローアッセイ。
<2>酸化鉄(III)粒子に固定された抗体と試料とを接触させることを含む、<1>記載のラテラルフローアッセイ。
<3>酸化鉄(III)粒子に固定された抗体と試料中の抗原とから形成される複合体を捕捉抗体により捕捉することを含む、<1>又は<2>記載のラテラルフローアッセイ。
<4>捕捉抗体がメンブレンに固定されたものである、<3>記載のラテラルフローアッセイ。
<5>酸化鉄(III)粒子による発色を指標として抗原を検出することを含む、<1>~<4>のいずれか1項記載のラテラルフローアッセイ。
<6>発色が、酸化鉄(III)粒子に固定された抗体と試料中の抗原とから形成される複合体が集積して生じるものであり、好ましくは、酸化鉄(III)粒子に固定された抗体と試料中の抗原とから形成される複合体が捕捉抗体により捕捉されて集積して生じるものである、<5>記載のラテラルフローアッセイ。
<7>発色が認められる場合に試料中に抗原が含まれていると判定し、発色が認められない場合に試料中に抗原が含まれていないと判定することを含む、<5>又は<6>記載のラテラルフローアッセイ。
<8>酸化鉄(III)粒子の平均粒子径が10~1000nm、好ましくは50~500nmである、<1>~<7>のいずれか1項記載のラテラルフローアッセイ。
<9>酸化鉄(III)粒子が抗体固定前にタンパク質固定化に関する化学修飾を受けていない酸化鉄(III)粒子である、<1>~<8>のいずれか1項記載のラテラルフローアッセイ。
<10>酸化鉄(III)粒子に固定された抗体が、好ましくはIgG抗体又は重鎖可変ドメイン抗体であり、より好ましくは重鎖可変ドメイン抗体であり、さらに好ましくはVHH抗体であり、さらに好ましくは配列番号13、15、17及び19のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体である、<1>~<9>のいずれか1項記載のラテラルフローアッセイ。
<11>捕捉抗体が、好ましくはIgG抗体又は重鎖可変ドメイン抗体であり、より好ましくは重鎖可変ドメイン抗体であり、さらに好ましくはVHH抗体であり、さらに好ましくは配列番号13、15、17及び19のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体である、<3>~<10>のいずれか1項記載のラテラルフローアッセイ。
<12>酸化鉄(III)粒子に固定された抗体を含む、ラテラルフローアッセイ用試薬。
<13>捕捉抗体が固定されたメンブレンをさらに含む、<12>記載の試薬。
<14>サンプルパッド、酸化鉄(III)粒子に固定された抗体を保持するコンジュゲートパッド、捕捉抗体が固定されたメンブレン、及び吸収パッドを含む、<12>又は<13>記載の試薬。
<15>酸化鉄(III)粒子の平均粒子径が10~1000nm、好ましくは50~500nmである、<12>~<14>のいずれか1項記載の試薬。
<16>酸化鉄(III)粒子が抗体固定前にタンパク質固定化に関する化学修飾を受けていない酸化鉄(III)粒子である、<12>~<15>のいずれか1項記載の試薬。
<17>酸化鉄(III)粒子に固定された抗体が、好ましくはIgG抗体又は重鎖可変ドメイン抗体であり、より好ましくは重鎖可変ドメイン抗体であり、さらに好ましくはVHH抗体であり、さらに好ましくは配列番号13、15、17及び19のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体である、<12>~<16>のいずれか1項記載の試薬。
<18>捕捉抗体が、好ましくはIgG抗体又は重鎖可変ドメイン抗体であり、より好ましくは重鎖可変ドメイン抗体であり、さらに好ましくはVHH抗体であり、さらに好ましくは配列番号13、15、17及び19のいずれかで示されるアミノ酸配列からなるVHH抗体である、<13>~<17>のいずれか1項記載の試薬。
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1 プロテアーゼ欠損組換え枯草菌によるVHHの生産1
(1)使用菌株
