JP2023053430A - 3次元造形用材料、及びそれを用いた樹脂成形体 - Google Patents

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雄太 中野
Yuta Nakano
亜希子 平野
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Abstract

【課題】3Dプリンターのノズル温度やテーブル温度が低温においても、ノズル吐出性や低反り性に優れ、良好な機械的強度と造形外観を有する樹脂成形体を得ることができる3次元造形用材料を提供すること。【解決手段】ポリエステル系樹脂を含む3次元造形用材料であって、210℃、2.16kgで測定したメルトインデックスが6g/10分以上である、3次元造形用材料。【選択図】なし

Description

本発明は、3次元造形用材料及びそれを用いた樹脂成形体に関する。
今日、種々の付加製造方式(例えば結合剤噴射式、材料押出式、液槽光重合式等)の3
Dプリンターが販売されている。これらの中で、材料押出(Material Extrusion)式に
よる3Dプリンターシステム(例えば米国のストラタシス インコーポレイテッド社製の
システム)では、造形材料は、熱可塑性樹脂からなるフィラメントやペレット、粉体、顆
粒などとして押出ヘッドへ挿入され、加熱溶融しながら押出ヘッドに備えたノズル部位か
らチャンバー内のX-Y平面基板上に連続的に押し出される。押し出された樹脂は既に堆
積している樹脂積層体上に堆積すると共に融着し、これが冷却するにつれて一体となって
固化する。ME法はこのような簡単なシステムであるため、広く用いられるようになって
きている(特許文献1)。
従来、材料押出式の原料としては、一般的にアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン
系樹脂(以下「ABS樹脂」と称することがある)やポリ乳酸(以下「PLA樹脂」と称
することがある)等の熱可塑性樹脂が、成形加工性や流動性の観点から好適に用いられて
きた(特許文献2~4)。
特表2003-502184号公報 特表2010-521339号公報 特開2008-194968号公報 国際公開第2015/037574号
近年、3Dプリンターは、工業的な用途のみならず、個人消費者にも普及しつつあり、
より簡便に使用することができる。そのため、造形精度のみならず、意匠性や耐久性等の
面でも良好な樹脂成形体を製造することが求められている。
しかしながら、従来の一般的な3Dプリンターに用いられているABS樹脂よりなる3次
元造形用材料は、良好な押出性を得るには、3Dプリンターで造形する際のノズル温度を
240℃前後と高い温度に設定しなければならず、また造形テーブルへの接着性向上や造
形物の反りを抑制するため、造形テーブル温度を100℃前後に設定する必要がある。さ
らには、加熱溶融時に臭気が発生する問題がある。これは、個人消費者による家庭用3D
プリンターでの使用を想定した場合、3Dプリンターの高温部分が危険であり、取り扱い
やすさに欠ける。一方、PLAよりなる3次元造形用材料は、3Dプリンターのノズル温度
が200℃前後で良好な押出性を有し、臭気も少ない特徴があるが、造形される樹脂成形
体が脆く、機械的強度に劣るという問題点がある。
上記のABS樹脂やPLAよりなる3次元造形用材料の問題を解決し得るものとして、
非晶性ポリエステル系樹脂であるグリコール変性ポリエチレンテレフタレート樹脂(PE
TG)が近年用いられている。PETGよりなる3次元造形用材料は、ABS樹脂と比較し
て低温で造形が可能であり、PLAより機械的強度に優れる特徴を有するものの、造形温
度はPLAより高く、良好な樹脂成形体を得るには、3Dプリンターのノズル温度やテー
ブル温度を高く設定する必要がある。
本発明の目的は、3Dプリンターのノズル温度やテーブル温度が低温においても、ノズ
ル吐出性や低反り性に優れ、良好な機械的強度と造形外観を有する樹脂成形体を得ること
ができる3次元造形用材料を提供することである。
本発明者らは、3次元造形用材料が、ポリエステル系樹脂からなり、210℃、2.1
6kgで測定したメルトインデックスが6g/10分以上であることで、上記課題を解決
できることを見出し、本発明を完成させた。本発明の要旨は以下の[1]~[14]であ
り得る。
[1]ポリエステル系樹脂を含む3次元造形用材料であって、210℃、2.16kgで
測定したメルトインデックスが6g/10分以上である、3次元造形用材料。
[2]示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際の結晶化熱量(ΔH
m)が10J/g以下である、[1]に記載の3次元造形用材料。
[3]示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際のガラス転移温度(
Tg)が100℃以下である、[1]または[2]に記載の3次元造形用材料。
[4]示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際のガラス転移温度(
Tg)が30℃以上である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
[5]示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際の溶融温度(Tm)
が200℃以下である、[1]~[4]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
[6]JIS K7244-4に記載の動的粘弾性の温度分散測定により、歪み0.07
%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で-100~150℃の範囲にて測定した損失正
接(tanδ)のピークの数が、0~100℃の範囲で単一である、[1]~[5]のい
ずれか一項に記載の3次元造形用材料。
[7]前記ポリエステル系樹脂が非晶性ポリエステル系樹脂(A)とその他のポリエステ
ル系樹脂(B)を含む、[1]~[6]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
[8]前記ポリエステル系樹脂が芳香族ポリエステル樹脂を含む、[1]~[7]のいず
れか一項に記載の3次元造形用材料。
[9]前記ポリエステル系樹脂が2種以上の異なる芳香族ポリエステル樹脂を含む、[1
]~[8]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
[10]3次元造形用フィラメントである、[1]~[9]のいずれか一項に記載の3次
元造形用材料。
[11]前記フィラメントの径が、1.0mm以上、5.0mm以下である[10]に記
載の3次元造形用材料。
