JP2020193868A - 検出方法及び検出装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】表面増強蛍光法を用いて標的物質の検出感度の向上を実現できる検出方法等を提供する。【解決手段】磁性を有する金属粒子に固定された第1物質及び蛍光体で標識された第2物質を標的物質と結合することにより複合体を形成し(S101)、蛍光体に蛍光を放射させ、かつ、金属粒子に局在化表面プラズモン共鳴を生じさせる所定の波長を有する励起光を所定領域に照射し(S102)、磁場勾配を印加して、複合体を所定領域に侵入及び/又は所定領域から離脱させ(S103、S105)、所定領域からの蛍光を経時的に検出し(S104、S106)、検出された蛍光の強度の変化量に基づいて標的物質を検出し(S107)、所定領域において、蛍光体が放射する蛍光は、金属粒子が生じる局在化表面プラズモン共鳴によって増強される。【選択図】図6

Description

本開示は、液体中に存在する標的物質を光学的に検出する検出方法及び検出装置に関する。特に、金属ナノ微粒子の局在化表面プラズモン共鳴の作用によって蛍光を増強する表面増強蛍光法(Surface Enhanced Fluorescence Spectroscopy)を利用した検出方法及び検出装置に関する。
近年、病原体による感染症の拡大や新規病原体の出現等の問題から、これらの病原体を検出できる装置の開発が急がれている。検出対象物(つまり標的物質)としては、病原性タンパク質等の分子、ウイルス(外殻タンパク質等)、細菌(多糖等)などが知られている。これらの標的物質に対する、表面増強蛍光法を利用した高感度なセンサも開示されている。
例えば、特許文献1では、金属微粒子と蛍光体とが一体化された検出抗体が用いられる。これにより、蛍光体から放射された蛍光は金属微粒子によるプラズモン共鳴で増強されるため、微量の標的物質を検出することができる。
特開2008−216046号公報 特開昭62−38363号公報 特開2001−133455号公報 特開2010−19765号公報 特許第4381752号公報
Michael E. Jolley et al. Clinical Chemistry, vol.27, No7(1981) Kathryn L. Kellar et al. Experimental Hematology 30 1227-1237(2002) AimPlex_Multiplex_Immunoassay_User_Manual Rev 1.3.24 Anger, P.; Bharadwaj, P.; Novotny, L. PhysRevLett.96.113002 (2006)
しかしながら、上述の特許文献1のセンサでは、標的物質に結合していない遊離状態の検出抗体から放射された蛍光もプラズモン共鳴によって増強されてしまう。つまり、背景光が上昇するため、検出の感度が低下してしまう。遊離状態の検出抗体を除去することで検出感度を向上させる方法も考えられ得るが、操作が複雑になり、検出に要する時間も増加する。
そこで本開示は、表面増強蛍光法を用いた標的物質の検出感度の向上を実現できる検出方法等を提供する。
本開示の一態様に係る検出方法は、磁性を有する金属粒子に固定された第1物質及び蛍光体で標識された第2物質を標的物質に結合させることにより複合体を形成し、前記蛍光体に蛍光を放射させ、かつ、前記金属粒子に局在化表面プラズモン共鳴を生じさせる所定の波長を有する励起光を所定領域に照射し、磁場勾配を印加して、前記複合体を前記所定領域に侵入及び/又は前記所定領域から離脱させ、前記所定領域からの蛍光を経時的に検出し、検出された前記蛍光の強度の変化量に基づいて前記標的物質を検出し、前記所定領域において、前記蛍光体が放射する蛍光は、前記金属粒子が生じる局在化表面プラズモン共鳴によって増強される。
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示の一態様に係る検出方法は、表面増強蛍光法を用いた標的物質の検出感度の向上を実現できる。
実施の形態1における複合体の構成図 実施の形態1における金属粒子の断面図 実施の形態1における増強現象を説明するための図 実施の形態1に係る検出装置の構成図 実施の形態1における光検出器の出力信号の時系列を示すグラフ 実施の形態1に係る検出装置の処理を示すフローチャート 実施の形態2に係る検出装置の構成図 実施の形態2における光検出器の出力信号の時系列を示すグラフ 実施の形態2の変形例に係る検出装置の処理を示すフローチャート 実施の形態2の変形例における光検出器の出力信号の時系列を示すグラフ 実施の形態3に係る検出装置の構成図 実施の形態3における光検出器の出力信号の時系列を示すグラフ 実施例1における金属粒子と蛍光体との位置関係を示す図 実施例1及び2におけるシミュレーションモデルを説明するための図 実施例1における金属粒子付近の電場強度の波長依存性を示すグラフ 実施例1における蛍光体の消光スペクトル及び蛍光スペクトルを示すグラフ 実施例2における金属粒子と蛍光体との位置関係を示す図 実施例2における金属粒子付近の電場強度の波長依存性を示すグラフ 実施例1及び2における金属粒子付近の電場強度の距離依存性を示すグラフ
(本開示の基礎となった知見)
液体中に存在するタンパク質等の分子、ウイルス、細菌を検出する技術としては、蛍光を利用する方法(以下、蛍光法という)が広く用いられている。蛍光法では、標的物質と蛍光体で標識された抗体(以下、蛍光標識抗体という)とを抗原抗体反応により結合させる。そして、蛍光体を励起できる光を、標的物質と結合した標識抗体に照射することにより蛍光を発生させる。このように発生した蛍光を検出することにより、標的物質を検出することができる。
[蛍光偏光免疫測定法]
蛍光法の一例としては、蛍光偏光免疫測定法(Fluorescence Polarization Immunoassay)がある。この方法では、蛍光標識抗体を含む溶液に、標的物質である抗原を含む被検溶液を混合する。その結果、抗原抗体反応によって複合体が形成される。このとき、複合体の形成前後の蛍光の偏光度の差に基づいて抗原の濃度が計測される。ここでは、複合体が蛍光標識抗体単体よりも大きく、回転運動が抑制されるため、偏光度が増加する現象が利用されている(例えば特許文献2及び非特許文献1を参照)。
[免疫クロマトグラフ法]
蛍光法の他の一例としては、免疫クロマトグラフ法がある。この方法では、ニトロセルロース膜などを基材として有する平板状の基板が用いられる。基板には、標的物質と特異的に結合する抗体が固定化される。この基板に、標的物質と蛍光標識抗体とを含むサンプル溶液が滴下されると、蛍光標識抗体と結合した標的物質が、基板に固定化された抗体(以下、固定化抗体という)に捕捉される。ここに、光を照射すると、標的物質の濃度に応じた強度の蛍光が放射される。この蛍光を検出することで標的物質の濃度を計測することができる(例えば特許文献3を参照)。
[免疫クロマトグラフ法に表面増強蛍光を利用]
免疫クロマトグラフ法を高感度化するために、表面増強蛍光を利用する技術もある。この技術では、溶液を流す流路内に金属ナノ構造が形成された領域が設けられ、この金属ナノ構造上に標的物質と結合する抗体が固定化される。この流路に、標的物質と蛍光標識抗体とを含むサンプル溶液が滴下されると、蛍光標識抗体と結合した標的物質が固定化抗体に捕捉される。ここに、金属ナノ構造が局在化表面プラズモン共鳴を起こす波長の光が照射されると、蛍光標識抗体から放射された蛍光が増強される。このとき、局在化表面プラズモン共鳴で増強された蛍光(以下、表面増強蛍光という)の強度は、標的物質の濃度に応じて増加する。蛍光の増強の程度(以下、増強度という)は10〜1000倍程度なので、表面増強蛍光は、通常の蛍光よりも10〜1000倍程度高い強度を有する。したがって、表面増強蛍光を利用すれば、通常の蛍光では計測できないような低濃度の標的物質も計測できる(例えば特許文献4を参照)。
[免疫クロマトグラフ法にエバネセント波を利用]
また、透明な基板の裏側から励起光を照射する裏面照射系を利用する方法がある。この方法では、基板の裏面から励起光が照射されエバネセント波が誘起される。誘起されたエバネセント波は、基板の表面にある固定化抗体に補捉された蛍光標識抗体に照射され、蛍光標識抗体に蛍光を放射させる。このとき、エバネセント波は、基板表面から数百nmの領域のみを照射するので、表面から照射する場合と比べて、標的物質と結合していない蛍光標識抗体(以下、Free成分という)に照射される励起光の量を低減することができる。Free成分が放射する蛍光は、標的物質の濃度が反映されないノイズ成分である。つまり、Free成分が放射する蛍光は、標的物質と結合している蛍光標識抗体(以下、Bind成分という)が放射する蛍光の計測を妨害して計測精度を低下させる。したがって、エバネセント波を利用して照射領域を制限してFree成分が放射する蛍光を抑制することは有効である(例えば特許文献1を参照)。