枯草菌株はBacillus subtilis 168株の派生株を用いた。細胞外プロテアーゼ遺伝子(epr、wprA、mpr、nprB、bpr、nprE、vpr、aprE、aprX)の欠損については特許第4485341号公報に記載されている方法に従い行った(欠損株はそれぞれΔepr、ΔwprA、Δmpr、ΔnprB、Δbpr、ΔnprE、Δvpr、ΔaprE、ΔaprXと記載。全て欠損している株は168 Dpr9と記載)。また胞子形成に関与するsigF遺伝子の欠損については特許第4336082号公報に記載されている方法に従い行った(欠損株はΔsigFと記載)。また遺伝子構築のための大腸菌株についてはECOS Competent E. coli DH5 α株(ニッポンジーン)を用いた。
(2)使用培地
LB培地:1% BactoTM Tryptone(Difco)、0.5% BactoTM Yeast Extract(Difco)、1% 塩化ナトリウム。平板培地には1.5%の寒天を加えた。必要に応じてテトラサイクリン(50ppm)を加えた。
SMMP溶液:Antibiotic Medium 3(Difco)(35g/L)、スクロース(171.5g/L)、マレイン酸2Na(3.2g/L)、MgCl・6HO(4.06g/L)
PEG溶液:スクロース(85.75g/L)、マレイン酸2Na(1.6g/L)、MgCl・6HO(2.03g/L)、PEG8000(400g/L)
DM3培地:1% CMC(関東化学)、0.5% BactoTM Casamino Acids(Difco)、0.5% BactoTM Yeast Extract(Difco)、8.1% コハク酸二ナトリウム・6HO、0.35% リン酸水素二カリウム、0.15% リン酸二水素カリウム、0.5% グルコース、20mM 塩化マグネシウム、0.01% BSA、50ppm テトラサイクリン。平板培地には1%の寒天を加えた。
2×L-mal培地:2% BactoTM Tryptone(Difco)、1% BactoTM Yeast Extract(Difco)、1% 塩化ナトリウム、7.5% マルトース一水和物、7.5ppm 硫酸マンガン、15ppm テトラサイクリン
試薬は特に記述が無い場合は富士フイルム和光純薬社製を用いた。
(3)遺伝子プラスミドの構築
遺伝子発現プラスミド構築は以下の手順で行った。配列番号1及び2の人工合成遺伝子(サーモフィッシャー社)を混合し後述のプロトプラスト形質転換法に従ってB.subtilis 168 Dpr9ΔsigF株に導入した。形質転換されたB.subtilis 168 Dpr9ΔsigF株よりpKプラスミドを抽出した。pKプラスミドをテンプレートとし、PrimeSTAR Max DNAポリメラーゼ(TaKaRa)及び配列番号3と4のプライマーセットとを用いて増幅したPCR断片、B.subtilis 168株のゲノムDNAをテンプレートとして配列番号5と6のプライマーセットを用いて増幅したSpoVGプロモーター(PspoVG)のPCR断片、特開2014-158430号公報に記載の組換えプラスミドpHY-S237をテンプレートとし、それぞれ配列番号7と8及び配列番号9と10のプライマーセットを用いて増幅したS237セルラーゼ遺伝子由来の分泌シグナル(S237pre)と転写ターミネーター(Ts237)のPCR断片を混合し、In-Fusion HD Cloning Kit(Takara)を用いて連結し、大腸菌へと形質転換することでPspoVG-S237pre-Ts237-pKプラスミドを構築した。PspoVG-S237pre-Ts237-pKプラスミドをテンプレートとし、配列番号9と11のプライマーセット及びPrimeSTAR Maxを用いて増幅したPCR断片、及び配列番号12(リゾチームに対するVHH抗体:1ZVYをコードする遺伝子、翻訳アミノ酸配列は配列番号13)、配列番号14(リゾチームに対するVHH抗体:1ZVHをコードする遺伝子、翻訳アミノ酸配列は配列番号15)、配列番号16(SARS-CoV-2 S1タンパク質に対するVHH抗体:E9をコードする遺伝子、翻訳アミノ酸配列は配列番号17)で示す人工合成遺伝子(サーモフィッシャー社)を混合してIn-Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌へと形質転換することで各遺伝子の発現プラスミドを構築した。構築したプラスミドは後述のプロトプラスト形質転換法に従ってB.subtilis 168 Dpr9ΔsigF株に導入した。用いたプライマーを表1に示す。
