JP2023055428A - モータのステータの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ステータコアの溝内に配置された線材を多孔質体で保持する。【解決手段】モータのステータの製造方法は、液状の接着剤と、常温常圧で昇華可能な固体状の昇華材と、が混合している混合液体を準備する工程を備える。製造方法は、ステータコアに配置されているコイルの線材の間に、混合液体を配置する工程を備える。製造方法は、接着剤を固化させる過程において、昇華材を昇華させることで接着剤中に空孔を発生させることにより、線材の間に多孔質の保持部を形成する工程を備える。【選択図】図5
Description
本明細書に開示の技術は、モータのステータの製造方法に関する。
特許文献1には、多孔質体によって、コイルをステータコアに固定する技術が開示されている。具体的には、ステータコアのスロット内に複数のコイルを配置した後に、ゲル状(粘性流体状)の支持部材をスロット内に充填する。ステータの組立体を加熱処理することで支持部材を発泡させ、多孔質体を形成する。
特許文献1の技術では、多孔質体を形成するために、加熱により発泡させる必要がある。加熱工程、加熱時間、加熱設備などが必要になるため、生産性が低下したり、製造コストが上昇してしまうおそれがある。
本明細書が開示するモータのステータの製造方法は、液状の接着剤と、常温常圧で昇華可能な固体状の昇華材と、が混合している混合液体を準備する工程を備える。製造方法は、ステータコアに配置されているコイルの線材の間に、混合液体を配置する工程を備える。製造方法は、接着剤を固化させる過程において、昇華材を昇華させることで接着剤中に空孔を発生させることにより、線材の間に多孔質の保持部を形成する工程を備える。
このステータの製造方法では、昇華材を昇華させることで、混合液体を常温常圧で発泡させることができる。加熱を行わずに多孔質の保持部を形成することができるため、生産性の向上や、製造コストの低減が可能となる。
混合液体には、繊維材料がさらに含まれていてもよい。繊維材料同士が接着剤で固着することにより、保持部の強度を高めることが可能となる。
(ステータ10の構造)
図1に、本実施例に係るステータ10の斜視図を示す。ステータ10は、ステータコア20とコイル40を有している。また図2に、コイル40を備えない状態のステータコア20の斜視図を示す。ステータコア20は、軸Z1を中心軸とする円筒形状を有している。ステータコア20は、軸Z1に沿う方向(以下、軸方向という)の両側に端面21と端面22を有している。
図1に、本実施例に係るステータ10の斜視図を示す。ステータ10は、ステータコア20とコイル40を有している。また図2に、コイル40を備えない状態のステータコア20の斜視図を示す。ステータコア20は、軸Z1を中心軸とする円筒形状を有している。ステータコア20は、軸Z1に沿う方向(以下、軸方向という)の両側に端面21と端面22を有している。
ステータコア20の内周面24には、複数のスロット30が設けられている。各スロット30は、内周面24に設けられた溝である。各スロット30は、軸方向に沿って端面21から端面22まで伸びている。各スロット30の間には、スロット30間を隔てる隔壁であるティース20tが形成されている。各スロット30は、軸Z1に対して回転対称に配置されている。従って明細書では、一部のスロット30について説明する場合がある。
コイル40は、複数の線材40wによって構成されている。コイル40は、ステータコア20の各スロット30内を通るように、ステータコア20に固定されている。
図3に、図1の領域IIIにおける部分の上面図を示す。図3では、分かりやすさのために、コイル40の線材40wを一点鎖線で示している。各スロット30は、ステータコア20の径方向に沿って伸びている。1つのスロット30内には、複数の線材40wが挿入されている。複数の線材40wの各々は、スロット30内を軸Z1の軸方向に貫通している。またティース20tの端面22の上方には、複数の線材40wが、端面22と略平行に配置されている。
(ステータ10の製造方法)
ステータ10の製造方法について説明する。ステップS1において、混合液体50を準備する工程が行われる。混合液体50は、液状の接着剤と、固体状の昇華材と、繊維材料と、が混合している液体である。
ステータ10の製造方法について説明する。ステップS1において、混合液体50を準備する工程が行われる。混合液体50は、液状の接着剤と、固体状の昇華材と、繊維材料と、が混合している液体である。
液状の接着剤は、固化することで固体同士を接着する材料である。接着剤には様々な種類のものを使用可能である。接着剤の一例としては、溶剤に樹脂を溶かしたもの(例:ポリエーテルイミド)や、セメントなどが挙げられる。
固体状の昇華材は、常温常圧で昇華可能な材料である。昇華材には様々な種類のものを使用可能である。昇華材の一例としては、ドライアイス、メントール、パラジクロロベンゼン、ナフタレン、これらの混合物、などが挙げられる。
繊維材料は、形成後の保持部の強度を高めるために添加される材料である。接着剤により繊維材料同士が結着することで、強度を高めることができる。繊維材料には様々な種類のものを使用可能である。繊維材料の一例としては、ガラスファイバー、カーボンファイバー、SUS繊維、銅繊維、これらの混合物、などが挙げられる。
混合液体50は密閉容器に格納し、空気に触れさせないようにする。昇華材が空気に触れることで昇華が開始してしまうことを防止するためである。また、接着剤が空気に触れることで固化が開始してしまうことを防止するためである。なお、混合液体50の粘度は、線材40wの間を伝って内部まで染み込むことができる程度に低いことが好ましい。
