JP2023060401A - 排ガス浄化装置 - Google Patents

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Yuta Itakura
智章 砂田
Tomoaki Sunada
大 垣花
Masaru Kakihana
宏昌 鈴木
Hiromasa Suzuki
義輝 矢澤
Yoshiteru Yazawa
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Abstract

【課題】浄化作用の向上が図られる排ガス浄化装置を提供する。【解決手段】排ガス浄化装置1は、排ガス流路に配置され、基材11と、基材11に担持された触媒とを有するハニカム触媒10を有する。ハニカム触媒10は、隔壁13と、外周壁14とを備えたハニカム構造を有する。隔壁13は、排ガス流路100における排ガス流れ方向Xに貫通した複数のセル12を区画する。外周壁14は、隔壁13の外周側に設けられている。基材11は、セリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分としている。そして、ハニカム触媒10における排ガス流れ方向Xの上流側X1に位置する上流側端面10aには、隔壁13を切り欠いてなる切り欠き15が形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、排ガス浄化装置に関する。
自動車等の内燃機関の排ガス浄化装置として、浄化作用を有する触媒を基材に担持させた触媒担持構造を有するものが広く使用されている。近年、排ガス規制の厳格化に伴って、排ガス浄化用の触媒の早期活性化が要求されているが、上記触媒担持構造においては触媒を担持する基材が浄化作用に実質的に関与しておらず、全体として熱容量が大きくなり触媒の早期活性化が阻害されている。さらに、触媒作用を高めるために触媒とともに助触媒を基材に担持させることも行われている。しかしながら、通常、助触媒及び触媒は500℃程度の比較的低温の状態で担持されるため、1000℃程度の高温の排気環境においては助触媒及び触媒が凝集して触媒の表面積が減少して浄化作用が低下することから助触媒及び触媒の担持量を予め多くしておく必要があり、コスト高である。また、排ガスと触媒との接触面積を大きくするために、基材は例えば複数のセルを有するハニカム状とすることができる。しかしながら、セル壁の表面に助触媒及び触媒が担持された状態であるため、セルの目詰まりにより圧損が上昇しやすく、浄化作用が低下しやすい。
かかる触媒担持構造の問題を解消すべく、例えば、特許文献1には、助触媒であるセリア-ジルコニア固溶体を主原料として含むハニカム構造を有する基材に触媒を担持したハニカム触媒を用いることが開示されている。当該ハニカム触媒では、基材自身が助触媒を主原料として含むため、触媒作用に実質的に関与しない骨格を用いる必要がないとともに、従来のコージェライトなどに比べて軽量である。そのため、全体として熱容量を低減でき早期活性化を促すことができる。また、基材は助触媒を1100℃程度の高温で焼成した後、低温で触媒を当該基材に担持しているため、高温の排気環境においても助触媒の凝集が抑制されるとともに、これに伴って触媒の凝集も低減される。そのため、触媒の表面積の減少が抑制されて浄化作用の低下が防止される。また、助触媒及び触媒を担持させる場合に比べて、基材表面に助触媒を担持させる必要がないため、圧損の上昇が抑制されて浄化作用の低下が防止される。
一方、排ガスは高温となるため、使用に際してハニカム触媒の熱膨張に起因してハニカム触媒にクラックが生じるおそれがある。これに対して、特許文献1に開示の構成では、ハニカム触媒の外周壁に、排ガス流れ方向に連続したスリットを設けることにより、外周壁において、熱応力が特定の箇所に集中することを抑制して、クラックの発生を抑制している。
特開2019-25463号公報
しかしながら、特許文献1に開示のハニカム触媒では、基材表面に助触媒を担持させる必要がないため、セルにおける見かけの水力直径が大きくなり、排ガスの吹き抜けを生じるおそれがある。その結果、排ガスと触媒の接触頻度が低下して、浄化作用が低下するおそれがある。
