JP2020071136A - 計測装置及び計測方法 - Google Patents

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雅人 安浦
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Abstract

【課題】表面増強蛍光法を用いた検出対象物の検出感度の向上を実現できる計測装置等を提供する。【解決手段】計測装置は、検出対象物(計測対象分子1)と特異的に結合する第1物質であって蛍光体4が固定された第1物質(蛍光標識抗体5)及び検出対象物と特異的に結合する第2物質であって金属ナノ微粒子2が固定された第2物質(金属ナノ微粒子標識抗体3)と、検出対象物とを結合させた複合体を含む試料を収容する試料収容部と、試料収容部に収容された複合体に、蛍光体4が蛍光を生じる波長を有する励起光を照射する光源と、蛍光体4が生じた蛍光であって、励起光の照射により金属ナノ微粒子が発生する局在化表面プラズモン共鳴によって増強された蛍光を検出する検出器と、を備える。【選択図】図1

Description

本開示は、液体中に存在する計測対象分子の濃度または濃度域を光学的に計測する計測装置及び計測方法に関する。特に、金属ナノ微粒子の局在化表面プラズモン共鳴の作用によって蛍光を増強する表面増強蛍光法(Surface Enhanced Fluorescence Spectroscopy)を利用した濃度計測方法及び濃度域計測装置に関する。
近年、病原体による感染症の拡大や新規病原体の出現等の問題から、これらの病原体を検出できる装置の開発が急がれている。検出対象物(言い換えると計測対象分子)としては、病原性タンパク質等の分子、ウイルス(外殻タンパク質等)、細菌(多糖等)などが知られており、これらの検出対象物に対する、表面増強蛍光法を利用した高感度なセンサも開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、金属微粒子と蛍光体とが一体化された検出抗体が用いられる。これにより、蛍光体から発せられた蛍光は金属微粒子によるプラズモン共鳴で増強されるため、微量の検出対象物であっても増強蛍光によって検出することができる。
特開2008−216046号公報 特開昭62−38363号公報 特開2001−133455号公報 特開2010−19765号公報 国際公開第2017−187744号公報
Michael E. Jolley et al. Clinical Chemistry, vol.27, No7(1981) Kathryn L. Kellar et al. Experimental Hematology 30 1227-1237(2002) AimPlex_Multiplex_Immunoassay_User_Manual Rev 1.3.24 Yasuura, M. and Fujimaki, M. Sci. Rep. 6, 39241; doi: 10.1038/srep39241 (2016). Anger, P.; Bharadwaj, P.; Novotny, L. PhysRevLett.96.113002 (2006)
上述のセンサにおいては、検出抗体が検出対象物に結合していない遊離状態にあってもプラズモン共鳴によって増強された蛍光を発してしまう。つまり、背景光が上昇するため、検出の感度が低下してしまう。遊離状態の検出抗体を除去する方法も考えられ得るが、操作が複雑になり、検出に要する時間も増加する。
そこで本開示は、表面増強蛍光法を用いた検出対象物の検出感度の向上を実現できる計測装置等を提供する。
上記目的を達成するために、本開示に係る計測装置の一態様においては、検出対象物と特異的に結合する第1物質であって蛍光体が固定された第1物質及び前記検出対象物と特異的に結合する第2物質であって金属微粒子が固定された第2物質と、前記検出対象物とを結合させた複合体を含む試料を収容する試料収容部と、前記試料収容部に収容された前記複合体に、前記蛍光体が蛍光を発生する波長を有する励起光を照射する光源と、前記蛍光体が発生する蛍光であって、前記励起光の照射により前記金属微粒子が発生する局在化表面プラズモン共鳴によって増強された蛍光を検出する検出器と、を備える。
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータープログラムまたはコンピューター読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータープログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
本開示に係る検出装置及び検出方法により表面増強蛍光法を用いた検出対象物の検出感度の向上を実現できる。
本開示に係る原理を説明する第1図 本開示に係る原理を説明する第2図 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置の第1構成図 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置で得られる出力信号を表す第1グラフ 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置の操作を示す第1フローチャート 本開示に係る原理を説明する第3図 本開示に係る原理を説明する第4図 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置の第2構成図 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置で得られる出力信号を表す第2グラフ 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置の操作を示す第2フローチャート 本開示に係る原理を説明する第5図 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置の第3構成図 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置で得られる2次元画像 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置の操作を示す第3フローチャート 本開示に係る計測方法を実施するための計測装置の第4構成図 本開示に係る原理を説明する第6図 本開示に係る金属ナノ微粒子付近の電場強度の波長依存性を示す第1図 本開示に係る電場強度をシミュレーションする際の配置図 本開示に係る蛍光体の消光スペクトルと蛍光スペクトル 本開示に係る金属ナノ微粒子付近の電場強度の距離依存性を示す第1図 本開示に係る金属ナノ微粒子付近の電場強度の距離依存性を示す第2図 本開示に係る原理を説明する第7図 本開示に係る金属ナノ微粒子付近の電場強度の波長依存性を示す第2図
(本開示の基礎となった知見)
液体中に存在するタンパク質等の分子、ウイルス、細菌を特定して濃度を計測する技術としては、蛍光を利用した方法が広く用いられている。蛍光法とは、計測対象分子と、蛍光分子で標識した抗体とを抗原抗体反応させ、蛍光分子を励起できる光を照射し発生する蛍光を検出して、計測対象分子の濃度を計測する方法である。
[蛍光偏光免疫測定法]
例えば、蛍光偏光免疫測定法(Fluorescence Polarization Immunoassay)がある。この方法では、蛍光分子で標識された抗体(蛍光標識抗体)を含む溶液に、計測対象分子である抗原を含む被検溶液を混合させて、抗原抗体反応によって抗原抗体複合体を形成させ、抗原抗体複合体の形成前後の蛍光の偏光度の差より計測対象分子の濃度を計測する。これは、蛍光標識抗体が単体で存在している時は小さいので活発に回転運動しているが、抗原抗体複合体になると大きくなり、回転運動が抑制され、偏光度が増加する現象を利用している(特許文献2、非特許文献1参照)。
