JP2023067752A - 光学ガラスの製造方法 - Google Patents

光学ガラスの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2023067752A
JP2023067752A JP2022137613A JP2022137613A JP2023067752A JP 2023067752 A JP2023067752 A JP 2023067752A JP 2022137613 A JP2022137613 A JP 2022137613A JP 2022137613 A JP2022137613 A JP 2022137613A JP 2023067752 A JP2023067752 A JP 2023067752A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glass
component
less
content
refractive index
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2022137613A
Other languages
English (en)
Inventor
菜那 岩▲崎▼
Nana Iwasaki
和仁 小笠
Kazuhito Ogasa
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Ohara Inc
Original Assignee
Ohara Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Ohara Inc filed Critical Ohara Inc
Priority to CN202211264965.2A priority Critical patent/CN116062994A/zh
Publication of JP2023067752A publication Critical patent/JP2023067752A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Glass Compositions (AREA)

Abstract

【課題】成形工程後の光学ガラスの熱処理時間を短縮することができる光学ガラスの製造方法を提供する。【解決手段】原材料を混合する調合工程と、原料を熔融させて熔融ガラスとする熔融工程と、熔融ガラスの粘性を増加させつつ成形を行う成形工程とを含み前記成形工程においてガラスに対し水分の供給を行うことを特徴とする、光学ガラスの製造方法。【選択図】図1

Description

近年、光学系を使用する機器のデジタル化や高精細化が急速に進んでおり、デジタルカメラやビデオカメラなどの撮影機器や、プロジェクタやプロジェクションテレビ等の画像再生(投影)機器等の各種光学機器の分野では、光学系で用いられるレンズやプリズム等の光学素子の枚数を削減し、光学系全体を軽量化及び小型化する要求が強まっている。
光学ガラスを製造する中で、ガラス成分として、TiO、Nb、WO等の成分を含むとそれらの成分が熔融工程にて還元されやすい。そのため徐冷後のガラスに着色が生じる問題があるが、熱処理により着色が改善することが知られている。
例えば特許文献1では、TiO、Nb、WOなどの高屈折率成分を多量に含むリン酸塩系ガラスにおいて、熔融工程にて熔融雰囲気に水蒸気を付与する処理および熔融物内に水蒸気バブリングする処理を行うことで、熱処理後のガラスの着色改善効果を向上できる製造方法が記載されている。
特開2016-190788号
特許文献1で開示されたガラスでは、熔融工程において水を添加することでガラス中の水分量は高まり、熱処理後のガラスの着色改善効果が高まる点が記載されている。しかしながら、ガラスに対する水分供給が過剰になると、屈折率変化、結晶化の促進などの影響があることが知られており、安定したガラスを作る上で水分の制御が必要となる。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、性能変動や結晶化促進などの影響が少ない成形工程にて水分の供給を行うことにより、成形工程後の光学ガラスの熱処理時間を短縮することができる光学ガラスの製造方法を見出した。
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
(1) 原材料を混合する調合工程と、
原料を熔融させて熔融ガラスとする熔融工程と、
熔融ガラスの粘性を増加させつつ成形を行う成形工程と
を含み
前記成形工程においてガラスに対し水分の供給を行うことを特徴とする、光学ガラスの製造方法。
(2) (1)に記載の光学ガラスの製造方法であって、
前記光学ガラスは、酸化物換算組成のガラス全質量に対して、質量%で
15~40%
TiO 0%超~30%
Nb 60%以下、
WO 20%以下、
を含有することを特徴とする、光学ガラスの製造方法。
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、成形工程においてガラスに対し水分の供給を行うことで屈折率変動や結晶化の促進を抑えつつ、熱処理時間が短縮された光学ガラスを得ることである。
本発明の光学ガラスの製造方法によれば、酸化物の質量%でP 15~40%、TiO 5~30%、Nb 60%以下、WO 20%以下含有し、成形工程においてガラスに対して水の供給を行うことで、屈折率変動や結晶化を抑制しながら、熱処理時間が短縮されたガラスを得ることができる。