Figure 2023067793000001
(4)プロトプラスト形質転換法
枯草菌へのプラスミド導入は以下に示すプロトプラスト法によって行った。1mLのLB液体培地にグリセロールストックした各種枯草菌を植菌し、30℃、210rpmで一晩振とう培養した。翌日、新たな1mLのLB液体培地にこの培養液を10μL植菌し、37℃、210rpmで約2時間振とう培養した。この培養液を1.5mLチューブに回収し、12,000rpmで5分間遠心分離を行い、上清を除去したペレットをLysozyme(SIGMA)4mg/mLを含むSMMP 500μLに懸濁し、37℃で1時間インキュベートした。次いで、3,500rpmで10分間遠心分離を行い、上清を除去したペレットをSMMP 400μLに懸濁した。この懸濁液33μLを各種プラスミドと混合し、さらに40% PEG 100μLを添加してボルテックスした。この液にSMMP 350μLを加えて転倒混和し、エッペンチューブのまま30℃で2時間インキュベートした後、DM3寒天培地プレートに塗布した。DM3寒天培地プレートを30℃で2~3日間インキュベートして形質転換体のコロニーを得た。
(5)培養条件
プラスミドを保持する枯草菌株を1mLの50ppmテトラサイクリンを含むLB培地に植菌し、30℃で一晩往復振とうし、前培養液とした。前培養液を三角フラスコに入れた20mLの2×L-mal培地に1%接種し、30℃で72時間振とう培養した。培養終了時の培養液を7,500rpm、5分遠心し、上清を回収した。上清にNi-NTAアガロースビーズ(富士フイルム和光純薬)を添加し、上清中に含まれるHisタグ連結ドメイン抗体をキットのプロトコルに従って精製後、透析によってバッファーをPBS(30mM イミダゾール含有)へと置換した。
実施例2 ラテラルフローアッセイ1
(1)方法
ニトロセルロースメンブレンはFF120HP(cytiva lifesciences)を用いた。5mm×100mmに切断したメンブレンの下端より20mmの位置に検出用の抗体を塗布した。実施例1において枯草菌で生産したドメイン抗体(1ZVH又は1ZVY)については1mg/mLの溶液を、市販IgG抗体(Lysozyme Polyclonal Antibody(コスモバイオ)及びSARS/SARS-CoV-2 Coronavirus Spike Protein(subunit 1) Polyclonal Antibody(サーモフィッシャーサイエンティフィック)(以下SARS Polyclonal Antibody))については0.1mg/mLの溶液を、絵筆を用いて検出ラインを描画した後、37℃で1時間静置して乾燥させた。乾燥したメンブレンを3倍希釈したN101(日油)に15分間浸し、イオン交換水で2回洗浄した後3%スクロース溶液に浸して5分間静置した。スクロース溶液から取り出したメンブレンを室温で一晩乾燥させた。
酸化鉄(III)粒子(300nm、高純度化学)は30mg/mLになるようにMilli-Q水に懸濁した。酸化鉄(II,III)粒子(10nm、5mg/mL トルエン、和光純薬)は200μLを1mLのエタノールに懸濁した後に5,000rpmで15分間遠心し、上清除去した。沈殿にエタノールを1ml添加し5,000rpmで15分間遠心し、上清除去した。沈殿に20%エタノールを1mL添加し5,000rpmで15分間遠心し、上清除去しMilli-Q水200μLを添加して懸濁した。酸化鉄(III)粒子又は酸化鉄(II,III)粒子6μg、ないしは金粒子(40nm、1OD(530nm abs max)、G-40-20、コスモバイオ)100μLに、10mM Tris-HCl(pH8)を500μL添加し、超音波処理を10秒間行った(E9では酸化鉄(III)粒子100μg)(金粒子使用時は10mM Tris-HCl(pH8ないしは9))。枯草菌で生産したドメイン抗体(1ZVH又は1ZVY:10μg、E9:1mg)、又は市販IgG抗体(Lysozyme Polyclonal Antibody:1μg)を添加して15分間静置した。1% BSA及び0.1% PEG20000を含む10mM Tris-HCl(pH8)を200μL添加し、さらに15分間静置した。5,000rpmで15分間遠心したのちに上清を除去し、0.1% BSA及び0.5% Tween 20を含む10mM Tris-HCl(pH8)を200μL添加し、超音波処理を10秒行った(酸化鉄(III)粒子側にLysozyme Polyclonal Antibody又はE9使用時はTween 20非含有、金粒子使用時は0.1% BSA及び0.025% Tween 20)。