[免疫クロマトグラフ法]
他には、免疫クロマトグラフ法がある。これは、ニトロセルロース膜などを基材とした平板状の基板を用いた技術である。基板には計測対象分子と結合する抗体が固定化されている。この基板に、計測対象分子と蛍光標識された抗体(蛍光標識抗体)を含むサンプル溶液を滴下すると、蛍光標識抗体と結合した計測対象分子が固定化された抗体(固定化抗体)に捕捉される。ここに、光を照射すると、当該計測対象分子の濃度に応じた強度の蛍光が発生する。この蛍光を検出することで計測対象分子の濃度を計測することができる(特許文献3参照)。
[免疫クロマトグラフ法×表面増強蛍光]
免疫クロマトグラフ法を高感度化するために、表面増強蛍光を利用する技術もある。これは溶液を流す流路内に金属ナノ構造を形成した領域を設け、この金属ナノ構造上に計測対象分子と結合する抗体を固定化する。この流路に、計測対象分子と蛍光標識された抗体(蛍光標識抗体)を含むサンプル溶液を滴下すると、蛍光標識抗体と結合した計測対象分子が固定化された抗体(固定化抗体)に捕捉される。ここに、金属ナノ構造が局在化表面プラズモン共鳴を起こす波長の光を照射すると、蛍光標識抗体で発生した蛍光が増強され表面増強蛍光となる。この増強の程度を増強度と呼ぶ。表面増強蛍光の強度も、当該計測対象分子の濃度に応じて増加する。増強度は1〜3桁程度なので、表面増強蛍光は、通常の蛍光よりも1〜3桁程度高い強度を示す。従って、通常の蛍光としては、計測できないような低濃度の計測対象分子も計測できる(特許文献4参照)。
[エバネセント波を利用]
また、透明な基板の裏側から照射光を照射する裏面照射系を利用した方法がある。この方法は、基板の裏面から照射光を照射してエバネセント波を誘起して、基板の表面にある固定化抗体に補足された蛍光標識抗体にエバネセント波を照射して蛍光を発生させている。この方法の場合、エバネセント波は、抗体を固定化した基板表面から数百nmの領域のみを照射するので、表面から照射する場合と比べて、照射される計測対象分子と結合していない蛍光標識抗体(Free成分)の量を低減することができる。計測対象分子と結合していない蛍光標識抗体が放射する蛍光は、計測対象分子の濃度を反映しない、即ち単なるノイズ成分であり、計測対象分子と結合している蛍光標識抗体(Bind成分)が放射する蛍光の計測を妨害して計測精度を低下させる。従って、エバネセント波を利用して照射領域を制限することは有効である(特許文献1参照)。
[フローサイトメトリー]
被検溶液を透明な細管(フローセル)中に流し、1個毎に流れている細胞等の粒子にレーザ光などを照射して、発生した散乱光、蛍光を検出して、粒子を特定して計数するフローサイトメトリーがある。細胞を検出する際は、細胞の表面のタンパク質と特異的に結合する抗体を蛍光体で標識した蛍光標識抗体を用いる。
また、計測対象分子がタンパク質の場合は次の様にする。計測対象分子を挟んで特異結合(サンドイッチ結合)して抗原抗体複合体を形成する2種類の抗体を準備する。一方の抗体は捕捉用ビーズに固定化し、もう一方の抗体は蛍光体で標識して蛍光標識抗体とする。これらを、計測対象分子と抗原抗体反応させて、捕捉用ビーズ−計測対象分子−蛍光標識抗体の複合体を形成させる。そして、捕捉用ビーズ−計測対象分子−蛍光標識抗体の複合体を含む溶液から未結合の蛍光標識抗体を取り除いた後に、フローセルに流し、捕捉用ビーズ−計測対象分子−蛍光標識抗体の複合体で発生した蛍光を検出して、計測対象分子を特定して計数する(非特許文献2、3参照)。
[EFA-NI(External force-assisted near-field illumination)バイオセンサ]
更に、ウイルス等の粒子や、タンパク質等の計測対象分子を1個単位で計数できる方法もある。外力支援型近接場照明(EFA-NI)バイオセンサと呼ばれるこの方法では、まず粒子や計測対象分子を挟んで特異結合(サンドイッチ結合)して抗原抗体複合体を形成する2種類の抗体を準備する。一方の抗体は強磁性を有する磁性粒子に固定化し、もう一方の抗体は蛍光体または蛍光微粒子で標識して蛍光標識抗体とする。これらを、粒子や計測対象分子を含む被検溶液と混合して混合溶液を調製する。この混合溶液中で抗原抗体反応が進行して、抗原抗体複合体が形成される。裏面から光を照射すると近接場を発生する検出板の表面上に混合溶液を保持する。検出板の垂直方向に磁場勾配を印加して検出板の表面付近に混合溶液中の抗原抗体複合体を誘引する。ここで、抗原抗体複合体を近接場で照射し、表面側から混合溶液の2次元画像を取得すると、抗原抗体複合体は蛍光を放射する光点として2次元画像上に現れる。そして、検出板の表面と平行に磁場勾配を発生させると、2次元画像上の光点は磁場勾配方向に動く。この動く光点(動光点)を計数することで粒子や計測対象分子の数を1個単位で計測できる(特許文献5、非特許文献4参照)。
しかしながら、上述した蛍光偏光免疫測定法では、偏光度の違いを計測するために、偏光子の回転機構が必要になり装置が複雑になる。また偏光度の違いは抗原抗体複合体の形成前後の大きさの違いを反映しているので、蛍光標識抗体と比べて小さい分子を計測する場合は、偏光度の違いが小さいので、計測精度が低下する。さらに、被検溶液中に散乱性の物質が存在すると、偏光解消により、偏光度の違いを検出できない等の課題がある。
免疫クロマトグラフ法や、これに表面増強蛍光、エバネセント波を利用した方法では、計測対象分子は、基板上の固定化抗体と蛍光標識抗体とで抗原抗体複合体を形成している。
そして、この基板へ励起光を照射して蛍光の強度を計測している。この基板には、計測対象分子とは結合していない蛍光標識抗体が非特異吸着している。更に、被検溶液の蛍光を放射する共存物質も非特異吸着しているので、計測された蛍光の強度には、計測対象分子の濃度を反映している成分だけでなく、上記の非特異吸着の成分も含んでいる。従って、この非特異成分が精度を制限するという課題がある。
また、従来のフローサイトメトリーでは、未結合の蛍光標識抗体を除去する工程が必要になり、計測時間がかかる。
さらに、2次元画像の抗原抗体複合体からなる動光点を計数する方法は、次の理由から定量範囲(ダイナミックレンジ)に課題がある。抗原抗体複合体だけでなく未結合の蛍光標識抗体も近接場に照射される。このため、未結合の蛍光標識抗体も蛍光を放射して、背景画像の輝度(バックグラウンド)を上昇させている。バックグラウンドが上昇すると光点として認識が困難になるので、未結合の蛍光標識抗体の数を抑制する必要がある。このためには、被検溶液と混ぜる蛍光標識抗体の数を制限しなければならない。
定量可能な計測対象分子の数は蛍光標識抗体の数よりも小さくなるので、被検溶液と混ぜる蛍光標識抗体の数を抑制することで、定量範囲が制限される。上記の様に、光点として認識可能にするためには、蛍光標識抗体の数を抑制せざるを得ず、結果として計測対象分子の定量範囲が制限される。
(本開示の概要)
本開示における計測装置は、検出対象物と特異的に結合する第1物質であって蛍光体が固定された第1物質及び検出対象物と特異的に結合する第2物質であって金属微粒子が固定された第2物質と、検出対象物とを結合させた複合体を含む試料を収容する試料収容部と、試料収容部に収容された複合体に、蛍光体が蛍光を発生する波長を有する励起光を照射する光源と、蛍光体が発生する蛍光であって、励起光の照射により金属微粒子が発生する局在化表面プラズモン共鳴によって増強された蛍光を検出する検出器と、を備える。