[12][1]~[11]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料を巻回してなる巻回
体。
[13][1]~[11]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料、又は[12]に記
載の巻回体を収納容器に収納してなる3Dプリンター用カートリッジ。
[14][1]~[11]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料からなる樹脂成形体

[15][1]~[11]のいずれか一項に記載の3次元造形用材料を用いて、3Dプリ
ンターにより樹脂成形体を製造する樹脂成形体の製造方法。
本発明によれば、低温での造形性に優れ、機械的強度にも優れた、利便性の高い3次元
造形用材料、及びそれを用いた樹脂成形体が提供される。
実施例及び比較例の低温造形性評価に用いた試験片の形状
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明は以下の説明に限定されるもので
はなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる
。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する
場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
<3次元造形用材料の物性>
本発明の3次元造形用材料を、210℃、2.16kgで測定したメルトインデックス
(MI)の値は、家庭用3Dプリンターでの押出性の観点から6g/10分以上であり、
7g/10分以上がより好ましく、9.7g/10分以上がさらに好ましい。また、造形
時の糸引きやダマ等の不良抑制の観点から、50g/10分以下が好ましく、30g/1
0分以下がより好ましく、20g/10分以下がもっとも好ましい。
本発明の3次元造形用材料を、示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定
した際の結晶化熱量(ΔHc)は特に限定されないが、低反り性の観点から、10J/g
以下が好ましく、5J/g以下がより好ましく、1J/g以下がさらに好ましい。
本発明の3次元造形用材料を、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で測定
した際のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、家庭用3Dプリンターの造形テ
ーブルへの定着性の観点から、100℃以下が好ましく、80℃以下がより好ましく、7
0℃以下がさらに好ましく、60℃以下が最も好ましい。また、耐熱性や室温での剛性、
連続造形性の観点から、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましく、50℃以上
がさらに好ましく、55℃以上が最も好ましい。
本発明の3次元造形用材料を、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で測定
した際の溶融温度(Tm)は特に限定されないが、低温での造形性の観点から、200℃
以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、185℃以下がさらに好ましい。なお、
一般的に結晶性が著しく低い樹脂では、上記測定条件においてTmが観測されない場合も
あるが、この場合は、熱処理等により十分結晶化を進行させた試料を用い、示差走査熱量
測定において10℃/分の昇温速度で測定した際の溶融温度(Tm)が200℃以下であ
る場合は、好ましい範囲にあるものと判断する。また、耐熱性の観点から、80℃以上で
あることが好ましく、120℃以上であることがより好ましく、150℃以上であること
がさらに好ましい。
本発明の3次元造形用材料をJIS K7244-4に記載の動的粘弾性の温度分散測
定により、歪み0.07%、周波数10Hz、昇温速度3℃/分で-100~150℃の
範囲にて測定した損失正接(tanδ)のピークの数は特に限定されないが、造形物の層
間接着性の観点から、0℃~100℃の範囲で単一のピークを示すことが好ましい。
tanδが単一のピークを示すということは、3次元造形用材料に含まれる後述の非晶
性ポリエステル系樹脂(A)及びその他のポリエステル系樹脂(B)のブレンドが相溶で
あると考えられ、造形物の層間接着性が良好となる。
<ポリエステル系樹脂>
本発明の3次元造形用材料はポリエステル系樹脂を含む。本発明の3次元造形用材料に
含まれるポリエステル系樹脂としては、ジカルボン酸成分とジオール成分との縮合重合か
らなる樹脂が挙げられる。ジカルボン酸成分およびジオール成分のうち、片方の成分もし
くは両方の成分は、単一の化合物からなるものであってもよく、二種以上の混合物であっ
てもよい。
ここで、上記の「ジカルボン酸成分」の代表的なものとしては、テレフタル酸、イソフ
タル酸、ナフタレンジカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼラ
イン酸、セバシン酸、ネオペンチル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェ
ニルエーテルジカルボン酸、p-オキシ安息香酸等が挙げられる。これらは、上記の「ジカ
ルボン酸成分」として選択される際、一種でも二種以上の混合物であってもよく、混合さ
れる際の量も適宜選択することができる。これらの中でも、耐熱性や機械特性の観点から
芳香族ジカルボン酸成分を用いることが好ましく、具体的には、テレフタル酸、イソフタ
ル酸、ナフタレンジカルボン酸に由来する構造を有することが最も好ましい。
上記の「ジオール成分」の代表的なものとしてはエチレングリコール、1,2-プロパ
ンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタジオー
ル、3-メチルペンタジール、1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、
水添ビスフェノールA、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、
トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロ
ピレングリコール及びポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらは、上記
の「ジカルボン酸成分」として選択される際、一種でも二種以上の混合物であってもよく
、混合される際の量も適宜選択することができる。これらの中でも、エチレングリコール
、1,2-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,
5-ペンタジオール、3-メチルペンタジール、1,3-ヘキサンジオール、1,6-ヘ
キサンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエ
チレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが好ましく
、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレ
ングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリエチレングリコール、ポリエ
チレングリコール、ポリテトラメチレングリコールがさらに好ましく、エチレングリコー
ル、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ
ール、ポリテトラメチレングリコールが特に好ましく、エチレングリコール、1,4-ブ
タンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する構造を有することが最も
好ましい。
また、本発明の3次元造形用材料に含まれるポリエステル系樹脂は、オキシ酸の重合体
、あるいはオキシ酸の共重合体からなるポリエステル系樹脂であってもよい。オキシ酸の
代表的なものとしては、乳酸、εカプロラクトン、p-β―ヒドロキシエトキシ安息香酸
などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂としては、結晶性の調整など物性を改良するために、トリメリット
酸、ピロメリット酸など三官能以上のカルボン酸成分及び/又はトリメチロールプロパン
ペンタエリスリトールなど三官能以上のポリオール成分などが微量共重合されたものを用
いてもよい。
本発明の3Dプリンター用造形材料に含まれるポリエステル系樹脂は、プラスチック廃
棄物や端材などから再生されたリサイクル樹脂を用いてもよい。その際のリサイクル手法
としては、使用済み樹脂を化学的に組成変換したのち再生されるケミカルリサイクルや、
使用済み樹脂の選別、不純物除去ののちに粉砕・洗浄及び造粒等の工程を経て再生される
マテリアルリサイクル等があげられる。また、本発明の3次元造形用材料に含まれるポリ
エステル系樹脂は、リサイクル樹脂とバージン樹脂を混合して用いてもよい。
ポリエステル系樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリプロピ
レンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンイソフタレー
ト樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂及びポリトリメ
チレンテレフタレート樹脂などの芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンサクシネート樹
脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、などの脂肪族ポリエステル樹脂や、ポリ乳酸樹脂、
ポリカプロラクトン樹脂のようなオキシ酸の重合体、あるいは芳香族ポリエステルにポリ
アルキレングリコールを共重合させたポリエステルエラストマーなどが挙げられる。上述
したポリエステル系樹脂の具体例として挙げたものは単独重合体であってもよく、また任
意の組み合わせからなる共重合体であってもよい。これらは、上述した「ポリエステル系
樹脂」として選択される際、一種でも二種以上の混合物であってもよく、混合される際の
量も適宜選択することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブ
チレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリエステルエラス
トマーを用いることが、耐熱性や低温造形性の観点から好ましい。
上述したポリエステル系樹脂の中でも、3Dプリンターでの低温造形性や3Dプリンタ
ーで作製された樹脂成形体の機械的強度の観点から、本発明の3次元造形用材料の物性が
上記範囲内となるように、非晶性ポリエステル系樹脂(A)とその他のポリエステル系樹
脂(B)を混合して用いることが好ましい。
<非晶性ポリエステル系樹脂(A)>
ここで、非晶性ポリエステル系樹脂(A)としては、示差走査熱量測定において10℃
/分の降温速度で測定した際の結晶化熱量(ΔHc)が5J/g未満であれば、特に限定
されるものではないが、本発明においては、結晶化熱量(ΔHc)が0J/gのものが好
ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂(A)の組成としては、酸成分がテレフタル酸を主成分とし
、ジオール成分がエチレングリコールを主成分とするものが挙げられる。酸成分やジオー
ル成分は、テレフタル酸やエチレングリコール以外の共重合可能なその他の酸成分やジオ
ール成分を含有していてもよい。また、これらの非晶性ポリエステル系樹脂(A)は1種
のみを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
共重合可能なその他の酸成分およびジオール成分は、酸成分の例としては、イソフタル
、2-クロロテレフタル酸、2,5-ジクロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸
、4,4-スチルベンジカルボン酸、4,4-ビフェニルジカルボン酸、オルトフタル酸
、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、ビス安息香酸、
ビス(p-カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4-ジフェニ
ルエーテルジカルボン酸、4,4-ジフェノキシエタンジカルボン酸、5-Naスルホイ
ソフタル酸、エチレン-ビス-p-安息香酸等から誘導される芳香族ジカルボン酸成分や
、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、1,3-シクロヘキサンジカ
ルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等から誘導される脂肪族ジカルボン酸成
分が挙げられる。なかでもイソフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸をはじめとす
る芳香族ジカルボン酸成分が好ましい。
ジオール成分の例としては、ジエチレングリコール、トランス-テトラメチル-1,3
-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、
1,4-ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサ
ンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、