抗体として1ZVH、1ZVY又はLysozyme Polyclonal Antibodyを用いたアッセイについては、抗原として卵白リゾチーム(富士フイルム和光純薬)10μgを、抗体としてE9又はSARS Polyclonal Antibodyを用いたアッセイについては、抗原としてSARS-CoV-2 Spike Glycoprotein (S1),Sheep Fc-Tag(HEK293)(Native Antigen)(以下SARS-CoV-2 S1)1μgを、酸化鉄(III)粒子標識抗体又は酸化鉄(II,III)粒子標識抗体の溶液に添加した。また、抗体として1ZVH、1ZVY又はLysozyme Polyclonal Antibodyを用いたアッセイについて、抗原として卵白リゾチーム10μgを、金粒子標識抗体の溶液に添加した。抗原を添加した溶液をメンブレンに作用させてラテラルフローアッセイを行った。
(2)結果
酸化鉄(II,III)粒子と酸化鉄(III)粒子の検出視認性の差異を確認するため、検出ライン側に1ZVH、酸化鉄粒子側に1ZVYを使用したラテラルフローアッセイを行った。その結果を図2に示す。酸化鉄(II,III)粒子と酸化鉄(III)粒子とも同量の粒子及び抗体・抗原を使用しているが、酸化鉄(II,III)粒子と比較して酸化鉄(III)粒子は明瞭な検出ラインを呈した。
酸化鉄(III)粒子を用いたラテラルフローアッセイが種々の抗原の検出に対して適用できることを確認するため、酸化鉄(III)粒子側及び検出ライン側の抗体を変化させて検討を行った。その結果を表2に示す。この結果より、酸化鉄(III)粒子側及び検出ライン側のIgG又はドメイン抗体の組み合わせに拠らず、検出ラインの視認を介して任意の抗原を検出可能であることが示された。なお、標識体として金粒子を用い、粒子側抗体として1ZVY、1ZVHを使用したリゾチーム検出系(表2の上3段に相当)でも検出ラインを視認できることを確認している。また本検討で用いたドメイン抗体間のアミノ酸配列相同性は1ZVYと1ZVHでは68%、1ZVYとE9では63%、1ZVHとE9では71%となっており、酸化鉄(III)粒子を用いたラテラルフローアッセイはドメイン抗体の配列に依存することなく利用可能であることも示された。
Figure 2023067793000002
実施例3 プロテアーゼ欠損組換え枯草菌によるVHHの生産2
(1)使用菌株
実施例1(1)と同じ菌株を用いた。
(2)使用培地
実施例1(2)と同じ培地を用いた。
(3)遺伝子プラスミドの構築
遺伝子発現プラスミド構築は以下の手順で行った。配列番号18(Hisタグを含むIgGに対するVHH抗体:VHH28-Hisをコードする遺伝子、翻訳アミノ酸配列は配列番号19)の人工合成遺伝子(GenScript社)をテンプレートとし、KOD One DNAポリメラーゼ(TOYOBO)及び配列番号20と21のプライマーセットとを用いて増幅したPCR断片と、PspoVG-S237pre-Ts237-pKプラスミドをテンプレートとし、配列番号9と11のプライマーセット及びPrimeSTAR Max(Takara)を用いて増幅したPCR断片を混合して、In-Fusion HD Cloning Kit(Takara)を用いて連結し、大腸菌へと形質転換することでVHH28-His遺伝子の発現プラスミドを構築した。
また、配列番号18の人工合成遺伝子(GenScript社)をテンプレートとし、KOD One DNAポリメラーゼ及び配列番号20と22のプライマーセットとを用いて増幅したPCR断片と、PspoVG-S237pre-Ts237-pKプラスミドをテンプレートとし、配列番号23と11のプライマーセット及びKOD One DNAポリメラーゼを用いて増幅したPCR断片を混合して、In-Fusion HD Cloning Kitを用いて連結し、大腸菌へと形質転換することでVHH28-His-FLAG遺伝子の発現プラスミドを構築した。用いたプライマーを表3に示す。