[フローサイトメトリー]
粒子及び標的物質の検出方法としてフローサイトメトリーと呼ばれる方法がある。フローサイトメトリーでは、透明な細管(フローセル)中を1個毎に流れる細胞等の粒子にレーザ光などが照射され、散乱光及び/又は蛍光が発生する。このように発生した散乱光及び/又は蛍光を検出して、粒子が特定され計数される。
タンパク質等の標的物質を検出する場合は、次のように検出処理が行われる。まず、標的物質と特異的に結合する2種類の抗体を準備する。一方の抗体は捕捉用ビーズに固定化され、もう一方の抗体は蛍光体で標識される。これらの2種類の抗体を、標的物質と抗原抗体反応させて、標的物質を挟んで特異結合(サンドイッチ結合)させて、捕捉用ビーズ−標的物質−蛍光標識抗体の複合体が形成される。そして、複合体を含む溶液から未結合の蛍光標識抗体を取り除いた後に、溶液をフローセルに流す。このとき、複合体で発生した蛍光を検出して、標的物質を特定して計数する(例えば、非特許文献2及び3を参照)。
[均一系で磁性粒子及び近接場を利用]
また、抗体を基板等に固定化する代わりに、抗体を磁性粒子に固定化して均一な溶液中に分散させて標的物質と結合させる方法もある。この方法は、基板の裏面から励起光を照射して近接場を誘起して、基板の近傍にある蛍光標識抗体に近接場を照射して蛍光を発生させている。基板の表面に向かう磁場勾配を溶液に印加すると、磁性粒子−標的物質−蛍光標識抗体から形成された複合体が基板の表面へ引き寄せられる。このように磁場勾配を溶液に印加した際の蛍光強度と、磁場勾配を印加しなかった際の蛍光強度との差は、標的物質と結合している蛍光標識抗体(Bind成分)の数と、標的物質と結合していない蛍光標識抗体(Free成分)の数との差に相当する。したがって、磁場勾配の印加有無によって生じる蛍光強度の差を計測することで、Free成分の影響を排除できる(特許文献5参照)。
しかしながら、上述した各方法では、以下のような課題がある。
蛍光偏光免疫測定法では、偏光度の違いを計測するために、偏光子の回転機構が必要になり装置が複雑になる。また偏光度の違いは抗原抗体複合体の形成前後の大きさの違いを反映しているので、蛍光標識抗体と比べて小さい分子を検出する場合は、偏光度の違いが小さいので、検出精度が低下する。さらに、被検溶液中に散乱性の物質が存在すると、偏光解消により、偏光度の違いを検出できない等の課題がある。
免疫クロマトグラフ法、又は、これに表面増強蛍光若しくはエバネセント波を利用した方法では、基板に、標的物質と結合していない蛍光標識抗体及び蛍光を放射する共存物質が非特異吸着する場合がある。この場合、非特異吸着した蛍光標識抗体及び共存物質から放射された蛍光によって検出精度が低下するという課題がある。
また、フローサイトメトリーでは、未結合の蛍光標識抗体を除去する工程が必要になり、計測時間がかかる。
さらに、均一系で磁性粒子及び近接場を利用する場合は、次の理由から定量範囲に課題がある。複合体だけでなく未結合の蛍光標識抗体も、近接場の照射領域に存在して蛍光を放射する。そのため、未結合の蛍光標識抗体が増加すると、複合体が基板の表面近傍に引き寄せられていないときの蛍光の強度が増加し、蛍光を検出する光検出器のダイナミックレンジを圧縮する。これを防ぐためには、未結合の蛍光標識抗体の数を抑制する必要があり、被検溶液と混ぜる蛍光標識抗体の数を制限しなければならない。定量可能な標的物質の数は蛍光標識抗体の数よりも小さくなるので、被検溶液と混ぜる蛍光標識抗体の数を制限することで、定量範囲が制限される。このように、光検出器のダイナミックレンジを確保するためには、蛍光標識抗体の数を抑制せざるを得ず、結果として標的物質の定量範囲が制限される。
(本開示の概要)
そこで、本開示の一態様に係る検出方法は、磁性を有する金属粒子に固定された第1物質及び蛍光体で標識された第2物質を標的物質に結合させることにより複合体を形成し、前記蛍光体に蛍光を放射させ、かつ、前記金属粒子に局在化表面プラズモン共鳴を生じさせる所定の波長を有する励起光を所定領域に照射し、磁場勾配を印加して、前記複合体を前記所定領域に侵入及び/又は前記所定領域から離脱させ、前記所定領域からの蛍光を経時的に検出し、検出された前記蛍光の強度の変化量に基づいて前記標的物質を検出し、前記所定領域において、前記蛍光体が放射する蛍光は、前記金属粒子が生じる局在化表面プラズモン共鳴によって増強される。
これにより、複合体に含まれる第2物質を標識する蛍光体から放射される蛍光は、当該複合体に含まれる第1物質が固定された金属粒子が生じる局在化表面プラズモン共鳴によって増強される。一方で、複合体に含まれない第2物質(すなわち遊離状態の第2物質)を標識する蛍光体は、金属粒子に空間的に近接していないため、当該蛍光体が放射する蛍光は局在化表面プラズモン共鳴によってほとんど増強されない。したがって、複合体に含まれない第2物質を標識する蛍光体から放射される蛍光の強度は、複合体に含まれる第2物質を標識する蛍光体から放射される蛍光の強度よりも小さい。さらに、磁場勾配の印加によって、遊離状態の第2物質は移動しないが、金属粒子を含む複合体は励起光が照射される所定領域に侵入及び/又は所定領域から離脱する。よって、遊離状態の第2物質を除去しなくても、励起光が照射される所定領域における蛍光の強度の変化に基づいて複合体を検出することができる。つまり、高速かつ簡便な表面増強蛍光法を用いて、標的物質の検出感度の向上を実現できる。
また、偏光を利用しなくても標的物質を検出できるため、装置構成が簡単にできる。さらに、複合体の形成前後の分子の大きさの違いによる影響を低減することができ、標的物質の適用範囲を広げることができる。
なお、所定領域に侵入及び/又は所定領域から離脱するとは、(i)所定領域に侵入する、(ii)所定領域から離脱する、又は、(iii)所定領域に侵入し、その後、当該所定領域から離脱すること(つまり、所定領域を通過すること)を意味する。
例えば、本開示の一態様に係る検出方法において、前記励起光の照射では、前記励起光を基板に照射することにより、前記所定領域に前記励起光の近接場を照射し、前記所定領域は、前記基板の表面近傍の領域であってもよい。
これにより、基板の表面近傍の領域に近接場を照射することができる。近接場の照射領域は、基板の表面の非常に近い領域に限定される。したがって、近接場の照射領域外に配置された複合体が照射領域に侵入するための移動距離を低減することができる。その結果、磁場勾配を印加する時間を削減することができ、短時間での検出を実現することができる。
例えば、本開示の一態様に係る検出方法において、前記磁場勾配の印加では、前記複合体を前記基板の表面から引き離す第1磁場勾配と、前記複合体を前記基板の表面に引き寄せる第2磁場勾配とを交互に繰り返し印加し、前記標的物質の検出では、前記第1磁場勾配の印加中又は印加後における前記蛍光の強度と、前記第2磁場勾配の印加中又は印加後における前記蛍光の強度との間の差異に基づいて、前記標的物質を検出してもよい。
これにより、複合体に、励起光の近接場が照射される所定領域への侵入及び当該所定領域からの離脱を交互に繰り返させることができ、蛍光の強度の変化量の偶発的な誤差による検出精度の低下を抑制することができる。
例えば、本開示の一態様に係る検出方法において、前記磁場勾配の印加では、前記第1磁場勾配と、前記第2磁場勾配とを交互に一定周期で印加し、前記標的物質の検出では、前記蛍光の強度の時系列を示す信号のうち前記一定周期と同期する成分に基づいて前記標的物質を検出してもよい。
これにより、蛍光の強度の時系列を示す信号のうち第1磁場勾配及び第2磁場勾配の印加と同期する成分に基づいて、標的物質を検出することができる。したがって、当該信号の信号対雑音比(S/N)が高い場合でも、表面増強蛍光による信号を高感度で検出することができ、標的物質の検出感度の向上を実現することができる。
例えば、本開示の一態様に係る検出方法において、前記磁場勾配の印加では、検出された前記蛍光の強度が極小値になったときに、前記第1磁場勾配から前記第2磁場勾配に切り替え、検出された前記蛍光の強度が極大値になったときに、前記第2磁場勾配から前記第1磁場勾配に切り替えてもよい。
これにより、蛍光の強度の時系列を示す信号の極大値及び極小値に基づいて第1磁場勾配及び第2磁場勾配を切り替えることができる。したがって、励起光の近接場が照射される所定領域への複合体の侵入及び当該所定領域からの複合体の離脱を最低限の時間で確実に行うことができ、検出時間の短縮を図ることができる。