以下、本発明の光学ガラス及び光学ガラスの製造方法の実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所について、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
(ガラス成分)
本明細書中において各成分の含有量は特に断りがない場合、全て酸化物換算組成の全質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」は、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
本発明に係わるガラスはリン酸塩ガラスであり、網目形成酸化物として知られているSiO成分、B成分、P成分の中で、P成分を最も多く含有したガラスとしている。
成分は、ガラス形成成分であり、ガラスの熔融温度を下げる成分である。一方、 P成分の含有量を40.0%以下にすることで、所望の屈折率、アッベ数を得ることが出来る。他方で、酸化物換算組成のガラス全質量に対するP成分の含有量は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは18.0%以上、さらに好ましくは20.0%以上を下限とし、好ましくは40.0%以下とし、より好ましくは35.0%以下、最も好ましくは30.0%以下を上限とする。
成分は、原料としてAl(PO、Ca(PO、Ba(PO、BPO、HPO4、NaHPO、KHPO等を用いることができる。
Nb成分は、屈折率を高め、アッベ数を低くする成分である。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは35.0%以上、より好ましくは38.0%以上、さらに好ましくは40.0%以上を下限とする。
他方で、Nb成分の含有量を60.0%以下にすることで、ガラスの材料コストを低減でき、且つ耐失透性を高められる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは60.0%以下、より好ましくは58.0%以下、さらに好ましくは55.0%以下を上限とする。
Nb成分は、原料としてNb等を用いることができる。
TiO成分は、屈折率を高め、アッベ数を低くできる成分である。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.5%以上、さらに好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上を下限とする。
他方で、TiO成分の含有量を20.0%以下とすることで短波長側の透過率悪化を抑制することが出来る。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは30.0%以下、より好ましくは25.0%以下、さらに好ましくは20.0%以下を上限とする。
TiO成分は、原料としてTiO等を用いることができる。
WO成分は、屈折率及び耐失透性を高め、アッベ数を低くする成分である。
特に、WO成分の含有量を20.0%以下にすることで、過剰な含有による失透や、短波長側の透過率の低下を抑えられる。従って、WO成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下を上限とする。
NaO成分は、0%超含有する場合に、ガラス原料の熔融性を高められ、透過率を良好にできる成分である。従って、NaO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%超、さらに好ましくは0.5%超、さらに好ましくは1.0%超、さらに好ましくは1.5%超、さらに好ましくは2.0%超を下限とする。
他方で、NaO成分の含有量を15.0%以下にすることで、過剰な含有によるガラスの屈折率の低下や、失透を低減でき、リヒートプレス時の失透を抑制できる。従って、NaO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満を上限とする。
NaO成分は、原料としてNaCO、NaNO、NaF、NaSO、NaSiF等を用いることができる。
O成分は、0%超含有する場合に、溶融性を高め、透過率を良好にできる成分である。従って、KO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%超を下限としてもよい。
他方で、KO成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの安定性を維持し、かつ屈折率の低下を抑えられる。従って、KO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは12.0%以下、さらに好ましくは10.0%未満を上限とする。
O成分は、KCO、KNO、KF、KHF、KSO、KSiF等を用いることができる。
LiO成分はガラスの熔融性を改善でき、ガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、LiO成分の含有量を低減させることで、ガラスの屈折率を低下し難くし、かつガラスの失透及びリヒートプレス時の失透を低減できる。従って、LiO成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%未満を上限としてもよい。
LiO成分は、LiCO、LiSO、LiNO等を用いることができる。
BaO成分は、0%超含有する場合に、ガラス原料の熔融性を高められ、ガラスの失透を低減でき、屈折率を高められる任意成分である。また、高屈折率をもたらす成分の中では材料コストが低く、熔融し易い成分である。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%超、さらに好ましくは0.2%超、さらに好ましくは0.5%超を下限とする。