これにより、検出対象物と複合体を形成した第1物質に固定された蛍光体から放射される蛍光は、同様に検出対象物と結合し、空間的に接近した第2物質に固定された金属微粒子によって増強され、輝度の高い蛍光として検出される。一方で複合体を形成していない第1物質(即ち遊離状態の第1物質)は第2物質が空間的に接近していないため、第1物質に固定された蛍光体が放射する蛍光は増強されず、複合体における増強された蛍光に比べて無視できる輝度である。よって遊離状態の第1物質を除去する必要がなく、高速かつ簡便な表面増強蛍光法を用いた測定により、検出対象物の検出感度の向上を実現できる。
また、本開示における計測装置は偏光を利用しなくてもよいため装置構成が簡単であり、また複合体の形成前後の分子の大きさの違いによる影響を低減することができ、計測対象分子の適用範囲が広い。
また例えば、蛍光体は蛍光微粒子に含まれ、蛍光微粒子は、内部に磁性粒子を含有し、計測装置はさらに、複合体を移動させる磁場を印加する磁場印加部を備え、検出器は、磁場により複合体を移動させた際に増強された蛍光の位置変化を検出する構成としてもよい。
これにより、第1物質及び複合体をそれぞれの光点の移動として計測でき夾雑物の影響を低減できる。また第1物質及び複合体を輝度の違いにより識別でき、計測対象分子のみを計数することができる。従って、遊離状態の第1物質が多く存在するような計測条件でも計測できるため、第1物質を増加させることが可能になる。つまり第1物質を高濃度に含む計測条件によって、定量可能な検出対象物の濃度範囲を拡大できる。
また、複合体が放射する蛍光は増強されているので、高輝度な光点が得られ、より鮮明な2次元画像が得られ、画像認識により動く光点を自動計数する際に有利である。さらに、複合体が放射する蛍光は増強されているので、より小粒径の蛍光微粒子が固定された第1物質も利用でき、複合体形成における反応速度を向上させることが可能になる。即ち計測を高速化できる。
また例えば、試料収容部は、さらに、励起光によって近接場を形成可能な基板を備え、蛍光は、局在化表面プラズモン共鳴に加え、近接場によってさらに増強される構成であってもよい。
これにより、励起される蛍光体を近接場の照射される範囲に存在するもののみに限定することができ、当該範囲内に位置する成分のみが蛍光を発することができる。従って近接場の照射されない領域に位置する成分による計測への影響を排除することができる。
また例えば、試料収容部は、複合体を含む試料が通流する流路を備え、光源は、流路内の複合体に励起光を照射する構成としてもよい。
これにより、流路を通流する整列された粒子に励起光を照射でき、未結合の第1物質及び第2物質と複合体とを出力信号の強度で識別できるので、未結合の粒子と複合体とを分離する分離工程(BF分離)が不要である。また複合体が放射する蛍光は増強されているので、高SNの出力信号が得られ、高速での計数が可能になる。つまり、混合溶液の流速を上げても正確に計数できるので、計測時間を短縮できる。
また、本開示における計測方法は、検出対象物と特異的に結合する第1物質であって蛍光体が固定された第1物質及び検出対象物と特異的に結合する第2物質であって金属微粒子が固定された第2物質と、検出対象物とを結合することにより複合体を形成し、複合体に、蛍光体が蛍光を発生する波長を有する励起光を照射し、蛍光体が発生する蛍光であって、励起光の照射により金属微粒子が発生する局在化表面プラズモン共鳴によって増強された蛍光を検出する。
これにより、検出対象物と複合体を形成した第1物質に固定された蛍光体から放射される蛍光は、同様に検出対象物と結合し、空間的に接近した第2物質に固定された金属微粒子によって増強され、輝度の高い蛍光として検出される。一方で複合体を形成していない第1物質(即ち遊離状態の第1物質)は第2物質が空間的に接近していないため、第1物質に固定された蛍光体が放射する蛍光は増強されず、複合体における増強された蛍光に比べて無視できる輝度である。よって遊離状態の第1物質を除去する必要がなく、高速かつ簡便な表面増強蛍光法を用いた測定により、検出対象物の検出感度の向上を実現できる。
また、本開示における計測方法は偏光を利用しないため計測が簡単であり、また複合体の形成前後の分子の大きさの違いには影響を受けず、計測対象分子の適用範囲が広い。
また例えば、蛍光体は、磁性粒子を含有する蛍光微粒子に含まれ、計測方法はさらに、複合体を移動させる磁場を印加し、蛍光の検出では、磁場により複合体を移動させた際の増強された蛍光の位置変化を検出してもよい。
これにより、第1物質及び複合体をそれぞれの光点の移動として計測でき夾雑物の影響を低減できる。また第1物質及び複合体を輝度の違いにより識別でき、計測対象分子のみを計数することができる。従って、遊離状態の第1物質が多く存在するような計測条件も実現できるため、第1物質を増加させることが可能になる。つまり第1物質を高濃度に含む計測条件によって、定量可能な検出対象物の濃度範囲を拡大できる。
また、複合体が放射する蛍光は増強されているので、高輝度な光点が得られ、より鮮明な2次元画像が有られ、画像認識により動く光点を自動計数する際に有利である。さらに、複合体が放射する蛍光は増強されているので、より小粒径の蛍光微粒子が固定された第1物質も利用でき、複合体形成における反応速度を向上させることが可能になる。即ち計測を高速化できる。
また例えば、励起光の照射では、複合体を含む試料が通流する流路内の複合体に励起光を照射してもよい。
これにより、流路を通流する整列された粒子に励起光を照射でき、未結合の第1物質及び第2物質と複合体とを出力信号の強度で識別できるので、未結合の粒子と複合体とを分離する分離工程(BF分離)が不要である。また複合体が放射する蛍光は増強されているので、高SNの出力信号が得られ、高速での計数が可能になる。つまり、混合溶液の流速を上げても正確に計数できるので、計測時間を短縮できる。
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態に関して図1〜15を用いて説明する。
[均一系の濃度定量に応用]
図1は、本実施の形態における原理を示す原理図で、タンパク質等の計測対象分子1が示されている。また、金属ナノ微粒子2(つまり金属微粒子)は金、銀等の金属からなり、金属ナノ微粒子標識抗体3は計測対象分子1と特異的に結合する抗体(つまり第2物質)で金属ナノ微粒子2が固定されている。蛍光体4は、有機分子、量子ドット等からなり、直径は10nm以下である。蛍光標識抗体5は計測対象分子1と特異的に結合する抗体(つまり第1物質)で、蛍光体4で標識されている。
またここでは、上記の第1物質と第2物質とは異なっている。第1物質と第2物質とが異なるとは、蛍光体4が固定された第1物質と、金属微粒子が固定された第2物質とに共有化される箇所がなく、それぞれが別個の物質として存在することを意味する。一方で、第1物質と第2物質とは、分子に限定はなく、第1物質と第2物質とは計測対象分子1と特異的に結合する性質を有した異種分子であってもよく、同種分子であってもよい。
また、蛍光標識抗体5は、複数の蛍光体4で標識されている場合もある。また、蛍光標識抗体5と金属ナノ微粒子標識抗体3とは、計測対象分子1の異なる部位と結合する。従って、図1に示すように、2つの抗体が計測対象分子1を挟んで結合(サンドイッチ結合)して抗原抗体複合体6を形成する。
金属ナノ微粒子2は直径が数nm〜数百nm程度で、特定の波長の光が照射されると局在化表面プラズモン共鳴が発生する。この局在化表面プラズモン共鳴が発生する波長域と、蛍光体4を励起する波長域または/及び蛍光体4が放射する蛍光の波長域が重なっていると、金属ナノ微粒子2の近傍にある蛍光体4が放射する蛍光の強度は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。この増強された蛍光を表面増強蛍光と称する。