スピログリコール、及びポリテトラメチレングリコールからなる群から選ばれる少なくと
も1種であることが好ましい。特に、トランス-テトラメチル-1,3-シクロブタンジ
オール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオール、1,4-シクロヘ
キサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジ
オール、1,3-シクロヘキサンジオール、スピログリコールからなる群から選ばれる少
なくとも1種の脂環構造を有するジオール成分が好適に用いられ、経済性、工業的な入手
し易さなどの観点から、特に1,4-シクロヘキサンジメタノールやスピログリコールが
好ましい。
上述した共重合成分のうち、経済性、工業的な入手しやすさなどの観点から、ジオール
成分を用いることが好ましい。
ここで、脂環構造を有するジオール成分の含有率は、特に限定されないが、非晶性ポリ
エステル系樹脂(A)の全ジオール成分中に1mol%以上、好ましくは15mol%以
上、さらに好ましくは25mol%以上であり、上限は49mol%以下、好ましくは4
5mol%以下であることが望ましい。
脂環構造を有するジオール成分の含有率が上記範囲であれば、示差走査熱量測定におい
て10℃/分の降温速度で測定した際の結晶化熱量(ΔHc)が5J/g未満である樹脂
を得ることができる。
非晶性ポリエステル系樹脂(A)の具体例としては、グリコール変性ポリエチレンテレ
フタレート樹脂(PETG)やイソフタル酸共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂(I
PA-PET)等が挙げられるが、耐衝撃性の観点からPETGを用いることが好ましい
非晶性ポリエステル系樹脂(A)を、210℃、2.16kgで測定したメルトインデ
ックス(MI)の値は特に限定されないが、吐出安定性の観点から1g/10分以上が好
ましく、3g/10分以上がより好ましく、5g/10分以上がさらに好ましい。また、
造形時の糸引きやダマ等の不良抑制の観点から、50g/10分以下が好ましく、30g
/10分以下がより好ましく、20g/10分以下がもっとも好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂(A)を、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度
で測定した際のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、3Dプリンターの造形テ
ーブルへの定着性の観点から、100℃以下が好ましく、90℃以下がより好ましく、8
0℃以下がさらに好ましい。また、耐熱性や室温での剛性の観点から、30℃以上が好ま
しく、40℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましく、65℃以上が最も好ま
しい。
非晶性ポリエステル系樹脂(A)は溶融温度(Tm)を有していないことが好ましいが
、有している場合は、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速度で測定した際に観
測される溶融温度(Tm)は、低いノズル温度での造形性の観点から、210℃以下であ
ることが好ましく、190℃以下がより好ましく、185℃以下がさらに好ましい。また
、樹脂ブレンドの耐熱性の観点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく
、100℃以上がさらに好ましく、120℃以上が最も好ましい。
非晶性ポリエステル系樹脂(A)の市販品としては、例えば、SKケミカル社製「SK
YGREEN(登録商標)」シリーズ、イーストマンケミカル社製「Eastar Co
polyester(登録商標)」シリーズ、「TRITAN(登録商標)」シリーズ、
三菱ガス化学社製「ALTESTER(登録商標)」シリーズなどが挙げられる。
<その他のポリエステル系樹脂(B)>
ここで、その他のポリエステル系樹脂(B)としては、ポリエステル系樹脂であれば特
に限定されないが、非晶性ポリエステル系樹脂(A)と相溶するものが好ましい。
その他のポリエステル系樹脂(B)の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート樹
脂、ポリプロピレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレ
ンイソフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂
及びポリトリメチレンテレフタレート樹脂などの芳香族ポリエステル樹脂や、ポリエチレ
ンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、などの脂肪族ポリエステル樹脂や
、ポリ乳酸樹脂、ポリカプロラクトン樹脂のようなオキシ酸の重合体、あるいは芳香族ポ
リエステルにポリアルキレングリコールを共重合させたポリエステルエラストマーなどが
挙げられる。
上述したその他のポリエステル系樹脂(B)の具体例の中でも、非晶性ポリエステル系
樹脂(A)との相溶性や樹脂ブレンドの物性を本発明の効果を得る範囲に調整する観点か
ら、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチ
レンテレフタレート樹脂、ポリエステルエラストマーが好ましく、ポリブチレンテレフタ
レート樹脂やポリエステルエラストマーがより好ましく、ポリブチレンテレフタレート樹
脂がさらに好ましい。また、低温造形性と機械的強度のバランスが良好となる観点から、
ポリブチレンテレフタレート樹脂の中でも酸成分としてイソフタル酸成分が共重合されて
いるイソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂を用いることが最も好ましい。
また、これらのその他のポリエステル系樹脂(B)は1種のみを単独で用いてもよく、
2種以上を併用してもよい。
その他のポリエステル系樹脂(B)を、210℃、2.16kgで測定したメルトイン
デックス(MI)の値は特に限定されないが、樹脂ブレンドの流動性の観点から、非晶性
ポリエステル系樹脂(A)として選択された樹脂が有するMI値よりも高いことが望まし
い。具体的には、6g/10分以上が好ましく、8g/10分以上がより好ましく、10
g/10分以上がさらに好ましい。また、造形時の糸引きやダマ等の不良抑制の観点から
、200g/10分以下が好ましく、100g/10分以下がより好ましく、80g/1
0分以下がもっとも好ましい。
その他のポリエステル系樹脂(B)を、示差走査熱量測定において10℃/分の降温速
度で測定した際の結晶化熱量(ΔHc)は特に限定されないが、非晶性ポリエステル系樹
脂(A)との相溶性の観点から、100J/g以下が好ましく、80J/g以下がより好