また、特許文献1に開示の構成では、ハニカム触媒の外周壁にスリットが設けられているため、ハニカム触媒を保持するための荷重に対して、外周壁の形状が維持されにくくなり、ハニカム触媒内部の隔壁における応力が増加して隔壁の破損を招くおそれがある。また、外周壁に設けられたスリットを介して排ガスが外部に漏洩するおそれもある。
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたもので、浄化作用の向上が図られる排ガス浄化装置を提供しようとするものである。
本発明の一態様は、排ガス流路(100)に配置されてなる排ガス浄化装置(1)であって、
上記排ガス流路における排ガス流れ方向に貫通した複数のセル(12)を区画する隔壁(13)と該隔壁の外周側に設けられた外周壁(14)とを備えたハニカム構造を有する基材(11)と、該基材に担持された触媒とを有するハニカム触媒(10)を有し、
上記基材は、セリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分とし、
上記ハニカム触媒における上記排ガス流れ方向の上流側に位置する上流側端面(10a)には、上記隔壁を切り欠いてなる切り欠き(15)が形成されている、排ガス浄化装置にある。
上記排ガス浄化装置においては、基材がセリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分とする。これにより、全体として熱容量を低減でき早期活性化を促すことができる。これとともに、比較的低温で触媒を当該基材に担持させることができるため、高温の排気環境においても助触媒及び触媒の凝集は低減され、触媒の表面積の減少が抑制されて浄化作用の向上が図られる。また、助触媒及び触媒を担持させる場合に比べて、基材表面に助触媒を担持させる必要がないため、圧損の上昇が抑制されて浄化作用の向上が図られる。
そして、基材はセリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分とするため、基材表面に助触媒を担持させる必要がなく、貫通孔における見かけの水力直径が大きくなる。これに対して、ハニカム触媒における排ガス流れ方向の上流側に位置する上流側端面には、隔壁を切り欠いてなる切り欠きが形成されているため、当該上流側端面に到達した排ガスの流れが乱されることとなり、排ガスの吹き抜けが抑制され、排ガスと触媒の接触頻度が上昇して浄化作用の向上が図られる。
また、隔壁の外周側に設けられた外周壁には切り欠きやスリットを設ける必要がないため、ハニカム触媒を保持するための荷重に対して外周壁の形状を維持でき、保持荷重による隔壁の破損を防止することができる。また、切り欠きは外周壁に設ける必要がないため、当該切り欠きを介して外周壁から外部に排ガスが漏洩することもない。
以上のごとく、上記態様によれば、浄化作用の向上が図られる排ガス浄化装置を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
実施形態1における、排ガス浄化装置の構成を示す概念断面図。 実施形態1における、(a)ハニカム触媒の構成を示す概念図、(b)その上流側端面における隔壁の一部拡大図。 実施形態1における、ハニカム触媒の上流側端面の正面図。 実施形態1における、確認試験1の結果を示す図。 実施形態1における、確認試験2の結果を示す第1の図。 実施形態1における、確認試験2の結果を示す第2の図。 実施形態1における、確認試験3の結果を示す図。
(実施形態1)
上記排ガス浄化装置の実施形態について、図1~図7を用いて説明する。
本実施形態の排ガス浄化装置1は、図1に示すように、排ガス流路100に配置される。そして、排ガス浄化装置1は、基材11と、基材11に担持された触媒とを有するハニカム触媒10を有する。
図2に示すように、ハニカム触媒10は、隔壁13と、外周壁14とを備えたハニカム構造を有する。隔壁13は、排ガス流路100における排ガス流れ方向Xに貫通した複数のセル12を区画する。外周壁14は、隔壁13の外周側に設けられている。
基材11は、セリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分としている。
そして、ハニカム触媒10における排ガス流れ方向Xの上流側X1に位置する上流側端面10aには、隔壁13を切り欠いてなる切り欠き15が形成されている。
以下、本実施形態の排ガス浄化装置1について、詳述する。