本開示は、この増強現象を利用しており、この概要を図2〜4に示す。図2は、計測対象分子1、蛍光標識抗体5、金属ナノ微粒子標識抗体3が存在する混合溶液(即ち試料)中を示している。この混合溶液に、金属ナノ微粒子2で局在化表面プラズモン共鳴を発生させ、かつ蛍光体4を励起できる波長の励起光7を照射すると、抗原抗体複合体6を形成している蛍光標識抗体5の蛍光体4が、金属ナノ微粒子2で発生した局在化表面プラズモン共鳴の作用で増強された表面増強蛍光8を放射する。一方、抗原抗体複合体6を形成していない遊離の蛍光標識抗体5の蛍光体4は、金属ナノ微粒子2から離れているので、局在化表面プラズモン共鳴の作用を受けることができず増強されず、通常の蛍光9を放射する。
図3は、計測対象分子1の濃度を計測する場合の装置の例である。光学セル10は計測対象分子1、蛍光標識抗体5、金属ナノ微粒子標識抗体3を含む混合溶液11を保持する試料収容部の一例である。光学セル10は、すくなくとも2面が透明になっており、混合溶液11に励起光7を照射でき、混合溶液11中で発生した光を外部へ取り出せる。光源12は励起光7を発生させる。発生光13は混合溶液11中で発生した光の一部でレンズ14により略平行光にされ、ロングパスフィルター16に入射する。ロングパスフィルター16は、励起光7の波長は透過させないが、蛍光体4より放射された蛍光の波長は、透過させる。
従って、発生光13の内、散乱光はロングパスフィルター16によって遮断されるが、蛍光9及び表面増強蛍光8は透過してレンズ15に入射する。そして、レンズ15により集光されて光検出器17に入射する。光検出器17は、混合溶液11中で発生した蛍光9及び表面増強蛍光8の強度に相当する信号を出力する検出器の一例である。コンピューター18は、光検出器17の出力信号である蛍光9及び表面増強蛍光8の強度を解析して、計測対象分子1の濃度を算出する。さらに、コンピューター18は光源12の設定、制御機能を有している。
図4は、計測対象分子1の濃度が異なる被検溶液(言い換えると混合溶液11)を計測する際の光検出器17の出力信号の時間変化の様子を示す図である。光学セル10に被検溶液を保持させ、ここに蛍光標識抗体5と金属ナノ微粒子標識抗体3を含む溶液を添加し、混合して混合溶液11を調製する。図4で横軸は、添加混合した時点からの経過時間であり、縦軸は光検出器17の出力信号である。経過時間が0の時は、未結合の蛍光標識抗体5(つまり、蛍光標識抗体5が備える蛍光体4)が放射する蛍光による出力信号を反映している。図4においては、破線は被検溶液中の計測対象分子1の濃度が濃度ゼロ、一点鎖線は低濃度、実線が高濃度の場合の光検出器17の出力信号の変化を示す。
計測対象分子1が存在しない場合は、図1に示した抗原抗体複合体6が形成されないので、蛍光体4が放射する蛍光は増強されず破線の様に光検出器17の出力信号は変化しない。
一方、計測対象分子1が存在すると、図1に示した抗原抗体複合体6が形成され、金属ナノ微粒子2の作用で蛍光体4が放射する蛍光が増強される。抗原抗体複合体6の形成は抗原抗体反応により時間の経過と供に進む、即ち抗原抗体複合体6の数は、時間の経過と供に増加する。そして、抗原抗体反応が平衡に到達した時点で飽和する。このような抗原抗体反応の進行に応じて、光検出器17の出力信号が、一点鎖線と実線のように経過時間に対して変化する。
また、抗原抗体複合体6の数は計測対象分子1の数に依存するので、計測対象分子1の濃度が高い程、抗原抗体複合体6の数も増加して、光検出器17の出力信号も高くなる。計測対象分子1の濃度の違いが、一点鎖線と実線の違いに相当する。従って、標準溶液として計測対象分子1の濃度が既知の溶液を準備し、これらの標準溶液を計測して計測対象分子1の濃度に対する出力信号の高さの検量線を事前に作成しておく。この検量線を用いて、被検溶液に対する光検出器17の出力信号から計測対象分子1の濃度を算出することができる。
ここで、本装置の動作について一例として図5を用いて説明する。図5は本実施の形態に係る装置の動作を説明するためのフローチャートである。
例えば、あらかじめ調製された混合溶液11は、光学セル10に収容される(S101)。なお、混合溶液11の調製は、計測対象分子1を含む溶液、蛍光標識抗体5を含む溶液、及び金属ナノ微粒子標識抗体3を含む溶液の順不同な混合により行われる。
光源12は光学セル10に収容された混合溶液11に対し、励起光7を照射することで、混合溶液11に含まれる抗原抗体複合体6に対して励起光7を照射する(S102)。なお励起光7の照射は混合溶液11が収容されてから開始してもよく、収容される以前から連続的に照射してもよい。
装置は光検出器17によりロングパスフィルター16を通過した蛍光を検出し(S103)、蛍光強度に基づく信号を出力する。コンピューター18は、実装されたプログラム等により、出力された、蛍光強度に基づく信号を解析し、計測対象分子1の定性または定量的な検出結果を出力する。
以上の様に本実施の形態では、表面増強蛍光法を用いた測定により、検出対象物の検出感度の向上を実現できる。さらに偏光子の回転機構が不要で構成が簡単である。また抗原抗体複合体6の形成前後の大きさの違いには影響をうけず、計測対象分子1の選択範囲が広い。さらに、被検溶液中に散乱性の物質が存在しても検量線を作成することで影響を低減できる。
[フローサイトメトリーに応用]
また、本実施の形態の第1別例としては図6、7に示すような蛍光微粒子19を用いる例がある。蛍光微粒子19は、有機蛍光分子、無機蛍光体、量子ドット等を組込んだポリスチレン、アクリル等の樹脂またはガラスからなる、直径が数十nmから数百nmの微粒子である。これらの蛍光微粒子19は、樹脂やガラスに蛍光の失活防止剤を含ませることで光退色を低減できる、アミノ基、カルボキシル基をはじめ多様な表面修飾ができる、水中での分散性を上げることができる等、蛍光体4単体では実現が難しい特性を付与できる。さらに、蛍光体4よりもサイズが大きいので、蛍光微粒子19単体でも比較的容易に観測できる。
蛍光微粒子標識抗体20は計測対象分子1と結合する抗体であり、蛍光微粒子19が固定されている。図1の場合と同様に、蛍光微粒子標識抗体20と金属ナノ微粒子標識抗体3とは、計測対象分子1の異なる部位と結合するので、図7に示すように、2つの抗体が計測対象分子1を挟んで結合(サンドイッチ結合)して抗原抗体複合体6aを形成する。金属ナノ微粒子2で局在化表面プラズモン共鳴が発生する波長域と、蛍光微粒子19を励起する波長域または/及び蛍光微粒子19が放射する蛍光の波長域が重なっていると、金属ナノ微粒子2の近傍にある蛍光微粒子19が放射する蛍光の強度は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。
この増強現象の概要を図7に示す。図7は、計測対象分子1、蛍光微粒子標識抗体20、金属ナノ微粒子標識抗体3が存在する混合溶液中を示している。この混合溶液に、金属ナノ微粒子2で局在化表面プラズモン共鳴を発生させ、かつ蛍光微粒子19を励起できる波長の励起光7を照射すると、抗原抗体複合体6aを形成している蛍光微粒子標識抗体20の蛍光微粒子19が、金属ナノ微粒子2で発生した局在化表面プラズモン共鳴の作用で増強された表面増強蛍光8を放射する。一方、抗原抗体複合体6aを形成していない遊離の蛍光微粒子標識抗体20の蛍光微粒子19は、金属ナノ微粒子2から離れているので、局在化表面プラズモン共鳴の作用を受けることができず増強されず、通常の蛍光9を放射する。
図8は、本開示を蛍光フローサイトメーターへ利用した例である。計測対象分子1、蛍光微粒子標識抗体20、金属ナノ微粒子標識抗体3が存在する混合溶液22がフローセル21に注入される(つまり収容される)。なお、フローセル21は流路を備える試料収容部の一例である。この際、混合溶液22を包む鞘液(シース液)の流れ(言い換えるとシース流SF)が抗原抗体複合体6a、蛍光微粒子標識抗体20、金属ナノ微粒子標識抗体3等の微粒子を流体力学的に集中させるため、図8のように略一列に整列させる。
