JP2023062276A - 成形体及びその処理方法 - Google Patents

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【課題】成形体の製造環境及び保管環境によらず、べたつきを抑制可能な成形体を提供するとともに、添加剤による良好な効果を発現させつつ、べたつきを抑制可能な成形体の処理方法を提供することを目的とする。【解決手段】熱可塑性樹脂と、ブリード性を有する添加剤とを含有する樹脂組成物からなる成形体であって、前記樹脂組成物中の添加剤含有量は、成形直後の成形体における前記添加剤による効果よりも前記成形体を所定時間加温処理した後の前記添加剤による効果の方が良好となる量である構成とする。【選択図】図1

Description

本発明は、熱可塑性樹脂及びブリード性を有する添加剤を含有する樹脂組成物からなる成形体及びその処理方法に関する。
熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる成形体は、容器や袋体などの包装体をはじめとして様々な用途に使用されている。樹脂組成物には、成形体の使用目的に応じて適宜添加剤が添加される。添加剤のうちでも、ブリード性を有する添加剤は、成形後の成形体表面に滲み出る(ブリードする)ことで所望の機能を発現することが知られている。ブリード性を有する添加剤として、防曇剤や帯電防止剤などが知られている。
たとえば、青果物などの食品を収容する合成樹脂フィルム製袋体においては、冷蔵中に水分が凝縮して袋体内の透明性を損なうのを抑制するために樹脂組成物中にブリード性を有する添加剤として防曇剤が添加される。このような添加剤は、添加量を増やすことで添加剤による効果(防曇効果)を高めることができる。
その一方で、添加剤の添加量が多くなるほど、べたつきによるフィルム同士のブロッキングが起こり、作業性や取扱性が低下するといった問題が生じる。このような問題を解決するため、特許文献1には、ポリエチレン系樹脂フィルムに特定の防曇剤を添加することが提案されている。
特開平4-279643号公報
しかしながら、ブリード性を有する添加剤の成形体表面へのブリード量は、成形体の製造環境及び成形体を実際に使用するまでの保管環境に大きく影響される。具体的には、成形体を夏季に製造して保管する場合には添加剤のブリード量が多くなり、成形体を冬季に製造して保管する場合には添加剤のブリード量は少なくなる。したがって、年間を通して良好な添加剤の効果の発現と、添加剤のブリードによるべたつきの抑制のバランスをとることは添加剤の変更だけでは不十分であるのが現状であった。
そこで、本発明においては、べたつきを抑制可能な成形体を提供するとともに、成形体の製造環境及び保管環境によらず、添加剤による良好な効果を発現させつつ、べたつきを抑制可能な成形体の処理方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様としての成形体は、熱可塑性樹脂と、ブリード性を有する添加剤とを含有する樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物中の添加剤含有量は、成形直後の成形体における前記添加剤による効果よりも前記成形体を所定時間加温処理した後の前記添加剤による効果の方が良好となる量である構成とすることができる。ここで、添加剤による効果とは、添加剤本来の効果(たとえば、添加剤が防曇剤の場合の防曇性能)のみならず、添加剤のブリードによる成形体のべたつき性をも合わせた総合的評価を意味する。
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンを主成分とする構成としてもよい。
前記添加剤が防曇剤であり、前記添加剤による効果が防曇性能であってもよい。
前記成形体の形状が、フィルム状乃至シート状、フィルム乃至シートから構成された製品、又は、フィルム乃至シートからなる帯状体又は筒状体がロール状に巻かれてなるロール状体であってもよい。
前記成形体の処理方法として、前記成形体を所定時間加温処理することができる。
前記加温処理温度は30℃~80℃としてもよい。
上記態様によれば、樹脂組成物中の添加剤含有量を、成形直後の成形体における添加剤による効果よりも成形体を所定時間加温処理した後の添加剤による効果の方が良好となる量としたため、成形体表面のべたつきを抑制することが可能となる。また、得られた成形体を所定時間加温処理することで成形体の製造環境及び保管環境によらず、添加剤による良好な効果を発現させつつ、べたつきを抑制することができる。
本実施形態の成形体の防曇性評価に用いる評価用パターン図