図1に示すように、排ガス浄化装置1は金属製のケーシング30を有する。ケーシング30内に、ハニカム触媒として上流側X1のハニカム触媒10及び下流側X2のハニカム触媒20が保持されている。ケーシング30の第1端部31は開口しており、排ガス流路100の上流側X1に接続されている。ケーシング30の第2端部32は開口しており、排ガス流路100の下流側X2に接続されている。これにより、排ガスF1が排ガス浄化装置1に流入し、浄化されて排ガスF2として排出される。
上流側X1のハニカム触媒10を構成する基材11はセリア-ジルコニア固溶体を主原料として含む。セリア-ジルコニア固溶体は、助触媒として機能する。助触媒とは、自分単独では触媒作用をもたらせないが、所定の触媒における触媒反応を補助する作用をもたらすものをいう。例えば、基材11は、はセリア-ジルコニア固溶体を主成分とする原料粒子と、該原料粒子同士を接合する無機バインダを含む材料とから構成することができる。また、基材11は、貴金属を含んでいてもよい。当該貴金属としては、触媒作用をもたらす金、銀、銅、白金、パラジウム、ロジウムなどを採用することができる。無機バインダとしては、γ-アルミナ、θ-アルミナ、α-アルミナなどの他に公知のものを採用することができる。中でも無機バインダとして、γ-アルミナを採用することが好ましい。γ-アルミナは立方晶系の結晶構造を有して比表面積が高いため、触媒作用の向上に寄与する。一方、無機バインダとしてγ-アルミナ、θ-アルミナ、α-アルミナのうちのいずれかまたは全てを共存させてもよい。これにより、基材11の製造工程において、より高い焼成温度で基材11を焼結させることができ、高温となる排ガス流通において上流側X1のハニカム触媒10のハニカム構造を維持しやすくなる。本実施形態では、基材11は無機バインダとしてのγ-アルミナと助触媒としてのセリア-ジルコニア固溶体とからなるACZ基材とした。
基材におけるセリア-ジルコニア固溶体の重量比率は限定されないが、本実施形態1では25~75重量%の範囲内とすることが好ましい。セリア-ジルコニア固溶体の重量比率が25%よりも小さい場合は、助触媒としての作用が十分確保できず、貴金属触媒の触媒作用を促進しにくくなる。セリア-ジルコニア固溶体の重量比率は、38重量%以上とすることがより好ましい。この場合は基材11の細孔特性の向上が図られ、貴金属触媒に対する低温活性改善効果が奏されるからである。一方、セリア-ジルコニア固溶体の重量比率が75重量%を超えるとバインダが不足して強度の低下を招くため、セリア-ジルコニア固溶体の重量比率が75%重量以下とすることが好ましい。
図2(a)に示すように、基材11はハニカム構造を有している。ハニカム構造とは、排ガスの流路となる複数のセル12を区画形成する多孔質の隔壁13と、隔壁13の最外周に位置する外周壁14とを有する構造である。本実施形態では、各セル12における排ガス流通方向Xの両端部は目封じされずに開放されており、各セル12は排ガス流通方向Xにおいて両端部に亘って連通している。排ガス流通方向Xに直交する断面におけるセル12の形状は特に限定されず、図2に示すように四角形としたり、これに替えて六角形としたりすることができる。隔壁13の壁厚tは及び隔壁13の間隔pは適宜設定することができるが、本実施形態では、間隔pを0.898mm、セル壁厚tを90μmとしている。
基材11には、図示しない触媒が担持されている。本実施形態では、触媒としてPt、Pd、Rhを含む三元触媒を採用している。基材11に触媒とともにさらに助触媒を担持させてもよい。
図2に示すように、ハニカム触媒10の外形は円柱形をなしており、高さ方向が排ガス流通方向Xに一致するように配されている。ハニカム触媒10の大きさは限定されないが、本実施形態では、直径103mm、長さ52.5mmの大きさの円柱形としている。
図2(a)、図2(b)に示すように、ハニカム触媒10における排ガス流れ方向Xの上流側X1に位置する上流側端面10aに、切り欠き15が設けられている。切り欠き15の形状は限定されないが、本実施形態では、三角形状の溝となっている。また、図2(a)に示すように、切り欠き15は上流側端面10aにおいて、隔壁13の全厚さtに亘って形成されており、切り欠き15は隣り合う両セル12と繋がっている。