光源23は、略一列に整列した抗原抗体複合体6a及び6b、蛍光微粒子標識抗体20、金属ナノ微粒子標識抗体3等が通過する位置で集光する励起光7を照射する。なお、抗原抗体複合体6a及び抗原抗体複合体6bは実質的に同一であるが、ここでは抗原抗体複合体6bは励起光7が照射されている時点の複合体を示している。上記の励起光7が集光している位置で発生した発生光24は、レンズ25で略平行光になり、ロングパスフィルター26に入射する。ロングパスフィルター26は、励起光7の波長は透過させないが、蛍光微粒子19より放射された蛍光の波長は、透過させる。従って、発生光24の内、散乱光はロングパスフィルター26によって遮断されるが、蛍光9及び表面増強蛍光8は透過してレンズ27に入射する。
そして、レンズ27により集光されて光検出器28に入射する。光検出器28は、この励起光7が集光している位置で発生した蛍光9及び表面増強蛍光8の強度に相当する信号を出力する。コンピューター29は、光検出器28の出力信号を分析して、計測対象分子1の数を計数する。計数する場合の光検出器28の出力信号を図9に示す。図9で、抗原抗体複合体6a及び6b、蛍光微粒子標識抗体20、金属ナノ微粒子標識抗体3が励起光7を横切った際の光検出器28の出力信号をそれぞれ信号S6a及びS6b並びに信号S20及び信号S3により示す。
抗原抗体複合体6aが、励起光7を横切った際は金属ナノ微粒子2の作用で増強された表面増強蛍光8が発生したので、蛍光微粒子標識抗体20や金属ナノ微粒子標識抗体3が横切った際よりも出力信号が高い。なお、金属ナノ微粒子標識抗体3が横切る際は、蛍光は発生しないが、局在化表面プラズモン共鳴により強い散乱光が発生するので、ロングパスフィルター26で遮断しきれない成分により、わずかながら信号が観測される。ここで、適切な閾値を設定する。例えば、図9において出力信号が5以上の際に、抗原抗体複合体6aまたは6bが横切ったと判定すると、出力信号が5未満である蛍光微粒子標識抗体20及び金属ナノ微粒子標識抗体3が除外され、計測対象分子1のみを計数することができる。
ここで、本装置の動作について一例として図10を用いて説明する。図10は本実施の形態の第1別例に係る装置の動作を説明するためのフローチャートである。
例えば、あらかじめ調製された混合溶液22は、フローセル21に収容される(S201)。なお、混合溶液22の調製は、計測対象分子1を含む溶液、蛍光微粒子標識抗体20を含む溶液、及び金属ナノ微粒子標識抗体3を含む溶液の順不同な混合により行われる。
装置は、フローセル21に備えられた流路において混合溶液22を通流させる(S202)。
続いて光源23は、流路を通流する混合溶液22に対し、励起光7を照射することで、混合溶液22に含まれる抗原抗体複合体6a及び6bに対して励起光7を照射する(S203)。
装置は光検出器28によりロングパスフィルター26を通過した蛍光を検出し(S204)、蛍光強度に基づく信号を出力する。さらにコンピューター29に実装されたプログラム等は、出力された、蛍光強度に基づく信号を解析し、計測対象分子1の定性または定量的な検出結果を出力する。
なお、励起光7の照射は連続的に行うため、混合溶液22に含まれる抗原抗体複合体6a及び6bが流路を通過するたびに増強された蛍光が検出される。
上記の様に、抗原抗体複合体6a及び6bが横切った際の出力信号と、蛍光微粒子標識抗体20や金属ナノ微粒子標識抗体3単体が横切った際の出力信号とを区別することができるので、計測対象分子1のみを計数することができる。抗原抗体複合体6a及び6bが放射する蛍光は増強されているので、高SNの出力信号が得られるので、通常より高速で計数することが可能になる。これにより、混合溶液22の流速を上げても正確に計数できるので、より高速に混合溶液22を計測できる。
さらに、未結合の蛍光微粒子標識抗体20と抗原抗体複合体6aまたは6bとを出力信号の強度で識別できるので、未結合の蛍光微粒子標識抗体20を分離(BF分離)する工程が不要である。
[EFA-NIバイオセンサ(特許文献5、非特許文献4)に応用]
また、本実施の形態の第2別例を図11、12、13に示す。図11において、蛍光磁性微粒子30は、蛍光微粒子19と同様な蛍光微粒子の中にフェライト等の磁性体31(磁性粒子)を保持したもので、蛍光を放射すると供に強磁性も有する。言い換えると、蛍光磁性微粒子30は、その内部に磁性粒子を含有することによって強磁性を有した蛍光微粒子である。蛍光磁性微粒子標識抗体32は計測対象分子1と特異的に結合する抗体で、蛍光磁性微粒子30で標識されている。図6の場合と同様に、蛍光磁性微粒子標識抗体32と金属ナノ微粒子標識抗体3とは、計測対象分子1の異なる部位と結合するので、図11に示すように、2つの抗体が計測対象分子1を挟んで結合(サンドイッチ結合)して抗原抗体複合体6cを形成する。金属ナノ微粒子2で局在化表面プラズモン共鳴が発生する波長域と、蛍光磁性微粒子30を励起する波長域または/及び蛍光磁性微粒子30が放射する蛍光の波長域が重なっていると、金属ナノ微粒子2の近傍にある蛍光磁性微粒子30が放射する蛍光の強度は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。本例は、本開示を特許文献5、または非特許文献4に応用した例であり、図12を用いて説明する。
図12は、装置の全体を示す図である。プリズム34の表面上に検出板35を配置する。検出板35はつまり、プリズム34と併せて、近接場を形成可能な基板となる。さらに、検出板35の表面上に計測対象分子1、蛍光磁性微粒子標識抗体32と金属ナノ微粒子標識抗体3を含む混合溶液36を配置して、混合溶液36の表面上にカバーガラス37を配置する。即ち、混合溶液36を検出板35と透明なカバーガラス37で挟んで保持する(つまり収容する)。したがって、検出板35と、カバーガラス37とによって形成される間隙の空間を、本装置における試料収容部とみなすことができる。
光源38は、波長は光源12、23と同じで、検出板35の裏面に光学的に貼り合せたプリズム34を介して、混合溶液36と検出板35との界面における全反射条件で検出板35の裏面側から励起光39を照射するように配置する。検出板35は、裏面側から励起光39が照射されると、混合溶液36側の表面付近に、エバネセント場や増強電場等の近接場を形成する。近接場は、表面近傍のみに形成され、検出板35の表面から遠ざかるにつれて急激に減衰する性質を有するので、検出板35の表面近傍の混合溶液36にのみ照射される。
なお、検出板35の構成としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、単層で構成されてもよく、電場増強を目的とした積層体で構成されてもよい。
2次元画像検出部40は、検出板35の表面側に配され、励起光39の照射により混合溶液36中の検出板35の表面近傍で発生した光を結像させて2次元画像として検出する。つまり言い換えると、2次元画像検出部40は本例における検出器である。ここで、ロングパスフィルター(図示せず)が、2次元画像検出部40が備えるイメージセンサの受光面の直前に配置されており、蛍光だけがイメージセンサに受光されるので、検出板35の表面近傍で発生した蛍光のみが検出され2次元画像となる。この2次元画像では、検出板35の表面近傍に存在し蛍光を放射する微粒子が光点として現れる。抗原抗体複合体6cは、金属ナノ微粒子2の作用で蛍光磁性微粒子30の蛍光が増強されるので、明るい(高輝度な)光点として現れる。一方、蛍光磁性微粒子30単体では、金属ナノ微粒子2の作用による増強を受けないので、抗原抗体複合体6cの光点よりも暗い(低輝度な)光点としてしか現れない。もしくは背景(バックグラウンド)に隠れて、光点として識別できない。