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、装置、集積回路、コンピュータプログラム又はコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
以下、実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、請求の範囲を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化される場合がある。
また、以下において、平行及び垂直などの要素間の関係性を示す用語、及び、円筒形状などの要素の形状を示す用語、並びに、数値範囲は、厳格な意味のみを表すのではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する。
また、以下において、標的物質を検出するとは、標的物質を見つけ出して標的物質の存在を確認することに加えて、標的物質の量(例えば数又は濃度等)又はその範囲を計測することを含む。
(実施の形態1)
実施の形態1に関して図1〜図6を参照しながら説明する。
[複合体の構造]
まず、複合体6の構造について図1を参照しながら具体的に説明する。図1は、実施の形態1における複合体6の構成図である。図1に示すように、複合体6は、標的物質1と、金属粒子2に固定された第1物質3と、蛍光体4で標識された第2物質5と、を含む。
標的物質1は、検出の対象となる分子であり、例えばタンパク質等である。
金属粒子2は、磁性を有し、所定の波長を有する励起光の照射によって局在化表面プラズモン共鳴を生じさせる。金属粒子2の内部構造については、図3を用いて後述する。
第1物質3は、標的物質1と特異的に結合する抗体である。第1物質3は、金属粒子2の表面に固定されている。なお、図1では、複数の第1物質3が金属粒子2に固定されているが、これに限定されない。例えば、1つの第1物質のみが金属粒子2に固定されてもよい。
蛍光体4は、所定の波長を有する励起光の照射によって蛍光を放射する。蛍光体4は、例えば有機分子又は量子ドット等からなる。
第2物質5は、標的物質1と特異的に結合する抗体であり、蛍光体4で標識されている。つまり、第2物質5は、蛍光標識抗体である。なお、図1では、第2物質5は、1つの蛍光体4で標識されているが、複数の蛍光体で標識されてもよい。
ここでは、第1物質3と第2物質5とは異なっている。第1物質3と第2物質5とが異なるとは、蛍光体4が固定された第1物質3と、金属粒子2に固定された第2物質5とに共有化される箇所がなく、それぞれが別個の物質として存在することを意味する。なお、第1物質3及び第2物質5の各々は、標的物質1と特異的に結合する性質を有すればよく、その分子構造は限定されない。第1物質3と第2物質5とは、異種分子であってもよく、同種分子であってもよい。
また、第1物質3と第2物質5とは、標的物質1の異なる部位と結合する。したがって、図1に示すように、第1物質3と第2物質5とは、標的物質1を挟んで結合(サンドイッチ結合)して複合体6を形成する。
なお、蛍光体4の代わりに蛍光粒子が用いられてもよい。蛍光粒子は、有機蛍光分子、無機蛍光体又は量子ドット等を組込んだ樹脂(例えばポリスチレン又はアクリル等)又はガラスからなる。蛍光粒子の直径は、数十nmから数百nmである。蛍光粒子には、蛍光体4単体では実現が難しい特性を付与することができる。例えば、蛍光粒子を構成する樹脂又はガラスに蛍光の失活防止剤を含ませることで、蛍光粒子は光退色を低減できる。また、蛍光粒子には、アミノ基及びカルボキシル基をはじめ多様な表面修飾を施すことができる。また、蛍光粒子は、蛍光体4よりも水中での分散性を上げることができる。
[金属粒子の内部構造]
ここで、金属粒子2の内部構造について図2を参照しながら具体的に説明する。図2は、実施の形態1における金属粒子2の断面図である。図3に示すように、金属粒子2は、内核部2aと外殻部2bとを有する。
内核部2aは、磁性材料からなる。磁性材料としては、常磁性体を含むのが好ましい。常磁性とは、外部磁場が無いときには磁化を持たず、磁場を印加するとその磁場の方向に弱く磁化する磁性を意味する。つまり、内核部2aは、磁場勾配の印加によって磁場勾配の方向に移動する。
本実施の形態では、常磁性を有する磁性材料が用いられ、具体的には酸化鉄を主原料にしたフェライトが用いられる。なお、磁性材料は、酸化鉄を主原料にしたフェライトに限定されない。磁性材料として、例えば鉄が用いられてもよい。
外殻部2bは、内核部2aを被覆し、局在化表面プラズモン共鳴を生じる非磁性の金属材料からなる。非磁性の金属材料は反磁性体を含む。従って、金や銀は反磁性体と称されることもあるが、ここでは非磁性体と記す。
非磁性の金属材料として、金、銀、又は、アルミニウムを用いることができる。また例えば、非磁性の金属材料として、金、銀及びアルミニウムのいずれかを主成分として有する合金を用いることもできる。
金属粒子2の直径は、数nm〜数百nm程度である。このような金属粒子2に所定の波長の光を照射することで局在化表面プラズモン共鳴を生じさせることができる。この局在化表面プラズモン共鳴が生じる波長域と、蛍光体4を励起する波長域及び/又は蛍光体4が放射する蛍光の波長域とが重なれば、金属粒子2の近傍にある蛍光体4が放射する蛍光は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。この増強された蛍光を表面増強蛍光と称する。
[局在化表面プラズモン共鳴による蛍光の増強現象]
本実施の形態に係る検出装置では、局在化表面プラズモン共鳴による増強現象が利用されている。増強現象の概要を図3を参照しながら説明する。
図3は、実施の形態1における増強現象を説明するための図である。
図3には、図1に示す複合体6及び第2物質5を含む混合溶液(すなわち試料)が表されている。この混合溶液に、所定の波長を有する励起光7が照射されると、金属粒子2で局在化表面プラズモン共鳴が生じ、かつ、蛍光体4で蛍光が放射される。
このとき、複合体6に含まれる第2物質5に結合された蛍光体4が放射した蛍光は、金属粒子2で生じた局在化表面プラズモン共鳴の作用で増強され、表面増強蛍光8として放射される。
一方、複合体6に含まれていない遊離状態の第2物質5に結合された蛍光体4は、金属粒子2から離れているので、局在化表面プラズモン共鳴の作用を受けることができない。したがって、この蛍光体4が放射した蛍光は、増強されず、通常の蛍光9として放射される。
[検出装置の構成]
次に、以上のような増強現象をともなう複合体6(つまり、標的物質1)を検出する検出装置100の構成について図4を参照しながら説明する。
図4は、実施の形態1に係る検出装置100の構成図である。検出装置100は、試料収容部110と、光源120と、第1磁場印加部131と、第2磁場印加部132と、光検出器140と、制御部150と、を備える。以下に、検出装置100の各構成要素について順に説明する。
試料収容部110は、複合体6と、金属粒子2に固定された第1物質3と、蛍光体4で標識された第2物質5とを含む混合溶液22を収容する。例えば、試料収容部110は、略直方体の容器であり、少なくとも2つの透明な面を有する。図4に示す試料収容部110は、全ての面が透明な光学セルである。図4では、試料収容部110の左面から励起光21が入射し、上面から蛍光が出射している。
光源120は、照射領域に所定の波長を有する励起光21を照射する。照射領域は、所定領域の一例であり、試料収容部110内の領域の一部分である。つまり、光源120は、試料収容部110内の混合溶液22の一部に励起光21を照射する。所定の波長としては、金属粒子2で局在化表面プラズモン共鳴を励起すると共に蛍光体4で蛍光を励起することができる波長が用いられる。
第1磁場印加部131は、混合溶液22中に第1方向(図4では上向き)の第1磁場勾配を印加する。この第1磁場勾配により、混合溶液22中の金属粒子2が第1方向に移動する。その結果、混合溶液22中に存在する複合体6及び第1物質3は、励起光21の照射領域の外(図4では上面近傍)に集められる。
第2磁場印加部132は、混合溶液22中に第1方向と逆の第2方向(図4では下向き)に第2磁場勾配を印加する。この第2磁場勾配により、混合溶液22中の金属粒子2は、第2方向に移動する。その結果、混合溶液22中に存在する複合体6及び第1物質3は、励起光21の照射領域に侵入し、その後、当該照射領域から離脱する。