構築したプラスミドは実施例1(4)のプロトプラスト形質転換法に従ってB.subtilis 168 Dpr9ΔsigF株に導入した。得られたプラスミドを保持する枯草菌株は、実施例1(5)の培養条件に従って培養し、ドメイン抗体を生産した。
Figure 2023067793000003
実施例4 ラテラルフローアッセイ2
(1)方法
ニトロセルロースメンブレンはFF120HP(cytiva lifesciences)を用いた。5mm×100mmに切断したメンブレンの下端より20mmの位置に検出用の抗体を塗布した。実施例3において枯草菌で生産したドメイン抗体(VHH28-His-FLAG)については0.5mg/mLの溶液を、市販IgG抗体(Anti-IgG(H+L)、Cat、Rabbit-Poly(Bethyl Laboratories、A20-115A))については0.1mg/mLの溶液を、絵筆を用いて検出ラインを描画した後、37℃で1時間静置して乾燥させた。乾燥したメンブレンを5倍希釈したN101(日油)に15分間浸し、イオン交換水で2回洗浄した後3%スクロース溶液に浸して5分間静置した。スクロース溶液から取り出したメンブレンを室温で一晩乾燥させた。
酸化鉄(III)粒子(300nm、高純度化学)は30mg/mLになるようにMilli-Q水に懸濁した。酸化鉄(III)粒子30mg/mL 20μLを10mM Tris-HCl(pH8)500μLに添加し、超音波処理を10秒間行った。枯草菌で生産したドメイン抗体(VHH28-His:3μg)を添加して15分間静置した。1% BSA及び0.1% PEG20000を含む10mM Tris-HCl(pH8)を400μL添加し、さらに15分間静置した。5,000rpmで15分間遠心したのちに上清を除去し、0.1% BSA及び0.025%-0.05% Tween 20を含む10mM Tris-HCl(pH8)を500μL添加し、超音波処理を10秒間行った。抗原についてはChromPure Cat IgG,whole molecule(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.)1μgを、酸化鉄(III)粒子標識抗体の溶液に添加した。抗原を添加した溶液をメンブレンに作用させてラテラルフローアッセイを行った。
(2)結果
酸化鉄(III)粒子を用いたラテラルフローアッセイがCat IgGの検出に対して適用できることを確認するため、検出ライン側の抗体を変化させて検討を行った。その結果を表4に示す。この結果より、検出ライン側のIgG又はドメイン抗体の組み合わせに拠らず、検出ラインの視認を介してCat IgGを検出可能であることが示された。
Figure 2023067793000004

Claims (9)

  1. 標識体に固定された抗体を用いて試料中の抗原を検出するラテラルフローアッセイであって、標識体が酸化鉄(III)粒子である、ラテラルフローアッセイ。
  2. 酸化鉄(III)粒子に固定された抗体と試料とを接触させることを含む、請求項1記載のラテラルフローアッセイ。
  3. 酸化鉄(III)粒子による発色を指標として抗原を検出することを含む、請求項1又は2記載のラテラルフローアッセイ。
  4. 酸化鉄(III)粒子の平均粒子径が10~1000nmである、請求項1~3のいずれか1項記載のラテラルフローアッセイ。
  5. 酸化鉄(III)粒子に固定された抗体がVHH抗体である、請求項1~4のいずれか1項記載のラテラルフローアッセイ。
  6. 酸化鉄(III)粒子に固定された抗体を含む、ラテラルフローアッセイ用試薬。
  7. 捕捉抗体が固定されたメンブレンをさらに含む、請求項6記載の試薬。
  8. サンプルパッド、酸化鉄(III)粒子に固定された抗体を保持するコンジュゲートパッド、捕捉抗体が固定されたメンブレン、及び吸収パッドを含む、請求項6又は7記載の試薬。
  9. 酸化鉄(III)粒子に固定された抗体がVHH抗体である、請求項6~8のいずれか1項記載の試薬。
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