引き寄せ磁場印加部41は、混合溶液36中に、図示したように下向き(検出板35の垂直方向)に磁場勾配(つまり下向きのベクトルをもつ第1磁場51)を発生させる。この第1磁場51により、混合溶液36中の蛍光磁性微粒子標識抗体32、抗原抗体複合体6cが検出板35の表面に引き寄せられる。この結果、混合溶液36中に存在する全ての抗原抗体複合体6c、蛍光磁性微粒子標識抗体32が、励起光39の近接場に照射される。同時に、2次元画像検出部40によって得られた2次元画像上に抗原抗体複合体6cが光点として現れる。
次に、掃引磁場印加部42によって、図示したように横方向(検出板35の水平方向)に磁場勾配(つまり横方向のベクトルをもつ第2磁場52)を発生させる。この第2磁場52により、混合溶液36中の蛍光磁性微粒子標識抗体32、抗原抗体複合体6cが横方向に移動する。つまり第2磁場52を印加する掃引磁場印加部42は、磁場印加部の一例である。ここで、抗原抗体複合体6cの移動は2次元画像検出部40によって得られた2次元画像上での光点P6cの移動として現れる。図13に2次元画像上での光点の移動の様子を示す。動く光点P6cを計数することで、計測対象分子1の数を計数できる。なお、蛍光磁性微粒子標識抗体32単体でも光点P32として現れる場合があるが、低輝度なため、抗原抗体複合体6cの光点P6cとは区別できる。
ここで、本装置の動作について一例として図14を用いて説明する。図14は本実施の形態の第2別例に係る装置の動作を説明するためのフローチャートである。
例えば、あらかじめ調製された混合溶液36は、前述の検出板35と、カバーガラス37とによって形成された間隙の空間に収容される(S301)。なお、混合溶液36の調製は、計測対象分子1を含む溶液、蛍光磁性微粒子標識抗体32を含む溶液、及び金属ナノ微粒子標識抗体3を含む溶液の順不同な混合により行われる。
引き寄せ磁場印加部41は、間隙の空間に配された混合溶液36に対して第1磁場51を印加する(S302)。なお、第1磁場51の印加は所定の期間行われる。所定の期間とは混合溶液36中に分散した抗原抗体複合体6cが検出板35の表面まで移動するための十分な時間であり、粒子の分散性や強磁性の度合いに応じて変化する。
続いて掃引磁場印加部42は、間隙の空間に配された混合溶液36に対して第2磁場52を印加する(S303)。
さらに光源38は励起光39を照射することで、検出板35の表面に近接場を形成する。形成された近接場は混合溶液36に含まれる抗原抗体複合体6cを照射する(S304)。
装置は2次元画像検出部40によりロングパスフィルター26を通過した蛍光を検出し(S305)、蛍光強度に基づく信号を出力する。このとき出力される信号は、検出板35の表面を平面視した蛍光強度の2次元画像である。装置はあらかじめ設定された時間間隔ごとに上記の2次元画像を出力するため、2次元画像上の蛍光強度の時間変化を示す動画像が得られる。つまり第2磁場52によって移動する、増強された蛍光の位置変化を検出できる。
なお、光照射は磁場印加前に開始してもよい。また、図示しないが、本装置はコンピューター等に接続されていてもよく、必要に応じて当該コンピューターに実装されたプログラム等により、出力された動画像を解析し、計測対象分子1の定性または定量的な検出結果を出力する。
上記の様に、抗原抗体複合体6cの光点P6cと、蛍光磁性微粒子標識抗体32単体の光点P32を、輝度の違いにより識別できるので、計測対象分子1のみを計数することができる。従って、蛍光磁性微粒子標識抗体32の数を増加させることが可能になり、定量範囲を拡大できる。
また、抗原抗体複合体6cが放射する蛍光は増強されているので高輝度な光点P6cが得られる。その結果、より鮮明な2次元画像が有られるので、光点P6c及びP32を自動的に画像認識することが容易になり、動く光点P6cを自動的に計数する際に有利である。さらに、抗原抗体複合体6cが放射する蛍光は増強されているので、より小粒径の蛍光磁性微粒子でも高輝度な光点P6cとして現れるので、より小粒径の蛍光磁性微粒子も利用できる。従って反応速度を向上させることが可能になり、計測を高速化できる。
[近接場に限定しない外力支援バイオセンサに応用]
図15は、本実施の形態の第3別例の装置の全体を示す図である。図15の混合溶液36は、図12の混合溶液36と同様に計測対象分子1、蛍光磁性微粒子標識抗体32と金属ナノ微粒子標識抗体3を含む。混合溶液36は、基板43と透明なカバーガラス44で挟んで保持する(つまり収容する)。したがって、基板43とカバーガラス44とによって形成される間隙の空間を、本装置における試料収容部とみなすことができる。光源45は、波長は光源12、23、38と同じで、基板43と透明なカバーガラス44に挟まれた混合溶液36に、励起光46を基板43の平面方向に向けて照射する。このように配置することで、混合溶液36全体を照射することができ、かつ励起光46が直接2次元画像検出部47に混入することを抑えられる。2次元画像検出部47は、励起光46の照射により混合溶液36中で発生した光を2次元画像として検出する。ここで、ロングパスフィルター(図示せず)が、2次元画像検出部47が備えるイメージセンサの受光面の直前に配置されており、蛍光だけがイメージセンサに受光されるので、蛍光のみが2次元画像となる。2次元画像検出部47の焦点深度は、混合溶液36の厚さ(基板43とカバーガラス44の間の長さ)より深く設定する。従って、2次元画像では、混合溶液36全体に存在する蛍光を放射する微粒子が光点として現れる。抗原抗体複合体6cは、金属ナノ微粒子2の作用で蛍光磁性微粒子30の蛍光が増強されるので、明るい(高輝度な)光点として現れる。一方、蛍光磁性微粒子標識抗体32単体では、金属ナノ微粒子2の作用による増強を受けないので、抗原抗体複合体6cの光点よりも暗い(低輝度な)光点としてしか現れない。もしくは背景(バックグラウンド)に隠れて、光点として識別できない。
ここで、掃引磁場印加部42によって、図示したように横方向(基板43の表面方向)に磁場勾配(つまり横方向のベクトルをもつ第3磁場53)を発生させる。この第3磁場53により、混合溶液36中の蛍光磁性微粒子標識抗体32、抗原抗体複合体6cが横方向に移動する。ここで、抗原抗体複合体6cの移動は2次元画像検出部47によって得られた2次元画像上での光点の移動として現れる。この動く光点を計数することで、計測対象分子1の数を計数できる。なお、蛍光磁性微粒子標識抗体32単体でも光点として現れる場合があるが、低輝度なため、抗原抗体複合体6cの光点とは区別でき、図13と同様な2次元画像が得られる。
ここで、本装置の動作について説明する。なお、本装置の基本的な動作については上述の第2別例における動作と同様であるため、ここでは第2別例と異なる点について述べ、重複する点については説明を省略する。
本装置は引き寄せ磁場印加部41を有しないため、図14のステップS302は不要である。つまり本装置は、図14のステップS301の後、図14のステップS303の動作を実行し、掃引磁場印加部42によって第3磁場53を印加する。続いて本装置は、図14のS304の動作を実行する。ここで、本装置において図14のS304にあたる動作では近接場の形成が行われない。本装置においては励起光46が混合溶液36に直接照射される。
その後、装置は図14のS305の動作を実行し、発生した蛍光を2次元画像検出部47によって検出する。
以上のようにして本装置は、計測対象分子1の定性または定量的な検出結果を出力する。