第1磁場印加部131及び第2磁場印加部132としては、電磁石又は永久磁石等を用いることができる。電磁石が用いられる場合、制御部150は、第1磁場印加部131及び第2磁場印加部132の各々への電流の供給を制御することによって、磁場勾配の印加及び非印加を切り替えることができる。また、永久磁石が用いられる場合、制御部150は、第1磁場印加部131及び第2磁場印加部132の各々を移動させることによって磁場勾配の印加及び非印加を切り替えることができる。
光検出器140は、励起光21の照射領域において蛍光体4から放射された蛍光を、光学レンズ141、ロングパスフィルタ142及び光学レンズ143を介して受光し、蛍光の強度に応じた電気信号を出力する。
光学レンズ141は、試料収容部110内の照射領域からの光23を略平行光に変換する。ここでは、光23には、表面増強蛍光8及び蛍光9に加えて、散乱光等が含まれる。
ロングパスフィルタ142は、励起光21の波長成分を遮断し、蛍光(表面増強蛍光8及び蛍光9)の波長成分を通過させる。つまり、ロングパスフィルタ142は、励起光21の波長と蛍光の波長との間に遮断波長を有する。
光学レンズ143は、ロングパスフィルタ142を通過した光を光検出器140に集光する。
なお、これらの光学レンズ141、ロングパスフィルタ142及び光学レンズ143の構成及び配置は、図4に示す構成及び配置に限定されない。例えば、ロングパスフィルタ142は、光学レンズ143と光検出器140との間に配置されてもよい。また、光学レンズ141、ロングパスフィルタ142及び光学レンズ143は、光検出器140に内蔵されてもよく、検出装置100に含まれなくてもよい。
制御部150は、光検出器140の出力信号の変化量(つまり、蛍光の強度の変化量)に基づいて標的物質1を検出する。また、制御部150は、光源120、第1磁場印加部131及び第2磁場印加部132を制御する。制御部150は、例えばプロセッサ及びメモリを備えるコンピュータによって実現される。プロセッサは、メモリに格納されたインストラクション又はソフトウェアプログラムを実行することにより各種機能をすることができる。また、制御部150は、専用の電子回路によって実現されてもよい。
[光検出器の出力信号]
ここで、図5を参照しながら光検出器140の出力信号について説明する。図5は、実施の形態1における光検出器140の出力信号の時系列を示すグラフである。図5において、横軸は、第2磁場勾配の印加開始からの経過時間を示し、縦軸は、光検出器140の出力信号の大きさ(つまり蛍光の強度)を示す。
ライン31は、混合溶液22に標的物質1が含まれていない場合における出力信号の時系列を示す。ライン32は、混合溶液22に低濃度で標的物質1が含まれる場合における出力信号の時系列を示す。ライン33は、混合溶液22に高濃度で標的物質1が含まれる場合における出力信号の時系列を示す。
混合溶液22に標的物質1が含まれていない場合、複合体6が形成されない。したがって、励起光21の照射領域には、複合体6が存在し得ず、遊離状態の第2物質5等が存在し得る。このとき、照射領域において遊離状態の第2物質5に励起光21が照射されれば、第2物質5に結合された蛍光体4から蛍光が放射される。しかしながら、このように放射された蛍光は、局在化表面プラズモン共鳴による増強を受けない。さらに、遊離状態の第2物質5は、第2磁場勾配によって移動しない。したがって、遊離状態の第2物質5に結合された蛍光体4から放射された蛍光の強度は小さく、その変化も小さい。その結果、ライン41に示されるように、混合溶液22に標的物質1が含まれていない場合、出力信号のレベルは変化せず低いまま維持される。
一方、混合溶液22に標的物質1が含まれている場合、複合体6が形成される。したがって、励起光21の照射領域には、遊離状態の第2物質5に加えて複合体6が存在し得る。このとき、照射領域において励起光21が複合体6に照射されれば、複合体6に含まれる蛍光体4から蛍光が放射される。このように放射された蛍光は、金属粒子2で生じた局在化表面プラズモン共鳴の作用で増強される。さらに、複合体6は、第2磁場勾配によって移動する。したがって、複合体6に含まれる蛍光体4から放射される蛍光の強度は、複合体6の照射領域への侵入及び照射領域からの離脱により変化する。その結果、ライン32及びライン33に示すように、出力信号のレベルは、第2磁場勾配の印加によって増加した後に第1磁場勾配の印加によって減少する。
また、標的物質1の濃度が増加するほど、複合体6の濃度も増加して、光検出器140の出力信号のレベルも高くなる。つまり、出力信号のレベルの増加量は標的物質1の濃度に依存する。制御部150は、このような出力信号のレベルの増加量と標的物質1の濃度との関係を利用して、光検出器140の出力信号に基づいて標的物質1の濃度を求める。つまり、制御部150は、第1磁場勾配の印加中又は印加後における照射領域からの蛍光の強度(例えば蛍光の強度の最小値)と、第2磁場勾配の印加中又は印加後における照射領域からの蛍光の強度(例えば蛍光の強度の極大値)との間の差異に基づいて、標的物質1を検出する。なお、出力信号のレベルの増加量と標的物質1の濃度との関係は、標的物質1の濃度が既知の混合溶液を用いてあらかじめ定めることができる。
[検出装置の動作]
以上のように構成された検出装置100の動作について図6を参照しながら説明する。図6は、実施の形態1に係る検出装置100の処理を示すフローチャートである。
まず、試料収容部110は、あらかじめ調製された混合溶液22を収容する(S101)。なお、混合溶液22の調製は、標的物質1を含む溶液、蛍光体4で標識された第2物質5を含む溶液、及び、金属粒子2に固定された第1物質3を含む溶液の順不同な混合により行われる。
次に、光源120は、試料収容部110内の所定領域に励起光21を照射する(S102)。これにより、混合溶液22の一部に励起光21が照射される。なお、励起光21の照射は、検出処理が終了するまで継続的に行われる。
第1磁場印加部131は、混合溶液22に対して第1方向(図4では上向き)に第1磁場勾配を印加する(S103)。これにより、混合溶液22中の複合体6は、第1方向に移動して励起光21の照射領域外に配置される。なお、第1磁場勾配の印加は所定の期間行われる。所定の期間とは、混合溶液22中に分散した複合体6が照射領域外に移動するために十分な長さを有する期間である。所定の期間の長さは、混合溶液22中の粒子の分散性及び磁性の度合い、第1磁場勾配の強度に応じて設定される。
次に、光検出器140は、蛍光の検出を開始する(S104)。続いて、第2磁場印加部132は、混合溶液22に対して第1方向とは逆向きの第2方向(図4では下向き)に第2磁場勾配を印加する(S105)。これにより、混合溶液22中の複合体6は、第2方向に移動する。その結果、複合体6は、励起光21の照射領域に侵入し、当該照射領域から離脱する。第2磁場勾配の印加は、励起光21が照射されている間に行われる。
光検出器140は、蛍光の検出を終了する(S106)。
制御部150は、光検出器140の出力信号を解析して、出力信号の極大値から標的物質1の濃度を算出して出力する(S106)。なお、標的物質1の濃度の算出では、出力信号の極大値の代わりに積分値が用いられてもよい。
なお、図6に示すステップの順番は、例示であり、これに限定されない。例えば、ステップS102における励起光21の照射は、ステップS103における第1磁場勾配の印加の後に開始されてもよく、ステップS101における混合溶液22の収容の前に開始されてもよい。また、ステップS103における第1磁場勾配の印加と、ステップS105における第2磁場勾配の印加とは、順番が入れ替えられてもよい。
[効果等]
以上のように、本実施の形態では、複合体6に含まれる第2物質5を標識する蛍光体4から放射される蛍光は、当該複合体6に含まれる第1物質3が固定された金属粒子2が生じる局在化表面プラズモン共鳴によって増強される。一方で、複合体6に含まれない第2物質5(すなわち遊離状態の第2物質5)を標識する蛍光体4は、金属粒子2に空間的に近接していないため、当該蛍光体4が放射する蛍光は局在化表面プラズモン共鳴によってほとんど増強されない。したがって、複合体6に含まれない第2物質5を標識する蛍光体4から放射される蛍光の強度は、複合体6に含まれる第2物質5を標識する蛍光体4から放射される蛍光の強度よりも小さい。さらに、第2磁場勾配の印加によって、遊離状態の第2物質5は移動しないが、金属粒子2を含む複合体6は励起光21の照射領域に侵入及び/又は照射領域から離脱する。よって、遊離状態の第2物質を除去しなくても、励起光21の照射領域における蛍光の強度の変化に基づいて複合体6を検出することができる。つまり、高速かつ簡便な表面増強蛍光法を用いて、標的物質1の検出感度の向上を実現できる。