切り欠き15の大きさは限定されないが、例えば、隔壁13の厚さ方向及び排ガス流れ方向Xに直交する方向の大きさである幅bは、隔壁13の厚さtと隔壁13の間隔pとの関係でt≦b<0.88pの関係を満たすことが好ましい。切り欠き15の幅bが、隔壁13の厚さtよりも小さい場合は、切り欠き15が小さくなりすぎ、十分に排ガスの流れを乱す効果が得られにくい。一方、切り欠き15が0.88p以上の場合は、切り欠き15が大きくなりすぎることにより、ハニカム触媒10における圧損が低下して排ガスの吹き抜けが生じるため、排ガスとハニカム触媒10に担持された触媒との接触時間が低下して浄化作用が低下する。また、切り欠き15において、排ガス流れ方向Xに平行な方向の最深部まで切り欠き15の大きさである深さaはa≦pの関係を満たすことが好ましい。切り欠き15の深さaが隔壁13の間隔pよりも大きい場合は、上流側端面10aにおいて、隔壁13の欠損が大きくなりすぎるため、ハニカム触媒10の強度が低下するおそれがある。
切り欠き15を形成する範囲は適宜設定することができる。好ましくは、切り欠き15を形成する範囲は、図3に示す上流側端面10aにおいて、上流側端面10aの中心10cを中心位置とし、直径dが上流側端面10aの直径Dの0.86倍の仮想円16の内側とすることができる。このようにすれば、上流側端面10aにおいて、外周壁14と隣り合う最外周のセルを含めて内側に3セル分の範囲である外周3セル範囲には、切り欠き15を設けないようにすることができ、外周壁14におけるストレスの発生とこれに起因する破損を低減することができる。
また、切り欠き15を形成する個数は適宜設定することができる。切り欠き15の数を多くすることにより、上流側端面10aに到達した排ガスの流れがより乱されることとなる。一方、外周3セル範囲に設けられた切り欠き15の数が多くなると、上述のごとく、外周壁14におけるストレスの増加を招く。かかる観点から、切り欠き15の個数は、隔壁13同士の交点数以下とすることができる。これにより、切り欠き15の個数が過度に多くなることを防止して、外周壁14におけるストレスの増加を抑制できる。さらに、切り欠き個数をXとし、上流側端面10aにおける隔壁交点数をCpとし、ハニカム触媒10の直径をDとしたとき、0.0009CpD≧Xの関係を満たすことが好ましい。このようにすれば、全体として切り欠き15の個数が一層制限されるため、外周3セル範囲においても切り欠き15が過剰に多くなることが防止され、外周壁14におけるストレスの発生とこれに起因する破損を低減することができる。本実施形態1では、切り欠き15の個数Xは、隔壁13同士の交点数以下であるとともに、0.0009CpD≧Xの関係を満たしている。
上流側X1のハニカム触媒10のセル壁厚、セル密度、気孔率は適宜設定することができる。当該セル壁厚は、例えば1.5~12milとすることができ、好ましくは1.5~3.5milとすることができる。また、当該セル密度は、例えば200~1200cpsiとすることができ、好ましくは600~1200cpsiとすることができる。気孔率は例えば、30~80%とすることができる。
本実施形態では、図1に示すように、上流側X1のハニカム触媒10の下流側X2には、所定間隔を空けてハニカム触媒20が設けられている。下流側X2のハニカム触媒20は、切り欠き15が形成されていることを除いて上流側X1のハニカム触媒10と同様の構成となっている。上流側X1のハニカム触媒10と下流側X2のハニカム触媒20との間隔は限定されないが、本実施形態では1mmとしている。
(確認試験1)
次に、確認試験1として、図2(b)に示す切り欠き15の幅bと隔壁13の間隔pとの比率b/pと、排ガスとハニカム触媒10との接触時間増加率との対応関係についての試験を行った。
まず、比較例及び試験例1~7では、ハニカム触媒10はセル12の断面形状が四角形である四角ハニカムであって、表1に示すように、いずれも隔壁13の厚さtは0.90mm、隔壁13の間隔pは0.898mm、隔壁13の交点数は約10330個、セル密度は800cpsiとした。そして、試験例1~3では、表1に示す深さa、幅bを有する切り欠き15をそれぞれ、上流側端面10aの中心10cから直径5%の範囲内に約25個設けた。一方、試験例4~7では、上流側端面10aに切り欠き15の幅bが、0.090mmのもの、0.450mmのもの、0.898mmのものをランダムに形成した。そして、試験例4では、上流側端面10aの中心10cから直径5%の範囲内に切り欠き15を約103個設けた。試験例5では、上流側端面10aの中心10cから直径10%の範囲内に切り欠き15を約645個設けた。試験例6では、上流側端面10aの中心10cから直径50%の範囲内に切り欠き15を約2581個設けた。試験例6では、上流側端面10aの全域に4つのセルに一個の切り欠き15となるように切り欠き15を約2581個設けた。なお、試験例1~7のいずれにおいても、切り欠き15の個数は、隔壁13の交点数Cpよりも少ない。