ステップS2において、ステータコア20に配置されている複数の線材40wの間に、混合液体50を配置する工程が行われる。本実施例では、ノズルを用いて、混合液体50を滴下する方法を用いた。具体的には、図3に示す領域A1およびA2に、上方(z軸正方向)から混合液体50を滴下した。領域A1は、スロット30が開口している領域である。領域A2は、ティース20tが存在している領域である。領域A1およびA2に滴下された混合液体50は、線材40wの表面を伝って、下方側(z軸負方向)へ重力によって広がっていく。すなわち、スロット30の内部へ向けて、混合液体50を染み込ませることができる。
領域A1およびA2は、線材40wが配置されている領域のうちの一部でよい。例えば図3に示すように、領域A1はスロット30の中心部近傍のみであってよいし、領域A2はティース20tの中心部近傍のみであってよい。これは、領域A1およびA2に滴下された混合液体50が、平面方向(xy平面方向)へ毛細管現象により広がるためである。そして、領域A1およびA2からコイル40の全体へ、混合液体50を行き渡らせることができるためである。
図4に、図3のIV-IV線における断面図を示す。図4は、複数の線材40wの間に混合液体50を染み込ませた直後の状態を示している。この状態では、複数の線材40wの間に隙間GPが存在している。
ステップS3において、多孔質の保持部50aを形成する工程が行われる。具体的には、混合液体50内の接着剤が空気に触れることで、接着剤の固化が開始される。また混合液体50内の昇華材が空気に触れることで、昇華材の昇華が開始される。そして、接着剤の固化過程において昇華材を昇華させることで、接着剤中に空孔を発生させることができる。すなわち昇華材を膨張源として、混合液体50を発泡させることができる。これにより固化後の接着剤は、多孔質構造を備えた保持部50aに変質する。保持部50aの体積は、発泡前の混合液体50の体積よりも大きくなる。
図5に、保持部50aの形成後の断面図を示す。図5は、図4と同一部分の断面図である。図5に示すように、発泡により形成された保持部50aによって、複数の線材40wの間の隙間GPを充填することができる。なお図示していないが、スロット30内に配置されている複数の線材40wについても同様にして、保持部50aによって隙間を充填することができる。これにより、線材40wの固定力を高めることができる。
(効果)
従来技術において、多孔質体によって、ステータコアのスロット内にコイルを固定する技術が知られている。しかし多孔質体を形成するためには、スロット内に発泡前の材料を挿入した後に、ステータ組立体の全体を加熱することで発泡させる必要がある。加熱工程や加熱設備などが必要となる。またステータ組立体は熱容量が大きいため、処理時間が長くなる。一方、本明細書の技術では、昇華材を膨張源として、混合液体50を発泡させることができる。加熱工程が不要であるため、加熱工程や加熱設備などを省略することや、処理時間を短縮することができる。またステータコア20を、耐熱性に劣る安価な電磁鋼板で形成することができる。製造コストの削減や生産性の向上を図ることが可能となる。
従来技術において、多孔質体によって、ステータコアのスロット内にコイルを固定する技術が知られている。しかし多孔質体を形成するためには、スロット内に発泡前の材料を挿入した後に、ステータ組立体の全体を加熱することで発泡させる必要がある。加熱工程や加熱設備などが必要となる。またステータ組立体は熱容量が大きいため、処理時間が長くなる。一方、本明細書の技術では、昇華材を膨張源として、混合液体50を発泡させることができる。加熱工程が不要であるため、加熱工程や加熱設備などを省略することや、処理時間を短縮することができる。またステータコア20を、耐熱性に劣る安価な電磁鋼板で形成することができる。製造コストの削減や生産性の向上を図ることが可能となる。
従来技術では、化学反応によって発泡を行うため、水が生成される場合がある。この場合、生成された水により積層鋼板が錆びるなどの問題が発生するおそれがある。本明細書の技術では、昇華材を膨張源としているため、水を生成させることなく発泡を行うことができる。生成した水に起因して各種の問題が発生する事態を防止することが可能となる。
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
(変形例)
混合液体50に混合されている繊維材料は、省略することができる。これによっても、多孔質の保持部50aを形成することが可能である。
混合液体50に混合されている繊維材料は、省略することができる。これによっても、多孔質の保持部50aを形成することが可能である。
混合液体50の滴下後に加熱工程を行ってもよい。これにより、昇華材の昇華速度を高めることができるため、発泡工程を短時間で行うことが可能となる。また加熱方法は様々であってよい。例えば温風を吹き付けてもよい。
ステップS2の混合液体50の配置工程は、様々な方法で行うことができる。例えば、混合液体50が塗布された線材40wをスロット30内に挿入してもよい。
本明細書の技術は、線材40wを備えたステータコア20に限られず、様々な構造に適用可能である。熱や水に弱い構造や、熱容量が大きい構造(例:モータなどの金属部品)に対して、本明細書の技術は特に有用である。
本実施例では、集中巻きの構造を有する線材40wを保持部50aで固定する方法について説明したが、様々な構造を有する線材を持部50aで固定することができる。例えば、部分巻きの構造を有する線材も固定可能である。
10:ステータ 20:ステータコア 20t:ティース 30:スロット 40:コイル 40w:線材 50:混合液体 50a:保持部
Claims (2)
- モータのステータの製造方法であって、
液状の接着剤と、常温常圧で昇華可能な固体状の昇華材と、が混合している混合液体を準備する工程と、
ステータコアに配置されているコイルの線材の間に、前記混合液体を配置する工程と、
前記接着剤を固化させる過程において、前記昇華材を昇華させることで前記接着剤中に空孔を発生させることにより、前記線材の間に多孔質の保持部を形成する工程と、
を備える、製造方法。 - 前記混合液体には、繊維材料がさらに含まれている、請求項1に記載の製造方法。
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