上記の様に、抗原抗体複合体6cの光点と、蛍光磁性微粒子標識抗体32単体の光点を、輝度の違いにより識別できるので、計測対象分子1のみを計数することができる。抗原抗体複合体6cが放射する蛍光は増強されているので高輝度な光点が得られる。その結果、より鮮明な2次元画像が有られるので、光点を自動的に画像認識することが容易になり、動く光点を自動的に計数する際に有利である。また、抗原抗体複合体6cが放射する蛍光は増強されているので、より小粒径の蛍光磁性微粒子でも光点として現れるので、より小粒径の蛍光磁性微粒子も利用できる。さらに、図12のように、引き寄せ磁場印加部41による引き寄せ工程が不要なため、高速化に有利である。
(実施例1)
本実施の形態における第1の実施例を以下に説明する。
以下、本実施例に関して図16〜21を用いて説明する。
本実施例は、図16における、計測対象分子1としては10nm程度の血清アルブミン、金属ナノ微粒子2としては直径が60nmの金コロイド、蛍光体4としては、1nm以下の有機シアニン系蛍光分子であるCyanine 3(Cy3、分子量:714、量子収率QY:0.15)、金属ナノ微粒子標識抗体3と蛍光標識抗体5は、15nm程度のモノクローナルIgG抗体に上述の金コロイド及びCy3をそれぞれ固定したものを用いた場合である。
これらが抗原抗体複合体6を形成した場合の、金属ナノ微粒子2の表面と蛍光体4との距離は、各抗体が計測対象分子1と結合する位置(結合部位)によって異なり、最大値(図16の(a)の位置関係)は35nm程度であり、最小値(図16の(b)の位置関係)は10nm程度になる。
金属ナノ微粒子2の局在化表面プラズモン共鳴による増強作用を示すため、金属ナノ微粒子2の周辺の電場強度をFDTD法(Finite-difference time-domain method)にて、シミュレーションした。このシミュレーションの条件は、図18に示した様に、水中に存在する直径が60nmの金コロイド60に−z方向に伝搬する平面波を照射する。この平面波の偏光方向がx方向の直線偏光で、電場強度は、1(V/m)であり、金コロイド60の表面からΔxだけ離間した計測位置61における電場強度を取得した。このシミュレーションの結果を図17の四角形、円形に示す。図17において、横軸は励起光の波長、縦軸は電場強度の2乗((V/m))を示す。四角形は、図18のΔx=10nm、即ち金コロイドの表面より10nm離れた位置の電場強度の2乗、円形は、図18のΔx=35nm、即ち金コロイドの表面より35nm離れた位置の電場強度の2乗である。この電場強度の2乗が増強度に相当する。図17から明らかな様に、500〜600nm付近に局在化表面プラズモン共鳴が見られる。
次に、蛍光体であるCy3の消光スペクトル、蛍光スペクトルを図19に示す。図19において、横軸は波長、縦軸は消光度、蛍光強度のピークを1とした際の相対値を示し、白抜き四角形のプロットは消光スペクトルを、白抜き円形のプロットは蛍光スペクトルを示す。
図17、19から、直径が60nmの金コロイドで発生する局在化表面プラズモン共鳴の波長域と、Cy3を励起する波長域、及びCy3が蛍光を放射する波長域が重なっていることがわかる。従って、Cy3が放射する蛍光の強度は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。
次に、励起光の波長が532nmの場合の増強度を算出する。波長がλで、位置がΔxの増強度(電場強度の2乗)をEF(λ、Δx)として表記すると、図17より、以下となる。
EF(532、10)=11
EF(532、35)=2
上記は励起光に対する増強度で、金属ナノ微粒子2が存在しない場合よりも、励起光の強度がそれぞれ、11倍、2倍になることを意味する。この励起増強は、局在化表面プラズモン共鳴により励起光を金属ナノ微粒子2が周辺に集めることで発生する。
波長が532nmの励起光で励起されたCy3は、図19の白抜き円形のプロットの様な570nmをピークとするスペクトルを有する蛍光を放射するので、波長が570nmの蛍光に対する増強度は図17より以下となる。
EF(570、10)=17
EF(570、35)=4
上記はCy3の蛍光に対する増強度で、金属ナノ微粒子2が存在しない場合よりも、蛍光の強度がそれぞれ、17倍、4倍になることを意味する。この放射増強は、局在化表面プラズモン共鳴により、金属ナノ微粒子2が周辺の蛍光体4の量子収率を増加させることで発生する。Cy3の量子収率は、通常(周辺に金属ナノ微粒子2が存在しない場合)は、0.15である。
量子収率の最大値は1であるので、Cy3に対する放射増強の最大値は、1/0.15≒7.7になる。従って、570nm、Δx=10nmに対する増強度は、7におさえられるので実際は以下になる。
EF(570、10)=7
表面増強蛍光は励起増強と放射増強により発生するので、表面増強蛍光の増強度は、励起増強の増強度と放射増強の増強度との積になる。従って、Cy3の表面増強蛍光の増強度は以下になる。
Δx=10nmでは、
EF(532、10)×EF(570、10)=11×7=77
Δx=35nmでは、
EF(532、35)×EF(570、35)=2×4=8
以上の様に、抗原抗体複合体6を形成すると、Cy3が放射する蛍光は、抗原抗体複合体6を形成していないCy3の放射する蛍光と比べて、8〜77倍になる。
上記の効果は、直径=60nmの金コロイドだけでなく、異なる直径の金コロイドでも得られる。図20、21に直径=20、30、40、50、60、70nmの金コロイドが、波長=532nm、570nmで発生する増強度(電場強度の2乗((V/m))を示す。
図20、21は図18で示した条件でFDTDシミュレーションした結果で、横軸はΔxで、縦軸は増強度を示す。四角形、円形、上向き三角形、下向き三角形、菱形、横向き三角形はそれぞれ直径=20、30、40、50、70nmの金コロイドが発生する増強度を示している。図20、21から明らかなように、直径が60nm以外の直径=20、30、40、50、70nmの金コロイドでも増強効果を示し、Δxが小さい方が、増強度が大きい。図16の(a)と図16の(b)で示したΔxの違いは、計測対象分子1と抗体との結合部位の違いによって生じる。図20、21で示した様にΔxが小さい方が、増強度が大きいので、Δxが小さくなる結合部位と結合する抗体を選択することで、より大きな効果を発揮できる。ただし、蛍光体4と金属ナノ微粒子2がΔx=5nmよりも接近すると、蛍光体4から金属ナノ微粒子2へ直接エネルギーが移動することによる蛍光消光(クエンチ)現象が発生するので、Δxを5nm未満になるまで接近させることは好ましくない(非特許文献5参照)。
さらに、本実施例は、光源としては実用性が高い広く普及している半導体励起固体(DPSS:Diode Pumped Solid State)レーザが用いることができ、実用的である。
(実施例2)
本実施の形態における第2の実施例を以下に説明する。
以下、本実施例に関して図22〜23を用いて説明する。本実施例では、実施例1で示したIgG抗体よりも小型の抗体であるF(ab')2を用いた例である。これは、IgG抗体を断片化した抗体で、IgG抗体をタンパク質分解酵素であるペプシンで分解した、N末端側のヒンジ部位を含んだ部分である。2個の抗体結合部がヒンジ部位で結合している断片で、IgG抗体よりも小型ではあるが、蛍光体4で標識可能である。F(ab')2の大きさは、IgG抗体の半分程度で、約7nm程度である。
この断片化抗体F(ab')を用いて抗原抗体複合体6dを形成した状態を図22に示す。図22において、蛍光標識断片化抗体48は、蛍光体4(Cy3)で標識された断片化抗体F(ab')である。また、金属ナノ微粒子標識断片化抗体49は、金属ナノ微粒子2(直径が60nmの金コロイド)で標識された断片化抗体F(ab')である。蛍光標識断片化抗体48と金属ナノ微粒子標識断片化抗体49が計測対象分子1を挟んで結合して抗原抗体複合体6dを形成する。これらが抗原抗体複合体6dを形成した場合の、金属ナノ微粒子2の表面と蛍光体4との距離は、各断片化抗体が計測対象分子1と結合する位置(結合部位)によって異なり、最大値(図20の(a)の位置関係)は25nm程度であり、最小値(図20の(b)の位置関係)は7nm程度になる。