Figure 2023060401000002
比較例及び試験例1~3において、比率b/pはそれぞれ表1に示す通りであった。そして、排ガス浄化装置1におけるハニカム触媒10の前後の排ガス流速を取得し、これに基づいて排ガスとハニカム触媒10との接触時間を算出するとともに、比較例の接触時間を基準として試験例1~7の接触時間増加率を算出した。
確認試験1によれば、図4に示すように、試験例1~3において、比率b/p≦0.88であるときに比較例に比べて排ガスとハニカム触媒10との接触時間が増加することが示された。なお、図4には記載していないが、試験例4~7では、比較例に比べて排ガスとハニカム触媒10との接触時間が増加していた。
(確認試験2)
次に、確認試験2として、切り欠き15による排ガス流れの乱流化についての試験を行った。
確認試験2では、表1に示す比較例と試験例1のハニカム触媒10における排ガス流れをシミュレーションした。試験条件は、排ガス温度1000℃、雰囲気温度25℃、排ガスの入り速度12.30m/s、排ガス密度0.28kg/m、排ガス粘度4.79E-05Pa・s、ハニカム触媒10及び20における抵抗係数α=4.4465、β=1541とした。そして、試験例1における上流側X1のハニカム触媒10、比較例における上流側X1のハニカム触媒90における流速分布と、上流側X1のハニカム触媒10、90と下流側X2のハニカム触媒との空間の中央位置における流速を解析した。
図5(b)に示す試験例1の流速分布では、図5(a)に示す比較例の場合に比べて、切り欠き15において排ガスの乱流化が促されていることが確認できた。これにより、試験例1では、比較例に比べて排ガスとハニカム触媒10に担持された触媒との接触頻度が大きくなって排ガス浄化作用の向上が図られることが示された。そして、図6に示すように、試験例1では、比較例に比べて流速が抑えられていることが確認された。
(確認試験3)
次に、ハニカム触媒を流通する排ガスの流速と排ガス浄化率との関係について、下記の確認試験3を行った。
確認試験3では、実施形態1と同様にACZ基材に触媒を担持させた円柱状のモデルハニカム触媒において、外径を異ならせることにより流速を所定の値に変化させた場合のシミュレーション試験を行い、窒素酸化物の浄化率であるNOx浄化率、一酸化炭素の浄化率であるCO浄化率、総炭化水素の浄化率であるTHC浄化率をそれぞれ解析した。なお、各浄化率は、ハニカム触媒に流入させた排ガスにおける対象成分の含有量に対して、ハニカム触媒を通過した排ガスにおける対象成分の含有量の低下割合を示す。
図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示すように、NOx浄化率、CO浄化率及びTHC浄化率のいずれも流速が大きくなるほど、低下していることが示された。これは、流速が大きくなると、排ガスの吹き抜けが生じて、排ガスとハニカム触媒に担持された触媒との接触時間が短くなって接触頻度が低下することに起因すると推察される。
次に、本実施形態の排ガス浄化装置1における作用効果について、詳述する。
本実施形態1の排ガス浄化装置によれば、基材11がセリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分とする。これにより、全体として熱容量を低減でき早期活性化を促すことができる。これとともに、比較的低温で触媒を当該基材に担持させることができるため、高温の排気環境においても助触媒及び触媒の凝集は低減され、触媒の表面積の減少が抑制されて浄化作用の向上が図られる。また、助触媒及び触媒を担持させる場合に比べて、基材表面に助触媒を担持させる必要がないため、圧損の上昇が抑制されて浄化作用の向上が図られる。