ましく、60J/g以下がさらに好ましく、40J/g以下が最も好ましい。
その他のポリエステル系樹脂(B)を、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速
度で測定した際のガラス転移温度(Tg)は特に限定されないが、樹脂ブレンドのTgを
本発明において好ましい範囲に調整する観点から、非晶性ポリエステル系樹脂(A)とし
て選択される樹脂よりも低いことが望ましく、100℃以下が好ましく、50℃以下がよ
り好ましく、40℃以下がさらに好ましい。また、樹脂ブレンドの耐熱性や室温での剛性
の観点から、-50℃以上が好ましく、-30℃以上がより好ましく、-10℃以上がさ
らに好ましく、0℃以上が最も好ましい。
その他のポリエステル系樹脂(B)を、示差走査熱量測定において10℃/分の昇温速
度で測定した際の溶融温度(Tm)は特に限定されないが、低いノズル温度での造形性の
観点から、210℃以下が好ましく、190℃以下がより好ましく、185℃以下がさら
に好ましい。また、樹脂ブレンドの耐熱性の観点から、30℃以上が好ましく、50℃以
上がより好ましく、100℃以上がさらに好ましく、120℃以上が最も好ましい。
上記その他のポリエステル系樹脂(B)としては、例えば、三菱エンジニアリングプラ
スチックス社製「ノバデュラン(登録商標)」シリーズ、ポリプラスチックス社製「ジュ
ラネックス(登録商標)」シリーズ、東洋紡社製「バイロン(登録商標)」シリーズ、三
菱ケミカル社製「テファブロック」シリーズが商業的に入手できるものとして挙げられる
上述の非晶性ポリエステル系樹脂(A)とその他のポリエステル系樹脂(B)の混合物
からなるポリエステル系樹脂中の非晶性ポリエステル系樹脂(A)の含有量は特に限定さ
れないが、ポリエステル系樹脂の物性を本発明の好ましい範囲に調整する観点から、50
%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上である
ことがさらに好ましい。また、同様の観点から、99%以下であることが好ましく、95
%以下であることがより好ましく、90%以下であることがさらに好ましい。
本発明の3次元造形用材料に含まれる、ポリエステル系樹脂の含有量は、特に制限され
ないが、本発明の効果を得る観点から、通常50質量%以上が好ましく、60質量%以上
がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、9
5質量%以上が最も好ましい。また、当該含有量は、その他機能性付与の観点から、10
0質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、98.5質量%以下がさらに
好ましく、98質量%以下が特に好ましい。
<その他の成分>
本発明の3次元造形用材料は、本発明の効果を損なわない程度にその他の樹脂やフィラ
ー(有機系粒子、無機系粒子および補強材など)、その他の成分を含んでもよい。
その他の樹脂としてはポリオレフィン系樹脂やポリスチレン系樹脂、上述したポリエス
テル系樹脂以外のポリエステル系樹脂や各種エラストマー等が挙げられる。これらは1種
のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の3次元造形用材料中のそ
の他の樹脂の配合量は、特に限定されないが、通常50質量%以下であり、好ましくは3
0質量%以下である。
フィラーのうち有機系粒子の具体例としては、アクリル系樹脂粒子、メラミン系樹脂粒
子などが挙げられる。
フィラーのうち無機系粒子の具体例としては、シリカ、アルミナ、カオリン、二酸化チ
タン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステア
リン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛などが挙げられる。
フィラーのうち補強材の具体例としては、無機充填材や無機繊維が挙げられる。
無機充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化マグネシウム、ケイ酸
カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、
珪酸マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラスバルーン、ガラスフレーク、ガラス粉末、
炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、石膏、焼成カオリン、酸化亜鉛、三酸化アンチモ
ン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ワラストナイト、シリカ、タルク、金属粉、アル
ミナ、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどが挙げられる。
無機繊維の具体例としては、ガラスカットファイバー、ガラスミルドファイバー、ガラ
スファイバー、石膏ウィスカー、金属繊維、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、炭
素繊維、セルロースナノファイバーなどが挙げられる。
ここで、本発明の3次元造形用材料がフィラーを含有する際の本発明の3次元造形用材
料中のフィラーの含有量は、特に規定されないが、通常50質量%以下であり、好ましく
は30質量%以下である。
その他の成分としては、耐熱剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、
滑剤、スリップ剤、結晶核剤、粘着性付与剤、シール性改良剤、防曇剤、離型剤、可塑剤
、顔料、染料、香料、難燃剤、生分解促進剤、エステル交換促進剤、エステル交換阻害剤
などが挙げられる。これらは1種のみで用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<3次元造形用材料>
本発明の3次元造形用材料は、材料押出法に用いられる原料として大別される、造形材
料と支持材料のどちらに用いても構わないが、造形材料として用いることが好ましい。造
形物本体となるものが造形材料であり、積層された造形材料が所望の形に固まるまで支え
るものが支持材料である。
<3次元造形用材料の製造方法>
本発明の3次元造形用材料は、上述のポリエステル系樹脂、及び必要に応じて配合され
るその他の成分を用いて製造される。ポリエステル系樹脂の混合方法としては特に制限さ
れるものではないが、公知の方法、例えば単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー
、ニーダーなどの溶融混練装置を用いる等方法を挙げることができる。
本発明の3次元造形用材料の製造方法は特に制限されるものではないが、上述のポリエ