また、偏光を利用しなくても標的物質1を検出できるため、装置構成が簡単にできる。さらに、複合体の形成前後の分子の大きさの違いによる影響を低減することができ、標的物質1の適用範囲を広げることができる。
また、金属粒子2において、磁性を有する磁性材料からなる内核部2aを非磁性の金属材料からなる外殻部2bで覆うことができる。したがって、磁性材料の残留磁化によって金属粒子2が凝集することを抑制することができる。その結果、複数の2次元画像における光点の輝度及び移動速度のばらつきを抑制することができ、検出精度を向上させることができる。
また、金属粒子2は、局在化表面プラズモン共鳴を生じる金属材料で当該金属粒子の表面を覆うことができるので、表面の一部が金属材料で構成される場合よりも、金属粒子2の周方向における増強度のばらつきを抑制することができる。
また、金、銀、アルミニウム、又はいずれかを主成分として有する合金を外殻部2bに用いることができ、金属粒子2において効果的に局在化表面プラズモン共鳴を生じさせることができる。さらに、外殻部2bが金からなる場合、金属粒子2の表面に各種機能を有するコーティングを施しやすくなる。例えば、外殻部2bに非特異吸着防止コーティングが施されれば、蛍光体4で標識された第2物質5が金属粒子2の表面に吸着する非特異吸着を低減することができ、検出結果として偽陽性及び偽陰性が発生することを低減することができる。
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について説明する。本実施の形態では、近接場を利用する点が上記実施の形態1と異なる。以下に、本実施の形態に係る検出装置について、上記実施の形態1と異なる点を中心に図7及び図8を参照しながら説明する。
[検出装置の構成]
図7は、実施の形態2に係る検出装置200の構成図である。図7に示すように、検出装置200は、試料収容部210と、光源220と、第1磁場印加部131と、第2磁場印加部132と、光検出器140と、制御部150と、を備える。
試料収容部210は、実施の形態1と同様に、複合体6と、蛍光体4で標識された第2物質5と、金属粒子2に固定された第1物質3とを含む混合溶液22を収容する。本実施の形態では、試料収容部210は、励起光24の照射により近接場を形成可能な基板211及びプリズム212を備える。具体的には、基板211は、プリズム212の表面上に配置され、基板211の裏面211bは、プリズム212の表面に光学的に貼り合せられる。これにより、基板211は、表面211aに近接場を形成可能な基板として機能する。
近接場とは、物体の表面近傍に生じる薄い光の膜である。近接場は、例えば、屈折率の高い媒質から屈折率が低い媒質に進む光をその境界面で全反射させたときに屈折率の低い媒質ににじみ出るごく薄い光の膜である。したがって、本実施の形態では、近接場は、基板211の表面211a近傍の領域を照射する。なお、近接場は、近接場光と呼ばれる場合もある。
試料収容部210は、さらに、混合溶液22を覆う透明なカバーガラス213を備える。混合溶液22は、基板211とカバーガラス213との間に保持される。なお、試料収容部210は、混合溶液22を囲う側壁(図示せず)を備えてもよい。側壁は、基板211からカバーガラス213に向かって延びる。
光源220は、プリズム212を介して基板211の裏面211bに所定の波長を有する励起光24を照射する。所定の波長としては、実施の形態1の励起光21と同一の波長を用いることができる。本実施の形態では、励起光24は、混合溶液22と基板211との界面において全反射する。その結果、基板211の表面211aに近接場が形成される。近接場は、表面211a近傍の領域のみに形成され、基板211の表面211aから遠ざかるにつれて急激に減衰する。多くの場合、近接場が及ぶ距離は励起光24の波長程度である。したがって、励起光24の近接場は、基板211の表面211a近傍の領域に存在する混合溶液22にのみ照射される。つまり、本実施の形態では、基板211の表面211a近傍の領域が、励起光24が照射される所定領域に相当する。
なお、基板211の構成としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。例えば、基板211は、単層で構成されてもよく、電場増強を目的とした積層体で構成されてもよい。
[光検出器の出力信号]
ここで、図8を参照しながら光検出器140の出力信号について説明する。図8は、実施の形態2における光検出器140の出力信号の時系列を示すグラフである。図8において、横軸は、第2磁場勾配の印加開始からの経過時間を示し、縦軸は、光検出器140の出力信号の大きさ(つまり蛍光の強度)を示す。
ライン41は、混合溶液22に標的物質1が含まれていない場合における出力信号の時系列を示す。ライン42は、混合溶液22に低濃度で標的物質1が含まれる場合における出力信号の時系列を示す。ライン43は、混合溶液22に高濃度で標的物質1が含まれる場合における出力信号の時系列を示す。
混合溶液22に標的物質1が含まれない場合、複合体6が形成されない。したがって、励起光24の近接場の照射領域には、複合体6が存在することはなく、遊離状態の第2物質5等が存在する。このとき、励起光24の近接場が遊離状態の第2物質5に照射されれば、第2物質5に結合された蛍光体4から蛍光が放射される。しかしながら、このような蛍光体4から放射された蛍光は、局在化表面プラズモン共鳴による増強を受けない。さらに、遊離状態の第2物質5は、第2磁場勾配によって移動しない。したがって、複合体6に含まれない蛍光体4から放射された蛍光の強度は小さく、その変化も小さい。その結果、ライン31に示されるように、混合溶液22に標的物質1が含まれない場合、出力信号のレベルは変化せず低いまま維持される。
一方、混合溶液22に標的物質1が含まれる場合、複合体6が形成される。したがって、励起光24の近接場の照射領域には、遊離状態の第2物質5に加えて複合体6が存在し得る。このとき、励起光24の近接場が複合体6に照射されれば、蛍光体4から放射された蛍光は、金属粒子2で生じた局在化表面プラズモン共鳴の作用で増強される。さらに、複合体6は、第2磁場勾配によって基板211の表面211aに向かって移動する。これにより、励起光24の近接場の照射領域内の複合体6が増加し、ライン42及びライン43に示されるように蛍光の強度も増加する。また、標的物質1の濃度が増加するほど、照射領域内の複合体6も増加して、光検出器140の出力信号のレベルも高くなる。
このように、出力信号のレベルの増加量は標的物質1の濃度に依存する。そこで、制御部150は、このような出力信号のレベルの増加量と標的物質1の濃度との関係を利用して、光検出器140の出力信号に基づいて標的物質1の濃度を求める。つまり、制御部150は、第1磁場勾配の印加中又は印加後における照射領域からの蛍光の強度(例えば蛍光の強度の極小値)と、第2磁場勾配の印加中又は印加後における照射領域からの蛍光の強度(例えば蛍光の強度の極大値)との間の差異に基づいて、標的物質1を検出する。なお、出力信号のレベルの増加量と標的物質1の濃度との関係は、標的物質1の濃度が既知の混合溶液を用いて、あらかじめ定めることができる。
なお、検出装置200の動作については、実施の形態1に係る検出装置100の動作と同様であるので図示及び説明を省略する。
[効果等]
以上のように、本実施の形態に係る検出装置200によれば、励起光24の近接場を混合溶液22の一部に照射することができる。近接場の照射領域は、基板211の表面211aに非常に近い領域に限定される。したがって、近接場の照射領域外に配置された複合体6が照射領域内に侵入するための移動距離を低減することができる。その結果、磁場勾配を印加する時間を削減することができ、短時間での検出を実現することができる。
(実施の形態2の変形例)
次に、実施の形態2の変形例について説明する。本変形例では、第1磁場勾配及び第2磁場勾配が交互に繰り返し印加される点が上記実施の形態2と異なる。以下に、上記実施の形態2と異なる点を中心に本変形例について図9及び図10を参照しながら説明する。
なお、本変形例に係る検出装置200の構成については、上記実施の形態2と同様であるので図示及び説明を省略する。
[検出装置の動作]
本変形例に係る検出装置200の動作について図9を参照しながら説明する。図9は、実施の形態2の変形例に係る検出装置200の処理を示すフローチャートである。
本変形例では、ステップS104において蛍光の検出が開始された後、第2磁場印加部132は、第2方向(図7では下向き)に第2磁場勾配を印加する(S301)。具体的には、第2磁場印加部132は、例えば光検出器140の出力信号から極大値が検出されるまで第2磁場勾配を印加する。これにより、混合溶液22に含まれる複合体6は、近接場の照射領域に侵入する。