金属ナノ微粒子2の局在化表面プラズモン共鳴による増強作用を示すため、金属ナノ微粒子2の周辺の電場強度を実施例1と同様にFDTD法にて、シミュレーションした。このシミュレーションの条件は、実施例1と同様である。
このシミュレーションの結果を図23の白抜き四角形、白抜き円形に示す。図23において、横軸は励起光の波長、縦軸は電場強度の2乗((V/m))を示す。図23の白抜き四角形は、図18のΔx=7nm、即ち金コロイドの表面より7nm離れた位置の電場強度の2乗を示す。また、図23の白抜き円形は、図18のΔx=25nm、即ち金コロイドの表面より25nm離れた位置の電場強度の2乗である。この電場強度の2乗が増強度に相当する。実施例1と同様に、直径が60nmの金コロイドで発生する局在化表面プラズモン共鳴の波長域と、Cy3を励起する波長域、及び蛍光を放射する波長域が重なっているので、Cy3が放射する蛍光の強度は、局在化表面プラズモン共鳴の作用により増強される。
次に、励起光の波長が532nmの場合の増強度を算出する。実施例1と同様に波長がλで、位置がΔxの増強度(電場強度の2乗)をEF(λ、Δx)として表記すると、図23より、以下となる。
EF(532、7)=18
EF(532、25)=3
上記は励起光に対する増強度で、金属ナノ微粒子2が存在しない場合よりも、励起光の強度がそれぞれ、18倍、3倍になることを意味する。この励起増強は、局在化表面プラズモン共鳴により励起光を金属ナノ微粒子2が周辺に集めることで発生する。
波長が532nmの励起光で励起されたCy3は、図19の白抜き円形のプロットの様な570nmをピークとするスペクトルを有する蛍光を放射するので、波長が570nmの蛍光に対する増強度は図23より以下となる。
EF(570、7)=26
EF(570、25)=5
上記はCy3の蛍光に対する増強度で、金属ナノ微粒子2が存在しない場合よりも、蛍光の強度がそれぞれ、26倍、5倍になることを意味する。この放射増強は、局在化表面プラズモン共鳴により、金属ナノ微粒子2が周辺の蛍光体4の量子収率を増加させことで発生する。実施例1と同様にCy3の量子収率の最大値(=1)制限により、Cy3に対する放射増強の最大値は、1/0.15≒7.7になる。従って、570nm、Δx=10nmに対する増強度は、7におさえられるので実際は実施例1と同様に以下になる。
EF(570、10)=7
表面増強蛍光は励起増強と放射増強により発生するので、表面増強蛍光の増強度は、励起増強の増強度と放射増強の増強度との積になる。従って、Cy3の表面増強蛍光の増強度は以下になる。
Δx=7nmでは
EF(532、7)×EF(570、7)=18×7=126
Δx=25nmでは、
EF(532、25)×EF(570、25)=3×5=15
上記の様に抗原抗体複合体6dを形成すると、Cy3が放射する蛍光は、抗原抗体複合体6dを形成していないCy3の放射する蛍光と比べて、15〜126倍になる。
本実施例では、実施例1よりも小型の抗体を利用することで、実施例1よりも更に大きな効果を発揮できる。
小型抗体としては、本実施例で示したF(ab')2だけでなく、結合部が1個だけのFab'、Fab、Fv、scFv等の断片化抗体でも良い。また、ラクダ科動物(ラマ、アルパカ等)から得られる重鎖のみで構成される抗体(重鎖抗体)の可変領域の断片であるVHH(variable domain of heavy chain of heavy chain antibody)抗体(ナノボディ)を用いても良い。さらに、計測対象分子と結合する物質でれば抗体に限定されず、核酸分子やペプチドであるアプタマーでも良い。
なお、本実施例も実施例1も、上述した全ての実施の形態において効果を有する。ただし、直径が蛍光体4と比較して大きい蛍光微粒子19や、蛍光磁性微粒子30の場合は、金属ナノ微粒子2の表面からの距離がΔxよりも、離れている部分があるので、効果は本実施例や実施例1において示した効果よりも、限定的である。
本開示は、簡単、高速、高精度に計測対象分子1の濃度を計測するセンサデバイスに用いられる。
1 計測対象分子
2 金属ナノ微粒子
3 金属ナノ微粒子標識抗体
4 蛍光体
5 蛍光標識抗体
6、6a、6b、6c、6d 抗原抗体複合体
7、39、46 励起光
8 表面増強蛍光
9 蛍光
10 光学セル
11、22、36 混合溶液
12、23、38、45 光源
13、24 発生光
14、15、25、27 レンズ
16、26 ロングパスフィルター
17、28 光検出器
18、29 コンピューター
19 蛍光微粒子
20 蛍光微粒子標識抗体
21 フローセル
30 蛍光磁性微粒子
31 磁性体
32 蛍光磁性微粒子標識抗体
34 プリズム
35 検出板
37、44 カバーガラス
40、47 2次元画像検出部
41 引き寄せ磁場印加部
42 掃引磁場印加部
43 基板
48 蛍光標識断片化抗体
49 金属ナノ微粒子標識断片化抗体
51 第1磁場
52 第2磁場
53 第3磁場
60 金コロイド
61 計測位置
P6c、P32 光点
S3、S6a、S6b、S20 信号
SF シース流

Claims (7)

  1. 検出対象物と特異的に結合する第1物質であって蛍光体が固定された第1物質及び前記検出対象物と特異的に結合する第2物質であって金属微粒子が固定された第2物質と、前記検出対象物とを結合させた複合体を含む試料を収容する試料収容部と、
    前記試料収容部に収容された前記複合体に、前記蛍光体が蛍光を発生する波長を有する励起光を照射する光源と、
    前記蛍光体が発生する蛍光であって、前記励起光の照射により前記金属微粒子が発生する局在化表面プラズモン共鳴によって増強された蛍光を検出する検出器と、を備える、
    計測装置。
  2. 前記蛍光体は蛍光微粒子内に含まれ、
    前記蛍光微粒子は、内部に磁性粒子を含有し、
    前記計測装置はさらに、前記複合体を移動させる磁場を印加する磁場印加部を備え、
    前記検出器は、前記磁場により前記複合体を移動させた際に前記増強された蛍光の位置変化を検出する、
    請求項1に記載の計測装置。
  3. 前記試料収容部は、さらに、前記励起光の照射により近接場を形成可能な基板を備え、
    前記蛍光は、前記局在化表面プラズモン共鳴に加え、前記近接場によってさらに増強される、
    請求項1、または2に記載の計測装置。
  4. 前記試料収容部は、前記複合体を含む試料が通流する流路を備え、
    前記光源は、前記流路内の前記複合体に前記励起光を照射する、
    請求項1に記載の計測装置。
  5. 検出対象物と特異的に結合する第1物質であって蛍光体が固定された第1物質及び前記検出対象物と特異的に結合する第2物質であって金属微粒子が固定された第2物質と、前記検出対象物とを結合することにより複合体を形成し、
    前記複合体に、前記蛍光体が蛍光を発生する波長を有する励起光を照射し、
    前記蛍光体が発生する蛍光であって、前記励起光の照射により前記金属微粒子が発生する局在化表面プラズモン共鳴によって増強された蛍光を検出する、
    計測方法。
  6. 前記蛍光体は、磁性粒子を含有する蛍光微粒子に含まれ、
    前記計測方法はさらに、前記複合体を移動させる磁場を印加し、
    前記蛍光の検出では、前記磁場により前記複合体を移動させた際の前記増強された蛍光の位置変化を検出する、
    請求項5に記載の計測方法。
  7. 前記励起光の照射では、前記複合体を含む試料が通流する流路内の前記複合体に前記励起光を照射する、
    請求項5に記載の計測方法。
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