ステル系樹脂及び必要に応じてその他の成分を、押出成形等の公知の成形方法により成形
する方法等を挙げることができる。例えば、本発明の3次元造形用材料を押出成形により
得る場合、その条件は、用いるポリエステル系樹脂の流動特性や成形加工性等によって適
宜調整されるが、通常80~300℃、好ましくは100~280℃である。
<3次元造形用材料の形態>
本発明の3次元造形用材料は、実施の形態に合わせた形状で用いて構わない。3次元造
形用材料の形状は、例えば、ペレット、粉体、顆粒、フィラメント等が挙げられる。中で
も、家庭用3Dプリンターで容易に利用できる観点から、フィラメント形状で用いること
が好ましい。
<3次元造形用材料の構造>
本発明の3次元造形用材料がフィラメント形状で用いられる場合、その直径は、材料押
出法による樹脂成形体の成形に使用するシステムの仕様に依存するが、通常1.0mm以
上、好ましくは1.5mm以上、より好ましくは1.6mm以上、特に好ましくは1.7
mm以上であり、一方、上限は通常5.0mm以下、好ましくは4.0mm以下、より好
ましくは3.5mm以下、特に好ましくは3.0mm以下である。
更にフィラメントの直径の精度はフィラメントの任意の測定点に対して±5%以内の誤
差に収めることが原料供給の安定性の観点から好ましい。特に、本発明の3次元造形用材
料は、直径の標準偏差が0.07mm以下であることが好ましく、0.06mm以下であ
ることが特に好ましい。
また、本発明の3次元造形用材料は、真円度が0.93以上であることが好ましく、0
.95以上であることが特に好ましい。真円度の上限は1.0である。このように、フィ
ラメントの直径の標準偏差が小さく、真円度が高い3次元造形用材料であれば、造形時の
吐出ムラが抑制され、外観や表面性状等に優れた樹脂成形体を安定して製造することがで
きる。そして、前述のポリエステル系樹脂を用いることで、このような標準偏差及び真円
度を満たす3次元造形用材料を比較的容易に製造することができる。
<3次元造形用材料の巻回体及びカートリッジ>
本発明の3次元造形用材料を用いて3Dプリンターにより樹脂成形体を製造するにあた
り、3次元造形用材料を安定に保存すること、及び、3Dプリンターに3次元造形用材料
を安定供給することが求められる。そのために、本発明の3次元造形用材料は、ボビンに
巻きとった巻回体として包装されている、又は、巻回体がカートリッジに収納されている
ことが、長期保存、安定した繰り出し、紫外線等の環境要因からの保護、捩れ防止等の観
点から好ましい。
カートリッジとしては、ボビンに巻き取った巻回体の他、内部に防湿材または吸湿材を
使用し、少なくともフィラメントを繰り出すオリフィス部以外が密閉されている構造のも
のが挙げられる。
通常、3次元造形用材料をボビンに巻きとった巻回体、又は、巻回体を含むカートリッ
ジは3Dプリンター内又は周囲に設置され、成形中は常にカートリッジからフィラメント
が3Dプリンターに導入され続ける。
<樹脂成形体の製造方法>
本発明の樹脂成形体の製造方法においては、本発明の3次元造形用材料を用い、3Dプ
リンターにより成形することにより樹脂成形体を得る。3Dプリンターによる成形方法と
しては材料押出法(ME法)、粉末焼結方式、インクジェット方式、光造形方式(SLA
法)などが挙げられるが、本発明の3次元造形用材料は、材料押出法に用いることが特に
好ましい。以下、材料押出法の場合を例示して説明する。
材料押出法に用いられる3Dプリンターは一般に、チャンバーを有しており、該チャン
バー内に、加熱可能な基盤、ガントリー構造に設置された押出ヘッド、加熱溶融器、フィ
ラメントのガイド、フィラメントカートリッジ設置部等の原料供給部を備えている。3D
プリンターの中には押出ヘッドと加熱溶融器とが一体化されているものもある。
押出ヘッドはガントリー構造に設置されることにより、基盤のX-Y平面上に任意に移
動させることができる。基盤は目的の3次元物体や支持材等を構築するプラットフォーム
であり、加熱保温することで積層物との接着性を得たり、得られる樹脂成形体を所望の3
次元物体として寸法安定性を改善したりできる仕様であることが好ましい。また、積層物
との接着性を向上させるため、基盤上に粘着性のある糊を塗布したり、積層物との接着性
が良好なシート等を貼りつけたりしてもよい。ここで積層物との接着性が良好なシートと
しては、無機繊維のシートなど表面に細かな凹凸を有するシートや、積層物と同種の樹脂
からなるシートなどが挙げられる。なお、押出ヘッドと基盤とは、通常、少なくとも一方
がX-Y平面に垂直なZ軸方向に可動となっている。
押出ヘッドの数は、通常1~2つである。押出ヘッドが2つあれば、2つの異なるポリ
マーをそれぞれ異なるヘッド内で溶融し、選択的に印刷することができる。この場合、ポ
リマーの1つは3D対象物を造形する造形材料であり、もう一方は、例えば一時的な機材
として必要とされる支持材料とすることができる。この支持材料は、例えば、水性系(例
えば、塩基性又は酸性媒体)における完全な又は部分的な溶解によって、その後除去する
ことができる。
3次元造形用材料は原料供給部から繰り出され、対向する1組のローラー又はギアーに
より押出ヘッドへ送り込まれ、押出ヘッドにて加熱溶融され、先端ノズルより押し出され
る。CADモデルを基にして発信される信号により、押出ヘッドはその位置を移動しなが
ら原料を基盤上に供給して積層堆積させていく。この工程が完了した後、基盤から積層堆
積物を取り出し、必要に応じて支持材等を剥離したり、余分な部分を切除したりして所望
の3次元物体として樹脂成形体を得ることができる。
押出ヘッドへ連続的に原料を供給する手段は、フィラメント又はファイバーを繰り出し
て供給する方法、粉体又は液体をタンク等から定量フィーダを介して供給する方法、ペレ
ット又は顆粒を押出機等で可塑化したものを押し出して供給する方法等が例示できる。工
程の簡便さと供給安定性の観点から、フィラメントを繰り出して供給する方法、即ち、前
述の本発明の3次元造形用材料を繰り出して供給する方法が最も好ましい。
3Dプリンターにフィラメントを供給する場合、ニップロールやギアロール等の駆動ロ
ールにフィラメントを係合させて、引き取りながら押出ヘッドへ供給することが一般的で
ある。ここでフィラメントと駆動ロールとの係合による把持をより強固にすることで原料
供給を安定化させるために、フィラメントの表面に微小凹凸形状を転写させておいたり、
係合部との摩擦抵抗を大きくするための無機添加剤、展着剤、粘着剤、ゴム等を配合した
りすることも好ましい。フィラメントの太さにムラがある場合、フィラメントと駆動ロー
ルとの係合による把持が行えず、駆動ロールが空転しフィラメントを押出ヘッドに供給出
来なくなる場合がある。
本発明で用いる3次元造形用材料は、先端ノズルからの押出に適当な流動性を得るため
の温度が、通常150~300℃程度と、通常の3Dプリンターが設定可能な温度である
。本発明の樹脂成形体の製造方法においては、加熱押出ヘッドの温度を通常290℃以下