そして、基材11はセリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分とするため、基材表面に助触媒を担持させる必要がなく、貫通孔における見かけの水力直径が大きくなる。これに対して、ハニカム触媒10における排ガス流れ方向の上流側X1に位置する上流側端面10aには、隔壁13を切り欠いてなる切り欠き15が形成されているため、上流側端面10aに到達した排ガスの流れが乱されることとなり、排ガスの吹き抜けが抑制され、排ガスと触媒の接触頻度が上昇して浄化作用の向上が図られる。
また、隔壁13の外周側に設けられた外周壁14には切り欠きやスリットを設ける必要がないため、ハニカム触媒10を保持するための荷重に対して外周壁14の形状を維持でき、保持荷重による隔壁13の破損を防止することができる。また、切り欠き15は外周壁14に設ける必要がないため、切り欠き15を介して外周壁14から外部に排ガスが漏洩することもない。
また、本実施形態1では、隔壁13の厚さをtとし、隔壁13が設けられる間隔をpとしたとき、切り欠き15における上流側端面10aからの深さaは、a≦pの関係を満たし、上流側端面10aにおける切り欠き15の幅bは、t≦b≦0.88pの関係を満たす。これにより、隔壁13の強度低下を抑制し、排ガスの乱流化が一層図られるとともに、排ガスの吹き抜けを抑制して、排ガス浄化作用の一層の向上が図られる。
また、本実施形態1では、切り欠き15の個数は、隔壁13同士の交点数以下としている。これにより、切り欠き15が過度に多く形成されることを防止でき、ハニカム触媒10の強度低下を抑制できる。
また、本実施形態1では、切り欠き15は、上流側端面10aにおいて、上流側端面10aの中心を中心位置とし、直径が上流側端面10aの直径の0.86倍の仮想円16の内側に形成されている。これにより、少なくとも、外周3セルの範囲に切り欠き15が形成されないようにすることができ、外周壁14のストレス増加を抑制してハニカム触媒10の破損を防止することができる。
また、本実施形態1では、基材11におけるセリア-ジルコニア固溶体の重量比率を、25~75重量%の範囲内としている。これにより、助触媒としての作用を確保できるとともに基材11の機械的強度を維持できる。
以上のごとく、本実施形態1によれば、浄化作用の向上が図られる排ガス浄化装置1を提供することができる。
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
1 排ガス浄化装置
10 ハニカム触媒
10a 上流側端面
11 基材
12 セル
13 隔壁
14 外周壁
15 切り欠き
16 仮想円

Claims (5)

  1. 排ガス流路(100)に配置されてなる排ガス浄化装置(1)であって、
    上記排ガス流路における排ガス流れ方向に貫通した複数のセル(12)を区画する隔壁(13)と該隔壁の外周側に設けられた外周壁(14)とを備えたハニカム構造を有する基材(11)と、該基材に担持された触媒とを有するハニカム触媒(10)を有し、
    上記基材は、セリア-ジルコニア固溶体を含む助触媒を主成分とし、
    上記ハニカム触媒における上記排ガス流れ方向の上流側に位置する上流側端面(10a)には、上記隔壁を切り欠いてなる切り欠き(15)が形成されている、排ガス浄化装置。
  2. 上記隔壁の厚さをtとし、上記隔壁が設けられる間隔をpとしたとき、
    上記切り欠きにおける上記上流側端面からの深さaは、a≦pの関係を満たし、
    上記上流側端面における上記切り欠きの幅bは、t≦b≦0.88pの関係を満たす、請求項1に記載の排ガス浄化装置。
  3. 上記切り欠きの個数は、上記隔壁同士の交点数以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化装置。
  4. 上記切り欠きは、上記上流側端面において、該上流側端面の中心を中心位置とし、直径が上記上流側端面の直径の0.86倍の仮想円(16)の内側に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
  5. 上記基材におけるセリア-ジルコニア固溶体の重量比率は、25~75重量%の範囲内である、請求項1~4のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置。
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