第1磁場印加部131は、第1方向(図7では上向き)に第1磁場勾配を印加する(S302)。具体的には、第1磁場印加部131は、例えば光検出器140の出力信号から極小値が検出されるまで第1磁場勾配を印加する。これにより、混合溶液22に含まれる複合体6は、近接場の照射領域から離脱する。
その後、制御部150は、磁場勾配の印加を終了するか否かを判定する(S303)。例えば、制御部150は、第1磁場勾配及び第2磁場勾配の印加回数が閾値回数以上である場合に磁場勾配の印加を終了すると判定し、そうでない場合に磁場勾配の印加を継続すると判定する。なお、ここでの判定方法は、特に限定される必要はなく、例えば光検出器140の出力信号の再現性に基づいて判定が行われてもよい。
ここで、磁場勾配の印加を終了すると判定された場合(S303のYes)、光検出器140は、蛍光の検出を終了する(S106)。一方、磁場勾配の印加を継続すると判定された場合(S303のNo)、第2磁場印加部132は、第2方向に第2磁場勾配を印加する(S105)。これにより、混合溶液22に含まれる複合体6は、近接場の照射領域に再侵入する。
[光検出器の出力信号]
ここで、図10を参照しながら光検出器140の出力信号について説明する。図10は、実施の形態2の変形例における光検出器140の出力信号の時系列を示すグラフである。図10において、横軸は、第2磁場勾配の印加開始からの経過時間を示し、縦軸は、光検出器140の出力信号の大きさ(つまり蛍光の強度)を示す。
ライン44は、混合溶液22に標的物質1が含まれていない場合における出力信号の時系列を示す。ライン45は、混合溶液22に低濃度で標的物質1が含まれる場合における出力信号の時系列を示す。ライン46は、混合溶液22に高濃度で標的物質1が含まれる場合における出力信号の時系列を示す。
図10に示すように、本変形例では、混合溶液22に標的物質1が含まれている場合に、光検出器140の出力信号から複数の極大値及び複数の極小値を得ることができる。
[効果等]
以上のように、本変形例に係る検出装置200によれば、複合体6に、励起光24の近接場の照射領域への侵入及び当該照射領域からの離脱を交互に繰り返させることができ、光検出器140の出力信号から複数の極大値及び複数の極小値を得ることができる。したがって、複数の極大値及び複数の極小値を用いて蛍光の強度の変化量を求めることができ、偶発的な誤差による検出精度の低下を抑制することができる。
さらに、本変形例に係る検出装置200によれば、光検出器140の出力信号の極大値及び極小値に基づいて第1磁場勾配及び第2磁場勾配を切り替えることができる。したがって、近接場の照射領域への複合体6の侵入及び照射領域からの複合体6の離脱を最低限の時間で確実に行うことができ、検出時間の短縮を図ることができる。
(実施の形態3)
次に、実施の形態3について説明する。本実施の形態では、第1磁場勾配及び第2磁場勾配が一定周期で交互に印加され、光検出器の出力信号のうち第1磁場勾配及び第2磁場勾配の印加と同期する成分に基づいて標的物質が検出される点が上記実施の形態2及びその変形例と異なる。以下に、上記実施の形態2及びその変形例と異なる点を中心に本実施の形態について図11及び図12を参照しながら説明する。
[検出装置の構成]
図11は、実施の形態3に係る検出装置300の構成図である。図11に示すように、検出装置300は、試料収容部210と、光源220と、第1磁場印加部131と、第2磁場印加部132と、光検出器140と、制御部350と、信号発生器351と、ロックインアンプ352と、を備える。
信号発生器351は、一定の周期性を有する信号を生成する。例えば、信号発生器351は、一定周期の矩形波を生成する。生成された信号は、制御部350及びロックインアンプ352に出力される。
制御部350は、信号発生器351から入力された一定周期の信号に基づいて、第1磁場印加部131による第1磁場勾配の印加及び第2磁場印加部132による第2磁場勾配の印加を切り替える。これにより、第1磁場勾配及び第2磁場勾配が一定周期で交互に印加される。
ロックインアンプ352は、信号発生器351から入力された一定周期の信号に基づいて、光検出器140の出力信号から一定周期の信号と同期する成分を抽出する。具体的には、ロックインアンプ352は、位相敏感検波(Phase Sensitive Detection)により、一定周期と同期する成分の振幅に比例する直流信号を出力する。なお、本実施の形態では、位相敏感検波が用いられているが、これに限定されない。
本実施の形態に係る検出装置300の動作については、光検出器140の出力信号に対する信号処理を除いて、実施の形態2の変形例と同様であるので、図示及び説明を省略する。
[光検出器の出力信号]
ここで、図12を参照しながら光検出器140の出力信号について説明する。図12は、実施の形態3における光検出器140の出力信号の時系列を示すグラフである。図12において、横軸は、第2磁場勾配の印加開始からの経過時間を示し、縦軸は、光検出器140の出力信号の大きさ(つまり蛍光の強度)を示す。
ライン47は、混合溶液22に標的物質1が含まれていない場合における出力信号の時系列を示す。ライン48は、混合溶液22に低濃度で標的物質1が含まれる場合における出力信号の時系列を示す。
図12に示すように、標的物質1の濃度が低い場合、光検出器140の出力信号にノイズが目立ち、SN比が低下する。このような光検出器140の出力信号に対して位相敏感検波を利用することで、表面増強蛍光による信号を高感度に検出することができる。
[効果等]
以上のように、本実施の形態に係る検出装置300によれば、光検出器140の出力信号のうち第1磁場勾配及び第2磁場勾配の印加と同期する成分に基づいて、標的物質1を検出することができる。したがって、光検出器140の出力信号の信号対雑音比(S/N)が高い場合でも、表面増強蛍光による信号を高感度で検出することができ、標的物質1の検出感度の向上を実現することができる。
(実施例1)
[シミュレーションモデル及びシミュレーション結果]
次に、金属粒子2で生じる局在化表面プラズモン共鳴による増強度のシミュレーションを実施例1として図13〜図16を参照しながら説明する。
本実施例では、標的物質1として10nm程度のサイズを有する血清アルブミンを用いた。また、金属粒子2としては、直径が13.6nmの酸化鉄フェライトの内核部2aと金の外殻部2bとを有するコアシェル型の粒子を用いた。金属粒子2の直径は50nmであった。蛍光体4としては、1nm以下の有機シアニン系蛍光分子であるCyanine 3(Cy3、分子量:714、励起波長:(512);550、蛍光波長:570;(615)、量子収率QY:0.15)を用いた。第1物質3及び第2物質5としては、15nm程度のサイズを有するモノクローナルIgG抗体を用いた。
これらが複合体6を形成した場合、金属粒子2の表面と蛍光体4との距離は、第2物質5が標的物質1と結合する位置(結合部位)によって異なる。図13は、実施例1における金属粒子2と蛍光体4との位置関係を示す図である。図13の(a)は、実施例1における金属粒子2の表面と蛍光体4との距離の最大値(35nm程度)を示す。一方、図13の(b)は、実施例1における金属粒子2の表面と蛍光体4との距離の最小値(10nm程度)を示す。
ここで、金属粒子2の周辺の電場強度をFDTD法(Finite-difference time-domain method)を用いてシミュレーションした。図14は、実施例1及び2におけるシミュレーションモデルを説明するための図である。図14に示すように、本実施例では、水中に存在する直径が50nmのコアシェル型の金属粒子2にz軸の負の向きに伝搬する平面波を照射した。この平面波は、x軸に沿って直線偏光しており、平面波の電場強度は、1[V/m]であった。このようなシミュレーションモデルにおいて、金属粒子2の表面からΔxだけ離間した計測位置における電場強度を計算した。
図15は、実施例1における金属粒子付近の電場強度の波長依存性を示すグラフである。図15には、シミュレーションの結果が示されている。図15において、横軸は励起光の波長を示し、縦軸は電場強度の2乗((V/m))を示す。データポイント51は、金属粒子2の表面より10nm離れた計測位置(図14におけるΔx=10nm)の電場強度の2乗の値を示す。データポイント52は、金属粒子2の表面より35nm離れた計測位置(図14におけるΔx=35nm)の電場強度の2乗の値を示す。電場強度の2乗は、増強度に相当する。図15から明らかなように、約500〜600nmの波長域で局在化表面プラズモン共鳴が生じている。