他方で、BaO成分の含有量を15.0%以下にすることで、過剰な含有によるガラスの屈折率の低下や、失透を低減できる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは12.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満を上限とする。
BaO成分は、原料としてBaCO、Ba(NO、Ba(PO、BaF2、等を用いることができる。
MgO成分、CaO成分及びSrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率や熔融性、耐失透性を調整できる任意成分である。
他方で、MgO成分、CaO成分及びSrO成分の含有量を5.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えることができ、かつこれらの成分の過剰な含有による失透を低減できる。従って、MgO成分、CaO成分及びSrO成分の含有量は、それぞれ好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%未満を上限とする。
MgO成分、CaO成分及びSrO成分は、原料として、MgCO3、MgO、MgF2、CaCO、CaF、Sr(NO、SrCO、SrF等を用いることが出来る。
SiO成分は、ガラス形成酸化物成分である。0%超含有する場合に、熔融ガラスの粘度を良好にし、化学的耐久性を高められる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.1%超、さらに好ましくは0.3%超を下限とする。
他方で、SiO成分の含有量を5.0%以下にすることで、ガラス転移点の上昇を抑えられ、かつ屈折率の低下を抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%未満を上限とする。
SiO成分は、原料としてSiO、KSiF、NaSiF等を用いることができる。
成分は、0%超含有する場合に、ガラス形成酸化物として任意に用いられる成分である。
他方で、B成分の含有量を5.0%以下にすることで、リヒートプレス時の失透性の悪化を低減でき、かつ化学的耐久性の悪化を抑えられる。従って、B成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは4.5%以下、さらに好ましくは4.0%未満を上限とする。
成分は、原料として、HBO、Na、Na・10H、BPO等を用いることができる。
ZnO成分は、0%超含有する場合に、原料の熔融性を高め、溶解したガラスからの脱泡を促進し、また、ガラスの安定性を高められる任意成分である。
他方で、ZnO成分の含有量を5.0%未満にすることで、屈折率の低下を抑えられ、かつ、過剰な粘性の低下による失透を低減できる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは5.0%未満、より好ましくは4.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満を上限としてもよい。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF等を用いることができる。
ZrO成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、かつ失透を低減できる任意成分である。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、さらに好ましくは1.0%超としてもよい。
他方で、ZrO成分の含有量を5.0%以下にすることで、過剰な含有による失透を低減できる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満を上限としてもよい。また、ZrO成分は含有しなくてもよい。
ZrO成分は、原料としてZrO、ZrF等を用いることができる。
La成分、GdO成分、Y成分、Yb成分及びTa成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、かつ耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、La、GdO、Y、Yb及びTa成分の含有量を5.0%以下にすることで、光学ガラスの原料コストを低減でき、また、原料の熔融温度が低くなり、原料の熔融に要するエネルギーが低減されるため、光学ガラスの製造コストも低減できる。従って、La成分、GdO成分、Y成分、Yb成分及びTa成分の合計含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満を上限としてもよい。
Bi成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高められ、アッベ数を低くでき、かつガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、Bi成分の含有量を5.0%以下にすることで、ガラスの液相温度を下げて耐失透性を高められる。従って、Bi成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満を上限としてもよい。特に、良好な透過率のガラスを取得するという観点では含有しないことが好ましい。
Bi成分は、原料としてBi等を用いることができる。
GeO成分は、0%超含有する場合に、屈折率及び耐失透性を高める成分である。
GeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とし、最も好ましくは含有しない。
GeO成分は、原料としてGeO等を用いることができる。
TeO成分は、ガラス原料の熔融性を高め、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低くし、且つガラス転移点を低くする成分である。
他方で、TeO成分の含有量が多いと、透過率を悪化させてしまう。従って、TeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とし、最も好ましくは含有しない。
TeO成分は、原料としてTeO等を用いることができる。
Ta成分は、屈折率を高める成分である。他方で、Ta成分の含有量が多いと、コストが増加し、また耐失透性の悪化を招く。
従って、Ta成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とする。
Ta成分は、原料としてTa等を用いることができる。
Ga成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高める分である。他方で、Ga成分の含有量が多いと、耐失透性の悪化を招く。
従って、Ga成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とし、最も好ましくは含有しない。
Ga成分は、原料としてGa等を用いることができる。
SnO成分は、熔融したガラスの脱泡を促進できる成分である。
他方で、SnO成分の含有量が多いと、ガラスが失透し易くなり、さらに熔融設備(特にPt等の貴金属)との合金化が起こり易くなる。従って、SnO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下を上限とする。
SnO成分は、原料としてSnO、SnO、SnF、SnF等を用いることができる。
Sb成分は、熔融したガラスの脱泡を促進できる成分である。
他方で、Sb成分の含有量が多いと、可視光透過率も低下し易くなり、さらに熔融設備(特にPt等の貴金属)との合金化が起こり易くなる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0.09%以下を上限とする。
Sb成分は、原料としてSb、Sb、NaSb・5HO等を用いることができる。
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSnO成分やSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
F成分は、0%超含有する場合に、ガラスのアッベ数を高め、ガラス転移点を低くし、かつ耐失透性を向上できる任意成分である。
しかし、F成分の含有量、すなわち上述した各金属元素の1種又は2種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとしての合計量が10.0%を超えると、F成分の揮発量が多くなるため、安定した光学恒数が得られ難くなり、均質なガラスが得られ難くなる。また、アッベ数が必要以上に上昇する。
従って、F成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満を上限としてもよい。
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
また、PbO等の鉛化合物及びAs等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物質として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
(光学ガラスの製造方法)
本発明の実施形態に係わるガラスは、上記所定の組成となるようにガラス原材料を調合し、調合したガラス原料を公知のガラス製造方法によって作製すればよい。例えば、ガラス原料を調合、混合してバッチ原料とし、バッチ原料を石英坩堝や白金坩堝などに入れてカレットを作製する。
得られたカレットは、所望の屈折率になるよう調合し、熔融工程にて熔融する。または所望の屈折率になるようガラス原料を調合、混合し、熔融工程にバッチ原料を投入してもよい。熔融されたガラスの粘性を増加させつつ成形工程においてガラスに対し水分の供給を行い、その後徐冷を実施する。更に徐冷後のガラスに再度熱処理を行うことにより着色を低減させることもできる。
成形工程において水分を供給する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、成形時に熔融ガラスを流し込む鋳型あるいは鋳型に水分の供給孔を設け、そこから成形空間へと供給する方法等が挙げられる。この場合、供給孔の形状、サイズ、数などは特に限定しないが、好ましくは丸型、さらに好ましくは四角型、サイズは開口径で0.1~10cm、数は1つ以上が好ましい。
成形工程において水分を供給する方法としては、鋳型からの供給とは別の方法で成形工程における雰囲気の水分量を増やしてもよい。例えば予め水分量を増加させた空気、不活性ガスを成形工程の雰囲気として使用しても良いし、ガラス成形工程の空間にノズルなどの水分供給手段を設けても良い。
図1~3は成形工程において水分を供給する具体的な態様を図示したものである。ここで図において矢印は供給される水分の流れを示している。図1は成形型11内に設置された水分供給口12から、図2は熔融ガラスを鋳型21に流し込む際の熔融ガラス流出口22付近に設置された供給口から、図3はガラス成形工程におけるガラス35の上方に設置された供給口32から、それぞれ供給するものである。