、好ましくは160~260℃とし、また、テーブル温度を通常100℃以下、好ましく
は70℃以下として安定的に樹脂成形体を製造することができる。本発明の3次元造形用
材料を用いることで上記製造方法にて良好に造形が可能となる。
押出ヘッドから吐出される溶融樹脂の温度(吐出温度)は160℃以上であることが好
ましく、180℃以上であることがより好ましく、一方、300℃以下であることが好ま
しく、280℃以下であることがより好ましく、260℃以下であることが更に好ましい
。溶融樹脂の温度が上記下限値以上であると、耐熱性の高い樹脂を押し出す上で好ましく
、また、高速で吐出することが可能となり、造形効率が向上する傾向にあるため好ましい
。一方、溶融樹脂の温度が上記上限値以下であると、樹脂の熱分解や焼け、発煙、臭い、
べたつきといった不具合の発生を防ぎやすく、また一般に、糸引きと呼ばれる溶融樹脂が
細く伸ばされた破片や、ダマと呼ばれる余分な樹脂が塊状になったものが樹脂成形体に付
着し、外観を悪化させることを防ぐ観点からも好ましい。
押出ヘッドから吐出される溶融樹脂は、好ましくは直径0.01~1.0mm、より好
ましくは直径0.02~0.5mmのストランド状で吐出される。溶融樹脂がこのような
形状で吐出されると、CADモデルの再現性が良好となる傾向にあるために好ましい。
本発明の3次元造形用材料を用いる3次元造形における高速造形とは、造形速度が1m
m/s以上であることを表す。造形に要する時間の観点から、造形速度は3mm/s以上
が好ましく、5mm/s以上がより好ましく、7mm/s以上がさらに好ましく、10m
m/s以上が最も好ましい。上限は特に限定されないが、速ければ速いほど好ましい。た
だし、前述のフィラメントの屈曲や、後述の外観の悪化等、造形性に問題のない速度であ
るためには、造形速度は、100mm/s以下が好ましく、80mm/s以下がより好ま
しく、60mm/s以下がさらに好ましい。
本発明の樹脂成形体は、使用する用途などに応じて、造形後、熱処理により結晶化を促
進あるいは完了させてもよい。
本発明の樹脂成形体を製造するにあたり、支持材料を同時に造形してもよい。支持材料
の種類は特に限定されるものではないが、市販されている支持材料フィラメントの組成と
しては、エチレン-ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)、ブテンジオール-ビニル
アルコール共重合樹脂(BVOH)、ポリビニルアルコール(PVOH)、耐衝撃性ポリ
スチレン(HIPS)などが挙げられる。
<樹脂成形体の用途>
本発明の樹脂成形体は、造形性や耐熱性に優れたものである。用途については特に制限
されるものではないが、文房具;玩具;携帯電話やスマートフォン等のカバー;グリップ
等の部品;学校教材;家電製品、OA機器、自動車、オートバイ、自転車等の部品;電機
・電子機器用資材;農業用資材;園芸用資材;漁業用資材;土木・建築用資材;医療用品
;試作部品等の用途に好適に用いることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、以下の実施例は本
発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨に反しない限り以下の実
施例に限定されるものではない。なお、本明細書中に表示される種々の測定値および評価
は次のようにして行った。
(1)メルトインデックス
メルトインデクサ((株)東洋精機製作所製社製)を用いて、JIS K7210に準
じて、210℃、2.16kgにてMI(g/10min)を測定した。
(2)結晶化熱量(ΔHc)
示差走査熱量計「Pyris1 DSC」((株)パーキンエルマー製)を用いて、J
IS K7122に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で0℃から250℃ま
で昇温し、該温度で1分間保持した。その後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温した時
に測定されたサーモグラムから結晶化熱量(ΔHc)(降温過程)を求めた。
(3)溶融温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計「Pyris1 DSC」((株)パーキンエルマー製)を用いて、J
IS K7121に準じて、試料約10mgを加熱速度10℃/分で0℃から250℃ま
で昇温し、該温度で1分間保持した。その後、冷却速度10℃/分で0℃まで降温し、再
度、加熱速度10℃/分で250℃まで昇温した時に測定された各サーモグラムから溶融
温度(Tm)(℃)(再昇温過程)およびガラス転移温度(Tg)(℃)(再昇温過程)
を求めた。
(4)tanδのピーク数、及びピーク温度
得られた3次元造形用材料について、粘弾性スペクトロメーター「DVA-200」(
アイティー計測制御株式会社製)を用いて歪み0.07%、周波数10Hz、昇温速度3
℃/分で-100~150℃の温度範囲にて動的粘弾性の温度分散測定(JIS K72
44-4法の動的粘弾性測定)を行い、0~100℃の範囲での損失正接(tanδ)の
ピークの数、及びピークの温度を求めた。
(5)低温造形性
本発明の3次元造形用材料の低温造形性は、3Dプリンター「MF-2200D」(武
藤工業(株)社製)を用いて、造形テーブル温度60℃、ノズル温度160~230℃、
造形速度50mm/s、外壁数1層にて図1に示すモデルを造形して評価した。その際、
モデル下部より230℃から5℃刻みでノズル温度を下げていき、ノズルから材料が吐出
されなくなった温度を最低吐出温度とした。最低吐出温度が170℃以下を「AA」、1
75℃を「A」、180℃を「B」とした。
(6)低反り性
本発明の3次元造形用材料により得られる樹脂成形体の低反り性は、3Dプリンター「
MF-2200D」(武藤工業(株)社製)を用いて、造形テーブル温度60℃、ノズル
温度210℃、造形速度50mm/s、内部充填率100%にてダンベル試験片を長軸方
向が造形テーブルと平行となる方向で造形したサンプルを用いて評価した。得られた試験
片の端部に反りが全く見られない場合を「AA」、若干の反りがみられるが造形外観に顕
著な影響を及ぼさない場合を「A」、反りが大きく造形外観へ影響を及ぼす場合を「B」
とした。
(7)耐熱性
本発明の3次元造形用材料により得られる樹脂成形体の耐熱性は、造形に用いた3次元
造形用材料のガラス転移温度(Tg)により判断した。3次元造形用材料のガラス転移温
度(Tg)が70℃以上を「AA」、55℃以上70℃未満を「A」、40℃以上55℃
未満を「B」とした。
実施例、比較例で用いた原料は以下の通りである。
<非晶性ポリエステル系樹脂(A)>
(A-1):SKYGREEN PN100(SKケミカル社製、グリコール変性ポリエ
チレンテレフタレート樹脂、MI:4.7g/10分、ΔHc:0J/g、Tg:79℃
、Tm:なし)
<その他のポリエステル系樹脂(B)>