次に、蛍光体4として用いられたCy3の消光スペクトル及び蛍光スペクトルについて説明する。図16は、実施例1における蛍光体4の消光スペクトル及び蛍光スペクトルを示すグラフである。図16において、横軸は波長を示し、縦軸は消光度及び蛍光強度の各々の相対値を示す。ここでは、相対値は、消光スペクトル及び蛍光スペクトルの値の範囲を0から1の範囲で正規化して得られた値である。データポイント53は、消光スペクトルを示し、データポイント54は蛍光スペクトルを示す。
図15及び図16から、直径が50nmの金属粒子2で生じる局在化表面プラズモン共鳴の波長域と、Cy3を励起するための波長域及びCy3が放射する蛍光の波長域とが重なっていることがわかる。したがって、Cy3に入射する励起光及びCy3が放射する蛍光は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。
[励起光及び蛍光に対する増強度]
ここで、図15を参照しながら、532nmの波長を有する励起光に対する増強度について説明する。図15より、図13の(a)及び(b)に示す蛍光体4の位置での励起光に対する増強度は、以下のとおりである。
EF(532、35)=1.3
EF(532、10)=8.0
ここで、EF(λ、Δx)は、Δxの位置における波長λを有する光に対する増強度(電場強度の2乗)を表す。したがって、EF(532、35)が図13の(a)の蛍光体4の位置(Δx=35)での励起光に対する増強度を表し、EF(532、10)が図13の(b)の蛍光体4の位置(Δx=10)での励起光に対する増強度を表す。
これより、図13の(a)及び(b)に示す蛍光体4の位置では、励起光は、金属粒子2が存在しない場合よりも、それぞれ、1.3倍及び8倍に増強されることがわかる。この励起増強は、局在化表面プラズモン共鳴により励起光が金属粒子2の周辺に集められることで発生する。
次に、このような励起光によって蛍光体4が放射する蛍光に対する増強度について説明する。532nmの波長を有する励起光で励起されたCy3は、570nmのピーク波長を有する分光スペクトルを有する蛍光を放射する(図16の蛍光スペクトルを参照)。図15より、570nmの波長を有する蛍光に対する増強度は以下のとおりである。
EF(570、35)=2.4
EF(570、10)=13
これより、図13の(a)及び(b)に示す蛍光体4の位置では、Cy3から放射された蛍光は、金属粒子2が存在しない場合よりも、それぞれ、2.4倍及び13倍に増強されることがわかる。この放射増強は、局在化表面プラズモン共鳴により、金属粒子2の周辺の蛍光体4の量子収率が増加することで発生する。
Cy3の量子収率は、通常(周辺に金属粒子2が存在しない場合)は、0.15である。量子収率の最大値は1であるので、Cy3に対する放射増強の最大値は、1/0.15≒6.7である。したがって、増強度EF(570、Δx)の最大値は、6.7におさえられるので、EF(570、10)は以下の値に置き換えられる。
EF(570、10)=6.7
[表面増強蛍光の増強度]
表面増強蛍光は、励起増強と放射増強とにより発生するので、表面増強蛍光の増強度は、励起増強の増強度と放射増強の増強度との積で求められる。したがって、Cy3の表面増強蛍光の増強度は以下のように求められる。
SEF(35)=EF(532、35)×EF(570、35)=1.3×2.4=3.1
SEF(10)=EF(532、10)×EF(570、10)=8×6.7≒54
ここで、SEF(Δx)は、Δxの位置における表面増強蛍光の増強度を示す。
以上のように、本実施例では、複合体6に含まれる蛍光体4(Cy3)が放射する蛍光は、複合体6に含まれない蛍光体4(Cy3)が放射する蛍光と比べて、3.1〜54倍に増強された。
(実施例2)
次に、実施例1における抗体よりも小さい抗体を用いた場合における金属粒子2で生じる局在化表面プラズモン共鳴による増強度のシミュレーション結果を実施例2として説明する。実施例2では、実施例1と異なる点を中心に図17〜図19を参照しながら説明する。
[シミュレーションモデル及びシミュレーション結果]
本実施例では、実施例1で示したIgG抗体よりも小型の抗体であるフラグメント抗体F(ab’)2を第1物質3b及び第2物質5bとして用いた。このフラグメント抗体(F(ab’)2)は、IgG抗体を断片化した抗体であり、IgG抗体をタンパク質分解酵素であるペプシンで分解して得られる。F(ab’)2には、IgG抗体のN末端側のヒンジ部位が含まれており、2個の抗体結合部がヒンジ部位で結合している。F(ab’)2の大きさは、IgG抗体の半分程度であり、7nm程度である。
このF(ab’)2を用いて複合体6bを形成した場合、金属粒子2の表面と蛍光体4との距離は、第2物質5bが標的物質1と結合する位置(結合部位)によって異なる。図17は、実施例2における金属粒子2と蛍光体4との位置関係を示す図である。図17の(a)は、金属粒子2の表面と蛍光体4との距離の最大値(35nm程度)を示す。一方、図17の(b)は、金属粒子2の表面と蛍光体4との距離の最小値(10nm程度)を示す。
このF(ab’)2を用いて複合体6bが形成された場合、金属粒子2の表面と蛍光体4との距離は、第2物質5bが標的物質1と結合する位置(結合部位)によって異なる。図17は、実施例2における金属粒子2と蛍光体4との位置関係を示す図である。図17の(a)は、金属粒子2の表面と蛍光体4との距離の最大値(25nm程度)を示す。一方、図17の(b)は、金属粒子2の表面と蛍光体4との距離の最小値(7nm程度)を示す。
ここで、金属粒子2の周辺の電場強度を実施例1と同様にFDTD法を用いてシミュレーションした。このシミュレーションのモデルは、実施例1と同様であるので図示及び説明を省略する。
図18は、実施例2における金属粒子付近の電場強度の波長依存性を示すグラフである。図18には、シミュレーションの結果が示されている。図18において、横軸は励起光の波長を示し、縦軸は電場強度の2乗((V/m))を示す。データポイント61は、金属粒子2の表面より7nm離れた計測位置(図14におけるΔx=7nm)の電場強度の2乗の値を示す。また、データポイント62は、金属粒子2の表面より25nm離れた計測位置(図14におけるΔx=25nm)の電場強度の2乗の値である。図16及び図18から、実施例1と同様に、局在化表面プラズモン共鳴の波長域と、Cy3を励起するための波長域及びCy3が放射する蛍光の波長域とが重なっていることがわかる。したがって、Cy3に入射する励起光及びCy3が放射する蛍光は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。
[励起光及び蛍光に対する増強度]
ここで、図18を参照しながら、532nmの波長を有する励起光に対する増強度について説明する。図18より、図17の(a)及び(b)に示す蛍光体4の位置での励起光に対する増強度は、以下のとおりである。
EF(532、25)=2.0
EF(532、7)=13
これより、図17の(a)及び(b)に示す蛍光体4の位置では、Cy3から放射された蛍光は、金属粒子2が存在しない場合よりも、それぞれ、2倍及び13倍に増強されることがわかる。
次に、このような励起光によって蛍光体4が放射する蛍光に対する増強度について説明する。532nmの波長を有する励起光で励起されたCy3は、570nmのピーク波長を有する分光スペクトルを有する蛍光を放射する(図16の蛍光スペクトルを参照)。図18より、570nmの波長を有する蛍光に対する増強度は以下のとおりである。
EF(570、25)=3.7
EF(570、7)=20
これより、図17の(a)及び(b)に示す蛍光体4の位置では、Cy3から放射された蛍光は、金属粒子2が存在しない場合よりも、それぞれ、3.7倍及び20倍、に増強されることがわかる。この放射増強は、局在化表面プラズモン共鳴により、金属粒子2の周辺の蛍光体4の量子収率が増加することで発生する。
実施例1と同様に、Cy3の量子収率の最大値(=1)の制限により、Cy3に対する放射増強の最大値は、1/0.15≒6.7である。したがって、増強度EF(570、10)は、6.7におさえられるので、EF(570、10)は、実施例1と同様に以下の値に置き換えられる。
EF(570、7)=6.7
[表面増強蛍光の増強度]
表面増強蛍光は、励起増強と放射増強とにより発生するので、表面増強蛍光の増強度は、励起増強の増強度と放射増強の増強度との積で求められる。したがって、Cy3の表面増強蛍光の増強度SEF(Δx)は以下のように求められる。