成形工程における雰囲気中の水分量を所定の範囲に保つため、成形工程を密閉或いは密閉に近い状態に保つこともできる。例えば鋳型自体に蓋(図1における13、図2における23、図3における33)を設け密閉状態としても良い。或いは成形工程全体あるいは一部を外気から隔離されたチャンバーで覆ってもよい。
水分を成形工程に供給する方向としては、例えば成形方向と同じ方向へ供給する方法や成形しているガラスに対して鉛直下向き方向へ供給する方法、邪魔板などで直接ガラスにあたらないように雰囲気制御する方法がある。
水分の供給方法としては、例として所定量のキャリアガスと水蒸気を別々に、或いは混合させて成形工程に送る方法がある。ガスの種類としては特に限定しながい、コスト面から空気が最も好ましく、ついで窒素などの不活性ガス、或いは酸素などが使用できる。キャリアガスについては、水蒸気との比率を調整しやすくし、品質を安定化するために、乾燥ガスを用いることが好ましい。
キャリアガスと水蒸気の割合としては供給流量比で、好ましくはガス80%、水蒸気20%、より好ましくはガス60%、水蒸気40%、更に好ましくはガス50%、水蒸気50%、更に好ましくはガス30%、水蒸気70%である。水蒸気比率は100%でも良いが結露の問題が発生しやすくなるため、水蒸気比率の上限は80%とするのが好ましい。水蒸気の代わりにガス換算で同体積になる水のミストを用いても良い。
前述の混合気体を使用する場合、成形工程における水分供給量としては、以下の水分を供給することで徐冷後のガラスの着色を低減出来る。ガラスを除いた鋳型体積を1Lとした場合の供給量としては、好ましくは0℃大気圧換算で0.3L/min以上、より好ましくは1L/min以上、更に好ましくは2L/min以上である。
他方、水分の供給量が多すぎると失透性が悪化し、またガラス表面の刺激によりガラス表面に失透が発生する。従って好ましくは30L/min以下、より好ましくは20L/min以下。更に好ましくは10L/min以下である。
水分を供給するための水の発生方法としては、気化器、バブリング、噴霧および超音波ミストなど特に限定しないが、高濃度の水蒸気を長時間安定的に供給するためには気化器を用いることが最も好ましい。気化器は水蒸気の発生源のみでも良く、安定化のために供給先のそばに追加で設定しても良い。気化器の温度は限定しないが200℃以上が好ましく、さらに好ましくは350℃以上が好ましい。
成形工程後の徐冷工程として、大気雰囲気で、ガラス転移温度(Tg)より0~20℃低い温度をレアー入口温度として設定するのが好ましく、保持時間は1~5時間程度が好ましい。所定の温度で保持した後、ガラス転移温度(Tg)より300~500℃低い温度まで3~15時間かけて徐冷することが好ましい。
さらにガラスの着色を低減させるため、成形工程後に再度熱処理を行ってもよい。
熱処理条件としては、所定の形状に加工したガラスを室温からガラス転移温度(Tg)より0~20℃低い温度まで2~3時間で昇温し、1~30時間保持し、その後20~30℃/hで降温することが好ましい。この再度の熱処理は着色が低減するまで保持時間を延長または複数回行っても良い。
[物性]
(屈折率及びアッベ数)
本発明の光学ガラスは、高い屈折率を有しながらも、より高い分散(低いアッベ数)を有する。
屈折率(n)は、1.75000以上が好ましい。本発明のガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.75000以上、より好ましくは1.77000以上、さらに好ましくは1.79000以上を下限とする。この屈折率(n)は、好ましくは2.05000以下、より好ましくは2.03000以下、さらに好ましくは2.01000以下を上限としてもよい。
また、本発明のガラスのアッベ数(ν)は、好ましくは15.00以上、より好ましくは15.50以上、さらに好ましくは16.00以上を下限とする。このアッベ数(ν)は、好ましくは24.0以下、より好ましくは23.5以下、さらに好ましくは23.0以下を上限とする。
(徐冷後の透過率)
本発明の光学ガラスは、特に徐冷後の着色が低減されていることが好ましい。徐冷後の着色が低減されていると、再度の熱処理時間が短くなる為である。
徐冷後の本発明のガラスの厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す最も短い波長(λ70)は、好ましくは1500nm以下、より好ましくは1450nm以下、さらに好ましくは1400nm以下を上限とする。
(熱処理後の透過率)
本発明の光学ガラスは、熱処理後の可視光透過率の透過率が高く、着色が少ないことが好ましい。徐冷後の熱処理されたガラスの透過率は、ガラスの厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す最も短い波長(λ70)が好ましくは500nm以下、より好ましくは490nm以下、さらに好ましくは480nm以下である。
(粘性)
本発明の光学ガラスの成形時の粘性は、ガラスの粘度をη(dPa・s)とした場合、logη1.5以下とすることで脈理や表面刺激の発生を抑制し、成形時の着色を低減する。従って好ましくは、logη1.5以下、より好ましくは1.3以下、更に好ましくはlogη1.0以下とする。
(実施例)
本発明の実施例(No.1~2)及び比較例(No.A、B)について、徐冷後の透過率の差異を比較した。結果を表1に示す。また実施例(No.3~5)及び比較例Cの屈折率(n)、アッベ数(ν)、徐冷後の透過率(λ70)、660℃で2~20時間アニール処理をした後の透過率(λ70)および成形時の粘性を表2に示す。なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
(バッチ原料)