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の成形体は、熱可塑性樹脂と、ブリード性を有する添加剤とを含有する樹脂組成物からなる。熱可塑性樹脂は、押出成形、インフレーション成形、射出成形、ブロー成形など加熱溶融することで成形可能な樹脂とされる。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどを挙げることができるがこれに限定されるものではない。
熱可塑性樹脂は1種又は2種以上をブレンドして用いることができる。成形体が青果物などの食品用包装体である場合、熱可塑性樹脂としてポリオレフィンを好適に使用することができる。この場合、樹脂組成物としては、ポリオレフィンを主成分とし、主成分以外の熱可塑性樹脂を併用することも可能である。ポリオレフィンを主成分とする場合、樹脂組成物中のポリオレフィンの含有量としては、50質量%以上とすればよく、80質量%以上とするのが好ましく、90質量%以上とするのがより好ましい。
成形体を低温において使用する場合には、低温での強度が優れているという点でポリエチレンを用いることが好ましい。ポリエチレン(PE)としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)を挙げることができる。中でも、透明性及び剛性に優れているという点で、LLDPEを用いるのが好ましい。
添加剤は、熱可塑性樹脂に対してブリード性を有するものであり、具体的には、防曇剤や帯電防止剤を挙げることができるがこれに限定されるものではない。樹脂組成物中の添加剤含有量は、成形直後の成形体における前記添加剤による効果よりも成形体を所定時間加温処理した後の前記添加剤による効果の方が良好となる量とされる。
上記樹脂組成物には、その他の添加剤として本発明の目的を損なわない範囲で、一般的に用いられている酸化防止剤などの安定剤、染料、顔料などの着色剤、スリップ剤及びアンチブロッキング剤(AB剤)などを配合することができる。本発明の樹脂組成物は、そのまま単層に成形することができるほか、添加剤がブリードしてその効果を発揮する面と反対側の面に他の樹脂組成物を1層以上積層した積層構造とすることも可能である。
成形体の形状としては特に制限はないが、加温処理によるブリード量の影響が大きいという観点でいえば、フィルム状乃至シート状であることが好ましい。このフィルム乃至シートの厚みとしては、1μm以上とするのが好ましく、5μm以上とするのがより好ましい。また、1.0mm以下とするのが好ましく、0.5mm以下とするのがより好ましく、0.1mm以下とするのがさらに好ましい。成形体の形状としてはフィルム状乃至シート状に限定されず、フィルム乃至シートから構成された製品(包装用袋体、包装用容器等)であってもよく、フィルム乃至シートからなる帯状体又は筒状体がロール状に巻かれてなるロール状体であってもよい。
上記成形体を製造する場合、熱可塑性樹脂と添加剤とを混合して樹脂組成物を調整し、押出成形、インフレーション成形、射出成形、ブロー成形等によって成形体を成形すればよい。成形体をフィルム状乃至シート状に成形する場合には、インフレーション成形や、押出成形を好適に使用することができる。
得られた成形体は、所定時間加温処理される。加温処理(エージング処理)の処理温度としては、添加剤の種類によって適宜調整すればよいが、30℃以上とすることが好ましく、40℃以上とするのがより好ましい。また、80℃以下とすることが好ましく、60℃以下とするのがより好ましく、50℃以下とするのがさらに好ましい。加温処理の処理時間は、成形体の厚みによって変わるが12時間以上とすることが好ましい。また、168時間以下とすることが好ましく、144時間以下とするのがより好ましく、72時間以下とするのがさらに好ましい。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。なお、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。本実施例では、青果物を収容する包装用袋体を製造した。具体的に、熱可塑性樹脂としてポリエチレンを使用し、ブリード性を有する添加剤として防曇剤を添加して樹脂組成物を調製した。樹脂組成物は、インフレーション成形により、フィルム状の筒状体を成形し、これをロール状に巻き付けてロール状体を作製した。
成形体であるロール状体は、加温処理した後に製袋加工を施すことで包装用袋体を製造した。包装用袋体は、防曇性を評価するとともに、外装袋内に積み重ねた状態で収容し、外装袋から包装用袋体1枚を取り出す際の取扱性について評価を行った。なお、比較のため、成形体であるロール状体を加温処理することなく製袋して未加温処理の包装用袋体を製造し、防曇性及び取扱性を評価した。以下、その詳細について記す。