SEF(25)=EF(532、25)×EF(570、25)=2.0×3.7=7.4
SEF(7)=EF(532、7)×EF(570、7)=13×6.7≒87
以上のように、本実施例では、複合体6bに含まれる蛍光体4(Cy3)が放射する蛍光は、複合体6b含まれない蛍光体4(Cy3)が放射する蛍光と比べて、7.4〜87倍に増強された。
[増強度の距離依存性]
実施例1及び実施例2から明らかなように、励起光及び蛍光に対する増強度は、金属粒子2からの距離によって変化する。そこで、励起光及び蛍光に対する増強度の距離依存性のFDTDシミュレーション結果について図19を参照しながら説明する。
図19は、実施例1及び2における金属粒子2付近の電場強度の距離依存性を示すグラフである。図19において、横軸は金属粒子2からの距離Δxを示し、縦軸は増強度を示す。データポイント71は、532nmの波長を有する励起光の増強度を示す。また、データポイント72は、570nmの波長を有する蛍光の増強度を示す。
図19に示すように、Δxが減少すれば増強度が増加するので、Δxが小さくなるように抗体のサイズ及び結合部位を選択することで、表面増強蛍光の増強度を増大することができる。ただし、蛍光体4と金属粒子2との距離Δxが5nmよりも小さくなると、蛍光体4から金属粒子2へ直接エネルギーが移動することによる蛍光消光(クエンチ)現象が発生するので、Δxが5nm未満になることは好ましくない(例えば非特許文献5を参照)。
以上のように、実施例1及び実施例2では、光源120として、実用性が高い広く普及している半導体励起固体(DPSS:Diode Pumped Solid State)レーザが用いることができ、実用的である。
また、実施例2では、実施例1よりも小型の抗体を利用することで、実施例1よりも更に表面増強蛍光の増強度を増大することができ、標的物質1をより高感度に検出することができる。
なお、実施例1及び実施例2のどちらの抗体でも、上述した各実施の形態において効果をもたらすことができる。
(変形例)
以上、本開示の1つまたは複数の態様に係る検出装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、この実施の形態に限定されるものではない。本開示の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の1つまたは複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
例えば、上記各実施の形態において、第1物質及び第2物質は、実施例1及び2で示したIgG抗体及びフラグメント抗体(F(ab’)2)に限定されない。例えば、F(ab’)2の代わりに、1個だけの結合部を有するFab’、Fab、Fv、scFv等のフラグメント抗体が用いられてもよい。また、ラクダ科動物(ラマ、アルパカ等)から得られる重鎖のみで構成される抗体(重鎖抗体)の可変領域の断片であるVHH(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)抗体(ナノボディ)が用いられてもよい。さらに、第1物質及び第2物質は、標的物質と特異的に結合する物質であれば抗体に限定されず、核酸分子、又は、ペプチドであるアプタマーであってもよい。
本開示は、簡単、高速、高精度に標的物質を検出するセンサデバイスに用いられる。
1 標的物質
2 金属粒子
3、3b 第1物質
4 蛍光体
5、5b 第2物質
6、6b 複合体
7、21、24 励起光
8 表面増強蛍光
9 蛍光
22 混合溶液
23、25 光
100、200、300 検出装置
110、210 試料収容部
211 基板
211a 表面
211b 裏面
212 プリズム
213 カバーガラス
120、220 光源
131 第1磁場印加部
132 第2磁場印加部
140 光検出器
141、143 光学レンズ
142 ロングパスフィルタ
150、350 制御部
351 信号発生器
352 ロックインアンプ

Claims (10)

  1. 磁性を有する金属粒子に固定された第1物質及び蛍光体で標識された第2物質を標的物質に結合させることにより複合体を形成し、
    前記蛍光体に蛍光を放射させ、かつ、前記金属粒子に局在化表面プラズモン共鳴を生じさせる所定の波長を有する励起光を所定領域に照射し、
    磁場勾配を印加して、前記複合体を前記所定領域に侵入及び/又は前記所定領域から離脱させ、
    前記所定領域からの蛍光を経時的に検出し、
    検出された前記蛍光の強度の変化量に基づいて前記標的物質を検出し、
    前記所定領域において、前記蛍光体が放射する蛍光は、前記金属粒子が生じる局在化表面プラズモン共鳴によって増強される、
    検出方法。
  2. 前記励起光の照射では、前記励起光を基板に照射することにより、前記所定領域に前記励起光の近接場を照射し、
    前記所定領域は、前記基板の表面近傍の領域である、
    請求項1に記載の検出方法。
  3. 前記磁場勾配の印加では、前記複合体を前記基板の表面から引き離す第1磁場勾配と、前記複合体を前記基板の表面に引き寄せる第2磁場勾配とを交互に繰り返し印加し、
    前記標的物質の検出では、前記第1磁場勾配の印加中又は印加後における前記蛍光の強度と、前記第2磁場勾配の印加中又は印加後における前記蛍光の強度との間の差異に基づいて、前記標的物質を検出する、
    請求項2に記載の検出方法。
  4. 前記磁場勾配の印加では、前記第1磁場勾配と、前記第2磁場勾配とを交互に一定周期で印加し、
    前記標的物質の検出では、前記蛍光の強度の時系列を示す信号のうち前記一定周期と同期する成分に基づいて前記標的物質を検出する、
    請求項3に記載の検出方法。
  5. 前記磁場勾配の印加では、検出された前記蛍光の強度が極小値になったときに、前記第1磁場勾配から前記第2磁場勾配に切り替え、検出された前記蛍光の強度が極大値になったときに、前記第2磁場勾配から前記第1磁場勾配に切り替える、
    請求項3に記載の検出方法。
  6. 磁性を有する金属粒子に固定された第1物質及び蛍光体で標識された第2物質を標的物質に結合させた複合体を含む試料を収容する試料収容部と、
    前記試料収容部内の所定領域に、前記蛍光体に蛍光を放射させ、かつ、前記金属粒子に局在化表面プラズモン共鳴を生じさせる所定の波長を有する励起光を照射する光源と、
    磁場勾配を印加して、前記複合体を前記所定領域に侵入及び/又は前記所定領域から離脱させる磁場印加部と、
    前記所定領域からの蛍光を経時的に検出する光検出器と、
    検出された前記蛍光の強度の変化量に基づいて前記標的物質を検出する制御部と、を備え、
    前記所定領域において、前記蛍光体が放射する蛍光は、前記金属粒子が生じる局在化表面プラズモン共鳴によって増強される、
    検出装置。
  7. 前記試料収容部は、前記励起光の照射により近接場を形成可能な基板を備え、
    前記光源は、前記基板に前記励起光を照射することにより、前記所定領域に前記励起光の近接場を照射し、
    前記所定領域は、前記基板の表面近傍の領域である、
    請求項6に記載の検出装置。
  8. 前記磁場印加部は、
    前記複合体を前記基板の表面から引き離す第1磁場勾配を前記試料に印加する第1磁場印加部と、
    前記複合体を前記基板の表面に引き寄せる第2磁場勾配を前記試料に印加する第2磁場印加部と、を有し、
    前記第1磁場印加部及び前記第2磁場印加部は、前記第1磁場勾配及び前記第2磁場勾配を交互に繰り返し印加し、
    前記制御部は、前記第1磁場勾配の印加中又は印加後における前記蛍光の強度と、前記第2磁場勾配の印加中又は印加後における前記蛍光の強度との間の差異に基づいて、前記標的物質を検出する、
    請求項7に記載の検出装置。
  9. 前記第1磁場印加部及び前記第2磁場印加部は、
    検出された前記蛍光の強度が極小値になったときに、前記第1磁場勾配から前記第2磁場勾配に切り替え、
    検出された前記蛍光の強度が極大値になったときに、前記第2磁場勾配から前記第1磁場勾配に切り替える、
    請求項8に記載の検出装置。
  10. 前記第1磁場印加部及び前記第2磁場印加部は、前記第1磁場勾配と前記第2磁場勾配とを交互に一定周期で印加し、
    前記制御部は、前記蛍光の強度の時系列を示す信号のうち前記一定周期と同期する成分に基づいて、前記標的物質を検出する、
    請求項8に記載の検出装置。
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