本発明の光学ガラスは、酸化物換算組成でP 25.5% Nb 42.5% WO 5.4% TiO 17.0% BaO 1.6% NaO 4.3% KO 3.6% Sb 0.025%となるように原料を調整した。上記各成分の原料として、酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を使用した。
調合したバッチ原料を石英坩堝に投入し、1000~1350℃の温度範囲内で熔融し、鋳型に流し込んでカレットを取得した。次にカレットの屈折率を測定し、所望の屈折率になるようカレットを調合し、1000~1350℃の温度範囲内で1~10時間熔融させて攪拌均質化した後、適当な温度に下げた。
その後成形工程にて水分を供給しながら、鋳型に流し込み、徐冷することにより作製した。
水分の供給方法としては、ガラスを成形する鋳型(ここでは成形工程において密閉状態を保つための蓋なども含む)にφ4~φ8mm程度の複数の孔を設け、その孔から鋳型に銅管などのパイプを通して成形工程へ水分を供給した。孔の位置は、成形ダイス内(背板)、熔融ガラス流出ノズル横或いは成形途中(鋳型に設けられた蓋)とした。供給した水分の量は、2.0L/minであった。
なお、表2中「水分の供給の方向」について「成形方向」とは成形されたガラスの進行方向に対して平行となる方向を意味し、「鉛直下向き」とは成形されたガラスの進行方向に対して垂直となる方向を意味する。
また「水分の供給位置」について、「背板」とは図1に示すように鋳型背面から水分を供給する態様を意味し、「ノズル横」とは図2のように熔融ガラス供給ノズル付近から水分を供給する態様を意味し、「成形途中」とは図3のように、成形途中の段階で鋳型に設置された蓋などを介して水分を供給する態様を意味する。
成形後の徐冷は、大気雰囲気で、ガラス転移温度(Tg)より0~20℃低い温度にて1.5時間保持し、その後ガラス転移温度(Tg)より380~400℃低い温度まで4.5時間かけて徐冷した。
さらに徐冷後に熱処理を行った。熱処理条件としては、徐冷後の透過率測定サンプルとは別にガラスを縦50mm×横50mm×厚み20±1mmに加工したものを室温からガラス転移温度(Tg)より0~20℃低い温度まで2~3時間で昇温し、1~30時間保持し、その後ガラス転移温度(Tg)より200~220℃低い温度まで25℃/hで降温をした。
その後、縦方向15~30mm、横方向15~30mmを中心部、縦方向15~30mm、横方向0~15mmを端部として切り出し、上記の加工寸法、測定方法より透過率を測定し、中心部と端部の差が分光透過率70%を示す波長(λ70)で5nm以下となるまで熱処理保持時間を延長、または繰り返し試験を行った。
(屈折率及びアッベ数)
実施例及び比較例のガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)は、JIS B 7071-2:2018に規定されるVブロック法に準じて測定した。ここで、屈折率(n)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν)は、ヘリウムランプのd線に対する屈折率(n)と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n)の値を用いて、アッベ数(ν)=[(n-1)/(n-n)]の式から算出した。これらの屈折率(n)、アッベ数(ν)は、徐冷降温速度を-25℃/hrにして得られたガラスについて測定を行うことで求めた。
(透過率)
実施例及び比較例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格(JOGIS02-2019 光学ガラスの着色度の測定方法)に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200~2500nmの分光透過率を測定し、徐冷後のλ70(透過率70%時の波長)、熱処理後のλ70(透過率70%時の波長)を求めた。
(粘性)
実施例1~5、比較例A~Cに係る光学ガラスの成形時における粘性は、球引上げ式粘度計(有限会社オプト企業社製 型番BVM-13LH)を用いて測定温度範囲を熔融工程温度から成形温度(または1000~1400℃)とし、粘度η(dPa・s)を測定した。粘性は、測定した粘度ηの対数とし、成形時の温度における粘性を算出した。ここでいう成形時の温度は図14、24、34で示す流出時のパイプの温度であり、実施例1~5及び比較例A~Cにおいては、1130℃である。
Figure 2023067752000002
Figure 2023067752000003
表1より本発明の製法より製造された実施例1及び2の光学ガラスは、成形工程に水分の供給を行うことで徐冷後の分光透過率が70%を示す波長(λ70)が1290nm以下となった。
また、表2より、実施例3~5の光学ガラスは、いずれも屈折率(n)が1.95000以上であり、所望の範囲内であった。また本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν)が15.00以上24.00以下の範囲内にあり、所望の範囲内であった。そして熱処理後の透過率も良好であることが分かった。さらに熱処理時間2~4h改善された。
さらに、本発明の実施例の光学ガラスを用いて、ガラスブロックを形成し、このガラスブロックに対して研削及び研磨を行い、レンズ及びプリズムの形状に加工した。その結果、安定に様々なレンズ及びプリズムの形状に加工することができた。
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。