[樹脂組成物の調製]
樹脂組成物を構成する成分として以下のものを使用し、表1に示す配合によって樹脂組成物を調製した。なお、AB剤は、LLDPEをベース樹脂とするマスターバッチを使用し、ブリード性を有する添加剤(防曇剤)は、LDPEをベース樹脂とするマスターバッチを使用した。表中のAB剤量及び防曇剤量は有効成分量を示す。また、樹脂組成物のLLDPE量はAB剤のマスターバッチに含まれる少量のベース樹脂を合算した量を示し、LDPE量は防曇剤のマスターバッチに含まれる少量のベース樹脂を含めた量を示す。
・熱可塑性樹脂:LLDPE(密度:0.921g/cm、MFR:2.2g/10分)
・熱可塑性樹脂:LDPE(密度:0.929g/cm、MFR:1.3g/10分)
・AB剤:合成ゼオライト
・防曇剤:ポリグリセリン脂肪酸エステル及びポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有
[成形体の作製]
調製した樹脂組成物は、インフレーション成形により厚み30μmで連続筒状に成形した。筒状体はロール状に巻いてロール状体とした。なお、インフレーション成形は防曇性が発現しにくい傾向にある冬季に実施した。インフレーション成形条件は以下のとおりである。
・成形温度:180℃
・成形環境:10℃49%RH
[成形体の加温処理]
成形体であるロール状体を40℃に保たれた室内にて48hr静置することで加温処理を行った。加温処理後のロール状体は、筒状体を引き出して所定間隔にて筒状体の長さ方向と直交する方向に一定幅でヒートシールを行い、ヒートシール部に近接する位置で筒状体を溶断することで包装用袋体を製造した。
[成形体の評価]
(1)防曇性
評価用のパターンをプリントした紙の上に、水70mlを注水した透明カップを置き、検体(包装用袋体)の防曇性能を確認したい面を下にしてカップに被せて輪ゴムで密封した。その後、カップを5℃に維持した冷蔵庫内で2時間静置した。取り出したカップに被せたフィルム越しにカップの下に敷いた評価用パターンの見え方を観察し、以下の基準にて点数付けによる評価を行った。評価結果が4以上であれば実用レベルであると判断される。評価結果を表1に記す。なお、評価は3検体の平均値とした。
図1は、防曇性を評価する評価用パターン図である。図示のごとく、評価用パターンは赤色ベタ塗円環パターン1と、黒色ベタ塗円環パターン2とが間隔をあけて交互に同心状に配置されている。最も径が大きい赤色ベタ塗円環パターン1の外径Dは、4cmとされる。上記評価用パターンを用いた評価基準は以下のとおりである。
5:円が真円にはっきり見える(水滴が全くついていない)。
4:円が一部だけゆがんで見える(大きな水滴が1つ)。
3:部分的に円がゆがんで見える(2~10滴程度の水滴がある)。
2:赤い円と黒い円の違いは分かるが全体的にぼやけている。
1:大きい水滴によって赤い円と黒い円の違いが分からない。
0:細かい水滴によって赤い円と黒い円の違いが分からない。
(2)包装用袋体の取扱性
包装用袋体の取扱性について評価を行った。具体的には、検体を100枚重ねた束を外装袋に入れた。そして、外装袋に片手を入れ、検体を束の上から1枚摘み出した時の状態、及び、検体を親指と人差指とで1回検体をひねって袋の口が開くかどうかを評価した。評価に際しては、検体が収容された外装袋に50kgの錘を載せた状態で50℃、40%RHの環境下で8週間保管して長期保管時を想定した促進評価を行った。
評価は以下の基準にて点数付けして行った。防曇剤によるべたつきが大きくなるほど評価は低くなる。包装用袋体としては、促進評価が6点以上であれば実用レベルであると判断される。評価結果を表1に記す。なお、評価の数値は、3回検体を摘み出した結果をそれぞれ点数付けし、その平均値を用いた。
10:1枚のみ取出し可能で、取出した時点で袋全体が開く。
9:1枚のみ取出し可能。片手(の親指と人差指)で1回袋をひねって口が開く。
8:袋がくっつき2枚取りになるが取出した時点で各袋は袋全体が開く。
7:袋がくっつき2枚取りになる。1枚の袋を片手で1回ひねって口が開く。
6:袋がくっつき3枚以上取れるが取出した時点で各袋は袋全体が開く。
5:袋がくっつき3枚以上取れる。1枚の袋を片手で1回ひねって口が開く。
4:1枚のみ取出し可能。片手で1回袋をひねっても口が開かない。
3:袋がくっつき2枚取りになる。1枚の袋を片手で1回ひねっても口が開かない。
2:袋がくっつき3枚以上取れる。1枚の袋を片手で1回ひねっても口が開かない。
1:片手で、1回で袋をつまみ出せない。
(3)HAZE値
加温処理後の包装用袋体及び未加温処理の包装用袋体の透明性をJIS K7136に準拠して測定したHAZE値で評価した。一般的にHAZE値が10.0%以下であれば内容物が十分視認可能なレベルであると判断される。