(B-1):ジュラネックス 400LP(ポリプラスチックス社製、イソフタル酸共重
合ポリブチレンテレフタレート樹脂、MI:21.2g/10分、ΔHc:28J/g、
Tg:33℃、Tm:176℃)
(B-2):ジュラネックス 600LP(ポリプラスチックス社製、イソフタル酸共重
合ポリブチレンテレフタレート樹脂、MI:8.6g/10分、ΔHc:6.1J/g、
Tg:31℃、Tm:172℃)
(B-3):ジュラネックス 500KP(ポリプラスチックス社製、イソフタル酸共重
合ポリブチレンテレフタレート樹脂、MI:12g/10分、ΔHc:30J/g、Tg
:34℃、Tm:182℃)
(B-4):バイロン GA-1300(東洋紡社製、イソフタル酸共重合ポリブチレン
テレフタレート樹脂、MI:125g/10分(*180℃で測定)、ΔHc:31J/
g、Tg:-6℃、Tm:166℃)
(B-5):ノバデュラン 5010N(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、イ
ソフタル酸共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、MI:3.0g/10分(*200
℃で測定)、ΔHc:39J/g、Tg:34℃、Tm:194℃)
(B-6):ノバデュラン 5510S(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ポ
リテトラメチレンテレフタレート共重合ポリブチレンテレフタレート樹脂、MI:35g
/10分(*250℃で測定)、ΔHc:39J/g、tanδのピーク温度:12℃、
Tm:217℃)
(B-7):ノバデュラン 5020(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ポリ
ブチレンテレフタレート樹脂、MI:10g/10分(*250℃で測定)、ΔHc:4
9J/g、tanδのピーク温度:58℃、Tm:223℃)
(実施例1~7)
表1に示す配合でドライブレンドした原料を、スクリュー径φ25mmの単軸押出機に
て、設定温度240℃で口径2.5mmのノズルから押出し、30℃の水槽を経て引取装
置で20m/minで引取り、直径1.75mm±0.05mmのフィラメント形状の3
次元造形用材料を得た。製造したフィラメント形状の3次元造形用材料で、物性、造形性
及び樹脂成形体の評価を実施した。評価結果を表1に示す。なお、実施例4で製造した3
次元造形用材料の低反り性の評価は予想される結果を示す。
(比較例1~3)
表1に示す配合でドライブレンドした原料もしくは単一の原料を用いて、実施例1~7
と同様にしてフィラメントを製造し、評価を実施した。評価結果を表1に示す。なお、比
較例1及び2で製造した3次元造形用材料の造形性及び樹脂成形体の評価は予想される結
果を示す。
Figure 2023053430000001
表1より、MIが本発明の範囲である実施例1~7は、低温造形性に優れた3次元造形
用材料となっている。これに対して、比較例1及び2は210℃で溶融しないためMIが
測定不可であり、また比較例3はMIが低く本発明の範囲にないため、低温での吐出性に
劣る。
また、実施例1はMIがさらに好ましい範囲にあるため、実施例3~7と比較して低温
造形性により優れる。実施例2は、配合されるその他のポリエステル系樹脂(B)の融解
温度が低く、さらに好ましい範囲にあるため、実施例3~7と比較して低温造形性に優れ
る。
実施例1~5は、ガラス転移温度が最も好ましい範囲にあるため、実施例6と比較して
低反り性に優れ、実施例7と比較して耐熱性に優れる。

Claims (15)

  1. ポリエステル系樹脂を含む3次元造形用材料であって、
    210℃、2.16kgで測定したメルトインデックスが6g/10分以上である、
    3次元造形用材料。
  2. 示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際の結晶化熱量(ΔHm)
    が10J/g以下である、
    請求項1に記載の3次元造形用材料。
  3. 示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際のガラス転移温度(Tg
    )が100℃以下である、
    請求項1または2に記載の3次元造形用材料。
  4. 示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際のガラス転移温度(Tg
    )が30℃以上である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
  5. 示差走査熱量測定において10℃/分の降温速度で測定した際の溶融温度(Tm)が2
    00℃以下である、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
  6. JIS K7244-4に記載の動的粘弾性の温度分散測定により、歪み0.07%、
    周波数10Hz、昇温速度3℃/分で-100~150℃の範囲にて測定した損失正接(
    tanδ)のピークの数が、0~100℃の範囲で単一である、
    請求項1~5のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
  7. 前記ポリエステル系樹脂が非晶性ポリエステル系樹脂(A)とその他のポリエステル系
    樹脂(B)を含む、
    請求項1~6のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
  8. 前記ポリエステル系樹脂が芳香族ポリエステル樹脂を含む、
    請求項1~7のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
  9. 前記ポリエステル系樹脂が2種以上の異なる芳香族ポリエステル樹脂を含む、
    請求項1~8のいずれか一項に記載の3次元造形用材料。
  10. 3次元造形用フィラメントである、請求項1~9のいずれか一項に記載の3次元造形用
    材料。
  11. 前記フィラメントの径が、1.0mm以上、5.0mm以下である請求項10に記載の3
    次元造形用材料。
  12. 請求項1~11のいずれか一項に記載の3次元造形用材料を巻回してなる巻回体。
  13. 請求項1~11のいずれか一項に記載の3次元造形用材料、又は請求項12に記載の巻回
    体を収納容器に収納してなる3Dプリンター用カートリッジ。
  14. 請求項1~11のいずれか一項に記載の3次元造形用材料からなる樹脂成形体。
  15. 請求項1~11のいずれか一項に記載の3次元造形用材料を用いて、3Dプリンターによ
    り樹脂成形体を製造する樹脂成形体の製造方法。
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