本発明に係る成形方法の実施に用いられる成形装置の例を示す概略構成図である。 本発明に係る成形方法の実施に用いられる成形装置の例を示す概略構成図である。 本発明に係る成形方法の実施に用いられる成形装置の例を示す概略構成図である。
11 成形鋳型(ダイス)
12 水分供給孔
13 蓋(天井板)
14 熔融ガラス流出ノズル
15 熔融ガラス
21 成形鋳型(ダイス)
22 水分供給孔
23 蓋(天井板)
24 熔融ガラス流出ノズル
25 熔融ガラス
31 成形鋳型(ダイス)
32 水分供給孔
33 蓋(天井板)
34 熔融ガラス流出ノズル
35 熔融ガラス

Claims (2)

  1. 原材料を混合する調合工程と、
    原料を熔融させて熔融ガラスとする熔融工程と、
    熔融ガラスの粘性を増加させつつ成形を行う成形工程と
    を含み
    前記成形工程においてガラスに対し水分の供給を行うことを特徴とする、光学ガラスの製造方法。
  2. 請求項1に記載の光学ガラスの製造方法であって、
    前記光学ガラスは、酸化物換算のガラス全質量に対して、質量%で、
    15~40%
    TiO 0%超~30%
    Nb 60%以下
    WO 20%以下
    を含有することを特徴とする、光学ガラスの製造方法。
JP2022137613A 2021-10-29 2022-08-31 光学ガラスの製造方法 Pending JP2023067752A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
CN202211264965.2A CN116062994A (zh) 2021-10-29 2022-10-17 光学玻璃的制造方法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2021177895 2021-10-29
JP2021177895 2021-10-29

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2023067752A true JP2023067752A (ja) 2023-05-16

Family

ID=86326125

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2022137613A Pending JP2023067752A (ja) 2021-10-29 2022-08-31 光学ガラスの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2023067752A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US10189740B2 (en) Optical glass, preform, and optical element
WO2012099168A1 (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP7195040B2 (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP2010105902A (ja) 光学ガラス及び分光透過率の劣化抑制方法
JP2012006788A (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP2023053164A (ja) 光学ガラスおよび光学素子
JP7503163B2 (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP2017190280A (ja) 光学ガラス
JP2015059060A (ja) 光学ガラス及び光学素子
JP6775874B2 (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP7076192B2 (ja) 光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子
JP7410634B2 (ja) 光学ガラス、プリフォーム及び光学素子
JP6537806B2 (ja) 赤外線透過ガラス、光学素子及びプリフォーム
JP2009018952A (ja) 光学ガラス
JP2017036210A (ja) 光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子
JP2014210694A (ja) 光学ガラス、プリフォーム材及び光学素子
JP6893749B2 (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2015164885A (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2006117503A (ja) 光学ガラス
JP2023067752A (ja) 光学ガラスの製造方法
TW201441174A (zh) 光學玻璃、預成形材及光學元件
JP2015163564A (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2015160757A (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP6635667B2 (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子
JP2013227197A (ja) 光学ガラス、レンズプリフォーム及び光学素子

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20220901