Figure 2023062276000002
[評価結果]
表1より、防曇剤量が1920ppmと少ないNo.1及びNo.2は、加温処理の有無にかかわらず、防曇性の評価は低くなった。また、防曇剤量が3600ppm及び4200ppmと多いNo.7及びNo.8は、No.1及びNo.2よりも防曇性の評価は高くなったが、防曇剤のブリード量が多くなるため取扱性が低下する結果となった。
一方、防曇剤量が2040ppmであるNo.3及びNo.4、さらに防曇剤量が2280ppmであるNo.5及びNo.6は、未加温処理のままでは防曇性は低い(No.3及びNo.5参照)が、加温処理後には良好な防曇性を発現することがわかる(No.4及びNo.6参照)。また、防曇剤のブリード量も少ないことから加温処理後も良好な取扱性を維持することがわかった。
なお、今回のインフレーション成形条件としては樹脂組成物の加熱温度を180℃としているが、これをより高温の200℃としても、防曇性及び取扱性について同様の結果となった。これにより、成形条件を変更しても防曇剤のブリード量は調整することは困難であり、加温処理が必要であることがわかる。なお、No.1~No.8のフィルムを用いて作製した包装用袋体は、未加温処理の状態及び加温処理後の状態のいずれにおいてもHAZE値は10%以下であり、良好な透明性を備えていることが確認された。
以上より、成形体を構成する樹脂組成物中の添加剤含有量は、成形直後の成形体における添加剤による効果よりも成形体を所定時間加温処理した後の添加剤による効果の方が良好となる量に調整することで成形体のべたつきを抑えることが可能となる。その後、成形体は所定時間加温処理することで、成形体の製造環境及び保管環境によらず、添加剤の効果を良好に発現させることができる。
なお、成形体中の添加剤量は従来公知の方法を適宜用いることで定量することが可能である。定量分析の一例について説明すると、成形体がフィルム状乃至シート状の場合、カッター等により微細化した後、適当な溶媒にて抽出する。抽出液は溶媒を揮発させて固形物を回収し、ガスクロマトグラフ分析により検出ピークのリテンションタイムから添加剤の種類を同定する。添加剤が同定できれば検出ピークの面積より別途作成した検量線を用いて成形体中の添加剤を定量することができる。
成形体中の添加剤量を定量分析することにより、成形体中の添加剤含有量が成形直後の成形体における添加剤による効果よりも成形体を所定時間加温処理した後の添加剤による効果の方が良好となる量であるかどうか判定することが可能となる。
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。本実施形態では、熱可塑性樹脂として直鎖状低密度ポリエチレンを用いたが、これに限らず、他の熱可塑性樹脂とすることも可能である。また、本実施例では添加剤として防曇剤を用いた例について説明したがこれに限らず、他のブリード性を有する添加剤(たとえば、帯電防止剤等)であってもよい。
なお、実施形態及び上記変形例に開示されている構成要件は互いに組合せ可能であり、組合せることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
1 円環パターン(赤色ベタ塗)
2 円環パターン(黒色ベタ塗)

Claims (6)

  1. 熱可塑性樹脂と、ブリード性を有する添加剤とを含有する樹脂組成物からなる成形体であって、前記樹脂組成物中の添加剤含有量は、成形直後の成形体における前記添加剤による効果よりも前記成形体を所定時間加温処理した後の前記添加剤による効果の方が良好となる量である成形体。
  2. 前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィンを主成分とする請求項1~3に記載の成形体。
  3. 前記添加剤が防曇剤であり、前記添加剤による効果が防曇性能である請求項1又は2に記載の成形体。
  4. 前記成形体の形状が、フィルム状乃至シート状、フィルム乃至シートから構成された製品、又は、フィルム乃至シートからなる帯状体若しくは筒状体がロール状に巻かれてなるロール状体である請求項1~3のいずれか1項に記載の成形体。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の成形体を用いた成形体の処理方法であって、前記成形体を所定時間加温処理する成形体の処理方法。
  6. 前記加温処理温度が30℃~80℃である請求項5に記載の成形体の処理方法。
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